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茜のタイムカプセル - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/03(月) 00:21:33.87 ID:7eCLb7540
デレマスSSになります
ポジティブパッションがメインのお話…のはず
若干SFっぽい要素が出てくるので非現実が苦手な方はUターンでよろしくどうぞ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1475421693
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:20:24.33 ID:WpWM+xYMo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227623/

■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:18:35.89 ID:Vr506SRJo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227515/

■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:49.87 ID:t6dKBjAuo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227469/

■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:17.71 ID:/UbTl3Hgo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227436/

■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:16:22.54 ID:Un8tNByuo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227381/

ミア「歩夢・・・辛かったな・・・」ナデナデ歩夢「ミアちゃん・・・うぅ・・・」 @ 2024/11/22(金) 00:59:47.53 ID:w7bhdEV4O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1732204787/

ちんぽいぬ @ 2024/11/21(木) 22:13:45.60 ID:BuRqeSctO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732194825/

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/03(月) 00:22:03.16 ID:7eCLb7540
私は、何か思い出を残したい時はカメラでその「瞬間」を撮ることにしているんです。
人の記憶は放っておくとどんどんと薄れていってしまうけれど、カメラに、写真に残しておけば、それを忘れずに残しておけるから。
普段の私の思い出。アイドルとしての私の思い出。大切な友達と過ごした思い出だって。
だから、私にとってカメラはたくさんの思い出が詰まった宝物なんです。
大切な。そう、本当に大切な。

あなたの大切な思い出は、どうやってあなたの中で残り続けていますか?
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/03(月) 00:23:22.53 ID:7eCLb7540
「――それじゃ茜ちん、次のお便りにいこっか」
「そうですね! それじゃあこれで、HNは……人見知り太郎さんから!」

いつになくマイクの位置を気にする茜ちゃんを察して、未央ちゃんがさりげなくマイクの角度を調節してくれました。
でも茜ちゃんの声はいつも大きくてよく通ってるから、逆に声が大きく入りすぎちゃうかも? あ、そこはスタッフさんが調整してくれるから大丈夫ですね。
今はラジオの収録中。私たち、ポジティブパッションがMCの週間ラジオです。

「えーっと、パーソナリティの日野さん、本田さん、高森さん、こんにちは!」
「こんにちは!!」「こんにちわっほー」「こんにちはー」

リスナーが送ってきてくれたお便りを、茜ちゃんが目を皿のようにしながら読み上げています。
茜ちゃん曰く「歌ったり人と話したりするのは割と自信がありますが、文字を読むのはとにかく苦手です!!」とのことで、
なるほど確かにお便りを読み上げるスピードは普段の茜ちゃんからは想像できないくらいゆっくり。
それでも、「あーちゃんがお便り読んでる時とスピードがほとんど同じだよねー」というのは未央ちゃんの談。
私はもうちょっと速く読んだ方がいいのかな。

「毎週、このラジオを楽しみに、しながら仕事に励んでいます。特に、日野さんの元気な声に、私はいつも元気をもらっています――」

茜ちゃんが持っているお便りの原稿は、ラジオが終わるといつもくしゃくしゃになっています。
それはお便りを読み上げている最中に手が力んでいるから、というのもあるけれど、
それ以上に、ラジオが始まる前にずっと茜ちゃんが読み込みをしているから、というのが一番の要因だったりします。
茜ちゃん、凄いんですよ? 毎週番組が始まるずっと前にラジオ局に入って、リスナーの皆さんが茜ちゃん宛に送ってきてくれたお便りを全部読んでるんです。
その中からスタッフさんにお願いされたお便りをとにかく読み込んで練習して、難しい漢字とかを調べて原稿に書き込んで。
そんな茜ちゃんは凄い! っていう話を未央ちゃんと二人でラジオでした時の茜ちゃん、顔が真っ赤になってとっても可愛かったなぁ。
その放送があった翌週から、茜ちゃん宛のお便りが増えちゃって。
たまに局で読み切れなかった分のお便りがあった週は、スタッフさんにお願いして持ち帰ってるみたいです。

「――私も社会人になって数年になる程度ですが、たまに学生の頃を思い出して、感、慨にふけったりします。
皆さんも、幼少時代の頃を思い出して、何か思うことってあるでしょうか? ……とのことです!」

