【艦これ】伊58「黒く塗り潰せ」

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1 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:26:20.60 ID:Zy0z2Oka0




・艦隊これくしょんのssです


☆内容に関する重要なこと☆

・この物語はフィクションです。実在の人物・団体・出来事等とは一切関係ありません

・独自設定あり

・ノムリッシュ要素あり(途中注釈を入れます)

・全方面に喧嘩を売る

・胸糞表現あり

・だいたいみんなひどい目に遭います

☆内容に関する重要なこと終わり☆


・伏字での規制あり

・意訳調の英語訳あり

・地の文、誤字脱字、駄文、妙なところで改行あり

・荒らしやコメ上の喧嘩は避けて頂くようお願い致します





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1488709580
2 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:28:15.29 ID:Zy0z2Oka0


水を裂く空気の音。

海が動く流れの音。

僅かな光が前を照らす。

彼女はその見慣れた光景を突き進んでいく。

3 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:32:36.66 ID:Zy0z2Oka0


こめかみまで響く血液の流れ。

脊椎と食道に蠢く恐怖の感情。

彼女はただひたすら突き進んでいく。

逃げ延びる為に。

命を長引かせる為に。


『奴ら』の手は海の底まで届かない。

しかし、『奴ら』は確実に自分を殺す。

『奴ら』は自分達を絶対に許さない。


たった一つの頼みの綱も、あっけなく無くなった。

『奴ら』は自分達を絶対に許さない。

だから次に殺されるのは自分だと、身体が脳に警告を出した。

4 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:35:23.30 ID:Zy0z2Oka0


だから彼女は逃げ出した。

そうしなければ、今度は何をされるかわからない。

だが最後にどうなるかだけは確信していた。

今度こそ、殺される。


だから彼女は逃げ出した。

罵倒され

否定され

搾取され

追い詰められ

それでも尚捨てられなかった生への執着が彼女を暴走させた。



先の事など今は何も考えられない。

ただ、その場を離れる事のみを考えて彼女は突き進んだ。


5 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:36:19.50 ID:Zy0z2Oka0



だが


6 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:47:19.67 ID:Zy0z2Oka0


彼女の頭のすぐ左隣から、海水に圧縮された爆音が襲い掛かる。

冷たい海の中で、彼女の身体が熱を帯びていく。

そして同時に感じる激痛。


続いて右隣。

激痛が彼女の感覚を奪っていく。

激痛が彼女の力を奪っていく。


右下。

彼女の身体は爆発に吹き飛ばされ左右に揺れている。

彼女は既に前に進む事ができなくなっていた。


左下。

四度目の爆風と水の圧力に彼女の身体が押し流される。


そして、彼女の動きが完全に止まった。

力が入らない。

否、力が入れられないのだ。


常人ならば意識が飛んでいる程の激痛

痛みと、それまでの逃亡によって乱れた呼吸

そして何よりも




彼女が己の力を入れるべき、その両手両足は



今、彼女の目の前に浮かんでいるのだから。



7 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:55:15.00 ID:Zy0z2Oka0


前に進む事も戻る事もできなくなった彼女は

何故か訪れた静寂の中で、自分の死期を悟った。




どうしてこんな事になったのだろう。


本当はあの時逃げていなければこんな事にはならなかったのだろうか。


この合間は一体何なのだろう。


こんな事になるのなら、お父さんとお母さんの言う事を聞いていればよかった。


艦娘になんて、ならない方がよかった。


死にたくない。


助けてお父さん。


助けてお母さん。


死ぬのは怖い。


死にたくない。


死にたくない。




疑問、後悔、恐怖、怒り。

黒い感情がこみ上げて、彼女の目から流れた涙は

一瞬で周囲の海水に飲み込まれ、溶かされ、消えてなくなった。

8 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 19:55:54.91 ID:Zy0z2Oka0



そして最後の爆発が起こった。


9 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:00:10.81 ID:Zy0z2Oka0


重さ、という概念が彼女の脳から消え失せる。


こめかみを叩く鼓動が一瞬にして消え失せる。


頭を締め付ける水圧だけが、自分がどんどん沈んでいる事を知らせている。




沈み行く彼女が最期に見たものは


遠くなっていく太陽の光と


逆光で黒く染まった




自分の



胴体



10 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:05:13.63 ID:Zy0z2Oka0


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11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 20:13:10.33 ID:LMMI/kBX0
タイトルでローリングストーンズを思い出した私はおっさん
12 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:22:54.28 ID:Zy0z2Oka0


「二千十六年六月二十六日」

「潜水艦娘U-511、フィリーネ・シュナイダー」

「定時報告を行います」


椅子と机と白い壁、壁沿いに置かれた機材。

その部屋に彼女は一人立っていた。

彼女の目の前にはビデオカメラが置かれ、彼女はカメラのレンズを見つめながら言葉を続ける。

13 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:28:07.80 ID:Zy0z2Oka0


『…お父さん、お母さん、元気ですか?』

『パラオに着任して四ヶ月目になったよ』


緊張感が抜け、声色が変わる。

年相応で、少し甘えた声。

この光景を見た人間は、その言葉を受け取る人物と彼女がとても親しい間柄である事を察するまで数分もかからないだろう。


だが彼女が何を伝えようとしているか、その言葉の意味を全て理解できる人間は、この泊地には五人もいない。

彼女は、ドイツ語で語りかけているからだ。

14 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:35:57.55 ID:Zy0z2Oka0


『戦うのは怖いけど、提督さんは相変わらずとてもいい人で』

『危なくなったらすぐに帰してくれるの』


深海棲艦との戦争が長引き、新たな艦娘の艤装の開発が日々続いている。

妖精と呼ばれる存在の力を借りて開発される艦娘の艤装。

歴史を辿り、資料を元に作り出されていく数々の艤装。

その開発経路は日本の域を飛び出し、ついに海外にまで達していた。


『怪我もしてないよ。本国から貰ったスーツだってぜんぜん破けてないよ』


第二次世界大戦当時、日本と同盟を結んでいたドイツ。

そのドイツに属する軍艦。

その魂を持って生まれる新たな艦娘。

彼女達の一部はドイツに残って国土の防衛にあたり、

彼女達の多数は、今や対深海棲艦防衛本部となった日本に渡り最前線の戦いに赴く。

今ここに立っているU-511もその一人だ。


だがしかしドイツ艦娘達は、ある大きな問題を抱えていた。

彼女達が第二次世界大戦当時の軍艦の魂を受け継いだばかりに抱えてしまった大きな問題が。

15 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:44:47.95 ID:Zy0z2Oka0


『というか、私達はあまり戦う事はなくて』

『授業も終わって暇になったら、提督さんのお仕事のお手伝いをする事もあるの』

『…もしかしたら戦ってるよりお仕事してる時間の方が長いかも』


『最近ね、お仕事しながら提督さんとお喋りするのが楽しいの』

『日本語はまだよくわからないけど、提督さんはちゃんと聞いてくれるの』

『お喋りしすぎて、大淀さんに怒られちゃったりもするけど』


アドルフ・ヒトラー。絶対的権力を行使した、当時のドイツの指導者。

ナチス・ドイツ。彼が支配していた当時のドイツ国に対する呼称。

アーリア人至上主義を掲げ、迫害・虐殺に手を染めたとされる彼らは、第二次世界大戦の闇として世界の歴史に刻み込まれた。

そして、ドイツの歴史にも彼らの存在は深く刻み込まれている。



だからこそ

その当時の軍艦の魂を持つ彼女達の存在を否定する者、警戒する者は少なくない。


また、あのような惨劇を繰り広げるのではないか。

また、ドイツの名誉に泥を塗るような真似をしでかすのではないか。

深海棲艦などそっちのけで、世界を余計に混乱させるつもりなのではないか。


やるかもしれない。

何故なら彼女達はナチス・ドイツの魂を持った存在なのだから。

彼女達を否定し警戒する誰もが、そう感じていた。



だがその反面で

人類共通の敵である深海棲艦への対抗手段である艦娘を失う事のリスクを理解している者も少なくなかった。

深海棲艦によって行われた、五発もの核相応の爆撃は、それほどまでに世界中を震撼させたのだ。

16 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:52:12.45 ID:Zy0z2Oka0


『そういえばね』

『こないだ提督さんのお友達のはっちゃんがシュトーレンを作ってくれて、みんなで食べたの』


そこで考えられたのが、この定時報告だった。

日本海軍所属の艦娘は、人としての本名を封印し、軍艦の名前で呼ばれる制度ができている。

ドイツ海軍所属の艦娘は、人としての本名を封印せず、定時報告を義務付けている。

その報告はドイツに対して、そして親しい者に対して行われる。


『でも食べてたら、お父さんとお母さんの所に帰りたいなーってちょっと思っちゃった』

『はっちゃんの作ったシュトーレンはおいしかったけど、お母さんのシュトーレンには勝てないもん』


現在進行形でビデオカメラに記録されていく彼女の姿は、大本営を通じてドイツにいる彼女の両親に届けられる。


U-511ではなく、海外に赴いた一人の少女として、自分は今ここにいる。

自分はナチス・ドイツではない。

自分はただ、U-511の力を借りているフィリーネ・シュナイダーという一人の少女だ。

例え姿が変わって、軍艦の力を持とうとも、ナチス・ドイツそのものにはならない。

だからナチス・ドイツのような蛮行をするつもりはない。

これは、内外にそうアピールする為の苦肉の策だ。

17 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:53:54.73 ID:Zy0z2Oka0


『帰るのがいつになるかはわからないけど』

『また来月ビデオレター送るから、待っててね』



笑顔で手を振った後、U-511はビデオカメラに近付き、録画を止めた。


18 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/05(日) 20:57:34.79 ID:Zy0z2Oka0

☆今回はここまでです☆
19 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 20:31:37.39 ID:ttribPHx0
>>1です。
イベントはなんとか完走できました。
今から投下を始めさせて頂きます。
20 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 20:32:30.34 ID:ttribPHx0


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21 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 20:37:37.32 ID:ttribPHx0


「………OK?」

「OK」

執務室に備えられたテレビを見て、二人の黒髪の少女が呟いた。

軽巡洋艦娘大淀、提督の秘書艦の一人として彼を支える傍ら、大本営との連絡係という大任も背負っている。

駆逐艦娘暁。駆逐二班の班長。普段は遠征や演習に出ることの多い彼女だが、今は執務室で大淀とテレビを見ている。


「よし、これで大丈夫ですね」

大淀は息を吐き、肩の力を抜く。その隣で暁が、あぁあ、と声を上げながらソファの背もたれに体重を預けた。

「お疲れー」

暁の気の抜けた声を聞いた提督が、紙に走らせていたペンを止めて二人に労いの言葉をかける。

大淀と暁は執務室で娯楽作品を楽しんでいたのではない。先ほどのビデオの検閲を行っていたのだ。

と言っても、基本的には報告者の自由。規則があるとするならば、軍事機密は喋らないという一点のみだが。

だがそれでも、艦娘を指揮する方からすれば、軍機が漏れる事は死活問題だ。

深海棲艦にこちらの暗号が解読されるという事例も過去にはある。

にもかかわらず不用意な情報漏洩を見逃すなど愚の骨頂。

だからこそ、検閲を行う必要がある。例えそれがドイツ語で語られるものだとしても、検閲の義務がある。


「りんごジュースでいいかな?」

常備された冷蔵庫から飲み物を取り出し、コップに注いだジュースを二人に差し出す。

「ありがとうございます、提督」

「そりゃーこっちの台詞だ。俺はドイツ語わからねぇし、やってくれて本当に助かってる」

22 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 20:45:10.61 ID:ttribPHx0


「それにしても、ユー(U-511)も毎回大変だな。こんなのを送らなきゃいけないなんて」

テレビの画面を見ながら提督がぼやいた。U-511は彼にとって初めてのドイツ艦娘だった。

定時報告の事も、U-511が着任してから初めて知った。

ドイツ語がわからないのにドイツ語の内容を検閲しなければいけない。

危機感を感じて泊地中の艦娘に声をかけた結果、ドイツ語がわかる艦娘を二人見つけられた。

それが大淀と暁だった。意外としか言い様が無かった。


いや、大淀はまだいい。暁が意外だった。

彼女の見た目は小学生程度。普段から一緒に遊んだりしているが、その時から考え方や感情の表し方も見た目相応だと感じていた。

その彼女がドイツ語堪能というギャップに彼は最初、白目を剥きそうになった。

だがそれだけではなかった。聞いた話だと彼女は日本語・ドイツ語を始め6ヶ国語に精通しているらしい。

この話を聞いた時、提督は完全に白目を剥いた。そして暁に正面から突っ込みを入れられた。

「暁はレディだから」と彼女は言うが、そんな当然のように言われても、という感想しか抱かなかった。



それはともかく、彼女達二人の活躍により今回の定時報告の検閲も無事終了したのだ。


23 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 20:51:37.30 ID:ttribPHx0


