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智絵里「アイネクライネ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:27:28.37 ID:jcjK0Bse0
デレステ個人コミュ準拠。

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=^・ω・^= ぬこ神社 Part125《ぬこみくじ・猫育成ゲーム》 @ 2024/03/29(金) 17:12:24.43 ID:jZB3xFnv0
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VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:28:31.54 ID:jcjK0Bse0
誰もいない、家の中。わたしは一人、ベッドに腰掛けて文庫本のページをめくります。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない。

本屋さんで、かわいい表紙とタイトルに惹かれて買った本……
その中に出てくる、わたしよりも年下の女の子たちは、わたしよりも、ずっと強くて。

最後のページを閉じた後、わたしはベッドに倒れこみました。
カーテンを閉めきった部屋の中で、ぼんやりと天井を眺めて……
寝返りをうつと、つ……とぬるい液体がひとしずく、枕カバーへと落ちました。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 02:29:01.22 ID:A6Y4dqFbo
米津玄師だ
4 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:29:39.57 ID:jcjK0Bse0
わたしは、ひとりぼっちでした。

こんな性格だから、そんなことになってしまったのか。
ずっとそんな調子だったから、今みたいな性格になってしまったのか……
それはわたし自身にも、今となっては正解は分かりません。

お母さんが、わたしを見捨てて姿を消して。
お父さんが、新しいお母さんを連れて来て。
その人は、わたしを認識してくれなくて。

まるでシンデレラのお話みたい……と思ったこともありましたけど、
わたしの部屋にはネズミさんも、小鳥さんもいません。
そもそも、わたしはシンデレラみたいな、物語の主役には向いていませんし……。
5 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:30:47.01 ID:jcjK0Bse0
わたしは……わたしはただ、いい子になりたかったんです

褒めてもらいたかった、とかではなくて。
叱られたり、手を上げられたり、そういうことのないような。

手のかからない、いい子。都合のいい子。
いてもいなくても変わらない、空気のような存在。

たとえ、わたしのことを見てくれないとしても。
わたしはもう、わたしの存在を、否定されたくなかったんです。

もう二度と、誰かに見捨てられたくなかったんです。
6 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:31:27.88 ID:jcjK0Bse0
だから……わたしは、誰も期待しないような子になろうとしていました。

砂糖菓子の弾丸も、実弾も撃たず。

現実と戦うことを拒否して……
わたしは砂糖菓子とクローバーでできたシェルターの中で、立てこもりを続けていました。

全てが終わるのを、じっと待っていました。
7 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:32:24.57 ID:jcjK0Bse0
ずっとそんな風だったから……
あの時の私はきっと、どうかしていた……んだと、思います。
もしかしたら、わたしなりの反抗期、だったのかもしれません。

学校の他の女の子たちが、髪を染めたり、スカートを短くしたり。
髪を染めたり……大勢の男の子と付き合ったり。

そんなことをするように、わたしは自分で考えた、悪い考えを実行に移したんです。
8 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:33:45.25 ID:jcjK0Bse0
幼い頃に見たテレビ番組。まだ優しかった両親。
ラジオで流れていたコマーシャル。
砂糖菓子の、弾丸。

携帯で、公式サイトを確認しました。
まるで泥棒でもするみたいに、履歴書をレジに持って行きました。
こっそりと証明写真のブースに入って、顔写真を撮影しました。

なれるわけない、けれど。
心の底から、なりたいと思ったわけでも、ないけれど。

どうせ見向きもされないなら、誰にも怒られることもないのなら……
ほんの少しだけ、夢を見てもいいのかもしれない。

そんなことを考えながら、何度も深呼吸をして。
わたしは、書類の欄を埋めていきました。

震える手で封筒に入れ。
剥がれ落ちて無関係の人が見てしまわないように、しっかりと糊づけをしました。
9 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:34:59.33 ID:jcjK0Bse0
次の日の朝。
少しだけ早めに家を出て、通学路の途中……
人通りの少ない道に置かれている郵便ポストの前で、わたしは立ち止まりました。

右を見て、左を見て、もう一度右を見て。

誰もいないのを確認して。
一緒に持ってきたクローバーの栞を握りしめ、わたしは大きく息を吐きました。

慎重にカバンから封筒を取り出し、もう一度だけ宛名を確認して。
わたしはそれを、郵便ポストに入れます。

深呼吸をすると、心臓がバクバクと音を鳴らしているのが、はっきりと分かりました。
10 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:35:41.64 ID:jcjK0Bse0
ああ……これで。

これでわたしに、もう思い残すことはありませんでした。
11 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:37:08.64 ID:jcjK0Bse0
わたしの中の、ありったけの勇気を振り絞って。
わたしは、砂糖菓子の弾丸を撃ちました。

