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【ヒアリズム】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:28:41.17 ID:+Ir2P8ShO

「私の話を聞いて下さい!」


「俺の言うことを聞いてればいいんだよ……」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450009721
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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2 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:30:05.55 ID:+Ir2P8ShO

【ヒズムリアリズム】


空調の効いた薄暗い室内


ゆらゆらと揺れる真っ白なカーテンの隙間から月光が射し込み、ベットを照らす


その部屋には二つの影があった

3 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:31:37.20 ID:+Ir2P8ShO


ひとつは黒い山羊のような水牛のような二本足の生き物


背中には黒い小さな羽根がついている


悪魔「さて、今回はどうなることやら」

4 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:32:47.33 ID:+Ir2P8ShO


そして、もうひとつは白いカラスのような、アヒルのような翼を持つ、三本足の生き物


こちらには背中に四枚の白い羽根がついている


天使「これで引き分けが連続で二回ですものね」
5 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:34:17.86 ID:+Ir2P8ShO
 

二人は部屋の中央の小さなテレビ画面の砂嵐を覗いている


悪魔「神様も厄介なお遊びを考えたもんだなあ」


リモコンをくるくると器用に手のひらで回し、悪態をつく悪魔
6 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:35:09.84 ID:+Ir2P8ShO


天使「まあまあ、でも今回はどう転ぶかわかりませんよ?」


天使は笑みを崩さずに話を続ける


天使「では、仕度も整いましたし、そろそろ始めましょうか?」


悪魔「ああ、そうだな」

7 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:36:21.98 ID:+Ir2P8ShO



天使「 Listen 」
8 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:37:06.90 ID:+Ir2P8ShO


