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ヴァンピィ「ねぇねぇ、眷属」グラン「どうしたの」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:49:22.40 ID:Y+mHczzv0

蒼穹を往く船の甲板に少女と自分の二人だけ。

少女の名前はヴァンピィ。

今は亡き吸血鬼の島の第一王女だ。

俺の名はグラン。

全空に名前を馳せた、生ける伝説。

世界最強の騎空士である。

俺は少女が船の縁に体を預け、

吸血鬼にとって忌むべき宿敵である太陽を眺め、溜息を零す姿を見て懐かしい記憶を思い出していた。


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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:50:00.42 ID:Y+mHczzv0

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十二神将の役が周るのを七度、見届けた頃の出来事だった。

俺は病に侵され、魂の共有を行っていたルリアは

「少しでも貴方に時間が残りますように」なんてふざけたことを言い残して消えてしまった。

くだらない命の使い方をしやがって。

全空に名前を轟かせた俺の仲間達はもういない。

ノアはラカムと。ロゼッタはイオと最期を共にした。

どうして俺の仲間は自分の命を人のために使うのかね。

ルリアも無駄なことをしやがって、病魔に蝕まれているこの体は碌に動かない。

苦痛を長く感じる分、いい迷惑だ。

...お前が長生きしてくれよ。
3 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:50:31.01 ID:Y+mHczzv0

そんなことを毎日考えていた。

毎日毎日考えていた。

ああ、もういっそ楽に殺してくれ。

仲間の元へ行かせてくれ。

精神が疲弊し遂にそう思ったある日、誰も知らないはずの俺の家にノックの音が飛び込んだ。

「けんぞくぅ!開けてー!」

耳に残る甘ったるくて懐かしい声。

ヴァンピィ...か?

「そーだよー!魔法下手くそなのに結界なんて張っちゃって!探すのに10年もかかったじゃない!」

...世界最強の結界のはずなんだけどなぁ

「じゃあ、ヴァンピィちゃんが世界最強ってことで!あ、開けてくれないなら勝手に入りますのでー!」

ヴァンピィはそう言うや否やとてつもない勢いでドアを開ける。

ぐいぐい来るこの感じ。変わらないなぁ。
4 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:51:36.65 ID:Y+mHczzv0

「ねぇねぇ、けんぞくぅ。老けた?」

ああ、老けたとも。

ヴァンピィは変わらないな。

「けんぞくぅ。声出ないの?」

あいにくだが、もう体も動かない。

でも君は念話ができるだろう?

「あんなに強かったのに、もうすぐ死んじゃうんだね」

ヴァンピィはもう死ねないんだな。

「私が死んだらメドヴェキアが亡くなっちゃいますので」

自分のことヴァンピィちゃんって呼ばないんだ。

「もうそんな歳じゃないもの。さっきは昔を思い出させるためにわざと言ったけどね」

無限の刻を生きる真祖の血継でも歳を数えるのか。

「ざっくりと、ね。正確には忘れちゃった」

どうして最後の吸血鬼なのにこれ以上、吸血鬼を増やそうとしないんだ?

「もうニンゲンを吸血鬼に変えるのはやめよう、ってなったの」

フェルドラク達の意志で、か。

「ううん、私の意志。もうプリンセスじゃなくてクイーンですから」

それにしたって、血を吸えば寿命は延びるんだろう?

なんで民を死なせた。
5 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:52:03.32 ID:Y+mHczzv0

「みんな、ね。死にたかったんだよ。この世界は私達が生きるにはちょこっとだけ辛いところだから。

だから生きたくなったらまた戻っておいでーって言ってあげたの」

...食べたのか。

「うん、食べたよ。赤ちゃんから老人まで。私の民草はぜーんぶが私の中」

ヴァイトも?

「ううん。ヴァイトとフェルドラクは食べさせてくれなかったんだ」

...あの二人らしいな。

「ホンット、バカだよね。“私が泣いてるから”なんてカッコつけちゃってさ」

二人はどうなったんだ。

「仲良く白木の杭を胸に刺して、死んじゃった。食べられるより痛いのにね」

...そうか。

「だから私がメドヴェキアなの」

そりゃ、死ねないなぁ。

「それで、ね。けんぞくぅに相談があって来たんだ」

ほぼ死体みたいな俺にできるコトがあればなんなりと。

「私の隣にいてくれない?」

...数奇なもんだなぁ。

ルリアに命をもらって、次は君か。

「ホントの眷属になっちゃおっか」

吸血鬼は増やさない方針、だろ。

「...一人は寂しい」

ああ、そうだよな。

この命、君にあげよう。
6 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:52:35.88 ID:Y+mHczzv0

俺にそう懇願した吸血鬼の女王は泣いていた。

もう価値のない俺の命がこの少女の救いになれるのならば、と俺は残りわずかな力で頭を傾け首筋を晒す。

彼女のひんやりとした左掌が俺の頬に触れる。

少女のような可愛らしい手と、指先にある凶悪な爪。

ああ、俺も“こう”なるのか。

しかし、不思議と恐怖はない。

「チクっとするよ」

彼女が俺の首筋に優しくキスをした後、そう告げる。

かぷっとしてちゅー。

鋭い牙が首筋を貫き、流れる血液を吸い上げられる感覚の中、俺は意識を失った。
7 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:53:06.52 ID:Y+mHczzv0