提督「じゃあ………あ」

暁「どうしたの?」

提督「いや…もうすぐ昼飯だったかって思って」

提督「りんごジュースはまずかったかな?ご飯入らなくならないかな?」

大淀「一杯くらいなら大丈夫ですよ…」

提督「そっかな…」

提督「まぁ、それじゃあ、行ってらっしゃい」ヒラヒラ

暁「え、司令官はご飯食べないの?」


提督「もうすぐ遠征隊が帰って来るからそいつら待ってる」

提督「俺が席外すわけにもいかんでしょ?」

暁「別にちょっとくらいいいと思うけど」

提督「そうっちゃそうかもだけど、何だ…待たせるのは悪い気がするんだ」

提督「新人もいるし、ちょっと話がしたいしな」

提督「そんなわけだから先に行ってていいよ。早くしないと伊良子ちゃんの『めっちゃうまいご飯』が『うまいご飯』にランクダウンしちゃうぞ」


大淀「いえ…私は、待ってます」

提督「えー…いいの?」

大淀「遠征隊の皆と、提督と私で一緒にご飯を食べましょう?」

提督「じゃあ暁は」

大淀「我慢できなかったら先に行っててもいいですよ」

暁「あ、暁は!待ってるし!!我慢できるし!!!」

提督「そっか。じゃあ一緒に待ってるか。悪いね」

提督「二人には色々手伝ってもらったのもあるし、ここでのんびりしててもいいよ」

大淀「ありがとうございます、提督」


提督「俺は〜♪書類の続きでも〜やりましょか〜♪」

暁「………」

提督「お菓子食うなよーご飯食べられなくなるぞー」

暁「わ、わ、わかってるし!!!」ピピピピピ

暁「え」

24 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 20:57:45.78 ID:ttribPHx0


提督「………通信?」ガチャ

提督「はいこちら提督」



「提督!!お願い!!そっちから迎え出して!!」



提督「え、蒼龍!?わかった!ちょっと待ってくれ!!」

大淀「提督!?」

提督「大淀!!軽巡二班(※)を遠征隊の迎えに出してくれ!!」

(※)川内・神通・那珂の三人の事

大淀「え!?」

提督「何かトラブったみたいだ。襲撃を喰らってるかもしれない。とりあえず早く出撃の準備を頼む」

提督「南西から戻ってくる遠征隊の迎えだ。他にも用意するもんがあるから後の指揮は頼む」

大淀「わ、わかりました!!」ダッ


提督「…で、蒼龍!聞こえるか?」

提督「迎えの指示は出した!一体何があった!?」


「囮機動部隊支援作戦が終わって帰ってる途中なんだけど…」

「雪風ちゃんが、その途中で負傷した子を見つけて…助けるって先行して…!!」


提督「…まだ練度も無いのに一人突出するのは危ないな。それでか」

提督「それで雪風が見つけたっていうのは、艦娘か?」

「そう、だけど…!!」

提督「だけど?」

「だけど…!!」

提督「はっきり言ってほしい。状況がよくわからない」

「その子…もう………」

25 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 20:58:11.28 ID:ttribPHx0


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26 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:00:04.81 ID:ttribPHx0


ようやく見慣れてきた建物が視界の奥に映り始め、雪風は少し安堵する。


「頑張ってください…!あとちょっと、あとちょっとですから!!」

胸の中で抱え込んだ少女に激励を飛ばす。

海水と溶けた血液が衣服に滲み、肌を滑り、下着の中にまで入り込む不快感に耐えながら、最大戦速で突き進む。

意識を胸の中の少女と足に集中し、目の前の泊地に向かって突き進む。


雪風はつい2ヶ月前に泊地に着任したばかりの新人だ。

彼女と共に遠征に出向いていた蒼龍や飛龍達とは練度が文字通り桁が違う。



だからこそ、彼女は自分の行動が悪手であると気付けなかった。


27 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:01:04.89 ID:ttribPHx0


近くに潜んでいた偵察艦が放った魚雷が、彼女の進行ルートに直撃する形で向かっていた。

意識を別の所に向けていた雪風はそれに気付かなかった。

ふと嫌な予感と気配を感じて雪風がそちらを見た時には既に遅く、完全に捉えられていた。


状況を理解した瞬間、緊張で高鳴っていた雪風の心臓に鉄の棒が突き刺さったような痛みが走る。



一秒が長く感じる。ゆっくりと魚雷が自分に向かって突き進んでいく。


身体は動けない。このまま直撃する。


後悔、恐怖、怒りの感情が理性を叩き潰していく。


魚雷が自分に向かってゆっくりと突き進んでいく。


28 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:03:26.79 ID:ttribPHx0




だが



不意に、不自然に雷跡が曲がった。

まるで雪風を避けるかのように、魚雷は進むべき道を逸らして彼女の斜め後ろへと進んでいった。



29 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:06:37.12 ID:ttribPHx0


そして次の瞬間、雪風から少し離れた場所で爆音と怪物の呻き声が轟いた。

魚雷を放ったイ級が川内の砲撃を喰らって撃沈したのだ。


「雪風!!」

イ級の轟沈を確認した川内は、自分の艤装から発する硝煙の帯を引き千切るかのように腕を振り抜き、雪風の傍に奔り寄った。


雪風に声をかけようと、川内は彼女の方に視線を向ける。

だが、川内は声をかける事ができなかった。

視界に映った情報を頭で処理しきれず、ただ自分の口を手で押さえることしかできなかった。


雪風の白い制服は赤く染まっていた。

赤い液体で濡れた服が彼女の身体に張り付き、僅かに膨らんだ胸や、幼さが残る下腹部、大腿部を浮かび上がらせている。

そして、彼女が抱えているもの。

それを見た神通と那珂も、顔をしかめて黙り込むしかできなかった。

30 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:07:49.89 ID:ttribPHx0




「この人を」

「この人を助けてください!!」


雪風は、そう叫ぶ事しか思い付かなかった。



31 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:08:36.84 ID:ttribPHx0


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32 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:11:02.13 ID:ttribPHx0


「………ん」

「……………え?」


明石「………あ!!」

明石「よかった!目が覚めたんですね!!」




明石「伊58さん!!」



33 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:13:59.05 ID:ttribPHx0


伊58「ひっ………!!」

明石「あ…ごめんなさい」


伊58「こ、ここ、どこなんでちか…」

伊58「鎮守府…!?鎮守府に、こんな所、ゴッパ知らないでち…」

明石「ここは鎮守府じゃないですよ。パラオ泊地」

伊58「は、はくち…?」

伊58「鎮守府じゃなくて?」

明石「鎮守府って言うほど大きくないですしね」


伊58「じゃあ、ゴッパ…もう、大丈夫なのかな?」

明石「大丈夫…?えぇ、大丈夫、です、よ…その……」


伊58「………」


明石「………」


伊58「ゴッパ、逃げられたんだね…」

伊58「あれも、夢だったん、じゃ………」


伊58「………!!」


明石「………」

34 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:15:53.44 ID:ttribPHx0


伊58「あ…明石、さん…」

明石「………」



伊58「ゴッパの身体、何で動かないの…!?」


伊58「手もっ足もっ『無くなっちゃった』みたいに…!!」


伊58「何でっ」


伊58「何で!?」



伊58「 何 が 起 こ っ て る の ぉ ! ? 」



明石「ま、待って!!動かないで!!」

伊58「嫌ぁ!!来ないで!ネジはもう嫌ぁ!!!!」ガバッ


35 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:21:41.35 ID:ttribPHx0


伸ばされた明石の手から逃れるように伊58は背筋を使って身体を逸らす。

そのままの勢いでベッドから文字通り転がり落ちた。

それによってシーツに隠されていた伊58の身体が彼女の視界に映る。


包帯が巻かれた右の二の腕。

包帯が巻かれた左の二の腕。

包帯が巻かれた右の大腿部。

包帯が巻かれた左の大腿部。


その全てが


そこから先の部位が




無くなっていた。




指も

足も

手も

脛も

膝も

肘も


全て、視界から消えてなくなっていた。


痛み以外の感覚全てが消えてなくなっていた。


頭の中で何度も何度も動かそうとしても


目の前に存在しないそれらは一切動かず


現実を叩き込むように、ただただ痛みだけが襲い掛かってきた。

36 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:26:56.82 ID:ttribPHx0


伊58は悟った。

こぼれた涙と崩壊を始めた精神が視界を歪ませていく。

両腕両足に痛みが走る。

あれは

あの夢は

夢じゃなかった。



「あははは」

「あはははははっ」



笑うしかなかった。

無意識の内に泣きながら、笑うしかできなかった。



さっきまでの自分に。

今までの自分に。

「あははははははははははははははははははははは!!!!!!!!」


何が助かっただ。

「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!」


何が自由だ。

「あーっはっはっはははははははははははははははははははは!!!!ぎゃはははははははははははははははははは!!!!!!!」


死にたくなかった。

自由になりたかった。

でも

そんなもの、ゴッパにあるわけないってわかっていた。

ゴッパにそんな権利があるわけないってわかっていた。

でも

死にたくなかった。

自由になりたかった。


でも


それももう叶わない。


これが現実。

37 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:28:04.90 ID:ttribPHx0



どうせ



どうせ



ゴッパなんて



所詮



こんな



もの


38 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/16(木) 21:50:24.04 ID:ttribPHx0

☆今回はここまでです☆

CSMブレイバックルCSMブレイラウザーCSMラウズアブソーバーCSMキングラウザーまーだ時間かかりそうですかねー
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 21:59:24.31 ID:dukSCcXbo
おつー
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 11:11:20.85 ID:TlLOFGM4O
なんでゴッパなのwwwwwwwwww

ゴーヤじゃないのwwwwwwwwww
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 01:34:27.34 ID:Rz/4XY5dO
ゴッパに草
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/25(土) 22:45:45.30 ID:gnppPc0SO
北上のAAできたよー

_人人人人人人人人_
> 駆逐艦うざい! <
 ̄YYYYYYYY ̄
    __
   /  \
  /   ・|
  | ・ __ノ
 <>\ (三_
 <> /`ー-イ
 <> L__/
 廿 〉 ) Σ二に⊃
43 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 19:38:54.76 ID:LYixaHQ90
>>1です。
ニーアオートマタやってたら凄く遅くなりました。
今から投下を始めさせて頂きます。
44 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 19:39:47.97 ID:LYixaHQ90


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



45 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 19:48:35.26 ID:LYixaHQ90




「両腕両脚欠損」




「欠損箇所を中心に広がる重度の火傷」




「身体全体に無数の裂傷、傷口からの出血」




「内臓破裂」



46 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 19:56:48.14 ID:LYixaHQ90


明石「艦娘じゃなかったら………」

伊168「」ジッ

明石「………かなり、危なかったです」

明石「修復剤を大量投入して、何とか持たせた感じですかね…」

那珂(やっぱり修復剤使っても手足は戻らなかったんだ)

