うしおとセイバー

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689 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 00:21:36.36 ID:mw6HmJPG0


・柳洞寺境内


ギル「待ちわびたぞセイバー。小僧、それに獣よ」


セイバー「英雄王……」

うしお「ギルガメッシュ……!!」

とら「てめえがここにいるってことは……。槍使いはどうした!?」


ギル「ククッ、ランサーならば狗畜生らしく鎖に繋いで躾けている最中だ」


とら「ちぃ〜〜!! あの馬鹿槍使いがァ〜〜」


ギル「この魔力の密度、頃合いは十分だ」

ギル「ようやく聖杯も化けの皮を着込み始めたとみえる」


セイバー「貴様たちは何を……。ギルガメッシュ、貴様の目的はなんだ!?」


ギル「目的などない。言っただろうセイバー、我の関心はお前だけだと」

690 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 00:48:56.66 ID:mw6HmJPG0


うしお「一つだけ教えてくれねえか、ギルガメッシュ」


ギル「いいだろう小僧。宴の席だ、多少の無礼も許そう」


うしお「……オレは、白面のせいで変わっちまった人を知ってんだ」

うしお「もしかしたらお前や言峰神父も、聖杯のなかの白面のせいで……」


ギル「我が白面の陰の気に染められているのでは、と」

ギル「小僧、侮るな」


うしお「えっ……」


ギル「あのような見上げることしか出来ぬ小者など……」


ギル「何匹いたとしても我を染めれるものかァ!!!!」


うしお「うっ……こ、これが英雄王……ギルガメッシュ……」


ギル「クックックッ……」

ギル「しかし、言峰のほうは分からんな」

ギル「言峰の身体のなかに流れる力は紛れもなく白面のものだ」

ギル「この聖杯戦争を仕組んだのは言峰の意思か、はたまた白面の陰の気か」

ギル「それも間もなく分かる」

691 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 01:11:33.04 ID:mw6HmJPG0


セイバー「なるほど。貴様たちの目的は見えずとも時間はなさそうだ」

セイバー「ウシオ、トラ。先に行ってください」


とら「いーや、先に行くのはおめえよ剣使い」


セイバー「トラ……?」


とら「おめえはあの日の夜に借りを返したろうが」

とら「わしはまだなのよ。槍使いの分も含めて、あの金色野郎はわしの獲物だ」


セイバー「トラ、これはもう貸し借りの話ではありません」

セイバー「貴方も分かっているはずです。貴方と英雄王の相性は最悪と言っていい」


うしお「相性……。確かサーヴァント同士にはクラス相性があるんだよな?」


セイバー「はい。トラは特殊なクラスですが英雄王の対妖怪の宝具は致命的です」

セイバー「勝率のことを考えれば、この場に残るのは私だ」


とら「相性だの勝率だの関係ねーな。わしがあいつより強けりゃいいだけよォ」

692 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 01:42:02.01 ID:mw6HmJPG0


セイバー「ですがトラ、ここは」

うしお「ここはとらに任せよう、セイバー」


セイバー「ウシオ、これは戦局を左右する選択です。貸し借りの優先など」


うしお「ああ、セイバーの言い分のほうが正しいと思うぜ」

うしお「きっと凛姉ちゃんがいたらセイバーを残したんだろうな」


セイバー「それならば……」


うしお「オレはサーヴァントの相性とか知らねえけどよ。ただ……」


うしお「とらが同じヤツに何度も負けるなんて、オレには思えねえんだ」


とら「へっ」


セイバー「……まったく。分かりました。トラ、ここは任せます」

693 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/25(木) 02:10:33.05 ID:mw6HmJPG0


とら「けけ、おめえにしちゃ聞き分けがいいじゃねえか」


うしお「別に本当にそう思っただけさ。それに……」

うしお「お前がここに残ってくれたほうが、オレも安心出来るしな……」


とら「……?」


セイバー「トラ、一つだけ言わせてください」

セイバー「英雄王の対妖怪の宝具は確かに強力です。ですが」


とら「それなら言わんでいい。やつの原典の槍を見たときから分かっとる」


セイバー「え……?」


とら「いいから行きなァ、聖杯が完全に降臨しちまうぜ」

とら「マユコのこともあるのよ。わしもこいつをすぐにブッ倒して追いつくからよ」


うしお「そうだな、麻子たちを早く助けないと……。行こうセイバー!!」

セイバー「はい。トラ、ご武運を」

694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/25(木) 08:34:11.25 ID:otL+smfFO

695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/25(木) 09:45:55.88 ID:EtQF0pBwO
乙ー
696 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 00:33:45.67 ID:ctZZOBd60


とら「生憎だったなァ。てめえの欲しいもんは行っちまったぜ?」


ギル「どこに行こうがあの女は我のモノだ」

ギル「むしろ自ら聖杯に染まりに行くとは……」

ギル「ククッ、泥を飲ませる手間が省けるというもの」


とら「ちっ……。計画通りってか……」


ギル「選択を見誤ったな獣よ」

ギル「我と対峙するのがセイバーならば、万が一の可能性があったかもしれぬというのに」


とら「なにも間違っちゃいねーよ」


ギル「ほう……。獣ふぜいが策を練ったか」


とら「さーて、どうだかね。それよりわしは……」

とら「そのニヤケ面をブン殴りてえだけよォーー!!!!」


ギル「その気合い……妖怪ごときでも宴を飾るに悪くないか」

ギル「よかろう、相手をしてやる。フフフ……フハハハハハハ!!!!」

697 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 00:48:54.75 ID:ctZZOBd60


言峰「ようこそ聖杯降臨の儀式へ、とでも言おうかな」

言峰「蒼月潮にセイバーよ」


うしお「言峰神父、やっぱりここに……!!」

セイバー「あの後ろの空中に捕らわれているのはアサコとマユコ……外道め……!!」


言峰「フッ……」


セイバー「貴様の欲する物は聖杯だろう、彼女たちは関係ないはずだ!!」

うしお「そうだ言峰神父!! 麻子と真由子を下ろしてくれよォ!!」


言峰「それは出来ない相談だな」

言峰「確かにセイバーの言うとおり私の望みは聖杯だ」

言峰「しかし、それには彼女たちの力が不可欠なのだから」


セイバー「なにを……。二人は魔術師ではない、何の力も……いや……」

うしお「まさか真由子の……お役目の力……!?」


言峰「フフ、そのとおりだよ蒼月潮」

698 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 01:11:48.15 ID:ctZZOBd60


言峰「聖杯などという小さな器では白面の泥は溢れてしまう」

言峰「前回の聖杯戦争で、光覇明宗が結界で泥を阻止したときから考えていた」

言峰「あの白面の泥を余すことなく受け止める術はないのかと」


セイバー「それがマユコの力か……!!」

うしお「それで白面の泥を全部手に入れて何をしようってんだよ!?」


言峰「私の望みは変わっていない」


うしお「変わって、ない……?」

セイバー「ここにきて虚言か」

セイバー「貴様の前回の望みは、白面を解き放つことだったはずだ」

セイバー「その白面はウシオとトラによって滅ぼされている」


言峰「うむ、そうだなセイバー。確かにその白面はすでに存在しない」


うしお「それなら……!!」


言峰「ならば新しく白面を生み出し、この世に解き放つ。それが私の望みだ」

699 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 01:31:00.46 ID:ctZZOBd60


