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男「俺はもうピアノを弾けない」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:43:08.05 ID:yycehe7n0
俺はもう

鍵盤を触れないのか

モーツァルトも、ベートーヴェンも、バッハも、弾くことができないのか

弾き終えた後の大衆の歓声や拍手も

聞くことができないのか

運の尽きだった

目の前で女性が轢かれそうになるなんて

瞬間

体が動き

彼女をかばった

視界が反転して

そのまま留まる

目に映るのは

心配そうに駆け寄る人

携帯電話で撮る人

そして

俺の腕の中で目をつぶっている女性

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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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2 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:43:29.40 ID:yycehe7n0
「誠に残念ですが……あなたの腕はもう」

そこから先は耳に入らない

俺の腕が死んだ

複雑骨折の上、神経はめちゃくちゃ

挙句の果てに細胞も壊死し始めている

命があっただけマシ

いや、そんなことはない

俺にとって腕は命と同じぐらい大切なものだから
3 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:44:03.72 ID:yycehe7n0
「今回の件はとても残念だよ男君。それで、今度のコンサートのことだが」

男「わかってます……もちろん中止ですよね」

「そうだ。それと、事務所のことだが」

男「やめます。こんな腕じゃあ何もできない。事務所からしたらお荷物ですもんね」

「……本当に残念だよ。君の腕はすごいものだった。幼少期から才能に溢れて」

男「少し……少し一人にしてくれませんか」

「わかった。あまり気に病むものでもないぞ」
4 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:44:34.43 ID:yycehe7n0
男「気に病むものだっつーの……」

男「……」

男「……不幸だよな」

あるコンサートのパンフレットを手に取る

男「『世界で今最も人気のピアニスト。男のメロディーが会場を包む』か……」

男「…フッ…フフフ…フハハ……フハハハハ」

男「アーッハッハッハッハ!!!」

男「ちくしょう!ちくしょう!」

男「ちくしょおおおおおお!!!!」

男「なんでだ!なんでだ!」

男「2歳でピアノに触れて塾の先生に褒められ地区で優勝して全国で優勝して世界に名を知らしめて今や世界的に有名な俺が!」

男「あんな女一人のために腕をなくさなきゃいけないんだよ!」

男「助けなきゃよかった……助けなきゃよかった!」

男「あんな女のために……体張らなきゃよかった!!」

男「うっ…うっ…うっ…」
5 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:45:33.07 ID:yycehe7n0

「あの…」

男「!」

「え、えっと」

男「き、きみ、今のきいてたのか?」

「…はい」

「あ、あのすいませんでした!」

男「…」

「私なんかのために……」

男「きみ、名前は?」

女「女です……」

男「女…さんね」

女「あの、すいまs」

男「うるせぇ!!」

女「ひっ」

男「はぁ…はぁ…ごめん。こうでもしないと誰にこの感情をぶつければいいのか…」

男「女さん。すこし、少し耳をふさいでくれる?」

女「は、はい」
6 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:45:59.27 ID:yycehe7n0
男「ふざけんじゃねぇぞこの女!!てめぇのために俺の人生棒に振った!」

男「どうしてくれるんだ!なんであの時車に轢かれそうになったんだ!」

男「俺の…俺の華やかしい人生はすべてつぶれた!すべてだ!」

男「うわぁあああああああああああ!!!!!!」


女「ッ…うっ…うっ…」

男「……泣きたいのは…こっちだってんだ」
7 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:46:25.50 ID:yycehe7n0

医者「退院おめでとうございます。男さん」

男「どうも」

医者「……いろいろ大変なのはわかりますが、どうにか、自分で命を絶つようなことはしないでください」

男「わかってます」

医者「それでは」
8 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:46:53.11 ID:yycehe7n0

男「(あれから女はこなかった)」

男「(俺が罵倒しまくった後、涙をためて病室を出て行った)」

男「(それでも……)」

男「(どこにぶつければいいのかわからない怒りや苦痛が胸にある)」

男「(彼女に対しての罪悪感の何倍も)」

prprprpr

男「はい」

「もしもし。私だが」

男「先生?」

先生「あぁ。そうだ。今回の件本当に残念だった」

男「いえ…」

先生「心の整理は、できそうかい?」

男「…まったく」
9 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:47:50.99 ID:yycehe7n0
先生「そうか。まぁそうだな。近頃、私の学校の生徒がコンサートを開催するんだ」

先生「一緒に見に行かないか?」

男「すいません。今は…その」

先生「そうか。ピアノの音を聞けば、少し心が安らぐと思ってな」

男「お気遣いありがとうございます…あの、もういいですか」

先生「す、すまなかった。また何かあったら電話してくれ」

pi

男「俺への当てつけかよ…」

先生とは、俺が2歳の時から通っていたピアノ教室の先生であり、実力、名声ともに高い名の知れた先生だ

男「俺への期待はもうないみてぇな言い方しやがって…」
10 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:48:18.11 ID:yycehe7n0
俺はタクシーを呼び自宅へ戻った

