にこ「きっと青春が聞こえる」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

363 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:05:06.05 ID:KsmMYZ1co

にこ「穂乃果がいなくなった?」

ことり「はい……」

海未「帰りのショートホームルームまではいたのですが……」

にこ「…………」

 絵里のレッスンが始まって三日目。それは前触れもなく訪れた。

 というか、訪れなくなったって言うのが正しいんだけど。

ことり「帰っちゃった、のかなぁ……?」

海未「まさか、いくら穂乃果といえどこんな逃げるような……」

 かばうように否定しながらも、海未は言葉尻を濁す。

 なにか思い当たる節でもあったのかもしれない。
364 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:05:32.77 ID:KsmMYZ1co

凛「だけど、急に用事ができたとかかもしれないにゃ?」

海未「可能性としてなくはありませんが……」

ことり「そういう場合、ちゃんとメールなんかは入れてくれてるから……」

凛「メール……来てないにゃ?」

海未「…………」

ことり「…………」

 沈黙は、なによりもたしかな肯定だった。

花陽「と……とりあえず、準備運動だけでも始めませんか?」

花陽「絢瀬先輩が来る前に体はあっためておかないと……」

にこ「や、そういうわけにもいかないでしょ」

にこ「絵里には六人でって言われてるわけだし。放ってはおけないわ」
365 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:06:00.18 ID:KsmMYZ1co

花陽「だけどそれって……ランキングに載るメンバーが六人で、ってことですよね?」

花陽「六人揃わなきゃ練習できないって言われてるわけじゃないですし……」

にこ「それは、そうだけど」

 ちょっと冷たくない? なんて、思わないでもない。

 一蓮托生……とまではまだいかないものの、一応もう同じ場所を目指す仲間なわけだし。

 その仲間が練習に来ないのに、知らんぷりするなんて――

絵里「ごめんなさい、遅れてしまったわ――あら?」

希「お疲れさまー。……ん? 絵里ちどしたん?」

にこ「あ……」

 私たちが答えを出すより早く、タイムリミットが顔を出してしまった。
366 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:06:26.02 ID:KsmMYZ1co

絵里「ひとり、足りないようだけど?」

にこ「えっと、それは……」

絵里「高坂さんはどうしたの? 昨日一昨日はこの時間には集まっていたじゃない」

 ぐるりと屋上を見渡す絵里。

 一人一人と目を合わせ、その皆が皆一様に目を合わせようとしない様子を見て、彼女は察したようだった。

絵里「……来ていない、のね?」

 質問しているようで、それは答えを求めるものではなくて。

 ただ、私たちに現状を認識させるためのものだった。

絵里「……そう。なら今日の練習はなしね」

花陽「えっ……」

 驚いたのは花陽である。

絵里「言ったでしょう? 条件はあの六人。一人でも欠けることは認められないわ」

花陽「それは……あくまで、ランキングに載るメンバーが、という話だったはずです」

花陽「一人足りないから練習もできない、なんて――」

絵里「来るの?」

花陽「――え?」
367 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:06:51.83 ID:KsmMYZ1co

絵里「来るの? 高坂さんは。明日から」

絵里「今日何事もないようにここにいるメンバーだけで練習して」

絵里「来れるの? 高坂さんは」

絵里「病気とか、急な用事とか。そうだったのなら構わない」

絵里「だけど、もしも「そうじゃなかった」場合――」

絵里「今日何もしないで、明日から、彼女は来るの?」

花陽「…………」

絵里「――やるからには、なあなあで済ませるつもりは、私にはないわ」

花陽「そ、それは私だって……」

絵里「…………」

花陽「……なん、ですか?」

絵里「……いいえ」

絵里「とにかく。一人でも欠けているのなら私からのレッスンは中止」

絵里「明日は全員揃っていることを願うわ」

にこ「あ、ちょ、……もう」

 有無を言わさぬうちに、絵里は屋上から姿を消した。
368 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:07:30.00 ID:KsmMYZ1co

希「なんて言うか、ごめんね」

にこ「なんで希が謝んのよ?」

希「絵里ちがあそこまで頑なになっちゃった原因の半分くらいは、うちの占いのせいみたいなんよ」

にこ「それって……例の?」

希「うん、八つの光」

希「そんなにこだわらなくても、集まる人だけでやればいいんじゃないかなって、うちは思うんだけどね」

希「あ、でもにこっちとしても大事な八人なんだよね」

にこ「そう……ね」

 そう、大事。

 大事な――九人。

凛「何の話にゃ?」

にこ「あ……こっちの話、こっちの話」

凛「?」
369 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:07:55.93 ID:KsmMYZ1co

にこ「なんにせよ、まずは穂乃果よ穂乃果」

にこ「あの子ったら、一体どこ行っちゃったのかしら……」

ことり「あのぅ、そのことなんですけど」

 おずおずと挙手をしたのは、ことり。

ことり「穂乃果ちゃんがどこに行ったのか、ひょっとしたらアテがあるかもしれないです」

にこ「ほんとに?」

ことり「はい、今日のお昼の時、ちらっと話題に出てたんですけど……」

海未「あ、ひょっとしてあの話ですか」

ことり「うん。なにか用事があって、とかじゃないなら、たぶんあそこじゃないかなって思うの」

にこ「どこ? それって」

ことり「はい、それは――」

――――――――

――――――

――――
370 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:08:33.94 ID:KsmMYZ1co

【Side:穂乃果】

穂乃果「いただきまー……す!」

 ぱく、っと一口。すると、ふわぁってやわらかーい匂いが口いっぱいに広がる。

穂乃果「んー、うまい! やっぱりパンは焼きたてが一番だね!」

 思わず叫んでみたものの。

 ベンチに座る私の両隣には、返事してくれる人は誰もいなくて。

穂乃果「はぁ……やっちゃった……」

 自分のやったことを、今更ながらに後悔。

穂乃果「うう……だってだって、ことりちゃんがお昼に「おいしいパン屋さんが開店した」、なんて話するから――」 

 ――誰に言い訳してるんだろ、私。

 そんなの関係ないって、自分が一番わかってるはずなのにね。
371 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:09:01.93 ID:KsmMYZ1co