提督「今、あの子はどうしてるんだ?」

明石「一旦『眠らせ』ました」

提督「………そっか」


明石「ごめんね。同じ伊号の艦娘として会いたいとは思うけど」

伊401「ん、うん」

伊19「…正直、今の今でも何が起こってるのか全然わかんないのね」

伊19「伊58が運ばれてきたって聞いて、両手両足が無くなっててパニックになってるって聞いて」

提督「だろうな」



提督「だからこの場で一度現状確認をしようと思ってみんなを集めたんだ」



提督「この泊地の秘書艦」

提督「秘書艦補佐」

提督「潜水艦娘のみんなも…」

提督「多分、辛い話をすると思うけど知っておいてほしい」

47 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:00:26.86 ID:LYixaHQ90


伊168「…それって」

提督「大体の目星は付いているって事かな?」


提督「イムヤは、多分ある程度予想してるんじゃないか?」

提督「知ってるだろ?あれの事」


伊168「!!」

U-511「え?」

伊401「それって、どういう事?」

伊168「………やっぱり、そうなの?」


U-511「Admiral、何か知ってるの?」

提督「本当の事は知らないよ」

提督「でも、『恐らくこうだろうな』ってのは考えてる」

U-511「………?」

提督「今からちゃんと教えるよ」

提督「怖い話をすると思うけど、しっかり聞いてほしい」

提督「あの子(伊58)にとって大切な話だから」

提督「…大丈夫かな?」

U-511「………うん」コクン

提督「ありがとう」

48 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:08:51.78 ID:LYixaHQ90


提督「それじゃあ蒼龍、飛龍。何があったか詳しい話を教えてくれないか」

提督「俺はお前達に囮機動部隊支援作戦に参加してもらった」

提督「それで、その帰り道で伊58を発見し保護した」

提督「大まかな話はそれでいいんだよね?」

飛龍「うん」

提督「…じゃあ、どこで見つけたとか、周囲に何があったかとかは覚えている?」

蒼龍「索敵しながら進んでいましたけど、周囲に敵はいませんでした」

蒼龍「でも雪風ちゃんが、急に動き出して、見つけたのがあの子です」

蒼龍「その時には、もう………」


伊401「周囲に敵がいなかったって、深海棲艦にやられちゃったわけじゃないんですか?」

飛龍「多分ね」

霧島「あの辺りは戦艦や空母がメインで、対潜が得意な深海棲艦はあまりいない」

霧島「だから深海棲艦にやられてああなったっていう確率は低いんじゃないかしら」

U-511「あのあたり…」


提督「飛龍、伊58を見つけたのがどの辺か、もう一度教えてくれないか?」バサッ

飛龍「………」

飛龍「ここ」トン



飛龍「東部オリョール海」


49 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:21:35.13 ID:LYixaHQ90


提督「……………」

伊168「やっぱりオリョール海か…」

U-511「やっぱり、って」


「…提督さん」ガチャ

提督「!!」

もう一人の明石「伊58ちゃんに付いていたものの検査終わりました」

明石「………」

提督「あぁ、明石さん。ありがとうございます」


U-511「えっ…あっ…明石さん…?」

如月「大丈夫よ。あの人はパラオ特別鎮守府の明石さん」

U-511「あっ…Admiralのお友達の…」

如月「そう。『パラオの英雄』さんの所の明石さん」

飛龍「いきなりだとちょっとびっくりするよね。私もちょっとびっくりしちゃった」


赤城「伊58さんに『付いていたもの』というのは?」

提督「あの子の首に何か巻き付いていたのが気になってね」

提督「艤装でもない、明らかに大本営の認可が下りている装備でもない」

提督「チョーカー…というか」



提督「首輪、みたいなものが」



伊168「首輪………」

提督「…で、どうでした?」



もう一人の明石(以下明石弐)「………あれ」

明石弐「爆弾です」


50 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:27:00.82 ID:LYixaHQ90


飛龍「…え?」

明石弐「伊58ちゃんの首に付けられていた首輪から起爆装置と火薬が見つかりました」

明石弐「あと、恐らく遠隔操作の媒体になるであろう機械も」


提督「………艤装の方は」

明石弐「…あまり驚かないんですね」

提督「そんな事だろうと思ってましたから」


明石弐「………」

明石弐「艤装の方は、特に異常も無い普通の艤装です」

蒼龍(艤装が発生させる結界によって、私達艦娘は敵からの攻撃のダメージを軽減している)

蒼龍(でも今回みたいに結界の内側、超至近距離から何かあった時は………)

蒼龍「………」


提督「そうですか」

提督「…ちょっと聞きにくい事ですが、爆弾の取り外しは可能ですか?」

明石弐「できます」

51 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:33:49.62 ID:LYixaHQ90


提督「!!」

明石弐「伊58ちゃんの首輪の爆弾、壊れているみたいです」

提督「え、壊れてる?」

羽黒「えっと…それってつまり?」

明石弐「起爆装置も爆弾も作動しないんです」

那珂「…どうやって試したのさ?」

明石弐「私が中開けた時には、もう丸焦げのボロボロでしたよ」

明石弐「だから爆発する事はありません」

明石弐「安全に、あの爆弾を伊58ちゃんから取り除く事ができます」


提督「壊れた?深海の水圧でも耐えられるであろう爆弾が壊れた?」

提督「というか、そうじゃない」

提督「起動したけど、爆発が内部だけに留まって装置だけを破壊した?」

明石弐「かもしれないですね」

明石弐「機械に不具合が起こってほんの小規模な爆発…首輪の機械を壊す程度の爆発になったか」

明石弐「そうじゃなかったらやっぱり不具合で高温になって配線を焼き切っちゃったか」



提督(じゃあもし)


提督(本来の規模の爆発が起こってたとしたら…)


52 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:35:48.37 ID:LYixaHQ90






あの子の、首は




あの子の両腕や両脚のように




吹き飛んでいた





53 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:38:42.68 ID:LYixaHQ90


提督「………」

提督(だとするなら、爆破のタイミングと意図は)

提督(それに、青葉から貰った音声ファイル)

提督(『健全な鎮守府であるならばまず聞かないであろう言葉』が入っていた)

提督(そこから考えられるのは………)



提督「…やっぱり、あれか」ボソッ



羽黒「…司令官さん」

提督「ありがとうございます。明石さん」

明石弐「…何か、わかりましたか?」

提督「ほぼ大体。予想の範囲から出ないですけど」

提督「知らないより知っていたほうがずぅっとマシな話はしますよ」

明石弐「…そうですか」

提督「明石さんは、これからどうされますか?帰るなら送りの者を誰か付けますが」


明石弐「いえ、私は…」チラッ

明石「………」ジッ


明石弐「一緒に聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

提督「気分が悪くなる話ですよ」

明石弐「覚悟はしています」

提督「…わかりました」

54 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:41:54.16 ID:LYixaHQ90


提督「それじゃあ、始めるよ」

提督「まず最初にみんなに思い出してほしい事がある」

提督「『作戦海域内での資源回収の要項』」


提督「しおい、覚えているかな?」

伊401「あ…はい!」

提督「大まかでいいから、説明してくれ」

伊401「えーっと…」



伊401「作戦行動中に座礁、転覆した船、沈没して油が漏れている船等を見つけた場合」

伊401「人命救助を最優先に行う」



提督「うん。そうだね。それで?」



伊401「生存者の確認、安全確保、護送が完了した場合」

伊401「艦娘は船に積まれている物資や資材、海上に漏れ出した油等を回収して利用して良い」


55 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:53:37.63 ID:LYixaHQ90


提督「正解」

提督「よく覚えていたな。偉いぞしおい」ニコッ

伊401「えへへ…」


提督「作戦海域中で発見した物資は俺達が回収できる」

提督「それは海軍が決めたルールとして、正しい事だって保障されている」

提督「『そのまま深海棲艦に取られる位なら、人類側の誰でもいいから先に回収して使ってしまえ』って事だろうけど」

伊401「でも、それが今回と何の関係があるんですか?」


提督「東部オリョール海にはそういう船が沢山あるんだ」

提督「深海棲艦が出てきたばかりの頃に沈められた旅客船や、その後の輸送作戦で失敗して沈められた輸送船とかがな」

提督「深海棲艦の第一目標である日本本土とフィリピンの間に位置してるから、そういう船は沢山あるし」

提督「あいつらの上陸部隊はあの辺りで編成してるみたいだ。補給艦も多いしな」

提督「だから俺達にとっちゃ最高の資材回収源だ」




提督「だからこそ過剰に利用する奴がいる」



56 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 20:55:22.53 ID:LYixaHQ90






伊168「…『オリョールクルージング』」





57 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/03/31(金) 21:01:07.48 ID:LYixaHQ90

☆今回はここまでです☆

中途半端なんで、また近いうちに更新したいです。
それとオートマタ二週目イクゾー!!
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 06:53:23.72 ID:OoYbixbN0
待ってた
59 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/10(月) 22:44:29.62 ID:H5PSEQiW0
>>1です。
投下を始めさせて頂きます。
60 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/10(月) 22:52:45.65 ID:H5PSEQiW0


提督「巷じゃそう言われてるな」

U-511「その…『おりょーるくるーじんぐ』ってなんですか?」


提督「鎮守府とオリョール海を往復して資材を回収する作戦だ」

提督「参加する艦娘は潜水艦娘…」

提督「さっきも霧島が言ってたけど、あそこには対潜が得意な深海棲艦が少ないからな」

提督「それに潜水艦娘は燃費が良いから、持ち帰った分で黒字になるって寸法」

伊401「それって、遠征とどう違うんですか?」

提督「そうだな。これだけ聞いてたらそう思うよな」

提督「輸送支援や作戦支援を行って、その報酬として補給資材の一部を貰ってくる遠征とこれじゃ何も変わらない」



提督「でも」

提督「休み無しで同じ事が言えるか?」


61 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/10(月) 22:56:29.97 ID:H5PSEQiW0


提督「この作戦は大抵の場合、艤装の消耗や艦娘の疲労は一切考慮されない」

提督「ただ延々と鎮守府と海域を往復して資材を回収していくんだ」

提督「深海棲艦と戦い、攻撃を回避し続けて…」


提督「ただただただただ」


提督「資材を回収して」


提督「置いたらまた海域に出撃して」


提督「資材を回収して」


提督「置いたらまた海域に出撃…」


提督「それだけを、延々と繰り返していくんだ」


提督「何時間、何十時間もな」


提督「どれだけヘトヘトになろうが」


提督「どれだけ傷付こうが、延々と繰り返す」


大淀「…そんなの、危ないじゃないですか」

大淀「いくら対潜攻撃ができる深海棲艦が少ないって言ったって、ゼロじゃない」

大淀「攻撃を受ければ、命を落とす危険があるんですよ」

大淀「なのにそんな、コンディションも最悪に近い状態で単純作業みたいな事させられるって…」


提督「あぁ危険だ」

提督「でも資材は回収できるだろ?」


大淀「『回収できるだろ?』って…」

62 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/10(月) 23:02:43.64 ID:H5PSEQiW0


提督「そのままの意味だよ。資材を回収できる」

提督「何度でも。何度でも」

提督「潜水艦娘の疲労やストレスを考えなければ」

提督「そんなモラルをくだらないものと切り捨てる事ができるなら」

提督「大量の資材を稼ぐことができる」


如月「…まるで、奴隷ね」

提督「そう、奴隷だ」


提督「オリョールクルージングも、本来は戦争に勝利する為の戦略の一つだ」

提督「資材が無きゃ艤装を動かす事も修理する事もできない」

提督「第二次世界大戦の時は、アメリカ側との圧倒的な資材の差も敗因の一つだからな」

提督「しかも今回はただの戦争じゃなくて人類の危機だ。『また負けました』は許されない」

提督「だから、何よりも資材確保を優先するという気持ちはわからないでもない」

63 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/10(月) 23:04:28.70 ID:H5PSEQiW0




「でも」


「その結果が」


「あの伊58の姿だ」



64 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/10(月) 23:39:08.47 ID:H5PSEQiW0


提督がポケットに手を入れ、何かを掴む。

「…ちょっと考えればわかるもんなんだよ」


引き抜かれた手の内に、携帯端末、スマートフォンが収められていた。

「奴隷みたいな奴が傍にいて、人間が何もしないなんて絶対にありえない」


スマートフォンに人差し指を置き、表面をなぞる。

指が動くごとに、声が、低く、暗くなっていく。


「最初は指揮官の小さな文句から」

暗く


「それがどんどん積み重なって、周りに波及され」

暗く


「文句は罵声へと変わり」

暗く


「最終的に」

暗く


「迫害されて当然の対象になる」

暗く。


伊401は目の前の男に初めて恐怖した。

先程自分の回答に対して笑顔で褒めてくれた男が本当に目の前の男と同一人物なのか、一瞬疑った。

今の彼の瞳は、横から見てもわかる程濁りきっている。

一切の興味や関心すら喪失したかのように生気が無くなっている。

だが、それでいながら、何か恐ろしい。

初めて深海棲艦と対峙した時と同じ感覚。

否、それ以上の恐ろしさか。不気味さか。

命の危機か。

それが自分に向けられていない、向けられるはずがないという、根拠が説明できない確信を持っていても尚

恐ろしく、不気味な、目をしている。

伊401は机の下で拳を握った。

歳の離れた兄、歳の近い父親だと感じていた目の前の男の、見てはいけない裏側を見るのだと。

そのイメージが崩れてしまうかもしれない、自分がまだ理解しきっていない感情もろとも、全てが壊されてしまうかもしれない。

それを伝える、恐怖という名の警告を握り潰すように拳を握った。

残虐な好奇心と、目の前の男に対する信頼を力に代え、恐怖を握り潰した。


伊19が生唾を飲む。楽観的な彼女が普段見せない、真剣な表情をしていた。

部屋に集められた他の艦娘達の顔にも緊張の色が見える。

伊168は俯いていた。この先提督が何を皆に伝えるか、彼女だけが明確な予想ができていた。

明石は眉間に皺を寄せ、隣に座っていたもう一人の明石の背に悪寒が走る。

那珂と如月だけが、ただ見据えるように提督を見つめていた。

65 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/10(月) 23:49:23.89 ID:H5PSEQiW0


提督の指が止まる。


「まぁ奴隷が人じゃなく物扱いなんだから、当然の話だ」

「それが人間だ」

「でもな」

「機械みたいに、馬車車のように、色々言い方はあるけども、人間はどこまで堕ちても機械にはなれない」

「生物学的に人間は、どこまで行っても人間のままだ。扱いが変わったからってそれが変わるなんて事は絶対にありえない」

「それが、他の人間にとって何物にも代えられない快楽になる」


彼の瞳の中に暗闇だけがある。


「黒人差別」

「被差別部落」

「魔女狩り」

「カースト制度」

「士農工商穢多非人」

「貴族主義になろうが民主主義になろうが資本主義になろうが共産主義になろうが、どれだけ時代が進もうが」

「人間は常に他人を見下し、否定し」

「非人と見なして、快感に浸る」

「それが、人間っていう生物の習性ってもんだ」


彼の言葉は、呪いの言葉のように紡がれる。


「そんでもって」

「今回も同じだ」


そして、スマートフォンの画面が艦娘達に向けられた。

66 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/11(火) 00:09:01.00 ID:ARSb48Ot0
☆今回はここまでです☆
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/11(火) 02:53:06.74 ID:rxqi4MxGo
おつ
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/14(金) 18:34:08.15 ID:SKvXnSCM0
おっつおつ
69 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:09:19.89 ID:06P70moD0
>>1です。
艦これ4周年、おめでとうございます。
そして5周年に向けて、これからも長く続いてもらいたいです。