お便りを読み終えて少し表情が緩む茜ちゃん。

「幼少時代かぁ。とは言っても、私たちもまだまだチビッ子ですからなぁ」
「でも未央ちゃんは、私より10cm以上も背が高いですよ!」
「茜ちゃん、未央ちゃんが言いたかったのは多分そういうことじゃないと思うな……」

そうなんですか!? と、ぱっちりした目を更に真ん丸にして驚く茜ちゃん。
その様子を見て、私も未央ちゃんも思わず噴き出しちゃいました。茜ちゃんはどんな時も全力なんですよね。

「未央ちゃんは、年齢的なことが言いたかったんだと思いますよ」
「なるほど年齢ですか! 確かに私たちはまだハナモハジラウ10代ですからね!」
「茜ちん、それ意味分かって言ってる?」
「よくわかりません!」
「だよねー、知ってた」

いつも通りの掛け合いに、スタジオ外のスタッフさんもにこにこしながら私たちの様子を見つめています。
未央ちゃんが茜ちゃんに話を振って、茜ちゃんが全力でそれに応える。こういうのを様式美って言うんでしょうか?
ちなみに、その時の私はただ二人のやり取りを見ているだけにしています。
「こーいう時はあーちゃんがゆるふわしてくれてると安心して私たちもはしゃげるんだよー」と、前に未央ちゃんが言っていました。
「ゆるふわする」って、どういう感じなんでしょう? 私はいつも通りに過ごしているだけなので、あまりよくわかってないです。
この場はいつも通り、二人の掛け合いだけで終わると思っていたんですけど、
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/03(月) 00:25:01.28 ID:7eCLb7540
「あ、でも、昔と言えば私、タイムカプセルを埋めたことがありますよ!」

今日は茜ちゃんが珍しく話題を提供してくれました。
あ、そうそう。こういうラジオって本来は台本が用意されていて、それに沿って進行するのが普通ですよね。
私たちのラジオも最初はそれに倣って台本が用意されてたんですけど、
未央ちゃんは台本に書かれていない話題を色んなところから引っ張り出してきてまるで台本が役に立たず。
茜ちゃんは約一時間分の番組の台本を覚えきれず、最終的には知恵熱を出してしまって。
そして私は台本通りに進行しようとすると、倍以上の時間がかかってしまって尺が全く足りない。
こんな様子にライターさんもお手上げになってしまい、結果的には台本なしのほぼアドリブで進行するラジオになっちゃいました。
それでも、こっちの方が個性が出てていいわね! とディレクターさんが褒めてくれているのでそのままです。

話を戻しましょうか。
茜ちゃんの口から出てきた、「タイムカプセル」という単語を未央ちゃんが逃すはずもなく。

「お、茜ちーん、その話気になるねぇ。私たちにもっと詳しく聞かせてよー」
「そうですね。茜ちゃんの昔話、私も凄く気になります」
「そうですか! あれは私が5歳の時にですね――」

すかさず茜ちゃんのタイムカプセルに反応した未央ちゃんに、重ねるように私も茜ちゃんにお話を促します。
タイムカプセル。何だか凄く懐かしい響きがしますよね。まだ16歳の私が言うことでもないかもしれませんけど。

「5歳の時にですねー……えーっと………………………………………………………………何を入れたんでしたっけ?」

芸人さんみたく、ガタッと体勢を崩す未央ちゃん。
茜ちゃんの目が珍しく泳いでいます。

「いやいやいや茜ちん、そこはちゃんと覚えておくトコでしょ。むしろそこ覚えてないと何もないでしょ」
「いやー確かにそうなんですが、確かに何か入れたはずなんですが! 何かとても大切なモノを入れたのは確かなんですが!!」
「た、タイムカプセルの大きさはどれくらいだったんでしょう。そこから中身が何か……」
「大きさは確かこれくらいです!」

そう言いながら、茜ちゃんは自分の胸の前でジェスチャーをしながらタイムカプセルの大きさ(大体ティッシュ箱4つ分くらい)を私たちに伝えてくれます。
でも茜ちゃん、それだとリスナーの皆さんにはちょっと伝わらないかも……
それから、うおぉぉぉぉぉぉ、と頭をかきむしりながらタイムカプセルの中身を思い出そうとする茜ちゃんでしたが、結局中身は思い出せず。
ちょっともやもやが残ったままになっちゃっいましたけど、今週のラジオの収録は終わりました。