 温度差に、耐えられなかった。

 練習についていけないとか、一人だけいつまでもへたくそなままとかそういうのは……ちょっと関係あるけど、だけど、それだけじゃなくて。

 私、なんでここにいるの? っていうか。

 そりゃあ、最初にこ先輩が誘ってくれた時は面白そうかなー、とかちょっぴり思ったけど。

 生徒会長の出した条件を聞いたら――無理だな、って思った。

 きっと私がついていける話じゃないな、って。

 だから海未ちゃんがお断りしようとしたときは、内心ラッキーなんて思ってた。

 だけど――
372 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:09:32.51 ID:KsmMYZ1co

ことり『私は――やっても、いいです』

 嬉しい気持ちと、困った気持ちが、半分ずつくらいだった。

 ことりちゃんが残ってくれるんじゃないかな、っていう期待と。

 え、私もやらなくちゃダメなの? っていう不安と。

 ごちゃまぜになって――複雑。

 結局、ことりちゃんをがっかりさせたくなくて一緒に入ることになったけど。

穂乃果「その結果がこれじゃあ……」

 合わせる顔、ないよね。
373 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:09:58.87 ID:KsmMYZ1co

 いっそのこと、ことりちゃんが「やーめた」って言ってくれたら――

穂乃果「……サイテー」

 そんなことを、ちらっとでも考えた自分が、大嫌い。

 自分がやりたくないだけなのに、ことりちゃんのせいにしようとしてる、私。

 ことりちゃんがどうとかじゃなくて、私自身がどうしたいか、なのに。

 ほんと――サイテーだよ。

穂乃果「はぁ……」
374 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:10:36.17 ID:KsmMYZ1co

 * * * * *

穂乃果「はぁ……」

にこ「…………」

 学校からさほど離れていない公園のベンチに、穂乃果の姿はあった。

 ことりの話だと、この公園のすぐ前に焼き立てのパンが食べられるパン屋さんがオープンしたって話をお昼にしたらしく。

 穂乃果がいるとしたらそこではないかという話になり――ビンゴ。

 正直、見つけたら出会い頭に怒鳴りつけてやろうかと思ってたんだけど。

穂乃果「…………」

 あの子のしょんぼり顔を見ていたら、そんな気もなくなってしまった。
375 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:11:24.73 ID:KsmMYZ1co

にこ「アイドル、つまんない?」

穂乃果「つまんない、ってわけじゃ……うぇえ!?」

にこ「なによ? 人の顔見てそのリアクションは失礼じゃない?」

穂乃果「だって、だって、なんでここに?」

にこ「部長だもの、部員がとんずらこいたらしょっぴくのは当たり前でしょ?」

穂乃果「じゃなくて、なんでここが……」

にこ「あんたの考えてることなんて、幼馴染はお見通しみたいよ?」

穂乃果「……です、よね」

にこ「…………」
376 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:12:26.30 ID:KsmMYZ1co

にこ「アイドル、つまんない?」

 さっきと同じ質問を、もう一度。

穂乃果「……よく、わかんないです」

穂乃果「体動かすこと自体は嫌いじゃないけど、ぶきっちょだし」

穂乃果「みんなが一生懸命になってる横で穂乃果だけ転んで、えへへーってごまかしても誰も見向きもしなくて」

穂乃果「私、なんでこんなところにいるんだろ……って」

穂乃果「ごめんなさい、一度やるって言ったのに、中途半端な態度で……」

にこ「――ううん、あんたが謝る必要なんてないわ」

穂乃果「だって、自分勝手でわがままなのは穂乃果で、」

にこ「いいから。謝んないで」

 これ以上謝られたら――こっちがみじめになっちゃう。
377 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:13:10.42 ID:KsmMYZ1co

 この子が嫌々やっているのなんて、本人から聞くまでもなく明らかだった。

 それをわかってて私は、見て見ぬふりをしてる。

 私の目指す場所――μ'sのため。

 凛なんかは自分の意志をはっきり示してたから、真っ向から向き合うことができたけど。

 本音を言いづらい子がいるのだって、当たり前なのよね。

 ――じゃあ、諦める? 9人集めるの。

にこ「…………」

 それは……無理。

 自分勝手で、わがままだって、わかってても。

 これは譲りたくない。譲れない。

 これを譲ったら、私は――
378 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:16:27.72 ID:KsmMYZ1co

にこ「……もうちょっと、続けてみたら?」

穂乃果「え?」

 結果。出てきたのは、停滞の言葉。

 なんとか現状を維持しようとするだけの、なんの力もない言葉。

 そうだ。別に無理やりやらせる必要はない。

 凛の時と同じ、彼女自身に動機づけをしてあげれば――

にこ「ほら、ことりだって必死にやってるわけだし。それが理由でもいいじゃない?」

穂乃果「ことり、ちゃん?」

にこ「そうよ。ことりがやってるから、自分も一緒にやる。海未だっているわけだし」

にこ「やってるうちに楽しさが見つかってくれれば万々歳じゃない?」

にこ「それにさ、ことりだってアイドルの楽しさに目覚めてもっと続けたいって思うかもだし」

穂乃果「…………」
379 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:17:34.72 ID:KsmMYZ1co

 これで、大丈夫よね。

 ことりが海外留学するという事実は、この世界の彼女らには有効打になりうる。

 それを阻止する可能性は、十分彼女が続ける動機になるはず。

穂乃果「ことりちゃんが続けるから、私も続ける……」

穂乃果「あはは……」

にこ「……ほの、か?」

穂乃果「そうですね。ことりちゃんがやってるから、私もやります」

穂乃果「それで、いいんですよね」

穂乃果「私自身が、どうとかなんて……」

にこ「あの、ちょっ」

 私の制止も聞かず、穂乃果はふらふらと公園を立ち去ってしまう。

 その様子は、とてもじゃないけどやる気になったようには見えなくて。

にこ「…………」


 これで……大丈夫、なの?
380 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/08/22(月) 22:18:04.05 ID:KsmMYZ1co
ここまで
近いうちにとか言いながら早一か月
もう少しペースあげたい
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 22:36:45.70 ID:1PWIst5Q0
ほのかって上手くはまらんかったらほんま普通の子やもんな
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/22(月) 22:57:21.94 ID:eBw87rlPo
乙です
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 07:20:02.63 ID:Kd9CsALSO
ほのかわいい
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/23(火) 21:38:25.86 ID:nxU9HTyMo
一年に戻ったならリボンの色で気付く
だろ

385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/23(火) 21:40:19.06 ID:nxU9HTyMo
学年で色が変わるぞゴミクズ