それでは投下を始めさせて頂きます。
70 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:13:29.43 ID:06P70moD0




そこに映っていたのは、匿名性の掲示板。

ネットワークを通じて文字を刻み、コミュニケーションを取る一般的なシステム。

だが、その内容は彼女達に少なからず衝撃を与える。



71 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:15:18.13 ID:06P70moD0



『あの婚活ババア早く沈んでくれないかしら』

『いちいちチョーク投げやがって。何教師気取ってるんだか』


72 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:22:21.04 ID:06P70moD0


記されていたのは、どこかの鎮守府の内情。

『夢で見たから嫁にするとかキッモwwwwwwキッモwwwwwwwwww』

また違う、どこかの鎮守府の内情。

『芋臭い顔が化粧したって芋は芋なのです』

その裏側に隠された感情。

『気持ち悪いロリコン戦艦。何であんなのが秘書艦やってるんだろう』

そこは、所謂裏サイトと呼ばれるものだった。

『キサラギ社は違法プログラム問題を改二でごまかしたつもりなのかな?』

『深海棲艦に国を売った非国民なんだからさっさと排除しなきゃ』

無知

『論理的効率的に物事を考えられない五航戦が毎回毎回騒ぎ立てているのを見ていて呆れます』

『自分の幼児的欲求と思慮の浅さを露呈して何が楽しいんでしょうか』

『鎮守府の評判を誰よりも落としているって自覚があるんでしょうか』

無責任

『【拡散希望】金剛は援助交際してるクソビッチwwwwww』

無教養

『汚いクソレズ女。単なる性欲の発散を姉妹愛にすり替えてんだから、よけい汚い』

『そうやって自分で捏造した正当性に隠れて攻撃する陰湿さ』

無慈悲

『提督に媚びてんじゃないわよ。艦隊の足を引っ張るだけのゴミの分際で』

無遠慮

『お前の方がゴミ』

無頓着

『榛名も男漁りしてるし、ヴェニデ製の艦娘ってほんとクソビッチばっかりじゃないですかwwwwwwwwwwww』

無理解

『あいつ、もう生きてるだけでこっちまで悪く言われるんだから。ホント迷惑なんだよね』

無配慮

『ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアップwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』

無神経

『キチガイジャップは恥を知れwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』

悪意

『ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアップwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』

煽り

『もう戦犯日本はすっこんでアメリカ様に媚売ってればいいんじゃないですかねwwww』

罵倒、嘲笑に満ちた

『ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアップwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』

吐き気を催す

『ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアップwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアップwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアップwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』

ヘドロ溜まりのような本音。

彼女達艦娘もまた、何一つ疑いようも無い人間であるという何よりの証拠。

73 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:23:19.36 ID:06P70moD0


そして、提督はそのヘドロ溜まりの中の一つを指差した。

74 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:24:06.15 ID:06P70moD0


『鎮守府の汚点である潜水汚物、特に珍獣ゴッパを撲滅しましょう』

『差別だという的外れな事をいう人もいますが、存在の醜さを軽蔑するのは差別でも何でもない。当たり前の事です』

『珍獣どもを排除し、理想の鎮守府を私達の手で作り上げましょう』

75 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:27:45.75 ID:06P70moD0


羽黒「珍獣………」

提督「あいつ、自分の事を『ゴッパ』って言ったらしいな?」

提督「『伊58』でも『ゴーヤ』でもなく、『ゴッパ』って」


提督「『ゴッパ』ってのは、伊58型艦娘の蔑称だ」

提督「それを自分から口にするってのは、普通の状況じゃまず考えられない」

提督「あの怪我…それと明石があの子に近付いた時、尋常じゃない怯え方されたってのも聞いた」

提督「だから、あいつが前いた鎮守府でまともな扱いを受けていたとは考えられない」


提督「『珍獣ゴッパ』としての自分を受け入れるしかなかったんだろう」

提督「艦娘じゃない、まして人間でもない」

提督「けだもの扱いを受けて、奴隷のように働かされて」

提督「他の艦娘は誰一人あいつを助けず」

提督「むしろ虐待して悦楽に浸っていた」

76 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:28:48.18 ID:06P70moD0



「だって、奴隷だからな」


「何をしても許される、人の形をしたモノだから」


「いくら罵倒しても」


「いくら暴力を振るっても」


「いくら、殺しても」



「許されるんだと」



「それが正義だと」



「そう、思い込むんだ」


「それが、人間っていう生き物だからな」


77 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 22:34:03.66 ID:06P70moD0


提督「そんな所だろ?」


提督「両手両足の火傷、全身の裂傷、首に付けられた爆弾」

提督「恐らく、首に付いているのと同じようなのが両手両足に付いていたんだろう」

提督「逃亡防止用か、何かの為に」

大淀「っ…そんな、非人道的な事が」

提督「あるんだよ。そもそも人道もクソも無い」


提督「だって、『珍獣ゴッパ』は人間じゃないからな」

提督「人間の権利がある前提で物事を決める事は、あいつらにとってはナンセンスなんだ」

提督「………そうだろう。那珂、如月」

那珂「………」

如月「………」グッ


提督「あの子の両手両足が吹き飛んだのは両手両足に付いた爆弾が爆発したからだ」

提督「そうやって逃亡手段を奪った上で」



「首に付けた爆弾で確実に命を奪う」



提督「はずだったけど、何らかのトラブルが起こって爆弾は壊れた」

提督「そして雪風が伊58を見つけて、ここに連れてきた」


提督「………今起こってるのは、多分そういう事だ」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/23(日) 22:48:27.33 ID:lh+djW2oO
面白いけど胸糞のまま終わったら最悪だわ
79 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 23:05:50.95 ID:06P70moD0


伊168「…それで、私達はどうしたらいいの?」

伊168「それを聞いて、どうしたらいいの?」

伊168「伊58をどうするの?」


提督「助ける」

提督「だから、まずはあの子が俺達に持っている誤解を解かなきゃいけない」

提督「あの子を安心させてやらなきゃいけない」


提督「さっき言った事がそのものズバリなら…あの子は今深海棲艦の巣の中にいるような心情だろう」

霧島「それは………怖い、ですね」

提督「だろ?でもここは深海棲艦の巣じゃない。パラオのちっちゃな泊地の一つだ」


提督「そして何より」

提督「ここにはそうやって自分勝手な大義名分掲げて他人を虐待するようなキチガイはいない」

提督「それを、わかってもらわなきゃ何も始まらない」


提督「だから積極的に、あの子と交流を図ってほしい」

提督「でも、あまり多くの人数で一緒に行くのは禁止。あの子が怖がる」

提督「何でかを、わかって貰いたかったから、ここに集めて説明した」


提督「…できるか?」

伊19「当然」

伊168「やるわよ」

提督「頼むぞ。お前達潜水艦娘は今の伊58にとっては今まで一緒に虐げられてきた同士だ」

提督「他の艦娘より、警戒はされていないはず…だから、場合によっては全員一緒に会いに行ってもいいよ」

伊401「頼むぞって、提督は来ないの?」

提督「青葉伝手に状況は頭に入れておくけど、今の俺が会うべきじゃないんじゃないか?」

提督「他の艦娘より、一番提督ってのにトラウマ持ってそうだし」

伊401「そんな事ないよ!」

伊401「提督が今までの伊58の提督じゃないって!それをわかってもらうのが一番大事でしょ!!」

提督「そうかなぁ」

伊401「そうだよ!!だってイクがどれだけいたずらしても本気で怒らなかった提督だよ!?」

伊401「伊58だって、そういう提督だってわかれば!きっと安心する!!」

伊19「イクがどれだけいたずらしても怒らない提督の優しさ、イクも好きなのね」(ダシにされるのは好きじゃないけど)

伊19「伊58にも知って貰うべきだって思うのね」

提督「………わかったよ。じゃあ時間が空いたら行く」


提督「それと…今回の件、他の艦娘…あと友提督のとこにも青葉伝手で伝えておく」

提督「誰より事情を知っている俺とお前達が統制していこう。オッケー?」

伊168「オッケー」

提督「よし。それじゃあ解散」


U-511「………」

80 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 23:08:07.02 ID:06P70moD0


「Admiral」

「何で」

「何で、こんな事が起こるの?」

81 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 23:10:57.20 ID:06P70moD0


伊401「ユーちゃん…」


U-511「みんな、こんな事はもうやめようって」

U-511「もう絶対にしちゃいけないって、そうなったんだよね?」


U-511「だから、ドイツは…!!」


U-511「なのに、何で」

U-511「何でまた、こんな事が起きているの…!?」

U-511「ドイツがやってきた事が、悪いことだって、みんな言ってるのに、どうして…!?」

82 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 23:12:47.33 ID:06P70moD0


提督「………ユー、それはな」




「ドイツが負けたからだ」



83 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 23:18:55.59 ID:06P70moD0


「ドイツのアパルトヘイトが悪と見なされ、それを受け入れさせられたのはドイツが負けたからだ」

「勝った方が歴史を作る。自分の都合の良いように歴史を作っていくんだ」

「だから負けたドイツはユダヤ人迫害の罪ばかり目を向けられる」


「あの程度の人種差別、どこの世界にでもありふれたものだ」

「現にアメリカにだって、KKKっていう白人至上主義団体が存在している」

「実際に黒人を集団で囲んで殺すなんて話もある」

「やり方とか規模は違うと思うけど、考えていることはアパルトヘイトと何も変わらねぇ」

「それを何とかしようとした大統領、国のリーダーがいたけども」



「そのせいで戦争が起こって、何人ものアメリカ人が死んだ」

「そして、大統領自身もその後に殺された」

「他の誰でもない、アメリカ国民自身の手によって」



「そりゃそうだよな。もっと黒人から搾取して、黒人をいたぶって、黒人を殺したかったんだものな」


「それを邪魔しようってんなら」


「大統領だろうが、ブッ殺す」



「ナチスドイツと何らかわらねぇ」

「理屈や名聞、言い訳が何であれ、『俺が上で、お前は下』って言いたいんだ」

「それだけを、言い続けたいんだ」

84 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 23:22:04.58 ID:06P70moD0


「日本は、大韓民国人に酷い事をしたって言う奴もいる」

「インドの方を見てみれば、身分制度が根強い」

「ヨーロッパの方でも昔は魔女狩りなんていうアホみたいな事をやっていた」

「何でまたこんな事が起きるかっていったな?」


「人が人である限り、こんな事が永遠に続いていくんだ」

「形を変えて、場所を変えて、この地球上のどこかで永遠に続いていくんだ」

「ただただただただ」

「他人を殺したいっていう欲望の為だけに」

「その為だけに」



「今日もどこかで人が殺される」


85 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/04/23(日) 23:29:52.79 ID:06P70moD0

☆今回はここまでです☆

最初の数レス作るのに10日以上かけてしまった…
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/25(火) 00:40:05.20 ID:zHzYqHCQo
アパルトヘイトって南アフリカじゃなかったっけ?
ドイツならホロコースト?
まあ乙です
続き待ってます
87 : ◆ZFgfLAc.nk [saga sage]:2017/04/25(火) 22:56:33.40 ID:BQDLKzNY0
とんでもないミスをしてました。ご指摘ありがとうございます。修正します。

>>83


「ドイツのホロコーストが悪と見なされ、それを受け入れさせられたのはドイツが負けたからだ」

「勝った方が歴史を作る。勝った奴が自分の都合の良いように歴史を作っていくんだ」

「自分が偉い、自分が正しい、自分が、自分だけが、正しいってな」

「だから負けたドイツはユダヤ人迫害の罪ばかり目を向けられる」


「でもな」

「あの程度の人種差別、どこの世界にでもありふれたものだ」

「現にアメリカにだって、KKKっていう白人至上主義団体が今でも存在している」

「そいつらが実際に黒人を集団で囲んで殺すなんて話もある」

「やり方とか規模は違うと思うけど、考えていることはホロコーストと何も変わらねぇ」

「他人を否定し、排除する。その根元は何も変わらねぇ」


「そういう風潮を何とかしようとした大統領、国のリーダーがいたけども」

「そのせいで戦争が起こって、何人ものアメリカ人が死んだ」

「そして、大統領自身もその後に殺された」

「他の誰でもない、アメリカ国民自身の手によって」



「そりゃそうだよな。もっと黒人から搾取して、黒人をいたぶって、黒人を殺したかったんだものな」


「それを邪魔しようってんなら」


「大統領だろうが、ブッ殺す」



「勝ったアメリカも、ナチスドイツと何ら変わらねぇ」

「いや…国の失業率を改善したり高速道路を作ったりもしてる分、もしかしたらナチスドイツの方がましだったのかもしれねぇ」

「でも、負けたから。ただそれだけの理由で、ただのイカれた虐殺者・独裁者として排除された」

「そうして、勝者は、全てを奪って愉悦に浸る」


「…結局のところ、どいつもこいつも、世界中のどこに行っても」

「理屈や名聞、言い訳が何であれ、『俺が上で、お前は下』って言いたいだけなんだ」

「それだけを、言い続けたいんだ」


「その幼稚な承認欲求・愉悦感を得る為だけに」


「否定して」


「殺す」


「それが、俺達人間っていう生物だ」


「他の国だって何も変わらねぇ」

88 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 20:19:12.47 ID:+oExVeOv0
>>1です。
最近は艦これアーケードでの、南方棲鬼のモーションにときめく日々を送っています。
全体的にとてもかっこよく、特にカットイン砲撃は一見の価値があります。しびれる〜。

