玉ねぎ剣士「僕が白銀の剣士だって？」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 17:25:41.66 ID:VHg5clJy0

ここは夢の王国　ユミルメ国

ユミルメは　妖霊大帝オドロームに侵略され

すでに半分以上の都市を妖魔に奪われていた


ここに　ある伝説がある

いつの日か「白銀の剣士」なる者が現れ

妖魔を討ち砕き　この国を救うと――




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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 ＠ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超Ａ級スナイパーが魔王様を狙ってる？」〈ゴルゴ13inひめごう〉 ＠ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです ＠ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「２号線」【コンマ判定新鉄・関東】 ＠ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック ＠ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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旅にでんちう ＠ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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2 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 17:35:17.77 ID:VHg5clJy0

義兄「いつまで寝ているんだ？　そろそろ起きろ」

少年「……なんだフリオか。鳥が喋ったのかと思った」

義兄「寝惚けているのか？」

少年「夢を見たんだ。旅人っぽい人が木陰で休んでいたら、チョコボが人の言葉を喋ったんだ」

義兄「……何かの暗示かもな。それより、起きたのなら早く顔を洗って来い。朝食は用意してある」


少年「今日の朝ごはんは何？」

義兄「オニオングラタンスープだ」

3 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/02/07(日) 17:42:51.85 ID:q199ntedo

ディシディアの方か

4 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 17:43:08.09 ID:VHg5clJy0

　……朝食中……


少年「ごちそうさま！」


義兄「じゃあ、俺はいつもの狩りに行ってくるからな。村から出るんじゃないぞ」

少年「わかってるよ」

義兄「魔法の練習、きちんとしておくんだぞ」

少年「わかってるって」


　――


少年「フリオは狩りに行くって言ってたけど、本当はグリムの街に現れた妖魔を退治しに行ったんだ」

少年「妖霊討伐軍に入っていること、知ってるよ」


少年「そろそろじっちゃんの所に行かなくちゃ」

5 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 17:50:25.10 ID:VHg5clJy0

……勉強中……


長老「これこれ、別のことを考えているな？」

少年「……じっちゃん、妖霊討伐軍について何か知らない？」

長老「民間人の、民間人による、民間人のための義勇軍じゃ」

少年「リンカーンみたい。フリオもその軍の一人なんだね？」

長老「……それは知らん。今日も、他の村人と狩りに出かけたはずじゃ」

少年「フリオが妖魔と戦っていること、知ってるよ。最近、僕を狩りに連れて行ってくれないし」

少年「……何で僕に言わないのかな？　討伐軍に入っていること……」

6 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/02/07(日) 18:06:08.99 ID:VhHqDN8tO

また懐かしいものを

7 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/02/07(日) 18:10:25.93 ID:XxYRQt56o

玉ねぎ剣士でジルオール思い出した

8 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/02/07(日) 19:55:14.84 ID:xgErBxmLo

ジークマイヤー思い出した

9 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 20:25:20.33 ID:VHg5clJy0

　― 長老の回想 ―


義兄「俺にもしものことがあったら……あいつのことをよろしく頼む」

義兄「それと……妖霊討伐軍に入っていたことは、絶対に伝えないでほしい」

義兄「この村で……静かに暮らしてくれることを祈っている」


長老「そう簡単に死ぬことを考えるな。義理といえども、お前たちは兄弟」

長老「お前が死んだら、あの子は本当に天涯孤独の身になってしまう」

義兄「……」

10 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 20:29:11.65 ID:VHg5clJy0

少年「じっちゃん？」


長老「……最近、妖魔の数が増えてきた」

長老「お前を危ない目に遭わせるわけにはいかぬから、狩りに連れていかないのだろう」

少年「自分は危ない目に遭っているのに？」


長老「……勉強を再開するぞ」


　……勉強中……


少年（あれ？　夢で見た人にずいぶんそっくりだな）


少年「じっちゃん、旅人が来たから外に出てもいい？」

長老「うむ、よかろう。すぐに戻って来るんだぞ」

少年「やったー！」

11 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 20:35:16.82 ID:VHg5clJy0

チョコボ「クエッ　クエッ　クエッ」

チョコボ（……ちょこぼ〜る）



少年「やっぱり、人の言葉なんて喋らないよなぁ……」

旅人「どうしたんだ？　チョコボが好きなのか？」

少年「夢でチョコボが人の言葉を喋ったんだ」

旅人「どんなことを喋った？」

少年「【いつまで寝てるんだ？　そろそろ起きろ】って」

旅人「そりゃあ、いい目覚ましになっただろ」

少年「うん……ねぇ、旅の人。いつになったら、妖魔はいなくなるのかな」

12 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 20:54:10.81 ID:VHg5clJy0

旅人「【白銀の剣士が妖霊大帝を討ち砕く……】という伝説が、おれの村にある」

少年「白銀の剣士？」


旅人「剣士は、竜の血を浴びていて不死身だ。如何なる攻撃にも耐え、不死身さを武器に大帝に立ち向かった」

旅人「……そういう話が、昔からあるんだ」


少年「その【白銀の剣士】って、もうすぐ現れる？」

旅人「伝説でしかないからな……」

旅人「白銀の剣士よりも、もうすぐ修行から戻ってくる国王の弟君がこの国を救ってくれるだろう」

少年「王様の弟君？」

旅人「聖騎士になるために試練の山へ向かったらしい。若いが有能な人物だそうだ」

旅人「未来の国王になると噂されている」

少年「【白銀の剣士】ってさ、その人かもね」

旅人「……案外、そうかもしれないな。不死身ではないだろうけど」

13 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/02/07(日) 20:56:21.83 ID:2m13GVLZo