これはドイツさんも失笑
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/23(火) 21:44:32.85 ID:nxU9HTyMo
俺もこんか学校生活送りかったよおおこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/23(火) 23:17:06.24 ID:H52PcdEGo
>>129
アレルギーに否定ってどういう意味かね
アレルギーの意味を理解して使ってるかな

アレルギーに否定されるなら問題ないじゃん
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/23(火) 23:18:43.88 ID:H52PcdEGo
>>123
なんで凛の一人称が私なの?
sid には全部凛って使われてなかったか
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/23(火) 23:45:18.51 ID:H52PcdEGo
俺たちがここであったみたいに運命というのは必然だからね

この女神たちの絆も同様
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 00:47:21.12 ID:s5rSHk0Lo
理解力のないキッズには構わないでね
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 11:05:24.51 ID:qjyd/czLo
アレルギーに否定って・・・


思考停止のゴミクズがいますねぇ
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 11:09:57.62 ID:qjyd/czLo
二年生に戻ったらリボンの色で気付くだろ・・・

学年ごとにリボンの色が変わることを知らなかったのかなぁ

同じリボン=緑だよな
そうじゃないと過去に戻ったってわかるもんなぁ 
二年生の教室ならリボンの色は赤なんだけどなぁ

不思議だなぁ 
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 11:12:35.19 ID:qjyd/czLo
http://imgur.com/xSD8qC1.png



学年で色は変わるゾ〜

これにはドイツさんも苦笑い

http://imgur.com/xSD8qC1.png
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 11:14:33.57 ID:qjyd/czLo
sidうんちゃらよりちゃんとアニメ見てろよ

俺はいちいち正しいマスターベーションをお前に教えてやるほど優しくはねえぞゴミクズ
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/24(水) 12:10:38.22 ID:DJPZPrr3o
にこが二年ならリボンは赤だぞォ〜

         
タイムスリップss[田島「チ○コ破裂するっ!」]猿の9割が間違えるジンクス
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 19:58:20.80 ID:W42qP10ro
はよしろ
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 19:58:56.02 ID:W42qP10ro
>>393
グロ
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 20:18:59.35 ID:E/6jrSw8o
http://imgur.com/RdsqFgn.png


リボンの色の説明しろやゴミクズ

二年が緑とかありえねーよ


http://imgur.com/RdsqFgn.png
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 20:34:55.30 ID:77kOpoXNo
>>398
グロ
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 13:12:02.43 ID:HtXIWtXwo
http://imgur.com/prRYZ9j.png
リボンが赤なら過去に戻ってるってわかるよな

少なくとも違和感を覚えるはずだ
ねぇなんでそんな大切な描写がないのかなぁニヤニヤ

http://imgur.com/prRYZ9j.png
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 13:13:20.18 ID:HtXIWtXwo
これはお前のssがお前を生んだ肉便器並みにまんこがばがばだからありふれた悲しみの果てに自殺したやつの画像


よっ殺人鬼 
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 21:57:58.45 ID:xbX6WKnto
>>400
グロ
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/26(金) 06:59:16.11 ID:2u9Y+7BSO

(・8・ )

( ・8・)

( ・8・ )わかった、この話はやめにしよ?はいチュンチュン
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 08:47:06.01 ID:WzIWLiSSO
まだか
405 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:50:57.24 ID:NXOor8VQo

 なんのために歌ってるの?

 心の中で、誰かが私に問いかける。

 
花陽「凛ちゃん、今のところワンテンポ早くなってるよ!」

凛「にゃー、ごめんかよちん!」

 
 やりたい子がいて。


穂乃果「…………」

海未「もう……どうして合わないんですか!」


 やりたくない子がいて。


絵里「口ばっかりになったってしょうがないわ! もう一度やりなおしよ!」


 やらせようとする子がいて。


 大きさも形もちぐはぐな歯車が、それでも無理やり噛み合おうとして。


にこ「――――」


 ぎしぎし、きしむ。
406 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:51:27.08 ID:NXOor8VQo

 μ'sを作りたかった。

 もう一度、やり直したかった。

 楽しく笑い合って。

 たまにはけんかして。

 でも、すぐに仲直りして。

 そんな9人を、作り直したかった。

 その結果が、これ?

 違う。

 違う違う違う。

 私が作りたかったのは、こんないびつなものじゃなかった。


 ねえ。


 なんのために、歌ってるの?
407 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:52:08.81 ID:NXOor8VQo

【Side:ことり】

 
ことり「それで……お話ってなにかな?」

花陽「はい、えっと……」

 いつも通り、ぎくしゃくした練習が終わった後のこと。

 私を部室へ呼び出したのは、後輩の女の子二人だった。

凛「かよちん、言いづらいなら凛から言おうか?」

花陽「ううん、大丈夫。大丈夫だよ」

 言いづらいこと、なんだ。

 なら、やっぱり話したいことって――


花陽「ことり先輩たちは――部活、楽しいですか?」


 その話、だよね。
408 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:52:35.95 ID:NXOor8VQo

花陽「ごめんなさい。失礼なこと、言ってると思います」

花陽「だけど、だけど……二年生の三人を見てると、やりたくてやってるようにはどうしても見えなくて」

花陽「私は……アイドルに、すごくあこがれてて」

花陽「だからこの学校にスクールアイドルをやってる部活があるって知って、とっても嬉しかった」

花陽「だから、だからこそ……中途半端に、したくないんです」

ことり「そのためには……私たちは邪魔、ってことだよね」

花陽「そういうわけじゃ!」

ことり「……ごめんね、ずるい言い方だったね」

 慌てる花陽ちゃんを見て、少し罪悪感。

 だけど、きっと彼女の言いたいことをなんのフィルターもかけずに言うなら、そういうことなんだと思う。

 私たち――特に穂乃果ちゃんは、この部活の邪魔になってる。
409 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:53:03.90 ID:NXOor8VQo

 ひどくなったのは、穂乃果ちゃんが部活をさぼっちゃった日の、翌日。

 朝から明らかに落ち込んでた穂乃果ちゃんは、それでも私たちに部活をさぼったことを謝って。

 だけど、部活の取り組みは前日以上に悪くなっちゃった。

 誰が見ても、やる気がないのは明らかだった。

 でも、当たり前だよね。

 だって、穂乃果ちゃんは、やりたくてやってるわけじゃない。

 私に付き合ってくれてるから。

 私のわがままに振り回されてるから。

 楽しめるはずが――ないんだよね。
410 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:53:41.96 ID:NXOor8VQo

