本田未央「プロデューサーとのごはん」 その2

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732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 06:06:05.68 ID:kNZjM9RP0
乙です!しかし長編シリーズだなぁ。素晴らしい
733 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/08/20(月) 23:36:06.33 ID:1QUlsanb0
P「うどんを食べに行こう」

未央「え? ……いきなりどうしたの? またうどん探訪?」

P「いや、そうじゃなくてな……ちょっと、近所にうまいうどん屋ができたって聞いてな」

未央「それで、行ってみたくなった、と?」

P「そういうことだな」

未央「……普段のプロデューサーだったら、こういうとき、私に何も言わずにひとりで行かない? 男の人ひとりだとー、って店だとまだわかるけど、うどん屋さんでしょ? いや、プロデューサーは男の人ひとりだとちょっとって店でも割とひとりで行く印象あるけど」

P「そう言えばそうだな。最近はあんまり新しい店を開拓したりしてなかったが……いつもなら、未央を誘う前にひとりで行ってみることが多かったか」

未央「そうそう。今までもないことはなかったけど、珍しいなーと思って。どうしたの?」

P「どうした、って言われても……なんとなく、初めて行く場所だし未央も誘うか、って思っただけでな。特別な理由はない」

未央「……特別な理由はない、ですか」

P「ああ。……あ、ここはそれっぽい理由をでっち上げる場面だったか? デリカシー? 的に」

未央「そういうことを聞くほうがデリカシーないと思うんですけど? でも……うん。特別な理由がない、っていうのは高得点かな。未央ちゃん的に」

P「そう……なのか?」

未央「そうそう。それで、もう行く? 私は今すぐでも大丈夫だけど」

P「ああ。未央がいいなら、すぐに行こう。近くだし、サクッと行ってサクッと食べよう」

未央「ん。それじゃ、しゅっぱつしんこー」
734 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/08/20(月) 23:36:46.52 ID:1QUlsanb0

――店の前

未央「おお、ほんとにすぐだね、プロデューサー。しかし、ここは……なんだか、思ってたよりもオシャレな雰囲気?」

P「だな。店の前にメニューが置いてなかったら素通りするところだった。あんまりうどん屋っぽくないが……メニューも、ちょっと凝ってるのも置いてあるな」

未央「ん、確かに。定番どころだけじゃなくて結構色んなのがある……かな? これは……ニュージェネレーションうどん?」

P「無理やり結び付けなくていいから。店の前でずっと立ってるのもなんだし、さっさと入るか」

未央「はーい。二名様、ご来店でーす」

P「お前はどの立場なんだよ」
735 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/08/20(月) 23:38:38.09 ID:1QUlsanb0

――店の中

未央「お、店の中もオシャレな雰囲気だけど……立ち食いなんだ。ちょっと意外」

P「そんなに広くないからかな。ビジネス街ってのも関係しているかもしれない。昼休みなんかにサッと入ってサッと出る、みたいな人が多いんじゃないか?」

未央「あー、そういう。えっと……あそこで注文する感じかな? うどんを注文している間に並べられている天ぷらなんかを選んでお会計するタイプ……うどん屋さんって、こういうの多い?」

P「んー……どうだろうな。俺もそんなにうどん屋に行ってるわけじゃないからなぁ……讃岐うどんはこういうスタイルの店が多いのかもしれない」

未央「ほうほう? それで、プロデューサーは何のうどんを注文するのかな?」

P「俺は……そうだな。冷かけで」

未央「冷かけ? って……かけうどんの、冷たいやつ?」

P「まんまだな。そうなんだが」

未央「『通』な食べ方ってやつ?」

P「いや、単に暑いからシンプルで冷たいのを一気に喉に流したかったってだけだな」

未央「おおう、そういう理由ですか……まあ、前にうどん屋さんに行ったときに変な食べ方してたもんね。そんなこと考えてないか」

P「ん? バカにしてるか?」

未央「してないしてないしてないヨー。それじゃ、私も同じので。注文しよしよ」

P「なんか釈然としないが、わかった。……すみません。冷かけの大盛りと並を一つずつ、お願いします」

未央「で、出来上がるのを待ってる間に天ぷらを?」

P「べつに取らなくてもいいんだろうけどな。このシステムだと……ついつい、取っちゃうよなぁ」

未央「だね。えっと……私は定番の鶏天かな。あ、かやくご飯もある。うどんと同じ出汁で……だって。そんなに量もないし、これも食べよ」

P「俺もまあ、似たような構成だな……それじゃ、俺は会計しとくから、適当に場所とっといてくれ。うどんは店員さんが出来上がり次第持ってきてくれるらしいから」

未央「ん。旦那さまの帰ってくる場所を守っておくのが妻の務めですからねー」

P「誰が旦那さまで誰が妻だよ……」

未央「それはもちろん、プロデューサーが旦那さまで、私が」

P「それ以上言わなくていい」
736 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/08/20(月) 23:40:22.83 ID:1QUlsanb0

――

P「ん、来たな」

未央「……こうやって見ると、なんだか綺麗だね。うどんと出汁だけって、どんな感じになるのかなーって思ったけど……シンプルなこの二つだけだからこそー、っていう。侘び寂び? みたいな?」

P「侘び寂びか? でも、シンプルだからこその美しさっていうのはわかる気がするな。引き算の……だったか。必要最小限のものだけだからこそ研ぎ澄まされた美しさを感じるのかもしれない」

未央「そう本田未央のプロデューサーは熱く語った。冷かけの美しさを語る彼の姿は、私には少し眩しく見えた――」

P「恥ずかしくなるからやめてくれないか? 侘び寂びとか言い出したの未央のくせに」

未央「いやー、冷静になるとうどんを前に何言ってるんだろって思ってね。確かに綺麗ではあるけど、食べ物なんだし、まずは食べなきゃ」

P「それはそうだが……まあいい。いただきます」

未央「いただきまーす」


未央(さてさて、ラーメンだったらここでまずスープから、という感じだけど……うどんは、どうだろ?)

未央(いつもだったら麺をずるずるとすすっていくところだけど……冷かけ? だし、出汁の塩梅を確認しておきましょうか)ズズ…

未央「……お」

未央(おおー……おいしい。いい感じに冷えてるし、香りも旨味もしっかり感じる。ぬるくはないけど冷たすぎもしないのがポイントだね。あんまりにもキンキンに冷えてると味がわからなくなっちゃうし。そう考えると、これくらいの冷たさはベストかも。ちょうど夏だし、あっさりしてるから、ゴクゴク飲めちゃう)

未央(っと、ゴクゴク飲んじゃダメなんだった。うどんだよ、うどん。出汁をゴクゴク飲むのはせめてうどんを食べてからでしょう)

未央(それで、うどんは……うん、やっぱり綺麗に感じる。店の照明のせいかな? それとも、この黄金色の出汁とあいまって? まあ、とにかく、食べてみなくちゃわからないってなもんでしょう)ズズー…

未央「……」

未央「……」ズズー……

未央(……ハッ! おいしくて、ついずるずると食べ進めてしまった)

未央(うーん……おいしい。おいしいね、これは。いい感じの弾力で、かたすぎもせず、やわらかすぎもしない。これぞ讃岐うどん、って感じ。詳しいわけじゃないんだけど)

未央(どこかしなやかで、するすると食べ進められてしまう。あっさりとしながらもしっかりとした旨味を持つ出汁が絡んで、ズルズルと啜っていくのが気持ちいい)

未央(ずずーっと啜って、はぁーっと一息。そしてまたずずーっと啜って、はぁーっと一息。このサイクルがたまらない。麺類のものを思い切り啜るのって、上品とは言えないんだろうけど、やっぱり、すごく気持ちいい)

未央(ここらで鶏天とかやくご飯もいただきましょう。……んん、これもこれで良い感じ。揚げたて熱々ってわけじゃなくて、むしろもうちょっと冷めちゃってるけど、これはこれでおいしいなぁ。こういう、ちょっと冷めた感じのもののおいしさって、どう表現すればいいんだろう。衣もサクサクじゃなくなっちゃってるんだけど、それが良い、みたいな……難しい)

未央(かやくご飯も同じで、ちょっと冷めてしまっている。でも、それが良い。少し冷めることで味がしみたりしているのだろうか。なんか、落ち着いていながらもしっかりとした味合いを感じて……そう言えば、うどんと同じ出汁を使ってるんだっけ。食べていると、どこか安心したような気分になる。家庭的……とは、ちょっと違うけど、どうしてか少し懐かしい。そんな感じだ)

未央(そうして、またうどんをずずーっと啜って、出汁をごくごく飲んで、はぁーっと一息ついて……ぱくっと鶏天やかやくご飯にお箸をつけて)

未央(んん……このサイクル、止められないっ!)
737 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/08/20(月) 23:43:38.75 ID:1QUlsanb0

――店の外

未央「はー……結局、お出汁、ぜんぶ飲んじゃったよー」

P「俺もそうだな。思ったよりも腹が膨れたんじゃないか?」

未央「うん。動けないーってほどじゃないけど、思ったよりは、ね。でも、あっさりしてたし、食べやすくて……たぶん、大盛りでもいけちゃったね。頼まなくてよかったけど」

P「そうだな。もうそろそろ夏も終わるが、あんまり食欲がないときなんかには重宝しそうだ」

未央「それは確かに……って、そう言えば、もうそんな時期かー。高校の頃だと……そろそろ夏休みが終わる頃だね。宿題に追われる時期だ」

P「去年なんて、確か、ちょっと早くに夏休みが終わって、もうそろそろ始まる頃だったんじゃないか?」

未央「んー……そうだったような気もするし、そうじゃなかったような気もする……去年は忙しかったからあんまり覚えてないね。学校でも学校じゃなくても、勉強してた気がするし」

P「受験生だったもんな。大学は九月の半ばか終わりくらいまで休み、だったか」

未央「だね。そのあたりはプロデューサーのほうが詳しいかも」

P「なんでだよ。確かに未央のスケジュールはだいたい頭に入ってるが」

未央「私よりも私のこと知ってるかも?」

P「そんなことはないと思うが……」

未央「でも、大学が休みでも、あんまり休みだーって感じはしないかも。プロデューサーがいっぱい仕事をくれるからねー」

P「ああ。高校の頃に比べて仕事を入れやすくてありがたい」

未央「私も仕事がいっぱいでありがたい……けど、お休みもほしいなー? なんて」

P「心配するな。身体は壊さないように気をつけてる」

未央「身体が壊れなかったらいいってものじゃないですよ?」

P「ははは」

未央「笑い事じゃないんですけど!?」

P「……まあ、ちゃんと考えてるよ。大学生とは言っても、だしな。昔に比べると、さすがに頑張りすぎたりはしないようになってるが」

未央「……そう言われたらそう言われたで、なんか、調子狂うね」

P「どうしろって言うんだよ。……とにかく、また休みは入れておくよ。遊びすぎて遊び疲れられても困るが……そういう日も、あったほうがいいかもしれないからな」

未央「……プロデューサーは?」

P「俺?」

未央「身体は壊さないように気をつけてるかもしれないけど……たまには遊ぶのも、大事だよ」

P「……そうだな。俺も、ちゃんと休んで、ちゃんと遊ぶよ。それでいいか?」

未央「んー……あんまり信じられませんなぁ」

P「そんなに信頼できないか? 俺」

未央「プロデューサーは私に頑張りすぎないようにって言うくせに、自分は頑張りすぎちゃったりしますからなぁ。休日はしっかり休んでるんだろうけど……遊ぶのは、信頼できない、から」

P「から?」

未央「私もプロデューサーもオフのときに、さ。……いっしょに遊んだり、しませんか?」

P「……」

未央「……む、無言は、ちょっと、悲しいんですけど?」

P「……あ、いや、悪い。……うん。そうだな。未央がいいなら、そう、するか」

未央「ほんとに? ほんとに、いいの?」

P「いいよ。むしろ、こっちからお願いしたいくらいだよ。未央は俺よりずっと遊び方を知ってるだろうし……未央となら、俺も、しっかり遊べそうだからな」

未央「……そ、っか。そっか。そう、ですか。……よーし! それじゃ、未央ちゃんがプロデューサーのことをヘトヘトになるまで遊び疲れさせちゃうからね! 覚悟しておくよーに!」

P「いや、ヘトヘトにされたら困るんだが……おい、聞いてるか? 未央? おーい」



738 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/08/20(月) 23:49:14.36 ID:1QUlsanb0
これにて今回は終了です。
夏だしさっぱりしたものをー、って思いましたがちょっと涼しくなってきちゃいましたね。いや、涼しくなってきたこと自体は嬉しいんですが、また書くのがちょっと遅れちゃったかー、って感じです。

今回はうどんですね。讃岐うどん。ひやかけ、おいしいですよね。ごまかしがきかないとは言いますが、こんな季節にはおいしいお店でひやかけをぐいぐいするのが気持ちいいように思います。苦味がえぐみがなく、しかししっかりとした旨味を感じる出汁でいただく冷たいおうどんを一気にすする……気持ちいいです。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
739 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/08/20(月) 23:52:10.10 ID:1QUlsanb0
あとSSには関係ないですがスターライトステージのMVで未央に踊ってもらってカシャカシャするの楽しいです。未央やっぱりかわいいです。美人さんです。
スターライトステージと言えば、でれぽでかき氷キーンってなってたし、かき氷を書いてもよかったなぁ……と思いました。書くかもしれません。

改めてありがとうございました。
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/30(木) 20:39:24.31 ID:u7rIIPcn0
741 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/11/05(月) 06:48:21.18 ID:CW6dl2EU0
未央「肌寒くなってきたなー、と思うわけですよ」

P「肩出しといてそんなこと言われても困るな」

未央「確かに。でもここは颯爽とジャケットを肩にふぁさーっとかけてくれるシーンじゃない?」

P「そうしたらどうなる?」

未央「親愛度が1上がるね」

P「1か……」

未央「不満? でも、もし親愛度の上限が10とすると……?」

P「大きいな」

未央「でしょ? ちなみに未央ちゃんの親愛度上限は600です」

P「その中の1か……微妙だな」

未央「ちなみに未央ちゃんの親愛度はすでにMAXです」

P「じゃあ意味ないな?」

未央「いやいや。ここでジャケットをかけてくれるとイベントが発生するからね。イベントスチルが埋めれるよ」

P「あー、ぶかぶかのジャケットを羽織る感じの?」

未央「そうそう。『これがプロデューサーの体温なんだ……』みたいな。乙女な感じのが見れますよ?」

P「先に言ったらぜんぶ演技だってわかることが難点だな」

未央「大丈夫大丈夫。未央ちゃん女優ですから。アイドルだけど」

P「というか、ほんとうに羽織るもの、何も持ってないのか?」

未央「持ってないデスヨ」

P「女優どこいった」

未央「えへへ。アイドルは身体が資本ですからねー。さすがに冷やさないようにって持ってるけど……ほら、あわよくばってオトメゴコロが炸裂したと言いますか」

P「それ、ほんとうに乙女心か? 持ってるならさっさと着とけ。心配だから」

未央「親愛度アップワード『心配』を検出しました。プロデューサーへの親愛度がアップします」

P「そんな機械的な上がり方してたのか……」

未央「これでプロデューサーへの親愛度はもうすぐ3000だね」

P「上限超えてるんだが」

未央「愛に限界はないからね!」

P「そういう話か? ……まあいいか。未央、この後の予定は?」

未央「プロデューサーが知っての通り、何もないよ。撮影が押す可能性も考えて予定は入れてなかったし……強いて言うなら、今からプロデューサーが言おうとしているのが予定かな?」

P「先を読むな」

未央「実は未来視が開眼してしまいまして」

P「宝くじを当ててほしいところだな」

未央「それは我が事務所が誇る幸運の女神さまにお願いしては?」

P「冗談じゃなく当てそうだからやめとく。……で、行くか?」

未央「もちろん。そろそろお腹も空いてきたし、ね」
742 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/11/05(月) 06:49:56.10 ID:CW6dl2EU0

――店の中

未央「お、今日はこういう感じのお店かー」

P「どういう感じだよ」

未央「知る人ぞ知る……みたいな? L字型のカウンターで、ちょっと奥まった場所にある感じが」

P「そこそこ有名な店だから違うな」

未央「でも私は知らなかった。なら実質『知る人ぞ知る』でしょ?」

P「屁理屈だな」

未央「言葉遊びと言いたまえ。それで、ここは……なんか、いっぱいメニューがあるね」

P「最初は表に書いてあるほうだけだったらしいんだがな。なんか増えていったらしい」

未央「お客さんのリクエストを聞いていって……みたいな?」

P「だな。そんなこんなで膨らんでいったらしい」

未央「それで、何がオススメ……って、いくつか『オススメ』って書いてるね。つまり、どれがオススメなのかわからないやつ」

P「まあ、そもそもメニューに書いてあるならぜんぶオススメってだけの話かもしれないけどな」

未央「確かにそうじゃなきゃメニューに書かないかー。……今までもオススメオススメ言ってきたんだから今更だけどね」

P「ホントにな。で、結局何を頼むか、だが……俺もここのは色々あってわからないんだよな」

未央「んー……カレーが多いね。見た感じ。どうなの?」

P「おいしいカレーだな。洋食屋のカレー、って言うのも違うが……どちらかと言えば、どろっとした感じかな」

未央「どろっとしてる以外なにも伝わらない……」

P「それだけで十分だろ? あー、前に行った金沢カレーみたいな感じではないな。スパイスカレーって感じでもない。なんて言ったらいいのか……難しいな」

未央「ほうほう……じゃあ、私はこの照り焼き丼にしようかな!」

P「カレーじゃないのかよ」

未央「いやー、なんかビビッと来ちゃいまして。プロデューサーは?」

P「ハヤシライスで」

未央「カレーじゃないんだ」

P「俺はいいだろ? ……まだ食べたことなかったからな。食べてみたかったんだ」

未央「そっかそっか。それじゃあ注文しちゃうね? すみませーん!」
743 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/11/05(月) 06:52:01.67 ID:CW6dl2EU0

――

未央「おお……! こ、これは……めちゃくちゃ意外なビジュアル!」

P「『丼』って感じじゃないな。まず皿が平たいし。白ごはんの上に具材が乗っている、ってぶんには丼と同じだが」

未央「鶏の照焼と卵に玉ねぎ。親子丼の鶏肉が照り焼きになっている感じだねー。つゆはないけど。でも、これはおいしそうな感じ……」

P「確かにな。……俺も一口もらっていいか? 完全に今まで見逃してたよ」

未央「いいよ。代わりにそなたのハヤシライスを献上したまえ」

P「もちろん。……いただきます」

未央「いただきまーす」

未央(でも、これはどうやって食べるかちょっと迷うなー。お箸? スプーン? 悩ましいところだけど……せっかくこういうお皿なんだし、スプーンで食べよう!)