気ままに夢見る機だっけか

14 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 21:24:04.90 ID:VHg5clJy0

　― 夕暮れ ―


義兄「今帰ったぞ」

少年「獲物はどうだった？」

義兄「今日はいまいちだったな」

少年「化け物に遭遇したから？」

義兄「……そうだな」

少年「妖魔を倒すことが多くなってきたんでしょ」

義兄「数が増えてきたからな」

少年「で、志願したんだ」

義兄「ああ……えっ？」

15 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 21:41:01.82 ID:VHg5clJy0

少年「志願したんでしょ？」

義兄「……」



義兄「狩りの最中に遭遇した妖魔を倒しているだけだ。討伐軍には……志願していない」

少年「ふーん」

16 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/07(日) 21:50:25.76 ID:VHg5clJy0

少年「あ、そうだ。今日ね、旅人から【白銀の剣士】の伝説を聞いたよ」

義兄「……【白銀の剣士】？　本当に【白銀の剣士】の話を聞いたのか？」

少年「うん。フリオ、知ってるの？　不死身の白銀の剣士だよ」

義兄「俺は、伝説のことは知らないけど……国王が宣言したそうだ」

義兄「【妖霊大帝オドロームを倒した者と、王女との結婚を認める】」

義兄「【ただし、王女の結婚相手は白銀の剣士でなければならない】だとさ」

義兄「国王も伝説に頼るしかないみたいだ」


少年「？」

少年「王女様って、王様の妹君だよね？　それなら試練の山へ向かった弟君は白銀の剣士じゃないんだ」

義兄「国王の弟君で、王女の兄君か？　……伝説が本物だとすれば、剣士は別の人物だろう」

17 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/08(月) 22:51:44.43 ID:Ez0ywdT20

　― ユミルメ城 ―


王女「嫌です。妖霊大帝を倒した者に、私を賞品として与えるなんて！」

国王「し、しかし姫……このままでは国が滅びるのだ」

国王「それに、結婚の相手は白銀の剣士。伝説の剣士だ」

王女「剣士だって、変な剣士だったら困ります。どうしてもと言うなら、城を出ます！」

18 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/08(月) 22:57:55.05 ID:Ez0ywdT20

　― 夜更け ―


梟「フォッホッホッホッホ。悩んでおられるようですな」

少年「だ、だれ？」

梟「お兄さんが何も話そうとしない。だけど君は、そんな彼を助けたいと思っている」

少年「どうしてわかるの？」

梟「ホッホッホ。わたしは何でもお見通し。君はもっと素晴らしい力を授かるのです」

少年「もっと素晴らしい力？」

梟「ただし……」

19 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/08(月) 23:06:46.18 ID:Ez0ywdT20

梟「この木の実を食す勇気があるのなら」

少年「食べるとどうなるの？」

梟「人間として、一番優れた力が手に入る。そうすれば……」

梟「お兄さんも、君が妖霊討伐軍に入ることを認めてくれるだろう」

梟「食べなされ。さ、早く」

少年「なんか怪しいんだけど」

梟「タダで差し上げますぞ。よろしいではありませんか？」



　むしゃ　むしゃ　むしゃ……



梟「そうそう、それでいいのだ」

20 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/08(月) 23:11:13.53 ID:Ez0ywdT20

少年「あれ？　あの人どこへ行ったんだろう」



義兄「まだ起きていたのか？」

少年「あ、フリオ」



義兄「……気付いていると思うが、俺は妖霊討伐軍に加わっている」

義兄「お前に心配をかけたくなかった。今まで隠していて……悪かったな」

少年「僕も討伐軍に入る！」

義兄「人手不足で困っていた所だ。歓迎するぞ」

少年「僕も討伐軍に入って、妖魔と戦うんだ！」

21 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 00:04:30.76 ID:kw+SCamg0

少年「……」


少年（なんだ夢か。話がうますぎると思ったよ）


　――


少年「あれ、フリオがいない。弓も、剣もない……」



少年「あれは！？　窓の外が……燃えている！！」

22 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 00:06:26.87 ID:kw+SCamg0

長老「大変じゃ！　グリムの町が燃えている！　ここも危ない！」


少年「フリオがいないよ！」


長老「彼は、村人たちを安全な場所まで誘導している。さ、お前もわしと一緒に来るのじゃ！」

23 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 00:08:50.02 ID:kw+SCamg0

長老「……ここまで来ればもう大丈夫じゃろう」

少年「フリオは？　村人たちを誘導しているんじゃなかったの？　どこにもいないよ！」

長老「……今は偵察に行っている。じき、戻ってくるはずじゃ」

少年「嘘だ！　本当はあの燃えている町の中にいるんだ！　炎の中で、妖魔と戦っているんだ！」

長老「……彼はただの狩人。妖魔と戦おうなど、思ってはおらん」

長老「偵察に行っただけだ。お前を残して……逝くわけがない」

少年「不吉な言葉使わないで！」



長老「こ、こら！　待ちなさい！」

24 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 00:20:42.95 ID:kw+SCamg0

　― グリムの町 ―


少年「フリオーっ！　どこにいるのーっ！？」


　ﾋｭｰﾝ ﾋｭｰﾝ ﾋｭｰﾝ


少年「うわぁっ！　矢が飛んできた！」

　――

義兄「あの馬鹿！　妖霊軍に見つかったぞ！」


少年「フリオ！　どこに行ってたの？　逃げないと！」

義兄「それはこっちの台詞だ！　逃げろ、敵が来る！」


ﾋｭｰﾝ　ﾋｭｰﾝ　ﾋｭｰﾝ


ﾊﾞｻｯ ﾊﾞｻｯ ﾊﾞｻｯ


ﾊﾟｵｰﾝ……


象「残念、逃がしたか……」

25 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 00:24:17.78 ID:kw+SCamg0

