このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

向日葵「………いい加減にしてくれません?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆K1MROVKLo0nf [saga]:2016/04/05(火) 20:38:31.96 ID:CjqGJhcZ0
向日葵が、櫻子の勉強を見ている。


櫻子「うだー……もう勉強あきたー」

向日葵「貴女まだ半分も終わってないじゃありませんの……もう夏休みも終わりですのよ?」

櫻子「こんな量の宿題、一日で終わるわけないじゃん!せっかく夏休みも終わりなんだよ!遊ぼうよー!」

向日葵「たとえ終わらせられないとしても、できるところまではやるべきですわ。それが将来貴女のためにもなるのです」

櫻子「いーよ勉強なんてできなくたって死ぬわけじゃないんだし。いいから答え写させてよー」ゴロゴロー

向日葵「あっ、こら、櫻子!邪魔ですわ!」

櫻子「うるさーい!嫌なら宿題みせろー!」




向日葵「………いい加減にしてくれません?」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459856311
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/05(火) 20:39:32.43 ID:KyxL5GyV0
ひまさくいいゾ〜これ
3 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 20:53:15.07 ID:CjqGJhcZ0
櫻子「……え?」

一瞬櫻子は何を言われたのかわからなかった。


向日葵「いい加減してくれませんの、と言ったのです」


いつもの向日葵なら、ここで櫻子にげんこつを一発お見舞いし、そこからくどくどと説教に入るところだ。
それが、何もしてこない。その上……今までに見たことがないほど、冷たい目をしていた。
こんな向日葵は、見たことがない。
櫻子はそんな向日葵に怖気付いた。


櫻子「な、なにかっかしてんのさ。カルシウム足りてないんじゃないの?」


恐怖を紛らわそうと、咄嗟にそんな悪態をつく。


向日葵「……そういうのですのよ。そういうの、もうやめてくれません?」

櫻子「ど、どういう意味さ」

向日葵「言葉通りの意味ですわ。正直、貴女の相手ってすごく疲れるんですの」


冷たい目のまま、向日葵は語る。
そこに、今まで櫻子に手を焼きながらも面倒を見ていた優しい幼馴染みの面影はなかった。


櫻子「…………っ」


何か言い返さなければ。
そう思っても、声は出ない。
それは別人のようになった向日葵が怖かったからなのか……言い返す言葉が見つからなかったからなのか。
4 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 21:04:54.35 ID:CjqGJhcZ0
向日葵「貴女は……いっつも自分勝手ですわよね」


そんな櫻子にはお構いなく、機械的な声で、向日葵は櫻子を否定する。


向日葵「宿題が出る度……テストがある度、貴女はわたくしを頼ってきますが……貴女、一度でもわたくしの都合を考えたことがあって?」

櫻子「……っ!?」

向日葵「わたくしにもわたくしの勉強がありますのよ。勉強はできる方とはいっても、杉浦先輩や歳納先輩には遠く及びませんわ。少しでも先輩方に追いつくための課題は山積みです。」

向日葵「そのための時間をわざわざ割いて、あなたの勉強を見てあげているのですわ」

櫻子「………………」


向日葵が勉強を頑張っているのは、知っていた。
櫻子の勉強を見ながらも、櫻子に問題を解かせている間は自分の課題をこなしていたし、何よりテスト直前の集中力は目を見張るものがあった。

わかっていながらも、櫻子は向日葵に甘えていた。「本当に嫌なら、断るはずだ」……そんな、自分勝手な思い込みをして。
5 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 21:13:50.14 ID:CjqGJhcZ0
なんで酉変わってんだ?
まぁいいか

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

向日葵「……まぁ、わたくしが時間を割いて貴女の勉強を見てあげているのは、貴女が放っておけないわたくしの自己満足でもあるのでそれはいいのです」

櫻子「……」


櫻子は少し安心した。
この一瞬だけは、元の優しい向日葵に戻ってくれているような気がしたからだ。


向日葵「……でも、だからこそ、ですわね」

向日葵「わたくしが見てあげているのに真面目に勉強してくれないのは、本当に腹が立ちますの」


櫻子「…………」


櫻子は何も言い返せなかった。
いや、言い返す言葉を探すことすらできなかった。
薄々、感じてはいたのだ。
こんなことをしていていいのだろうかと。
いつか向日葵に愛想をつかされるのではないのだろうかと。
それでも、櫻子はあくまで楽観的だった。

「向日葵がわたしを見捨てるわけがない」
「いざとなればわたしはできる子」

そんな傲慢な考えを、櫻子は捨て切ることができずにいた。
6 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 21:21:03.89 ID:CjqGJhcZ0
向日葵「……どうしたんですの?いつものような罵倒はしてこないんですの?」