未央(つやのある鶏肉と卵が食欲をそそるね。卵はとろとろ……ってほどじゃないけど、そんなに固まっているわけでもなくて。ぷるぷる? ともちょっと違うかな。やっぱりとろとろがいちばん近いかも)

未央(そこそこおっきく切られている鶏肉と卵、それから玉ねぎ、ごはんをすくって……ぱくり)

未央「……ん!」

未央(んー! これは! おいしい! 見たまんまの味なんだけど、見たまんまおいしい!)

未央(やっぱり照り焼きっておいしいよね。もう『照り焼き』って調理法からしておいしいのが約束されている気がする。甘辛いタレにジューシーな鶏肉。卵と玉ねぎが絡んで、そこに白ごはんですよ。間違いなくおいしいもんね)

未央(照り焼きのタレはどちらかと言うと甘さのほうが強い。弾力のある鶏肉の身は噛みしめると脂が染み出してきて、卵がそんな強い味たちを包みこんで、さらにごはんがクッションに。玉ねぎの食感も楽しくて……あー、おいしい)

未央(飴色の鶏肉ちゃんと玉ねぎちゃん、黄金色の卵とつやつや美白のごはんといっしょに口の中で演奏会……みたいな。ハーモニー? って言うのはちょっとおしゃれすぎるかな。もっとこう、庶民的な……でも、これはちょっと自分ではつくれないかも。卵の感じが難しそう。調理法からして『勝ち』って感じの照り焼きと卵の組み合わせだけど、それをさらにプロの料理人がやっているんだもんね。これはもうめちゃくちゃおいしいに決まっているってわけですよ)

未央「プロデューサー、やっぱりこれ、おいしいよ。一口食べる?」

P「ん? ああ、もらおうかな」

未央「ん。それじゃ、あーん」

P「……ん」

未央「……どう?」

P「……うん、うまいな。かなりうまい。絶対にうまいだろって組み合わせなんだが、バランスが良い。これは……次に来たときは、頼むかもな」

未央「ふっふっふ。この数多くのメニューの中からこれを選び出す私……天才かな?」

P「否定しにくい」

未央「それで、だよ。プロデューサー。私も私も」

P「ん? ああ、そうか。ほれ」

未央「ん。あーん」

P「はいはい。あーん」

未央「……ん、おいしい。ハヤシライスってカレーに比べると食べる機会が少ない気もするけど、おいしい料理だよね。ビーフシチューとかとはまた違った感じで、よりごはんに合うようにつくられているって言うか」

P「でも、味はなかなか説明しにくい感じなんだよな……コクと苦味? でも、苦味も嫌な苦味ってわけじゃないんだよな。トマトソースがいっしょに入っていて、甘酸っぱさもあって……ドミグラスソースのあの香り、甘みと酸味、それから深みのあるコクがいっしょになった複雑な味。これがおいしいんだよなぁ」

未央「ここのはあんまり苦味は強くないね。甘みと旨味が強い感じ? でもコクはあって……ぱくぱく食べられちゃいそう。スプーンが進む味だね」

P「ああ。高級感のあるホテルの味って感じのも好きだけど、こういうのもやっぱりうまい。一口一口じっくり味わうのもいいけど、勢いよく食べるのはやっぱり気持ちいいからな」

未央「ちゃんとゆっくり噛んで食べなよ? まあ、気持ちはわからなくもないけど」

P「わかってるわかってる。……あー、うまい」

未央「もー……。ん、おいしい」
744 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/11/05(月) 06:55:05.69 ID:CW6dl2EU0

――店の外

未央「ごちそうさま、プロデューサー」

P「ああ。やっぱりうまいな、ここは。まだまだ食べてないのもあるし、また来なきゃなぁ……」

未央「私は次来ても照り焼き丼を頼む可能性があるね。個人的にヒットしちゃった」

P「気持ちはわかる。確かにうまかったもんな」

未央「でも、自分でつくれるかもちょっと試してみようかなー。あの卵の感じは難しそうだけど、練習すれば近づけるかもだし」

P「確かに照り焼きと卵ってだけでまず外しはしないからな。あの味付けなら失敗してもまあうまくできるだろ」

未央「……プロデューサーって照り焼きとかつくる?」

P「ん? まあ、つくるときはあるかな。好きだし。って言っても、絡めて焼くくらいしかしないが」

未央「ふむふむ。ということは、私の担当は卵ということになるね」

P「まさかの共同作業か」

未央「初めての共同作業は照り焼き丼でした……」

P「今までにも色々としたような記憶はあるけどな」

未央「確かに。ならn回目の共同作業?」

P「nって」

未央「nは任意の自然数とする」

P「あー……その言い方、懐かしいな」

未央「学生時代を思い出しちゃう? 『あの頃に未央がいれば灰色の学園生活なんかじゃなくてバラ色の学園生活だっただろうな……』とか思っちゃってる?」

P「勝手に灰色にするな」

未央「バラ色だったの?」

P「……」

未央「おおう、その反応は聞いちゃいけなかったやつだね。ごめんね?」

P「謝られるとむなしくなるからやめてくれ……」

未央「あはは。まあまあ、そんな学園生活があったからこその今なわけですよ。何かが少しでも違っていたら、今、未央ちゃんとこうしていられなかったかもしれないわけで、そう考えると昔のことも肯定できない?」

P「……まあ、そうだな。肯定はできないが、否定もできなくなる。何かが少しでも違っていたら……か。蝶が竜巻を引き起こすくらい複雑な世の中だからな。些細なことでも、何かが少しでも違っていたら今みたいにいられなかったかもしれない、ってのはその通りか」

未央「そうそう。その世界だと、プロデューサーはプロデューサーじゃなかったかもしれないし」

P「未央もアイドルじゃなかったかもしれない?」

未央「かも、ね。……そんな世界だと、さすがに、私とプロデューサーは会ってないかな」

P「だろうな。接点がない」

未央「む。そこは運命がなんとかでどんな世界でもー、とか言うべきじゃない?」

P「何かが違っていたら今こうしてなかったかも、って最初に言ったのは未央だろ? 運命なんかじゃない。偶然だ。偶然にも俺がプロデューサーになって、偶然にも未央がアイドルになって。それで、偶然にも俺が未央のプロデューサーになった。それからも色んな偶然が重なって、今がある」

未央「偶然ばっかりだね」

P「ああ。……まあ、でも」

未央「でも?」

P「……そんな不安定な偶然の上に立っているからこそ……運命とも、言えるんじゃないか?」
745 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/11/05(月) 06:55:48.59 ID:CW6dl2EU0
未央「……ふふっ」

P「……あー、くそっ。笑うなよ。結構恥ずかしかったんだから」

未央「でも……ふふっ。べつにそういうシチュエーションでもないのに、良い感じのこと言うんだもん。笑っちゃうって」

P「うるさい。あー……もう二度と言わない」

未央「えー? 私、今みたいな台詞、結構好きだよ? シチュエーションさえ合ってたらめちゃくちゃときめいたと思う」

P「今は?」

未央「笑う」

P「だろうな! ……あー、過去に戻りたい。さっきのをなかったことにしたい。この短時間ならバタフライエフェクトも起こらないだろ」

未央「いやいや、今のはきーっちり未央ちゃんの脳内メモリに保存させていただきました。『……そんな不安定な偶然の上に立っているからこそ……運命とも、言えるんじゃないか?』ほら、かっこいい」

P「やめろやめろやめろ! あのな、未央、お前な、そうやってからかうから男はこういう台詞言えなくなるんだからな!? こういう記憶が後々にまで引きずるんだからな? また言われたいって思うんならからかうのはやめろよな……」

未央「あー、それは確かに困るね。うん、もう言わない。だから……また、絶対に言ってね? 具体的には、約一ヶ月後とか!」

P「それ、自分で催促するか?」

未央「するする。それで、言ってくれる?」

P「……そのときに思いついたらな」

未央「ん、よろしい。それじゃ、ロマンチックなシチュエーション、楽しみにしてるからね」

P「そこまでハードル上げられても困るからそこそこにしといてくれ」

未央「夜景の見えるホテルでディナーかぁ……」

P「現時点で高いな? もうちょっと下げてくれ」

未央「事務所でカップ麺かぁ……」

P「ひっく! 低いな!? 逆にそれでいいのか?」

未央「私はプロデューサーさえいればいいからね。……あ、今のポイント高くない?」

P「言わなかったらな? ……まあ、それなりに期待しててくれ。ホテルでディナーは……不可能じゃないが、しないけどな」

未央「……うん。期待しとく♪」



746 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2018/11/05(月) 06:59:32.42 ID:CW6dl2EU0
これにて今回は終了です。
ちょっと間が空きすぎちゃいました。勝利が約束された調理法ってあると思うんですけど、私の場合は照り焼きがそれに当たるんですよね。照り焼き味、好きです。
トゥインクルスター未央、めちゃくちゃにかわいいですね。あまりにもかわいい。「未央!」って感じがします。好きです。
ありがとうございました。
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 11:18:35.89 ID:Mx6Jel1oO

復旧後に帰って来てくれて嬉しい
748 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/07(月) 02:24:26.94 ID:Dw61O0Mh0
未央「思うんだけどさ」

P「ん?」

未央「おもちって、なんでついつい食べちゃうんだろうね」

P「……さあ?」

未央「あ、真面目に聞いてないな? アイドルとしては大問題ですよ、これは」

P「未央のことは信頼してるから大丈夫だよ。シルエットが崩れるほどは食べないし、食べたとしてもそのぶんちゃんと運動するだろ?」

未央「それは、まあ、そのつもりだけど……」

P「けど?」

未央「……信頼されるのは悪い気分じゃないけど、ちょっと重い、と言いますか」

P「重くしてるからな」

未央「あ、悪い」

P「あと、もちを食うことをせめられない理由がもう一つ」

未央「ほうほう。と言うと?」

P「わりと食べさせてる身で『もちだけは食うな』とも言えない」

未央「それは確かに」

P「――で、正月休みは満喫したか? 実家に帰るのも久しぶり……でも、ないかもしれないが」

未央「千葉だもん。近いからね。それでも、ゆっくりできたのは良かったかも。アイドルとしてはどうなんだー、とも思うけど」

P「毎年正月は休みなことも多いと思うが……いや、仕事があるときもあるけどな」

未央「お正月に放送される番組は事前に収録されるとは言っても、やっぱりそれだけじゃないもんねー。今年は比較的ゆっくりできたけど。受験勉強もないし」

P「大学は正月休みになんかあったっけか」

未央「私のところは特になかった……ハズ」

P「はず、か。まあ、未央のことだ、なんとかするって信頼してるが」

未央「うぐ……『信頼』って、裏切れなくするために言う言葉じゃないと思うんだけど」

P「未央もそういうこと言うことあるだろ? お互い様だって」

未央「お互い様かなぁ……」

P「それに、信頼するってことはいいことじゃないか?」

未央「いいこと、だけど……個人的には、やっぱり心配もしてほしいと言いますか」

P「してほしいのか」

未央「うん。信頼されるのは嬉しいけど、心配されたいし、疑われたい。それも、され過ぎると嫌だけど……ある程度は、やっぱり、してほしいかも」

P「そりゃまた、どうして」

未央「だって……心配するとか、疑うとかって、そのぶん、私のことを考えてくれているんだー、って感じしない?」

P「俺は未央のことを考えてないわけじゃないが」

未央「わかってるよ? でも……んん、なんて言えばいいんだろ。自分でも言葉がまとまらない……」

P「……そもそも、俺が未央のことをまったく心配も疑ってもいない、ってこともないんだがな」

未央「それはそれでフクザツ」

P「どっちだよ」

未央「どっちも? ほら、複雑な感情だから。言葉にできないものなのです」

P「そういうもんか?」

未央「そういうものです」
749 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/07(月) 02:26:20.00 ID:Dw61O0Mh0
P「そうか……いや、でも、俺もちょっとはわかるかもな。信頼されたいし心配されたいし疑われたい。信じることと疑うことは矛盾せずに両立する感情で、たぶん、濃淡しかないんだ。どっちが濃いか、どっちが淡いか。グラデーションでしかなくて……俺は何を言いたいんだ?」

未央「えぇ……そこで私に聞く? なんかいいこと言う風な前置きだったのに」

P「いいこと言おうと思ったんだが思いつかなかった」

未央「かっこわる……」

P「かっこわるいは傷つくからやめてほしい」

未央「プロデューサー、かっこいいよ☆」

P「めちゃくちゃ嘘くさい……」

未央「嘘だもん」

P「……それはそれでかなしい」

未央「わがままだなぁ。それで、けっきょくのところ?」

P「けっきょくのところ……未央には俺のことを考えてほしい、のかもしれない」

未央「つまり、私と同じ結論ってこと?」

P「あー……そうなるか。プロデューサーとしてはどうなんだってところもあるけどな」

未央「いやいや、いくら信頼できる人であっても完璧な人なんていないんだからある程度は心配したり疑ったりすることは必要だと思うよ?」

P「急に真面目な話になったな」

未央「未央ちゃんは真面目なので。くいっ」

P「眼鏡かけてもないのに眼鏡くいっとするな」

未央「かけてほしい?」

P「どうしてそうなるお願いします」

未央「お願いするんだ……」

P「かけてほしいからな。でも、メガネなんて都合よく持ってるもんか?」

未央「ファッション用とか変装用にね。あんまりかける機会はないけどさ」

P「確かにな。見ないことはないが、あんまりかけてるイメージはない」

未央「たまにかけるからこそ価値が出ることを狙っていたり……は、べつにしないけどね。それじゃあ、メガネ、装・着! じゃきーん!」

P「変身でもするのか?」

未央「眼鏡をかけるの、変身って感じするもん。それで、どうかな? メガネ未央ちゃん」

P「それは最高なんだが」

未央「さ、最高なんだ。……具体的にどのあたりが?」

P「ぜんぶかな……」

未央「おおぅ、即答……なんか、仕事のときみたいな素直さだね」

P「仕事のとき以外も素直だと思うが……うん。個人的に眼鏡をかけた女の子は好きだから、ってのあるかもしれない」

未央「私みたいに元気な女の子がメガネをかけると印象も変わっていい感じ?」

P「それもある」

未央「仕事のこと考えてる?」

P「……ちょっと」

未央「うわぁ」

P「引くな引くな。仕方ないだろ? 最高だったんだから」

未央「仕方ないかな? でも、仕事だとしたら……どんな感じ? 今までにもメガネをかけたことはあるけど……それとはまたべつの?」

P「んー……そのあたりはまだ考えてない。メガネかけた未央をもっと見てたいってだけだからな」

未央「言ってくれればいつでもかけるよ? もちろん、そのときのコーデとの兼ね合いもあるけどさ」

P「……魅力的な提案だが、未央の言う通りたまに見るからこそってこともあるかもしれないから遠慮しとく」
750 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/07(月) 02:28:36.78 ID:Dw61O0Mh0
未央「後にプロデューサーはこの選択をいたく後悔することになるのであった……」

