【咲 -Saki- SS】 大学編 - いちご味 - ちゃちゃのん「おかえりなさい」

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482 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/17(日) 18:06:12.92 ID:7aYacRpe0



胡桃「塞はもぅ一流企業への内定が決まりそうなんだよね。 あ〜〜ぁ、やっぱり理系は就活に強いんだね」


塞「何でも会社の偉い人が 私のゼミの研究内容を気に入ってくれたみたいで、たぶんこのまま決まると思うよ」


塞「胡桃は―――?」




胡桃「私はまだ全然。 このまま就職出来ない女として、哩ちゃんと同列に語られるのだけは避けなくちゃね…」ムムッ


塞「はは、それ哩が聞いたら きっと怒るよ」


胡桃「そっかな、むしろ言葉責めに喜ぶんじゃない」


塞「相変わらず、胡桃は容赦ないな〜〜」ハハハッ







胡桃「ゴメンね……」




塞「――――何が?」





胡桃「……塞はいつも忙しいのに、私のこと心配して来てくれてるんだよね?」




483 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/17(日) 18:11:34.61 ID:7aYacRpe0




塞「それ、ただの口実だから―――」



胡桃「―――?」






塞「私は胡桃のトコで、こうやってグダグダしてる時間が好きなのよ…」



塞「だから、私は私のワガママでこうしてるだけなの…」




胡桃「そ、塞は勝手だね…」




塞「うん、私って勝手なんだ…」






先日、トヨネと熊倉先生に会いに岩手に帰った。



熊倉先生はだいぶ調子を取り戻してるようだったけど、やっぱり以前と同じとはいかないみたい。



その時に卒業したら岩手に戻ろうと思ってること、熊倉先生に話した。




『それが貴方のしたいことなの―――?』と、いつもの優しい声で尋ねられた。




『自分の気持ちに嘘ついて、後悔する生き方だけはしないでね―――』そう言われた。




モノクルなどなくても、やっぱりあの人の瞳には 私のことなど全てお見通しってことみたい。




484 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/17(日) 18:13:47.93 ID:7aYacRpe0




私は、胡桃を守りたい―――




そのためにも、私は一人で生きられるように、先ずは自分自身の地盤を固めなくちゃならない。





お金より大切なモノはたくさんあるけれど、大好きな子を守れるような――――そんな大人に、私はならなくちゃ駄目なんだ。







だから胡桃が残るというのなら、私もこの大阪に残ろうと思う。





たとえ胡桃の気持ちが、まだアイツにあって、私のことなど見ていないと分かっていても。




485 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/17(日) 18:17:00.55 ID:7aYacRpe0




胡桃「そうだ、塞。 今日は時間あるって言ってたよね?」


塞「うん、平気だけど…」




胡桃「久しぶりに哩ちゃんと、洋榎のトコにでも顔出してみない?」


塞「いいの……?」


胡桃「そりゃそうでしょ。 振られたからって『はい、友達ヤメます…』なんて、私はイヤだよ」





洋榎―――か…



あのイヴの夜以来、胡桃はアイツのことを そう呼ぶようになった。




胡桃はそれを『リスタート―――』と、言っていたけれど。




それは胡桃が、アイツへの想いに整理をつけようとしているということで良いんだろうか。




486 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/17(日) 18:20:36.07 ID:7aYacRpe0




塞「ちゃちゃのんも、いるかもしれないよ―――」



胡桃「いや、別に… そんなの気にしないよ。 だいたい私は、ちゃちゃちゃんのことも大好きだし……」



塞「胡桃がもぅ大丈夫だって言うのなら、私も一緒に行くだけだよ」





きっと胡桃も、少しずつ前に踏み出そうと頑張っているんだろう。




何もしてあげられないけど、私はいつだって胡桃のこと 応援してるからね―――







カラン コロン


マスター「やぁ、いらっしゃい」


胡桃「あれ、哩ちゃんは… 今日はお休みですか?」


マスター「あぁ… さっき人生の終わりみたいな顔した、洋榎ちゃんが来てね…」


マスター「とっても大事な話があるみたいで、一緒に裏の方に行ったようだけど…」


胡桃「洋榎、が……」




487 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/17(日) 18:26:07.87 ID:7aYacRpe0




洋榎「ウチは――――もぅ、シマイや〜〜〜」ボロボロ


哩「分かった、分かったて。 それはさっきも聞いたばい」


哩「だから、この前のデートの時に、佐々野のヤツと何があったんや?」





洋榎「ウチ、『いいんちょのことホンマはどう思ってるの?』って、ちゃちゃに聞かれてな―――」



洋榎「ウチのこと、『ホンマは友達としてしか見てない』って、ちゃちゃのヤツに言われてな――――」





洋榎「そんで頭ん中 真っ白になってもうて…」



洋榎「嫌がるアイツに『ズキュウウウン』と、無理やりキスしてもうたんや…」ウゥッ


哩「そ、それはまた、随分と情熱的なキスやったなぁ…」アーーア





洋榎「そしたらアイツ、メッチャ泣いとってん…」



洋榎「凄くツラそうな顔しとった…」





洋榎「でもって泣きながら『ゴメンね…』って、 繰り返すように謝ってくんねん…」




洋榎「それって、もしかしてウチとはもぅお付き合い出来ませんいうことなんやろか!?」





洋榎「あ〜〜〜 ウチは何てサイテーなことを、してしまったんや〜〜〜!?」オロローーーーン


哩「う〜〜〜ん、実にウザい。 ま〜〜 とりあえず焼き土下座でもして謝り倒すしかないやろ」






タッタ…


哩「―――ん、今 誰かおらんかったか?」




488 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/17(日) 18:30:29.17 ID:7aYacRpe0




コツ コツ コツ…


ちゃちゃのん「……………ハァ」





ジャリ


胡桃「ちゃちゃちゃん…」




ちゃちゃのん「あれ、胡桃ちゃん。 こんな時間に、ちゃちゃのんのマンションの前に、どうして…?」





胡桃「ちょっと、久しぶりに話をしたくなって…」


ちゃちゃのん「う、うん… ほんで、塞ちゃんは…?」コクッ


塞「こんな夜遅くにゴメンね…」





胡桃「―――ついて来ないでって、言ったんだけどさ…」


塞「…………」



今、胡桃を一人に出来るわけないじゃない。





胡桃「ここで立ち話もなんだしさ、あっちの公園にでも行こうよ」


ちゃちゃのん「う、うん…」




胡桃「悪いけど、塞はここで帰って貰えないかな」


塞「…………」




489 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 20:39:07.60 ID:vbwxdeeg0




ちゃちゃのん「悲しい、なごり桜じゃの…」


胡桃「―――?」





ちゃちゃのん「この公園の桜の花もだいぶ散ってしもうて、ちらほら薄紅色の若葉が混ざり始めとるじゃろ」



ちゃちゃのん「こういう葉桜になりかけとる、なごり桜がちょっと切なく見えたんじゃ……」




胡桃「そうかな。 綺麗な花が散るのは確かに寂しいけど…」



胡桃「それって、桜の木がそこで役目を終えるわけじゃないってことでしょ…」





ちゃちゃのん「散った桜の花びらと、これから芽吹く若葉たち…」



ちゃちゃのん「それって、同じ心を持ったものなんじゃろか―――」



胡桃「さぁ、私にはよく分かんないけど……」



490 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 20:47:14.93 ID:vbwxdeeg0




