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神谷奈緒「One Step Ahead」 -
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1 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:46:28.50 ID:8Dg7wbvRo
・モバマス・神谷奈緒ちゃんのSS
・超短い
・奈緒はかわいいなあ!(たんおめ)
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1474033588
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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無くても死にはしないけどある方が安心する気がしないでもない @ 2024/11/21(木) 02:19:47.82 ID:SZfofcdIo
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阿笠「KAT-TUN以降のジャニーズはよく分からんのう」 @ 2024/11/21(木) 00:04:50.40 ID:a8SYark2O
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(安価&コンマ)思春期を殺した少年少女達の・・・(ガンダムW) @ 2024/11/20(水) 23:17:22.83 ID:I72L6dC90
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1732112242/
年中 @ 2024/11/20(水) 08:24:27.00 ID:9YUTh0GSo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732058666/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/20(水) 07:19:44.97 ID:8NGj5DR1o
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732054784/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/20(水) 07:19:04.43 ID:3CqDwHBKo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732054743/
2 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:47:25.41 ID:8Dg7wbvRo
アタシは自己評価が低い。
なんの因果かアイドルになった今でも、それは変わらない。
そんなもん、自分の性格なんて一朝一夕に変わるもんじゃなし、仕方ないじゃん。
これってアイドルとして致命的なんじゃないか? と思うことなんかしょっちゅうだよ。
でもさ。事務所のみんな、アタシのこと「かわいい」「かわいい」って。んなわけないじゃん!
アタシのどこに可愛い要素なんてあんのさ!
そして。
アタシは、プロデューサーがちょっと苦手だ。
「俺がかわいいと思うからスカウトするし、プロデュースもする」
「あ、アタシは……例外だろ!」
「例外はない」
3 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:48:02.69 ID:8Dg7wbvRo
ううっ。
決して言い返せない。プロデューサーには、いっつも負ける。
そう。
アタシがどんなに否定したところで、アタシが結局言い返せないところに落とし込んできやがる。
そのたびに「そ、そんなもん、かな……」なんて。懐柔された気になるのも腹立たしい。
今こうしてアイドルっていう仕事をしているのに、どこかこう、アイドルってなんだろう? って意識から離れられない。
実感がない。
それって、アタシが本気になってないってこと?
「なーんだかなあ……」
「まあなんだ、奈緒。仕事しような」
「……はーい」
不承不承。アタシは今日も仕事をこなすのだ。
4 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:48:46.07 ID:8Dg7wbvRo
そしてそれは突然。やってくる。
「そ、ソロぉ!?」
「そう。ソロCDな。それと単独ライブ」
「単独ぅ!?」
いや、確かに凛も加蓮もソロデビューしてるけど。
でも。いやいや。いやいや。
「あ、アタシにはまだ、早いんじゃないなーって。な、プロデューサー!」
「全然?」
「……あ、あああぁ」
そうあっけなく言われると、どうしていいかわからなくなる。
だって考えてみたら、アタシずっと凛や加蓮におんぶにだっこだったし。プロデューサーがとってくる仕事だって、単に責任感じてなんとかこなさなきゃって、ただひたすらやっただけだし。
実感ないんだよ! アタシがちゃんとやれてる実感が。
「あのな? 奈緒」
「え?」
「その『ちゃんと』ってさ。なにをちゃんとなんだ?」
「……」
アタシは絶句する。
5 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:49:24.78 ID:8Dg7wbvRo
「あのな奈緒。なんか勘違いしてるようだから、ちょっとだけ言っておく」
「……」
「アイドルなんて1000人いれば1000通りの個性なんだ」
「……」
「個性のぶつかり合い、な。『ちゃんと』なんてラインは、ないんだ」
「……でも」
「奈緒。お前はやってる。奈緒は間違いなく、アイドルだ」
「……」
今日もまた、言い返せない。でも。
プロデューサー。
アタシはやれてるって、その言葉信じてもいいのかな?
6 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:50:27.94 ID:8Dg7wbvRo
ソロデビューに向けて。レッスン、レッスン、レッスン。
「っ、ぷはぁ!」
「よしおつかれ。きちんとクールダウンしておくんだ、いいな」
「……はいっ!」
ソロが決まってから、凛も加蓮もいない中で、マスタートレーナーさんとのマンツーマンが続く。
正直、きっつい。めちゃめちゃきつい。でも、投げ出す気にはならない。それはだって。
プロデューサーの、眼。
ソロデビューが決まって以降、レッスンにはプロデューサーがつきっきりになった。
アタシがどんなに無様にミスしても、決して口に出さない。ただアタシを、見てる。
見られてる。
それがたまらなく恥ずかしくて悔しくて……なんでかうれしくて。
アタシも負けたくないから、ひたすらにやってる。
7 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:51:01.17 ID:8Dg7wbvRo
「おつかれ」
大の字になってるアタシに、プロデューサーは声をかける。
それがここ最近のルーティーン。
アタシのレッスンが終わるまで、プロデューサーはずっと待っている。なにも言わず。
なにも言わないからどうしてもアタシは、訊きたくなる。
「……なあプロデューサー」
「……ん?」
「アタシは……やれてるか?」
そう訊くたびにプロデューサーは、こう応えるんだ」
「奈緒はやってる……奈緒は、アイドルだ」
最近その言葉が、ちょっと気持ちよくなってきた。そんな気がしてる。
8 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:51:47.14 ID:8Dg7wbvRo
もらった曲は正直、恥ずかしかった。
「これアタシじゃん!!」
「ああ、そうだな」
しれっと返すプロデューサー。プロデューサー自身が、こういう曲でと注文したんだって。うわさに聞いた。
なんだよそれ。恥ずかしさの極致じゃんか!?
