【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:00:06.68 ID:KpK00xl90



古い時代。


世界はまだ分かたれず、霧に覆われ
灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜ばかりがあった。

だが、いつかはじめの火がおこり
火と共に差異がもたらされた。

熱と冷たさと、生と死と、光と闇。

そして、闇より這い出た幾匹かが
光に寄る羽虫のように、偉大なるソウルを見出した。



最初の死者、ニト。
イザリスの魔女と、混沌の娘たち。
太陽の光の王グウィンと、彼の騎士たち。
そして、誰も知らぬ小人。



それらは王の力を得、古竜に戦いを挑んだ。


グウィンの雷が岩の鱗を貫き
魔女の炎は嵐となり
死の瘴気がニトによって解き放たれた。

そして、ウロコのない白竜、シースの裏切りにより、遂に古竜は敗れた。
火の時代の始まりだ。





だが、やがて火は消され、暗闇だけが残る。



今や、火はまさに消えかけ
人の世には届かず、夜ばかりが続き


人の中に、呪われたダークリングが現れ始めていた…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1473930004
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:05:13.88 ID:KpK00xl90






コブラ「はぁ〜あ〜…」





コブラ「……ダメだレディ。今回ばかりはお手上げだぜ」


レディ「あら、珍しいこともあったものね。いつもの貴方なら何とかなるさって言うところよ?」


コブラ「オレもそう思ってたよ。コイツを地球の美術館から盗み出す前まではな」


コブラ「実際この『古い時代の1節』については、てんで手詰まりさ」

コブラ「分かってるのはこの一文が地球で、しかも機械では計れない程の超古代に書かれたってコトと、人種や文化に関係無く、何故だか誰にでも読めるって事だけで、それ以外はサッパリだ」

コブラ「いつ、どこで、誰がなぜ書いたのか。何が記されているのか。そして何故この一文が記された金属板だけが、全く劣化せずに地球の地層奥深くに残っていたのか…」

コブラ「宇宙のありとあらゆる芸術品を知り尽くしたと思っていたんだが、そいつはとんだ自惚れだったみたいだ」

レディ「私はそうは思わないわ。 貴方に盗まれるものは、貴方の眼に適った物だけだもの」

コブラ「オレがコレに何かを感じたって?」

レディ「ええ。だから盗んだ。違うかしら?」


コブラ「いいやあ、違くないさ」

コブラ「ただ、こうまで人見知りされるのは初めてなんだ」フフッ

レディ「ようやく調子が出てきたみたいね。もうすぐ目的地よ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:08:25.60 ID:KpK00xl90

草木一つ生えない不毛の地に、ところどころ穴が開いている。
その穴は全て深く大きいが、不毛の大地と同様に、暑い太陽に照らされても何があるわけでもない。
知識欲と発見欲に魅せられた者達がこの地を掘ったが、遂に一枚の金属片以外の発見がないまま、作業は惰性の中続けられている。

その不毛の地に、一隻の宇宙船が着陸した。
作業着に身を包んだ男は、宇宙船から降りてきた男に歩み寄り、握手を求めた。



コブラ「すみませんね。道が混んでたもので」

発掘責任者「いえいえ、よくぞ来てくれましたギリアン博士」

コブラ「ジョーで構わないですよ。こちらは私の助手のレディ。早速で悪いとは思いますが『古い時代の1節』が発掘された地点というのは?」

責任者「はい、こちらです。ついて来て下さい」



宇宙船から降りてきた男と女は、作業着姿の男との握手を終え、彼の後ろを付いて行く。



コブラ「話には聞いてましたが、遺跡というよりかは、まるで洞窟と言った風情ですね」

責任者「ええ。ここにあるどれもこれもが、長い年月の中で朽ちてしまっていましてね。意識的に見れば石畳や柱に見えない事もないような土塊や、ちょっとの風で崩れる灰の塊ばかりでして」

責任者「お偉い学者先生が例の金属板には計り知れない価値がある『かもしれない』と言い、更にはその金属板がもっと出てくる『かもしれない』らしいので、こうやって一応発掘作業は続けてますけどね…私のような者からしてみりゃとんだ赤字……おっと失礼。口が滑りましたな」

コブラ「いえ、お気持ちは分かりますよ。考古学なんてのは、言って見ればバクチみたいなものですからね。ハズレだって引くんですよ」

責任者「おお、話が分かる方で助かりますな!はっはっは!」



そうは言いつつも、コブラはあの金属板には何かがあると確信していた。
それが何なのか、形がしっかりと把握出来ていないため弱音こそ漏らしたが、見限ってはいない。



責任者「着きました。ここですよ。ここで例の金属板が見つかったんです」


4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:16:22.67 ID:KpK00xl90

作業着姿の男がそう言って指差した場所には、黒々とした粘土状の窪みがあり、その窪みの中心には泥炭のような大きな板が敷いてあった。


責任者「この板……スキャンの結果、デカイ剣のような形をしていましたんで、我々は『剣』と呼んでいるんですが、その剣の刀身部分にはめ込まれるようにして、例の金属板があったんです。 まるで剣の一部のように」