ちゃちゃのん「でも、胡桃ちゃんと、こうしてお話するのもホンに久しぶりじゃの」



胡桃「……そうだね」



胡桃「お互い何かと忙しかったし、そういう感じでもなかったもんね」







ちゃちゃのん「ちゃちゃのんな、胡桃ちゃんにはずっと謝りたかったんじゃ…」



胡桃「謝る、何を―――?」







ちゃちゃのん「ヒロちゃんの、こと――――」



胡桃「…………」






胡桃「洋榎がアンタを選んだ、それだけのことじゃない…」




胡桃「―――それをどうして、何でアンタが謝る必要あるのよ?」



ちゃちゃのん「…………」



491 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:43:38.76 ID:vbwxdeeg0




胡桃「それよりも、ちゃちゃちゃん。 洋榎に『友達』だって、言ったんだって―――?」




ちゃちゃのん「…………う、うん」






胡桃「何だって、そんなこと言ったの?」



胡桃「アンタだって、洋榎のこと 好きなんでしょ―――?」




ちゃちゃのん「…………うん、好きじゃよ」コク



胡桃「だったら、どうして―――」







ちゃちゃのん「でも、ちゃちゃのんは…」



ちゃちゃのん「それと同じくらい、胡桃ちゃんや塞ちゃんのことも大好きじゃ…」




胡桃「アンタ、それ本気で言ってんの?」ギリッ






ちゃちゃのん「本気じゃよ。 ちゃちゃのんにとって――――」




ちゃちゃのん「ヒロちゃんも、胡桃ちゃんも―――同じくらい、大切なお友達じゃ……」



492 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:46:02.22 ID:vbwxdeeg0




ちゃちゃのん「これ、覚えちょる―――?」スッ




胡桃「それ、伊勢神宮で撮った……」





ちゃちゃのん「生憎とせーちゃんと哩ちゃんは、一緒ではなかったんじゃが…」




ちゃちゃのん「この時のみんな、スッゴく ええ顔しちょるよね―――」フフッ



胡桃「……………」







ちゃちゃのん「一人張り切っておめかししてきた、ちゃちゃのんだけ―――」




ちゃちゃのん「とっても浮いちょるって、みんなにたくさん からかわれたんじゃ…」






ちゃちゃのん「これは、ちゃちゃのんの 宝物じゃ――――」




493 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:47:39.63 ID:vbwxdeeg0





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは―――」






ちゃちゃのん「あの頃みたいに、みんなで楽しく過ごしたいだけなんじゃ――――」











胡桃「バカじゃないの―――」





ちゃちゃのん「胡桃ちゃん――――?」








胡桃「私も、アンタも、アイツだってね、永遠に変わらないものなんて無いのよ…」






胡桃「それを、アンタは… いつまでも昔の思い出にしがみついて、今を全然 見ようとしてない―――」






胡桃「そういうの――――ホンット気持ち悪い…」




ちゃちゃのん「…………」



494 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:49:40.05 ID:vbwxdeeg0




胡桃「アイツが、洋榎のヤツが…」




胡桃「いつ頃から、お酒をお昼からたくさん飲むようになったか知ってる?」




ちゃちゃのん「え………?」







胡桃「今にして思うとね―――アンタがアイツと、なかなか会えなくなった頃からなんだよ…」





胡桃「その意味、少しは分かってあげてよ―――」ギュッ




ちゃちゃのん「…………」



495 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:52:14.83 ID:vbwxdeeg0





胡桃「アンタがそんなだったら、私が――――洋榎を奪うわよ」




ちゃちゃのん「…………」









ちゃちゃのん「胡桃ちゃんは、ホンにヒロちゃんのこと よぅ見ちょるね…」





ちゃちゃのん「胡桃ちゃんは、ちゃちゃのんなんかより…」




ちゃちゃのん「ヒロちゃんのこと、一途に想っとったのかもしれんね―――」




胡桃「…………」








ちゃちゃのん「そんな胡桃ちゃんにじゃったら、それも仕方ないのかもしれんの……」






ちゃちゃのん「その方が、きっとヒロちゃんじゃって――――」ギュッ




496 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:53:54.07 ID:vbwxdeeg0




ちゃちゃのん「―――あ」




ちゃちゃのん「ちゃちゃのんとヒロちゃんな、まだ何もしちょらんけぇの…」






ちゃちゃのん「そりゃぁ、この前…」




ちゃちゃのん「事故みたいなキスだけは、してしもぅたけぇ――――////」ゴニョゴニョ




ちゃちゃのん「じゃ、じゃけぇ――――」










胡桃「――――ふっざけんな!!」





ちゃちゃのん「―――――!?」




497 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:55:26.93 ID:vbwxdeeg0





胡桃「それって振られた私が可哀想だから、同情のつもり―――?」





胡桃「それとも、私が仲の良いお友達だから―――?」







胡桃「私と洋榎がくっつけば、アンタの言うお友達ごっこが続けられるの――――?」





ちゃちゃのん「そ、そんなつもりは――――」












胡桃「私はあの時―――」






胡桃「私の想いを、アイツに伝えたつもり――――」







胡桃「そりゃ、本当はもっと伝えたいことあったし、大分不恰好なカタチになっちゃったけど――――」








胡桃「私は私の恋に、自分なりの決着をつけた!!」







―――――それでも、アイツはアンタを選んだ。





498 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:57:49.96 ID:vbwxdeeg0





それなのに―――






そのアンタが、後ろばっかり見て 前に進まないとか――――あんまりじゃない。









胡桃「アンタは、いつだって そうだった―――」






胡桃「私がアイツに告白するのを、ただ黙って待っただけ―――」






胡桃「アイツからの告白を、ただ黙って受け入れただけ―――」





499 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 21:59:13.12 ID:vbwxdeeg0






胡桃「――――アンタ、本当は何も選んでないじゃない!!」





ちゃちゃのん「―――――!?」











胡桃「せめて… アイツのこと、誰にも渡さないくらい 言いなさいよ……」






胡桃「じゃないと、私――――どんだけ惨めなのよ……」ポロポロ






ちゃちゃのん「胡桃、ちゃん………」





500 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:00:34.36 ID:vbwxdeeg0





私のことだけじゃない、それ以上に許せないのことがある――――






胡桃「私が大好きだった――――」






胡桃「アイツのアンタへの想いまで、ウソにすんな!!」













胡桃「こんな時くらい… ちゃんと戦いなさいょ………」ポロポロ






塞「胡桃、もぅいいよ。 帰ろう……」




501 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:02:36.33 ID:vbwxdeeg0




胡桃「何よ、来ないでって言ったでしょ……」バカ…





塞「そりゃ来るよ、胡桃がツラそうな顔してる時だもの…」










ちゃちゃのん「あ、あの………」



塞「何か、ゴメンね…」



塞「胡桃は私が面倒みるから、ちゃちゃのんも涙 拭いてね…」








塞「ちゃちゃのんは私にとっても、大切な友達だけど―――」





塞「それ以上に、私は胡桃の理解者だから。 今は、手を貸してあげること出来ないから…」





ちゃちゃのん「う、うん………」




502 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:05:00.65 ID:vbwxdeeg0




ちゃちゃのん「その、ごめんの―――」





ちゃちゃのん「胡桃ちゃんを傷つけるつもりなんて――――ちゃちゃのん、なかったんじゃ……」





塞「うん、分かってる―――」





塞「きっと胡桃も、それが分かってるから 余計にツラいんだと思う……」











ちゃちゃのん「それに、ちゃちゃのんは―――」





ちゃちゃのん「ヒロちゃんからの告白を、受ける入れた時―――」







ちゃちゃのん「塞ちゃんの、純粋な想いを――――」





ちゃちゃのん「自分勝手な、言いわけに使ったんじゃ……」






塞「そう、なんだ―――――」





503 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:08:10.76 ID:vbwxdeeg0








塞「ほら、胡桃 鼻かんで」



胡桃「ん、ありがと…」チーーン






胡桃「ちゃちゃちゃんは…?」



塞「胡桃のこと気にしてたけど、とりあえず今は帰ってもらった」








胡桃「私―――ちゃちゃちゃんに、とっても酷いこと言っちゃった…」



塞「そう思うなら、今度一緒に謝ろうね」ヨシヨシ



胡桃「うん、そうする…」ズズ…







塞「それにしても、胡桃って意外と不器用だよね…」フフッ



胡桃「何それ…?」





塞「本当は洋榎のためだったんでしょ?」



胡桃「し、知らないわよ!! 私を振ったあんな薄情者のことなんて……////」




塞「ふふ、不器用な胡桃も可愛いって思うよ」




胡桃「塞――――」



504 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:12:03.61 ID:vbwxdeeg0





胡桃「いつも、ゴメンね……」



塞「ん、何のこと?」








胡桃「―――私、きっと塞のこと…」



胡桃「これまでにも、いっぱい傷つけてるよね…」



塞「私はこれくらいじゃ傷つかないから、平気だよ……」





胡桃「ウソ、絶対 今だって傷ついてる……」



塞「そんなことないってば…」ハハッ






胡桃「塞のそうやって、いつも一人だけ大人ぶってるポーズ、ちょっとキライ…」



塞「うん、そうだね…」





塞「私も、あんまり好きじゃない……」







うん、胡桃の言う通りだね。




これは私の本心を覆い隠すためのポーズ―――





これでも自分じゃ、結構 器用で素直な性格だと思ってたんだけどなぁ――――




505 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:14:41.65 ID:vbwxdeeg0




胡桃「私ね、ガンコだよ…」



塞「うん、知ってる」






胡桃「ずっと、気持ち―――変わんないかも知れないよ…」



塞「うん、知ってる」







胡桃「これからも塞のこと、いっぱい傷つけちゃうかもしれないよ…」




塞「良いよ。 私は傷つかないから…」






塞「大体 今まで私が胡桃のこと、どれだけ見てきたと思ってるのさ…」




506 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:16:22.94 ID:vbwxdeeg0





塞「胡桃が歩けるようになるまで、ずっとそばにいるからね―――」




胡桃「私が、一人で歩けるようになったら――?」






塞「それは、どうだろう…」







塞「それはまた―――その時にでも、考えれば良いんじゃないかな」ハハッ




胡桃「何それ、バカみたい…」




塞「そうかな…?」






胡桃「ううん… バカなのは、私もかな……」




507 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:21:00.65 ID:vbwxdeeg0




胡桃「何だか、トヨネたちにも 会いたくなってきちゃったな…」ヘヘッ



塞「あ、それいいね♪」





塞「今度の休日、一緒に会いに行こっか…?」








胡桃もちゃちゃのんも、きっと優し過ぎただけなんだ。




相手のことを思いやって、自分も相手も傷つけて。




純粋ゆえにいっぱい傷ついて、いっぱい泣いて。







私たちは、本当にどうしようもないくらいに未熟だ―――





でも私は、そんな不器用なこの子たちが大好きだし―――





とても愛おしくて、かけがいのないものだって感じてる――――




508 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/19(火) 22:24:35.46 ID:vbwxdeeg0






今はまだ、とても言えないけど――――






胡桃――――あなたのこと、私が絶対 幸せにするからね。
















そして、数日後の週刊誌の芸能記事にて―――





奇しくも、私たちはちゃちゃのんを見ることとなった――――




509 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/21(木) 18:18:45.44 ID:hPilukeK0




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〜〜 ちゃちゃのん 熱愛スクープ!? 〜〜




今、人気上昇中の若手アイドル・佐々野 いちご(ちゃちゃのん)に恋人発覚!?





お相手は同大学に通う、同性の女性との噂。



二人が某テーマパークにて、手を繋いで歩く姿などが目撃されている。



以前に二人は、同性カップル応援企画の挙式PR活動のモデルもしていたとか。





これまで、事務所移籍の際の噂以外では 異性の影を一切感じさせなかった



清純派の彼女だけに、そちらの人という可能性は意外と濃厚かもしれない。



現時点では仲の良い女友達という可能性も否定は出来ないが、真相の程は?