男「やばい。人間不信になりそうだ」

そうつぶやいた俺はおもむろに携帯をみる

『不在着信が16件あります』

男「16件も…」

男「誰だ…女か?」
11 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:48:47.65 ID:yycehe7n0
男「なんで俺の電話番号知ってるんだよ」

イライラがまた生まれてきた

女のことを考えると、腕を考えてしまう

もう俺はピアノを弾けないのかと再度確認しちまう

女のことを考えると、絶望に見舞われる

そう思ったら俺は携帯を投げていた

もう女のことは考えたく

prprprpr

『着信』
12 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:49:14.97 ID:yycehe7n0
男「名前が表示されてない…」

男「…女か」

男「そんなに俺を責め立てたいのか」

prprpr

着信音が俺を攻めてるように聞こえた

男「やめろ…やめろ…やめろぉ!!」

男「俺はもう!何も考えたくない!女のことも!ピアノのことも!」

男「俺はもう!終わったんだァぁああアアアア!!!」

prprprprpr

prprprprpr

prprprprpr

男「……」

pi

女『あ、やっと出てくれた!わたしです!女です!」

男「もうやめてくれ」

女『え?』

男「もう…許してくれ」

女『な、なにが』

男「あのとき俺がさんざんどなったから、恨んで俺追い詰めてるんだろ?」

女『な、なんのこと』

男「俺が悪かった…俺が悪かったからぁ…うっ、うっ」

女『と、とにかく!落ち着いてください!」

男「落ち着け?…お前がやってるくせに…何言ってんだ」

男「もう、お前の声も聴きたくない」

pi

男「はぁ」
13 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:49:45.26 ID:yycehe7n0
罪悪感なんて生まれない

あいつが悪い

女が
14 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:50:11.07 ID:yycehe7n0
「最高だったよ男君」

男「ありがとうございます!」

「感動したよ!」

男「ありがとうございます!」

「世界の男は違うねぇ」

男「ははは、やめてくださいよ」

「あれ、その腕はどうしたんだ?」

男「え?」

「君、腕がもう使えないのか」

男「え、え」
15 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:50:39.63 ID:yycehe7n0
「なんだ。ならいい」

男「まってください!」

「なんだね、腕が使えないピアノが弾けない君には期待するものは何もないじゃないか」

男「そんな!」

先生「男…」

男「先生!」

先生「いま私の生徒の一人がとても伸びがいいんだ!君なんかより全然!」

男「そんなぁ!!先生!」

先生「君にはがっかりだよ」

男「先生!!待ってください!」

女「男さん…」

男「お、女」

女「私を助けたからそうなったんですか?」

男「そ、そうだ!お前を助けたから!」

女「ふふっ。そうですか。それは残念ですね」

男「お、お前ぇ!!」

女「でも、おかげで私が助かったので、一応感謝はしときます」

男「一応…」

女「それでは」

男「まて、まてぇぇえええええ!!!」
16 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:51:07.48 ID:yycehe7n0

男「はっ!」

夢か

悪夢だ

こんなに目覚めが悪いのは初めてだ

どれもこれもすべて

男「女の…せい」

なのか?

昨日は気が動転しすぎていたが、一日たつと気が収まっていた

だが

男「怒りだけは残るのか…」

相変わらず携帯には不在着信の文字がつらつらと載っている

男「いちおう謝罪だけしとくか」

prprprpr

男「おっと。ちょうどいい」
17 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:51:33.06 ID:yycehe7n0
pi

男「もしもし。昨日はごめn」

女『男さん!やっと、やっとでてくれた!』

男「あ、あぁ。昨日は一方的に切ってすまなかった」

女『あ、あのあの!会いませんか!顔を見て話したいんです』

男「…ごめん」

まだ彼女の顔を見れるかどうかわからない

彼女の顔を見て

なんとも言えない怒りがまた湧き出てきて

殴りかかってしまう。なんてことがあり得る

女『私のこと、好きなだけ殴ったっていいです』

男「…え?」
18 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:51:59.16 ID:yycehe7n0
女『私はそれだけのことをしたんです』

女『私。実は男さんのこと何も知りませんでした』

女『それで、友人から聞きました』

女『男さんは世界に名の知れたピアニストだと』

女『それで、男さんが通っていたという教室の先生に男さんの電話番号を聞いたんです』

女『私は本当にとんでもないことをしてしまったなと深く思うんです』

女『だから、一回あって話したいんd』

男「なぁ」

女『は、はい』

だめだ

もう限界だ
19 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:52:25.66 ID:yycehe7n0
男「さっき、あんた俺のこと知らないって言ったよな」

女『は、はい』

男「ってことは、俺の正体を知るまで、『ただの一人の男性』の腕を壊してしまったと思ってたってことだよな」

女「そんなことは!」

男『あるだろぉ!!』

女『ひっ』

男「俺がどれだけ…俺がどれだけ苦しいのか…」

男「腕がもう治らないって聞いたとき、俺は何も考えられなかった!」

男「もうピアノが弾けない!大衆の歓声も聞けない!」

男「そう思ったら絶望に見舞われて、三日何も食べれず!毎日下呂はいてた!」

女『う、うぅ』

男「なのにあんたは知らなかっただと?」
20 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:52:54.00 ID:yycehe7n0
男「俺がこんなに苦しんでるのにお前は…お前はぁ…!」