櫻子「………!」

向日葵「都合悪くなったらだんまり。本当に救いようありませんわね、貴女」

櫻子「……………」ジワ


櫻子は必死だった。
泣いてはいけない。
泣いたが最後、向日葵とはもう二度とあえなくなるような……そんな気がしたのだ。
今の自分が何をすべきか。
そんなのはさすがの櫻子でもわかっていた。
「ごめんなさい」をいうことだ。
今までの罵倒、迷惑、態度を誠心誠意謝って、向日葵を元の向日葵戻すことだ。
頭ではわかっていた。
でも、それを実際に口に出すには……櫻子は、向日葵とあまり長く関わりすぎていた。

もし相手があかりちゃんなら。
ちなつちゃんなら。
すぐに謝って、抱きついて、涙が枯れるまで慰めてもらうのに。
どうしてか、この幼馴染みには……どうきても、そんなことはできない。
7 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 21:31:28.75 ID:CjqGJhcZ0
誤字はすまん脳内補完で
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

向日葵「…………」


向日葵は、櫻子をずっと見つめていた。
その底のしれない、冷えきった目で。

やがて、小さなため息を一つつく。
おもむろに、立ち上がった。


櫻子「あ…………」

向日葵「そろそろわたくしは帰りますわ」

櫻子「………ま、まっ……」


櫻子の制止も聞かず、向日葵は歩き出す。

その先は、闇。
次第に、向日葵の体は薄くなっていき、見えなくなっていく。

櫻子は、直感的に理解した。
これが、向日葵との最後の別れになるのだと。
根拠はないが、確かにそうだと確信した。

謝らなきゃ。
謝って、向日葵を連れ戻さなきゃ。
そうしないと、向日葵は……,。

恐怖で体が震える。
声を出そうとしても、声帯がうまく震えてくれない。
それでも、櫻子は必死に腕を伸ばした。
頭を突き出した。
声を振り絞った。

櫻子「向日葵っ!待てぇぇぇーーーっ!」


向日葵が振り返る。
ほんの少しの歓喜のあと、再び櫻子の心は恐怖に侵食され始める。

何をやっているんだ大室櫻子。
あとはもう一度、声を振り絞り、たった一言、叫ぶだけだろう。

向日葵はそんな櫻子をしばし待っていたようだったが、数秒のち、再び歩き出し、闇の中へ消えていく。


櫻子は、ついぞ叫んだ。


櫻子「ま……待ってくれぇ!向日葵!!」


ただその末に出てきた言葉は。


櫻子「わたしを……一人にしないでくれぇぇぇえ…………!」


―――どうしようもなく、自分勝手な願いだった。
8 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 21:48:05.45 ID:CjqGJhcZ0
櫻子「……………っ!」


そこで、櫻子は目を覚ました。
何がなんだかわからず、とりあえず自分が机に突っ伏しているという状況だけは把握する。

むくりと起き上がる。腕は痺れ、口の中は舌を噛みきったように痛い。びっしょりとした汗で額に前髪がくっついてくる。

最悪の寝覚めである。櫻子は意識が覚醒してくるのを感じながら、自分が何をしていたのかを思い出していた。
机には英語の教材とノートが広がっており、ノートには(1)と書かれたきり何も書かれていない。
櫻子は思い出していた。そうだ、今日は夏休み最後の一日で―――

全く宿題が終わらなくて、向日葵に泣きついたんだっけ。


そこで、はっと思い出す。
そうだ。向日葵に勉強を見てもらったけどやっぱり全然乗り気になれなくて…
向日葵に宿題を写させてもらうよう頼み込んだら、急に人が変わったようになって……
気付いたら、わたしを置いて、どこかへ……


櫻子「ひ、向日葵っ!!」

向日葵「きゃっ!?」


そうだ!向日葵を追いかけないと。
追いかけて、今度こそ……今度こそ……今度こそ……なんだっけ?
まぁいい!待ってろ向日葵!わたしを置いていくなんて、許さないからな!……って、あれ。


櫻子「……え?向日葵?」

向日葵「ど、どうしたんですの急に」


どういうことか、向日葵は目の前にいる。


櫻子「なんでいるの?」

向日葵「さすがにそれは酷くありません!?」

櫻子「え!?いや、ごめん……」


反射的に誤ってしまった。
しかし、なんだろう。このやりとりも、ひどく懐かしい気がする。
つい昨日までもこんな調子だったのに、おかしな話だ。

9 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 21:54:49.94 ID:CjqGJhcZ0
向日葵「まったく……貴女が宿題が終わらないから手伝ってくれって言い出したんじゃないの」