コブラ「まさかとは思いますが、ここが鍛冶屋だったとでも?」

責任者「そうは思いませんが…なんにせよ、この有様じゃ用途の特定は不可能ですよ。触れば崩れる。太陽光並みの光であっという間に変質する。全くお手上げです」

コブラ「………いや、出来ることが全く無いってわけじゃ無いかもしれませんね」

責任者「え?」

コブラ「しばらく外に出てもらえませんかね?この調査には集中が必要でして」

責任者「!? そりゃ困りますよ!何かあったら…」

コブラ「お願いしますよ。それとも、私の代わりに宇宙考古学とその芸術史に長けた、専門的な調査ってものを貴方が代わりにやってくれるんですか?」

責任者「いえ…それは無理ですが…」

コブラ「だったらお願いしますよ」

責任者「は、はい…」


コブラの有無を言わさない物言いに、作業着姿の男はすごすごと退散した。
だが現場から離れたわけではなく、遠くからコブラとレディを見つめている。



コブラ「さーってと、ああは言ってはみたが、どうしたもんかねコレ」

レディ「考えてみれば何か思いつくかもしれないわよ?宇宙考古学と芸術が、貴方の味方になってくれるわ」

コブラ「それがなレディ、残念ながら散々考えたせいで、考古学も芸術も俺を見放しちまったらしい」

コブラ「今思い浮かぶのは、金星の美女達の腰に手を回したあの感しょ…」


コブラ「ん…まてよ」

レディ「どうしたのコブラ」

コブラ「触れただけで崩れるくらい、この剣とやらは脆い…」

コブラ「なのにこの金属板を剥がしたにも関わらず、この剣は形を保っている。普通こういう物は形が変わるだけでも、内部の構造に歪みやほころびが生まれて、あっさり崩れちまうものだ」



スッ



レディ「それは金属板?持ってきていたの?」

コブラ「念のためってヤツさ。とにかく、コイツとこの剣には、何か特別な関係があるように思える」

コブラ「行き詰まってる以上、それならやる事は一つだ」

コブラ「まあ、何も起きないだろうが…」スッ…



カチッ…



コブラ「!」

レディ「はまったわ」

コブラ「ああ。しかもさっきの音から考えて、この剣は金属板を受け入れた瞬間にのみ、硬度をあげるらしい」

コブラ「……だが、何も起きない所を見ると、罠でも無い…」

責任者「ギリアン博士?一体何を…」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:18:06.32 ID:KpK00xl90

ボッ…


レディ「あっ!」

コブラ (火が点いた!やはり罠かっ!)


ボボボッ…ボボ…


コブラ「………」

レディ「コブラ!何をしてるのっ!?手が焼けて…」

コブラ「いや…これは罠じゃない…この火には熱も煙も無い」

レディ「…じゃあ、これはホログラム?」

コブラ「そうとしか思えないが、こんな豆電球程度の明かりじゃ受験勉強も出来ないぜ」


責任者「ギリアン博士!その光は何なんですかっ!?」

コブラ「なに、ちょっと葉巻が吸いたくなってね」


ボウッ!


レディ「火が強くなったわっ!」

コブラ「あ、あら?」


ゴオオオッ!


コブラ「お、おいおい、確かに葉巻は吸いたかったがこりゃお節介だ…」

責任者「か、火事だ!おーい火事だーっ!誰か来てくれーっ!」タッタッタッ…

レディ「コブラ、本当に熱くないのっ?」

コブラ「ああ、熱くは…」


コブラ「いや…あっ!アチチッ!熱くなってきたっ!」


ゴワッ!!


コブラ「逃げろレディ!コイツはホログラムなんかじゃ…」



グ ワ ッ ! !