少年「……」

少年「……？」

少年「妖魔が固まってる」

少年「僕以外の全てが、金縛りにあったみたい」


　――


妖精「あなたは、時の流れを抜け出したのです」

少年「そこに誰かいるの？」

妖精「あなたを迎えに来ました。さあ、この光の渦へ飛び込んでくださいな」

少年「こ、この中へ？　大丈夫かなぁ……」

妖精「さ、早く。勇気を出して」

26 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 00:29:46.00 ID:kw+SCamg0

（今思う　玉ねぎじゃない　たまねぎだ　　漢字じゃないね　ひらがなだよね）

27 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 13:49:23.07 ID:kw+SCamg0

妖精「こちらです」

少年「だ、だれ？」

妖精「妖精のティルクと申します」

妖精「あなたは白銀の剣士。大勢の男の子から選び抜かれた子。ユミルメ国の救い主としてお招きしたのです」

少年「ぼ、僕が白銀の剣士……？」

妖精「あなたはこれから、もっと恐ろしい試練をくぐらねばなりません。そして、賢く強い勇者になるのです」



　――



妖精「そろそろ境界を抜けます」


少年「急に真っ暗になっちゃったよ！　あっ、何か光ってる」

28 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 14:05:29.49 ID:kw+SCamg0

宝箱「ようこそ。ユミルメ一の勇士よ。そなたに白銀の剣と兜を授けます」


http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%BCiii


※クリスタルの下の、深緑色の三角ボタンを押すと オープニング・テーマが流れます

29 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 14:07:55.35 ID:kw+SCamg0

　少年は　光の中で

　その意思を　その心を　感じ取り

　旅立つ　決意をした


　さあ　悪を振り払い

　この世界に　平和を取り戻すのだ



　君の心にある光を　希望に変えて……

30 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 15:44:31.15 ID:kw+SCamg0

少年「夢じゃないかな。頬をつねってみよう」

少年「いてて。夢じゃないんだ」



少年「さっきの場所に戻るにはどうしたらいいんだろう？」

宝箱「帰りの道は、この箱の中」

少年「大丈夫かな？」

宝箱「心配はいりません。そなたはもう、白銀の剣士なのですから！」



http://www.nicovideo.jp/watch/nm6082934

※　夢の人【武田鉄矢一座】

31 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 15:47:59.19 ID:kw+SCamg0

少年「ただいまぁ！　って、大変だ！　妖魔が動き出してる！」





義兄「く……数が、多すぎる……」

少年「僕も戦うよ！」

義兄「お前……その姿は？」

少年「へへっ、僕が【白銀の剣士】さ！」

32 ： ◆pIDAf9S4HQOM [sage]：2016/02/11(木) 16:04:54.00 ID:kw+SCamg0

　♪　ゆーめーみるー　ちーかーらがー　おーまーえーに　あるかぎりー
　　
　　　でーきーないー　こーとは　こーのよにない　


　♪　さあ　いざ　いま　もう　けんをーとれー

　　　さあ　いざ　いま　もう　けんをーぬけー


　♪　おまえのー　なまえは……

33 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:09:01.47 ID:kw+SCamg0

長老「おお、ここにいたのか！」

少年「じっちゃん！　僕……」


長老「わかっておる。まさかお前が選ばれるとは考えもしなかった。これは偶然の出来事ではない……」


――


長老「……夜明けじゃ」


少年「あの美しい朝日に誓いを立てる。必ずユミルメを救うと」

34 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:11:01.29 ID:kw+SCamg0

少年「さて……と。これからどこへ行けばいいんだろう？」


少年「旅人は【剣士は竜の血を浴びていて不死身】と言っていたから、竜を探そう」


少年「あの人、まだ何か知っている気がする。近くの村にまだいるかな」



義兄「おいおい、ちょっと待てよ……。一人で竜を探しに行くのか？」

少年「一緒に来てくれるの？」

義兄「当たり前だろ」

35 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:16:56.41 ID:kw+SCamg0

　― 近くの村 ―


旅人「お、昨日の少年だな。その格好はどうした？」

少年「白銀の剣士だよ」

旅人「……」


旅人「……剣士ごっこか？」

少年「違うよ。僕、白銀の剣と兜がはいった宝箱を見つけたんだ」

旅人「すると……伝説は本物だったのか」

少年「僕たち竜を探しているんだけど、竜の居場所知らない？」

旅人「竜？　竜ねえ……」



旅人「悪いことは言わない。やめたほうがいいぞ。生きては帰れない……」

少年「危険なことだとわかっているけど、ユミルメ国を救うためなんだよ」

旅人「……」

36 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:21:12.11 ID:kw+SCamg0

旅人「おれが案内しよう。ただし、竜の巣の近くまでだ」

少年「ありがとう」



　ﾎｰｯﾎｯﾎ ﾎｰｯﾎｯﾎ ﾎｯﾎｯﾎｰｯ



少年「な、な、なに！？　あの声は」

旅人「ただの鳥だ。ほら、そこにいるだろう」


　ﾎｰｯ､ﾎｯﾎｯﾎ､ﾎﾎﾎ､ﾎﾎﾎ

　ﾎｰｯ､ﾎｰｯ


義兄「へんな鳥……」

少年「あの鳥、どこかで見たような気がするけど」

37 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:24:35.07 ID:kw+SCamg0

　― ユミルメ城 ―


国王「今日もまた、町を追われた人々が都を目指して逃げてくる……」


　――


僧侶「王様、グリムの町の守備隊長でございます」

国王「どうした？」

隊長「申し訳ありません。必死に戦ったのですが、妖霊軍の魔法にかかっては……」

国王「ううむ、グリムも敵の手に！？」

僧侶「これで、ユミルメ国８０都市のうち既に４４の街を奪われました……」

国王「白銀の剣士はまだか！」

38 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:34:14.04 ID:kw+SCamg0

侍女「王様ー！　王女様が！」

国王「王女がどうした？」

侍女「王女様のお部屋に！」


　――――――――――――――――
　
　　お兄さま　わたしは城をでます
　
　　わがままをお許しください
　
　　お元気で
　
　――――――――――――――――


