【スペース・コブラ】古い王の地、ロードラン

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398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 20:50:59.23 ID:pbDscTKLo
大事な事なので二度
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 22:18:17.15 ID:lZA9ZyV8o
(ただのコピペ荒らしだと思ってたとは言えない……)
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 23:58:16.45 ID:1RHBkQ3+o
いやただのコピペ荒らしだろ
>>1が書いてないって言ってんだから
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 21:59:50.14 ID:ov1gN0Gs0
戦士「おい!俺はその気なんてねえぞ!男色家扱いはやめろ!」

グリッグス「その口ぶり、まるで男色家が普遍な非だとでも言いたげだが、私はそういう偏見は持ってないよ。放蕩貴族の嗜みとも聞くし」

グリッグス「まぁ…悪戯心があったかと言われれば、その通りかな」

戦士「じゃあ次からはよしてくれ。まったく、タチが悪いぜ」


戦士「で…どうなんだよ」

ソラール「ん?」

戦士「とぼけんなって、女だよ。その顔だ。コブ付きが居ないとなりゃ、さぞかし食うに困らなかったんだろうなぁ」

ラレンティウス「やれやれ、グリッグスの悪戯と木の実の背比べか」

戦士「世捨て人のお前には分からん話さ。で、どうだった?何処の女が一番美味かったんだ?」


ソラール「そうだなぁ……確かに、言い寄ってくる女は多かったな」


戦士「そんなこたぁ分かってるんだよ。俺が知りてぇのは…」

ソラール「ただ…」

戦士「おっ?」

ソラール「…残念だろうが、貴公が期待しているような話は無い」

ソラール「皆、俺の話を聞くと去って行ったよ。どうも小便臭いらしい」

ソラール「まぁ、仕方のない事さ。誰も知らない、ただの古宿の飾りのような像を敬い、物語を想う者など、はたから見れば狂人か、ただの白痴者さ」

戦士「……おい、嘘だろ…もしかしてお前…」


戦士「へへへ…分かんねぇもんだなぁ、ええ?その顔でウブ者とはよぉ」


ラレンティウス「とんだ糞餓鬼だな」

グリッグス「やれやれ…」

ソラール「いいや、まだ分からないぞ?」

戦士「分からない?おいおい負け惜しみかぁ?」


ソラール「俺には愛する人がいて、その人のために、偉大な者へと成るべく旅をしている……そういう話もあり得るんじゃないか?」フフ…


戦士「…なんだそりゃ。それが本当だって誰が信じる?証拠はあんのかよ」

ソラール「証拠は無いさ。それに信じて欲しくて喋ってる訳でも無い。好きに考えて構わないぞ」

戦士「なんだよニヤつきやがってよ。お前さては俺のこと担いで…」

クラーグ「立て。莫迦話はもう十分だ。行くぞ」

戦士「えっ?お、おいもう少し…」


クラーグ「黙れ、この痴れ犬共め。貴様らが雛のごとく求める休息を、疲弊無きこのクラーグが、わざわざ与えてやったのだ」

クラーグ「駄々を捏ねると言うのならば良し。呆けたいのならば焼いて固めて、そこの篝火の一部に変じさせてやろう」


戦士「………」

ソラール「…それは御免だ。さっさと行こう」

402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 02:20:43.18 ID:xU2RWQ/do
ソラールさんの悲しみを垣間見た気がした
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 23:09:03.77 ID:gwfxK8ej0
束の間の休息を終え、一行は旅を再開した。
そもそも不死とは生と死の狭間を漂う者達であり、ソウルと人間性の枯渇に脅かされこそすれ、老いもしなければ飢えも無く、疲れもしない。
正しく時間の働く人界にあっては、飲まず食わずで数ヶ月間駆け回ることに何の障害も無い。
しかし、心はその限りでは無かった。長い旅路には、やはり細やかでも宴が必要だったのだ。


クラーグ「ふん……守衛どもが。たやすく混沌に呑まれおって」


一行の前には、朽ちて段差の崩壊が始まっている、長く広い下り階段が続いている。
その両端に等間隔で置かれた4つのデーモン像が、定められた位置から離れ、一向に近づいていく。
像の大きさは人と変わらないが、低空を浮翌遊する胎児のような石像の腹部から、クラーグは熱を感知していた。
元々は都の衛士として使われていたそれらの中には、今や魔女の火ではなく、熱ぎ混沌が滾っていた。


ボボオオォーーッ!!


4つのデーモン像はクラーグへ向け火炎を放つ。


ゴバァーーッ!!


クラーグの蜘蛛顔は、その火炎を飲み込むだけには止まらぬ熱泥を、4つの像に吐きかけた。
石を削り出して作られているデーモン像は、岩をも溶かす灼熱に包まれ、朽ちた階段を補強する溶剤となって階段に広がった。
重力に押されて階段を流れ落ちる像の残骸の上を、クラーグは歩く。
その後を歩く不死達は、溶岩を避け、飛び越えて進む。


牛頭デーモン「グオオオ!」ドドッ!!


階段を抜けた一行へ頭突きによる突進を行うべく、猛進を始めたデーモンの咆哮は、地中に眠る一匹のワームを叩き起こし、一行に気付いていない他のデーモン像を起こした。


牛頭デーモン「ブゴオオーーッ!!」┣¨┣¨┣¨┣¨ドド!!!

クラーグ「………」


一行へ向け突進する牛頭デーモンとクラーグは対峙する。
そのクラーグの背後から散った不死達は、牛頭以外の排除にかかった。
ソラールと戦士はワームへ向かい、グリッグスとラレンティウスはデーモン像へ向け術を放つ。

ガゴッ!! ドゴオオォン!!

牛頭デーモンに組みつき、押し倒したクラーグは、蜘蛛頭を撫でた。
とびきり煮えたぎった溶岩を吐き出すよう促された蜘蛛頭は、岩を煙へと変える程の熱流を口の中で練り始める。

戦士「おおお!」ドカッ!

ワーム「ギョアアーッ!!」

ワームが口から何かを吐き出そうとした瞬間に、戦士の投擲した直剣がワームの口を貫く。

バジィン!!バリバリバリ!

激痛に身悶えするワームのやわ腹には、雷の槍が突き刺さった。
ワームの腹を貫いた雷は、戦士が突き刺した剣を通してワームの体内を食い荒らし、焼き尽くす。
命を失ったワームが崩れた後に残った剣を、戦士は拾い、二人の術師へと援護に向かう。

ボン! ドウン!

だが援護の必要も無く、グリッグスのソウルの矢は既にいくつかのデーモン像を打ち砕いており…

ガスッ!ガコッ!

最後のデーモン像も、激しい発汗を纏ったラレンティウスに、背後から手斧を何発も打ち込まれ、熱を失いかけていた。


ドグワッ!!!


戦士「うおっ!?」


不意に生じた爆音の出所を、身構えた戦士は視線で追った。
見ると、上半身を影として石畳に圧入された牛頭のデーモンが、ちょうど白い霧となって消えていくところだった。

戦士「えげつね…くわばらくわばら…」

ソラール「流石だな…手を貸さなくてもよかったかな?」

404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 23:11:48.55 ID:gwfxK8ej0
なんかおかしいと思ったら変換が効いてるじゃないの。
ほんとこの機能いらない。書き直す。
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/14(土) 23:14:03.24 ID:gwfxK8ej0
束の間の休息を終え、一行は旅を再開した。
そもそも不死とは生と死の狭間を漂う者達であり、ソウルと人間性の枯渇に脅かされこそすれ、老いもしなければ飢えも無く、疲れもしない。
正しく時間の働く人界にあっては、飲まず食わずで数ヶ月間駆け回ることに何の障害も無い。
しかし、心はその限りでは無かった。長い旅路には、やはり細やかでも宴が必要だったのだ。


クラーグ「ふん……守衛どもが。たやすく混沌に呑まれおって」


一行の前には、朽ちて段差の崩壊が始まっている、長く広い下り階段が続いている。
その両端に等間隔で置かれた4つのデーモン像が、定められた位置から離れ、一向に近づいていく。
像の大きさは人と変わらないが、低空を浮遊する胎児のような石像の腹部から、クラーグは熱を感知していた。
元々は都の衛士として使われていたそれらの中には、今や魔女の火ではなく、熱ぎ混沌が滾っていた。


ボボオオォーーッ!!


4つのデーモン像はクラーグへ向け火炎を放つ。


ゴバァーーッ!!


クラーグの蜘蛛顔は、その火炎を飲み込むだけには止まらぬ熱泥を、4つの像に吐きかけた。
石を削り出して作られているデーモン像は、岩をも溶かす灼熱に包まれ、朽ちた階段を補強する溶剤となって階段に広がった。
重力に押されて階段を流れ落ちる像の残骸の上を、クラーグは歩く。
その後を歩く不死達は、溶岩を避け、飛び越えて進む。


牛頭デーモン「グオオオ!」ドドッ!!


階段を抜けた一行へ頭突きによる突進を行うべく、猛進を始めたデーモンの咆哮は、地中に眠る一匹のワームを叩き起こし、一行に気付いていない他のデーモン像を起こした。


牛頭デーモン「ブゴオオーーッ!!」ドドドドドド!!!

クラーグ「………」


一行へ向け突進する牛頭デーモンとクラーグは対峙する。
そのクラーグの背後から散った不死達は、牛頭以外の排除にかかった。
ソラールと戦士はワームへ向かい、グリッグスとラレンティウスはデーモン像へ向け術を放つ。

ガゴッ!! ドゴオオォン!!

牛頭デーモンに組みつき、押し倒したクラーグは、蜘蛛頭を撫でた。
とびきり煮えたぎった溶岩を吐き出すよう促された蜘蛛頭は、岩を煙へと変える程の熱流を口の中で練り始める。

戦士「おおお!」ドカッ!

ワーム「ギョアアーッ!!」

ワームが口から何かを吐き出そうとした瞬間に、戦士の投擲した直剣がワームの口を貫く。

バジィン!!バリバリバリ!

激痛に身悶えするワームのやわ腹には、雷の槍が突き刺さった。
ワームの腹を貫いた雷は、戦士が突き刺した剣を通してワームの体内を食い荒らし、焼き尽くす。
命を失ったワームが崩れた後に残った剣を、戦士は拾い、二人の術師へと援護に向かう。

ボン! ドウン!

だが援護の必要も無く、グリッグスのソウルの矢は既にいくつかのデーモン像を打ち砕いており…

ガスッ!ガコッ!

最後のデーモン像も、激しい発汗を纏ったラレンティウスに、背後から手斧を何発も打ち込まれ、熱を失いかけていた。


ドグワッ!!!


戦士「うおっ!?」


不意に生じた爆音の出所を、身構えた戦士は視線で追った。
見ると、上半身を影として石畳に圧入された牛頭のデーモンが、ちょうど白い霧となって消えていくところだった。

戦士「えげつね…くわばらくわばら…」

ソラール「流石だな…手を貸さなくてもよかったかな?」
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 23:27:42.39 ID:qtiaqNM00
おつ
ほんと余計な機能だわな
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/15(日) 00:43:59.47 ID:MSmCYFEso
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 08:40:13.01 ID:VexeU2Ts0
MOBの名前間違えてました。
ワームの名前は正しくは「穴掘りウジ虫」でした。
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/15(日) 12:25:05.73 ID:VexeU2Ts0
戦士「…ん?なんだありゃ?」

ソラール「どうした?」

辺りに敵がいないか警戒していた戦士が何かを見つけた。
それは穴掘りウジ虫が溶けた後の地面に刺さっており、赤い大地にあって更に紅く輝いていた。
その不自然な程の煌めきに吸い寄せられ、戦士は歩み寄り、土を掘って煌めきを手にとる。


戦士「……おい見ろ!こりゃ赤楔石だ!」

ラレンティウス「なにっ!?」

グリッグス「え?」


にわかには信じがたい報を聞きつけ、不死達は報に駆け寄った。


戦士「すげえ…噂には聞いていたが、まさか本当にあったなんてな…」

グリッグス「まさかこの目で見ることができるとは…」

ラレンティウス「それもかなり大きい…輝きも伝承の通りだ。やっぱり神々の地なだけはあって…」

ソラール「物知らずで悪いが、俺には何が凄いのかさっぱりなのだが」

グリッグス「楔石は、鍛治の神だけが扱える金床から剥がれ落ちた薄片だと言われているのは、知っているだろう?」

ソラール「うむ」

グリッグス「赤い楔石とは、それらに何らかの形で新たに炎の力が宿った物を言うんだ。楔石の欠片でさえ、人の世界では神の聖遺物とされているんだ、赤い楔石ともなれば、その価値は計り知れない。武器に刻み込むための繋ぎとして緑色の楔石も必要だが、もし武器に刻め込めたなら、その武器は太古の神々が操った炎を永久に纏うことになる。聖剣も、救国の英雄も生まれるだろうし、一国の王の心を奪うことも…」



クラーグ(奴隷鍛治の金床ごときに鼻息を荒げおって…神ならば節操無く畏れ敬う者には、良い玩具だろうがな)

クラーグ(騒ぐべきは、この封印だろうに)


楔石に集っている不死達を放っておき、クラーグは歩みを進め、止めた。
目の前には霧が立ち込めているが、その霧に浮かぶ粒は太陽色に輝いている。
不死達は、その輝きは赤みがかった景色が、色を霧に映しているだけに過ぎないと思っている。
しかし、魔女の眼は人には知れぬ真実を見抜く。太陽色の輝きが、誰を示しているのかさえも。


クラーグ(この輝きは、かの大王による封印だろう……母が混沌を解き放った日に、我らを辛うじて救ったものだ)

クラーグ(それ故に固い封であったとは思っていたが……しかし、混沌が溢れる今も形を保つなど、ありえぬ事だ)

クラーグ(何より、何故、あのような形で、あのような者まで封じている?)


クラーグの眼に、かつて見た輝きが映る。
光を放ち、波のようにうねる封印に御される、ソウルでも人間性でもない未知の力。
それらが持つ謎は、クラーグの中で更なる神秘へと変貌した。



クラーグ(太陽の光の大王……何故にかの神は、コブラに潜む『門』に同じ封を敷いた?)

クラーグ(アノール・ロンドの王は、ロードランに居もしなかったであろう彼奴の中に何を見た?)