P「嫌なナレーションやめろ。実際にそうなる気もするから」

未央「えへへ。気が変わったらいつでも言ってね? そのときは私の気も変わってるかもしれないけど」

P「変わってないことを祈るよ。……しかし、もちの話からめちゃくちゃ飛んできたな」

未央「だね。……とかなんとか言ってると、ちょうどおもちも焼けてきた感じかな」

P「だな。どうやって食べる?」

未央「うーん……私は家でもけっこう食べてきたからなー。プロデューサーは何食べたい?」

P「俺はいそべ焼きが食べたい気分かな。香ばしい醤油に海苔の風味が合わさったあの感じ。食欲がそそられる」

未央「お醤油のあのにおいって、妙にお腹が空いてきちゃうよねぇ。それじゃあ、最初は磯辺焼きといきましょうかー」

P「ああ。……ある程度、心配したほうがいいんだったか?」

未央「それはあとで。プロデューサーも、心配したほうがいい? お腹まわり、だらしなくなってないかー、とか」

P「……俺もあとで」

未央「ん、りょーかい。それじゃ、いただきます!」

P「いただきます」



751 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/07(月) 02:38:24.24 ID:Dw61O0Mh0
これにて今回は終了ですお久しぶりですすみません。
特別な事情などはなかったのですが誕生日に投稿できませんでした。さらに誕生日から一ヶ月以上も経過していると言う……あまりにも遅くなってしまったので今回は生存報告的な回です。閑話? いつもそうではありますが、いつもよりもなんでもない感じの話です。せっかくのおもちの話だったのでおもち()の話もしてほしかったかもです。個人的願望。

前回のあのフリから誕生日回を飛ばすのはどうなんだとも思いましたがなかなか書き上がりそうにないので今回の感じになりました。すみません。
余談ですが、誕生日回はちょっとお高い焼き鳥屋さんとかに行ってもらおうかなーと思ってました。いつか書けるかな……わかりません。

次回はまだ未定ですががんばりたいです。
ありがとうございました。
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/11(金) 02:50:36.42 ID:Em1tsrI5O
待ってた!
今年もよろしく
753 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/20(日) 18:19:45.79 ID:eq8ixgN30


「今日は何を食べようか」と彼が言ったので未央は「とんかつ!」と答えた。

 そういうわけで、とんかつを食べに行くことになった。

754 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/20(日) 18:21:33.08 ID:eq8ixgN30

――


「それで、どうしてとんかつなんだ?」

 歩き始めてから数分、プロデューサーが尋ねる。未央は指を唇に当てて「んー」と考え込んでから、「なんとなく?」と首を傾げた。

「なんとなくか」

 そう言ってプロデューサーは笑う。しかし、それは呆れたからではなく納得したからだろう。

 なんとなく、何かが食べたくなることはある。出そうと思えばそれ以外の理由も出せる。今回の場合であれば、『カツ』だけに次のオーディションの験担ぎにー、とか、最近寒いからー、とか、最近お肉をあんまり食べてなかったから久しぶりにガッツリいきたいと思ったからー、とか、油ものは食べすぎないようにしてるけどたまにはやっぱり食べたくなるからー、とか。理由なんて、後付でもいいのであればいくらでも出せるものだ。

 でも、それはやっぱり後付でしかない。最初からそう思っていたわけじゃない。後になって考えてみれば『これが理由だったのかもしれないなあ』なんてことはたくさんある。なんとなく、気付けば、そう思っていた。理由なんて、それだけで十分だろう。

 例えば……未央はプロデューサーのことを見る。彼に対する色々なものだって同じことだ。なんとなく、気付けば。後になって考えてみれば『これが理由だったのかもしれないなあ』なんてことはたくさんある。でも、それはやっぱり後付でしかない。確かにそう思っている。それだけがわかれば十分だ。

「ん? どうした、未央」

 視線に気付いたのだろう。彼の質問に未央は「なんでもなーい」と弾んだ声で答える。「そうか」と彼が言ってくれたので未央は「うん」とうなずく。

 なんでもないと言ったときは、たいてい何かあるときだ。ただ、言いたくなかったり、わざわざ言うことじゃなかったり。

 触れられてほしくないのなら、触れるべきではないでしょう? ……なんて。プロデューサーは、ほんとうに放っておいてほしいときには放っておいてくれなかったりするし――まあ、そういうときは、自分でも気付かなかったところでは放っておいてほしくなかったと思っていたりするんだけど。

「とんかつってさ」

「うん?」

「あんまり食べる機会ないかも。そう思わない? プロデューサー」

「そうか? ……いや、そうかもな。確かに、食べる機会はそんなにないか。カツ丼とかカツカレーとかのが食べる機会あるかもな」

「揚げ物って自分ひとりだとあんまり作らないし、食べに行くことそんなに多くはないし……カツサンドとかは、差し入れでもらったりとかするけど」

「あー……確かにな。あと、とんかつは出来たてがいちばんって印象もある」

「それはなんでもそうじゃない? って、そういうことが言いたいわけじゃないよね。ステーキとかと同じ理論かな。冷めると肉の脂が固まっちゃって……みたいな?」

「でも、カツサンドとかはちょっと置いたほうがうまい気がするんだよな……」

「それもそれでわかる……」

「まあ、とにかく、とんかつ単体ってなると思ったよりも食べる機会ないかもな、ってことだな」

 そういうことかもしれない。とんかつは『とんかつを食べよう』と思わないとなかなか食べないイメージがある。唐揚げとかだと、もうちょっと気軽に食べる気がするんだけど。

「唐揚げは色んなとこで売ってるもんな。他の揚げ物に比べると食べる機会は確かに多い」

「未央ちゃんと言えばフライドチキンですからねー」

「フライドチキンと唐揚げは違わないか?」

「違うけど……わかるじゃん?」

「わかるけど」

 わかるんじゃーん、と未央は笑う。それを見て彼も口元に笑みを浮かべたものだから、未央はますます楽しくなって、少し前に出てくるりと回る。

「いきなりどうした」

「どーしたんでしょーねー」

 後ろ手を組みながら、彼のほうを向いたまま歩く。しかし、その時間が長く続くことはない。
755 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/20(日) 18:22:33.68 ID:eq8ixgN30

「……後ろ向きに歩くな。危ないから」

 すぐに彼が非難するように眉を寄せてそう言うことはわかってたから。でも、それを素直に聞き入れるかと言えばまたべつの話だ。

「だよね。ここらへんはまだ一本道で大丈夫だとは思うけど、路地からいきなり人が飛び出してくることとかもあるかもしれないもんね」

「わかってるならさっさと前向いて歩け」

「えー。それは言葉じゃなくて、行動で示してほしいかなー、なんて」

「……お前なぁ」

 未央の思惑を察したのだろう。彼は呆れたように肩を落とし、「そんなことのために後ろ向きで歩くな」と唇を曲げる。

「ごめんごめん。もうやらないから、ね?」

「ね? って……そもそも、こんな回りくどいことしなくても言ってくれれば」

「してくれるの?」

 一歩踏み込み、下から見上げるようにして首を傾げる。彼は目をそらす。

「……最近は、割と、してるだろ」

 小さく唇を尖らせてそう言う彼を見ていると、かわいいような、ちょっといじめすぎたような、そんな感情が湧き上がって、「そうかもねー」と身を起こす。

「でも、わざわざ回りくどいことをしたいのもオトメゴコロというやつなのです」

「面倒くさいな」

「うん。そういう面倒くさいところにきゅんとしない?」

「しない」

 即答。そんな彼を見て、未央はふふっと笑い、

「うそつき」

 そう言って彼の腕にぎゅっと抱きつく。彼はそれに驚いた様子を見せながらも抵抗はせず、ただ不満を示すポーズのために口を結んだだけだった。

「プロデューサーって、素直じゃないよね」

 そんな彼を見て、未央は嬉しそうに笑う。

「未央も素直かって言ったらそうでもないだろ」

「それじゃあ、お互い様だ」

「かもな」

 彼は口元をゆるませて、未央はえへへーとだらしなく笑う。

 そうやって、ふたり、寄り添いながら歩いていく。



 ……って、なんだかこのまま終わるような雰囲気になっちゃってたけど、まだ店にも着いてなかった!
756 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/20(日) 18:24:32.44 ID:eq8ixgN30

――


「ほうほう……ここが今日のお店ですか」

『とんかつ』と書かれた暖簾を掲げた店の前、未央は腕を組んでふむふむと店の外観を眺めていた。どうしてか訳知り顔だが未央は店の外観を見ただけでどのような店なのか察する能力なんて持っていない。ので、プロデューサーは「そうだな」と適当に返して暖簾をくぐり、未央も「つめたーい」と言いながら彼に続いた。

 内観もそれほど珍しいものではない。調理場の前にカウンター席が並び、その向かいにテーブル席がふたつ……いや、奥にもひとつ見えるので合計でみっつか。

 カウンター席はすでに埋まっており、テーブル席も入口からすぐのところ以外は埋まっていた。どうやらけっこうな繁盛店のようだ。席が空いていたのは僥倖だ。

 上着をかけ、席に着く。メニューを開けば、そこにはいくつかの定食が。

「ロースにヒレ、それからチキンカツやミックスフライ。今の時期は牡蠣フライも、か……」

 牡蠣フライ。これは冬季限定だ。すべて人類は『限定』という言葉に弱いものだが、もちろん未央も弱かった。しかし、今日はとんかつを食べに来たのだ。初めての店ということもあるし、やはりとんかつをいただくべきだろう。

 となれば、あとは何のカツにするか、である。大きく分けるならロースかヒレということになるが、それぞれ『特』の名を冠する上位メニューが存在していた。なんならロースはグラム数別にもわけられている。

 これは……どうするべきなんだろうか。未央はとんかつの知識がそれほどあるわけではない。ちらりと彼の顔を見ると、彼もまた未央のことを見ていた。

「えっと……プロデューサーは、もう決まってる?」

「ああ。特ロースの三〇〇。この店ではこれがベストだ」

 ベストらしい。なら、私も……と思うけど、三〇〇ってけっこうおっきくない?

「そうだな。だいぶ大きい」

「だよね」

 食べきることができるかどうか……未央は考える。なんだかんだでいつもはだいたい食べきることができるのだが、三〇〇と数字で表されると尻込みしてしまう。でも、プロデューサーがベストって言ってるからなー……よし!

「私も、三〇〇にする。挑戦するよ、プロデューサー」

「挑戦か」

「うん。失敗したらよろしく」

 そういうことである。もしものときは彼がなんとかしてくれる。曰く、『信頼してるよ、プロデューサー!』とのことだ。

「どういう信頼だよ……」

「まあまあ。とりあえず、頼も?」

「……だな。すみません」

 プロデューサーが手を上げて店員を呼び、注文を伝える。店員が言うには揚げるまでにけっこうな時間がかかるらしい。三〇〇となれば分厚いとんかつであろうし、それを低温で揚げるのであれば時間がかかってしまうのも仕方ないことだろう。と言っても、ふたりで話していればそんな時間はすぐに過ぎる。
757 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/20(日) 18:25:33.93 ID:eq8ixgN30

 おまたせしました、とふたりに定食が供される。その中央、キャベツの山の麓に鎮座する、銀網の上に美しく並べられたそれを見て、未央は思わず目を丸くした。

 大きい。それが第一の感想であり、次の瞬間にはごくりと唾で喉を鳴らしていた。

 とんかつは合計六切れ。銀網をはみ出さんばかりの存在感を放ちながらも、断面を見せつけるように置かれた中央部の一切れによってそれが大きさだけのものではないことがわかる。衣は剥がれることなくぴったりと寄り添い、中心部はほんのりと赤い薄ピンク。脂が照明に照らされてきらきらと光る様はどこか淫靡ですらあった。

「……いただきます」

 手を合わせてそうつぶやいて、さあどうやって食べるか、と考える。

 まずは……やっぱりソースかな。未央は断面を見せつけるようにして置かれていた一切れを箸で持ち上げて、予想以上のずっしりとした重みに驚きながらもソース皿に入ったソースを付ける。そしてそのままかぶりつく。

「……んーっ!」

 ……おいしい! 唸るほどにおいしい。それが未央の感想だった。レアに仕上げられた肉の繊維はきめ細やかで柔らかく、噛んだ瞬間に脂の甘みと旨味が口いっぱいに広がっていく。噛みしめるごとに肉汁が溢れ、そして同時にとろけていく。

 柔らかいと言っても、そこに頼りなさなんてものは微塵も感じられない。肉々しく、弾力もある。この上なく『肉を食べている』と実感できる。

 ソースに負けず、喧嘩もせず、どちらの主張もはっきりとして両立している。たっぷりのソースをつけたこのとんかつで、艶々の白ごはんをかっこめば……これはもう、幸福以外の文字はない。

「はぁ……」

 数秒ほど、未央は感動に浸る。しかし、まだまだとんかつは残っている。今度は……塩だ。

 未央は今までの人生において塩でとんかつを食べたことなんてなかった。だが、このとんかつであれば塩で食べてもおいしいだろうとも思うことができた。

 一切れを寝かせて、断面に塩を振りかける。口を大きく開けて、それに思い切りかぶりつく。

「……ん」

 あー! こういうことかー! 未央は目を閉じて口いっぱいに広がる幸福を堪能しながら思う。とんかつに塩……合うね! 言うなればスイカに塩理論。ちょっと違うかもだけど、そんな感じ。塩のしょっぱさが肉本来の旨味甘みを引き立てているというか、引き出しているというか。ソースが互いに切磋琢磨しあうライバルみたいな存在だとすれば、塩は肉の良さを肉だけではたどりつけないところまで引き出す良き師匠だ。これはこれでめちゃくちゃおいしい。

 あー……これは迷う。すごく迷う。どっちもいい、けど……やっぱり、個人的にはソースかな。たっぷりつけたり、ちょっとだけつけたりして、それを白ごはんといっしょに食べるのがたまらなく気持ちいい。あと、関係ないけどそもそも白ごはんがめちゃくちゃおいしい。

 脳が喜んでいる。幸せを感じている。三大欲求のひとつは食欲で、それが今、確かに満たされていると心から思える。

「はぁ……」

 恍惚に、未央は全身から力を抜いて息を吐く。そして思った。

 ……とんかつって、こんなにおいしいものだったんだなぁ。

 と。
758 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/20(日) 18:26:46.75 ID:eq8ixgN30

――


「ふー……おいしかったけど、さすがにちょっと苦しいかも」

 結局、未央はとんかつをたいらげた。なんならごはんをおかわりすらしてしまった。さすがに食べ過ぎたー、とお腹をさする。心なしか、ちょっと膨らんでいるような気もする。

「満足したか?」

「した!」

 それはもう。肉の甘み旨味たっぷりの分厚いとんかつに芳醇なソースをたっぷりつけて白ごはんといっしょに頬張っちゃって。これで満足するなっていうほうが無理な話だ。

「ただ、次に来るとしても同じの頼んじゃいそうなんだよね」

 他のメニューも気になってはいるのだ。とんかつがこれだけおいしかったのだから他のものもおいしいと思う。他の人が頼んでた海老フライとかおいしそうだったし……貝柱とかもおいしそうだったなぁ。牡蠣フライも気になるし……でも、このとんかつを食べておいて他のものは頼めない。主に胃の容量的に。

「あ、でも」

 そうだ、と未央は目を輝かせて彼を見る。いきなりそんな視線をぶつけられたものだから、彼は不思議そうな顔をして、

「なんだ?」

「いやー……プロデューサーの言う通り、ここのとんかつは三〇〇がベストっていうのは、身をもって勉強させていただきました」

 あの大きさだからこその食感なのだろう。絶妙な火入れを堪能するためには三〇〇を頼むしかないが、そうするとさすがに他のものは頼めない。というか、とんかつだけでもちょっと苦しくなるくらいだし個人的にはもうちょっと量が少ないと嬉しい。

