勇者「ハーレム言うなよマジで」戦士「5だぞっ!」

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243 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:01:07.70 ID:TrhsX2e50
勇者「で、でも町並みすっごく綺麗なんですけど!?」

スー勇者「人もいっぱいいます……!建物も高いです!」

あらくれ「あっはっは!!驚いたろ!いい町だろ!?」

勇者「え、嘘でしょ?じゃないとこんな」

あらくれ「ところが嘘じゃないんだなこれが。まあ不本意ながら国連の援助もあったみてえだが」

あらくれ「なにより町長がすげえのよ。凄腕で頭のキレるお人でな」

あらくれ「ここに町を作りたかった副町長と旅の途中の町長が一年前に出会ってこの町を創りあげたワケさ」

勇者「はー……すっごいなあ」


ガヤガヤ


勇者「うお、市場凄いですね?」

あらくれ「だろ?この町はあの市場から始まったようなもんよ」

あらくれ「町長が制度を全て取り決めてなあ。それがまた画期的で」

勇者「町長さんは凄い人なんですね」

あらくれ「おうとも!!自慢の町長さ!」

勇者(凄く嬉しそうに話すなあ)


スタスタ……


あらくれ「……ただ、最近少し不安でな」

勇者「不安?」

あらくれ「ちょっとその町長の評判がよろしくねえのさ」

あらくれ「俺はこの町には結構最初の方から居るが、新し住人が増えだして不満もいろいろ増えてなあ」

スー勇者「不満です?」

あらくれ「いろいろあるのよ、お嬢ちゃん……ま、最初は気のいい大工と行商人が殆どだったしな」

あらくれ「それがいつしかぞろぞろと……住人も俺が来た時は10人だったのが今や500人だぜ」

勇者(あ、住人自体は凄く多いわけでもないんだな)

あらくれ「町長は町を大きくしようと頑張ってるんだが……そうも思わない奴らもいてよ」

あらくれ「変な噂が沢山湧いてんだ……」

勇者「どんな噂なんですか?」

あらくれ「根も葉もないもんさ。この町の金使って宝石買い漁ってるだの、うまいもん食ってるだの」



あらくれ「町の金使ってくだらねえ骨董品買っただの」



勇者・スー勇者((わお))


244 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:01:58.24 ID:TrhsX2e50
あらくれ「ん?どうした?」

勇者「いえいえいえ、なんでもないです」

スー勇者「なんでも!なんでもです!」

あらくれ「?」

勇者(え、まさか……渇きの壷の買い手って)

あらくれ「って、気付けばくだらねえ事喋っちまった……忘れてくれ」


ザッ


――立派な建物――


あらくれ「さ、着いたぜ」

勇者「おお……立派だ」

あらくれ「へへ!だろ!大工の連中が……ってもうこのくだりはいいんだよ」

スタスタ

ガチャッ

あらくれ「オラ、入れ」

勇者「は、はい……行こう。スーちゃん」

スー勇者「はい」


スタスタ


勇者「あの、ここは?」

あらくれ「ここがこの町の役場だ」

勇者「役場……立派だけど人が居ないですね」

あらくれ「ここで働いてんのは5人くらいだからな。お。ここだ」
245 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:02:26.85 ID:TrhsX2e50

ガチャッ


あらくれ「うっす!失礼します!」


勇者(ここに町長が……!)



「……何、あった」



勇者「!」

スー勇者「っ……!!!!」



あらくれ「コソ泥を捕まえたぜ!」






老人「おお、偉い。お前、ご苦労」





勇者(この人が町長……!?あまり見かけない人種だ)

勇者(って、え……?この訛り方って)
246 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:02:54.62 ID:TrhsX2e50


スー勇者【大爺様!!!?=z


勇者「えっ!?」

あらくれ「あん?」


大爺「ん……?……っ!!!!?」

ガタァッ!!

大爺【スー勇者!!!?スー勇者ではないか!無事であったか!!!=z

ダッ

ガシッ!

スー勇者【お久しぶりです大爺様!お元気でしたか!?=z

大爺【おお、おお……私は元気だったよ。良かった、お前が無事で……!=z

スー勇者【心配かけて本当にごめんね……でも、私は大丈夫!=z


<……!……!


勇者「やっぱり、スー人だったんだ……」

あらくれ「えっ……?副町長、その嬢ちゃんお知り合いかい……?」

大爺「そう。私の村、大事な子」

勇者(あれ、副町長?町長じゃないんだ?)

あらくれ「すっ、すまねえ!!!俺とした事が乱暴に……今すぐ解くぜ!!」

シュルシュル

大爺【この男も悪い者じゃないんだ。許してやっておくれ=z

スー勇者【平気だよ!それにいい人だっていうのも分かっていますよ=z

勇者(うーん、なんかスーちゃんが地元語で喋っているとさみしい……)

あらくれ「よし!解けたぜ!すまなかったな嬢ちゃん!」

スー勇者「いえ!」

勇者「……あの……」

あらくれ「あん?」

勇者「僕はまだ解いてもらってないんですけれど……」

あらくれ「なんでてめえのまで解かなきゃなんねえんだよ」

勇者「あ、やっぱり?」
247 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:03:25.05 ID:TrhsX2e50
スー勇者「こ、この人もいい人です!」

あらくれ「あんたは副町長の知り合いみたいだったが、こいつは違うしなぁ」

あらくれ「それに……」

勇者「?」

あらくれ「……いや、なんでもねえ」

あらくれ(さっきのあれは、尋常じゃねえ殺気だった)

あらくれ(こいつは危険な気がする)

勇者「あの……?」

あらくれ「っ、とにかく。てめえの処分は町長が決める。さっきも言ったがなあ」

グイッ

あらくれ「おら。付いて来い」

勇者「あうっ……わかってますってば」

スー勇者「わ、私もいくです!」

大爺「私も、行く」

あらくれ「いえ副町長はここで嬢ちゃんと喋ってても」

大爺「……この子、その男、心配、してる」

スー勇者「うー……」

あらくれ「……はあ、勝手にしてくれ」

スタスタ

あらくれ「町長はこっちの奥の扉で仕事してる」

大爺「多分、仕事、落ち着いた、思う」

あらくれ「もうそろそろ国連の連中と会わなきゃいけねえみてえっすしね」

あらくれ「本当、体こわさねえか心配だぜ、ったく」

勇者「……本当に慕ってるんですね」

あらくれ「何回も言わせんな恥ずかしい」
248 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:04:12.91 ID:TrhsX2e50


ザッ

あらくれ「さ、ここだ」

勇者「っ」ゴクリ


勇者(さて、こっからが正念場だ)


コンコン

あらくれ「町長!入らせてもらうぜ!」


勇者(まず何も取って無いって証明……いやそういえばリンゴ食べちゃったな)

勇者(その分の支払いはするって事と、国連から隠れてできる仕事ならなんでもするって事を伝えておきたい……)

勇者(もし国連とあまり良い関係じゃないのなら多分そのあたりは)




「はい。どうぞ」




勇者「――――…………」


勇者(……あ、れ?)


スー勇者「?……ご主人様?」


ガチャッ


あらくれ「っし。ほら。とっとと入れ」
249 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:05:04.52 ID:TrhsX2e50


スタスタ


勇者「………………」


あらくれ「よっす!おはようございます町長!」


大爺「おはよう、良い朝、来た」


スー勇者「お、お邪魔しますです……」



カリカリ



「ちょっとまって下さいね。今一段落つきますから」


あらくれ「あんまり根詰めすぎるなよ?体壊すぜ?」


「お気遣いありがたいですね。でも今が頑張り時ですから。で、どうしたんです?」


あらくれ「いやよ、実は倉庫でコソ泥みてえなのを捕まえてよ」


スー勇者「ですから!泥棒違うです!」



勇者「………………………………」



カリカリ… パタン


「はい、失礼しました」


スッ


「で、どちらが泥棒の――――…………」




「………………………………………………えっ……………………?」




250 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:06:14.09 ID:TrhsX2e50









勇者「何やってんの…………商人……?」






商人「勇、くん…………?」








251 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/08/18(木) 00:06:51.48 ID:TrhsX2e50


今日はおしまいです

http://i.imgur.com/bPGd9m5.png

252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 00:42:14.67 ID:Vp5nx0oE0
乙でございます
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/18(木) 00:55:01.30 ID:kDj1JQGe0
おつです
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 03:54:15.36 ID:zqNANkk4O
おつ
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 04:20:21.00 ID:wegd74bg0
おつ
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 08:45:47.30 ID:bsEGkiUzo
おつー
商人ちゃんめっちゃかわいいじゃないですかやだー!!
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 15:39:35.20 ID:YGDmqxcR0
ここでこのイベント来ましたかー
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 19:04:05.48 ID:TMSznYX7O
>>1がまた絵を書いてくれて嬉しい
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 20:41:39.36 ID:ncQG87N+0
久々だ、スーちゃんも見たい
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/20(土) 23:50:51.36 ID:MoOvALvDO
商人ちゃんカワイイ!!
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/07(水) 00:09:43.83 ID:fGbAilUn0
そろそろ来て欲しい
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/10(土) 11:34:45.04 ID:7TPcJkzU0
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/11(日) 19:47:08.65 ID:UEXhRvJk0
せっかく商人ちゃんの画像らしいのに…!
ページが……っ、開かないなんて……!
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/13(火) 23:32:40.43 ID:upZGWgrPo
乙でした!久々に戻ってきたら面白いことに…また楽しみに待ってます!
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/14(水) 22:27:57.71 ID:tkh0B/Ubo
乙ですー

>>263
普通に見られるけど?
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 12:25:02.55 ID:MwhuZE5L0
商人ちゃんかわゆい
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/26(月) 01:59:21.01 ID:gsYWGVRH0
乙 その一から読んできた
268 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/09/28(水) 22:29:29.28 ID:vPM+LqBw0
…………


ザザァン…


戦士「しっかしさあー」


――エジンベア・国境前――


スタスタ

戦士「なんであんなに商船が多かったんだ?」

僧侶「んー、もしかして祭りかなにかあるんでしょうか」

魔法使い「とにかく、いまはエジンベアにぶじにはいることをかんがえないとねえ」

武道家「それだったら大丈夫よ。ポルトガ王から令状貰ってるから安心なさい」

ポルトガ姫「そうっす。一応私も一緒っすから、皆さん護衛って体でお願いしますね」

ガシャッ ガシャッ

遊び人「うー……甲冑の中鉄臭いよう」

盗賊「……ちょっと我慢しててね……」

戦士「遊び人は顔バレるとまずいからさ」

ガシャッ ガシャッ

女勇者「御付の人間が女ばかりだと色々と怪しまれるかもしれないからね」

武道家「……なんでアンタまで甲冑を?」

女勇者「…………いや、えっと……ほら。1人だけってのもあれじゃないか」

ポルトガ姫「まあとにかく、これまでも何度かこうやって訪れてるんで安心してくださいっす」

魔法使い「けっこうきたことあるの?」

ポルトガ姫「はい!この国の人間はムカツク奴多いんすけど、お姫さんとだけは仲いいんすよ!」

僧侶「ムカツクって」

ポルトガ姫「まーそれは入れば分かる事っす……とにかく急ぐっすよ。あの城の宝物庫、別名泥棒博物館なら何か手がかりが――……」

戦士「……」

ポルトガ姫「って戦士ちゃんどうしたっすか。港のほうじっと見て」

戦士「んー?ああ、ちょっとな」

戦士「商船、か」

戦士「商人…………ちゃんと無事かな」

女勇者「……」

遊び人「……ん。当たり前よ。あの商人だよ?」

武道家「今は目先の事を考えましょ」

戦士「……うん」
269 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/09/28(水) 22:30:01.67 ID:vPM+LqBw0
…………
……