凛「先輩たちも、にこ先輩に強引に誘われたんだよね?」

ことり「ん、……そう、なるかなぁ」

凛「やっぱり」

 苦笑いを浮かべる凛ちゃんは、凛もそうだったんだー、と照れながら話す。

凛「それでも、凛は根っこの部分ではアイドルやりたいって思ってたから。だから、今も楽しく続けられてる」

凛「だけど……先輩たちは、違うにゃ?」

ことり「…………」

 そうだよ。

 その一言は、言えなかった。

 それを認めてしまうのは、本当に、真剣にアイドルに向き合ってるこの二人を、侮辱することになっちゃうから。

 ……認めなくても、それが事実なんだけどね。
411 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:54:14.83 ID:NXOor8VQo

花陽「……絢瀬先輩が言っていた条件も、正直なところ、気にする必要はないと思います」

凛「そうだにゃ! 生徒会長は自分勝手でわがままで、言うこと聞く必要ないにゃ!」

花陽「そこまでは言わないけど……理解できる部分はあるし」

凛「だけどあの人たち、よくわかんない理由で部員を集めてるんだよ? 占いがどうとか――」

ことり「あの、ね」 

 おかしな方向へ話を進める二人を呼び戻す。

ことり「二人には申し訳ないけど、私は私なりの理由で部活を続けてるの」

ことり「それこそ自分勝手でわがままだってこと、わかってる」

ことり「だけど、私にとって――私たちにとって、すごく大事なことなの」

ことり「だから……ごめん。もう少しだけ、続けさせて?」
412 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:54:42.81 ID:NXOor8VQo

凛「続けさせて、って言われても……」

花陽「別に私たちが許可するような話でもないですし……」

 言いながら、顔を見合わせる二人。

 私がこんなにもアイドル研究部に執着するのを、不思議に思っているのかもしれない。

 でも、大事なんだ。

 素直になれない私たちの。

 自分勝手でわがままな私たちの、最後の悪あがき。

 これを逃したら、きっと私たちは、ずっと後悔すると思う。

ことり「――そこまで、わかってるはずなのにね」

花陽「え?」

ことり「ううん、ごめん。ひとりごと」

 そこまでわかってるはずなのに。


 どうして私たちは、あと一歩を踏み出せないんだろう。
413 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/11(日) 22:56:17.86 ID:NXOor8VQo
短いけどここまで
リボンの色は知らなかった、申し訳ない
今後気を付けるけど>>9で書いたようにいろいろ勘違いしてる部分もあると思うので
指摘してもらえると助かります
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 23:35:52.28 ID:F9S+LRBMo
乙です
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/13(火) 23:41:33.92 ID:22lBoK0q0
待ってました!
416 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:28:47.24 ID:FSwkNwzyo

【Side:花陽】

凛「ことり先輩、諦めてくれなさそうだったね……」

花陽「うん……」

 凛ちゃんと肩を落としながら歩く、夕暮れの帰り道。

 とぼとぼ歩きながら、ついさっき交わしたやり取りを思い出します。


ことり『そのためには……私たちは邪魔、ってことだよね』

 
 思わず否定しちゃったけど、だけど、その通りで。

 嫌な子だなって、自分でも思います。

 だけど。それでも。

 今の二年生の先輩たちは、正直、あんまり好きになれません。
417 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:29:14.67 ID:FSwkNwzyo

 アイドル研究部は、どんどん良くない方向へ向かっています。

 お世辞にもやる気があるとは言えない、二年生の三人。

 ことり先輩は、まだ一生懸命ついて来ようとする思いが見られます。

 だけど、穂乃果先輩と海未先輩は――。

凛「なんでやってるんだろうね? あの人たち」

 歯に衣着せない凛ちゃんの言い方は、ちょっぴり辛口で。

 でも、それには私も同意見です。

 私たちにとって大事なこと。ことり先輩はそう言いました。

 私には理解できない理由が、きっとあるんだと思います。

 それでも。

 私だって、アイドルを大事にしてるんです。
418 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:29:50.25 ID:FSwkNwzyo

凛「にゃー、それもこれもぜーんぶ生徒会長のせいだにゃ!」

花陽「そう、なのかな?」

凛「そうだにゃ! 生徒会長があんな条件ださなければ、今頃もっともーっと楽しく部活できてたにゃ!」

花陽「…………」

 突然出された生徒会長の条件と、そのための厳しいレッスン。

 練習が厳しいことは、苦ではありませんでした。

 自分がレベルアップしていくのが、実感できてるから。

 だけど、そのやり方は、あまりにも一方的で。

 ついていこうと、誰も思えないやり方でした。
419 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:30:17.26 ID:FSwkNwzyo

凛「……なんだかね。三年生、あんまり信用できないかも」

花陽「三年生……って、にこ先輩も?」

凛「うん……」

 曖昧に答えると、凛ちゃんは少しだけ言いにくそうに口をもごもごとさせて、うつむいてしまいます。

凛「さっきもちょっと言ったけどね? 三年生って、よくわかんない理由で部員集めしてるみたい」

花陽「あ……確か、占いがどうとか」

凛「ん。詳しくはわかんないんだけど、少なくとも、アイドルをやりたい人たちを集めてるってわけじゃないみたい」

花陽「それは……」

 それは――二年生を見れば、わかることでした。

凛「もともとは、にこ先輩が始めたことだから、あんまり強く言えないけど……」

凛「だけど、これって、なんだか違うって、凛は思う」

花陽「…………」

 にこ先輩は、「あんなこと」があっても、アイドルをやめない人でした。

 だから、だからこそ、この人についていけば素敵なアイドルを目指せる。

 そう、思っていたけど。

花陽「どう、なっちゃうんだろう……」
420 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:30:43.60 ID:FSwkNwzyo

凛「――かーよちん」

花陽「え?」

凛「少し、寄ってこ?」
 
花陽「寄ってこ、って……神田明神? 凛ちゃん、今からトレーニングするの?」

凛「違うにゃかよちん。神田明神は別にトレーニングするためだけの場所じゃないにゃ?」

凛「アイドル研究部の今後を、神様にお願いしに行くにゃ!」

花陽「あ、そ、そうだよね」

 ひょっとして。気を遣ってくれてる、のかな。

 私が暗い顔しちゃってたから。

 うう……反省です。
421 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:31:09.05 ID:FSwkNwzyo

凛「あれ?」

花陽「どうしたの? 凛ちゃん」

 石段をぴょんぴょん駆け上る凛ちゃんが、急に足を止めます。

凛「なにか聞こえる――」

花陽「え?」

 言われて、私も耳を澄まると。

 境内の方から、確かにうっすらとメロディが聞こえてきます。

 だけど、この曲って――


りんぱな「『START:DASH!!』?」


 私たちの曲が、なんで?

