【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】

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493 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/11/11(土) 22:37:14.89 ID:F89UuPLA0
赤穂「……」

牡丹を拉致したマッドサイエンティスト、病気を抱えて死なない身体……あまりにも似てる。

御影「あの薬は痛み止め、髪は色々弄くられた結果……死なないなら痛みも何とかしてほしいぐらいだよね」

牡丹は、如月さんの妹と同じ……体質、なのか。

御影「兄さん?」

赤穂「……あ、ああ。よく話してくれたな」

御影「信じるの?」

赤穂「ああ、信じるよ。こんな嘘ついても意味ないしな……ところで、その男は今?」

御影「わかんない。無我夢中で逃げたからさ……」

赤穂「……そうか」

もし生きてるなら、絶対捕まえて牡丹を傷つけた罪を償わせてやる。

野放しにして、被害者が出てもいけないからな……

赤穂「……なあ、牡丹」

御影「なに?」

赤穂「俺も話したい……謝りたい事があるんだ」

モノクマフラワーに食われようとしていたお前を助けられなかった。

それはやっぱり、どうしても……

御影「いいよ、別に。私助かったんだし」

赤穂「は……」

御影「如月から聞いた。兄さんがあの場にいて自分責めてるって」

御影「でもほら、それってさ……兄さんが誰かを助けた結果でしょ?」

赤穂「……」

御影「それなら自分責めるなんてやめてよ」

御影「わたしにとってもヒーローだった兄さんにそんな、誰かを助けた事を後悔してるような真似してほしくないから」

赤穂「……牡丹」

御影「とにかく改めてさ……また兄妹としてよろしく」

赤穂「……俺はずっと兄妹のつもりだったけどな」
494 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 20:23:01.25 ID:IolO1JtA0
赤穂「……」

牡丹と和解……いや、別に喧嘩していたわけでもないからその言い方は変か。

とにかくまた兄妹に戻れてよかった……けど問題は未だに山積みだ。

赤穂「まずは歩けるぐらいには怪我を治さないとな……」

コンコン

赤穂「どうぞ」

佐場木「調子はどうだ」

遠見「見回りも兼ねてお見舞いに来たでありますよ」

赤穂「動くと痛むけどそれ以外は特に問題ないな……まあ、昔はもっと酷い怪我したし」

遠見「赤穂殿は無茶しすぎでありますよ!下手をすれば失血死してもおかしくなかったであります!」

赤穂「うっ……」

遠見、相当怒ってるな……

佐場木「だが、お前の行動で色々とわかってきたのも事実だ」

赤穂「わかってきたって、何がだ?」

佐場木「前に苗木が言っていた静音にアドバイスした者の話は覚えているか」

赤穂「ああ、そんな話もあったな」

佐場木「恐らく今回お前を撃ち、御影と兵頭を襲ったのと同一犯だ」

赤穂「なんだって!?」

遠見「さらに前回の事件でグレゴリー殿と四方院殿を水族館に呼び出したのも、このアンノウンだと自分達は睨んでいるでありますよ」
495 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 20:32:40.23 ID:IolO1JtA0
赤穂「……やっぱりそうなのか」

グレゴリーには四方院さんにゴシップ誌を送りつける理由はないと思ってはいたけど……

佐場木「前回の事件、学級裁判でグレゴリーはこう言っていた」

【グレゴリー「…………ぐっ、くっ!」

グレゴリー「なぜだ、なぜこうなった?」

グレゴリー「あのような手紙さえなければ!水の都に優雅なる吹き手がいなければ!」

グレゴリー「我は……!」】

赤穂「グレゴリーも手紙で呼び出されていたって事だよな」

遠見「そこで自分に関しての記事の載った雑誌を持つ四方院殿と会ったのでありますね……」

佐場木「そこで何があったかはもうわからん。だがこれではっきりした」

佐場木「このコロシアイ、こそこそと動き回る奴がいる事がな……」

赤穂「……」

アンノウン……そいつが今までの事件の……!
496 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 22:04:51.24 ID:IolO1JtA0
赤穂「ところで……誰がそのアンノウンなのか目星はついてるのか?」

佐場木「俺と遠見、そしてお前と如月、襲われた土橋、御影、兵頭は容疑者から外れる」

遠見「苗木殿も違うのでは?彼が静音殿へのアドバイスについて話したからこそ、我々は警戒したのでありますし」

赤穂「じゃあ後は鞍馬、道掛、津浦、六山、ジェニー……」

遠見「そのメンバーで怪しいのはやはり、鞍馬殿でありますか」

佐場木「一人だけ才能が不明、単独行動の多さ、如月と渡り合える戦闘能力……推理小説ならあからさますぎてミスリードのための存在だろう」

赤穂「だけどこれは」

佐場木「小説じゃないか……鞍馬には気をつけておく必要があるな」

鞍馬……お前がアンノウンなのか?

俺には、悪い奴には見えなかったんだけどな……
497 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2017/12/02(土) 22:20:01.93 ID:IolO1JtA0
佐場木「どのみち鞍馬は才能以外に何かを隠している……警戒対象である事に変わりはない」

遠見「くっ、軍人だというのに危険人物を拘束も出来ないとは、自分が情けないであります……!」

赤穂「遠見……」

佐場木「ならその分他で役に立て。発電所に行くぞ遠見」

赤穂「あっ、おい佐場木」

佐場木はもう少し言葉を選んでもいいだろうに……

遠見「……」

赤穂「どうした?」

遠見「佐場木殿は優しいでありますなぁ……」

赤穂「……優しいか?いや、真面目ではあるだろうけど」

遠見「あれは他で役に立てる事があるから気にするなと言っているのでありますよ!隊長もそうでありましたからよくわかるであります!」

赤穂「そう、なのか?」

遠見「間違いないでありますよ!」

俺にはよくわからない……

遠見「その命令、了解したでありますよ!」

まあ、遠見が嬉しいなら……いいのか?
498 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/01/03(水) 22:22:54.77 ID:Bs1EuBwW0
コンコン
赤穂「どうぞ」
……
赤穂「……?どうぞ」
カチャ
ジェニー「……」ヒョコ
赤穂「……ジェニー?」
ジェニー「うう……」
どうしたんだいったい……
土橋「ほらほら、何してるの」
ジェニー「わわっ、ミキ……」
赤穂「土橋、ジェニーはどうしたんだ?」
土橋「どうもこの子暗いとこ苦手になっちゃったみたいで……移動するのも相当苦労してるんだよ」
ジェニー「怖いのやです……」
薄井が静音を殺すための暗闇……あれを実際に作らされたのはジェニーだ。
その事が暗闇への苦手意識を生んでるんだろうな……
土橋「それでも政城のお見舞い行きたかったんでしょう?だったらほら、顔見せてあげなって」
ジェニー「は、はいです……」
不安そうな顔をして近付いてくるジェニーに昔の牡丹の顔が重なる。
赤穂「なあ、ジェニー」ナデ
ジェニー「マサキ?」
赤穂「確かに色んな事があって、不安になるのもわかる……暗闇が苦手になるのもな」
赤穂「それでもジェニーはこうして来てくれた。だからきっとジェニーなら大丈夫だよ」
赤穂「まあ、それでも不安ならこんなだけど俺を頼ってくれてもいいからな?出来る限りの事はするよ」
ジェニー「……」
土橋「いい事言うね政城!ジェニー、アタシにも不安ならいつでも甘えてきなよ!」
ジェニー「マサキ、ミキ……はいです!」
少しは、不安を取り除いてやれたか……?
それなら何よりなんだけどな。
499 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/01/03(水) 22:29:21.16 ID:Bs1EuBwW0
コンコン
 
赤穂「どうぞ」
 
……
 
赤穂「……?どうぞ」
 
カチャ
 
ジェニー「……」ヒョコ
 
赤穂「……ジェニー?」
 
ジェニー「うう……」
 
どうしたんだいったい……
 
土橋「ほらほら、何してるの」
 
ジェニー「わわっ、ミキ……」
 
赤穂「土橋、ジェニーはどうしたんだ?」
 
土橋「どうもこの子暗いとこ苦手になっちゃったみたいで……移動するのも相当苦労してるんだよ」
 
ジェニー「怖いのやです……」
 
薄井が静音を殺すための暗闇……あれを実際に作らされたのはジェニーだ。
その事が暗闇への苦手意識を生んでるんだろうな……
 
土橋「それでも政城のお見舞い行きたかったんでしょう?だったらほら、顔見せてあげなって」
 
ジェニー「は、はいです……」
 
不安そうな顔をして近付いてくるジェニーに昔の牡丹の顔が重なる。
 
赤穂「なあ、ジェニー」ナデ
 
ジェニー「マサキ?」
 
赤穂「確かに色んな事があって、不安になるのもわかる……暗闇が苦手になるのもな」
 
赤穂「それでもジェニーはこうして来てくれた。だからきっとジェニーなら大丈夫だよ」
 
赤穂「まあ、それでも不安ならこんなだけど俺を頼ってくれてもいいからな?出来る限りの事はするよ」
 
ジェニー「……」
 
土橋「いい事言うね政城!ジェニー、アタシにも不安ならいつでも甘えてきなよ!」
 
ジェニー「マサキ、ミキ……はいです!」
 
少しは、不安を取り除いてやれたか……?
それなら何よりなんだけどな。
500 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/04(日) 12:00:35.80 ID:5XlKphzG0
コンコン
 
赤穂「どうぞ」
 
ガチャッ
 
六山「やっ、元気かな赤穂くん」
 
赤穂「六山か。まあ、今すぐどうこうはならない程度には……みんなはどうしてる?」
 
六山「暗いと何あるかわからないから佐場木くんと遠見さん以外は基本的に待機してるよ。時々外の空気を吸いに行く人はいるけど」
 
赤穂「そうか……」
 
六山「ところで赤穂くんさ……ずっとベッドにいて暇だよね?」
 
赤穂「んっ?みんなが来てくれるからあんまり……」
 
六山「暇だよね?」ズイッ
 
赤穂「た、多少は」
 
六山「そんな赤穂くんのためにゲームを用意したよ。ほら、暇潰せるようなのいっぱい持ってきたから早速やってみて」
 
赤穂「あ、ああ」
 
ゲームか……確かにこうして動けない以上手持ちぶさたな時間はあるけどな……
 
六山「ほら、こんな暗いと気も滅入るし気分転換だと思ってさ」
 
赤穂「そうだな……ありがとう六山」
 
六山「どういたしまして」
 
その後六山に操作方法を聞きながらゲームをした。
 
途中から操作してる俺より六山の方が熱くなってたけどな……
501 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/04(日) 12:25:39.29 ID:5XlKphzG0
道掛「おーっす赤穂!」
 
赤穂「道掛……それに」
 
鞍馬「……」
 
赤穂「鞍馬も来てくれたのか」
 
道掛「なんか廊下にいたら一緒にな」
 
鞍馬「……勝手に連れてきてよく言いますね」
 
ああ、そういう事か。
 
まあ鞍馬はお見舞いするタイプには見えないしな。
 
道掛「そう言うなって!俺のダチなんだから赤穂と鞍馬だってダチみたいなもんだろ?」
 
鞍馬「……」
 
鞍馬の目が細められる……いつあなたと友達になりましたと言わんばかりだ。
 
鞍馬「いつあなたと友達になりました」
 
そのまま言った……歯に衣着せぬというか、なんというか。
 
道掛「何言ってんだ?熱い勝負をした瞬間からダチだって前に言ったじゃねえか!」
 
赤穂「全く気にしない道掛もすごいな……」
 
鞍馬はかなりはっきり拒絶してるんだろうに。
 
道掛「何がだ?まあすごいって言うなら褒められたんだな俺!」
 
鞍馬「……もういいです」
 
鞍馬が諦めた……
 
赤穂「……」
 
やっぱりこんな鞍馬がアンノウンとは思えないよな……?
502 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/24(土) 22:03:14.89 ID:6nPTOVHe0
苗木「赤穂クンは自分が無力だって思う事ないかな?」
 
赤穂「……無力?」
 
病室に来た苗木からいきなりされたその質問、俺はその意図が見えなかった。
 
苗木「ほら、みんなは頑張ってこの状況を何とかしようとしてる。けどボクは何の役にも立ててないからちょっとね……」
 
赤穂「何言ってるんだ。苗木は佐場木の手伝いとかよくしてるじゃないか」
 
苗木「でもそれってはっきり言っちゃえばボクである必要ないよね?」
 
赤穂「それは……」
 
苗木「御影さんだって赤穂クンのために傷薬探してたんだよね?鞍馬クンだってなんだかんだでやる事はしてるし……」
 
赤穂「……」
 
苗木「……って、あはは、こんな事話されても困るよね?忘れてくれていいよ」
 
赤穂「ある」
 
苗木「えっ?」
 
赤穂「無力だって思う事だろ?たくさんある」
 
この島に来てからもそう考えてしまうような事ばっかりだ。
 
赤穂「正直この場で一番の役立たずは俺なんじゃないかって思う時もな」
 
苗木「そ、そんな事ないよ!赤穂クンは出来る事を立派にやろうと……」
 
赤穂「それは苗木だって同じじゃないか」
 
苗木「……」
 
赤穂「俺にそう言ってくれるなら、苗木もそんなに悲観しないでいいんじゃないかって俺は思うぞ?」
 
苗木「……」
 
赤穂「そう簡単には割りきれないだろうけど、な」
 
苗木「…………うん、ありがとう」
503 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/26(月) 22:22:24.12 ID:6Jq43wM/0
赤穂「……」
 
兵頭「失礼します」
 
赤穂「兵頭?」
 
兵頭「お元気そうで何よりです。赤穂さんに何かあったら御影さんが泣いてしまいますから」
 
赤穂「お、おいおい……わざわざそんな事言いに来たのか?」
 
兵頭「いえいえ、今のはちょっとしたジョークですよ。本題はこれからです」
 
赤穂「笑えないジョークはやめてくれ……」
 
兵頭「ふふっ、すみません。それでですね、本題というのは津浦さんの事なんです」
 
赤穂「津浦……また何かあったのか?」
 
兵頭「赤穂さんも彼女が今グレゴリーさんを演じているのは知っているでしょうが、このままだと津浦さんの心は取り返しがつかなくなると思います」
 
赤穂「……確かにな」
 
兵頭「そこで赤穂さんにも何か考えていただこうかと思いまして」
 
赤穂「俺にか?」
 
兵頭「四方院さんがいなくなった以上、赤穂さんは女子のリーダーでもありますからね」
 
いつの間に……
 
赤穂「でもそうだな……津浦を何とかしないといけないのは事実だし、考えてみる」
 
兵頭「ふふっ、ありがとうございます」
 
赤穂「だけどなんで兵頭がそんな事を気にするんだ?津浦と特別親しかったわけでもないだろう」
 
兵頭「さあ、なんででしょうね?」
 
赤穂「……?」
 
意味深な笑みのまま兵頭は病室から出ていった。
兵頭の思惑はともかく……津浦をそのままにはしておけないよな。
504 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/02/26(月) 22:39:33.97 ID:6Jq43wM/0
如月「津浦さんの事ですか」
 
赤穂「はい」
 
あれから考えてみたけど、頭いいわけでもない俺に名案がパッと出てくるわけもない。
 
早々に行き詰まった俺は如月さんに相談してみる事にした。
 
如月「そうですね……やはり津浦さんの心の強さに賭けるしかないと思いますが」
 
赤穂「……」
 
だけど津浦はどちらかと言えば脆い方だよな……
 
通訳になった理由も怖いから、だった。
 
むしろ津浦の反応が普通なのかもしれないけど。
 
赤穂「時間薬に頼るしかないんですか?」
 
如月「ショック療法は津浦さんには逆効果でしょうからね……【超高校級のカウンセラー】でもいればよかったんですが」
 
カウンセラーか……
505 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/03/10(土) 21:35:51.32 ID:eWyP25cA0
キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「夜10時になりました!」
 
モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」
 
モノクマ「うぷぷ、また明日……」
 
赤穂「もう夜なのか……」
 
明かりが六山のゲーム機しかないから時間の感覚がおかしくなってるな……
 
赤穂「この暗闇、アンノウン、津浦の事……問題は山積みだ」
 
せめて何か1つでも打開出来れば……
 
グルグルと思考が回る。
 
その内に俺の意識は遠のいていった。
506 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/03/10(土) 22:03:22.15 ID:eWyP25cA0
【12日目】
 
キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」
 
モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」
 
赤穂「朝……今日で12日目だったか」
 
これだけ経てば未来機関が救出に動いてもおかしくないはずなんだ……だけどまるでその気配がない。
 
赤穂「優秀な人間があれだけいる未来機関がそうそうどうにかなるとは思えないけど……」
 
救出は、期待しない方がいいのかもしれないな……
507 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/03/10(土) 22:23:25.38 ID:eWyP25cA0
御影「兄さん、ご飯だよ」
 
赤穂「ああ、悪いな牡丹。お前だって怪我人なのに」
 
御影「別に気にしないでよ。発作の痛みに比べたら全然だし」
 
赤穂「……反応に困るぞ」
 
御影「……うん、なんかごめん」
 
如月「おや……」
 
赤穂「あっ、如月さん」
 
如月「……」
 
御影「……な、何。ジッと見て」
 
如月「いえ、なんでもありませんよ」
 
赤穂「……」
 
多分牡丹に妹さんを重ねてるんだ……
 
体質の事までは如月さんも知らないだろうけど……それを知ったら、どんな気持ちになるんだろうな……
 
如月「廊下にいます。何かあれば呼んでください」
 
御影「……なんなの?」
 
赤穂「如月さんにも色々あるんだよ」
 
御影「色々、ねぇ」
508 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/04/20(金) 22:23:09.82 ID:5+Q2ID5a0
赤穂「……」
 
ジェニー「……」
 
ジェニーが来たのはいいけど全く喋らない……何かあったのか?
 
赤穂「えっと、ジェニー?」
 
ジェニー「……マサキ」
 
赤穂「んっ?」
 
ジェニー「どうしたらセイを元気にできますか?」
 
赤穂「苗木?」
 
ジェニー「セイ、すごく落ち込んでたです……自分が何も出来ないって」
 
苗木、やっぱり割りきれてなかったのか……
 
ジェニー「ボク、セイには笑っててほしいです……どうしたらいいです?」
 
とは言うものの、苗木の無力感は自分の心の問題だしな……
 
ジェニー「ボクはピエロですから人を笑わせないといけないのに……」
 
赤穂「……んっ?なあ、ジェニーちょっといいか?」
 
ジェニー「はいです?」
 
赤穂「いや、違ったら謝るけど……ジェニーはピエロは誰かを笑わせないといけないから苗木を笑わせたいのか?」
 
ジェニー「……?」
 
赤穂「いや、ジェニーはただ苗木を笑わせたいから悩んでるのかと思ってたからさ……」
 
ジェニー「違う、です?」
 
赤穂「いわゆる最終目標がどこかだよな。ジェニーは苗木を笑わせてピエロの仕事を果たしたいのか?それとも苗木に笑ってほしいのか?」
 
ジェニー「ボクは……アレ?ボクは、どうしたいです?」
 
赤穂「……ちょっと落ち着いて考えてみるか?その様子だと答えはわからないみたい、だしな」
 
ジェニー「は、はい……」
 
混乱した表情のままジェニーは病室から出ていく。
我ながら意地悪な質問だったかもしれない……だけどジェニーはいい子だし、ここで変な方向には行ってほしくないんだよな……
509 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/04/20(金) 23:28:21.57 ID:5+Q2ID5a0
佐場木「なかなか上手くはいかないな」
 
佐場木が椅子に腰かけて書類らしきものを見ている。
なんでわざわざここで見てるんだ……?
 
赤穂「何を見てるんだ?」
 
佐場木「発電所の見取り図だ。最も手描きだがな」
 
佐場木が渡してきた紙を照らしてみれば、確かにそれは建物の外観みたいな物が描かれていた。
 
赤穂「発電所か……俺はこの島を自分の目で調べられてないけど入れそうなのか?」
 
佐場木「難しいと言わざるを得ない。この発電所は金網で囲まれ唯一の扉にもパスワードでロックがかかっている」
 
赤穂「パスワード」
 
佐場木「何桁なのかもわからん以上総当たりも困難な作業だ。遠見は徹夜でやると言っていたが」
 
遠見らしいな……
 
佐場木「しかしそんな事をやらせるわけにもいかない。いざというときには奴の力が必要になるからな」
 
赤穂「……信頼してるんだな」
 
佐場木「この島に来てから常に行動を共にしていればそれなりの関係は構築できる」
 
……信頼してるって事でいいんだよな?
510 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/05(土) 00:02:57.14 ID:HNJTJxww0
土橋「なんかジェニーが悩んでるみたいなんだよね」
 
土橋に身体を拭かれながらされた話、それは俺にも心当たりがある話だった。
 
……一応言い訳すると俺は自分で拭けるって断ったんだぞ。
 
赤穂「ああ、苗木の元気がないから笑わせたい……らしいぞ?」
 
土橋「あー、あー、なるほど。だからあんなに唸りながらお手玉してたんだ」
 
……多分俺の言った事も影響してるだろうけどそれは黙っておこう。
 
土橋「半次やメメも忙しくしてるし、この暗さもあるし問題は山積みだよね」
 
赤穂「そうだな……本当に参った」
 
土橋「よし、身体拭くの終わったよ!」
 
赤穂「ああ、ありがとうな」
 
土橋「こんなのアタシのしてもらった事に比べたらお安いご用だし」
 
赤穂「なあ……よく考えたらそれは俺をコテージに連れていってくれた事でチャラになるんじゃないか?」
 
土橋「えっ」
 
赤穂「いや、だから助けられたのはお互い様だしそこまで……」
 
土橋「政城!」
 
赤穂「な、なんだ!?」
 
土橋「……なんでもない」
 
赤穂「???」
 
なんだか土橋の機嫌が悪くなってないか……?
511 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/05(土) 00:28:29.50 ID:HNJTJxww0
赤穂「……というわけなんだが」
 
道掛「かー!そりゃダメだっての赤穂!」
 
遠見「同感であります」
 
あの後結局土橋の機嫌は元に戻らず、やって来た道掛と遠見に相談して返ってきた答えがそれだった。
 
赤穂「いや、実際そうだろう?土橋がコテージに連れていってくれなかったら、俺は治療も出来ずにどうなっていたかわからなかったんだぞ?」
 
道掛「そうかもしんねえけどでもこの場合は不正解なんだよ!」
 
赤穂「……よくわからないな。遠見も道掛と同意見みたいだけど」
 
遠見「そうでありますね……自分は軍人でありますから、命のやり取りは日常茶飯事でありましたが」
 
遠見「そんな自分でも隊長に救われた時の恩義は未だに返せていないと思っているでありますよ」
 
遠見「軍人である自分がそうなのだから、そうでない土橋殿の赤穂殿への恩義はさらに強いものであるのでは?」
 
赤穂「つまり土橋にとってはチャラに出来るような事じゃないから怒ったのか?」
 
遠見「きっとそうであります。自分も隊長に同じように言われたら反発するでありますよ」
 
そうか……そこまで思ってくれてるんだな。
 
道掛「いやいやいやいや!全然ちげえよ!」
 
遠見「違うのでありますか!?」
 
赤穂「どういう事だよ道掛?」
 
道掛「だから美姫ちゃんはだな……」
 
道掛「…………やっぱやめるわ」
 
赤穂「は?」
 
道掛「多分向こうもわかってないだろうし、わざわざこっちで言う事じゃねえし」
 
赤穂「おい道掛?」
 
道掛「いいからせいぜい悩んどけ!青春らしくな!」
 
遠見「どういう意味でありますか……」
 
俺にもわからない……
512 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/28(月) 23:38:00.71 ID:ustmOqJA0
六山「んー……」カタカタ

また暇潰しにとゲームを持ってきた六山が説明もそこそこに椅子に座ってパソコンを弄り始める。

ゲーム以外を操作してるなんて珍しいな……

赤穂「何してるんだ?」

六山「御影さんからもらったんだ。電気街を調べてる時にデータファイルの入ったパソコン見つけたらしくて」カタカタ

赤穂「データファイル?」

六山「うん、中は暗号化されててわかんないんだけど。だからデバッガーのわたしに頼んだんだろうね」カタカタ

赤穂「どうにかできそうか?」

六山「まあ、そんなに時間はかからないと思うよ?明日には出来るんじゃないかな」カタカタ

赤穂「そうか……何か手がかりが出てくればいいけど」

六山「何が出るかお楽しみってやつだね。これをランダムの宝箱だと思ってわたし頑張るよ」

宝箱か……六山らしい考え方だな。
513 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/29(火) 00:10:45.42 ID:xrYljAjA0
津浦「聖痕抱きし英雄よ!そのマナは枯渇していないか!」

赤穂「……」

津浦は昨日と変わらずグレゴリーを演じている。

自分を救い、裏切った……そう感じているはずの男を、津浦は何を思って演じているのか。

津浦「どうした?沈黙の術式でもかけられているのか?」

だけどこのままでいいわけもない。

とにかくまずは津浦と話せるようにしたいけど……どうすれば。

ガチャッ

鞍馬「……」

赤穂「鞍馬?」

津浦「むっ…………」

赤穂「……?」

どうしたんだ?津浦が鞍馬を見た途端に……

鞍馬「グレゴリー・アストラル三世が僕を何と呼んでいたかわからないんでしょう?」

津浦「っ!?」

鞍馬「お粗末なものだ。どれだけ演じようと津浦琴羽はグレゴリー・アストラル三世ではない。あなた自身が把握していない彼の行動はトレース出来ませんよ」

津浦「っ、Mr.鞍馬……」

鞍馬「それで?あなたはいつまで壊れたフリをしているつもりですか?」

津浦「っ!!」タタタッ

赤穂「あっ、おい津浦!?鞍馬、壊れたフリってどういう意味だ!」

鞍馬「そのままですよ。彼女は壊れてなどいません」

津浦が壊れてない……つまり津浦は冷静にグレゴリーを演じていたっていうのか?

なんでそんな……

鞍馬「……」
514 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/05/29(火) 00:25:33.46 ID:xrYljAjA0
兵頭「なるほど、やっぱりですか」

赤穂「やっぱりって、気付いていたのか?」

兵頭「少なくとも完全な狂人のフリであるとはわかっていました。破滅して狂った人はたくさん見てきましたから」

兵頭「最も狂人を演じる事自体も問題ですから、遠からず本当の狂人に成り果てるのは目に見えていますけどね」

赤穂「なんでそれを黙ってたんだ?」

兵頭「確証があったわけでもありませんでしたから。下手に地雷を踏みたくはないでしょう?」

赤穂「……」

兵頭「とにかく津浦さんが逃げたという事は彼女は比較的冷静のようですね……」

赤穂「そこがわからないんだ。津浦が冷静ならなんであんな事をしてるんだ?」

兵頭「本当にわかりませんか?答えは結構シンプルですよ」

赤穂「シンプル……」

津浦がグレゴリーを演じている理由って、そんなに単純なのか……?
515 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/01(金) 23:39:01.12 ID:YqsDY+NA0
赤穂「……」

津浦がグレゴリーを演じている理由か……

赤穂「複雑な思いがあるのは間違いないだろうけどな……んっ?」

窓から何か……あれは明かりか。

時間的にはもうすぐ夜なのに誰が外に出てるんだ?

赤穂「……」

気になるな……とはいえ、俺は安静にしているべきだろうし……

だけどもしあれが例のアンノウンだったら……

赤穂「確認ぐらいは、しておくか」

幸い杖は近くにあるし、暗闇に眼は慣れてる……行ってみよう。

【発電所】

これが……佐場木達が話してた発電所か。

赤穂「明かりはこっちの方に消えたけど……」

「誰かいるの?」

赤穂「うっ!?」

辺りを見回してると、いきなり明かりを向けられて思わず目を閉じる。

今の声は……

赤穂「苗木?」

苗木「赤穂クン!?なんでこんな所に」

赤穂「病室から明かりが見えたから追いかけてきたんだ」

苗木「そっか……心配かけちゃったかな」

赤穂「苗木はどうしてここに?」

苗木「発電所の扉にパスワードがあるって聞いたから……試しに来たんだ」

赤穂「試しにって、手がかりでもあるのか?」

苗木「ううん、ないよ。だけどボクなら出来るかもしれない」

赤穂「まさか運任せでやるつもりなのか?」

苗木「だってボクは幸運なんだ。こんな事ぐらいでしか役に立てない」

赤穂「苗木……」

苗木「もう嫌なんだ!みんなが傷つくのも、無力なままでいるのも!」

苗木「だから止められてもボクはやるよ」

苗木「希望のために、ボクは……!」

赤穂「……わかった、なら俺も付き合う」

苗木「えっ?」

赤穂「言っただろ?無力さを痛感してるのは俺もだって」

赤穂「だから付き合わせてくれよ」

苗木「……ありがとう」

赤穂「気にしなくていいさ」

そして俺と苗木は、発電所のパスワードに挑戦する事になった……
516 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/02(土) 00:12:49.16 ID:ZjxqkpLA0
【13日目】

赤穂「……」

苗木「……ダメ、だったね」

あれから俺達はいくつものパスワードを入力した。

だけどどれも扉はエラーを返してきて。

時刻は朝の6時……そろそろ戻らないと大騒ぎになるだろう。

苗木「結局……ボクはなんの役にも立てないんだね」

赤穂「苗木……」

苗木「あはは、ちょっと散歩して帰るよ。少し1人になりたいしさ……」

赤穂「……」

俺も、戻ろう。
517 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/02(土) 00:34:17.54 ID:ZjxqkpLA0
赤穂「……」

御影「兄さん?」

赤穂「……あっ、どうした?」

御影「どうしたじゃないよ。さっきからボーッとしちゃってさ」

赤穂「ちょっとな……ふあっ」

御影「なに、寝てないの?」

赤穂「ああ、まあ……」

御影「はぁ……怪我人なんだからおとなしく寝てないと駄目だよ」

赤穂「面目ない。牡丹も大変なのにな」

御影「私は別に慣れてるし……」

赤穂「そういうのは慣れるもんじゃないだろ」

御影「……なんかあったの?」

赤穂「んっ……苗木がなんか落ち込んでるみたいでさ」

御影「ああ、なんか道掛達も気にしてるみたいだね。さっき声かけてたよ」

赤穂「本当、どうしたらいいんだろうな……」

津浦の事だってあるって言うのに……

御影「……1人で抱え込まないでよ?兄さんはそういうとこあるんだから」

赤穂「ああ、困ったら牡丹に慰めてもらうよ」

御影「あのねぇ」
518 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/02(土) 23:22:03.15 ID:ZjxqkpLA0
六山「パソコンの暗号、解読出来たよ」

その六山の言葉に佐場木は情報の共有のためと俺の病室に全員を集めた。

とは言うものの……津浦は病室に閉じこもって出てこないらしい。

佐場木「どうやら津浦が冷静だという話は本当のようだな」

土橋「でも怪我は本当だし、琴羽は大丈夫なの?」

遠見「その経過を見るためにも開けてもらいたいのでありますが……」

苗木「…………」

道掛「苗木、お前も大丈夫なのかよ?顔色悪いぞ」

苗木「うん……ボクは大丈夫だよ」

ジェニー「……セイ」

兵頭「とりあえず今はこちらを優先しましょう。六山さん、データファイルの内容は?」

六山「3つあったんだけど、1つは発電所の扉のパスワードだね」

六山が見せた画面には5桁の数字が並んでいる。

これが発電所の……

苗木「……」

御影「3つって言ってたけど後2つは?」

六山「1つは、コロシアイ共同生活だっけ?それの経過みたい」

六山が開いたデータには16人の名前が記されている。

そしてその内数人の名前には赤い線と黒い線がひかれていた。

如月「どうやら……向こうでもコロシアイは進行しているようですね」

如月さんが指さしたのは学級裁判記録と名前がついた2つのファイル。

向こうも俺達と同じように事件が2つ起きてるって事なのか……!
519 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 00:51:43.23 ID:MMk5L4lA0
佐場木「その記録は後で改める。六山、最後のデータの詳細はなんだ」

六山「えっと……これなんだけど」

六山が見せてきたのは【絶望教について】というテキストだった。

遠見「絶望教……このコロシアイが始まる少し前に突如現れた新興宗教でありますね」

土橋「それって絶望の残党みたいなやつなの?」

如月「いえ、彼らは自分達自身の絶望には関心がないようです」

道掛「どういうこった?」

六山「このテキストによると、絶望教は誰かを絶望させる事に目的を見出だしてる宗教みたいなんだよね」

御影「誰かを絶望させる……」

兵頭「世界の希望絶望の総量は決まっていて、誰かを絶望させれば自分達に希望が訪れる……そのために絶望を与えるのが目的という事みたいです」

佐場木「なんのことはない、ふざけたカルト集団だ」

誰かを絶望させれば希望が訪れるか……仮に正しいとしても、こんな絶望だらけの時代なのにその分の希望が少なすぎるけどな。
520 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 22:06:36.12 ID:MMk5L4lA0
あの後、佐場木は発電所の中を調査すると遠見を連れて出ていった。

それに合わせるように1人、また1人と部屋からいなくなって。

そして最終的に部屋には俺と……

鞍馬「……」

鞍馬が残された。

赤穂「……」

鞍馬「……」

というより、珍しいな。

鞍馬がこうして何も言わずにただ俺の病室にいるなんて。

鞍馬「絶望教」

赤穂「はっ?」

鞍馬「あなたはどう考えていますか」

赤穂「どうって……おかしな宗教だなとしか言えないだろ」

赤穂「話を聞いた時も思ったけど、だったら今の世の中はどうなんだって話だし」

鞍馬「確かに今は絶望と希望のバランスが取れているとは言えません」

鞍馬「しかしこうは思えませんか」

鞍馬「今こうして絶望に苛まれている事こそ」

鞍馬「いずれ来る希望に溢れる世界への布石なのだと」

赤穂「……」

なんだ?鞍馬の奴、いつにも増して饒舌だぞ……

鞍馬「いえ、既に世界を変えるピースは揃っています」

鞍馬「後はたった1つのきっかけさえあれば……」

赤穂「おい、鞍馬?」

鞍馬「……少々話しすぎましたか」

鞍馬「言いたい事は1つです」

鞍馬「彼女を死なせないでください」

赤穂「彼女……っ!?」

鞍馬「彼女の存在は世界の変革には不可欠なのだから」

赤穂「鞍馬!まさかお前牡丹の身体の事……!」

バタンッ

赤穂「……」

鞍馬は知ってるんだな……牡丹の身体の事を。

鞍馬類……お前は一体何者なんだ?
521 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 22:19:52.85 ID:MMk5L4lA0
道掛「鞍馬の事?」

赤穂「ああ、道掛は鞍馬と話してるみたいだけどどんな感じだ?」

鞍馬の言動は妙に気にかかる……俺はよく絡みに行ってる道掛に鞍馬について聞いてみる事にした。

道掛「つうてもな、鞍馬って無口無表情で自己主張しないからなぁ」

道掛「時々話してるの俺だけな気さえしてくんだよ」

赤穂「鞍馬は何も話さないのか?」

道掛「ぬいぐるみ作ってるのに集中してたりして聞いてすらいない時もあるな!」

それでもめげないのか。

道掛「あー、でも牡丹ちゃんの話題には結構反応すんなあいつ」

赤穂「牡丹の?」

道掛「おう、相変わらず口数は少ねえけど牡丹ちゃんの事を話す時は返事返ってくるんだよ」

赤穂「……そうなのか」

鞍馬は牡丹に対して何か思うところがあるって事なのか?

鞍馬については……兄としても、警戒する必要がありそうだな。
522 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/03(日) 22:47:45.14 ID:MMk5L4lA0
佐場木と遠見が発電所の調査から戻ってきたらしい……俺の病室に来た2人にどうだったか聞いてみると。

佐場木「制御室に鍵がかかっていた。あれをどうにかしない限り発電所の機能を動かすことは不可能だ」

遠見「内部は10階建てだったのでありますが、入ってすぐのエレベーターホールぐらいしか入れなかったでありますよ……」

赤穂「つまり、無駄骨だったって事か?」

佐場木「さらに調査を進めれば変わるかもしれんが現状ではそうなる」

遠見「突破口になると、思ったのでありますが……」

わざわざパスワードを暗号化していたぐらいだし、発電所は何かの手がかりになると思ったんだけどな……

遠見「とにかく再調査をするべきであります!きっと見落としている所が……」

佐場木「遠見、再調査に貴様を連れていくつもりはない」

遠見「えっ……」

佐場木「ここ数日の見張りに調査……いささか負担がかかりすぎている。しばらく休息を取れ」

遠見「佐場木殿!自分はまだ……!」

佐場木「軍人だからといって自分を過信しない事だな。何を言おうと再調査の同行は認めん!」

遠見「っ……」

赤穂「……」

言い方はキツいけど佐場木は心配して言ってるんだろう事は俺にもわかる。

遠見も同じだったんだろう、不承不承ながらもその言葉に頷いていた。
523 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 21:43:13.19 ID:VZ+c4U0A0
苗木「はぁ……」

リハビリがてらロビーに顔を出すと、ソファーに座ってため息をつく苗木がそこにいた。

赤穂「ため息をつくと幸せが逃げるぞ」

苗木「あはは、こんな事に巻き込まれて幸せも何もないんじゃない?」

……これはまだパスワードの事引きずってるな。

苗木「六山さんはすごいよね。彼女のゲームがあったから少しは明るいし、暗号だって解読しちゃうし……」

赤穂「……」

まあ、昨日の夜の事は結構堪えただろうから仕方ないのか?

苗木「なんて、六山さんはデバッガーでそっち方面明るいんだからボクと違って当たり前なんだけどね……」

赤穂「……」

苗木「大丈夫、そんなにしない内に元に戻るようにするから」

赤穂「あんまり抱え込むなよ?苗木を心配してる人だっているんだから」

苗木「あはは、そうだったら嬉しいよ」

本当なんだけどな……
524 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 22:01:13.96 ID:VZ+c4U0A0
赤穂「……」

バンッ

赤穂「うわっ!?」

ジェニー「マサキ!ボクわかたです!」

赤穂「ジェ、ジェニー?」

ジェニー「ボクはセイに元気になてほしいです!それはピエロとか関係ないボクの気持ちです!」

赤穂「……」

ジェニー「暗いのも怖くないです!みんなの事悲しいですけど……だからもうこんなの嫌です!」

赤穂「……っ、あはは!」

ジェニー「マ、マサキ?なんで笑うです?」

赤穂「ジェニーの答えが嬉しいから、だよ」

ジェニー「よくわかんないですけど……マサキがスマイルならボクもハッピーです!」

赤穂「ああ、ありがとうな」

今は本当に暗い事ばかりだけど……こうしてジェニーの明るさに触れてると救われる気がするな。
525 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 22:29:19.95 ID:VZ+c4U0A0
赤穂「……」

俺も出来る事をしないとな……

赤穂「……んっ?」

何か聞こえてくるぞ……

津浦「〜〜♪」

津浦が、歌ってる?

赤穂「……津浦」

津浦「っ!?」

赤穂「待ってくれ!少しでいい、話をしないか?」

俺の言葉に逃げようとした津浦が足を止める。

そして振り返った津浦は……紛れもなく、理性を持った瞳をしていた。

津浦「なんで、しょうか?Mr.赤穂……」

赤穂「昨日……津浦が冷静にグレゴリーを演じていると鞍馬に聞いて、どうしてか考えた」

赤穂「兵頭は単純だって言ってたけど……今の津浦を見て答えがわかった気がしたんだよ」

赤穂「津浦、そこまでして……グレゴリーを理解したかったのか?」

津浦「……なぜその答えに?」

赤穂「今の歌、外国語だけど未来機関で聞いた事があるんだ」

赤穂「鎮魂の歌……俺はそう教えられた」

赤穂「津浦、キミがその歌を歌っていたのは、グレゴリーのためなんじゃないか?」

津浦「……そう、です」

赤穂「……」

津浦「Mr.グレゴリーはワタシの両親の死の関係者でした」

津浦「Mr.グレゴリーはワタシを救って、守るとも言ってくれました」

津浦「……Mr.グレゴリーはワタシをトリックに利用して、殺そうとしました」

津浦「わからないんです。言葉の意味はわかるのにあの人の心が全然わからない」

津浦「コテージにあった仮面を被って、演じていても」

津浦「どんなに考え続けても」

津浦「あの人の事が、わからないんです……」

赤穂「……津浦、演じていた理由はもう1つあるんじゃないか?」

津浦「……はい」

津浦「ワタシは、早まらないでほしかった」

津浦「だってワタシはもっと話したかったんです、もっとあの人を理解したかったんですよ」

津浦「たとえ同情でも!たとえ罪悪感でも!側にいてほしかった!」

津浦「……ワタシは」

津浦「Mr.グレゴリーに生きていて、ほしかったんです……!」

これが津浦の行動の答え。

津浦はただ、グレゴリーの死を認めたくなかったんだ。

だから演じた、自分が死んだ事にしてでも……
526 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/04(月) 22:45:30.44 ID:VZ+c4U0A0
津浦「……」

赤穂「津浦、さっきの歌は言ったように鎮魂歌だ」

赤穂「それをグレゴリーに向けて歌ったのは……認めたって事でいいのか?」

津浦「……はい。亡くなった人の気持ちはわかりません」

津浦「どんなに演じようとしていてもそれは事実で、ワタシはあの人が最期に伝えようとした事も聞けなかった」

津浦「だから、もうやめです」

津浦「今は、このコロシアイを生き抜く事。それを最優先にします」

津浦「そして外に出たら……」

津浦「あの人の事を調べようと思います」

津浦「それがきっと……ワタシのやるべき事ですから」

赤穂「……そうか」

涙を流しながら決意を話す津浦は、今までみたいに怯えているだけの子ではなくなっていた。

グレゴリー……津浦は、もう大丈夫そうだ。

お前が四方院さんを殺した事は絶対許されないけど……でも。

それだけは、こうして伝えておくよ。
527 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/05(火) 00:03:26.97 ID:4uX4W1IA0
如月「兵頭さん、具合はいかがですか」

兵頭「ふふ、時々痛みますが大丈夫ですよ。如月さんこそ無理はしていませんか?」

如月「これでも人より頑丈ですから」

赤穂「……」

なんかあの2人、最近よく話してるな……

六山「おーおー、フラグがビンビンだね」

赤穂「うわっ、いつの間に」

六山「ちょっと大きな声を出しちゃダメだよ」

赤穂「わ、悪い……というかフラグってなんだよ」

六山「文字通りだよ?如月くんは兵頭さんを何回も助けてるし、兵頭さんも如月くんを信用してるみたいだからね」

赤穂「言われてみると……」

如月さんと兵頭って前回の島の調査も一緒にしてたし、学級裁判の時も兵頭に疑いがかかった時如月さんが庇ってたな……

赤穂「だけどいつの間にあんなに仲良くなってたんだ?」

六山「うーん、よくわかんないね。赤穂くんのフラグだっていつ立ったかわからないし」

赤穂「は?なんだそれ?」

六山「あっ、これは内緒だった……」

フラグって、俺にか?

いや、いつの間にそんなの出来たんだよ……
528 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:18:20.33 ID:T0ajnvWA0
ガチャッ

赤穂「んっ?」

土橋「あっ、政城」

赤穂「土橋か」

そういえば昨日は結局不機嫌にさせたままで終わったんだよな……

どうも俺が悪いみたいだし、謝らないと。

土橋「昨日はごめん!」

赤穂「えっ」

土橋「なんというか、昨日のアタシ変だったでしょ?」

赤穂「変と言うより、不機嫌になったような気はしてた」

土橋「あー、うん。やっぱりそう見えたよね」

赤穂「俺に何か至らない点があったんだろう?ごめんな」

土橋「いやいや!別に政城は悪くないよ!」

土橋「ただ政城にチャラじゃないかって言われてなんだかよくわかんないけど、心がザワザワしちゃっただけだから」

土橋「だから謝るのはアタシの方!本当にごめんね!」

赤穂「土橋こそそんなに謝らなくていいんだぞ?俺は気にしてないからさ」

土橋「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとね」

どうやら些細な行き違いってやつだったみたいだ……まあ、怒らせたとかじゃなくてよかったよ。
529 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:25:09.36 ID:T0ajnvWA0
キーン、コーン、カーンコーン
 
モノクマ「夜10時になりました!」
 
モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」
 
モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「10時か……」

この暗闇の打開策はまだ見つからないし鞍馬の事とか悩みは増えたけど、津浦の事とかは何とかなりそうだ。

だけど絶望教……それがわざわざ暗号化されてたっていうのは気になるな。

明日六山に頼んでもう少しじっくりパソコンにあった資料を見せてもらうか……
530 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:43:55.27 ID:T0ajnvWA0
赤穂「…………んっ」

なんか寒いな……この島が秋の気候だからか?