――ガルナバーグ・町長室――




スー勇者「えっ、えっ」

大爺「なに……?」

あらくれ「……あれ?」



勇者「……」


商人「……」



あらくれ「…………お知り合い、だった?」


勇者「え、だって……え?皆と旅してたんじゃ」

商人「……」

勇者「それに、町長って、えっ……えぇ?」

商人「……」

勇者「えっと、えっと」

ゴホン

勇者「と、とりあえず。久しぶり。商人」

商人「……」

勇者「…………商人?」


ギリッ…


商人「……なんで、このタイミングでっ……」ボソッ



勇者「え?」

あらくれ「おいおい、町長!お知り合いだったのかよ!俺とんだ失礼を」

商人「あらくれさん」

あらくれ「ん?何だ?」

あらくれ「あっ!縄か!?すまねえ!今解いて」

商人「縄はそのままで構いません」

勇者「エッ」

あらくれ「え?」




商人「その男を牢にぶち込んでおいてください」




勇者「あれれ?」



270 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/09/28(水) 22:31:58.85 ID:vPM+LqBw0
今日はおしまいです
週末に纏めて投下します
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/28(水) 22:52:25.32 ID:qIsEP1tDO
おつおつ
週末が楽しみ
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 06:42:14.29 ID:Mlfg0VqSo
おつー
週末楽しみにしてるけど無理はしないようにね
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 19:10:47.63 ID:u4mEcJ8t0

勇者よ・・・;;
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/30(金) 20:58:33.82 ID:A5Z4TXBs0
乙でございます
275 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:08:55.65 ID:/Kpz+n1R0
あらくれ「えっ!?でも町長」

商人「いいですから。ぶち込んでおいてください」

勇者「ちょっ、ちょっと待って商人!?なんで」

ガタッ

商人「さて、仕事も一段落着きましたし。私は国連の方々に挨拶しに行かないといけません」

商人「副町長。ではここはお願いします」

大爺「あ、ああ」

スー勇者「ちょっと待ってくださいです!」

商人「なんです?」

スー勇者「ご主人様は何も悪い事、してないです!許してください!」

商人「…………ご主人様?」

スー勇者「はい!」

商人「ご主人様って誰の事です?」

勇者「…………僕です」

商人「…………」

スタスタ

商人「あらくれさん。そのクソペド犯罪者を牢に。いいですね?」

あらくれ「お、おう」

勇者「ちょっと待ってえ!!!?クソペドって、誤解――……」


バタン!!


勇者「商人!商人ってば!!」

グイッ!

勇者「あぐっ!?」

あらくれ「……悪いが、牢にぶち込ませてもらうぜ」

スー勇者「そ、そんなっ」

あらくれ「安心しな。嬢ちゃんを牢にぶち込む命令はされてねえからな」

スー勇者「でもご主人様が!」

勇者「……いや、いいんだ。スーちゃん」

スー勇者「ご主人様!?」

勇者「ここは一旦従おう。あらくれさん、お願いします」
276 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:09:22.55 ID:/Kpz+n1R0
あらくれ「なんだ?素直じゃねえか」

勇者「一応、あいつの事は信用してるんで……ああなったら梃子でも意思を曲げませんし」

勇者「……逆らったら、怖いですし」

あらくれ「せ、せやな」

グイッ

あらくれ「よし、それじゃこっちだ。付いて来な」

スー勇者「待ってください!」

勇者「スーちゃん。大丈夫」

スー勇者「っ……!」

勇者「すぐ戻るよ。待ってて」


…………
……





……
…………


――ガルナバーグ・裏通り――

スタスタ

勇者「……しっかし、ほんとにできたばかりの町とは思えませんね」

あらくれ「立派なもんだろ?大工も腕のいいのばっかだからな」

勇者「はい……でも」


ヒュゥゥゥ……


勇者(……なんだか、裏通りは……あまり良い感じの雰囲気じゃ)

ザッ


――牢場――


あらくれ「ここが牢場だ。ほら。入れ」
277 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:09:51.47 ID:/Kpz+n1R0
…………



ガショォオン


ガチョッ


あらくれ「これでよしっと……んじゃ、大人しくしとけよ。俺は倉庫番に戻るからな」

勇者「あの、ちょっといいですか?」

あらくれ「あん?」

勇者「商人と……いや、町長と国連の話し合いやらってどのくらいで一段落つきそうですかね?」

あらくれ「さあなあ……。噂じゃ港の宿でお偉いさんが数日泊まるって話だしなあ」

勇者「そうですか……」

あらくれ「……なあ、お前町長のなんなんだ?」

勇者「え?」

あらくれ「あんな町長始めて見たぜ。まるで年相応のガキんちょみたいにむくれ顔して……」

勇者「……」

あらくれ「……?なんか言えよ」

勇者「僕は」

あらくれ「お?」

勇者「…………あいつの、足枷みたいなもんです」

あらくれ「…………はあ?」

勇者「まあ、昔からの知り合いですよ。それだけ」

あらくれ「……まあいいけどよ」

スタスタ

あらくれ「とにかく大人しくしてろよ。そんじゃ見張り番。ちゃんと見張ってろよ」

見張り番「まっかせろい」

スタスタ…

勇者「……」

ゴツン

勇者「……ふぅ……」

勇者(まだ頭ん中ごちゃごちゃしてる……いろいろありすぎだよ)

勇者(とりあえず国連の人たちからは逃げ続けないといけないし、ここに居たら少しは安全かな)


…………
……

278 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:10:18.16 ID:/Kpz+n1R0

―――――――――――



スタスタ


商人「……」


秘書「……町長」

商人「なんです?」

秘書「大丈夫ですか?」

商人「なにがです」

秘書「いや……なんだか苛々してるように見えたので」

商人「それより秘書さん、国連の方々は?」

秘書「先ほど搬入は終了したそうです。搬入船に同乗していた勇者の方々も大聖堂に移動したとの事です」

商人「そうですか。では急ぎましょうか」

秘書「しかし、予定では会合は昼の筈でしたが……何故到着がこんなに早く」

商人「それは、恐らく最後のお客人がいらっしゃるのが昼になるからだと思います」

秘書「……あの方ですか」

商人「とにかくまずは大聖堂へ行って現在いらっしゃってる方々に挨拶をしましょう」

商人「それとエジンベアからの搬入物も確認しなければなりません」

秘書「はい」


…………


――大聖堂――



ダーマ勇者「それにしても……大きな大聖堂ですね……」

エジンベア勇者「もうおおかた建設も終わってそうだけど……まだ手を加える所があるのかねえ」

ダーマ勇者「まだルビス様の聖像もありませんし、クロスが掲げられているだけですが……それでも凄いです」

エジンベア勇者「さて、それじゃ町長さんが来る前にちょっとだだけ今後の事話そうか?」

ダーマ勇者「今後の事ですね?」

エジンベア勇者「ああ。君とボクの今後の関係を――……」

ダーマ勇者「エジンベア勇者様!!ふざけないでください!!」

エジンベア勇者「おおう怖い怖い。悪かったよぉ」

ダーマ勇者「もう……」

ゴホン

エジンベア勇者「とりあえず、全員揃って国連の方針を明日の朝に話し合う」

エジンベア勇者「そこで国連関係の物資の運搬交渉も町長さんに説明して納得してもらう」

ダーマ勇者「納得されなかった場合は?」

エジンベア勇者「納得してもらうのさ」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「そしてその後、5日後にポルトガへこの船を向かわせる」

エジンベア勇者「その際は君が代表としてこの船を率いておくれ」
279 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:10:46.23 ID:/Kpz+n1R0
ダーマ勇者「え?私1人ですか?」

エジンベア勇者「ああ」

ダーマ勇者「なぜです?エジンベア勇者様は」

エジンベア勇者「僕やあの方は2日後に別の任務さ。勇者は君1人になる」

ダーマ勇者「でも……今回は私の部下は1人も居ませんし、務まるでしょうか」

エジンベア勇者「大丈夫さあ、なんたって乗り合うのは全員サマンオサ兵。ストイックで従順な奴らばかりだよ」

ダーマ勇者「……そう、ですね」

エジンベア勇者「不安そうだね?」

ダーマ勇者「い、いえ!大丈夫です!」

エジンベア勇者「とにかく、任せたよ」

エジンベア勇者「まあ、ポルトガに運ぶ予定のスー方面で調達できる物資が整うのが4日ほどかかるらしいからねえ」

エジンベア勇者「それまではゆっくりしてなよぉ。普段から君は肩の力張りすぎなんだし。さ」


ガロォン…


ダーマ勇者「!」

エジンベア勇者「おっと、いらっしゃったね」


スタスタ


商人「遠い船旅、ご苦労様でした。御二方」


ダーマ勇者「お疲れ様です。はじめまして、ダーマ勇者と申します。以後お見知りおきを」

商人「町長の商人です。お会いできて光栄です」

商人「……それと」

スタスタ

エジンベア勇者「こんにちはぁ、お久しぶり……といっても買取の話し合い以来だからそうでもないかな?」

エジンベア勇者「とりあえず今日も美しいですね町長さん……」

商人「こんにちは。どうも」

エジンベア勇者「いやあ、慣れない町に来て少し不安でして……どうでしょう、もしよろしければ私にこの町を案内していただけませんか?……二人きりで」

商人「ああ、それは構いませんよ」

エジンベア勇者「本当ですかあ!?」

商人「工事休憩の屈強な男共が暇を持て余してるんで、その人たちの中の誰かに」

エジンベア勇者「あ――でも考えたら視察を兼ねて自分で練り歩いた方がいい気がしますね?」

商人「それが一番かもですね」ニコー
280 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:11:13.88 ID:/Kpz+n1R0
……………………


――牢場――


ピチョン……  ピチョン……


勇者「……はあ」

勇者(なんか慨視感感じるなこの状況……あの時より全然待遇はいいけど)

勇者(しばらくは我慢だ。商人がここに戻ってくるまでは)

ぐぅぅぅ……

勇者「……」

勇者(お腹へった……そういやスーちゃんは何してるだろう……ちゃんとご飯食べたかな)


見張り番「おう坊や」


勇者「え?あい、はい?」

スッ

見張り番「暇だし、トランプで札遊びしようぜ」

勇者「……いいんすか見張りのお仕事は」

見張り番「一日牢に張り付いて退屈してんだよお。バチはあたらねえだろ?」

勇者「じゃあ、お言葉に甘えようかな」

勇者(丁度色々聞きたい事もあったし)

見張り番「流石にお前さんの手縄は解けねえし、牢越しだから、プリミエラ以外の遊びでもすっか」

勇者「何します?まあどの遊びでも大抵強くないですけど僕……」

見張り番「んじゃ“神と豚”だ!ルールは分かるな?」

勇者「まあ、一応は」


パサッ パサッ


見張り番「いやー、この仕事ぁ暇で暇でしょうがねえんだ。お前さんが来てくれてありがてぇよ」

勇者「そんなに暇なんです?」

見張り番「まあな。めったに罪人なんてこねえしな。お前さん何やらかしたんだ?」

勇者「……一応、無賃乗車……?と、窃盗……かな」

見張り番「あはははは!二つもやらかしたのかよ!欲張りだなあ!」

勇者「やりたくてやったわけじゃないもの!」
281 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:11:41.17 ID:/Kpz+n1R0

…………


バシッ!