 そこで、だ。

「そこで! 次にここに来るときは、三〇〇をシェアしながら他のメニューもシェアすることを具申します!」

 ひとりで食べれば三〇〇だけでお腹いっぱいになってしまう。他のメニューも気になるが、ここに来ればほぼ間違いなく同じものが食べたくなってしまうだろう。

 しかし、ふたりなら違う。三〇〇の味を堪能しながらも別のメニューを頼むことができる。

「ああ、確かにいいかもな。ここは他のメニューもすこぶるうまいが、三〇〇の魔力に惹かれてなかなか手が出ないんだ。しかし、食べてすぐ次の、って」

 彼がころころと喉に声を転がせて笑う。確かに、自分でもちょっと食い意地はってるかなーって思うけど……おいしかったんだもん。お腹いっぱいでも、次に来たときのことを考えちゃうくらいに。

「そうか。そこまで気に入ってくれたなら良かったよ」

「うん。連れてきてくれてありがと、プロデューサー」

「どういたしまして」

 でも、ほんとうにおいしかった。私はソースのほうが好きだったけど、塩もすごくおいしかったし……そう言えば。

「プロデューサーって、塩だよね」

「は? いや、確かにここのだとどちらかと言えば塩のが好きだが……いきなりなんだよ」

「んー? ちょっと、思っただけ」

 意味がわからないと彼が喉を鳴らす。そりゃわからないだろう。プロデューサーが塩、だなんて。

 とんかつは、ソースのほうが好きだったけど……うん。

「私も、塩、好きだよ」

「お、そうか。まあ、素材がいいからってのもあるんだろうけどな。塩で食べてうまいってことは肉がうまいってことだ」

 だから、こういうところでこそだよな、と彼は笑う。素材自体が良くないと、か。……そういう意味で言っているわけじゃないってことくらいわかってる。でも。

「……えへへ」

 笑みをこぼして、未央はぴたりとプロデューサーにくっついた。

「どうした?」

「ちょっと、くっつきたくなっちゃって」

「……そうか」

「そうなのです」

 剥がれることなくぴたりと寄り添い、歩いていく。

 そんなふたりの顔は、ほのかに赤く染まっていた。



759 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/01/20(日) 18:36:28.19 ID:eq8ixgN30
これにて今回は終了です。

こんな形式ではありますが特別な回というわけではないですし、たぶん今回だけ……だと思います。どうしてか台本形式で書くとなかなか進まなかったので「じゃあちょっと違った書き方でやってみよう」と思った次第です。

とんかつもとんかつで色々とありますよね。火入れ加減とか衣の加減とかも好みでけっこう違うような気がします。ソースでいただくか、塩でいただくか、というのも……からしもつけるかどうか悩みます。味噌とかもありますよね。他にも店ごとに変わった調味料を出すところもあって……あまりとんかつを食べる機会はないのですが、そういったところは面白楽しく、なんだかいいな、って思います。ごはんはおいしく炊いておいてほしい……でもおいしすぎるとおかわりしたくなっちゃうので悩ましい……。

最近他の子に登場してもらってないような気がするのでそろそろ登場してもらってもいいかもですね。いつになるかは……。

ありがとうございました。
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/21(月) 08:52:15.25 ID:R+BlTvnMo
おつ
761 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/02/28(木) 22:02:31.87 ID:qFtfRU3L0
未央「2月28日ってさ」

P「ん?」

未央「2+28だから……30だよね?」

P「『だよね』って言われても困るが」

未央「つまり……私の日なのでは?」

P「こじつけがひどい」

未央「えー。ここは『そうだな!』って乗ってくれないと」

P「そうだな。未央の日だな。で、未央の日だったらなんなんだ?」

未央「なんかうれしい」

P「……そうだな」

未央「あ、プロデューサーってば、なに笑ってるの? ちょっと失礼じゃないかなー」

P「悪い悪い。でも、その理屈なら毎月未央の日がありそうだな」

未央「うんうん。だから毎月未央の日は未央ちゃんをかわいがらなければなりませんなー」

P「どうしてそうなる」

未央「かわいがってくれないの?」

P「……それはちょっとずるくないか?」

未央「ふむふむ……今のはプロデューサーに効果的、っと」

P「学習するな」

未央「わかってないなぁ。こういった地道な努力が実を結ぶのだよ」

P「何の実だよ」

未央「愛の実? なんちゃってー。……そう言えば、アイスの実っておいしいよね」

P「いきなりだな。まあ、おいしいけど」

未央「この季節にする話じゃないかな?」

P「冬に食べるアイスがおいしいとか、前に言ってたことなかったか?」

未央「言ってたような、言ってなかったような……でも、冬こそアイスっていうのはあるよね。夏は夏で、もちろんおいしいんだけど」

P「夏よりも溶ける心配が少ないしな」

未央「それも重要なポイント! うーん……こんな話をしていたからか、あったかい部屋でアイスを食べたくなってきたような……ちらっ」

P「はいはい。じゃあ買って帰るとしますか」

未央「しまーす♪」
762 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/02/28(木) 22:03:02.99 ID:qFtfRU3L0

――コンビニ

P「アイス以外に何か買うか?」

未央「いいの? それなら……しょっぱいものかな?」

P「甘いものにはやっぱりしょっぱいものって?」

未央「そうそう。アイスなら……あったかいものならもっといいかな?」

P「つまりホットスナック系か」

未央「そういうことに……なりますねぇ……」

P「何のノリだよ。……ホットスナックな。未央なら」

未央「フライドチキン!」

P「だよな。べつに決まってるわけじゃないんだろうが」

未央「実際、違うの食べることもあるからねー。でも今日のところはフライドチキンで」

P「ん。俺は……肉まんとかにしとくか」

未央「はんぶんこ?」

P「するする」

未央「フライドチキンもはんぶんこ……は、しにくいか」

P「俺はべつにいいぞ? 気にするなって」

未央「そう言われても気にしちゃうのが未央ちゃんだったり。……ポッキーゲームみたいな感じで反対側から食べる?」

P「フライドチキンで? それなら切り分けたほうがいいだろ」

未央「それかもう二個買っちゃうとか」

P「あー……それがいいかもな。量があるわけでもないし」

未央「そのぶん夜は少なめにしなきゃだけどね?」

P「わかってるわかってる」

未央「ほんとかなー? プロデューサーも健康には気を遣わなくちゃダメだよ?」

P「食べないよりはマシだろ? ……ごめんごめん。本当に、ちゃんとするよ」

未央「……うん、よろしい。って、そんなこと言っといてこれから買おうとしているものはぜんぜん健康によろしくないものなわけですが」

P「それは言うな」
763 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/02/28(木) 22:14:50.20 ID:qFtfRU3L0

――

未央「まずはやっぱりしょっぱいのから?」

P「かな。ほれ、肉まん」

未央「ん、ありがと。……冬って、肉まんの季節かもね」

P「冬と言えばコンビニの肉まんって?」

未央「うん。ふたつに割って湯気がぶわーって上るところとか、冬だなーって感じしない?」

P「わからなくもない。高校生とかが買い食いしてるイメージがなんか強いな」

未央「漫画とかアニメとかで?」

P「漫画とかアニメとかで」

未央「……プロデューサーにはそういう経験」

P「あると思うか?」

未央「ですよねー。未央ちゃんも……ないわけじゃない? かも」

P「未央はありそうな気もするな。いつもいつもフライドチキンってわけでもなかっただろうし」

未央「……羨ましい?」

P「いや、べつに。今更だろ」

未央「まあまあ、今日のところは未央ちゃんがいっしょにいるんだから、そんなに落ち込まないでってー」

P「落ち込んでないんだが……これ言うと『またまた〜』とか言われそうだな」

未央「またまたー」

P「本当に言うなよ……」

未央「いや、今のは言うでしょ。明らかにフリだったじゃん」

P「じゃあどうすればよかったんだよ……」

未央「あの状況になった時点で詰みだよね。肯定したらそのまま進む、否定したら『逆に怪しい』とか言われて進む……ほんと、どうすればいいんだろうね?」

P「だいたい否定しようもないことだったりするしな。否定するための証拠を出せない」

未央「困るよね」

P「俺は現在進行系で困ってるけどな」

未央「えへへ」

P「えへへじゃない。……いつまでもこんなこと言ってると冷めるな。さっさと食べるか」

未央「そだね。じゃあ、いただきます」

P「いただきます……って、こういうのに言うか?」

未央「細かいことは気にしなーい」

P「……それもそうだな」

未央「……ん、おいしい。スナック感覚で食べれるこの味がまたいいよね」

P「本格的な中華まんとはまた違ったジャンルだよな」

未央「そうそう。……じゃ、次はフライドチキン……フライドチキン!」

P「んっ。……いきなりなんだよ、びっくりしたわ」

未央「いやー、やっぱりやっておかなきゃいけないと思いまして」

P「何をだよ……」

未央「……ふむふむ、やはりここのフライドチキンは他のコンビニのより塩気の強い味わい……」

P「食べてるし。……俺も食べるか」

未央「……」モグモグ

P「……」モグモグ

未央「……ふたりとも食べてたら黙っちゃうね」

P「食べてるからな……」
764 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/02/28(木) 22:15:18.55 ID:qFtfRU3L0
未央「それじゃ、最後はアイス!」

P「実?」

未央「実! 今日のはカフェオレ味!」

P「お、その味か。俺の好みだ」

未央「お? じゃあプロデューサーから食べる? あーん」

P「べつに未央からでもいいが……まあ、もらうよ」

未央「あっ! ……『あーん』って言わずにとった」

P「言う必要ないだろ? ……うん、やっぱりうまい」

未央「必要はないけどさぁ……私も食べよ」

P「食感が良いよな。外側……皮の部分と中の部分で違っていて、それがまた楽しくおいしい」

未央「ふぉれふぉれ」

P「口にもの入れたまましゃべるなよ…‥」

未央「んぅ……それそれ。この食感が絶妙なんだよねー。味によっても違う気はするけど……この味はほんとに『カフェオレ』って感じがするね。口の中にカフェオレ味がやさしく広がって、なんか落ち着く」

P「果物の印象は強いし実際果物のもおいしいんだが、この味はいいよな。個人的ヒットかもしれない」

未央「お? 買いだめしちゃう?」

P「割と迷うな……」

未央「おおう、迷うレベル。ほんとにヒットしてるんだね」

P「ホームラン級だな」

未央「ヒットを超えた……」

P「でも、あんまりアイスを買ってもアレか……」チラッ

未央「ん? ……ああ、そゆこと。私はべつにいいと思うよ。節度を守れば。アイスってあんまり賞味期限とか関係ないって言うし、ゆっくり食べれば」

P「健康には良くないかもしれないが」

未央「食べ過ぎれば、でしょ? ……そうだ、プロデューサーが食べるときは私もいっしょに食べるってことで。それならプロデューサーも体調を崩すほどは食べないでしょ?」

P「それ、未央が食べたいだけじゃ」

未央「それは言わない約束で」

P「……うん。じゃあ、そうさせてもらおうかな。ありがとな、未央」

未央「どういたしまして。……でも、ほんとにおいしいね。落ち着く味」

P「ああ。……落ち着く」



765 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/02/28(木) 22:19:16.62 ID:qFtfRU3L0
これにて今回は終了です。
短いですが今月中に一度は、と思いまして……。

このアイス好きです。どの味もおいしい。食感が良いですよね。うまいなぁって思います。

最近色々とアレなので未央にいやされたいです。みおみおみお……。

ありがとうございました。
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 17:42:29.26 ID:Vzlop5YCo
767 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:06:13.37 ID:THD5E2Sp0
未央「やむちゃかぁ……」

りあむ「りあむちゃんだよ! あの未央ちゃんにも名前を覚えてもらえてないなんて……やむ……でも覚えてくれるならやむちゃでもいいかも……」

未央「いや、りあむちゃんのことを言ってるわけじゃなくてね? 飲茶、食べたいなーと思って……まあ、りあむちゃんを見て連想したのは確かだけど」

りあむ「ぼく、食べられる!? ……未央ちゃんにならいいかも」

あきら「ダメでしょ。何言ってるんデスか、りあむサン」

未央「お、すなちー。おつかれー」

あきら「お疲れ様デス」

あかり「お疲れ様です!」

未央「あかりんごも。辻砂夢勢揃いですなー」

あきら「#辻砂夢 #何」

未央「違った? なんか、よくいっしょにいるイメージだから……」

りあむ「!?!!?!?!?! ぼ、ぼくと、ふたりがよくいっしょにいるイメージ……? ま、マジか……そんなことが……」

あかり「確かに、ふたりとはよくいっしょにいるかも……? でも、辻砂夢……あんまりかわいくないような……りんごとも関係ないし」

未央「じゃあ、りんごマスク餃子」

あきら「自分、マスクなんだ……」

未央「りんごサメ餃子」

あきら「#サメ要素 #歯だけ」
768 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:07:06.91 ID:THD5E2Sp0
未央「ユニット名とか、あればいいんだけどねー。……ユニット組む予定、ある?」

P「ライブ用のユニットなら一回組んだけどな。『ネクストニューカマー』で」

未央「アレはちょっと違くない? わかってて言ってるんだろうけどさー」

あかり「あ、プロデューサーさん! お疲れ様です!」

あきら「お疲れ様デス」

りあむ「Pサマ! ちょ、ちょいちょい、来て」コソコソ

P「? ……なんだよ」

りあむ「ぼ、ぼくとあかりちゃんとあきらちゃんって、どう思う? 仲良く見える? どう? どう? い、いや、ぼくなんかと仲良く見えるなんて言ったらあかりちゃんとあきらちゃんに失礼かもって思うんだけど未央ちゃんがよくいっしょにいるイメージって言ってたからもしかしてと思って……ぼ、ぼく今恥ずかしいこと言ったかな? 的外れなこと言った? まったくそんなことないのに勝手に思い上がって調子に乗っちゃったかな? な? そ、そうだよね、ぼくなんかが誰かと仲良くできるわけないよね……やむ……」

P「やむな。りあむ、お前は、本当……人の話を聞く気がないな。口を挟む間もなく自分の中で自分にとって都合の悪い結論をつける。予防線のつもりかもしれないが、悪い癖だな」

りあむ「……しょうがないじゃん。ぼくだって、こんな自分にはなりたくなかったよぅ」

P「ならまずは人の話を聞け。……あかりとあきらとりあむは、俺の前から見ても仲良く見えるよ。『ぼくなんかと仲良く見えるなんて言ったら失礼』って、それこそふたりに失礼だろ」

未央「そうそう。それに、私ももうりあむちゃんとは友達だと思ってるし! 私よりもいっしょにいるあかりんごとすなちーがそう思ってないわけないじゃん? ね!」

あかり「は、はい! りあむさんとは、友達だと思うんご!」

あきら「……まあ、友達なんじゃないデスかね。こういうこと改めて言うのって、ちょっと恥ずかしいデスけど」

りあむ「ふ、ふたりとも……! 良い子すぎる! 天使か!? アイドルか!? いやアイドルだった! 推せる!!!!!!!」

P「友達じゃなくてファンになっちゃったよ」

未央「まあ、りあむちゃんらしいと言えばらしい……のかな?」
769 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:08:21.21 ID:THD5E2Sp0
りあむ「……一安心したら、なんかお腹へってきた」

あきら「……は?」

りあむ「Pサマ! どっか連れてって!」

P「お前……べつにいいんだが、あかり、どこがいい?」

あかり「私!? なしてや! あ、じゃなくって、なんでですかっ?」

P「やっぱりラーメンか?」

あかり「ど、どうしてラーメン……好きですけど」

未央「そう言えば、この前も三人で行ったって言ってたっけ?」

P「ん、そうか。ならラーメン以外のほうがいいか?」

あかり「わ、私は、ラーメンでもいいんご!」

あきら「自分もべつにいいデスよ。映える店?」

P「『映える』店、か……なら、候補はあるな。餃子もおいしい」

りあむ「餃子!」

未央「餃子かー。ちょうど食べたかったんだよね。やむちゃだし」

りあむ「……未央ちゃんに『食べたかった』って言われると、なんか照れるな?」

P「何がだよ……」

あきら「それで、行くの? ラーメン屋」

りあむ「行く!」

あかり「行きます!」

未央「行こー!」

P「満場一致だな。……行くか」
770 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:08:53.35 ID:THD5E2Sp0

――店の前

あきら「ん、いいカンジ」

あかり「わぁ……おしゃれな店……さすが都会……」

りあむ「……こ、ここ、ぼくが入っていいやつ? 門前払いとかされないかな? な!?」

未央「されないって。さあさあ、五名様ご案内〜♪」

P「なんでお前が案内してるんだよ」
771 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:10:31.02 ID:THD5E2Sp0