悪魔「越えて離れていく、『今』を見下ろして」


天使「越えて止まらない、時間を止めてみて」


その言葉と共に、悪魔はリモコンのボタンを押した


9 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:38:08.52 ID:+Ir2P8ShO


ウィウィ


ジャジャーン


ピシャー


ドン

10 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:38:52.90 ID:+Ir2P8ShO




ー Play Back!! ー


.
11 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:40:29.00 ID:+Ir2P8ShO


フッと、無重力を落ちていくような、駆け抜けるような、不思議な感覚で私は意識を取り戻した


女「うーん……お、重い……」


私はベットに横たわっている


そして、もう一人


ベットの横の椅子に腰かけ、私に覆い被さるように、もたれかかって寝ていた

12 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:42:13.86 ID:+Ir2P8ShO


友「Zzz ……Zzz…」


私の右手は友さんの両手に包まれている


女「泣いて、いたの?」


友さんの頬は月の淡い光を反射して、てらてらと輝いている


女「何があったんだっけ?」


うーんと唸って、カチコチと音たてる壁掛け時計の針を眺める

13 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:43:04.90 ID:+Ir2P8ShO


夜中の十二時を少し過ぎた頃、か……


さて、今日のことを思い出してみよう


……まあ、もう日を跨いでしまった訳だが


女「あ、れれ?」

14 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:44:14.70 ID:+Ir2P8ShO


駄目だ……


寝起きだからだろうか


どうにもモヤがかかったように、昨日のことが思い出せない


女「むむむ……私はホンモンの女子高生ですよ。りあるじぇーけーですよ」


そんな、昨日の夕飯が思い出せないような、お婆様な年齢ではないんだけどな

15 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:46:16.25 ID:+Ir2P8ShO


あらま、本当に今日の出来事が思い出せない
困ったもんだ


女「えーっと、私は誰?ここは何処?」


なんてふざけてる場合ではないよね

16 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:47:38.56 ID:+Ir2P8ShO


私は女


とある女子高に通っていた、極普通の女の子だったと思う


容姿も至って普通だと思ってる


まあ、この長い黒髪と、他人よりも白い肌、そして高校の制服が黒いから、オセロ感ある、なんて知り合いから言われたこともあったけど


私からしたら、それって誉め言葉じゃないよねって話よね

17 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:49:11.77 ID:+Ir2P8ShO


で、ここは病院の二人部屋


ついでに、私の上に乗っかっている、この重石はというと、同室の患者仲間の友さん


女「いい加減重いんだけど」

18 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:49:55.25 ID:+Ir2P8ShO


友さんとは同室になって日は浅いけど、なんだか一緒にいて安心するんだよね


なんて言うか、昔馴染みの友達みたいな


ずっと古くからの長い付き合いみたいな感じ


女「まあ、友さんは私よりもいくつか年上の大人なんだけどさ」

19 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:51:16.29 ID:+Ir2P8ShO


そんなこんなで独り言をしていると、お腹の上に乗った重石さんも、ようやく起きたみたい


女「おそよう」


友さんの乾いていない頬を、手で優しく拭ってあげた


女「悪い夢でもみていたの?……ああ、やっぱり」


涙はそのせいだったのね

20 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:52:27.71 ID:+Ir2P8ShO


女「でも内容までは思い出せないのか」


まあ、朝に起きたとき、夜に夢をみたことは覚えているんだけど、内容までは覚えてないときって、意外に多いからね


女「夢、かあ」


ふと出てきた言葉で、友さんが心配そうにこっちを見たのがわかった

21 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:53:57.00 ID:+Ir2P8ShO


女「ああ、違う意味の夢の話なんだけど」


友さんには話しておこうかな


私は一度ベットから降りて、月明かりのこぼれる窓辺へと移動した


女「私、小さい頃に夢があったんだよね」


窓ガラスに手を当てて、ゆっくりと戸を開いた

22 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:54:56.13 ID:+Ir2P8ShO


むせるような熱気が部屋に流れてくる





私は夏が嫌いだ




.
23 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 21:57:04.57 ID:+Ir2P8ShO


女「毎晩毎晩、熱帯夜だね。嫌になっちゃう」


ふと、部屋が暗くなった


月がどんよりとした厚い雲で隠れたからだ


これから夜の夕立になるかもしれない

24 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:07:02.52 ID:+Ir2P8ShO


女「ベットの脇の机に乗っている、それね、私のオトモダチ」


私とお揃いで、腕に真っ赤なリボンを巻いたテディベアを指差す


女「その子ね、私が小さい頃に腕が千切れちゃったんだ」


男の子に乱暴に扱われて、ボロボロになったんだよ


そういえば、あの日もこんな熱帯夜だったね


あー、嫌だ嫌だ
25 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:08:31.38 ID:+Ir2P8ShO


女「でもね、大事な人にもらった子だからさ。修理の業者さんに直してもらったの」


リボンで隠しているのは、その傷痕なんだ


女「でね、そういう何かを『なおす人』いいなーって、漠然と思ってさ」

26 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:10:51.44 ID:+Ir2P8ShO


ふっと、雨降る前の、独特な湿気った夏の夜風がカーテンを揺らす


手首に巻いたリボンが、ゆらゆらと陽炎のように踊っている


女「そうそう、あの頃はよくお裁縫とか練習したし、小物とか作ってたなあ」


このリボンもその頃から使っているものだから、長い付き合いだね

27 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:12:54.38 ID:+Ir2P8ShO


女「でも、それは小さな頃の、子供の夢」


そんなもの私なんかが、なれるわけないもんね


女「でもさ、でもね。そういう夢も、持ってるだけでも、良いのかなって、最近思うんだ」


今の私みたいに、なにも無いより、よっぽど良いと思うんだ

28 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:14:25.26 ID:+Ir2P8ShO

現実的じゃなくてもさ


夢があるって『素晴らしいこと』なんだろうね


女「さっすが友さん!わかるよね、この気持ち!」


私は窓の外を眺めている


ずっと相槌を打って、聞き手に回ってくれた友さんの声が、少しだけ震えている気がする
29 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:16:07.72 ID:+Ir2P8ShO