見張り番「っしゃ!トイトイのテッペンだ!」

勇者「うぐっ……!」

見張り番「ははははは!お前さん本当に弱ぇなあ!?」

勇者「だから言ったじゃないですか……昔から弱いんですよ札遊びは」

勇者「それこそあの商人……この町の町長にはボロクソに負かされてるんですよ。今までに」

見張り番「なに?じゃあお前さん町長の知り合いなのかよ?」

勇者「一応、幼馴染です」

見張り番「……なんで幼馴染が町長やってる町で犯罪やっちまったんだ?」

勇者「成り行きです……」

見張り番「しかしそうかぁ、町長の知り合いねえ」

勇者「……あの」

見張り番「あん?」

勇者「ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか」

勇者「その……町長の事」

見張り番「お聞きするも何も、幼馴染ならてめえの方が詳しいだろうよ」

勇者「いえ、あいつが町長になってからの事です」

勇者「ちょっと小耳に挟んだんです。……悪評の事とか」

見張り番「……」

勇者「……あれって本当なんですか?」

見張り番「……んー……さあな。どうかしらん」

パサッ

見張り番「ホラ。次お前が裏返す番だ」

勇者「あ、はい」

ペラッ

見張り番「……ブタだな」

勇者「ぐぅ」

見張り番「……お前、窃盗と無賃乗車だったっけか?」

勇者「?あ、はい?はい」

見張り番「俺は殺し」

勇者「……え?」


見張り番「俺は、殺し。人間を1人殺したんだよ。前になあ」

282 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:12:15.42 ID:/Kpz+n1R0
勇者「……!?」

見張り番「まあ、殺しっつっても好きでやったんじゃねえ」

見張り番「ちょっと酒場で酒飲んで、喧嘩売られて……取っ組み合いをしてたら、割れたビンがそいつの喉にグサ。だ」

見張り番「小せえ村だから教会も遠い、再生呪文使いもいない。少し経ってそいつは死んだ」

見張り番「すぐにその村を統治している国のお上さん方にに突き出されて、豚箱に入った」

見張り番「出所しても居場所もクソもねえ。惨めだったよ。人を殺した事があるヤツなんてどこも居さしちゃくれねえ」

勇者「……」

見張り番「でもな、町長はそれでも拾ってくれたんだよ」

見張り番「こんなもうお先真っ暗の俺でもあの人はかまわねえって拾ってくれたんだ」

見張り番「だから俺ぁあの人に恩がある。あの人の悪評なんざ聞きたくもねえ」

勇者「それじゃ……」


見張り番「でもな」


見張り番「“殺人の前科持ちを軽く雇う人間”だからこそ……その悪評も、脳みそん中に居座ってる」


見張り番「『俺みてえなのを雇ったのはそういう悪事を働く時に切りやすいから』とか、なんじゃねえかってな」


勇者「……!」

見張り番「……なあ。逆に聞かせてくれよ」

見張り番「町長は、そんな事する人じゃあねえよな?」

見張り番「あの悪評は馬鹿な奴らのホラでいいんだよな……?」

勇者「……」

見張り番「……」

勇者「……この一年、あいつから離れていたので……状況は分かりませんが」


勇者「あいつは悪い事なんて絶対しない。それは確実です」


見張り番「……本当か?」

勇者「はい。まあ、悪い事の基準は人それぞれでもあるんですが……」

見張り番「……へへ」

見張り番「そうか。良かったぜ。それ聞いて安心した」

勇者「安心してください。悪評の内容と真実がどうあれ、あいつが皆さんを陥れる事なんてないですよ……っと!」


パサッ


勇者・見張り番「……」


……。


見張り番「…………出すのが難しいくらいの、ブタだな」

283 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:12:43.30 ID:/Kpz+n1R0

――――――――――――――



バタアァン!!!!



「町長!!!!町長!!!!大変です!!!!!!」



――大聖堂――



ダーマ勇者「!!?」

エジンベア勇者「なんだなんだ?」

商人「どうしたんです!?一体何が――……」


「港……!港に!!」




――ガルナバーグ・港――



ザワザワ……!!!


ズザッ!!


ダーマ勇者「……っ!?これは……!!」




バシャバシャバシャバシャ!!!!!



水中魔族「「「「「「ギャア!!!!!ギャア!!!!」」」」」」



エジンベア勇者「うへぇっ……!?なんだこの数の魔物達は……!!!?」


ビョンッ!!!

水中魔族「グギャアアア!!!!」


エジンベア勇者「ってうわあぉっ!!?」チャキッ!!


ズバァァン!!


水中魔族「グエエッ!!!!」


水中の魔物を倒した!


ビチャビチャッ!!


エジンベア勇者「っ!磯臭っ!!ちょっとちょっと、こいつら港に飛び乗ろうとしてるよ!!?」
284 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:13:11.78 ID:/Kpz+n1R0
秘書「なんですか……!?この事態は」

商人「こんな事いままで一回も……!!!!」

ダーマ勇者「……」

ダーマ勇者(……なんだろう)


バシャバシャバシャ!!!!!


ダーマ勇者(みんな、何かから逃げようとしているような……)


ジワ…


ダーマ勇者「…………え」



「うわああ!!!?」


「赤潮!?じゃない!これ血だっ!!!!」


「海が真っ赤だ!!」




オォォォオォォォオォォォォ……




商人「……嘘、でしょう……!?」


商人(こんな大量の血……一体……)

商人(ここに集まってる水中の魔族はほとんど二次魔族みたいですし、二次魔族は血はこんな色じゃない)

商人(このあたりに住む水中の一次魔族は……クラーケンくらいしか)


「おい!あれ見ろ!!」


「人だ!!!」




「沖の方に、小舟に乗った人間がいる!!!!」




商人「えっ!!?」


ダーマ勇者・エジンベア勇者「「!!?」」
285 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:13:39.51 ID:/Kpz+n1R0



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



ダーマ勇者「んぇ?」

エジンベア勇者「?何の音だい?これ」


商人「……!!!皆さん!!!港から離れて下さい!!」


エジンベア勇者「えっ!?何々!?何がおきたんです!?」

商人「大きい波が来ます!!」


ゾゾゾゾ


商人「おそらく、あの沖のほうから……ッ!!」



ズザザザザザザザ



商人「クラーケンが…………こっちに!!!!!」



ザパアアアアアアン!!!





クラーケン「ゴガアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」





ダーマ勇者・エジンベア勇者「「嘘オオオオオオ!!!!?」」


「みんな!!坂の上に逃げろ!!」


「このままじゃでけえ波が来るぞォ!!!」


「でも沖の方に小舟がっ」


エジンベア勇者「くそぉっ!!なんだってこんな所までクラーケンがっ!!!」

ダーマ勇者「……」

エジンベア勇者「ちょっとダーマ勇者!!!早く港から」

ダーマ勇者「……あの人、剣を」

エジンベア勇者「え?」
286 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:14:14.24 ID:/Kpz+n1R0






クラーケン「ゴギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」






「…………一つ」






キィィィィィン





「二つ」





キィィィィィィィィン





「さらばよ、さらば」







クラーケン「ゴギュッ」







ゾンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



ゾンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






ドパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!






287 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:14:45.87 ID:/Kpz+n1R0



ザザァッアアアアン!!!!!



バシャアァァッ!!! ザパァァァン!!!!!





商人「……」



ダーマ勇者「……」



エジンベア勇者「……」



「……え……あ?」


「今、何が……?」


「お、おい見ろ」



ザザァン…  ザザァン…




「さっき居た魔物達が、全部くたばってる」


「真っ二つだ……全部。いつの間にか」



エジンベア勇者「…………あのイカも」


エジンベア勇者「この、水中魔族たちも……逃げてたんだ」


エジンベア勇者「……あの人から……」



ダーマ勇者(剣一振りで、二刃の破壊の風を呼ぶ)


ダーマ勇者「…………噂どおり、です」





商人「………………あの人が」




288 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:15:14.00 ID:/Kpz+n1R0




ジャキィン!!!!




「この海域の主と聞いてわざわざ海路を選びはしたが……」



「なんとも、つまらない事でありますなあ」



「まあよろしい」



――――――――――――





商人「……“皇帝”――糾えるソクラス」





――――――――――――





ソクラス「幕はこれから上がるのだから」





289 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/10/08(土) 01:15:42.25 ID:/Kpz+n1R0
今日はちょっと一旦おしまいです
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 23:01:29.65 ID:wgrdpI1dO
更新キテター!
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/09(日) 04:57:08.20 ID:OnyOquMa0
おつ
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/09(日) 12:10:27.26 ID:6BKga+800
乙どす
ソクラスとかめっちゃマイナーな奴がこんな登場してくるとは・・・
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/10(月) 14:26:32.48 ID:e6+ay2oR0
乙でございます
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 14:47:23.52 ID:rQncDdhNo
乙です
なんでソクラスが強いのだww
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/30(日) 17:03:46.15 ID:RcjMlzZBO
相変わらず戦闘描写はよくわからんな
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/04(金) 18:42:54.55 ID:+ylmxNJk0
そろそろ書きに来て欲しいのだが
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/05(月) 06:05:22.78 ID:Nn+ZBeTK0
2ヶ月経過
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/06(火) 19:54:06.26 ID:nQ9tB2dq0
楽しみにしてるんだがな。。。
299 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:42:26.51 ID:3m9Dnx6p0


……
…………


ギィ…

ゴトン

ソクラス「さて、舟はここいらによせればよいかな」

スタスタ

ソクラス「む?」


商人「ご足労頂きありがとうございました」


エジンベア勇者「御初にお目にかかります」


ダーマ勇者「船旅、お疲れ様ですソクラス様」


ペコッ


ソクラス「おやおや、なんとまあ。皆さん礼をご丁寧に」

スタッ

ソクラス「うむ。地面が恋しかった」

ザッ!