セイバー「白面を生み出すっ……!?」

うしお「そ、そんなこと出来るはずがねえっ……!!」


言峰「フフ……」

言峰「聖杯のなかにある白面の体の欠片は、龍脈の力を吸い上げ続け、すでに聖杯を乗っ取っている」

言峰「最早あれは聖杯と呼ぶようなものではない。まさに白面の力そのものと呼ぶに相応しいものだ」


言峰「その白面の泥を、白面の毛皮に形作ったお役目の結界に流し込めば……」


うしお「白面が生まれるっていうのか……!?」


言峰「そうだ蒼月潮」

言峰「私が誕生させるのだ。『この世全ての悪』を」

言峰「私が生み。私が生かす。私が傷つけ私が癒す」


言峰「これこそ我が望み、我が願望……」

言峰「初めからこの世に望まれなかったもの……」




言峰「白面を……!!」




言峰「私が、誕生させるのだよ……!!!!」



700 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/26(金) 02:14:15.76 ID:ctZZOBd60


セイバー「ば、馬鹿な……」

うしお「また白面が生まれる……。あの白面が復活する……」


言峰「それも間もなくだ。すでに聖杯の降臨は始まっている」


うしお「やらせるかよ……。やらせねえぞォ言峰神父!!」

セイバー「そもそも白面の皮の結界など、マユコが手を貸すはずがない!!」


言峰「それはどうかなセイバー」

言峰「中村麻子の首を圧し折る仕草を見せたら、井上真由子は快く引き受けてくれたが?」


セイバー「外道、貴様ァ……!!」

うしお「真由子を言い聞かすために麻子をォ……!!」


言峰「フフフ……」


言峰「さあ、そろそろ宴を……白面の誕生祭を始めよう」


言峰「この白面戦争、お前たちが最後のマスターとサーヴァントだ」

701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/26(金) 11:16:40.96 ID:1LVSvN2Ho
乙ー
702 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 01:11:07.61 ID:IAKDcm/Z0


うしお「えっ!? な、なんだ、この黒い靄は……!?」

セイバー「次第に輪郭がハッキリと……。気をつけてくださいウシオ!!」


黒炎「ケケ……ケケ……」


うしお「こいつらは、黒炎……っ!?」


言峰「ほう、この力がここまで実体化するとは……」

言峰「フフ……。そうか白面よ、間もなくなのだな」

言峰「間もなくお前は完全に具現化する……!!」


うしお「そんな……本当に、白面が復活しちまうのかよ……」


黒炎「キシャァァァァ!!」

セイバー「ウシオっ!!!!」ザシュッ!!


うしお「す、すまねえセイバー!!」


セイバー「この黒い鬼たちは私に任せてください」

セイバー「ウシオ、まだ聖杯は完全に降臨したわけではありません」

セイバー「泥を受け止める結界さえなければ白面の復活はない」


セイバー「ウシオはあの男を倒し、アサコとマユコを助けるのです!!」


うしお「よし……分かった。セイバーここは頼んだぜ!!」

703 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 01:34:00.97 ID:IAKDcm/Z0


うしお「言峰神父……!!」


言峰「フフ……。開幕の夜から予感があった」

言峰「蒼月潮、最後にお前と対峙することになると」


うしお「え……」


言峰「私の身体のなかには白面の力が流れている」

言峰「つくづくお前と白面は縁があるらしい」


うしお「白面との縁か……。確かに縁がないなんて言わないさ」

うしお「最後に聞かせてくれ言峰神父。白面の復活なんてやめないかい?」


言峰「フッ、出来ない相談だ」


うしお「そうかい……。だったら……」


うしお「行っくぞォォーーーー!!!!」


言峰「さあ……。真の開幕を告げよう……!!!!」

704 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 02:09:30.59 ID:IAKDcm/Z0


ドガガガガガガ


ギル「……向こうも始まったか」


とら「余所見してんじゃねえーーっ!!」


ギル「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

パチンッ


とら「ちぃぃ〜〜〜〜!!!!」


ギル「なんだそれは……。以前と変わらず対妖の宝具を避けるだけか」

ギル「無様な、それでは宴は盛り下がるというもの」


とら「けっ、好き放題言いやがるぜ」

とら(あの宝具の雨をかわして、金色野郎に近づけりゃ……)


ギル「まさか獣よ、このまま一芸の披露もなしではあるまいな」


とら(近づけりゃあとはどうにでもなる。だが、どうやって近づくかよ……)

705 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 02:16:30.08 ID:IAKDcm/Z0


うしお「うおおおおおおおお!!!!」


言峰「その槍……。いや、その剣は……」

言峰「フフ、どこぞの小娘にやった物だが。なるほど、意趣返しのつもりか」


うしお「ああ!! だから、負けられないのさァーー!!」


言峰「脇目も振らずに槍の突進、実にお前らしい。だが……」


うしお「あ、あれは……っ!?」

うしお「ぐっ……!!」


言峰「ほう、黒鍵を防いだか」

言峰「今のは知っている動きだったな、蒼月潮」


うしお「それを使う姉ちゃんと一緒に戦ったことがあってさ!!」


言峰「代行者と……。それでは黒鍵は有効ではなさそうだ」

言峰「しかし、それはこちらとしても……。フ……ッ!!」


うしお(はやっ!?)

うしお「が……はっ……。こ、拳…………」


言峰「ふー……。私としても、こちらのほうが得意だがね」

706 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/27(土) 02:31:04.64 ID:IAKDcm/Z0


黒炎「ケケケケーーーー!!」


セイバー「はああああああ!!」


ザシュッ!!


黒炎「ケケ……ケケ……」


セイバー「際限がない……。黒炎といったか、無数に増え続ける……」

セイバー「おそらく大元の聖杯を破壊しなければ、この増殖は止まらない」


セイバー「早くウシオの援護に行かなければ……!!」


黒炎「キシャァァァァ!!」


セイバー「くっ……!!」


セイバー「ウシオ……トラ……!!」

707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/27(土) 04:22:40.15 ID:riLbTxtSO
乙ー
708 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 15:13:09.74 ID:zHsm64mJ0


ギル「どうした獣よ。もう逃げ場がないぞ」


とら「わしが逃げるかよォ!!」


ギル「この国の言葉で袋のネズミといったか、まさにそれだな」


とら「ちぃっ、こっちもかァ〜〜!!」

ドスッッ!!


とら「ぐぅぅうおおおお!!!!」


ギル「すでに身体中は穴だらけ、そろそろ終わりか」

ギル「くだらん見世物だったな」


とら「まだまだァ、終わりじゃねえ……!!」




『わたし達を使え』




とら「……やっぱそれしかねえか」



709 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 15:41:05.68 ID:zHsm64mJ0


とら「わしだけの力でやりてえのによォ」


とら「しっかし本当におめえら使って上手くいくのか、それ次第だぜ」




『力を、さらなる力をやる。とら、わたし達を使え』




とら「けっ、しゃあねえな。使ってやらあ!!」




『そうだ。そうすれば、おまえは強くなる……!!』



710 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 16:04:01.87 ID:zHsm64mJ0


とら「雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ鳴ぉ雄ぉ!!!!!!」




ギル「追い詰められ、最後は苦し紛れの真正面から特攻か」


ギル「所詮は獣よ。これで終わりに……なっ……貴様、その姿は……!?」




とら「ひゃーっはっはっはっはっ!!!!」




宝具『字伏の鎧』!!!!




ギル「貴様ァ…………。獣の分際で鎧を着込むのかァァーー!!」




とら「こいつらの力を借りるのはちょいと気に入らねーが……!!」


とら「てめえのその驚く顔が見れるなら悪かァねえなァ!!!!」



711 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 16:33:17.12 ID:zHsm64mJ0


ギル「戯れ言をォォーーーー!!!!」




ドガァッ!!