うーん……


この様子だとホントノコトなんて話せない雰囲気だよね


よし、このお話はこれでお仕舞い


女「まあ、あれだよ」

30 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:17:32.33 ID:+Ir2P8ShO


ぽつり


一滴の水が窓の縁を濡らす


遂に降ってきちゃったか


パタリと窓を閉めて、サッとカーテンを手繰り寄せる


外気が入り込んだ室内は、すっかり生温い嫌な空気に変わってしまった


カーテンを握りしめて、ひとつ深呼吸

31 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:19:32.95 ID:+Ir2P8ShO


今、友さんはどんな顔してるのかな?


よし、安心してもらえるように、出来るだけ笑顔で、ね


華麗とは、お世辞にも言えない、ぎこちないターン


女「諦めて投げ出す、そんな日が来るまでは、何度でも頑張ってみようかな」

32 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:20:44.99 ID:+Ir2P8ShO


なんて言ってみて


柄にもないよね


思ってもないのにさ


私も遂に、暑さにヤラれちゃったかな

33 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/13(日) 22:21:24.19 ID:+Ir2P8ShO





……ほんと夏って嫌い




.
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/13(日) 23:42:08.94 ID:lZ3+JhqW0
カラスは真っ白
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/15(火) 21:35:45.59 ID:QhBiMbhcO


夢を、みていました


夢の中で、夢をみる夢


彼女が自ら命を絶つ夢をみて、飛び起きた後に、彼女が本当に死んでしまう


そんな夢


そして、自分はまた目を覚まします


夢でも見た、何度目かの今日を迎えるために

36 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/15(火) 21:37:48.00 ID:QhBiMbhcO


起きると、自分の目の前には件の彼女が、濡れた自分の頬を優しく拭ってくれていました


友「……おそよう」


そして、またこの真夏の夜が始まったのです


彼女との別れの夜が

37 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/15(火) 21:39:30.55 ID:QhBiMbhcO


友「……うん。ちょっとね」


彼女は泣き顔の自分を心配して、怖い夢でもみたのかと尋ねてきました


そんな彼女のことを思うと、胸がしめつけられたように苦しくなり


自分は、先程みていた夢の話など、出来るはずもなく


友「うーん……けれど、どんな夢だったっけなあ?」


と、嘯くのでした

38 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/15(火) 21:40:46.90 ID:QhBiMbhcO


しかし、彼女はしきりに夢の話を気にしている様子です


……もしかして、彼女も同じような不思議な、不気味な夢をみていたのでしょうか?


そんな考えが頭の端に浮かんでくると、それがまるで風船のようにプクラプクラと膨れていき、心がざわめきました


……不安、です

39 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/15(火) 21:42:47.45 ID:QhBiMbhcO


ですが、杞憂のようでした


友「違う意味の夢、と言うと?」


なるほど


どうやら、将来の夢の話のことのようですね

40 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/15(火) 21:44:15.83 ID:QhBiMbhcO


私の手を名残惜しそうに離した彼女は、ゆっくりとベットから降りて、窓辺へと移動しました


彼女の長い黒髪が、透き通るような白い肌が、月に照らされ、妖しく煌めいています


ふと、自分の心が僅かにまたざわめいたことに気が付きました

41 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/15(火) 21:46:21.08 ID:QhBiMbhcO


嫌な予感、とでも言うのでしょうか


自分はそんな違和感を喉の奥に飲み込んで、言葉を吐きました


友「幼い頃の夢ねえ。どんな夢なのかな?」


自分からしたら、まだ幼さの残る彼女


そんな彼女の小さい頃の夢


それが、純粋にとても気になりました

42 : ◆fgx2B/RNeo [saga]:2015/12/17(木) 21:40:41.16 ID:xcbCHN03O


戸に手をかけ、窓を開く彼女


夜風に揺れる彼女の黒髪を見て、また先程の違和感が湧いてきました


少し頭が痛い


何か忘れているような気がしてなりません

43 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 21:41:59.43 ID:xcbCHN03O