「まあ、そうだな」
わかっててやったのかよ!
うあー。うあうあー。そんなのアタシにやらせて、プロデューサーはアタシをどうする気だ!?
「奈緒」
「な、なんだよ」
真剣な顔になるプロデューサー。ちょっと威圧感ある。こわい。
9 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:52:44.61 ID:8Dg7wbvRo
「この歌は、奈緒だ」
「……お、おう」
「みんなにな、よくわかってもらうんだ。神谷奈緒ってアイドルを」
「……」
「他の誰でもない、奈緒自身を」
そう言われたって、アタシが恥ずかしいの全然かわんないじゃん。
なんでだよ。
「なあ奈緒。奈緒がなんでみんなから『かわいい』って言われるか、考えたことあるか?」
「……そ、そんなの。わかるわけないじゃん」
「そうだな。本人にわかるわけがない」
「……なんだよそれ」
「自覚がないからな、そりゃ」
そんなこと言ったって、わかんないもんはわかんない。
アタシは最初っから、自己評価低いんだ。それはわかってるだろ?
「『かわいい』って言われるのはな。顔とか、スタイルとか、そんな一部なんかじゃない。全部ひっくるめた奈緒の個性に、だ」
「……個性」
「そう、個性」
10 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:53:41.07 ID:8Dg7wbvRo
個性って言われても。ああ、そういや。
プロデューサー、言ってたっけ。アイドルは個性のぶつかり合いだ、って。
アタシは顔もスタイルも、言葉だって、どこに出しても恥ずかしいと思うくらい、アイドル向きじゃないって思ってる。
でも、個性、か。
「アタシ、アイドルやれてるのかな……」
つい口に出た言葉を、プロデューサーは拾った。
「ああ、奈緒はアイドルやってる。奈緒はどこを切っても個性にあふれてて、かわいいんだ」
「……」
「なあ奈緒、ちょっとは信じてみないか?」
11 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:54:18.20 ID:8Dg7wbvRo
ああ。
悔しいなあ。プロデューサーには言い返せない。敵わない。
そして。
「いいのか?」
その言葉を信じてみたい自分がいることに、気づいたんだ。
まったくもう……悔しいじゃん。
そしてプロデューサーは、また言ったんだ。
「奈緒は、アイドルだ。信じろ」
そう言われたらアタシ、信じるしかないじゃん。
だって。
ずっと見てくれたプロデューサーの、言葉だから。
12 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:55:06.29 ID:8Dg7wbvRo
そう言われてから、アタシは。
マストレさんに食いつくように、レッスンを始めた。
プロデューサーが言ってくれたんだ。アタシはやれてる、って。だったら。
とことんやるしかない!
アタシはまだどこかで、あの言葉を信じ切れてないけど。
でもプロデューサーが見てくれてるんだ。
奈緒はやれるだろ? って。
だったらやるしかないじゃん。やる一択じゃん。
そう思えるようになったら、レッスンにもついていけるようになった。そしてマストレさんは「いい表情になったな」と、レッスンのレベルを上げまくる。
ちっきしょーー!! どこまでだって食らいついてやる!!
レッスン、レッスン、レッスン。
あっという間に、時間が過ぎていく。
13 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:55:45.71 ID:8Dg7wbvRo
ついに来た。ライブ当日。
緊張する。めちゃくちゃ緊張する。でも。
「奈緒」
プロデューサーが声をかけてくる。アタシはその声を、正面から受け入れた。
「プロデューサー」
「いい緊張、持ててるか?」
「……うん」
レッスンはうそをつかない、っていうけど。あれはただの暗示だよな。
こうして、手には汗をかいてるし、足も震える。
でも、プロデューサーが「いい緊張」と言ってくれた。ならこれでいいんだと思う。
アタシは、プロデューサーを信じることにした、から。
「奈緒にな、最後に言っておく」
「……なんだ?」
「前を見ろ」
「前?」
14 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:56:17.60 ID:8Dg7wbvRo
「そう、前だ。その風景は、お前だけのものだ」
15 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:56:50.05 ID:8Dg7wbvRo
前、か。アタシにそれを見ることはできるのかな。
「できる。奈緒は、アイドルだからな」
「……そっか」
「凛や加蓮にばっかり独占させるんじゃないぞ。奈緒自身でつかんで来い」
そうか、凛や加蓮は先に、その風景を見てるんだったな。
なら。
アタシも、追いつく。
「いってくる」
「おう」
プロデューサーに背中を押される。ああ、まぶしいな。
歓声と緊張で、めまい起こしそうだあ。
でも言われたとおり、アタシは前を見る。そこは……
16 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:57:45.28 ID:8Dg7wbvRo
ステージで。
アタシは歌い、踊り、しゃべり、笑い。
とにかく、頭も体も空っぽになるくらい、全部全部さらけ出す。
そのひとつひとつが、客席に溶け込んで。どんどん。どんどん。光の渦になっていく。
うわあ。
これか……これなのか。
ああ、悔しいなあ。悔しい。凛や加蓮に、先に知られたことがたまらなく。
なんだよこれ、めちゃくちゃまぶしくて、めちゃめちゃあったかくて。
「あー! めちゃめちゃ楽しい!」
アタシの叫びに、客席も応えてくれた。
もう! もう! そこまでされたらアタシ、それ以上にやるしかないじゃん!