それでは投下を始めさせて頂きます。
89 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 20:39:19.28 ID:+oExVeOv0


U-511「……Admiral」

提督「………もう、いいか?」

U-511「………」

提督「伊58の事、頼んだぞ。俺も時間が空いたらすぐに行くから」ガチャ

バタン

伊401「………提督」

U-511「私、いけない事、言っちゃった…?」

伊168「ユー…気にしないほうがいいわよ」

U-511「でも」

U-511「Admiral、あんな怒ってて…」

U-511「あんなAdmiral見たことなくて…怖くて…」

U-511「私のせいなんだよね…?」

伊19「…あれは、ユーのせいじゃないの」

伊19「提督の…癖みたいなものなのね」

U-511「癖?」

伊19「かっこよく飛び出してったけど、多分今頃後悔してる所なのね」

伊19「だから、そんな自分を責めなくていいの」

U-511「……でも」

伊19「いいから!」

伊19「何か気になる事があるなら今度聞けばいいのね!」

伊19「はっちゃんのシュトーレンの残り、全部食べていいから今は部屋に戻るの!」グイッ

U-511「あぁっ、イク…」


如月「………」

如月(それが)

如月(人間という生物、か……)

羽黒「如月ちゃん…」

如月「………私達も、戻りましょう。那珂さん、羽黒さん」

羽黒「…うん」

那珂「そうだね」(那珂ちゃんだ、って言ってるんだけどなー)


90 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 20:41:10.15 ID:+oExVeOv0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



91 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 20:44:15.55 ID:+oExVeOv0


秘書艦すら置いて一人、部屋を出た提督は早歩きで廊下を進んでいく。

眉間に皺を寄せ、顎を引き、前を睨み付ける様に見据えて進む。

泊地の近所の住人がこの光景を見たならば、どうした何があった、と驚き心配するだろう。


彼の心は苛立っていた。

U-511は何も関係ない。

彼女は何が起こっているか知りたかっただけなのに。

なのに俺の言いようは何だ。

もう少し言い方があったんじゃないか。彼女は傷付いているだろう。

俺がもっと言葉を選んでいれば。

俺がもっと落ち着いて話をしていれば。

彼は後悔と不甲斐無さを感じていた。


そして脳裏を掠めた苦い記憶の味を思い出す。

口を開かせ、舌を動かし、声帯を振るわせた動力になった苦い記憶。

思考を放棄し、爆発する感情に注がれた、燃料になった苦い記憶。

92 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 20:46:57.58 ID:+oExVeOv0


喪失感。


喉を焼く酸の熱さと痛さ。


手にずしりと圧し掛かる重さ。


視界に映る己の手。


痛覚を刺激する鉄の塊。


今は亡き男の狂った笑い声。


無表情に、かつ残酷に通告する数字の羅列。


身体に無数の、見えないけれど決して消えない傷を付けられた少女。


彼女の、二度と戻らない名誉と権利。

93 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 20:49:34.01 ID:+oExVeOv0


思い出す度に憎しみと失望感が湧き出てくる。

速くなる鼓動。温い炎で首筋を炙られる感覚。プラスチックで喉や心臓を締め付けられるような痛み。


こんな事があった。

だから思わず言ってしまった。

だからしょうがないじゃないか。

だから俺は悪くないんだ。

悪いのはあいつらだ。


そう認識する為に、無意識の内に記憶を引きずり出した。

自分自身を正当化する為に、ただそれだけの為に感情を弄んだ。

彼もまた、どうしようもない程に人間であるのだ。

94 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 20:57:39.94 ID:+oExVeOv0


そして彼の無意識が世界の言葉を受信する。


そうだ、お前は間違っていない。

これが世界だ。

この世界はそういうものだ。

これが現実だ。

夢ではない。

これが現実。

これが常識。


現実は常に残酷であり

常に最悪の結果をもたらすもの。

傷付かず、犠牲も無く終わる物語なんて四流作家の作るもの。

ハッピーエンドなんて甘えでしかない。

苦痛と

恐怖と

無力感を与える、唯一無二の存在。

唯一の本物。

唯一の非幻想。

臨場感を凌駕してリアルに於いて反映実映される、有質量の全ての結果。

これが現実だ。

これが世界だ。

だから、お前は間違っていない。


その言葉が彼の幼稚な承認欲求を満たしていく。

彼もまた、どうしようもない程に人間であるのだ。

95 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:03:00.05 ID:+oExVeOv0
誤字出しました。修正します。

>>94


そして彼の無意識が世界の言葉を受信する。


そうだ、お前は間違っていない。

これが世界だ。

この世界はそういうものだ。

これが現実だ。

夢ではない。

これが現実。

これが常識。


現実は常に残酷であり

常に最悪の結果をもたらすもの。

傷付かず、犠牲も無く終わる物語なんて四流作家の作るもの。

ハッピーエンドなんて現実逃避、甘えでしかない。

苦痛と

恐怖と

失望と

無力感を与える、この世で唯一無二の存在。

唯一の本物。

唯一の非幻想。

臨場感を凌駕してリアルに於いて反映実現される、有質量の全ての結果。

これが現実だ。

これが世界だ。

だから、お前は間違っていない。


その言葉が彼の幼稚な承認欲求を満たしていく。

彼もまた、どうしようもない程に人間であるのだ。

96 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:03:48.89 ID:+oExVeOv0


だが

承認欲求が満たされる快感と共に押し寄せてくる黒い感情もあった。

それは殺意と呼ばれる感情だった。

97 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:06:04.89 ID:+oExVeOv0


それは自己を正当化する度に理不尽に湧き出る感情。


自分がどうしようもなく人間であるという事。

今まで散々自分を否定し、自分が生きていてはいけない人間だと叩き込んだ現実が、

今や彼の考えを容認し、彼の幼稚な承認欲求を満たしにかかっている事。

倫理や常識を放棄して、伊58にあれだけの仕打ちを行った事。



自分を否定し、拒絶し、ここまで堕とした世界に対する殺意。

手の平を返し、自分に媚びへつらうようになった世界に対する殺意。

伊58を追い詰め、四肢を奪い、絶望させた世界に対する殺意。


そして

狂気の域まで踏み込んだ、超悲観的な自分自身の思想に対する殺意。


98 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:09:26.61 ID:+oExVeOv0


何が現実だ。

何が世界だ。

何が本物だ。

何がリアルに於いて反映実現される有質量の全ての結果だ。



ふざけるな。

うそぶくな。

格好付けるな。



死ね


死ね


死ね


死ね



全部死ね。



殺す


殺す


殺す


殺す



全部殺す。


99 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:11:32.11 ID:+oExVeOv0


人間という生物が何かを否定し殺す性癖の生物なのだから


俺という人間は


俺を否定する世界を


あの子達を否定する世界を


手の平を返して俺に媚びへつらう様になった世界の不誠実さを


誠実で規則正しかった頃のお前が否定した、俺という人間も


何もかも否定して殺してやる。

100 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:15:10.81 ID:+oExVeOv0


二十数年に及ぶ彼の人生の中で培われた、狂人じみた自己否定と正義感が

彼の精神の中で不気味に共存していた。


自己否定という水

正義感という油

決して混ざり合わないはずの二つが

殺意という界面活性剤によって混ざり合っていた。


そして出来上がった、世にもおぞましいコロイド溶液が

彼の脳髄に流れ込み、言葉を刻む。



伊58は絶対に助け出す、と。


101 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:17:40.26 ID:+oExVeOv0


彼女は、雪風が自分の危険を顧みずに助けようとした子だ。

だから絶対に助ける。


あの子が笑顔になれるようにする。

この世が残酷であるからこそ

あの子をできる限り幸せにする。


それができなきゃ、雪風が悲しむ。雪風が、絶望してしまう。

それを見て、またあの絶望が顔を出す。

そうだこれが現実だ、と。お前は何一つ間違っていない、と。

そんな事には絶対させない。俺の思想は否定され続けなければいけない。


あの子が幸せになれない理由なんて何も無い。

あの子の幸せを否定する世界なんて俺がブッ殺してやる。


彼女の為にも、雪風の為にも、皆の為にも、俺自身の為にも

この話を

バッドエンドなんかで終わらせてたまるものか。

102 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:20:02.54 ID:+oExVeOv0



俺は、どんな手を使ってでも


伊58を助ける、雪風を幸せにする。


何を犠牲にしてでも


俺の、艦娘達を生き残らせる。


みんなを、幸せにする。


103 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:26:54.47 ID:+oExVeOv0


自惚れだろうな。

傲慢だろうな。

上手くいかないかもしれないな。



でも

それならそれで構わない。



それが、現実ってものだから。

それが俺を徹底的に否定する

本当の、正真正銘の、現実、世界だから。

現実に打ちひしがれ、絶望し、自分の命を絶つ。

俺みたいなクズは、クズらしくみっともなく格好悪く何の成果も残さずに死ねばいいだけの話だ。


格好付けた事を言って

失敗して

無様に手の平を返して

みっともなく死ぬ。


現実がわからないクズは、そうやって死んでいけばいい。

何も学ばなかったクズは、そうやって死んでいけばいい。

そうやってゴミみたいに死んでいく事が

俺に色々な事を教えてくれた

俺がどうしようもないクズ野朗だと教えてくれた

この世界に対する最大限の礼儀だ。

104 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:27:34.28 ID:+oExVeOv0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



105 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:29:59.09 ID:+oExVeOv0



伊58「………」



伊58(ゴッパの、ゴッパの、手も、足も)

伊58(もう………)

伊58(これじゃあ、何の為に、逃げたのか…)


雪風「伊58さん、失礼します!」コンコン

ガチャ

伊58「………」

雪風「ご飯、お持ちしました!!」ニコッ

雪風「今すくうんでちょっと待っててくださいね!!」カチャン


雪風「……はい!あーん!!」

106 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:31:12.83 ID:+oExVeOv0


伊58「」プイ

雪風「あ……伊58さん」


伊58「いらないでち」

雪風「食べないと駄目ですよ。お腹空いちゃいます」


伊58「別にいいよ」

雪風「よくありません!それじゃあ死んじゃいます!!」




伊58「いいよ」


伊58「死んだって」



107 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:35:18.54 ID:+oExVeOv0


雪風「………!!」

雪風「…駄目ですよ」

伊58「何で?」

雪風「頑張って、頑張って生きていれば」

雪風「しれぇが、きっと何とかしてくれます」

雪風「何とか…」






伊58「 な ら な い よ ! ! ! 」






伊58「ゴッパの手も足ももう無いんだよ!?ずっとこのままなんだよ!?」

伊58「身体もぐちゃぐちゃにされて、綺麗じゃない!」

伊58「誰も好きになってくれない!!」

伊58「ずっとベッドの上で何もできないまま一生過ごすんだよ!?」

伊58「どうせこのままなんだったら、もう死んだっていいじゃない…!!!」


雪風「よく、ありません…!死ぬなんて…!!」

伊58「…何で、死んじゃ駄目なの?」

伊58「ゴッパを助けちゃったから?死なれたら気分悪くなるから?」

雪風「そうじゃ、なくて…!!」

伊58「………ねぇ」





「何で」



「なんでゴッパを助けたの?」




108 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:37:16.48 ID:+oExVeOv0



「なんでゴッパを助けたの?」



「何であそこで死なせてくれなかったの?」



「あのまま死んでいたら、こんな思いしなくて済んだのに」



「何で!?」



「何で助けたの!?」



「誰が助けてって言ったの!?」



「どうせゴッパはゴッパなんだよ!!」



「生きていたってしょうがないんだよ!!!」



「なのに何で!?」




「何で!?」





「何で!?」





「 何 で ! ? 」





「 何 で ! ? ! ? 」




109 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:39:13.55 ID:+oExVeOv0


雪風「…それは………」





伊58「………疫病神…!!!」ボソッ





雪風「………ッ!?!?」

伊58「あそこで死なせてくれればよかったのに…」

伊58「余計な事をしたせいで、ゴッパは死ねなかったんだよ…!!」

伊58「あのまま、死んでいれば、よかったのに…!!」


雪風「…ちがっ、う」

雪風「そんな、事、そんなつもりで…!!」





伊58「 疫 病 神 ィ ! ! ! 」




110 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:44:28.17 ID:+oExVeOv0



伊58「疫病神!!」



伊58「疫病神!!!」



伊58「疫病神ッ!!!!」



伊58「もう出てってよ!!!疫病神ィッ!!!!!」



伊58「もう生きていたくないんだよぉ!!!」

伊58「このまま死なせてよぉ!!!!!!!」


雪風「う……ッ!!…あぁああ、あああう……!!!」ダッ

バンッ

ダダダダダダダダ!!!!