証言者M氏「とっても仲良さそうでしたし、可能性は高いんじゃないかな…」



証言者L氏「二人で観覧車に乗って、キスしてるようにも見えたけどね…」




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510 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/21(木) 18:24:32.62 ID:hPilukeK0




塞「胡桃、この記事読んだ?」



胡桃「う、うん… 洋榎はこのこと、知ってるのかな…」トゥルルルル…








洋榎「もしもし、いいんちょか」ピッ



胡桃「洋榎、ちゃちゃちゃんの記事は見た?」



洋榎「ああ、見たで……」





胡桃「それで、ちゃちゃちゃんとは もぅ話したの?」



洋榎「イヤ、連絡しても通じんかった…」



洋榎「事務所にも聞いてみたんやけど、アイツ 前から何日か休みとってたらしくて―――」



洋榎「事務所側もアイツが何処におるんかまでは、把握しとらんかったわ……」



511 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/21(木) 18:27:56.29 ID:hPilukeK0




胡桃「それで、どうするの―――?」



洋榎「どうする言われても、どうにもならんやろ…」ボソ




胡桃「どうにもならんって、ちゃちゃちゃん ほっとくの?」






洋榎「そら、気にはなるけど…」




洋榎「ウチ、アイツに酷いことしたんや。 ホンマ合わせる顔ないで……」







胡桃「洋榎のヘタレ!! 私を二人の仲人に呼ぶって約束、どうしちゃったのよ!!」





胡桃「つまんないことでウジウジしてる暇があったら、さっさと ちゃちゃちゃん捜しなさいよ!!」




洋榎「いいんちょ……」




512 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/21(木) 18:30:58.04 ID:hPilukeK0




胡桃「ホントはあの子だって、アンタのことが大好きなの!! それくらい、分かりなさいよ バカ!!」



洋榎「バカて、随分な言い草やなぁ。 大体 何でいいんちょに、そないなこと分かるんや…」



胡桃「…………」




胡桃(当たり前だよ。 だって私たちは、同じ人を好きになったんだもん…)




胡桃(貴方の良いところは、私たちが一番良く知ってるんだから―――)








胡桃「―――とにかく、さっさとちゃちゃちゃんを迎えに行くこと!!」




胡桃「それと、あの子に―――」




胡桃「『アンタなんかに心配されるほど、私はヤワじゃないわよ!!』って、文句言っといてよね!!」ジャーネ





洋榎「カカッ、了解やで。 いいんちょ――――」




洋榎「―――ホンマ、サンキューな…」





洋榎「やっぱいいんちょは、ええ女やで!!」





513 :塞 視点@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/21(木) 18:34:10.89 ID:hPilukeK0





ツー ツー ツー ツーー



胡桃「…………」




塞「胡桃、平気……?」









胡桃「ヒロエの、バッキャローーーーーーーーッ!!!!」




塞「―――――!?」ドキッ






514 :※塞さん視点 ここで終了です@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/21(木) 18:38:42.29 ID:hPilukeK0





胡桃「ふぅ、ちょっとだけ スッキリした…」ハァ




塞「胡桃……?」






胡桃「アハハ、ゴメンね。 もぅ平気だから、それじゃ〜 トヨネたちに会いに行こっか―――?」ヨイショ




塞「胡桃は、強いんだね」





胡桃「そうかな? それって、きっと塞のおかげもあると思うけど」ヘヘッ




塞「だったら、私も嬉しいかな……////」











塞「―――ちゃちゃのんは、大丈夫かな?」





胡桃「心配ないよ、アイツがついてるんだもん」







胡桃「後は任せたよ、洋榎――――」








515 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/23(土) 17:02:07.70 ID:Z9Gqc4rv0





【いちご日記】




×月××日(くもり)



大好きなばっちゃが おらんくなった。



お母さんはもぅ会えんゆーちょるけぇ、いちごはそんなん 絶対信じないんじゃ。



ばっちゃはきっとどっかにおって、今でもいちごのこと 見守ってくれとるんじゃ。





ばっちゃ…



いちごがええ子にしとったら、きっとまた会いに来てくれるんじゃろ…?




いちごの想い、この絵はがきにのせて ばっちゃにとどけるんじゃ…








×月××日(はれ)



夕べ、ばっちゃがいちごに 会いに来てくれたんじゃ。




あそこは、夢の中だったんじゃろうか?




夢でも何でも、ばっちゃと会えるなら いちごはええんじゃ。




やっぱり、ばっちゃは今でもいちごのそばに おってくれたんじゃね。




516 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/23(土) 17:04:39.32 ID:Z9Gqc4rv0




【いちご日記】




×月××日(あめ)



夕べもまた、ばっちゃとお話したんじゃ。




大好きなばっちゃ、ずっといちごのそばにいてくれにゃぁ イヤじゃよ。










×月××日(はれ)



婆っちゃとの思い出詰まった、鹿老渡を離れてだいぶ経つ。




今日はあのアイドルさんが呉でライブをするゆーんで、会いに行ったんじゃ♪




アイドルさん、前にいちごの出した手紙のこと 覚えちょってくれたんじゃ。




婆っちゃとも、一緒に行きたかったのぅ。




517 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/23(土) 17:06:17.03 ID:Z9Gqc4rv0




【いちご日記】




×月××日(はれ)



今日、いちごは婆っちゃも通った



あの鹿老渡高校に入学したんじゃよ。




そこで婆っちゃも知っちょる、あの子たちと再会出来たんじゃ。









×月××日(はれ)



双子ちゃんが入学してきて



ようやっと待望の鹿老渡高校 麻雀部の復活じゃ♪





いちごな…



婆っちゃと同じ、鹿老渡高校 麻雀部の部長さんになったんじゃよ。



いちごがみんなを引っ張っていけるよう、もっともっと頑張らんとの…




518 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/23(土) 17:09:00.64 ID:Z9Gqc4rv0




【いちご日記】




×月××日(くもり)



最後の全国大会



いちごのせいで、鹿老渡高校は 一回戦 敗退。




いちごはみんなの気持ちを 裏切ってしまったんじゃ。






婆っちゃ…



いちごは守りたい思っちょったもん…




また、守れんかったんじゃ―――









×月××日(あめ)



最近、婆っちゃに絵はがき届かんことが増えてきちょる。




もしかして、このまま婆っちゃと 会えなくなってしまうんじゃろか?





婆っちゃはいちごのこと、置いていったりはせんじゃろ?



お別れなんてイヤじゃよ…




別れは、怖いんじゃ…





519 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/23(土) 17:17:45.62 ID:Z9Gqc4rv0




【いちご日記】




×月××日(はれ)



二度目の大阪の桜。



今日な…



全国大会でいちごが負けた、あの愛宕さんたちと再会したんじゃよ。




不思議と恨みの気持ちとかはなく、いちごは純粋に嬉しいって思ったんじゃ。






婆っちゃ、どうしてじゃろうね?




いちごは何かが変わるような、そんな気がしたんじゃ。





520 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/23(土) 17:19:39.80 ID:Z9Gqc4rv0




【いちご日記】




×月××日(くもり)



あのイブの夜以来、婆っちゃと会えちょらん。





婆っちゃ、いったい何処へいってしまったんじゃ?





いちごにゃぁ、婆っちゃが必要なんじゃ。







会いたい…






ただ会って、またお話がしたいんじゃ…










迷子のいちごを、一人きりにしないで欲しいんじゃ――――










521 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/24(日) 00:04:12.64 ID:5ceRQtLW0











ここは…



山と海とトンボロの島。



おそらく明治の頃から 何百年と変わっちょらんじゃろう、潮の薫る古い碁盤の目の町並み。





遮蔽物一つない、見渡す限りの蒼い空と碧い海。



あの小高い丘に見えるんは、子どもん頃 よぅ通ったお宮さんじゃろか。





全てが懐かしいと思えるこの風景。




ここはちゃちゃのんの故郷、鹿老渡かの……?










雪じゃ……




こんな季節に珍しいのぅ…?




でも、潮っけ多いここでは きっと積もらんじゃろね。





積もることさえ許されん 淡い雪たちが、何故だか 今はとても悲しく思われて……





522 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/24(日) 00:06:45.29 ID:5ceRQtLW0






―――




あそこにおるんは…





誰じゃったかの……?







ちゃちゃのん、たぶんあの人のこと…







知っちょった はずなんじゃが―――――







523 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 18:23:00.99 ID:MUKpKKPS0






あぁ、そうじゃ…






アレは――――若い頃の、ばっちゃ…









ちゃちゃのんの知っちょる ばっちゃとは









ずいぶんと違うんで、気づかんかったんじゃ――――







524 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 18:35:05.98 ID:MUKpKKPS0





あぁ、ばっちゃ…




ずっと会いたかったんじゃよ―――





いっぱいいっぱい、お話したかったんじゃ―――






もぅ何処にも、いなくなったりしたらイヤじゃよ――――









ばっちゃ―――――






ばっちゃ―――







525 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 18:37:41.42 ID:MUKpKKPS0







いちご―――




いちご―――――




いちご―――――――







「おい、いちご!! しっかりせんか―――!!」







ちゃちゃのんを必死に呼ぶ声、誰じゃろう?





なんでそんな心配そうな顔で、ちゃちゃのんのこと見とるんじゃ?





ばっちゃと会えて、今 ちゃちゃのんはとっても幸せな気分なんじゃよ。







もぅ少し、このままでいたかったんじゃが――――どうやら意識は覚醒へと向かっとるようじゃ。








『サヨナラ、ちゃちゃのちゃん―――――』






526 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 18:39:47.77 ID:MUKpKKPS0






洋榎「おい、いちご!! 自分、しっかりせんか!!」ユサユサ










ちゃちゃのん「あ、ヒロちゃん――――?」





洋榎「こんアホンだら。 ようやっと見つけたでぇ!!」ギュッ









ちゃちゃのん「婆っちゃ、は――――?」





ちゃちゃのん「それに、あの淡雪―――――?」





洋榎「―――――?」








ちゃちゃのん「そか、アレは―――――全部、ちゃちゃのんの夢だったんじゃな……」ツゥーー







527 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 18:46:59.16 ID:MUKpKKPS0