ソラール「…つまり、人の手に余る物ということだな」

グリッグス「掻い摘めば、そんなところだ。ヴィンハイムの竜学院ですら探求を諦め、風化した歴史に混じる雑音と…」


クラーグ「戻るぞ」


グリッグス「されつつあって……えっ?」

戦士「は?なんでだ?」

クラーグ「やはりここから先は封印されている。太陽の光の王の許しが要るようだ」

ソラール「!!」ピクッ

戦士「え…おい…それじゃ働き損かよ…」

410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/15(日) 16:15:18.13 ID:alH7r1FT0
太陽と聞いちゃ黙っちゃいられないソラール
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/15(日) 18:01:51.26 ID:lsMXnnfpO
ソラールさん感激の展開が来る?
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/16(月) 00:56:39.41 ID:70QjR4CO0
>>304を再訂正。
「なっ、おい、離せ!足手まといはごめんだぞ!」
というセリフがジークマイヤーのものであると訂正していましたが、正しくはビアトリスのセリフでした。
なので正しくは『ビアトリス「なっ、おい、離せ!足手まといはごめんだぞ!」』という文になります。
もうガバガバ。
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 01:25:32.75 ID:b3oeZaDhO
正直クオリティ高いから気にならないし大丈夫
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 11:20:07.52 ID:VwB17MxP0
最高学府がひきつけ起こすレベルでこの世の謎への回答が転がってる一戦闘フィールド
なお主人公はもっととんでもないところで文字通り道草食ってる
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/16(月) 12:18:27.68 ID:70QjR4CO0
ラレンティウス「働き損…なのか?」

クラーグ「損などではない。破れぬ封印と知れただけでも十分」

クラーグ「あとは秘した種火を取り戻すのみ。貴様らは先に引き返せ」

ラレンティウス「種火……まさか、あの炎の種火があると言うのですか!?ここに!?」

クラーグ「秘匿が破られていないのならな。もっとも取り戻したところで封印を超えられる訳もない。鍛えに使う鍛治道具も、既にこの先で溶鉄となっていよう」

グリッグス「それなら、なぜそんな使えぬ秘術を探すのですか?」

クラーグ「己が杖を持たぬのなら、術書を無智に奪われても良いとはならんだろう」


ラレンティウス「俺もご一緒させて下さい!炎の神秘を見たいんです!」


戦士「また始まったよ…よせよ、この先に進めねえってんだから」

ソラール「………」

クラーグ「いや、封印の先には無い。ここから左に向かった見張り廊下跡に隠されている」

ラレンティウス「それでは…!」

クラーグ「ならん。我らの秘術は我らのもの。貴様のような赤児の如き未熟者に、秘奥を見せるわけも無かろう」

クラーグ「帰れ」カサカサカサ…


ラレンティウス「………」


戦士「ははは、行っちまったな」

グリッグス「しかたないさ。私の師も、秘術となるとさっぱり教えてくれない。そんなものさ」

ラレンティウス「………はぁ…」


ソラール「………」




ラレンティウスの野心がまたも打ち砕かれたが、ソラールの思考からは彼を慰めるという配慮さえ消えていた。
ラレンティウスは己の領分を忘れてクラーグに同行を申し出たが、ソラールもまた、クラーグの言葉に己の本分を揺さぶられていた。

求めてやまない物が、前触れ無く眼前に現れる。
例えそれが考え違いや激しい期待から来る、過ぎた妄想や幻覚の類いであったとしても、求める者は、それらに対し全くの無力になる。
理性や情を保ちつつ、それらを凌駕するもの。欲望には、人ならば逆らえない。
理想や真実ではなく、偉大な輝きを求める者なら尚更に逆らい難く…



ソラール(太陽の光の王の封印……混沌の地に、かの王は所縁がある…)

ソラール(空の太陽は熱く輝く…だが、太陽の力の根源は空には無い。力の根源はロードランにある…神の地にある…)

ソラール(太陽の光の王は、混沌に溢れたこの地を封じた。なんのために…)


ソラール(………)


ソラール(いや、そもそも俺は何を求めている?)

ソラール(太陽の偉大さ…太陽の光の王の偉大さ…偉大な輝き…偉大な温もり?いや…)



そして、苦悩する。
人が何かを偉大と評する時、その偉大さには見えぬ闇や、解けぬ謎が含まれる。
全てが分からぬからこそ偉大であり、闇や謎が害をなさないからこそ、人は偉大さを易々と敬えられるのだ。
闇や謎が見えぬからこそ偉大であるならば、姿無き偉大さを目指す者に、確たる答えなどもたらされるはずも無いのである。


ソラール「………」


太陽の戦士の心の奥底には、求める物の姿は無い。
だが、求める心は熱量を高め続け、姿無き物を求め続ける。
暗闇を求めるその行いこそ、心の闇を深め、育むとも知らずに。
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 13:22:10.44 ID:7BCBBabWo
ソラールさんが闇落ちしてしまう……
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/16(月) 22:23:39.49 ID:FFiV7Pj40
ソラールの中で蠢いてるものってコブラの原動力に似てる気がする
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/04(土) 02:22:24.94 ID:gtw99HFi0





















コブラ「ふあ〜よく寝たぜ〜」




上体を起こし、コブラは両手を天井に向かって伸ばした。
次に立ち上がると、上体をねじったり、足首を回したりと、せわしなく体操を始める。


ローガン「起きたかコブラ。気を悪くしたらすまないが少し話が…」

コブラ「気を悪くすると思うんなら今話さなくったっていいだろ」コキコキ…

コブラ「レディー、今何時だ?」

ビアトリス「?」

レディ「なぁにコブラ、寝ぼけてるの?ここはアノール・ロンドよ。タートル号の中でもないし、ラスベガス・ステーションでもないのよ?」

コブラ「いやぁちょっと言ってみただけさ。シャワーが恋しくてついね」


コブラ「おいジーク、起きる時間だ」

ジークマイヤー「ん?…おおう!つい寝てしまった!」ガバッ

ジークマイヤー「………」


真鍮鎧の騎士「………」


ジークマイヤー「はて…貴公には見覚えが無いが…」

ジークマイヤー「いや、ここはどこだ!?まさか敵に捕らえられ…」

真鍮鎧の騎士「生憎だが違う。貴公はそこのコブラという男に連れられ、この篝火に休んだのだ」

真鍮鎧の騎士「それと、私は貴公の敵では無い。この篝火の番人だ」

ジークマイヤー「番人……すると、ここの火防女か?いやはや申し訳ない。鎧姿の火防女と会うのは初めてでな。はっはっは!」

ジークマイヤー「それにしても、まさかあの難所を無事抜けられるとは……てっきり、一撃の元に斬り伏せられたと思ったが…」

ビアトリス「無事…?」

ローガン「まぁ理性が消えとる訳でも無し。無事と言えばその範疇ではあろうな」


ローガン「してコブラよ。眠気は覚めたかね?」

コブラ「ああ、おかげさんで。それでしつこく尋ねるに値する話ってのは何だい?」

ローガン「貴公のためにと草毟りをしたついでに、私が見た黄金色の霧についてだ」

コブラ「黄金色の霧?」

ローガン「うむ。ここから出て左手側に進み、巨人を一人打ち伏せた先に、霧はあるのだが…」

ローガン「どうも、あれは私が知るところの『太陽の光の王』の封印であるらしい」

コブラ「!!」

ローガン「我が古巣の竜学院に、名誉ある魔法の徒にのみ許された秘奥書がある。それらに黄金色の霧について記した物がいくつもあったと、私は記憶している。闇の徒の手より偉大な力を守るため、最高神とされる者のソウル分け用い、封を施す…と」
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 15:42:26.66 ID:1Z8NzC9CO

悲報
クソまとめサイトあやめ速報、あやめ2nd
創作活動への冒涜続行


・SSちゃおラジシリーズの盗作が発覚
作者も自白済み


・各まとめサイトにちゃおラジの盗作が伝えられる
真っ当なまとめサイトはちゃおラジシリーズを削除


・まとめサイトあやめ2ndはちゃおラジの削除を拒否
独自の調査により盗作に当たらないと表明


・あやめ2ndが荒れる
あやめ管理人は盗作だというちゃんとした証拠をもってこいと言う


・かと思いきやあやめ管理人、盗作に当たらない発言も証拠を求めた発言も寄せられたコメントもなにもかも削除
全部もみ消してなかったことにする気かとあやめ2ndもっと荒れる


・あやめ2nd、ちゃおラジシリーズは盗作ではないがこのままではサイト運営に不都合なためと削除


・後日あやめ2nd、ちゃおラジが盗作ではない独自の理論を公開
ちゃおラジシリーズ再掲載


・あやめ2nd、多数のバッシングにあい数時間後ちゃおラジシリーズ全削除
自らの非を全て認める謝罪記事を掲載


・謝罪記事掲載から5日後、あやめ2nd謝罪記事削除
サイトは謝罪時から通常通りの運行だった
またもみ消して逃げるのかと荒れる


・あやめ2ndに迷惑だから釈明するなり謝罪するなりしろとの訴えが出される


・あやめ管理人釈明なし
責任を逃れ私欲に走る

この間、あれだけちゃおラジへのコメントを削除したにも関わらず以下のようなコメントの掲載を承認
ダブルスタンダードは健在
http://ayamevip.com/archives/52295361.html#comments


ご意見はこちらまで
ayamevip@gmail.com


あやめ管理人は謝罪記事の再掲載を行え

420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 15:43:50.58 ID:jqo7ogdcO

悲報
クソまとめサイトあやめ速報、あやめ2nd
創作活動への冒涜続行


・SSちゃおラジシリーズの盗作が発覚
作者も自白済み


・各まとめサイトにちゃおラジの盗作が伝えられる
真っ当なまとめサイトはちゃおラジシリーズを削除


・まとめサイトあやめ2ndはちゃおラジの削除を拒否
独自の調査により盗作に当たらないと表明


・あやめ2ndが荒れる
あやめ管理人は盗作だというちゃんとした証拠をもってこいと言う


・かと思いきやあやめ管理人、盗作に当たらない発言も証拠を求めた発言も寄せられたコメントもなにもかも削除
全部もみ消してなかったことにする気かとあやめ2ndもっと荒れる


・あやめ2nd、ちゃおラジシリーズは盗作ではないがこのままではサイト運営に不都合なためと削除


・後日あやめ2nd、ちゃおラジが盗作ではない独自の理論を公開
ちゃおラジシリーズ再掲載


・あやめ2nd、多数のバッシングにあい数時間後ちゃおラジシリーズ全削除
自らの非を全て認める謝罪記事を掲載


・謝罪記事掲載から5日後、あやめ2nd謝罪記事削除
サイトは謝罪時から通常通りの運行だった
またもみ消して逃げるのかと荒れる


・あやめ2ndに迷惑だから釈明するなり謝罪するなりしろとの訴えが出される


・あやめ管理人釈明なし
責任を逃れ私欲に走る

この間、あれだけちゃおラジへのコメントを削除したにも関わらず以下のようなコメントの掲載を承認
ダブルスタンダードは健在
http://ayamevip.com/archives/52295361.html#comments


ご意見はこちらまで
ayamevip@gmail.com


あやめ管理人は謝罪記事の再掲載を行え

421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:00:17.86 ID:gtw99HFi0
自己申告しないと、単にコピペしてるタイプのまとめサイトには丸ごと本文扱いされて掲載されるので、一応レス。
>>419>>420は荒らしで、>>421、つまりこの文章も本文ではありません。よろピク。
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 18:43:09.22 ID:kQ7iUncS0
ついにコブラの側にも太陽神の封印か

ほんとどこにでも湧くなこの荒らし
まとめサイトなんか興味ないから心底邪魔
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/05(日) 00:57:34.61 ID:gmeZ0M3D0
太陽の光の王の封印という言葉に、コブラは覚えがあった。
完全に同じでは無いが、これと似た音の響きを持つ言葉。
それは今コブラの思考に、混沌の魔女クラーグとの会話として音を大に跳ね回っていた。


『魂だのなんだのについて、俺が知りたい事は一つ』

『なぜ俺の精神力は、他人の精神力を必要とするほどに、回復しなくなったのか………それだけさ』


『回復はしている』


『なに?』


『我ら魔女には、ソウルと人間性を見抜く力がある。そうでなければ、炎を御する事など出来ぬ』

『その我らの眼に映るのだ。貴様のソウルと人間性は光を放ち、常に力を大きくし続けている』

『だが、許されていないのだ』


『許されていない?誰の許しが必要だっていうんだ?』


『誰あらぬ、太陽の光の王の許しだ』





コブラ「封印、か……なるほどね」

コブラ「少しづつパズルが組み上がってきたぜ」

レディ「何か分かったのね?」

コブラ「ああ。ローガン、告白させてもらうが、あんたの言う光の王の封印とやらは実を言うと俺の中にもあるんだ」

ローガン「なに?」

ビアトリス「太陽の光の王の封印が…コブラの中に?一体どういう事だ?貴公はロードランの神々の力が及ばぬ処から来たはずではないのか?」

真鍮鎧の騎士「!?…待ってくれ、今なんと…」

コブラ「おっと今は講義中だ。余談は本題のあとに頼むぜ」

真鍮鎧「う…うむ」


コブラ「それでだ。その封印は俺の中にあるサイコエネルギーを塞き止めているだけではなく、ここで何か馬鹿でかい力を守っている。ジイさんの言う通りならかなりの昔からな」

コブラ「だが、もしそうなら矛盾が出てくる。薪の王によってロードランに連れてこられた時に、俺は封印を貼り付けられたのであって、俺は昔からここにいた訳じゃない」

コブラ「そこで考えた。その封印を施した太陽の王様にとって、なんらかの非常事態がロードランで起こっているってな」


ローガン「非常事態…というと?」

コブラ「さぁな、そこまでは分からんさ。だがかなりの大ごとだろう。わざわざ薪の王に俺を招かせておきながら、封印を施して闇の手の者とやらから守っているんだからな。この矛盾が答えだ」

コブラ「助っ人宇宙人を呼びながらその選手を宣伝せずに隠す。そういう球団は大抵借金がかさんでるものさ。恐らく不死の使命か、あるいはその使命を不死に課した神々そのものが、今は窮地に立たされているんだろう」

ジークマイヤー「?…?…すまん、知らない物が話に出すぎて何がなんだか…」

レディ「この先のんびりしてはいられないかもって事よ。そうでしょうコブラ?」

コブラ「ああ。うかうかしてると帰りそびれるかもな。早いとこ出発しよう」


ローガン(確かに、もしそうなら急がねばならんな。神々の地では多くを見ておきたい)


真鍮鎧の騎士「それで、貴公はどこから来たんだ?待ってやったんだ、答えてくれてもいいだろう」

コブラ「宇宙からさ」

真鍮鎧の騎士「うちゅう?」

コブラ「ロードランとは別の世界さ。一眼見りゃあ、きっとアンタも気にいると思うぜ」

コブラ「さ、出発だ!」

真鍮鎧の騎士「………」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/05(日) 01:03:48.20 ID:tlBy6aN0o
大物助っ人呼んでおいて年棒の契約もしてないあたり貧乏球団というのは説得力あるな
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/05(日) 19:39:13.37 ID:KG04/B5y0
出撃前にクラーグ(人間型下半身)のポスターのケツを叩いていく球団
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/06(月) 12:55:36.21 ID:O9Z3pPKG0
篝火から離れ、小部屋から抜け出たコブラに、暖かな陽光が当たる。
コブラが一眠りした間に、アノール・ロンドは全く姿を変えていなかった。
まるで、時が止まっているかのように。


ジークマイヤー「まぶしっ」

コブラ「沈まぬ太陽とは気が利いてるね。いっそプールも付けたらどうだ」


時間に異常をきたした謎多きロードランに、コブラは慣れていたつもりだった。
しかし、紛れもなくこの地の中心地であろう神の都にさえ、理を崩した時間が横たわっている事に、コブラは言い知れぬ不安を覚えた。
悪い予感ほどよく当たる。コブラの中に、己の人生訓が染み入る。


ゴゴゴ…


長方形の大バルコニーを横断し、一行がバルコニーから少し飛び出た日除けに入ると、日除けの真下にある石畳が綺麗な円形に割れ、緩やかに降下を始めた。
円形にくり抜かれた縦穴を、一行は降りてゆく。


ビアトリス「なんという…まだ仕掛けが動くのか…」

ローガン「ここは神の地で、見て触れ得るものも全て神が創ったものだ。我々では推し量れんさ」

コブラ「よくあることだ。インディージョーンズでもそうだった」

ジークマイヤー「良くあるのか!?」

レディ「フフッ、ないわよ」


昇降機で降り終えると、昇降機を中心に螺旋の下り階段が伸びていた。
階段の石段も美しく切り詰められたままであり、時間の経過を全く予感させない。
実際に降りても、埃のひとつも立たなかった。
そして、一行が階段を下り終え、縦穴から出ると…


鐘のガーゴイル「グオオオオオオオオオ!!!」

レディ「えっ!?」


不死教会に住み着いていた石像、ガーゴイルが駆けて来た。
ガーゴイルは一行目掛け斧槍を振り下ろし…


ガイイィーーン!!