ラジオの収録が終わって控室に戻り、ちょっとぐったりした様子の茜ちゃん。そこまでして必死に思い出そうとしてくれてたんですね。
そんな茜ちゃんに、未央ちゃんがペットボトルのお茶を差し入れてくれました。

「お疲れー茜ちん。ゴメンね、タイムカプセルのこと思い出そうとしてくれてたのに、つい色々いじっちゃって」
「ありがとうございます、未央ちゃん。いえ、あれは私が思い出せなかったのが原因ですから……」

日野茜、一生の不覚……! と悔しげにしながら、ペットボトルのお茶を一気に飲み干す茜ちゃん。
私も未央ちゃんからお茶を受け取り、それをこくこくと飲みました。
みんなお茶を飲んで一息ついたところで、私の口から思わず言葉が漏れていました。

「それにしても、茜ちゃんがタイムカプセルの中に入れたモノって、一体何だったんでしょう……?」
「おっ、あーちゃんもやっぱり気になる? 気になっちゃうよねー?」

まるで待ってましたと言わんばかりに食いつきの良い未央ちゃん。その表情はとても楽しそう。

「これはさ、やっぱり実際に見てみなきゃだと未央ちゃんは思うのですよ!」
「実際に……茜ちゃんの、タイムカプセルをですか?」
「そう! 茜ちん、タイムカプセルを埋めた場所は覚えてる?」
「ばっ場所ですか!? それならえっと……確か家の裏手にある小山の頂上に埋めたはずです!」

よーし! と大げさに袖をまくる動作を取る未央ちゃん。
そして次に未央ちゃんの口から放たれた、


「ポジティブパッションは、これより茜ちんタイムカプセル捜索隊に期間限定リニューアル! 茜ちんの大切な思い出を思い出す旅に出るのだーっ!」


この一言から、茜ちゃんのタイムカプセルを私たち三人で探すことになって。
この時はまさかそれがあんな事態になるとは、私たちは誰も予想していなかったのでした。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/03(月) 00:25:52.53 ID:7eCLb7540
とりあえず今日はここまで
気付いたら導入めっちゃ長いな…
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/03(月) 00:53:01.66 ID:yvuj3q/70
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 00:51:21.63 ID:NIn2R17f0
続き書こうかと思ってたけど書けなかった…
平日は副業の関係上あんまり進められなさそうなのでまったりペースでやっていきますハイ
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 05:50:08.08 ID:nSbONCKjO
おつ
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 08:45:28.00 ID:HzLuST1/O
これは期待
乙です
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/10(月) 20:53:18.77 ID:jQeMRsdb0
「……いや、だからそれは無理だろう」
「えーなんでさー! それくらいいいでしょー!?」

控室に未央ちゃんの声が響きわたります。
そんな未央ちゃんの目の前にいるのは、見るからに困りましたと言わんばかりに眉間にしわを寄せたプロデューサーさん。
未央ちゃんが「茜ちゃんタイムカプセル捜索隊」の発足を高らかに宣言してから数分。
ラジオの収録が終わって、いつも通り事務所から迎えに来てくれたプロデューサーさんを待ち構えていた未央ちゃんは、
プロデューサーさんが控室に顔を出すなり早速件の直談判をしたのでした。
……ところがと言うかやっぱりと言うか、プロデューサーさんはその話に首を縦には振ってくれなくて。
その後、同じような問答を何回か繰り返して現在に至ります。
未央ちゃんは何度言ってもプロデューサーさんが断るのにやっぱり納得がいかないようで、
ほっぺたをぷくーと膨らませて抵抗の意思表示をプロデューサーさんに見せています。

「プロデューサー、私からもお願いします! どうしても、タイムカプセルの中身を思い出したいんです!
……いえ、思い出さなければならないんですっ!!」
「ほらプロデューサー、茜ちんがここまで必死になってお願いしてるんだよ? それをムゲに断るのは大人の対応としてどーなのさ!」