――店の中

未央「ラーメンの種類としては……醤油? なんか、変なメニュー名だけど」

りあむ「あ! ぼく知ってる! こういうの意識たかもごごごご!」

P「りあむ、お前な……」

あきら「#炎上 #不可避」

あかり「え? え? りあむさん、どうしたんですか?」

未央「あかりんご、君は知らなくてもいい……君には綺麗なままでいてほしい……」

あかり「……?」

P「まあ、それはそれとして、だ。メニューは何にする?」

りあむ「そのメニューがよくわからないんだけど……」

未央「んー……ぜんぶ醤油だけど、種類としては醤油の濃さ? あと、ベースのスープとかも違うのかな。説明だけじゃ、よくわからないけど」

P「未央の言う通り、大まかに言えば醤油の濃さの違いだな。定番はいちばん最初に書いてある淡麗の……いちばんあっさりしたスープか。初めて食べるなら俺もこれだと思う」

りあむ「Pサマが言うならそれで。あと餃子も!」

あきら「異議なし。自分もそれで」

あかり「あっ、私もそれでお願いするんご!」

未央「んー……他のも気になるところではあるけど、私もそれかなー」

P「わかった。りあむ以外は、餃子はどうする?」

りあむ「餃子だよ? 食べたほうがいいよ! Pサマがおいしいって保証してるんだもん! たぶんおいしいよ! ……あ、もしもそんなにだったとしてもぼくは責任とらないけどね。そのときはPサマのせいと言うことで……」

P「……まあ、俺のせいでもいいが、どうする?」

あかり「おいしいなら、食べたいなぁ……」

未央「私も!」

あきら「……自分はマスクがあるからいいけど、においとか、気にしないの?」

あかり「あっ」

りあむ「……ぎょ、餃子って、そんなににおいするものかな? な? ぼく、もしかしていつも餃子くさかった? めっちゃやむ!」

未央「ここのはにんにく入ってないみたいだよ? たぶんにおいは大丈夫なんじゃないかなー」

りあむ「にんにく入ってないんだ……個人的にはそういう気遣いよりも味重視がいいかも……」

P「お前……いや、気持ちはわからなくもないが、入ってなくてもおいしいからな?」

あきら「それで、結局どうするんです? みんな餃子は……頼むってことね。それじゃ、注文しますか。すみません」

P「んっ……先に言われた」

あかり「あきらちゃん、物怖じしなくてすごいんご!」

あきら「#店員さん #呼んだだけ」

りあむ「ぼくはむりだが……?」

未央「無理なんだ……」
772 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:11:32.67 ID:THD5E2Sp0

――

未央「お、来た来た」

あきら「……映えてる」

あかり「す、すごい丼に入ってるんご……なんか、縦長い……?」

りあむ「食べにくそう」

P「それは否定できない」

未央「ん、餃子も……塩で?」

りあむ「塩……塩かぁ……まあ、なくはないかな」

P「何目線だよ」

あきら「映えてる」

未央「すなちーめっちゃそれ言うね? まあ、私も写真は撮るんだけどー……みんなも入る? プロデューサー以外」

あかり「入るんご! あ、私のでも写真撮ってほしいです……」

りあむ「えっえっ、ぼ、ぼくも入っていいの? 邪魔にならない? 画面の中にこんなピンク入ってたら邪魔にならない?」

P「そうだな。目立つかもな」

りあむ「ぼくも入らせてほしい!!!!!!!!!!!!!!!!」

あかり「了解。それじゃ、撮るよ。……」パシャ

未央「お、すなちーの写真はそういう感じかー……未央ちゃんも負けてはいられません。それじゃ、未央ちゃんバージョン……さん、にー、いち……」パシャリ

P「……うん、うまい」

りあむ「あー! Pサマもう食べてる! ぼくも食べたい! なんかめっちゃいいにおいするし! 伸びちゃうし!」

未央「そだね。それじゃ、私たちもいただきますか」

あかり「いただきます!」

あきら「……いただきます」

りあむ「んー! これめっちゃおいしい! 正直どうなんだろうって思ってたんだけど、意識高いだけあるな! おいしい……しゅき……」

あきら「……りあむサン」

りあむ「え、え? なに? ぼ、ぼくもいただきます言ったよ? みんなより早かったかもだけど、それはPサマもいっしょだし……なんだよぅ!」

あきら「いえ……特には」

りあむ「それ絶対何かあるやつだよね! ぼく知ってる! めっちゃやむ!」
773 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:12:26.80 ID:THD5E2Sp0
あかり「ふわぁ……これ、うんめなぁ……」

あきら「……」

あかり「……はっ! じゃ、じゃなくって、おいしい! すっごくおいしいです! さすが都会のラーメン……! 都会って感じの味がします!」

あきら「#都会って感じの味 #何」

未央「まあまあ、すなちーも早く食べなよ。ほんとにおいしいよ?」

あきら「……それじゃ、自分も。まずは、スープから。……」ズズ

あきら「……ん! 確かにおいしい!」

あかり「……えへへ」

あきら「……いきなり笑って、どうしたの?」

あかり「え? えっと……あきらちゃんがおいしそうに食べてるから、良かったなって」

あきら「……そういうこと言うのは、ちょっと恥ずかしいと思う」

あかり「えっ!? だ、ダメだった?」

あきら「……そんなこと、ない、けど。……恥ずかしいだけで、嬉しい、かも」

あかり「……そ、そっか。それなら、よかったんご!」

あきら「#んご #台無し」

あかり「なしてや!?」

りあむ「……と、尊い。いや、ちょっと意味違うけど……顔が良いアイドルと顔が良いアイドルが仲良くしてると、やっぱり……良い……しゅき……」

未央「……この三人って、いっつもこんな感じ?」

P「そんなことは……あるかもなぁ……」

未央「でも、このラーメンは本当においしいね。どちらかと言うと『甘い』系のスープかな。甘みは旨みって言うけど、このスープはそんな感じするね。甘いのは甘いんだけど、くどいわけじゃなくて……嫌味がないと言うか? とにかく、おいしい」

P「飲んですぐに『おいしい』ってわかる系のスープだよな。口に入れた瞬間に口の中に旨味が広がる。ここ最近の流行と言えば流行だな。俺は好きだが」

未央「私も好き。まあ『流行』って言っても最近のラーメンにも色々あるらしいし?」

P「確かに色々あるな。淡麗系のスープもよく見るが、それ以外にも」

未央「それ以上は話が長くなりそうだから終わりで」

P「……はい」

りあむ「ん! 餃子、思ったよりおいしい! 塩ってどうなんだろうって思ってたけど……これは、そもそも餡がおいしいのかな。塩をつけなくてもおいしそうだけど……でも、塩分っておいしいからなー。これはこれで大事っぽい。ぼくの思う『餃子』とはちょっと違うけど、これはこれでアリだなー」

あきら「……うん。確かに、この餃子はいいかも。ラーメンの味とも合ってるし」

あかり「んめなぁ……」

P「御眼鏡に適ったようで何よりだ。俺は塩多めに付けるのが好きなんだが……こう視覚化されると塩分が気になりもするんだよなぁ……」

未央「プロデューサー、すっごくスープ飲んでるけど?」

P「スープは塩が見えないから……」

未央「……ね、プロデューサー」

P「……なんだ?」

未央「健康に、気をつけよう!」

P「……善処します」
774 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:13:43.20 ID:THD5E2Sp0

――店の外

りあむ「はー……おいしかった……しあわせ……これ、夢か……夢なのか……? 幸せ過ぎてこわい……」

あきら「現実」

あかり「プロデューサーさん! 今日はありがとうございました! とってもおいしかったんご!」

P「どういたしまして。よろこんでくれたなら良かったよ」

未央「うむ! 三人とも、これを糧に、明日からも頑張るのじゃぞ!」

P「誰だよ……」

あきら「#誰」

未央「本田未央ちゃんだよ! 私をすこれよ?」

りあむ「それぼくのやつ! ……いや、ぼくのやつではないか……」

未央「りあむちゃんのことは私がすこるよ!」

りあむ「……!? ま、マジか……嘘じゃない……? 嘘だったらめっちゃやむよ……?」

未央「ほんとほんと。未央ちゃんウソツカナイ」

あきら「#つきそう」

未央「ウソジャナイヨー。未央ちゃんほど信頼できる人は他にいないって評判ダヨー」

あきら「誰に」

未央「あーちゃんとか」

あきら「あー……」

未央「しぶりんにはよく怒られるけど」

あきら「#嘘ついてそう」

P「それで、あかりたちはこれからどうする? 何も予定はなかったと思うが……」

あかり「とりあえず女子寮に帰って……うーん、どうしようかなー」

あきら「……ゲーム、やる? 確か女子寮に多人数用のがあったはずだし」

あかり「いいの? 私、あんまりゲームは得意じゃないと思うけど……」

あきら「自分も専門のゲームじゃないし……大丈夫だと思うけど」

あかり「そ、それならお願いするんご! えへへ……楽しみだなぁ……」

りあむ「……チラッ。……チラッチラッ」

あきら「……りあむさんも来ます?」

りあむ「いいの!? ぼ、ぼく、女子寮組じゃないけど……Pサマ!」

P「申請すれば問題ない」

りあむ「……申請か……」

P「……やっとくから行っとけ」

りあむ「さすがPサマ! P神!」

あきら「#P神 #何 #ダサい」

P「あーもう。うるさい。三人で何のゲームするかでも話しとけ」

りあむ「Pサマが怒ったー。ふたりとも。逃げよう!」

あきら「撤退の見極めは大事」

あかり「んご!」

タッタッタ……
775 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:14:45.90 ID:THD5E2Sp0
未央「おおー、行ってる行ってる。若いっていいですなぁ」

P「未央も若いだろ。体力も今なら未央のがあるだろうしな」

未央「先輩面したいだけですから」

P「先輩面したいだけって言っちゃったよ」

未央「……プロデューサーは、ゲーム、しないの?」

P「さすがに女子寮までは行かないって」

未央「ふぅん……事務所の休憩室で、私とゲーム、する?」

P「時間があれば」

未央「素直じゃないなぁ。したいならしたいって言えばいいのに。思ってるだけじゃ伝わるものも伝わりませんよ?」

P「じゃあ、したい」

未央「いきなり『シたい』なんて……プロデューサー、強引すぎるよっ」

P「は?」

未央「マジトーンはやめて」

P「未央がいきなり変なこと言うからだろ……」

未央「……私は、プロデューサーとしたいな」

P「……は?」

未央「ゲームっ! あはっ、プロデューサー、顔赤くなってるよ? いったい何と勘違いしたのかなー?」

P「……今のは明らかに未央が悪いだろ」

未央「責任転嫁はよくないなー。……プロデューサーのえっち」

P「……えっちだよ」

未央「……え?」

P「俺はえっちだよ。悪いか?」

未央「ひ、開き直った……!?」

P「未央はどうなんだ? えっちじゃないって言えるか?」

未央「私は……まあ、えっちですけど?」

P「恥ずかしくないのか?」

未央「それをプロデューサーが言いますか?」

P「……」

未央「……」

P「……ふっ」

未央「……あはっ」

P「いったい何を言い合ってるんだろうな」

未央「ほんとほんと。ふたりしてえっちって言い合って……どんな会話だよー、ってね」

P「……そろそろ急がないと、あいつらに追いつけなくなるな」

未央「だね。それでは……競争だーっ!」

P「走るほどじゃないと思うが……まあ、いいか。あいつらを追い抜かしてやろう」

未央「お、プロデューサー、やる気だね? 私は負けないよ?」

P「俺も負ける気は……ない!」

未央「ふっふっふ……勝負相手として不足なし! よーい……どん!」



776 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/05/19(日) 21:17:07.83 ID:THD5E2Sp0
これにて今回は終了です。
お久しぶりです。めちゃくちゃ久しぶり。書き始めたらそこそこ早いんですけど……なかなか。
今回はあかり→ラーメンで夢見→餃子ってことでラーメンと餃子です。あきらちゃんごめんね。
次回は……いつになるかなぁ……わからないです。

ありがとうございました。
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/20(月) 03:27:45.58 ID:sj/JAL0so
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/21(火) 13:51:26.53 ID:I+IQ+0du0
さて、シリーズで一番豪華な食事に行くことになるのかな?
779 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/07/25(木) 04:23:40.89 ID:sq4+Xz6k0
未央「……えへへ」

P「どうした? 未央」

未央「んー? ……いやー、シンデレラガールなんだー、と思って」

P「まだ慣れないか?」

未央「実はね。ちょっとだけ。でも、みんなが応援してくれたから……だもんね。『私はシンデレラガールなんだー!』って気持ちでいたいとは思っています」

P「弁護士にアドバイスもらって言質とられないよう言葉選びに気をつけてる会見みたいな言い方だな」

未央「そう言うプロデューサーは芸人のマネをしようとして会話の中で下手なツッコミをしようとしてる素人さん」

P「おまっ……それ、本気で傷つくやつだろ……」

未央「傷ついちゃった? ミオニウム補給する?」

P「どうやって?」

未央「とある筋からの話だと、この髪の外ハネをぴょんぴょんすると放出されるみたい」

P「どの筋だよ……と言うか自分の身体のことだろ」

未央「それとも、ぎゅーっと抱きつく、とか」

P「それはなし」

未央「えー」

P「『えー』じゃない。……この後の予定だが」

未央「ごはん? ……シンデレラガールですし、豪華なものだったり」

P「しないな」

未央「お、しないんだ。プロデューサーのことだから、なんかすごいもの用意してたりしてくれるのかなーと思ってた。プロデューサー、そういうの好きだし」

P「もうこれ以上ないものをしたつもりだからな。俺だけじゃないが……あれ以上のものをっていうのは無理だろ」

未央「……そだね。たとえどんな店だって、あのとき以上のものはないと思う」

P「だろ? 俺は勝ち目のない勝負はしない主義なんだ」

未央「それは懸命な判断です。……それはそれとして」

P「ごはんは食べたい?」

未央「それそれ。プロデューサーわかってるぅー」

P「そりゃな。……何が食べたい?」

未央「んー……それじゃ、ひとりとか、みんなとは、ちょっと行きにくいところ……とか」

P「それは、つまり」

未央「つまり、プロデューサーとふたりじゃないと行きにくいところ、かな」

P「……わかったよ。それじゃ、そういうところで考えてみるか。シンデレラガールを連れて行くには不相応かもしれないが」

未央「未央ちゃんを連れて行くには?」

P「……だな。ごめん未央。変なこと言ったな」

未央「構いませんとも。、まあ、おいしくないお店だったら構うかもしれませんけど?」

P「それなら安心してくれ。俺が保証する。絶対うまい」

未央「お、プロデューサーがそこまで言うとは……これは期待ができるかも」

P「未央の俺のイメージはなんなんだよ」

未央「不用意に言質とられないよう断言を避けがちなインターネットがうまい人」

P「それ本気で傷つくからやめてくれないか?」
780 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/07/25(木) 04:24:20.66 ID:sq4+Xz6k0

――店の前

未央「中華ですか」

P「中華だな」

未央「街の中華料理屋さん……お昼なら大丈夫だと思うけど、確かに夜は……地元のとかじゃないと、ちょっと入りにくいかも?」

P「入れる人は普通に入れるとは思うんだが……」

未央「それを言ったらどの店でもそうでしょ? 私がどうか、って話だもん。変なところで不安にならないの」

P「性分なんだよ」

未央「知ってる。だから言ってるの」

P「いつも悪いな」

未央「それは言わない約束ですよー」
781 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/07/25(木) 04:25:53.00 ID:sq4+Xz6k0