櫻子「いやーははは、なんか向日葵がいなくなっちゃったような、そんな気がしてさー」

向日葵「大方変な夢でも見たんじゃないですの?ほら、あれだけ経っても1問も解けていないようですし」

櫻子「ぐっ……、た、確かにちょっとうつらうつらしちゃったけどさー!」

向日葵「いいからさっさと終わらせなさいな。わからないところがあれば教えてあげるから」

櫻子「あーそんなんじゃいつまで経っても終わらないよー!ねぇ、向日葵ぃ、宿題をさー……」


「見せて」、と言いかけたその口を噤む。
理由はわからない。ただ、なぜかこの言葉は言ってはいけない。
そんな気がしたのだ。


向日葵「………櫻子?」

櫻子「……え?あ、いや、何でもない…」


櫻子はペンを握り、宿題と向かい始める。


櫻子「……うん、1人で、やらなきゃね。いつまでも向日葵に頼ってはいられないもんね……」

向日葵「?……変な櫻子」
10 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 22:05:39.67 ID:CjqGJhcZ0
櫻子「おわったー!」

向日葵「……………」


数時間後。
英語の宿題が終わった。
わからない単語は辞書で調べ、辞書を引いても出てこなかった表現や文法は向日葵に教えてもらい。
夏休みの間全く手をつけていなかった宿題を、櫻子はわずか一日で終わらせた。


向日葵「………櫻、子?」

櫻子「なにーなになにー?頑張った櫻子ちゃんを褒め称えようというのかなー?わっはっは!いいぞいいぞ!もっと称えたまえ!」

向日葵「いえ……確かに、この量を一日で仕上げたことは凄いことですし、正直尊敬に値しますわ……」

櫻子「……な、なんだよもう。そんなに褒めるなって。照れるじゃんか」

向日葵「どっちですのよ……それよりも、ですわ」


向日葵「……あなた、本当に櫻子ですの?」


向日葵のその疑問は、当然と言えた。


櫻子「なっ!?どういう意味だ!?」

向日葵「いやだってありえないじゃないですの。櫻子に数時間もぶっ続けで勉強するなんて集中力あるわけがないですわ」

櫻子「ほ、褒められたと思ったら今度は罵倒されてる!?」


櫻子は戸惑った。
こんなに支離滅裂な向日葵は初めて見る。
そんなに自分が宿題を終わらせることがおかしいことなのだろうか。
11 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 22:20:45.26 ID:CjqGJhcZ0
櫻子「わたしだってやるときはやるんだよ!」


とりあえず櫻子はない胸を張り、そう答えることにする。


向日葵「そ、そうですの……いえ、本当に貴女一人でこれだけの分量の課題をこなせたことは本当に嬉しいのですけれど……少し信じられませんわ」

櫻子「何言ってんだよー。最後の最後まで貯めちゃってる時点でダメじゃん!計画的にやれてる向日葵の方がよっぽどすごいよ」

向日葵「そ、そうですの?……んん?」


向日葵は違和感を覚える。
いつもの櫻子なら、「はぁ!?宿題もう終わった!?何だよ裏切り者!やーいやーいおっぱいおっぱい!」などと罵声を浴びせてこようものなのに。
それにあの子昔「宿題を限界まで貯めて最終日ひぃひぃいいながら徹夜するのが学生のあるべき姿だろ!」なんとか言ってませんでした……?


櫻子「どうした?難しい顔して」

向日葵「ひっ!?」


気づけば櫻子が自分の顔を覗き込んできていた。なぜか顔が赤らむ。咄嗟に顔をそらす。


櫻子「あんま気負いすぎんなよー?体とか壊したら大変だもんなー」

向日葵「え、ええ……お心遣い感謝しますわ…」


あの櫻子が……わたくしの体を……心配……?


向日葵「ありえないですわ……」フラフラ


思わずめまいがした。よろけ、壁にもたれかかってしまう。


櫻子「お、おい大丈夫かよ向日葵!」


心配そうに、櫻子が向日葵の肩に手を添える。


向日葵「ええ……大丈夫ですわ大丈夫ですわよ……明日になればこんな夢も冷めているでしょう……」


そうだ、これは夢なのだ……。
櫻子の暴虐武人さに辟易したわたくしが作り出した幻想なのだ……。
これは神様からの一日限りのプレゼント。なら今だけでも、この櫻子のぬくもりに触れていよう……,

ふ、ふふふふふ……。


櫻子「……へーんな向日葵」
12 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/05(火) 22:23:15.35 ID:CjqGJhcZ0
こんな感じでやっていきます。
ひまさく大好きなんですけど櫻子のアホかくのすごく難しいんでまともな櫻子ちゃん書いてきます。
ではまた今度。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/05(火) 22:38:17.23 ID:joGjgyb60
乙、待ってる
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/05(火) 22:39:47.05 ID:qOepP+bI0
乙。良いものだ
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/05(火) 23:05:04.74 ID:p6yspeSZ0
冷たい向日葵いい…
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/06(水) 12:54:58.95 ID:97pyN3C6o
こういうの好き
17 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/06(水) 22:07:27.43 ID:j74nSNO00
× × ×