そうしているうちに未央ちゃんと並んで、茜ちゃんもプロデューサーさんに詰め寄ります。
むむむむむー、とプロデューサーさんを気迫だけで徐々に壁際に追いやる未央ちゃんと茜ちゃん。
控室の中でもあの二人がいる空間だけ3、4℃くらいは気温が上がっていそう、それくらいの熱気を感じます。

「あーちゃん! あーちゃんからもプロデューサーに何か言ってあげてよ!」
「え、ええっ、私がですか?」

そろそろ私にも話が振られるかなぁ、と思っていたところにちょうど未央ちゃんが私のことを呼んだので、ちょっとびっくりしちゃいました。

「そうです藍子ちゃん! これは私だけの問題ではなく、ひいてはポジティブパッション全体の問題でもあるんですから!!」
「そうだよあーちゃん! わんふぉーおーる・おーるふぉーわん、私たちポジティブパッションのモットーだよ!」

そのモットーは今初めて聞きましたけど、確かに茜ちゃんのために何かしてあげたいという気持ちは私も同じです。
でもあんまりプロデューサーさんを困らせてしまうのもいけないし……
うーん、今の私は何をするのが正解なんでしょうか?
期待に胸を膨らませ、キラキラした無垢な瞳を私に向けてくる未央ちゃんと茜ちゃん。
そ、そこまでハードルが上がっちゃうと私は更に一体どうすればいいんでしょうか……
そんな二人の迫力にすっかりたじろいでいた様子のプロデューサーさんでしたが、そこはやっぱり私たちのプロデューサーさん。
プロデューサーさんから私に二人の気が逸れているうちに気を取り直すと、詰め寄っていた未央ちゃんと茜ちゃんの肩をそっと押し返しました。
それに気づいた未央ちゃんが再び物申そうとする前に、プロデューサーさんが諭すように話し始めます。

「とりあえず本田の話はわかったし、お前たちが日野の助けになってやりたいという気持ちもわかった」
「! それじゃあ……!」
「待て待て、人の話は最後まで聞くもんだ」

期待に目を輝かせながらプロデューサーさんを見つめる未央ちゃんと茜ちゃん、まるで待てをしている子犬みたいですね。
そんな目を向けられてばつの悪そうな表情を一瞬浮かべるプロデューサーさん。
やっぱり、プロデューサーさんも本当は私たちと同じ気持ちなんですね。

「……ただな、そんな時間をいつ、どうやって取るつもりなんだ? 今のお前たちが三人揃ってオフを取れる日があるか?」
「そっ、それを何とかしてほしいからプロデューサーにお願いしてるんじゃん!」

確かに、私たちも最近は色んなところでお仕事させてもらえるようになって、それはすごく嬉しいことで。
でもそれと同時に、三人で合わせてお休みを取ったり、一緒に遊んだりする時間はめっきり減っちゃいました。ラジオみたいに、三人一緒にお仕事することはありますけど。
三人で一緒に遊んだのって、最近だといつになるのかなぁ。私のライブ前にファミレスで集まって「藍子ちゃん会議」をした時くらいでしょうか。
プロデューサーさんがスーツのポケットから手帳を取り出し中を確認しますが、眉間のしわはなかなかほどけません。

「とは言ってもなぁ。再来月までのスケジュールはすっかり埋まってるし、その先もちょうど話が来てるところだからどこまで調整できるか……」
「再来月よりもっと先なんて待てないよ! せめて来週にしようよ!」
「無茶すぎること言うんじゃない、というかせめてって何だ」
「明日でもいいですよプロデューサー!!」
「お前は何を言ってるんだ日野」

いつも通り、だんだん掛け合いがコントみたいになってきました。観客はいつも私一人だけですけどね。
よくよく考えたら、アイドルがコントってすごく贅沢だったりします? うーん、でも事務所の笑美ちゃんや鈴帆ちゃんは普段からそんな感じだし……
普段あまりそういうことをしなさそうな人がやってると珍しく見える、とかそういう感じでしょうか。
と、そんな感じ(どんな感じ?)にプロデューサーさんと未央ちゃん・茜ちゃんの即興コントを私一人で鑑賞していたんですが、
今日はもう一人、お客さんが途中参加してきました。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/10(月) 20:57:24.92 ID:jQeMRsdb0
「あらー、随分賑やかで楽しそうじゃない?」
「で、ディレクターさん! お疲れ様です」