国王「王女！」

国王「見張りは何をしてた！」

見張「ずっと入り口におりました！」



見張「王女様は窓から出られたようであります！」

国王「あのお転婆娘……すぐに国中を探して連れ戻すのだ！」

39 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:38:47.12 ID:kw+SCamg0

騎士「私も探しに行きましょう」

国王「おお、セシル。戻ってきてくれたか」

騎士「聞けば、結婚を無理強いしたそうですね？　しかも、顔も見知らぬ者との」

国王「……伝説に頼った私が間抜けだった。伝説の剣士なら、結婚相手に悪くないと思ったのだが……」

国王「なんという過ちをしてしまったのだろう」

騎士「私が王女を連れ戻します。そして、妖霊大帝を倒します」

騎士「それなら、王女も結婚などしなくて済むでしょう」

国王「それは、そうだが……」

騎士「大帝を倒した暁には、愛するローザとの結婚式を挙げようと考えております」

国王「……いいですとも」

40 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:42:38.93 ID:kw+SCamg0

　おうじょさまーっ！



　王女を見かけなかったか！


　
　さあ……



　王女さまーっ！


　――


摩導士「悪いけど、王女はもういないのよ。今日から魔導士として生きていくの」

41 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 16:48:54.01 ID:kw+SCamg0

　― 幽冥宮 ―


大帝「今夜も星座が動く。剣士座が青竜座に向かって、ジリジリと……」

大帝「予言の伝える白銀の剣士か……」


象　「おそれながら大帝様。剣士など何千何百万来ようとも、わが妖霊軍団の魔法にかかれば一捻りでございます」

大帝「フン！　愚か者めが。この宇宙には、成り立った時からの定めがある。不死身の剣士の予言もそれだ」

大帝「その剣士は、捻り潰しても、焼き尽くしても、かぎりなく生き返ってわしに向かってくるはずだ」


大帝「えーい、思っただけでもイライラする！！」


　ﾎｰｯ､ﾎｯﾎｯ､ﾎｯﾎ


梟　「大帝様、ただいま戻りましてございます」

大帝「遅かったではないか。それで……どうなった」

梟　「剣士となる宿命の者に、思いやりの心を与えてきました。予言どおり、白銀の剣士として目覚めたようです」

42 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 17:06:45.91 ID:kw+SCamg0

大帝「ばか者！！」


大帝「剣士を強くしてどうする！！　奴が現れる前にそれを防ぐのが、おまえの役目ではないか！」

大帝「何をしに行ったのだ。愚か者めが！」


梟　「お言葉ではございますが……」


梟　「剣士の出現は、誰にも動かすことの出来ない定めでございます」

梟　「ですから私は、あの少年に優しさの木の実を食べさせました」

梟　「優しい心……それはすなわち弱さです。彼は強い剣士にはなれても、不死身にはなれません」

大帝「確かだろうな！」

梟　「絶対に！　妖霊大帝オドローム様は、永遠に夢宇宙を支配されるのです！」


　ｵｰｯﾎｯﾎｯﾎ　ｵｰｯﾎｯﾎｯﾎ　ｵｰｯﾎｯﾎｯﾎｯﾎ　ｵｰｯﾎｯﾎｯﾎ　ｵｰﾎｯﾎｯﾎ……

43 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 17:10:15.30 ID:kw+SCamg0

少年「竜の谷はまだかな……？」


義兄「……気付いているかもしれないけど、俺は……」

少年「妖霊討伐軍に入っているんでしょ？」

義兄「いつ頃……気付いた？」

少年「夜中にじっちゃんと話しているところを聞いた」


　― 回　想 ―


少年「うーん、うーん……」

少年「イフリート　こわいよー」

少年「……夢か」


少年「あれ？　じっちゃんの家、明かりがついてる。まだ起きてるのかな」


　――


少年「フリオもいる。何を話しているのかな。こっそり聞いちゃおうっと！」

44 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/11(木) 17:17:55.43 ID:kw+SCamg0

義兄「……」

少年「……」


義兄「盗み聞きは良くないぞ」

少年「隠し事は良くないよ」


義兄「……」

少年「……」


義兄「お前が、討伐軍に入ると言い出すのでは……と、恐れていたんだ。だけどもう、隠す必要もなくなったな」

少年「合言葉が【えぬおーびーえーあーるえー】だってことも知ってるんだから！」

義兄「エヌオー？　そんな言葉じゃないぞ」

少年「アルファベットに戻すんだよ」


義兄「……」



義兄（エヌ、オー、ビー、エー、アール、エー……）

45 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/13(土) 23:13:20.58 ID:HIKFdN4L0