向日葵が、櫻子を待っている。

今日は九月一日。夏休みは終わり、二学期がやってくる。登校日以来、久々に七森中の制服を着て、向日葵はちょっとした高揚感を覚えていた。

……でも、なんだか胸のあたりがきつくなったような……。

まぁ、気のせいだろう。急に私服から制服に変わり、体が戸惑っているだけに違いない。うん、きっとそうだ。


向日葵「……そんなことよりも、ですわ」


向日葵はちら、と時計を確認する。
時刻は8:10。今から出発したとしても、遅刻ぎりぎりの時間だ。

向日葵は基本朝は櫻子と一緒に登校する。
深い意味なんてない。いうならば幼いころからの習慣だ。遠く幼稚園の頃から、朝は必ず櫻子と2人だった。

覚えている限り一番昔の記憶の頃から櫻子はあんな感じだったし、寝坊か何かでこんなふうに待たされる経験も少なかったわけではない。


向日葵「それでもいくらなんでも遅すぎじゃありませんこと?」


向日葵は怒りを通り越して心配になってきた。そういえば、昨日の櫻子は少し様子がおかしかった。もしかしたら、熱があったのかもしれない。

そんな風に一人悶々と考える向日葵。
すると、突然背後から声をかけられる。


櫻子「向日葵!ごめーーん!」
18 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/06(水) 22:19:41.15 ID:j74nSNO00
息を切らしながら、櫻子が走ってきた。
櫻子は向日葵のもとへたどり着くと、ひいひいと息を上げる。
向日葵は少し安心した。安堵した瞬間、忘れていた怒りがこみ上げてくる。


向日葵「遅いですわよ櫻子。これじゃ歩きでは間に合いませんわ」

櫻子「いやーほんとごめん!寝坊しちゃってさー!あははー!」

向日葵「いいから走りますわよ」

櫻子「ちょ、向日葵ー!」


ぐっと、櫻子の手を引いて走り出す。


櫻子「向日葵!わたし1人で走れるよ!」

向日葵「寝ぼけて転んだりしたら大変でしょう。そうなったらさすがに付き合ってあげられませんわよ?」

櫻子「うるさいな!わたしより足遅いくせに!自分の心配しろばーかばーか!」

向日葵「な、なんですって〜!?」


櫻子は向日葵の手を払って駆け出し、向日葵を追い抜いていく。


向日葵「あ、こら!待ちなさい!」

櫻子「へへーんだ!悔しかったら追いついてみろー!」

向日葵「上等ですわ!」


櫻子に食らいつかんと必死に足を動かすが、生まれ持った体型(あと運動神経)ばかりはどうにもならず、ぐいぐいと引き離されてしまう。

向日葵は歯噛みした。
くぅ……っ!こんなモノさえなければ!わたくしだってもっと速く……!
19 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/06(水) 22:32:25.68 ID:Bk8sRgpx0
櫻子「へっへーん!わたしの勝ちっ!」

向日葵「ぜぇ、ぜぇ……あなた、本当に何なんですの……?」


信号のところで待ってくれていたようだ。膝に手をつき息を荒らげる向日葵を、櫻子は勝者の余裕で見下ろす。


櫻子「体力勝負でこの櫻子ちゃんに勝とうなど100万光年早いわ!」

向日葵「またベタなネタを……光年は距離の単位ですわよおバカさん」

櫻子「なっ……知ってたし!バカじゃないし!」

向日葵「はいはい。いいですからさっさと学校へ行きますわよ」

櫻子「むきーー!その『わたくしは付き合ってあげてるだけですわよオーラ』腹立つー!」

向日葵「ひっどいネーミングセンスですこと…」


いつもの日常。
何回と繰り返されたやりとり。
それを目で、身体で、言葉で感じ、向日葵は自然と笑みが漏れた。

―――なぁんだ、櫻子はちっとも変わってないじゃありませんの。

寝坊して人を待たせる図々しさも、勝ってすぐ調子に乗るところも、アホの子も。

昨日の夜、寝る前にあんなに感じていた恐怖が嘘みたいだ。
櫻子は、ここにいる。

ただそれだけの事実が、向日葵をこんなにも安心させるのだった。
20 : ◆iIrYk5PFAs [sage]:2016/04/06(水) 22:34:54.99 ID:Bk8sRgpx0
すまぬ、親フラ。
もっと更新したかったが仕方がない
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/07(木) 18:26:04.39 ID:eeBvtDa1o
おう
22 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/07(木) 23:01:56.06 ID:klgtn+E20
櫻子「おっはよー!」