友「あ、ああ……」


自分は彼女の問いかけに生返事しかできませんでした


なぜなら、尋常ではない量の額を流れる汗や、平時ではあり得ない苦しい動悸が、自分を襲っていたのです


彼女が背を向けているので誤魔化すことは出来ましたが……
44 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 21:43:17.38 ID:xcbCHN03O


そして、自分は思い出してしまったのです


先程の夢の内容を、ハッキリと





彼女が死んでしまう夢





それが、今の状況と全く同じであることを
45 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 21:44:19.72 ID:xcbCHN03O


次の瞬間、身を翻した彼女に悟られないようにと、頭痛にやや顔をしかめながらも、話を続けました


幸いにも月が雲で陰り、室内が暗くなった為に、感づかれることはありませんでした
46 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 21:49:07.21 ID:xcbCHN03O


友「このテディベアのことかい?」


彼女がお友達と称す、机の上に置いてある古びたぬいぐるみを、ひょいと抱きかかえます

ぬいぐるみの腕にはリボン……いえ、これはそんな可愛らしいものではありません


腕には、赤黒い包帯が巻いてあります


そう、彼女の左手首に巻いてある包帯と同じものです

47 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 21:50:51.75 ID:xcbCHN03O


再び窓より先を眺める為に背を向けた彼女


彼女はテディベアの話を淡々と続けます


友「千切れ……た……?」

48 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 21:54:34.36 ID:xcbCHN03O


……ああ、自分はこの話を知っています


そして、このテディベアの話の後の話も……


友「うん、うん」

頭の中が真っ白になってしまった自分は、もはや、彼女の話など頭に入ってこず、少しばかり上擦った声で生返事をするしかできませんでした

49 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 21:56:52.97 ID:xcbCHN03O


夜風に彼女の長い後ろ髪がふわりと揺れました


夏の虫のような


もっと詳しく表すのなら、蜻蛉のような儚さを持つ彼女


その彼女の過去


友「そう、なんだね」





自分はもう、その過去を知ってしまっているのです

50 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 22:18:08.82 ID:xcbCHN03O


もう、その後のことは、本当に殆ど覚えていません


女「諦めて投げ出す、そんな日が来るまでは、何度でも頑張ってみようかな」


そう、その言葉と、何かを憂うような、諦めたような笑顔


そして、最後の身投げする彼女の姿だけは覚えています
51 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 22:19:03.90 ID:xcbCHN03O





やはり彼女は死にました




.
52 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 22:24:22.77 ID:xcbCHN03O
【ヒリアリズム】完

次【night museum】

間に短編投下するかも?
53 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/17(木) 22:25:20.79 ID:xcbCHN03O
訂正
【ヒズムリアリズム】完
54 : ◆fgx2B/RNeo [saga]:2015/12/18(金) 00:35:17.62 ID:pWYmHAtQO
短編投下します


【正義とアクチュエータ】


私は今、『かくれんぼ』している『おに』を探してる


え?


隠れん坊なのに、鬼を探すのはおかしいって?


別に間違ってはいないから、今は良いのよ


今は、ね

55 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:36:10.75 ID:pWYmHAtQO


女「みーつけた」


そうして、私はようやく見つけたの


……話は今朝に遡る
56 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:37:12.65 ID:pWYmHAtQO


女「あんた、今日の放課後は暇?」


男「んあ?」


私は今、彼氏がいる


私の全てを理解して、包み込んでくれる優しい彼が
57 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:38:14.00 ID:pWYmHAtQO


まあ、その彼氏、男とは幼馴染みで、昔から家族ぐるみの付き合いをしていたんだけど


去年、あなたから告白してきたのよね


あの時は、心臓が揺れるように嬉しかったのを今でも覚えている

58 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:39:13.22 ID:pWYmHAtQO


女「放課後、暇かって聞いてるのよ!」


男「うーん……わりいな、今日は無理だ」


付き合い初めて、明日で丁度一年だったよね?
59 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:40:14.56 ID:pWYmHAtQO


女「ふーん、先約でもいるの?」


男「あ、ああ。隣のクラスの男友とゲーセンで遊ぶ約束してるんだよ」


嘘よ


だって私は知ってるの


女友と二人で買い物に行く約束、してるのでしょう?