時間は……壁の時計を見る限りまだ3時になるところか。

もう一眠りするか……





赤穂「…………は?」

とてつもない違和感に眠気も飛んで跳ね起きる。
なんで今壁の時計で時間がわかった?

この暗闇で最近は六山のゲーム機で時間を確認してたのに。

この、暗闇……?

赤穂「なんで、だ」

なんで、部屋の照明が点いてるんだ!?

赤穂「まさか……まさか!」

ベッドから転がり落ちるように降りると杖を取って廊下に飛び出す。

そして俺は急いである場所に向かった。
531 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 11:55:31.66 ID:T0ajnvWA0
【御影と兵頭の病室】

赤穂「牡丹!」

御影「んっ、すうっ……」

赤穂「はぁ、はぁ……」

よかった、牡丹は無事だった……

兵頭「んんっ……なんですか、騒がしい……」

赤穂「兵頭も無事だったんだな」

兵頭「無事?っ、なんですかこれ、眩しい……」

赤穂「照明が点いてるんだ」

兵頭「照明が……待ってください、確か照明が再び点く条件は」

赤穂「モノクマが飽きるか……コロシアイが起きるかだ」

兵頭「では、まさか」

赤穂「それを確かめるためにここに来たんだ。他のメンバーはどこにいるかわかるか?」

兵頭「病院は宿泊施設ではないとモノクマに言われたので、私達と津浦さん以外はモーテルにいるはずですが」

赤穂「モーテルか……」

手帳のマップによると発電所の先にあるな……行ってみよう!

赤穂「兵頭、牡丹の事任せていいか?俺は津浦の無事を確認したらモーテルに行く」

兵頭「……わかりました。ですが無理だけはしないようにしてください」

赤穂「もちろんだ」
532 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:09:11.10 ID:T0ajnvWA0
【病院・廊下】

赤穂「津浦の病室は……」

津浦「Mr.赤穂……!」

赤穂「津浦!キミも無事だったか!」

津浦「は、はい、急に明るくなったので様子を見に来たのですが……」

赤穂「俺もそうだ。牡丹と兵頭も無事なのは確認したから津浦も2人の病室に行ってくれ」

津浦「Mr.赤穂はどうするんですか」

赤穂「俺はみんなの様子を見にモーテルに行く」

津浦「1人でですか?」

赤穂「ああ、何があるかわからないからな」

津浦「……」

赤穂「絶対に3人で動かないでくれ、頼んだぞ!」

俺は病院を出てモーテルに向かう。

モノクマの新しいルールで3人殺される心配はないから牡丹達はこれで安全なはずだ。

後は、俺次第だな……
533 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:16:47.38 ID:T0ajnvWA0
【オータムアイランド・道】

赤穂「モーテルはこっちだな」

数日ぶりの月明かりの中をモーテルに向かって歩く。

そして発電所を通り過ぎようとして……俺は思わず足を止めた。

赤穂「扉が……開いてる?」

調査のために開けっ放しにしていたのか?

それとも……

赤穂「……」

俺は発電所の方に足を進める。

確認だけはしておいた方がいいと思ったからだ。

そして、それは。


最悪の結果として俺の目の前に現れた。
534 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:26:50.18 ID:T0ajnvWA0






【金網を抜けて、発電所の建物の扉を開けると広いエントランスに出た】

【右側に受付のような場所】

【左側に並んだソファー】

【奥にあるエレベーター】

【そして、エレベーターの手前に】

【1人、倒れていた】






535 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:35:54.95 ID:T0ajnvWA0






【だけど、信じられない】

【だって頭から血を流して地に伏せていたのは】

【未だ超高校級の才能が不明な男】

【鞍馬類にしか、見えなかったから】






536 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:57:05.74 ID:T0ajnvWA0
赤穂「……鞍、馬?」

嘘だろ?

鞍馬が殺された?

如月さんとも渡り合ってたあの鞍馬が?

赤穂「……」

もしかするとまだ生きているかもしれない……そう思って鞍馬に近付く。

だけど目から完全に光が消えたその顔に生気はまるでない。

鞍馬は間違いなく、死んでいた。

赤穂「……」

とにかく、モーテルに行かないといけない。

無事の確認と……鞍馬が殺された事を伝えないと。

発電所から出た俺はモーテルに向かって……道の先に誰かがいるのが見えた。

赤穂「……あれ、は」

そして俺は知るんだ。

まだこの悪夢は続くんだと。
537 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 12:59:42.80 ID:T0ajnvWA0






【月明かりが照らすのはヒラヒラと散る紅葉】

【そして紅葉の落ちた先にはその葉に負けない赤が散っていた】

【それは血の赤】

【鞍馬以上に流されてるとしか思えない血の中心には】






538 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 13:01:38.27 ID:T0ajnvWA0






【超高校級の道化師】

【ジェニー・クラヴィッツが横たわっていた】






539 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 13:18:07.71 ID:T0ajnvWA0
赤穂「っ、な、ジェニー!」

ジェニーの傍に膝をつくとその身体を抱き起こす。

赤穂「かすかだけど、まだ息はある……!」

見ると腹部にナイフが突き刺さっていて、今もなお血が流れ出していた。

赤穂「っ、待ってろ!」

スーツを脱いで血に染まるお腹を押さえる。

少しでも血を止めないと、ジェニーは……!

「おーい!誰かいんのか!?」

赤穂「この声は……道掛!」

道掛「あっ、赤穂……ジェニーちゃん!?おい、何があったんだよ!」

赤穂「ジェニーが刺されたんだ!モーテルに行って遠見を呼んできてくれ!」

道掛「わ、わかった!」

道掛が自転車で慌てて来た道を戻っていく。

早く、早く……!

ジェニー「……マサ、キ?」

赤穂「ジェニー!」

ジェニー「ボク……ボク……」

赤穂「いい、喋るな!今遠見が……」

ジェニー「……ごめん、な、さい」

赤穂「えっ?」

ジェニー「ごめ、な、さい……」

赤穂「おい、ジェニー?」

ジェニー「マサキ……ミキ……生きて、くだ、さ……」

赤穂「……ジェニー?」

ジェニー「……」

赤穂「ジェニー!おいジェニー!」

道掛「メメちゃん連れてきたぞ!」

遠見「ジェニー殿は!?」

赤穂「…………」

ピンポンパンポーン!!
540 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 13:20:19.46 ID:T0ajnvWA0






モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






541 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 13:28:22.97 ID:T0ajnvWA0
道掛「……嘘、だろ」

遠見「くっ……!」

赤穂「……遠見」

遠見「なんでありますか」

赤穂「ちょっと、ついてきてくれ。道掛は、モーテルで他のみんなを」

道掛「お、おう」

遠見「赤穂殿、なぜ自分1人を?」

赤穂「……道掛には、ショックな光景になるからな」

遠見「それは……」

【発電所】

赤穂「……ここだ」

遠見「……あれ、は、鞍馬殿!?」

ピンポンパンポーン!!
542 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 13:28:52.99 ID:T0ajnvWA0












モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






543 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 13:33:13.15 ID:T0ajnvWA0






CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】(非)日常編 END

生き残りメンバー13→11人

NEXT→非日常編






544 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/06/08(金) 13:41:50.77 ID:T0ajnvWA0
今回はここまで。
545 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/07/28(土) 21:59:58.19 ID:n+RopGf20
 
 
 
 
 
 
CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】非日常編
 
 
 
 
 
 
546 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/07/28(土) 22:16:49.32 ID:n+RopGf20
【発電所】
 
赤穂「……」
 
鞍馬が、そしてジェニーが殺された。
 
いったいどうしてこんな事になったんだ……
 
遠見「佐場木殿を、呼んでくるであります」
 
遠見が発電所を出ていく……それと同時に、奴は来た。
 
モノクマ「大変な事になったね!まさか謎多き男だった鞍馬クンが殺されるなんてさ!」
 
赤穂「わざわざそんな事を言いに来たのか……!?」
 
モノクマ「いやいや、ボクもそこまで暇じゃないよ。ここに来たのはこれと……これを渡しに来たんだよ!」
 
モノクマが取り出したのはモノクマファイル……と、違うファイル?
 
モノクマ「うぷぷ、今回の事件についてはボクも少し思うところがあってね。そのファイルをプレゼントするよ!」
 
赤穂「協力するっていうのか?」
 
モノクマ「それじゃ不公平じゃない!あくまでそれはオマエラが知ってたはずの情報だよ!」
 
赤穂「知ってたはずの情報……?」
 
とにかくモノクマが渡してきたんだ……何か意味があるはずだろうな。
 
   【捜査を開始します】
547 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/07/28(土) 23:08:40.87 ID:n+RopGf20
赤穂「モノクマファイル……」
 
【被害者は鞍馬類とジェニー・クラヴィッツ。
死体発見現場は鞍馬類が発電所、ジェニー・クラヴィッツはオータムアイランドの歩道。
死亡推定時刻は午前3時前後。
死因は両者共に鋭利な刃物で刺された事による失血死。
鞍馬類は即死である模様】
 
鞍馬は即死なのか……
 
コトダマ【モノクマファイル3】を手に入れました。
〔被害者は鞍馬類とジェニー・クラヴィッツ。
死体発見現場は鞍馬類が発電所、ジェニー・クラヴィッツはオータムアイランドの歩道。
死亡推定時刻は午前3時前後。
死因は両者共に鋭利な刃物で刺された事による失血死。
鞍馬類は即死である模様〕
548 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/07/29(日) 20:47:33.55 ID:3yprq4Nc0
赤穂「……」
 
このもう1つのファイル……モノクマは俺達が知っていたはずの情報だって言ってたな。
 
赤穂「いったい何が……」
 
ファイルを開いて中身を見てみる。
 
そこに書かれていたのは……
 
赤穂「どういう、事だ」
 
このファイルに書いてあるのは本当の事なのか!?
 
【名前……鞍馬類。
所属支部……第1支部。
才能……なし。
備考……希望に対する思い入れが強く未来機関内でも職務に忠実だがその資質は超高校級の才能には程遠い】
 
鞍馬に才能がない?
 
そんな馬鹿な、鞍馬は如月さんと戦えるほどに強かったんだぞ……そんな鞍馬に才能がないなんて。
 
赤穂「……鞍馬、お前は本当に何者なんだ?」
 
コトダマ【鞍馬の才能】を手に入れました。
〔モノクマに渡されたファイルによると、鞍馬には才能がなかったらしい。
鞍馬は如月と同等に戦っていた事もあるが……〕
549 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/07/29(日) 21:23:09.87 ID:3yprq4Nc0
バタバタッ
 
どうやら遠見が佐場木達を呼んできたみたいだな……
 
佐場木「ファイルにはあったが……まさか本当に鞍馬が殺されているとはな」
 
遠見「自分も未だに信じられないであります……」
 
如月「……」
 
三人だけ?
 
赤穂「他のみんなはどうしたんだ?」
 
遠見「それが……土橋殿が、ジェニー殿の遺体を発見して半狂乱の状態なのであります」
 
赤穂「土橋が……」
 
土橋は、ジェニーと仲が良かったもんな……
 
如月「苗木さん、道掛さん、六山さんが今土橋さんを落ち着かせています」
 
赤穂「そう、ですか……」
 
佐場木「病院にいた3人にも話だけはしてある。少ししたらこちらに合流するだろう」
 
遠見「佐場木殿、今回見張りは……」
 
佐場木「そちらに割く人員が惜しい。今回は見張りは置かずに捜査を進める」
 
遠見「了解であります」
550 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/10/27(土) 23:21:58.61 ID:lnfI+dNA0
佐場木「まずはこちらを調べる。遠見手伝え」

遠見「イエッサー!」

鞍馬の遺体を調べに向かう佐場木と遠見の後に俺もついていく。

そういえば一つ疑問があるんだよな……

赤穂「なあ、モノクマファイルには刺殺ってあったけど……俺には頭から血が出てるように見えるぞ?」

佐場木「それはそうだろう。鞍馬は頭部を刺されたようだからな」

遠見「頭頂部……いわゆる脳天を一撃であります。相当鮮やかな手口でありますよ」

脳天を一撃……ますますわからない。

赤穂「どうすれば鞍馬をそんな風に殺せるんだ?」

佐場木「鞍馬の身長は178cm……立った状態で脳天を刺す事が出来る存在は限られるな」

コトダマ【鞍馬の遺体】を手に入れました。
〔鞍馬は頭頂部を刺されて殺害されたようだ。
鞍馬の身長から考えて立った状態でそれが可能な人間は限られるが……〕
551 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/10/29(月) 23:30:00.74 ID:nNHQn+EA0
赤穂「そもそも鞍馬はこの発電所に何をしに来たんだ?」

佐場木「自分の意思で来たか、呼び出されたか……遠見、持ち物はどうだ」

遠見「電子手帳とハンカチ、それに裁縫セットでありますね」

裁縫セット……ああ、ウサミのヌイグルミをよく縫ってたよな鞍馬は。

遠見「むむっ?」

佐場木「どうした」

遠見「この裁縫セット、中にピルケースが入っていたであります」

赤穂「ピルケース?鞍馬が薬を飲んでるところなんて見た事ないぞ」

佐場木「裁縫セットに隠されていたピルケースか……これは鞍馬のコテージを調査する必要がありそうだな」

コトダマ【鞍馬の裁縫セット】を手に入れました。
〔鞍馬が持ち歩いていた裁縫セット。
中にピルケースが隠されていた〕
552 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2018/11/04(日) 23:11:11.40 ID:MtC9183A0
赤穂「あれ、そういえば……」

如月さんはどうしたんだ?

入り口の方を見てみると如月さんは来た時から全く動いてない。

何してるんだ?

赤穂「如月さん?」

如月「……」

如月さんに声をかけてみても返事がない。

なぜか彼は発電所に並んだソファーを凝視していた。

赤穂「ソファーに何かあるんですか?」

如月「……」

赤穂「あっ、如月さん!?」

そのままソファーに向かった如月さんは、ソファーの下に手を突っ込むと何かを引きずり出す。

……バッジ?

如月「この傷……やはり、だけどなぜ」

如月「なぜこれがここにあるんですか」

赤穂「如月さん、そのバッジは……」

如月「……僕の妹の物です」

如月さんの妹って、確か頭のいかれた奴に殺された……

如月「……」

だけどその子の物がなんでここに?

コトダマ【ヒーローのバッジ】を手に入れました。
〔発電所のソファー下に落ちていた昔のヒーロー番組のバッジ。
如月の妹が持っていた物らしいが……〕
553 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/03(月) 22:23:41.28 ID:73NPyt0A0
赤穂「何かわかったか?」

遠見「うーむ、鞍馬殿に抵抗の様子が全くないであります……」

如月「鞍馬さんが抵抗出来ず……犯人はどのような手段を用いたのでしょうか」

佐場木「それに関するかはまだわからんが、これが鞍馬の身体の下にあった」

赤穂「んっ?なんだこれ?」

赤と白の何かの欠片……か?

遠見「その欠片なら鞍馬殿の指にもついていたでありますよ」

鞍馬の指と身体の下にあった欠片……

コトダマ【謎の欠片】を手に入れました。
〔鞍馬の指と身体の下にあった欠片。
赤いものと白いものがある〕
554 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 05:10:48.86 ID:dMnWbs8A0
赤穂「……」

ジェニーの方にも、行かないとな……

※※※※

土橋「ジェニー!目を覚ましてよジェニー!」

道掛「美姫ちゃん、駄目だって!」

苗木「土橋さん、落ち着いて……!」

ジェニーが殺された現場では土橋が泣きながら暴れていた。

それを道掛と苗木が必死に抑えている……見ていて、思わず目をそらしたくなる光景。

御影「あっ、兄さん……」

赤穂「土橋は、ずっと?」

御影「うん……苗木が頑張って抑えてるから大きな事にはなってないけど、道掛とか何回も振り払われてたよ」

赤穂「そう、か」

見渡せば津浦もいてどこか気まずそうだ……これはまともに捜査出来てないな。

赤穂「兵頭と六山は?」

御影「別の場所調べてくるって……ジェニーについてはまともに調べられないから」

遠見、佐場木、如月さんはまだ鞍馬のところだ……呼んでくるべきか?

……いや、ここは俺が何とかするべきだ。

きっとそれはジェニーの最期を見た……俺の義務なんだから。
555 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 05:48:30.44 ID:dMnWbs8A0
赤穂「……」

苗木「赤穂クン……!」

道掛「赤穂!お前も美姫ちゃん止め……うわっ!」

道掛が振り払われて、苗木が顔を真っ赤にして止めて……力ずくだったらきっと俺も振り払われるだけ。

赤穂「土橋、もうやめろ」

だったら俺は、言葉で……止めるしかない。

土橋「だって!だって政城、ジェニーが!」

赤穂「……ジェニーの最期を看取ったのは俺だ」

土橋「っ!」

赤穂「あの子が、キミに向けた最期の言葉がある……生きてください、だそうだ」

土橋「……!?」

赤穂「……」

土橋「そん、なの……アタシだって、ジェニーに生きて、ほしかったのに……!」

土橋がその場に座り込む……もう止める必要はなさそうだな。

赤穂「苗木、道掛、ありがとう。多分もう大丈夫だ」

苗木「気にしないで。ボクだってジェニーさんがこんな……」

道掛「わりぃ、もう大丈夫なら俺向こう行く」

道掛は発電所の方に走って行ってしまう……鞍馬の事が気にかかるんだろうな。

土橋「ジェニー、ジェニー……」

土橋はジェニーの名前を呼びながら泣いている……まだしばらく、時間が必要だろう。

赤穂「牡丹、津浦、土橋のそばにいてあげてくれないか」

御影「わかった」

津浦「……はい」

赤穂「苗木はどうする?」

苗木「ボクも調べてみるよ……どこまで出来るかは、わからないけど」
556 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 06:44:59.89 ID:dMnWbs8A0
赤穂「ジェニー……」

ジェニーは俺が見つけた時と変わらず血だまりの中に横たわっている。

赤穂「……」

目の前で死んでいった事実に思うところはあるけど、それを振り払って俺は調べ始める。

ジェニーの遺言、生きてくださいを守るために。

赤穂「凶器は、やっぱりこのナイフか……」

傷口を見てみるとジェニーは一回刺されてさらにナイフで抉られたみたいだ……だから刺さったままなのに血が止まらなかったのか。

赤穂「だけどこのナイフ、いったいどこから出てきたんだ」

この島にあるのは病院、発電所、モーテル、電気街、あの花……ナイフはこの中のどれかから……?

コトダマ【ジェニーの遺体】を手に入れました。
〔ジェニーは一回刺された後にナイフで抉られたため出血が止まらなかった〕

コトダマ【ナイフ】を手に入れました。
〔ジェニーの腹部に刺さったままの凶器で出所は不明〕
557 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 07:00:04.14 ID:dMnWbs8A0
赤穂「他には……んっ?」

ジェニーの唇に血がついてるな……刺された時に胃に血が溜まったのを吐き出したのか?

赤穂「……あれ?」

口の中、歯には血があるけど奥の方には血がついてないし傷もない。

顔も唇以外には血は……じゃあこの血はどうしてついたんだ?

コトダマ【口の血】を手に入れました。
〔ジェニーの唇と歯に血がついていた。
しかしジェニーの口の中には傷もなく、顔も血がついているのはその部分だけだった〕
558 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 07:25:57.92 ID:dMnWbs8A0
土橋「……政城」

赤穂「土橋、もう大丈夫なのか?」

土橋「大丈夫じゃないけど……ジェニーが生きるのを望んでるなら、いつまでも泣いてなんかいられないよ」

赤穂「……」

土橋「アタシに出来るかは、わかんないけど……アタシはジェニーを殺した犯人を突き止めたい」

赤穂「……俺もだ」

苗木「よかったよ……」

土橋「誠もごめん。いっぱい怪我させて」

よく見ると苗木の身体には擦り傷がたくさんついている。

苗木「あはは……道掛クンに比べたらこれぐらいはね」

道掛は泥汚れとかも凄かったからな……

赤穂「とりあえず聞いておきたいんだけど、土橋や苗木はモーテルにいたんだよな?」

土橋「うん……アナウンスが鳴って飛び起きて、明かりがついてて眩しさとかで混乱してたら走也が来て……」

苗木「ボクや同じタイミングで出てきた六山さんも同じ感じかな……佐場木クンや如月クンは一足先に向かってたみたいだよ」

コトダマ【モーテルのメンバー】を手に入れました。
〔病院にいた赤穂、御影、兵頭、津浦以外のメンバーはモーテルにいた。
事件当夜は道掛に呼ばれて現場に向かったらしい〕
559 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 07:48:31.95 ID:dMnWbs8A0
赤穂「牡丹、津浦、見ててくれてありがとうな」

津浦「いえ」

御影「兄さん、土橋はどう?」

赤穂「無理はしてるだろうけど、捜査する気力は取り戻したみたいだ」

御影「そっか……」

赤穂「そうだ、牡丹は何か気付いた事はあるか?」

御影「私は寝てたから……兵頭に起こされるまで何もわからなかったよ」

赤穂「だよな……津浦はどうだ?」

津浦「……Mr.赤穂、電気がついたタイミングはいつなんでしょうか」

赤穂「電気がついたタイミング?」

津浦「ワタシ、その時間に起きていたのでもしかしたら手がかりになるのではないかと」

赤穂「そうか……もしかしたら鞍馬の殺された時間がはっきりするかもしれない、モノクマ!」

モノクマ「はいはーい!なんでしょうか赤穂クン!」

赤穂「電気がついたタイミングはいつなんだ?」

モノクマ「……」

赤穂「モノクマ?」

モノクマ「それはちょっと教えられないかなぁ。だってシロ側に有利になっちゃうし!」

赤穂「なっ」

モノクマ「うぷぷ、用がそれだけなら失礼するよ!」

御影「行っちゃったよ……」

赤穂「津浦、とりあえず時間だけ教えてくれ」

津浦「わかりました」

コトダマ【電気がついたタイミング】を手に入れました。
〔モノクマによる動機の暗闇が解消されたタイミング。
津浦によると2時52分の事だったようだ〕
560 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 08:52:45.61 ID:dMnWbs8A0
赤穂「他にも調べないとな……」

まずはモーテルだな。

鞍馬とジェニーのモーテルなら何かあるかもしれない。

【モーテル・鞍馬の部屋】

兵頭「あら」

赤穂「兵頭、こちらの捜査に?」

兵頭「被害者のいた場所ですからね。特に今回は被害者にはならなさそうな鞍馬さんですから」

赤穂「確かに未だに信じられないからな……それにしても、いくら捜査とはいってももう少しなんとかならなかったのか?」

鞍馬のいた部屋は机の上の物や棚の中にあったらしい物が放り出され、ベッドはぐちゃぐちゃと酷い有り様だった。

兵頭「これは私がしたわけではありませんよ。最初からこうだったんです」

赤穂「最初から?」

兵頭「鞍馬さんはああ見えて整理整頓が苦手だったのかもしれませんね」

赤穂「鞍馬がね……んっ?」

ベッドの下に何か落ちて……これは!?

赤穂「赤白の錠剤……」

もしかしてこれは……

コトダマ【鞍馬のモーテル】を手に入れました。
〔鞍馬が使っていたモーテルの一室。
中は荒れていた〕

コトダマ【赤白の錠剤】を手に入れました。
〔鞍馬のモーテルのベッド下に落ちていた錠剤〕
561 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 09:02:54.00 ID:dMnWbs8A0
赤穂「これだけ荒れてると、捜査も一苦労だな」

兵頭「そうですね……しかしこんなものは見つかりましたよ」

赤穂「それは?」

兵頭「脅迫状です」

赤穂「なんだって!?」

【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】

兵頭「鞍馬さんの秘密とはなんだったんでしょうね……今となってはもうわかりませんが」

赤穂「……」

コトダマ【脅迫状】を手に入れました。
〔鞍馬を発電所に呼び出すための脅迫状。
内容は【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】〕
562 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 09:31:05.31 ID:dMnWbs8A0
【モーテル・ジェニーの部屋】

赤穂「……」

ジェニーの部屋には手作りらしいたくさんの道具が置いてあった。

笑顔にしたくて頑張ってたんだろうな……

赤穂「こちらには特に手がかりはないか……?」

机の上にある箱を持ち上げてみる。

するとそこに貼り付いていた紙がパサリと落ちてきた。

赤穂「これは……」

【同封したものはこの暗闇を何とかする鍵です】

赤穂「暗闇を何とかする鍵……」

いったい何を……もしかしてジェニーが深夜に外にいた理由って。

コトダマ【手紙】を手に入れました。
〔ジェニーの部屋にあった手紙。
内容は【同封したものはこの暗闇を何とかする鍵です】〕
563 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 10:03:24.17 ID:dMnWbs8A0
【オータムアイランド・歩道】

土橋「あっ、政城」

赤穂「ジェニーは?」

土橋「今半次とメメが調べてる。モーテルには何かあった?」

赤穂「……あったと言えばあったな」

あの手紙に同封されていたものはモーテルにはなかった……

もしかしたらまだジェニーが持っているのかもしれないと思って来てみたけど。

赤穂「土橋、ジェニーから何かあったとか聞いてないか?」

土橋「えっ?そうだね……やっぱり暗闇が怖いってぐらいかな。後はみんなを笑顔にしたいって」

赤穂「そうか……」

手紙についてジェニーは黙っていたみたいだな……
564 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 10:13:25.61 ID:dMnWbs8A0
佐場木「……」

赤穂「佐場木、遠見」

遠見「赤穂殿、捜査の進展は?」

赤穂「色々調べてはいる。ところでジェニーは何か持ってなかったか?」

佐場木「何か?具体的にはなんだ」

赤穂「実はジェニーのモーテルにこんなものがあったんだよ」

佐場木「……遠見」

遠見「おそらくはあれの事ではないかと」

赤穂「あれ?」

佐場木「こんなものが発電所の金網に引っかけるようにしてあるのが見つかった」

佐場木が見せたのはビニール袋に入った設計図らしきものと鍵、それに懐中電灯だった。

遠見「発電所の内部地図と制御室の鍵であります」

赤穂「そんなものが!?」

佐場木「クラヴィッツはおそらくこれを受け取ったんだろう」

赤穂「……」

そうか、疑問だったあれは……

コトダマ【地図と鍵】を手に入れました。
〔発電所の金網に引っかけるようにしてあった内部地図と制御室の鍵〕

コトダマ【鞍馬の発見者】を手に入れました。
〔鞍馬は赤穂と遠見が見つけた段階で死体発見アナウンスが鳴った〕
565 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 11:30:11.32 ID:dMnWbs8A0
【発電所】

道掛「鞍馬……」

如月「……」

鞍馬の遺体を前に道掛は膝をついて肩を落としている……あんなに仲良くしようとしていたんだもんな。

道掛「はああ、結局鞍馬と仲良くなれなかったな……」

如月「道掛さんの思いはきっと通じていたと思いますよ」

道掛「んっ、サンキュー」

赤穂「道掛、ちょっといいか?」

道掛「おう、赤穂。どうした?」

赤穂「道掛は俺がジェニーを見つけた時こっちに自転車で来ただろう。それはどうしてなんだ?」

道掛「ああ、それか。俺今日なんか寝付けなくて起きてたんだよ。そしたら急に電気がついてさ」

道掛「その後目を光に慣らして……2、3分ぐらいか?誰かが飛び出していったみたいでよ。俺も外に出たけど誰もいなかったから慌てて自転車で追っかけたんだ」

赤穂「誰かが飛び出していった?」

道掛「おう、ドアの音がしたからな。今思えばあれがジェニーちゃんだったのかね……」

赤穂「……」

コトダマ【道掛の証言】を手に入れました。
〔電気が復旧した2、3分後にドアの音がしたため、誰かが飛び出していったと思い自転車で後を追いかけた〕
566 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 11:57:32.77 ID:dMnWbs8A0
赤穂「……」

如月「何か考え事ですか?」

赤穂「如月さん」

今頭の中に浮かんでいるこれを確かめるためには如月さんの協力が不可欠だ。

だったら、やってもらうしかないか。

赤穂「如月さん、少しいいですか?」

如月「はい、なんですか?」

赤穂「ちょっと協力してほしい事が……」

※※※※

如月「では行ってきます」

赤穂「お願いします」

如月さんが走って消えていく。

一方の俺は現状何もする事がなく牡丹から借りたストップウォッチを持って立っていた。

赤穂「…………」

如月「今戻りました」

赤穂「はい」

如月「どうでしたか」

ストップウォッチの指し示す時間は4分……つまり片道2分。

赤穂「ありがとうございました。ちなみに……これ、他の人間にも出来ると思います?」

如月「無理でしょうね。それなりに速度は出しましたから……鞍馬さんなら可能でしょうが」

赤穂「……」

コトダマ【赤穂の実験】を手に入れました。
〔発電所からモーテルに向かうまでの時間を調べたもの。
片道2分だったがそれは如月か鞍馬にしか不可能なようだ〕
567 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 13:26:09.85 ID:dMnWbs8A0
【鞍馬のコテージ】

六山「あっ」

赤穂「六山、いないと思ったらここにいたのか」

六山「現場周辺はみんなが調べてるからね。赤穂くんも捜査に?」

赤穂「ああ、まあな」

整理整頓が出来ていると言うよりまるで生活感がないコテージか……

六山「そういえばこれが机の上にあったよ」

赤穂「……」

【身体強化薬(試作)
元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】

コトダマ【鞍馬のコテージ】を手に入れました。
〔鞍馬のコテージ。
綺麗ではあるが整理整頓を通り越して生活感がない〕

コトダマ【身体強化薬(試作)】を手に入れました。
〔鞍馬のコテージにあった薬品。
【元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】という説明書きがある〕

キーンコーン、カーンコーン…
568 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 16:29:16.78 ID:dMnWbs8A0
モノクマ「うぷぷ、タイムアップー!」

モノクマ「ここからは楽しい楽しい学級裁判の時間だよ!」

モノクマ「オマエラ、中央の島にお集まりくださーい!」

鞍馬のコテージを出た瞬間、捜査終了のアナウンスが鳴り響く。

赤穂「時間か……」

後は、学級裁判で話し合うしかないな……

【中央の島】

佐場木「来たか」

遠見「これで全員揃ったでありますね……」

遠見の言葉に応えるように建物の鍵が開く音が鳴る。

如月「行きましょうか」

如月さんの後に続くように全員が建物の中に入っていく。

そして俺が入るのと同時に、扉は閉まった。

エスカレーターを降りながら俺は思う。

今回の犯人……それは例のアンノウンなのか?

アンノウン、静音や四方院さん……いいや、薄井やグレゴリーの死にさえ関わっていた存在。

いったいなんでこんな事をしたんだ。

いったいなんのために、ここまでしたんだ。

それがわかる事はないまま……俺達はそこにたどり着く。
569 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 17:18:18.96 ID:dMnWbs8A0
【学級裁判場】

モノクマ「うぷぷ、ようこそオマエラ!」

モノクマ「久々の明かりをこの学級裁判場で堪能してね!」

モノクマ「これから絶望という闇がオマエラを待っているんだからさ!」

モノクマに促される前に自分の席に向かう。

鞍馬類。

結局打ち解ける事も、才能を明かす事もなく死んでいった。

あのまま過ごしていけば打ち解ける未来もあったのか?

それはもう永遠にわからない。

六山「……」カチカチ

道掛「鞍馬!これはお前の弔い合戦だ!」

遠見「アンノウン、今回こそ正体を……」

ジェニー・クラヴィッツ。

明るい彼女はみんなを笑顔にしたいという願いを持っていた。

それが叶っても彼女はもうそれを見る事は出来ない。

佐場木「もう逃がさんぞ犯罪者が……!」

津浦「ワタシは死ぬわけにはいきません!」

土橋「ジェニーの仇……必ず……!」

御影「2人も殺すなんてどうして……」

2人は殺された。

兵頭「今回の犯人は……」

苗木「何とかして、頑張らないと……」

如月「……僕にはまだやるべき事があります」

その犯人を探し出す学級裁判。

もう3分の1も人が死んだ……

赤穂「アンノウン……」

だけどまだ終わらない。

この絶望の舞台は。
570 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 17:42:37.84 ID:dMnWbs8A0
訂正

【身体強化薬(試作)】
〔鞍馬のコテージにあった薬品。
【元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】という説明書きがある〕



【身体強化薬(試作)】
〔鞍馬のコテージにあった赤白の錠剤型の薬品。
【元超高校級の薬剤師忌村静子の調合した薬品。
一粒飲めば24時間効果が持続する。
複数飲めば効果は増すが、その分効果時間は減少する】という説明書きがある〕
571 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 17:46:20.20 ID:dMnWbs8A0
・コトダマ一覧表

【モノクマファイル3】>>547

【鞍馬の才能】>>548

【鞍馬の遺体】>>550

【鞍馬の裁縫セット】>>551

【ヒーローのバッジ】>>552

【謎の欠片】>>553

【ジェニーの遺体】
【ナイフ】>>556

【口の血】>>557

【モーテルのメンバー】>>558

【電気がついたタイミング】>>559

【鞍馬のモーテル】
【赤白の錠剤】>>560

【脅迫状】>>561

【手紙】>>562

【地図と鍵】
【鞍馬の発見者】>>564

【道掛の証言】>>565

【赤穂の実験】>>566

【鞍馬のコテージ】>>567

【身体強化薬(試作)】訂正版>>570

3度起こった惨劇の被害者鞍馬とジェニー。
殺害不可能と思われた鞍馬の死は学級裁判に何をもたらすのか。
果たしてクロはアンノウンなのか……闇深き学級裁判が始まる。


     【学級裁判開廷!】
572 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 17:50:30.86 ID:dMnWbs8A0
モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

兵頭「今回の事件は被害者が2人ですか……どこから話を進めましょう」

佐場木「最初は同一犯かどうかを議論するぞ」

津浦「犯人が1人か2人かでは大きな違いですからね……」

赤穂「よし、まずはそこからいこう」

今回の犯人……間違いなく同一犯のはずだ。

それは状況が証明している!
573 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 18:00:27.35 ID:dMnWbs8A0
【議論開始!】

コトダマ>>671
【鞍馬の遺体】
【鞍馬の発見者】
【モノクマファイル3】

六山「同一犯か話し合うって言っても……」

道掛「どうすりゃわかるんだそんなの?」

苗木「〔鞍馬クンとジェニーさんを殺した凶器が同じ〕とか?」

御影「もしくは〔同一犯を示す証拠があった〕んじゃないの」

遠見「〔状況的に同一犯しかない〕でありますよ!」

そもそもなんでジェニーが殺されたか……

それを突き詰めれば同一犯かはわかる!
574 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 18:14:04.24 ID:dMnWbs8A0
〔状況的に同一犯しかない〕←【鞍馬の発見者】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「ああ、状況的に今回は同一犯のはずだ」

兵頭「状況的に……それはなぜでしょう」

赤穂「俺が鞍馬とジェニーを見つけた後、道掛にはみんなを呼びにモーテルに、遠見には発電所に来てもらったんだ」

遠見「そこで自分が鞍馬殿を発見、死体発見アナウンスが鳴ったのであります!」

佐場木「なるほど、発見人数か」

津浦「前回Mr.グレゴリーがトリックに使ったアレですね」

土橋「琴羽……」

津浦「大丈夫です。彼の罪は……受け止めていますから」

道掛「えっと、ジェニーちゃんを見つけたのが俺と赤穂とメメちゃんで……」

御影「鞍馬を見つけたのが兄さんと遠見、そしてジェニーってわけだね」

赤穂「ああ、ジェニーはおそらく鞍馬殺しの現場を目撃してしまったんだ」

土橋「ジェニーは口封じで殺されたって事!?」

赤穂「ああ、だからこの事件は……」


兵頭「その推理は無効票です」反論!


兵頭「おっと赤穂さん、可能性は他にもありますよ」

赤穂「可能性?」

兵頭「ふふっ、もちろん……」

兵頭「鞍馬さん殺しのクロがジェニーさんという可能性ですよ!」
575 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 18:40:13.19 ID:dMnWbs8A0
【反論ショーダウン開始!】

コトノハ>>571
【鞍馬の遺体】
【ジェニーの遺体】
【ヒーローのバッジ】

兵頭「今回の事件は4パターンの可能性があります」

兵頭「鞍馬さんとジェニーさんを同一人物が殺した」

兵頭「鞍馬さんとジェニーさんを別々の人物が殺した」

兵頭「鞍馬さんがジェニーさんを殺した後に殺された」

兵頭「ジェニーさんが鞍馬さんを殺した後に殺された」

赤穂「確かに可能性ならある……」

赤穂「だけど今回は同一犯なんだ!」

兵頭「それは赤穂さんがジェニーさんが人を殺すはずがないと信じたいだけでは?」

兵頭「ジェニーさんなら鞍馬さんも油断したかもしれませんし……」

兵頭「【鞍馬さんを殺害し、モーテルに戻る前に殺害された】」

兵頭「この可能性は否定出来ません!」
576 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 18:50:11.07 ID:dMnWbs8A0
【鞍馬さんを殺害し、モーテルに戻る前に殺害された】←【鞍馬の遺体】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「いいや、ジェニーに鞍馬を殺すのは不可能だ!」

兵頭「言い切りますね……」

赤穂「ああ、なぜなら鞍馬は頭頂部を刺されて殺されてるからな!」

苗木「そっか、頭頂部を刺されたなら身長差からジェニーさんに鞍馬クンを殺すのは難しいよね」

六山「というか、出来る人いるのかな?」

兵頭「待ってください。ジェニーさんになら逆に可能なのでは?」

土橋「どういう意味!?」

兵頭「自己紹介の時を思い出してください」

※※※※

「自己紹介ですねー?」

次に自己紹介する人を捜していたら上から声がした。

見てみたらオレンジとピンクのメッシュが入ったセミロングの金髪に、赤い水玉模様の上着と黄色いダボダボのズボンを着た女の子が【天井の飾りにぶら下がっていた】。

赤穂「うわっ!」

天井から降りてきたその子は器用に受け身を取ると会釈をする。

※※※※

兵頭「ジェニーさんの身体能力、【超高校級の道化師】としての才能……」

兵頭「それを活用すれば鞍馬さんの殺害は可能です」

577 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 18:53:04.01 ID:dMnWbs8A0
一時中断します。
578 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/04(火) 21:31:48.89 ID:dMnWbs8A0
佐場木「つまり兵頭、貴様はクラヴィッツが天井に潜み鞍馬を襲撃したと考えているわけか」

兵頭「えぇ」

土橋「そんな!ジェニーがそんな事……!」

赤穂「……確かに、ジェニーにならやろうと思えば出来たかもしれない」

御影「兄さん!?」

赤穂「だけど兵頭、1つ忘れている事があるぞ!」

兵頭「忘れている事ですか?」

赤穂「ああ」

確かに普段のジェニーなら出来たかもしれない……

だけどあの時は普段とは違っていたんだ!

【事件時普段と違っていた事とは?】

・ジェニーは怪我をしていた
・現場は真っ暗だった
・鞍馬は死んでいた
579 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 19:13:58.33 ID:sjLWUuQA0
・現場は真っ暗だった

赤穂「こいつだ!」


赤穂「鞍馬が殺された時現場は真っ暗だった……その状態で天井から飛び降りて鞍馬の頭頂部を刺すなんて出来るのか?」

如月「懐中電灯を使えば……確実に気付かれるはずです」

遠見「抵抗の跡もないため一撃で鞍馬殿を殺害したはずでありますよ」

土橋「そもそもジェニーは暗闇を怖がってたんだよ!」

六山「あれは演技には見えなかったよね」

苗木「うーん、ジェニーさんにはやっぱり難しいんじゃないかな……」

兵頭「そのようですね」

道掛「軽っ!?」

兵頭「私は可能性を潰しておきたかっただけなので」

御影「ちょっと兵頭、あんまり悪者になろうとしないでよ」

兵頭「ふふっ、何の事でしょう」

赤穂「とにかく今回の事件は同一犯という線で話を進めよう」

佐場木「ふん、ならば次の議論に移るぞ」

津浦「あの……1つよろしいでしょうか?」

赤穂「どうした津浦」

津浦「Ms.ジェニーが暗闇を怖がっていたのなら……彼女はなぜ外にいたのでしょう?」

ジェニーが外にいた理由か……
580 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 19:20:01.70 ID:sjLWUuQA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【手紙】
【地図と鍵】
【ナイフ】

津浦「Ms.ジェニーは……」

津浦「なぜ外にいたのでしょう?」

土橋「確かに変なんだよね……【ジェニーは暗闇を怖がってたし】」

苗木「目撃された口封じなら【犯人が呼び出したわけじゃない】よね」

道掛「【散歩】にしては暗いよな……」

六山「うーん……【病院に行こうとしてた】とかかな?」

御影「もしくは【他の施設に用があった】か……」

兵頭「謎ですね……ゆえに疑った面もあるのですが」

ジェニーが外にいた理由……それはきっと。
581 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 19:30:37.28 ID:sjLWUuQA0
【犯人が呼び出したわけじゃない】←【手紙】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「ジェニーは犯人に発電所に行くよう、行動を誘導されていた可能性が高い」

苗木「えっ?でもジェニーさんは口封じって話じゃ……」

赤穂「確かに殺害現場を発見された口封じだったのも事実だろう」

赤穂「だけどこんな手紙があった以上、それだけとは限らないはずだ!」

兵頭「手紙……」

道掛「だけどグレゴリーと奏ちゃんの事があったばっかなんだぜ!手紙なんかで発電所来んのか?」

赤穂「この手紙、発電所に来いとは書いてないんだ」

御影「どういう事?」

赤穂「この手紙には【同封したものはこの暗闇を何とかする鍵です】とだけ書かれていたんだよ」

如月「暗闇を何とかする鍵……それはいったい」

俺はもうその答えを知っているはずだ……!
582 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 19:46:07.80 ID:sjLWUuQA0
【地図と鍵】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「佐場木と遠見が発電所で地図と鍵を見つけたらしいんだ」

佐場木「金網に引っかけるようにしてな」

遠見「おそらく引っかける事でポイ捨てと判断されるのを阻止したのでありましょう」

道掛「地図と鍵っていったいどこのだよ?」

兵頭「ジェニーさんが発電所に行ったのであれば当然そこの地図と鍵では?」

赤穂「ああ、発電所の内部地図と制御室の鍵……」

六山「犯人はそんなものまで持ってたんだね……」

苗木「つまりジェニーさんは……暗闇を何とかするために発電所に行って、殺されちゃったんだね」

如月「行動を誘導したならおそらく手紙を渡したタイミングは事件が起きる少し前……犯人はジェニーさんを狙っていたという事になりそうですね」

土橋「なんで!?なんでジェニーが狙われないといけないの!?」

遠見「ジェニー殿は小柄……それが影響したのかもしれないであります」

道掛「マジかよ……!」

ジェニーも命を狙われていた……その事実が重く俺達にのし掛かる。

そんな事を考えていた犯人がこの中にいるんだからな……
583 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 19:53:44.75 ID:sjLWUuQA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【脅迫状】
【ジェニーの遺体】
【謎の欠片】

道掛「……あれ?ちょっと待てよ」

苗木「どうしたの道掛クン?」

道掛「【ジェニーちゃんが狙われてた】ってのはわかったけどよ……」

道掛「じゃあ鞍馬はどうなんだ?」

遠見「もちろん、鞍馬殿も狙われていたのでありましょう」

御影「でもあの鞍馬だよ?」

如月「【犯行を阻止される】可能性の方が高いですね」

佐場木「そもそも【複数殺すメリットがない】」

道掛「じゃあもしかしてよ……」

道掛「【鞍馬の方が予定外】だったんじゃねえのか!?」

津浦「Mr.鞍馬は犯人にとってイレギュラーだったと……」

鞍馬がイレギュラー……いや、それはない!
584 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:03:12.18 ID:sjLWUuQA0
【鞍馬の方が予定外】←【脅迫状】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いいや、犯人は鞍馬も殺すつもりだったんだ」

赤穂「だって鞍馬の方も呼び出されてたんだからな!」

道掛「だ、だけどあの鞍馬が呼び出しに応じるか?」

兵頭「応じざるを得なかったんですよ……なぜなら鞍馬さんのもらったものはジェニーさんとはまるで違うもの」

兵頭「脅迫状だったんですから」

御影「脅迫状!?」

赤穂「兵頭が鞍馬のモーテルで見つけたんだ……この脅迫状をな」

【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】

佐場木「この脅迫に応じて鞍馬は発電所に向かったのか」

津浦「しかし例の物とはなんなんでしょう?Mr.鞍馬にそこまで執着していた物があるとは……」

赤穂「……」

鞍馬が奪われていた物……それはおそらく現場にあったあれだ。
585 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:12:11.64 ID:sjLWUuQA0
【謎の欠片】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「鞍馬の遺体の下と指に変な欠片があったんだ」

兵頭「欠片?」

遠見「赤と白の細かい欠片だったでありますが……」

六山「……赤と白?」

苗木「何の欠片なんだろう……」

赤穂「……」

この欠片の意味……今の俺ならわかるはずだ。
586 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:18:38.96 ID:sjLWUuQA0
【ショットガンコネクト開始!】

現場にあった赤白の欠片……あれは。

コトダマ>>571
【鞍馬のモーテル】
【赤白の錠剤】
【ヒーローのバッジ】

・課題
【鞍馬類に関わる物は?】
【鞍馬類の知らない物は?】
【鞍馬類が奪った物は?】
587 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:22:27.82 ID:sjLWUuQA0
鞍馬のモーテルにあった赤白の錠剤……

そしてもう1つ組み合わせれば……答えは見える。

【赤白の錠剤】―【鞍馬類に関わる物は?】

コトダマ>>571
【身体強化薬(試作)】
【鞍馬のコテージ】
【脅迫状】
588 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:25:08.76 ID:sjLWUuQA0
赤穂「……」

鞍馬のコテージにあった赤白の錠剤……

身体強化薬……これが示す答えは!