ソクラス「……ソクラスと申します。以後お見知りおきを」



…………


スタスタ

ソクラス「なんとまあ、綺麗な街である事か!これでまだ一年も経っていないとは驚きだ」

商人「有難いお言葉です」

ソクラス「いやはや、私も世界中を旅してきたが、これほど立派な港町は見かけた事は少ない」

商人「ソクラス様ともなれば、様々な港町をご覧になってこられた事と思いますが」

ソクラス「ええ。それはもう。その私が保証しましょう」

商人「ふふ、ありがとうございます」


<……。……。


ダーマ勇者(この方が……生ける伝説の1人、ソクラス様)


エジンベア勇者(魔王バラモスと対峙して、生きて帰ったただ1人の人間)
300 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:42:54.99 ID:3m9Dnx6p0
商人「ここまであの小舟で?」

ソクラス「ああ、そうなんです。どうも海路に海の主が立ち塞がる事件を聞きまして」

ソクラス「陸に飽きてきた頃だったのでね。小舟旅ついでに退治をと」

商人(……長い海路を1人で漕いで来たって事ですか)

ダーマ勇者「先ほどは御見事でした。あんな数の魔物を一斉に倒してしまうなんて」

ソクラス「いやいや、御恥ずかしい所を見られてしまった」

エジンベア勇者「しかし、そのお強さでしたら……未だ最前線で戦われても」

ソクラス「それがそうもいかなくてね」

スッ


商人・ダーマ勇者・エジンベア勇者「「「!!!」」」



フルフル…


ソクラス「……もうこの体では、あの戦いのみの負担さえも支えきれない」


ダーマ勇者「だ、大丈夫ですか!?」

ソクラス「お気になさらず。安静にすれば明日にはまた震えも治まる」

ソクラス「あの日……バラモスとの戦いの後遺症は未だこの齢になっても体を蝕んでいるのだよ」

ソクラス「最早戦線に出ても碌に戦えはしない……情け無い事にね」

ダーマ勇者「……!」

エジンベア勇者「……申し訳ありません。出すぎた事を」

ソクラス「ははは、やめませやめませこんな話は」

商人「一先ず、宿にご案内します。そこでどうか一旦休まれて下さい」

ソクラス「ああ。どうかお願いいたします」

商人「もし落ち着かれたら大聖堂に席を用意しておりますので」


ソクラス「ええ。そこで……色々とお話を伺いものですな」


商人「…………ええ、よろしくお願いいたします」

301 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:43:22.42 ID:3m9Dnx6p0
…………


見張り番「んっ……〜〜っと!札遊びも少し休憩すっか」

勇者「すんません弱くて……」

見張り番「ちっと休んだら運も上がってくるかもしんねえぜ?へへっ」


ギシッ


勇者「ふう……」

勇者(疲れた……目がしぱしぱする)

勇者「……」チラッ


<……


勇者(……窓から入ってた陽がもう見えない)

勇者(昼過ぎちゃったか……スーちゃんなにしてるかな)

勇者(…………それに、商人……国連の勇者達と何を話すんだろう)

勇者(あの壷の話なのかな……骨董品を買ったのが商人ならあるいは……でも商人はなんの為に)


スタスタ


勇者「ん?」

見張り番「お?」


スー勇者「ご主人様!」

大爺「……」


勇者「スーちゃん!と、副町長さん?」

見張り番「どうしたんすか副町長?」
302 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:43:49.44 ID:3m9Dnx6p0
大爺「もう、この男、出す」

見張り番「え?こいつを?」

勇者「え!?」

大爺「この檻、あける、しなさい」

見張り番「へ、でも……」

大爺「はやく」

見張り番「わ、わかりやした」


ガチャッ


見張り番「ほれ。出な」

勇者「え……い、いいんですかね」

見張り番「まあ副町長がこう言ってるし……」


ダッ ダキッ!


勇者「わわっ!?ス、スーちゃん!?」

スー勇者「ご主人様っ!よかったです!」ギューッ

勇者「う、うんありがとう。でも一回離れよ?」

大爺「……」

勇者「あ、副町長さん……ありがとうございます。でもなんで」

クルッ

スタスタ

大爺「ついてくる、いい」

勇者「……?」


――――――――――――


――ガルナバーク・牢場の表――


あらくれ「お?出てきたか」

勇者「出てきました……。ちょっとなんでか分かんないんですけど」

勇者「もしかして商人が出してくれたんですか?」

あらくれ「いーや、副町長の独断だ」

大爺「……」

勇者「あれ、そうだったんですか……副町長さん。何で僕を」

大爺「……お願い、ある」

勇者「お願い……ですか?」
303 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:44:23.44 ID:3m9Dnx6p0
クルッ

大爺「ちょっと、ついてくる」

勇者「えっ?あ、はい……」



………………


――ガルナバーク・裏通り――


スタスタ…


大爺「……」

スー勇者「……」

あらくれ「……」

勇者「……」

勇者「……」チラッ


オォォォォ…

「……んだ、副町長……が……」ボソボソ

「……ソ者…………何を……」ヒソヒソ


勇者(……なんていうか、怖い連中も多いな)



―――――――――


見張り番『“殺人の前科持ちを軽く雇う人間”だからこそ……その悪評も、脳みそん中に居座ってる』


見張り番『「俺みてえなのを雇ったのはそういう悪事を働く時に切りやすいから」とか、なんじゃねえかってな』


―――――――――


勇者「……」

大爺「どう、思う。この街」

勇者「えっ!?、あっ、えっと」

あらくれ「まあ、この辺りには暗ぇ奴らがたむろしてやがるからな。良い印象もクソもねえか」

勇者「あの、僕を一体どこに」


ザッ


勇者「ん?」

大爺「……ここ」


――立派な建物――

304 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:45:18.70 ID:3m9Dnx6p0
勇者「なんです?ここ」

大爺「……入って、みる、いい」

勇者「入るんですか?」

スー勇者「なんかでっかい所です……キラキラ、してるです」

勇者「ちょっと行ってみようか」

スー勇者「はい!」

スタスタ…

あらくれ「……副町長、いいんすか?」

大爺「……」


―――――――


勇者「ん、なんか暗いなここ……」

スー勇者「壁に黒い幕が張ってるです」


〜♪


勇者「……なんか音楽が聞こえるね」

スタスタ

蝶ネクタイ男「いらっしゃいませ」

勇者「えっ?あ、どうも」

蝶ネクタイ男「たった今開店したところです。御早い来店で」

蝶ネクタイ男「さあ、こちらでございます」

グイグイ

勇者「えっ、ちょっとちょっと……」

スー勇者「わわ」

ザッ

勇者「あれ?なんだか開けた場所に出たね」

スー勇者「……」

勇者「ん?どったのスーちゃん……ん?」


〜〜♪



勇者(なんだ?ちっさいけどステージみたいなのが……)

勇者(……ちょっと待ってあの鼓笛隊の横で踊ってるのって)


―――――――


ダダダダダダダダダダダダ!!!!!


蝶ネクタイ男「おや?もうお帰りで?」

勇者「はーっ!はーっ!!」

蝶ネクタイ男「どうでした?うちの踊り子は」



勇者「ス ト リ ッ プ 劇 場 じ ゃ ね ー か !!!!!!」



蝶ネクタイ男「そうですけど?」
305 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:45:46.87 ID:3m9Dnx6p0
勇者「か、帰りますすみません!!スーちゃん!いこ!」

スー勇者「くねくねって……お股を……手で、あんな……」プシュゥゥゥゥ

勇者「スーちゃんしっかりして!!忘れて!忘れようっ!」

ザッ

蝶ネクタイ男「それでは……ガルナバークの住民票は?」

勇者「えっ?住民票?」

蝶ネクタイ男「あら、お持ちで無い?でしたら……」

ニコッ



蝶ネクタイ男「しめて50000ゴールド。はらっていただけますね?



勇者「    」



蝶ネクタイ男「おや?どうされました?」

勇者「ちょ、ちょっと待って、待ってください」

勇者「あの、聞き間違いですかね?今50000ゴールドって」

蝶ネクタイ男「言いましたけど?」

勇者「はいいいぃぃ!?」

勇者(いやいやいや!いくらストリップだからって桁がおかしい!!)

勇者「あの、ちょっとした間違いで入っちゃったというか」

蝶ネクタイ男「……払えないんですか?」

勇者「待ってください。とにかく話を聞いて下さい」

蝶ネクタイ男「聞きましょう。ではまず出身国と現在の所持ゴールドを」

スー勇者「っ……ご主人様……!」

勇者(……やばい、ここ)


蝶ネクタイ男「……教えていただけますね?」


勇者(ぼったくりのアカンところだ)


スタスタ


大爺「……その男、ちがう」


勇者・スー勇者「「!!」」

蝶ネクタイ男「……副町長?」

大爺「わたし、この男、入れ、言った。金、いらない」

蝶ネクタイ男「はあ……そうですか。副町長のお知り合いで」
306 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:46:16.75 ID:3m9Dnx6p0
勇者「副町長さん!!?何でこんなとこ入らせたんですか!!!スーちゃんいるんですよ!!!過激すぎます!!!!」

大爺「……出る。ついてくる」

スタスタ

蝶ネクタイ男「はあ……副町長。ちょっといいですか?」

ピタ

大爺「……」

蝶ネクタイ男「何を企んでるか知らないんですけどねぇ……これは町長の命令なんですよ」

勇者「……え?」

勇者(商人の、命令……?)

蝶ネクタイ男「反感持ってるのかなんなのか知らないですけどね」

蝶ネクタイ男「余計な事しないでもらえますか……?はっきり言って邪魔です」

大爺「……出る」

勇者「え?は、はい」

スタスタ……

蝶ネクタイ男「……」


――劇場の外――


ザッ

大爺「……」

勇者「……あの、副町長さん」

勇者「今あの人が言ってたのって」

大爺「……まだ、見せる、場所、ある」


スタスタ


勇者「……」

スー勇者「……ご主人様……」

勇者「……行こうか、スーちゃん」
307 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:46:44.95 ID:3m9Dnx6p0
………………………………



………………………………



………………………………


ガヤガヤ


スタスタ…


大爺「……一通り、裏の道、見せる、した」


勇者「……」

スー勇者「……」

あらくれ「……どうだったよ」

勇者「えっと……なんていうか」

あらくれ「あんまり、褒められたもんじゃねえだろ?」

あらくれ「表通りの、他の国の客がうろついてねえ所は、まあ……ジメジメしたもんさ」

勇者「……はい……」

大爺【“……町長は、この町造りが進むごとに変になっていった”】

勇者「え?あ、えっと、スーの言葉かな」

スー勇者「はい……私、訳すです」


【“私は一年前、ここに街を作りたくてスーの村を出て1人ここに居を構えていた”】

【“ある日船で仲間と一緒にやって来た町長に会い、街づくりの助けを願い、町長としてこの街を任せた”】

【“最初は普通の街づくりだった。だが町長は変わっていった”】

【“住民を優先させるために住民票を発行し、それをさきほどの様な店で利用させたり”】

【“あらゆる犯罪者を優先して受け入れたり、街の金で骨董品を買ったり”】


勇者「……」


【“おかげで、表向きは華やか、裏は灰暗い街になってしまった”】

【“それにこの頃、エジンベアの大臣とよからぬ取り引きをしている気がある”】


勇者「……?よからぬ、取り引き……?」


大爺【“……ついてきて欲しい”】


スタスタ…

勇者「……」

あらくれ「……ほら、なにぼさっとしてんだ」

勇者「……はい。行こう。スーちゃん」

スーちゃん「はい……」
308 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:51:03.46 ID:3m9Dnx6p0
………………………………



スタスタ



ガヤガヤ…


勇者「……本当に、表通りは賑やかですね……」

あらくれ「ああ。宿も店も多いしな。住人も表にはほとんど住んでねえ」

あらくれ「店を出してるのは大抵船で来て宿に短期滞在してる奴らだ。エジンベアのな」

あらくれ「ショバ代だけもらって短期間契約ってのが多いんだよ」

勇者「……」

あらくれ「……さっきのは」ボソ

勇者「え?」

あらくれ「さっきのは、多分、根も葉もねえ噂話さ。骨董品がどうとか」ボソボソ

あらくれ「副町長もボケがきてるだけさ。気にすんな」ボソボソ

大爺【“……あまり表通りに出ないでくれ。国連の奴らに見つからないように道を選んでいるのだ”】

大爺【“今は港の方に集中しているから、隠れながらこの道を行けば見つからないだろう”】

勇者「……あの、どこに行くんですか」

大爺「……ここ」

勇者「え?」


ザッ


――大聖堂横・大倉庫――


勇者「ここ、ですか?ここって」

あらくれ「お前らが不法侵入してた場所だ。そして俺の職場」

勇者「あれは違いますって……!!!あれ?違わないか……?違わないですね……」

大爺「……入る」

スタスタ

あらくれ「今は国連のやつらもいねえ。急げ」

勇者「は、はい」

スタスタ…


スー勇者「……」


ゴソッ


スラお「……スーちゃん?どしたの?」ボソボソ

スー勇者「……あっち」

スラお「あっち?」ボソ

スー勇者「港の方……何か」


あらくれ「おい嬢ちゃん?どうした?」


スー勇者「あっ、な、なんでもないです」


スタスタ…
309 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:53:49.53 ID:3m9Dnx6p0