控室入口の方から聞き慣れた声が聞こえてきたと思うと、そこにはラジオのディレクターさんがいました。
すぐさまディレクターさんの方に向き直して挨拶を済ませるプロデューサーさんに続くように、私たちもディレクターさんにご挨拶。

「もー畏まっちゃって。ここはオジサンとあなたたちの仲なんだから、そんなの気にしなくてもいいのよ?」

手をひらひらとさせて困ったわーと言いつつ、柔らかな笑顔を浮かべるディレクターさん。
このディレクターさんは、私たちポジティブパッションがユニットを結成した当初からとてもお世話になっている人なんです。
というのも、このユニットで初めて冠番組を持たせてもらったのが、さっき収録していたラジオ番組だったりします。
ディレクターさんは私たちのことをすごく気に入ってくれているみたいで、このラジオに限らず他のお仕事で色々お世話にもなったこともあるんですよ。
あまり詳しいことは聞いたことがないんですけど、プロデューサーさん曰く「この業界ではかなり顔の利く人」だそうです。
でも私たちからすると、ディレクターさんは気さくで面倒見のいいおじさんのような、おばさんのような? とにかく一緒にいてとても安心できる、そんな人です。

「いえいえ、これは最低限の常識として必要ですから」
「『下敷きの仲にも礼儀あり』と言いますしね!」
「茜ちん、それを言うなら『親しき仲にも礼儀あり』だねー」
「ふふっ、今日もバリバリ絶好調ね」
「そうですか!? いやー照れちゃいますね!!」

あはははは! と豪快に笑い飛ばす茜ちゃん。その様子を見ていると、こっちまで楽しくなってきますね。

「まあ、こうやってこの子たちが明るくていい子に育ってるのも、あなたの事務所の教育がしっかりしてる証拠ね」
「恐れ入ります」
「んもう、あなたももう少し固さを抜いた方がいいわよ? 堅物キャラもそれはそれでいいけどね」
「プロデューサーくぅん、私たちのことを見習った方がいいのではないかねぇ?」
「やかましいわ」

未央ちゃんがにひひと笑いながらプロデューサーさんの横っ腹に肘をぐりぐりしていたので、
プロデューサーさんは未央ちゃんの頭に手を載せ髪の毛をわしゃわしゃして対抗。
傍から見ているとまるで兄妹のようですね。未央ちゃんは実際にお兄ちゃんがいるそうですけど、おうちでもこんな感じなのかな?
しばらくその様子を笑顔で眺めていたディレクターさんでしたが、突然何かを思い出したようで、胸の前で両手をぱんと合わせました。

「と、そうそうこんな話をしに来たんじゃなかったわ。茜ちゃん、さっきラジオで話してたタイムカプセルの件なんだけど」
「は、はいっ! 私のタイムカプセルが、どうかしましたか?」

ディレクターさんからその話題が出てきたのは予想外でした。
茜ちゃんも私と同じだったようで、答えたはいいもののその次が何か全く見当がつかないといった表情をしていました。
そんな中、ディレクターさんの質問に期待していの一番に口を開いたのが未央ちゃん。

「もっもしかして、ディレクターさんが茜ちんタイムカプセル捜索隊のスポンサーをやってくれるとか!?」
「お、察しがいいわね未央ちゃーん。スポンサーとまでは言わないけど、大体合ってるわよー」

未央ちゃんの期待に応えるように、ディレクターさんの言葉は続きます。

「ラジオの企画として、茜ちゃんのタイムカプセルを使えないかしらと思ったのよね。
ついでにタイムカプセルを三人で掘り起こしに行くところもロケ撮影ってことにしちゃって、WEB配信でもしようかなって」
「さ、三人でですか?」

やっほーい、とディレクターさんの話を聞いて飛んで喜ぶ未央ちゃんと茜ちゃん。いつの間にか私も混ざって三人でわーいわーい。
その隣で、プロデューサーさんがディレクターさんに詳細を聞き出そうとしていました。その表情はちょっと訝しげ。