【赤白の錠剤】―【鞍馬類に関わる物は?】―【身体強化薬(試作)】


・結論
【鞍馬は身体強化薬を奪われていた】
【鞍馬は身体強化薬を服用していた】
【鞍馬は超高校級の薬剤師だった】
589 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:33:30.08 ID:sjLWUuQA0
【鞍馬は身体強化薬を奪われていた】

赤穂「真実をこれで繋ぐ……!」


赤穂「鞍馬のモーテルには赤白の錠剤があった」

赤穂「そしてコテージにも同じ赤白の錠剤があった」

赤穂「その錠剤は身体強化薬……」

赤穂「鞍馬が奪われていた例の物はこれだったんだよ!」

道掛「し、身体強化薬!?」

如月「鞍馬さんがそんなものを……」

御影「ちょ、ちょっと待ってよ兄さん!身体強化薬なんてなくても鞍馬はあんなに……」

赤穂「いいや、違うんだよ牡丹」

兵頭「まさか」

佐場木「……そういう事か」

苗木「えっ、えっ?どうしたの?」

六山「逆転の発想ってやつだよ」

土橋「逆転?」

津浦「【Mr.鞍馬に身体強化薬なんて必要ないはず】……ではなく」

遠見「【身体強化薬がなぜ鞍馬殿に必要なのか】……」

赤穂「それを示す答えは1つしかない」
590 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:34:35.90 ID:sjLWUuQA0






赤穂「鞍馬の力は、薬によって後付けされたものだったんだ!」






591 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:39:23.26 ID:sjLWUuQA0
道掛「あ、後付けぇ!?」

如月「なるほど……脳のリミッターを外している僕と渡り合えた理由はそれですか」

土橋「えっ、さりげなくとんでもない事言ってない?」

佐場木「ますますキナ臭くなってきたな……」

遠見「あの力が後付けならば、鞍馬殿の才能はそれに関わるものだったのでありますか?」

兵頭「本人が亡くなっている以上、答えは謎ですね……」

赤穂「……」

鞍馬の才能……俺は知っているはずだ。

他でもない……アイツからの情報でな!
592 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:51:15.20 ID:sjLWUuQA0
【鞍馬の才能】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「……みんな、このファイルを見てみてくれ」

佐場木「なんだそれは」

赤穂「モノクマからの情報だ。俺達が知っていたはずの情報らしい」

兵頭「私達が知っていたはずの情報ですか」

みんなにファイルが回されていく。

そして読んだ人間は例外なく驚きの反応を示した。

道掛「く、鞍馬に才能がない……?」

御影「嘘……」

佐場木「語らないのではなく、そもそもなかったというわけか」

六山「でもモノクマからの情報でしょ?信用出来るのかな」

モノクマ「ボクは嘘はついてませーん!」

兵頭「もしかして最初の事件前に言っていたのは……」

※※※※

モノクマ「オマエラの中に裏切者がいまーす!」

赤穂「……は?」

モノクマ「オマエラってほとんどが第八十期……未来機関第一期生なわけだけどさ」

モノクマ「実はなに食わぬ顔して紛れ込んでる大嘘つきがいるんだよ!」

※※※※

モノクマ「その通り!才能なしの凡人なのに謎多き男のふりをしていた厨二病患者!」

モノクマ「それこそ鞍馬類クンの正体だったのでーす!」

赤穂「鞍馬に才能がないのは事実でも、そこまで言われるいわれはないだろう!」

モノクマ「うひゃあ、怖い怖い!」

赤穂「……とにかく、鞍馬が呼び出された理由はこれで」



道掛「パンクしてんぞその推理!」反論!
593 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 20:58:04.57 ID:sjLWUuQA0
【反論ショーダウン開始!】

コトダマ>>571
【鞍馬の裁縫セット】
【鞍馬のモーテル】
【鞍馬のコテージ】


道掛「やっぱ信じらんねえよ!」

道掛「あの鞍馬が薬で作られたなんて!」

道掛「あいつはそんな、ドーピングとかするやつじゃねえって!」

赤穂「鞍馬が身体強化薬を持っていたのは事実だ」

赤穂「それで脅迫に応じたのもな」

道掛「いや、だからといって飲んでたとは限らねえって!」

道掛「鞍馬はただ持ってただけかもしんねえじゃんか!」

道掛「【鞍馬が薬飲んでた証明なんて出来ねえだろ!?】」
594 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:04:57.27 ID:sjLWUuQA0
【鞍馬が薬飲んでた証明なんて出来ねえだろ!?】←【鞍馬の裁縫セット】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「鞍馬はいつも裁縫セットを持ってたよな?」

道掛「それがなんだよ!」

赤穂「裁縫セットの中には……ピルケースがあったんだ」

御影「ピルケース……何か薬は飲んでたってわけだね」

道掛「か、風邪薬……」

赤穂「わざわざ裁縫セットにピルケースを作ってまでか?」

苗木「風邪薬なら堂々と飲めばいいもんね」

道掛「うっ、くっ……!」

如月「道掛さん、残念ながら……鞍馬さんが薬を服用していたのは間違いないかと」

道掛「……なんでだよ!なんでドーピングなんて!」

兵頭「道掛さんにはわからないのでは?運動系の超高校級の才能を持つあなたにはね」

道掛「っ!」

兵頭にキツい一撃を受けた道掛はそのまま項垂れてしまった。

友達だって言ってた鞍馬の事をわかってなかった……その事実に打ちのめされたんだろう。
595 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:08:05.48 ID:sjLWUuQA0
佐場木「……鞍馬が身体強化薬を服用していたのはわかった」

佐場木「しかしあえて言おう……それがなんだ?」

佐場木「鞍馬に才能がなくともあの身体能力は脅威だ」

遠見「犯人の特定には至らないでありますね……」

六山「うーん、そもそもさ」

六山「本当に鞍馬くんにとってその薬って大事だったのかな?」
596 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:16:41.92 ID:sjLWUuQA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【鞍馬のモーテル】
【鞍馬のコテージ】
【身体強化薬(詩作)】


六山「【鞍馬くんにとって大切なものだ】ーって前提になってるけど……」

六山「この薬コテージには机にポンッて置かれてたんだよ?」

如月「……それは脅迫状に応じるほど大切なら不自然ですね」

御影「だったら【鞍馬にとって薬はどうでもよかった】?」

苗木「前提が変わっちゃうね……」

土橋「うーん、でも他に何かある?」

津浦「【Mr.鞍馬にとって大切な他の何か】……思い付きませんね」

鞍馬を脅迫したタネはあの薬で間違いない……!
597 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:21:57.85 ID:sjLWUuQA0
【鞍馬にとって薬はどうでもよかった】←【鞍馬のモーテル】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いや、鞍馬にとってあの薬は大切なものだったはずだ」

赤穂「それは鞍馬のいたモーテルが証明になる!」

六山「モーテルが?」

兵頭「そういえばあのモーテル……相当荒れていましたね」

遠見「荒れていたとはどれぐらいでありますか?」

赤穂「ベッドはぐちゃぐちゃ、棚の中や机の上の物は床に投げ出されてたな」

土橋「確かにそれは酷いね……」

道掛「鞍馬が普段からだらしなかったんじゃねえのか」

赤穂「いや、それはないんだ」
598 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:30:05.39 ID:sjLWUuQA0
【鞍馬のコテージ】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「鞍馬のコテージはきちんと整理整頓されてたんだ。生活感がないレベルでな」

道掛「そっかよ……」

土橋「とにかく類にとってそれが大切なものだっていうのは間違いないみたいだね」

苗木「でもやっぱり犯人には繋がらないよね……」

遠見「せめて凶器のナイフの出所さえ掴めれば……!」

佐場木「マーケットや水族館のものとも違うあのナイフか……クラヴィッツを刺した物と同一だろうが」

道掛「……ナイフ?」

兵頭「どうしました?何か心当たりでも?」

道掛「……い、いや、ねえよ!」

六山「それ嘘だね?わたしにもわかるよ」

道掛「うっ!」

御影「道掛、何か知ってるの?」

道掛「うぐっ……!」

佐場木「答えろ道掛。あのナイフの出所を知っているならな」

道掛「…………」

苗木「道掛クン……?」

道掛「……が」

津浦「えっ?」
599 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:31:01.64 ID:sjLWUuQA0






道掛「ナイフなら、鞍馬が、持ってたぜ……」






600 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:39:29.73 ID:sjLWUuQA0
赤穂「鞍馬が!?」

如月「間違いないんですか?」

道掛「間違いねえよ!前に話してた時、あいつがナイフ持ってたの俺見たんだ!」

道掛「でも鞍馬が何かするわけねえって……俺信じてたんだよ!」

道掛「だけど今思い出したんだ!ジェニーちゃんに刺さってたナイフ、鞍馬が持ってたやつだって!」

道掛「それで、ジェニーちゃん殺したの鞍馬なんじゃねえかって思ったら……!」

道掛「なあ、違うよな?鞍馬はクロなんかじゃねえよな!?」

道掛「もう、俺にはわかんねえんだよ……」
601 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:42:45.76 ID:sjLWUuQA0
赤穂「道掛……」

鞍馬がジェニーを殺したクロかどうか……どうにかしてはっきりさせられないか?

道掛「ちくしょう、ちくしょう……!」

それが今苦しんでる道掛のためにもなるはずだ……!
602 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 21:50:44.09 ID:sjLWUuQA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【電気がついたタイミング】
【モノクマファイル3】
【赤穂の実験】


兵頭「鞍馬さんがジェニーさんを殺した可能性ですか……」

苗木「さっき兵頭さんがあげた可能性の1つだったよね」

佐場木「何にせよはっきりさせるべき事柄ではあった」

遠見「ふむ、しかし【凶器は鞍馬殿の物】でありますよね……」

六山「閉じ込められてから薬は減ってただろうし……それが【動機になりそう】」

御影「【モーテルが荒れてた】のってそういう理由だったんだ……」

如月「せめて〔鞍馬さんが殺害された時間〕がはっきりすれば……」

……!

そうか、これならもしかして……!
603 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 22:01:24.56 ID:sjLWUuQA0
〔鞍馬さんが殺害された時間〕←【電気がついたタイミング】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「もしかしたら証明出来るかもしれない……鞍馬の無実を!」

道掛「っ!?」

御影「えっ、いったいどうやって?」

赤穂「電気がついたタイミングだよ。津浦、確かあれは」

津浦「2時52分ですね……」

土橋「2時52分……」

赤穂「モノクマは教えなかったけど、これは事件の起きたタイミングのはずだ」

遠見「鞍馬殿が殺された、もしくはそれをモノクマが確認したタイミングでありましょうな」

兵頭「それがどうやって無実の立証に?」

佐場木「考えてみろ。鞍馬がクロならば奴はクラヴィッツを刺した後に殺害された」

佐場木「つまりクラヴィッツは先に刺されたわけだ」

如月「……なるほど、二重の矛盾ですね」

苗木「どういう事かよくわかんないんだけど……」

簡単な事だったんだ……

鞍馬がクロではあり得ない証拠は2つある!
604 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 22:17:44.29 ID:sjLWUuQA0
【ジェニーの遺体】
【ナイフ】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「まずジェニーの遺体……ジェニーは刺された後にナイフでお腹を抉られてるんだ」

土橋「っ……」

御影「エグいね……」

赤穂「だからジェニーは血が止まらない状態だったんだ」

佐場木「鞍馬が殺害された時間が2時52分として、クラヴィッツは刺されてから数分しかもたなかっただろう」

遠見「先に刺されてから、鞍馬殿が殺害された場合……赤穂殿が遺言を聞けるはずがないのであります」

赤穂「それにそもそも鞍馬が後に殺害されたなら……ジェニーのお腹にナイフが刺さってたのはおかしいんだ!」

六山「あっ、それはそうだね……またジェニーさんのお腹にナイフ刺した事になっちゃうよ」

道掛「じゃあ……」

赤穂「ああ、鞍馬はクロじゃない!」

道掛「……そうか、そうか!」

道掛の目に光が戻る。

はっきりと鞍馬の無実は証明されたからな……
605 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 22:43:15.91 ID:sjLWUuQA0
遠見「……しかし、これはマズイ事になったでありますよ」

津浦「マズイ事、ですか?」

佐場木「鞍馬がナイフを持っていた以上クロは鞍馬からナイフを奪い殺害した事になる」

六山「……えっ、出来るの?」

御影「モーテルに、薬はあったんだよね?」

赤穂「ああ、だから鞍馬は……身体強化された状態だったはずだ」

土橋「じゃあやっぱり類を殺すなんて無理なんじゃ……」

苗木「いや……1人だけ、いるよね」

道掛「えっ、誰だよ!」

兵頭「そんな、まさか……」

赤穂「……」

確かに、1人だけいる。

鞍馬を殺せる人間……

だけど、それは……!
606 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 22:49:35.50 ID:sjLWUuQA0
【如月怜輝】

赤穂「そんな嘘だろ……!」


赤穂「如月さん」

如月「……」

赤穂「あなたなら、鞍馬を殺せますよね?」

如月「……」

土橋「答えてよ怜輝!今回の事件を起こしたのは、ジェニーを殺したのは怜輝なの!?」

如月「……」

如月さんは答えない……だけど状況を考えたら……!
607 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 22:55:43.08 ID:sjLWUuQA0
【ショットガンコネクト開始!】

赤穂「……」

ジェニーを殺した後犯人は……

コトダマ>>571
【道掛の証言】
【ヒーローのバッジ】
【モノクマファイル3】

・課題
【犯人の行動を示すのは?】
【被害者の行動を示すのは?】
【黒幕の行動を示すのは?】
608 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 22:58:31.33 ID:sjLWUuQA0
赤穂「……」

道掛の言っていた事、あれは……

もしかしたら……

【道掛の証言】―【犯人の行動を示すのは?】

コトダマ>>571
【モーテルのメンバー】
【赤穂の実験】
【口の血】
609 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 22:59:53.80 ID:sjLWUuQA0
赤穂「……」

道掛の言っていた事、そしてモーテルにいたメンバー……

そうか、犯人は……

【道掛の証言】―【犯人の行動を示すのは?】―【モーテルのメンバー】


・結論
【犯人は病院に逃げた】
【犯人はモーテルの部屋に戻った】
【犯人は発電所に隠れた】
610 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:14:43.10 ID:sjLWUuQA0
【犯人はモーテルの部屋に戻った】

赤穂「これが、真実なのか……!」


赤穂「道掛、確か電気がついた後にドアの音がしたんだよな?」

道掛「お、おう。だから誰か出たんだと思って自転車で追っかけたんだよ」

赤穂「だけど俺がジェニーを見つけた時、道掛以外には誰も会ってない」

兵頭「私達病院組は赤穂さんに会ってから一緒でした」

苗木「じゃあ道掛クンが聞いた音って……」

赤穂「出た音じゃない、戻る音だったんだよ」

御影「じゃあ……」

赤穂「犯人は犯行を行った後にモーテルの自分の部屋に」




如月「それは違いますよ……」反論!
611 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:22:11.08 ID:sjLWUuQA0
【反論ショーダウン開始!】

コトノハ>>571
【赤穂の実験】


如月「なるほど、モーテルに戻ったというのはあり得る話でしょう」

如月「しかし僕は犯人ではありません」

如月「僕が殺人をしないのは宣言してあったはずですよ」

赤穂「誰が殺すかなんて何も言えません」

赤穂「薄井やグレゴリーだって、人を殺す人間ではなかったはずなんですから」

如月「それを言われると痛いですね……」

如月「しかし否定するしか僕にはないんです」

如月「【鞍馬さんを殺せるというだけならば僕を犯人とする根拠には程遠い】」
612 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:29:51.52 ID:sjLWUuQA0
【鞍馬さんを殺せるというだけならば僕を犯人とする根拠には程遠い】←【赤穂の実験】

赤穂「……!」


赤穂「それだけじゃないでしょう」

如月「……」

赤穂「鞍馬とジェニーを殺してからモーテルに戻る……そのための時間は道掛がドアの音を聞くまでの2、3分」

赤穂「実験をした時如月さんは確かに言った!」

赤穂「2分でモーテルに戻るのは自分か鞍馬にしか出来ないって!」

如月「……」

道掛「んな馬鹿な……」

遠見「確かに、状況では如月殿こそクロとしか」

苗木「そ、そんな」

六山「まさかの展開だね……」

土橋「っ、答えてよ……!」

兵頭「如月さん、嘘ですよね?まさかあなたがそんな……」

津浦「Mr.如月が……」

御影「兄さん……」

如月「……」

赤穂「どうなんですか如月さん!」

如月「……あくまで状況でしかない」

如月「認めるつもりはありませんよ」
613 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:33:04.90 ID:sjLWUuQA0
【マシンガントークバトル開始!】

如月「僕は犯人ではありません」

如月「赤穂さんの主張は状況証拠以外ない」

如月「僕は悪しか裁きません」

如月「正義の名の下に潔白を主張します」

如月「……」

如月「僕は、違います」

如月【物的証拠はないんですから】
614 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:37:36.46 ID:sjLWUuQA0
【物的証拠はないんですから】←【ヒーローのバッジ】

赤穂「……」


赤穂「じゃあ……教えてください」

如月「なんでしょう?」

赤穂「如月さんの妹さんのバッジがなんで発電所にあったんですか」

如月「……!」

御影「妹の、バッジ?」

赤穂「ここに妹さんがいるって言うんですか?もしかしてあのバッジは……あなたが持っていたんじゃないですか?」

如月「…………」

赤穂「他に理由があるなら、言ってみてください」

赤穂「如月さん!!」

如月「…………どうやら」

赤穂「……!」



如月「ここまで、みたいですね」

それは聞きたくなかった言葉。

憧れのヒーローの……敗北宣言だった。
615 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:53:50.03 ID:sjLWUuQA0
【クライマックス推理開始!】

ACT.1
今回の犯人は2人の人間を殺そうとしていた。
被害者である鞍馬とジェニーだ。
そのために犯人は……人を殺さないという宣言を翻したんだよ。

ACT.2
まず犯人は鞍馬のモーテルから彼が使っていた身体強化薬を盗み出した。
鞍馬にとってそれはとても大切な物だったからな……
次にジェニーと鞍馬に手紙を送り……2人が発電所に来るよう誘導した。

ACT.3
そして犯人は計画を実行に移す。
まず鞍馬からナイフを奪い取ると……それを頭に突き刺して殺害。
犯人は身体強化された鞍馬と渡り合えていたから、問題ない作業だったはずだ。

ACT.4
そして誘導されるがままやって来たジェニー……彼女は鞍馬が殺害される瞬間を見たのか、そのまま逃げ出した。
しかし犯人からは逃げ切れず……腹部を刺されて口封じされてしまったんだ。

ACT.5
2人を殺した犯人は全速力でモーテルに戻った。
その時の音を聞いていた道掛は出たんだと思って追いかけたけど……実際はモーテルに入った音だったんだよ。
そしてその後アナウンスが鳴るのに合わせて外に出た……あたかもモーテルにいたと思わせるために。

鞍馬を殺し、なおかつモーテルに戻れた人間……

赤穂「両方の条件はあなたにしか満たせない……如月怜輝!」

如月「…………」

COMPLETE!
616 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:58:10.36 ID:sjLWUuQA0
赤穂「どうして!どうしてなんですか如月さん!」

如月「……」

モノクマ「おっとその前にやるべき事を済ませましょう!」

モノクマ「議論の結論が出たみたいだね!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      

       


     【学級裁判閉……】
617 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/05(水) 23:59:01.86 ID:sjLWUuQA0






佐場木「その判決を棄却する!」反論!






618 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 00:11:31.93 ID:mFIepzIA0
赤穂「!?」

佐場木「ふざけるなよ殺人鬼……何がここまでだ」

佐場木「その諦めが憎むべき犯罪者を逃がし!無実の者達の死を招く!」

佐場木「正義だなんだとほざいておきながら結局はただの戯れ言か!」

佐場木「答えてみろ如月怜輝!」

如月「佐場木、さん」

佐場木「貴様も貴様だ赤穂!」

赤穂「な、何を」

佐場木「確かに薄井やグレゴリーを追い詰めたのは貴様だ。その手腕は評価に値する」

佐場木「だがしかし!この学級裁判は俺達全員の命を懸けたやり取りだ!」

佐場木「貴様だけで勝手に進めるのはやめてもらおうか!」

赤穂「だけど!他に結論はないだろう!」

赤穂「犯行が可能なのは如月さんしか……」

佐場木「それが正しいかは全て終わった後にわかることだ」

モノクマ「あのー……」

佐場木「審理は続行だ!!貴様は黙っていろ!!」

佐場木「遠見!苗木!道掛!土橋!御影!兵頭!六山!津浦!」

佐場木「貴様らもそれでいいな!」

佐場木の言葉に否定する人間はいない。

それだけのものが、今の佐場木にはあった。

佐場木「さあ、議論の再開だ……絶対に逃がさんぞ、犯罪者!!」


     【学級裁判中断!】
619 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 00:13:02.18 ID:mFIepzIA0
今回はここまで。
次回三章終了です。
620 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 19:18:56.80 ID:mFIepzIA0






     【学級裁判再開!】






621 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 19:26:47.08 ID:mFIepzIA0
遠見「佐場木殿……議論の再開とは言うものの何を語ればいいのでありますか?」

佐場木「今回如月がクロとなっている理由は主に2つだ」

佐場木「1つ、身体強化された鞍馬を殺せるから」

佐場木「2つ、殺害後モーテルに戻る事が出来るから」

佐場木「そうだな?」

土橋「ま、まあそうだけど……」

佐場木「ならば他にこの条件を満たす手段はなかったか……それを議論すればいい」

苗木「手段って……本当にそんなのあるの?」

六山「それを話し合えって事じゃないかな」

赤穂「……」

鞍馬を殺す条件を満たす手段……本当に如月さんがクロだって事以外にあるのか?
622 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 19:39:18.55 ID:mFIepzIA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【鞍馬の裁縫セット】
【赤白の錠剤】
【脅迫状】

道掛「他の可能性つったってよ……」

津浦「〔鞍馬さんと渡り合えるのを隠していた〕人物がいたのでしょうか」

兵頭「もしくは〔鞍馬さんがそれほどではなかった〕……」

御影「いや、それほどではあったでしょ……」

六山「あっ、もしかして……」

六山「〔クロも身体強化されてた〕とか」

苗木「薬が2つあったって事!?」

土橋「それはいくらなんでも……」

六山「むー……」

赤穂「……」

もしかして……そういう事なのか?
623 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 20:59:16.27 ID:mFIepzIA0
〔クロも身体強化されてた〕←【脅迫状】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「そうか……クロも身体強化されてたんだよ!」

六山「えっ、もしかして当たり?」

遠見「同じような薬がもう1つあったとは考えにくいのでは?」

赤穂「いや、薬が2つあったわけじゃない」

赤穂「この鞍馬を呼び出した脅迫状をもう一度見てくれ」

【鞍馬類、お前の秘密は握った。
例の物を返してほしければ深夜の2時半頃に発電所に来い】

御影「……そっか!クロは鞍馬から薬を盗んで持ってたんだ!」

佐場木「現場に残された欠片のせいで混乱を招いたが……鞍馬を相手にするなら飲んでおかない方が不自然」

道掛「強化されてたってなら、鞍馬を殺すのもモーテルに戻るのも出来たって事だな!」

如月「……もしかしたら」

兵頭「如月さん?」

如月「コテージの机の上に置きっぱなしだったのも……クロが盗んでいたからでは?」

津浦「確かに鞍馬さんがそれを出しっぱなしにするのも不自然な話でしたね」

土橋「じゃあ犯人は、暗くなる前から類を殺すつもりだったんだ……」

苗木「そう、なるね」
624 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 21:16:32.81 ID:mFIepzIA0
遠見「……わかったであります!」

赤穂「わかったって……何がだ?」

遠見「鞍馬殿の頭頂部を刺した方法でありますよ!」

佐場木「ほう、言ってみろ遠見」

遠見「頭頂部を一撃で殺害したのは犯人もまた身体強化されていたから……しかしどうやって頭頂部を刺したのかは不明でありました」

御影「そういえば……」

遠見「しかし犯人がもしもコテージからも鞍馬殿の薬を盗んでいたのならば……こう考えられるのでは?」

遠見「犯人は鞍馬殿の目の前で、薬をばらまいたのであります!」

道掛「薬をばらまいたぁ!?」

赤穂「そうか……鞍馬が薬を拾おうとしてかがんだ所に……ナイフを突き刺したのか!」

津浦「犯人は薬と一緒にナイフも盗んでいたんでしょうね」

六山「きっと薬とナイフを盗まれて動揺したからモーテルを荒らしたんだよ」

土橋「薬を拾おうとしてたなら例えば懐中電灯を向けられてても気は逸れるよね……」

苗木「それなら鞍馬クンを殺すのは容易……むしろ失敗する方が難しいかもしれない」

1つの綻びがほどければ、次々に可能性が見えてくる。

今俺達は確実に真相に近付いてるんだ……!

赤穂「……如月さん」

如月「謝罪は不要ですよ赤穂さん」

赤穂「……!」

如月「僕達は真犯人を追い詰めている……それでいいじゃないですか」

赤穂「ありがとう、ございます」

如月さんには、かなわないな……
625 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 21:24:09.95 ID:mFIepzIA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【口の血】
【ジェニーの遺体】
【ナイフ】

兵頭「手口はわかりましたが……肝心の犯人はまだ不明ですね」

佐場木「【鞍馬のコテージやモーテルから薬とナイフを盗み】……」

土橋「【ジェニーに発電所関係の物を送りつけた】んだよね?」

道掛「【薬を飲んで強化してやがったんだよな】!」

遠見「【残った薬をばらまき鞍馬殿の隙を作り出して殺害】したのでありますな」

御影「そして【鉢合わせたジェニーも追いかけて殺した】」

苗木「だけど【もう手がかりがない】よ……」

津浦「ここまでわかっているのに……!」

赤穂「……」

そういえば……まだ謎だった事があるはずだ。
626 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 21:35:33.41 ID:mFIepzIA0
【もう手がかりがない】←【口の血】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いや、まだ手がかりはある!」

苗木「えっ、手がかりって何なの?」

赤穂「ジェニーの口についていた血だ」

兵頭「あれは刺された時に吐いたものでは?」

赤穂「俺も最初はそう思った。だけどジェニーの口の中は歯にしか血がなかったんだよ」

遠見「刺された場合の吐血なら口の中は血だらけになっているはず……」

佐場木「外部から付着した血痕の可能性が高いな」

道掛「すげえ血だったし、飛んだのがついたんじゃねえ?」

御影「でもジェニーの顔、血ついてなかったよね?」

六山「ねぇ……それってもしかしたら噛んだんじゃない?」

津浦「噛んだ?何をですか?」

六山「疑問だったんだよね。ジェニーさんが刺されたのが鞍馬くんが殺された後ならなんでジェニーさん、助けを呼ばなかったのかなって」

土橋「確かに、走也とか琴羽は起きてたみたいだし……それでなくても助けを呼ぶよね」

如月「口を塞がれて刺された……六山さんはそう言いたいのですか?」

六山「可能性はあるんじゃないかな?」
627 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 21:45:44.54 ID:mFIepzIA0
赤穂「口を塞がれて刺されたジェニーは……その時クロの手を噛んだ?」

苗木「でも怪我してる人はいっぱいいるし……」

佐場木「……いいや、これはクラヴィッツの遺した重要な証拠だ」

遠見「佐場木殿、では!」

佐場木「怪我をしている人間は当該箇所を言ってみろ」

赤穂「俺は、腹部の銃創だな」

御影「私は頭の怪我ぐらいだけど」

兵頭「私も御影さんと同じです」

津浦「ワタシも頭部を負傷しています」

道掛「美姫ちゃん止めてた時に振り払われて全身擦り傷だらけってぐらいか?」

苗木「うん、ボクも道掛クンと同じだよ」

如月「……以上の方々が怪我をしている人物ですか」

六山「うーん、噛まれた傷はないね……」

土橋「正直に言うはずもないだろうけど……」

赤穂「……」

あれ?

ちょっと、待てよ?

あいつ……おかしくないか?

……まさか。

お前なのか?

お前が、クロなのか!?
628 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 21:59:51.21 ID:mFIepzIA0
【苗木誠】

赤穂「お前が、犯人なのか?」


赤穂「……苗木」

苗木「どうしたの赤穂クン……そんな怖い顔して」

赤穂「お前、その擦り傷どこでつけた」

苗木「どこでって……もちろん土橋さんを止めた時に」

赤穂「本当か?」

苗木「ど、どうしちゃったの?ボクは本当に……」

赤穂「俺がジェニーの所に来た時……」

※※※※

赤穂「土橋は、ずっと?」

御影「うん……苗木が頑張って抑えてるから大きな事にはなってないけど、道掛とか何回も振り払われてたよ」

赤穂「そう、か」

※※※※

赤穂「牡丹からそう聞いた……そうだよな牡丹」

御影「えっ、あっ、うん。苗木はずっと土橋を抑えて……あれ?」

津浦「ワタシもその場にいましたが、確かにMr.苗木はMr.道掛のように振り払われては……えっ?」

道掛「お、おい苗木……なんでお前、俺みたいな傷あんだよ?お前が美姫ちゃん抑えてて、すげえって俺思ってたの覚えてるぞ!?」

土橋「ア、アタシもずっと誰かが抑えてたのは覚えてるよ……」

苗木「…………」

佐場木「苗木、これはどういう事だ」

遠見「苗木殿、まさか苗木殿が……アンノウンなのでありますか!?」
629 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 22:09:46.70 ID:mFIepzIA0
苗木「……は、ははっ、酷いなぁみんな」

苗木「ボクだって必死だったんだよ?土橋さんを止めなきゃってそればっかり頭にあってさ……」

苗木「まさかそれで疑われるなんて、思わなかったよ……」

六山「それはいいからさ、いつその傷がついたか答えてよ」

苗木「覚えてないよ」

兵頭「覚えてない?」

苗木「言ったでしょ?必死だったって」

苗木「その状態でいつついた傷かなんて覚えてるわけないじゃないか」

苗木「道掛クンと同じような傷だから自分のもそうだって勘違いしちゃったのかな?」

赤穂「そんな言い訳……!」

苗木「事実なんだからしょうがないよ……それとも赤穂クンはボクが犯人だって言うつもり?」

苗木「さっきまで如月クンしか犯人いないって主張だったのに随分簡単に主張変えるんだね」

赤穂「っ……!」

なんだ、なんなんだ?

目の前にいるのは本当にあの苗木なのか?

まるで違う、今までのあいつとは雰囲気が……!
630 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 22:28:17.71 ID:mFIepzIA0
※※※※

御影「……」

兄さん、黙っちゃった……

苗木「全く酷い言いがかりだよ……これが噛まれた傷じゃないなんて見ればわかるのに」

手を振りながら苗木は兄さんを睨み付けている……

その視線ははっきり言ってすごく怖い。

だけど、だけど……!

御影「苗木、犯人はあんただよ!」

私は、兄さんを信じる……

だってたった2人の兄妹だから!

私だけは、赤穂政城の味方でいるんだ……!

苗木「何か言った?」

御影「っ」

苗木の視線がこちらに向けられる……その無機質と狂気の間の目はあの私を滅茶苦茶にしたあいつを思い出して……

御影「あんたが……犯人だって、言ったの」

だけど負けない。

負けて、たまるもんか……!
631 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 22:41:26.11 ID:mFIepzIA0
【議論開始!】

コトダマ>>571
【モノクマファイル3】

苗木「はぁ……」

苗木「赤穂クンが黙ったと思ったら今度は御影さんか」

苗木「【兄妹】揃って酷い人だね」

御影「そんなの関係ない!あんたが怪しいのは事実でしょ!」

兵頭「【怪しい点がある】のは確かにそうです」

苗木「勘弁してよ……ボクが何をしたっていうんだ」

佐場木「なら申し開きはあるのか」

苗木「申し開きも何も勝手な言いがかりにどうしろっていうのさ」

苗木「御影さんは【色々病気抱えて】大変かもしれないけど」

苗木「それに付き合うほどボクはお人好しじゃないよ」

赤穂「牡丹……」
632 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 23:05:10.19 ID:mFIepzIA0
【色々病気抱えて】←【怪しい点がある】

御影「それは違ってるよ!」


御影「……なんで」

苗木「何?」

御影「なんで知ってるの?私の才能」

苗木「……!」

道掛「は?どういう事だ、牡丹ちゃんの才能……?」

土橋「それに病気って」

御影「……私の才能は【超高校級の被験体】」

御影「今、私の身体には普通なら死ぬ病気がたくさん巣を張ってるんだ」

御影「だけど私は死なない、死ねない……そんな体質なの」

如月「っ!?」

兵頭「御影さんがそんな……」

御影「今は私の才能はどうでもいいよ。重要なのは」

御影「兄さんと鞍馬しか知らない事をなんであんたが知ってるかだよ苗木!」

苗木「っ!」

御影「鞍馬とその事で話したすぐ後に私と兵頭は襲われた!兄さんと話した時には私は聞かれないようにしてた!」

御影「あんたなんでしょ苗木!兄さんを撃ったのも、私や兵頭を襲ったのも……鞍馬やジェニーを殺したのも!」

苗木「……どこまでも」

苗木「言いがかりをつけてくるねキミ達は!」
633 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 23:11:50.40 ID:mFIepzIA0
【パニックトークアクション開始!】

苗木「ボクは犯人じゃないんだよ」

苗木「さっきからそっちが言ってるのは状況証拠ばかりだ」

苗木「ボクに罪を着せたいのかな?」

苗木「本当に兄妹揃って……」

苗木【ボクを犯人にしたいなら決定的証拠を見せなよ!】



     土橋

なぜ        抑えられた?

     を

634 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/06(木) 23:20:03.18 ID:mFIepzIA0
【なぜ土橋を抑えられた?】


御影「これで終わりだよ!」


御影「じゃあ聞くけど……なんで土橋を抑えられたの」

苗木「は……?」

御影「運動系の才能の道掛は何度も振り払われて、あんたが振り払われてないのはどうして?」

苗木「それ、は……」

御影「それは身体強化してたから……じゃないの」

苗木「そんな事……!」

如月「……」

遠見「如月殿!?」

赤穂「っ!?」

それは一瞬の出来事だった。

如月が苗木に向かって放った拳は……

苗木「……やって、くれたね」

苗木に、受け止められていた。

如月「もはやこれしかなかったので」

苗木「……ああ、本当に」

苗木「最悪の気分だよ」

苗木は笑いながら、如月の腕を振り払う。

それは……苗木の身体強化を示す決定的証拠だった。
635 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 19:56:37.90 ID:zZqHgncA0
【クライマックス推理開始!】

ACT.1
大部分は兄さんの推理だと同じだと思う……今回の犯人は2人の人間を殺そうとしていたとかそれが鞍馬とジェニーだって事も。
だけど1つ違うのは……この犯人はかなり前から人を殺そうとしていたって事だよ。

ACT.2
犯人はあらかじめ鞍馬のコテージからあいつが使っていた身体強化薬を盗んでいた。
さらにモーテルから残りの薬とナイフも盗んで……閉じ込められて取りに行けなかった鞍馬にとっては気が気じゃなかったと思う。
そして犯人はジェニーと鞍馬に手紙を送って……2人が発電所に来るよう誘導したんだよ。

ACT.3
犯人は発電所で鞍馬に会うと持っていた薬をばらまいた。
それを拾うためにかがんだ鞍馬の頭に、盗んでおいたナイフを突き刺したんだよ。
薬をばらまかれた事に加えて犯人も薬を飲んで身体強化されてたから、鞍馬に抵抗なんて無理だったろうね。

ACT.4
そして次はジェニー……鞍馬が殺害される瞬間を見て逃げたジェニーを犯人は追いかけて。
道で捕まったジェニーは口を塞がれてお腹を刺された。
でもこの時ジェニーが犯人の手を噛んだ事が……犯人を追い詰める鍵になったんだ。

ACT.5
2人を殺した犯人は強化された身体を使って全速力でモーテルに戻った。
その後アナウンスが鳴るのに合わせて外に出た時に……噛まれた部分に新しく擦り傷を作ったんじゃないかな。
そして土橋を止める事で擦り傷を作っても不自然じゃないようにしたんだ。

ここ最近の一連の事件、その犯人は……

御影「あんただよ、苗木誠……!」

苗木「……あーあ」

COMPLETE!
636 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:00:28.13 ID:zZqHgncA0
モノクマ「うぷぷ、今度こそ終わりかな?」

苗木「……」

苗木はもう反論しない……どうやら、ここまでみたいだな。

赤穂「ああ、終わりだ」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      苗木 苗木 苗木

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】
637 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:11:59.82 ID:zZqHgncA0
モノクマ「大正解ー!」

モノクマ「今回鞍馬類クンとジェニー・クラヴィッツさんを殺したクロは……」

モノクマ「苗木誠クンでしたー!」

道掛「な、なんでだよ!?なんで苗木が鞍馬とジェニーちゃんを……」

佐場木「この男がした事はそれだけではない」

遠見「赤穂殿を撃ち、死体を出さない方法で御影殿と兵頭殿を殺そうとしたアンノウン……」

兵頭「それが、苗木さんだとは……さすがに予想外でしたね」

如月「……混乱を防ぐために詳細は伏せますが、彼には他にも余罪があります」

苗木「……」

薄井とグレコリーの件だな……

津浦「Mr.苗木……何がアナタをそこまで」

土橋「誠がジェニーを殺したなんて、追い求めてた答えなのに信じられない……」

六山「ゲーム好きに悪い人はいないと思いたかったんだけどな……」

確かに苗木がここまでやるなんて、普段の姿を見ていたら想像出来ない。

赤穂「苗木……いったい何があったんだ?」

苗木「……」

御影「何か言いなよ。まさかこのまま黙りで……」

苗木「……………………」
638 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:13:56.48 ID:zZqHgncA0






苗木「あはっ……!」






639 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:21:56.64 ID:zZqHgncA0
苗木「あははははははははははははははははははははははっ!!」

苗木「ああ、もう駄目だ、我慢出来ない……!」

佐場木「貴様、何がおかしい」

苗木「だ、だって笑えるでしょ?」

苗木「こんなにあっさりと死んでいくんだよ……本当にボクの思うがままに殺しあってさ!」

苗木「所詮才能を持つ者もその程度の存在って事だ!これがおかしくなくて何を笑えばいいのさ!」

道掛「な、苗木!お前何を……!」

苗木「あれ、わからない?ボクがやったからだよ」

苗木「静音さんにサプライズの提案してそれを薄井クンが聞くように仕向けたのも」

苗木「四方院さんに静音さんの名前で手紙と雑誌送ってグレゴリークンを水族館に呼び出したのも」

津浦「なっ……!」

苗木「土橋さんを撃って赤穂クンに怪我させたのも、兵頭さんと御影さんを襲ったのも、鞍馬クンから薬とナイフを盗んで脅迫状を送りつけたのも」

苗木「今回鞍馬クンとジェニーさんを殺したのも!」

苗木「そして!」
640 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:23:21.63 ID:zZqHgncA0






苗木「今回このコロシアイを計画したのも!」

苗木「全部ボクの仕業なんだ」






641 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:35:20.94 ID:zZqHgncA0
赤穂「なっ……」

苗木が、黒幕?

このコロシアイを計画したのがこいつなのか!?

苗木「あはは、驚いた?まさか黒幕直々に殺人だなんて思いもしなかったでしょ?」

兵頭「……いくらなんでも予想外過ぎでは?」

苗木「まあ、我慢出来なかったんだ。ボクとしてはここにいる全員早く皆殺しにしたかったしさ」

津浦「な、なぜそんな……」

苗木による黒幕宣言。

それは少なからず俺達に混乱と衝撃を与えていた。

如月「……なぜ、こんなコロシアイを?」

それはおそらく、如月さんも例外じゃなかっただろう……

その証拠に、手は震えて、顔も少し青ざめていた。

あの【超高校級のヒーロー】であり【ジャスティスジャッジ】の如月さんがだ。

苗木「簡単に言えば希望のためかな?」

だけどそれとは対照的に苗木は事も無げに語る。

苗木「ねぇ、君たちは未来の希望だなんて言われて持ち上げられてるけどさ……」

まるで罪悪感など微塵も感じていないと言わんばかりに。

苗木は、語る。
642 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:36:38.22 ID:zZqHgncA0






苗木「自分達の存在がどれだけ周りを絶望させてるか、考えた事ある?」

このコロシアイがなぜ行われたのかを。






643 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:49:47.44 ID:zZqHgncA0
遠見「何を、言っているのでありますか……?」

苗木「……ああ、ごめん。やっぱり難しかったか」

苗木「君達みたいな自分1人で偉くなったつもりの屑にわかるわけないもんね」

佐場木「ここまで歪みきっていたのか……!」

苗木「選ばれた才能を持つ【超高校級】の生徒達。世間に希望だなんだと崇められてさぞかし気分がいいだろうね」

苗木「だけど君達の存在によってどれだけ本来評価されてしかるべき人が比較され、貶められ、絶望していってるか」

苗木「おかしいよね?少しだけの差なら切磋琢磨するライバルにだってなれる、次はって希望を持てる」

苗木「だけど【超高校級】というラベルはそれを全てぶち壊す」

苗木「希望ヶ峰学園が設立していた予備学科ってあるでしょ。確かにあそこは【超高校級】のラベルが欲しいだけの人間もいたよ」

苗木「だけど一番多かったのは……No.2として見向きもされなかった凡人なんだよ」

苗木「ああ、この世界は素晴らしいね!本当に狂ってるとしか思えない!」

苗木「そしてその象徴が君達なんだよ!」
644 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 20:56:07.99 ID:zZqHgncA0
苗木「そのくせ君達ときたらまるで自分1人で今の地位になれたって勘違いしてる」

苗木「芸能関係はファン、スポーツ関係はチームメイトやマネージャー、芸術関係は評価する人……」

苗木「そして何より敗者がいてこそ君達は輝ける!」

苗木「例えばやってるのがたった1人しかいない競技でトップに立ってもそんなの【超高校級】とは言えないもんね?」

苗木「君達が【超高校級】でいられるのは大多数の凡人達がいてくれるからなんだ」

苗木「なのに君達はそれを理解しようともしない」

苗木「挙げ句のはてに世界を滅茶苦茶にしたのも、その世界を管理者気取りで牛耳ってるのもどいつもこいつも才能のある奴らばかり!」

苗木「【超高校級】なんているから絶望が広まる……君達は異物なんだ、凡人達の希望を食らって世界に巣食う寄生虫なんだよ」

苗木「だからさ……」

苗木「早く死んでよ」

苗木「この世界を本当に支える大多数の凡人達が、希望を持って生きるために!」

苗木「さっさと絶滅しろよこの寄生虫!」

苗木「お前達は明確に害する絶望なんかよりはるかにたちが悪いんだからさぁ!」
645 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 21:08:35.80 ID:zZqHgncA0
苗木の言葉はどんどん熱を帯びていく。

その狂った考え方は……俺にはどうしても理解出来ない。

如月「……とんだ食わせものだったわけですか」

苗木「君と似たようなものだよ如月クン。君が犯罪者を殺して平和な世界を作りたいように、ボクは寄生虫を殺して平和な世界を作りたいんだ」

赤穂「……」

こいつは、狂ってる。

こんな狂った考えでみんなは殺されたっていうのか。

モノクマ「うぷぷ……いいねぇ!ボクが言うのもなんだけど実にイカれてるよ苗木クン!」

苗木「酷いなモノクマ。こんなに寄生虫達を消せたんだから褒めてくれたっていいのに」

御影「狂ってる……狂ってるよあんた……!」

苗木「んっ?」

御影「みんなが、いったい何したって……」

苗木「あはは、死ぬ病気大量に抱えて生きてる化け物に狂ってるとか言われたくないよ」

御影「っ……!」

赤穂「お前っ!!」

道掛「苗木、てめえ!!」

牡丹に対する暴言、俺はそれを許せなくて苗木に掴みかかろうとする。

だけどその前に。

土橋「うああああああっ!」

土橋が苗木の胸ぐらを掴んで地面に叩きつけた。
646 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 21:21:03.46 ID:zZqHgncA0
苗木「いてて……どうしたの土橋さん」

土橋「許さないっ!」

赤穂「っ、土橋!」

津浦「ひっ!」

苗木の頬に土橋の拳が入る。

その衝撃で飛んできた歯が、床に転がった。

佐場木「おい、やめろ!」

遠見「土橋殿!」

佐場木や遠見が止めに入るけど、土橋はさっきの比じゃないぐらいに暴れている。

まずい!このままだと土橋は苗木を……!