ガコォン……



スタスタ

勇者「しかし……改めて見ると本当に大きな倉庫ですね……天井が高い」

スー勇者「こんなに、なんの荷物があるです?」

あらくれ「輸入した商品やら……でも大半はスーの特産品やらだな」

勇者「スーの特産品?」

あらくれ「ああ。スーが近いから、そこいらで取れる果物やら野草やら、肉やらを輸出しようって考えてるんだよ。町長は」

あらくれ「で、やっと取り引き先が見つかってな、これが一番最初のスー特産物の普及になるぜぇ」

勇者「それ、肉って日持ちとか大丈夫ですか?」

あらくれ「安心しろ。干し肉が大半だ」

スー勇者「スーは、干し肉料理多いです。ご主人様にも食べさせたです」

勇者「あー、あれか。あれ凄く美味しかったよ」

大爺「……」

勇者「で……ここに一体何が」


プゥン…


勇者「……うぇ……?」

勇者(なんだこれ、さっきここに来た時こんな匂いしてたっけ?)

勇者(ってかこの匂い、どっかで嗅いだ気が……)


大爺【“……お前さん方が乗って来た船とは違う船の積荷だ”】

大爺【“輸入品ではない……ここを中継地点として、他の国の商船に積ませる予定の積荷だ”】


スタスタ……

ザッ

大爺【“……それが、この一角だ”】

勇者「この辺り、ですか?」

大爺【“この木箱を開けてみるといい”】

勇者「……?」

あらくれ「おいおいおい、勝手に開けていいのかよ?いくら副町長さんでもちょっと度が過ぎてんじゃねえか?」

大爺【“……開けてみるといい”】

勇者「…………分かりました」

ゴトッ

勇者「よい、しょっと……んぐぇっ!!?なんだこの匂っ……」

勇者「……」

勇者「……」

スー勇者「?どうしましたです?」

大爺【“お前さん……町長と馴染みのある人間なのだろう?”】

大爺【“なんとかお前さんから、町長の本心を聞きだしてくれないだろうか”】

大爺【“そして、町長を……正してやってくれないだろうか”】

勇者「…………」

勇者「なんだ……これ」
310 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:56:30.73 ID:3m9Dnx6p0




「鉄と土ですよ」




大爺・スー勇者・あらくれ「「「!!!?」」」


勇者「……っ、商人……!」


スタスタ


商人「…………国連の連中の会合の合間に急いで牢に行ったら、もぬけの殻でちょっと焦りましたよ」


商人「ま、副町長が出したって見張り番さんも仰ってたんで、行き先の検討はつきましたけどね」


勇者「……これは、一体なんなのさ」

商人「さあ?知りませんよ。ただ輸送の中継地点として荷物を預かってるだけですし」

勇者「だとしても、これは……鉄は、いいとして、土、この木箱」

勇者「これは、おかしくないか」

勇者「だって、この土」




勇者「人の、骨が……死体が、混じってる」




スー勇者「!!!?」

あらくれ「……は?」

勇者「糞尿と一緒に、屍が混じってるよ」

勇者「これおかしいと思わないのかよ……?」


商人「……」


スタスタ


商人「……ねえ勇くん」

商人「勇くんに、何の関係があるんです?」


勇者「…………商人……?」


商人「ここは。私が作った街です。私の街なんですよ」


商人「なんでお前なんかに口出されなきゃならないんです?」


勇者「……」


商人「……お前」



ニコッ…



商人「もう、私と……何の関係もないでしょう?」


311 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/07(水) 23:57:16.17 ID:3m9Dnx6p0
今日はおしまいです
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 01:31:36.85 ID:pbLZfKgQo
乙です!商人ちゃん何があったの…
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 19:36:03.42 ID:Os9ylmdw0
今追いついたが、結局エジンベア勇者は覚醒フラグへし折って現実逃避に走ったか。
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/08(木) 19:46:23.75 ID:zYrm2XOP0

死体の混じった鉄と土をどうするつもりなのか・・・
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/13(火) 15:28:28.92 ID:xqLqfXY70
死体と糞尿が混じった土と硫黄で火薬を作るってのを最近某アニメでやってたけど
鉄については前の会議で指摘されてた部分だよね、次回が待ち遠しい
316 : ◆3VOBH3KJAk :2016/12/15(木) 00:17:41.64 ID:PC86Fqf/0
勇者「……商人、何、言ってんのさ」

商人「言葉もろくにわからなくなりました?本当に愚図ですね」

スタスタ

ザッ

ガシッ!

勇者「!」

商人「……もう私に関わるなって言ってるんですよ。迷惑です」

あらくれ「お、おいおい町長!」

商人「あらくれさん、ちょっとだけ待っていただけますか?こいつと話をしなきゃいけないんですよ」

勇者「お前、冗談でもキツいってそれは」

商人「はあ?どこがです?」

商人「というか冗談でもなんでもないんですよ?お前が居るだけでこっちは迷惑なんです」

商人「自己満足の為か何なのか知りませんが、仲間達を皆放って勝手に単独行動になるぅ〜とか馬鹿みたいな事言い出しますし」

商人「国連に追われてる身なのに国連の人間が大勢居るこの街にのこのこ現れるし」

商人「腐れ縁の恩情で国連から見つからないように牢に隔離しておけば副町長に誘われてのこのこと抜け出すし……」

勇者「……」

商人「あげくの果てには、やーっとこさ軌道にのったこの街の動かし方にまで口挟むんですか?」

商人「いい加減、本当にうざいんですよね……」


商人「いつまで幼馴染の仲良しごっこ続けるつもりなんです?」


勇者「……ッ!!!!」


ガシィッ!!

商人「……なんです?肩、痛いんですけど」

勇者「今のは、マジでやめろ」

勇者「僕の事は、確かにその通りだからいくらでも言っていい、けどさ」

勇者「“幼馴染の、仲良しごっこ”とか……そういう事言うのやめろよっ……!!」

勇者「あいつらまで、あいつらの事までお前がっ」

バシッ

商人「だーかーらー」

商人「いちいち偉そうに私に口をきくなって言ってるのがわからないんですかねえッ」

勇者「……っ」
317 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:18:20.08 ID:PC86Fqf/0
商人「とにかく。これはちゃーんとしたビジネスです。部外者は黙っていてください」

あらくれ「で、でも町長さんよ。その木箱、土の中に人の骨入ってんだぜ!?」

あらくれ「いくらなんでもちょっと穏やかじゃねえよ……!なんの目的があってそんなもの」

商人「まあ、各国からこういった糞尿と屍混じりの土を仕入れてますが……私が知った事ではありませんよ」

商人「貿易の橋渡しをするだけで色んな恩も売れますし、船の出入りが多くなって街の資金も巡ります。良い事です」

商人「この土の木箱の隣に区分けされてる鉄の山も、同じくエジンベアの大臣様が取り仕切って動かしている品です」

商人「あの方とサマンオサの方々は良いお得意様ですからね……なんとか機嫌を損ねないようにしないと」

スー勇者「っ……」

商人「……なんです?その目」

スー勇者「あなた、嫌いですっ……」

商人「おやおや、嫌われちゃいましたね」

スー勇者「そんな、怪しい取り引き、して……あんな、お店も作って……!」

商人「あんな店?……あー、ストリップ劇場の事ですか?あれのどこに問題が?」

大爺「問題、ある!風紀が、乱れ、取る金も、おかしい!」

商人「……はぁ……では、ああいった店を全部無くした方が良いと、風紀が乱れないと。本当に思うんですか?」

あらくれ「……どういう……?」

商人「この街に定住している人間の多くが大工の人間です。優先的に誘致しましたし、だからこそ一年でここまで街の見栄えが整いました」

商人「そういった方々は、例外なく屈強な男性達です。体力を持て余した、血の気の多い、ね」

あらくれ「……」

商人「その方々が黙々と町を造り続けて不満が出ないワケないでしょう?何か欲求を満たすものが必要になります」

商人「幸い食品には恵まれていますから食欲は大丈夫として……では性欲は?」

商人「開拓地などによくあるお話では、労働夫達がその性衝動に任せて女を攫ってきて監禁、仕事場で隠し飼いにして犯し続けたり」

商人「あるいは見境もなしに来国した女性を強姦したり……とにかく明るいお話は聞きませんね」

商人「その事態を避ける捌け口として、ああいった店は必要なんですよ。近々売春宿を設置する事も考えています」

商人「そういう目的ですから、この街の住民でない方々にはお金を余分に頂いているだけですよ」

大爺「なっ……!あ、あの男達、貴女の事、尊敬、している!そんな犯罪、彼ら、しない!」

大爺「彼らの事、信じる、大事――……」

商人「そーれーだーかーら副町長。あなたを町の経営の第一線から降ろしたんですよ前にも言ったでしょうが」

商人「人を信じるだけで万事上手くいったら世話はいらないんですよ馬鹿馬鹿しい。言葉の美しさだけで生きていられりゃそりゃいいですがね」

商人「そんな事で生きていけるのは頭のイってしまった詩人くらいなもんなんですよ」

商人「人を疑う事の方が色んな計算ができて視野が広がるんです。そしてそれが私達の仕事です」

大爺「っ」

商人「ここは、私の街です。口出ししないで下さい」
318 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:18:49.80 ID:PC86Fqf/0
あらくれ「……町長……」

大爺「……それでも」

大爺「街の金で……骨董品、買う……宝石、買う……」

大爺「それは、違いない……貴女、悪い」

商人「…………へえ、知ってたんですか?」

大爺「取り引きの、現場、見た者、居た!」

商人「バレてたんですね……まあ想定はしてましたけど。ですがそれの何が悪いんです?」

商人「私のお給料で私の買い物をしてなーにが悪いんです?ねえ」

あらくれ「町長……?あんた、まさか」

商人「全く、質素に暮らしていれば聖人になれますか?本当になんなんですかアンタらは」

商人「私の勝手でしょう?そんなの」


商人「私の街で、私が好きにやるのは当たり前の事じゃないですか」


商人「……いいですか?もう一度言います」


商人「ここは、私の街です。何も考えずに口出ししないで下さいね」



勇者「………………」


スー勇者「……」

あらくれ「……」

大爺「っ……間違って、いた」

大爺「あの時、貴女に、全て任せた、間違っていた……!!」

商人「それはどうも」ニコッ

スタスタ

商人「さて。申し訳ありませんが勇くん。そろそろ消えてくれませんかね?動くなら今しか無いですよ?」

商人「国連の方々は現在宿で荷解きをしているんです。待機している兵達も船と港に集中しています」

商人「まあなんだかんだで知らない仲ではないですし。国連に突き出すのは勘弁してあげますよ」

勇者「……商人」

商人「なんです?」

勇者「…………いや」

スタスタ

勇者「なんでもない……行こう、スーちゃん」

スー勇者「ご、ご主人様っ……」

クルッ

スー勇者「……っ!べーっ!」

商人「ホントに嫌われちゃいましたね」
319 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:19:16.92 ID:PC86Fqf/0
商人「ああ、そうです。ちょっと待ってもらえます?」