洋榎「いちご―――?」





洋榎「自分、泣いとるんか――――?」






ちゃちゃのん「へへ… 大好きじゃった人に、また会えたんじゃ――――」





洋榎「そか、良かったな」










ちゃちゃのん「うん、そんでな―――――『サヨナラ』って…」





洋榎「そうか―――」









ちゃちゃのん「もぅ独りじゃないけぇ――――婆っちゃがおらんでも 大丈夫じゃろって…」







ちゃちゃのん「最後のお別れ、言われてもうたんじゃ……」





洋榎「……………」




528 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:11:24.39 ID:MUKpKKPS0





ちゃちゃのん「へへっ……」




洋榎「ん……?」










ちゃちゃのん「迷子のちゃちゃのん―――また、見つけ出してくれたんじゃね」







洋榎「あ、当ったり前やろ。 自分が迷子の時は、何度だってウチが見つけ出したるで―――」






ちゃちゃのん「うん、ありがと……」






529 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:14:40.20 ID:MUKpKKPS0





洋榎「しっかし… まさか鹿老渡まで追って来ることになるとは、流石に思わんかったで――――////」





ちゃちゃのん「ヒロちゃんが来るなんて、ちゃちゃのんも驚いたんじゃ……」ヘヘッ








幼い日に夢見た、魔法の解けたシンデレラを見つけてくれた王子さま。





それとは、随分と違ったけぇ…








うぅん、そうじゃない。





この人は、あの日の王子さまの代わりなんかじゃない。






目の前のこの人は―――――きっとちゃちゃのんだけの……





530 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:17:55.02 ID:MUKpKKPS0





洋榎「そんで自分、何だってこないなトコで倒れとったんや?」



ちゃちゃのん「ここはの… 婆っちゃが大好きじゃった、思い出の場所なんじゃ…」



ちゃちゃのん「ここに来れば、また婆っちゃとお話が出来るかもしれん 思っての……」




ちゃちゃのん「あぁ… 婆っちゃゆーんは、ちゃちゃのんが大好きじゃった―――」



洋榎「知っとるで―――」



ちゃちゃのん「ほぇ―――!?」








洋榎「コレに自分と婆さんとの思い出、いっぱい書かれとったからな」スッ




ちゃちゃのん「それは、ちゃちゃのんの―――」




洋榎「スマン。 これまで使うことのなかった合鍵、使わせてもらったんや」




洋榎「そんで、悪いとは思ったんやけど――――自分の部屋にあった、コレも読ませてもろた…」




531 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:26:57.85 ID:MUKpKKPS0





洋榎「いちご日記――――」




洋榎「この日記帳は、自分がこれまで天国の婆さん宛てに送った絵はがきを、スクラップしたモンやったんやな」



洋榎「最初のうちは鹿老渡の実家宛てになっとるが、最近のは出さずにそのままスクラップしとるな」



ちゃちゃのん「…………」






ちゃちゃのん「それは… 夢の中で婆っちゃと会うための、一種のおまじないだったんじゃよ」



ちゃちゃのん「それを書いた夜は、いつも夢の中に婆っちゃが現れて、ちゃちゃのんとお話してくれたんじゃ」



ちゃちゃのん「最初のうちは鹿老渡の実家宛に送っとったんじゃが、お母さんにもぅ止めなさいって怒られてしもうて…」




ちゃちゃのん「そっからは、書いてスクラップするだけにしとったんじゃ…」



ちゃちゃのん「そんでも、婆っちゃにゃぁ しっかり届いたけぇ―――」









ちゃちゃのん「でも、最近は――――それでも婆っちゃと、全然 会えなくなって…」




洋榎「そんで休みをとって、婆さんの命日に鹿老渡に帰っとったんやな……」



ちゃちゃのん「う、うん……」コクッ






洋榎「何にせよ… コイツが、自分が何処におるんか 教えてくれたんやで…」




ちゃちゃのん「そか、婆っちゃが――――」





532 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:34:46.11 ID:MUKpKKPS0





洋榎「そんで、大好きな婆さんとは――――会えたんやな?」




ちゃちゃのん「うん――――」







ちゃちゃのん「夢の中のちゃちゃのんは、何故だか小学生だったんじゃが…」




ちゃちゃのん「そこでは桜も散り始めちょるゆーに、雪が降っとってのぅ―――」





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは、その淡い雪が積もらんことを知っちょったけぇ――――何じゃかとても悲しくなって…」





ちゃちゃのん「シクシク泣いとったら、いつもと変わらん婆っちゃが――――」





ちゃちゃのん「まぁ〜 見た目は随分と違ったんじゃけど、婆っちゃが来てくれたんじゃ」




洋榎「…………?」







ちゃちゃのん「婆っちゃはちゃちゃのんが泣き止むまで、ただずっとそこにいてくれて…」





ちゃちゃのん「泣き止んだ後も、ちゃちゃのんの話を ただ黙って聞いてくれとったんじゃ―――」





洋榎「…………」





533 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:39:09.64 ID:MUKpKKPS0





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんの話が一通り終わったとこで―――」





ちゃちゃのん「婆っちゃは、『今日はお別れを言いに来たんじゃ―――』って……」





ちゃちゃのん「モチロン、ちゃちゃのんは そんなん嫌じゃって 引き止めようとしたんじゃが…」






ちゃちゃのん「『全てのモノにゃぁ、必ず始まりと終わりがあるんじゃよ―――』って、言われてしもうた…」







ちゃちゃのん「それに、『もぅ独りじゃないけぇ、婆っちゃがおらんでも 大丈夫じゃろ』って―――」









ちゃちゃのん「『サヨナラ、ちゃちゃのちゃん』って――――」







洋榎「いちご――――」






534 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:41:08.16 ID:MUKpKKPS0





洋榎「せやけど、こんな道端で 寝とるヤツがおるか…」



洋榎「一応、年頃の女の子やろ。 自分、どんだけ無防備やねん……」アホ…



ちゃちゃのん「えへへ、申しわけないんじゃ…」









ちゃちゃのん「でも、ヒロちゃん。 よぅこん場所まで分かったのぅ?」




洋榎「あぁ、それはな―――」







「ちゃちゃの〜〜〜〜ん!!」



ちゃちゃのん「ほぇっ――!?」



洋榎「お、ようやく来たみたいやな……」ヒヒッ






快活な長女さん「ちゃちゃのん、ホンに久しぶりじゃの〜〜〜!!」ダキッ




ちゃちゃのん「えぇっ、何で!?」




535 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:44:44.40 ID:MUKpKKPS0




陽気な妹ちゃん「あっ、お姉ちゃんばっかり こすいんじゃ!! ボクもボクも〜〜〜!!」ダキッ



しっかりものの妹ちゃん「ちゃちゃのんの、あんぽんたん。 ぶち心配したんじゃけぇ…」ウルッ



物静かな女の子「フフッ、私もいますわよ〜〜〜♪」フリフリ




ちゃちゃのん「鹿老渡のみんな… 一体どうして……?」アワワッ








洋榎「自分、ケータイ 部屋に忘れてったやろ」



洋榎「家探ししとる時に着信あってな、見覚えある名前やったから ウチが代わりに出たんや」



ちゃちゃのん「あ……」





快活な長女さん「雑誌の記事読んで、心配だったんで電話したんだけど―――」



快活な長女さん「いや〜〜〜 まさかそんお相手が、あの姫松の愛宕さんだったとは ビックリじゃよね〜〜〜」アハハッ



洋榎「ちゅーわけで、先にちゃちゃの居てはりそうな場所を電話で聞いとったんや」ニシシ



536 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:47:44.79 ID:MUKpKKPS0





ちゃちゃのん「………………」



物静かな女の子「いちごさん、どうかされまして?」



陽気な妹ちゃん「ちゃちゃのん、元気出せ〜〜〜〜〜!!」



しっかりものの妹ちゃん「アンタの無駄元気を、ちゃちゃのんに分けてあげたいのぅ」









ちゃちゃのん「みんな、あの時はゴメンの……」





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんが、不甲斐なかったせいで――――」ポロポロ




快活な長女さん「誰もちゃちゃのんのせいなんて思ってないけぇ」




快活な長女さん「自分 責めるんも、もぅそれくらいにしときんさい―――」ナデナデ




しっかりものの妹ちゃん「ちゃちゃのんってば、気にしすぎなのよ…」




537 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:49:33.49 ID:MUKpKKPS0




ちゃちゃのん「じゃって、ちゃちゃのんのせいで―――」




ちゃちゃのん「鹿老渡高校は……」




物静かな女の子「それこそ、ちゃちゃのんは関係ないでしょう…」








洋榎「鹿老渡高校の廃校―――」



洋榎「ちゃちゃは、一度も言わんかったし…」



洋榎「ウチ、今日の今日まで ちっとも知らんかったで……」





しっかりものの妹ちゃん「大体、アレはずいぶん前から決まってたことだもんね…」




陽気な妹ちゃん「うん、ちゃちゃのんは何も悪くないんじゃ!!」




洋榎「せやな、どうせ全部 ウチが悪いんやし……」ズーーーン




快活な長女さん「いやいや、言ってない言ってない!!」ドードー





538 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:52:20.81 ID:MUKpKKPS0





陽気な妹ちゃん「の〜 の〜 これから、みなで探検しようよ!!」


快活な長女さん「おっ、ええのぅ♪ せっかく集まったんじゃ、久しぶりにみなで探検ごっこでもする?」


しっかりものの妹ちゃん「たまにゃぁ、アンタもええことゆーのぅ…」


陽気な妹ちゃん「えへへ〜、もっと褒めてくれてもええんじゃよ〜〜」ニッコニコ


しっかりものの妹ちゃん「このポジティブ、とろふわ脳め…」クッ




物静かな女の子「ちゃちゃのんと愛宕さんも、一緒に行きましょう♪」ニコッ


洋榎「探検ええやん。 ウチそういうの大好きやで〜〜♪」



洋榎「あ、それとウチのことは洋榎で頼むわ♪」ニッ


快活な長女さん「ふふ… 了解、洋榎♪」


ちゃちゃのん「……………」





洋榎「ほれほれ。 ちゃちゃもそないしょぼくれとらんで、今日は童心に返って れっつらごーやで〜〜!!」ギュッ



ちゃちゃのん「あ、ヒロちゃん……///」




物静かな女の子「あらあら、お二人とも本当にラブラブですのね」ホホホッ



洋榎「うっ、これはその… その場のノリっちゅうか なんちゅうか……///」



ちゃちゃのん「……………////」



539 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/27(水) 20:58:12.40 ID:MUKpKKPS0