女『す、すいません!』

男「お前謝ればいいとか思ってるだろ」

男「もういい。もういい!謝罪の言葉はいい!」

女『で、でも』

男「そのかわり、もう一生電話をかけてくるな」

女『え…』
21 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 21:53:21.75 ID:yycehe7n0
pi

理不尽でもいい

今はとにかく

負の感情を女にぶつけたい

男「ちくしょお…」

わかってる

うすうす気づいてる

女は何も悪くないってことは

でも

それでも

こうでもしないと俺が俺でなくなりそうで

たとえ彼女がどんなに不憫でも

罪悪感で心がむしばまれそうになっても
22 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:20:27.09 ID:yycehe7n0
男「食材…買い行くか」

久しぶりに家を出る

外に出ると皆俺を見て何か言っている

そりゃそうだ

世界に名の知れたピアニストが片腕がない状態でスーパーに来てるのだから
23 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:20:52.88 ID:yycehe7n0
男「(いちいち商品をとるとき籠を置かないといけないのがつらいな)」

男「(二つの商品を見比べたいのに一つしかない持てないのがつらいな)」

つらい

片腕しかないのがつらい

皆俺を見ている

ひそひそ言っている

つらい

俺だってこんなことしたくてしてるわけじゃないのに

こんなこと

こんな
24 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:21:18.18 ID:yycehe7n0
「見つけた!」

男「!…女?」

そこに立っていたのは、やつれた女だった

女「男さん!みつけました!」

男「な、なんで!」

女「先生から男さんの住んでいる場所を聞いて、その周辺のスーパーでずっとこないか待ってたんですよ!」

女「やっと、やっと顔を見れた…やっと」

男「っ!」

俺はその場から走り出した

うしろから俺を呼ぶ声が聞こえたがお構いなしだ

籠はその場にほっぽり出して走った

店を出て、家に戻る途中
25 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:21:44.27 ID:yycehe7n0

女「捕まえました!」

男「うぐわぁ!!」

勢いよく突進されて俺は前方に倒れる

とっさに右腕を

ないんだった

勢いよく顔から地面に倒れる

男「いったぁ…」

こんなとき腕があったら

何で腕がないんだ

原因は

この女

この…女

男「さ、さわるなぁ!!」

女「きゃ!」

男「も、もうお前の声なんか聞きたくないといったはずだ!」

女「待ってください!ちゃんと聞いてください!」

男「いやだ!やめろ!やめてくれええええええ!!!」

男「あぐぁ!!」

視界が暗転する
26 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:22:12.28 ID:yycehe7n0

男「…ん?」

ここは

女「あ、やっと目さめましたね!」

男「ひっ!…え、な、なんだこれ」

手と足についている

女「手錠。ですよぉ?」

こいつ

こいつはなんなんだ

こいつはいったい

女「なんでこんなことしたんだって顔してますねぇ」

女「私。男さんに助けられたときわかったんです」

女「私の運命の人は男さんだって」

女「でも、何やっても話聞いてくれないから」

女「監禁しちゃいました♪」
27 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:22:40.57 ID:yycehe7n0
狂ってる

この女は基地外だ

なんだ

なんで俺だけこんなに不幸なんだ

女「でもその調子だと私のこと頼ってくれないだろうから…」

そういって彼女は金づちを取り出した

男「お、おい、まて、まて!まてぇ!!」

女「もう一本も壊しちゃいましょ?」
28 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:23:07.63 ID:yycehe7n0

悲鳴

絶叫



嗚咽

なにをしても彼女はやめない

暗い笑みを浮かべながら

なんども

なんども

なんども

なんども

なんども

なんども

なんども俺の腕を金づちで殴った

もう一本の腕を

痛みで俺は

気を失った
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/24(日) 22:23:08.74 ID:DKYwkfl/O
この最悪の状況でヤンデレとか新しすぎる…
30 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:23:33.30 ID:yycehe7n0