コブラとジークマイヤーの特大剣にその凶刃を防がれ、跳びのき、怒りに唸った。


コブラ「おたくもしつこいね。バレてるネタばかりだと客に飽きられるぜ」

ジークマイヤー「石像の化け物め!大人しく退けい!」

鐘のガーゴイル「ウグオオォーーッ!!」

レディ「降参する気は無いみたいよ!また来るわ!」

ローガン「じゃあこれだ」シュゴーーッ!!


再び飛び出したガーゴイルに向け、ローガンはソウルの槍を放つ。


鐘のガーゴイル「!」バファッ!!

ローガン「お、避けおった」


しかし槍は跳び越され、石床に当たり、消えた。
宙に浮いたガーゴイルは羽ばたきを始め、空気を吸い込む。


コブラ「炎を吐くぞ!散らばれーっ!」

427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/13(月) 10:37:31.64 ID:rI7HlRjX0
コブラの合図とともに一行は各々回避行動に移る。
しかし、ガーゴイルが吐き出したのは火炎では無かった。


バリバリバリッ!!


ジークマイヤー「のぉ!?」バチィーン!

レディ「雷!?」バリリッ!


ガーゴイルの雷は石床を伝わり、各々が回避した先にまで広がり、皆を感電させた。


コブラ「へへへ…コイツはいっぱい食わされたな」ビリビリ…

ビアトリス「クッ…まさか雷とは…」ビリビリ…

ジークマイヤー「………」グッタリ


魔法を学び携える者は、雷を含めた、物理的衝撃に拠らない力に耐性がある衣服を着込む習慣を持ち、レディのエネルギー耐性は単純な電気如きにはビクともしない。
しかし、全身を高電導性金属で包んだジークマイヤーと、ほぼ生身と言って差し支えないコブラにとって、この雷は大きな痛手であった。


ローガン「タマネギ君……おや、気絶しておる」

コブラ「呑気なもんだな。ピクニックに来たわけじゃないんだぜ」

鐘のガーゴイル「グアアア!!」ブオーン!!

コブラ「ほーらおいでなすった!」サッ


ガギーーッ!!


しかし、痛手を被ったはずのコブラは、ガーゴイルに振り回されるハルバードを特大剣で受け止めた。
持って生まれた恐るべき自然治癒力が、コブラにそのような芸当を可能にさせていたのだった。


コブラ「今だレディーっ!」


ガーゴイルの動きがほんの数秒封じられている間に、レディは既にガーゴイルの背後に回り込んでいた。


ズガーッ!!

ガーゴイル「ゴエエッ!」


跳躍したレディが振るったフランベルジュに首を貫かれたガーゴイルは、レディを振り落とそうと頭を上下する。
しかし、アーマロイドの膂力で捻られたフランベルジュは、レディが振り落とされるより先に、ガーゴイルの首に出来た穴を押し広げ…


バゴォーーッ!!


首まわりの彫刻を粉々に破壊した。首を捩じ切られたガーゴイルからは魔力が消え、代わりにソウルが漏れ出てきた。
ガーゴイルは沈黙し、もげた頭からは兜が、崩れゆく両手からは盾とハルバードがそれぞれ落ちた。


ローガン「いやはや、まったく凄まじい体力だ。貴公を素早い鋼の体へと変えた術の体系を、是非とも知りたいものだ」

レディ「あら、鋼の体ですって。あなたのことじゃない?」

コブラ「俺のファンがまた増えたか。ペンがあるなら帽子にサインしてやるところだ」ニッ

ローガン「?…なんの話かね?」


ジークマイヤー「はっ!?」ガバッ


ビアトリス「一足遅れだ。もう終わったよ」

ジークマイヤー「!?……うむむ…面目無い」

ビアトリス「重鎧で雷を受けたんだ、生きてるだけでも幸運というものだよ」

ビアトリス(やれやれ、もうエストに出を出すことになるとは。先が思いやられるな…)
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 12:18:00.33 ID:/FA5Tqqu0
さすが神界楽には進ませて貰えんなあ
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/13(月) 14:27:28.90 ID:rI7HlRjX0
×出を出す
○手を出す
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/13(月) 15:10:46.76 ID:rI7HlRjX0
コブラ「イテテ…まだ体が痺れるぜ。テーザー銃食らった次の日みたいだ」

ジークマイヤー「それだけで済んでいるとは、羨ましいものですなぁ」グビグビ…


エストをがぶ飲みするジークマイヤーを尻目に、コブラは周囲の状況を確認するため、右へ左へと歩いた。
そして、自分達が横幅の大きい石橋の上にいて、行くべき先は途切れている事を確認すると、次は橋の途切れた先に建つ、巨大な建造物を見据えた。
建造物は円柱状であり、屋根を持ち、途切れた橋と符合するであろう突起を、両橋に備えている。


コブラ「まったくひどい仕掛けを考えるもんだ。俺ぐらいにしか解きようが無いぜこりゃ」


コブラが建造物に悪態をついている頃、レディは一人、縦穴からの出口の近く、石橋の根元から横に降りた所にある、横道とも言い難い細い垂木を渡っていた。
垂木の先には、教会然とした建物があり、それはアノール・ロンドにあるものの例に漏れず巨大で荘厳だったが、窓の一つが割れていた。
彼女の行動にビアトリスもジークマイヤーも気づいていなかったが、一人だけ気づいていたローガンが、発見の喜びをレディから取り上げまいと口をつぐんだおかげで、二人は気付くそぶりも見せなかった。

レディは垂木を渡りきり、割れた窓から教会の内部を覗き、ため息をついた。


レディ「ジークには無理ね…」


一言呟くと、レディはまた垂木に飛び乗り、来た道を戻って行った。
その様子を眺めていたローガンはふと、レディと同じ猫のように身軽さを、どうにかしてかの呪術に備えられない物かと考えた。


431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 20:38:14.39 ID:MsWw0l19O
なんというタフガイ……
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/14(火) 00:17:15.98 ID:upP9qpGs0
×猫のように身軽さを
○猫のような身軽さを
誤字が多すぎる。自動添削機とかあったらほちい。
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/14(火) 03:27:09.29 ID:upP9qpGs0
レディ「ダメね。向こうには行けないわ」

ビアトリス「? どこに?」

レディ「隣にある建物を少し覗いてみたのよ。中は広大な吹き抜けになっていたわ。建物自体が一つの空箱とでも言うべきね」

レディ「下に降りるための階段やハシゴは見当たらなかったわ。見えたのは数本の細長い梁と、梁の上に立つ何人かの見張りだけ。とても大人数で進めるような場所じゃないわ。足を滑らせればそのまま真っ逆さまだし、そんな不安定な足場であの人数を捌くのは、例え魔法が使えたとしても難しいでしょうね」

ビアトリス「そんなはずは無い。見張りぐらいなら私と先生の魔法で…」

レディ「見張り一人につき見えただけでも5本のナイフは携帯していたわ。複数本のナイフを持ち歩いている事だし、多分投げてくるでしょうね、一斉に」

ジークマイヤー「おおう…」

ビアトリス「………」

コブラ「だろうと思ったよ。レディ、コイツを見てくれ」


レディからの報告を受けたコブラは、石橋の先に見える建造物に指をさす。
コブラの指が示した物を、レディと不死達は見上げた。


コブラ「コイツは多分、回転しながら降りてきてこの橋の先になるんだ。形からしてもそうとしか考えられない」

コブラ「だが、その仕掛けを動かすスイッチの類はこの橋には見当たらない。レディの言った梁とやらを渡りきった先に、そのスイッチがあると見ていいだろう」

ビアトリス「だが、その梁は渡れないんだろう?」

コブラ「ああ、渡れんさ。俺が思うに、だから不死の使命を知る者が今まで出なかったのさ。はじめから使命をやらせる気が無いんだ」

コブラ「アノール・ロンドの巨人衛兵共は自動操縦のロボットとも考えられなくも無い。ガーゴイルもしかりってところだろう」

コブラ「だがコイツは訳が違う。客をわざわざ呼んでおいて、その客を明らかに撥ねつけている。不死を厳選して英雄を見つけ出すにしては徹底しすぎだ。これじゃ英雄だって通れやしない」

コブラ「それにそういう悪辣なイタズラは、ここに招待する前の古城で済ませるはずだ。英雄に苦難を押し付けるにしても、神の国に招待するからにはまずは相応の宴を用意して英雄をもてなすのが、神話においての王道のはずだぜ」

ジークマイヤー「それはそうかもしれんが…些か考えすぎではないか?まだ苦難が続いているとも思えるだろう?」

ローガン「…なるほど。貴公の考えの先が読めたぞ」


ローガン「つまり、アノール・ロンドはすでに死に体であり、不死の使命も今や風前の灯だと言いたいのだね?」


コブラ「そこまで考えちゃいなかったよ。だが、そう考えるのが一番しっくり来るぜ」

コブラ「教会のガーゴイルは、俺たちが鐘に近づいた時に動き出した。巨人の衛兵も近づいたジークに反応して攻撃してきた。ガーゴイルも、巨人も、この橋も、見張りも、全てここの防衛装置なのさ」

コブラ「想像するに、何かから都を守るために装置を起動させたはいいが、その何かを追い払うことが出来ず、やむなく都を放棄したってところかね」

ローガン「で、あるならば……不死の使命は神の国の再建ということか?」

コブラ「そいつは可能性の中でも最悪さ。町興しにしたってディズニーランドをおっ建てるぐらいしかアイディアが浮かばない」チャキッ



ひとしきり自論を整理したコブラは、手を建造物に向けると…


バシュッ カキン!


ワイヤーフックを射出し、建造物に引っ掛けた。


コブラ「だが、ターザン役は譲れないな」シュルルル…


そのままワイヤーのウィンチに巻き取られ、コブラは建造物を登りきった。


ジークマイヤー「確かに並の不死には渡れんなぁ。あんな便利な縄を持っている不死などとは出会ったことがない」

ローガン「うむ。是非に仕組みが知りたいものだ」

レディ「ほしいの?」

ローガン「!? 控えがあるのか?」

レディ「フフッ、ごめんなさい、今は無いわ。でも私たちの船にならあるでしょうね。タートル号って言うのだけれど…」

ローガン「ふむふむ…」

ビアトリス(ウミガメ号?一体どんな船なんだろう)
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 04:20:41.90 ID:2eyjIKvPo
>>432
脳内変換してるから大丈夫よ
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 05:45:55.89 ID:mBIfbGJ7o
うむ、ある程度の誤字なら読み換え出来るしな
書く側としてはそんなこと言われてもやっぱり気になるというのも分かるけど
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/15(水) 10:55:12.14 ID:IQES9Mht0
建造物に登ったコブラの眼に、円形の広場と、その中心に据えられた横回転式のレバーが映る。
レバーを中心にして下りの螺旋階段が伸びており、レバーの真上には大きな日除けが設けられていた。


ガッ ゴゴゴ…


石を成形して作られたレバーは重かったが、手押しが出来ないほどではなかった。
仕掛けは起動し、建造物はコブラの想定した通りに動いた。


ズゴゴゴゴ… ガコーン…


コブラ「第一関門、これにて突破ってわけだ」

レディ「さ、行きましょう」

ジークマイヤー「うむ」


進路を確保した一行は石橋を渡り、横回転式レバーを円形に囲む石床を歩いた。
その歩みを感知して、建造物の陰に隠れていた石像は起動した。



鐘のガーゴイル「グオオオオオオオオオ!!!」ダダッ!

レディ「なっ!?」

コブラ「にっ、二体目だぁ!?」



一度ならず三度も倒した敵と、ほぼ同一と言っても障りのない者が駆け出してきたのには、流石のコブラも驚愕した。
一度敗れた者をそれから二度も敵に差し向けたのだから、流石に四度戦わせるような愚策は無いだろうとタカを括っていたのである。
そして愚策は功を成し、コブラとレディとジークマイヤーの反応は遅れた。
だが魔法使い達の作戦は、一足早くに完成されていたのだった。


ボン! ボン! ドパッ!
バシッ! ボォン!


コブラとレディの間を通った、五発のソウルの光球のうち、三発がガーゴイルに命中。
コブラとジークマイヤーの間を通った、五発のソウルの光球のうち、二発がガーゴイルに命中。
ガーゴイルの盾によって五発の光球が防がれたが、残った光球を五発も食らえば、ガーゴイルとて怯み、動きを鈍らせる。
ビアトリスとローガンにとって、ソウルの太矢とソウルの槍を叩き込むには、その一瞬さえあれば充分だった。


バシイィーーッ!!!