――店の中

未央「おおー……ほんとに、すっごく街の中華屋さん、って感じだね。コテコテでんがな」

P「エセ関西弁やめろ。……そうだな。常連さんも多いし、アットホームな雰囲気だしな」

未央「でも、すっごく繁盛してて……いい感じだね。テーブルも赤いし」

P「それ重要か?」

未央「なんか、中華屋さんって赤いテーブルのイメージない?」

P「まあ、あるけど」

未央「お客さんがいっぱい。テーブルが赤い。これはもういいお店と言っても過言ではないでしょう!」

P「『お客さんがいっぱい』に比べてテーブルの色がどうでもよすぎる」

未央「それで、メニューだけど……あ、あそこか」

P「だな。……何にする?」

未央「んー……いつものことだけど、プロデューサーのおすすめは?」

P「炒飯だな。蟹玉炒飯。これがうまい」

未央「すっごくパラパラしてるとか?」

P「そういうベクトルじゃないんだよ。でも、うまい」

未央「ほうほう……それじゃ、炒飯は頼むとして、他には?」

P「んー……俺はレバニラとか好きだが」

未央「レバニラかー……私、あんまり食べたことないかも」

P「レバーだから? いや、ニラもか」

未央「そういうこと。べつに苦手意識があるわけじゃないけど、わざわざ頼まないと言うか」

P「あー……それはわかるな。俺も、何かのきっかけで食べないと今も頼んでなかったかもしれないし……未央は何か食べたいものとかないのか?」

未央「そうだなぁ……あ、エビ。エビの天ぷら!」

P「お、それも良いな。……肉がほしいな。ここは……肉団子の唐揚げを」

未央「肉団子の……唐揚げ? ちょっと珍しいね」

P「そうか? ……そうかもな。肉団子と言えば甘酢あんかけってイメージも大きいか」

未央「そうそう。でも、プロデューサーが頼むってことはおいしいんでしょ? それも頼も?」

P「ああ、そうさせてもらう。……あと一品くらい頼むか?」

未央「それじゃ、蒸し鶏で!」

P「お、良いな。それじゃ、これで注文するか」

未央「……プロデューサー、もしかしてこれ、飲みたいラインナップ?」

P「飲まないけどな。……飲めるようになったら、また来るか」

未央「うん。そのときは、お酒の楽しみ方も手取り足取り教えて、ね?」
782 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/07/25(木) 04:30:39.35 ID:sq4+Xz6k0

――

P「まずはエビか」

未央「海老天……良いビジュアルだね。小さいエビがくりっとなってて、中華屋さんの海老天だーって感じ」

P「衣もいい感じだよな。それじゃ、まあ……いただきます」

未央「いただきまーす」

未央(うーん……この、見るからに『海老天』って感じのビジュアル。でも、小奇麗な感じじゃなくて、むしろちょっと無骨な感じ)

未央(これがまた『街の中華屋さん』って感じがして良い……なんて思っちゃうのは現代人の郷愁みたいなものなのか。郷愁って言っても自分が体験したものじゃなくて映画とか漫画とかで追体験したものでしかないわけですけれども)

未央(とりあえず、揚げたてだし、早速食べさせてもらおう。まずいは一口……)パクッ

未央「……ん」

未央(あー……おいしい。これはおいしい。衣はサクッと軽いんだけど、エビはぷりっとして……でもエビもそこまで大きくないからすぐ口の中からなくなって)

未央(これ、ひょいひょい食べられちゃうなぁ。パクッ、サクッ、ぷりっ、ごくん。パクッ、サクッ、ぷりっ、ごくん。このループが続いちゃう)

P「次、蒸し鶏来たぞ」

未央「お、どんどん来るね、ってもう食べてる。ずるーい」

P「……うまい」

未央「聞いてないし。いいもん、未央ちゃんもいただいちゃうもーん」

未央(えっと、プロデューサーは……岩塩をつけて食べてたっけ。それじゃ、ちょっと付けて……)パクリ

未央「……んー!」

未央(うまー! これはおいしいなぁ、すごくおいしい。すっごくやわらかくて、弾力もあって……大きく切り分けられた、皮のついた鶏肉をがぶりと頬張ると、それだけでもう気持ちいい。大きなお肉にかぶりつくって、なんだかそれだけで一種の幸福感があるよね)

未央(噛むごとにじんわりと旨味が広がって……皮もまた良いんだよね。おいしい。何にも奇をてらったところなんてない味なんだけど、塩気と旨味、食感が絶妙で……ほんと、めちゃくちゃおいしい)

未央(はぁ……しあわせー……っと、いつの間にか肉団子が。これもちょっといただきましょう)

未央(でも、これは……何と言うか、素朴なビジュアル。肉団子を揚げただけ、って感じ。悪く言えばちょっと地味だ。でも、こういうのにこそ……)パクッ

未央「……うん」

未央(おいしいんだよねぇ……。なんか、食べた瞬間『うまい!』って感じる味じゃなくて、じんわりと、ほっとするおいしさと言うか……安心するおいしさだ……)

未央(表面はサクッと気持ちよく、豚肉と野菜……玉ねぎかな。その旨味甘みがじゅわっと広がる。口の中に入れた瞬間に肉汁があふれる……みたいな感じではなくて、ほんとうに、安心するおいしさ……なんだけど、どうしてかめちゃくちゃおいしい。バランスが……絶妙……なんか今日それしか思ってない気がする……)

未央(こんなに『街の中華屋さん』って感じのビジュアルで、実際出てくる料理もそうなんだけど……クオリティがめちゃくちゃ高い……こういう店もあるものだね)
783 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/07/25(木) 04:31:13.31 ID:sq4+Xz6k0
未央(あ、レバニラも来てる。それと……炒飯も来た。ここは……炒飯からかな。プロデューサーはもうレバニラに手を付けてるっぽいけど)

未央(蟹玉炒飯……カニ玉が乗っかってるとかじゃなくて、蟹肉と卵が入った炒飯だ。このお玉の丸い形! これぞ『中華屋さんの炒飯』だよねー)

未央(さすがに外見だけじゃわからないけど……さてさて、お味は……)パクリ

未央「……んー!」

未央(これはおいしい! プロデューサーがいの一番に挙げたのもうなずけるおいしさだ。すっごくパラパラだったりするのかなー、と思ってたんだけど、むしろしっとりとしてる炒飯だ)

未央(いや、もちろん米粒がくっついてたりはしてなくて、そこを考えるとパラッともしてるんだけど……べちゃついてないんだけど、しっとりと、ふんわりとしていて……ものすごくおいしい。カニも良いんだよね。そこそこ入ってるし、風味も良いし……蟹肉の上品な甘さがなんだか合ってる。これもまた、バランスが良いなぁ……たまらない)

未央(食べてみた感じ、何も特別なことはしていないように思えるのに、ものすごくおいしい。シンプルなものほど奥深いとは言うけれど、それを実感している気がする……)

未央(……それじゃ、レバニラも……ん、プロデューサー、レバニラ、炒飯といっしょに食べてる。そういう食べ方もアリかー。ごはんが欲しくなる味……なのかな? またはお酒)

未央(せっかくだし、レバーもニラもたくさん取って……)パクッ

未央「……んん」

未央(こういう感じかー。おいしい。あと、確かにごはん進みそう。気持ちいいニラの食感と、やわらかいレバーの食感。臭みはほとんど感じなくて、代わりに旨味とコクが広がってくる。味付けも良いなぁ……これはごはんが欲しくなる。炒飯頼んでなかったら白ごはん頼んでたかも)

未央(でも、この炒飯は炒飯だけで食べたいような気も……でも、このレバニラにきっとごはんが……ええい、ままよ!)パクッ

未央「……んぅ〜!」

未央(あー、おいしい! おいしいよー! やっぱり合う! 合うね! レバニラ単体でもおいしかったけど、ごはんといっしょだと……たまらない。それもただのごはんじゃない。絶品炒飯だ。おいしいものとおいしいものを加えたからってめちゃくちゃおいしいものになるとは限らない世の中だけど、これに関しては成功だ。この世界にまた一つおいしいものが生まれてしまった……)

未央(あー……もう。ここまでぜんぶおいしいと、他にも色々と食べたくなっちゃうな……)

未央(……あ! 冷麺もあったんだ……冷麺頼んでもよかったかも……でも、さすがにこれ以上は……)

未央「……プロデューサー」

P「ん? どうした」

未央「ここ、また来たい。頼んでないの、気になるもん」

P「……だな。誰かといっしょだと普段は頼まないメニューも頼めるだろうし、俺としても助かる。それで、気になるのって例えば?」

未央「冷麺!」

P「夏季限定か! ……これは、思ったより近いうちにまた来ることになるかもな」
784 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/07/25(木) 04:33:23.08 ID:sq4+Xz6k0

――店の外

未央「おいしかったー……ここ、すっごく良いお店だね」

P「ああ。こういう『街の中華屋さん』ってところでめちゃくちゃおいしいものが出てくるって、一種の憧れだよな。こういうところがあると、まだまだ知らないおいしい店っていっぱいあるんだろうなって思えてくる」

未央「そういうの、なんか、良いね。……私たちが知らない街にも、人はいっぱい住んでいて、人が住んでるんだから、やっぱりそこにはお店もあって……そんな中に、こういうお店もあったりして」

P「そう考えると、ほんと、すごいことだよな。世界の広さを感じるよ」

未央「ごはん屋さんで?」

P「ごはん屋さんで」

未央「……なんか、さ」

P「ん?」

未央「お祝いって言ったら豪華なお店ー、みたいなイメージがやっぱりあるんだけど……こういうお店で好きなものを好きなように、って言うのもアリだよね」

P「……そうだな。ここは普段遣いできる店だと思うが、それ以外で使えないってわけじゃない。まあ、ゆっくりくつろぐってなると難しいかもしれないが」

未央「うん。……私、また、ここで……こういうところで、お祝い、したいな。格式高いお店じゃなくても、おいしいお店なら満足できて……ずっと、そんなふうにいられたらいいな」

P「……そうだな。どこでだって、良い店なら満足できる。そんなふうにいたいと思う」

未央「そっか。……ね、プロデューサー」

P「なんだ? 未央」

未央「いっしょに、付き合ってくれる?」

P「もちろん。ずっと、付き合うよ」

未央「……えへへ。プロデューサーなら、そう言ってくれるって思ってた」

P「そうか? ……まあ、そうか」

未央「うんっ。……改めて、これからもよろしくね、プロデューサー」

P「こちらこそ。これからもよろしく、未央」



785 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/07/25(木) 04:47:40.82 ID:sq4+Xz6k0
これにて今回は終了です。
また間があいてしまいました。シンデレラガール記念回……かと言うとちょっと微妙?
お祝い回ってことで原点回帰的な意味もこめてラーメン……は前回したので、そういうの関係ない感じになりました。
お祝いっぽく豪勢に! ってのもちょっと考えてはいたんですが、CGのアレ見ると「これはちょっと越えられないなぁ」となり今回の方針に。
中華、おいしいですよね。『街の中華料理』って感じの、好きです。おいしい中華を食べたい……。
次回は……夏が終わるまでには……。

ありがとうございました。
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/27(土) 23:13:47.64 ID:5ANRsZrlO
おつ 町の中華屋いいよね
787 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/10/13(日) 01:27:56.93 ID:7Ens5TJq0
未央「子どもの頃に好きだったお店があってね。この前、久しぶりにひとりで行ってみたわけですよ」

P「へえ。それで? どうだったんだ?」

未央「それが……思っていたほどおいしくなかったんだよね。いや、もちろん、おいしくはあったんだけど、思い出ほどではなかったと言いますか」

P「あー……そういう経験は俺にもあるな。その店がどうこうってわけじゃないんだよな。変わったのは自分のほうで……他の色んなものの味を知ったから、なのか」

未央「ということは、プロデューサーのせい?」

P「……可能性はあるな。そう考えると、なんかめちゃくちゃ申し訳ないことをしたような気が……」

未央「えー? なんで? そんなに申し訳ない気持ちになる?」

P「だって、そういうのって大事だろ? せっかくの思い出の味が、実際に食べてみるとあんまりだった、って……経験あるだけに、俺も悲しいってわかるから」

未央「そういうものかな? あ、さっきの話には続きがあるんだけど、そのお店の他のメニューを初めて食べてみたらめちゃくちゃおいしかったんだよね。思い出の味バージョンアップ」

P「……お前な」

未央「その顔はなにかな? 思い出の味がーっていうのは変わってないと思うけど?」

P「それは……まあ、そうなんだが」

未央「そうなんだが?」

P「……なんか、釈然としない」

未央「ぁは、それはそうかもね。申し訳ない損した感じ?」

P「申し訳ない損ってなんだよ。……そんな感じだが」

未央「そんな感じなんじゃーん。さすが未央ちゃん。以心伝心だね」

P「以心伝心か? ……あ」

未央「ん? どしたの、プロデューサー」

P「いや、俺にとって思い出の味って言ったらここかもな、と思ってな」

未央「ここ? ……あ、ここか。でも、ここは思い出の味ってより青春の味じゃない?」

P「青春ももう思い出みたいなもんだからな。未央は……最近も来るか?」

未央「んー……そう言えば、大学に入ってからは一回も来てないかも。高校の頃とかならドリンクバーで友達とー、みたいなのもよくあったけど」

P「……なんか、久しぶりにここで食べたくなってきたな」

未央「そうする? 私もそんな気分になってきたし」

P「じゃ、入るか」

未央「ん、りょーかい。……何にしよっかな。やっぱりドリア?」

P「……昔、それふたつ頼むこととかあったなぁ」
788 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/10/13(日) 01:30:16.96 ID:7Ens5TJq0

――店の中

未央「これこれ、この感じですよ。実家に帰ってきた気持ちとはこのことか」

P「大げさだな……で、何にする?」

未央「プロデューサーはやっぱりドリアダブルなの?」

P「それはしない。……なんか、メニューが変わってるような、変わってないような」

未央「そう? あ、でも、私がよく行ってる間でちょっと変わったことあったから……それかな?」

P「かもしれない。……だとすると、俺、ずいぶんと来てなかったんだな」

未央「かもね。それで、何にする?」

P「んー……生ハムがうまいって言うよな。それは頼みたいな。俺はあんまり食べたことなかったが」

未央「そうなの? 私はここの生ハム、けっこう好きだよ」

P「昔は量重視だったからなぁ……なんか、あんまり選ばなかったんだよな。いっつもドリア食ってたような気がする」

未央「なんだかんだでそうなったりするよね。でも、ちょっと意外かも」

P「意外? 何が?」

未央「プロデューサー、けっこう色んなもの頼むタイプだと思ってたから」

P「そうか? ……まあ、そうかもな。ただ、店によるって感じだな。他にもそういう店はあるよ。パッと出てこないが」

未央「店による、か。……確かに、そういうもんだよね」

P「今日は今まで頼んでこなかったのを頼むつもりだけどな」

未央「たとえば?」

P「……未央のオススメとか」

未央「未央ちゃんセレクトに頼りますかー。まあ、ここは私のほうが詳しそうですし? 私に任せなさーい」

P「うん、任せる。……エスカルゴってずっと気になってたんだが、どうなんだ?」

未央「それは私も食べたことない」

P「いきなり任せられない案件出たな……」

未央「だってこれ『みんな気になりつつもなかなか頼めないメニュー』ランキング一位みたいな感じじゃない? おいしいらしいって情報だけは聞くみたいな」

P「……頼んでみるか」

未央「そうしよう、そうしよう。あと辛味チキンとか?」

P「それは食べたことある。俺も確か好きだった」

未央「食べたことあるんだ。……頼む?」

P「頼もう。久しぶりだしな。頼んだことないのも頼みたいが定番のも頼みたい」

未央「思い出の味だし? それじゃあ、後は……私、ディアボラ風のってけっこう好きなんだよね」

P「あー、俺も好きだったな。鶏のとか好きだった」

未央「チキンとチキンが被ってしまったな……」

P「俺の中では別の種類だから大丈夫」

未央「別の種類かな? まあ、味は違うけど」

789 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/10/13(日) 01:30:51.81 ID:7Ens5TJq0
P「他に未央のオススメは?」

未央「パスタとか? ここのパスタ、けっこうおいしいと思うんだよねー」

P「俺はペペロンチーノダブルの記憶が強いな……おいしかったけど」

未央「ペペロンチーノにする?」

P「んー……イカスミってどうなんだ?」

未央「おいしかったと思う。……あんまり食べたことないけど」

P「ん、ないのか」

未央「いや、だって……口がね」

P「あー……」

未央「でも、頼もっか。って、なんか色んなものシェアする前提で話してるけど……」

P「いいんじゃないか? でも、シェアするならもうちょっと他にも頼みたいような気も……」

未央「シェアしやすいのってなるとピザとか?」

P「ピザか……それもいいいかもな」

未央「モッツァレラのでいい?」

P「ああ。……あとは、サラダとか頼むか?」

未央「サラダかー……個人的には小エビか青豆を推したいところ」

P「青豆……おいしいって聞いたことはあるな」

未央「お、食べたことない? それじゃ頼も? 量あんまりないからひとり一個で!」

P「じゃあ、そうするか。……これくらいでいいか?」

未央「いいんじゃない? 注文、する?」

P「しよう。ボタンは……そっちか。頼む」

未央「ん。それじゃ、押しちゃうね」
790 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/10/13(日) 01:35:50.82 ID:7Ens5TJq0