伊58「………」


伊58「………あはっ」


伊58「あはは、あははははっ………」



111 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:46:24.70 ID:+oExVeOv0



「死ね………」



「死ねばいいんだ………!!」




「ゴッパなんて…」



「さっさと」



「死んじゃえばいいんだ………!!!」



112 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/02(火) 21:52:03.92 ID:+oExVeOv0

☆今回はここまでです☆

もうすぐ春イベント開催ですね。
備蓄や練度、時間を考慮して無理をしないように楽しんでいきましょう。

あと

最近デレステ始めました^^
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/03(水) 20:39:26.69 ID:0qKXY6Jso
おつにゃ
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 10:14:42.15 ID:EvsQ6Iyho
>>112は中居君説
115 : ◆ZFgfLAc.nk [saga sage]:2017/05/16(火) 00:29:00.40 ID:jxOAwOyV0
>>1です。
皆様、春イベントの進捗はいかがでしょうか。>>1は現在最終海域を攻略中です。
期間いっぱいまでイベントに集中したいので、こちらの投下はまだ時間がかかりそうです。
ご了承の程、どうかよろしくお願い致します。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/16(火) 17:11:58.98 ID:x0ZwpZAfo
うぃー
117 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 21:58:57.31 ID:/Q/DuN7B0
>>1です。春イベントお疲れ様でした。
>>1は何とか最終海域まで攻略し、新規艦娘は全て集められました。
個人的な感想ですが、最近は以前のイベントに比べて新規艦娘のドロップ率が上がっているように感じます。
前回も伊13があっさりひょっこり出てきたので、もしかして調整されたのでしょうか。

それでは投下を始めさせて頂きます。
118 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:06:47.48 ID:/Q/DuN7B0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



119 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:10:03.92 ID:/Q/DuN7B0


走る。


走る。


走る。


廊下は走ってはいけません。


そんな、ずっと聞いてきた言葉も投げ捨てて。

行く当てもなく走る。

あの部屋から離れるために。

何かから逃げるように。

視界が涙で滲み、脱水症状とショックで頭がガンガンと痛む。


「疫病神」

頭の中で声が反響する。

違うと否定する。その度に声が大きくなる。


「疫病神」

そんなつもりじゃなかった。傷付ける目的で助けるつもりじゃなかった。


「疫病神」

本当に助けたかった。何とかしたいと思っていた。


「疫病神」

だが、反響する声が


「疫病神」

少しずつ変わっていく。


「疫病神」

聞き覚えの無い、聞きなれた声。


「疫病神!!」

自分の声。


「疫病神!!!」


こだまのようでこだまでない。

自分の声が同じ言葉を繰り返し、繰り返し、繰り返し、叫んでいる。


「疫病神!!!!」


まるで自分に言い聞かせるように。



「そうさ!私は疫病神さ!!!」


120 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:13:58.14 ID:/Q/DuN7B0


突然沸いた強烈な違和感を感じ取る事で、雪風は寸での所で思考を切り離せた。


「………誰…ですか!?」

頭に響く声は自分のものではない。他の誰かのものだ。

他の誰かが、自分に言い聞かせようとしている。

その自己弁護的な考えが彼女の声帯に干渉し、震えさせる事でその危険な思考を自分から切り離した。

だが、頭に響く声は雪風の脳髄に追撃をかける。


「今言ったでしょう?私は疫病神」

「陽炎型駆逐艦八番艦」

「雪風」

「奇跡の駆逐艦」

「呉の雪風」


一気に畳み掛けられる情報に雪風の思考が置いてかれた。

何を言われているのかがわからない。理解しきれない。

表情は読み取れないはずなのに、まるで全て見えているかのように、頭の中の声が雪風の混乱を汲み取る。


「まだわからない?」

「私は雪風」

「陽炎型駆逐艦八番艦、雪風」

「その魂」

「あなたは私の魂を受け入れて、艦娘になったのでしょう?」


先程とは打って変わり、彼女を落ち着かせるように、彼女の思考が追いつくのを待つように

ゆっくりと、ゆっくりと、優しく語り掛ける声によって、雪風の思考が落ち着いていく。

121 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:17:40.28 ID:/Q/DuN7B0


艦娘は、それぞれの元となった艦船の魂を取り込む事によって人間から生まれ変わる。

船の記憶を、戦闘の知恵を、技術を受け継ぐ事で艤装を動かす力を、深海棲艦に対抗する力を得る。

ここに居る雪風もまた、例外ではない。


彼女は陽炎型駆逐艦八番艦雪風の魂を取り込み生まれた

陽炎型駆逐艦八番艦娘、雪風型艦娘の一人だ。


その事実を思い出し、雪風の思考の荒波が落ち着いていく。

122 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:19:20.72 ID:/Q/DuN7B0


その様子がまるで見えているかのように、頭の中の声が言葉を続ける。



先程までのような


言葉の刃を以って、雪風の心に詰め寄っていく。



「そう。だから私達は二人揃って疫病神」


「二人揃って」



「死神」


123 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:22:16.67 ID:/Q/DuN7B0


背筋に悪寒が走る。

背筋に走る冷たさは痛みと化して心臓に突き刺さる。

痛みは恐怖を助長する。

自分の考えが、存在が否定される恐怖を、助長する。

追い討ちをかけるように頭の中の声が畳み掛けていく。



「あの時も」


「あの時も」


「あの時だってそうだった」


「いつもいつも」


「自分だけが生き残って」


「自分以外は」



「みぃんなみぃんな死んじゃった」


124 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:26:27.32 ID:/Q/DuN7B0


あの時。あの時とは何だ。


一瞬の疑問の後


何かを絞り取るように前頭葉が圧迫され


脳髄と心臓に情報が流れていく。


彼女が体験した事の無い記憶。



軍艦雪風の魂の記憶。


125 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:38:26.32 ID:/Q/DuN7B0



「第三次ソロモン海戦」

それは、煙。



「ビスマルク海海戦」

「ダンピールの悲劇」

騒音。


「コロンバンガラ沖海戦」

視界を塞ぐ大雨、スコール。


「レイテ沖海戦」

海に飲み込まれていく人間。


「坊ノ岬沖海戦」

爆音と轟音、渦と人と、エンジン音。



「とか!」

「とか!」

「とか!!!」


許容しきれず、脳髄と心臓から溢れ出す様々な光景が身体を締め付けていく。

その光景は感情と言う名の刺激をもたらす粘液を周囲に広げていく。


恐怖

絶望

諦念

激情

不満

不服

困惑

殺意


「私の周りはみぃんな死んじゃった!!」

「私だけが!!平然な顔して生き延びた!!」



そして、罪悪感。


126 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:55:27.49 ID:/Q/DuN7B0


「幸運の艦?違う!!」

「雪風は、死神!!」

「雪風が生きる為に、みんなが死んだの!!!」

「雪風のせいで、みんなが死んだの!!!」


それは違う、と声にならない思考で反論する。

その弱弱しい反論を殴り飛ばし、声が雪風を追い詰めていく。


「違う!?違わない!!」

「雪風が幸運の艦であるからこそ、他の誰かが不幸を被る!!」

「雪風が生き残り続けるからこそ、他の船が沈み続ける!!!」

「誰かが幸運を得るという事は、他の誰かが代わりに不幸を被るという事!!」

「誰かが幸せになるという事は、他の誰かが不幸せになるという事!!!」

「雪風はその実例を見たはず!!!」

雪風は逃げてしまいたくなる感情すら否定され、一方的に放たれる言論の最前線まで引きずり出された。

「忘れたとは言わせない!!!」

忘れた、と言ってしまいたい。このまま逃げてしまいたい。

怖い。嫌だ。だが許されない。

自分の喉から新たな目と口が生え、意志を持ってこちらを見ているように感じる。

自分自身のものだが、自分自身のものではないかもしれない。だが、それが自分の一部である事は確かなのだ。

その自分の一部が、逃げる事、拒否する事を絶対に許さない。

雪風は、ただ下を向いて沈黙するしかなかった。

頭の中では気付いている。何の事を話題に上げられているか。

だが、それを雪風自身の口で説明できなかった。

それを説明するのが、怖くてたまらなかった。

だから、沈黙するしかなかった。



そのまま数秒の沈黙が続き、


雪風の、見えない、新たな口が開いた。


127 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 22:59:22.47 ID:/Q/DuN7B0


「伊58を救出した時」

「雪風は周囲の確認を怠り、魚雷の接近に気付かなかった」


あの痛みを思い出す。

後悔と、痛みと、無念を思い出す。


「本来ならばそのまま魚雷の直撃を受けるはずだった」


そして、一つの疑問も共に思い出す。

本来ならばそのまま魚雷の直撃を受けるはずだった。

だが、現実はそうならなかった。

あの時

確かにこちらに向かって、真っ直ぐに魚雷が突き進んでいたのを見た。



「なのに何故魚雷が逸れた!?」



不自然に逸れた魚雷。


川内の一撃で沈む敵艦。


嬉しかった。


安心した。


これで上手くいくと思った。


だけど、何故?何故魚雷が逸れたのか?

128 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:07:36.07 ID:/Q/DuN7B0


「そう、それこそが」

駆逐艦雪風の力?

「そう!」

「幸運の艦の力!!」

「全ての摂理を捻じ曲げ!他人を踏み躙り雪風だけが生き残る!!雪風の幸運の力!!!」

あの出来事そのものが、艦娘雪風を死神である覆しようのない根拠?

「そう!!」

「異能の力!死神の力!!!」

違う。そんなはずはない。

「なら何故魚雷が逸れた?」

「魚雷があんな不自然な動きをするのか?」

「説明できる?納得のいく説明ができる?」

「何故?」

何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
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何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
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何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
129 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:10:06.52 ID:/Q/DuN7B0