　― 竜の住処 ―


旅人「ここが竜の谷だ」

少年「見るからに竜の住みそうな谷だね。ありがとう、ここまで送ってくれて」

旅人「どうしても行くのか？　竜は口から火を吐く。火を浴びてしまうと石になるそうだ」

旅人「今まで生きて帰ったものは一人もいない」

少年「白銀の剣士の務めだもの。竜の血で不死身になったら、僕、大帝を倒すよ。必ず倒します」

旅人「……気をつけろよ」

46 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/13(土) 23:27:51.56 ID:HIKFdN4L0

　ﾄﾞﾛﾄﾞﾛﾄﾞﾛ……



少年「……」

少年「何だろう、この音は？」

義兄「マグマだろうな。どろどろに溶けた熱い岩が、地面の底で動いているんだ」

少年「火山が近いのかな？」

義兄「そうだろう」



　ｸﾞﾗｸﾞﾗｸﾞﾗ……

　ﾄﾞﾄﾞﾄﾞｰｯ



少年「あちちっ！」

義兄「間欠泉だ！」

47 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/13(土) 23:30:11.37 ID:HIKFdN4L0

少年「うわぁーっ」


義兄「しまった、吹き飛ばされたか！」


　――


義兄「静かに探さないと……」


　――


義兄「この辺り、石像が多いな」


義兄「……石！？　竜にやられた人々か！」



　ｳｫｫｰﾝ……

48 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/13(土) 23:39:25.80 ID:HIKFdN4L0

　ﾎﾞﾁｬﾝ

少年「あちちっ！　熱湯だ、溺れちゃう、助けて」



義兄「あんなところに！」


　ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ


義兄「大丈夫か！？」

少年「フリオ、後ろ！」

義兄「！？」



　ｳｵｵｵｰﾝ……

49 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/20(土) 18:31:59.84 ID:4ObS5gKS0

　― 水中 ―


少年（竜が見張ってるよ！）


義兄（このままじゃ上がれないな……）


　――


少年（洞窟があるよ）


義兄（あの洞窟からどこかへ抜けられるかも……）

50 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/20(土) 18:34:08.41 ID:4ObS5gKS0

魔導士「三日三晩歩き続けて……私は世界の果てまで来てしまったのかしら」

魔導士「向こうに、地獄のような谷が見えるわ」


――


魔導士「？」

魔導士「人が倒れてる」

51 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/20(土) 18:36:41.65 ID:4ObS5gKS0

魔導士「もし、しっかりしなさい」

少年「むにゃ……」

魔導士「気がついた？　大丈夫？」

少年「う、ううん……きみ、だれ？」

魔導士「わたし……ぼ、僕はテラ。旅の魔導士だ」

少年「きみも竜退治に来たの？」

魔導士「そ、そうだよ」

少年「僕は白銀の剣士」

魔導士「白銀の剣士？　君が？　……ちょっと幼いかな」

少年「？」

52 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/20(土) 20:00:55.06 ID:4ObS5gKS0

少年「フリオ、起きて」

義兄「うーん……」

義兄「な、なにっ！　おうじょがばけていたのか！」

魔導士「えっ！？」

少年「何を寝惚けているんだろう？」

　――

義兄「ハッ　ここはどこだ？」

魔導士「谷の入り口だよ」

義兄「君は……誰だ？」

少年「旅の魔導士テラだよ。僕らを助けてくれたんだ」

義兄「そうだったのか……。俺はフリオニールだ。助けてくれてありがとう」

魔導士「どういたしまして。何があったの？　こんな所で倒れていたけど」

少年「竜を退治しに来たんだけど……間欠泉に吹き飛ばされて、誤って熱湯の中へ落ちてしまったんだ」

少年「洞窟を見つけて、やっとの思いで地上に帰ってきたんだよ」

53 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/02/20(土) 20:06:24.48 ID:4ObS5gKS0

魔導士「竜退治……ね。竜を倒すには、ヒゲを切ればいいんだ。力を失ってしまう」

少年「ふーん、よく知ってるね」

魔導士「お兄さまから聞いたことがあるんだ」

義兄「しかし、竜に近づくこともできないのにヒゲを切るなんてできっこないな」

少年「姿を消す魔法でも使えたらなぁ……」

魔導士「……あるよ、姿を消す魔法」

少年「えっ？」

魔導士「バニシュ！」

54 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/03/12(土) 15:56:03.47 ID:giiaMAPE0

少年「テラが消えちゃったよ！」



魔導士「ここにいるよ」


少年「頬っぺたつつかれた」

魔導士（うふふ）


　――


少年「竜退治へ再出発しよう！」

55 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/03/12(土) 15:57:31.49 ID:giiaMAPE0

　ｸﾞﾙﾙﾙﾙ……


義兄「静かに！」

少年「いた？」

義兄「いびきをかいて寝てる」


　――


魔導士「ギリギリまで近づこう。竜の側まで近づいたら立ち止まってね」

少年「わかった」

56 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/03/12(土) 17:46:29.10 ID:hUaUmS16o

期待してる

57 ：>>56 ありがとう　 ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:03:42.30 ID:AZm5PuQo0

少年（そろそろ近いかな……？）


少年（姿が見えなくても、テラは気配でわかるって言ってたけど……）

58 ：>>56 ありがとう　 ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:04:38.97 ID:AZm5PuQo0

少年（そろそろ近いかな……？）

少年（姿が見えなくても、テラは気配でわかるって言ってたけど……）

59 ： ◆pIDAf9S4HQOM [sage]：2016/04/02(土) 20:08:54.41 ID:AZm5PuQo0

ミスして二重書き込みしちゃったよ…。
これって修正できないんだっけ？

60 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:11:08.88 ID:AZm5PuQo0

竜がこちらを見ている……

61 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:18:48.16 ID:AZm5PuQo0

　ｸﾞﾜｧ!!