 疑問の答えは、石段の先に広がっていました。
422 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:32:05.46 ID:FSwkNwzyo

絵里「希! 今のとこちょっとずれてる!」

希「おっ、けー!」

絵里「――はぁ、はぁ。ここまでにしましょうか」

希「ふあぁー、疲れたー」

絵里「こらこら、こんなところで寝そべらないの。汚いわよ?」

希「そうは言っても……絵里ちこそほんとは寝そべりたいくらい疲れてるんじゃないん?」

希「部活でレッスンして、それから自分も練習だなんて」

絵里「それは、教える側が踊れなかったらしょうがないもの」

絵里「それに希だって、バイトがある日もこうして付き合ってくれるじゃない」

希「うちは部活に行っても見てるばっかりやしねぇ。少しは体動かしとかんと、いざ入部したらお荷物になってまうし」

絵里「私だって……強いるばかりで自分ばっかり楽していられないもの」

絵里「――あれだけの厳しい条件。与えてるんだから」

絵里「あれだけのわがまま、通そうとしてるんだから」

絵里「疲れてようとなんだろうと、私が誰より頑張らなくてどうするのよ?」

希「うへぇ……絵里ちには頭上がらんわぁ」

絵里「別に、バレエのレッスンに比べたらこれくらいどうってことないわ――」
423 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:32:41.15 ID:FSwkNwzyo

花陽「――――」

凛「――――」

 一度、凛ちゃんと目を合わせて。

 何も言わず、私たちは回れ右しました。

 石段を下りきり、再び家路についても、どちらも言葉が出てきません。

 本気、なんだ。

 みんな、それぞれ理由があっても。それぞれベクトルが違っても。

 きっと、私と同じ。

 みんな――本気、なんだ。

花陽「…………」 

 ぎゅっ、と握ったこぶしは、決意のつもり。

 みんなで。

 みんなでアイドル活動をしたいと、今日、初めて心から思うことができました。


 だから――花陽は、そのために動き出します。
424 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/09/22(木) 21:33:19.06 ID:FSwkNwzyo
ここまで
ぼちぼち暗い展開はおしまいになる予定
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/22(木) 21:37:13.31 ID:itGxxmkeo
乙乙
ハッピーエンドになるといいなぁ
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/22(木) 21:56:40.29 ID:FYpKdrSlo
乙です
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 08:23:15.66 ID:h9F+7GdV0
花陽の決意やね
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 16:21:53.77 ID:Hz0QC6RAo
悲しみに閉ざされて
泣くだけの君じゃない
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/23(金) 18:02:44.10 ID:mn+4DF1LO
ほのかがいかに化け物だったかがわかるな
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/10(月) 20:35:01.13 ID:qbBHZqVxO
>>362
お前がしね
つまんねえもん読みやがってしね
431 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 22:57:18.08 ID:DRFjCdkxo

【Side:穂乃果】

 いつものように練習が終わって、帰り道。今日も私はひとりぼっち。

 別に海未ちゃんやことりちゃんがいじわるしてるとか、そういうことじゃなくって。ただ単純に、私が気まずくて一緒に帰れないだけ。

 最近はお昼ご飯も他の友達と食べることが多くなった。海未ちゃんたちと一緒に食べても、なんだか、会話が続かないし。

 なにやってるんだろう。私。

 きっかけは部活動。ことりちゃんが望んで始めることになったこの放課後は、確実に私たちの間に距離を作っていった。

 ――ううん。そんな言い方、ずるいよね。

 原因は私。ついていけないのがつらくて、つい部活をさぼっちゃったあの日から、私たちの間にはどうしようもない溝ができた。

 海未ちゃんはきっと怒ってる。ことりちゃんは呆れてるかな。

 怖くて聞けない。二人が、今の私をどう思ってるのか、なんて。

 今の私は――ことりちゃんのために、やりたくないこと、続けてるだけだもん。

 二人だけじゃない。きっと他のみんなだって、そんな中途半端な気持ちで参加してる私のこと、いらない子だって思ってる。

 そうだよ。

 私は、いらない子なんだ。
432 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 22:57:57.10 ID:DRFjCdkxo

 一週間。このぎくしゃくした部活動は、あと一週間で終わるみたいだった。

 一週間後の今日、ネットにアップするための動画を撮影する。今日、生徒会長が私たちに告げたタイムリミットだった。

 やっと終わる。そんな安心感が半分。

 でも、一方で不安に感じる。誰よりもだめだめな私が、他のみんなとおんなじように歌って踊るには――きっと、足りない時間。

 本番も失敗するのかな。転んじゃうのかな。歌詞を間違えるのかな。
 
 にこ先輩、怒るかな。怒るよね。
 
 でも……いっか。

 だってにこ先輩は、きっと、私のことなんて見てないから。


にこ『ほら、ことりだって必死にやってるわけだし。それが理由でもいいじゃない?』


 それは、全部の答えだった。

 私があそこにいる理由なんて、後付けだって構わない。

 「私」っていう個人に、意味は、きっとなくて。

 必要なのは、「部員」っていう記号だけ。

穂乃果「…………」
433 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 22:58:28.11 ID:DRFjCdkxo

 なにやってるんだろう、私。

 おんなじ言葉がずっと頭の中でぐるぐる回る。

 ことりちゃんが日本を発つまで、もう2週間もない。

 2週間も経ったら、ことりちゃんは――

穂乃果「――――やだ」

 独り言は、夕暮れの道に溶けていく。

穂乃果「やだ――やだやだやだやだ、やだ!」

 子供みたいに駄々をこねても、聞いてる人はいない。

 ううん、違う。誰も聞いてないから、こんなこと言える。

 私は一度だって、ことりちゃんに大切な一言を言えなかった。

 怖い。

 ことりちゃんがいなくなるのが、海未ちゃんとふたりぼっちになるのが、怖い。

 だけど。

 私が、それ以上に怖いのは――
434 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 22:59:00.68 ID:DRFjCdkxo

ことり「穂乃果ちゃん」

海未「穂乃果」

穂乃果「っ!」

 突然背中に投げかけられた言葉に、足が止まる。

ことり「よかったぁ、やっと追い付けたね」

海未「まったく、部活が終わるなり早々に姿を消すなんて、水臭いではありませんか」

穂乃果「ふたり、とも……」

 なんだろう。すっごく懐かしい感じがする。

 答えは簡単。二人と、こんなに「普通に」お話をするのなんて、すごく久しぶりだった。

 こんなに「いつも通り」な二人は――すごく、久しぶりだった。


 なんで?