雪風の思考が無限のループに入る。

瞳孔が開いた瞳は前を見ているようで見えていない。

新たな情報収集能力を全て切り離し、思考の無限ループを繰り返す。

ループの出口は見えているが、それを無視してあえて延々と回り続ける。

その出口にたどり着いた瞬間、何が起こるかを彼女は予想していた。


説明できない。その結論に至ることがループの出口なのだ。


その結論が怖かった。だから彼女は永遠のループを自ら望んだ。

何故、と感じる事を続け、何故、と考える事を止めた。

考えればすぐに答えが出るが、それこそが彼女が一番恐怖を感じるものだからだ。

だが


「何故か!?」

「それが雪風の幸運の力だからだ!!」

声が、強制的に無限ループの出口に雪風を引きずり込んだ。

130 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:12:06.40 ID:/Q/DuN7B0


「雪風の幸運の力が!!雪風を生かそうとして!!」


「雪風以外の全てのものを殺していく!!」


「みんなみんな殺して殺して!!雪風だけが平気な顔して帰るの!!」


「みんなみんな!!雪風のせいで死んじゃったの!!」


「みんなみんな!!雪風のせいで不幸になったの!!」


「だって雪風は死神だから!!」


「だって雪風は疫病神だから!!」


疫病神。

今彼女の身に降りかかる全てが、彼女の頭の中で繋がった。


「あの子の言うとおり」

「雪風が余計な事をしなければ、あの子が今苦しむ事もなかった」

「雪風はあの子を助けて、良い事をしたと思っているでしょ?」



「これで、司令から褒められると思ったでしょ?」


131 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:15:18.52 ID:/Q/DuN7B0


そうだ。


そうだ。


そうだ。


伊58を助けたいと思った一つの理由にそれがあった。

遠征をやり遂げた上、艦娘を救助すれば、司令は雪風を褒めてくれる。

その時の快感と安心感、心地よさが欲しくてたまらなかった。

予想以上の功績を成し遂げた自分だけに笑顔を向けて、労ってくれる。


誰かと同じではない。平等ではない。

自分だけ。


自分だけがそれを独り占めできる快感が

それを享受する快楽が


欲しくて


欲しくて



欲しくて



欲しくて



欲しくて



132 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:16:34.35 ID:/Q/DuN7B0



「よくわかるでしょう?」



「雪風の幸運が」



「多くの不幸と引き換えにもたらされているんだって」


133 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:18:26.18 ID:/Q/DuN7B0




命綱のように大切にしていた何かが、支えが、一瞬にして消え去った。



134 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:28:24.31 ID:/Q/DuN7B0


足の力が抜けて、がくんと膝から崩れ落ちる。

腕を体の支えにして、床に頭をぶつけるのを防ぐ。

重い。腕が重い。身体が重い。精一杯突き出した腕が震える。

下唇を噛む、殆ど見えていない視界が涙で更に歪み滲み、頭痛がどんどん酷くなる。

許容量を超えた涙が床に落ち、びち、という音と共に弾け飛ぶ。

こめかみから感じる脈動と激しくなる心臓の鼓動。

感情という激流が質量を持って脳髄という容器内を駆け回っているかのように、頭が僅かに、びくびくと動く。

精一杯突き出した腕が震える。

何故こんな事をしているのか、それすらもわからなくなっていく。

何故こんな事に力を入れているのか。何に精一杯になっているのか。

楽に、楽になってしまいたい。もう嫌だ。

何もかもが、自分自身が、もう嫌だ。

135 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:29:54.30 ID:/Q/DuN7B0


雪風は

疫病神だ。

雪風の利益の為に

他人を傷付け

殺し

滅ぼす。

無意識に

無差別に

無造作に

雪風の幸福の為に

他人を不幸にしていく。

他人を蹴落としていく。

賤しい

浅ましい

死神

疫病神。

136 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:36:24.29 ID:/Q/DuN7B0


視界が暗くなる。

彼女の精神に呼応するように影が差す。

彼女が見てしまった、暗い世界が具現化されたかのように視界が暗くなる。

世界そのものが、暗くなってしまった。

光が遮られ、影が差してしまった。

影の根っこの部分から声が聞こえる。

雪風を呼ぶ声が聞こえる。

雪風にそれは聞こえなかった。

どんどん世界が暗くなっていく。

影が濃くなっていく。



そして



「雪風ちゃん」


「大丈夫?」



透き通った声が雪風の耳元に響いた。

137 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:45:13.11 ID:/Q/DuN7B0


気品、落ち着きと幼さを両立した独特の色気を持つ声。

自分の声とも頭の中に響く声とも違う声。

声の主が誰なのか、その情報を求めて雪風が本能的に頭を上げる。


彼女の視界に影を差していたその女性は、平均女性よりもはるかに大きい。

だが赤と白を基調とした服装と首元で輝く桜の紋章が、彼女の姿を逆光の中でも映し出す。

どんな暗闇の中でも存在感を出し続ける為にあるようなその佇まい。

太陽神、天照大御神の依代、と豪語しても尚説得力の感じられる優美さと力強さを兼ね備えたその姿。



艦娘の存在が世に知れ渡り、彼女達の元となったかつての軍艦にも注目が集まるこの現代で

今や彼女の名を知らない日本人は一握りしかいない。

そして彼女の存在を知らない軍人はいない。

当時の最高技術を粋を結集し、決戦兵器として誕生した戦艦の中の戦艦。




彼女の名は




「大和、さん」




超弩級戦艦




大和型一番艦




大和



138 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:48:33.65 ID:/Q/DuN7B0


「凄い顔色」

「何かあったの?」

膝を付き、背を丸め、白い手袋に覆われた細い腕を雪風に伸ばす。

細く長い指が雪風の涙を拭い取った。

「立てる?」

優しく語りかける大和に心配させまいと雪風は、はい、と答えて立ち上がった。

立ち上がれた。立ち上がれたが、その声は彼女の想定以上に弱弱しく、勢いも無かった。

大和はその様子を見て、眉尻を下げた。


「私に…ううん、私達に何かできる事はないかな?」

「私が駄目でも、香取なら、何とかなるかもしれないから」

「何があったか、聞かせて貰える?」

同じ目線の高さで、大和は新たに涙を滲ませ始めた雪風の目を見ながら言った。


「遠慮しないで」

香取とは、練習巡洋艦香取型一番艦娘香取の事だ。

U-511、雪風、香取、そして大和。

艦種も、艦級も、年齢も、国籍すらも異なる彼女達は

「同期なんだから」

トラック諸島海域における大規模作戦後、四人揃ってこの泊地に着任した

文字通りの同期の仲、であった。



「まぁ、とりあえず」

「ラムネ飲んで落ち着こ?」


139 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/05/30(火) 23:54:34.42 ID:/Q/DuN7B0

☆今回はここまでです☆

仮面ライダーアマゾンズが滅茶苦茶面白い。
アマゾンアルファ、鷹山仁の性格も生き様もかっこよすぎる。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 23:56:54.02 ID:8W9gRsP4o
おつかーレ
141 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 21:22:28.66 ID:yhZYf5qW0
>>1です。
投下を始めさせて頂きます。
142 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 21:25:10.73 ID:yhZYf5qW0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



143 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 21:40:55.98 ID:yhZYf5qW0


香取「提督、失礼します」ガチャ

提督「あれ、どうしたの?三人揃って」

雪風「しれぇ…」


香取「提督、お忙しい所申し訳ございません」

提督「あー、気にしないで?こんなもん大規模作戦の時に比べりゃなぁ」

提督「ま」

提督「俺ぐらいになるとそれでも秘書艦いなきゃやってられんけど、ねぇ?」

如月「ふふっ」



提督「それで、どうしたの?」

大和「雪風ちゃんが、提督に聞きたい事があるみたいなんです」

大和「ちょっとお時間頂いてもよろしいでしょうか?」

提督「雪風が」


雪風「………」

提督「………」

提督(………雪風)


提督「わかった」

提督「…ん、じゃあ大和と香取は付き添い?」

香取「えぇ…まぁ、そんな所です」

提督「そっか」

144 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 21:48:27.59 ID:yhZYf5qW0


提督「大和、香取」

大和「はい」

香取「何でしょうか」


提督「雪風の事、気にしてくれてありがとう」


大和「!!…いえ、そんな、お礼なんて」

香取「そうですよ。当然の事をしたまでです」


提督「それでもだ」

提督「それでも、本当にありがとう」


大和「提督………」

香取「…どういたしまして」ニコッ



提督「じゃあ後の事は俺に任せて…あ、そういえば」

大和「?」

提督「アレ…届いてるんだったよな、如月?」

如月「えぇ。ちゃんと届いてるわよ。届いたそのまま、明石さんに渡してあるわ」

大和「!!」

提督「そっか。ありがとな、如月」

提督「じゃあ大和は工廠に向かってくれ。早速やりたいでしょ?」

大和「はい!」

提督「俺も楽しみにしてるよ。頑張ってきな」

大和「はい!」


提督「香取と如月も席外してくれ」

提督「雪風と二人きりで話がしたい」

如月「…わかったわ」


如月「ねぇ香取先生」クルッ

香取「はい、何でしょう?」

如月「私、香取先生に色々聞きたい事があるんです」

如月「丁度良い機会だし…ちょっとお時間頂けますか?」

香取「いいですよ。私でよろしければ」

如月「香取先生じゃないと駄目なんですよ」


如月「香取先生じゃなきゃ、ね?」

145 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 22:00:56.58 ID:yhZYf5qW0


大和「それじゃあ雪風ちゃん。また後でね」


バタン、ツカツカツカ…


雪風「………」

提督「………」


提督「で」

提督「どうしたんだ?話って」

雪風「………」

提督「言いにくい?大丈夫だよ」

提督「もし変な事言っちゃったって、忘れてくれって言われたらちゃんと忘れるからさ」

雪風「………」

提督「………」



提督「伊58と何かあったんだろ?」



雪風「え!?」

提督「騒ぎがあったってのは青葉から聞いた」

提督「それが本当かどうかまでは、実際に見たわけじゃないから知らないけどね」

提督「…本当なの?」

雪風「………」コクン

提督「そっか。それで、何があったの?」




雪風「しれぇ」

雪風「雪風は」

雪風「疫病神なんですか?」



146 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 22:06:41.53 ID:yhZYf5qW0


「こんな事なら、死んでいた方がましだったって」

「何で助けたんだって」

「雪風は、ただ、助けたかっただけなのに」

「なんで」

「なんでこんな事になっちゃうんですか」

「雪風が」

「雪風だからですか」

「しれぇ、雪風は、疫病神なんですか?」

「死神、なんですか?」


提督「………」

提督「伊58に、そう言われたのか」


提督「雪風、伊58はな」

提督「自分の今の状況を受け入れられなくて、頭がぐちゃぐちゃになってるだけだ」

提督「あんな事があった後だ、何があっても嫌な気持ちになるのはわかる」

提督「その気持ちを抑えきれずに、近くにいた雪風にぶつけた」

提督「理由なんてないけど、そうしないとあいつ自身が持たない」

提督「…あいつなりに、雪風に甘えてたんだよ」

提督「それだけだよ」

提督「それだけだから、あまり思い詰めないで」


雪風「………」

提督「雪風は人の命を助けたんだよ?」

提督「そうしたいって思って、行動したのは絶対間違ってない」

提督「本当に立派な事をやったんだ。他の誰が何て言っても、俺は絶対そうだって思う」

雪風「しれぇ………」

147 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 22:12:03.15 ID:yhZYf5qW0



「立派、立派だって!立派だって司令が褒めてくれた!」

「やっぱり褒めてくれた!司令は優しいよね!」

「でも、あの子がいなきゃ褒めてくれなかったんだよ?」

「今雪風が幸運なのは、あの子が不幸になったからだよ?」



「わかってる?」



「あの子がいなきゃ、雪風は褒められなかった」

「あの子が楽に死ねていれば、今雪風は司令に褒められていなかった」

「雪風が司令に褒められたから、あの子は今も辛い思いをしなくちゃいけなくなった!!」


「雪風の幸運のせいで」

「あの子が不幸になったんだって!!!」


148 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 22:19:56.06 ID:yhZYf5qW0


雪風「」ビクッ

提督「………」スッ

提督「隣に行ってもいいかな?」

雪風「え?」

提督「まぁ、もう来ちゃったけど」ボスン

雪風(わ、わ…しれぇが、すぐ隣に)


提督「…本当に立派だよ、雪風は」ポンポン


雪風「ひゃっ」

提督「焦って単独行動したのはちょっとアレだけど、人の命を救ったんだ」

提督「立派だ。本当に立派な、艦娘だ」

雪風「しれぇ………」



雪風(でも…)

「でもそのせいであの子は不「でも」

「何か隠しているな?」


149 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 22:35:30.01 ID:yhZYf5qW0


物理的に鼓膜を揺らすその声に、頭の中から聞こえる声が掻き消された。

一瞬の内に起こった予想外な状況の変化に対応しきれずに雪風は、え、と声を漏らす事しかできなかった。

頭の中の耳障りな声を掻き消した声の主の顔を見る。



暖かい手で雪風の頭を愛撫していたその声の主の顔は、目は


冷たく、冷酷に、雪風を見ていた。



「こちらが信じられないとかそういう事はどうでもいい」

「お前には他に何かあったはずだ」


雪風の頭からするりと落ちた手が


彼女の頬をかすり


肩にずしりと圧し掛かった。



「言え」


「言わなきゃ」


「懲罰室だ」


150 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/08(木) 22:53:29.21 ID:yhZYf5qW0

☆今回はここまでです☆

また近いうちに書きます。できれば明日。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/08(木) 23:51:48.30 ID:IWLIg6UBo
おつかーレ
152 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 20:14:59.65 ID:RYMOEHea0
>>1です。
投下を始めさせて頂きます。
153 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 20:25:50.56 ID:RYMOEHea0


雪風の心臓にぐ、と一瞬圧力がかかり

その圧力が解き放たれた反動で跳ね上がった。

言い放たれた言葉を受けて

軍艦雪風の記憶が知識を引きずり出す。


懲罰室。

懲罰房。

営倉。

規則に反した者、問題行動を起こした者が一定期間収容される収容部屋。

懲罰室。

この、小さなパラオ泊地にそう明記された部屋が確かに存在する。



だが

今この泊地に所属する艦娘の中に、本当に提督から懲罰を受けた者は誰一人いない。

今この泊地に所属する艦娘のほぼ全員が、その部屋の真実を知っているだろう。

懲罰室と呼ばれる、その部屋で行われている本当の事を知っているだろう。

その部屋の様子の殆どが青葉の手によって泊地中にばら撒かれているからだ。

それは、動画ファイルとして、泊地内で完結する娯楽の一つとして、1つ数百円程度で販売されている。

雪風も興味本位でいくつか購入した。

そのファイルがどういうものか、初めから何が起こっているかは予め青葉から伝えられていた。

それでも、それをわかった上でも、興味が抑えられなくて手を出した。


部屋に戻ってファイルを開く時の、高鳴る心臓と震える指を雪風は忘れられない。

そしてそのファイルの中身も、雪風は忘れられない。


154 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 20:31:51.73 ID:RYMOEHea0


圧力から解放された心臓は激しく動き、血液を勢い良く全身に循環させる。

身体の隅まで循環した血液の一部が、雪風の身体の一部に集まりだす。

雪風は、自分の顔が熱を帯びていくのを感じていた。


「でも」

「信じてもらえない、です」

雪風は赤くなる顔を隠すように、俯いて言った。

目を見られるのを避けるように、俯いて言った。

雪風は、彼女が今抱いている感情がバレてしまう事を怖がったからだ。

懲罰を受ける者として決して抱いてはいけない感情を、今彼女は抱いていた。

否、彼の口から伝えられた懲罰という言葉を、懲罰という概念とは別物として捉えていた。


だが、雪風の言葉を受けて、肩に置かれた手が重くなる。

「俺が信じる信じないの問題じゃない」

「言え」

「全てこの場で言うんだ」

155 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 20:50:10.22 ID:RYMOEHea0