少年（えっ！？）


義兄（まずい！）


魔導士（見つかったの！？）

62 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:20:46.36 ID:AZm5PuQo0

　ｺﾞｵｵｵｵｵｰ

　ｸﾞﾗｸﾞﾗｸﾞﾗ……

　ﾄﾞﾄﾞｰｯ



少年「うわぁー」


魔導士「あぁっ！」


義兄「温泉が噴き出したんだ！」

63 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:22:46.52 ID:AZm5PuQo0

　ｷﾗｯ……





　ｽﾞｶｯ　　ｽﾞｶｯ







　ｷﾞｬｱｰ!!

64 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:24:30.36 ID:AZm5PuQo0

　

　ﾕﾗ……





　ｽﾞｽﾞﾝ

65 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:26:16.44 ID:AZm5PuQo0

竜を　倒した！

66 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:30:08.91 ID:AZm5PuQo0

少年「やった！　竜を倒したぞー！」

魔導士「見かけより強いんだね」

少年「当たり前さ、白銀の剣士だもの。それじゃ、竜の血を……」

義兄「ああ。そのために来たんだ」

67 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:32:23.19 ID:AZm5PuQo0

少年「……」　←剣を握ったまま動けない

義兄「……」　←目をそらしている

魔導士「……」　←顔を覆っている


　――


少年（……ほんの少し、ほんの少し傷つけるだけだから……！）

68 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/02(土) 20:34:17.41 ID:AZm5PuQo0

少年「……」



少年「……こんなことできないよ！」


義兄「……それなら、どうやって大帝と戦う？」

少年「不死身じゃなくたって、僕は白銀の剣士だよ。この剣があれば、妖霊大帝は倒せる」

少年「こんな秘境でひっそり生きている竜を殺す権利なんて誰にもないよ！」

魔導士「君、やさしいんだね……」

69 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/03(日) 14:40:48.09 ID:O5LrvIa/0

少年「あっ 竜のヒゲがのびてる！　逃げなきゃ！」

70 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/03(日) 14:56:23.37 ID:O5LrvIa/0

竜　「騒がなくてもよろしい。君たちに危害を加えるつもりはない」

竜　「これまで大勢の人間が、私の命を狙ってやってきた。私は身を守るため、彼らを石にした」

竜　「だが、君のような剣士は初めてだ」

少年「ごめんなさい竜さん。僕たちは帰りますから平和に暮らしてください」

71 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/03(日) 14:59:56.59 ID:O5LrvIa/0

竜　「あぁ待ちたまえ」



竜　「血を流すわけにはいかないが……ついて来なさい。温泉に私の汗を溶かしこもう」

竜　「浴びれば不死身とまではいかないが、一度くらいなら生き返れる体になるはずだ」

少年「つまり竜さんのだし汁」

72 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/03(日) 15:52:33.42 ID:O5LrvIa/0

竜　「全身に湯をしみ込ませるがよい……」

少年「ありがとう！　じゃ、さっそく……」



　――



少年「いい気持ち……」

義兄「生き返ったみたいだ」



少年「あれ？　テラが見当たらないよ。おーいっ、テラーっ！」

73 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/03(日) 16:01:03.90 ID:O5LrvIa/0

魔導士「ち、近くにいるよっ！」





少年「姿が見えないや」

義兄「まだ魔法が効いてるんだろう」

少年「変だな。温泉に浸かったら魔法は解けたのに」

義兄「まだ浸かってないだけだろ」

74 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/03(日) 16:53:15.82 ID:O5LrvIa/0

魔導士「ここなら、見られることはないわね」


――


魔導士「♪」


魔導士「いいお湯ね……」

75 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/03(日) 16:55:38.22 ID:O5LrvIa/0

少年「そうだ！」

少年「石にされている人たちは、もう元に戻れないの？」

竜「戻すこともできる。……だが、再び私の命を狙ってくる、という可能性もある」

竜「残念だが、彼らには石像のままでいてもらうしかない」

76 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/04(月) 22:21:56.97 ID:Pe0IbWAj0

少年「さて……こうしている間にも妖霊軍が暴れまわっているはずだ。急ごう！」


少年「おーい、テラー！　どこにいるのー？　出発するよ！」





魔導士「今、行く！」

77 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/04(月) 22:24:09.21 ID:Pe0IbWAj0

竜「これからどこへ行く？」

少年「妖霊に襲われているかもしれない町へ、急いで行きたいんです」

竜「谷の南に川がある。下れば人間の町に着く。流れが急で危険だが、その分早く行ける」

少年「竜さん、色々とありがとう」

竜「さらば勇者よ。幸運を祈る」










少年「いよいよ妖霊軍団と対決だ」

78 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/04(月) 22:36:15.83 ID:Pe0IbWAj0

　ー 谷の南の川 ー


義兄「なるほど……、これは急流だ」

魔導士「船がいるね」


少年「よし、この樹にしよう」

義兄「何をするつもりなんだ？」

少年「船を造る。えいっ！」

79 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/04(月) 22:43:16.10 ID:Pe0IbWAj0

　……樹を加工中……



魔導士「すごい切れ味！」

義兄「さすが白銀の剣（つるぎ）……いや、白銀の剣士だ」

80 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/04(月) 22:45:46.39 ID:Pe0IbWAj0

　ー 川下り ー


少年「川幅が広がって、流れが緩くなった」

魔導士「下流に来たんだね」



義兄「雨が降ってきた……」

魔導士「もうすぐアンデルの町に着くよ」


　――


魔導士「あっ！」


魔導士「煙が上がってる！　町の方角だ」

少年「さては、妖霊軍か！？」

81 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/04(月) 22:50:01.58 ID:Pe0IbWAj0