男「いっつ…」

痛みで目が覚める

左腕は動かない

血だらけだ

女「目が覚めましたね♪」

女「ねぇ男さん」

女「これで私だけを頼ってくれますよね」

女「ね?ね?」

女「もし頼ってくれないなら、次は足」

そういって俺の右足をなでる

男「ひっ」

女「ねぇ。私だけを頼って?私だけのものになって?」

女「ねぇ。ねぇ。ねぇ」

男「わ、わわわかった!わかった!」

こうして俺の絶望の日々が始まった
31 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/24(日) 22:24:01.53 ID:yycehe7n0
今日は寝ます
おやすみなさい
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/24(日) 22:46:55.21 ID:f/TKXDOFo
どん底に落ちたら更に掘ってる奴がいた
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/24(日) 23:07:50.81 ID:zrKEKuMHO
乙乙
ヤンデレって………怖いな
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 00:30:00.37 ID:OmCcHiRHo
急展開すぎて面白すぎ
このまま男と女が共依存するルート楽しみ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 00:48:09.67 ID:0A5mK7gho
こんな状況の男に対して何度も連絡取るとか
女無神経過ぎとか思ったらまさかのサイコパスかよ…
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 08:59:57.38 ID:Hb/mZBxZo
続くのか(絶望)
37 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 20:58:12.99 ID:nkp2YbnH0
続けます
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 20:58:42.91 ID:KeMrkn/jO
続けるんだよな…(絶望)
39 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:02:36.40 ID:nkp2YbnH0
男「な、なぁ排泄の時とかってどうするんだよ」

何とか逃げ出したい

言い負かして

論理立てて

逃げる方向にもっていきたい

いくら俺の世話を焼くといっても排泄の時は

女「小さいほうはこれに♪それで、大きいほうは首輪をつけてしてもらうからあんしーん♪」

ぶん殴りてぇ

今すぐにでもとびかかって

前歯をへし折ってやりたい

女「…でも私、こうなるならよかったなって思うんです」

男「なにがだ」

女「男さんが事故で片腕を失ったことです」

男「!」

女「世界的に有名なピアニストだか何だか知りませんけど」

女「男さんの片腕がなくなったことによって、監禁もしやすいし」

女「なにより……」

女「私を頼ってくれるじゃないですか?」

40 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:14:14.53 ID:nkp2YbnH0
絶叫

それは絶叫

奇声交じりの絶叫

怒りが頂点にこみ上げる

殺したい

殺したい

殺したい

女「そんなに暴れたって、腰に鎖が巻いてある以上、何もできませんよー」

女「それに……そんなに暴れたら」

女「躾が必要ですよねぇ」

男「うっ…うっ…うっ…」

今すぐ殴りたい

今すぐ蹴り飛ばしたい

今すぐ引き裂きたい

でも

でも

目の前であの金づちを持って

ニコニコされたら

なにもできない
41 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:21:06.00 ID:nkp2YbnH0
従順に

そう

従順に

怒りを買わず

足を失うのだけは勘弁だ

できるだけ

従順に


42 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:29:56.55 ID:nkp2YbnH0
女「ねぇ男さん。私たちって結婚するよね?」

従順に

男「そ、そうだな」

女「じゃあさ!」

何が来ても

従順に

女「足なくてもいいよね?」




――――――――――-は?

男「な…え……え?」

女「だってさー私は男のこと信用してるけどさぁ」

女「もしかしたら」

女「脱走しようなんて考えてるかもしれないじゃん?」

眼光

獣の眼光

俺は生つばを飲み込む

男「そ、そんなことはないz」

女「じゃあさ、足についてる手錠が削れてるのはなんで?」

従順に

従順にしてから1週間がたった今日

脱出計画は

まんまと見抜かれていた

女がいない間

足の手錠を壁や床に打ち付けた

何回も

少しずつ変形していた

これはいける

そう思っていた矢先

見つかってしまった




43 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:34:08.54 ID:nkp2YbnH0
男「し、知らない」

女「まっ。別にいいけどね」

女「だからさ、足さえ切っちゃえばさ」

女「男の四肢はなくなって」

女「脱出できる確率はゼロに等しくなるじゃん?」

女「だったら」

女「足なんていらないよね」

待って

待ってください

そういおうとした刹那

鈍痛

右足に響く

熱い

熱い

鈍痛

男「うぎゃああああああああ!!!!」

女「うるさいよぉ?」

金づちを振るう女は

悪魔

怪物

いや、それ以上の何か

とにかく俺は

男「やめろぉおおおおおお!!!」

女「きゃっ!」

蹴り飛ばした

いや

蹴り飛ばしてしまった
44 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:39:23.66 ID:nkp2YbnH0
ここで謝ればよかったのだ

男「やめろよ!!」

男「いい加減にしろよ糞女ぁ!!」

男「なんでてめぇなんかに俺の人生めちゃくちゃにされなきゃならねぇんだ!」

どんなにわめいても

腕がなく

足と腰が固定されてる人間は

誰よりも弱い

女「うるさい」

その一言を発したのと同時に

金づちが頭を一発

視界が霞むのもつかの間

もう一発が

頭に

男「ぐぇ」

俺は死ぬのか

死にたくない

いやだ

いやだ

いやだ
45 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:40:16.21 ID:nkp2YbnH0
女「殺しはしない」

女「でも」

女「死にたいって思うほどの躾をしてあげる」

そんな言葉を聞きながら

俺は瞳を閉じる
46 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:48:34.44 ID:nkp2YbnH0
頬に痛みを感じ目を覚ます

男「頭が…痛い」

ポヤポヤとした感覚

こんなの初めてだ

女「やっとおきましたか」

そういった彼女の顔は

冷たく

雪女のように

寒く

感情もぬくもりもない

そんな顔だった

女「いつまで寝てるんですか」

ぼやけてはいるが反論の言葉は思いつく

男「それはお前が!」

視界が右にずれる

その直後頬に痛み

女「誰が話していいって言いました?」

男「な、なんだt」

ぱちん!!