「みんなーー!! もうサイコーー!!」
17 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:58:34.69 ID:8Dg7wbvRo
無我夢中でやりぬいた。正直よく覚えてないくらい。
アタシは、アイドルになれた、かな?
幕が下り、ステージを降りる。
震える。手も足も、体全部。でもこれって。
「……しっ」
握りこぶしを、アタシは作っている。
「よーーーーーっっっし!!!!!」
そして無意識にアタシは、叫んでいたんだ。
18 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 22:59:23.75 ID:8Dg7wbvRo
プロデューサーとふたり、ライブ会場を後にする。
落ち着くまで時間がかかった。ううん、違う。
まだ、落ち着いてない。アタシはまだ、興奮しっぱなしだ。
「なあ奈緒」
プロデューサーが声をかけてくる。
「なに? プロデューサー」
「見えたか?」
「……うん」
見たよ、あの風景。プロデューサーの言うとおり、前を見て。
「……サイコーだった」
ひとりで立たないと見えない、その風景。アタシ、見た。
「いいもんだろ?」
「うん」
19 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 23:00:15.43 ID:8Dg7wbvRo
言葉にすると恥ずかしいから言わないけど、プロデューサー。
アタシ、プロデューサーを信じて、よかった。
わかったんだ。アイドルをやってるって、実感が。
ああ、もったいない。今まで何をしてたんだアタシ。でも。
「アタシ、アイドルやれた、よな?」
「……もちろん」
よかった。アタシの実感は間違ってなかった。だって、プロデューサーのお墨付きだから。
プロデューサーの言葉だから、信じられる。
「……やるよ」
「ん?」
「アタシ、もっともっとアイドル、やる。わかったんだ、今日」
「……」
「アタシは確かに、アイドルなんだ、って」
20 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 23:00:53.79 ID:8Dg7wbvRo
今更かもしれない。だってスカウトされてからずっと、アイドルであることは確かなんだから。
でも、はっきり違う。アタシは、アタシをさらけ出して、アイドルになれたんだって。
なんか、すっきりした。
「奈緒」
「なに?」
プロデューサーにそう言われて振り向いたら、突然。ぎゅーーーっ、て。
「お、おい!! なにすんだよ!!」
「ああもう!! 奈緒はかわいいなあ!!」
プロデューサーは、今まで見せてもくれなかった笑顔で、アタシの頭をわしわしする。
「ちょ! やめろ! みんな見てるだろ! 恥ずかしいじゃんか!!」
「お前はかわいい!! 超かわいい!!」
「だーかーらー!!!」
21 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 23:01:23.16 ID:8Dg7wbvRo
わしわしをやめないプロデューサー。恥ずかしいだろ! 髪めちゃめちゃになっちゃうじゃん!
でも、ちょっとだけ。うれしい。なんでかって?
……プロデューサーの笑った顔、かわいい。
それがわかってしまった……
ああ! なんだよアタシ! 乙女かよ!
でも、まあ。いっか。
こうしてプロデューサーとまた少し、近くなった気がするから。
アタシは、アイドル。
これからはちょっとだけ自信をもって、言える。だってさ。
プロデューサーが言ってくれるから。「奈緒はやってる」って。
「もう! 離せっての!」
プロデューサー、アタシもっとやるから。やれるって、わかったから。だから。
プロデューサーももう少し離れずに、アタシに付き合ってよ。
ね。
22 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 23:01:53.82 ID:8Dg7wbvRo
(おわり)
23 :
◆eBIiXi2191ZO
[saga]:2016/09/16(金) 23:02:48.55 ID:8Dg7wbvRo
終わりです。お疲れさまでした。
奈緒はやる子。誕生日おめでとう!
皆さんに琴線に触れれば幸いです。
ではノシ
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/16(金) 23:31:17.42 ID:s4CyMTUKo
乙。
13.77 KB
[ Aramaki★
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