稲光と見紛うばかりの蒼色の閃光は、ガーゴイルの頭部を粉々に粉砕した。
頭部を失ったガーゴイルは倒れ、頭部跡からソウルを立ち上らせつつ、像の輪郭を崩していった。


コブラ「さすがだな!助かったぜ」

ローガン「神の作りしガーゴイルは常に組で動く。伝承の通りであったな」

ビアトリス「神々の文化も修していらしたのですか…?」

ローガン「読めるものは全てな。そうでなくては大魔法防護に対抗し得る槍など見出せんさ」

レディ「大魔法防護?」

ローガン「神の御業のひとつだ。白竜シースを嫌った岩のハベルがまとめた、魔法を防ぐ奇跡の事を言う」

ローガン「実物を見たことは無いが、神の術を越えようと白熱するには格好の題材だったのでな」

コブラ「野心的だな。ギルガメシュにでもなるつもりかい?」

ローガン「野心?……ふむ、野心か…」


ローガン「…いや、やはり単なる好奇心にすぎんよ」
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/16(木) 05:46:16.99 ID:FJPYR2dkO
ただの好奇心でそこまで出来りゃ大したもんだ
さすが大魔法使い
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/23(木) 03:05:41.64 ID:2alb/vH10
石橋を繋ぎ、破魔の像を倒した先には、アノール・ロンドに着いて初めに視界へと映った、影を纏う太陽色の巨城がそびえていた。
巨城はまた聖堂の様でもあり、正門へと伸びる登り階段は、長く、広く、砂埃の一粒さえも許さぬ、新設の輝きを放っている。


コブラ「へへ、近くで見るとまた一段と荘厳だな。イタリアのミラノ大聖堂を思い出すぜ」

レディ「でも規格が大き過ぎるわ。巨人のための城なのかしら?」

コブラ「もしくは神の根城か。ま、入ってみれば分かるさ」


長大な階段を登り始める一行。
その間、ビアトリスとローガンは、ガーゴイルを怯ませた五つの光球を、再び自身の頭上へと展開する。
ソウルの光球は全て特別な魔力が込められており、敵意を見せるソウルへ向かって直進する性質を持つ。
その性質を利用して、熟練の魔法使いは近くにいる敵への防備とするのだ。


ジークマイヤー(便利だなぁ…)


一行の殿に必ずなってしまうジークマイヤーが、浮遊するソウルの光球の汎用性に感心していると…


巨人近衛兵「………」ヌオォ…


正門を守る二体の巨人近衛兵の姿が、階段を登りきった踊り場の奥から現れた。


コブラ「待ち合わせかいお二人さん。俺も今着いたところなんだ」

ジークマイヤー「………」ダッ!

シュンシュンシュン!!


ジークマイヤーが駆け出すと同時に、軽口を叩くコブラの両脇を、浮遊するソウルが通り過ぎる。


ドボボボン!!


巨人達はソウルの光球を大盾で防ぎきったが、衝撃により一瞬動きを止める。その隙にジークマイヤーは一行の先頭まで駆け出ると…

ジークマイヤー「ふぬおおーーっ!!」バッ!

自身の足元へ向け、両手を振り下ろした。彼の右手には、ツヴァイヘンダーではなくタリスマンが握られている。


ドオオオォォーーッ!!!


ジークマイヤーを中心にして発生した白い突風は、コブラとレディを舞い上げ、巨人達の大盾を揺らし、構えを著しく崩した。


コブラ「もらったーッ!」


一時的に無防備になった二体の巨人の頭を目掛け、コブラとレディは落下し…

グワーーッ!!

レディのフランベルジェは巨人の頭を真っ二つに斬り裂き…

グシャアアーーッ!!

コブラの黒騎士の大剣は、巨人の頭から腰までを叩き割った。
深々と斬られた二体の巨人は、血や臓物を噴き出す代わりに、ソウルだけを噴出させ、消滅した。


コブラ(この手応え…やっぱり中身はカラッポか)シュウウゥ…

ジークマイヤー「おお!あっぱれ!」

ローガン(ううむ…これで不死ではないとはな。筋力にソウルを注ぎ込まずにこの力……真に人間か…?)

レディ「ビアトリス、正門を調べるのを手伝ってもらえないかしら?」

ビアトリス「分かった。ではコブラとジークは見張りを頼む。先生は…」


ローガン「………」


ビアトリス「…熟考していらっしゃるようですね。コブラ、悪いが先生の事も頼む」
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/23(木) 08:51:49.70 ID:fmIKQ/mNO
浮翌遊するソウルの光球に感心するジークマイヤーさんがなんかかわいい
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/23(木) 22:42:26.55 ID:2alb/vH10
ビアトリス「うーん……」


ビアトリスは、杖で門をひと撫でしては考え込み、ふた撫でしては腕を組む。
門に手を着け、レディは彫刻の隙間をまさぐる。


ビアトリス「駄目だな。堅く閉ざされている。だが魔力による封印ではなさそうだ」

ビアトリス「そっちは?」

レディ「こっちもダメね。押しても引いてもビクともしないし、鍵穴も見当たらないわ」

ビアトリス「そうか…」

コブラ「急がば回れって事もあるぜ。あれを見ろ」


コブラが指差す方向、正門を正面に見て左手に、金属製の格子扉が備えられた塀が見えた。
格子扉の向こうの奥には、レッサーデーモンが伏せっている。


ジークマイヤー「正門のすぐ横にあのような貧弱な門を置くとは……便利ではあるが、防衛には不向きであるな」

ビアトリス「どうだろうな……そもそも攻められる事など無いという、自負とも思えるが…」

コブラ「どうせ魔法で開かないようになってるんだろう。飛び越えちまえば関係無いがな」スッ


パシュン! カキン!


射出されたワイヤーフックは塀の上部に刺さり、コブラを牽引した。
塀の壁に脚をついたコブラは、ワイヤーを手にロッククライミングの要領で塀を登り、頭頂部に立つと、デーモンに呼びかけた。


コブラ「ヘイタクシー!観光で5名だ」

レッサーデーモン「ギョワワッ!」サッ

コブラ「おろっ?」


一度レッサーデーモンに世話になっていたコブラは、彼らが旅に協力する種族であると思い込んでいた。
その思い込みが仇となった。
レッサーデーモンは仲間を呼び、骨の槍を構えた二体のデーモンに対して、コブラの反応は一瞬遅れた。


ビュン!

コブラ「おおっとっとぉ!」


しかし、反応が遅れたといっても、それは迅速な反撃が行えない程度の遅れである。
飛来したデーモンの雷をスレスレで躱すと、コブラは駄々をこねるように腕を振って、バランスを取った。


ビアトリス「雷!? デーモンにも神への信仰があるのか!?」

レディ「コブラ!これを!」ヒュッ!


コブラは、レディが投げたフランベルジェをキャッチすると…


バチィ!!


二投目の雷をそれで受け…


ブオォン!!

ドカカーーッ!!


背負った特大剣と共にフランベルジェを投擲し、二体のレッサーデーモンの頭を割った。
レッサーデーモンは巨人達と同様にソウルを噴くと、風に掻かれた砂山のように消えた。


コブラ「フゥー強烈だぜ……前のは踏み倒し扱いか」

レディ「大丈夫?」

コブラ「いいや、座禅を組んだあとみたいにビリビリくるぜ」フッ
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/24(金) 05:10:58.15 ID:12eaXGY30
塀の先に降りたコブラは格子扉の内鍵を開けると、扉を解放し、仲間を招き入れた。
ローガンはビアトリスに促されて扉を潜ったせいか、思考の切り替えが緩慢になっている。


コブラ「おっと待った。何か聞こえる」

ジークマイヤー「ん?この音どこかで…」


そんなローガンを含めた仲間達をその場に留め、コブラはレディにフランベルジェを返すと、足音を殺して走った。
不死教会の近くで聞いた覚えのある、連続した金属への打突音が聞こえたからである。
音は、格子扉を抜けた先にある踊り場から、右手側に抜ける横道…
一応とはいえ、城内から聞こえていた。
コブラは踊り場を駆け抜けて、横道側の壁に伏せると、特大剣を構える。
そして思考の中でカウントを減らし…

ダダーッ!

音のする方へ一気に駆けた。
しかし…




巨人の鍛冶屋「? あんた 誰?」

コブラ「!?」ズザザーッ!




予想に反した者に予想に反した言葉を投げかけられ、コブラはかろうじて踏みとどまった。


巨人の鍛冶屋「武器 鍛えるか?」カンカンカン! カカカカカッ…


その巨躯に比べ、あまりに不釣り合いに小さい木槌で、巨人は時計職人の如くロングソードを叩いている。
腰掛ける椅子も小さければ金床も小さく、仕事場自体も彼の体格に比べて異常に小さい。
そこに押し込められるようにして収まっている巨人だが、気に病んだ様子は一切無い。
その態度は、コブラに呼ばれて集まってきた不死達を見ても、変わらなかった。
不死達の驚きは甚だ大きく、ローガンなども正気に戻るほどだったというのに。


ジークマイヤー「…たまげた…」

コブラ「ああ俺もさ。危うく叩き斬って跳ね飛ばされるところだ」

ローガン「巨人が鍛冶仕事をするとは……てっきり鍛治の神が人に命じて武具を作っているものだとばかり…」

ビアトリス「私も伝承が信じられなくなってきました…神を信じるデーモンに、神の武具を作る巨……はっ!?」

ローガン「おや、気づいたかね。ま、質問の権利は譲ろう」


ローガンに遠巻きに促され、ビアトリスは巨人に尋ねる。


ビアトリス「あ…あの、恐れながらお聞き致しますが、あなた様は鍛治の神でいらっしゃいますか?」

巨人の鍛冶屋「ん〜 … 俺 話す 苦手」

ビアトリス「そ…そうですか」

巨人の鍛冶屋「でも 鍛えるの 得意」

巨人「いつでもばんぜん」



カンカンカン! カン!



ビアトリス「………」

ローガン「うむ、取りつく島も無し」

ビアトリス「先生、話が通じません……私の言葉遣いが悪いのでしょうか…」

ローガン「言葉遣いが云々というより、そもそも会話に興味が無いか、鍛治仕事に集中するためにはぐらかしたか、という印象を受ける」

ローガン「彼の気を会話に乗せてやらねばな」

レディ「そういうことなら、たった今良い考えが浮かんだわ」
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/24(金) 13:48:08.88 ID:herC6tpCo
気さくな挨拶吹いた
こんなとこにこんな奴がいるなんて……
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/24(金) 13:53:05.05 ID:MUiHTNLx0
レディのいい考えの安心感
どこぞの司令官とはえらい違いだ
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/24(金) 16:50:28.14 ID:2K7iTZuF0
どこぞの司令官だっていい考えの成功率は3/5だぞ
そのうちの二例が人事系で残り一例は考えは成功したし最低目標(仲間の救出)は達成できたけど敵の目的の阻止そのものは出来ない引き分けだったけど
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/25(土) 20:45:33.51 ID:qGKJrpn90
レディ「ちょっと良いかしら?あなたに仕事を頼みたいのだけれど」


一行の最前列に出て、巨人に触れられるくらいの距離にレディは立った。
巨人は剣を打つのをやめると、レディに顔を近づけ、小首を傾げる。


巨人の鍛冶屋「 あんた 変わってる」

巨人の鍛冶屋「陰の太陽様の まぼろし そっくり」

巨人の鍛冶屋「でも 違う」



ローガン「陰の太陽の幻……陰の太陽…?」

コブラ「謎が増える一方だなぁ。指輪物語読んでる気分だぜ」

ビアトリス「なんだそれは?」



レディ「その陰の太陽様の幻って、なんなのかしら?」

巨人の鍛冶屋「アノールロンド 守ってる 騎士様」

巨人「本当の騎士様じゃない」



コブラ「つまりあの巨人の騎士は幻で、そいつらを操っているのが陰の太陽様ってことか?」

ジークマイヤー「では、私は幻に斬られたのか…?」

ローガン「うむ、恐らく。しかし触れることのできる幻を作るなど、只者ではない。あれらにはソウルまで込められていた」

コブラ「神の御業ってやつか。しかしレディと似てるって事は…」

ローガン「幻によって実体を作り、それにソウルを注いで動かしておるのだろう。人の使う魔法や奇跡とは、根本から異なるようだ」

ローガン「まったく。驚くべきはコブラ、君の世界の技術だよ。考えるだに恐ろしい」

コブラ「なぁに、慣れれば便利なもんさ」



レディ「じゃあ、その陰の太陽様っていうのは、何者なの?」

巨人の鍛冶屋「ん〜 ん〜 」

レディ「………」

巨人の鍛冶屋「…偉大 …言いづらい むずかしい」

巨人の鍛冶屋「喋るの 疲れる…」

レディ(これ以上は聞き出せないみたいね…)


レディ「分かったわ。手間を取らせてごめんなさい。仕事の話に戻るわね」

レディ「これなんだけれど」


レディは巨人に背を向けて、しゃがみこんだ。
巨人の眼にレディの背中に出来た穿ち傷と、熱で歪んだ右手が映る。
コブラこそレディに対し全幅の信頼を寄せてはいたが、不死達はレディの行いに戸惑い、無謀ではないかと、心中巨人を訝しんだ。


レディ「どうかしら?」

巨人の鍛冶屋「 ん〜〜… 」


巨人の鍛冶屋「 公爵様 お前 作った?」

レディ「? いいえ、私は別の世界から来たの。その公爵様ってどんな人?」

巨人「人 違う 公爵様は うろこなしの 智慧あるお方」

巨人「キラキラ てかてか なんでも作る 他は知らない」

レディ(鱗無し……確かに人間では無さそうね)
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/25(土) 21:31:45.77 ID:pSDSln6E0
やっと右手修復の可能性が
でもライブメタルか
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/25(土) 23:55:17.05 ID:qGKJrpn90
コブラ(鱗無し?どこかで聞いたことがあるぞ)

コブラ(しかし、どこで聞いた?太陽の光の王と、関わりがあったような……)



レディ「そう……話を戻すけれど、この傷、治りそう?」

巨人の鍛冶屋「多分 かんたん」

レディ「あら、本当?」

巨人の鍛冶屋「エアダイス様のボウガン 竜狩り様の槍 全部なおした」

巨人の鍛冶屋「雷 染み込ませるのと 同じ」

巨人の鍛冶屋「なおすの 得意」

レディ「そう。それならお願いするわ」

巨人の鍛冶屋「ソウル 持ってる?」

レディ「ええ、あるわ。ちょっと待ってて」


巨人に促され、レディは巨人に向き直り、左手を差し出す。
そして鍛冶屋のアンドレイの言葉の通りに、レディは自分が倒してきた敵対者に思いを馳せた。
すると彼女の左掌から、煙とも光ともつかないものが現れた。


巨人の鍛冶屋「持ってるなら いい」


レディが示したソウルを一目見ると、巨人は木槌を置いて、代わりに壁の隅に置いてあった麻袋を握り…


ガシャララッ


袋を逆さまにして、床に大小様々な鍛治道具を落とした。
大きいものは単純な小槌や鋏などだが、小さいものは並みの人間にさえ扱えないような細さと小ささを備えている。
更には、粗雑な並べ方からして、強度も確かなようだった。