それはきっと、誰に当たるということも、何かを壊すということもないけれど……
そんな勇気がわたしの中にあったという事実だけで、わたしにとっては十分でした。

その事実があれば。
わたしはこれから死んでしまうまでの時間、心の支えを持って生きていける、そう思いました。

誰もわたしを見ていなくても、誰もわたしに何かを期待をしなくても。
わたしはこの立てこもりを続けていける。

誰の居場所も奪わずに。石ころみたいに。

世界は何事もなく時計を動かしていたけれど、わたしにとってその日は、記念すべき一日でした。
12 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:37:40.52 ID:jcjK0Bse0
だから……

二次審査、オーディションの開催日時を知らせる手紙がわたし宛に届いた時、わたしはとてもうろたえました。
13 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:39:23.74 ID:jcjK0Bse0
「わたし、きっとここに来るべきじゃなかったんです」

そう言って、わたしは顔を伏せます。
人混みはもともと、こわくて苦手だったけど……
それ以上に、わたしに分不相応な場所のように思えて。

「わたしがアイドルを目指すなんて……そんなの、無理ですよ」

 一人でオーディション会場にやってきたわたしは、人の多さに驚きました。
こんなにたくさんの、かわいい女の子たちが、アイドルを夢見ているんだ……って。

「こんなにたくさん、他にもアイドルを目指す人がいるのに……」
14 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:40:25.36 ID:jcjK0Bse0
きっと、何かの勘違いだったんだ。

そう思って、引き返して家に帰ろうとしたわたしを、あなたは呼び止めました。

混乱するわたしを落ち着かせて。
あなたはオーディションの、受付の場所を教えてくれました。

わたしのお話を、聞いてくれました。
それまで、わたし自身のお話を誰かにすることなんてなかったから……
話し終わった後、わたしはなんだかすっきりしていました。
何かの支えが、取れて流れていったような。
15 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:41:39.73 ID:jcjK0Bse0
この人が、わたしを見て……
わたしの話を聞いてくれる、人生最後の人になる。
そう思って、背の高いあなたの顔をわたしは目に焼き付けます。

優しそうな人。
輝く世界にいるあなたと……アイドルになんかなれっこないわたしの道は。
きっと、二度と交わることがない。

灰色の世界に戻って、わたしは幸せな夢を妄想して眠り続けるから。

そう思って俯いた、わたしの名前を。

名乗ったことのない智絵里、という名前を、あなたは呼んでくれました。
16 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:42:24.16 ID:jcjK0Bse0
君が望むのなら、君をアイドルにしてあげる、とあなたは言いました。

プロデューサーをやっているのだ。
君の応募書類を見て、オーディションを楽しみにしていたのだ、と。

唐突に、世界は光に包まれて。

差し伸べてくれたあなたの手を掴むのを、でも、わたしは躊躇しました。
17 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:43:21.15 ID:jcjK0Bse0
わたしは、幸せなんか望んじゃいけなくて。
幸せになった分だけ、きっとそれ以上の悲しい不幸が待っているから。

今日ここに来なければ。

あなたのことを知らなければ、わたしはきっと、こんな不安に襲われることもなかった。

差し伸べられた手を拒絶すれば、今まで通りの……
失うものなんて無い、砂糖菓子の檻の中で戦えるのに、生きていけるのに。

なのに……わたしは。
18 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:44:21.44 ID:jcjK0Bse0
もう一度だけ、あなたの顔を見ます。あなたの顔色を、伺います。

あなたは優しく笑って、智絵里ちゃん、と言って頷きました。

きっとわたし、あなたをいっぱい失望させてしまいます。

きっとわたし、あなたが思っているよりずっと意気地なしで、ダメな子なんです。

だけど。

滲んでぼやけたあなたの手を、わたしはそっと握りました。
19 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:44:47.79 ID:jcjK0Bse0
「緒方……緒方智絵里……です。その……がんばります、ので……えと……見捨てないでくれると……うれしい、です」
20 : ◆0vdZGajKfqPb [saga]:2015/10/11(日) 02:46:25.04 ID:jcjK0Bse0
おしまい。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 03:05:28.13 ID:o2yx3nd7o
乙。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお迭りします [sage]:2015/10/11(日) 03:13:50.95 ID:ycEw0PF+O
>>3
誰だよ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/11(日) 04:03:53.30 ID:q/2kSfmX0
ちえりっぽさが出てて良かった
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/11(日) 04:07:17.83 ID:PkzCMDTJO
ベリーベリーストロング
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 11:38:39.25 ID:j9kxhLxJO
>>22
https://youtu.be/-EKxzId_Sj4
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 12:26:17.11 ID:Jy9T8NrW0
とてもいいと思いました(こなみ
曲もこのSSもちえりっぽさがよく出てる
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 18:33:12.50 ID:c04zKdGy0
いつか来るお別れを育てて歩くの?
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/13(火) 01:43:43.53 ID:Qt3rHfP70
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