陽気な妹ちゃん「川口隊長!! そこに巨大なヤシガニが!?」ビシッ


洋榎「なんやて!? そないな生物がいったいどこに――――」ワサワサ


洋榎「―――て、こりゃ ウチ自慢のヤシガニヘッドやで〜〜〜!!」ズビシッ



陽気な妹ちゃん「「わーい!! 変テコ動物いっぱいじゃ〜〜!!」 デデデッ



快活な長女さん「あはは、アイツら何をやっとるんじゃ…」


しっかりものの妹ちゃん「アホが二人に増えたんじゃ…」







メイド服の少女「ほんだら、はんだら、すかどろば―――」



メイド服の少女「命が惜しけりゃ置いてきな、燃やして砕いて飲み込むぞ。 孫子の代まで居直るぞ〜〜〜♪」ウフフッ



しっかりものの妹ちゃん「うふふって…」



物静かな女の子「ていうかなんの歌ですの、今のは?」



メイド服の少女「子守唄ですよ♪」




ちゃちゃのん「ちゅーか、誰じゃ… 何でメイド服…?」



キリリウサ「気に、するな…」キリッ





「私、助手なので…♪」ペカー
540 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/30(土) 21:14:00.01 ID:J+rQ37440





ちゃちゃのん「―――みんな、あん頃と変わっちょらんのぅ…」ヘヘッ



物静かな女の子「いちごさんだって、ちっとも変わってませんわよ」フフッ



ちゃちゃのん「そ、そうじゃろか……?」




物静かな女の子「えぇ、いちごさんは何年経っても変わらぬ、至高の愛らしさですわ〜〜〜♪」ハァハァ スンスン



ちゃちゃのん「アハハ、ゆうちゃんは初対面の頃とは だいぶ印象変わったのぅ…」









快活な長女さん「ねぇ… これからみなで、あっこに行ってみない?」



陽気な妹ちゃん「あはは、サンセー♪」



しっかりものの妹ちゃん「ええと思う…」



物静かな女の子「まぁ、それは素敵ですわね♪」




ちゃちゃのん「ほぇ―――?」



541 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/30(土) 23:05:39.59 ID:J+rQ37440




【旧鹿老渡高校 麻雀部部室】



洋榎「おぉっ、ここが鹿老渡 麻雀部の部室か!!」



ちゃちゃのん「まだ結構 綺麗じゃね……」ドキドキ



快活な長女さん「そうじゃな。 ちぃーと埃 溜まっとるけぇ、払えば全然大丈夫そうじゃ♪」






シャーーーー


しっかりものの妹ちゃん「それにカーテン開ければ、明かりの方も充分じゃの…」



陽気な妹ちゃん「ほんじゃ、早く机を並べちゃおっか〜〜♪」ガタガタ



物静かな女の子「あっ、私も手伝いますわ♪」ヨイショ




ちゃちゃのん「机とか並べて、ここで何をするんじゃ?」



542 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/30(土) 23:07:09.13 ID:J+rQ37440




快活な長女さん「何って… 麻雀部の部室に、こんメンバーですっことゆーたら―――」



快活な長女さん「麻雀しかないじゃろ!!」ドンッ



ちゃちゃのん「雀牌、持ってきちょったんか…」





快活な長女さん「ま、何事も用意周到がアタシのモットーじゃけぇの」フフン



ちゃちゃのん「用意周到は、ちゃちゃのんのモットーじゃよぉ!!」








快活な長女さん「洋榎、アタシたち鹿老渡麻雀部との勝負――――受ける度胸はあるかの?」




洋榎「勝負か―――面白いやん」




洋榎「その勝負、買うたるでぇ〜〜!!」



543 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/01/30(土) 23:12:45.79 ID:J+rQ37440




ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…


洋榎「ロンやで…」パララ


しっかりものの妹ちゃん「うっそ、やられたわ…」



快活な長女さん「元姫松高校 不動のエース・愛宕洋榎、流石じゃのぅ」






洋榎「カカッ… ウチの本気、まだまだこんなもんやないで〜〜〜!!」ダンッ


陽気な妹ちゃん「あっ、それロンじゃ♪」ヤッホーー パララ




洋榎「ていうか、その役って まさか―――!?」



陽気な妹ちゃん「うん、ちゃちゃのんがやられた清老頭って役じゃよ〜♪」ニシシ





洋榎「そ、そんなん――――考慮しとらんで…」ガバッ



ちゃちゃのん「こりゃ〜〜 そりゃぁ誰の真似じゃ!?」



洋榎「誰て… 清老頭くらってポロポロ泣いとった、自分しかおらんやろ?」



ちゃちゃのん「大体 ちゃちゃのんは、そんな大股広げたりなんかしとらんわ……///」プンプン



一同((してたけどね……))






陽気な妹ちゃん「これでちぃーとは、あん時のちゃちゃのんの 意趣返しってヤツが出来たじゃろか?」ヘヘヘッ




洋榎「流石、ウチら姫松に5万点以上もの差をつけた先鋒やな。 自分、ホンマ強いで…」




洋榎「最近、まともな勝負しとらんかったからな。 何やメッチャ楽しくなってきたで!!」ワクワク





544 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/02(火) 18:19:04.78 ID:H2hbcKH+0




ジャラ ジャラ ジャラ ジャラ…


快活な長女さん「の〜 ちゃちゃのん…」



ちゃちゃのん「――――?」







快活な長女さん「アタシさ…」



快活な長女さん「ちゃちゃのんのこと、ずっと好きだったんじゃよ……」



ちゃちゃのん「ほぇっ!?」








快活な長女さん「ちっとも気付いとらんかったじゃろ…」




快活な長女さん「ちゃちゃのん、そーゆーの昔から鈍かったけぇのぅ―――」フフッ




ちゃちゃのん「うぅっ、ごめんのぅ……///」カァァ…



545 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/02(火) 18:29:09.45 ID:H2hbcKH+0




陽気な妹ちゃん「アハハ、実はボクもだったりして〜〜〜♪」




しっかりものの妹ちゃん「その、私も… 本当のお姉ちゃんみたいに、好いとったんじゃよ……////」テレテレッ





洋榎「何やねん。 自分モテモテやないか」



ちゃちゃのん「えへへ……////」テレッ




快活な長女さん「ちゃちゃのんは、ウチらのアイドルじゃけぇのぅ〜〜」ケラケラ





物静かな女の子「そのぅ… 実は、私もだったりして〜〜〜///」ポッ ユビクルクル



快活な長女さん「イヤ… アンタのは、みな気付いとったじゃろ」



物静かな女の子「ななっ!! そんなバカなですわ!?」ショック!?



鹿老渡メンバー「「アハハハハ…」」






ちゃちゃのん「みんな……」



洋榎「へへッ……」



546 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/02(火) 18:39:22.62 ID:H2hbcKH+0





快活な長女さん「ま〜 いろいろあるだろうけどさ、アタシらはいつだってアンタの味方だからさ…」



快活な長女さん「そのこと、忘れないでよね――――」




陽気な妹ちゃん「うん、ボクたちずっと友達だよ♪」



しっかりものの妹ちゃん「今度、大阪に遊びに行くけぇの…」



物静かな女の子「メールも送りますわね〜〜」




ちゃちゃのん「みんな、どうもありがとうの……」グスッ



陽気な妹ちゃん「アハハ、ちゃちゃのんがまた泣いた〜〜〜♪」



しっかりものの妹ちゃん「幾つになっても、ちゃちゃのんは泣き虫さんじゃのぅ…」



物静かな女の子「ウフフ、お宝写真ですわ♪」パシャパシャ



ちゃちゃのん「うっ、うるさいんじゃよぉ〜〜!?」







快活な長女さん「洋榎、ちゃちゃのんのこと―――支えてあげてな」



洋榎「おっ、おぅ…」






陽気な妹ちゃん「ヒロエ、また麻雀しようね〜〜〜♪」



洋榎「上等やん。 自分との決着は、プロの舞台で付けたるで!!」カカッ



陽気な妹ちゃん「プロかぁ〜〜 楽しそうじゃね♪ ボクも頑張って目指してみよっかな…」





547 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/02(火) 18:45:29.21 ID:H2hbcKH+0





洋榎「アイツら、ホンマ ええヤツらやったな…」



ちゃちゃのん「そうじゃろ、ちゃちゃのんにゃぁ 勿体無いくらいの友達じゃ…」




ちゃちゃのん「すっかり暗くなってしまったのぅ……」









洋榎「ちゃちゃ……」




ちゃちゃのん「ん―――?」





洋榎「空、見てみ……」





ちゃちゃのん「空…? あぁ、本当じゃ…」




ちゃちゃのん「鹿老渡の夜空、凄いじゃろ―――」





洋榎「あぁ、満天の星空… 話には聞いとったが、これは想像以上やで――――」





ちゃちゃのん「そうじゃろ、ここはちゃちゃのんの自慢じゃけぇ♪」ヘヘッ





548 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/04(木) 21:06:36.62 ID:fisR6t9X0





洋榎「ん… あっちの茂みの方でも、何か光っとんで…?」




ちゃちゃのん「本当じゃ、チカチカしちょるね。 アレって…」テテテッ









洋榎「お〜 これってもしかして閉店だから早よ帰れでお馴染み、ホタルの光っちゅーヤツか?」



洋榎「そういや、ウチ 実際にホタル見るのって初めてやな〜〜」カンドー



ちゃちゃのん「この子は、日本の固有種。 ヒメボタルのメスみたいじゃね…」



洋榎「そこまで分かるんか?」





ちゃちゃのん「うん… ヒメボタルはゲンジやヘイケよりも小ぶりで―――」



ちゃちゃのん「冷光も、こういうチカチカとした短い明滅を繰り返すんじゃ」



洋榎「冷光って…?」




ちゃちゃのん「ホタルとか生き物の出す光は電球とかと違って熱を殆ど出さんけぇ、そう呼ぶんじゃよ」




ちゃちゃのん「それにヒメボタルは清流じゃなく、こういう茂みとか森に住んどるんじゃ…」



洋榎「へぇ〜〜 そうなんやな…」




549 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/04(木) 22:32:57.69 ID:fisR6t9X0