巨人の鍛冶屋「楔石 いるかも」

レディ「楔石って……あの文字の刻んである石のことよね?」

コブラ「それなら俺が持ってるぜ。レディの怪我が治せるならいくら使って構わない」ジャラッ

巨人「 お〜 」


コブラがポケットから出した石を巨人は受け取ると、それらを金床に並べた。
そしてレディの掌からソウルを掬い取り、特に小さな鍛治道具を摘まんだ。


巨人の鍛冶屋「まず 背中」

巨人の鍛冶屋「それから 腕」

巨人の鍛冶屋「少し 時間かかる」

レディ「だそうよ?私は後で行くから、コブラは先に行っててちょうだい。貴方は不死じゃないんだから、眠くなる前にカタをつけていなきゃ」

コブラ「ああ、じゃあお言葉に甘えて」

ビアトリス「ほ、本当に置いていくのか?誰か付いててやった方が…」

コブラ「レディなら心配いらない。悪い男の扱いには慣れてるさ」

ビアトリス「そういう問題では…」

ジークマイヤー「まま、いいではないか。こんな狭いところに固まったままというのも奇襲に弱い。先に行こう」

ビアトリス「………」


ジークマイヤーの後押しもあり、ビアトリスは渋々、先に進むと決めたコブラに付いていく事にした。
ローガンも、ビアトリスとは違う意味で内心二の足を踏んでいたが、短い熟考の末、巨人の仕事場から立ち去る事に決めた。
目の前で展開されるであろう神秘と、先に待ち受けるであろう更なる神秘を天秤に掛け、ローガン後者を選んだのだ。
やはり、より想像ができず、正体の分からぬ物に、結局のところ探求者は惹かれるのだった。
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/26(日) 04:06:36.62 ID:GGyY+NXj0
巨人の仕事場の壁を沿うように設けられた登り階段を行き、一行は城の大広間に出た。長方形の大広間は縦方向にも広く空間が取られており、コブラが見渡す限りでは、一行が出たのは広間の長辺の一方、二階からだ。大広間の右手側、短辺の一方には巨大な城門が硬く閉ざされ、左手側の短辺には登り階段と、その先を遮る白い霧が見える。更に、大広間の両長辺に沿って無数の柱が立ち並んでおり、それらは絶妙に、コブラの目から大広間にいる何かを隠していた。


コブラ(ここは音が響きすぎる。集団で動くのはキツそうだ)

コブラ「俺が先に行く。イケそうだったら合図を送るか戻るかするから、みんなはそこで待っていてくれ。」


一行が出た横道からは、長辺に沿って一階に行けるよう、Uの字型の下り階段が設けられている。
コブラは迷わず階段を降りると、柱の陰に隠れて、大広間に何がいるのかを確認しようとした。

ブルブル…

その時、思いもよらない事が起こり、コブラは慌てて柱の陰に引っ込んだ。
死んだ火防女から転げ落ちた黒い瞳のオーブが、コブラのズボンのポケットの中で、突如震えだしたのである。


コブラ(おいおいおいちょっと待ってくれ!今はお嬢ちゃんに構ってるヒマはないんだ!)ブルブルブル…


焦りつつもポケットからオーブを取り出したコブラは、震えを止めようとオーブを調べる。
眼球部を押してみたり、瞼を閉じさせようとしたりと手を尽くした。しかし、震えを止める仕掛けなど当然あるはずもない。


?「ほう、貴公か」

コブラ「!」


震えを感知したのか、それともコブラの動揺を感知したのか、大広間に何者かの声が響く。だが、コブラは前にもその声を聞いた事があった。それも、つい最近に。何者かは分かるが、声の主は名前を聞いていないせいで個人を特定できない程度には見知っている男だ。コブラは短くため息を吐くと、柱の陰から姿を現した。


コブラ「やあ、アンタか。ここに居るってことは、どうやら教会でのお祈りが神に通じたらしいな」


ロートレク「見つかっておきながら何をニヤついている。多少は賢いヤツかと思ったが、そうでも無かったようだな」


コブラ「おたくが俺を見つけたんじゃない。火防女がおたくを見つけたのさ」

ロートレク「まだ強がりを言うか。まったく哀れだよ。炎に向かう蛾のようだ」

ロートレク「そう思うだろう?あんたも」


ロートレクの言葉の締めは、明らかにコブラ以外の何者かに向けられていた。一瞬、コブラの思考がロートレクから離れる。


コブラ「!!」


その一瞬に、コブラの髪は総毛立った。
殺意の塊とも呼ぶべき凶暴で無秩序な気配が、コブラの背中を叩く。
吹き出す冷や汗を肌の上に跳ねさせながら、コブラは特大剣を抜きつつ、自身の背後へ横薙ぎを浴びせた。


ガギギィーーン!!!


コブラに振り回された特大剣は火花を散らして、研ぎ澄まされた大剣を受け止める。
クレイモアと呼ばれるその大剣は、コブラの持つ特大剣よりも軽く、両者が刃を合わせればコブラの特大剣がクレイモアを弾き飛ばす筈だった。
しかしそうはならず、コブラは殺意の主との鍔迫りを演じた。
クレイモアの使い手である者の凄まじい膂力に、演じざるを得なかったのである。










仮面巨人「良い服を着ているな。それを私にくれないか?」




巨人達と同じ黄金色に輝く鎧を着て、どこか年増の女を思わせる仮面を被った大剣使いは、美しく若い女の声で囁いた。
しかし、その艶やかな声とは裏腹に、コブラの動きを制限するクレイモアは恐るべき重さを以って特大剣に食いつき、離さない。

「そりゃムリだ。悪いがコレしか無くてね」

そんな一言がコブラの脳裏に浮かぶが、口を開く余裕すらも、全身を軋ませる今の彼には無い。
自分と同じ身長の相手と押し合いをしている。そんな認識は既に吹き飛んでおり、コブラは目の前にいる女を本当の巨人と錯覚していた。
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/26(日) 12:18:38.46 ID:zMbTPXxSo
そんな服を脱げだなんて若い女がはしたない
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/26(日) 13:05:57.45 ID:SLJBWhZ6o
仮面巨人先輩!仮面巨人先輩じゃないか!
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/26(日) 16:34:56.49 ID:GGyY+NXj0
ガギギィーン…


ジークマイヤー「む!今のは合図か?」

ビアトリス「いや、合図をするなら普通は声を上げるが……」

ビアトリス「………」


ビアトリス「…敵に見つかった!」ダッ!


コブラの危機を察したビアトリスは、降り階段を駆け下り始めた。
ジークマイヤーも即座に意を決し、彼女の後を追う。


ローガン「………」


しかしローガンは動かなかった。
考えに耽っている訳でも無い。彼の意識は確かに現実へと向けられている。
だが、ローガンは仲間の後を追わなかった。




ロートレク「いいぞ。そのまま抑えておけ」


身動きの取れないコブラへ、ショーテルを持ったロートレクが近づく。
コブラの背中は無防備。守るものは何もない。

タン!

仮面巨人「おっ」グン!!

防御や回避が不可能な状況であることを悟ったコブラは、クレイモア使いの膂力に身を任せ、背後に跳躍した。
圧倒的な力に押し出され、コブラは投げ槍の如くロートレクへ向け飛翔し、特大剣を振るう。

ロートレク「ふん」ササッ

コブラの振るった特大剣は、屈んだロートレクの頭上を飛び越し…

ガアァーーン!! ガリガリガリ…

コブラごと石床にぶち当たり、人一人の身長分ほど滑り、止まった。
そして床に伏せった特大剣をコブラは持ち上げ、肩に乗せつつ、いつでも動けるよう体勢をとった。



巨人仮面「良いな……力もあり、素早い。指輪は何をつけている?」

コブラ「へっ…へへへ…そんなこと聞いてどうするんだ?結婚でも申し込む気か?」

ロートレク「クックック…息を荒げてもまだ言うか。関心するぜ」


ロートレクがコブラの挑発に苛立つ中、ビアトリスとジークマイヤーは階段を降りきり、柱の陰に隠れた。
そして、ビアトリスは目立つ三角帽子を脱ぐと、顔だけを出して大広間を覗き見…


ビアトリス「!!!」


金の鎧を纏った曲剣使いと、仮面を被った、重鎧の大剣使いの後ろ姿を発見して、また柱に隠れた。


ビアトリス「………」フゥー…

ジークマイヤー「どうした?何が見えた?」

ビアトリス「曲剣を持った騎士が一人と、仮面の悪霊がいる」


ジークマイヤー「!!?」


ビアトリス「コブラが合図を出せないはずだ…相手が悪すぎる…」

ジークマイヤー「ど、どうする?…このまま我らが隠れていては、コブラと言えど…」

ビアトリス「分かっているさ。分かってはいるが…しかし……」
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/26(日) 16:51:08.27 ID:zMbTPXxSo
ローガンが「私にいい考えがある」と言ってくれるんだなそうに違いない
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/28(火) 02:53:20.96 ID:JCHcNyHL0
ロートレク「そういえば、鉄色をした女の連れはどこだ?見限られでもしたか」

コブラ「お色直しさ。女の化粧は時間が掛かるって事も分からんようじゃ…」

仮面巨人「くだらん」タッ!


会話を切り、仮面の騎士はクレイモアを構えて駆け出した。
軽口を返すのをやめ、コブラは特大剣を握る右手に、左手を掛ける。


ビュン!


しかしコブラは剣を抜かないまま、仮面の騎士に大剣を横振りさせた。


コブラ「……」クルッ

ガキーッ!


仮面の騎士のクレイモアは、背を向けたコブラが担ぐ特大剣に防がれ…


コブラ「ウオオーッ!」ギャリリィーーン!!!


コブラの抜剣とともに、大きく弾かれた。
仮面の騎士は大剣を落としはしなかったが、上体を仰け反らせ、戦闘体勢を大きく崩す。

ゴオオォーッ!!

そこに空かさずコブラの特大剣が振り下ろされた。
狙うは人体の軸、仮面の騎士の正中線。

ババババ!!

コブラ「おっ!」


だが、コブラの特大剣もまた、仮面の騎士を捉えることは無かった。
重装の騎士にはできるはずもない連続バク転によって、仮面の騎士がコブラの剣勢域から脱したためであった。


コブラ「身軽なヤツだ。殺し屋は辞めてサーカスにでも入ったらどうだ」


コブラはまたも挑発をするが、その挑発の真偽を、仮面の騎士は問わなかった。
仮面の騎士はクレイモアを右手に持ち、またもコブラに斬りかかる。

カァーン!!

コブラは、振り抜かれたクレイモアを特大剣でことも無さげに打ち払うと…

ブオン!!

払った特大剣を返し、仮面の騎士へ袈裟懸けに振り下ろした。



ドゥーーン!!

コブラ「!」



仮面の騎士は空いた左掌に隠し持っていた短刀で、特大剣をいなすと…



ザスッ!



コブラの左脇腹に、その短刀を突き刺した。

454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/29(水) 18:15:55.58 ID:Dc9lnDMaO
コブラがやられた!?
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/30(木) 21:57:27.63 ID:O65UiujH0
コブラ「ぐふっ!」


コブラに突き刺さった短刀は、コブラの浴びてきた刃の中の何よりも鋭かった。
肉を貫いた短刀は内臓にまで達し、コブラは吐血した。


仮面巨人「恐れいった」

コブラ「………」ハァ ハァ

仮面巨人「特大剣を大剣の如く振り回すその筋力、いくらソウルを身に捧げても得られるものではない。しかし、お前は容易に人の域を超えられる不死どもとも違う」

仮面巨人「お前を殺し、お前から物を奪えば、少しはお前を知れるのかな」グリリッ

コブラ「ぐはっ!」


ねじ込められた短刀に内臓を斬り裂かれ、コブラは痛みに背を丸める。
仮面の騎士は、雀蜂を表す装飾を掘られた指輪をはめた左掌に、より一層の力を込めた。


仮面巨人「!」バスン!


だが、その掌が握る短刀がコブラをより深く抉る前に、蒼色の閃光が仮面の騎士の肩にぶち当たり、厚い肩当てを吹き飛ばした。
衝撃を受けて体勢を崩した仮面の騎士に生じた隙を、コブラは見逃さず、ジークマイヤーも見逃さなかった。

タン!

コブラはナイフから自分の体を引き抜き、跳び退いた。
仮面の騎士は咄嗟にコブラを追撃せんと駆け出すが…

ジークマイヤー「貴公の相手は私だ!」ガゴォーン!!

その行く手を遮ったジークマイヤーの剣を盾に受け、仮面の騎士の追撃は失敗に終わった。
仮面の騎士から遠退いて片膝をついたコブラの元には、ビアトリスが駆け寄る。


ビアトリス「大丈夫かコブラ!」

コブラ「いや、ちょいと食に当たってね…」ゴホッ

ビアトリス「馬鹿なこと言ってる場合か!しっかりしろ!敵はまだいるんだぞ!」グイッ


ロートレク「その通り」ザッ…


手負いのコブラに肩を貸したビアトリスに、ロートレクが近づく。杖を持つ手を空けておいたビアトリスは、苦し紛れに魔法を撃った。
しかし、ソウルの矢は弓矢や銃弾と比べ弾速が遅い。
それを真正面から受ける不死などいやしない事を、ビアトリスも分かっていた。


ロートレク「哀れなものだな。当たるはずもないだろうに」

ビアトリス「…馬鹿者め…私が適当に撃っていると思っているのか…」

ロートレク「嘘をつくな。それ以外にやることも無いだろう」


事実、ビアトリスはただ敵を近づけさせんが為に、魔法を撃っていたに過ぎない。
逃げる策など思いつかず、策があっても実行出来るほどの体力は彼女には無い。コブラも然り。
だが、応援に期待していない訳では無かった。


ローガン「ふっふっふ……隙あり」

シュゴォーーッ!!


ローガンの放ったソウルの槍は、柱と柱の間を抜けて飛び…


ロートレク「グアアーーッ!!」ズバーーッ!!