字伏『ぐぅぅ……!!』

とら「お、おい!!」

字伏『わたし達のことは案ずるな。やつに近づくまで必ず保たせる』

字伏『しかし、このような方法が通じるのは一度だけ』


字伏『これで決めるのだ、とら』




とら「言われるまでもねえーーーー!!!!」




ギル「くっ……!!」



712 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 16:58:06.17 ID:zHsm64mJ0


ギル「クッ……ククク……」


とら「なんだァ!?」

とら「もうやつは目の前だってのに身動き出来ねえ!?」


ギル「フフフ……」


とら「こ、こいつァ……」

とら「わしの身体を無数の鎖が縛ってやがるのかよ!?」


字伏『ぐっ、がっ……』バキバキィ


ギル「フハハハ!! ハァーハッハッハッハッ!!!!」


とら「金色野郎!! てめえの宝具かァ!!」

713 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/28(日) 17:28:07.64 ID:zHsm64mJ0


ギル「褒めてやるぞ獣よ。我はこれを使う気はなかったからな」


とら「ちぃぃ〜〜!!」

とら「こんな宝具も持ってるかよ……!!」


ギル「ククク……。しかし、最後の一芸はなかなかに愉しめた」

ギル「獣が鎧を着込むなど珍奇な見世物だが、王としては褒美をやらんとな」


とら「くっそっがァァ〜〜!!」


ギル「暴れても無駄だ。その鎖は妖怪の貴様でも引き千切ることなど出来ん」


ギル「フフフ、褒美だ。受け取るがいい」


とら「そ……そいつァ……!!」


ギル「やはり貴様を消滅させるなら……」




ギル「この獣の槍の原典でなくてはな」



714 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/29(月) 23:36:33.28 ID:IPri3ih30


ギル「聞くところによると貴様は多くの異名を持つらしいな」

ギル「長飛丸、わいら、雷獣、字伏……。そして、黄金の獣」

ギル「これで妖怪ふぜいの貴様も理解出来たであろう」

ギル「黄金の名に相応しい英霊は我だけよ」


ギル「終わりだ」


ドスッ……


ギル「ククッ……。フフフ……ハァーハッハッハッハッ!!」




とら「……けけ、けけけ……。けけ……」




ギル「な……。笑っている……?」


ギル「何故、獣の槍で刺されて消滅しない……!?」


とら「なーんだ、やっぱりかよ。なんのことはねえ」


とら「けけっけっけっ!!」

715 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/29(月) 23:53:36.84 ID:IPri3ih30


ギル「生前、貴様は獣の槍を忌み嫌っていた……」

ギル「サーヴァントとなった貴様の弱点は、獣の槍のはずだ……!!」


とら「けけ……。ああ、そうだぜ」

とら「わしら妖にとって獣の槍は忌々しいクソ槍よォ」


とら「だが、そりゃてめえの持ってる槍じゃねえよなァ?」


ギル「な、に……」


とら「獣の槍の原典だと、けけっけ」

とら「タコが、そんなモンあるわきゃねーだろ」


ギル「この原典の槍が、獣の槍ではないだと……?」


ギル「妖怪ごときが戯れ言を抜かすな……っ!!」

ギル「獣の槍を辿って行けば、必ずこの原典に辿り着く……!!」


とら「けけけ……。いいぜ……」

とら「そこまで言うならよォ、その槍を真名解放してくれねえか」

716 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/30(火) 00:04:35.41 ID:ihjbVzSx0


ギル「真名解放、だと……?」


とら「その槍にゃ封印の赤布がねえ、獣の槍が出来たときのように暴走してねえワケだ」

とら「だったら使用者が能力を解放しねえとなァ」


ギル「……お…………」


とら「獣の槍は認められた人間が使わなきゃ、ただの頑丈な槍だ」

とら「てめえがその槍の使用者だって言うなら真名解放してくれよォ」




ギル「……お……のれ…………」




とら「けけえけっけっけっ!!!! 出来るわきゃねえよなァ!!!!」


とら「槍を手に持ってるのに髪がまったく変化してねえんだからよォォーー!!!!」




ギル「おのれええええ!!!!」




とら「笑わせるぜェ!!!! おめえは宝具を持ってても使えねえのよォ!!!!」


とら「英雄王とやらのくせによォ!!!!」




ギル「おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇぇ!!!!」




とら「ひゃはははは!!!! 怒りやがった!!!!」


とら「英雄王が怒りやがったぜええ!!!!」



717 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/30(火) 00:20:37.43 ID:ihjbVzSx0


ギル「首を伸ばして、自身の四肢を噛み切るだと……っ!?」

ギル「おのれバケモノめええーーーー!!!!」


とら「そうだァ!! わしはバケモノだぜェ!!」

とら「これだけ近づかれりゃ得意の宝具の撃ち出しは出来ねえよなァ!!!!」


ギル「ぐぅぅ……くっ……!!」


とら「たわけえ!! そのねじれた剣は使わせねえ!!」


ギル「がっ……」


とら「そいつがてめえの真の宝具なんだろうが使わせるかァーー!!」

とら「わしは剣使いと違って騎士道精神なんて持っとらんのよォ!!!!」


ギル「おのれええ……っ!!」


とら「慢心したなァ英雄王!!」

とら「わしを殺すのにわざわざ獣の槍を使おうとするからこうなるのよォーー!!」




ギル「おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇぇーーーー!!!!」




とら「妖殺しの逸話のある剣でも弓でも出しときゃ勝負は違ってたぜェェ〜〜〜〜!!!!」




ギル「おのれええええええええええええええええええええええええ!!!!」




とら「おのれの…………負けだ…………!!!!!!」



718 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/01/30(火) 00:35:22.88 ID:ihjbVzSx0


ギル「ククク……」


サァァァァ


ギル「いつの時代も、バケモノは我を愉しませる」


とら「けっ、こんな決着で納得出来るかよ」

とら「ただのまぐれ勝ちじゃねえか」


ギル「早く行くがいい。小僧とセイバーだけではアレには勝てぬ」

ギル「獣よ、あのときと同じだ」


とら「あのときだァ?」


とら「……待てよ……。そうだ、あのときもおかしいと思ったぜ」

とら「白面との最終局面、なんで北の土地神や雪妖があんな簡単に南の海に来れた」


とら「空は婢妖と黒炎に覆われてたってのに……!!」


ギル「フフ……舞台を盛り上げるのは、なにも演者だけではない」


ギル「ときには観客の一声で盛り上がることもある」


とら「てめえ……っ!!」




とら「……ちっ……いろんな人間を喰ってきたが……」




とら「ここまで喰えねえやつは初めてよ、英雄王」




ギル「クックックッ…………フフフフ…………」




ギル「ハァーーーーハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」



719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 02:59:07.98 ID:Q9I3LLebO

720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 12:48:59.27 ID:d04LsIlvo
これ読んでるやついるの?
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 13:43:17.99 ID:2OCwT8J0O
読んでますけど
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 13:47:24.41 ID:69eR3iofo
読んでるがなにか?
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 14:47:37.49 ID:LfXFVuHX0
次回も楽しみですけど?
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 16:51:57.69 ID:d04LsIlvo
めっちゃ怒ってて草
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 21:15:39.16 ID:FfHpqxkwO
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/31(水) 05:36:28.76 ID:Ucp6ev+qO
乙ー
727 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/26(月) 21:55:27.00 ID:7phizB+e0


うしお「うおおおおーーーー!!」


言峰「ハァァッ!!」


うしお「ぐっ……はっ……」


言峰「フッ……」


うしお「はぁ……はぁ……。つ、つえぇ……」

うしお「これは聖杯の力じゃない、言峰神父自身の力だ……っ!!」


言峰「私も衰えはしたが、獣の槍を持たぬお前に負けるつもりはない」


うしお「獣の槍は必要ねえさ……。それより言峰神父……」

うしお「なんでだよ、なんで白面を復活しようなんて思うんだ……!!」


言峰「……そうだな。私の望みは語ったが、その理由までは語っていないか」


うしお「白面が復活したらどうなるかなんて、もう二年前のときに分かっただろ!?」


言峰「フフ、だからこそだ。私はまたあれが見たいのだから」

728 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/26(月) 22:15:26.67 ID:7phizB+e0