もう一発

女「誰が」

女「話していいって」

女「言いましたぁ?」




47 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:50:54.50 ID:nkp2YbnH0
話すことも

許されない

そんな現状を

そんな現状を

男「受け止められるわけn」

腹にこぶしが

めりこむ

男「かはぁ!!」

女「しゃべるな」

女「わかった?」

頷く

目に涙を浮かべながら
48 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:53:16.92 ID:nkp2YbnH0
女「男はね」

女「罪を犯したの」

女「大事な大事な奥さんに」

女「手を出したの」

女「だから」

女「罪を償うの」

女「いまから私の言うことは絶対服従。守れなかった場合は」

女「足の指を一本ずつ」

女「つぶす」

女「金づちで」

女「ぐちゃぐちゃになるまで」



こいつは何を言っているんだ

こいつは

何を

言っているんだ

49 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:56:21.00 ID:nkp2YbnH0
女「じゃあまずはぁ」

女「ご飯食べなきゃね♪」

女「ハイ♪」

女「残さず食べてね?」

そういって女はタッパーを差し出す

ふたが色付きのせいで中が良く見えない

女はにこにこしながら

タッパーのふたを開ける

絶句

そこには

ゴキブリと思わしき

茶色い

羽付きの

ごろっとした体の

足が6本ある虫が

3匹

かさかさと音を立てながら

せわしなく動いていた

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 21:58:48.85 ID:KeMrkn/jO
これはヤンデレじゃねえ!重度のメンヘラだ!
51 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 21:59:33.40 ID:nkp2YbnH0
男「む…」

男「無理だ無理だ無理だ無理だぁああああああ!!」

頬を殴られる

痛い

だが

男「い、いやだ!いやだいやだいやだ!!」

首を動かす

そのたびに殴られる

女「じゃあ」

女「私の言うこと」

女「守れなかったってことだね?」

そういって彼女は

金づちを取り出し

男「まって」

と、言ったのと同時に

右足の小指を

叩いた

ごん

ぐぐ

ぐり

ぐしゃ

そんな音が順番に聞こえた後

大量の血

猛烈な痛み

そして

女「じゃあ食べてね♪」

これ以上拒絶は許さないという

女の

笑み
52 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:02:53.24 ID:nkp2YbnH0
声すら出ない

痛みと

絶望と

理不尽さで

聞こえるのは

蟲の

かすかな

動く音

女「ハイ♪あーん」

そういって彼女は俺の口を強引に開け

蟲を一匹

放り込む

男「っっっっ!!!」

動くな

動くな

足が内側から

舌や

頬や

歯茎を

触り続け

羽ばたこうとして

羽は

音を立てながら

口内で暴れまわり

触角が

喉の奥を刺激する

男「うげぇ!!」

吐く

下呂を大量に

吐く
53 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:05:44.36 ID:nkp2YbnH0
男「も、もうやめてくださいぃ」

男「私が悪かったです」

男「もう反抗しません」

男「だから、それだけはぁ」

また腹に一発

女「だから言ったでしょう?」

女「死にたくなるほどの躾をしてあげるって」

そういって彼女は

俺が吐き出した蟲を箸でつかみ

また俺の口に入れた

また吐く

こんなの食べれるわけがない

こんなの

男「っっっ!!」

突然の鈍痛

下のほうからだ

足を見ると

右足の薬指が

ない

男「うぎゃああああああああ!!!!!」


54 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:09:58.40 ID:nkp2YbnH0
女「ほら」

女「早く食べないと」

女「足の指が全部なくなっちゃうよ??」

女「ふふっ」

もういやだ

もういやだ

死にたい

死にたい

俺は何かが

壊れる音がした



……めんなさい

……めんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい

男「ごめんなさい……」

俺は壊れたようにつぶやく

もう

こうするしか道はないのだと

そう何かが訴えている

だが

女は

それ以上に

狂っていた

女「それで?」

にこにこしながらいう

女「謝るのは別にいいけど、早く完食して?」

女「ねぇ」

女「はやく」

女「完食しろ」


55 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:12:04.15 ID:nkp2YbnH0
この女に情はないのか

無慈悲だ

無慈悲すぎる

もう

食べたくない

食べたくない

食べたくない

食べたくない

食べたくない

食べたくない

たべたく

女「食べたら監禁といてあげるよ♪」

食べたくない

食べたくない

たべたく

たべた

たべ

たべた

たべたたべ

たべたい

たべたい

食べたい

食べたい

食べたい

男「食べたい…」
56 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:14:59.71 ID:nkp2YbnH0
女はおもむろに蟲を拾い