「ディレクターさん、その、お話はありがたいのですが……少し見切り発車すぎるのでは?」
「あら、どういうことかしら?」
「日野のタイムカプセルを企画に使うと言いましても、そもそも企画として成り立つのかどうか……」
「それを今から考えるんじゃないのー。それに、話題性なら割とあるみたいよ?」

そう言いながらディレクターさんが私たちとプロデューサーさんに見せてくれたのは、タブレットの画面。
そこには某呟きWEBサイトで今トレンドになっているワードがずらりと並んでいました。
そのリストを眺めていると、中に「タイムカプセル」のワードが入っていました。しかもそのワードがよく呟かれるようになったのは、私たちのラジオの放送真っ最中。

「茜ちゃんのタイムカプセルが気になったっていう人がこれだけいたってことですよね、これ」
「そうなのよ藍子ちゃん。茜ちゃんの影響力もなかなか侮れないわよー?」
「な、何だか照れくさいですね!」

両手を頬に当て、なぜか酸っぱいものを食べたような表情をする茜ちゃん。

「ともあれ、これなら企画としても最低限の強度はあると見ても問題ないわね。
残りの細かい話はこれから考えることにしましょう。プロデューサー君もそれでいいかしら?」
「……わかりました。では後ほど打ち合わせをさせていただくということでよろしいですか」
「うんうん、OK。それじゃあ三人とも、良い画期待してるわねー」

そう言いながら、控室を出ていくディレクターさん。その表情はとても満足げでした。
ディレクターさんがいなくなったところで、プロデューサーさんは自分の鞄の中を物色しはじめます。仕事道具を探してるんですね。

「それじゃあ俺はこれから打ち合わせの調整に行ってくるから、お前たちは先に事務所に帰っておいてくれ」
「りょーかいっ」「はいっ!!」「わかりましたー」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/10(月) 20:58:02.74 ID:jQeMRsdb0
私たちそれぞれの返事を聞いて笑顔で頷いたプロデューサーさんは、足早に控室を出ていきました。
さて、控室に残ったのは私たち三人だけ。
そうなったところで、未央ちゃんがぱっと両腕を高く上げて私と茜ちゃんの方に向き直りました。

「やったね茜ちん、あーちゃん! これで名実共に茜ちんタイムカプセル捜索隊、本格始動だよ!」
「ありがとうございます、未央ちゃん! これも未央ちゃんがプロデューサーにしぶとく訴え続けてくれたおかげですね!」
「……逆に、私は二人のために何もしてあげられませんでしたね。ごめんなさい」
「んもー、そういうのは言いっこなしだよあーちゃん。 元々あーちゃんがそういうの強く言えないタイプだっていうのは、私も茜ちんもよく知ってるからね」
「そうですよ藍子ちゃん! それにここぞという時に藍子ちゃんがいてくれるから、私たちはこうやって全力を出せるんですよ!」
「未央ちゃん、茜ちゃん……ありがとうございます、ねっ」
「うんうん、やっぱりあーちゃんはそうやって笑ってるのが一番かわいいよー」

もうっ、未央ちゃんはすぐそうやって恥ずかしいこと言うんですから。でも、そこが未央ちゃんらしいですね。

「よーし! それじゃあ茜ちんタイムカプセル捜索隊も発足一日目にして大躍進を遂げたところで、改めて気合を入れ直そー!」

そう言うと、未央ちゃんは手の甲を上にした右手を私と茜ちゃんに差し出してきました。
それに重ねるように、私と茜ちゃんも右手をまっすぐ差し出します。
三人の手が重なったのを確認した後、未央ちゃんがすうっと大きく息を吸って。

「三人で茜ちんの大切な思い出を、絶対見つけるぞー!」
「「「おーーっ!!!」」」

たった三人だけの小さな捜索隊が、いよいよ動き出すのでした。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/11(火) 02:13:43.94 ID:eJ0fJAaVO
頼む改行挟んで読みやすくしてくれ…
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/14(金) 02:05:56.66 ID:2o6gWPi8o
来てたのか!続きも楽しみにしてる
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 22:15:21.63 ID:xqtahtB20
HTML化回避に更新です
もうちょっと小分けにして書くようにした方がいいですね…以後気を付けます
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