ロートレクの背中を貫き、胴体に風穴を開けた。


ビアトリス「先生!」

ローガン(広くて遮蔽物もある場所に、のこのこ魔術師二人が出てくることも無い。魔法は不意を突いてこそだ)

ローガン(……しかし、まさかあの仮面の騎士と見えることになるとは…」
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 22:22:24.77 ID:UjlZZBBR0
ジークが最近活躍してるなぁ
こないだ巨人に思いっきり頭叩かれたせいかw
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/30(木) 23:10:44.05 ID:O65UiujH0
ロートレク「ば…馬鹿な…これは…ソウルの槍…」

ロートレク「センの古城に…閉じ込めた…は…ず…」


ドウーッ



ソウルの槍に討ち取られたロートレクが、地に伏した。
ジークマイヤーとの鍔迫り合いに興じながら、仮面の騎士は横目でロートレクの遺体を一瞥した。
そして、言葉を連ね始める。


仮面巨人「カタリナの騎士ジークマイヤー」

ジークマイヤー「!!」

仮面巨人「魔女ビアトリス。ビッグハット・ローガン…」

ビアトリス「なっ…」

仮面巨人「私に勝つなどあり得ないにしろ、手練れであるとは知っていたはず。やはりこの女神の騎士も、協力者の手を借りなければ狩りも出来んのだな」

仮面巨人「ローガン。私には当たらんぞ。大人しく出てこい」


ローガン「………」


一度使った奇手に二度目の出番は無いと、ローガンは知っていた。
しかし、それでもなお頭上からの狙撃は被射体にとって脅威であることには変わらないはずだった。
だがローガンはそんな有利を捨て、大広間の一階へと降り、仮面の騎士と同じ海抜に立った。
仮面の騎士を相手取るなら、下手な策は付け入る隙を生みかねないのだ。


ビアトリス「何故我々の名をお前が知っている!?」

仮面巨人「私は全て知っている」ドカッ!

ジークマイヤー「うおぉっ!」


仮面の騎士に蹴り飛ばされ、ジークマイヤーは一歩二歩とよろけるも、その反動で器用に後ろ歩きを行い、ビアトリスとコブラの元へ合流した。


仮面巨人「お前たちがどのように生き、どのように戦い、どのように死ぬかも知っている」

仮面巨人「お前たちが何を持っているかも知っている。お前たちの声も、野心も知っている」

仮面巨人「お前たちを殺せば、どれほどのソウルを得られるのかも知っている」


ビアトリス「…お前は…何者なんだ…」


仮面巨人「だが、そのコブラという男については何も知らない。だからこそ殺し、そして暴くのだ」


シュゴォーーッ!!


会話の隙を狙ったローガンのソウルの槍は…


ババババッ!


ローガンへの接近も兼ねた、仮面の騎士の連続側転によって回避され…


ドシュッ!

ローガン「うっ…!!」


仮面の騎士のクレイモアは導かれるように、ローガンの腹部を貫いた。
引き抜かれ、ローガンが倒れ伏す中、血が塗りつけられたクレイモアは艶かしく輝く。
仮面の騎士はその血染めの大剣を、コブラの顔へ向けた。


仮面巨人「私の名などどうでもよい。母の仮面とでも呼べばいい」

母の仮面「ロードランに並ぶ世界にコブラ、お前はいなかった。お前の死を見てみたい」
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 23:32:15.06 ID:GrD3tvutO
周回済みか
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 01:01:27.38 ID:5CRSCAnIo
何者なんだこの女……可愛げがないことだけはよく分かったが
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 01:31:49.38 ID:L8zKdqIno
ローガンがやられた…
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/31(金) 02:39:06.66 ID:hhbAPIgm0
ビアトリス「せ…先生…」

ジークマイヤー「今は嘆く時ではない!この者は先の私の奇襲に、短刀を捨て盾で応じた!この手癖の悪さは一人では手に余る!」


二人の不死の動揺を仮面の騎士は感じていたが、クレイモアを構え、二人に斬りかかりはしなかった。
心乱す者には後手こそが必殺足り得る。騎士は甘い誘惑を発しているのだ。


ジークマイヤー「私が突貫する!貴公は魔法で援護を!」ダッ!

ビアトリス「わか、分かった!」


誘惑に引っかかったジークマイヤーは、ツヴァイヘンダーを掲げて仮面の騎士に駆けた。
その後ろでは、ビアトリスが杖を掲げて、まさにソウルの太矢を撃たんとしている。


母の仮面「………」ダダッ!

ジークマイヤー「む!」ブオッ!!


急に駆け出した仮面の騎士へ向け、ジークマイヤーは咄嗟に得物を振り下ろす。


ドゥーーン!!


しかし、その騎士の習いによる咄嗟の行動こそ、仮面の騎士の求めるものだった。
ジークマイヤーの振り下ろしは、仮面の騎士の盾に弾かれ、空を斬る。
全ては一瞬の事であり、ビアトリスの太矢はまだ杖の先端部で生成されている段階にある。
だが、驚愕するにはその一瞬で充分だった。


カァン!

ジークマイヤー「え?」

ビアトリス「!?」


仮面の騎士は盾を残し、クレイモアを投げ捨てた。
指に嵌めた指輪も同時に捨てていたため、石床に当たった指輪が跳ね、宙を舞う。
ジークマイヤーの胴を薙ぐ好機であるにも関わらず、仮面の騎士は攻撃手段を自ら放棄したのである。
胸を貫かれると覚悟していたジークマイヤーは素っ頓狂な声を漏らし、ビアトリスの詠唱はコンマ数秒ほど遅れた。
そのビアトリスから見ると、仮面の騎士は大の字に体を広げるジークマイヤーの陰に隠れている。
二人の不死はすでに、仮面の騎士が持つ、数ある必殺の間合いの中にいたのだ。

シュゴォーーッ!!

ジークマイヤー「!!」

ビアトリス「!!」


ジークマイヤーの背中を突き抜け、自分の体を貫いた力に、ビアトリスは見覚えがあった。





ビアトリス「ソウルの…槍…?」




ガシャーン…


ビアトリスの目の前から、重鎧が石床に当たる音が大広間に響く。
ビアトリスは消えゆく意識の中、肩を貸したコブラに顔を向けた。


ビアトリス「………逃げ…ろ…」

コブラ「ビアトリス……おい、よせっ!」


コブラを支えていた力は淡くなり、ついには消え、ビアトリスはその場にへたり込んだ。
うなだれた頭からは三角帽子が落ち、耳の下あたりで切りそろえられた金髪が、黒い装いの中目立った。


母の仮面「次はお前だ、コブラ」
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 08:25:22.53 ID:6z+5HWRxO
ゴダハベル呼んでこい
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 09:46:01.07 ID:otYcjvt5O
風花「副作用には気をつけて下さいね!…シモッチって何かしら?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1530920009/
茜「不屈の魂、夢ではありません!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531525117/
摩美々「まみみのホーム・アローン、始まるよー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533339190/
のり子「青コーナー、キィィングティィレッスルゥゥゥ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1533946743/
里美「お、お兄様…?里美はここにいますよ〜?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1535154609/
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/31(金) 16:21:56.40 ID:hhbAPIgm0
一応書きますが>>463は荒らしです。
今作とは何の関係もありません。
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/08/31(金) 17:22:24.62 ID:hhbAPIgm0
仮面の騎士の右手には、杖が握られていた。その杖を握る指には、先の雀蜂の装飾のある指輪ではなく、青い竜の装飾を持つ指輪がはめられている。
剣による闘いも、ジークマイヤーを逃してビアトリスと合流させたのも、魔法による不意打ちを成功させるための布石だったのだ。


コブラ「………」


コブラの脇腹を突いた刃には、毒が染み込んでいた。
腐れた松脂はコブラから四肢の自由を奪い、体力を著しく消耗させている。
そんな力を奪われた男の両脚は…


コブラ「………」スーッ…

母の仮面「!」


たちまち力を取り戻し、コブラを静かに、しかし力強く奮い立たせた。
戻った力はコブラの両の眼にも宿り、炎となってコブラの心を駆ける。
まるで、僅かに残った命の、その全てを燃やさんとするかのように。


コブラ「確か…あんた、俺の事を知りたいとか抜かしていたな」


立ち上がったコブラは、久しく触れていなかった自身の左手に、遂に手を掛けた。
そして、ゆっくりと…己の決意を自分自身に見せつけるかのように、大仰に開放した。


母の仮面「…なんと…」


義手という縛から、サイコガンを。




コブラ「いいだろう。望み通り教えてやる。俺という男をな!」



コブラの恐るべき変貌を、仮面の騎士は敏感に感じ取っていた。
手傷を負い、瀕死になりつつある者。そのような者が闘志を燃やす時、最も危険な敵が生まれる事を騎士は知っていた。
だが捨て身の特攻というものは、必ず敵を討ち取るという決意を秘めているからこそ、相殺に対し無力でもある。
ましてや、不死である仮面の騎士にとって、相殺を狙うことは容易であり、それにより生じる不死ゆえの不利益すらも彼女は無視できた。
無視できるだけの理由が彼女にはあった。


母の仮面「素晴らしい……嬉しいぞ…!」

母の仮面「その力を私にくれると言うのだな!」


勝ち取り、奪い取る事を前提に、仮面の騎士は喜びに震えた。
その喜びにコブラも応える。


コブラ「ああ、やるよ。出血大サービスさ」


ダダッ!


コブラからの返答に、騎士はたまらず駆け出した。
そして、博愛に抱きとめるかのように、クレイモアをコブラへ向け振り下ろす。


バグオォーーッ!!!


母の仮面「なっ…!」


そのクレイモアは、コブラの左腕に備えられた呪物が放つ力に粉々に砕かれ、火炎に巻かれた水のように蒸発した。
残るは剣の鍔と、長い握り手のみ。
仮面の騎士は未知の力が持つ圧倒的な破壊力に眼を奪われ、陶酔した。
しかし、数瞬後に我に帰ると、口元に手を置いて震え始めた。
声には悲哀が含まれて、くぐもった鼻声は小さくコブラに届く。


母の仮面「な…なんてことするんだ……こんな壊し方したら治せないじゃないか…」

母の仮面「神の原盤さえ注いだんだぞ……それを…それをお前は…!」グスッ

コブラ「知らないね。ただの剣だろ?また拾うんだな」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 17:46:26.59 ID:u3gpcjUiO
ヒュー‼
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/31(金) 23:00:21.55 ID:/5rbAZPDO
これが情も義理もなく無味乾燥にコレクションのみを追求するプレイヤーか……
端から見ると何とも利己的なもんだなぁ
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 00:17:25.22 ID:7R3L1xJS0
あーあ 怒らせてしまったか
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 01:50:06.60 ID:LXrgJ64CO
原盤を損傷超えてロストとかそりゃ泣くが、コブラにしてみりゃ知ったこっちゃない
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/09/01(土) 05:35:18.35 ID:wFMbrVco0
母の仮面「いや、拾わないね」カラーン…

コブラ「なに?」


ダッ!


再び、仮面の騎士は駆けた。
愛刀の残骸を躊躇なく捨てた騎士の右手には、何処から取り出したのか、蛇人の使っていた大剣が握られている。

ドウドウーッ!!

その騎士を追うように、コブラのサイコガンは唸りを上げて二発のサイコエネルギーを撃ち放つ。
だが、そのエネルギーを仮面の騎士はすり抜けるが如くに回避した。

ドウーッ!!

続けて3発、いや4発目のサイコエネルギーをコブラは放つが…

シュババッ!!

それすらも、仮面の騎士は前転跳びによって回避した。
前転による回避はやはりコブラへの接近も兼ねており…

シューッ!

回転する勢いそのままに、仮面の騎士は蛇人の大剣を袈裟懸けに振り下ろす。



バシーッ!

母の仮面「なにっ!?」



だが蛇人の大剣は、指相撲をするかのような形に整えられた、コブラの右掌に捕獲された。
コブラの親指と丸めた人差し指は、大剣を捻らんばかりに締め付ける。


母の仮面「白刃取りだと…そんなバカな…」

コブラ「為せば成るのさ。コトワザを知らんのか?」


ザザッ!


コブラに大剣を封じられた仮面の騎士は、奪われた大剣をそのままに後退し、両手で盾を持ち、構える。


母の仮面「何故だ…お前は何故剣を持たぬ方が強い…」

コブラ「性に合わないからだ。剣に振り回されるタイプでね」

母の仮面「ふん…このタヌキめが…」


仮面の騎士の盾の裏には、二本の短剣が隠されている。
盗賊の短刀と呼ばれるそれらには、一方には魔力が、一方には炎が込められていた。
それら二つを隠した盾でコブラに体当たりを浴びせ、怯んだところに二刀を差し込むという戦略には、決定的な隙がコブラに生まれなければならない。
だが、その隙というのも、わざわざ見定める必要は無かった。

コブラ「さぁどうしたい!さっさと来ないとこっちから行くぞ!」

蛇人の大剣を右手に正しく持ち直し、強がりを言ってはいるが、コブラの顔は青ざめつつある。
内臓の損傷によるものか、出血によるものか、はたまた単なる疲労なのか、原因などは騎士にとってはどうでもよかった。
そこに駄目押しのひと刺しさえ出来れば、それで良かったのである。

母の仮面「………」ササッ

コブラ「!」

ほんの一瞬、仮面の騎士は盾から右手を出し、杖を構えた。
ソウルの槍を警戒し、コブラはサイコガンを構えようと、右手に握った大剣を落とした。
その大剣が空中を落下し始めると同時に、仮面の騎士も駆け…


母の仮面「!」


気づいた。
コブラが左手の呪物を使うために、大剣を放棄したわけではないという事に。
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/09/01(土) 07:23:04.55 ID:wFMbrVco0
突進時、仮面の騎士が構えていた盾は、草紋の盾と呼ばれていた。
草紋の盾には魔力が込められており、魔力は使用者に対し、疲労の急速なる回復をもたらす。
だが長い年月を経て盾の力は弱まり、守りも薄弱なものとなっていった。

しかしそれでも草紋の盾は盾であり、炎や魔法からさえも不完全ながら使用者を守り、壊れることなど無かった。
そういう用途で何者かに作られ、何百年も力を保ち、原盤によって半ば蘇ってさえもいたのだ。



バゴオォーーッ!!!