がらがらがら。
扉の開く音とともに、元気な挨拶をしながら櫻子が教室へ入ってきた。
その後ろから、青い顔をした向日葵がよろよろとついてくる。


向日葵「ま、待ってくださいまし……本当に貴女は体力バカですわね……」


彼女自身が言い出したこととはいえ、櫻子と一緒に学校まで走ることは向日葵にはあまりにも荷が重すぎた。
向日葵は自分の席までたどり着くと、糸が切れたように座り込み、机につっ伏す。
普段の彼女からは考えられないほどのだらしなさである。

時計の時刻は8:20を指していた。……普通ならば20分かかる距離を10分で……?改めて向日葵は櫻子の身体能力に驚愕した。


ちなつ「……どうしたの二人とも」

櫻子「いや、わたしが寝坊しちゃってさー。おかげでいつもより出るのが遅くなっちゃったから、急いで登校したわけ」

あかり「ええ!?別に今遅刻ぎりぎりな時間じゃないんだけどなぁ……」

向日葵「……おかげでこの有様ですわ」

ちなつ「ああ、なるほど……」

あかり「……で、でもちゃんと寝坊した櫻子ちゃんを待ってあげて、櫻子ちゃんのスピードに付いていってあげようとするのはすごいと思うよぉ!」

向日葵「っ……!」


あかりのその言葉に、向日葵ははっとなり、顔を背ける。
自分の行動を他人の口から聞かされると、途端に恥ずかしい気持ちになるのだ。


向日葵「……別に、そういうのじゃありませんわ!櫻子を放っておいたら何があるかわかりませんもの」

櫻子「な、なんだと!わたしだって1人で学校くらい行けるわー!」

向日葵「どうだか」

櫻子「うぬぬ……」


そうして睨み合う二人。


ちなつ「あはは、相変わらず2人は仲いいね」

あかり「うん、あかり少し羨ましいよぉ」

向日葵「どこがですの!?」


顔を赤らめあかりとちなつを睨みつける向日葵だが、どう見ても照れ隠しにしか見えない。あかりたちはなんだかおかしくなって、くすくすと笑い始めた。
23 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/07(木) 23:14:29.36 ID:klgtn+E20
櫻子「ふぁぁ……」


櫻子は、そこで大きなあくびを一つ。
そして向日葵たちは、櫻子の目の下に大きなクマができていることに気づく。


あかり「わぁ、櫻子ちゃん、とっても眠そう」

向日葵「まーた夜ふかししたんですの?あれだけ夜はちゃんと寝なさいと言ってますのに……」

櫻子「んん……仕方ないだろー。夏休みも終わりだったんだからさー」


「休みの最後くらい思いっきり遊ぼう」か……まぁ、櫻子の考えそうなことだ。むしろ櫻子らしくて安心した。やっぱり昨日の櫻子は幻だったのだろう。だって櫻子があんなにしっかりしているはずがないじゃないですの。


櫻子「……なんか今失礼なこと考えなかった」

向日葵「いーえ?気のせいじゃありませんの?」
24 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/07(木) 23:28:30.79 ID:klgtn+E20
あかり「あ、そうだ。夏休みの宿題を集めなきゃいけないんだよぉ」

ちなつ「そっか、あかりちゃん日直だっけ?」

あかり「うん、ちょっと待ってねぇ。みんなも用意してて!」


そういうとあかりは、バッグをごそごそと漁り、何かを探し始める。
しばらくがさがさした後、唐突に顔をしかめる。その後は慌てたようにバッグの中をまさぐり、ついに中のものをすべて外へだし始めた。
その頬を冷や汗が伝う。
あらかた探し終え、出したものを全部中に戻し、青い顔でぽつりと呟いた。


あかり「しゅ、宿題忘れた……」

(((不憫な子……)))


3人の思考がシンクロした瞬間である。


櫻子「きゃはは、あかりちゃん宿題忘れたとかだっさーい!」

向日葵「ほぼ垂直にブーメランが帰ってきてますわよ櫻子」


昨日英語の宿題を櫻子が終わらせた時点でもう夜の7時を回っており、その日の勉強会は終了。とりあえず櫻子には英語だけでも出すようにとの旨を伝えておいた。


あかり「うう……みんなはちゃんと持ってる?集めるよぉ」

向日葵「まぁ、明日持ってくればいいじゃありませんの」ポン

ちなつ「どんまいあかりちゃん。きっといいことあるよ」ポン

あかり「えへへ……二人ともありがとう」

櫻子「はい、わたしのもよろしく、あかりちゃん」ポン

あかり「うん、わかったよぉ……」


「「「………え?」」」


三人の声が重なる。
ある一つの事実が信じられなかったからである。

櫻子が夏休みの宿題を出した。
国数英社理……すべての宿題を、だ。
25 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/07(木) 23:39:43.74 ID:jA3Wg8uh0
向日葵「……ど、どういうことですの櫻子」