なんで私にそんな嘘を吐くの!?

60 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:41:24.89 ID:pWYmHAtQO


男「じゃ、俺そろそろ行くから」


また明日な、と手を振って教室を飛び出した彼
教室に一人残された私


女「おかしいでしょ」


彼女いるのに、他の女と遊びに行くなんて


追いかけよう


それで……
61 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:42:45.49 ID:pWYmHAtQO


……そして今に至る訳


ねえ、わかる?


鬼って言うのはね、悪者なのよ


ねえ、わかる?


鬼って言うのはね、退治しないといけないのよ

62 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:43:58.94 ID:pWYmHAtQO


だからもう、あなたは逃がさないわ


だって折角、『隠恋慕』(かくれんぼ)している『泥棒猫』(おに)を見つけたのだから

63 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:44:44.41 ID:pWYmHAtQO





女「みーつけた」




.
64 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:45:38.68 ID:pWYmHAtQO


そして、私は声をかけた鬼が振り向く前に、それを降り下ろしました


ねえ、あなたを私で


私の色で、塗りつぶしてあげるわ
65 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/18(金) 00:46:39.80 ID:pWYmHAtQO
【正義とアクチュエータ】完

やっぱり短編だと書きやすいですねえ
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/24(木) 06:16:01.14 ID:ehzN2H/Eo
誰かレスしてやれよ…
67 : ◆fgx2B/RNeo [saga]:2015/12/30(水) 17:57:17.60 ID:RD3pWOVLO
【night museum】

夜明けまでには、まだまだ遠い、深い夜

薄暗い小部屋で、幾度となく繰り返し、同じ映像を見せられている、二つの影があった
68 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/30(水) 17:59:15.63 ID:RD3pWOVLO

重い瞼をしばたたかせながら、悪魔はリモコンのボタンを押して、一面漆黒のアスファルトが映るテレビの画面を砂嵐に戻した

静かな小部屋で、ザザーっと耳障りな音だけが響いている

悪魔「んだよっ。結局、前回とさほど変わらねえ!」
69 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/30(水) 18:00:30.26 ID:RD3pWOVLO

天使は隣に座っている悪魔を眺めて、ふうと溜め息ともとれる深い息を吐いた

天使「まあまあ、僅かですが動きはありました」

しかし、腑に落ちないこともあったが、と天使は悪魔に聞こえないように小さく呟いた
70 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/30(水) 18:01:38.23 ID:RD3pWOVLO

悪魔「裏返せば、三連続で大きな動きはなしって事だけどな」

悪魔は隣に立つ天使を睨み、不満を吐き出すような大きな溜め息をひとつした

悪魔「第一よお、こんな大掛かりな神様のお遊びなのに、こっちからの介入が一度きりなんて、ゲームクリア不可能だろ」
71 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/30(水) 18:02:26.25 ID:RD3pWOVLO

ずっとグルグルとループしているだけで、終わりの見えない神様考案のお遊び

悪魔はそんなゲームに飽きたようで、手持ち無沙汰な手のひらの上で、またグルグルとリモコンを器用に回している

天使「まあ、元を辿ると、このゲームにも意味はあるんですけれどね」
72 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/30(水) 18:03:50.93 ID:RD3pWOVLO