俺の口へ入れる

俺はかむ

口内で

足をばたつかせる

ゴキブリ

かめば噛むほど

なんとも言えない

まずくて

くさくて

あたたかい

ぬるぬるした液体が

口いっぱいに広がる

そして

飲み込む

足が一本残ってる

そう思ったすきに

残りの2匹が

口に放り込まれる

先ほどよりせわしなく

口内を

2匹の

足が

触角が

動き回る

それをかむ

思い切り

液体が口いっぱいに広がる

それを飲み込む

うまいかまずいか

そんなことはどうでもいい

この監禁から

逃れることができるのだから
57 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:18:35.70 ID:nkp2YbnH0
男「食べました…」

女「よくがんばったね♪」

女「じゃあつぎはこれのんで♪」

女「喉渇いてるでしょう?」


茶色い

濁った液体

男「これは…?」

女「ミミズとバッタと公園の砂を混ぜ合わせたドリンクだよ」

男「だ、だってゴキブリ食べたら監禁といてくれるって…」

腹に一発

二発

三発

さっき食べた虫がこみ上げてくる

女「逃がすわけねぇだろ」

目の前が

暗くなる

もうどうにでもなってほしい

むりだ

この状況で耐え抜くのは

限界を突破した何か

精神が

精神という壁が

崩れていくのがわかる

崩れて

いく


わか
58 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:19:49.61 ID:nkp2YbnH0
女「あれれ?どうしたの?男ー?ほら、おきなさい」

女「あまりのショックで気を失っちゃったのね」

女「…息してない!」

女「救急車!救急車呼ぶね!」
59 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:22:07.48 ID:nkp2YbnH0
俺は目を覚ました

ここは?

医者「男さん!大丈夫ですか?!」

男「…ここは?」

医者「病院です!それより傷大丈夫なんですか?!!」

男「傷?」

医者「だから自分で命を絶つようなことだけはしないでくださいと言ったじゃないですか!!」

男「あ、あの、あの」

医者「どうしました?」

男「僕は」

男「僕は誰でしょうか?」
60 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:26:31.26 ID:nkp2YbnH0
自分の名前も

自分の家族も

自分がだれかすらもわからずに

3日がたった

医者からは

医者「君はね?世界的に有名なピアニストだったんだよ。でも、ある日一人の女性をかばってね、片腕をなくしてしまったんだ」

医者「そのショックで君はどん底まで堕ちてしまっていた」

なんていわれた

ピアニスト?

ある一人の女性?

なんの話だ

でも医者は

医者「その右足の小指と薬指。あと左腕。君はショックのあまり自分で損傷させたんだ。そして気を失った」

医者「そこを、君が助けた女性が運よくみつけてね」

医者「救急車を呼んでくれたんだ」

医者「いやぁ奇跡ってあるもんだねぇ」

なんて言ってた

61 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:28:25.60 ID:nkp2YbnH0
医者「記憶がないのは過度のショックによるものだ」

医者「少しずつ記憶を取り戻していこう」

男「は、はい」

そんな会話をしてから

病室で

ただ茫然と

ベットに座っているだけの日々
62 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:33:57.75 ID:nkp2YbnH0
そんな時

病室のドアが開く

先生「男…男ぉ!!」

先生「心配したんだぞ!!」

先生「なんで自分を傷つけるようなことをしたぁ!」

先生「なぜ…なぜだぁ」

誰だろうこの人

俺は知らない

でも

昔の俺は知ってるのか

男「あの…」

先生「なんだ!」

男「どなたでしょうか?」

先生「な、なにを言っているんだ?」

男「すいません。医者が言うには過度のショックによって記憶喪失になったとのことらしくて」

男「あなたのこと全く覚えてないんですよ」

そういうと

目の前にいる女性は

泣き出した

63 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/25(月) 22:34:32.90 ID:nkp2YbnH0
ちなみに先生は女性です

今日は寝ます

おやすみなさい
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 22:47:57.28 ID:KeMrkn/jO
あいつが来る前に記憶を取り戻さないと…
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 22:58:16.78 ID:sYpbO0ryo
ヤンデレssかと思ったらただの胸糞悪いメンヘラ糞ssだったわ
66 : ◆WtqUBtW/P/tC [saga]:2016/04/25(月) 22:59:05.31 ID:bMbs/Hv0o
虫のシーンで吐き気を催したいいぞもっとやれ
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/25(月) 22:59:34.71 ID:bMbs/Hv0o
ごめんなさい酉つけたままでした
68 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 19:28:30.40 ID:tGMdGBXE0
続けます
69 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 19:30:56.62 ID:tGMdGBXE0
先生「記憶…喪失?」

男「はい」

男「失礼ですが、どちらさまでしょうか?」

先生「…少し」

先生「少し心の整理をしてくる…」

先生「少しだけ時間をくれ」

そういって

彼女は病室を

出て行った

男「(誰だろう)」

思い出そうとしても名前の一文字すら出ない

というより

初対面と

なんらかわらないのだから
70 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 19:32:09.34 ID:tGMdGBXE0
がらがら