勇者「え?」ピタ

スタスタ

商人「忘れちゃうところでした……。どうせここから何処へ行くかも考えてないんでしょう?」

商人「でしたら……そこのお嬢さん、スーの方ですよね?」

スー勇者「……そうです、けど」

商人「なら丁度良い。中央広場の東口の方に私と取り引きしてる方がいらっしゃるんですけど、その方に会ってくれます?」

スー勇者「なんでですかっ……」

商人「その方、スーの方なんですよ」

スー勇者「!」

商人「恐らくそのまま彼はスーに戻ると思いますので、それに同行でもさせてもらえばいいんじゃないですか?……よっと」

ドサッ

スー勇者「……この、大きな袋は……?」

商人「秋種と本です。その彼に頼まれてたんです。彼に渡してくださいな」

商人「さあさあ、国連の方々が動き始める前にとっとと消えてください?ちょっとこれから私は儲け話をしてこにゃならんので」

勇者「……商人」

商人「ん?なんです?私の寛大な処置にお礼でも言ってくれます?」


勇者「ありがとう」


商人「……はい?」

勇者「いや……それじゃ、また来るよ」

スタスタ

勇者「行こう、スーちゃん」

スー勇者「は、はいっ」タッ

大爺「……町長、また、あとで、話す」スタスタ


スタスタ


あらくれ「……町長」

商人「……」

あらくれ「嘘だよな……?さっき言ってた事」

あらくれ「なあ……?じゃなきゃ……俺らみたいな、『下層』の奴らをアンタは!」

商人「……あなたに話す事はありません」

あらくれ「……!!」

あらくれ「…………そう、かよ」

スタスタ

商人「……」


シーン……


商人「……」

…………
……

320 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:20:54.12 ID:PC86Fqf/0
――ガルナバーク・裏通り――


スタスタ


勇者「とりあえず、そのスーの人に会ってスーまで同行させてもらおうか」

スー勇者「ご、ご主人様」

勇者「どしたのスーちゃん?」

スー勇者「いえ……その……」

大爺「やはり……もう町長は、昔のような、人、なくなった……」

あらくれ「……あの噂も、本当だったのかよ……」

ギリッ…

あらくれ「…………ああ、くそ……」

勇者「いや、どうでしょうね」

あらくれ「は?」

大爺「……何?」

勇者「多分ですけど、あいつはそこまで変わって無い気がするんですよ」

あらくれ「な、なんでわかるんだ?」

勇者「えっと……幼馴染の感。ですかね」

あらくれ「……けっ、そうかよ。聞いた俺が馬鹿だったよ」

勇者「まあ何にせよ、今僕がここにいるとまずいってのは本当なので早いところ移動しよう。スーちゃん」

スー勇者「…………ご主人様」

勇者「ん?」


ギュッ


勇者「ふぇっ」

あらくれ「おおっ?」


スー勇者「……寂しそうな顔……してるです……」ギュゥ


勇者「……スーちゃん……」

ドゴォッ

勇者「ティムン!!!!」

大爺・あらくれ「「!!!?」」

あらくれ「今嬢ちゃんのバッグが勝手に動かなかったか!!!?」

スー勇者「き、気のせいです!!!」

勇者「お、お気になさらず!あはははは」

勇者(スラおォ……後で覚えとけよぉ……)


…………
……



――港付近・高級宿――


スタスタ

コンコン

ダーマ勇者「ソクラス様、よろしいでしょうか」
321 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:22:07.69 ID:PC86Fqf/0

シーン…

ダーマ勇者「……?ソクラス様?」

ガチャッ


……


ダーマ勇者「…………いない……?」


――――――――――――


――中央広場――


ザワザワ…


ヒョコッ

勇者「……国連の、兵は……居ないみたいだ」

スタ

勇者「ここが中央広場……ふあー、本当に立派だ」

スー勇者「……綺麗なところ、です」

勇者「じゃあとりあえず……よいしょ、と」

ドサッ

勇者「この、商人に頼まれた荷物をそのスーの人に渡さないとね」

勇者「その後にスーに一緒に行きたいところなんだけれど……都合はどうなのかな」

スー勇者「でも、いいです?」

勇者「ん?何が?」

スー勇者「スーに来てもらって……本当にいいです?」

勇者「いやいや、逆に僕がお邪魔していいかな?って話だよ?」

スー勇者「それは勿論、大歓迎です……でも」



「スー勇者!!?」



勇者「え?」

スー勇者「……!!スー戦士さん!」


スタスタ

スー戦士【“スー勇者!!無事だったか!!”】


スー勇者【“心配かけて本当にごめんなさい!でもちゃんと大丈夫でした!”】

勇者(うおお……屈強そうなスー人の男の人が来た……この人が商人の言ってた人か)

スー勇者「ご主人様!この方、スー戦士いいます!村で一番、腕のたつ戦士でした!」

スー戦士【“……スー勇者?こちらは?”】

スー勇者【“えっと……話せば長くなるんですけども……”】

勇者(なんか挨拶した方がいいかな……言葉はどのくらい通じるんだろ)

勇者「え、えっと……こ、こんにちは、えっと……は、ハジメ。マシテ」

スー戦士「どうもこんにちは。はじめまして。俺はスー戦士って言うんだ。よろしくな」

勇者「ペラペラですね!!?」

スー勇者「スー戦士さんは、村で一番、共通語が上手いです!」
322 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:22:36.35 ID:PC86Fqf/0
スー戦士「そういうスー勇者も共通語がだいぶ上達したじゃないか!偉い偉い!」

スー勇者「えへへ……ご主人様が、教えてくれるです!」

スー戦士「ご主人様?女王様かい?」

勇者(女王様?)

スー戦士「いいえ!お師匠様ではなくて、この方です!」

スー戦士「君……が?えっと、うちのスー勇者が世話になってるね」

勇者「いえいえいえいえ、本当にこっちが世話になりっぱなしで」

ガシッ…

スー戦士「でも……その……こんな子供にご主人様呼びを強制させるのは正直……」

勇者「ちげーんですけど!!!?強制じゃないんですけど!?……まあ、とにかく。勇者です。よろしく」

スー戦士「ああ。よろしくな」

勇者「あ、スー戦士さん。早速ですがこれ……頼まれた荷物です」

スー戦士「ん?頼まれたって誰に……おおお!町長さんからか!ありがとう!!」

勇者「秋種と本だそうです。間違いないですか?」

スー戦士「ああ。間違いないよ。全く仕事が早くて助かるね」

スー勇者「でも、スー戦士さんが、取り引きです?本と、種を?」

スー戦士「ん?あー、そうか。この街ができてからはお前はスーに帰ってなかったからな」

スー戦士「今俺はな。商売をしているんだよ」

スー勇者「えっ!?スー戦士さんが!?」

スー戦士「はは。意外か?でも本当だよ。だから本を読んだり異国の植物について勉強するために町長にこれを頼んだのさ」

スー戦士「正直俺は昔から思ってたんだ。スーはもうちょっと暮らしを豊かにできるんじゃないか、ってね」

スー戦士「で、ここに街ができたんでこれはチャンスだ!と思ってな。いろいろなアプローチをしているんだ」

勇者「ああ、だから大倉庫にもあんなにスーの特産品が……」

スー戦士「見たのか?ああ。あれも俺の計画だよ」

スー戦士「ここの町長さんに頼んで色んなところと取り引きの契約を結んで貰ってるんだ」

勇者「……」

スー勇者「……」

スー戦士「?どうした?」

スー勇者「いえ……その」

勇者「なんでもないですよ。それで、なんですが……ちょっとこの後スーに少しお邪魔させて貰おうかな、と思ってて」

スー戦士「おお!そうなのか!是非来てもらえるかい?喜んで歓迎するよ!」

勇者「そう言っていただけると嬉しいです」

スー戦士「じゃあ村まで案内するよ。と、その前に……ちょっと俺の仕事が終わるまで待っていてもらえるかな?半陽刻くらいで終わるから」

スー勇者「お仕事です?」

スー戦士「ああ。この町の店にも商品を卸しているからな。その話し合いやらさ」

勇者「でしたら、お待ちしてますね。この広場に居るんでもし終わったら声をかけてもらえれば」

スー戦士「了解だ。ちょっと待っててくれよな」

スー勇者「お仕事、頑張ってください!」

スー戦士「ありがとう!行ってくる」

スタスタ
323 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:23:32.96 ID:PC86Fqf/0
勇者「いい人だね。しっかし共通語が本当にペラペラだなあ」

スー勇者「……はい」

勇者「さて、と……半陽刻か。少し暇になったね」

スー勇者「です」


グゥゥゥゥ


勇者・スー勇者「「……」」

勇者「スーちゃんお腹すいたよね、ごめんね」

スー勇者「い、今の私違うです!違うですー!」

もそっ

スラお「おなかすいた!」ボソッ!

勇者「ああ、スラおか。まあなんにせよお腹すいたね……えっちょっと待ってスライムってお腹鳴るんだ」

スー勇者「はい……本当はぺこぺこです」

勇者「ちょっとお店入ろうか。まだ時間もある事だし」

スー勇者「はい!」


スタスタ


勇者「と、なると……どこがいいだろうね。結構広場に面した食堂もあるみたいだ」

スー勇者「ご主人様のお好きなところへ!」

勇者「スーちゃんが好きなところでいいのよ?んー……適当にあそこにしよっか」

スー勇者「はい!行きますです!」

グイグイ

勇者「おうおうスーちゃんちょっと引っ張っちゃダメだって」

スー勇者「ふふっ」

勇者「ん?どうしたの?」

スー勇者「いえ……」

ニコッ!