うしお「え……」


言峰「二年前の白面、あれは本当に素晴らしかった」

言峰「あのような地獄の光景こそ、魂の炸裂、人間の最高の煌めきがある」

言峰「生存という助走距離をもって高く飛び、空に届き、尊く輝くもの……」

言峰「その瞬きこそ、人間の価値だ」


うしお「なにを……言って……」


言峰「理解出来ないか蒼月潮」

言峰「人間とは、死の瞬間にこそ価値がある」


うしお「言峰神父……。本気で、言ってるのかい……」


言峰「ああ、もちろんだ」

言峰「歪な形ではあるが私ほど人間を愛している者はいない」


うしお「そんなこと……そんなこと……」


うしお「分かってたまるかァァーーっ!!」


言峰「お前は白面と、いや、『この世全ての悪』と対となる存在……」

言峰「蒼月潮が理解出来ないのも道理か」

729 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/26(月) 22:50:02.34 ID:7phizB+e0


言峰「我が生涯をかけた問いの答え、それこそ白面がもたらすもの」

言峰「許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を」

言峰「光あるものには闇を、生あるものには暗い死を」

言峰「白面の者こそ、我が望みの全て」


うしお「だから……白面を復活させるなんて言うのかよ……っ!!」


言峰「そうだ。あの地獄の光景を私は再び見る」


言峰「何故なら、白面がこの国を蹂躙していくさまを見て……」


言峰「私は生まれて初めて……」




言峰「心から嗤ったのだからなァア」




うしお「そ、その顔は……っ!?」



730 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/26(月) 23:09:25.37 ID:7phizB+e0


うしお「言峰神父、やっぱり聖杯に……」


うしお「白面に汚染されて……!!」


言峰「フフ、それは違うな蒼月潮」

言峰「私は染められてなどいない」

言峰「そしてそれこそが、私が生まれながらにして悪だという証明だ」


うしお「証明……!?」


言峰「私は前回の聖杯戦争で白面の泥を浴びた」

言峰「しかし私は白面に染められることなく生き返り、聖杯の力を手に入れたのだ」


言峰「これこそ私が白面と同じ存在であるということ」


言峰「自身の本質の証明、私が探し続けた答えだ」


うしお「言峰神父が……白面と同じ……」

731 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/26(月) 23:20:52.39 ID:7phizB+e0


言峰「つまるところ、私とお前の戦いは二年前の延長戦だ」


うしお「もう…………分かったよ…………」


うしお「言峰神父は、白面に染められてるワケじゃねえんだな……」


うしお「あの戦いの延長戦か……。だったらよ、だったら尚更……」




うしお「負けられねえじゃねえかァァーーーーッ!!!!」




言峰「それでいい蒼月潮。お前の全てを賭けろ」


言峰「私がお前を、陽の存在を破ることで白面の敗北を……」


言峰「あのようなツマラナイ結末を帳消しに出来る……!!!!」


うしお「なにをォォ!!」


言峰「私が白面を誕生させる理由、それはつまり自身を解き放つということだ」


言峰「これほどの欲望の解放があるだろうか……!!」


言峰「娯楽、愉悦、それらを超えて私は自身の、白面の誕生を祝福しよう……!!!!」

732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/27(火) 09:35:49.39 ID:cYywp1CvO
乙ー
733 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/28(水) 22:13:13.95 ID:lHs5WfeI0


うしお「うおおおおおおおお!!!!」


言峰「フッ……!!」


うしお「どうだァァーーーー!!!!」


言峰「悪くない、やるではないか……!!」


うしお「おおおおおおおお!!!!」


言峰「しかし甘いな……!!」


うしお「くっそォォ〜〜〜〜!!!!」


言峰「ハァァッ……!!」


うしお「ぐ……はっ……」

734 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/28(水) 22:24:54.06 ID:lHs5WfeI0


うしお「はぁ、はぁ……」


言峰「うむ……。まだ立ち上がれるか」

言峰「これでも並の人間なら死ぬ程度には拳打を入れているつもりだが」


うしお「オレは何度でも立つぜ……」


言峰「その果てに、私に敗北するとしてもか?」


うしお「勝つさ……!!」


言峰「フフ、雷獣とセイバーの援護を期待しているなら無駄だ」


言峰「いくら待っても来れるはずがない。今のお前は一人だ」




うしお「いーや、違うぜ。言峰神父……」




うしお「今、オレは凛姉ちゃんと一緒に戦ってんだ……!!!!」



735 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/28(水) 23:04:59.15 ID:lHs5WfeI0


ボオォッ


うしお「こ、これは……!?」


言峰「槍が燃えて……。それは、炎の魔術……」

言峰「遠坂時臣の魔術に似せた小細工か。凛め、くだらんことをする」


言峰「……いや待て、回路のない蒼月潮に魔術の発動は出来ない」

言峰「その力は誰のものだ……っ!?」


うしお「すげえぜ凛姉ちゃん。アゾットの槍から力が溢れてくる、まるで獣の槍みてえだ」

うしお「よーし、これならァ……!!」


言峰「あのアゾット剣にそんな能力はなかったはずだ……」


言峰「だが、その力は我が師の…………馬鹿な…………」


うしお「言峰神父、行っくぞォォーーーー!!!!」


うしお「うおおおおおおおお!!!!」


言峰「ぐううううぅぅぅぅ…………!!!!」

736 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/28(水) 23:12:50.65 ID:lHs5WfeI0


うしお「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!」


言峰「ぐっ…………!!!!」


言峰(この聖杯戦争で観測された不可解な現象……)


言峰(暴走したバーサーカーの解放……間桐桜の呪縛の断ち切り……)


言峰(それらは全て雷獣の宝具、獣の槍の能力だと極め込んでいた)


言峰(そういうことか……!! 蒼月潮は……現存する英霊……!!)


言峰(宝具と呼べるほどの、昇華された能力を持っていたとしても……!!!!)




うしお「これで言峰神父……!!」


うしお「終わりだァァァァーーーー!!!!」




言峰「がっ…………はっ…………」



737 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/28(水) 23:23:03.18 ID:lHs5WfeI0


言峰「は……はっ……。そう、か……」


言峰「生者も死者も、関係なく……陽の存在を連れてくる……」


言峰「蒼月潮の……使用者に自覚がなくとも、能力を発揮する……」




言峰「常時発動型の宝具…………」




言峰「フ……フフ…………」




言峰「なるほど…………あの白面が敗れるはずだ…………」



738 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/28(水) 23:40:18.33 ID:lHs5WfeI0


うしお「もう聖杯の儀式を……。言峰神父、白面の復活を止めてくれ」


言峰「フッ……。私は言ったはずだぞ蒼月潮」


言峰「出来ない相談だと」


うしお「えっ……」



セイバー「ウシオーー!!」



うしお「セイバー!? そっちは大丈夫か!?」


セイバー「はい、私は問題ありません。一時的だとは思いますが黒炎も掃討出来ました」


セイバー「しかしウシオ、気をつけてください!!」


セイバー「このような魔力の密度は今まで感じたことがありません……!!」

739 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/02/28(水) 23:50:19.81 ID:lHs5WfeI0


とら「ちぃぃ〜〜〜〜!!!!」

とら「英雄王が言ってやがったのは、やっぱりかよォ……!!!!」


うしお「とらァ!?」


セイバー「ま、まさか……トラ…………」


セイバー「これが……これが……そうだと、いうのですか…………」


うしお「とら、セイバー、どういうことなんだ!?」


言峰「サーヴァントの雷獣とセイバーには視えているか」


言峰「いや、もうお前にも実体が視えているのではないかね」




うしお「え…………あ…………あぁ…………そ、そんな…………」




言峰「もはや誰にも聖杯の儀式を止めることは出来ない」


言峰「私にも、そして蒼月潮、お前にもだ」




『くっくっくっ…………』




言峰「さぁ…………白面の誕生だ…………」



740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/02(金) 17:26:52.60 ID:ZhRS6Pr9O
乙ー
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/16(金) 10:13:06.51 ID:utt+mpBTo
乙!
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/17(土) 02:44:07.48 ID:qHooJXbdO
下げ
743 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/03/31(土) 22:25:35.81 ID:TQMvubgJ0


セイバー(これが……)


セイバー(原初と混沌の時代、わだかまった陰の気より誕生した邪悪の化身……)


セイバー(白面の者……!!!!)