勢いよくドアが開く

そこに立っている

一人の女性

男「っ!」

誰かはわからない

誰かは

でも

なにか

胸の奥が

ぞわぞわ

ぞわぞわ



警告音のようなものを

鳴らしている
71 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 19:34:57.20 ID:tGMdGBXE0
男「っあ…あの、どなたでしょうか?」

「私がわからないの…?」

彼女は冷たく言った

男「す、すいません」

「もしかして…」

「記憶喪失?」

男「過度のショックらしくて…」

「過度のショック…」

そこまでつぶやいた彼女は

すこし

うつむいた

と思ったら

「うっ…うっ…うっ」

涙声

大粒の涙が

下に

一粒

二粒と

落ちる
72 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 19:51:35.89 ID:tGMdGBXE0
「よかった…よかったよぉ」

男「ど、どうしたんですか?」

そういうや否や

彼女は抱き着いてきた

「もしかして…私の名前もわすれちゃったの?」

男「すいません…」

女「私は女」

女「あなたが私を車から救ってくれたの」

男「じゃ、じゃあもしかして、僕が助けた女性というのは」

女「そう」

女「私」

73 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 19:53:43.66 ID:tGMdGBXE0
男「あ、あの。このたびは助けてくれてありがとうございました」

女「え?」

男「医者が言うにはあなたが重度の傷を負っていた私を見つけて救急車を呼んでくれたとか」

女「いいの!」

女「だって!」

女「あなたの彼女なんだから当然でしょ?」

女「ね?」

女「男♪」

彼女

女さんが

彼女

僕には

記憶が失う前

こんなに

かわいい

彼女がいたのか

74 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 19:56:14.91 ID:tGMdGBXE0
かわいい

そう思うえば思うほど

なぜか

頭の中で

警告音が鳴る

なぜだ

こんなにかわいくて

こんなにやさしい

こんなに良い彼女は

ほかにはいないぞ

そう

自分に問いかける

そうすればそうするほど

ないはずの腕が

疼いてる気がした
75 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 20:12:16.01 ID:tGMdGBXE0
それより

彼女なら

自分がどんな人間なのか

詳しく知っているはずだ

男「あ、あの」

女「なぁに?」

男「僕って…どんな人間だったんですか?」

その質問をしてから

30分の間

僕という人間を

知った

76 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 20:14:13.17 ID:tGMdGBXE0
女「…こんな感じかな」

男「そうですか」

男「そんなに僕は病んでたんですね」

男「ふふっ」

女「笑い事じゃないんだからぁ!」

そういって彼女は

ばいばい

と言い残し

病室を後にした

それと入れ替わるかのように

さっきの女性が入ってきた
77 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 20:39:38.01 ID:tGMdGBXE0
先生「ごめん。心の整理に時間がかかった」

男「あ、あなたはさっき来てた…えっと」

先生「自己紹介がまだだった。私は先生」

男「先生さん…先生…」

男「すいません。全く思い出せません」

先生「私は、君が通っていたピアノ教室の先生をやっているんだ」

男「ピアノ…私は、世界的に有名なピアニストだったとか」

先生「あぁ。そりゃもう。世界に名をとどろかせる」

先生「最高のピアニストだったさ」

先生「私の一番の自慢の生徒さ」

そういって笑った先生の顔は

どこか切なそうだった

78 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 20:57:23.62 ID:tGMdGBXE0
男「でも、僕は彼女を助けたときに片腕をなくして絶望に見舞われてたとかなんとか」

先生「…彼女?君、彼女がいたのか?」

男「あ、あぁ違います女さんです。女さんが言うには僕と彼女は付き合ってたらしくて」

先生「え?君が車から助けた子と君が付き合っているのか?」

男「はい。話を聞く限りすごいラブラブらしくて」

男「でも同居を始めたある日僕は自分で右足の指2本と左腕を壊したらしくて」

男「何を血迷ったんでしょうかね」

先生「…そうか」

先生「今日はもう帰るな」

男「あ、わかりました。また昔の僕について教えてくださいね」

先生「あ、あぁ…」

先生「それじゃ」

男「では」

そういって病室を出ていく

79 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 20:59:36.40 ID:tGMdGBXE0
私は静かに扉を閉める

先生「…」

先生「おかしい」

先生「男はは騙されてる」

先生「あの女に」

80 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:02:50.47 ID:tGMdGBXE0
男の話を聞く限り矛盾点が多数ある

まず男は事故直後

女性と付き合うほどの心の余裕はなかったはずだ

私がコンサートに誘った時も

声が物語っていた

それに男が付き合っているという女性

彼女に事故から少し経った後

男の電話番号を教えてくれと言われた

その時点ではあの二人には接点はないということだ

そして電話番号を教えてから少し経った後

約1週間

男の携帯に電話はつながらず

メールの返信すら全く来ない
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/26(火) 21:03:09.50 ID:jHohdvonO
メンヘラヤンデレの魔の手から救い出そうとするキャラの末路は大抵…
82 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:03:41.91 ID:tGMdGBXE0
たとえ本当に女と付き合ってたとしたら