土橋「アンタはっ……」

道掛「お、おい美姫ちゃん!?」

兵頭「土橋さん、それ以上は!」

土橋「殺してやる、アンタなんか殺してやる……ナワキィィィィィィィィィィッ!!!!」

御影「っ!」

土橋の咆哮が響き渡る。

それは憎悪という言葉でも生温い感情の爆発で。

情けない事に、俺はそれに当てられて脚が震えてしまう。

だけど、これほどの言葉や拳を受けても……


苗木「いいよ?」


苗木は涼しげに、笑っていた。
647 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:11:28.00 ID:zZqHgncA0
土橋「……は?」

苗木「いやだから殺していいよ土橋さん」

笑う。

笑う。

笑っている。

苗木「ボクを殺せばキミは処刑される!あはっ!つまり寄生虫がさらに1人減るって事だ!」

自分自身の命さえ、こいつには俺達を殺すための道具でしかない。

苗木「ほらどうしたの殺しなよ!殺してみなよ!ジェニーさんの仇だよ?ほらほら!」

土橋「うっ、あっ」

土橋の手を掴んで、自分の首に持っていく苗木。

力を込めればきっと首が絞まって苗木は死ぬ。

苗木「出来ないの?」

土橋「あっ、あっ……」


苗木「じゃあボクがやるよ」


赤穂「っ、土橋!離れろ!」

苗木の笑みに寒気を覚えた俺の言葉もむなしく。

土橋「あっ」

苗木は土橋の腕を掴むと……息をするように、骨を折った。

土橋「ーーーーーーっ!!?」

腹に響くような嫌な音の後、声にならない悲鳴をあげて土橋が床を転げ回る。

遠見「土橋殿!っ、今治療を!」

苗木「あはは、ボクが薬飲んでたの忘れるなんて頭悪いなぁ」

止まらない、止められない。

この悪意に満ちた男はどうしたら止められるんだ。

そんな絶望にも似た心は……

モノクマ「じゃあそろそろ始めようか!」

よりによって、こいつに救い上げられた。
648 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:22:07.97 ID:zZqHgncA0
苗木「あっ、もう?」

モノクマ「このまま任せてたらただの虐殺映像になっちゃうからね!キミも満足したでしょ?」

苗木「仕方ないな……まあ、こんな世界にも嫌気が差してたしそろそろ退場しようかな」

津浦「み、Mr.苗木……?アナタも処刑されるんですか?」

苗木「えっ?当たり前だよ。ボクは裁判で負けたからね」

佐場木「貴様……」

苗木「あはは、それじゃあモノクマ!寄生虫の顔も見飽きたし始めてよ!」

モノクマ「それでは今回は、黒幕である苗木誠クンにふさわしいスペシャルなおしおきを用意いたしました!」

苗木「じゃあね寄生虫!せいぜい早く死ぬ事を願ってるよ!」

モノクマ「それでは張り切って参りましょう!」

苗木「あははははははははははははははははっ!!」

モノクマ「おしおきターイム!!」

苗木「あっ、そうだ」
649 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:22:57.87 ID:zZqHgncA0






苗木「君達の中に黒幕もう1人いるから」






650 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:26:47.74 ID:zZqHgncA0






     CONGRATULATION!!

  ナワキクンがクロにきまりました。

    おしおきをかいしします。






651 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:41:02.46 ID:zZqHgncA0
最後の最後にとんでもない爆弾を残して……苗木は処刑部屋へと消えていった。

※※※※

苗木クンがいるのはベルトコンベアーで流れる机の上。

それはかの希望と絶望へのおしおきを思い起こさせるようなそんな光景。

【既習】

【コロシアイ研修旅行黒幕苗木誠処刑執行】

モノクマの授業を聞きながら苗木クンは退屈そうにあくびをします。

その後ろでは彼を潰さんとプレスが大きな音をたてていて。

ゆっくりと迫り来る死の気配……しかし苗木クンはどうでもいいのか眉1つ動かそうとしません。

そしていよいよ苗木クンの座る机がプレスの下に……入ると同時に穴が開き、苗木クンは穴の中に落ちていきます。

それはあの希望の再現なのか……モノクマが穴を覗くと大きな音をたてて下から何かが上がってきます。

そして。

槍だらけの鉄板に串刺しにされた苗木クンが。

そのまま止まっていたプレスと上がる鉄板に押し潰されました。
652 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 22:53:28.70 ID:zZqHgncA0
モノクマ「エクストリィィィィィィィムッ!!」

モノクマ「苗木クンもお疲れ様だったね!これからはボクが改めてコロシアイを盛り上げていくよ!」

如月「モノクマ……苗木さんの言葉は本当なんですか」

モノクマ「うぷぷ、黒幕がもう1人って話ならボクがその証明でしょ?」

兵頭「それでは本当に……」

津浦「黒幕が、ワタシ達の中に……?」

モノクマ「うぷぷ、まあそこのところはノーコメントって事で!」

土橋「……」

遠見「っ、土橋殿を治療したいのでありますが」

モノクマ「うん、もう戻っていいよ!うぷぷ、これからもっともっとコロシアイは絶望的になるから楽しみにしててね!」

モノクマが消えて、土橋を連れた遠見もいなくなって……

佐場木「もう1人、か」

如月「……まだ終わらないんですね」

道掛「もうわけわかんねえよ……」

六山「……ゲームする相手、いなくなっちゃった」

そしてどんどん人が減って……

赤穂「……」

御影「……」

俺と牡丹だけが、残された。
653 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:04:36.47 ID:zZqHgncA0
御影「……兄さん」

赤穂「……ありがとうな牡丹。代わりに苗木を、追い詰めてくれて」

御影「……兄さんは二回もあんな事してたんだね」

赤穂「……ああ」

御影「重い、ね。投票もだけど……直接追い詰めるのはもっと」

赤穂「……」

御影「ごめん、やらないといけなかったのはわかってるんだけどっ……」

牡丹はもう言葉にならないのか涙を流す。

それは緊張から解き放たれた安堵か、人を1人処刑へと誘った後悔か……

赤穂「……」

御影「あっ」

赤穂「俺の前で泣くのを我慢しなくていい」

だけど俺のやる事は変わりはしない。

御影「うっ、うううっ」

赤穂「……」

妹の涙を受け止めるのは……兄としての役目だからな。


そして絶望的な夜は明ける。




だけど俺はまだ理解してなかった。

絶望はまだこれからだという事に。
654 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:09:29.02 ID:zZqHgncA0






CHAPT.3【悪意のアンノウンは高らかに唄う】 END

生き残りメンバー11→10人

To be continued...






655 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:13:25.91 ID:zZqHgncA0






【作りかけのウサミ人形】を手に入れました!

【スマイルクラウン(未完成)】を手に入れました!

【幸運の千円】を手に入れました!






656 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/07(金) 23:29:46.90 ID:zZqHgncA0
CHAPT.3終了です。

色々あって筆を折っていましたが、ようやく再開する気力が戻りました。

なお今回のクロに関しては如月時代からの設定です。

希望厨絶望厨がいるならいわゆる凡人厨がいてもいいのではないかと思って産まれたキャラでした。

それではまた。
657 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:11:48.08 ID:UHtObsmA0
【????】

「そうか、苗木が死んだか」

「……」

「あいつの作る世界には興味もあったんだけどな。真に凡人のみで構成された世界……」

「……」

「こっちの様子?ああ、薄井が動いた。弟がもう既に処刑されてたなんて知らずにな」

「……」

「もし地獄があるなら今頃再会してるんじゃないか?」

「……」

「で?お前はこれからどうするんだ」

「……」

「ふーん、コロシアイは続行……まあ好きにすればいいさ。協力といっても俺達がしてるのは情報交換ぐらいだからな」

「……」

「そろそろ戻る?ああ、わかったよ」
658 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:13:55.32 ID:UHtObsmA0






佐木原「――じゃあな」

佐木原「お前の作るものが俺にとって興味深いものである事を祈ってるよ」






659 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:14:51.94 ID:UHtObsmA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】(非)日常編






660 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/11(火) 22:26:46.52 ID:UHtObsmA0
【赤穂のコテージ】

赤穂「……」

久々に戻ってきたコテージ。

そのベッドに座りながら俺は苗木に思いを巡らせていた。

このコロシアイの黒幕であり、何よりも才能を憎み滅ぼそうとしていた狂人。

赤穂「あいつが最期に言っていた事……」

黒幕がもう1人、俺達の中にいる。

モノクマはノーコメントと言ってはいたけど、それは肯定してるようなものだ。

赤穂「いったい誰が……」

考えても答えは出ない。

ここまで過ごしてきた相手だ、信じたい気持ちだって当然ある。

だけど苗木がああだった以上、もう誰が裏の顔を持つかなんてわからない。

そうしてグルグルと答えの出ない思考を繰り返す。

そんな無駄な時間を今俺は過ごしていた。
661 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 21:11:46.18 ID:fSwyz+vA0
コンコン

「兄さん、私だけど」

赤穂「牡丹?」

ガチャッ

赤穂「どうしたんだ牡丹」

御影「新しい島に行けるようになったって」

赤穂「そうか……みんなも調査に?」

御影「うん、病院にいる土橋と遠見以外は行くみたい」

赤穂「……」

土橋……苗木に撃たれかけたり骨折られたならあいつは黒幕じゃないよな。

でもそう思わせる演技の可能性も……

御影「それと佐場木ともう1人のヒーローから伝言」

赤穂「伝言?」

御影「疑うのはこっちの仕事、だってさ」

赤穂「!」

御影「兄さん、どうせ苗木の言葉気にしてるんでしょ?」

赤穂「そりゃ、まあな」

御影「でも私も兄さんにはそういうの似合わないと思う」

赤穂「似合わないって」

御影「というか、ここには疑う専門が多いから……信じる専門がいてもいいんじゃない?」

赤穂「……」

信じる専門か……

赤穂「確かに、こうしてても何も好転しないしな……わかったよ」

御影「じゃあ早速新しい島に行こうよ。苗木がいなくなったとはいっても私1人はあんまり……」

赤穂「わかったわかった。俺も牡丹を単独行動はさせたくない」

御影「危ないから?」

赤穂「大切な妹だからだよ」

こうして俺と牡丹は新しい島に向かう事になった……
662 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 21:24:33.01 ID:fSwyz+vA0
【第4の島・ウインターアイランド】

ビュオオ……

赤穂「……」

御影「……」

わかってはいた。

第2の島は夏、第3の島は秋……ならこの第4の島は冬だろうとは。

赤穂「……」

だけどいくらなんでも寒すぎるだろう!

なんだよ、この吹雪は!

モノクマ「」カチーン

御影「に、兄さん、凍ったモノクマの幻覚が見えるよ……」

赤穂「あれは現実だ牡丹……」

凍ったモノクマの持っている温度計はマイナス20度を下回っている……気温の差が激しすぎてコロシアイなくても死ぬぞこれ。

御影「くしゅん!」

赤穂「風邪引くぞ牡丹。とりあえず俺の上着着とけ」

御影「兄さんは?」

赤穂「まあ、なんとかなるだろ……」

いきなり出鼻をくじかれた気はするけど、俺達は改めてこの第4の島の調査に入る事にした……
663 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 21:48:16.30 ID:fSwyz+vA0
【スケート場】

赤穂「ここはスケート場か……」

スケートなんてやる機会もなかったんだよな……今となってはこの足でさらに難しいだろうし。

赤穂「牡丹は滑れるのか?」

御影「やった事ない……」

赤穂「……」

まあ、牡丹も普通の青春とは無縁だったろうしな……

道掛「どわあああああっ!?」

御影「あっ、道掛だ」

見事に滑ってるな……身体全体で。

道掛「くっそ!なかなか難しいなこれ!」

赤穂「道掛」

道掛「おっ、赤穂と牡丹ちゃんか!スケートってなかなか手強いな!」

御影「よくチャレンジする気になるよ……」

道掛「あはは、まあ身体動かしてりゃ色々考えずに済むしな」

赤穂「……」

道掛「考えたってろくな事思い浮かばねえし、苗木の事も鞍馬の事もわけわかんねえけど……」

御影「道掛……」

道掛「俺はやっぱり身体動かして何も考えねえ方が似合うんだよな!だからもっとスケートに挑戦するぜ!」

そう言って道掛はまた滑っていってしまった……

御影「相当まいってるねあれ……」

赤穂「道掛、苗木や鞍馬とよく話してたからな……」

その果てがあれで、道掛にとってはショックな事だったはずだ。

赤穂「今は、そっとしておこう」

御影「うん」
664 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/12(水) 22:27:20.13 ID:fSwyz+vA0
【巨大冷凍庫】

赤穂「これ、建物丸々冷凍庫になってるのか」

御影「防寒用の服あるし、入ってみる?」

赤穂「そうだな……」

中は確かに寒かった……でも外が酷いからむしろ助かった感がある。

津浦「……」

赤穂「津浦?」

津浦「ああ、Mr.赤穂にMs.御影……」

どうしたんだ、何だか様子がおかしいけど……

津浦「ここを見てください」

御影「設計……あっ」

壁に彫られた設計士の名前、それは【グレゴリー・アストラル三世】。

赤穂「この冷凍庫は、グレゴリーが設計したのか……」

津浦「こんな形で、またあの人の名前を見るなんて」

壁の名前をなぞる津浦の横顔は複雑な表情で。

前を見る決意はしてても、ふとした事でまた立ち止まる……このコロシアイのつける傷をはっきり見せられたような気がした。
665 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:14:01.59 ID:JMKU4sQA0
【温泉施設】

赤穂「ここは温泉か」

御影「寒いからありがたいね……」

兵頭「あら、お2人もこちらに?」

六山「あー」

赤穂「……六山は何をしてるんだ?」

六山「マッサージチェアだよ。結構肩とかこるんだよね」

御影「……まあ、そうかもね」

兵頭「こうしたマッサージ器具にサウナ……だいたいの物は置いてあるようですね」

赤穂「近くに温泉あるからかここにいるだけでなんだか暖かいな」

六山「あっ、そうだ。わたしと兵頭さんはこれから温泉入るけど2人も一緒に入る?」

赤穂「男1人は気まずいし遠慮しとく」

御影「えっと、私は……」

チラリと牡丹がこちらを見てくる。

ははあ、これは……

赤穂「牡丹、寒かったろうし入ってきたらどうだ?」

御影「えっ、でも」

赤穂「調査する場所は残り1つみたいだし、そっちは俺がしとく。それに」

赤穂「牡丹には友人付き合いを大事にしてほしいしな」ポンポン

御影「うっ……わ、わかった。ごめんね、私が連れ出したのに」

赤穂「いいっていいって。2人共、牡丹をよろしくな」

兵頭「わかりました」

六山「はいはーい」

さて、俺は調査続行といくか……
666 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:22:12.22 ID:JMKU4sQA0
【モノクマ量産工場】

赤穂「うわっ!?」

なんだここ……モノクマが大量に!?

如月「……見るに堪えませんね」

佐場木「今回ばかりは貴様に同意だ」

赤穂「……」

珍しい組み合わせだな……

佐場木「どうやらこのモニターに奴の残りが表示されるようだな」

如月「……現時点で82体ですか」

赤穂「少ないのか多いのか判断に困りますね」

如月「一体一体は壊そうと思えば脅威ではありませんが」

佐場木「貴様に関しては他の誰かが処罰される……ふん、82人の命を引き換えにする計算か」

如月「そんな事出来ませんよ。たとえ1人でもそんな形で亡くしたら……僕は僕を許せません」

赤穂「……」

如月さん……
667 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:29:23.79 ID:JMKU4sQA0
赤穂「……」

新しい島の調査は終わったけど……

赤穂「ああ、そういえば」

俺第3の島をしっかり調べた事なかったな……

赤穂「ほとんど病院にいたし、暗かったしな」

病院には今、土橋もいるはずだ。

様子見がてら、行ってくるか……
668 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/22(土) 20:50:23.90 ID:JMKU4sQA0
【病院】

遠見「赤穂殿?」

赤穂「遠見、土橋の様子は?」

遠見「固定はしたであります。後は自然治癒に任せるしか……本当は手術した方がいいのでありましょうが」

土橋「大袈裟だよメメ」

赤穂「土橋」

病室から出てきた土橋はギプスで固定した腕を吊っている……あれを人の手でやったんだよな。

土橋「土木作業してると結構骨折とかに関わるのも多いし、そんなに深刻でもないってなんとなくわかるから」

遠見「……何かあれば言ってほしいでありますよ」

土橋「うん、ありがとう。政城も来てくれてありがとうね」

赤穂「いや、そんな……それで、心はどうなんだ?」

土橋「……辛いし、憎いよ。誠を理解なんて出来ないし、したくもない」

赤穂「……」

土橋「でももう誠はいない。ジェニーの遺言もある……だからアタシは、生きるために頑張っていくよ」

赤穂「そう、か」

遠見「無理はしないように、お願いするであります」

土橋「うん」
669 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/23(日) 20:16:47.04 ID:IzOHySQA0
【ホテルミライ・レストラン】

ここに集まるのも久しぶりだな……

佐場木「相変わらず手がかりはなしか」

如月「黒幕である苗木さんがいなくなったとはいえ、犠牲を考えると全く喜べませんね」

津浦「しかし、Mr.苗木が今までの全ての事件の引き金を引いていたのなら……これからはそういった事はなくなるのでは?」

兵頭「そうも言っていられないでしょう。私達の中にもう1人の黒幕がいるのならば」

苗木とモノクマが告げたもう1人の黒幕……

それは間違いなく疑心暗鬼の種を俺達に植え込んでいた。

遠見「それなのでありますが……今は考えない方がいいであります」

道掛「な、なんでだ?」

赤穂「単純に手がかりがない。この状態で疑いあってもただ険悪になるだけだ」

六山「ヒントなしでしらみ潰しにしてもこういうのはクリア出来ないもんね」

御影「それに……多分今までみたいには動けないんじゃない?」

土橋「もう1人が誠みたいにしたら今度こそ黒幕いなくなるもんね」

黒幕の存在は不安材料だ……でもそれで本末転倒の事態になるのは避けたい。

だから俺達はこんな逃げのような選択をするしかなかった……
670 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/06/29(土) 21:44:08.13 ID:amIDGLVA0
【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「……はあ」

話し合いでも特に実りはなく、俺達は解散する事になった。

佐場木は道掛を連れて新しい島の調査。

遠見は動きにくい土橋の手伝い。

牡丹は兵頭や津浦と頭の包帯を変えに行って。

如月さんはいつの間にかいなくなっていた。

そういうわけで……

六山「……」カチカチ

俺はなぜか六山と2人でレストランにいた。

赤穂「……」

だけど会話がない……六山がゲームしてるのはいつもの事だけど、いつにも増して空気が重い気がする。

六山「苗木くん」

赤穂「えっ?」

六山「わたしにも死んでほしかったのかな」

赤穂「……」

苗木は俺達全員を殺したくて直接鞍馬とジェニーを殺した。

それは、六山も例外じゃないだろう。

六山「結構仲良くしてたつもりだったんだけど、むしろ嫌われてたのかなぁ」

赤穂「……」

六山「苗木くんはわたし達を異物だって言ってた……彼からしたらわたし達はバグだったんだね」

赤穂「六山……」

六山「今まで色んなバグに対処してきたけど……まさか自分がバグ扱いされるなんてなぁ……」

ゲームをしていて下を向いている六山の表情はわからない。

だけど、その悲しげな声に俺はなんて言ったらいいのか、わからなかった……
671 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/01(月) 21:35:35.24 ID:ZgPtUigA0
気まずい空気から逃げるように外に出ると、牡丹と兵頭が歩道を歩いていた。

病院から帰ってきたみたいだな。

御影「あっ、兄さん」

赤穂「津浦は一緒じゃないのか?」

御影「また冷凍庫行くって別れたんだ」

赤穂「そうか……ああ、巻いてないみたいだけどもう包帯はいいのか?」

兵頭「私達は元々気絶させるための怪我だったので……苗木さんもそこは考えていたようです」

御影「私達がその場で殺されなかったのは、万が一見つかって学級裁判が起きるのを避けたかったんじゃないか……って兵頭が」

なるほど……あの時はまだ2人までのルールはなかった。

苗木はリスクを避けつつ全滅させるつもりだったはずだからな……

兵頭「しかし……苗木さんは黒幕だというのに、モノクマはなぜあんなルールを追加したんでしょう」

御影「どういう事?」

赤穂「苗木とモノクマは黒幕として繋がっていたはず……それなのにモノクマはむしろ苗木を邪魔するようなルールを作った」

御影「あっ、そうか」

兵頭「案外、モノクマは苗木さんとは違う目的で動いているのかもしれませんね」

違う目的……苗木が俺達の全滅なら、モノクマの目的ってなんなんだ?
672 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/01(月) 22:10:42.75 ID:ZgPtUigA0
【モノクマ量産工場】

佐場木「……」

赤穂「佐場木?」

モノクマの数が表示されるモニターを睨んで何をしてるんだ?

道掛「おっ、赤穂も来たのか」

赤穂「佐場木は何をしてるんだ、あれ」

道掛「ああ、今日でここに来てから2週間だろ?モノクマがどれだけの間隔で増えてんのか調べてんだと」

赤穂「そうだったのか……」

佐場木「……ふん、なるほどな」

道掛「おっ、終わったのか?」

佐場木「モノクマは4時間に一度、1日6体量産されるようだ」

赤穂「4時間に一回……また多いのか少ないのか微妙な数字だな」

道掛「つうかこれ止めるスイッチとかねえの?これとか」

道掛が壁にある見るからに怪しい赤いスイッチを押そうとする。

……それ押して大丈夫なやつなのか?

赤穂「ちょっと待……」

モノクマ「こらー!」

道掛「うおっ!?」

モノクマ「何してんの道掛クン!この工場の自爆スイッチ押そうとするとかさ!」

道掛「これ自爆スイッチなのかよ!?」

佐場木「なんでそんな物がこんな所にある」

モノクマ「うぷぷ、自爆スイッチはやっぱりロマンかなって思ったんだよね」

赤穂「ロマンって……」

モノクマ「だけど押すのは許さないよ!もし押したらおしおきだからね!」

道掛「危ねえ……押すところだった」

赤穂「少し考えた方がいいぞ……」
673 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/03(水) 22:13:55.06 ID:u3WptC/A0
調査を再開した佐場木達と別れた俺は津浦の様子を見に冷凍庫に向かう。

津浦「……」ハァ-

白い息を吐きながら津浦は冷凍庫の中心に立って目を瞑っていた。

赤穂「津浦」

津浦「Mr.赤穂」

赤穂「あっ、もしかして邪魔しちゃったか?」

津浦「いえ、大丈夫ですよ」

津浦は冷凍庫を見渡しながら目を細める。

津浦「Mr.グレゴリーは……なぜ設計を続けたのでしょう」

赤穂「えっ?」

津浦「ワタシの両親の事故のように、いくら彼自身が素晴らしい設計をしてもそれを歪められて責任を押し付けられて」

津浦「あの人は、絶望しなかったんでしょうか」

赤穂「……」

グレゴリーがどうして設計を続けたのか、か。

赤穂「きっと、好きだったからじゃないか?」

津浦「好きだったから?」

赤穂「やっぱり絶望は、したと思うんだ。苦しくて辛くて悲しくて……でも好きな設計をそんな形で終わらせたくはなかった」

赤穂「答えはわからないけど……そんな気持ちだったんじゃないかって俺は思う」

津浦「好きだから……」ハァ-

息を吐く津浦が納得したかはわからない。

でもグレゴリーの設計に対する姿勢の根本はそこなんじゃないか……俺はそう思いたかった。
674 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/03(水) 22:46:56.10 ID:u3WptC/A0
一度コテージに戻るという津浦を見送って、俺は島を回る。

遠見「……」

すると道を歩く遠見を見かけた。

赤穂「遠見!」

遠見「赤穂殿でありますか」

赤穂「土橋は一緒じゃないのか?」

遠見「さすがに怪我をした土橋殿を連れて調査をするわけにもいかないので……」

赤穂「ああ、確かにな……」

遠見「しかしこの島はまた気候が急激に変化するでありますね」

赤穂「そのわりにはなんだか動じてないな」

遠見「極寒の戦場もあったでありますから。妹と身を寄せあい、暖をとりながら進軍したでありますよ」

赤穂「へぇ、遠見妹がいるのか」

遠見「まあ、血は繋がってないのでありますが」

赤穂「そうなのか?」

遠見「そもそも自分は隊長殿が名前をくださるまで名前もなかったのであります」

赤穂「えっ?」

遠見「自分はその、戦災孤児だったのであります。妹とは奴隷市場で一緒にいた子でありますよ」

赤穂「……悪い。踏み込んじゃまずい話だったか」

遠見「いえいえ!今の自分は幸せでありますから!」

そう言って笑う遠見……いったいどれだけの苦労をしてきたんだろうな……
675 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/05(金) 22:30:57.32 ID:Z4o0hhNA0
土橋「ううん……」

赤穂「土橋?」

マーケットに行ってみると段ボールの前で土橋が何やら困った顔をしていた。

赤穂「土橋、どうかしたのか?」

土橋「あっ、政城。ちょっと暇潰しに何か作ろうかなって道具を集めてたんだけどさ……」

土橋は吊られた腕を見て苦笑いすると、頭を掻く。

土橋「あはは、この腕じゃ運べないって今さら気付いたんだよね」

赤穂「それはまた……」

手伝えたらいいんだけど、俺も杖で基本的に片腕塞がってるしな……

赤穂「あっ、そうだ。確か台車があったはずだからそれに乗せて運ぼう」

土橋「それしかないか……なんか政城の苦労が少しわかった気がする」

赤穂「ははは……」

それから荷物をコテージに運ぶ土橋を手伝った。

だけど何か作るって片腕で出来るのか……?
676 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/05(金) 22:51:13.46 ID:Z4o0hhNA0
如月「……」

ホテルの前で如月さんが佇んでいる。

その手には昨日の事件で見つけたバッジがあった。

赤穂「如月さん……」

如月「ああ、赤穂さん」

赤穂「そのバッジ妹さんの、なんですよね」

如月「えぇ、間違いなく……だから本当に不思議なんですよ」

如月「なぜ、これがここにあるのか」

赤穂「……」

如月「妹は死んで、その遺体が着けたままだったはずのバッジ」

如月「もし、もしも可能性があるとすれば……」

如月「あの男の関係者が、ここにいる可能性です」

赤穂「あの男って、まさか……」

如月「僕の妹を殺し、あなたの妹さんを傷つけた男」

如月「あのマッドサイエンティストの関係者が……」

赤穂「……」

ただでさえ色々あるのに、そんな奴までいるっていうのか……?
677 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/06(土) 23:25:30.18 ID:paXAvg0A0
【赤穂のコテージ】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

長い1日だった気がする……

それもそうか、学級裁判の後すぐ調査したりしてたんだから。

赤穂「……」

苗木の影に隠れる黒幕。

だけど苗木がいなくなった以上、これからはそいつが中心で動くはずだ。

赤穂「……頑張らないと、な」

もうこれ以上誰かを失ってたまるか。

それを心に刻みながら俺は眠りについた。
678 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/08(月) 21:37:07.19 ID:yBYxaBbA0
【15日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「よし、牡丹を迎えに行くか」

【ホテルミライ・レストラン】

赤穂「おはよう」

御影「おはよ」

どうやら全員来てるみたいだな……俺達が最後か。

兵頭「土橋さん、どうぞ」

土橋「ありがと千。片手だとやっぱり不便だからね」

2週間経ってこうして集まって食事するのにも慣れた感がある。

道掛「千ちゃんの飯は相変わらず美味いな!」

遠見「佐場木殿、今日は……」

佐場木「予定としては……」

だけど7人もいなくなったという事実が、どこか空気を歪にしていて。

津浦「ふぅ……」

如月「……」

六山「うーん……」カチカチ

所々にある空席……それをつい意識してしまうのは、何でなんだろうな。

御影「どうかした兄さん?」

赤穂「いや、何でもない」
679 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/08(月) 22:22:39.79 ID:yBYxaBbA0
【倉庫】

赤穂「……」

静音が薄井に殺された倉庫。

ここからコロシアイは始まったんだよな……

如月「おや、赤穂さん」

兵頭「こちらで何を?」

赤穂「ああ、ちょっとな。2人はどうして?」

如月「少し思うところがありまして」

兵頭「ここは最初の殺人が起きた現場ですから」

2人も俺と同じか……

如月「僕は薄井さんを悪と断じました。彼が静音さんを殺した動機は……言ってしまえば【誰でもよかった】でしたから」

赤穂「……」

確かに薄井はお姉さんの事を心配してここから脱出しようとした。

だけどコロシアイの標的に静音を選んだ理由は……

兵頭「本当にそうなんでしょうか?」

赤穂「えっ?」

兵頭「私は静音さんが殺された理由は別にあると思いますよ」

如月「それは、苗木さんが誘導したからですか?」

兵頭「いえ、もっとはっきりした理由です」

赤穂「それっていったい」

兵頭「静音さんが、あの時誰よりも前向きだったからですよ」

如月「前向きだったから?」

兵頭「彼女は中止になりそうだった懇親会を行いたがっていましたが……それはなぜなんでしょう」

赤穂「それはきっと四方院さんの……」

兵頭「そう、静音さんは家族と慕う四方院さんのために頑張っていました」

赤穂「……ああ」

そういう事、か。

薄井の殺人の動機は……

如月「……嫉妬」

兵頭「姉の努力を否定するしか出来ない自分、一方ただひたすらに四方院さんのために動ける静音さん」

兵頭「きっと、薄井さんには眩しかったんでしょうね」

赤穂「……」

如月「……だとしても、それは」

兵頭「はい、身勝手な動機です。しかしそう考えると如月さんにも、彼の気持ちがわかるのでは?」

如月「……!」

赤穂「えっ?」

如月さんが、薄井の気持ちをわかる?

如月「……ああ、なるほど。これが、薄井さんの抱えていた」

如月さんも、誰かに嫉妬してるのか?
680 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/09(火) 23:05:44.56 ID:srPke9iA0
【水族館】

何となく聞く空気にもならなくて、俺は2人と別れた。

そして着いたのは……第2の事件が起きた水族館。

津浦「……」

道掛「……えーっと」

津浦がいるのはともかく道掛がいたのは予想外だったな。

赤穂「道掛、何してるんだ?」

道掛「お、おう、赤穂。琴羽ちゃんが水族館行きたいって言うから送ってきたんだよ」

赤穂「津浦が?」

津浦にとってここは辛い記憶しかないはずの場所。

そこに自分から来た……

津浦「……ありがとうございましたMr.道掛」

道掛「あっ、もういいのか?」

津浦「はい……Mr.赤穂?いつの間にここに?」

赤穂「ああ、いや。今来たところだよ」

津浦「そうでしたか……それに気付かないほど考えこんでいたのですねワタシは」

道掛「よくわかんねえけど……まだどっか行く?」

津浦「そうですね……次は射撃練習場にお願い出来ますか?」

道掛「うっし、わかった!」

津浦「それではMr.赤穂。ワタシはこれで」

赤穂「……大丈夫なのか?」

津浦「そうでありたいとは、思っています」

そう言って少し身体を震わせると……津浦は水族館から出ていった。

グレゴリーの死を受け入れて、次は思い出のある場所を巡って……

あれが津浦なりの、前の進み方なんだろうな。
681 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/11(木) 23:24:50.00 ID:fSmOZa2A0
【発電所】

鞍馬が殺された発電所……あいつは殺される瞬間までいったい何を考えてたんだろうな。

御影「兄さん」

六山「やっ、赤穂くん」

今日は事件現場でよく人に会うな……

御影「鞍馬はここで死んでたんだよね。私結局鞍馬の死体見てないから……なんか未だに信じられない」

六山「鞍馬くんは死にそうな雰囲気なかったもんね」

赤穂「それがそもそも間違った認識だったんだな」

鞍馬が殺されるなんてあり得ない……そんな認識だったあいつをそれこそ動くなんてあり得ないと思える黒幕の苗木が殺した。

あの事件はそれこそあり得ない事だらけだったんだ。

御影「鞍馬……私の才能知ってたんだよね」

六山「御影さんのって秘匿才能なのによく知ってたよね」

赤穂「……」

鞍馬は牡丹を死なせるなって言ってたけど……当たり前だそんなもの。

俺は絶対牡丹を死なせない。

あんな気分になるのは……もうごめんだ。
682 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/14(日) 04:01:32.34 ID:GsyKIGwA0
佐場木「……」

発電所を出て歩いていると、佐場木が考え込むように立っていた。

そこはちょうど、ジェニーが殺された辺り。

赤穂「佐場木」

佐場木「赤穂か」

赤穂「ジェニーの事、考えてたのか」

佐場木「クラヴィッツだけではない。ここで死んだ全員について考えていた」

赤穂「……」

佐場木「静音、四方院、鞍馬、クラヴィッツ……それに薄井やグレゴリーも死んだ裏にはあの男が関わっていた」

赤穂「苗木、だな」

佐場木「そして奴の悪意を見極められず、こちらの作業に参加させ情報を話していた……俺にはもう裁く資格などないのかもしれん。いや、それは事件の発生を許した時点でか」

赤穂「そこまで言わなくても……佐場木は事件が起きないように動き回ってるじゃないか」

佐場木「……なら聞くがな赤穂、もし御影が殺された時にお前はそれで納得するのか?事件を防ごうとしておきながら、結局妹を死なせた俺に思うところがないと言えるのか?」

赤穂「それは……」

佐場木「それが答えだ。頑張ったなど、殺された命の前には言い訳にもならない」

赤穂「……」

佐場木が自他共に厳しいのは知ってたけど、ここまで思い詰めてたのか……

佐場木「……変な話をしたな、忘れてくれ」

そう言って佐場木は行ってしまった……きっとまた見回りやチェックをするんだろう。

無理をして、倒れたりしなきゃいいんだけどな……
683 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/14(日) 04:32:54.18 ID:GsyKIGwA0
【温泉施設】

赤穂「気が滅入ってくるな……少し温泉にでも入って、リラックスするか」

※※※※

赤穂「はあっ……」

誰もいない1人きりの温泉……その暖かさに疲れやら何やらが溶けていく感覚。

赤穂「こんな状況じゃなければ、もっとよかったんだけどな……」

カラカラ

赤穂「んっ?」

隣に誰か来たのか……

「ごめんねメメ、付き合わせちゃって」

「自分が好きでしているので気にしないでほしいであります。1人では大変でありましょうし」

土橋と遠見か……

土橋「でもメメ、半次と色々やってたのに最近出来てないでしょ?」

遠見「佐場木殿は、お1人でも大丈夫でありますよ」

土橋「……心配そうな顔してるけど」

遠見「うっ」

土橋「やっぱり本当は一緒にいたいんだ」

遠見「……佐場木殿はきっと自分自身を強く責めているであります。あの人は真面目故に、妥協が出来ない」

土橋「ああ……確かに半次は頑固なとこあるね」

遠見「自分はそんなあの人に共に動くよう、頼まれて……しかし何が出来たのでありましょうか」

遠見「苗木殿への警戒を真っ先に外したのは自分で、それがなければもっと早く止められたかもしれないのに……!」

土橋「メメ……」

遠見「もしかしたら、自分がこうして土橋殿を介助するのは、ジェニー殿の事があるからで……」

土橋「メメ!」

遠見「……」

土橋「メメは悪くないよ。そもそもこんな事させる黒幕が全部悪い!そうでしょ?」

遠見「しかし」

土橋「半次もメメも自分達だけで抱えすぎなんだよ。まあ、アタシじゃ頼りないかもしれないけど……こうして話を聞くぐらいならするから」

遠見「土橋殿……」

土橋「美姫でいいよ!」

遠見「……美姫、殿」

土橋「はは、なんか湿っぽくなっちゃったね。もっと明るい話しようか!」

赤穂「……」

これ以上は、聞くべきじゃないな……

俺は気付かれないよう、そっとその場を後にした。
684 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 11:45:27.81 ID:9owfMFmA0
【赤穂のコテージ】

赤穂「ふー……」

お腹の傷も少しはマシになってきたな。

病院から持ち帰ってある傷薬を塗って、新しい包帯を巻く。

大怪我をしてから自分1人でこの手の事をするのにも慣れた。

赤穂「よし」

そういえば包帯と傷薬だいぶ減ってきたな……

赤穂「今度病院に行ったら確保しておくか」

服を着て、杖を持つとコテージの外に出る。

もうすぐ夜時間だからか、人の気配はない。

赤穂「……」

コツコツと杖が木を鳴らす音だけが響く。

特に行き先があるわけじゃない、ただ何かせずにはいられなかった。

【図書館】

赤穂「何か参考になりそうな本は……」

とはいっても日本語とせいぜい英語の本ぐらいしか俺は読めない。

だから本を選ぶのにほとんど時間はかからなかった。
685 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 12:17:34.65 ID:9owfMFmA0
赤穂「……」

日本語の本を片っ端から読んではみるものの、そこに手がかりになりそうな物はない。

佐場木や遠見、津浦が調べてる後だろうから当たり前なんだけどな……

赤穂「ふう」

流し読みしていた5冊目を机の上に放り投げる。

それがよくなかったのか、本は机の端に乗って、そのまま床に落ちた。

赤穂「あっ、しまったな」

カバーの外れた本を拾って……俺はそのカバーに封筒が貼り付いているのを見つけた。

赤穂「なんだこの封筒……」

試しに他の本も調べてみても何もない……どうやらこの本にだけ封筒が貼り付いているみたいだな。

赤穂「……」

何かある、そう直感して俺は封筒を外して中を見る。

折り畳まれた紙が1枚入ってる……それを取り出して広げて。

赤穂「……は?」

俺は固まった。

そこに書かれていたのはたった数文。

【六山百夏。
内通者として数日以内に殺人を起こせ。
さもなければ命はない】

だけど、衝撃を与えるには充分過ぎる内容だった。
686 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 12:24:29.34 ID:9owfMFmA0
赤穂「六山が、内通者!?」

どういう事だ、意味がわからない。

だって六山は静音を庇ってモノクマに反抗して見せしめに殺されかけたじゃないか。

如月さんが助けなかったら、あいつは……

赤穂「……だからか!」

この手紙、命はないって書いてある……一度殺されかけた六山は死に対する恐怖心がかなり強いはずだ。

だから従うしかなかった……死ぬのが怖いから。

赤穂「……どうする?」

この手紙を六山がまだ読んでないなら、数日中にあいつは殺される。

もし読んだ後なら数日中にあいつは誰かを殺す。

赤穂「どちらにしても六山は死ぬ……!」

どうにかしないといけない。

だけどどうすれば六山を助けられる?

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「っ、とにかくこの手紙はこっちで持っておこう」

俺は封筒ごとポケットに手紙を突っ込むと、図書館を後にする。

猶予はほとんどない……それでも何とかしないと!
687 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/15(月) 13:19:22.60 ID:9owfMFmA0
【16日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「くそっ!」

一睡も出来なかった……しかも特にいいアイデアも浮かばない。

このままだと次の事件が……

モノクマ「ああ、それとオマエラ!中央の島に集合してくださーい!」

赤穂「……!」

まさか、動機か!?

この状況でさらに動機だなんて……!

赤穂「とにかく、行くしかない」
688 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/18(木) 21:09:16.68 ID:qO9IeUEA0
【中央の島・未来機関第二十支部】

中央の島に行くともう全員集まっていた。

赤穂「……?」

だけど、様子がおかしい。

誰も喋らない、いや、それどころか互いの顔色を窺うような素振りを見せている。

いったい何が……

モノクマ「いやっほーう!全員集まってるみたいだね感心感心!」

佐場木「ちょうどいい……こちらも話がある」

モノクマ「話?」

佐場木「この指示書はどういう意味だ?内通者に殺人を行えと指示を出しているようだが」

赤穂「……!」

佐場木も六山への指示を見たのか!?

赤穂「佐場木、それは」


佐場木「俺は貴様の内通者になった覚えはない」


……えっ?
689 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/18(木) 21:24:12.22 ID:qO9IeUEA0
道掛「はっ!?ちょっと待てよ、内通者ってメメちゃんじゃなかったのか!?」

遠見「何の事でありますか!?自分は、兵頭殿が内通者だと……」

兵頭「あら、私は津浦さんに宛てた指示書を見ましたよ?」

なんだこれ……どうなってるんだ!?

みんながみんな、内通者に対する指示書を持ってる……ただ1つ、内通者の名前だけが違う指示書を。

モノクマ「うぷぷ、それこそがボクがオマエラを呼び出した理由!」

モノクマ「今回の動機!チキチキ内通者当てゲームだよ!」

六山「内通者当てゲーム?」

モノクマ「その通り!オマエラ全員に渡したのは内通者に対する指示書!」

モノクマ「つまりこのままだと内通者は数日中にコロシアイを発生させる事になるね!」

土橋「そんな……」

モノクマ「うぷぷ、さてさて誰が内通者なのかな?もしかしたら親しくしてる人かもしれないよ?」

御影「あんた……!」

今回の動機は、シンプルに疑心暗鬼を引き起こすものだってことか……!

モノクマ「内通者に殺されるか、内通者を殺すか、はたまた勘違いして内通者じゃない人を殺すか!」

モノクマ「うぷぷ、せいぜい面白い展開を見せてくださーい!」

内通者当て……しかも疑いは全員にある。

誰が内通者かわからない状況で、誰かに殺されるかもしれないリスクに囚われる。

赤穂「っ……」

直前に人当たりのいい苗木が豹変したのも拍車をかけて……最悪としか言いようがない動機だった。
690 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/19(金) 23:10:01.27 ID:9X98Un0A0
モノクマが消えた後、俺達は互いに顔を見合わせていた。

ただでさえ黒幕がいるのにさらに内通者の存在を知らされて……冷静になれという方が難しい。

佐場木「……ちっ、如月」

如月「なんでしょう佐場木さん」

佐場木「貴様は歪みきった殺人鬼だが、内通者とも黒幕とも遠い……ある意味一番安全な存在だ」

赤穂「……」

確かに如月さんは命惜しさに内通者になるのも、黒幕としてコロシアイを引き起こすのもありえないだろう。

皮肉にも殺人鬼としての彼がそれを否定しているんだ。

佐場木「だから貴様に一任する。この状況をどうするかをな」

如月「どうするか、ですか……」

黒幕、もしくは内通者として疑われる人間が何を言っても悪戯に疑心暗鬼になるだけ。

だから佐場木は絶対に違う如月さんに託したんだろう……裁判官としてのプライド諸々を切り捨てて。

如月「そうですね……では提案なのですが、皆さん全員で動くと言うのはどうでしょうか」

道掛「全員?」

如月「内通者が誰であれ、ルールからは逃げられません。殺せるのは2人まで……全体で動けば一気に手出しがしにくくなる」

六山「……まあ、最初から人数も減って見張りやすくも、なってるしね」

如月「基本的に1つの場所にいて、動く場合は僕も一緒にいれば……一気に事件の発生確率は減少するかと思います」
691 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/19(金) 23:28:45.81 ID:9X98Un0A0
【旧館】

固まるのに一番都合がいいだろうという事で俺達は旧館に向かった。

病院やマーケットから色々荷物を持ち込んで……一番広い広間に集まる。

如月「怪我をしている方は、特に赤穂さんと土橋さんは気をつけてくださいね」

土橋「うん、ありがとう」

赤穂「はい」

これから少なくとも内通者がはっきりするまでは俺達はここで寝泊まりする事になる。

消極的かもしれないけど、これが今は最善だと反対する人間はいなかった。

御影「兄さん……大変な事になったね」

赤穂「……ああ」

黒幕、そして内通者……抱える問題が多すぎる。

こうして不安を抱えたまま、俺達の籠城は始まった。
692 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/20(土) 23:26:25.79 ID:j8z78B1A0
御影「はぁ……まさかこんな事になるなんて」

赤穂「黒幕の存在がほのめかされてた以上、いつこうなっても不思議じゃなかったけどな」

俺個人は牡丹がどちらでもないというのは確信してるけど、この状況じゃそれが通用しない事もよくわかる。

御影「兄さん?」

赤穂「んっ?ああ、どうした牡丹」

御影「どうしたじゃないよ、なんだかボーッとしちゃってさ」

赤穂「まあ、信じる専門とはいえ考えないといけない事は多いしな……」

御影「……」

赤穂「まあ、1つだけ言えるのは」クシャ

御影「んっ」

赤穂「何があってもお前を信じるのは間違いないって事だけだな」

御影「……シスコン」

赤穂「妹思いと言ってくれ……んっ?」

なんか視線を感じたような……

御影「兄さん?今度はどうしたの」

赤穂「いや……」

気のせい、か?
693 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/21(日) 20:44:07.23 ID:HB4kXUbA0
倉庫を覗いてみると、六山が箱に座ってゲームをしていた。

六山「ああ、赤穂くん。調子はどう?ゲームする?」

赤穂「遠慮しておく。というか、本当に六山はゲームを手放さないな」

俺の知る限り六山は食事時もみんなで集まる時も、それこそ学級裁判や処刑の時、自分が殺されそうになった時すらゲームする手を止めた事がない。

それが精神の安定に繋がるならと思ってたけど、さすがにこれはどうなんだ……?