セイバー(黒炎のときと同じだ。まだ輪郭程度しか分からないが……)

セイバー(確かに視える。そこに存在している、生まれようと……!!)




『また、会ったな』




とら「ちっ……」




セイバー「な、なんだ、頭に響くような……」


言峰「フフ……この声は……」


うしお「白面の、声だ……」

744 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/03/31(土) 22:59:07.40 ID:TQMvubgJ0


うしお「また……って聞こえた……」


セイバー「ウシオもトラも白面と因縁のある相手、おかしくはない」

セイバー「だが、今のはトラに向けた言葉だったような……」


うしお「分からねえ……」

うしお「でも今のはオレの知ってる白面の声だった」


セイバー「しかし、まだ白面は完全には実体化していないはず。どうやって……」


セイバー「あれは……」


セイバー「ウシオ、見てください!!」


うしお「皮の結界の中心……。あれは白面の体の欠片!?」


セイバー「聖杯を染め上げ、聖杯戦争を狂わせた全ての元凶……!!」


うしお「あれから白面の声が聞こえてるのか……っ!?」

745 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/03/31(土) 23:22:34.12 ID:TQMvubgJ0


セイバー「あの白面の欠片が龍脈を吸い上げているのなら、欠片さえ壊せば……」


うしお「白面の復活を止めれる……」


セイバー「ウシオ、欠片を破壊しましょう!!」

うしお「ああ!!」


キィィン!!


うしお「これは、黒鍵……!?」


言峰「そのような行為を私が見逃すと?」


黒炎「キキキキ……」

黒炎「キシャァァァァ!!」


セイバー「貴様たち……!!」

うしお「言峰神父……!!」

746 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/03/31(土) 23:46:58.20 ID:TQMvubgJ0


『この世界……この次元だと何度目だ?』


とら「さーて、もう数えちゃいねえよ」


『くくっ……。だが、不思議に思ったであろうなアァ……』


とら「あ……?」


『守護者の召喚ではなく、聖杯戦争などという召喚……くくく……』


とら「何が、言いてえ……」




『聖杯のなかの我が、おまえを呼んだのだ』




とら「なにィ……!?」




『やはり……我が生まれるなら…………』


『おまえの魔力……いや……血肉で育ち生まれなければ…………』




『なァ、シャガクシャァア』




とら「てめえ…………っ!!!!」




『くっくっくっ…………永遠のときの淵……星の滅びで…………』








『また会おうぞ』







747 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/03/31(土) 23:58:48.92 ID:TQMvubgJ0




『……お…………』




とら「ちぃ……。そういうことかよォ〜〜〜〜!!」




『…………お………………お……………………』




うしお「白面の……」

セイバー「様子がおかしい……?」


言峰「これは、どうなっている……」




ピキピキピキ……


パリィィン!!




セイバー「聖杯のなかの、白面の欠片が……!?」


うしお「割れた……っ!!!?」






『おおおぎゃああああああああーーーーーー!!!!!!』





748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/02(月) 22:26:43.04 ID:aMQpWNiAO
乙ー
749 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/04/29(日) 22:47:05.65 ID:aRXbxVaE0


とら「くっそがァ〜〜〜〜!!」


うしお「お、おいとら!! こりゃどうなってんだ!?」

とら「どうもこうもねえ、ヤツの本当の狙いは始めからこれだったのよォ!!」

セイバー「あれが白面の狙い……!?」

うしお「白面は言峰神父と協力して、復活を企んでたんじゃ……」

とら「タコが、そんなもんヤツは考えちゃいねーよ」


言峰「な、に……?」


とら「考えてみろクソうしお」

とら「あの白面が魔術師の儀式ひとつで復活なんて出来るのかよ?」

うしお「そ、そりゃ多分すげえ魔術師なら……」

とら「もし本当に出来るんなら大昔からヤツは世界中の魔術師に使いを送ってらァ」

セイバー「なるほど……。それでは白面は聖杯で復活出来ないことを知っていたと?」

とら「ああ、分かってたのさ」

とら「聖杯なんて大そうな名前で呼んでやがるが、ありゃただの魔力の塊よォ」

750 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/04/29(日) 22:58:33.86 ID:aRXbxVaE0


セイバー「しかし白面は、前回の聖杯戦争からあの男と組んでいたはず」

うしお「そうだぜとら。聖杯を利用して母ちゃんのいた柱を壊そうと……」

とら「そりゃヤツの分身の目的だ。白面の本来の目的じゃねえな」

セイバー「それでは……まさか……」


うしお「斗和子と白面の狙いは別だったってことかよ……っ!?」


とら「白面にとっちゃ聖杯も聖杯戦争もどうでもよかったのさ」

とら「ヤツに重要なのは、聖杯のなかにあるモンだけだからな」


セイバー「白面の体の欠片……」


とら「人間どもが勝手にやってた聖杯戦争だ」

とら「それを壊すために欠片を利用するなんざ、ヤツが見逃すわけがねえ」


うしお「そうか……。白面の本当の目的は……」

セイバー「自身の欠片を利用した魔術師たちへの報復……!?」

751 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/04/29(日) 23:10:24.08 ID:aRXbxVaE0


とら「ヤツは前回の聖杯戦争から仕組んでやがった」

とら「あとはそこの野郎にあることないこと吹き込んで今回の聖杯を降臨させたのよ」

とら「そして龍脈の魔力が大量に集まったところで、欠片を割って聖杯を違うモンに変える」



とら「それがヤツの……白面の計画よォ……!!!!」



セイバー「あらゆる願いを叶える聖杯が手に入る直前で……」

うしお「聖杯を変える……!?」



セイバー「それは確かに、魔術師への報復としては最大限のもの……」

うしお「いや、きっとそれだけじゃねえ」

うしお「白面は自分への恐れや憎しみを取り込んで力に変えるんだ」

うしお「どんな魔術師だって、そんなことをされたら……」

とら「ああ、それも狙いだろうな」

752 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/04/29(日) 23:18:32.80 ID:aRXbxVaE0


とら「まぁヤツにも誤算はあったぜ」

セイバー「誤算……?」

とら「欠片より先にてめえがブッ倒されるなんてヤツが想像するかよ」

うしお「そうか、憎しみを取り込む白面の本体はもういねえからな」




『…………お………………お……………………』




うしお「それじゃあよ、とら……。こいつは…………」

セイバー「願いを叶える聖杯でもなく、邪悪の化身の白面の者でもない……」


とら「ああ、そうだ」


とら「こいつは白面の泥…………陰の気に染まった大量の魔力…………」




とら「それが白面の皮を被っただけの…………」




とら「バケモノだぜ…………!!!!」




白面の泥『おおおぎゃああああああああーーーーーー!!!!!!』



753 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/04/29(日) 23:30:46.15 ID:aRXbxVaE0