 なんでそんなにすっきりした顔なの?
435 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 22:59:34.74 ID:DRFjCdkxo

ことり「穂乃果ちゃん」

 私の疑問なんてお構いなしに、ことりちゃんは続ける。

ことり「……えっと、なにから話せばいいのか、うまくまとまらないんだけどね」

ことり「――ごめんね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「……なにが?」

海未「私からも謝らせてください。すいませんでした」

穂乃果「だから、なんのこと? わかんないよ」

海未「身勝手だったこと、です」

穂乃果「身勝手……?」

ことり「私たち、自分のことしか考えられてなかったから」

ことり「きっとそのせいで、穂乃果ちゃんに嫌な思い、いっぱいさせたと思う」

ことり「アイドル研究部のことだって、穂乃果ちゃん、本当はやりたくなかったんだよね?」

ことり「だけど、私に付き合ってもらったせいで……」

 悲しそうなことりちゃんの言葉を聞きながら、だけど私は別な人の言葉を再び思い出す。


にこ『ほら、ことりだって必死にやってるわけだし。それが理由でもいいじゃない?』


穂乃果「…………」


 くらいくらい気持ちが、私の顔をうつむかせた。
436 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:00:04.52 ID:DRFjCdkxo

海未「穂乃果」

 優しい声だった。

 まるでお母さんみたいに、とっても、あったかい声だった。

海未「私たちは、大切なことを見失っていました」

海未「ことりに留学の話が持ち上がって」

海未「それは、決してことりにとってマイナスな話ではありません」

海未「むしろ、ことりの将来を考えるなら承諾しないなんて考えられない話です」

海未「私は、そう信じて疑いませんでした」

海未「だけどそれはことりのための言葉なんかじゃなかったんです」

海未「全て――自分のためのものでした」

穂乃果「え?」

 海未ちゃんの言葉に顔を上げる。

 海未ちゃんは――泣きそうな顔だった。
437 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:00:30.91 ID:DRFjCdkxo

ことり「私もだよ」

 そう言うことりちゃんも、唇をかみしめてて。

 今にも泣きだしてしまいそうな顔だった。

ことり「お母さんが、海未ちゃんが、みんなが私に期待してくれてるんだって考えたら……」

ことり「なんにも、言えなくなっちゃった」

ことり「言わなくちゃ駄目なのに」

ことり「絶対後悔するって、わかってたのに」

ことり「私は、いろんな人を理由にして―― 一歩を踏み出せなかった」

ことり「ずるいよね。人のせいばっかりにして、私は自分の気持ちを言えなかった」

ことり「だから……もう、そういうの、終わりにしなきゃいけないんだと思う」
438 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:01:04.65 ID:DRFjCdkxo

ことり「穂乃果ちゃん。私は、もうすぐ海外へ行くことになります」

ことり「それは、私にとっては将来を決める大切なことです」

ことり「だけどもしその話を受けてしまったら、私は高校を卒業するまで帰ってこれません」

ことり「穂乃果ちゃんと、海未ちゃんと、離れ離れになってしまいます」

ことり「それを踏まえたうえで。穂乃果ちゃんにも聞きたいです」

穂乃果「……やめて」

 ことりちゃんは、まっすぐ私のことを見つめている。海未ちゃんも真剣な目で私を見ていた。

 怖い。

 ことりちゃんが次に言うであろう言葉がわかってしまったから。

 それは、私が一番恐れていた言葉だから。

 だから、だから――


ことり「穂乃果ちゃんは――私に、どうしてほしい?」


穂乃果「やめて!」
439 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:01:42.54 ID:DRFjCdkxo

穂乃果「やめて! やめてよ!」

穂乃果「そんなの、わかってるくせに! 答えなんて聞かなくてもわかってるくせに!」

穂乃果「言えないよ! 答えられないよ!」

穂乃果「ことりちゃんの気持ちも、海未ちゃんの気持ちも、否定したくない!」

穂乃果「ことりちゃんが心置きなく旅立てるように、海未ちゃんが頑張ってることも!」

穂乃果「そんな海未ちゃんの気持ちに応えようとしてことりちゃんが決心しようとしてることも!」

穂乃果「私がわがまま言ったら――全部、否定しちゃう!」

穂乃果「穂乃果が子供だからそんな答えになるって、わかってるよ! だから言えなかった! 言いたくなかった!」

穂乃果「――そうだよ! 離れ離れになんてなりたくない! ずっと三人でいたい!」

穂乃果「だけど、だけど!」

 気持ちが熱い雫になって、ぽろぽろとこぼれる。

 もう止められなかった。

 穂乃果のほんとうの気持ち。

 穂乃果が、ほんとうに怖かったこと。



穂乃果「穂乃果のわがままのせいで二人を悲しませるのは、もっと嫌なの!」
440 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:02:08.20 ID:DRFjCdkxo

 言えなかった、大切な一言。

 それはきっと、二人の気持ちを無駄にする。

 だから穂乃果が我慢すればいいんだって、そう思ってた。

 そうすれば、二人の頑張りは無駄にならないから。

 二人の気持ちは、否定しないから。

 穂乃果が、我慢するだけだから――


海未「だから」


 それでも海未ちゃんは。

 穂乃果の気持ちを聞いた海未ちゃんは。

 まっすぐに、私を見つめたままだった。

海未「だから、そう思わせてしまったことが――私たちの罪なのです」

穂乃果「罪……?」

 どうしてそんな話になるんだろう。

 ただ穂乃果が、わがまま言ってるだけなのに。

ことり「私たちの強がりのせいで穂乃果ちゃんが苦しんでたんなら――それは、私たちの罪だよ」

 強がり?
441 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:02:37.72 ID:DRFjCdkxo