義兄「城が囲まれているとすれば、迂闊に上陸できないぞ」

魔導士「この先に支流があって、城の水門に通じているはずだよ」

少年「テラはお城に詳しいんだね」

魔導士「まあね」

82 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/21(木) 15:54:34.08 ID:ddmhrHkM0

義兄「……静かだな」

少年「みんな逃げちゃったのか、それとも……」

　――

騎士「何者だ？」


魔導士「！？」

少年「僕は白銀の剣士。妖霊から町を守るために来たんだ」

騎士「白銀の剣士だって？　本物の？」

義兄「本物です。貴方は……国王の弟君であるセシル様ですね？」

騎士「セシルでいいよ。君は討伐軍にいたフリオニールだね」

騎士「さ、雨が降っているから中にお入り」


魔導士「……」

騎士「……？」

83 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/21(木) 15:59:40.20 ID:ddmhrHkM0

　ー 室内 ー


少年「妖霊軍の姿が見えないけど、どうしたんですか？」


騎士「雨のおかげだよ。奴らは水が苦手らしい」

騎士「どうやら敵の兵士たちは土の精霊。切っても突いても平気なので始末が悪い」

騎士「率いているのが蜘蛛将軍。六本の腕で六本の毒剣を振るう、恐るべき化け物だ」

騎士「必死に戦って、これまで三度追い返したそうだが、生き残った城兵は九人」

騎士「僕がどこまで戦えるかはわからないけど……」



騎士「この雨が止んだ時、それがこの町の最後だろう」

84 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/21(木) 16:28:42.71 ID:ddmhrHkM0

少年「テラ、何かいい魔法ない？」

魔導士（……な、何かいい魔法と言われても……）

少年「どうしたの？　どうしてそんな小声で……？」

騎士「雨にあたったから体調を崩し……？」

騎士「君は魔法使いなのか？」

魔導士「！」


少年（体調が悪いんだね。すぐに休まなきゃ！）

魔導士（そ、そうだね……）

85 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/21(木) 17:01:17.01 ID:ddmhrHkM0

騎士「……！　君、ちょっとこっちへ来てもらえるかな？」

魔導士「……」



騎士「少し待っててくれるかい？」

少年「はーい」

86 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/21(木) 17:03:01.09 ID:ddmhrHkM0

少年「部屋を用意してくれるのかな？　久しぶりにベッドで寝られるね！」

義兄「それは良いことなんだが、どうも様子が違うみたいだぞ」










魔導士「……」

騎士「……」



魔導士「……」

騎士「……」

87 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/04/21(木) 17:05:04.01 ID:ddmhrHkM0

騎士「待たせたね。これを使うことに決めたよ」

少年「これは？」

騎士「これはひそひ草。遠くからでも声を伝えることができる」

騎士「この城の地下倉庫は広い。そこに、これをおいて……」

88 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/05/16(月) 18:12:05.28 ID:I3BFj2kx0

　ー 外 ー

蜘蛛「雨は止んだ。アンデル城に止めを刺すときが来た」



蜘蛛「行くぞ！」





土塊「オウ！　オウ！　オオオーウ！」

89 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/05/16(月) 18:14:39.00 ID:I3BFj2kx0

蜘蛛「んん？　城の門が開けっぱなしだ」

蜘蛛「怖気づいて逃げ出したのか、隠れたのか……？」



蜘蛛「静かだな……」

90 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/05/16(月) 20:24:29.73 ID:I3BFj2kx0

蜘蛛「城の隅々まで探せ！　一人残らず息の根を止めるのだ！」


土塊「オウ！　オウ！」

91 ： ◆pIDAf9S4HQOM [sage]：2016/06/13(月) 21:22:41.42 ID:LrFRLYHS0

　♪〜♪〜♪〜

　♪〜♪〜♪〜




蜘蛛「待て！　何か聞こえるぞ」




　♪〜♪〜♪〜


　♪〜♪〜♪〜




蜘蛛「地下か！」

92 ： ◆pIDAf9S4HQOM [sage]：2016/07/10(日) 20:39:03.95 ID:UF/Tzbjx0

蜘蛛「見つかったか？」


　♪〜♪〜♪〜


蜘蛛「どこにいるんだ！　出てこい！」


藁　「♪〜♪〜♪〜」






蜘蛛「そ　こ　だ　ー　！」


藁　「　カ　ラ　ッ　ポ　」


蜘蛛「……騙したな！」

93 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/07/10(日) 20:54:05.62 ID:UF/Tzbjx0

　ﾊﾞﾀﾝ!

　ﾄﾞ･ﾄﾞ･ﾄﾞ……



蜘蛛「水だっ、溶けるぞ！　外へ出るんだ！」


土塊「オウ！　オウ！　ｵｳ！」



　ﾜｰﾜｰ　　ｸﾞｧｰｸﾞｧｰ　　ｳｫｵｰ　　ｳﾎﾞｧｰ

94 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/07/10(日) 21:30:53.03 ID:UF/Tzbjx0

魔導士「フラッド！」



義兄「地下倉庫の扉はすべて塞いだ」

少年「敵を一網打尽にできるね」

騎士「一人残らず溶けてしまうだろう。あとは、蜘蛛将軍がどう出てくるか……」

95 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2016/07/22(金) 21:59:34.93 ID:1GjiMdXjo

96 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2016/07/22(金) 22:00:01.07 ID:1GjiMdXjo

あげ

97 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/08/07(日) 09:48:14.48 ID:Bb0IrXma0