ちゃちゃのん「まるでマッチ売りの少女が最後に灯す、マッチの炎みたいじゃね…」




洋榎「何やねん、その微妙な例えは…」




ちゃちゃのん「…………」









洋榎「そういや、普通 ホタルってもっとたくさんでおらへん? 何で一匹だけなんやろな?」




ちゃちゃのん「ヒメボタルの羽化は、大体5月から6月―――」




ちゃちゃのん「この子は、ちょっと あわてんぼさんだったのかもしれんのぅ…」




洋榎「間違って、他のヤツらよりも早く起きてまったっちゅーことか…」








洋榎「せやけど、確かホタルの寿命って短いんやろ…?」





ちゃちゃのん「うん、成虫になったホタルの寿命は1、2週間―――」





ちゃちゃのん「そして成虫になったヒメボタルのメスの寿命は、2日から3日じゃ――――」




洋榎「えっ、そない短いんか!?」




550 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/04(木) 22:36:53.89 ID:fisR6t9X0




ちゃちゃのん「それにヒメボタルのメスは、仲間を探そうにも空を飛べないんじゃ…」




ちゃちゃのん「じゃけぇ… こうやって、必死に光を出して―――」




ちゃちゃのん「誰かが自分を見つけてくれるのを、ただ待ち続けとるんじゃよ――――」




洋榎「…………」







ちゃちゃのん「でも… それもこの時期では、きっと駄目じゃろう…」





ちゃちゃのん「たぶん、この子は――――このまま誰とも出会えないまま……」







洋榎「探してみようや―――」





ちゃちゃのん「ヒロちゃん――――?」





551 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/04(木) 22:41:40.66 ID:fisR6t9X0




洋榎「そないなこと、勝手に決めつけんなや―――」




洋榎「コイツと同じあわてんぼが、どっかにおるかもしれんやろ…」





洋榎「諦める前にまず動け――――とりあえずやってみようが、ウチの信条やねん」





洋榎「ウチらでコイツの仲間、探してみようやないか――――?」ニッ




ちゃちゃのん「うん、そうじゃね――――」ニコッ



































ガサガサ…



洋榎「おっ―――!?」




ちゃちゃのん「あ――――!?」




552 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/04(木) 22:49:01.67 ID:fisR6t9X0





ちゃちゃのん「他のヒメボタルたちの生息場所―――ホンにあったんじゃ…」




洋榎「何や… 多少 時期はずれ言うても、結構 群れになっとるやないか」ヘヘッ




ちゃちゃのん「うん、今年はこの辺り。 いつもよりも暖かかったんじゃろか…」





洋榎「それんしても、自分 泥だらけやで〜〜」カカッ




ちゃちゃのん「うぅっ、それはヒロちゃんもじゃろぉ〜〜〜!!」









洋榎「ほんじゃ、さっきのあわてんぼは ここに放したるか…」




ちゃちゃのん「うん、そうじゃね♪」






ちゃちゃのん「仲間、見つかってホンに良かったのぅ――――」





553 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/07(日) 23:12:25.63 ID:fjDBkjeA0




洋榎「…………」




ちゃちゃのん「…………」




洋榎「綺麗やな…」




ちゃちゃのん「うん……」





ちゃちゃのん「よぅこうやって、婆っちゃや鹿老渡のみんなとホタルを見たもんじゃ…」







洋榎「冷たい光っちゅうわりには、こうやって集まっとると暖っかそうやな」




ちゃちゃのん「うん、そうじゃね…」




ちゃちゃのん「この光の群れを見とると、何だか胸のところが熱くなってくるんじゃ…」








ちゃちゃのん「蛍の光は、死者たちの魂―――」




洋榎「――――?」





ちゃちゃのん「昔からそう言われるくらい、蛍の光は人の心を惹きつけ 揺さぶるものだったんじゃ…」




554 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 01:35:54.97 ID:L/4pCBH50




ちゃちゃのん「きっと昔の人はこの儚げな光を、失った大切な人の魂に見立てて―――」




ちゃちゃのん「その人の死後の幸福なんかを、願ったりしたんじゃろうね」



洋榎「…………」






ちゃちゃのん「成虫になったホタルはな、何も食べず 綺麗な水だけで生きとるんじゃ―――」




ちゃちゃのん「じゃけぇホタルの光は、こんなにも綺麗で儚げなんじゃろか――――」




洋榎「ホンマ、切ない気持ちになる生命の灯火やな…」






ちゃちゃのん「ぷっ… ヒロちゃんもなかなかに詩人さんじゃのぅ♪」





洋榎「ア、アホッ!? こないな時に、茶化すなや…///」ツラレタ…




ちゃちゃのん「へへっ、ゴメンのぅ…」ツイ…



555 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 02:40:15.69 ID:L/4pCBH50




ちゃちゃのん「ちゃちゃのん昔から、こういう綺麗なものに強く惹きつけられとったんじゃが―――」




ちゃちゃのん「どうして綺麗なものって、こんなにも人の心を切ない気持ちにするんじゃろうね――――」




洋榎「この美しさも永遠やないって、見とるモンにそう思わせるんやろか?」




ちゃちゃのん「綺麗なものっちゅうんはドコか儚げで、滅びの象徴みたいな側面もあるのかもしれんね」








ちゃちゃのん「蛍の光は、死者たちの魂―――」




ちゃちゃのん「亡くなった人のこといつまでも忘れず、大切に慕い続ける心はとっても尊いと思うんじゃが―――」




ちゃちゃのん「あまり気持ちがそっちに向き過ぎると、自分も死者の側に引っ張られるような感覚になるんじゃ――――」




洋榎「て、それはちょっとヤバイやろ…」




洋榎「感受性 強すぎるのも考えもんやで〜〜」





ちゃちゃのん「あはは… それ小さい頃に、よぅ言われたんじゃ…」




556 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 02:43:26.88 ID:L/4pCBH50





ちゃちゃのん「でも、ちゃちゃのんな―――」




ちゃちゃのん「強くて、自由で、したたかで、たとえ泥の河の中でも立派に咲き誇れるような―――」




ちゃちゃのん「そんな力強くて、しぶとい花もええもんじゃなって――――ヒロちゃん見てて、そう思ったんじゃ」






洋榎「腐臭漂う泥の河って、そら大阪もんならカーネルオジさんかて道頓堀ダイブしてまうけど―――」





洋榎「とりあえず自分、今のは絶対 褒めてへんやろ?」





ちゃちゃのん「へへッ… それはどうじゃろね」フシュウハ イットランジャロ…







ちゃちゃのん「でもちゃちゃのんは、そんなヒロちゃんじゃけぇ――――」





557 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 02:49:27.26 ID:L/4pCBH50






洋榎「ちゃちゃ……」




ちゃちゃのん「ん………」








洋榎「その… 観覧車でのこと―――」





洋榎「あの時は、ホンマ すまんかった――――」









―――恋人の魔法は… もぅ解けてしもぅたみたいじゃね…





―――続きは… ヒロちゃんが一番大切な時のために、とっておいての……








洋榎「ウチは、ホンマ アホたれや――――」ギリッ





ちゃちゃのん「―――もぅ、ええんじゃ…」









ちゃちゃのん「それにちゃちゃのん――――そんなに、イヤじゃなかったよ……////」モジモジ






洋榎「ちゃちゃ――――////」





558 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 02:53:26.64 ID:L/4pCBH50





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんの方こそ、ゴメンの…」





ちゃちゃのん「ヒロちゃんにも、胡桃ちゃんにも、塞ちゃんにも…」





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは、随分と酷いことをしたんじゃ――――」









洋榎「そんなん、ウチは別に気にしてへん――――」





洋榎「いいんちょかて、『アンタなんかに心配されるほど、私はヤワじゃないわよ!!』言うとったで…」





ちゃちゃのん「アハハ、胡桃ちゃんはやっぱり素直じゃないのぅ…」





洋榎「まったくやで、いいんちょは もぅちょい可愛げあった方がええと思うわ」ヘヘッ







ちゃちゃのん「………」




洋榎「………」






ちゃちゃのん「――――ヒロちゃん……」





洋榎「………ん?」









559 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 02:56:32.97 ID:L/4pCBH50












ちゃちゃのんと―――――別れてもらえんじゃろか。












560 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 02:59:47.97 ID:L/4pCBH50






洋榎「…………」







ちゃちゃのん「…………」












洋榎「――――自分が、そうしたい言うんやったら」










洋榎「ええで―――――」












561 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/08(月) 03:02:21.44 ID:L/4pCBH50









ちゃちゃのん「えへへ… これでまた、お友達に逆戻りじゃね…」







洋榎「せやな… それも案外、悪くないかもしれん…」カカッ














ちゃちゃのん「の〜 ヒロちゃん―――」






ちゃちゃのん「明日はこのまま二人で、広島観光でもどうじゃろ?」






ちゃちゃのん「呉とか、たけはらとか――――ちゃちゃのんの育った町なんかを、いろいろ紹介したいんじゃ♪」





洋榎「おっ、そいつは楽しみやな♪」








流石に何年も人のおらんかった、婆っちゃの実家に泊まるわけにもいかんけぇ。






その日の夜は、ヒロちゃんと二人で鹿老渡にある宮林の旅館に泊まることにしたんじゃ。





562 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/12(金) 21:55:09.78 ID:wkruOXaw0





その日の夜―――





ちゃちゃのんは婆っちゃのこと、家族のこと、鹿老渡の友人たちのこと





とにかく、たくさんのことを――――ヒロちゃんに話して聞いてもらったんじゃ。






そしてヒロちゃんも、そんなちゃちゃのんに自分の色んなことを話して聞かせてくれた。






良いとこ、悪いとこ、お互いにまだまだ知らないとこ、たくさんあるって改めて気づかされたんじゃ。






563 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/14(日) 12:02:09.43 ID:J7jFRzcy0