スー勇者「ご主人様と、こうやって街歩くの、嬉しいです!」

勇者「あああああああああスーちゃんああああああああああ!!!!!!!!」ナデナデナデナデナデナデ

スー勇者「いああああ髪がぐしゃぐしゃになるですー!!!」


バタン


「……どうする?」

「店に入ったか……まあいい。出てきたら話を聞こう」

「だな」

…………
……

324 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:24:13.02 ID:PC86Fqf/0
―――――――――――


――パブ――


カランカラン


店主「いらっしゃい」

勇者「ども。えっと……」


ガヤガヤ


勇者「結構混んでるなあ……」

スー勇者「あ!あそこあいてるです!」


ガヤ…  ピタ


スー勇者「あそこ行きましょうです!」

勇者「そうだね」

スタスタ

ガタッ

勇者「ふぅ……とりあえずどうしようかな」

スー勇者「もうお腹くっつきそうです。えへへ」

勇者「僕もだよ。えっと」


「んだよ。へらへら笑いやがって」


勇者「……ん?」チラッ


「「「…………」」」


勇者(……?……なんで皆こっち見てるんだ)
325 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:24:39.50 ID:PC86Fqf/0
スタスタ

ザッ

店主「……ちょっといいかい」

勇者「え?ああ、えっと注文は」

店主「そっちの嬢ちゃん」

勇者「え?」

スー勇者「わたし、ですか?」

店主「あんた、その髪飾り……スー人か何かだろ」

スー勇者「え……?そ、そう。です」


「なんで当然のようにテーブルに座ってんだよ……」


スー勇者「……え」


「また最近調子に乗り始めてるよな、スーの奴ら……」

「見ろよ。状況が分かってないんだあのスーの子供」

「まあ子供だからわからないんでしょ……許してあげましょうよ」


スー勇者「…………あ……」


店主「……帰ってもらえるかい。まだ幼いお前さんにゃ分からないかも知らんがね」

店主「そこに座るのはダメなんだよ。あんた」


スー勇者「……」

勇者「……?は?何で?」

店主「なんでって……ねえお客さん」


店主「お客さんも奴隷を扱う時の作法くらい覚えておいてよ」


勇者「…………」


店主「お客さんだけならいいんだけどさ……嬢ちゃんはちょっと外で待ってもらうとかしてくれる?」

スー勇者「す、すみません、でしたっ」

ガタッ

スー勇者「……っ」

ニコッ

スー勇者「ご主人さま!私!外でお待ちしてますです!」
326 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:25:29.56 ID:PC86Fqf/0


勇者「スーちゃっ」


タッタッタ

バタン


勇者「……」


「うるさいな……ドアの開閉もろくにできんのか」

「無理ねえって。まだ子供だったろ」

「あんなかわいい奴隷だったら俺も1人くらいほしいな、ははっ!」


店主「悪いね。だけど作法ってもんがある。わきまえてくれよな」

勇者「……」

店主「で?何を頼む?」

ガタッ

勇者「……あー」

店主「んお?どうした?」

ガリガリ

勇者「あー。あー」

ガリガリガリガリ

勇者「クソ、あー、もう」

店主「……なんだ?帰るのか?冷やかし」



ぞっ



店主「うくぁっ?」
327 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:25:58.56 ID:PC86Fqf/0
勇者「お前ら、今度あんな事言ったら殺してやるからな」


勇者「もう、今殺してえけど、くそ、殺してえなあ」


ガリガリガリガリ


勇者「糞どもが、クソ、殺し、今、今殺すか?」


勇者「あー、今、殺し。ああ、クソが」


キィィィィ……ン


「うっ……?おぶっ」

「おえっ!?おえぇぇぇぇぇ」

バチャバチャバチャ

「ひっ?な、なんだっ。なんだっ」


店主「っ。っ」パクパク


スタスタ

勇者「殺し、くそ、どうやって、殺……ああああ、クソどもが、あー……どうやって……」

ブツブツ


バタン


シーン


店主「……!!!?な、なんだったんだ……!!!?」
328 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:26:28.15 ID:PC86Fqf/0
――広場・パブの前――


スー勇者「……」

モゾッ

スラお「スーちゃん……」

スー勇者「スラさん……」

ペロペロ

スラお「かなしいかおしてるよ」

スー勇者「ん……ふふ、んーん。ありがとうです」

スー勇者「でも、大丈夫です。たまにあることですからっ――」


ぞっ


スー勇者「っ」

カランカラン

スー勇者「ご」クルッ


勇者「……殺……て」ブツブツ


スー勇者「ご主人様!」ダッ

ザッ ガシッ

スー勇者「ご主人様!しっかりしてください!だめです!しっかりです!」

ペシペシ

勇者「……――ん、え?スーちゃん……?」

スー勇者「……ほっ……良かったです」

勇者「あれ……?僕、出て……?」

勇者「……ごめん、ちょっとあまりにも頭に来たもんだから、血が頭に上りすぎちゃって…………ぼーっとしてた」

スー勇者「……ご飯、食べてこなかったです?」

勇者「え?なんでさ!スーちゃんと食べられないなら意味ないでしょ」

スー勇者「でも、わたし、その……スー人なので」

スー勇者「多分、エジンベアの方が多い、この町は、どこも同じだと思うです……だから」

勇者「スーちゃんを除け者にするような所でご飯食べるくらいなら飢え死にした方がマシだって」

スー勇者「……」

ナデ

勇者「ごめんね、なんか、嫌な思いさせちゃって」

スー勇者「っ……!!」

ギュゥゥゥ

勇者「うおおスーちゃん!?どしたのっ」

スー勇者「ご主人様だいすき……っ!」ギゥゥゥゥゥゥ

勇者「スーちゃんくるしいしやわらかいしちょっと離れてまずいです!!!!」

スラお「ぼくはゆーしゃきらい。ほんときらい」

勇者「お前それしか言えないの?僕が傷付かないとでも思ってんの?」

スラお「せいりてきにむり」

勇者「なんで追い討ちかけた?畜生かお前?畜生だったな?」

スー勇者「喧嘩だめです!」
329 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:27:48.24 ID:PC86Fqf/0


……
…………


――広場のベンチ――


スタスタ

勇者「お待たせスーちゃん」

スー勇者「おかえりなさいです!」

ドサッ

勇者「何か見た事の無い果物が多かったからすぐ食べられるものを見繕ってもらったよ」

スー勇者「わぁ!ありがとうございますです!」


ペリペリ


勇者「こういう剥き方でいいのかな」

スー勇者「それはこうやって剥くです」ペリリ

勇者「おお、なるほど……あむ。ん!おいしい!」

スー勇者「んふぁー……ほっぺが落ちそうです……♪」

スラお「まむまむ」

勇者「もうちょっと隠れて食べてスラお」

スラお「もっとよこせ」

勇者「自分で剥けないのを良い事に……ムカツクゥ」

ペリペリ

勇者「……さっきみたいなのって、結構あるの?」

スー勇者「……たまに、です」

スー勇者「エジンベアの人たちは、まだ心の中に、奴隷制度が残ってるです」

スー勇者「だから、たまに、ああいう事あるです」
330 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:28:15.19 ID:PC86Fqf/0
勇者「……そっか」

スー勇者「でも、差別しない人もたまにいるですから、へいきです!」ニコ

勇者「……ん。そっか」

勇者(……以前の、エジンベア城に居たときの目線……あれ、スーちゃんの髪飾りを見た奴らがさっきみたいな事思って向けてたんだろうな……)


ザッ


勇者「んぁ?」


細目の男「ちょっと、よろしいですかね?」


勇者「へ?僕ですか?」

勇者(なんだこの人たち……)

細目の男「はい。ちょっと話があるんです」

太った男「お前さん、さっき町長と話してたよな?」

ノッポの男「町長とはどんな関係だ?」


勇者・スー勇者「「!!!!」」


勇者(……つけられてたのか?)

勇者「いえ、特に……?なんでですか?」

細目の男「しらばっくれてないですよね?本当はどんな関係で?」

勇者「ただの昔の知り合いだから挨拶しただけですよ。本当に」

細目の男「ふうん……昔の知り合い、ねえ」

勇者(……まずいな)
331 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:28:42.02 ID:PC86Fqf/0
ノッポの男「なあ、正直に話したほうがいいぜ」

太った男「なんかの取り引きの話だったんだろ?」

勇者「違いますけど……それを僕に聞いてどうするつもりなんです?」

細目の男「……」

勇者「本当に挨拶した程度なんですけど、もし僕が変な取り引きしてたら一体何を」


細目の男「リコール」


勇者・スー勇者「「!!!」」


細目の男「今の町長の行いはちょっと看過できない事が多すぎましてね……」

細目の男「ですから、新しい町長を選びなおす。その機会がほしいのです。この私達は」

細目の男「ただ、上手いこと手を回すものですから証拠、というか決定打にかけていまして」

ザッ

細目の男「……悩んでいたところ、なにやら貴方達が怪しい動きをしていたのでね」


勇者「……」

スー勇者「……っ」


細目の男「どうです?何かお話していただけませんか?」

勇者「まず本当に何も知らないです。協力はできません。と言ったら?」

細目の男「そうですね……ちょうど、国連の方々がいらっしゃってる事です」


細目の男「あなた方御二人を国連の方々に突き出して、調査をご協力願うしかなくなりますね」


勇者「……」


細目の男「……知ってること、教えていただけますね?」


勇者「……」


ポロッ


勇者「……ああ」


スッ…


勇者「果物が落ちちゃったじゃないですか――……」




ドカッ!!




勇者・スー勇者・細目の男「「「へ?」」」



「んー……青い空。快晴と言うヤツですなあ」

「おやおや、お隣にいきなり申し訳ないね。丁度いいベンチがなかったもので」


ニコッ


ソクラス「少しだけ話し相手になってもらえるかね?」
332 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:29:13.82 ID:PC86Fqf/0
勇者(…………なんだこのおじさん……)

細目の男「ちょっ……いきなりなんです?」


ソクラス「まあまあ、ちょっとだけ話し相手になってもらえんかね?」

ソクラス「どうだね、そこの少年」

勇者「……僕、ですか?」

ソクラス「ああ。君は今のような快晴は好きかね?」

勇者「快晴、ですか?晴れ?」

ソクラス「うむ。そうだね」

勇者「や、まあ……好きですけど」

ソクラス「そうかそうか。そこのお嬢さんは?」

スー勇者「えっ!?えっと、好きです!」

ソクラス「そうかそうか。そちらは?」

細目の男「え?まあ、好き、ですが」

ソクラス「そうかねそうかね!結構な事でありますなあ!」


(((……なんだこの人)))


太った男(なんかめんどくせえヤツにからまれちまったな)

ノッポの男(酔っ払いかなんかか?くそ、なんだってこんなタイミングで)

ソクラス「では、雨は?どうかね?少年」

勇者「雨、ですか?……うーん、雨もいい所あったりしますけど、晴れのほうが好きかなあ」

ソクラス「ほうほう」

勇者「えっと、これなんの質問なんですかね」

ソクラス「君は実に、結構な事だね」

勇者「え?ん?」

ソクラス「君はどうやら貪欲ではないようだ。そんな顔をしている」

ソクラス「君は貪欲ではない。貪欲では決して無い」

勇者「え……はい、えっと?」



ソクラス「君は実に、つまらない」



勇者「……ンッ!?」

スー勇者「なっ……!」かちーん

太った男(いきなりのdis)

ノッポの男(ちょっと気の毒だな)

ガタッ

スー勇者「ご主人様に何を言うですかぁっ!!!!!」

勇者「ス、スーちゃん落ち着いてっ?」


ペリッ


勇者「……え?」
333 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:29:47.56 ID:PC86Fqf/0
ソクラス「つまらない、つまらない」


ペリッ ペリッ


勇者「……」

勇者(いつの間に……僕が持ってた果実を)


ソクラス「ああ、そっくりであるなあ」


ムシャッ…



ソクラス「あの男に……実にね」



勇者「……あの、男?」

スー勇者「あっ!ご主人様!」

勇者「え?」


スタ…スタ…


スー戦士「……」


勇者「スー戦士さん。もう終わったんだ」

ソクラス「おや?もう行かれるのかな?」

勇者「は、はい。僕はこれで」

チャリッ

勇者「……」

勇者(……僕のポケットから貨幣の音が)



ソクラス「この果実の代金。それで、足りると思うのだがね」



勇者「っ」ゾッ

ソクラス「話し相手になってくれて感謝しよう少年。さ、お行きなさい」

勇者「スーちゃん。行こう」

スー勇者「あっ、は、はい!」

タッ

細目の男「あっ、ちょっとま……」ダッ

ザッ

ソクラス「君たちはもう少し私の話し相手になってもらえるかね?」

細目の男「ちょっ……!!あっ」

タッタッタ

太った男「……いっちまった」
334 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:30:13.55 ID:PC86Fqf/0
ノッポの男「何をしやがる!」