悪魔「あいつらの魂が繋がってるから、片方が死んで、片方が生き残る事がダメなんだろ。知ってるぜ、そんなことならよ」

そう、稀にではあるが、幼い子供と母親や、親しい友人等、密な関係同士で魂がリンクすることがある

極僅かな期間ではあるが、その期間では、お互いの魂が干渉し合ってしまう
73 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/30(水) 18:05:05.06 ID:RD3pWOVLO

つまり、片方が死ぬと、もう片方も死んでしまうということだ

天使「ええ、ですから、今回のように女さんがお亡くなりする運命の中で、生きるべき友さんの魂が繋がってしまいました」

もしくは、片方が死ぬ運命にあっても、もう片方が生きる運命へと引っ張ることもある

悪魔「なのに、今回は中途半端な結末になるってのが問題な訳だよな」
74 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/30(水) 18:06:31.37 ID:RD3pWOVLO

女と友の運命を偶然にみつけてしまった神様

天使「だからこそ、神様は今回の舞台を用意したのですよ」

神様が用意したのは、結末が結果となるまで、幾度となく繰り返される舞台だった

その、輪のようになっているコースの運転席に乗せられたのは、他でもない、この天使と悪魔なのだ
75 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/31(木) 07:12:37.89 ID:5DjE1MYdO

悪魔「さっきも言ったがよ、元々こっちから直接手をくだせねえルールだし、お手上げなんだが」

天使「生死に関わる介入は禁止とされていますからね」
76 : ◆fgx2B/RNeo [saga]:2015/12/31(木) 07:13:30.01 ID:5DjE1MYdO

ルールはこうだ

女と友、どちらともが生きて夜明けを迎えられれば、天使の勝ち

どちらとも死ねば悪魔の勝ち

このゲームでの天使と悪魔の介入は一度のみ許されている

しかし、生死に関わる介入

つまり、直接助けたり、殺したりは禁止とされる
77 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/31(木) 07:14:26.38 ID:5DjE1MYdO

天使「ところで悪魔さんは前回はどんな方法で介入したのですか?」

天使は悪魔に率直な質問をぶつけた

悪魔「教えるわけねーだろ。お前が教えたら、教えるか考えてやるよ」
78 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/31(木) 07:15:22.21 ID:5DjE1MYdO

天使「私ですか。私は、そう、記憶ですね」

天使は羽の先で、自らの頭をツンツンと叩いて見せた

悪魔「記憶だあ?またつまらねえことしてんなあ」
79 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/31(木) 07:18:34.26 ID:5DjE1MYdO

天使「いやいや、そのお陰で、今回は友さんに動きが少しばかりですが、ありましたからね。まだ上手く記憶が引き継げていないようですがね」

なるほど、と悪魔は腕を組んで答えた

天使「で、悪魔さんはどんなことをしていたのですか?」
80 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/31(木) 07:19:42.32 ID:5DjE1MYdO

悪魔「俺のほうか」

悪魔は腕を組んだまま、ニタリと笑う

悪魔「俺のは、そうだな……」
81 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/31(木) 07:20:40.47 ID:5DjE1MYdO






悪魔「The xxx だよ」




.
82 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2015/12/31(木) 07:23:21.52 ID:5DjE1MYdO

【night museum】完

次【The xxx】

間に短編差し込みます
83 : ◆fgx2B/RNeo [saga]:2016/01/08(金) 00:00:28.98 ID:MSkjlHHEO
短篇投下します


【そまって】


真に受けないでよ
84 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:02:17.56 ID:MSkjlHHEO


大学を卒業して、特にこれをしたいということがなかった私


たまたま学校から紹介のあった、とある農業関係の会社の営業として就職しました


初めての一人暮らしは、アパートを探すことや、家具一式を揃えること等、準備が大変だったのは覚えています

85 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:03:35.58 ID:MSkjlHHEO


私は三人兄弟の一番上なんです


共働きの両親は、昔から幼い弟たちにばかり手を焼いていました


なので、私は一人でも身の回りのことはほとんど自分でできました


一人が寂しいと感じたことは、その頃はありませんでしたね
86 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:04:59.52 ID:MSkjlHHEO