言峰「フ……フフ……。そうか雷獣よ、白面は誕生しないか」


うしお「言峰、神父……?」


言峰「いや、その通りだ」

言峰「確かに白面の欠片とお役目の結界を使おうとも荒唐無稽な話か」

言峰「あの白面の者を誕生させるなど、魔法使いでも及び難い」


セイバー「まさか貴様、それを知りながら……!!」


言峰「それは違うなセイバー。私は白面の者を降臨するつもりだった」

言峰「白面の欠片の囁きに従い、聖杯戦争を開幕させた。私の願いのために」

言峰「そして……。その願いは叶ったようだ」


とら「あ……?」

うしお「とらの話を聞いてただろ言峰神父!! 白面に騙されてたんだぜ!?」

うしお「言峰神父のために復活なんて、白面はこれっぽっちも考えちゃいねえよォ!!」

うしお「あれは白面でもなけりゃ聖杯でもねえんだ!!」

754 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/04/29(日) 23:40:03.88 ID:aRXbxVaE0


言峰「やはり理解出来ないか、蒼月潮」


うしお「えっ……?」


言峰「聖杯を制御する中枢、白面の核となるはずだった欠片が割れた」

言峰「最早この聖杯、このバケモノが望むまま暴れるだけだ」

言峰「お役目の結界以上に龍脈の魔力を吸い上げ続け、泥を作り続けるだろう」


うしお「そ、そんな……」


言峰「龍脈とは星に流れる魔力の軌跡、一つの巨大な生命の鼓動、この大地の要だ」


うしお「大地の要……。妖たちが石となって支えてくれた場所……っ!?」

とら「そいつの力が吸われるってえことは……」

セイバー「この地、この国が、再び沈み始める……!!」




言峰「フフ……。蒼月潮、あれはお前にとって聖杯でも白面でもないか」




言峰「私にとっては、このバケモノは望みを叶える聖杯であり白面だよ」



755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/03(木) 00:43:31.18 ID:xtmJJD7Ro
乙ー
756 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/05/06(日) 00:22:15.66 ID:2Vzlj23Y0



白面の泥『おおおおおおおおおおおおーーーーーー!!!!!!』



黒炎「!?!?!?!?」

黒炎「ギャッ……!?」



セイバー「なんだ……。仲間割れ……!?」

とら「いーや、ヤツは黒炎どもを取り込んでやがるのよォ!!」


うしお「白面の細胞が暴走したときと同じだ……」

うしお「力を……魔力を手当たり次第に飲み込んで……」

うしお「こいつは言峰神父の言うとおり、この星の龍脈も吸い尽くしちまう……!!」



白面の泥『おおおおおお…………おおお………………』

ガシィッ

言峰「そうか、白面よ、聖杯降臨後は用済みか。フフ……ハハハハ……!!」



うしお「言峰神父!?」


757 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/05/06(日) 00:31:09.54 ID:2Vzlj23Y0


言峰「身体が動かん。いや、そうだろうな」

言峰「私はお前と同じ悪性を持つもの、何よりも先に取り込もうとするのは道理」

言峰「『この世全ての悪』を名乗るならば、私を取り込むのも必然か」

言峰「思惑通りだろうな白面よ。だが本来この力はお前のものだ」

言峰「前回の聖杯戦争、その力を借りて生き返った。それを返すだけのこと」


うしお「ま、待て……っ!!」


言峰「私としては好都合だ。二年前に見るはずだった地獄の光景、私が望んだ世界……」

言峰「それを、この白面に成り変わり見ることが出来る」


言峰「悦ばしい。私の望みはようやく、かな」


白面の泥『おおおぎゃああああああああ!!!!!!』

グシャァッ



うしお「あ……あぁ…………言峰神父………………」



とら「ちっ……。英雄王と同じ勝ち逃げかよ」

セイバー「しかし、置き土産が強大すぎる……」

758 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/05/06(日) 00:41:02.59 ID:2Vzlj23Y0


ドロォ……ベチャ……

ベチャ、ベチャ


セイバー「トラ、あれは……」

とら「泥が溢れ出てやがる、白面の皮の許容量を超えやがった」

セイバー「それでは、このバケモノは完全に実体化を……」


とら「ああ、その通りよ」

とら「こいつは今すぐにでも暴れ出すぜェ……!!」


セイバー「私たちが倒せなければ、この国、いや、この世界は……」

とら「けけけ、なーに剣使い、心配なんかすんじゃねえよ」

セイバー「トラ……?」

とら「わしらは倒したことがあるのよ」


とら「こんな真っ黒な気味の悪ィ白面なんかじゃねえ、本物の白面よォ!!!!」


うしお「………………」

759 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/05/06(日) 00:46:18.79 ID:2Vzlj23Y0


セイバー「そうか……。トラの宝具の特性は白面に対して有効のもの……!!」


とら「獣の槍がありゃ、こんな白面くせえだけのバケモノに負けるかよ」


とら「なァ、うしお?」



うしお「……っ………」



とら「くくっ、やーっとこの聖杯戦争もしめえに出来そうだぜ!!」

セイバー「そうですね。ウシオ、私たちの手で決着をつけましょう!!」


とら「さぁうしお……!!」




とら「槍を呼びなァ!!!!」




うしお「…………」




とら「あ……?」



760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/06(日) 20:50:42.51 ID:j98RPoIYO
乙ー
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 22:50:52.56 ID:KwQ4WPaB0
乙ー
相変わらず熱いなあ
762 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/06/03(日) 22:37:24.42 ID:2QgKRgO50


・柳洞寺付近道路


タッタッタッ

凛「ふー……」

凛「こっちはどうかしらキリオくん、みんな集まってる?」


キリオ「うん、大丈夫だよ。お姉ちゃんのほうは?」


凛「宝石はなんとか確保出来たわ」

凛「ま、帰って来たらメイドでもなんでもやってやるわよ」


キリオ(メイド……?)


凛「キリオくんのほうはどう?」

キリオ「大丈夫。法力もエレザールの鎌も準備は出来てる」

凛「了解、お互い戦闘準備はオッケーってことね」


キリオ(真由子姉ちゃん、必ず助けるよ)

763 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/06/03(日) 22:49:58.11 ID:2QgKRgO50


桜「でも姉さん、この山の上に本当にあの白面がいるんですか?」

凛「私だって信じたくないわよ。この聖杯戦争が二年前の延長戦だったなんてね」

凛「でも、私ととらの繋がりで大体の状況は把握してるつもりよ」


イリヤ「そのバケモノを倒せば全てが終わるならやるだけよ」

イリヤ「アインツベルンの……ううん、私自身の手で聖杯戦争を終結させるわ」


セラ「お嬢さま……。はい、やりましょう」

リズ「私も、戦う」


凛「みんな準備も覚悟も出来てる、か」

桜「私に出来ることは少ないかもしれません」

桜「それでも、私もうしおくんやとらさんたちと戦いたいです」

凛「桜……。ええ、そうね。それは私もよ」


凛「それじゃみんな、行くわよ!!」

タッタッタッ


凛(とら……。アンタは、どうするのよ……)

764 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/06/03(日) 23:05:22.71 ID:2QgKRgO50


セイバー「ん……?」

とら「おいうしお、聞こえなかったのかァ?」

とら「わしが槍を呼べって言ったろうが」


うしお「………………」


セイバー「ウシオ、どうしたのです?」


うしお「槍は……」


うしお「獣の槍は、使わなくてもいいさ」


セイバー「それは……どういう意味ですか……?」


とら「けけけっ、おいおいうしお」

とら「まさか今更おめえが白面に怖じ気づいたなんて言うんじゃねえだろうなァ?」


うしお「そんなんじゃねえよ、とら……。オレは……」


とら「ああ……?」

765 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/06/03(日) 23:15:58.69 ID:2QgKRgO50