　ﾊﾞｼｬｱｧｧ！


全員「！」


蜘蛛「おのれ、よくも……！　だが、油断したな！」

蜘蛛「わしの部下は土の精霊だけではない！」



　【特殊技：クモの子散らし】



少年「うわぁ……気持ち悪い」

騎士「気を付けろ！　子蜘蛛でも、立派な人喰い蜘蛛だ！」

蜘蛛「そうだ。アンデルの城兵どもは皆喰い尽くしたわ！」

蜘蛛「あとはお前たちのみ！　行け、喰い尽くせ！」

98 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/08/07(日) 10:15:42.16 ID:Bb0IrXma0

少年「きりが無いよ！」

義兄「将軍を直接叩け！　道は切り開く！」

99 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/08/13(土) 07:43:13.70 ID:Jye2Rwfh0

ああああ

100 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/08/21(日) 09:48:45.44 ID:wyMaVc0Q0

　ｽﾞｶｯ！



少年「見たか！　白銀の剣の威力を！」


蜘蛛「くーっ！　覚えてろよ！」


少年「まてーっ！」

101 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/08/21(日) 10:12:10.89 ID:wyMaVc0Q0

蜘蛛「……」





少年「あっ、糸を吐いた。流れ星が！」





蜘蛛「今回はこれまでだ。だが、これで終わったと思うなよ」

102 ： ◆pIDAf9S4HQOM ：2016/08/27(土) 13:56:47.69 ID:ULuO1cVA0

　― 幽冥宮 ―


大帝「なんと！？　負けて帰っただと！？」

蜘蛛「お、お許しください！　白銀の剣士が現れたのでございます」

蜘蛛「恐るべき魔法の洪水で、あっというまに部下は全滅……」

蜘蛛「クモの子たちも、薙ぎ払われ、狩り取られ、焼き払われ……」

蜘蛛「強いのなんのって、あんな恐ろしい相手は初めてでございます」


大帝「だ　ま　れ　〜　！　失敗は許さぬ！！」



　ｼﾞｬｯ!



　ｸﾞｷﾞｬｱｧｧｧｧ……

103 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/08/28(日) 07:49:32.60 ID:0PRZuJjno

ひみつ道具無しでオドロームに勝てる気がしない…

104 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/09/17(土) 09:23:10.28 ID:CgDcZDRH0

大帝「役に立たぬ者は、塵となって消え失せろ！」



大帝「トリホー！」

トリ「はっはっ、はい！」

大帝「白銀の剣士を、ここまでのさばらせたお前の責任は重いぞ！」

トリ「し、しかしながら大帝様……」



　ｼﾞｬｯ！



トリ「ヒーッ！」

105 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/09/17(土) 09:49:54.97 ID:CgDcZDRH0

象　「おそれながら大帝様。次はこのわたくしめにお任せ下さい」

大帝「自信があるのか？」

象　「人間どもの最後の一人まで、根絶やしにしてご覧に入れます」

106 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2016/10/01(土) 12:19:42.58 ID:IymA3nQp0

　― ユミルメ城 ―


兵士「王様！　アンデルの街より伝令に参りました」

国王「ろくな知らせではあるまい。今度はどこの城を取られた？」



兵士「いえ、大勝利の知らせでございます！」

国王「なに、大勝利だと！？」

兵士「はい。白銀の剣士が現れたのです！」


兵士「白銀の剣士とセシル様、それに義勇の者と一人の魔導士が妖霊軍を悉く打ち破りました！」

国王「なに！？　ついに白銀の剣士が？　それで、彼らは今どこに？」

兵士「シャルペロー城に妖霊軍が現れたとの知らせに、すぐ救援に向かいました」

107 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/11/06(日) 10:09:35.62 ID:CMVn2XQB0

しえん

頑張って

108 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2016/12/04(日) 10:35:46.92 ID:PZL7O8Bn0

四円

109 ： ◆pIDAf9S4HQOM [sage]：2017/01/29(日) 10:29:14.48 ID:gQt/n3Ck0

文章がまとまらない……

あ、支援ありがとうね

110 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2017/02/18(土) 01:03:28.96 ID:T1AGHmSzO

？

111 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ：2017/02/27(月) 13:39:00.42 ID:m00gxhiPo

(・ω・)ﾉｼ

112 ：以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]：2017/04/01(土) 14:42:53.95 ID:mLhthBlX0

紫煙

113 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2017/05/21(日) 09:08:44.81 ID:7U0EnksM0

― シャルペロー城 ―


義兄「ものすごい大群が現れたぞ」

少年「化け物ども、来るならこい！」



― 城壁 ―



象「水の兵士たちよ、突撃！」

114 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2017/05/21(日) 09:13:00.69 ID:7U0EnksM0

騎士「水か……厄介だな」

義兄「凍らせることができれば、敵を足止めできる」

騎士「氷の魔法はあるけど、凍結の魔法は……無い」

義兄「……」


魔導士「かなり強力な氷の魔法を使えば、凍結できるかもしれない」

騎士「やってみるか？」

魔導士「ええ」

115 ： ◆pIDAf9S4HQOM [saga]：2017/05/21(日) 09:25:17.10 ID:7U0EnksM0

魔導士「ブリザガ！」



ｶﾞｼｬ　ｶﾞｼｬ　ｶﾞｼｬ　ｶｷｰﾝ！



少年「すごい、凍ったよ！　道も凍っちゃったから敵も来れないね！」

義兄「ああ。だがこのままだと籠城攻めになるな」

騎士「大丈夫、一気に砕いてそのあとは蒸発させてしまうから」







水塊「ｳﾎﾞｧｰ」