たぶんちゃちゃのんは―――





これまでこの人のこと、本気で見ようとしとらんかった。






それはきっと、ちゃちゃのんが弱かったからなんじゃろぅ。







ちゃちゃのんは、大事なものを選ぶ痛みから逃げとったんじゃ。







でもそれじゃいけないって、みんなが教えてくれたけぇ。









今度こそ、ちゃちゃのんは――――






目の前の現実と向き合って、ほんとの気持ちを見つけようって思うんじゃ。







そうせんことにゃぁ、ちゃちゃのんは前に進めないって――――ようやっと分かったけぇ。









564 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/16(火) 20:02:31.00 ID:EzFSoAzO0




お父さ〜〜ん…



お母さ〜〜〜ん…




うぅっ…



二人とも、いったい どこにおるんじゃろぅ……








それは私の中にあった、とても古い記憶の断片―――




見慣れぬ夜の街並みを、優しく照らし出す幻想的な光の小路。




光の正体は竹筒に入れたろうそくが発つ、ほのかに揺らぐ数千本もの竹灯り。




安芸の小京都と呼ばれる父の故郷で、江戸の頃から続く古い街並みを明るく彩る光のお祭り。





その日の私は夕方から父の馴染みのお店で美味しいものを食べ、日が落ちた後には美しい光のアートに心を躍らせていた。





565 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/16(火) 20:07:58.43 ID:EzFSoAzO0




うわぁ〜〜〜



すごいんじゃ〜〜



とってもきれいじゃね〜〜〜♪





こらこら、いちご…



そがーにはしゃぐと、まくれてまうぞ〜〜





ま〜 ちぃーとくらい、えーがの。



こがー嬉しげないちごは、珍しいけぇのぅ。






えへへ…



お父さん、お母さん、大好きじゃよ…♪









大切な人たちと過ごした―――




とてもささやかだったけれど、かけがえのない、暖かな夢のような時間。





今にして思えば―――




これが私の憧れ続けた、きらきらと輝く光の原風景だったんじゃろうか――――?






566 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/18(木) 19:36:39.45 ID:L8tVPTIB0





洋榎「ぷっはぁ〜〜 朝飯も美味かったし、何や港の香りが落ち着くで〜〜!!」



ちゃちゃのん「じゃろ♪ ここは鹿老渡でも有名な旅館で、江戸の頃にゃぁ材木なんかを扱っとったそうじゃ」



洋榎「確かに白壁の土蔵とか、何や由緒ありげな感じやもんな〜〜」








洋榎「おっ、何やろ… 海の向こうの方、何や島影みたいの見えんで?」



ちゃちゃのん「瀬戸内を挟んで、あっちにうっすら見えちょるんは、たぶん四国の愛媛じゃな…」





ちゃちゃのん「ここの入江は静かじゃけぇ」



ちゃちゃのん「その昔は潮待ちの港として、日向の国の藩主さんなんかも立ち寄られたりしたっちゅう話じゃよ」



洋榎「へぇ〜〜 今は人影も少ないみたいやけど、昔は結構賑わっとったんやなぁ…」



ちゃちゃのん「うん… 婆っちゃが若い頃なんかは、小学校もまだあったそうじゃし」



ちゃちゃのん「今より、もっともっと人も多かったそうじゃ…」




567 :駄文@鹿老渡について [sage saga]:2016/02/18(木) 19:42:28.87 ID:L8tVPTIB0



ここでちゃちゃのんを育んだ鹿老渡という土地の説明をば少し(興味のない方はすっ飛ばして下さい)





鹿老渡は倉橋島(広島県呉市倉橋町)と、その南にある鹿島を繋ぐトンボロの島(陸繋島)で


山と山の間に挟まれた場所に集落のある、瀬戸内海に位置するとても景色の良い静かな港町のようです。


余談にはなりますが、ちゃちゃのんの声をされていた松来未祐さんも同じ呉市の出身ですね。



尚、鹿老渡は県道35号線 音戸倉橋線の終着点で、その先にある鹿島大橋を渡ると鹿島です。


なのでこの作中のちゃちゃのんは県道35号線を走るバスで、倉橋島にある小学校に通っていたという設定になってます。


因みに鹿老渡にあった小学校は平成9年に廃校となっており、現在は災害避難場所として残っているようですね。





そもそもこの鹿老渡という港町は、江戸時代に瀬戸内海を行き交う船舶との商売や潮待ちによる宿泊などを目的に作られたそうで


享保15年(1730年) 倉橋町の有力者達によって企画・整備され、現在もその碁盤の目のような街並みは維持されています。



穏やかな砂州、静かな入江は古くから風待ち、潮待ちの港として参勤交代の大名等にも利用されたそうですが、


現在は人影も少なく、何だか時間が止まってしまったような、とても景色の良い静かで穏やかな港町のようですね。



ちゃちゃのんのんびよりな、小学生時代のちゃちゃのんの生活…


そんなほっこり癒される内容な作品、誰か書いてくれませんかね〜〜






尚、以下のサイト様を参考にさせて頂きました。


興味のある方はそちらも合わせて読まれてみては如何でしょうか。


・何の変哲もない咲の地名紹介様「広島県代表・鹿老渡高校」

・のんびり屋の瀬戸内めぐり様「鹿老渡(倉橋島)」

・えいちゃん笠岡を走りまくる様「鹿老渡@」

・そぞろ歩き様「鹿老渡〜倉橋島」

・ひろしま文化大百科様「鹿老渡と本浦」・宮林家住宅




※鹿老渡の位置



568 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/20(土) 15:59:38.30 ID:WOfYDrRg0




ちゃちゃのん「ちゃちゃのんが小さかった頃から、ここはちっとも変わっとらんけぇの…」




ちゃちゃのん「ここは、まるで時間の流れが止まっとるようじゃ……」






ちゃちゃのん「鹿老渡高校の廃校も、きっと時代の必然じゃったと―――」




ちゃちゃのん「今なら、そう思えるかのぅ…」




洋榎「ちゃちゃ……」






ちゃちゃのん「うぅん、それもちょっと違うかのぅ」




ちゃちゃのん「どうにもならんっちゅうことは、あん頃から みんな分かっとったんじゃ…」




ちゃちゃのん「じゃけぇ、テレビや雑誌の向こうのみんなの記憶にも―――」




ちゃちゃのん「鹿老渡高校っちゅうモンがあったこと、覚えておいて欲しい思って頑張っとったのかもしれん――――」




洋榎「…………」




569 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/20(土) 16:03:15.02 ID:WOfYDrRg0




ちゃちゃのん「―――あ」



ちゃちゃのん「だからっちゅうて、そこでヒロちゃんが申し訳なく思う必要はないけぇの!?」アセッ



ちゃちゃのん「勝負っちゅうんは そういうモンじゃって、ちゃんと分かっとるけぇ♪」ヘヘヘ




















ちゃちゃのん「そんなことより、今日は広島観光たっぷり楽しもうの♪」



洋榎「なぁ、昨日は ああ言うたが―――」



洋榎「この前の記事のこともあるやん。 ホンマにウチと観光なんかしても、ええんか…?」





ちゃちゃのん「ちゃちゃのんは、ヒロちゃんとがええんじゃが…」




ちゃちゃのん「ヒロちゃんは、やっぱりちゃちゃのんとじゃ―――迷惑だったりするんじゃろか?」




洋榎「―――いや、ウチはええんやけど……///」ドキッ




ちゃちゃのん「えへへ、ほんなら決まりじゃの〜〜♪」レッツ、ゴージャ♪



570 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/20(土) 16:38:31.92 ID:WOfYDrRg0




洋榎「な〜〜〜」



ちゃちゃのん「ん…? 何じゃ、ヒロちゃん…?」



洋榎「どうでもええねんけど、自分のその変装 めっちゃダサイで〜〜」



ちゃちゃのん「えぇっ!? そ、そうじゃろか!?」アセッ




洋榎「何やねん、そのハート型のグラサンに尻みたいなピーチ帽といちご模様のケープは?」



ちゃちゃのん「お、おかしいのぅ… ちゃちゃのん、あんまり変装とかせんのじゃが」



ちゃちゃのん「これが今年の流行りじゃって、お洒落上手なチハちゃんに教えてもらったんじゃが…///」シリテ…




洋榎「業界の流行とか知らんが、どうせ自分 またからかわれたんやろ?」



ちゃちゃのん「うぅっ… そんなことないって否定しきれんのが、悲しいトコなんじゃ…」チハチャン…



洋榎「その様子だけで、現場での自分の立ち位置がよぅ分かんで〜〜」カカッ



ちゃちゃのん「うっ、うるさいんじゃよぅ!?」









洋榎「―――で、結局スタンダードな帽子と色メガネだけにしたんやな?」



ちゃちゃのん「へっ、変じゃろか…?」



洋榎「いや、なかなか似合ってんで〜〜♪」ニカッ




571 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/21(日) 02:20:53.87 ID:dm4CI8OM0




【たけはら】



ジュー ジュー


洋榎「おぉっ、これがたけはら名物、ほぼろ焼き言うヤツやな!?」ハフハフ ウマウマ



ちゃちゃのん「そうじゃよぉ、ちもさんのお好み焼きは 絶品なんじゃ♪」エッヘン



ちも「いちごちゃん、どうもありがとぅの♪」ニコニコ






洋榎「そういや、店主さんとちゃちゃは、どういう知り合いなんや?」



ちゃちゃのん「ちゃちゃのんの前のお父さんが、たけはらの生まれでのぅ」



ちゃちゃのん「お父さんが先代ほぼろさんのファンで、小さいちゃちゃのんも よぅここに連れてきて貰ったんじゃよ〜」



ちも「いちごちゃん、あの頃は毎年 お父さんたちと憧憬の路を見に来とったよね〜 懐かしいわぁ〜〜♪」




ちゃちゃのん「ホンに、懐かしいのぅ…」




572 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/21(日) 02:26:04.07 ID:dm4CI8OM0