母の仮面「グッ!!」



その神の金床に祝福されし盾は、しかしコブラの右ストレートの前に呆気なく粉砕した。

砕け散ったのは盾だけではない。騎士の着る巨人用の大鎧も、その胴体を深く抉られていた。
騎士の全身を駆け巡った衝撃は、更に全身鎧の各部にも損傷を与えていた。
肩当ては両肩部とも弾け飛び、腰の草摺は千切れて落ちた。
騎士の被る仮面さえも割れ、辛うじて騎士の顔に張り付いている。

背面に至ってはまさに惨憺たる破壊がもたらされており、背中に垂れた聖布は跡形も無く吹き飛んで、花弁型にめくり開かれた背中のプレートからは、血に塗れた逞しい右腕が肘まで突き出ていた。




コブラ「いや、俺はコブラだ」


母の仮面「………」



カキーン…



コブラの拳に吹き飛ばされた二本のダガーが落ちる音が、大広間の遥か遠くから響く。
その微かな音を聞き、仮面の騎士は己が敗北したことを悟り、コブラに語りかけた。
彼女の声には、呆然とした笑みさえも含まれていた。


母の仮面「……フフ…フ……馬鹿な………なぜ…?」


コブラ「俺のパンチは特殊サイボーグを貫き、耐熱合金をブチ抜く。これぐらいワケ無いさ」


母の仮面「馬鹿げてる……何をしたら……こんなことが出来る…?」


コブラ「さあな。毎朝のフレークかほうれん草が効いてると思ってたが、ここの所食えてない」フフッ

コブラ「まぁ、早寝早起きが秘訣ってことにしておくぜ」


母の仮面「………フッ……嘘つきめ…」

母の仮面「お前を、教えてくれると……言ってた…じゃないか…」パキッ…


カラーン…



騎士の顔を隠していた仮面は二つに割れ、石床に落ちた。
仮面に固定されていた黒い覆いもへたり、騎士の顔を外へと露わにする。


コブラ「!」


露わになった顔にコブラは心を揺さぶられた。白金色に輝くセミロングの髪をなびかせた色白の顔が、あまりにも美しかったからである。
だが、それは同時に酷く歪な美しさでもあった。部位の歪みも無ければシミの一つも無い、完全に対称と言える顔立ちなど、金星の美女たちでさえ持たない。
それはアーマロイドであるレディにさえ備わるはずのない無欠とも言える顔立ちであり、それはかえって心の存在を希薄にさせ、人としての温もりある美を、仮面の騎士から大きく損なわせていた。



母の仮面「……次は…殺す…」



微笑みを浮かべてそれだけを言い遺し、仮面の騎士は白い灰となって薄まり、コブラの身体を舐めるようにして空間に溶けた。
彼女の身につけていた蛇人の大剣やダガーも、捨てられた指輪と同じく水に垂れた血のように渦巻き、消えた。
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 08:26:31.54 ID:ib3ERvpSo
さすがコブラだ何を食ったらこんなことが出来るのかと思ったがここのところロクに食ってなかったなそういや
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 22:41:47.27 ID:7R3L1xJS0
クリスタルボウイ並みの脅威枠かと思えばそこまでではなかった
しかしいい加減封印解除してあげないといくらコブラでも死んじゃいますぞ太陽神様
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/02(日) 16:49:27.96 ID:YC1QxFcDO
まだ分からんぞ
ダクソ全体で見れば折り返しに近付いてはいるが、十分再戦を仕掛けられる期間がある
プレイヤーだというのなら、多少ソウルを失ったところで一点モノの装備を前にして退くわけもなし
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/02(日) 16:52:25.93 ID:+SXZDGFwo
むしろ仲間でも連れてきたらアウトだろう
こっちの手札は全部見られてるし

苦労して試練突破したのに更にチート級の強敵とか不死人からしたら泣くわ
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2018/09/03(月) 07:05:15.39 ID:jUfKgvru0
コブラ「!!」


仮面の騎士が完全に消えた時、コブラの肉体にまたも異変が起きた。
赤き竜やガーゴイルを倒した時とは比較にならない程の気力の充実に、コブラ自身も大いに戸惑った。
サイコガンを撃てるだけ撃ち、深傷を負って絶え絶えとなっていた息も整い、頭への血流が改善された感覚。
コブラは思わず自身の左脇腹を見る。傷は未だ残り痛みもあるが、出血は止まっていた。

コブラ「ハッ!」

更にもう一つ、コブラに気付きがあった。
死んだ亡者は死体となってその場に残り、灰になるのも酷く緩慢だ。
しかし理性と人間性を残す不死が命を落とした場合、その肉体は瞬時に掻き消え、その場にはソウルを残すだけとなる。
だとしたら、肉体を残して倒れ臥す不死達には、まだ幾許かの猶予がある。
コブラは周囲を見渡した


コブラ「クソッ!遅かったか…」


ビアトリスとジークマイヤーは伏し、ロートレクは消えていたが、ローガンの姿もまた大広間から消えていた。
すぐさま駆けたコブラは、ジークマイヤーとビアトリスにそれぞれエストを飲ませる。
どれほど飲ませれば傷が完治するのか分からず、分析するほどの余裕も無いコブラの手によって、二人のエスト瓶は全くの空にされた。


ビアトリス「げほっ!はぁ、はぁ……」

コブラ「ふぅー…危なかったぜ。このエストってのは相当効くんだな。服は破けたままだが、セクシーなおへそは元どおりだ」

ビアトリス「やれやれ…命の恩人の台詞がそれとは、感謝のしがいも無いな…」


ビアトリス「!! 待て!先生はどうなった!?仮面の悪霊は!?」

コブラ「ああ、ローガンはダメだったらしい。賢者で不死ときてもそれなりに歳だ。大剣で刺されりゃあな…」

ビアトリス「そうか……では、仮面の方は?」

コブラ「そいつは倒した。名前は聞きそびれたがかなりの別嬪だったぜ。もう会いたくないがね」

ビアトリス「倒した!?あの悪霊を!?」

コブラ「ああ、ちょいと手こずったけどな。いけなかったか?」


ジークマイヤー「ああ、ローガン公にとってはな。よいしょっと」ガシャ


コブラ「よおジーク。気が付いたか。で、ローガンがどうしたって?」

ジークマイヤー「今死ぬのはまずいのだ。死にすぎていなければ、見た目は亡者になるだろうが前に休んだ篝火の近くで目覚める事ができる。不死人とはそういうものだ」

ジークマイヤー「だが、それは我らを襲った二人の騎士にも言える。悪ければ今頃、鎧を着た火防女の篝火の元、ローガンと刺客が長い戦いを始めているかもしれん」

ビアトリス「で、では助けに行かなくては!」

ジークマイヤー「それは危険だ。我らには今エストが無い」

ビアトリス「えっ……あっ」


コブラ「悪いね。全部飲ませちまった」


ビアトリス「そ…そうか……」

ジークマイヤー「それに対し、あの篝火に仮面の者が蘇っているとして、その者には決して絶えぬエストが与えられている。火防女とは全ての不死に恵みを与える者だ。恐らく我らだけが贔屓にされることも無いだろう」

ビアトリス「向こうは満杯のエストを飲めて、こちらは汲んでいる途中でひと刺し、か……」

ジークマイヤー「コブラと言えど連戦は辛いだろう。篝火で出会っていない事を祈るしかない」

ビアトリス「………」





レディ「お待たせ。あら?ローガンは?」


コブラ「それなんだが、ちょいと面倒が起きちまってな」

レディ「…?…」
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 08:05:08.41 ID:n/xdjA6EO
リスポン地点が同じとか悪夢過ぎる……
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 15:20:56.19 ID:3gZbEiwDO
ゲーム中だと死んだNPCはそれまでだが、不死には違いないんだし物語にしてしまえばそうなるよなぁ
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 15:27:05.31 ID:3fM4oIx8O
そう言えば今はコブラがいるせいか世界は全部重なってる感じで、敵も見方も全員霊体じゃなく実体なんだっけ
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 15:42:46.01 ID:hTB+JaAH0
死んでなくてその辺でまた神話級の物に見とれてるだけだといいが
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 16:06:22.19 ID:VVrURqKqo
下手したら人質にされてるよな
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 16:06:40.60 ID:VVrURqKqo
下手したら人質にされてるよな
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 16:07:41.64 ID:VVrURqKqo
二重投稿失礼
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 08:13:44.18 ID:4T+CKQ9sO
復活おめ
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 18:45:58.77 ID:4299RXkL0
>>1です。
SS速報VIP落ちてる間にこのスレは期間が過ぎて終わったはず…
なんで生きてるのだろうか。管理人の粋なはからい?
なんにしても続けます。読んでる人はこのレスは無視してください。
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/16(火) 13:39:46.03 ID:PDjQeAQu0
おかえり
荒らしの連続投稿によるクラッシュに鯖設置先の被災が重なるアクシデントだったらしいから日付カウント止めてたと思われる
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/16(火) 15:39:17.89 ID:M4daChAc0


レディ「仮面の騎士、ね……一体何者なの?目的は?」

ビアトリス「いずれも不明だ。そもそも、それらを我らが知ったところで彼奴の行いは変わらん。あれは彷徨い、殺し、奪う者。火の粉を払うものではなく、火の粉を噴く炎を飲み込まんとする者」

ビアトリス「他の不死と大きな違いがあるとすれば、常軌を逸した強さと執念深さ。あとはその特異な不死性くらいか」

レディ「特異な?」


ビアトリス「亡者にならないらしいんだ。ソウルを失い、人間性を失い、肉体が朽ちても理性を決して失わず、力も失わないらしい。今よりロードランに不死が多かった頃に聞いた噂話だがな」


レディ「それは…敵としては最悪の相手ね」

コブラ「とんだ毒蛇だな。俺がコブラなら、やっこさんはマムシってところか」

コブラ「……で、レディ。キミの怪我はもう大丈夫なのか?」

レディ「ええ、見事に一軍復帰よ?彼は一流のメカニックになれるわね」

コブラ「さすがに神の国の鍛冶屋ともなれば違うな。次寄った時はマグナム弾を注文しとくか」

レディ「出直す必要は無いわよ。彼ったら仕事も早いんだから。きっとマグナム弾くらいすぐにでも作ってくれるわよ」

コブラ「そいつは願ったりだ。早速行こう」



レディの話を聞き、コブラは不死たちと共に巨人の鍛冶屋の仕事場へ向かった。
仮面の騎士との戦いで一行の装備は著しく消耗しており、本来の力を発揮しないのだ。
それどころか重鎧もローブも、胴に大穴を穿たれたままでは防具どころか衣服としての機能の保持すら怪しい。
それらを身につける者としても、レディの負傷を数分で修復した腕前を買わない訳にはいかなかった。


巨人の鍛冶屋「それなら すぐできる」


ソウルを受け取った巨人の鍛冶屋はそう言うと、ソウルを布地やプレートへと変え、手際よく防具の損壊を埋めていく。
そして十数分が経つ頃には、ジークマイヤーの鎧とビアトリスのローブは、おろしたてと見紛うばかりの艶を纏っていた。


コブラ(まったく驚きだぜ。人形使いのマリオも似たような事をやっていたが、こいつはマリオ以上に精密だ!)

ジークマイヤー「おお!これだこれだ!この腹の丸みが無ければカタリナ鎧とは呼べん!礼を言うぞ!」


太い眉と口髭をたくわえ、少年のような瞳をした男は、重鎧を受け取るとその場で装着を始める。
スカートを残し、大きな帽子で胸元を隠したビアトリスは、そんな豪放な行いに冷ややかな視線を送った。
野にいたとはいえ、ヴィンハイムで身につけた礼儀作法を捨てきることなど、彼女にはできない。


ビアトリス「上で着替えてくる。コブラ、覗くんじゃないぞ」

コブラ「そりゃ残念」

レディ「こらっ!」ギュウ

コブラ「アウチチチ!」


コブラ「な、なぁ〜んて冗談はここまでにして、そろそろ本題といくかな」ゴソゴソ

コブラ「アンタの腕を見込んで、ここはひとつ頼みがある」コンッ


レディにつねられた頬をさすりながら、コブラはズボンのポケットをまさぐると、金床にマグナムの弾を置いた。
巨人はマグナムの弾をつまみ上げ、下顎を撫でた。


コブラ「コイツを何発か工面してもらいたいんだ。できるかい?」

巨人の鍛冶屋「うーん、無理」

コブラ「へ?」


帰ってきたのは、拍子の抜ける言葉だった。


巨人の鍛冶屋「俺 ソウルで出来た物 作れる。ソウル宿ってる物 治せる」

巨人の鍛冶屋「でも コレ ソウルで出来てない。宿ってない。だから無理」
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/16(火) 17:36:43.83 ID:M4daChAc0
コブラ「うーん…そこをなんとか頼むぜ。あんた以外に頼れそうなヤツがいないんだ」

巨人の鍛冶屋「うー…」ゴソッ…


無理難題を押し付けられた形になった巨人は、不本意そうに完成済みの武具の山を漁ると、矢と火炎壺を取り出した。
そして矢から矢尻を引っこ抜き、火炎壺と合わせて金床に置いた。


巨人の鍛冶屋「コレ 使う。似たものにはなる」

コブラ「へへへ、そうこなくっちゃな!頼んだぜ」


巨人の鍛冶屋は作業に取り掛かった。
本来なら報酬として巨人はソウルを貰うはずだったが、巨人はソウルを要求しなかった。
巨人は商いのために家事仕事をしているわけではなく、ただ受け取ったソウルを使って、ソウルから成る武具を加工するだけである。
ゆえに、巨人はタダ働きだろうが文句は無かった。そもそも報酬などという物に価値を見出していないのだった。


ジークマイヤー「ふぅー、慣れた着心地だ。 やはりこうでなくては」

ビアトリス「コブラ、着替えが終わったぞ。貴公の用はどうなった?」

コブラ「とりあえず目処はついたぜ。弾の代わりが完成したら作戦会議といこう」

ビアトリス「そうだな。エストも無いことだし、真鍮鎧の騎士が守る篝火には仮面の騎士がいるかもしれない。慎重に動かなければな」

ジークマイヤー「うむ」



ビアトリス(ローガン先生……無事だといいが……)




489 :書き直し版 [saga]:2018/10/16(火) 23:32:23.56 ID:M4daChAc0
コブラ「うーん…そこをなんとか頼むぜ。あんた以外に頼れそうなヤツがいないんだ」

巨人の鍛冶屋「うー…」ゴソッ…


無理難題を押し付けられた形になった巨人は、不本意そうに完成済みの武具の山を漁ると、矢と火炎壺を取り出した。
そして矢から矢尻を引っこ抜き、火炎壺と合わせて金床に置いた。


巨人の鍛冶屋「コレ 使う。似たものにはなる」

コブラ「へへへ、そうこなくっちゃな!頼んだぜ」


巨人の鍛冶屋は作業に取り掛かった。
本来なら報酬として、鍛治職人はソウルを貰うはずだが、巨人はソウルを要求しない。
彼は商いのために鍛治仕事をしているわけではなく、ただ受け取ったソウルを用い、ソウルから成る武具を加工するだけである。
ゆえに、タダ働きだろうが巨人に不満は無い。そもそも彼は、報酬などという物に価値を見出していないのだった。


ジークマイヤー「ふぅー、慣れた着心地だ。 やはりこうでなくては」

ビアトリス「コブラ、着替えが終わったぞ。貴公の用はどうなった?」

コブラ「とりあえず目処はついたぜ。弾の代わりが完成したら作戦会議といこう」

ビアトリス「そうだな。エストも無いことだし、真鍮鎧の騎士が守る篝火には仮面の騎士がいるかもしれない。慎重に動かなければな」

ジークマイヤー「うむ」



ビアトリス(ローガン先生……無事だといいが……)



490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/20(土) 05:44:45.98 ID:q3PX0KLY0

真鍮鎧の騎士(宇宙……神の力の及ばぬ処…)

真鍮鎧の騎士(…まったく想像がつかんな。理の外の者が何故我らと同じ形をしている?我らが神々は何故あの者をここに?)