細目の男「邪魔をしないでください!」

ソクラス「ふふん、少しは感謝してもらいたいものですなあ」

太った男「あぁ!?何言って」


ソクラス「私があそこで割り入らなければ、君たちの足の腱はスッパリやられて、地べたを這いずり回っていたでしょうな」


細目の男「……は?」

ソクラス「これを見たまえよ」

ザッ

ソクラス「ベンチの下のこの跡……彼はベンチに座った瞬間からこの場所に剣を抜きやすいように設置していたのだよ」

ソクラス「彼がしゃがんだのを君たちも見ただろう?」


「「「……」」」


ソクラス「彼は恐らく逃げるつもりだったんでしょうなあ。それなら相手が追手にならぬように足の腱を切るのが一番容易い」

ソクラス「迷いはなさそうに見えたね、私には」

細目の男「だ、だったら……!!やっぱりあの男、やましい事が!」

太った男「なおさら追わねえと!!」

ソクラス「まあまあ待ちたまえよ」

細目の男「何ですか!!一体――……」


ソクラス「……君たちには君たちで。お話があるのだよ」



………………


スー戦士「……」

タッタッタ

勇者「スー戦士さん!」

スー戦士「ん?ああっ、ふたりとも」

スー勇者「もうお仕事終わったです?」

スー戦士「……」

勇者・スー勇者「「?」」

スー勇者「どうされたです?」

スー戦士「いや……少し、手違いがあったみたいなんだ」

スー戦士「取り引きの事でちょっとね……妙な事が、あって」

勇者「妙な事……?」

スー戦士「いや、きっと大丈夫、だとは思うんだ。ただ予定が大幅に狂った」

スー戦士「悪いが二人は先にスーに行ってもらえるか?俺は少し遅くなりそうなんだ」

勇者「そうだったんですか……お仕事忙しそうですね」

スー勇者「でしたら、先に帰ってるです!」

スー戦士「ああ……村長やエドによろしく言っておいてくれ」

スー勇者「はい!」

勇者「ではまたスーでお会いしましょう。失礼しますね」

スー戦士「ああ。気をつけてな」
335 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:31:20.82 ID:PC86Fqf/0
スタスタ…


……


スー戦士「……」

クルッ

スー戦士「……っ……嘘であってくれよ」

スー戦士(町長さん……貴女は俺達スー人を騙すような事なんて……してないよな……?)

スタスタ…


――――――――――――――


ムシャ…

モグモグ

ソクラス「うん……見事な快晴である事よ」

スクッ…

ソクラス「…………じつにつまらない」

ポイッ

ゴロッ… コロン コロン


ブチャァッ


ソクラス「飽きた」


タッタッタ

ソクラス「おや?」


ダーマ勇者「ソクラス様――!!!」


ソクラス「おやおや、ダーマの」

ズザァッ

ダーマ勇者「よかった……はぁっ、ここに、いらっしゃったんですね」

ダーマ勇者「宿でお姿がみえなかったので……いったいどうされたんですか?兵もつけずに」

ソクラス「それはですね……」

ソクラス(……)


ガクッ


ソクラス「うっ……」


ダーマ勇者「!!!?」

ダッ

ダーマ勇者「ソクラス様!!?お気を確かに!!……どうされたんですか!!?」


ソクラス「……すま、ないね……実は……――」


…………
……

336 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:31:47.52 ID:PC86Fqf/0


……
…………



――ガルナバーク・町の外――



スタスタ


勇者「んー……風がきもちいいー」

スー勇者「ですー……大地って、いいものです」

勇者「ずっと船の上だったからね……」

勇者「さてと。こっからスーってどのくらいかかるの?」

スー勇者「えっと、普通の道を行くと一日くらいです」

勇者「あー、やっぱりかかっちゃうか」

スー勇者「でも、近道もあるです。岩山の道、スー人しか知らない道あります」

スー勇者「そこだと、半々日で行けるです」

勇者「おお?凄く近道になるね」

スー勇者「……一応ルーラもあるです」

勇者「あ、そっか!そういえばスーちゃんルーラが……」

勇者「使え…………」


―――――――――――――



ヒュウウウウウ!!!!

スー勇者『やああああ――――!!!!』


武道家『えぇぇ!!!!?何!?女の子が落ちてきてる!!?』

勇者『うわああああ危ない危ないいいいいい!!!!!オーライオーライ!!!!!』アワアワ

武道家『え!?ちょ、勇者受け止める気!!?だったら私が』


ゴッシャァ!!!!


勇者『ブエナッ!!』ビスタッ


―――――――――――――


勇者「…………使え、る?」

スー勇者「……落下するの、ご主人様を、巻き込むわけには……」

勇者「や、僕は大丈夫だけど……一応その岩山ルートで行こうか?」

スー勇者「すみません……」

勇者「なんで謝るのさ。散歩にもなるしいいもんだよ。のんびり行こう」

スー勇者「はい!」
337 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:32:15.17 ID:PC86Fqf/0
スタスタ


勇者「一応道も踏み固められてるんだね……できたばかりの町なのにほんと凄いな」

スー勇者「この道の両脇、見てください」

勇者「うん?」


サァァァァ


勇者「でかい林、ってか森があるけど……どうしたの?」

スー勇者「ほんとは、この道の場所も森だったです。一塊になってたです」

勇者「あ、そうなんだ!じゃあここを切り開いてその木材使ってたのか」

スー勇者「すごく丈夫な木です。たぶんそうです」

勇者「なるほどねえ、開拓と木材調達を同時にって感じだったのか」

スー勇者「とりあえず、あそこに見える丘まで行っていいです?」

勇者「ん?あそこ?わかった」


……

スタスタ


勇者「……おお」



――ガルナバーク・南西の丘――


サァァァァァ……


勇者「うおおお……ここすごく、なんか、いい……!」

スー勇者「えへへ、ここ、私のお気に入りの場所です」

スラお「おはないっぱい!」

スー勇者「お花も綺麗ですし。それに、夕焼けと朝焼けがすごく綺麗です」

勇者「おお、いいね。まだ夕焼けにはちょっと早いなあ」

スー勇者「ですので、また朝焼けを、一緒に見に来てくれますです?」

勇者「来よう来よう!是非見たいよ!やー……綺麗だなあ」


サァァァァ…


勇者「……ガルナバークも一望できるし、町を出てからここまでの道も見える――……」

勇者「…………ん?」

スー勇者「?どうしたです?ご主人様」

スラお「うんこ?」

勇者「ちげえよなんでお前いつもうんこ方面なんだよ……スーちゃん、あれ見える?」

スー勇者「え?…………えう?」



……ドドド……



スー勇者「……何かが、全速力で」


勇者「こっちに、走ってきてる、よね」
338 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:34:29.68 ID:PC86Fqf/0

ドドドドドドドド


勇者「っていうか」

スー勇者「もう、そこまで、来て……」


ドドドドドドドドドドド!!!!


ズザァ――――――!!!!


勇者「 」

スー勇者「 」

スラお「あっ!」


「はぁっ、はぁっ……見つけましたよ……!!」


勇者「……あ、貴女は」

スー勇者「ダ……」

スラお「おねいさん!」


ジャキィッ!!!


ダーマ勇者「よくも私を騙してくれましたね!!!!」

ダーマ勇者「ルビス様に代わって……!!!」

ザッ!!



ダーマ勇者「お仕置きです!!!!!!」



スー勇者「ダーマさん……!!」


――――――――――――


スタスタ

ソクラス(さてさて……少年はどうやって彼女をいなしますかな)


ソクラス(あの程度の障害で潰れるならそこで潰れておしまいなさい)


ソクラス(それとも、保身の為に、彼女を力尽くで)


ソクラス(…………殺してでも、乗り越えるか)


ソクラス「クハハっ」


ソクラス(少しだけ、楽しみですなあ)




ソクラス(どうかね?忌み子の勇者君)



339 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/15(木) 00:35:21.93 ID:PC86Fqf/0
今日はおしまいです
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 00:50:22.72 ID:Ouj/vE7co
乙!
続き気になりすぎる
341 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/17(土) 23:55:07.47 ID:nOlj+8Eu0

――――――――――――


勇者「だ、騙した?何を……」

ダーマ勇者「しらばっくれないで下さい!!」

ダーマ勇者「先ほど話を聞きました……!その髪の色!癖っ毛!青い目!銅の剣!!」

ダーマ勇者「あなたがあのガルナの塔の変で賢者様を攫った容疑者勇者なんですね!!」

勇者(あー、今度は騙せそうにないっぽいな)

勇者(同じ船に乗ってここまで一緒に来てたのか……まずったな……。しかしなんで僕の素性にいきなり気付いたんだこの人)

勇者「……」

勇者(もしかして……さっきのおじさんか?)


ヒュンッ


勇者「!?」


スー勇者「っ!ご主人sっ――……」


ダーマ勇者「隙ありっ!!!!」



ガキィィン!!


ダーマ勇者「……!」


勇者「……っ」

勇者(いきなり斬りかかってくるとは思ってなかった。意外と好戦的なのか)

ダーマ勇者(受け流された?今の剣が?)

ギリッ ザッ!

ダーマ勇者(次はそういかせません!……このダーマ聖騎士団の剣術で)


ヒュンッ


勇者「!!」


ダーマ勇者「成敗してくれますッ!!!!」


ガキィン!!


ダーマ勇者「!?」


勇者「……」

勇者(でも、この人剣術が型に嵌りすぎてる)

勇者(ムオル勇者さんが前に言ってた聖騎士がよく使う剣筋だ)
342 : ◆3VOBH3KJAk [sage saga]:2016/12/17(土) 23:55:35.19 ID:nOlj+8Eu0


ガキィン! ガキィン!!


ダーマ勇者「っ!? っ!!」ヒュンッ ヒュンッ


勇者「っ、っく、ふっ」


勇者(やっぱりだ。この人相当な優等生だったんだろうな。出てくる動きが全部本当に型通りだ)

勇者(だとしたら……なんとか、往なせる)


ヒュンッ!!


ダーマ勇者「ぅぁ!?」

ダーマ勇者(す、素手で剣をいなされたっ!!?)


勇者(ただ、こういう聖騎士達は剣術を手放さなければならない時)


ダーマ勇者(それならっ……!!!!)

ダーマ勇者「その……風に……せよ!!」


ゴォォッ


勇者(詠唱が極端に短い神風魔法を連撃の一つとして放ってくる、から!!!)

勇者(横に思い切り逸れてやり過ごす!!!)

ダッ


ダーマ勇者「バギ!!!……ふぇ!!?」


ゴォオオオオッ!!!!


パラパラ……


勇者(うおおお、あっぶな……!!)

ダーマ勇者「なっ、よ、避けないで下さい!!!」

勇者「無茶を言いなさる」


勇者(でも単なるバギで凄い速度だった。やっぱり国連の勇者なだけあって強い)


ダーマ勇者(攻撃が全部読まれてるみたいに悉くかわされた……)


スー勇者(……ふ、二人の動きが速すぎて何をやってるか全然わからなかった……)

スー勇者(でもそうだよね……。ご主人様はもっと速いムオルさんといつも一緒に戦ってたんだもん)
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