***



「おはよう、眷属」

目が覚める。

窓から差し込む日の光をいつも以上に疎ましく感じた朝だった。

「昔の姿に戻っちゃったね」

本当だ、少年の姿に戻ってる。

彼女の言葉で気が付いた。

「吸血鬼は常に全盛期の姿でいられるから」

「ああ、なるほど」

体も動く。声も出た。

吸血鬼の力なのか、前より強くなった気もする。

「それじゃ、行こっか」

「行くってどこに?」

「ラカムにーちゃんの船、取ってあるんでしょ?」

「取ってあるけどさ」

「じゃあ、決まり!眷属と二人なら寂しくないね」

「...そうだな、ゆっくり行こう。時間は無限にある」



― ― ― ― ― ― ― ― ―
8 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:53:40.09 ID:Y+mHczzv0

― ― ― ― ― ― ― ― ―



現在、俺とヴァンピィを乗せたグランサイファ―はファータグランデ空域を飛行中。

星晶獣を利用する機関を潰すため、ポートブリーズへと向かっていた。

「...星晶獣が既に汚染されてたらどうするの?」

「そうだね、ルリアはもういないから。殺すしかない」

「ふぅん」

「ヴァンピィは船で待ってていいよ。あまり気持ちのいいものじゃないし」

「ううん。私は眷属のご主人様ですから」

「そうか」

「うん。だから一緒にやってあげる」

「そりゃ頼もしい」
9 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:54:33.09 ID:Y+mHczzv0

グランサイファ―を適当な場所に停泊させ、俺達はポートブリーズ群島の中の一つへと降り立つ。

目指すは、ウワサの研究機関。

「そこって遠いの?」

「ううん、もうすぐだよ」

森の中を少女と少年はてくてく歩く。

傍から見たら仲のいい兄弟のピクニックといったところだろうか。

「ほら、見えたよ」

「へー、おっきいんだね」

そこには、長閑な森に似つかわしくない研究施設が立ち並んでいた。

表向きは自律兵器の開発施設らしい。

「じゃあ私が見てきてあげる」

少女はそう言った後に、腕を一振りすると蝙蝠を出現させる。

所謂、使い魔というやつだ。

「行っておいで」

蝙蝠は彼女の命令を聞きぱたぱたと研究施設へと飛んでいく。

「どう?星晶獣、いた?」

「うーん...ちょっと待って...あ!いたよ」

「やっぱりか、どう。まだ正気を保ってる?」

「...ダメ、かなぁ」

少女は目を伏せ首をふるふると振ってそう答えた。

ならばここからは俺の役目だ。

その辺りに転がっていた木の枝を手に取り呪文の詠唱を開始する。

第一節、詠唱完了。

二節から四節までの全工程を省略。

「エーテルブラスト]Y」

強大な魔力の一撃を生み出した木の枝は塵へと還る。

その直後、魔弾は目の前の研究所群に着弾し、その悉くを塵へと還した。

「状況終了」

今は亡き最強の狙撃手の口調を真似てそう呟く。

「船に帰ろっか」

「ああ」

「ヴァンピィちゃん今日はスパゲッティが食べたいな」

「...ガチ目にウマい系の作っちゃいますかー!」

「ローアイン兄ちゃん。懐かしいねぇ」

「ああ、本当に」
10 : ◆a/CmvfV8ng [saga]:2016/06/09(木) 18:55:15.98 ID:Y+mHczzv0

***



科学が進化しどれほど便利な世界になろうと、人間は進化しない。

星晶獣を手に入れたら、それはもうひどいことに利用する。

そんな世界を許せなかった俺達は。いや、俺は...か。

全空域を飛び回り、いつしか【全空の抑止力】なんて呼ばれるようになった。

抑止力としての活動を続けて何年経っただろうか。

あと何百年、これを続ければいいんだろうか。

なんてことをぼんやり考えていた。

「ねぇ、眷属?」

それを見透かしたかのようにヴァンピィは俺の隣に腰掛ける。

「どうしたの?」

「いつになったら、終わりが来るのかな」

「きっと終わりは来ないよ」

「私達にも、ニンゲンの争いにも?」

「ああ。絶望したかな。この世界に」

「うん。ゼツボーした」

「そっか」

「死にたいねぇ」

「そうだなぁ」

「死ねたらいいのにね」



おわり
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/09(木) 19:36:07.10 ID:GyhRi4pJO
おつおつ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/09(木) 19:36:28.28 ID:FXUpgt1D0
おつ でもちょっと続きみたい
13 : ◆a/CmvfV8ng :2016/06/09(木) 20:47:00.39 ID:jI+CmxiIO
ありがとうございました。
続きは気が向いたらですかねー。
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