六山「まあ、わたしはゲームなかったらろくな人生じゃなかったろうしね」

赤穂「えっ?」

六山「わたし、引きこもりだったんだよね。昔通ってた学校でいじめられてさ」

六山「家で親とかがとやかく言うのから逃げるためにずーっとゲームしてた。それこそ寝食忘れてね」

赤穂「それ、大丈夫だったのか」

六山「大丈夫ではなかったね。入院するはめになったし」

赤穂「入院!?」

六山「だから今は少しゲームの時間減らすようにしてるよ」

これで、減らしてるのか……
694 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 21:16:23.21 ID:734xLw1A0
遠見「佐場木殿、自分自身を責めないでほしいでありますよ」

佐場木「……」

あれは、佐場木と遠見か?

遠見「自分も苗木殿の策略にかかったのは同じ。佐場木殿だけの責任ではないであります」

佐場木「……」

遠見「佐場木殿が犯罪を憎んでいる事は自分でも理解出来るであります。しかしそれで足を止めるのはそれこそ本末転倒というものでは?」

佐場木「……」

おいおい、あんなに言って大丈夫なのか?

万が一、何かあったりしたら……

佐場木「……お前にはかなわないな」

赤穂「……!」

佐場木があんな声出すの初めて見たぞ……

遠見「なんだかんだ、佐場木殿とは共に任務を行ってきた仲でありますから」

佐場木「たかだか2週間だろう」

遠見「戦場では1日共にいられないなど当たり前でありますから」

佐場木「……そうか」

遠見「そうでありますよ!」

赤穂「……」

佐場木が抱え込んでてどうしたものかと思ってたけど……

遠見がいるなら、大丈夫そうだな。
695 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 22:31:50.18 ID:734xLw1A0
津浦「ふぅ……」

兵頭「お手伝いしますよ津浦さん」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「何してるんだ?」

津浦が持ち込んできたのは大量の本。

図書館で見た事あるやつばかりだ。

津浦「この辺りの言語の本はワタシしか読めないないので……もしかしたら何かヒントがあるのではないかと」

赤穂「そうか、わからない言語に紛らせておくなんていかにもモノクマがやりそうな事だな」

兵頭「もしそうなら津浦さんが今もここにいて助かりましたね」

津浦「……そうですね。確かにその通りです」

今もここにいる……兵頭の言外の意図を察したのか答える津浦の表情は明るくない。

津浦「時々思うんです、ワタシがこうして生きていられるのは奇跡のようなものだって」

赤穂「それは……」

兵頭「銃の持ち出しの件もありましたからね。あの時はグレゴリーさんが何とかしてくれましたが」

津浦「そう、ワタシの命はあの人に救われたものです……だから、出来る事をしたい」

赤穂「津浦……」

津浦「そして生きて、ここから帰って、あの人に……」

津浦「だから、頑張ります。ワタシにしか出来ない事を」

津浦はイヤホンを外して深呼吸を1つすると、本を取ってページをめくり始める。

赤穂「兵頭」

兵頭「はい、わかってます」

邪魔しない方がよさそうだからな。

本に目を通す津浦を残して、俺達はこっそり部屋を出た。
696 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/22(月) 22:53:45.73 ID:734xLw1A0
道掛「212……213……214……!」

声が聞こえてくるからどうしたのかと道掛がスクワットをしていた。

こもっていると自転車も出来ないもんな……

如月「303、304、305」

だけどなんで如月さんも一緒にしてるんだ?

道掛「っ、はぁ!ちくしょう、限界だ!」

如月「大丈夫ですか道掛さん?」

赤穂「どれだけやってたんだよ……」

道掛「おぉ、赤穂。いや、如月とちょっと勝負をな」

如月「500回を3セット……今は4セット目でしたね」

そんなに。

道掛「如月のやつ、涼しい顔してやりやがるからよ!なんか負けてられっかって気分になんだろ?」

如月「だからといって無茶はやめてください。道掛さんは脚を大切にする必要があるでしょう」

道掛「……へへ、サンキューな」

道掛は嬉しそうに如月さんが差し出した手を取る。

鞍馬の事、苗木の事……色々あった道掛にとって純粋に心配してくれる如月さんの気遣いが嬉しいんだろうな。

道掛「よっしゃあ、次は廊下ダッシュだ如月!」

如月「だから無茶は……」

赤穂「……」

いや、俺の考えすぎか……?

ちなみに道掛はその後佐場木に説教されてるのが見つかった。
697 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 10:33:00.85 ID:Sz46XOLA0
赤穂「はぁ」

まだ裁判があって2日しか経ってない……それなのに起き続ける出来事に正直疲労がかなり溜まっていた。

赤穂「少し、寝るか……」

壁に寄りかかるようにして目を閉じる。

思った以上の疲労があったのか抗えない睡魔に俺はゆっくりと委ねるように沈んでいった。

「……」

※※※※

赤穂「んっ……」

「あっ、目が覚めた?」

赤穂「……?」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

前にもこんな事があったな……

赤穂「……土橋?今回は熱中症にはなってないぞ」

土橋「なんか寝苦しそうだったから膝枕してみたんだけど……迷惑だった?」

赤穂「いや、驚いただけだよ。ありがとうな、骨折してるから大変だったろ」

土橋「まあ、ちょっと苦労はしたけど……」

土橋はモゴモゴと口を動かしながらも、言葉は出てこない。

まあ、言いにくいなら無理に聞かなくてもいいか……
698 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:15:00.21 ID:Sz46XOLA0
赤穂「今何時だ?」

土橋「えっと、8時半だね」

赤穂「2時間くらい寝てたのか……んっ?土橋、いつから膝枕してたんだ?」

土橋「えーと、1時間くらいかな?」

赤穂「そんなにしてたのか!?」

長時間膝枕させてた事での足への負担を考えて思わず飛び起きる。

あっ、と声が聞こえた気もしたけどはっきりとはしなかった。

赤穂「悪かった。重かっただろ」

土橋「いや、そんな事は……」

赤穂「本当か?痺れたりしてないか?」

土橋「大丈夫だって!政城は心配しょ……わわっ!?」

立ち上がった土橋がバランスを崩して倒れそうになる。

咄嗟に手を出して支えたものの、俺も踏ん張りが聞かず結果2人で倒れるように床に転がった。

赤穂「いつ……大丈夫か土橋!」

土橋「う、うん、大丈夫」

どうやらうまい具合に骨折した腕を打つのは避けられたらしい。

赤穂「やっぱり痺れてたんじゃないか……怪我人なんだからあんまり無茶するなよ」

土橋「……だって」

赤穂「だって?」

土橋「したかったんだよ……政城に膝枕」

赤穂「……?」

俺に膝枕したかった?

なんで?

赤穂「俺そんなに寝苦しそうだったのか?」
699 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:27:28.26 ID:Sz46XOLA0
土橋「……はあ?」

いや、なんでそんな冷たい目を……

土橋「この、鈍感政城!」

赤穂「ど、鈍感?」

土橋「アタシがなんで牡丹が側にいるって言うのを代わってもらってまで膝枕したと思ってるの!?」

赤穂「いや、今の初耳……」

土橋「好きだからに決まってるでしょ!?」

赤穂「は!?」

好き?

赤穂「誰が?」

土橋「アタシが!」

赤穂「誰を?」

土橋「政城を!」

赤穂「なんで?」

土橋「元々気になってたけど、はっきりしたのはジェニーの事があってから!」

赤穂「……」

土橋「…………あっ」

ようやく自分の言った事に気付いたのか土橋の顔が真っ赤になったり真っ青になったりする。

土橋「ア、アタシ何を……ご、ごめん!」

そして逃げるように土橋は部屋を飛び出していった。

赤穂「……」

土橋が、俺を、好き?

赤穂「……」

御影「兄さん、起きた……ってなんで床に寝てるの」

赤穂「牡丹」

御影「な、なにどうしたの?」

赤穂「悩みが増えた……」

御影「???」
700 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 11:51:02.14 ID:Sz46XOLA0
【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

道掛「なあなあ、赤穂の奴どうしちまったんだ?」

佐場木「土橋の話によると深刻なものではないようだが」

如月「……」

土橋「あああああ……アタシなんであんな」

遠見「美姫殿、何かあったのでありましょうか」

兵頭「……ああ、そういう」

津浦「……なるほど、理解しました」

御影「えっ、何を」

六山「あー、あー、フラグ成立しちゃったかなこれは」

内通者の警戒のために集まった俺達。

しかしその初日はそんな空気とはまるで無縁な様子で更けていった。
701 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:01:47.48 ID:Sz46XOLA0
【17日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「…………」

眠れなかった。

まさかこんな形で悩む事になるなんて……

兵頭「土橋さん、口を開けてください」

土橋「あ、あーん……」

赤穂「……」

道掛「なーに、美姫ちゃんと見つめあってんだよ!」

赤穂「痛っ!?み、見つめあってなんかいない!」

道掛「そうだったのか?悪い悪い!」

赤穂「……はあ」

本当、どうしたらいいんだ。
702 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:33:38.09 ID:Sz46XOLA0
御影「へー、ほー、ふーん」

恥を忍んで牡丹に事情を話したら、返ってきたのはそんな言葉になってない返事だった。

なんでそんな冷めた目で見るんだよ……

御影「よかったじゃん、土橋って結構可愛いし、胸もおっきいし」

赤穂「茶化すなよ、本気で悩んでるんだぞ」

御影「なに、土橋嫌いなの?」

赤穂「いや、そういう話じゃなくてだな……多分土橋の好意はつり橋効果だと思うんだよ」

御影「つり橋効果ってあの危ない時のドキドキを勘違いしちゃうってやつ?」

赤穂「そうそう、だから……」

御影「兄さん、まさかそれ土橋に直接言った?」

赤穂「いや、まだだけど」

御影「ほっ……いい?絶対本人にそれ言わないでよ」

赤穂「えっ?」

御影「あのね、兄さん。勢いとはいえ告白した女の子にお前の感情は勘違いなんだなんて言ったらどれだけ傷つくと思う?」

赤穂「うっ……」

御影「土橋の気持ちに応える応えないは兄さんの自由だけど、少なくともその気持ちを否定するのは違うと思う」

赤穂「……」

どんな事があっても、やっぱり牡丹も女の子なんだな……

御影「いい、わかった?」

赤穂「お、おう……わかった」

だけどなぁ……
703 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 21:47:35.40 ID:Sz46XOLA0
道掛「おー、とうとう美姫ちゃんが告ったのか」

六山「やっぱりフラグ成立してたんだね」

赤穂「道掛と六山は気付いてたのか?」

そういえばこの2人は病院にいた時、色々変な事を言ってたな……

道掛「当たり前だ!美姫ちゃんが赤穂に惚れてんのはしっかりわかってたぜ!」

六山「恋愛ゲームをしてればなんとなくね」

そんなもの、なのか。

道掛「……なあ百夏ちゃん。ちなみに俺のフラグは」

六山「あはは、道掛くんは友人ポジションでしょ?」

道掛「よくわかんねえけどバッサリ切られたのはわかるな!?」

道掛と六山の漫才を眺めながら俺は考える。

そんなにわかりやすかったのに俺、全然気付かなかったのか……

これでも、鋭い方だと思ってたんだけどな。

道掛「で、どうすんだ?まさか無視するわけにもいかねえだろ」

六山「バッドエンド一直線だね」

赤穂「だけどな、今はそれどころじゃ」

道掛「バッカヤロウ!こんな時だからこそだろうが!」

六山「うーん、生きる気力にはなるんじゃないかな?」

赤穂「……」

生きる気力、か……
704 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/24(水) 23:33:57.12 ID:Sz46XOLA0
佐場木「なるほど、そういう事か」

津浦「Ms.土橋らしいと言えばらしいですね」

佐場木と津浦にも話してみたらそんな反応が返ってくる。

なんだ、俺が思ってるよりこういう状況って受け入れられてるのか?

津浦「ワタシには気持ちがわかりますから」

佐場木「それが抑止になるなら俺は何も言わん」

赤穂「……」

理由は違えど、肯定には変わりないか……

佐場木「なんだ、否定材料がほしいのか?」

赤穂「えっ」

津浦「Mr.赤穂、そうなんですか?」

赤穂「いや、それは……」

佐場木「断りたいならただ断ればいいだけだろう。状況、その他の要因をいちいち言い訳に使う必要がどこにある」

赤穂「……」

津浦「Mr.赤穂……向き合ってあげてくれませんか?ワタシには、もうかなわない話ですから」

赤穂「……」

向き合う……だけど俺は……
705 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 21:08:55.18 ID:HTkdcFfA0
遠見「なるほど……美姫殿から話は聞いていたでありますが」

赤穂「土橋、遠見に相談してたのか」

遠見「一昨日の事でありますが、肯定であります」

一昨日って事は、あの温泉で相談してたのかもな……

如月「赤穂さんはどうしたいんですか?」

赤穂「正直、わかりません」

覚悟もなく、いきなりの事だったからな。

遠見「赤穂殿、美姫殿は本気であります。それは自分が証明するでありますよ」

赤穂「……」

ここまで来ると俺もそんな気がしてきた……だけど俺の方がどう考えてるか自分で自分の気持ちがわからない。

如月「今は色々と大変な状況、赤穂さんが混乱するのも無理ありませんね」

遠見「おそらく美姫殿も、それは理解しているはずでありますよ」

赤穂「だろうな」

あれは本当に勢いだった、多分本人に言うつもりはなかったはずだ。

赤穂「……」

だけど俺は知った、知ってしまった。

赤穂「……」

もうわからなかった頃には戻れない以上、考えないとな……しっかりと。
706 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 21:37:18.95 ID:HTkdcFfA0
兵頭「それで土橋さんを避けていると」

赤穂「言わないでくれ」

そう、考えるとはなったものの簡単に結論が出るわけがない。

そして結論が出ない内に土橋に会うのが躊躇われた結果……俺は彼女を避けるように動いてしまっていた。

兵頭「ヒーローもこういう事には形無しですね」

赤穂「仕方ないだろ……こんな事初めてなんだよ」

兵頭「あら、そうなんですか?ヒーローというぐらいですから、モテモテなのかと」

赤穂「むしろ腫れ物だったよ」

俺はいじめをなくしたりしてた関係上、関わるとろくな事にならないって扱いだったからな。

兵頭「なるほど……それならこうなってしまうのも仕方ないのかもしれませんね」

赤穂「……」

やれやれと言った感じの視線を向けられるのもそれはそれで腹が立つな……

いや、俺がしている事の結果と言えば、それまでなんだけどな。

兵頭「まあ、悩むのは特権と言いますから。頑張って悩んでくださいヒーローさん」

赤穂「なんか馬鹿にしてないか……」

兵頭「いえいえ、純粋な応援ですよ」
707 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:07:42.52 ID:HTkdcFfA0
赤穂「あっ」

土橋「あっ」

ここは旧館……そこで避けるのなんてどうしても限界が来る。

だからこうしてばったりと出くわしてしまうのも、必然と言えた。

土橋「ま、政城……」

赤穂「ど、どうした?」

土橋「ちょっと、話があるんだけど」

赤穂「あ、ああ」

【事務室】

赤穂「……」

土橋「……」

……気まずい。

かなり露骨に避けてたしな……

土橋「あの、さ……昨日の事なんだけど」

赤穂「……!」

来たか……!

土橋「忘れて、ほしいんだ」

赤穂「……えっ」

忘れるって、昨日の告白をだよな……?

土橋「こんな状況なのに、アタシあんな事言って政城を困らせて……ジェニーが殺されたのだって、ついこないだの事なのに」

赤穂「土橋……」

土橋「本当に言う気なんてなかった!言えば政城が困るのわかってたから!なのに、我慢出来なかった……」

土橋の瞳からはボロボロと涙が溢れて、旧館の床に雫を落としていく。

土橋「ごめん、ごめんね……アタシ本当に馬鹿だ。みんな、黒幕とか内通者とかに対処しようとしてるのにアタシ……」

……俺、何やってたんだ。

こんな言葉を吐かせるのがヒーローのやる事か?

こんな辛い涙を流させるのがヒーローなのか?

土橋「……じゃあ、それだけ、だから」



違うだろう!
708 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:18:27.99 ID:HTkdcFfA0
赤穂「土橋!」

土橋「っ!」

土橋の腕を掴んでこちらに振り向かせる。

その顔は耐えきれない苦痛を味わったかのようなそんな顔で。

こんな、辛そうな顔してるのをほっとくなんてそれこそ、ヒーロー失格だ!

赤穂「俺は土橋の告白に困ってたわけじゃない。ただ、戸惑ってたんだ」

赤穂「女の子にああ言われるなんて初めて、だったからな」

土橋「そう、なの?」

赤穂「ああ、だから正直……どう答えたらいいかもわからないんだよ」

俺のするべき事は考えるとか結論を出すとかの前に……

彼女と、話す事だったんだ。

赤穂「だから悪い。あの告白に答えはまだ返せない」

土橋「……うん」

赤穂「だけどな!忘れるなんて事もしない!」

土橋「……!」

まだ何もわかってやしない、結局結論は応えられないかもしれない。

赤穂「だから、待っててくれ」

だけど牡丹に言われたように、否定しない。

俺は土橋の気持ちを、受け止めて答えを返す。

そう、決めたんだ。

赤穂「必ず答えを返すから……ちょっとだけ、俺に時間をくれ」

土橋「……」

土橋は涙を拭うと、頷く。

土橋「待ってる、アタシ……政城の答え待ってるから」

その顔はとてもいい笑顔で。

俺は、なんとなくその笑顔をもっと見ていたいなと、そう思った。
709 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:22:25.67 ID:HTkdcFfA0
【旧館】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「夜10時になりました!」

モノクマ「そろそろお休みした方がいいよ!」

モノクマ「うぷぷ、また明日……」

赤穂「……」

まだまだ考えないといけない事や悩み事は多いけど、昨日よりは清々しい気分だ。

赤穂「……」

身体の芯から沸き上がるものを感じる。

それは黒幕に負けてたまるかという気持ち。

赤穂「絶対、生きて帰ってやるからな……!」

そう決意して、俺は眠りについた。
710 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/25(木) 22:32:38.51 ID:HTkdcFfA0
【18日目】

キーン、コーン、カーンコーン

モノクマ「7時です!さあ、起きた起きた!」

モノクマ「今日も張り切っていきましょー!」

赤穂「んっ……」

もう朝か。

「きゃあっ!?」

赤穂「!?」

この声は土橋!?

【旧館・倉庫】

赤穂「土橋!」

土橋「あ、あいたたた……」

声がした倉庫に来てみると土橋が、床に倒れて段ボールの下敷きになっていた。

遠見「美姫殿!?何をしているのでありますか!」

土橋「いやー、ちょっと落ち着かなくて倉庫漁ってたら段ボールが崩れちゃって」

道掛「うおっ、美姫ちゃん頭にコブが出来ててんぞ」

土橋「頭打っちゃって……」

津浦「Ms.土橋!少し頭を切ってますよ!」

土橋「うわっ、本当だ!?」

佐場木「全く、人騒がせな」

如月「何事もなかったならよかったじゃありませんか。とりあえず怪我を治療しましょう」

御影「じゃあちょっと傷薬取ってくるよ」

兵頭「私は朝食の準備を」

六山「ふああ……おはよー」

赤穂「今起きてきたのか……」
711 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:40:54.12 ID:5dF676iA0
遠見「これでよし、であります」

あの後遠見が牡丹の持ってきた傷薬を塗って土橋を治療した。

たいした怪我ではなかったみたいで、ガーゼだけで済むぐらいのもので正直安堵する。

土橋「悪いね、メメ。みんなも心配かけてごめん」

六山「まさか寝てる間にそんな事があったなんて」

御影「むしろよく寝てられたね」

兵頭「本当結構悲鳴大きかったのに……はい、土橋さん」

土橋「あむっ」

佐場木「……警戒が足りないんじゃないか」

道掛「でもこうしてこもってからは何もねえからな」

如月「現状怪しい動きをしている人もいません」

津浦「何かあったと言えばMr.赤穂とMs.土橋の件ぐらいでしょうか?」

赤穂「おい津浦!?」

いくらなんでもそこを持ち出す必要はないだろう!

佐場木「とにかく倉庫を片付けるぞ」

道掛「俺もやるぞ!」

そうして今日も1日が始まった。
712 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:49:47.56 ID:5dF676iA0
あれから何人かは倉庫に行ったり、各々動いたり……今この場には俺と土橋だけが残された。

土橋「うー、頭痛い」

赤穂「大丈夫なのか?」

土橋「結構思いっきり打っちゃったからね……」

赤穂「だいたいなんで今は片腕しか使えないのに無茶したんだ」

土橋「……だって本当に落ち着かなくて」

赤穂「……もしかして昨日の事か」

土橋「……」コクッ

赤穂「……」

ま、まあ……そういう事なら落ち着かないのは無理ないか。

土橋「あー、もう2人きりだから余計落ち着かないよ。ちょっとトイレ行ってくる!」

赤穂「あ、ああ」

土橋が立ち上がって大広間のドアに向かう。

そしてドアノブを掴んで外に――
713 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 05:50:14.36 ID:5dF676iA0






土橋「うぷっ……!」






714 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:04:39.29 ID:5dF676iA0
赤穂「土橋?」

土橋「おええっ!」

土橋がいきなり嘔吐する。

そして、床に、倒れた。

赤穂「土橋!?」

土橋「ううっ、げほっ、頭、痛っ、ぐっ!」

なんだ、なんでこんな吐いて……

赤穂「誰か来てくれ!!土橋が!!」

俺の叫びにみんなが集まってくる。

そして土橋を見て、息を呑んだ。

遠見「美姫殿!何が起きたのでありますか!」

赤穂「わからない!ただ急に吐き出して……」

道掛「吐いた……あっ、おい赤穂!美姫ちゃん頭痛するとか言ってなかったか!?」

赤穂「そ、そういえば頭痛いって」

道掛「やべえ、やべえやべえやべえ!!俺大会で頭打った後に頭痛い吐き気するってぶっ倒れた奴見た事あんぞ!」

佐場木「そうか、頭を打った際に脳が傷付いたのか……!」

赤穂「は……?」

御影「そ、それでどうなったの!」

道掛「し、死んじまった……」

津浦「そんな!」

兵頭「どうにかならないんですか!?」

六山「とりあえず病院に……」

如月「しかしこれは医者がいなければ……!」

なんだよそれ。

さっきまで普通に話してたんだぞ?

それがこんな、こんな……!

土橋「政、城……」

赤穂「土橋!しっかりしろ!今病院に」

土橋「アタシ、死ぬの……?」

赤穂「そんな事言うな!ジェニーの遺言通り生きるんだろう!?」

土橋「アタシ、まだやりたい事あるのに……」

土橋「アタシ、まだ答えを聞いてないのに……」

土橋「アタシ、アタシ……」

赤穂「お、おい……」
715 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:08:03.34 ID:5dF676iA0






土橋「政城っ……アタシ、まだ、死にたくないよぉ……」

そう、泣きながら、呟いた土橋の俺に伸ばした腕は……

届く事なく、床に落ちた。






ピンポンパンポーン…!
716 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:08:32.09 ID:5dF676iA0






モノクマ「死体発見!死体発見!」

モノクマ「捜査タイムの後学級裁判を始めまーす!」






717 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:14:25.18 ID:5dF676iA0
赤穂「……」

何も、聞こえない。

何も、わからない。

ただ土橋の最期の言葉と顔が俺の心を抉る。

赤穂「……」

そしてわかった。

俺は。

※※※※

土橋「だってそれヒーローとして頑張って出来た傷でしょ?だったらむしろ勲章だって!」

※※※※

あの言葉をもらってから、俺は。

赤穂「土、橋……」

きっと。

赤穂「うわああああああああああああっ!!」

彼女に、惹かれていたんだ。

それが俺のあまりにも、遅い。

残酷な結論だった。
718 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:16:44.68 ID:5dF676iA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】(非)日常編 END

生き残りメンバー10→9人

NEXT→非日常編






719 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 06:18:16.30 ID:5dF676iA0
一旦ここまで。

土橋さん退場です。

捜査はまた夜に。

それではまた。
720 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:02:42.00 ID:5dF676iA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】非日常編






721 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:37:01.15 ID:5dF676iA0
【旧館・大広間】

モノクマ「うぷぷ、せっかく固まったのに何の意味もなくコロシアイが起きたみたいだね!」

如月「モノクマ……」

佐場木「ちっ、腹立たしい奴だ……!」

赤穂「……」

モノクマ「あれれ?赤穂クンボーッとしちゃってどうしたのかな?」

御影「ちょっとやめなよ!」

赤穂「……」

モノクマ「うぷぷ、もしかして絶望しちゃった?ねぇねぇ、どうなの?」

道掛「やめろよてめえ!今赤穂は……」

ダンッ!

津浦「っ!?」

兵頭「赤穂さん?」

赤穂「大丈夫、だ」

立ち上がって土橋の死体を見下ろす。

俺は結局、あんな無念な最期を迎えさせてしまった。

赤穂「学級裁判があるんだろう……やってやる」

遠見「赤穂殿……」

六山「本当に大丈夫なの?」

赤穂「ああ、土橋の無念は……必ず晴らす!」

それが俺のやるべき事のはずなんだ……!

    【捜査開始】
722 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 20:49:31.91 ID:5dF676iA0
赤穂「まずはモノクマファイルからだ……」

【被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある】

赤穂「……」

このモノクマファイル……

コトダマ【モノクマファイル4】を手に入れました。
〔被害者は土橋美姫。
死体発見現場は旧館・大広間。
死亡推定時刻は8時2分。
被害者の頭部には瘤と切り傷がある〕
723 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/26(金) 22:04:04.91 ID:5dF676iA0
佐場木「土橋はお前の目の前で苦しみだしたのか?」

赤穂「ああ……いきなり吐き出して、倒れて、頭が痛いって」

佐場木「典型的な症状ではあるが、気になる事もあるな……」

赤穂「気になる事?」

佐場木「見てみろ、土橋の腕を」

赤穂「……これは、引っ掻いたような傷か?」

佐場木「朝にはこんなものはなかったはずだ」

赤穂「確かに……俺も見てない」

この傷、事件に関係あるのか?

コトダマ【土橋の死亡時の状況】を手に入れました。
〔土橋は赤穂と普通に話していたところいきなり吐き出して倒れた〕

コトダマ【腕の傷】を手に入れました。
〔土橋の腕に残されていた引っ掻いたような傷〕

724 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 20:24:05.67 ID:cxROkNOA0
遠見「美姫殿……」

土橋のそばに膝をついて口元を拭う遠見……ここ数日で仲良くなっていたみたいだから辛いんだろうな……

赤穂「遠見、大丈夫なのか?」

遠見「自分は、大丈夫であります。亡くなった人間はたくさん見てきたでありますから」

赤穂「……」

遠見「美姫殿の無念、自分も晴らしたいであります。だから赤穂殿、絶対に真相を突き止めるでありますよ」

赤穂「ああ、もちろんだ……それで、土橋に変わったところはあるか?」

遠見「1つ。美姫殿の吐瀉物に血が混じっていたであります」

赤穂「血が?」

だけど土橋の嘔吐は、脳にダメージがあった事が原因だよな?

それなのに血を吐いた?

これはいったい……

コトダマ【土橋の吐瀉物】を手に入れました。
〔土橋が吐いた物の中に血が混じっていた〕
725 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 21:01:48.34 ID:cxROkNOA0
【旧館・倉庫】

道掛「……」

赤穂「道掛?何してるんだこんなとこで」

道掛「赤穂か。いや、美姫ちゃんが死んだ原因朝の怪我だろ?もしかしたらそこに何かあるんじゃねえかって思ってよ」

赤穂「あの事故が、そもそも仕組まれてたって事か?」

道掛「それを調べに来たんだよ。だけどどうすりゃそんな事出来んのかさっぱりわかんねえ……」

赤穂「そうだな……道掛は佐場木と片付けしてたよな?そこで何か気になる事なかったか?」

道掛「うーん……あっ、そういやなんかパイプみてえなのがたくさん転がってたな!」

赤穂「パイプ?」

道掛「これだよこれ!」

道掛が持ってきたのは金属の棒……ちょうど俺の杖に似たような形の。

道掛「そういやこれ、昨日結構高いとこにあったんだよな」

赤穂「……!」

まさか、土橋は……

コトダマ【金属の棒】を手に入れました。
〔倉庫にあった赤穂の杖に似た形状の金属の棒〕

コトダマ【道掛の証言】を手に入れました。
〔事件前日、金属の棒は高い所にあった〕
726 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/27(土) 21:19:51.49 ID:cxROkNOA0
【旧館・厨房】

兵頭「まさかこんな事になるとは……」

赤穂「朝食の時は土橋の様子に変わった所はなかったか?」

兵頭「そうですね、いつも通りでしたよ。ああ、ただ……」

赤穂「ただ?」

兵頭「機嫌がよかったのかなぜか私や御影さんも食べさせられまして……土橋さんの分だったのに本人は気付いてませんでしたが」

赤穂「ああ、なんか騒いでたのはそれか」

兵頭「だからこそ、今でも少し信じられない気持ちです」

赤穂「……」

コトダマ【兵頭の証言】を手に入れました。
〔土橋は朝食の時機嫌がよく、兵頭や御影にも自分の分のご飯を食べさせていた〕
727 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 20:32:06.58 ID:mFuPFECA0
【図書館】

津浦「……」ペラペラ

赤穂「津浦、捜査はどうだ?」

津浦「Mr.赤穂。今少し調べているところです」

赤穂「この本は?」

外国の本なのかタイトルからして俺にはなんて書いてあるか読めないな……

津浦「これは毒に関する本です」

赤穂「毒?」

津浦「Ms.土橋の腕にあったあの引っ掻き傷のような痕……それを調査していたこの毒に関する本で見た覚えがあるんです」

赤穂「なんだって!?」

津浦「……ありました。これです、【モノポイズン】」

赤穂「読んでみてくれないか?」

津浦「はい。【この毒は体内に侵入して1時間経った頃に強烈な頭痛と嘔吐感を引き起こす。特徴として少量の吐血、腕に引っ掻き傷のような痕が出来る事が確認されている】」

赤穂「それって、間違いなく……」

津浦「一致、しますね。さらに言えばこの毒、市販されているような物で作る事が可能ですよ」

まさか土橋はこの毒で……?

コトダマ【毒の本】を手に入れました。
〔図書館にあった外国語で書かれた毒に関する本。
赤穂はタイトルを読む事も出来なかった〕

コトダマ【モノポイズン】を手に入れました。
〔図書館の本に書かれた毒。
市販の材料で作る事が可能。
その効果は土橋に起きたものと一致する〕
728 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 21:14:00.51 ID:mFuPFECA0
御影「……兄さん」

赤穂「牡丹か、捜査はどうだ?」

御影「一応、色々調べてるけど……兄さん、本当に大丈夫なの」

赤穂「……」

御影「ねぇ、家族の前でぐらい弱音吐いてよ。なんか、今の兄さんすごく危なっかしいよ」

赤穂「……牡丹は、よく見てるな」

御影「家族だもん。当たり前でしょ?」

赤穂「……正直泣き叫びたい。後悔だらけで、膝をつきたくなる」

御影「……」

赤穂「でも負けるわけにはいかないんだ。泣き叫ぶのも後悔も、終わってからする」

御影「兄さん……」

赤穂「だから終わったら、ちょっと泣かせてくれるか?」

御影「うん、もちろん。兄さんがそうしたいなら」

赤穂「ありがとうな。お前は本当にもったいないぐらいの妹だよ」

御影「そ、そんな事ないって……あっ、それと捜査の事なんだけど」

赤穂「ああ、そうだった。何かわかったか?」

御影「土橋なんだけど、こもってからは一度も外には行ってないみたい。物とかも如月に頼んでたって」

赤穂「一度も外に出てないのか……」

そうなると、色々狭まってくるよな……

コトダマ【こもってからの土橋】を手に入れました。
〔土橋はこもってからは一度も外に行かず、欲しい物などは如月に頼んでいたらしい〕
729 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 21:40:14.77 ID:mFuPFECA0
六山「どういう事なのかな……」

赤穂「六山?どうかしたのか」

六山「あっ、赤穂くん。ほら、この金属の棒なんだけど」

赤穂「それは……」

道掛が昨日上にあったっていう……

六山「ほら一昨日赤穂くんとここで話したでしょ?あの時この棒、わたしの座ってた箱に入ってたんだよ」

赤穂「……それ本当なのか?」

六山「うん。一応中身確かめてから座ったし」

じゃあ、一昨日箱に入ってた棒が……昨日上に移動していたって事か?

それってつまり……

コトダマ【六山の証言】を手に入れました。
〔金属の棒は一昨日箱に入っていた〕
730 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/28(日) 22:02:55.75 ID:mFuPFECA0
赤穂「……」

大広間のテーブルの上に朝土橋の治療に使った道具が残っている。

包帯、ガーゼ、傷薬……これを使った時はまだ土橋も元気だったっていうのに。

赤穂「……んっ?」

この傷薬、土橋だけに使ったにしては減ってるな……

赤穂「牡丹、ちょっといいか?」

御影「どうしたの」

赤穂「なあ、この傷薬どこから持ってきたんだ?」

御影「えっ?兄さんの荷物だけど」

赤穂「ああ、そうか。だったら減ってて当たり前か」

こもる前に病院から新しいの持ってきて使ってたしな……

御影「もしかして駄目だった?」

赤穂「いや、全然問題ない」

問題ないんだけど……何か引っ掛かるな。

コトダマ【傷薬】を手に入れました。
〔土橋の治療に使った傷薬。
赤穂の荷物から御影が取ってきた物で量が半分ほど減っている〕
731 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 01:01:22.21 ID:juXEPiyA0
【厨房】

赤穂「う、ん……」

なんだこれ……なんだか、ちぐはぐな気分だ……

赤穂「くそっ、考えがまとまらない」

水でも飲んで落ち着くか……

赤穂「……んっ?」

流しに、何か透明な物が……

赤穂「この匂い……傷薬?」

なんで傷薬が流しにあるんだ?

赤穂「あっ、これ……」

ゴミ箱に粉々の瓶……これもしかして傷薬の瓶か?

赤穂「……」

コトダマ【流しの傷薬】を手に入れました。
〔厨房の流しについていた傷薬〕

コトダマ【傷薬の瓶】を手に入れました。
〔厨房のゴミ箱に捨てられていた傷薬の瓶〕
732 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 12:46:20.62 ID:juXEPiyA0
如月「赤穂さん、捜査は順調ですか?」

赤穂「如月さん……えぇ、なんとか」

如月「土橋さんの事……本当に残念でした」

赤穂「いえ……あっ、あの1つ聞きたいんですけど」

如月「なんでしょう?」

赤穂「如月さんって、土橋に何か物を頼まれたりしました?」

如月「ああ、それなら確かに外出の際いくつかマーケットから持ってきてほしいと頼まれましたよ」

赤穂「それって具体的には」

如月「薬や洗剤がいくつかと、後バンドのような物を頼まれましたね。最も洗剤はなかったんですが」

赤穂「なかった?」

如月「はい、どうやら誰かが持っていってしまっていたようで」

赤穂「……もう1つ、旧館にこもってから外に出たのは誰ですか」

如月「赤穂さん、土橋さん、御影さん、六山さん以外の方は最低一度は外に出ていますね」

赤穂「……わかりました」

コトダマ【土橋の頼み事】を手に入れました。
〔土橋は如月に薬品や洗剤、バンドなどを頼んでいたらしい〕

コトダマ【なかった物品】を手に入れました。
〔マーケットから洗剤がなくなっていた。
誰かが全て持っていってしまっていたようだが……〕

コトダマ【旧館からの外出】を手に入れました。
〔旧館にこもってから外出したのは赤穂、土橋、御影、六山以外の6人〕
733 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 12:54:20.73 ID:juXEPiyA0
赤穂「……」

一応、あそこを見ておくか。

※※※※

赤穂「……あった」

大量の洗剤……マーケットからなくなっていたのはあれだ。

赤穂「中に入れないから、手に取れないけど……確認出来れば充分だ」

コトダマ【大量の洗剤】を手に入れました。
〔苗木のコテージの中にあった大量の洗剤。
マーケットからなくなっていた物と思われる〕

キーンコーン、カーンコーン…
734 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 17:28:18.58 ID:juXEPiyA0
モノクマ「うぷぷ、うぷぷぷぷぷ……」

モノクマ「いよいよお楽しみの時間がやってきたよ!」

モノクマ「そう、絶望渦巻く学級裁判の時間が!」

モノクマ「うぷぷ、オマエラ急いで中央の島に集合してくださーい!」

ブツン!

赤穂「……」

学級裁判……そう聞いても心は穏やかだ。

もう慣れてしまったからか、それとも……

赤穂「行く、か」

【中央の島・未来機関第20支部】

御影「これで4度目か……」

兵頭「今回は目の前で亡くなった分、気が重いですね」

道掛「だなぁ……」

津浦「しかしワタシ達のするべき事に変わりはありません」

遠見「その通りであります……それが美姫殿の無念を晴らす事になるでありますよ」

佐場木「……」

六山「まずは生き残る事を考えよう……うん」

如月「旧館にこもる案は僕が提案した事……必ず真実は明らかにします」

赤穂「…………」

モノクマ「うぷぷ、全員集まったみたいだね!それじゃあ学級裁判場に出発ー!」

モノクマに促されて、俺達はエスカレーターを降りていく。

一番最後に乗った俺の視線の先には8人の背中。

もう、半分しかいないんだな……

そう考える内に、学級裁判場にたどり着いた。
735 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 17:53:22.64 ID:juXEPiyA0
【学級裁判場】

モノクマ「ひよっこだったオマエラもなかなかいい顔をするようになったねぇ」

モノクマ「うぷぷ、そうして絶望に歪む顔は本当に最高だよ!」

モノクマ「さあ席についてくださーい!」

モノクマの戯れ言を聞き流して自分の席につく。

【超高校級の土木作業員】土橋美姫……

傷を見られたくなかった俺を慰めてくれた女の子。

ジェニーが殺されて悲しみと憎悪を見せた女の子。

……俺なんかを、好きになってくれた女の子。

だけど俺はもう彼女の好意に何も返せない。

六山「内通者、なのかなぁ……」カチカチ

道掛「くそっ、こんなに減ったなんて寒気がしてきやがる……!」

遠見「美姫殿……自分達は必ず、真相を……!」

彼女は、死んだ。

俺達の目の前で、死にたくないと泣きながら、死んでいった。

佐場木「今回の事件、どうなる……」

津浦「あれが使われたなら、いつ、どうやって……?」

御影「兄さん……」

今俺はヒーローらしくない感情を抱いてる。

だけどそれに逆らおうとは思えない。

もし土橋が殺されたって言うなら、必ず犯人は引きずり出す。

兵頭「こんなはずではなかったんですが……」

如月「……責任は果たします」

ズキズキと痛む胸を掴む。

忘れるな、この痛みを。

忘れるな、今渦巻くこの感情を。

赤穂「……絶対に」

今回のクロは、たとえ裁判を逃げ切っても殺してやる。

そう心の内に刃を隠しながら俺は挑む。

この、学級裁判を。
736 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:24:20.53 ID:juXEPiyA0
・コトダマ一覧表

【モノクマファイル4】>>722

【土橋の死亡時の状況】
【腕の傷】>>723

【土橋の吐瀉物】>>724

【金属の棒】
【道掛の証言】>>725

【兵頭の証言】>>726

【毒の本】
【モノポイズン】>>727

【こもってからの土橋】>>728

【六山の証言】>>729

【傷薬】>>730

【流しの傷薬】
【傷薬の瓶】>>731

【土橋の頼み事】
【なかった物品】
【旧館からの外出】>>732

【大量の洗剤】>>733

目の前で土橋が死んだ事は赤穂の心に深い傷を刻んだ。
その傷を抱いて向かう学級裁判。
憎悪に染まった赤穂の迎える結末は……


     【学級裁判開廷!】
737 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:41:26.07 ID:juXEPiyA0
モノクマ「はいはい、それでは学級裁判の説明をしまーす!」

モノクマ「学級裁判ではオマエラに誰が犯人かを議論してもらいます!」

モノクマ「その結果は投票によって決定され、正しいクロを指摘できればクロがおしおき」

モノクマ「ただし間違えたら……クロ以外の全員がおしおきされ、クロは自由の身となるのです!」

道掛「何から話すよ?」

佐場木「まずは初回の事件と同じように事故か他殺かを話し合うぞ」

六山「最初の事件……あの頃から人も随分減ったよね」

兵頭「感傷は後にしましょう。今は佐場木さんの仰るように議論をしなくては」

赤穂「……」

事故か他殺か……そんなの決まってる!

これは他殺だ……!
738 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:49:49.77 ID:juXEPiyA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【モノクマファイル4】
【道掛の証言】
【金属の棒】

佐場木「事故か他殺か……」

佐場木「思う方に意見を出してみろ」

道掛「色々調べたんだけどよ……」

道掛「【事件の証拠はどこにもなかった】んだよな」

御影「じゃあ事故って事?」

津浦「しかし、【事件ではない】となると……」

遠見「自分は事件だと思うであります」

如月「ふむ、このままでは平行線ですね……」

これは事故なんかじゃない……

間違いなく誰かの悪意が働いてたんだ!
739 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:54:26.00 ID:juXEPiyA0
【事件の証拠はどこにもなかった】←【金属の棒】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「違うだろ道掛、事件と示す証拠はあったはずだ」

道掛「えっ、そんなのあったか……?」

赤穂「あの金属の棒だよ」

六山「金属の棒って倉庫にあったあれだよね」

遠見「リストにもあるであります……赤穂殿、これの何が証拠となるのでありますか?」

赤穂「この金属の棒……これに隠された悪意が土橋は殺されたって証拠になる」

佐場木「悪意だと?」

そうだ、隠された悪意……それを俺は証明出来るはずだ。
740 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 20:58:27.41 ID:juXEPiyA0
【ショットガンコネクト開始!】

金属の棒にあった悪意……

それを示すのは……!

・コトダマ>>736
【道掛の証言】
【モノクマファイル4】
【兵頭の証言】

・課題
【金属の棒の使用者を示すのは?】
【金属の棒の状態を示すのは?】
【金属の棒の場所を示すのは?】
741 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:00:46.71 ID:juXEPiyA0
【道掛の証言】―【金属の棒の場所を示すのは?】

赤穂「……」

道掛によれば金属の棒は上にあった……

だけどそれはおかしいんだ……!

・コトダマ>>736
【大量の洗剤】
【毒の本】
【六山の証言】
742 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:05:27.92 ID:juXEPiyA0
赤穂「……」

なぜなら金属の棒が箱に入っていたのを六山が見ている……!