――

未央「まずは青豆だね」

P「だな。……これ、グリーンピースだよな?」

未央「うん。プロデューサーってグリーンピースはどう?」

P「べつに嫌いじゃないな」

未央「お、そうなんだ。嫌いだったら衝撃を受けるかもしれないお味……みたいだけど、違うんだったら衝撃は受けないかもね」

P「『みたい』って、食べたことあるんじゃなかったのか?」

未央「私もべつに嫌いじゃないから……でも、確かにそうかもとは思うかなー」

P「どういう意味だ?」

未央「食べてみればわかると思う。『あ、これは確かにグリーンピース嫌いな人でも大丈夫かも』って」

P「……じゃあ、とりあえず、いただきます」

未央「私も、いただきまーす」

未央(ということで、半熟卵を割って、青豆と混ぜて……食べる)パクッ

未央(……うん。これこれ。これだよねー。グリーンピースはグリーンピースなんだけど、青臭さとかボソボソ感とかがないと言うか……おいしいグリーンピースって感じ)

未央(『めちゃくちゃおいしい!』ってタイプの味じゃないんだけど、『あ、おいしい』ってなるタイプの味と言うか。なんだか安心する味だよね。あと、健康になってる感じがする。たぶん気のせいだけど)

P「あー……確かに、これはおいしいな。この豆自体がおいしい。やわらかくて、優しい甘さがある。それに温玉とベーコン……パンチェッタだったか? あんまり入ってはいないんだが、このちょっとの塩気がいい感じに効いてるんだろうな。これは、なかなかだな……」

未央「でしょ? これにチーズとかオリーブオイルとか合わせてもおいしかったりするんだよね」

P「アレンジもあるのか……と言うか、ここは色々とアレンジも効く店だったか。俺は出てきたものをそのまま食べることが多かったが……」

未央「ドリンクバーでも?」

P「ドリンクバーは……無難な混ぜ方ならしたことがある」

未央「へぇ……」

P「……未央」

未央「んー? その目はなにかな?」

P「するなよ」

未央「ナンノコトカナー」

P「……はぁ。次、エスカルゴ食べるか」

未央「ん、そうしよそうしよ? ……なんか、貝みたいなビジュアル?」

P「……言われてみればそうだな。サザエとかそういうタイプの」

未央「あー、ちょっと近いかも。実際に食べてみてもそんな感じなのかな?」

P「かもしれないな。どっちにしろ、食べてみればわかるか」

未央「だね。それじゃ、一個もらい」パクッ
791 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/10/13(日) 01:36:30.86 ID:7Ens5TJq0
未央(ふむふむ……ん、こういう感じかー)

未央(やっぱり歯ごたえは貝っぽい感じ。くにくにしてていい感じ。味は……ソースの味が強いかな。ガーリックっぽい? あとバター? 野菜もあるけど……メニューでプチフォッカとセットでーって載ってたような気がするけど、確かに合うかも)

P「こういう感じか。俺は結構好きだな。未央は?」

未央「私も。けっこう好き。だけど……頼むかどうかはちょっと迷うかなー」

P「来る人数にもよるか」

未央「うん。シェアするなら? とは思う。それと私はチキン派なので」モグモグ

P「……いつの間に」

未央「あー……これがおいしいんだよね。サクッとした皮にジューシーなお肉。辛さは正直ほとんど感じないけど、スパイスっぽい感じはして。とにかく、おいしい」

P「まあ、俺も好きだけどな? ……食べるか」

未央「……あ、プロデューサー、グラス空いてるよ?」

P「ん? ああ、確かに――」

未央「入れてきてあげる!」

P「んっ!? ちょ、未央、待……!」

P「……まあ、いいか」

P「……チキンうま」モグモグ
792 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/10/13(日) 01:37:45.52 ID:7Ens5TJq0

――店の外

未央「いやー、思い出の味だったね、プロデューサー!」

P「未央は思い出ってほど時間経ってるか?」

未央「微妙? でも、プロデューサーにとってはそうでしょ?」

P「それは……そうだな。学生時代を思い出したよ」

未央「青春の味?」

P「だな。俺に青春があったかと言うと微妙なところだが」

未央「反応に困る返答だ……まあまあ、今日未央ちゃんといっしょに青春したってことで、青春アップデート!」

P「青春……たとえば?」

未央「ドリンクバーとか?」

P「ドリンクバーか……」

未央「うん? なにかなその反応は。未央ちゃんミックス、おいしかったでしょ?」

P「まずくはなかったけどな……俺はふつうのでいい」

未央「でも、楽しかったでしょ?」

P「……それは、否定できないかもな」

未央「……えへへ。素直でよろしい♪」

P「……今日のも、また思い出の味になるのかもな」

未央「かな? また来たら『思い出』にはならないんじゃない?」

P「……そうだな。また来ればいいか。べつに来るのが難しい店ってわけでもないんだし」

未央「そうそう。そのときは未央ちゃんも付き合ってあげましょう」

P「来たいだけだろ」

未央「バレた? ……でも、プロデューサーも、私のこと、連れて来たいでしょ?」

P「……ノーコメント」

未央「えー? 素直じゃないなぁ」

P「悪いか?」

未央「ううん。それはそれでかわいいのでオッケーです」

P「……かわいいはやめてくれ」

未央「ちなみに素直でもかわいい」

P「どうしようもないな」

未央「うん、どうしよーもないっ」

P「……なんでちょっと嬉しそうなんだよ」

未央「えへへ。どうしてでしょうねー?」

P「……ほんと、どうしてだろうな」



793 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/10/13(日) 01:42:09.64 ID:7Ens5TJq0
これにて今回は終了です。

まためちゃくちゃ久しぶりになってしまいました。そのくせちょっと短めと言う。
次回は……誕生日までに少なくとも一回は更新したい……。

ありがとうございました。
794 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 22:59:42.71 ID:D3C3PKle0
卯月「未央ちゃん、誕生日おめでとうございます!」

凛「おめでとう、未央」

未央「やーやー、ありがとう、ありがとう。今日は未央ちゃんのために集まってもらって……ぐすっ、私、感動で……」

凛「それ何のノリ?」

P「照れ隠し」

凛「ああ」

未央「ちょ、勝手に納得しないでくれるかな? べつに照れてなかったけどむしろそれに照れちゃうから」

卯月「未央ちゃん……」フフッ

未央「しまむー? その笑顔がいちばん破壊力あるね? なにその『わかってます』みたいな顔……私誕生日だよね?」

凛「だから祝ってるじゃん」

P「うん。めでたい」

未央「気持ちがこもってない……!」

卯月「伝わってませんでしたか……?」

未央「しまむーやめて。しまむーが言うとなんかマジっぽいから。もう酔ってる?」

卯月「まだ一滴も飲んでないから大丈夫です!」

未央「大丈夫……なのかな……」

P「しかし、未央も二十歳か……時が流れるのは早いな」

凛「プロデューサーもおじさんになっちゃったって?」

P「そうだな。俺はもうとっくにおじさんだよ」

未央「ということは、プロデューサーと同い年のアイドルは……?」

P「お前それ絶対外で言うなよ」

未央「プロデューサーがおじさんとか言うからじゃーん」

P「じゃあおじさんじゃない」

凛「プロデューサー、その歳で『おじさんじゃない』は……ちょっと」

P「俺はどう答えれば正解だったんだよ……」

卯月「ふふっ、どうすればいいんでしょうね?」

P「ほんとにな……」
795 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:00:30.95 ID:D3C3PKle0
未央「それでは、今日の誕生日会場はとある個室居酒屋さんなわけですけれども」

凛「なにその説明口調。司会?」

P「本日の主役兼司会か……」

卯月「未央ちゃんらしいですね!」

凛「それ褒め言葉?」

未央「こほん! とにかく、皆様、今日はお忙しいところ集まってくださってほんとーにありがとうございます!」

P「ほんとに司会になっちゃったよ」

卯月「そう言えば、未央ちゃん、前にバラエティ番組の司会をやってましたよね。あれ、すっごく面白かったなぁ……」

凛「卯月、マイペース過ぎない?」

未央「名司会者を目指してますから」

凛「アイドルは?」

未央「トップアイドル兼名女優兼名司会者を目指してますから」

凛「なんか増えてる……」

P「ああ……いっしょに目指そうな、未央……!」

凛「なんか熱くなってる……」

卯月「未央ちゃん……私、応援します! 頑張ってください!」

凛「冷静なの私だけかな」

未央「クール属性だけに? どっ!」

凛「今の『どっ』何?」

未央「大爆笑の表現」

凛「なんだか寒いね。冬だからかな」

未央「そこまで言う? ごめんなさい」
796 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:02:21.70 ID:D3C3PKle0
P「……そろそろメニュー選ばないか? 頼んでからでも話はできるし」

未央「ん、そうだね。私は生!」

凛「ビール? やっぱり初めてのお酒はビールなんだね」

未央「お酒と言えばビールってイメージありますからねー。おいしいって話もよく聞きますし」

卯月「……初めてビールを飲んだときは『これで大人の仲間入り』って思ったなぁ」

凛「それで、卯月は大人になれたの?」

卯月「うーん……む、難しい質問ですね」

P「難しい質問だな。そう言う凛はどうなんだ?」

凛「どうなんだろうね。昔と比べると少しは成長したと思ってるけど……大人になってるかどうかはわからないかな。飲む前と後で変わったところがあるとすれば……」

未央「あるとすれば?」

凛「……これは未央がお酒を飲んでから話そうかな」

未央「む、焦らされた」

卯月「焦らしますね、凛ちゃん」

凛「うん。おあずけ」
797 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:03:46.46 ID:D3C3PKle0
P「……!」

未央「……うん? どうしたの? プロデューサー」

P「いや……今の凛の『おあずけ』、めちゃくちゃかわいくなかったか?」

凛「……は?」

卯月「かわいかったです! 私も思ってました!」

凛「ちょ、卯月まで。もう……」

未央「わたモゴッ!? モゴモゴモゴモゴ!」

凛「うるさい」

未央「……そ、それにしても先手で手を塞ぐことはないんじゃないかな?」

凛「……で、未央は生らしいけど、私たちは何頼もっか」

未央「スルー!? ちょ、本日の主役をスルーはなくない? ……あ、もしかしてこれも『おあずけ』っていう」

凛「居酒屋ってあんまり来ないかも。プロデューサー、おすすめは?」

P「んー、好きなの頼めばいいんじゃないか? ここは……確か、海鮮がうまかったかな」

卯月「ということは……お刺身とか?」

未央「ほんとに無視して進めてる! 唐揚げ! ビールには唐揚げってよく聞くから!」

凛「確かに唐揚げは多いかも。サラダは?」

P「ポテサラがうまい」

未央「お、ポテサラですかー。……お酒に合うの?」

P「酒飲みはなんでも合うって言うからな……」

卯月「お酒の種類にもよるんじゃないかな? ビールには……ポテサラの味付けにもよりそうです」

凛「ここのはどうなの?」

P「んー……ちょっと甘めかもな。ブラックペッパーもかけることはできる」

卯月「じゃあ……どうでしょう?」

未央「ってわからないんかい」

凛「卯月もそこまでお酒飲まないからね」

P「凛もそこまで飲まないだろ?」

凛「飲むときは飲むよ」

卯月「それなら私もそうですよ?」
798 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:04:24.60 ID:D3C3PKle0
凛「……それで、他には?」

未央「あ、逃げた。んー……あ、だしまき。だし巻きとかどう?」

P「お、いいな。じゃあそれも頼むってことで……個人的には煮付けとか欲しい」

卯月「うーん……お刺身、唐揚げ、ポテトサラダ、煮付け、それにだし巻きたまご。四人だったら……もうちょっと?」

凛「べつに後で頼んでもいいけどね。……枝豆も欲しいな」

未央「後で頼まないの? でも私も欲しいからさんせーい」

P「……とりあえず、これくらいにしとくか。足りなかったら追加で頼めばいいし、あんまり頼んでもテーブルいっぱいになっちゃうしな」

凛「今の時点でけっこういっぱいになりそうだけどね」

卯月「確かに!」

未央「しまむーの おいうち プロデューサーに つうこんのいちげき」

P「いや、べつに俺のせいじゃないし……とりあえず、頼むか」

未央「はーい。……そう言えば、ビールって私の他に誰が頼むの?」

凛「私はいいかな」

卯月「私も他のにします」

P「俺は……そうだな、ビールで」

未央「ん! それじゃ、注文しよっか。えっと、ベルを押して……」

未央「……店員さん! 生ふたつで!」
799 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:05:22.21 ID:D3C3PKle0

――

未央「おお……ほ、ほんとうに来ちゃった。来ちゃったよ、プロデューサー!」

P「テンション高いな。……でも、そんなもんか」

未央「そんなもんだよ。だって、初めてのお酒だもん……Foooooooooo!」

P「高すぎる」

凛「近所迷惑」

卯月「こわいです」

未央「ごめんなさい」

凛「……それじゃ、乾杯、する?」

未央「しますします! しちゃいまーす!」

P「それじゃ卯月、音頭を」

卯月「えぇっ! 私ですか!?」

未央「うむ。頼むよ、しまむー」

凛「誰」

未央「シンデレラガールさま」

P「めちゃくちゃ印象悪いシンデレラガールだな……」

未央「しまむーが?」

卯月「なんでぇ!?」

凛「その理論だと三人とも当てはまらない?」

P「……そう考えると贅沢すぎるな、このテーブル」

未央「プロデューサーのぜいたくものー」

凛「そうだね。ぜいたくもの」

卯月「そうだそうだー♪」

P「卯月まで乗らないでくれ。かわいいけど」

未央「しかし、シンデレラガールを三人集めて来るのが居酒屋とは……」

P「未央のリクエストだろ? 『いつもみんなで行ってる感じのお店』って」

未央「それはそうですけれども」

凛「プロデューサー、店、探してたのにね」

卯月「そうなんですか?」

凛「ほら、前に……」

卯月「あー……」

P「バラすな」

未央「探してくれてたの?」

P「……まあ」

未央「……そっか」

凛「卯月」

卯月「はい! それでは、未央ちゃんの誕生日を祝って、かんぱーい♪」

凛「乾杯」

未央「えっ? か、かんぱーい!」

P「……乾杯」
800 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:06:21.04 ID:D3C3PKle0
卯月「……ふぅ。このお酒、おいしいです」

凛「うん。私のも、飲みやすい」

P「……っぷは。うん、うまい」

卯月「……それじゃあ」

凛「うん」

P「未央、どうぞ」

未央「……そ、そんなに注目しなくても」

卯月「未央ちゃんのはじめてですから!」

凛「卯月、その言い方はちょっと」

P「未央のはじめてか……そりゃ見逃せないな」

凛「酔ってる?」

P「酔ってない」

未央「……じゃ、じゃあ、いただきます」

卯月「はい♪」

未央(……初めての、お酒。初めての、ビール)

未央(うーん……いざこうなると感動もひとしお、と言うよりはちょっと緊張すると言うか)

未央「……ええい、ままよ!」ゴクッ

未央「……」

未央(……こ、これは……!)

卯月「……どうですか?」

未央「……にがい」

未央(……うん。にがい。正直、あんまりおいしくない)

未央(あれー……? こういうのなの? ビールって)

未央(……いや、待てよ。確か、のどごしを楽しむ……みたいなことを聞いたことがあるような)

未央(もしかしたら、一気に飲むことで初めて良さがわかるのかもしれない……いざ!)ゴクッゴクッ

未央「っぷはー! うん! 変わんない!」

未央(わかんない! 良さ、わかんない! ……期待してたのにー!)

P「まあ、初めてのビールはなぁ……そんなもんだよなぁ」

凛「そんなもんだよね」

卯月「ですね」

未央「……プロデューサー、これ、何がおいしいの?」

P「……のどごし?」

未央「どこが? 炭酸だったらジュースでも飲んでおけばよくない?」

P「いや、違う、違うんだよ。ジュースじゃだめなんだよ。でも……何がうまいかって聞かれると、正直」

凛「麦の味が、とかじゃないの?」

P「正直俺は麦の味とかよくわからないからな……」

未央「えー……しまむーとしぶりんは?」

卯月「私は……あんまり、ビールが得意じゃないので」

凛「私もすすんでは飲まないかな。あと、お酒自体まだそんなに飲んでないし」
801 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:07:01.05 ID:D3C3PKle0
未央「……そう言えば、しぶりん。飲む前と後で変わったことってなんだったの?」

凛「『ビールはあんまりおいしくない』って知ってるか知ってないか、かな」

未央「……なんか、騙されたような気分なんだけど」

卯月「……わ、私の、飲んでみます?」

未央「……のむ」

P「飲むのか」

未央「のまなきゃやってられないもん」

凛「どこかで聞いたような台詞を……」

未央「しまむーのは……なんだっけ? ピーチ……なんとか?」

卯月「ピーチフィズですね! ピーチと……なんでしたっけ?」

P「桃のリキュールをソーダで割ったカクテルだな。そもそも『フィズ』って言うのは」

凛「その説明長くなりそう?」

P「……やめときます」

凛「よろしい」

未央「……とりあえず、いただきます」

未央(桃の……って、どんな感じなんだろう。やっぱりちょっと苦いのかな?)