セイバー「ウシオ、もちろん私たちも理解しています」

セイバー「サーヴァントである我々がマスターの貴方に戦いを要請するなど間違っている」

セイバー「ですが現状の戦力を考えればウシオも分かるはずです」


うしお「そりゃ、オレだって……」


セイバー「あの白面の泥のバケモノを倒すにはトラの宝具が、獣の槍が不可欠です」

セイバー「それにウシオの得物はリンの魔術か何かで焼失してしまっている、二槍になることもない」

セイバー「獣の槍を呼び出すことに何も問題はないはずです」


うしお「…………。ダメなんだ、セイバー……。獣の槍を呼んじゃ……」


セイバー「え……」


とら「おめえ、まさか……」


うしお「……っ………」

766 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/06/03(日) 23:28:27.28 ID:2QgKRgO50


うしお「そ、そうだ……っ」

うしお「何も宝具は獣の槍だけじゃねえ」

うしお「オレたちにはセイバーがいるじゃないかっ!!」


セイバー「私、ですか……?」

とら「……………………」


うしお「ははっ、なんで思いつかなかったんだ」

うしお「セイバーの宝具を使えば泥のバケモノなんて簡単に倒せるぜ!!」

うしお「なぁ、とらだって認めてたじゃねえか、セイバーの聖剣はすげえってよ」


とら「……………………」


うしお「そうだろとら、獣の槍を使う必要なんてないぜ……!!」


とら「うしお」


うしお「な、なんだよ……。それじゃダメなのかよ……」

767 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/06/03(日) 23:42:17.65 ID:2QgKRgO50


うしお「待てよ……。凛姉ちゃんから聞いたことがあるぜ」

うしお「セイバー、聖杯戦争の大元は魔術協会ってところなんだろ?」

うしお「白面の泥なんてオオゴトになったんだぜ、あとはそこに任せたほうがいいんじゃねえか?」


セイバー「ウシオ……。なにを、言って……」


うしお「それもダメだって言うなら、光覇明宗のみんなもいるじゃねえか」

うしお「親父も動いてるって話しだし……無理にオレたちが戦わなくても……」


ガシィッ!!


とら「おめえ、それ本気で言ってんのか?」


うしお「なんだよとら、放せよ……」

うしお「オレ、そんなに変なこと言ってるか……?」


とら「ああ、言ってるぜ」

とら「おめえらしくねえことをべらべらとなァ……!!!!」

768 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/06/03(日) 23:53:17.35 ID:2QgKRgO50


セイバー「本当にどうしたのですか、ウシオ」

うしお「………………」

とら「いいさ剣使い。この馬鹿が忘れたっていうんなら思い出させるだけよ」


とら「白面は、いや、白面に関係するものは獣の槍じゃなきゃ倒せねえ」


とら「そいつをこの世で一番よーく知ってんのはおめえだぜ」




とら「うしおォ!!!!」




うしお「そんなの…………分かってらい…………」


とら「だったら槍を呼べと言っ」


うしお「……え……んだろ…………」


とら「あ……?」




うしお「消えんだろ……。次に、獣の槍を呼んだら……」




うしお「とら…………消えちまうんだろ…………?」



769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/04(月) 23:49:50.59 ID:B/8Zb7gfo
乙ー
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 08:17:04.56 ID:DUHWBG00O
うしおがこういう風に弱気になると、そういやまだ中学生だもんなぁってなるわ
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 21:37:13.51 ID:mY4FQ+11O
このSSだと一応高校生では?
それにしたって2回目の別れは辛いよなぁ…
772 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/07(土) 23:40:16.36 ID:+sZ9dA/h0


・言峰教会


紫暮「間に合わなかったか……」


紫暮(この国と魔術協会、その二つの上層部に阻まれ光覇明宗は今回の聖杯戦争に関われなかった)

紫暮(しかし両者のパワーゲームが終わり、やっと光覇明宗が動けるようになったと思った矢先に……)

紫暮(言峰綺礼……。侮れん人物だ、前回の聖杯戦争で切嗣が最も警戒していただけはある)


紫暮「この瘴気の密度……。やはり聖杯の降臨場所は柳洞寺……」


??「紫暮」


紫暮「舞弥か。そちらはどうなっている?」


舞弥「全て伝令通りに」

舞弥「すでに厚沢一尉率いる特殊災害対策室の部隊はこちらに向かっています」


紫暮「うむ……。総本山の法力僧たちも駆けつけている」

紫暮「遅れたが聖杯戦争は終わっていない。舞弥、私たちも戦うぞ」

773 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/07(土) 23:52:54.88 ID:+sZ9dA/h0


・柳洞寺付近


タッタッタッ


紫暮「………………」

舞弥「どうかしましたか、紫暮」


紫暮「私は、切嗣との約束を何一つ果たせてないと思ってな」


舞弥「どういう意味です?」


紫暮「あれから、託された娘には森の結界で会うことも出来ず、使用人の二人に会えた程度だ」

紫暮「それに聖剣の鞘は、記憶を喰らう婢妖から逃れるための石化でうしおに渡せなかった」

紫暮「私は、前回の聖杯戦争で白面から世界を救ったアイツに何も出来ていない」


舞弥「……切嗣への手向けならば今からでも遅くはありません」

舞弥「あの人の望みは白面のいない世界、あの白面入りの聖杯を破壊することが最大の手向けです」


紫暮「舞弥……。ああ、そうだったな」

774 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/08(日) 00:06:44.12 ID:fkO4N3sR0


紫暮「それはそうと舞弥……」

紫暮「やはり、その……須磨子は、来とるのか」


舞弥「はい。紫暮の言葉、総本山に残るようにと伝えたのですが」

舞弥「押し切られました」


紫暮「舞弥でも駄目だったかァ〜〜」

紫暮「あれは本当にニコニコ笑って押しが強いんだよ……」


舞弥「また保険の勧誘、すすめてみますか」

紫暮「ホントーにやらせてみたくなってきたなァ」

舞弥「フ……」


紫暮「舞弥」


舞弥「そうですね、分かりました。護衛に戻りましょう」


紫暮「いつもすまん」


舞弥「いえ、押しの強いマダムの護衛は初めてではありませんから」

775 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/08(日) 00:18:00.99 ID:fkO4N3sR0


・柳洞寺山門


純「紫暮様!」


紫暮「おお。純、間に合ったか」


純「はっ。伝令通り聖杯戦争の後処理の件、埋葬機関の代行者へ伝えました」

紫暮「彼女はなんと?」

純「『この国の代行者として仕事をするだけです』と」

紫暮「そうか、彼女が動いてくれるならば安心だ」

純「それと、その……紫暮様に、伝言が……」

紫暮「ん……?」


純「『これは貸しですよ。またカレーの美味しい店に連れて行ってください』とのことです……」


紫暮「ふふ……」


純「紫暮様……?」


紫暮「いや、彼女も変わらずだな」

776 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/08(日) 00:47:06.66 ID:fkO4N3sR0


紫暮「杜綱、日輪。準備は?」


杜綱「整っています」


紫暮「そうか」

紫暮「しかし用意していたとはいえ、こんな手は使いたくなかったんだがなァ」


日輪「ですが紫暮様、今のヤツなら自分からひと役買ったかと」


杜綱「日輪がそんな風に言うとは思わなかったな」


日輪「フンッ……。まだまだ未熟者だがな」


杜綱「確かに、だが魔術の才能はなくても法力の才能は分からない」

杜綱「このまま修行を続ければあるいは……」


紫暮「うむ。なんにせよ、あとは彼しだいか」


杜綱「はい、ですが彼ならきっと」

日輪「無様な戦いをしたら私が許さないわよ、間桐」

777 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/08(日) 00:56:30.53 ID:fkO4N3sR0