つまり、この金属の棒は……

【道掛の証言】―【金属の棒の場所を示すのは?】―【六山の証言】


・結論
【金属の棒を適当に片付けた】
【何者かが金属の棒を上に移動させた】
【金属の棒は二ヶ所にあった】
743 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:15:53.26 ID:juXEPiyA0
【何者かが金属の棒を上に移動させた】

赤穂「真相の道筋を繋いでみせる!」


赤穂「道掛、確かあの金属の棒は高いところに置いてあったんだよな?」

道掛「おう、そうだぜ!具体的には積み重なった段ボールの上にはみ出して置いてあったぞ」

赤穂「六山、金属の棒は一昨日箱に入っていたんだよな?」

六山「間違いないよ」

遠見「金属の棒の場所が移動している……?」

赤穂「俺はこう考えてる」

赤穂「誰かが金属の棒を箱から出して上に仕掛けたんだってな」

佐場木「……確かにあの散らばっていた金属の棒は気になってはいた」

御影「つまり誰かが金属の棒で罠を作っていたって事なの?」

赤穂「ああ、そうだ。そして土橋はそれを取ろうとして……」


遠見「その推理、捉えたであります!」反論!
744 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:34:50.89 ID:juXEPiyA0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【土橋の頼み事】
【なかった物品】
【旧館からの外出】


遠見「赤穂殿、それは偶然に頼りすぎであります!」

遠見「罠を仕掛けたとしても狙った時に動くとは限らず……」

遠見「そもそも美姫殿が金属の棒を取ろうとしなければ成立しないでありますよ!」

赤穂「そうだ、土橋は金属の棒を取ろうとした!」

赤穂「そして罠にかかったんだ……!」

遠見「【美姫殿が金属の棒を取ろうとする理由がない】であります!」

遠見「確かに結果的には金属の棒は落ちたのでありましょうが……」

遠見「それが罠だと断言は出来ないでありますよ!」
745 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:47:58.01 ID:juXEPiyA0
【美姫殿が金属の棒を取ろうとする理由がない】←【土橋の頼み事】


赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「いいや、土橋にはあったんだ……金属の棒を取ろうとする理由が」

遠見「それはいったい……」

赤穂「如月さん、土橋はバンドを持ってきてほしいって頼んでたんですよね?」

如月「えぇ、腕に着けるタイプの物を……まさか」

赤穂「……正直、信じたくない結論だ」

御影「もしかして、兄さん……」

赤穂「だけど他に浮かばないんだ……土橋があの金属の棒を取ろうとする理由」

道掛「どういう事だよ!?美姫ちゃんは何しようとしてたんだ!」

赤穂「土橋は……」
746 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/29(月) 21:48:35.01 ID:juXEPiyA0






赤穂「俺の新しい杖を、作ろうとしてたんだ」






747 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 08:09:59.31 ID:1OdtMfQA0
津浦「Mr.赤穂の……」

兵頭「新しい、杖」

赤穂「ああ……だから土橋は金属の棒を取ろうとした。俺の杖に似たあの棒を」

佐場木「それを見越して罠を仕掛けたのかもしれないな」

御影「そんな……」

赤穂「……」

遠見「これ見よがしに上に置かれた杖に相応しい棒……美姫殿はそれを見つけてしまった」

六山「土橋さんは腕を骨折してた。高いところにある棒を取るにも一苦労だったはずだよね」

如月「その結果……段ボールと共に崩れてきた金属の下敷きとなった」

道掛「なんてこった……」

土橋がなんで俺の新しい杖を作ろうとしていたのかはわからない。

だけどこの結論に、間違いはないはずだ。

赤穂「だからこの一件は事件」

赤穂「土橋は殺されたんだ……!」
748 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 10:39:08.19 ID:1OdtMfQA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【モノクマファイル4】
【土橋の死亡時の状況】
【土橋の吐瀉物】


佐場木「土橋が殺されたのはわかった。その前提で議論を進めるぞ」

津浦「犯人はやはり【内通者】なんでしょうか」

兵頭「今回の動機を考えても間違いないとは思いますが……」

御影「わざわざ罠まで作った以上【】突発的でもなさそう】だしね」

六山「でもそのわりにはお粗末だよね」

六山「【偶然脳が傷付いたから土橋さんは亡くなった】けど」

六山「わたしだったら一緒に厨房の刃物でも仕掛けとくよ」

道掛「百夏ちゃん怖えよ!?」

如月「しかし六山さんの言葉にも一理あります」

如月「この罠は片腕が使えず受け身も取りにくかったであろう土橋さんを殺すには【殺傷能力が低すぎる】」

遠見「表面上はたいした怪我ではなかったでありますからな」

土橋が殺されたのは間違いない……

だけどまだ疑問点はある。
749 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 13:01:58.69 ID:1OdtMfQA0
【偶然脳が傷付いたから土橋さんは亡くなった】←【モノクマファイル4】


赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「待ってくれ、そもそも土橋は本当に脳にダメージを受けて死んだのか?」

六山「……それって大前提じゃないの?」

道掛「そうだぜ、他にねえだろ!」

赤穂「だけどこのモノクマファイルを見てくれ」

佐場木「死因が書かれていない……赤穂が言いたいのはそういう事か」

赤穂「ああ、今までもモノクマファイルに書かれてなかった事は重要だった……」

赤穂「だから今回もそれは例外じゃないはずだ」

遠見「しかしあの美姫殿の死因が罠によるものでないのならば、いったい何が……」

兵頭「とにかく話し合いましょう。土橋さんはどうして亡くなったのかを、ね」
750 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 20:59:37.78 ID:1OdtMfQA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【こもってからの土橋】
【毒の本】
【腕の傷】

道掛「美姫ちゃんが【別の方法で殺された】ってマジなのかよ……」

六山「とりあえず色々あげてみよっか」

遠見「[撲殺]……ではなさそうでありますな」

兵頭「あの傷では[刺殺]にはなりそうにありませんね」

津浦「……[毒殺]では、ないでしょうか」

御影「[病殺]っていうのは?」

佐場木「勝手に手口を作るな……」

如月「さて、死因はいったい……」

土橋の死因はきっとあれだ……
751 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 21:48:13.27 ID:1OdtMfQA0
[毒殺]←【腕の傷】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「津浦の言う通り、土橋は毒殺の可能性が高い」

道掛「ど、毒!?んなもんどっから……」

兵頭「そう断定するからにはもちろん根拠がおありなんですよね?」

赤穂「ああ、土橋の腕にあった引っ掻いたような跡だ」

佐場木「あれか……」

六山「あれは苦しんだ土橋さんがつけたものじゃないの?」

赤穂「あれは一見引っ掻いた傷に見えるけど実際は違ったんだよ」

御影「ど、どういう事?」

あの跡は……ある毒が使われた証拠になるんだ!
752 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:00:10.08 ID:1OdtMfQA0
【モノポイズン】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「モノポイズン……」

如月「モノポイズン?」

津浦「こちらの本に書いてある毒物です」

道掛「なんだそれ!宇宙語か!?」

佐場木「そんなわけないだろう」

兵頭「とりあえず、どんな毒物か教えていただけませんか?」

津浦「モノポイズンは体内に入って一時間前後で効果を発揮する猛毒です」

津浦「その際、腕には引っ掻いたような跡が残るのが特徴と書いてありますね」

六山「引っ掻いたような跡……土橋さんの腕にあるのそのままだね」

遠見「それでは美姫殿はその毒を用いて殺害されたのでありますか……」

赤穂「そういう事になる」

津浦「この毒は市販されている材料を使いますので、作るのは困難ではなかったでしょう」

如月「そんなに身近な物でそんな毒が……」

モノクマ「うぷぷ、そんなに驚く事はないよ!」

モノクマ「モノポイズンはボクが産み出した毒だからね!」

モノとついてる時点でそんな気はしてたけど、やっぱりそうなのか……!
753 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:11:59.94 ID:1OdtMfQA0
兵頭「色々わかってきましたね」

御影「土橋は罠を仕掛けられていた……」

六山「そして毒殺されたんだね」

道掛「うーん、だけど本当にそんな毒簡単に作れんのか?」

津浦「材料は本当に簡単に手に入りますので。例えば……」

津浦がいくつかの材料をあげていく……それは俺達が日常で見るような物ばかりだ。

如月「……ちょっと待ってください」

遠見「どうしたのでありますか?」

如月「津浦さん、モノポイズンは本当にその材料を使うのですか?」

津浦「そうですが……」

如月「まさか、いやしかし……」

佐場木「なんだ、何かあるなら言え」

如月「……そのモノポイズンの材料ですが、僕は外出の際に旧館に持ってくるよう頼まれています」

道掛「だ、誰にだよ!」


如月「……土橋さんですよ」
754 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:23:07.12 ID:1OdtMfQA0
赤穂「……!」

道掛「んっ?はっ?ちょっと待てよ、美姫ちゃんが……毒の材料を頼んだ?」

如月「津浦さん、これから僕があげるものにモノポイズンの材料となる物がどれだけあるか教えてください」

今度は如月さんが物の名前を告げていく。

そしてそれを確認していた津浦は……青ざめた顔で本を閉じた。

津浦「今、Mr.如月があげた物品は……バンド以外、全てモノポイズンの材料です」

御影「ちょっと待ちなよ!?土橋は被害者なんだよ!?」

六山「だけど土橋さんがモノポイズンの材料を頼んでたのは事実、だよね」

佐場木「……問題なのはその目的だ」

道掛「そ、そりゃ、毒を作る理由なんて1つしかなくね?」

赤穂「土橋が誰かを殺そうとしていたっていうのか!?」

兵頭「……1ついいですか?もしかしたら」
755 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:23:42.12 ID:1OdtMfQA0






兵頭「土橋さんが、内通者だったのでは?」






756 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:35:20.58 ID:1OdtMfQA0
赤穂「は……?」

土橋が、内通者?

兵頭「内通者は事件を起こさなければ命がないと脅されていました」

道掛「そ、それなら毒を作ってもおかしくは、ねえよな……」

待て。

六山「土橋さんが内通者だったなんて……」

津浦「そうなると、この事件に新しい展開が見えるのでは?」

待てよ。

佐場木「自殺か」

御影「じ、自殺はおかしくない?だって土橋は命がないって脅されて毒を作ろうとしてたんでしょ?」

なんだよこれ。

如月「躊躇った末に絶望したか……もしくは、赤穂さんをどうしても犠牲に出来なかったか」

なんなんだよ、これは!

赤穂「待て、待てよ!!なんで土橋が内通者だなんて話になってる!!あいつは被害者だ、あいつは死にたくないって泣きながら殺されたんだぞ!?」

おかしいだろ、なんでみんな被害者のあの子を責めるような雰囲気なんだ!!

兵頭「しかしだったらどう説明をつけますか?彼女がモノポイズンの材料を求めていた理由を」

赤穂「知るかそんなもの!!」

御影「に、兄さん……?」

ふざけるな、ふざけるなよこいつら……!

だったら証明してやるよ、土橋にはモノポイズンを作れないってな……!
757 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:43:43.35 ID:1OdtMfQA0
【毒の本】

赤穂「お前らに正義はない……!」


赤穂「津浦!!今すぐその本を貸せ!!」

津浦「ひっ!」

差し出された本を奪い取ると全員に向けて適当なページを見せる。

赤穂「なあ、誰かこれ読めるか?」

道掛「い、いや……」

佐場木「どこの国の言語かぐらいしかわからんな」

兵頭「残念ながらわかりませんね……」

赤穂「そう、誰にも読めない、わからないんだよ!頭のいいだろう兵頭や佐場木にも!」

赤穂「だったら土橋にも読めなかったと考えるのが普通だろう!!」

御影「あっ……」

六山「じゃあどうして土橋さんは……」

赤穂「さあな!だけどこれで1つ結論が出た……」

モノポイズンを作る方法、そのための材料……そのどちらもこの本を読めないとわからない。

だったら毒を作れるのは……!
758 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:53:30.87 ID:1OdtMfQA0
【津浦琴羽】

赤穂「お前しかいない……!」


赤穂「津浦、お前だろう?」

津浦「えっ?へっ?」

赤穂「そもそもこの本読めるのはお前だけだ。だったら毒を作れるのはお前しかいないんじゃないのか?」

津浦「ま、待ってください!なんでワタシが……」

赤穂「そんなの、お前が内通者だからじゃないか?」

津浦「は!?」

赤穂「お前は死ぬ事に随分怯えてたもんな?少なくとも銃を持ち出すぐらいには」

津浦「そ、それは……」

道掛「ちょっと待てよ赤穂!それは乱暴……」

赤穂「お前らも今土橋に同じ事をしただろう!!」

御影「……!」

赤穂「もう死んで反論出来ない土橋によってたかって内通者の罪を押しつけて……!」

佐場木「……」

赤穂「そもそも毒の材料は津浦にしかわからない!だったら嘘をついてる可能性もある……!」

如月「赤穂さん……」

赤穂「これでわかっただろう!お前らに正義なんて――」
759 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 22:54:08.75 ID:1OdtMfQA0






パァン!!






760 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:06:31.12 ID:1OdtMfQA0
喚く俺の言葉を遮るように響いたのは……一発の銃声。

その音の発生源は……上に向けて銃を構える。

遠見「全員、静粛にであります」

遠見、だった。

遠見「赤穂殿、はっきり言うであります……」


遠見「さっきから見苦しい、少し黙れ」


赤穂「っ……」

遠見の発するその気迫に俺は言葉を失う。

それだけ遠見からは……剣呑な雰囲気が漂っていた。

遠見「赤穂殿は美姫殿を信用していなかったのでありますか?」

赤穂「は?何言って」

遠見「それならあの感情のままに喚き散らすあれはなんでありますか?」

遠見「もし同じ立場に立っていたのが御影殿なら……赤穂殿は冷静に、それこそジェニー殿の疑いを晴らした時のように立ち回っていたはずでは?」

その言葉に、俺は冷や水をぶっかけられたような気がした。

そして思い返す……さっき自分の醜態を。

赤穂「なんだ、あれ……俺、なんであんな……」

遠見「頭に血が上った、それはわかるでありますよ」

遠見「しかしそれで津浦殿に罪を押しつけるのは違うでありましょう?」

遠見「冷静に考えれば……そもそも津浦殿が内通者ならモノポイズンの事など明かさなければいいのでありますから」

赤穂「……」

そうだ……俺、そんな事すら……
761 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:21:04.24 ID:1OdtMfQA0
遠見「続いて……美姫殿が内通者だという話には少々無理があるかと」

兵頭「それはなぜですか?」

遠見「ちぐはぐだからでありますよ」

御影「ちぐはぐ?」

遠見「如月殿、美姫殿が材料を頼んだのは一度にでありますか?」

如月「そうですね……」

遠見「あの腕を見れば津浦殿は同じように調べるでありましょう。そうなれば一巻の終わりであります」

六山「だったら津浦さんを殺せば……」

遠見「それなんでありますが……今回の事件、自分は2つ確信してる事があるのであります」

佐場木「確信してる事だと?それはなんだ?」

遠見「……赤穂殿」

赤穂「なん、だ?」
762 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:22:29.60 ID:1OdtMfQA0






遠見「おそらくあの罠もモノポイズンも、標的は赤穂殿であります」

遠見「そして」

遠見「内通者なんか、はじめからいないであります」






763 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:23:52.20 ID:1OdtMfQA0






    【学級裁判中断!!】






764 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/30(火) 23:24:18.26 ID:1OdtMfQA0
今回はここまで。
次回学級裁判完結です。
765 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 20:29:53.98 ID:TE2fWHVA0






     【学級裁判再開!】






766 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 21:12:19.64 ID:TE2fWHVA0
赤穂「狙われてたのが、俺……」

いったい、どういう事なんだ?

遠見「1つ考えてほしいのであります、もしあの罠を赤穂殿が受けていたとしたらどうなっていたか」

御影「それは……」

佐場木「腕が不自由だった土橋と違い、赤穂は脚だ。おそらく逃げきれず押し潰されていただろうな」

六山「だけどそれにはそもそも、赤穂くんが棒を取りに行かないと」

遠見「……赤穂殿、その杖をよく見てほしいであります」

赤穂「杖を……?」

遠見に言われるがまま杖をよく見てみる。

赤穂「……!なんだこれ!?」

それは、微かな、だけどはっきりとした異常。

杖の下の方が……削れていた。

もしこのまま使っていたら、いずれ折れてバランスを崩していただろう。

遠見「これでも眼は自信がありましたので……それは明らかに人為的なものであります」

赤穂「……」

確かに杖が使えなくなったら、俺は代わりを取りに行ったはずだ。

そしてあの金属の棒を取ろうとする。

そうしたらどうなっていたか……考えなくてもわかった。
767 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 22:02:29.10 ID:TE2fWHVA0
兵頭「あの罠が赤穂さんが狙っていたのはともかく……それでなぜ内通者がいないという話に?」

道掛「そうだぜ!メメちゃんはなんか確信があるみてえだけど……」

遠見「そもそも、自分は内通者がいるという話には正直最初から懐疑的だったのであります」

津浦「それはなぜ……」

遠見「もし内通者がいるなら黒幕である苗木殿が動きすぎなのであります」

御影「動きすぎ?」

佐場木「確かにそうだな……今までの事件、内通者の役割がまるでない」

六山「あっ、そっか。例えば静音さんに提案したり四方院さんに手紙送るのは内通者にさせればいいもんね」

六山「そうすれば自分のした事が事件を起こしたってさらにがんじがらめに出来るし」

道掛「だから百夏ちゃん怖えよ!?」

赤穂「言われてみればそうだ……それに、もし黒幕以外に内通者もいたならあの苗木が最期にそれを暴露しないのは不自然だ」

実際そこでガタガタになってた部分はあったしな……

如月「……ふむ、ならば聞いてみましょうか」

如月「モノクマ、内通者はいるんですか?」

如月さんの質問を受けて微動だにしないモノクマ……

長い時間が経ったかのような感覚……そして。

モノクマ「内通者?そんなのいないよ」

それが、モノクマの解答だった。
768 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 22:45:29.25 ID:TE2fWHVA0
道掛「な、なんだよそれ!?いねえもんを当てろとか言ってたのか!?」

モノクマ「えっ?だからいないが正解だよ?」

御影「あんたそんなの!」

モノクマ「ボクは内通者がいるなんて言った覚えはないよ!」

モノクマ「もし内通者がいたらコロシアイを引き起こすっていうのをちょっとはしょっただけじゃん!」

佐場木「とんでもない暴論だな」

モノクマ「何さ何さ!内通者なんかいないって思えないオマエラの信頼関係とかがボロボロだってだけの話じゃない!」

赤穂「ぐっ……!」

さっきまでその事で雰囲気を悪くした俺はそれに何も言い返せない……

如月「内通者はいない……なるほど、ならば毒を作ろうとしたのはもう1人の黒幕ですか」

モノクマ「は!?」

佐場木「ふん、内通者がいない以上苗木のような裏で動く黒幕もしくは誰かが殺人を起こそうとして毒を作った事になる」

兵頭「後者の場合作れるのは本が読める津浦さんのみとなってしまいますね」

津浦「疑いは晴れたのではなかったんですか……」

赤穂「……待てよ、冷静に考えたらたとえ本が読めても、モノポイズンは作れないんじゃないか」

御影「えっ、なんで?」

そうだ、そもそもモノポイズンは作れない……

どうやっても不可能なんだ!
769 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 22:59:23.33 ID:TE2fWHVA0
【なかった物品】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「……如月さん、土橋が頼んだ品物の中になかった物があったんですよね?」

如月「はい。洗剤がなくなっていましたよ」

津浦「えっ?洗剤がなければモノポイズンは作れませんよ」

六山「材料がないなら物理的に無理だもんね」

御影「じゃあモノポイズンはそもそも使われてないって事なの?」

兵頭「ですが先ほど津浦さんがおっしゃった内容とモノポイズンの症状は一致するんでしたよね?」

津浦「は、はい」

道掛「じゃあいったいどうなってんだよ!」

遠見「……」

佐場木「とにかく話し合うぞ……内通者はいないとわかった以上確実に進んでいるんだ」
770 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/07/31(水) 23:08:14.90 ID:TE2fWHVA0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【土橋の死亡時の状況】
【こもってからの土橋】
【旧館からの外出】


兵頭「モノポイズンの材料が手に入らなかった……」

御影「【モノポイズンは使えなかった】って事になっちゃうんだけど……」

遠見「ふむ……」

津浦「しかし【症状は一致しています】……」

道掛「わかったぜ!【美姫ちゃんは直前に別の毒飲まされた】んだ!」
771 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:07:36.39 ID:3y8a328A0
【美姫ちゃんは直前に別の毒飲まされた】←【土橋の死亡時の状況】

赤穂「それは違ってるぞ!」


赤穂「いいや、それはない。土橋は直前まで俺と普通に話してたんだ」

赤穂「特に何も口にしてなかったしな……直前に毒を受けた可能性はまずないはずだ」

道掛「じゃあなんなんだよ!モノポイズンとかいうのは作れねえ!他の可能性もねえ!」

道掛「もうわけわかんねえ!いっそ苗木が化けて出たって言われても信じるぞ俺は!」

津浦「み、Mr.道掛、落ち着いてください」

赤穂「……」

苗木が化けて出た……

赤穂「そうかも、しれないな」

御影「えっ!?」

兵頭「とうとう気が……」

赤穂「もちろんあいつが幽霊になって土橋を殺したなんて言うつもりはない」

赤穂「だけど今回の事件にも、あいつの関与はあったはずだ」

六山「もう死んじゃった苗木くんが、どうやって関与するの?」

苗木の関与している証拠……
772 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:21:52.76 ID:3y8a328A0
【大量の洗剤】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「念のため苗木のコテージを見てきたんだ……そうしたら中に大量の洗剤があった」

如月「洗剤……それはやはりマーケットからなくなっていた?」

赤穂「はい」

遠見「つまり苗木殿はモノポイズンを作成していた可能性が高いでありますな……」

佐場木「先ほどモノクマはモノポイズンを自分の作った物だと明言した。つまり黒幕である苗木はモノポイズンの作り方を知っていたわけだ」

兵頭「洗剤という物的証拠があるなら津浦さんが作ったというよりは説得力がありますね」

津浦「ほっ……」

御影「じゃあどうやって作ったかは問題じゃないって事だ。だって苗木が作ってたんだから」

赤穂「そう……そしてその事からはっきりわかる事がある」

赤穂「今回の犯人はもう1人の黒幕だ!」

モノクマ「はい!?どうしてそうなるのさ!」

赤穂「モノポイズンは黒幕である苗木が作っていた……そして苗木はもういない」

赤穂「つまりモノポイズンを使えるのは苗木と共犯だったもう1人の黒幕以外あり得ないじゃないか!」

モノクマ「そんなの、こっそり持ち出せば済む事でしょうが!」

赤穂「それはない!だって……」

【被害者以外のコテージには入れない】
【クロ以外のコテージには入れない】
【誰のコテージにも入れない】
773 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:38:34.50 ID:3y8a328A0
【被害者以外のコテージには入れない】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「捜査中は被害者のコテージにしか入れない……そうだったよな牡丹」

御影「うん、モノクマははっきりそう言ってたよ」

赤穂「そしてそれ以外のタイミングはコテージの鍵がなくなった以上どうしようもない」

赤穂「ただ1人……このコロシアイを運営する黒幕以外はな!」

モノクマ「うぐぐ……」

遠見「おそらく美姫殿がモノポイズンの材料を如月殿に頼んだのは誰かに頼まれたからでありましょう」

佐場木「そうして毒の入手経路をあやふやにしようとしたわけか」

兵頭「……如月さんが洗剤がなかったと証言すればさらに混乱を招きますからね、道掛さんのように」

道掛「褒められたのか!?」

津浦「違います」

六山「苗木くんのコテージを調べた赤穂くんのファインプレーだね。でもどうして調べようと思ったの?」

赤穂「あいつは悪意に満ちた奴だったからな……なんとなく気になったんだ」

如月「彼ほどの悪は確かにいません……疑うのも無理はありませんね」

事実、あいつは関わっていた……苗木は死んだ後も俺達に牙をむいていたんだ。
774 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 21:49:50.95 ID:3y8a328A0
兵頭「さて……入手経路はわかったところで次の議論にいきましょうか」

佐場木「土橋がどうやって毒を盛られたかか」

如月「津浦さん、それについて何か手がかりは?」

津浦「いえ、このモノポイズンはあらゆる使い方が出来るらしく……せいぜい発症まで1時間前後という事ぐらいしか」

御影「1時間……ちょうど朝起きたくらいの時間だね」

道掛「よしわかった!美姫ちゃんは朝飯に毒を仕込まれたんだ!つまり犯人は」

兵頭「何か?」

道掛「千ちゃん笑顔なのに怖っ!?」

御影「それは多分ないよ」

そう、朝食に毒はなかったはずだ……
775 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:01:00.23 ID:3y8a328A0
【兵頭の証言】

赤穂「こいつだ!」


赤穂「土橋は自分の分の朝食を兵頭や牡丹にも食べさせてたらしいんだ」

御影「そうそう、鼻歌なんて歌ってたし……うん、本当に幸せそうだったのに」

兵頭「御影さん、涙は後に回しましょう」

御影「ん、わかってるよ」

遠見「それなら自分も見たでありますよ」

津浦「つまり朝食にモノポイズンが入っていたら……」

佐場木「今頃この学級裁判は7人で行っていたわけだ」

六山「怖い話だね……」

道掛「朝飯が違うのはわかったけどよ、じゃあ他に何かあんのか?他に美姫ちゃんが口に入れたのとかなくね?」

如月「毒の侵入経路……重要でしょうから慎重に議論しましょう」
776 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:07:17.09 ID:3y8a328A0
【ノンストップ議論開始!】

・コトダマ>>736
【傷薬】
【流しの傷薬】
【傷薬の瓶】


佐場木「モノポイズンをどうやって摂取したか……」

道掛「そうか!」

兵頭「黙っていてください道掛さん」

道掛「なんでだよ!?」

津浦「〔気体を吸引した〕可能性はないでしょうか」

如月「それならもっと被害が出ていたはずです」

御影「〔飲み物〕なら私達も手つけてないしあるんじゃない」

六山「あっ、わたしが間違って飲んだ……」

遠見「……〔塗った〕と、自分は考えるでありますよ」

毒の経路……それはきっとあれだ。
777 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:12:34.31 ID:3y8a328A0
〔塗った〕←【傷薬】

赤穂「それに賛成するぞ!」


赤穂「そうだ……土橋は毒を塗られたんだ!」

道掛「俺もそれ言おうとしてたんだよ!」

津浦「塗ったとは……あの傷薬ですか」

兵頭「他に土橋さんが塗られた物は浮かびませんね」

赤穂「そう、土橋がした頭の切り傷……あれを治療するための傷薬にモノポイズンは仕込まれていたんだ」


御影「それは違ってるよ!」反論!


御影「ちょっと待って兄さん!それはないよ!」

赤穂「牡丹?」

御影「少なくともあの傷薬に毒はなかった……」

御影「私は断言するよ!」
778 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:16:11.75 ID:3y8a328A0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【こもってからの土橋】
【傷薬の瓶】
【モノポイズン】


御影「あの傷薬に毒があったなんて絶対おかしい!」

御影「兄さんだってそれはわかるはずでしょ!」

赤穂「他に経路は考えられないんだ牡丹」

赤穂「モノポイズンは傷薬にあったとしか思えないんだよ」

御影「あの【傷薬は兄さんだって使ってた】じゃない!」

御影「だけど兄さんはこうして生きてる」

御影「それが傷薬に毒なんてなかったって証拠だよ!」
779 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:28:26.96 ID:3y8a328A0
【傷薬は兄さんだって使ってた】←【傷薬の瓶】

赤穂「その反論に正義はない!」


赤穂「違うんだ牡丹、あの傷薬は……俺が使ってた物じゃない」

御影「えっ」

道掛「どういうこった?」

赤穂「厨房に傷薬の瓶が捨てられてたんだ」

兵頭「傷薬の瓶、ですか?」

赤穂「そうだ。犯人はモノポイズンの入った傷薬と俺が使っていた傷薬を入れ換えたんだよ!」

津浦「な、なぜそんな事を……」

赤穂「遠見の推測が正しいなら、俺を殺すためだろうな」

遠見「……」

如月「赤穂さんは腹部の負傷に傷薬を使っていましたからね……もし何も起こらずにそのまま使っていたら」

津浦「Mr.赤穂が、被害者になっていた……」

赤穂「……」

土橋は……俺を殺そうとした罠にかかって殺された。

くそっ、気分が悪い!

もし俺が早起きして塗っていたらそれだけで土橋は……………………



赤穂「……は?」

ちょっと、待てよ。

赤穂「モノ、クマ」

聞かないといけない。

モノクマ「何さ赤穂クン!また言いがかりつけたらただじゃおかないよ!」

赤穂「1つ、聞きたいんだ」
780 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:29:10.39 ID:3y8a328A0






赤穂「俺が傷薬塗って死んでたら、クロは誰になる?」






781 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:30:42.36 ID:3y8a328A0






モノクマ「そんなの赤穂クンに決まってるじゃない!毒を用意しただけでクロになるわけないでしょ!」






782 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:34:44.06 ID:3y8a328A0
赤穂「…………」

最悪だ。

御影「兄さん?」

道掛「おいおい、顔が真っ白だぞ!?」

俺は今まで、毒を用意した奴がクロだと思っていた。

六山「えっと、どうしたの」

津浦「今の質問の意図はいったい……」

兵頭「……まさか」

だから議論をしてきたんだ。

佐場木「…………」

如月「……やはり、そうなりますか」

だけど、これは……

モノクマの言葉が、正しいならこの事件の、クロは……!
783 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:35:27.72 ID:3y8a328A0






「――やっと、わかってくれたでありますか」






784 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:39:03.53 ID:3y8a328A0
弾かれたように声の方を向く。

俺が見た彼女の顔は、落ち着いていた。

まるで、最初からこうなるのをわかっていたかのように。

赤穂「なんで、そんな穏やかなんだよ」

まさかわかってたのか?

それなのに毒を【塗った】なんて言ったのか?

赤穂「わかってるのか?今のモノクマの言葉を考えたら、今回のクロは……」

「もちろん、理解しているでありますよ……最初から」
785 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:39:45.14 ID:3y8a328A0






遠見「美姫殿を殺したのは、自分であります」






786 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:49:21.01 ID:3y8a328A0
道掛「は?はあ!?」

兵頭「遠見さん、あなたは……」

遠見「いや、さすがでありますな!自分もあえて黙って全員の成長に一役買ったかいがあるであります!」

御影「何、言ってるの……?」

遠見「モノポイズンが仕掛けられていたのは傷薬。赤穂殿が塗っていたなら薬を塗った赤穂殿がクロとなる」

遠見「つまり、今回は美姫殿に薬を塗った自分がクロとなる……それだけでありますよ」

津浦「Ms.遠見……最初からという事は、あなたはそれをわかった上で混乱を静めたんですか!?」

遠見「もちろんであります。だって自分は、ここにいる誰も犠牲になんてするつもりはないでありますから」

六山「怖く、なかったの……?」

遠見「軍人でありますから!」

如月「……残念です遠見さん」

遠見「……ありがとうであります」

赤穂「遠、見」

遠見「さあそろそろ投票タイムといくでありますよ。もう議論は――」
787 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:50:46.23 ID:3y8a328A0






佐場木「黙れ……!」






788 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 22:55:13.90 ID:3y8a328A0
遠見「佐場木殿……?」

佐場木「自分が犯人?下らん話をするならその口を閉じていろ」

赤穂「佐場木、だけど」

佐場木「前にも言ったはずだ赤穂」

佐場木「貴様だけで勝手に進めるのはやめろとな……!」

佐場木「遠見をクロとするなら俺が提示する疑問全てに答えを出してみろ!」

佐場木「それが出来ない限り、判決など下させるものか」

佐場木「絶対に、下させるものか!!」


佐場木「その推理を棄却する!」反論!
789 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:01:35.80 ID:3y8a328A0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【こもってからの土橋】
【流しの傷薬】
【土橋の吐瀉物】


佐場木「まずは傷薬の件だ」

佐場木「貴様は傷薬にモノポイズンが仕掛けられ、自分の物と入れ換えられていたと言ったな?」

赤穂「ああ、そうだ」

赤穂「モノポイズンを用意した……多分黒幕は傷薬にそれを入れて交換したんだ」


佐場木「語るに落ちたな赤穂!」

佐場木「あの傷薬は大量に消費されていた!」

佐場木「つまり【他にもあの傷薬を使用した人間がいる】という事!」

佐場木「ならばなぜ土橋だけが死んだ?」

佐場木「それはあの傷薬にモノポイズンなど入っていなかったからだ!」
790 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:06:43.07 ID:3y8a328A0
【他にもあの傷薬を使用した人間がいる】←【流しの傷薬】

赤穂「その反論に……!」


赤穂「傷薬は瓶だけじゃない、中身も捨てられていたんだ」

赤穂「流しにその痕跡がしっかり残っていたんだよ佐場木!」

佐場木「……ちいっ!」

赤穂「これで、もう」

佐場木「まだだ、まだ疑問はある!」


佐場木「その判決を不服とし、控訴する!」反論!
791 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:13:40.16 ID:3y8a328A0
【反論ショーダウン開始!】

・コトノハ>>736
【土橋の吐瀉物】
【こもってからの土橋】


佐場木「そもそもモノポイズンは本当に使われていたのか?」

佐場木「腕の痕が傷である可能性は完全に否定されていない!」

佐場木「他の死因、他の毒、まだ議論の余地はある!」

赤穂「今さらそれを言うのか!?」

赤穂「モノポイズンの特徴と土橋の状況は完全に一致する!」

赤穂「もう認めてくれ佐場木!」

佐場木「認めるのは貴様だ赤穂!」

佐場木「【腕の痕のみが特徴】なら……」

佐場木「いくらでも説明はつけられる!」
792 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:18:01.25 ID:3y8a328A0
【腕の痕のみを特徴】←【土橋の吐瀉物】

赤穂「……!」


赤穂「土橋の吐いた物の中に血が混ざっていた!」

赤穂「この少しの血もモノポイズンの特徴なんだ!」

赤穂「モノポイズンが土橋を殺した毒という事に議論の余地はない!」

佐場木「ぐうっ!?」

赤穂「頼む、もうやめてくれ佐場木!」

赤穂「お前だってもうわかっているはずだ……」

赤穂「この事件の真実に!」

佐場木「…………まだだ」

赤穂「佐場木……!」

佐場木「まだ俺の反論は終わっていないぞ赤穂政城!」

佐場木「上告だ!これで最後にしてやる……赤穂!!」
793 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:23:45.35 ID:3y8a328A0
【パニックトークアクション開始!】

佐場木「赤穂が塗った場合赤穂は犯人となるた!」

佐場木「しかしそれが今回も適用されるとは限らん!」

佐場木「いいや!モノクマがわざわざ言及したからには違うと疑うべきだ!」

佐場木「今回の事件のクロはモノポイズンの作成者……!」

佐場木【苗木誠以外にいはしない!】



     禁止の

複数の        殺害

     ルール
794 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:29:55.83 ID:3y8a328A0
【複数の殺害禁止のルール】

赤穂「もう、終わらせよう……!」


赤穂「苗木が犯人なら、苗木は2人以上の殺害禁止のルールを破った事になる」

赤穂「モノクマ、その場合はどうなるんだ?」

モノクマ「もちろん違反として知らせるよ!学級裁判も開きません!」

赤穂「……これが答えなんだ佐場木」

佐場木「こんな判決、こんな判決など……!」

佐場木「ぐうっ!うああああああっ!!」ダンッ!!

遠見「……佐場木、殿」

赤穂「…………」
795 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:39:26.78 ID:3y8a328A0
【クライマックス推理開始!】

ACT.1
今回の事件は……あまりにも残酷なものだった。
被害者もクロも……本来とは違ったんだからな。

ACT.2
今回裏で動いていた黒幕は、何を狙っていたか俺を殺そうとしていた。
そのためにいもしない内通者関連の動機を出し、俺達を一ヶ所に固めさせたんだ。

ACT.3
黒幕は俺の杖と薬に細工すると、何事もなかったかのように過ごした。
罠とモノポイズン……どちらにかかって俺が死んでもいいようにな。
だけど……そううまくはいかなかった。

ACT.4
多分俺の杖の異変に気付いた土橋が罠のある倉庫に行ってしまったんだよ。
そして土橋は罠にかかり、怪我をした……この時の切り傷が土橋の運命を決めてしまったんだ。

ACT.5
そして土橋の治療のために今回犯人となってしまった人物は傷薬を使った。
モノポイズンの入った、傷薬を……何も知らずに。

赤穂「黒幕の企みは失敗した、俺は今も生きてる」

赤穂「土橋と遠見……2人を犠牲にして……」

遠見「……」

COMPLETE!
796 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:40:53.22 ID:3y8a328A0
モノクマ「議論の結論が出たみたいだね!」

モノクマ「それでは投票タイムとまいりましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票をお願いします!」

モノクマ「オマエラの答えが正解?それとも不正解?」

モノクマ「運命はどっちだー!!」

         VOTE

      遠見 遠見 遠見

       チャッチャッチャー!


     【学級裁判閉廷!】
797 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/01(木) 23:42:59.87 ID:3y8a328A0
今回はここまで。

次回おしおきと四章完結です。

それでは、また……
798 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:19:02.18 ID:5gNy0aTA0
モノクマ「だいせーいかーい!」

モノクマ「今回土橋美姫さんを殺したクロは……」

モノクマ「遠見メメさんでしたー!」

遠見「……よかった、ちゃんと正解でありますね」

赤穂「……ぐっ、くっ」

なんだよこれは……!

俺はこんな、こんな結末を望んでたんじゃない……!

俺は、ただ……!

モノクマ「だけど全員正解ではなかったね!」

津浦「えっ?」

モノクマ「佐場木クン、ダメじゃない!裁判官のキミが間違えるなんて!」

佐場木「……」

道掛「さ、佐場木……」

佐場木は、最後まで認めなかったのか……

佐場木「……だ」

モノクマ「はい?なんか言った?」

佐場木「この判決は不当だ!今すぐ裁判のやり直しを要求する!」

モノクマ「えー?なんでそうなるの?」

佐場木「なんでだと!?この事件、遠見に土橋を殺す意思はなかった!毒を作った苗木、もしくはそれを仕掛けた貴様こそこの事件のクロとして裁かれるべき存在だ!」

如月「……」

佐場木「こんな判決、認めてたまるか!こんなふざけた……!」

佐場木の言葉は、ある意味俺達の言葉でもあった。

だけどそれを口に出せるはずもない。

佐場木と違って俺達は……遠見を差し出してしまったんだから。
799 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:24:43.04 ID:5gNy0aTA0
遠見「佐場木殿!もういいでありますよ!」

佐場木「お前はこんな結果でいいのか!?お前は土橋を殺したかったわけでも毒の存在を知っていたわけでもない!それなのに……」

遠見「自分は軍人……戦場で死ぬ覚悟は常に出来ているであります」

佐場木「ここは戦場ではない!」

遠見「戦場でありますよ。これはモノクマと自分達の……戦争であります」

遠見は笑っている。

なんでだ、いくら軍人だからって……

御影「なんで……そこまで言えるの?」

遠見「……そうでありますね。モノクマ、少し昔話をしてもいいでありますか?」

モノクマ「お好きにどうぞ!うぷぷ、今は遠見さんが喋るだけで他の皆にダメージいきそうだし!」

遠見「……理由はともかく、許可は出たでありますか」

遠見は俺達の顔を見渡して、微笑むと口を開いた。
800 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:35:25.09 ID:5gNy0aTA0
何人かには話したのでありますが、自分は戦災孤児でありました。

実のところ、自分は日本人ではないのであります……遠い血には混じっているみたいでありますが。

そんな自分は元々奴隷としていつか売られる運命の子供でありました。

名前は1番という番号、最年長だった事から同じように売られ、捨てられ、連れ去られた子供達のまとめ役をしていたのであります。

地獄でありました……病気や虐待で次々と死んでいく子供達。

それを見ながら、今日も生き延びられたと安堵し、そんな自分を嫌悪し……本当に最低最悪でありましたよ。

そしてとうとう自分ともう1人しかいないという状況で……自分は希望を、見たのであります。

「生きてるか」

「……あなた、誰」

「……」ガタガタ

「自分は」



切原「切原生人。傭兵だ」
801 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 21:44:57.95 ID:5gNy0aTA0
隊長殿に救われた自分達は安全な場所まで共に過ごす事になったであります。

部隊の皆はとても優しくて、自分達を人間として扱ってくれて……

切原「名前はないのか」

「……はい」

「……」コクッ

切原「……なら自分が名前を贈ろう。そのままでも不便だろう」

「……!」

切原「……遠見、遠見メメ。それがお前の名前だ」

遠見「遠見……メメ……」

切原「お前はいい瞳をしている。これからはその目で遠く広い世界を見渡していけ」

遠見「……」

「……」クイクイッ

切原「ああ、お前にも贈らなくてはな……」

隊長殿はきっと、たいしたことをしたとは思っていないであります。

しかし、自分達にとって……この名前という贈り物がどれだけ希望となったか。

そして決めたのであります……隊長殿のように、自分も誰かに何かを贈れる存在でありたいと。

元々死んでいたはずの命、今という奇跡のような時間。

だから自分は、いつ死んでもそれを悲観も絶望もしないであります。

だって。

どんな時でも遠見メメの人生は幸福であったと、胸を張って言えるのでありますから。
802 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:01:06.47 ID:5gNy0aTA0
遠見「だからそんな顔をしないでほしいでありますよ」

津浦「Ms.遠見……」

遠見「ここに来てからは、役に立てていなかったでありますが……それでもこんな自分を信頼してくださった人もいたであります!」

佐場木「……」

遠見「そして今回他の方がクロにならずに済んだ、それだけは救いであります」

道掛「ち、ちくしょう、メメちゃん……!」

遠見「……佐場木殿」

遠見が自分の髪を結う2本のリボンを佐場木に渡す。

遠見「1本は妹に、渡してほしいであります」

佐場木「……もう1本は」

遠見「あなたに、持っていてほしいであります上官殿」

佐場木「……はっ、こんな役立たずの上官にか」

遠見「自分を信頼してくださっただけで充分でありますよ!」

佐場木「……お前だけは、絶対に黒幕側ではないとわかっていたからな」

遠見「ずっと気になっていたのでありますが……なぜそこまで自分を信頼してくださったのでありますか?」

佐場木「覚えてないか……お前は昔、俺の命を救ってるんだよ」

遠見「えっ…………マジでありますか?」

佐場木「…………マジだ」

遠見「ぷっ、あははは!まさかそんな巡り合わせがあったとは!本当に世の中は不思議でありますなぁ!」

遠見は笑う、これで心残りはなくなったと言わんばかりに。

そんな彼女に、何も言ってやれない……そんな自分に腹が立った。
803 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:09:25.73 ID:5gNy0aTA0
モノクマ「そろそろいいかな?なんか遠見さん、覚悟決まりすぎてつまんないし!」

遠見「全く、泣き叫ぶなど自分がするわけないでありましょうに」

遠見はモノクマに対峙するように歩いていく。

如月「……遠見さん、1つお願いが」

遠見「……わかったであります。自分もそうするつもりでありましたから」

なんだ?

今、如月さんと遠見が何か……

モノクマ「さてさて、それではおしおきといきましょう!」

遠見「……」

モノクマ「今回は【超高校級の観測手】である遠見メメさんに!スペシャルなおしおきを用意しました!」

遠見「……ふー」

モノクマ「それでは張り切ってまいりましょう!」

遠見「最後に1つ」

モノクマ「おしおきターイム!」
804 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:10:04.91 ID:5gNy0aTA0






       GAME OVER

  トオミさんがクロにきまりました。

    おしおきをかい―――――






805 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:10:37.18 ID:5gNy0aTA0






パァン!!






806 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:18:20.78 ID:5gNy0aTA0
赤穂「は?」

銃声、そして機械が落ちる音。

兵頭「遠見さん!?」

遠見「……ふむ、強度はたいしたことないでありますね」

銃を手の中で回しながら、遠見が呟く。

佐場木「お前、何を」

道掛「そ、そうだぜ!モノクマを撃ったりなんかしたら!」

そう、遠見はスイッチを押そうとしたモノクマを撃って、破壊したんだ。

そんな普通ならあり得ない事を。

遠見「どちらにしても処刑されるなら変わらないでありましょう?」

六山「だ、だからって……」

遠見は、やってのけた。

モノクマ「ちょっと遠見さん!どういうつもりさ!スペアがあるからいいけど!」

遠見「最後に1つと言ったでありましょう」

御影「遠見、いったい何をするつもりなの……」

遠見「では改めてモノクマ」

モノクマ「……」

遠見「あんまり自分を舐めるな、この×××野郎」

そう吐き捨てて遠見は……学級裁判場を飛び出した。
807 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:30:23.88 ID:5gNy0aTA0
【緊急事態発生】

【緊急事態発生】

学級裁判場を飛び出した遠見さんはモニターに映る警告をよそに走り出します。

向かう先は……モノクマ量産工場。

あっという間にそこにたどり着いた遠見さんは……笑って自爆スイッチに腕を叩きつけました。

【#/.\+%[<】

【超高。`級の観$ー手,'見メ@|刑執<+】

量産工場が爆発すると同時に量産されていたモノクマ達がぞろぞろと現れます。

その内の1体を銃で撃ち抜くと……遠見さんは再び走り出しました。


射撃練習場に飛び込んだ遠見さんがマシンガンや手榴弾を装備して、再び出てきます。

そこからモノクマと遠見さんの……戦争が始まりました。

※※※※
808 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:34:45.09 ID:5gNy0aTA0
【学級裁判場】

モノクマ「ちょっ、ちょっ!?」

モニターの向こうでは今までの処刑とはまるで違う光景が繰り広げられていた。

遠見が群がるモノクマを次々に蹴散らしていっている。

爪や爆発で所々傷が増えてもまるで気にせずに、むしろ力強さが増していくように。

例えるなら、1つの芸術みたいに遠見は鮮やかにモノクマを確実に破壊していた。

赤穂「遠見……」

それをただ見ている事しか出来ない俺達……くそっ、何か出来る事はないのか!?