未央(……とりあえず、飲んでみよう)ゴクッ

未央「……あ、おいしい」

未央(桃の香りがする。でも、そんなに甘みが強いわけじゃなくって……ちょっと爽やか? 酸味があるような……これは、確かに飲みやすいかも)

P「ピーチフィズはアルコール度数が比較的低いのも特徴だな。飲みやすいカクテルってのは度数が高いのもそこそこあるんだが、これに関してはそれほど気にしなくてもいい。と言っても、もちろん飲みすぎには注意が必要だが……そう言えば、未央、気分は悪くないか?」

未央「うん? 平気だけど……どうして?」

P「アルコールはダメな人はほんとうにダメだからな……未央はどうかな、と思って」

未央「たぶん大丈夫だよ? 大学でやったパッチテストでもそんな感じの結果出たし」

P「……そう言えば、大学でそんなのあったか」

凛「高校でもあったような気がする。保険の授業だったかな。そのときに」

P「そう言えばあったような気がする」

卯月「私は……あんまり強くないって結果でした」

未央「ということは、けっこう信憑性あるのかな?」

卯月「……かもしれません」
802 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:07:37.67 ID:D3C3PKle0
凛「それで、未央。私のも飲む?」

未央「ん、ちょっといただこうかな。しぶりんのは……梅酒?」

凛「梅酒はうめぇ酒だからね」

未央「ん?」

凛「え? ……あ」

卯月「凛ちゃん……」

P「今のは……」

凛「忘れて。お願い。……ここ最近、何回も聞いたから」

卯月「……た、たしかに、梅酒はうめぇ酒ですからね!」

凛「ぐっ」

未央「しまむー……またおいうちを」

卯月「えぇっ!? そ、そんなつもりは……!」

P「だが、梅酒は確かに飲みやすいしおいしい酒だよな。凛もちょっとハマってるみたいだし」

凛「……ハマってるってわけじゃないけど、お酒を飲むときは頼むかな」

P「誰かさんの影響で?」

凛「……それは否定しない」

未央「ほほう。しぶりんお気に入りのお酒、というわけですな? それは期待が膨らみますなぁ」

卯月「梅酒……次は梅酒にしようかな」

P「ほどほどにな」

未央「それじゃ、しぶりん、もらうね?」

凛「うん」

未央「じゃ、いただきー」ゴクッ

未央「……お」

未央(確かにおいしい。けっこう甘いし……あ、でも、さっきのよりお酒って感じがするかも。でも、そんなに嫌な感じじゃないような……)

未央「……これは『お酒』って感じするね。でも、おいしい」

凛「そう。良かった」

未央「うん。しまむーのもしぶりんのもおいしかったなー……次はどうしよ」

P「の前に残ってるビールな」

未央「……忘れてたのに。プロデューサー、飲まない? 間接キスだよ?」

P「飲まない。飲みたいところだが、ここで甘やかすのは良くないからな。ここは心を鬼にして……」

凛「……飲みたいところなんだ」

卯月「……プロデューサーさん」

P「そこだけピックアップするのやめてくれないか? そういう意味じゃないからな? ただビールがあるならって話で」

未央「……間接キスは、いやなの?」

P「いや、それは……四面楚歌やめろ!」
803 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:09:44.79 ID:D3C3PKle0

――

凛「……ふぅ。けっこう食べたね」

卯月「たべましたねー……ふわ」

凛「眠いの? 卯月」

卯月「ちょっとだけ……」

凛「そっか。……プロデューサー、卯月、眠いんだって」

P「……すまん、いま、そっちに意識を割く余裕がない」

凛「うん。見てればわかるよ。……未央、調子に乗って飲みすぎるから」

未央「……ぅん? なぁに、しぶりん?」

凛「……何と言うか、本当、個室で良かったね」

P「ほんとにな……」

未央「えへへー……プロデューサー、プロデューサーだー……」

P「近い近い近い近い」

未央「んー……酔ってるからー……しかたないのー……」

P「仕方なくない。仕方なくないから。……早く帰らないとまずいな」

未央「帰っちゃうの……? 私、今日はプロデューサーとずっといっしょにいたいな……」

P「ぐっ……!」

未央「……どきどき、してる? 実は、私も、どきどきしてたり……ほら」

P「ちょ、当たってる! 当たってるから! 凛が見てるから……!」

凛「私が見てなかったらいいの? 私たち、帰ろうか?」

P「いてください! お願いだから! 俺の理性のためにも!」

未央「……むぅ。私とふたりっきりはいやなの?」

P「そうじゃなくて……! ……なぁ、凛」

凛「なに? プロデューサー」

P「……酔った未央、危険すぎる」

凛「大丈夫だよ。たぶんプロデューサー限定だから」

P「何が大丈夫なんだよ……」

凛「それに、たぶん、そんなに……」

P「……そんなに?」

凛「……ううん。なんでもない。まあ、初めてのお酒なんだし、おおめに見てあげれば?」

P「我慢しろって?」

凛「うん。誕生日なんだし……わがままくらい、聞いてあげなよ」

P「……わかった。でも、ほんと、耐えられるかどうか」

凛「耐えられそうになかったら蹴ってあげるから大丈夫」

P「何が大丈夫なんだよ。いやでもそうなったらお願いします」

凛「うん、了解」

未央「……プロデューサー、ずっとしぶりんと話してる」

P「えっ、いや、これは、その」

未央「今日の主役をもっとかまいなさーい! 罰としてー……一生私の面倒をみる刑に処ーす!」

P「それ罰じゃな……じゃない。何言おうとしてんだ俺は。あぶな……ほんとあぶないな、酔い未央……」

未央「じゃあハグの刑? ぎゅーっ!」

P「それは生殺しの刑だからやめああああああああああやわらかいやわらかいやわらかい」

未央「……えへへ」
804 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:10:33.19 ID:D3C3PKle0
凛「……」

卯月「……? りんちゃん?」

凛「ん、なんでもない」

卯月「そうですかー。……みおちゃん、しあわせそうです」

凛「……うん」

卯月「おさけをのむと、ふわふわしますからねー……なんだか、きもちよくなっちゃいます」

凛「そうだね。……でも」

卯月「?」

凛「……たぶん、そんなに、酔ってないよ」

卯月「……? どういうことですか?」

凛「だから……卯月、ほんとに眠そうだね」

卯月「ちょっとだけですー……」

凛「……はぁ」

凛「私も、もっと飲んでおけばよかったかも」



805 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2019/12/01(日) 23:18:16.52 ID:D3C3PKle0
これにて今回は終了です! たんじょうびぎりぎり……。

なんだかんだでそこそこ続いてる影響でこのSSの未央さんもお酒が飲める年齢に! びっくり! もしかしたら数え間違えてるかもしれない……。たぶん合ってるはず。
今回はごはん要素あんまりないですね。お酒しかない。そのお酒の描写もあんまり多くない。個人的には「ビールがおいしくないわけじゃなくて単に舌が合っていないだけ」とか「ビールにも色々と種類があってその中から自分の舌に合うものを探していったり自分の味覚を拡張していったりすることに楽しみがあるんだよ」みたいな感じのことを書きたかったところではあるんですけれど、まあそこんところは次回以降で! 渋谷の凛ちゃんは……まあ、まだあんまりお酒飲んでない設定なんで。卯月もですが。
余談ですが酔い酔い凛さんは酔い酔い凛さんでいちおう設定がありますが書く予定は特にないです。酔い酔い未央さんは……どうなんですかね? どうなんでしょう。そもそもまたお酒を飲む回を書くかどうかがわからないみたいなところあります。

とりあえず今日はそんなところで! イベントめっちゃ多いですね! 忙しい! 嬉しい多忙? ですかね? 時間がかかるイベントと時間がかかるイベントが重なるのほんと……嬉しい悲鳴が出てしまう……しかしアイプロ後半戦めちゃくちゃ楽しみだなぁ……はぁ……未央……上位いけるかなぁ……がんばろ。

本田未央さん、誕生日おめでとうございます。これまでも、これからも、あなたのことを応援しています。

ありがとうございました。
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/02(月) 07:53:16.50 ID:eUFfgM6To
807 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2020/12/01(火) 22:54:27.80 ID:XVWavLz90
未央「実は、今日は未央ちゃんの誕生日だったりするんですよねー。……ちらっ」

P「祝っただろ?」

未央「祝われたけどー……祝われ足りないと言いますか」

P「情勢的に無理だな。そもそも今日は仕事も長引いたしな」

未央「それそれ。ほんとなら実家に帰ってホームパーティーとしゃれこもうとしていたのに……」

P「はいダウト。それなら家に連絡してるはずだからな。そんな様子はなかったし、もしするならもうちょっと安全な日にするだろ。つまり日を変えて今週末にでもするか、あるいは一昨日かそのあたりにでもやったか」

未央「う、鋭い。……でも、せっかくの誕生日に仕事が長引いたの、ちょっとは罪悪感を覚えたりしない?」

P「しないこともない。だから、この後は付き合うよ」

未央「……罪悪感を覚えるから、付き合ってくれるの?」

P「それは、違うが……。未央、聞き方がいやらしいぞ」

未央「それはプロデューサーが反省することじゃないかな? 照れ隠しだったとしても、ね」

P「……悪かったよ。罪悪感とか関係なく、俺が未央を祝いたかっただけで――いっしょにいたかっただけだ。これでいいか?」

未央「よろしい。それじゃ、誕生日デート、だね」

P「どこも行くとこないけどな」

未央「それは言わない。お店とかも……この時間だと、閉まってるかな」

P「だな。……散歩かドライブくらいか? でも、なにか食べたい気分だな」

未央「じゃあ、コンビニ? ……あ」

P「ん? ……ああ、ここのスーパー、まだ開いてる時間だったか」

未央「……ね、プロデューサー。ごはん、いっしょにつくるのはどうでしょうか」
808 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2020/12/01(火) 22:55:03.83 ID:XVWavLz90

――店の中

未央「メニューは?」

P「残ってる食材次第だろ。……まあ、なくはない、か」

未央「あ、お肉とかも一応ある。あんまりないけど」

P「何が食べたい?」

未央「プロデューサーこそ。って、私が誕生日だからか。うーん……そんなに時間がかからないやつ? 手間はちょっとかかってもいいから」

P「長時間煮込むようなのじゃなくてってことか。で、誕生日っぽいやつ……あるか?」

未央「そもそも『誕生日っぽい料理』ってなんだって話だもんね。ちょっと豪勢なの?」

P「豪勢なものはないんだよな……あ、高いステーキ肉なら残ってるけど」

未央「ステーキはあんまり気分じゃないかな……」

P「どっちだよ」

未央「と言うか、べつに豪勢じゃなくてもいいんだよ。大事なのは心だから」

P「単に『気分じゃない』ってのをいいように言うな……」

未央「うーん……今日は、鶏肉の気分!」

P「じゃあ鶏肉で。鶏肉の……なんだ?」

未央「時間かからないやつ、時間かからないやつ……あ、丼物!」

P「丼か……親子丼とかか?」

未央「とかね。あ、でも、ごはんがいるか」

P「それはなんでもそうじゃないか? まあ、ごはんがなくてもいいかもしれないが」

未央「早炊きだったらつくってる間に炊けるかな? それともレンチン?」

P「最近のレンチンごはんもおいしいからな……それでもいいかもな」

未央「じゃ、決定! 今日のごはんは親子丼です。材料買って、お家に帰ろー!」

P「……家?」
809 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2020/12/01(火) 22:55:36.62 ID:XVWavLz90

――女子寮内・未央の部屋

P「……うーん。これはグレー」

未央「なんか言った?」

P「いや……まあ、何と言うか。誰にも見つからずに来ちゃったな、と」

未央「寮監さんには会ったけどねー」

P「それはまあな。ただ、他のアイドルとか、そういう……な。と言うか、共用キッチンを使うんじゃないのか」

未央「共用キッチンのほうが大きいし、設備も揃ってるんだけどね。ふたりだけだし、いいかなって」

P「……まあ、いいけど」

未央「それと、こっちのほうが秘密感が出て……いいでしょ? ドキドキ、しない?」

P「悪い意味ではする」

未央「悪い意味かー」

P「……親子丼、さっさと作ろう。なんか、眠くなってきた。このままだと帰るのが危ない」

未央「泊まってかないの?」

P「泊まるわけないだろ……」

未央「つれないなー。それじゃあ料理とまいりましょう。はいはい、手を洗って洗って」

P「じゃあ、俺は……だしでもつくっとくか」

未央「そのうちに私は鶏もも肉を一口大に切り分けます。あと玉ねぎを薄切りに。はい、具材完成!」

P「早いな。それじゃあこれに入れてちょっと煮て」

未央「その間にごはんをチン!」

P「溶き卵を回し入れて……ちょっと半熟め、これくらいか?」

未央「それじゃ、丼に入れたごはんの上にかけて……完成! 親子丼!」

P「……すぐだったな」

未央「すぐだったねー。……あ、飲み物、用意してなかったね。ちょっと待ってて。冷蔵庫から取ってくるね」

P「じゃあ、その内に俺はトイレでも…………いや、やめとくか」

未央「いや我慢されるほうが心配だから変な遠慮せずに行って?」
810 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2020/12/01(火) 22:56:41.85 ID:XVWavLz90

――

未央「それじゃ、改めて……いただきます!」

P「いただきます」

未央(プロデューサーと私、共同作の親子丼。割といい感じにできた……と思う)

未央(見た目はいい感じにおいしそうだけど……とりあえず、一口)パクッ

未央「……うん」

未央(あ、おいしい。ふつうにおいしい。ちょっと濃いめ、甘めな感じで、プロデューサーの好みの味って感じだ。あー、これ、ごはんと合う。やさしい味の親子丼もおいしいけど、こういうしっかり味がついた親子丼も好きだなー。私はこっち派かも)

未央(あとは…………べつにコメントないかな。卵もいい感じってくらい? いや、ちょっと固めだけど、それはこういうものだと思うし。お店みたいなふわとろ親子丼はなかなか難しいですよ、やっぱり)

P「ん……割とうまくできたな」

未央「だね。これならお誕生日ごはんでも満足の出来ですよ」

P「なら良かった」

未央「ただ、ちょっとパーティー成分が足りないので……かんぱーい!」

P「はい、乾杯。って言っても、これは酒じゃ――うん?」

未央「あ、飲んじゃった」

P「……未央。これは?」

未央「お酒だねー」

P「……終電、まだだったよな」

未央「まだだよー。だから、今日は未央ちゃんに付き合いたまえ」

P「お前な……まあ、今日くらいはいいか」

未央「朝まで語り合わそうではないかー」

P「『今日くらい』って言ったよな? ……ほどほどになら、いくらでも」
811 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2020/12/01(火) 22:58:18.53 ID:XVWavLz90

――

未央「――とか言ってたのに、ね」

P「……スゥ……スゥ」

未央「寝ちゃったよ、プロデューサー。……私よりは、強かったと思うけど」

未央「疲れてたのかな? 割と眠そうだったもんなー……でも、プロデューサーにしては迂闊だったね」

未央「……明日は、私もプロデューサーも、ちょっと大変かもね。この時間に誰とも会わなかったことはまだ可能性あるかなって感じだけど、朝だとさすがに……だし」

未央「そう考えると、起こすのが吉――なんだけど」

P「……ん……スゥ……」

未央「……起こさなくても、いいかな」

未央「ごめんね、プロデューサー。服、しわになっちゃうと思う。お風呂にも入ってないし、歯磨きもしてないし。他にも寝る前にやることとかやれてないかな」

未央「でも……この誕生日プレゼントは、捨てるにはちょっと惜しいから」

未央「だから、おやすみ。プロデューサー」

未央「……いつも、ありがと」



812 : ◆Tw7kfjMAJk [sage saga]:2020/12/01(火) 23:01:26.78 ID:XVWavLz90
これにて今回は終了ですがまるまる一年ぶりですね。遅すぎる。
書いては没、書いては没、書いては没、みたいな感じでしたね。いつも同じような感じなのに。何を没にするようなことがあると言うのか。とは思いますがまあ個人的なあれやこれやですね。個人的なあれやこれや。どれやねん。

ありがとうございました。
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/30(金) 00:56:19.77 ID:/MwUV/H80
うおおおおお
生きとったんかワレェ!!
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/05/23(日) 21:33:48.74 ID:l6E1r4IP0
また時間があったらお願いします🙏
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