何より、働き始めてからは忙しくて忙しくて、他のことを考える時間もありませんでした


私の勤めた会社は、社員とパートさんを合わせても十人足らずの零細企業


そこで私は私という個性を全て捨てました


いいえ、元より個性や目標等の存在していなかった私なので、むしろ染まったと言ったほうが正しいのかもしれませんね

87 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:06:19.78 ID:MSkjlHHEO


繁忙期は本当に忙しかったですね


朝の五時には起きて


六時に出勤、作業場掃除をして、メールチェック


八時半から現場にでて、パートさんと一緒に作業


お昼は朝にコンビニで買ったパンをかじり


午後は製品を箱詰めして出荷作業

88 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:07:15.72 ID:MSkjlHHEO


日が暮れても、終わらないこともしばしばありました


出荷作業が終われば、事務所でパソコンを


上司が夜遅くまで事務所に籠る方だったので、一通り仕事が終わっても、先に帰ることもできず、気づけば夜の十時なんてのもざらでしたね

89 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:08:28.70 ID:MSkjlHHEO


個人的に一番キタのは、ふた月休み無しでしたけどね


まあ、休みなんてあっても二週間に一度でしたが


それでも二ヶ月はキツかった

90 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:09:22.59 ID:MSkjlHHEO


まあ、その果てにこの有り様ですよ


遣り甲斐はありましたし、働いている間は楽しかったですけどね


でももう限界でしたよね

91 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:10:05.95 ID:MSkjlHHEO


だから、こんなもの用意したんですよ


病院なんて、いても暇ですから


ほら、労基へ提出する資料です

92 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:10:59.98 ID:MSkjlHHEO


……ふふふ


安心してください


冗談ですから

93 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:12:45.21 ID:MSkjlHHEO


だって最初に言ったじゃないですか


真に受けないでよって


ねえ、ちゃんと私の話、聞いてますか?
94 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/08(金) 00:14:00.54 ID:MSkjlHHEO
【そまって】完
95 : ◆fgx2B/RNeo [saga]:2016/01/22(金) 17:19:31.21 ID:g4qG+tBYO
少しだけ投下します

【The xxx】

天使「なんですか、それは?」

The xxxなどという、聞いたこともない存在

悪魔「まああれだ、呼び方なんざ、TheXでもなんでもいいんだけどよ」
96 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/22(金) 17:20:53.57 ID:g4qG+tBYO

悪魔は、パチンと照明のスイッチを切った

天使「どちらにせよ意味がわかりませんがね」

互いの瞳だけが、眠りを知らぬ繁華街のネオンのように、ゆらゆらと妖しく光っている
97 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/22(金) 17:21:52.53 ID:g4qG+tBYO

悪魔「がはは、正体はその目を閉じて感じでくれよ」

悪魔は慣れた手付きで、いつものごとくリモコンのボタンを押した

天使「まったく意地悪な方ですね」
98 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/22(金) 17:22:40.51 ID:g4qG+tBYO



そして物語はまた……



ウィウィ

ジャジャーン

ピシャー

ドン
99 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/01/22(金) 17:24:51.20 ID:g4qG+tBYO
仕事忙しくてなかなか筆が乗らない……
また来ます
100 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/02/25(木) 21:33:25.38 ID:aNa6S6D8O

今夜、深夜に騙される

この物語は、そう決まっている
101 : ◆fgx2B/RNeo [saga sage]:2016/02/25(木) 21:40:59.67 ID:aNa6S6D8O

女「諦めて投げ出す、そんな日が来るまでは、何度でも頑張ってみようかな」

振り返ると、そこに友さんはいなかった

夏の夜の生ぬるい風がカーテンを揺らす

揺らす
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