御影「あっ!?」

道掛「メメちゃん!」

モニターの向こうで遠見が髪を掴まれて動きを抑えられる。

痛みに顔を歪める遠見に向けられるモノクマの爪……終わり、なのか。
809 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:35:24.46 ID:5gNy0aTA0






佐場木「諦めるな!!」






810 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:36:40.86 ID:5gNy0aTA0
津浦「Mr.佐場木……!?」

まるで佐場木の声が聞こえたみたいに遠見がナイフで自分の髪を切り落とす。

そして髪を散らしながら、遠見は再びモノクマの大群に向かっていった。

赤穂「佐場木……」

佐場木「死ぬな!お前にはまだまだ俺の手伝いをしてもらわなければならん!」

御影「っ、そうだよ遠見!モノクマなんかに負けないでよ!」

道掛「頑張れメメちゃん!!負けんなぁ!!」

六山「遠見さん、ゲームオーバーにはまだ早いよ……!」

兵頭「こんな投票、私も認めたくない……遠見さん!」

如月「…………」グッ

赤穂「……遠見!死なないでくれ、生きてくれ!!」

俺達の声が遠見に届いてるかはわからない。

だけど俺達は声をあげずにはいられなかった。


※※※※
811 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:43:10.53 ID:5gNy0aTA0
銃弾を、爪を、地雷を、爆撃を、遠見さんは最小限の傷に抑えながらモノクマに立ち向かっていきます。

戦車の下に滑り込み爆弾で爆破し、戦闘用ヘリを奪うとわざと墜落させモノクマを巻き込み、群がるモノクマ達をマシンガンで次々に破壊して……

そして銃撃の音が止んだ時……そこにいたのは満身創痍の遠見さんとモノクマ達の残骸。

遠見さんが大きく息を吐いてカメラを見ます。

向こうにいる仲間達に笑いかけた彼女が表情を変えて少し動くのと同時に……


遠見さんの脇腹が撃ち抜かれました。


血を撒き散らしながら転がる遠見さんが見る方向にはスナイパーライフルを構えたモノクマ。

遠見さんは流れ出す血とモノクマを交互に見て……意を決したように再び走ります。

そして……

最後のモノクマをバラバラにした遠見さんが血を流しながら歩いています。

そして木に寄りかかった遠見さんは笑みを浮かべるとゆっくりと目を閉じて……


そのまま、動かなくなりました。
812 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:50:03.22 ID:5gNy0aTA0
赤穂「遠見……!」

遠見はもう動かない……彼女の命はここで燃え尽きてしまったんだ。

だけど遠見はただでは死ななかった。

モノクマ「嘘でしょ!?まさかスペア全部破壊されるなんて……!」

そう、モノクマが大量に用意していたスペア。

それを道連れに、遠見は死んでいった。

モノクマ「うぎぎ、遠見さんも酷い悪足掻きしてくれたよ!だけど――」


如月「終わりですね」


それはまるで最初の船で見た出来事の再現だった。

如月さんの拳がモノクマを貫いたんだ。

道掛「お、おい如月!そんな事したら……!」

だけどそれが意味するのは、悪夢。

如月さんがルール違反したら、本人以外の誰かが処罰される。

でもいくら待っても……その時は来なかった。

津浦「な、何も起きません、ね」

兵頭「ああ……だから遠見さんは」

御影「どういう事?」

佐場木「……モノクマのスペアと工場は遠見が破壊した」

六山「そっか、つまり今のが最後のモノクマ……もうルール違反してもそれを咎める存在がいない!」

赤穂「じゃあ、遠見はもしかしてそのために!?」

ふと思い出す……さっき如月さんと遠見が話していた事を。

如月『遠見さん、1つお願いが……』

遠見『……わかったであります。自分もそうするつもりでありましたから』

あれはこの時のための……
813 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:53:02.21 ID:5gNy0aTA0
如月「遠見さんにはモノクマのスペアと工場を破壊してほしいと頼みました」

赤穂「如月さん……」

如月「そして僕が最後の詰めを行う。このコロシアイを終わらせるために」

如月さんは拳を握りしめる。

そこにあったのは、後悔の色。

如月「僕が手助けに入れれば……遠見さんは死なずに済んだ。万が一を考えてそれを行えなかった事だけが、無念です」

佐場木「遠見も納得しての作戦だろう。そしてあいつは……それを果たした」

佐場木は遠見に託されたリボンを見つめると、それを手首に結ぶ。

今佐場木が何を考えているかは俺にはわからないけど……その顔に絶望の色なんてない。

佐場木「黒幕もモノクマなしではコロシアイをまともに運営出来んだろう。後は脱出に向けての戦い……お前達にも手伝ってもらうぞ」

道掛「当たり前だろ!」

津浦「はい……!」

兵頭「ふふっ、今までと変わりません」

六山「クリアまで後少しだね……」

御影「もうこれ以上コロシアイは起きないんだ……」

如月「……全力を尽くします」

赤穂「ああ、もう誰1人死なずに脱出しよう!」

決意を新たにした、俺達。

もう俺達は負けたりなんか――
814 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:56:23.92 ID:5gNy0aTA0






ゾクッ!






815 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:58:27.46 ID:5gNy0aTA0
赤穂「っ!?」

な、なんだ、この寒気……

思わず辺りを見回す俺は……はっきりと見た。

牡丹の足下の床が、微妙に動くのを。

赤穂「……!」

ま、まさか!まさかまさかまさかまさか!!

逃げろって叫ぶ……駄目だ間に合わない!

如月さんに……これも駄目だ、間に合わない!

このままじゃ牡丹は……

赤穂「っ」

牡丹が死ぬ、血の海に沈む牡丹のイメージが脳裏に浮かぶ。

そんなの、させて、たまるか!

赤穂「あああああああっ!!」

叫んで牡丹に向かって腕を伸ばす。

普通なら無理だろうけど、俺には……これがある!

御影「痛っ!?」

伸ばした杖に突かれる形で牡丹がその場から押し出される。

そして、俺は。

俺は――
816 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 22:59:44.59 ID:5gNy0aTA0
※※※※

御影「痛っ!?」

いきなり突き飛ばされて尻餅をつく。

お腹痛い……というか、これ手とかじゃない……兄さんの杖じゃない!?

御影「ちょっと兄さん、何する――」

いくら兄さんでもこれは許せない、そう思って文句を言おうとした私が顔を上げると。
817 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:00:25.05 ID:5gNy0aTA0






赤穂「は、はは……」

身体中を、槍に貫かれた、兄さんが、いた。






818 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:02:33.96 ID:5gNy0aTA0
赤穂「ごぼっ……!?」

津浦「ひっ!?」

道掛「あ、赤穂……?」

御影「え……?」

赤穂「っ、あ、が……」

血を吐いた兄さんがそのまま血だまりに崩れ落ちる。

えっ、なにこれ……なんで、兄さん、えっ?

如月「こ、これはいったい……っ、まさか!?」

如月が私の後ろを見て目を見開く。

つられて後ろを振り返ると……あいつが、いた。



モノクマ「アーハッハッハッハッハ!!」

いちゃ、いけないはずのモノクマが……笑って、いた。
819 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:05:37.79 ID:5gNy0aTA0
兵頭「モノクマ、なぜ……スペアも工場も遠見さんが確かに!」

モノクマ「うん、確かに壊されちゃったよ。正直焦ったね!」

道掛「だったらてめえがなんでいるんだよ!?」

モノクマ「うぷぷ、あのさぁ……こういう時工場が1つしかないなんて誰が決めたの?」

六山「工場にも、スペアがあったの……?」

モノクマ「そのとーり!つまり、オマエラが頑張って応援してた遠見さんのしてた事は……最初っからなんの意味もありませんでしたー!」

佐場木「そんな馬鹿な……!」

モノクマ「そして如月クン!さっきキミ、ボクを壊したよね?」

如月「……!」

モノクマ「その連帯責任として、御影さんをおしおきするつもりだったんだけど……さすがお兄さん!赤穂クンが庇ってくれたよ!」

赤穂「っ……最初っ、から……そのつもりで……げほっ!」

私を、庇って……

私の、せいで……?

御影「兄さん、兄さん!」

倒れた兄さんの側に膝をつくと身体からどんどん溢れる血で、私の脚が濡れていく。

それを見て素人の私にもわかる、わかっちゃう。

もう、どうしようも、ない……

兄さんは、助からない。
820 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:10:06.25 ID:5gNy0aTA0
御影「兄さん!兄さん!」

嫌だ、やだやだやだ!

何か、何かあるはず、兄さんの助かる方法、ああ、まず血を止めなきゃ、どこから止めればいいの、ああ傷薬、持ってない、違うまずは病院――

赤穂「……牡、丹。怪我はない、か?」

御影「私は無事!それより兄さんが……!」

赤穂「そう、か……ごめんな、杖で突き飛ばして、さ」

御影「そんな事どうでもいいよ!早く、早く治療……」

赤穂「牡丹」

兄さんの手が私の頬を撫でる。

ああ、なんで?

なんであんな暖かった兄さんの手がこんなに冷たいの……

赤穂「――守れて、よかった。お前は、生きて、くれ……そして、幸せになって…………」

その言葉を最期に残して……私の頬を撫でた兄さんの腕が、血だまりに落ちた。

御影「あっ、ああ……」

兄さんが動かない、兄さんが目を開けない、兄さんが喋らない、兄さん兄さん兄さん兄さん……



兄さんが、死んじゃった。

御影「いや、いやあああああっ!!」
821 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:11:41.68 ID:5gNy0aTA0
道掛「う、嘘だろ……なあ、嘘だろ赤穂!!」

佐場木「こんな馬鹿なっ……!」

津浦「あっ、やっ、こんなの……」

兵頭「っ……最初から、私達は手のひらの上で……!」

六山「あんまりだよ、酷すぎるよ……」

如月「…………」

モノクマ「うぷぷ、いいねぇ!希望から一転絶望に叩き落とされた瞬間はやっぱり最高だよ!」

佐場木「黙れ!!」

モノクマ「嫌でーす!まだ本番はこれからだよ……ねぇ、如月クン」

如月「……!」

モノクマ「ちょっとね、1つ聞きたいんだけど……」
822 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:12:56.80 ID:5gNy0aTA0






モノクマ「キミ赤穂クン助けられたのに、どうして助けなかったの?」






823 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:22:05.57 ID:5gNy0aTA0
如月「……は?」

モノクマ「まさか出来ないとは言わないよねぇ?戦車相手にできた癖にあの槍には反応出来ませんでしたは通らないよ!」

兵頭「何を、言って」

モノクマ「うぷぷ、当ててあげようか?キミが赤穂クン助けなかった理由」

如月「何を、ふざけた」


モノクマ「キミ、妹が生きてる赤穂クンを殺したいほどに嫉妬してたでしょ?」


津浦「し、嫉妬?」

道掛「どういう事だよ!!」

モノクマ「如月クン、キミ御影さんと同じ才能の妹さんがいたよね?」

佐場木「同じだと……」

モノクマ「だけどその妹さんはもういない!死んでしまってる!」

モノクマ「だからさ……妹が生きてていつも仲睦まじい赤穂クンが羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて羨ましくて」

モノクマ「死ねばいいって思ったんでしょ?」

如月「…………」

御影「……そう、なの?」

如月「……ぁ」

如月「……あああああアアアアアアアアアアアッ!!?」
824 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:24:45.29 ID:5gNy0aTA0
佐場木「如月!?」

如月「ち、違います、僕は正、正義を……」

モノクマ「正義ぃ?赤穂クンを殺すのがキミの正義なわけ?」

如月「違う!!僕は!」

モノクマ「本当さぁ、何が正義の執行だよ!何がヒーローだよ!結局キミは嫉妬でキミに憧れてた赤穂クンを見殺しにするようなただの人殺しでしかないんだよ!!」

如月「違、僕は、僕は……」

モノクマ「キミが何を言おうがね、事実は1つだけなの」

モノクマ「赤穂政城クンを殺したのはキミだよ殺人鬼如月怜輝!」

如月「違っ、違う、僕は、僕は……あっ、あああっ、うわあああああっ!!」
825 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:27:22.30 ID:5gNy0aTA0
※※※※

佐場木「如月!」

兵頭「如月さん!」

走って逃げていく如月怜輝……そこにはもう、ヒーローとしての彼はいない。

御影「兄、さん……」

道掛「牡丹ちゃん!」

六山「ど、どうするのこれ……」

津浦「もう、どうしようも……」

耐えきれなくなって兄の血に向かって倒れた御影牡丹の心にもう希望の灯はない。

先ほどまでの希望なんてもう消えてしまった。

絶望をひっくり返したはずのこの裁判を終えた面々に叩きつけられたのは……最大級の絶望。

ああ。

本当に。

最高の結末だ。
826 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:29:30.41 ID:5gNy0aTA0






CHAPT.4【そして希望は捨てられた】END

生き残りメンバー9→7人

To be continued...






827 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:32:06.46 ID:5gNy0aTA0






【渡せなかった贈り物】を手に入れました!

【撃ち尽くした銃】を手に入れました!

【壊れかけの杖】を手に入れました!






828 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/02(金) 23:33:57.76 ID:5gNy0aTA0
CHAPT.4終了です。

CHAPT.5は新しくスレを立てて始めたいと思います。

それではまた……
829 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:41:34.79 ID:13NMDd5A0
新スレを立てる前に色々書いていきたいと思います。
まずは被害者達のおしおきから。
830 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:42:10.99 ID:13NMDd5A0
【絶望交響曲〜指揮静音凪〜】

【超高校級の指揮者静音凪処刑執行】

縛られた静音さんの前にやってきたモノクマ。

ステージにクラシックがかかり、モノクマは演奏を始めますが……それはあまりにヘタクソなもの。

不協和音に涙すら浮かべる静音さん……しかしその演奏は長く続きません。

あまりの扱いに怒った楽器達がモノクマを吹き飛ばし、指揮者である静音さんに襲いかかったのです。

弦楽器達が弦で静音さんの首を絞めて、打楽器達が棒を持って静音さんの頭や身体を滅多うちにして、管楽器達が大音量で静音さんの鼓膜を破壊して。

そして最後は静音さんの手から落ちたタクトが浮かび上がり……

静音さんの首を貫きました。

静まり返るステージに響く静音さんの喉からこぼれる空気の音。

それも次第に弱まり……最期には何も聴こえなくなりました。
831 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:44:05.39 ID:13NMDd5A0
【罪人来たりて笛を吹く】

【超高校級のフルート奏者四方院奏処刑執行】

動きを固定された四方院さんの口にフルートがあてがわれます。

そして彼女の意思とは関係なしにフルートの演奏会が始まりました。

素晴らしい音を奏でていく四方院さん……その演奏はまさに息つく暇もありません。

そう、文字通り四方院さんは一切呼吸せず、演奏させられているのです。

口にどんどん押し付けられていくフルート、鼻も塞いでしまう腕、どんどん青く赤くなっていく四方院さんの顔。

そして完全に呼吸出来なくなった四方院さんはもがく事すら出来ず、動きが鈍くなっていき……最後に気の抜けたような小さな音を出して、ぐったりと力尽きます。

モノクマ達は窒息死した四方院さんを工場に運んでいくと機械に投げ入れました。

そして出来上がったのは1本のフルート。

真っ赤な真っ赤な大きなフルートでした。
832 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:45:08.28 ID:13NMDd5A0
【無能の驕り】

【鞍馬類処刑執行】

鞍馬クンが薬の瓶を持って処刑場に現れます。

そして次々に出てくる処刑マシンを一瞥すると、薬を口に放り込みました。

身体能力を強化した鞍馬クンは、処刑マシンの攻撃を避けると逆に蹴りで機械を破壊します。

機械を操作するモノクマも慌てながら次々と攻撃を仕掛けますが、鞍馬クンには全く通用せず。

数分も経つ頃には処刑場は機械の残骸だらけとなり、中心には無傷の鞍馬クンが立っています。

怒ったモノクマは新しく機械を投入しますが、何回やっても結果は同じ。

鞍馬クンは一定時間が経つ毎に薬を飲み、機械を破壊し、薬を飲み、機械を破壊し……

しかしとうとう終わりが訪れます。

鞍馬クンの薬が、尽きてしまったのです。

その時初めて焦りを顔に浮かべた鞍馬クンの前にモノクマが現れます。

機械が尽きたのはモノクマも同じ……正真正銘最後の決戦。

モノクマ相手ならまだなんとかなると判断した鞍馬クンが構えると同時に。

モノクマが撃った銃弾が鞍馬クンの心臓を貫きました。

薬がなきゃ何も出来ない癖に何を勘違いしてたのかな、うぷぷ。
833 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:45:57.85 ID:13NMDd5A0
【道化の笑みは歪んで消える】

【超高校級の道化師ジェニー・クラヴィッツ処刑執行】

腕を縛られたジェニーさんが高い崖に連れていかれます。

崖には長いロープがかかっており、モノクマがこの綱を渡れと指示してきました。

ジェニーさんはしばらく戸惑っていましたが、意を決したように綱に向かって1歩足を踏み出します。

腕を縛られたままとはいえ、超高校級の道化師の名に恥じない彼女のバランス感覚。

綱の上とは思えないほど軽やかに進み、とうとう綱の真ん中までやってきたジェニーさんが気に入らないのかモノクマが綱を持ってガンガン揺らし始めました。

さすがにこれはキツかったのか、ジェニーさんがバランスを崩してしまいます。

そして綱が首に引っ掛かったジェニーさん。

モノクマはそれに構わずさらに綱を揺らし、ジェニーさんの首にどんどん負荷がかかっていきます。

苦しそうなジェニーさんですが落ちないためには首で綱にしがみつくしかなく……そして。

首吊り状態だったジェニーさんがとうとう力尽きて綱から落ちていきます。

崖の底に落ちていったジェニーさんの姿が見えなくなると同時に何かが潰れるような音がして。

誰もいなくなったその場で綱だけが風で寂しそうに揺れていました。
834 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:47:09.93 ID:13NMDd5A0
【解体工事】

【超高校級の土木作業員土橋美姫処刑執行】

土橋さんが大きな穴に横たわっています。

そこに現れたモノクマが持ってきたのは大きなコンクリートミキサー車。

土橋さんはそれを見てこれから何が起きるのか察し、穴から逃げ出そうとします。

そんな土橋さんを笑いながら、モノクマはコンクリートを流し込み始めました。

どんどん穴を満たすコンクリート、土橋さんは泣き叫んで逃げようとしますがあっという間に脚が沈み、逃げられなくなってしまいます。

コンクリートで固められていく土橋さんの身体……そして涙を流す土橋さんの頭をコンクリートが飲み込んでいきました。

固まったコンクリートを見て満足そうなモノクマがポロリとダイナマイトを落とします。

火がついていたダイナマイトはコンクリートの上を転がり、爆発してコンクリートを粉々に砕きました。

コンクリートに混じって降り注ぐ赤いなにかを傘で弾きながらモノクマは立ち去っていきました。
835 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 21:55:01.12 ID:13NMDd5A0
赤穂は本編終わってからやります。
続いてはシティモードは結局頓挫したので新芽のエンゲージリング集を……
836 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:16:39.63 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……吹石編】

新芽「……」

正直あたしは未だに自分で自分が信じられない。

吹石「おい新芽、いい加減俺の女になる気になったかよ?」

だってこいつよ?

この今でも人の神経を逆撫でしてくるこのゲスよ?

新芽「……」

吹石「あん?いつもみてえに抵抗しねえのか?」

新芽「……」

そんな奴に、あたしは今……

新芽「これあげる」

指輪を渡そうとしてる。

吹石「ああ?んだこれ指輪?」

新芽「エンゲージリングよ。ゲームコーナーにあったの見たでしょ」

吹石「ああ、アレか……あ?エンゲージリング?」

新芽「……」

吹石「なんだお前、俺に惚れたのか?」

新芽「っ、あたしだって信じられないわよ!だけどしょうがないじゃない!好きに、なっちゃったんだから……」

吹石「ほーん、男見る目ねえなお前」

新芽「それ自分で言うわけ……?」

吹石「けっ、自分の事は自分がよくわかってんだよ」

新芽「それで、どうなのよ」

吹石「めんどくせえなぁ……」

新芽「っ!」

わかってた、こいつはこういう奴だって。

こんな男を好きになった自分がとても馬鹿に思えて……あたしはそれでも涙を流すつもりはない。

こんな男にフラれて泣いてなんかやらない……!

新芽「悪かったわね……今の忘れて」

吹石「ああ?何言ってやがるさっさと指輪よこせや」

新芽「は?」

吹石「特定の女なんざめんどくせえけど、まあお前なら構わねえよ」

新芽「……なんでよ」

吹石「――コンプレックス、刺激されねえからな」

新芽「は?」

吹石「なんでもねえよ!ほら、さっさと指輪渡せ!」

新芽「あっ、ちょっと……」

指輪取られた……あたしの気持ち、通じたのよね?

吹石「じゃあ新芽は今から俺の女だ。早速部屋に行こうぜ」

新芽「いきなりそれ!?」

やっぱり自分がわからない!

なんでこんな男好きになっちゃったのよ、あたしは!!
837 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:37:15.13 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……錦編】

錦「ありがとうございました!」

新芽「はぁ、はぁ……」

錦のテニスに、付き合うの、本当にしんどい……

錦「新芽さん、大丈夫ですか!楽しくて少し全力を出してしまいました!」

新芽「だから、後半なんか走馬灯が見えたのね……まあ、楽しんでくれたなら何よりだけど」

錦「本当にごめんなさい!好きな人とのテニスだから受かれてしまいました!」

新芽「はい?」

今、なんて?

錦「新芽さん!」

新芽「えっ、あの、なんで手握って」

錦「好きです!」

新芽「ちょっ!?」

なんでこんないきなり!?ああ、でもなんか錦らしいというか、いやそうじゃなくて!

ポロッ

新芽「あっ!」

錦「これは、指輪ですか?」

新芽「いや、違うの!一緒にいたらなんか渡すチャンスあるかなとかそういう風に思って、は少しはいたけど!」

錦「……」

新芽「あの、錦……?」

錦「わかりました!立花さん!結婚しましょう!」

新芽「だからなんでそういきなりなのよ!?」

心の準備も何もあったもんじゃないじゃないの!

錦「立花さんはぼくを好きで!ぼくは立花さんが好き!だから問題ありません!」

新芽「いや、あの、だから……」

錦「全力で幸せにします!だから、全力でぼくと幸せになってください!」

新芽「……」

ああ、もう……本当に常に全力で。

そんな錦だから、あたしは好きになったのよね。

新芽「じゃあ錦……ううん、修二、1つお願いしていい?」

錦「全力で応えます!」

新芽「指輪、薬指にはめてくれる?」

全力で幸せか……うん、あたしもその全力に頑張って応えなきゃね!
838 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/05(月) 22:55:50.67 ID:13NMDd5A0
【エンゲージリングを渡したら……真白編】

新芽「……どうしよう」

真白「……」

新芽「いや、これはさすがに……うーん、でも」

真白「幸運、さっきから何をブツブツ言ってるんだ」

新芽「真白君……」

真白「な、なんだ?幸運なんか変だぞ……」

新芽「真白君は、好きな子とかいる?」

真白「好きな子?まあ、ここのみんなは嫌いじゃないぞ」

新芽「そうじゃなくて、ガールフレンドとか」

真白「な、なんだいきなり!そんなのいるわけないだろう!ボクは暇じゃないんだ!」

新芽「そう、いないのね……だったら、予約していい?」

真白「よ、予約?」

新芽「そう、予約。このエンゲージリングあげるから、将来的にあたしと……」

真白「ま、待て待て待て!ボクはまだ10歳だぞ!?」

新芽「いつも子供扱いするなって言ってるじゃない」

真白「いや、それはその、だけど」

新芽「大丈夫、もちろん待つわ……真白君が18歳になるまで」

真白「こ、幸運、お前、そういう趣味が……」

新芽「それは違うわよ真白君!あたしは10歳だから真白君が好きになったんじゃない!好きになった真白君がたまたま10歳だったのよ!」

真白「ま、待って、待ってよ立花お姉さん!ボクそんな事言われても本当に恋なんてわからないよ!」

新芽「あたしも色々テンパってわけわからないからおあいこよ!」

真白「絶対違う!」

それからなんとか落ち着いたあたしは、真白君に改めて告白した。

恋がわかる時まで待ってほしいって言われて保留だけど……断られなかっただけ全然マシよね!

これから覚悟してなさい真白君……絶対にあたしを好きにさせてみせるから!
839 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:04:50.31 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……泉編】

泉「毎度すまんな新芽よ、我が輩の手伝いなどさせてしまって」

新芽「いいのよ、気にしないで!生原稿見られるだけでファンとしては感涙物なんだから!」

泉「むうっ、そんなものか」

新芽「でもあれよね、こうして一緒にいて色々話して……たくさん泉の事を知れた気がするわ」

泉「我が輩も新芽と話して学ぶ事が多かったであるな。参考になる意見も多々……やはりファンの目線は大事という事か!」

新芽「……ファンと言うより、恋してるから、じゃないかしら」

泉「ほう?確かに恋する少女の気持ちについては特に参考になったが……しかしいかんな」

新芽「えっ?」

泉「新芽は恋をしているのだろう。それも察するにこの生活の中の誰か……ならば我が輩が拘束してしまうのは問題である!」

新芽「い、いやいや、それに関しては大丈夫!問題なし!むしろ困る!」

泉「……新芽よぉ」

新芽「な、なに」

泉「我が輩は少女漫画家であるからして、そういう事には理解が早いと自負しているが……今の反応はそう判断してもよいのであるか?」

新芽「うっ……」

泉「よいのであるな……むうっ、まさか新芽が……」

新芽「一応、本気よ?こんなのまで用意してるし……」

泉「エンゲージリング!これはまた」

新芽「……重いかしら」

泉「ふんっ!我が輩は鍛えておるからな!それくらいの重さなら障害にもならん!」

新芽「泉……」

泉「……うーむ、しかしいかんなこれはいかん」

新芽「こ、今度はなに?」

泉「少女漫画家でありながら気の利いた言葉がまるで浮かばん!」

泉「故に新芽、情けないがこの言葉で許してほしい」

泉「これからも我が輩と共に生きてくれるか?」

新芽「気の利いた言葉なんかじゃなくても、それだけで充分過ぎるわよ……」
840 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:19:40.22 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内編本編の場合】

赤内「さてと、スカウトとして再出発だ……新芽さんには色々とお世話になったね」

新芽「……」

赤内「どうかした?僕の顔ジッと見ちゃって」

新芽「赤内……これ受け取ってくれない?」

赤内「プレゼント?新芽さんは本当に人によくプレゼント…………」

新芽「……」

赤内「あのさ、新芽さん?これエンゲージリングだよね?」

新芽「そうよ」

赤内「意味、わかって渡してるんだよね?」

新芽「当たり前じゃない」

赤内「そっか……」

新芽「……」

赤内「…………ごめん」

新芽「っ!」

赤内「僕はもう、奈美以外はそういう目じゃ見られないと思う」

新芽「……」

赤内「もういないのは理解してる。だけど、それでも……」

新芽「……うん、わかってる」

赤内「新芽さん」

新芽「いや、わかるわよ!あんなに奈美さんについて話す時楽しそうだし!赤内が奈美さん好きな事くらい!」

赤内「……」

新芽「だから、ありがとう。しっかりフッてくれて……これで、諦めつく」

赤内「……」

新芽「じゃあ、またね!今のはなかった事にしていいから!」

赤内「……」

赤内「泣いてたな、新芽さん」

赤内「彼女が好きなのは心沢くんか佐木原くんだと思ってたんだけど……」

赤内「奈美、怒るかなぁ……」
841 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 22:38:24.49 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内編】

赤内「はぁ」

新芽「人を見るなりため息なんて失礼ね。まあどうせあたしはキラキラしてないけど」

赤内「そう言わないでよ、僕も色々あって当時の事少しは反省してる」

新芽「人がキラキラしてないからってぶつけてきたあの態度と言葉が少しの反省で何とかなるとでも?」

赤内「新芽さん、怖いよ……」

新芽「あたしはもっと怖かったわよ」

赤内「うっ」

新芽「……はぁ」

赤内「あの、今の新芽さんにこれ言ったら殴られそうなんだけどさ」

新芽「なに」

赤内「……好きです」

新芽「は?」

赤内「いや、あの、僕はほらキラキラしてない人に酷い態度だったでしょ?」

新芽「そうね、泣いた事もあるわ」

赤内「そ、それでも新芽さんは諦めず話しかけたりとかしてくれたよね?」

新芽「まあね」

赤内「言い合いしたりしてる内になんというか、それが心地よくなってたというか」

新芽「……」

赤内「あ、あはは……」

新芽「えいっ」

赤内「痛っ!?」

新芽「それが答えよ」

赤内「暴力反対……えっ」

新芽「……」

赤内「あの、これエンゲージリング……」

新芽「だからそれが答えよ!」

赤内「ちょっ、それにしては態度キツくない!?」

新芽「今までのあれこれ考えてみなさいよ!?あんな口論ばっかりだったのに両想い!?意味わかんないわよ!」

赤内「だからといってそんなキツくなくてもいいじゃないか!だから新芽さんはキラキラしてないんだよ!」

新芽「またキラキラ言ったわね!?」

赤内「なんだよ!事実だろ!」

新芽「なによ!自分こそキラキラなんかないって泣いてたくせに!」

赤内「酷い捏造だ!」

この後しばらく口論してたあたし達は……我に返ってからしばらく顔を合わせられなかった。

いや、本当に予想外だったのよ……
842 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/06(火) 23:01:33.64 ID:ANpZH+bA0
【エンゲージリングを渡したら……佐木原編】

佐木原「んー……」

新芽「佐木原?」

佐木原「おぉ、新芽か。何か用か?」

新芽「いや、まあちょっと……それより何してたの?」

佐木原「んー?この生活も終わりが見えてきたからな。なんか新しい事したいなと」

新芽「新しい事ね……佐木原は帰ったら何するの?」

佐木原「逃げる。俺はこれでもお尋ね者だからな」

新芽「またそんな事……じゃあ逃げるでもいいけど、あたしもついてっていい?」

佐木原「はあ?なんでまた」

新芽「言葉じゃ、ちょっと恥ずかしいから……これで察して」

佐木原「ほー、これはマーケットのエンゲージリングか」

新芽「そういう事なんだけど、ついていったら駄目?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「【俺でもまともな幸せってやつを得られるのか?】」

新芽「えっ?」

佐木原「興味が湧いてきたな……まあ、新芽なら話してもいいか」

新芽「佐木原……?」

佐木原「あのな新芽」

それから佐木原があたしに話したのは……到底理解が追い付かない真実の数々。

新芽「……」

佐木原「そういうわけだ。撤回するなら今の内だぞ?」

新芽「……佐木原は、興味を持った事を知りたがるのよね?」

佐木原「まあな」

新芽「今興味があるの、さっき言ってた事よね」

佐木原「そうだな」

新芽「いいわ、だったらそういう事ばかりに興味を向けさせるだけよ」

佐木原「へぇ?」

新芽「あたしがずっとそばにいて、変な事に興味を持たないようにするわ!それなら佐木原も危険人物じゃなくなるでしょ?」

佐木原「……」

新芽「……」

佐木原「くっ、あははははっ!マジか、そんな事言う奴はお前が初めてだぞ!」

新芽「きゃっ!?」

佐木原「新芽、お前って人間に興味が湧いてきたよ……もう何しても俺から離れられないぞ御愁傷様」

新芽「……望むところよ。あなたこそせいぜい考えたら?」

佐木原「何を?」

新芽「【どうすればあたし達2人が幸せになれるか】、をよ」
843 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:42:09.71 ID:hdiNFerA0
【エンゲージリングを渡したら……安原編】

新芽「安原!」

安原「……新芽か」

新芽「またここにいたのね、おかげで探す手間は省けたけど」

安原「俺を探していたのか?」

新芽「えぇ、話がしたくてね」

安原「話か……その様子だと大切な話のようだな」

新芽「それも探偵の推理?」

安原「そんな大袈裟なものじゃない……それで話とは?」

新芽「……色々考えたんだけどね、あたしはやっぱり一般人だから普通にいくわ」


新芽「安原、あたしあなたの事が好き」


新芽「色々見守ってくれて、気にかけてくれて、たくさん話もして……いつの間にかあなたを好きになってた」

安原「……」

新芽「これエンゲージリング……気が早いかもしれないけど、あたしの素直な気持ち」

安原「……新芽。俺は探偵だ」

新芽「うん」

安原「それも国家犯専門……潜入も多い。何より命の危機にさらされる」

新芽「……」

安原「悪い事は言わない、考え直せ。お前を幸せに出来るような人間ではない」

新芽「……安原の気持ちは?」

安原「何?」

新芽「あたしが危ないとか、あたしが幸せになれないとかそういう理屈じゃなくて、安原はあたしの事どう思ってるの?」

安原「……」

新芽「……」

安原「好意は、抱いている」

新芽「だったら問題ないじゃない!危ないなんてこんな世界なら今さら!それにあたし、安原関係なく誘拐されて殺されかけたしね!」

安原「……しかし」

新芽「それに幸せになれるかどうかなんてあたしが決める事……安原といられれば、あたしはそれだけで幸せになれるわ」

安原「現実は、そう甘くない」

新芽「そうかもね。だけどわざわざ悲観する事もない……違う?」

安原「……何を言っても聞かないか」

新芽「恋するとそんなものよ女の子は」

安原「わかった……俺の全てを懸けて誓おう」

安原「――お前を、世界で2番目に幸せにしてみせる」

新芽「2番目?」

安原「俺の1番は、揺らがないだろうからな」

新芽「……」

安原「柄ではないのは、理解している」

新芽「ううん、嬉しい!安原があたしをそれだけ思ってくれるって、わかるから」

安原「……立花」

あたしの名前を呼んで、安原は黙っちゃったけど……その想いはしっかりと伝わってくるような気がした……
844 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:43:07.68 ID:hdiNFerA0
【エンゲージリングを渡したら……安原編本編の場合】

※本編仕様なので表記は佐木原です。

佐木原「……」

新芽「……あの、佐木原ちょっといい?」

佐木原「なんだ?」

新芽「ここじゃ、ちょっとあれだから……」

【モノクマ大橋】

佐木原「わざわざここまで来るという事は……あまり聞かれたくない話か」

新芽「うん、まあ……人にはあまり聞かれたくないかも」

佐木原「奇妙なものだな」

新芽「えっ?」

佐木原「新芽は今狂人、そして記憶もない俺を相手に何か重要な話をしようとしている」

佐木原「俺自身が1番自分を信用出来ないというのに」

新芽「……」

佐木原は狂人、それも記憶がない……本当はどんな人かもわからない。

だけど。

新芽「あたしにとって佐木原は狂人なんかじゃない」

佐木原「なに?」

新芽「ほら、この生活が始まったばかりの頃辛くないかって声かけてくれたじゃない?」

佐木原「そんな事も、あったな」

新芽「あたしね、すごく嬉しかったの。ああ、こんな状況でもあたしを気にかけてくれる人がいるんだなって」

佐木原「……」

新芽「だからあたしにとって佐木原は、口数は少ないけど優しくて、頼りになって、その……」
845 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:43:48.74 ID:hdiNFerA0






新芽「――ずっと一緒にいたいって、思える人なの」






846 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/07(水) 21:45:53.52 ID:hdiNFerA0
佐木原「……!」

新芽「佐木原、あたしね!佐木原の事」

佐木原「駄目だ」

新芽「えっ……」

佐木原「それは駄目だ新芽、狂人の俺にそんな気持ちを抱いても破滅しか待っていない」

新芽「あたしはあなたを狂人だなんて思ってないって言ったはずよ!だいたい今までの佐木原のどこに狂人なんて言える部分があったわけ!?」

佐木原「それは記憶がないからだ……本性はわからない」

新芽「つまりまっさらな佐木原は狂人なんかじゃないって事よ!」

佐木原「っ」

新芽「佐木原は前にあたしが辛くないか聞いた時、結局答えなかった……改めて聞くわ、辛くない?」

佐木原「……わからない」

新芽「……」

佐木原「何もかもがわからない。俺の才能、今、過去……全てがちぐはぐに思えるほどに」

新芽「……」

佐木原「だが、1つだけ」

佐木原「お前に、側にいてほしいという気持ちだけは、はっきりしている」

新芽「佐木原……!」

佐木原「……狂人の俺には過ぎた願いだと、思っていたんだがな」

新芽「そんな事ない!」

佐木原「……お前はそう思ってくれるのか」

新芽「こんな物、用意しちゃうくらいにはね」

佐木原「エンゲージリング……全く、ここまで覚悟を持って挑んでいたのか」

新芽「しかたないじゃない、それだけ好きになってたんだから」

佐木原「……貸してくれ」

新芽「あっ」

佐木原があたしの左手薬指に指輪をはめる。

そして慈しむようにあたしの手を握ると、彼はあたしをとても優しい瞳で見つめてきて。

佐木原「新芽、いや、立花と呼ばせてくれ」

新芽「は、はい!」

佐木原「俺の本性がどれだけ狂っていても」

ああ、思った通りだ。

佐木原「これからどれだけ記憶を失っても」

やっぱり佐木原は、彰は狂人なんかじゃない。

佐木原「これだけは狂わない、失わない」

だってそうでしょ?


佐木原「――立花、俺は……お前を愛している」

こんな優しい声と瞳の人が狂ってるなんて、つまらない冗談だもの。
847 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 21:49:31.77 ID:iVf1rbOA0
【エンゲージリングを渡したら……錦&鈴木編】

錦「ふっ!」

鈴木「修二さん、お茶を用意しましたからそろそろ休憩しませんか?」

錦「華さん!ありがとうございます!」

鈴木「私が好きでしてる事ですから……はいどうぞ」

錦「いただきます!熱っ!?」

鈴木「ああ!?もう落ち着いてください修二さん」

錦「ごめんなさい!」

鈴木「……でも、少し嬉しかったりもします」

錦「なぜですか!」

鈴木「だってこうしてるとなんか、夫婦みたいだなって」

錦「……」

鈴木「はっ!?な、何を言ってるんでしょう、私!いくらなんでも気が早すぎ、いや、修二さんが相手なのが嫌という訳じゃなくて!」

錦「華さん!」

鈴木「ひゃ、ひゃい!?」

錦「これを受け取ってください!」

鈴木「な、なんですかこれ」

錦「エ、エ……指輪です!」

鈴木「エンゲージリングですか!?修二さんどうして……」

錦「華さんが大好きだからです!」

錦「ぼくは病気になってから、全力で生きていこうって決めて生きてきました!」

錦「だから気持ちも全力で伝えます!」

錦「華さんが夫婦みたいだって言ってくれて嬉しかったです!だってぼくも華さんとそうなれたらって思いますから!」

鈴木「しゅ、修二さん……」

錦「華さん!ぼくと結婚して錦華になってください!」

鈴木「……うっ、ぐすっ」

錦「は、華さん!?ぼく、何か嫌な事を……」

鈴木「ち、違います!これは嬉し涙です……本当に、嬉しい……」

錦「華さん……」

鈴木「私、ドジだけど、全力で修二さんのお嫁さんとして頑張りますね……」

錦「はい!ぼくも華さんを……全力で、誰にも負けないぐらい幸せにしてみせます!」

鈴木「もう、誰にも負けないぐらい幸せですよ……修二さん」
848 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 22:34:15.86 ID:iVf1rbOA0
【エンゲージリングを渡したら……吹石&早坂編】

吹石「……」

早坂「隣、いい?」

吹石「……」

早坂「無言は肯定って事で……」

吹石「……」

早坂「もうすぐこの生活も終わりか。じょ……吹石は、少しはみんなと仲良くなれた?」

吹石「……」

早坂「わたしはさ、結構周りと仲良くなれた気がするというか、その」

吹石「……よく話しかけられんな」

早坂「……」

吹石「馬鹿じゃねえのか。俺とお前がどんな形で別れたか忘れたのかよ」

早坂「……」

吹石「俺はボクサー、お前はランナー、もう生きる世界も違えんだ。関わる意味も必要性もねえだろ」

早坂「……」

吹石「わかったら二度と話しかけてくんな、お前見てると惨めになるんだよ!」

早坂「……別れてない」

吹石「あ?」

早坂「別れようとも、嫌いだとも言われてない。だからわたしは……今だって丈を」スッ

吹石「!!」バッ

早坂「あっ!?」

吹石「こんな写真を今でも後生大事に持ってやがんのか!!俺への当て付けか!?お前を忘れたくて色んな女に手出してきた俺への嫌みかよ!!」

早坂「返して!」

吹石「うるせえ!こんな写真……!」

早坂「やめっ!」

吹石「……ちっ」ポイッ

早坂「っ!」

吹石「なんなんだよ、さっさと忘れてくれよ俺の事なんかよ!!」

早坂「……」

吹石「しかたねえだろ!?忍は才能があって、俺には才能がなかった!!一緒にいてもただ俺が惨めになるだけじゃねえか!!」

早坂「……」

吹石「なのにお前はまた、つまらなそうに走りやがって……じゃあ俺はどうすりゃよかったんだ?あのままだったら俺はきっと取り返しのつかねえ事を忍に……」

早坂「……誇れば、よかったんだよ」

吹石「あん?」

早坂「丈、わたしね……公式戦でもそれ以外でも絶対に負けないって決めてるの」

吹石「はっ、そりゃ御大層な目標なこった。【超高校級のランナー】様は言う事が……」



早坂「わたしに勝ったのは、丈だけでいいから」
849 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/08(木) 22:35:21.52 ID:iVf1rbOA0
吹石「……は?」

早坂「わたしは、丈が告白してきた時のあの勝負以外には絶対負けない」

早坂「だから誇ってよ……丈は、【超高校級のランナー】を唯一負かした男なんだから」

吹石「お前……そんな……」

早坂「忘れられない、忘れられるわけがない。だって陸上の楽しさをわたしに教えてくれたの、丈なんだよ?」

吹石「……」

早坂「……丈」


早坂「わたし達、もう一度やり直せない、かな?」


吹石「……」

早坂「……」

吹石「はっ、ははっ……馬鹿だろ……こんな、こんな糞野郎いつまでも追いかけて、きてよ」

早坂「全然追い付けなかったけどね……わたしを置いてこんなに走っちゃってさ」

吹石「……やり直せんのかな?」

早坂「丈次第だよ。わたしは……信じてるけど」

吹石「……ちょっと待ってろ」

早坂「えっ」

※※※※

吹石「……これ、やるよ」

早坂「指輪……」

吹石「今度こそ、俺はあの夢守れんのか?」

早坂「……死んでも、一緒?」

吹石「覚えてたのかよ……あーあ、色々清算しねえとなぁ……」

早坂「付き合うよ。わたし達、ずっと一緒なんだから、さ」

吹石「……悪かった、忍。ずっと、遠回りして」ギュッ

早坂「……やっと、追いついたよ丈」ギュッ
850 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/11(日) 21:05:40.57 ID:QgAlznhA0
【エンゲージリングを渡したら……赤内&ミーナ&奈美編】

赤内「……」

ミーナ「やっ、赤内クン」

赤内「ああ、ミーナさん。悪いね、呼び出しちゃって」

ミーナ「それはいいんだけど……でもどうしたの、今まではこんな風に……」

赤内「ごめん、正確には話があるのはミーナさんじゃないんだ」

ミーナ「……どういう意味かな?」

赤内「月石奈美……知ってるよね?」

ミーナ「……!」

赤内「いや、もっとはっきり言うなら……ミーナさん、君、奈美でもあるよね?」

ミーナ「……どうしてそう思ったの」

赤内「きっかけは新芽さんだよ。ミーナさんがセーターに眼鏡の格好してたって言われてさ」

赤内「変装用にって奈美に僕が教えた格好をね」

「……」

赤内「それから注意して見るようにしたら出るわ出るわ奈美としか思えない言動の数々」

赤内「最初はミーナさんが奈美の身内なんじゃないかって考えもあったんだけど……それにしては君の顔には奈美に似てる要素がなかった」

「……」

赤内「荒唐無稽なのはわかってるよ。だけどこう思うしかないんだ」

赤内「奈美は、君の中で生きているって」

「…………ふふっ」

赤内「……!」

奈美「晶くんは相変わらずだね。鋭いのか鈍いのかよくわからない変な人」

赤内「な、奈美……?本当に生きて……」

奈美「ううん、私は死んだよ。車に轢かれて、殺された」

赤内「……」

奈美「今もよくわからないんだ。なんで私はまだ意識があるんだろう、それもこの子の中に」

赤内「そんな事どうでもいいよ!奈美とこうして話せる、それだけで僕は……」

奈美「……そうだね。私も晶くんには言いたい事があったし」

赤内「何でも聞くよ!だって僕達はずっと」

奈美「【キラキラしてない人間に価値はない】……私の事もそんな風に思ってたんだ?」

赤内「えっ……あっ、ち、違う!僕は奈美にそんな!」

奈美「今までの晶くんの言葉はずっと聞いてた。残念だよ……私がああいう人嫌いなの知ってるはずの晶くんがそうなってるなんて」

赤内「な、奈美……だけどそれは」

奈美「私が死んだからなんて言い訳しないでね?」

赤内「っ!」

奈美「それだけだから。もう晶くんとは話す事なんて――」
851 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/11(日) 21:11:52.45 ID:QgAlznhA0
ミーナ「ちょっと待った!」

奈美「み、美伊奈ちゃん?」

ミーナ「奈美!なんでそんな思ってない事言うの!?本当は赤内クンに謝りたいくせに!」

赤内「えっ……」

ミーナ「赤内クン。奈美は本当は赤内クンがああなったのは自分のせいだってずっと泣いてたの」

奈美「やめてください美伊奈ちゃん!」

ミーナ「ううん、やめない!だってこんなの悲しすぎるよ!」

赤内「奈美……」

奈美「……わかってた。晶くんを変えてしまったのは私だって」

奈美「見てられなかった、周りを傷つけて、嫌われて、自分自身も傷つける晶くん」

奈美「私がそうさせてるなら、もう振り切ってほしかった」

奈美「晶くんが、引きずる価値のない酷い女なんだって……」

ミーナ「だからってあれは駄目だよ!お互いに傷つくだけじゃない!」

奈美「……」

赤内「……奈美、君の言う通りだ。僕は君を言い訳にして不和ばかり生んでた」

赤内「こんな僕を奈美が見たらどう思うかなんてわかってたのに……こんなものまで用意して、本当に馬鹿だよ僕は」

ミーナ「赤内クン、それ……!」

赤内「ここにあった指輪……奈美が生きてるってわかったら勢いで買っちゃったんだ」

奈美「……!」

赤内「だけどその身体はミーナさんのだ。そもそも渡すのも不可能なのに本当に僕は……」

ミーナ「…………はあ、本当に世話が焼けるよ。奈美、アタシしばらく引っ込んでるから」

奈美「えっ、ちょっと美伊奈ちゃん!?」

赤内「……」

奈美「……晶くん」

赤内「スカウト失格だよ。アイドルに恋い焦がれるなんてさ」

奈美「それなら私だって……アイドル目指してたのにいつの間にか、晶くんが中心になっちゃってた」

赤内「……いいのかな?」

奈美「わからないけど……でも、今だけは」

※※※※

ミーナ「上手くいったかな?」

ミーナ「……アタシはね奈美。ずっと感謝してるんだよ」

ミーナ「二度と目覚めなかったはずのアタシが、こうしてアイドルとして生きていける」

ミーナ「それは全部奈美がいてくれたから」

ミーナ「だからこれぐらいのご褒美は受け取っていいんだよ?」

ミーナ「アイドルとしての諸々はアタシが。女の子としての幸せは奈美が」

ミーナ「だってアタシ達は……2人で【ミーナ・ルナストーン】なんだから」
852 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/12(月) 21:49:19.58 ID:F/0gf3dA0
【エンゲージリングを渡したら……佐木原IF編】

新芽「……」

佐木原「よぉ、新芽」

新芽「あっ……佐木原」

佐木原「わざわざ呼び出してどうしたよ?面白そうな話なら大歓迎……」

新芽「……ねぇ、あたし達って会った事ない?」

佐木原「……へぇ?」

新芽「なんか佐木原との会話の感じが、前にもした事ある気がして……」

佐木原「……」

新芽「変な話だとは思うのよ?でもモノクマは記憶を奪ったって言うし……」

佐木原「……はぁ、念入りに消しといたはずなんだけどな」

新芽「……!」

佐木原「そうだよ新芽。俺達は出会ってた……というか今回の一件の直前まで一緒にいた」

新芽「……なんで記憶を、ううん、そもそもなんでこんな事したの」

佐木原「興味が湧いたからさ。最初はコロシアイさせるつもりだったんだぞ?だけど二番煎じじゃ萎えるし、だから計画を変更したわけだ」

新芽「……」

佐木原「お前の記憶を消したのは興味が湧いたからだ。【新芽立花はまだ引き返せるのか】がな」

新芽「引き返せるか……」

佐木原「なんせ死体見ても慣れたとか言い出す女になっちまってたしなお前」

新芽「あ、あたしが?」

佐木原「そう、そして【超高校級の狂人】である俺と一緒にいるからか、お前は【超高校級の狂信者】って呼ばれるようになってた」

新芽「……」

佐木原「それで?真実を知ったわけだが、新芽はどう思った?」

新芽「…………」

新芽「納得した」

佐木原「納得」

新芽「みんなと仲良くなれたのは間違いないんだけど、あたしどこか違和感があったのよね」

佐木原「……」

新芽「そりゃそうよ。あたしを助けた恩人で、あたしが散々付き合ってきた奴が隣にいないんだから」

佐木原「……んー?」

新芽「まさかあなたが直前で計画変更するとは思って……あっ、そうだ」ゲシッ!