それは心に余裕が生まれるたということ

むしろ回復に向かっていたってことだ

なのに

連絡の一つもくれない

ましてや返信をしないなんて

おかしい
83 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:06:22.90 ID:tGMdGBXE0
そして男は自分で右足の小指と薬指をつぶして

その後左腕を自分で壊したらしいが

左腕でわざわざ右足の小指と薬指だけをつぶすのもおかしいし

ましてや

つぶしてから自分の力で片腕だけを壊すなんて到底できない

左腕の壊れた原因は

複雑骨折

打撲

など強い衝撃を与えないと怒らない症状ばかり

右手がない状態で

しかも足の指を2本失った状態で

片腕だけでその腕を確実に壊すことなど

到底無理

84 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:07:02.38 ID:tGMdGBXE0
だとすると

その期間中に

男に接触し

男に関われた人間は

ただ一人
85 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:08:21.66 ID:tGMdGBXE0
先生「女……」

彼女が

男に何らかの理由で接触し

片腕と

足の指2本を

こわした

その時のショックで

男は

記憶を失ったのではないか
86 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:10:18.29 ID:tGMdGBXE0
とにかく証拠だ

女が犯人だという証拠を見つけなければ

そう決心した私は

自分の携帯をおもむろに取り出し

待ち受け画面にキスをする

その画面には

満面の笑みを浮かべて

優勝カップを持つ

男の姿が

映っていた
87 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:15:01.74 ID:tGMdGBXE0
女「それでね!それでね!」

記憶を失ってから1か月

あれから先生とかいう人は病室には来ていない

そのかわり

女はしょっちゅう来るようになった

女「ねぇきいてるのー?」

そういって彼女は頬を膨らます

男「ごめんごめん」

そういって僕は彼女の頭をなでる

ことはできない

腕がないのだから

幸せをかみしめようとすると

腕がないという不幸が

邪魔をする

でも

右腕は彼女を車から助けたときに無くし

左腕は自分で壊したのだ

しょうがない

そう思い込むしかなかった
88 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:18:07.22 ID:tGMdGBXE0
女「あ、そうだ!男そろそろ退院できそうなんでしょ?」

男「うん」

女「はい。これ私の家の合いかぎ♪」

男「え?」

女「腕がないから自分では開けられないけど」

女「自分の合いかぎを預けてると」

女「なんかカップルぽくて…」

もじもじしながら彼女は言う

男「ふふふっ。かわいいなぁ」

女「も、もう!やめてよ!じゃあ私帰るからね!」

そういって彼女は机にカギを置いた

男「おう!またな」

女「うん♪またね」

彼女は病室を出る
89 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:24:23.10 ID:tGMdGBXE0
男「ふぅ…少し疲れたな」

そういって僕は目を閉じる





先生「男。入るぞ」

あれから1か月

証拠は見つからない

あと探していないのは

女の家だけだ

病室に入ると

男は寝ていた

先生「…男」

先生「私はな。お前のことが心配だった」

先生「私の教室に通っている時から」

先生「お前は…」

先生「私の気持ちに気づいてくれないのはないかと」

先生「案の定」

先生「私のことはほっぽいて」

先生「彼女なんて作って」

先生「でも」

先生「でも必ず」

先生「その彼女は犯罪者であるということを教えてやるからな」

90 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/26(火) 21:29:32.65 ID:tGMdGBXE0
みんな見てくれてるのかな??

今日はここまで

おやすみなさい
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/26(火) 21:31:22.69 ID:jHohdvonO
見てるよ。続きが気になる乙
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/26(火) 22:22:06.50 ID:Ka9xDyubO

先生も危ないなぁ
この先どうなるのやら
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/26(火) 22:22:46.33 ID:Ar3cJlk/O
構成は違うが、「ミザリー」を連想するな。
あの映画で一番ショックだったのは、もう1人の主人公みたいに思えた警官の爺ちゃんが、監禁されてる作家を見つけた瞬間にあっさり殺されてしまったシーンだったな…
94 : ◆oUEeYc65Ygjv [ saga]:2016/04/29(金) 13:59:40.92 ID:KWsk8zR40
もう少しお待ちください
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 01:49:13.03 ID:/xaXsw0so
勝手に自壊って決め付けるヤブ医者
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/01(日) 12:27:41.94 ID:rwx3xV6i0
期待
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 15:48:14.91 ID:zzM/qMib0
はよ
98 : ◆qq6bmdAzpc [saga]:2016/06/18(土) 06:10:10.13 ID:TcXid9Pa0
>>1です
お待たせしてすいません
ケータイから書くようになったので酉かわります
続けます
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 09:20:59.31 ID:IZbOnMdQO
やったぜ
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 10:54:44.01 ID:bYerC+B3o
お帰り
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/18(土) 11:38:08.41 ID:tgskeGhM0
よっしゃ
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/19(日) 22:16:53.58 ID:fnlzudrIo
待ってたっ
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