櫻子「ん?いやあの後向日葵帰っちゃったじゃん」


櫻子は普段と変わらぬ調子で話す。


櫻子「でも英語以外の宿題まだ残ってたからさー、頑張って徹夜で仕上げたわけ」

向日葵「徹夜……?」

櫻子「終わったのが4時くらいで、ちょっと仮眠とろうとベッドに寝転んで起きたら8時なんだもん。びっくりしたよ」

ちなつ「それって徹夜っていうのかな…?」


国社理の課題は少なかったとはいえ、あの量の宿題をたった7時間で……?
いやそれよりもまず、この子が、わたくし抜きで、1人で机に向かった……?

眩暈がした。


向日葵「……あ、ありえませんわ…」

櫻子「むかっ、どういう意味だっ!」

向日葵「そのままの意味ですわよ!貴女が一人で宿題を仕上げるなんてありえませんわ!」

櫻子「そ、そこまでいう……?」


あかり「あ、あはは……確かにちょっと驚いたけど、すごいよ櫻子ちゃん!あかりには真似できないなぁ……」

ちなつ「宿題を一日で仕上げるって……そんな変態じみたことできる人間なんて一人しか知らないわ……」

櫻子「お?そうだろそうだろ!わたしはやればできる子なんだぞ!」

あかり「うん、あかりちょっと櫻子ちゃんのこと誤解してたよぉ」

櫻子「……それって前まではどうしようもない子と思われてたってこと?」

あかり「え、ええ!?いや違うよ!そんなことないよ!全然!」


櫻子はあかりの目が泳いでいるのを見逃さなかった。


向日葵「…………」


向日葵はそんな2人をじっと見つめている。
26 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/07(木) 23:51:27.51 ID:jA3Wg8uh0
正直なところ、向日葵は面白くなかった。
自分がいなければ勉強一つ満足にできなかったはずの櫻子が。
あれほど口うるさくしても決して自分から勉強しようとしなかった櫻子が。
ある日突然、魔法でもかかったかのように勉強をする意欲を見せ始める。

もしかしたら、これまで向日葵が言ってきたことをようやっと理解して、変わろうとしてくれているのかもしれない。
でも、とてもそうとは思えないほど、櫻子の変化は唐突すぎた。

自分が大事に育ててきたトマトをカラスに攫われたときのような……そんな得体の知れないもどかしさが向日葵を襲った。
櫻子が勉強をやる気になってくれたのは嬉しいことのはずなのに、何故かそれを素直に祝福できない自分がいる。

そんな自分に嫌悪感がわく。


櫻子「ほらー、向日葵ももっと褒めろよー!このわたしが向日葵なしでもちゃんと宿題を終わらせられたんだぞ!」


そんな向日葵にはお構いなく、櫻子は向日葵にじゃれる。そんな櫻子に、向日葵は謎に苛立ちを覚え―――


―――本人にそんな自覚は全くなかったのだが―――


向日葵「……はいはい、すごいですわ」


底の知れない、冷えきった目で、櫻子をそうあしらった。
27 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/08(金) 00:15:49.34 ID:OgHBQhBo0
× × ×

始業式。
校長が壇上に立ち、誰からも必要とされていない話を延々と垂れ流している。
そりゃ一人くらいは興味を持つ生徒もいるのかもしれないが、ほとんどの生徒にとっては果てしなく無駄な時間である。

櫻子も、そのほとんどの生徒のうちの1人だ。
校長の話など、右耳から抜けるどころかまず左耳に入りさえしていない。
ただ悶々と、一人の幼馴染みのことを考えていた。


櫻子は面白くなかった。
あれだけ毎日毎日勉強勉強口うるさく言っていたくせに、いざ自分が勉強する姿勢を見せたら「ありえない」を連呼するし。
ちょっと褒めてもらおうと思ってじゃれついただけなのに「はいはいすごいですわ」なんていってあしらわれるし……。
それに……なんだよ、あの目。
櫻子をあしらうときに見せた、あの冷たい瞳。
向日葵のあんな目を、櫻子は今まで見たことがなかった。
……いや、でもなんかどこかで見たような記憶もあるんだよな……?
まぁ、たぶん気のせいだ。だってあの目を見たとき……感じたことのないほどの恐怖が芽生えたから。
理屈はわからないが、向日葵のあのすべてを凍てつかせる眼光は人を殺す力もある……櫻子は直感的にそう思った。

あれ以来、向日葵は目を合わせてくれない。
あかりたちを通して一言二言の会話はあるものの、こちらから話しかけようとしてもすっと避けていってしまう。
今日はずっとそんな感じだ。というより、櫻子が夏休みの宿題を出してからというもの、ずっと向日葵の様子はおかしい。

……ちっ、なんだよ、向日葵のやつ。
わたしが宿題を出すのがそんなに気に食わないか。
誰のために徹夜までしたと思ってるんだ…。

そこで櫻子ははっとなった。
……わたしは、なんで急に勉強なんてしようと思ったんだろう?