佐木原「いてっ」

新芽「あたしにスタンガン当てた罰よ。というかね、あんな強化したやつぶつけて死んだらどうするのよ!?」

佐木原「……おいおい、なんか記憶戻ってないか」

新芽「話してたら思い出してきたのよ。誰かさんに散々苦労かけられた思い出をね」
853 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/08/12(月) 21:50:03.89 ID:F/0gf3dA0
佐木原「んなアホな……記憶を消したんだぞ?会った気がするレベルでも信じられないってのに」

新芽「一応あたし【超高校級の幸運】になりかけてたからじゃない?理由は適当につけといてよ」

佐木原「……くっ、あははっ!全く本当に面白い女だな立花!」

新芽「あたしは面白くないわよ!」

佐木原「そう言うなって……しかしあれだな。【新芽立花はまだ引き返せるのか】って疑問は【引き返せない】って答えになったか」

新芽「そんなのわかってた事でしょ。よほどの事がない限りあたしが引き返すなんて無理よ」

佐木原「そんなものかね」

新芽「むしろ変わったのはあなたじゃないの」

佐木原「俺が?」

新芽「だってあなたが疑問に持つようなのって基本的に周りからすれば危険な事ばっかりでしょ」

新芽「それが仲良くなれるかを疑問に持つ時点であなたは変わった……違う?」

佐木原「……やれやれ、本当に擦れちまったな」

新芽「あなたのおかげでね……で?まだこの生活は続けるんでしょ?」

佐木原「まあな。まだ期間もある」

新芽「じゃあとりあえず……あたしの目的を果たしておこうかしら」

佐木原「目的?」

新芽「あなたにこれを渡したかったのよ」

佐木原「エンゲージリング?おいおい、正気か?」

新芽「言わなかった?あたしも狂ってきてるって」

佐木原「……」

新芽「【世間を騒がせた狂人とその付き添いははたして幸せになれるのか?】……この生活が終わった後の疑問としてはうってつけじゃない?」

佐木原「……本当にどこまでも調子狂わせてくれる女だな」

新芽「狂人の調子が狂ったら普通になるんじゃない?」

佐木原「それはないな」

新芽「……あっ、そう。それで答えは?」

佐木原「いい疑問だ。実に興味をそそられるよ、立花」

新芽「……ふふっ」

佐木原「……?」

新芽「あたし思ってたのよ。あたしはきっと普通に生きて普通に死んでくって」

新芽「だけど彰と出会って世の中がこんな事になって……もう世の中の普通なんて縁遠くなっちゃった」

佐木原「……嫌か?」

新芽「……ううん」

新芽「きっとこれがあたしの【普通】なのよ、彰」
854 : ◆DXWxLR/SkYo1 [sage]:2019/09/01(日) 07:29:19.43 ID:Iu868jHA0
次スレを貼っていなかったので
【ダンロン】ダンガンロンパ・クエスト【オリキャラ】後編
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1565729618/
855 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:00:13.53 ID:eiZGQf4A0
【未来機関第二十支部】

赤穂「なんだか騒がしいな……今日何かあったか?」

静音「なんだ知らないのか?だったらぼくが教えてやろう!」

赤穂「静音」

静音「今日は天才の日!この世に産まれたパーフェクトな天才……そう、奏を讃える日だ!」

赤穂「えっ、四方院さん今日が誕生日なのか」

静音「いや、違うけど」

赤穂「……」

静音「まあ、冗談はここまでにして……あっ、奏が天才なのは本当だぞ!」

赤穂「わかったわかった。それで、今日は何があるんだ?」

静音「それはもちろん……ハロウィンだ!」

赤穂「……ああ、そういえばそうだったな」

静音「反応が薄い!」
856 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:02:03.26 ID:eiZGQf4A0






EXTRACHAPT【第二十支部におけるハロウィンの過ごし方】






857 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:15:03.80 ID:eiZGQf4A0
赤穂「悪い悪い。どうもハロウィンとは縁が薄くてな」

静音「全く……このぼくがわざわざ仮装までしてるのに!」

赤穂「仮装……あっ、そういえばいつもと格好が違うな」

静音「ふふん、吸血鬼だ!最も美食家のぼくが飲む血は……」

赤穂「四方院さんだけなんだろ?」

静音「……!」

赤穂「なんだよその顔は」

静音「な、なんでわかった!もしかしてエスパーなの!?」

赤穂「……いや、普段の静音を見てればわかるからな」

静音「そうなのか……」

赤穂「それで?わざわざ仮装見せに来ただけじゃないんだろ?」

静音「あっ、そうだった……トリックオアトリート!」

赤穂「お菓子か……確か貰い物のカステラがあったな……」

静音「カステラ!?」

赤穂「あったあった。ほら静音」

静音「わーい、ありがとう!早速奏と食べてくる!」タタタッ

赤穂「転ぶなよー」

赤穂「……」

赤穂「なんか眩しかったな……俺も年取ったって事か?」

薄井「おっさんみたいな事言ってんなよ」
858 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 21:33:25.67 ID:eiZGQf4A0
赤穂「薄井、いつの間に」

薄井「静音と入れ違いにな。しっかしハロウィンね……」

赤穂「なんか気に入らないって感じだな?」

薄井「へっ、ハロウィンなんざ嫌いだね」

赤穂「嫌いってそこまで言うか……何か嫌な思い出でもあるのか?」

薄井「昔、姉貴がジャックオーランタンだったか?そいつを捕まえんのを手伝ってほしいって依頼されてよ……」

赤穂「また変わった依頼だな……」

薄井「お前の同期生だって聞いてんぞ」

赤穂「そんな奴いたか……?」

薄井「まあ、んな訳で姉貴はその日1日いなかったんだよ」

赤穂「へぇ……んっ?」

薄井「なんだよ」

赤穂「薄井がハロウィンを嫌いな理由って……お姉さんがその日いなかったからか?」

薄井「そう言ってんだろ」

赤穂「……」

薄井「……何か言えよ」

赤穂「シスコンだな、お前」

薄井「お前にだけは言われたくねえよ!!」
859 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 22:13:17.84 ID:eiZGQf4A0
【中央の島・歩道】

赤穂「薄井は少し姉離れした方がいいんじゃないか……?」

道掛「赤穂に言われちゃおしまいじゃね?」

赤穂「道掛……それじゃあまるで俺がシスコンみたいじゃないか」

道掛「自覚ねえのかよ!?」

赤穂「俺はただ妹思いなだけだ!」

道掛「……お、おう」

赤穂「ごほん、それで道掛もハロウィンか?」

道掛「まあな!ゾンビライダーってやつだ!」

赤穂「その格好のまま自転車で爆走するわけか……子供は泣くな」

道掛「実際さっき凪ちゃん泣かせちまったよ……ってやべえ忘れてた!?」

赤穂「何をだ?」

道掛「いや、奏ちゃんもいたんだけどな……凪ちゃん泣かせたから相当怒って」

四方院「見つけましたわよ道掛さん!」

道掛「やべっ!?赤穂助」

赤穂「あー……諦めろ」

道掛「切り捨てんの早えよ!?」
860 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 22:44:36.05 ID:eiZGQf4A0
四方院「凪を泣かせるなんて言語道断ですわ……」

赤穂「まあ、反省してるようだし許してやってくれ」

四方院「はぁ……凪からも言われてますし、ここまでにしておきます」

赤穂「あはは……」

四方院「あっ、赤穂さん。カステラありがとうございました」

赤穂「ああ、ハロウィンだしな……そのわりには四方院さんは変わってないように見えるけど」

四方院「ふふっ、そう見えます?実際は仮装をしているんですよ?」

赤穂「んー……あれ?四方院さんそんなに肌白かったか?」

四方院「わかりました?一応幽霊、なんです」

赤穂「静音の発案だろう?なんか下手なメイクとかさせなさそうだしな」

四方院「そうなんですの……わたくしはどのようなメイクでも受けて立つ覚悟だったんですが」

赤穂「そうなのか?」

四方院「どんな怪物だろうとパーフェクトに演じてみせますもの!」

赤穂「……」

ああ、そういえば四方院さんってこんな性格だったな……

四方院「ふふっ、それはそうと赤穂さん。トリックオアトリート」

赤穂「ああ、マーケットで用意してきた。えーっと、これでいいか?」

四方院「ありがとうございます。あら、少々多いような」

赤穂「静音の分だよ。泣いてたらしいからさ」

四方院「……」

赤穂「ど、どうしたんだそんな見てきて」

四方院「いえ、土橋さんの気持ちが少しわかりましたわ」

なんでそこで美姫の名前が出るんだ……?
861 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 23:12:06.93 ID:eiZGQf4A0
グレゴリー「ふははははっ!!我が力は今宵の収穫祭に向け、高まり、渦巻いている!」

津浦「よく似合っていますよ、Mr.グレゴリー」

グレゴリー「ふっ、言の葉の魔術師も魔導の衣を纏いしその姿……美麗であるぞ」

津浦「あ、ありがとうございます」

赤穂「……」

これは話しかけない方がいいのか?

グレゴリー「むっ、聖痕抱きし英雄か」

津浦「あっ……どうもMr.赤穂」

ほら、なんか津浦ガッカリした感じ出してるじゃないか。

赤穂「グレゴリーと津浦もハロウィンに参加してるんだな」

グレゴリー「然り!我にとって此度の収穫祭はまさに天界より誘われた運命の刻!心ゆくまで舞い踊らねばなるまい!」

津浦「……」

赤穂「そ、そうか……」

グレゴリー、テンション上がって津浦の様子に気付いてないのか!?

というか、その血塗れの仮面とかマントは本格的過ぎて逆に不気味だぞ!?

グレゴリー「さて、聖痕抱きし英雄よ……我は問う。甘き供物を捧げるか、妖精の戯れか!選ぶがいい!ふははははっ!」

赤穂「じゃあこれお菓子。津浦の分もな」

津浦「ありがとうございます……」

グレゴリー「ふははははっ!感謝するぞ聖痕抱きし英雄よ!この甘き供物は天界に確かに届けよう!」

赤穂「じゃあ、俺はこれで……ごめんな」

グレゴリー「むっ?」

津浦「……いえ」

津浦も苦労するな……
862 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/10/31(木) 23:35:39.92 ID:eiZGQf4A0
赤穂「グレゴリーは少し女心を理解するべきだな……あの津浦の視線はわりとキツいんだぞ」

佐場木「何をブツブツ言っている」

遠見「お疲れ様であります赤穂殿!」

赤穂「お疲れ。佐場木と遠見は見回りか?」

佐場木「ハロウィンだからと気が抜けているようだからな」

遠見「自分達は何事もないようにする役割でありますよ」

赤穂「相変わらずだな……2人だって楽しんでもいいだろうに」

佐場木「全員が遊び呆けるわけにはいかないだろう」

遠見「それにこうして話をするだけで楽しんでいるようなものでありますから!」

赤穂「そうか……じゃあ差し入れっていうのもなんだけどこれ」

遠見「チョコレートでありますか!佐場木殿、後で分けるでありますよ!」

佐場木「……ああ」

遠見「それでは赤穂殿!自分達は見回りがありますので!」

赤穂「無理はしないようにな」

佐場木と遠見らしいな……
863 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 00:14:10.26 ID:sK4BE3/A0
六山「ふああ」カチカチ

鞍馬「……」チクチク

赤穂「……」

佐場木と遠見以上にいつも通りだなこの2人は……

六山「あー、赤穂くん。ゲームする?」

赤穂「ハロウィンとか関係ないな六山は……」

六山「1日は1日だからね。わたしはわたしらしく過ごすのだよ」

鞍馬「今さら輪に入れないだけでしょう」

六山「むっ……」

鞍馬「ゲームばかりでまともなコミュニケーションを取らなかった報いですね」

六山「それ、鞍馬くんには言われたくないなぁ」

鞍馬「僕はそもそも混ざる気がないので」

赤穂「……」

この2人仲悪いのか?

鞍馬もなんだかいつもより棘がある気がするぞ……

六山「むうっ……」カチカチ

鞍馬「……」

今度から気をつけて見てみるか……
864 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 08:02:04.37 ID:sK4BE3/A0
赤穂「……」

あいつの様子も見に行くか……

【第二十支部・地下】

赤穂「苗木」

苗木「……何さ寄生虫、ボクを笑いにでも来たの?」

赤穂「……」

苗木「全くお笑い草だよね。寄生虫を殺すために来たのにまさか捕まるなんて」

赤穂「まだ話す気はないのか?」

苗木「話す事なんてないよ」

赤穂「……そうか」

苗木が危険思想の持ち主だったってわかった時は本当に驚いたけど……

この様子だとやっぱり元々持ち合わせてたものだったみたいだな。

苗木「誰か死んだとかないの?それならボクも歓迎するよ」

赤穂「全員元気だよ」

苗木「あっそ……」

処刑を望んでる未来機関の強硬派はなんとか抑えてるけど……それもいつまで続くかわからない。

赤穂「また来る」

苗木「次はいいニュースを持ってきてよ」

それでも最後まで諦めてたまるか。

それが俺達全員の一致した気持ちなんだから。
865 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 08:41:37.48 ID:sK4BE3/A0
如月「苗木さんに会いに行っていたんですか?」

赤穂「まあ、一応俺が支部長なんで」

地下から戻ったら如月さんと出くわした。

如月さんも結構苗木を気にしてるみたいだから、なるべく様子は伝えるようにしている。

如月「彼も早く考え直してくれればいいんですが」

赤穂「相当難しいでしょうね。苗木のあれは根深いみたいですから」

如月「そうですね……長年染み付いたものは拭うのが本当に難しい」

赤穂「……」

それは如月さんもですか?とは聞かない。

如月さんは何かとんでもないものを抱えていて……だけど誰にもそれを見せていない。

如月「とにかく苗木さんについては慎重にいきましょう」

赤穂「はい」

慎重に……誰にも悟られないようにしないとな。

それが年長者として俺に出来る事だ。
866 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 11:46:20.18 ID:sK4BE3/A0
ジェニー「マサキ!マサキ!」

赤穂「そんなに跳び跳ねると危ないぞジェニー」

ハロウィンの巡回を再開した俺に跳び跳ねながらジェニーが近付いてくる。

いつものピエロの格好じゃなくて、羽の生えた……これは妖精か?

ジェニー「トリックオアトリートですマサキ!」

赤穂「おっと、ちょっと待ってな……よし、これだ」

ジェニー「サンキューですマサキ!あのあの、ところでこのフェアリーどうです?」

赤穂「よく似合ってる、可愛いぞ」

ジェニー「えへへ」

赤穂「でも1人なんて珍しいな。美姫はどうしたんだ?」

ジェニー「ミキは恥ずかしいて逃げちゃいました!」

赤穂「恥ずかしい?」

恥ずかしいって何がだ?

ハロウィンのコスプレは美姫もしてるだろうし、その衣装か?
867 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:08:15.48 ID:sK4BE3/A0
兵頭「赤穂さん、お疲れ様です」

赤穂「…………」

兵頭「あの、何か?」

赤穂「いや、ちょっと驚いてた……兵頭だよな?」

兵頭「そうですが……そんなにビックリしますか?」

赤穂「いきなりのっぺらぼうが声かけてきたら誰だってビックリするだろ……」

兵頭「道掛さんはすれ違っただけで驚いていましたね」

道掛も災難だな……

兵頭「それでは赤穂さん、トリックオアトリート」

赤穂「どこから声出してるんだそれ……これでいいか」

兵頭「はい、確かに。ところで如月さんを見てませんか?」

赤穂「如月さん?如月さんなら支部の近くにいるぞ」

兵頭「ありがとうございます。それでは」

兵頭はどこか急いだ様子で支部に向かっていく。

……あれ、どうやって前見えてるんだ?
868 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:20:46.31 ID:sK4BE3/A0
赤穂「おっ、あそこにいるのは……牡丹!」

御影「うっ、兄さん……」

赤穂「なんだその見つかっちゃったって顔」

御影「だって、恥ずかしいんだよ……」

赤穂「恥ずかしいってその猫耳と尻尾か?いいじゃないか、可愛いし」

御影「身内に見られるのは恥ずかしいの!兄さんもコスプレ私に見られたら嫌でしょ!」

赤穂「……いや、別に。昔はヒーローの格好してんのちょくちょく見せてたしな」

御影「……そ、そうだった。兄さんは慣れてるんだったよ……」

赤穂「だから牡丹も気にするなって。毎日してればその内慣れるから」

御影「今日だけだよこんな格好するのは!」

赤穂「なんだ、もったいない。そうやって周りと打ち解けていけば……いや、悪い虫もよってくるか?」

御影「私に悪い虫なんか来ないよ……」

赤穂「いいや、自覚するべきだ。牡丹は俺と違ってモテると思うぞ」

御影「自覚ないのはどっちなの……」

赤穂「何か言ったか?」

御影「なんでもない」
869 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/11/01(金) 12:49:48.94 ID:sK4BE3/A0
【未来機関第二十支部・支部長室】

赤穂「みんな楽しそうだったな」

まだまだ問題は色々あるけど今日ぐらいは楽しんでほしいもんだ。

赤穂「だけど結局美姫には会えなかったな」

まあ、ジェニー曰く恥ずかしくて逃げてるらしいし……会えなくても仕方ないか。

赤穂「んー……!島中歩き回ってたら少し疲れたな」

少し寝るか……コテージには、行かなくていいな。

赤穂「……Zzz」

「……」

※※

赤穂「んっ……」

目覚めると後頭部に柔らかい感触……そして視界を遮る何か。

赤穂「……」

正直期待してたけど本当にそうなったか……まあ、いつもの事だもんな。

赤穂「恥ずかしいから逃げてるって聞いたぞ美姫」

土橋「し、仕方ないでしょ……こんな格好なんだから」

膝枕されたまま美姫を見てみると、包帯を巻いてるのが見える。

だけどその包帯は身体の一部にしか巻かれてないし、挙げ句その下には何も着けていなかった。

土橋「そんなにジロジロ見ないでっ!」

赤穂「嫌ならやめておけばよかっただろう……俺は眼福だけどさ」

土橋「だ、だって」

赤穂「だって?」

土橋「衣装、胸がキツくて入らなかったんだよ……」

そういう事言われると、なんだか妙に意識してこっちが恥ずかしくなってくるぞ……

土橋「も、もう!政城トリックオアトリート!恥ずかしいから早く!」

赤穂「わ、わかった。そこの鞄の中にあるぞ」

土橋「鞄、これだね…………えっと」

赤穂「どうした?」

土橋「何もないんだけど……」

赤穂「……あっ」

そういえば牡丹に渡した後補充してなかった……
赤穂「悪い。ちょうど切らし……うわっ!?」

起き上がろうとしたところを美姫に押し戻される。

美姫は何か上の空になっていて……あれ、ちょっと何する気だ?

土橋「悪戯、悪戯、お菓子ないんだから仕方ないよね……」

赤穂「待て美姫、顔が近い!お菓子なら用意するから落ち着い――」

その後の俺の言葉は、口に出る事はなかった。

どうしてかは……まあ、察してほしい。

END
870 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:29:32.41 ID:zpdoyx8A0
赤穂「今日はクリスマスか……」

御影「もう年末だなんて時間が経つのは早いよね」

赤穂「牡丹は今日予定とかあるのか?」

御影「まあ、一応……兄さんは?」

赤穂「俺は特には……牡丹に予定とかないなら家族水入らずで過ごそうかと」

御影「……」ジー

赤穂「な、なんだよ」

御影「兄さんはもう少し女の子の気持ちとか考えた方がいいよ」

赤穂「意味がわからないぞ……」

御影「土橋、きっと待ってるよ」

赤穂「美姫が?いや、だけど牡丹と過ごすっていうのは美姫からの提案」

御影「いいからさっさと行く!」

赤穂「えっ、おい牡丹!?」

バタンッ

御影「全くもう……あっ、私もそろそろ行こうかな」
871 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:31:06.03 ID:zpdoyx8A0






EXTRACHAPT【聖夜の光を追い求めて】






872 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:42:23.84 ID:zpdoyx8A0
御影「まだ時間には早いかな……」

薄井「いいから放せ!」

静音「いやだ!ぼくは絶対薄井を連れていく!」

御影「……何してんの?」

薄井「御影!ちょうどいい、こいつを何とかしろ!」

静音「御影!このわからず屋にはっきり言ってやって!」

御影「いや、そんな事言われても……何があったの」

薄井「静音の奴がオレをパーティーに連れてくってきかねえんだよ!」

静音「1人で寂しそうだったから!こんな日にそんなのもったいないよ!」

薄井「ほっとけ!」

静音「やだ!」

御影「……」

なるほど。

御影「犬も食わないっていうからね。まあ、程々にしときなよ」

静音「犬?」

薄井「ちょっと待て!?お前何かとんでもない勘違いを……」

静音「薄井、犬ってなんなの?」

薄井「いや、それは……おいこら御影待て!責任持って説明もしやがれ!」

薄井の叫びを聞き流して待ち合わせ場所に急ぐ。

四方院「……」

御影「……」ビクッ

途中物陰からすごい目で静音と薄井を見てる四方院を見つけたけど……声はかけないでおいた。
873 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 20:56:12.68 ID:zpdoyx8A0
グレゴリー「今宵は聖誕祭!今こそ我が天具その十二、雪原の園を使うとき!」

津浦「小型の人工雪発生装置ですか……Mr.グレゴリーは本当に様々な物をお作りになるのですね」

グレゴリー「フッ、これもまた天界からの囀りによるもの……言の葉の魔術師」

津浦「はい、なんでしょうか」

グレゴリー「今宵は我と共に刻の流れに身を任せぬか?」

津浦「えっ」

グレゴリー「無論、言の葉の魔術師が異なる術式をその身に宿すというなら、我も影となるが」

津浦「……いいえ、他の約束なんてありません」

津浦「Mr.グレゴリー。ワタシとクリスマスを過ごしてくださいますか?」

グレゴリー「……契約を持ちかけたのは我。その言霊を祓うなどありえん!」

津浦「ふふっ」


御影「……」

なんだか2人だけの世界って感じだね……ほっといてあげようかな。

グレゴリー「ならば早速この雪原の園を起動する!吹き荒れる結晶の欠片がこの世界を埋め尽くすであろう!」

津浦「さすがに吹雪はまずいのでは……」


御影「あっ、佐場木?グレゴリーが吹雪起こそうとしてるよ」
874 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/24(火) 21:15:07.31 ID:zpdoyx8A0
佐場木「本当にろくな事をしない……これで没収は何度目になると思っている」

御影「あはは……」

佐場木「御影、連絡に感謝する」

御影「あっ、佐場木は今日どうするの?まさか仕事なんて事は」

佐場木「そのまさかだが」

御影「いやいや、今日ぐらい休みなよ」

佐場木「全員が浮かれているわけにもいかない。こういった日は特にな」

御影「ほ、ほら、遠見と過ごすとか」

佐場木「あいつはここにいない。家族と過ごすように前々から言ってある」

御影「て、徹底してる……」

佐場木「……俺はな、御影。普段の日常を平和に過ごせるだけで十分なんだよ」

佐場木「犯罪者共の相手ばかりしていたからな。そういった日々は何よりも貴重だと理解しているつもりだ」

御影「……」

佐場木「だから特別な日は俺がこの空気を守る……それだけの話だ」

御影「佐場木……」

佐場木「赤穂に明日は休みを取ると伝えておいてくれ」

御影「うん、わかった。明日はしっかり休みなよ」

佐場木「遠見と同じ事を言うな……」

あっ、やっぱり遠見にも言われてるんだ。
875 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:20:41.60 ID:wgoLr7nA0
ジェニー「はーいボタン!」

御影「あれ、ジェニー1人なの?」

ジェニー「ミキはマサキと一緒ですから2人にしたです!」

御影「あっ、そうか……ジェニーはこれからどうするの?」

ジェニー「……」

御影「まさか苗木の所に行くつもりじゃないよね?」

ジェニー「……」ビクッ

御影「やっぱり……ジェニー、あいつに散々酷い事言われたでしょ」

私だって面と向かって化け物呼ばわりされてる……あいつと私達はきっとわかりあう事なんて出来ないのに。

ジェニー「でもボクは、諦めたくないです……」

御影「……」

とはいえ、ジェニーの気持ちをバッサリ切り捨てるのも……

御影「わかった。じゃあ私も」

鞍馬「僕が一緒に行きましょう」

御影「うわっ!?」

ジェニー「ルイ」

鞍馬「苗木誠が不審な行動をしないように見張ればいいのでしょう。それに彼の悪意は1人で受けるにはいささか苛烈です」

御影「……」

鞍馬が一緒に来るなら心強いけど……

御影「どういう風の吹き回し?普段あんなに関わりませんって態度なのに」

鞍馬「……気紛れですよ。ただのね」

気紛れ、ね……

ジェニー「じゃあボタン!ボクはルイとセイに会てきますです!」

御影「えっ、私も一緒に行っても」

ジェニー「ボタン約束あるですよね?ボクは大丈夫だからそちに行てください!」

御影「……ジェニーがそう言うなら」

まあ、私はあいつに相当敵視されてるし……刺激しない方が無難かな。

鞍馬「……」
876 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:36:02.50 ID:wgoLr7nA0
御影「ジェニー大丈夫かな」

鞍馬がいるならそうそう変な事にはならないだろうけど。

六山「おはよー」

御影「おはよう……って、百夏今起きたの!?」

六山「いやぁ、ダンジョンの攻略が思いの外白熱しちゃって」

御影「クリスマスでも百夏は平常運転だね……」

でもゲームに夢中で呼んでもコテージから出てこない日もあるから今日はマシなのかな……

六山「あはは、褒めないでよ」

御影「今私褒めたっけ……」

六山「まあ大丈夫だよ。わたしはこういうの慣れてるからね」

御影「あんまり慣れる事じゃないと思う……」

※※※※

六山「ふぅ……ごめんね牡丹ちゃん」

六山「でもさ、わたしとしては牡丹ちゃんには穏やかに生きてほしいんだ」

六山「せっかくお兄ちゃんと再会出来たんだからね」

六山「苗木くん以外にもいる絶望の残党、殺人鬼……」

六山「それはわたしが、何とかするからさ」
877 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 18:51:30.82 ID:wgoLr7nA0
御影「百夏のあれは何とかしないといけないよね……」

兵頭「牡丹さん?」

御影「あっ、千……と如月も」

如月「こんにちは御影さん」

兵頭「お悩みだったようですが……何かあったんですか?」

御影「いや、百夏のゲーム中毒」

兵頭「……ああ」

御影「昨日もずっとゲームしててさっき起きてきたみたいで……どうしたものかなと」

兵頭「六山さんのあれはもう筋金入りですからね……」

如月「……」

御影「今度コテージに無理やり乗り込んじゃおうかな……」

如月「それは……」

御影「えっ?」

兵頭「如月さん?」

如月「いえ、強硬な手段に出ると逆効果ではないかと」

御影「そうかぁ……うーん」

兵頭「長期戦になりそうですね……私も手伝いますから頑張りましょう牡丹さん」

御影「うん、ありがとう千」

如月「…………」

如月(六山さんが夜に支部を抜け出している事はまだ知られていないようですが……)

如月(一度彼女と話した方がいいかもしれませんね)
878 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 19:01:13.93 ID:wgoLr7nA0
御影「余裕持ってたはずなのに話してたらもうこんな時間だよ……!」

急がないと……あれ?

土橋「政城〜♪」

赤穂「落ち着け美姫!ちょっと頬擦りは駄目だって……!」

御影「……」

赤穂「誰だ、美姫に酒を飲ませたのは……!」

土橋「アタシお酒なんか飲んでなーい!ちょっと葡萄ジュースは飲んだけど!」

赤穂「それはワインだ……!ちょっ、力強いな!倒れる倒れる!」

土橋「……アタシが女の子らしくないって事?」ウルウル

赤穂「えっ、いや、違っ」

土橋「うええーんっ!まさきがひどいこというー!」

赤穂「そ、そんな事ないぞ!美姫は立派な女の子だって!」

土橋「ほんと?」

赤穂「本当だ」

土橋「じゃあー……ちゅーして?」

赤穂「うっ……わ、わかった。誰も見てないよな……」

御影「……」

私にもこんな時に隠れるだけの情けはあった。

兄さん……まあ、見なかった事にしておくよ。
879 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2019/12/25(水) 19:37:34.11 ID:wgoLr7nA0
御影「間に合った……」

道掛「おっ、牡丹ちゃん!」

御影「ま、待たせてごめん」

道掛「気にしなくていいぜ!好きな女の子待つのも青春だからな!」

御影「そ、そう」

道掛「おっと、忘れる前に……メリークリスマス牡丹ちゃん!これは俺からのクリスマスプレゼントだぜ!」

御影「手袋?」

道掛「牡丹ちゃん、よく手寒そうにしてるからさ。鞍馬に習って作ってみた!」

御影「あ、ありがとう……あれ?」

道掛「どうした牡丹ちゃん?」

御影「この手袋、片方は合うけど……もう片方はサイズ大きい」

道掛「えっ、うわっ、マジか!?や、やっちまった……」

御影「……道掛、ちょっとこれ着けてみてよ」

道掛「……おぉ、ピッタリだ」

御影「それで……こう」

道掛「牡丹ちゃん!?」

御影「着けてない方の手を繋いだら、寒くないでしょ?」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……今年は最高のクリスマスだぜ!」

御影「早いって……まだ始まったばかりなんだから」

道掛「よっしゃ、クリスマスデートの始まりだ!」

御影「あっ、私もプレゼント」

道掛「お楽しみは後にとっておくよ!行こうぜ牡丹ちゃん!」

御影「あっ、ちょっと……もう」

私にこんなクリスマスが来るなんて思わなかったけど……うん。

御影「青春だよね、こういうのも」

END
880 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:21:40.52 ID:Yg2JAeKA0
2月14日、バレンタイン。

こんな世の中になっても、いや、こんな世の中だからか?

こういう時は俺達第二十支部の面々は楽しむようにしている。

時々他の支部から小言をもらう事もあるけど、まあそれくらいは支部長らしく俺が引き受けるさ。

普段は世界をまた復興させるためにみんな頑張ってるんだからな。

御影「兄さん、これチョコレート」

赤穂「おっ、ありがとうな牡丹」

御影「市販品に大げさだって」

赤穂「こういうのはもらう相手が重要なんだよ」

特に生き別れてた妹からだしな……感激もひとしおだ。

御影「……そんなものなの?」

赤穂「ああ」

御影「そっか……」

赤穂「んっ……?」

なんだ、牡丹の様子がおかしいぞ?

というか、その手にある綺麗にラッピングされたチョコレートはなんだ?

御影「ありがとう兄さん、私頑張ってくるよ」

赤穂「えっ?ああ、頑張……って待て牡丹!頑張るってなんだ!?」

不穏な妹の言葉を聞き逃せるわけもなく、俺は杖を取って牡丹の後を追いかけた。
881 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:22:38.22 ID:Yg2JAeKA0






EXTRACHAPT【バレンタインの喜悲劇】






882 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:32:53.97 ID:Yg2JAeKA0
赤穂「くっ、見失った……!」

牡丹、いつの間にそんなチョコレートを渡すような相手が出来たんだ!

クリスマスか、俺が酔った美姫の相手を一日中してたクリスマスのあの時か!?

静音「チョコレートー♪チョコレートー♪」

赤穂「あっ、静音!牡丹見なかったか!?」

静音「御影?御影ならさっき図書館に行くって言ってたけど」

図書館?そこに牡丹に手を出した不届きものがいるのか!

静音「あっ、そうだ。せっかく会ったんだしこれをやろう!」

赤穂「……チョコレート?」

静音「義理チョコ!一応支部長だしな!」

赤穂「お、おう、ありがとう……静音は誰かに渡す予定とかあるのか?」

静音「奏とジェニーになら渡した!友チョコってやつ!」

赤穂「ああ、それは想像ついてた……んっ?じゃあそのチョコレートはもらったやつなのか?」

静音の手にはやけに気合い入ったチョコレートが……二つある。

てっきりあれが四方院さんに渡すやつだと思ってたんだけどな。

静音「これは奏と薄井からもらった!」

赤穂「…………薄井?」

えっ?
883 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 21:48:14.43 ID:Yg2JAeKA0
四方院「ふふっ、凪からのチョコレートは相変わらず可愛らしいですわ」

薄井「……おい四方院」

四方院「なんです」

薄井「なんでさっきから人についてきやがる」

四方院「あら、心外ですわ。偶然一緒の方向に行っているだけですのに」

薄井「……」

四方院「ああ、それにしても凪のチョコレート……」

薄井「わざとか!おい、わざとだよなオイ!?」

四方院「何の事です?せっかく気合いを入れて手作りまでしたのに凪からは貰えなかった人に自慢だなんて……完璧たるわたくしがするとでも?」

薄井「やっぱりわざとじゃねえか!この依存女!」

四方院「なっ!?わたくしはあなたのような粗暴な人は、凪のお相手には相応しくないとわざわざ教えてさしあげてるだけですわ!」

薄井「へっ、自分が相手いねえからって僻むなよ!」

四方院「誰が僻んでると言うのですか!?」


赤穂「……」

まさかこんな事になってるとは思わなかった……

中心の静音は何も知らずか……


静音「あっ、おーい!」

四方院「あら、凪。どうしましたの?」

薄井「……」

静音「薄井薄井、はいこれ!」

薄井「はっ?」

静音「さっき渡すの忘れてたから!」

四方院「なっ……!?」


静音……わざとじゃないんだろうなぁ、あれ。
884 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:07:31.39 ID:Yg2JAeKA0
津浦「……」ソワソワ

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師よ」

津浦「は、はい、なんでしょうか」

グレゴリー「先ほどから妖精達の悪戯を受けているようだが……自惚れでなければそれはこの時間軸の影響か?」

津浦「え、ええ、今日はバレンタインデーですので、そのMr.グレゴリーにチョコレートを、用意したのですが……」

グレゴリー「フッ、その誘惑をはね除ける術はない。歓喜を持ってその贈り物を受け取ろうではないか」

津浦「で、ではこれを」

グレゴリー「確かに託された、言の葉の魔術師よ」

津浦「あ、あの……Mr.グレゴリー。もし良ければどこかで落ち着いて話をしませんか」

グレゴリー「ふむ、言の葉の魔術師の誘いならば。して約束の地はいずこか?」

津浦「では……」


赤穂「……」

見つかる前に退散しよう……
885 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:21:44.72 ID:Yg2JAeKA0
【図書館】

赤穂「牡丹はいないか……」

遠見「おや、赤穂殿」

赤穂「遠見、牡丹見なかったか?」

遠見「御影殿でありますか?自分達はここにいたでありますが、誰も来ていないでありますよ」

赤穂「そ、そうか……」

さては牡丹、これを見越して静音に図書館に行くって言ったな……!

赤穂「悪い、邪魔したな……」

遠見「いえいえ、大丈夫でありますよ」

となると、牡丹はどこに……



遠見「御影殿も大変でありますなぁ」

佐場木「誰か来たのか」

遠見「いえ、なんでもないでありますよ佐場木殿」コトッ

佐場木「チョコレート?」

遠見「バレンタインでありますから。佐場木殿、甘い物は苦手でありましたか?」

佐場木「いや……ありがたくいただこう」

遠見「はいであります」
886 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:29:33.80 ID:Yg2JAeKA0
六山「……むうっ」

ジェニー「モモカ?どしました?」

六山「あっ、ジェニーさん。チョコレート、マーケットでつい買っちゃったんだよね」

ジェニー「チョコレート!モモカ、誰かに渡すですか?」

六山「いや、渡す予定は、ないんだけどね……はあっ、なんで買っちゃったんだろ」

ジェニー「モモカ、あーんです!」

六山「えっ、んむっ」

ジェニー「美味しいです?」

六山「美味しいけど……」

ジェニー「バレンタインデーに暗い顔はダメですですよ!」

六山「ジェニーさん……」

ジェニー「スマイルスマイル、です!」

六山「うん、そうだね。あっ、よかったら他にも人呼んでみんなで食べよっか?」

ジェニー「パーティーですか!」

六山「あはは……そこまでのものじゃないけどね」


【六山のコテージ】

鞍馬「……」

コトンッ

鞍馬「……」スタスタ
887 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:42:15.07 ID:Yg2JAeKA0
如月「バレンタイン、ですか?」

兵頭「はい。如月さんはチョコレートをいただいたりは……」

如月「僕は基本的に世界各国を飛び回っていましたから、いただく機会はありませんでしたね」

兵頭「そう、ですか」

如月「兵頭さんは?」

兵頭「はい?」

如月「今まで誰かに渡したりは」

兵頭「義理を配る事はありましたが……」

如月「……」

兵頭「……」

如月「ふうっ」

兵頭「なんでしょう、ぎこちなくなってしまいますね……」

如月「そうですね……僕はこういった事に不得手ですから、柄にもなく緊張しているのかもしれません」

兵頭「如月さんも緊張するんですね」

如月「……本命をいただくのは、初めての出来事ですからね」

兵頭「……私も本命を誰かに渡すのは初めてです」

如月「……」

兵頭「……」

如月「兵頭さん」

兵頭「はい」

如月「……これからも、よろしくお願いします」

兵頭「……はい、こちらこそ」
888 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 22:53:55.94 ID:Yg2JAeKA0
御影「はい、これ」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……これはまさか……」

御影「チョコレート。マーケットのやつだけど」

道掛「う、うおおおお……!ありがてえ、ありがてえよ牡丹ちゃん!」

御影「ちょ、ちょっと、泣くほど?さっきも言ったけどこれマーケットの」

道掛「関係ねえ!牡丹ちゃんからチョコレートもらえたって事実が大事なんだよ!」

御影「……兄さんの言った通りだった」

道掛「赤穂?」

御影「こういうのは、もらう相手が重要だって」

道掛「おぉ、赤穂もいいこと言うな!さすが牡丹ちゃんの兄貴だ!」

御影「……でも私としては、手作りを渡したいんだよね」

道掛「へっ?」

御影「……好きな人にあげるものだし」

道掛「ぼ、牡丹ちゃん……!」

御影「だから、またいつかを楽しみにしててよ」

道掛「おう、おう!一生だって待つぜ!」

御影「……うん」
889 : ◆DXWxLR/SkYo1 [saga]:2020/02/14(金) 23:11:48.60 ID:Yg2JAeKA0
土橋「で?結局牡丹見つからなかったから拗ねてるの?」

赤穂「別に拗ねてるわけじゃ……だけど牡丹はまだ」

土橋「子供だーって言うなら同い年のアタシに手出してる政城はどうなの?」

赤穂「うっ」

土橋「ほらほら、チョコレートあげるから機嫌直しなよ。はい、あーん」

赤穂「んむっ……美味い」

土橋「ありがと」

赤穂「……わかってはいるんだよ。牡丹がそういう相手見つけるのはいい事で、あいつも子供じゃないのは」

赤穂「だけど、俺にとって牡丹は……離れたあの頃のままだったからさ」

土橋「牡丹が養子に行ったのが小学生の頃だっけ?最近止まった時間が動いたから追い付いていかないって感じかな」

赤穂「そう、だな……後はやっぱり寂しいのかもな」

土橋「寂しいか……だったらさ」ギュッ

赤穂「美姫?」

土橋「アタシがその分一緒にいるよ。いや、牡丹の代わりなんて無理なのは知ってるけど……せめて寂しくないって思えるぐらいに」

赤穂「……」

土橋「アタシは、その、政城の恋人なんだし」

赤穂「……こう言ってもらえるなんて俺は幸せ者だな」

牡丹もいつか大事な人を見つけて離れていく。

必ず来るだろうその時に美姫がこうして隣にいてくれたらいいなと、俺は思った。

END
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