ちゃちゃのん「あ、ちもさん。 写真お願いしてもええじゃろか?」



ちも「うん、モチロンええよ〜〜♪ ホンなら、洋榎ちゃんも一緒に並んで〜〜」



ちゃちゃのん「せっかくじゃけぇ、ヒロちゃんも一緒にの♪」



洋榎「おぅ、ええで!!」








「おこのみや〜〜〜〜き♪」パシャ







ちゃちゃのん「ちもさん、どうもありがとなんじゃ♪」



洋榎「おおきにやで〜〜♪」




ちも「ふふ… 二人とも、とってもええ笑顔しとるよぅ♪」










573 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/21(日) 09:58:52.03 ID:dm4CI8OM0



【広島駅】



ガタンゴトン ガタンゴトン


洋榎「おっ、広島名物の路面電車やな!!」



ちゃちゃのん「うん♪ ちんちん電車、もぅすぐ来るのぅ」



洋榎「ん、今 何か言うたか?」



ちゃちゃのん「じゃけぇ、ちんちん電車がもぅすぐ着くって―――」



洋榎「スマン、もっかいおっきな声で頼むで〜〜」ヒヒッ



ちゃちゃのん「もぅ、路面電車でええわ。 ヒロちゃんは、やっぱり意地悪なんじゃ…///」ブー






ブーー ピポン ピポン



洋榎「へぇ〜 路面電車なのに、5台繋ぎなんやな」



ちゃちゃのん「そうじゃよ。 こりゃぁ国産100%のグリーンムーバー系・5車体連接の超低床電車ゆーヤツじゃ♪」



574 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/21(日) 11:23:21.17 ID:dm4CI8OM0



ピンポーーン ガタガタン



みゆき《ご乗車、ありがとうございます。 本車輌はこれより発車 致しま〜〜す♪》



ちゃちゃのん「あっ、みゆきお姉ちゃ〜〜ん♪」フリフリ


みゆき「ほぇ……?」




みゆき《ありゃ〜 いちごちゃんけぇ、ひーさ会わんかったねぇ!?》キーーン



ちゃちゃのん「お姉ちゃん、マイクマイク」ヒソヒソ



みゆき「うひゃぁ〜〜 し、失礼しました〜〜」アセアセッ


アハハ クスクス




洋榎「この人は?」



ちゃちゃのん「広島電鉄で働いちょる『鷹野 みゆき』お姉ちゃんじゃ」



ちゃちゃのん「ちゃちゃのんが中学時代、呉に住んどった時のご近所さんで色々とお世話になったんじゃよぉ♪」エヘヘ



みゆき「いちごちゃんとは何かと気が合ってのぅ、妹みたいに可愛がっとったんじゃよぉ〜〜♪」エヘヘ



洋榎(あ〜〜 何や このお姉さんからも、ちゃちゃと同じ匂いするわ……)




みゆき「広島んことなら色々と教えちゃるけぇ。 おいでやんせ、広島へ♪」







575 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/24(水) 23:52:22.38 ID:wcfarA/X0



【宮島口 フェリー乗り場〜〜宮島桟橋】



ザザザーーーン


洋榎「うひょ〜〜 フェリーの風がメッチャ気持ちええでぇ!!」



ちゃちゃのん「原爆ドームにも行ったし、お次はいよいよ宮島じゃね」



洋榎「たけはら行ったり、呉行ったりで、今日はホンマ強行軍やったな〜〜」






洋榎「あ… そういや、ちゃちゃの憧れのアイドルさんって 確か呉の出身やったな」



ちゃちゃのん「う、うん……」




洋榎「その人って、どういう人なんや?」



ちゃちゃのん「……………」



洋榎「ん…?」






ちゃちゃのん「いつも一生懸命で、誰にでも優しくて、とってもファン想いな…」




ちゃちゃのん「周りにおる人や、ファンの子たちの心まで優しい気持ちにしてくれる―――」




ちゃちゃのん「そんなぽかぽかとした、自然と人の集まるひだまりみたいに暖っかい人じゃったよ……」




洋榎「―――じゃった?」




576 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/25(木) 00:28:21.68 ID:c2O1Jj3I0





ちゃちゃのん「ちょっと前にな、病気で亡くなったんじゃよ…」




ちゃちゃのん「まだ、38になったばかりじゃった―――」



洋榎「そか、スマン……」






ちゃちゃのん「ええんじゃ。 人の死ゆーんは、誰にも避けられんもんじゃけぇ…」





ちゃちゃのん「本当はもっともっとたくさん生きて、いっぱい幸せになって欲しかったし…」





ちゃちゃのん「これから先も、ずっとずっとちゃちゃのんの目標でいて欲しかったんじゃが―――」





ちゃちゃのん「こればっかりは、どうしようもないことなんじゃ……」




洋榎「…………」




577 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/25(木) 00:34:24.35 ID:c2O1Jj3I0





ちゃちゃのん「じゃけぇ… ちゃちゃのんだって、いつまでも泣いてちゃ駄目なんじゃ!!」




ちゃちゃのん「早く気持ちの整理つけなくちゃ、いけないんじゃ…」




ちゃちゃのん「あの人だって、きっとそんなん喜ばんはずじゃけぇ……」




洋榎「ちゃちゃ………?」







ちゃちゃのん「それにの―――」




ちゃちゃのん「誰だって、人はいつか必ずいなくなるもんじゃ」




ちゃちゃのん「そしてそれは、必ずしも年をとってからとは限らん」




ちゃちゃのん「そんな当たり前のこと、みんな分かっとるはずなんじゃが…」




ちゃちゃのん「分かっとっても、普段そういうこと あまり考えんようにしとるんじゃ」






ちゃちゃのん「それを考えること、認めるゆーことは――――とっても痛いことじゃけぇ……」






578 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/25(木) 00:36:58.73 ID:c2O1Jj3I0






ちゃちゃのん「ちゃちゃのんはな――――」




ちゃちゃのん「婆っちゃの死からも、ずっと目をそらし続けてきたんじゃ…」




ちゃちゃのん「ちゃちゃのん、冷たくなった婆っちゃが 柩の中に入るとこ、確かに見たはずなんじゃ」




ちゃちゃのん「それなのに、そのことをちゃちゃのん――――全く覚えとらんかったんじゃ……」







ちゃちゃのん「婆っちゃは亡くなったんじゃなく、どこかに行ってしまったんじゃと―――」





ちゃちゃのん「そう思い込むことで、婆っちゃがいつか帰ってきてくれるって思っていたかったんじゃな……」





洋榎「……………」





579 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/25(木) 00:41:02.02 ID:c2O1Jj3I0





ちゃちゃのん「昨日、夢ん中で婆っちゃからお別れ言われて―――」





ちゃちゃのん「ちゃちゃのん、ようやっとそれを受け入れようって思ったんじゃ」





ちゃちゃのん「これからはちゃちゃのんも、ちゃんと前を見ていこうって決めたんじゃ……」







ちゃちゃのん「これもきっと、ヒロちゃんやみんなの おかげだって思っとるよ」




ちゃちゃのん「どうもありがとなんじゃ、ヒロちゃん♪」ニコッ




洋榎「へへ、ちょっとテレくさいで…///」











ちゃちゃのん「あぁ、そうじゃ… ちゃちゃのんの憧れのアイドルさんなんじゃが」



ちゃちゃのん「ちょっぴりドジで、お茶目なベビーフェイスな人でのぅ…」



ちゃちゃのん「周りからはよぅ丸いとか、大食いとか、結婚出来ないとか、痴女とか、からかわれとったんじゃが―――」




ちゃちゃのん「そんでも決して怒らず、いっつも明るい笑顔で『雨にも負けず、風にも負けず』な強い人だったんじゃよ♪」ヘヘヘッ




洋榎「――――それは、どうなんやろな。 アイドルとして……」エット…







580 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/28(日) 02:24:31.83 ID:6woIij+Z0




【宮島】



洋榎「ここがあの有名な宮島やな。 そういや、ウチ 今まで来たことなかったで!!」



ちゃちゃのん「神さまの島 宮島は『安芸の宮島』とも呼ばれる日本三景の1つで、大鳥居や厳島神社なんかが特に有名じゃ」



ちゃちゃのん「季節や時間帯によっても その情景を変える、とっても美しい島なんじゃよ♪」



ちゃちゃのん「歴史的にゃぁ3本の矢の毛利の元就さんと、陶 晴賢さんの厳島の戦い何かも有名でな―――」






洋榎「お〜〜ぅ、そんなことより、あっちの店でもみじ饅頭 売っとるで!!」



ちゃちゃのん「うん、もみまんは宮島の紅葉谷(もみじだに)に、ちなんだ銘菓じゃけぇ」



ちゃちゃのん「でもどうせ宮島で もみまん食べるんじゃったら、焼きたてのお店がええんじゃよ〜〜」



洋榎「そういうもんなん?」



ちゃちゃのん「うん… 宮島のもみまんゆーたら、やっぱり焼きたてほくほくが一番じゃ♪」




581 :ケイ@終章「いつかのひかり」 [saga]:2016/02/28(日) 02:33:05.99 ID:6woIij+Z0




洋榎「つーか… 自分のその『もみまん。』って言い方、何やちょっと卑猥な感じやな〜〜」



ちゃちゃのん「―――ちょっ、もみまんのドコが卑猥なんじゃ!?」////



ちゃちゃのん「もみ子ちゃんと、アルフレッド後藤クンにも失礼じゃろ!!」



洋榎「アルフレッド後藤隊長とか 誰やねん。 カミソリ後藤?」





ちゃちゃのん「アルフレッド後藤クンは、後藤製菓さんが考案した二足歩行のシカくんじゃよ」



洋榎「何で、シカが二足歩行やねん…」



ちゃちゃのん「そりゃぁ、まぁ… 前足を地面についとったら、もみじ饅頭食べられんし…」






洋榎「おぉっ、向こうの店にあるのって、あの幻の『元祖ぷよまん』やないか!?」



ちゃちゃのん「あっ、本当じゃ。 ちゃちゃのんも初めて見たんじゃ…」




洋榎「オバちゃ〜ん、コレ一箱 ボヨヨンロック風にばよえ〜〜んと頼むでぇ!!」


アイヨーー



ちゃちゃのん「ヒロちゃんは、ホンにこういうレアモンが好きじゃのぅ」モー



ちゃちゃのん「あ……」テテテッ




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