しばらく考えても、答えは出ない。
でも、何かすごく大切なことだった気がする。
……まぁいいや、難しく考えるのはしょうに合ってない。

向日葵がわたしのことが気に入らないというのなら、好きにさせておけばいい。もともとわたしはあいつのことが嫌いなんだ。あのツラを見ないで済むと思うとせいせいする。

まぁでも、帰り道が暇なのは嫌だから帰るときはこっちから誘ってやるか!
28 : ◆iIrYk5PFAs [sage]:2016/04/08(金) 00:17:10.82 ID:OgHBQhBo0
終わっとく。
そう長くはかからないと思う
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/08(金) 02:24:46.93 ID:g4FhKUQd0
乙乙
今後も楽しみ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/08(金) 05:49:04.43 ID:Z+HBYIULO
おつおつ
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/09(土) 13:07:02.95 ID:UlwqxKsL0
おめこ!
32 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/13(水) 00:28:04.10 ID:5mpXgJDb0
生徒会室ーーーーーーーーーーーーーーーーー

櫻子「こんにちわ!」

向日葵「……こんにちは」

綾乃「あら、古谷さん、大室さん」

千歳「こんにちは〜」

りせ「……………」


学校は午前中で終わったため、櫻子たちは食堂で昼食をとった。
生徒会の活動はすでに始まっており、先輩たちは膨大な書類にペンを走らせている。


櫻子「ほえー、多いですねー」

綾乃「夏休み関係でいろいろとね…」

向日葵「何をすればよろしいでしょうか?」

千歳「ええと、じゃあ……これと、これをこうしてああして……」

向日葵「わかりましたわ」


2人も作業に取り掛かる。
その膨大な量に軽く目が眩みそうになるが、さっさと終わらせてしまおうと、軽快に手を動かしていく。

生徒会室には、ペンの走る音だけが響く。

その静寂は、この膨大な仕事量だけによるものなのだろうか。


食堂は櫻子と向日葵、2人で行った。こういう半ドンの日はいつもそうしているので、それに従った迄だ。ここで相手を避けると、なんか相手を意識してしまっているようで負けた気分になる。

食事の間、彼女らの間に言葉はなかった。
2人で向かい合っているにも関わらず、決して目は合わず、ただ互いの食事だけに集中している。
気まずい沈黙が流れる。
向日葵は何度かその沈黙を破ろうとした。
今まで感じたことすらなかったが、誰かと一緒にいるのにも関わらず独りでいるような感覚に陥ってしまうのはどうにも気持ち悪い。
それでも、言葉を発しようにも気の利いたこと一つすらも思いつかず、ただ雰囲気はますます暗くなるばかり。
結局一言も言葉を交わさぬまま、生徒会までやってくることとなった。
33 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/13(水) 00:41:22.84 ID:5mpXgJDb0
これまで何度も櫻子とは衝突してきた。

そのどれもがくだらないことで、たいていは櫻子に非があった。

そんなときでさえも、二人の間に会話が途切れたことはなかった。

何を話すか考えるまでもなく、櫻子の中身のない悪口や煽りが飛んできたからだ。

なんだかんだで、退屈はしなかった。


……だけど、今回のはこれまでの衝突と大きく違った。

非が私にあるということも大きいのかもしれない。

櫻子を露骨に避けて嫌な態度を取ってしまっているという自覚はあるのだ。

自覚はあるが、どうしてもやめられない。

でも、それよりももっと大きな違和感。

櫻子が静かすぎる。

どんなに険悪な雰囲気でもおかまいなしに、きゃあきゃあうるさく喚いているのが櫻子なのに。

神妙な顔つきをして、向日葵と目を合わそうともせず、会話すらもしようと試みない。

調子が狂う。いや、避けている立場のくせに何を言っているんだ、なんだけど。
34 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/13(水) 00:50:44.18 ID:5mpXgJDb0
千歳(……綾乃ちゃん)

綾乃(……うん、何かおかしいわね、あの二人)


そんな向日葵たちを見て、先輩二人は何やらこそこそと話し合っていた。


綾乃(また喧嘩でもしたのかしら?)