照道「近隣の光覇明宗の法力僧、可能な限り集めております」

紫暮「よし……。総本山の和羅様たちが到着するまで我々だけで敵を阻止するしかない」




紫暮「聞け、光覇明宗の者たちよ!!」

紫暮「おそらく敵の魔術師の目的は、聖杯の力による白面の者の復活だ」


紫暮「白面の完全なる消滅は……我ら光覇明宗の悲願……」




紫暮「心せよ!!」




「「はっ!!」」



778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/08(日) 09:10:02.86 ID:66Jo5YjzO
乙ー
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/15(日) 02:28:56.24 ID:Gc0wOBqdO
fateとうしとらが見事にクロスされているSS初めて見た
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/15(日) 10:43:34.11 ID:B5X7kDcR0

今日見つけて一気に読んでしまったわ
続き楽しみにしてる
781 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 15:11:14.09 ID:h0kV9j4Z0


・穂群原学園付近



タッタッタッ



慎二「よくも関守のヤツ、この僕に何度も遠慮なく土剋水を……」


慎二「いつかこの借りは……ん?」


慎二「柳洞寺の山の上のほうが光って……。チッ、もう始まってるか……っ」


782 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 15:25:27.11 ID:h0kV9j4Z0


・穂群原学園校門


「おーーい、慎二。やっと来たか」


慎二「ああ、それより頼んだヤツらは集まってるのか?」


「言われたとおり弓道部の連中、それに生徒会の一成たちにも集まってもらった」


慎二「よし……。やっぱりこういうのは人並みにお人よしのお前に頼んで正解だったね」


「人並みってなんだよそれ、褒めてるのか……?」


慎二「気にするなよ。とにかく人手がいるんだからさ」


「それなら遠坂に頼まれたとかで三人組の女子や、それ以外にも結構な人数が集まってるけど……」

「でも本当に、柳洞寺一帯でガス漏れ事件が起きてるのか?」


慎二「いや、ガス漏れより恐ろしい二年前と同じことが……」


「えっ……?」


慎二「とにかく僕たちで周辺の住人を避難させるんだよ」

慎二「地元の人間なら抜け道の一つでも知ってるだろ」


慎二「それは光覇明宗の連中には出来ない、僕たちの使命さ」

783 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 16:09:46.77 ID:h0kV9j4Z0


うしお「とらは、消えちまうんだろ?」


とら「おめえやっぱり、わしとりんの話を聞いてたのか」


セイバー「消える……? トラが……?」


セイバー「……いやウシオ、それは何かの間違いです」

セイバー「確かに我らサーヴァントの宝具は多大な魔力を消費します」

セイバー「ですが存在が消えるほどの消費はそうありません」

セイバー「リンは優秀な魔術師だ」

セイバー「それにトラがいくら大食いだといっても、今はサポートにイリヤやサクラもいる」


セイバー「獣の槍を使ったからと……トラが消えるようなことは……」


とら「………………」


セイバー「トラ……なぜ、否定しないのです……」


セイバー「本当、なのですか……?」

784 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 16:21:44.27 ID:h0kV9j4Z0


うしお「教えてくれよ、とら」

うしお「なんで……なんで獣の槍を使うと、お前が消えるなんてことになるんだよ……」


とら「………………」


セイバー「トラ……」


とら「……そういう、契約なのよ」


うしお「契……約……?」


セイバー「まさか守護者の……英霊の……」


とら「うしお、獣の槍はどんな理由で作られた?」


うしお「え……。そりゃ、ギリョウさんが白面が憎くて、白面を倒そうと……」


とら「そうだ、獣の槍は白面を倒すために作られた。それだけに特化した宝具だ」


とら「宝具、獣の槍は……対白面専用宝具なのさ」

785 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 16:40:12.41 ID:h0kV9j4Z0


うしお「獣の槍が、白面専用……」


セイバー「専用宝具……。いえ、そんなはずはありません」

セイバー「現に貴方はこの聖杯戦争で何度も獣の槍を使っている」


とら「けけ、そうさ。だからおめえらが見てねえところで何度も消えかけたぜ」


うしお「なっ……!!」


とら「なにを驚いてやがる、うしお」

とら「獣の槍を使えば代償がいるのはおめえが一番知ってんだろが」


うしお「そ、そんなことならオレは……っ!!」


セイバー(……きっとウシオは宝具を、獣の槍を使わなかった。使えなかった……)

セイバー(ですがそれではバーサーカーを倒せず、サクラも救えなかった)


セイバー(トラ……。貴方はそれが分かっていたから、何も言わず……)

786 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 17:11:08.67 ID:h0kV9j4Z0


とら「なーに気にするこたァねえよ。うしお、剣使い」

とら「わしが消えるなんてことは、はなから決まってたことよ」


うしお「え……」

セイバー「それは、どういうことですか?」


とら「前に言っただろ、全部思い出したってよ」

とら「わしはこの聖杯戦争の正規の参加者じゃねえ、割り込んで来たのさ」


とら「あの白面を、獣の槍でブッ倒すためにな」


セイバー「……っ!?」

セイバー「そうか……。貴方は聖杯戦争の聖杯、あの白面を倒すために召喚された守護者……」


とら「その通りよ。本来ならこの聖杯戦争にゃわし以外の誰かが参加するはずだったろうよ」


セイバー「おそらく残ったアーチャークラスの誰かが……」

セイバー「しかし、この聖杯戦争には白面がかかわっていた。だから貴方が召喚された」


セイバー「白面を倒す唯一の宝具、獣の槍を持ったトラが」


うしお「とらは白面を倒すために……」

787 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 17:37:18.67 ID:h0kV9j4Z0


とら「まぁ、わしも記憶をなくして忘れてたけどよ」

とら「りんが召喚で下手をこいたか、それともわしが無理やり割り込んだのが原因か」

とら「やつのたわ言を真に受けるなら、聖杯のなかの欠片がわしを呼んだからか」

とら「どれにせよ思い出すまで時間をかけちまった」


セイバー「多重の召喚の不具合で……。だから記憶を……」

セイバー「しかし、なぜ白面のことを黙っていたのです?」


とら「どの陣営にやつがいるのか分からなかったからな」

とら「りんに話せばりんが白面に狙われる。わしもますたーを失うわけにゃいかねえ」

とら「しっかし、聖杯自体が白面だとは思わなかったぜ」


セイバー「なるほど……。イレギュラーなエクストラクラスが召喚されたと思っていましたが」

セイバー「この白面主催の聖杯戦争、フタをあけて見ると貴方が最も相応しい参加者だったワケだ」


とら「へっ……。わしはやつをブッ倒すために来たんだ。契約は守るさ」


うしお「なにが…………契約だよ…………」

788 : ◆I4R7vnLM4w [sage saga]:2018/07/16(月) 17:54:17.45 ID:h0kV9j4Z0


うしお「オレは、お前が戻ってきたって思ったんだ……」

うしお「だからこんな聖杯戦争は早く終わらせて、またお前と……っ!!」


セイバー「ウシオ……」


うしお「これからじゃねえか、これからまた昔みたいにさ……!!」

うしお「お前だって真由子の顔を見ただろ!? あんなに喜んでたじゃねえかよっ!!」


うしお「いや真由子だけじゃねえさ、他のみんなだって…………!!!!」




うしお「それに……オレだって……な…………とら…………だから…………」




とら「………………」




とら「そういやァ、うしお」




とら「なーんでわしが英霊なんざやってるか話してなかったな」



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