6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:24:10.81 ID:KpK00xl90
瞬間、小さな種火は大きな火の球となり、2人を飲み込む。
その炎の中で、実体を失くしたコブラに語りかけるものがあった。


「永らく待っていたぞ。稀なるソウルを持つ者よ」


コブラ「!」


「お前を待っていた」


コブラ「待っていたにしても歓迎が熱烈すぎるな!」

コブラ「おたくにワープホールへ招待される覚えはないぜ!」


「招待ではない。これは願いだ」


コブラ「願い?」

コブラ「よせよ。願いならサンタにでもするんだな。オレの専門じゃない」


「それが通るのならば、そうも出来よう」

「だが、お前にしか出来ぬ」



炎の輝きが薄れていく。 コブラの実体が再び生を帯びはじめる。




コブラ「待ちなよ。人に願いを押し付けるんだ、せめて名前ぐらいは名乗ってもいいだろ?」


「火となった我が身に、もはや真名など無く、もはや語り名のみが遺される」

「我が名は薪の王」







「世界を救え」
















炎はただそれのみを言い残し、消えた。 コブラは戻った感覚で辺りを見渡し、音を聴く。
足元には蛆が湧く石畳。周りは寒々しい石壁と鉄格子。 頭上から吹き込む風には雪が交じり、コブラの火照った体を冷やす。


レディ「コブラーっ!何処にいるのーっ!」

コブラ「ここだよレディ。牢屋の中だ」


ドグァーッ!!

コブラを見つけたレディは鉄格子を掴むと、力任せに引っ張って石壁ごと鉄格子を外した。

ドゴーッ!!

それと同時に、コブラは頭上から降ってきた干からびた死体を、サイコガンで蒸発させ、死体を蹴落とした騎士を驚かせた。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:26:02.69 ID:KpK00xl90

上級騎士「なっ…!?」


レディ「どうしたのコブラ?」

コブラ「早速お出ましらしい。気をつけろレディ!」

レディ「分かったわ!」


ピシュッ カッ!


リストバンドからワイヤーフックを射出したコブラの照準は、騎士の足元に定められていた。
小型ウィンチが生む猛烈なパワーで引き上げられ、コブラは騎士に猛スピードで接近する。

サッ

そしてコブラは、接近と同時にサイコガンを放っていた。

ドウドウドウーッ!!
グ ワ ッ ! !

騎士「オオオーッ!」


3発のサイコエネルギーは騎士の足元の石積みを吹き飛ばし、剣と盾を弾き飛ばす。
騎士はもんどりを打って尻餅を着いたが、レディはその隙を見逃さなかった。

ササーッ!

上昇するコブラを追い越す程のスピードでかの女は駆け上がると…

ガキーッ!

プレートアーマーの胸元が捻れる程の力で、騎士の胸ぐらを掴み上げた。



騎士「まっ、待ってくれ!話を聞いてくれ!頼む!」ジタバタ

コブラ「そりゃ聞くだけ聞くさあ。なんで死体なんかを落としてきたのか、その訳を是非とも聞かせてほしいね」



コブラは葉巻をくわえると、ジッポライターで火を点けて、寒空に煙を吐いた。


コブラ「とりあえず中で話そうぜ。ここじゃ腹が冷える」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/15(木) 18:29:32.67 ID:KpK00xl90





レディ「……」ゴソ…

レディ「あったわ。確かにここの鍵のようね」


コブラ「やれやれ、鍵だけ落とそうとは思わなかったのか?」

騎士「すまない…」

コブラ「まあいいさ。オレもあんたを殺しかけた。割に合わんと思うがこれでおあいこにしよう」

コブラ「で、なんでオレを助けようとしたんだ?」

騎士「………話せば長くなるが、それでも聞いてくれるか?」

コブラ「分からない事は聞いて覚えろってママに言われてるんだ」ニッ

騎士「そうか…ありがとう…では聞いてくれ」


騎士「私の家の言い伝えに、不死の使命というものがある」

コブラ「不死の使命?」

騎士「そうだ。その使命を帯びた者には不死の印が現れ、この不死院から古い王達の住まう地への巡礼が定められる」

騎士「そして巡礼者となった不死は目覚ましの鐘を鳴らし、不死の使命を知る事になる…と」


コブラ「待ってくれ。不死ってのは、文字通りの不死身って事なのか?」

騎士「あ、ああ。不死に死は訪れない。死ぬ度に自分の全てを少しずつ失なっていくが、キミも私も消える事は出来ないんだ」

騎士「例え骨になり、灰になろうとも」


コブラ「………」


騎士「しかし妙なことだ…ここまで来ておきながら、不死について知らないとは…」

騎士「…まさかキミは、一度も死ぬ事なくここまで来たのか?」

コブラ「いや、そもそもオレは不死なんかじゃないんだ。不死身と呼ばれた事はあるがね」

騎士「驚いたな……まさか人の身のままこの地に来るなんて…一体どうやったんだ?」

コブラ「なあに、一眠りすれば直ぐだったよ」フフッ…



コブラ「それより、面倒だがこりゃあやるしかなさそうだな…」

騎士「やる…不死の使命を、キミが?」

コブラ「ああそうさ。そうでもしないとパパが家に帰してくれないらしい」



コブラ「それにオレ自身、自分を不死身だと思ってるからな」






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