千歳(う〜ん……それにしてはなんか雰囲気が険悪やなぁ)

綾乃(……喧嘩って雰囲気悪くなるもんじゃないかしら)

千歳(そりゃ、普通はな。あの子らは普通じゃないから)

綾乃(あ〜……思い返してみると、確かに…)


次期生徒会副会長を巡って争っているとき、胸の大きさでお互いを傷つけあっているとき、いろんな彼女らの対立を見てきたが、どことなくほのぼのとしているというか……


綾乃(……喧嘩そのものを楽しんでる?)

千歳(せやなぁ、あの二人はそういうカタチやと思うで)

綾乃(そんな二人が、本気で喧嘩を始めたというわけね……)

千歳(やっぱ原因は大室さんなんやろうか)

綾乃(さぁ……でもいつもならそうよね)


綾乃は櫻子を観察し、彼女らの軋轢の原因を探ろうとする。その間も、彼女は秒単位で仕事をこなしている。さすがは生徒会副会長と言わざるを得ない。
35 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/13(水) 01:05:02.28 ID:5mpXgJDb0
綾乃「…………?」


綾乃はそこで違和感の正体に気づいた。


千歳(どうしたんや?綾乃ちゃん)

綾乃(……なんか、今日の大室さんにずっとなんとなく違和感を感じてたんだけど)


言ってもいいかどうか、少し首を傾げるが、ここで切って「なんでもない」はさすがに無理だろう、と思い言ってしまうことにする。


綾乃(……ちゃんと仕事してるのよね)

千歳(それだいぶ失礼とちゃう?)


さすがに千歳も苦笑いだった。


綾乃(いやっ、別にそんなつもりはノンノンノートルダムよ!?でもいつもの大室さんなら所々で休みを入れながら生徒会のムードを盛り上げてくれるじゃない!)

千歳(……まぁ、確かになぁ)


いくら生徒会の面々は真面目とはいえ、単調な作業を繰り返しているとさすがに疲労が見えてくる。
それでも真面目な彼女たちは、体力の限界を迎えるまで、自分から休憩をするという概念がない。
要は根を詰めすぎるのだ。だからこそ、櫻子の存在は生徒会にとってオアシスのようなものとなっていた。もちろん、本人にそのつもりは無いのだろうが。

だから、こう真面目に仕事をしている櫻子というのはそれだけでかなりの異質さを発揮するのだった。


綾乃(しかも、なんか雰囲気が大人っぽいような)

千歳(あんな神妙な大室さん初めて見たわ)

綾乃(何かあったのかしら……やっぱり古谷さんともそのことで……?)
36 : ◆iIrYk5PFAs [saga]:2016/04/13(水) 01:14:14.59 ID:5mpXgJDb0
くぅ、と、急に櫻子が伸びを始めた。
その拍子に、櫻子と目が合ってしまう。

櫻子はさも不思議そうに


櫻子「……な、なんか用っすか」

綾乃「へぇっ!?いや、なんでもないのよ!なんでもないの!」アセアセ

千歳「せ、せや!ちょっと綾乃ちゃんが歳納さんレスでな……」

綾乃「そうよ!その通り……って何いってんのよアンタはっ!」パンッ

千歳「あぁっ……!なんか久しぶりやで…」


平手打ちされた頬を抑え、でも幸福そうに千歳は呟く。


櫻子「……ふ、ふぅん。まぁいいですけど」

綾乃「ごめんね、本当に特に意味はないのよ。気に触ったなら謝るわ」

櫻子「いえいえ、別にそんなことないしいいんですけどーあはは……あ、すいません、ここ間違ってますよ」

綾乃「え?……あら、本当。流れ作業だったものだからつい……ありがとう」

櫻子「まぁ量多いし仕方ないですね。あと少し頑張りましょう」

綾乃「ええ」




綾乃「………………!?」


綾乃が櫻子の決定的な違和感に気付いたのは、その会話はからおよそ30秒経ってからのことだった。
37 : ◆iIrYk5PFAs [sage]:2016/04/13(水) 01:15:24.21 ID:5mpXgJDb0
寝ますね
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/13(水) 18:50:51.77 ID:9yv44TG8o
オキロ
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/13(水) 20:20:29.90 ID:J0nHOcKdo
エタったと思ってたゾ 
続きいいゾ〜これ
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/14(木) 23:25:28.48 ID:BkUq8Vk50
はよ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/07(土) 20:14:14.05 ID:Z61sP65M0
まだか...まだなのか...
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/14(土) 19:27:19.38 ID:yKuSKBako
たぶんエタったんだと思うんですけど
33.34 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)