シュオオオオ…


真鍮鎧の火防女が壁に寄りかかり、思索に耽っているなか、篝火の灯は揺らぎ、灰を舞わせた。
舞い散る灰は急速に纏まり人の形をとった。そして強張りつつも垂れ下がり、色づき、一人の亡者を生み出す。
ヴィンハイムの制服を崩したローブを着こなし、大皿の如き帽子を被るその亡者は、篝火に跪き、手に黒い精霊を握った。


ボオゥーーン…


黒い精霊が篝火に落とされると、篝火から太陽色の輝きが溢れて亡者を包み、彼の朽ちた表皮に染み入った。
すると、亡者の身体は再び潤いに満ち、枯れた眼球には光が入った。


ローガン「歯がゆい…神秘を前にして、ここまで戻されるとは……」

真鍮鎧の騎士「死んだのか。他の者はどうした?」

ローガン「ここに蘇らんという事は、打開したのだろう。あれを相手にというのなら、大金星だろうなぁ」

ローガン「しかし、不死者ではないコブラなどは、今頃どうしていることやら」

真鍮鎧の騎士「………」

ローガン「…まぁ、ひとまずは仮面の者がここに蘇らんことを祈りつつ、旅支度をするよ」

ローガン「貴公は手伝ってくれるかな?」

真鍮鎧の騎士「断る」

ローガン「ほっほ、だろうな」







神々の地でコブラ達が創意工夫を迫られている頃、魔女と炎の地に休む不死の一行は、しかしその人数を一人欠いていた。
旅から脱落したわけでは無い。ただ篝火周りには寝転がる名無しの戦士と、種火を調べる蜘蛛の魔女と、読み書きをする二人の術師がいるだけだ。
太陽の戦士はそんな旅の仲間からは離れた処に立ち、見上げているだけである。
太陽の光の王が施したとされる、黄金色の門を。




ソラール(火は空にあり、地中にもある……しかし太陽は人の世を見捨てて長い夜をもたらし、混沌は魔女の都を焼いてしまった。世は陰り、人の内に不死が生まれた)


ソラール(俺は何をしている?…不死の使命はいまだ見えず、空の火も地の火も、今は滅びを撒くだけだ。そんな物に、何故俺は近づいている?)

ソラール(太陽の光の王はこの都の炎を封じた。それはかの王が、炎の乱れを恐れたからではないのか?魔女は遥か昔に神々と共に竜と戦い、ゆえに太陽を知っていたはずだが、混沌を生み出した。魔女の主は、かの王と同じように、太陽を恐れていたのではないのか?輝きが乱れることを恐れたのではないのか?)

ソラール(…クラーグに聞くべきだろうが、俺の思う通りの答えが返ってきたらどうする…?)

ソラール(空にも地にもすでに偉大な力は無く、それらを築いた偉大な古き者達も、誰一人としてすでに、かつての力を持ち得ないとしたら?魔女に恐れがあるように、神々にも恐れがあったとしたら?)

ソラール(そもそも、この世に俺の求める“太陽”など、元から存在しなかったとしたら…?)


ソラール(全てはまやかしだと……永遠の栄光や愛、お伽話にもさえ終わりがあり、意味ある物は世に無いなどと…)


ソラール(……そう答えられ…俺は立てるのか?……)


ソラール(……立ち上がり、何処へ……)



ラレンティウス「よぉ、どうしたんだ?俺たちの力じゃそこは通れないだろ?」

ソラール「!」

ラレンティウス「あんたの信じる太陽の神様がこさえた封印だ。人間にはどうにもならないさ」

ソラール「………」
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/20(土) 12:59:14.23 ID:q3PX0KLY0
ソラール「…ラレンティウス」

ラレンティウス「うん?」

ソラール「クラーグは恐らく、お前に呪術を授けないぞ。資格が無いと言われただろう?」

ラレンティウス「ま、まぁな……いきなり厳しいな。どうしたんだ?そんなこと聞いて」

ソラール「いや、少し気になっただけだ。求める物が目の前にあるのに、手に入らない……そんな苦境を、お前は楽しんでいるようにすら見える」


ソラール「未練は無いのか?」


ラレンティウス「………」


ラレンティウス「うーん…実は俺、別に魔女の呪術が欲しくて旅をしてるわけじゃ無いんだ」

ソラール「?」

ラレンティウス「師事を乞いたのも駄目元さ。というよりは、探求者としての習い性だよ。乞いた時から薄々は気づいていたさ。脈無しだってね」

ラレンティウス「彼女が今種火に何をしているのか、それすら分からないんだぜ?火を授かっても、それでこんがり焼き上がるだけさ」

ラレンティウス「まぁ、そんな能無しがこんな所にまで来ちまったってことは……多分俺は、見て体験さえ出来ればそれでいいんだろうな」

ソラール「………」

ラレンティウス「……なぁ、あんた大丈夫か?欲しいものに近付いているからって、焦ってるんじゃないか?」

ソラール「………焦ってはいない。迷ってるんだ」

ラレンティウス「迷うって、何に?」

ソラール「分からない……分からなくなってしまった…」


ソラール「俺がこの旅に何を求めていたのか……覚えてはいるが、もう見えない。見たいという気が萎えつつあるんだ。それだけを夢見ていたのに」


ラレンティウス「………」


ラレンティウス「…あんたが何を求めているのかは、探求する道が違う俺には分からない。だが分からないなりに忠告するぞ」


ラレンティウス「呪術師は火を求め、敬い、恐れる。育てはするが、身は投じない」


ラレンティウス「かねて火を恐れたまえ。これは望みし物の素晴らしさ、その輝きに自分を焼かせるなという呪術王ザラマンの警句だ」


ラレンティウス「あんたの役に立つかは分からないが、覚えておいて損は無い言葉だと思うぞ」


ソラール「………」


ラレンティウス「じゃあ、俺は戻ってるからな。ここで見たものを書き記しておきたいんだ」

ラレンティウス「またな」

ソラール「ああ」


ラレンティウスは去ったが、ソラールは封印の前に残った。
しかしソラールの視線は門から離れ、伏せられている。
太陽の戦士は地面を見ず、足先も見てはいない。
何も視界に入っていない。その胸に描かれた、太陽すらも。





ソラール「かねて火を恐れたまえ、か」








492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/20(土) 16:34:04.81 ID:QEznwFA10
ここんところ探求者達の懊悩が本当に良い
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/20(土) 21:35:22.43 ID:bCBNN0p+0
ソラールさんは原作であれなあれだからちょっと怖いな…
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/20(土) 23:48:55.86 ID:q3PX0KLY0

コブラ「おはようさーん!」チャキッ

銀騎士「!」


ドウドウドウーーッ!!


曲がり角から飛び出したコブラは、右手に持つマグナムを連射した。
額と胸と腹を続けざまに撃たれ、銀鎧に身を包む騎士は大きく体勢を崩す。


ジークマイヤー「ふんおー!」ガヅーーン!!


勝機に応じて、空かさず駆けたジークマイヤーが振り下ろしたツヴァイヘンダーは、銀騎士の胴鎧を袈裟懸けに凹ませた。
凹みには亀裂が入り、亀裂からはソウルが吹き上がって、銀騎士を空の鎧へと変えて消えた。


ジークマイヤー「はっはっは!やはり他愛も無い!神の兵と思い勇んで臨んだが、どれも手応えが無いな!」

ビアトリス「調子の良いことを言うな。コブラの“まぐなむ”が強力だからこそ通じる戦法だぞ。私の魔法は限りがあるうえに、連射がきかないからな」

レディ「強力ですって。やっぱり私の言ったとおり、中々使えるでしょ?」

コブラ「そうは言ってもなぁ。これくらいの相手、本来のコイツなら一発で三人は倒せるぜ」

コブラ「海賊コブラともあろう男が、弾の温存に精を出すとは…貧乏はツライね」トホホ



ローガンの無事を信じつつ、コブラ達一行はアノール・ロンド城内を篝火求めてさまよっていた。
真鍮鎧の騎士が守る篝火に戻る事もコブラは一度考えた。しかしその帰路は落下死の危険を伴う石橋一本に限定されており、しかも途中には奇襲に適したリフトが二箇所もある。
そこを通るくらいなら、狭い通路と個室が複雑に絡み合う城内を歩く方が、安全であると考えたのだ。
迷路のような構造は仮面の騎士と遭遇する可能性を減らし、狭い通路は敵対者への集中攻撃を促す。
一行の前に敵対者が立とうものなら、其の者はビアトリスとコブラの集中砲火と、レディとジークマイヤーの怪力による剣勢を受け、瞬時に鏖殺された。

大弓を持つ騎士も、槍と盾を構える騎士も…


コブラ「おっ、宝箱か。さてさて神のお宝はどんなものか…」フフフ…


ミミック「………」ガパッ


コブラ「おわーっ!?」ガシッ

ビアトリス「ミミックだ!神々に追われたとされる者がなぜここに!?」

ジークマイヤー「コブラ!そのまま押さえつけていろ!叩きのめしてやる!」

レディ「箱を斬ってはダメよ!コブラに当たるわ!手脚を斬らないと!」


バコッ!グシャッ!バキッ!ズバーッ!


ミミックも、この戦法の前には容易く屈した。
無論ミミックに限り、挟まれる者に常人を超える反射神経と膂力が要求されたが、その唯一の弱点も克服されている。
少なくとも、ミミックの咬合力は区画閉鎖用のシャッターに比べ、貧弱であった。
一行はそのまま、現れる敵対者を蹴散らし、城内を歩き回り…


ジークマイヤー「やったぞ!篝火だ!」


遂に目的の灯りを見つけた。


コブラ「床に薪を置いて燃やしてるのか…こいつを置いた奴は暖炉が見えなかったのか?」

ビアトリス「廃墟の暖炉に、煙など出るはずもない火をくべる者もいないだろう。篝火が燃えるのに、空気も空間も要らん」

ビアトリス「それほどまでに、この城は打ち捨てられて時が経っているという事だ。貴公の読み通りだな」

レディ「どうジーク?篝火は使えるかしら」

ジークマイヤー「うむ、火は弱いが、エスト瓶五口分くらいなら何とかなるだろう」

レディ「だそうよ?」

コブラ「そいつは結構。俺としちゃ探索もしてみたいが、回復手段が弱いんなら話は別だ。道草はやめて本道に戻るとするか」
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 14:56:13.22 ID:04qZ/XGDO
やっと追い付いた
闇霊がいるなら白や青もいるんだろうか
そういえばサインは出てるらしいし
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 18:10:41.00 ID:okyFMchY0
必要最低限の回復手段を手に入れた一行は、元来た道を戻り、仮面の騎士が倒れた大広間に再び入場した。
大広間には音は無く、敵意を滾らせる者もいない。
長方形の両短辺にはただ、静謐を守る城門と、冷たい霧のカーテンが揺らぐだけである。


コブラ「鬼が出るか蛇が出るか……おっと、前も同じこと考えた気がするぜ」

ジークマイヤー「鬼とは、東国の悪魔か?貴公らの世界にもいるのか?」

レディ「概念としては存在するわ。本物は……まぁ、いるかどうかは人それぞれね」

ビアトリス「話の分かる方々であればいいが……」

コブラ「そいつは高望みってもんだ」

ビアトリス「? なぜだ?」

コブラ「こっちじゃ、鬼や蛇も神と呼ばれるからさ」チャッ


コブラはマグナムを開けて急造弾を抜くと、代わりに本来そこに入るべきマグナム弾を装填した。
装填された弾丸は五発。これらを撃ち切れば、後は急造弾を使わなければならない。
三発撃ち込んでようやく銀騎士を怯ませる、いささか頼りない弾を。


ビアトリス「…それはまた、酷な話だな」

コブラ「俺もこのことわざが嫌いさ。今からその鬼や蛇に会いに行こうってんだからな。覚悟はいいか?」

ビアトリス「ああ、できてる」

ジークマイヤー「万端だ。このジークマイヤー、常に戦場に備えている」

レディ「ですって」

コブラ「よし、じゃあ参拝と行こう」スッ


コブラが霧に手を掛けると、淡く硬く閉ざされていた霧はコブラの腕を通した。
霧はコブラを通し、レディを通し、不死達を通し、大柱が立ち並ぶ大広間へ彼らを招き入れると、再び硬く閉じた。
大広間には薄暗い静寂が漂い、その静寂を、入って右手側の大窓から入る陽光が照らし、冷たい空間にわずかな暖かさをもたらしている。
広間最奥には、頭に冠をいただき大剣を地に立てた老王の像と、姿に豊満さをたたえる女神像が見える。
その二つの像の前に、小山の如くそびえて殺気満ち満ちる者が立っていた。




処刑者スモウ「………」




身の丈十七尺にも及ぶ巨体に、身体そのものと見紛う程に重厚な、黄金の重鎧に身を包む者。
コブラの胴より太い腕で支えるのは、鎧と同じく黄金色に輝く、象脚にも似た大鎚。
大鎚と言ってもその大きさは更に凄まじく、不死の身にあっては破城槌に、コブラの世界にあっては小型宇宙船にさえ匹敵する巨大さであった。
そのあまりの威圧感に不死達は圧倒され、背後に閉じた霧から離れることができない。
しかし、コブラは一歩踏み出した。


コブラ「英雄へのお出迎えにしては人数が少ないな。そいつは花束かい?」

ビアトリス「コブラ、そんな軽口を聞いては…」ヒソヒソ…

コブラ「構いやしないさ。あんなものを持ち出して来る時点で歓迎する気は更々ない。それともキミには本当に花束に見えるのか?」

ビアトリス「…そんな訳ないだろう……」ヒソヒソ…


金色の小山を刺激しないようにビアトリスは気を揉んだ。
だが、そんなこと知ったことではないと言わんばかりに、コブラは更に歩を進めつつ、小山に語りかけた。


コブラ「なぁ、あんたはどう思ってるんだ?あんたは俺たちの敵なのかい?」




ドガァン!!




敵意を含んだコブラの声に、応える衝撃が響く。
広間の二階から降ってきた騎士は金獅子の鎧に身を包み、右手に白金色の槍先を持つ長い十字槍を握っていた。
獅子の顔持つ兜からは真紅の長房が伸び、房は着地の衝撃で跳ねあげられ、陽の光を乱し、獅子騎士の金鎧に炎のような煌めきを映した。
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 22:28:42.17 ID:04qZ/XGDO
マヌスまでやるんだろか
あれもある意味哀れな存在だけど
書庫に行った時にペンダントが出るかどうかで決まるかな
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