海未「私たちも教えられたんです。自分たちがどれだけ愚かな意地を張っていたのか」

ことり「だからもっと素直になろうって。素直にならなきゃだめだって。気づかされたの」

穂乃果「教えてもらったって――誰に?」

 そう訊くと、二人は一度目を見合わせて。

 再び穂乃果に向けた顔は、やっぱりなにかを振り切った表情だった。



海未・ことり「大切な後輩たちに」



――――――――

――――――

――――
442 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:03:03.28 ID:DRFjCdkxo





      一日前




443 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:03:40.52 ID:DRFjCdkxo

【Side:ことり】

花陽「あの……何度も何度も呼び出して、すみません」

ことり「ううん、気にしないで」

 昨日に引き続き部活後に私を呼び出した花陽ちゃんは、本当に申し訳なさそうに私に言った。
 
 その謝罪に対する私の言葉に嘘はない。

 むしろ謝るのは私の方。私たちの方。

 本気でアイドルに向き合う彼女たちを侮辱してる――私たちの方。

ことり「だけど……答えは変わらないよ?」

 それでも、譲れない気持ちがあるのも事実だった。

 このつながりが途絶えてしまったら、私たちはもう。

 残りの時間を無為にすることしかできないから。

花陽「いいんです」

 だけど、私の予想とは裏腹に。

 花陽ちゃんは強いまなざしで私を見つめていた。
444 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:04:06.08 ID:DRFjCdkxo

花陽「教えてほしいんです。二年生のみなさんがなんで、そんなにこの部活にこだわるのか」

ことり「――――」

 そっち、か。

 うん。当然だよね、気になるの。

 言ってもいいかな、って一瞬戸惑ったけど、だけどにこ先輩にはもうした話だし。

 もうすぐ嫌でもわかる話だし。

 それになにより。

花陽「――――」

 真剣な目の後輩の気持ちに、嘘はつきたくなかったから。
445 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:04:36.98 ID:DRFjCdkxo

【Side:海未】

凛「ことり先輩が留学!?」

海未「はい」

 部活が終わり、放課後。私を呼び出した後輩は、私たちが抱える真実を聞くと、目を丸くして驚きました。

 ことりの許可も得ずに話しても良いものかと悩みましたが、いずれは知るところになる話です。

 それに同じタイミングでことりももう一人の後輩に連れていかれたところから察するに、おそらく同じ話になっていることでしょう。

 そしてなによりも。

 真摯にアイドル活動に向かう彼女には、話さなければ失礼に当たると思いましたから。
446 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:05:20.21 ID:DRFjCdkxo

海未「ことりがこの部活に執着しているのは、間違いなくこの話が関係していると思います」

海未「といっても、彼女がなにを考えているのかなんてわかりようもないのですが……」

凛「そんなのわかるにゃ!」

海未「え?」

 まっすぐな瞳で断言する後輩に、つい間の抜けた返事をしてしまいます。

凛「ことり先輩、ほんとは行きたくないんだにゃ!」

凛「だってことり先輩、一生懸命だもん! 二年生の先輩たちは、正直ちょっと本気じゃないかなって思うところ、あるけど……」

凛「だけどことり先輩、一生懸命だにゃ! 衣装を作るためだけに入ってるなんて思えない!」

凛「本当は行きたくなくて! もっともっとこの場所で楽しいことをしたくて!」

凛「ちょっとでもすがりたくて!」

凛「ちょっとでもしがみつきたくて!」

凛「だから、その可能性をつなごうとしてるんでしょ!」


凛「海未先輩や穂乃果先輩と一緒にいるために!」


海未「それ、は――」

 後輩の懸命な叫びに、言葉は返せませんでした。

 だけど。

凛「海未先輩だって、本当はことり先輩に行ってほしくなんて――」


海未「違います」


 この言葉だけは、濁すことはできません。
447 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:05:51.21 ID:DRFjCdkxo

凛「――――っ」

 その言葉は、私が思った以上に目の前の後輩に突き刺さったようでした。

海未「……すみません。少しきつい言い方になってしまったかもしれません」

海未「ですが、そんなことありません。私が、ことりに行ってほしくないなどと」

海未「そんな考えは、意を決したことりを侮辱することになります」

海未「決めたのです。笑顔でことりを送り出そうと」

海未「今さらそれを覆すことなど――」

凛「ほんとに?」

海未「――――」

 なぜでしょう。

 強い言葉をぶつけられたはずの彼女は。

 先ほどよりも、強い目をしていました。

凛「先輩、似てるにゃ」

海未「……誰にですか」

凛「凛に」

 そう言うと彼女は、えへへーと照れたようにはにかんで。

凛「さっきの冷たい言葉も、なにかを我慢してる顔も――」
448 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:06:45.08 ID:DRFjCdkxo





凛「――自分にのろいをかけてた凛に、そっくり」




449 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:07:11.43 ID:DRFjCdkxo

【Side:ことり】

花陽「先輩は――行きたいんですか?」

ことり「え?」

花陽「留学、したいんですか?」

ことり「……すっごく魅力的なお話だなって、思うよ」

ことり「お洋服を作るのって昔からの夢だったから」

ことり「今回のお話は、私にとって夢をかなえる第一歩ってことになるかな」

ことり「だから、」

 だから――なに?

花陽「――――」

 自分の言葉が上滑りしているのが、花陽ちゃんの表情からうかがえた。

 わかってる。わかってるよ。

 花陽ちゃんが聞いてるのが、そういうことじゃないってことくらい。
450 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:07:45.90 ID:DRFjCdkxo

ことり「――もう、私だけの問題じゃないの」

花陽「え?」

 これは、本当に言うのをためらう言葉。

 誰にも伝えたことのない、真実のカケラ。

 それをなんで今、なんの関係もないただの部活の後輩に喋ろうとしてるんだろう、私。

 ――なんで、って。わかってるくせにね。

 この子が、この子たちが、私たちを変えてくれるんじゃないかって。

 私たちを導いてくれるんじゃないかって。

 そんな淡い希望に、すがりついているからなんて、さ。
451 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:08:12.51 ID:DRFjCdkxo

ことり「私を見込んで誘ってくれた向こうの人」

ことり「私のためにコネクションをつないでくれたお母さん」

ことり「私を応援してくれてるたくさんの人」


ことり「それに――私の背中を押してくれてる、大切な友達」


ことり「もう、裏切れないの」

ことり「もう、私だけで決められる話じゃないの」

ことり「だから、だから――」

花陽「ことり先輩」

 必死になる私を、まるで気にすることもなく。

 花陽ちゃんは、繰り返す。


花陽「先輩は。行きたいんですか?」
452 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:08:44.68 ID:DRFjCdkxo

ことり「――わかってよ!」

 花陽ちゃんがしつこいからなのか。

 それとも、私のもろくてやわらかいところを何度もついばまれたからなのか。

 つい、おっきな声をだしてしまう。

ことり「言えないよ、今さら!」

ことり「海未ちゃんも苦しんでるの、わかってるから! 悩んでるのわかってるから!」

ことり「これ以上苦しめたくないの!」

ことり「私のせいで! これ以上、これ以上――」

 頭の中がぐちゃぐちゃになって。形にならない言葉をひたすらにぶつける。

 怖がらせちゃったかな。

 嫌な思いさせちゃったかな。

 そう思い、ふと見た花陽ちゃんの表情は。


花陽「――――」


 とても強くて、とても熱かった。
453 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:09:30.00 ID:DRFjCdkxo

【Side:海未】

海未「のろい?」

凛「うん。のろい」

 あっけらかんと返す目の前の少女は。

 しかし瞳の奥に、深く暗いなにかを宿していました。

凛「ねえ、海未先輩」

海未「……なんでしょう」

凛「がまん、しちゃだめだにゃ」

海未「我慢? 私が?」

凛「言いたいことは言わなきゃダメだし、気持ちは隠しちゃダメ」

凛「それはいつか、きっと大きなのろいになるから」

海未「……先ほどから、何の話をしているのですか。のろいだのなんだの」

 いえ、わかってはいるのです。

 意味は理解できなくとも、彼女がなにか大切なものを伝えようとしているのは。

海未「そもそもあなたには関係のない話です。部活だって生徒会長の出した条件が済めばやめます」

海未「ここから先は、あなたに口を出される筋合いはありません」

 ぴしゃりと言い放った私に。

 それでもこの後輩は。


海未「――なにがおかしいのですか!」


 くすくすと、笑うのです。
454 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:10:03.33 ID:DRFjCdkxo

凛「ううん、ごめんなさい。あんまりにもそっくりだったから」

海未「またその話ですか!」

 要領を得ない彼女に、ついに堪忍袋の緒が切れました。

海未「いいかげんにしてください! さっきからあなたは何が言いたいのですか!」

海未「我慢などしていないし、隠してなどいません!」

海未「ことりに行ってもらいたい気持ちに偽りはありません!」

海未「全て、全ては、ことりのために――!」

凛「海未先輩」

海未「なんですか!」


凛「嘘つくの――へただね」


 かぁ、っと。

 全身の血液が沸騰したかのような怒りが、私を支配しました。


海未「あなたに――なにがわかるのですか!」
455 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:10:48.95 ID:DRFjCdkxo

凛「わかるよ」

 たぎる血に、冷や水を浴びせるかのように。

 彼女の言葉は、真剣なまなざしは、鋭い矢となり私を射抜きました。

凛「わかるよ。凛も同じだったから」

凛「それしかないって決めつけて」

凛「それが正しいって決めつけて」

凛「それ以上考えるのをやめて」

凛「きつくきつく、自分をしばって」

凛「いつか、自分の本当の気持ちもわからなくなっちゃうの」

凛「凛も、同じだったから」

海未「あの、」

凛「海未先輩」

海未「なん、ですか」

凛「後悔――するよ?」

海未「――――」

 彼女の強い言葉に、感情に、ついには返す言葉を見失います。
456 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:11:26.85 ID:DRFjCdkxo

【Side:ことり】

花陽「……大切なら」

ことり「花陽、ちゃん?」

花陽「大切なら! それじゃダメなんです!」

ことり「っ」

 強い感情の奔流が、私に流れ込んでくる。

花陽「大切なら! 友達なら! ちゃんと言ってあげなきゃダメなんです!」

花陽「そうじゃないよって! 素直になっていいんだよって!」

花陽「ほんとの気持ち、言ってあげなきゃ!」

花陽「相手を傷つけるのを怖がって――」


花陽「自分が傷つくのを怖がって知らんぷりするんじゃ、ダメなんです!」


ことり「あ――」

花陽「じゃないと……本当に後悔しちゃいます……」

 それはひょっとしたら、花陽ちゃん自身が味わった気持ちなのかもしれない。

 それぐらいに、必死さの詰まった言葉だった。
457 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:12:06.01 ID:DRFjCdkxo

ことり「……わかんないよ」

ことり「もう、どうすればいいのか、わかんない」

ことり「どうすれば、誰も傷つかずに済むの……?」

 だから私も、必死に言葉を紡ぐ。

 出口のない寒い冬空の迷路を、手探りで歩くように。

 答えを探すように。

花陽「簡単です――」

 そんな私に、花陽ちゃんは。

 春のようにあったかい笑顔で、言った。
458 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:13:02.38 ID:DRFjCdkxo

【Side:海未】

海未「……どうすれば」

凛「え?」

海未「どうすれば、よいのですか」

 心の中で、大きくそびえたっていた壁が。

 私を強がらせていた、大きな壁が。

 崩れていく音が、聞こえました。

凛「簡単だよ――」

 そんな私に、目の前の後輩は。

 凛は。

 揺らめく純白の花のように優しく、言いました。
459 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:13:42.70 ID:DRFjCdkxo





花陽「――素直に、伝えてあげればいいんです」





凛「――素直に、伝えてあげればいいんだにゃ」




460 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:14:16.59 ID:DRFjCdkxo





「友達なら、きっとだいじょうぶ」




461 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:15:23.68 ID:DRFjCdkxo

――――

――――――

――――――――

【Side:穂乃果】

 海未ちゃんと、ことりちゃんは。

 真っ白い花のように優しく。

 春の日差しのように暖かく。

 私に、伝える。

海未「後輩たちに諭されてから、私たちは二人で話し合いました」

ことり「お互いにどうしたいのか。本当は、どうしたかったのか」

海未「そしてわかったんです。自分たちがこだわっていたことが、どれだけ大切で、だけど、どれだけちっぽけだったのか」

ことり「それでね、決めたの。穂乃果ちゃんとも、ちゃんと話し合おうって。穂乃果ちゃんの本当の気持ち、聞いてあげようって」

海未「穂乃果――」

ことり「穂乃果ちゃん――」
462 : ◆yZNKissmP6NG [saga]:2016/10/20(木) 23:15:49.09 ID:DRFjCdkxo





海未「ことりにどうしてほしいですか?」





ことり「私にどうしてほしい?」




351.14 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)