手が、雪風の身体を押し倒す。

柔らかなソファに頭がめり込み、その勢いのまま首ががくんと上を向く。

雪風の頭の横に提督の手が置かれ、視界が暗くなる。

雪風という少女の身体が、提督という男の身体に覆い被さられていた。

彼女のすぐ傍に置かれた手の支えが失われた瞬間、彼女の身体は提督の身体で押し潰されるだろう。

そのイメージを抱き雪風の心臓が、型落ちの洗濯機にでもなりたいかのようにさらに激しく動き始める。


視界に提督の顔が移る。

彼は、あまりにも冷たい目を以って雪風を見ていた。

スパイを尋問する特別高等警察かの如く、

雪風の様子を、雪風の心情、雪風の内面まで全て覗きこみたいかのように

じっと、冷酷な目で雪風を見つめていた。

156 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 20:55:59.04 ID:RYMOEHea0


「何でそこまで意地になるんだ?」

諭すように語り掛けていた口調も、棘がある口調に変わっていた。

「変な事を言うのがそんなに怖いか?」

赤みを帯びていない仮面のような表情で、抑揚の無い声で、雪風を責め立てる。

「何だろうが言えば終わるのによ」

雪風の内側に捩じ込まんとする暴力的な意志を以って、雪風を責め立てる。


「俺もそろそろ我慢の限界だぞ」

「お前がそうやって黙秘決め込むんならな」



「もうここで」

「直々に懲罰してやろうか」


157 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:03:23.62 ID:RYMOEHea0


提督の手が雪風の太腿に触れた。

熱を帯びた手が、雪風の痛覚を刺激し、くすぐったさと快感をもたらす。

その手が有無を言わさず雪風の服の中に滑り込み、

腰の部分の何かを掴んだのを彼女は感じた。


片腹に感じる圧迫感。

片腹に感じる僅かな開放感。

鼠蹊部に触れた提督の爪の感触に、雪風は目を見開いた。

158 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:04:33.37 ID:RYMOEHea0


「わかるか?」


「今お前の下着に指をひっかけた」


「俺がこの手を引っ張ったらどうなるか」


「わかるな?」

159 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:19:45.23 ID:RYMOEHea0


冷たい目のまま、雪風の目だけを見ながら、提督は警告を出した。

彼が望む事を雪風が言わなかった場合、どうなるか。

どうなってしまうのか。

否が応にも浮かんでしまう未来のビジョンが壊れたビデオのように様々な光景を映し出す。


「言えばいいんだよ、言えば。そうすれば終わりだ」

「言わなきゃ」

「もっと酷い目に遭わせる」


冷たい言葉が雪風の身体を熱くする。

無意味に肩が動き、ソファにめり込んでいく。


義務感

親近感

好奇心

そして抑えきれない衝動が頭の中で駆け巡る。


思考回路がショート寸前になっても激しく循環し続ける。

酸素が足りなくなり、呼吸が荒くなる。

表情を隠すという事すら考えられなくなり、視界から提督を外す事ができなくなる。


感情を制御できなくなり溢れ出した涙。

その目は

僅かな恐怖と

あまりにも大きな期待で鈍く輝いていた。

160 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:21:29.91 ID:RYMOEHea0


このまま


このままいったら


雪風は


雪風は


雪風は


雪風は


雪風は


雪風は

161 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:33:53.97 ID:RYMOEHea0



「声か」



緊張感が抜けた声が雪風を現実に引き戻す。

「頭の中から声が聞こえてきたんだな?」

「伊58からそう言われた辺りから?」

その一言で、酔いが覚めた。

雪風を苦しめ始めた頭の中の声。

その存在を提督がズバリ言い当てた事で、雪風の目が覚めた。

その存在を認識し始めた時までズバリ言い当てられた事で、雪風の意識は完全に現実に戻った。

「な、なんでわかったんですか?」

目をぱちくりさせながら正直な疑問を口にした雪風を見て、提督が微笑んだ。

先程まで冷酷非道な拷問官のような表情を浮かべていた男が、僅かに顔を赤らめて微笑んだ。

「やっぱりそうか」

雪風の腰を掴んでいた手が離れ、引き抜かれた。

雪風の口から、あ、という声が漏れると同時に、彼女の視界を覆っていた影、提督の身体が彼女の視界から離れていった。

雪風はそれを名残惜しそうな目で見ていたが、提督は後方確認しながら体勢を立て直していたため、それを見る事はなかった。



その提督の様子はまるで、今の雪風の目を、表情を見たくないかのようにも見えた。


162 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:36:51.49 ID:RYMOEHea0


提督「雪風、それはな。お前が思っている以上によくある事だよ」

提督「全然変なことじゃない。辛い事だけど、結構な人数が体験していることだよ」

提督「だから抱え込もうとしないで」

雪風「………」

提督「で」

提督「そいつは何て言ってたの?」


雪風「…雪風は疫病神だ。死神だって」

提督「うん。何でそいつは雪風の事をそう言ったの?」

雪風「雪風が生きる為に皆が死んでいったって」

雪風「軍艦だった頃から、雪風はそうやって生きてきたって」

提督「幸運の駆逐艦…呉の雪風…だっけか」

提督「でも、ここにいるお前(雪風)はそうとは限らないんじゃないか?」


雪風「でも!!」

雪風「雪風に当たるはずだった魚雷がいきなり変なほうに行ったんです!!」


雪風「魚雷がぐるって向きを変えて、雪風を避けるように進んで…」

雪風「そんなの、そんなのありえない」

雪風「まっすぐ進む魚雷がいきなり曲がるなんて」

提督「………」

提督(幸運の駆逐艦か………)

163 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:37:45.44 ID:RYMOEHea0



「伊58ちゃんの首輪の爆弾、壊れているみたいです」


「私が中開けた時には、もう丸焦げのボロボロでしたよ」


「だから爆発する事はありません」


「機械に不具合が起こってほんの小規模な爆発…首輪の機械を壊す程度の爆発になったか」


「そうじゃなかったらやっぱり不具合で高温になって配線を焼き切っちゃったか」


164 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:40:34.78 ID:RYMOEHea0


提督(機械の故障…か)

提督(あれも、俺達にとってはラッキーだったな)


提督(伊58の首輪が爆弾で、それが途中で爆発する事がなかった事も)

提督(雪風が、爆発に巻き込まれることがなかった事も)


提督(本当にラッキー。幸運だった)



提督(………でも)

提督(くだらねぇな)


165 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:43:50.35 ID:RYMOEHea0


提督「雪風」

雪風「はい!」ビクッ



提督「」ムニュ

雪風 )・3・( プエ



提督「落ち着けー」

提督「魚雷が勝手にルートを変えて逸れてったって」

提督「それ、俺一つ思い当たるもんがあるぞ」

雪風「んえ?」パッ

提督「ちょっと待ってろ」

166 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:53:35.82 ID:RYMOEHea0


提督「伊58見つけたのって、南西諸島海域方面だったよな?じゃあ、これか?」ドス

提督「で…あれだろ。川内と合流した辺りでの話ならー」パラパラ

提督「この辺か」トン

雪風「はい」

提督「なら確定だ」



提督「海流だ」



雪風「海流?」

提督「ほら、これ見てみんしゃい」

提督「この辺はな、ちょうど異なる海流の境目なんだ」

提督「いくら魚雷が勝手に進んで行くとはいえ波には流されちまう」

提督「お前はその境目に立っていたんだ」


提督「だから」

提督「魚雷はお前の目の前で逸れた」

提督「奇跡でも魔法でも何でもない。よくある話だ」

167 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:55:44.43 ID:RYMOEHea0


雪風「じゃあ、何で」

雪風「何で雪風はそんな所にいたんですか?」

提督「え?」

提督「………」

提督「雪風、血液型A型でしょ?」

雪風「はい。A型です」

提督「あははやっぱり!」



提督「俺と同じだ」


168 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 21:57:33.69 ID:RYMOEHea0


雪風「………」

提督「…理由があるとすると」

提督「絶妙なタイミングで勘が働いたから、じゃないかな?」


提督「周囲を警戒しないで突っ込むっていうミスをしたけど」

提督「絶妙なタイミングで勘を働かせてそのミスを挽回した」

提督「雪風に魚雷を命中させる事しか意識が行ってなかったイ級は川内の接近に気付かず」

提督「直撃喰らって無様に沈んだ」


提督「そういう事だろ?」

169 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:00:06.31 ID:RYMOEHea0


提督「あまり考えすぎるな」

提督「でもな、これだけは覚えておいて」


提督「お前が周りから幸運艦と呼ばれようと、奇跡の駆逐艦と呼ばれようと」

提督「奇跡だとか運で全部片付けられるほどこの世界は甘くはねぇ」


提督「何が起こるかとか、何が生まれるかとか、誰が何を感じるとか」

提督「全部全部、何かが重なって出来上がったものだ」

提督「火山の爆発も、病気の感染も、何らかの要因があって起こるものだ」


提督「それを人間は全部理解しきれない」

提督「人間には全部理解出来るほどの能力がない」

提督「でも、そういう自分の無能さを隠したがるもんだ」



提督「だから、自分の無能さを誤魔化す為に」

提督「運なんて言葉で自分を守る」


170 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:02:37.31 ID:RYMOEHea0



提督「運が悪かったから駄目だった」


提督「不幸だからしょうがない」


提督「そうやって自分を守る方便で取り繕って」


提督「考える事をやめちまう」


提督「その、運に酔っちまうんだよ。で、物語の主人公にでもなったかのように振舞う」


提督「馬鹿ばかりだよ。てめぇが主人公なんかになれるわけがねぇのに」


提督「そうやって諦める奴にはせいぜい死体A役くらいが関の山なのに馬鹿みたいに高望みしてな?」



提督「それよりかは何でそうなったか、どうすりゃいいかを考えて行動していった方がよっぽどマシだ」

提督「そうやって色々試して、試して得た経験を次に活かしてどうすりゃいいかを考えて、また試す」

提督「一生不幸だ不幸だ何て言って思考停止するよか、よっぽどマシだ」


提督「こういうのを巷じゃPDCAサイクルって言うんだ。覚えておきな」

雪風「ぴーでぃーしーえーサイクル」

171 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:07:17.11 ID:RYMOEHea0


提督「こんな所かな?雪風」

提督「俺はお前の事を奇跡の駆逐艦だなんて全然思わない」

提督「所詮は一駆逐艦娘、一人の人間としてしか見ていない」

提督「お前の頭の中の声は、雪風の事をどこぞのロボットアニメの主人公だとでも勘違いしてるみたいだけどな」



提督「はっきり言うぞ」

提督「俺も、お前も、物語の主人公なんかじゃない」



提督「この世界に数え切れないほどいる有象無象のうちのたった一人だ」

提督「世界はお前を中心に回っているわけじゃないし、全てお前の思い通りにいくはずもない」



提督「お前を生かす為に他の全てを無意識に犠牲にする?」


提督「違うね」


提督「周りにいた奴が馬鹿やらかしたから結果的にそうなっただけだ」


提督「人殺しも厭わないどうしようもないクズどもがキチガイみたいに攻めてきたから結果的にそうなっただけだ」


提督「雪風と、それ以外で決定的な違いがあったから結果的にそうなっただけだ」


提督「それを幸運だの不幸だので誤魔化されてるだけだ」


提督「雪風がどうとか、そんなもんは何も関係ない」


172 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:12:55.06 ID:RYMOEHea0


提督「いいか」

提督「運っていう言葉で全部片付けようと思うなよ」

提督「お前は疫病神なんかじゃない」

提督「死神なんかじゃない」

提督「この世界に、神なんてもんがいるはずがないんだから」

提督「お前は、ただの人間だ。ただの女の子だ」


提督「だから」

提督「幸運なんてもんに慢心しちゃいけないし、それを悪いもんとも思っちゃいけないよ」


雪風「………しれぇ」

提督「もう大丈夫かな?」

雪風「…はい!ありがとうございます!しれぇ!!」ニコッ

提督「どういたしまして」ニコッ

提督「また何かあったらすぐに教えてね」



「絶対」


「何をしてでも」


「何とかするから」


173 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:16:59.81 ID:RYMOEHea0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



174 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:19:51.87 ID:RYMOEHea0


一人残った執務室で、提督は椅子に腰掛けた。

そして先程のやり取りを思い出す。



何で助けた


お前は疫病神だ。


雪風はそう言われたと言っていた。



ポケットから執務机の鍵を取り出す。

鍵穴に差込み、ぐるりと回すと、かすかに軽くなった感覚が手に伝わった。

引き出しの取っ手に手を掴み、ゆっくり引き出す。

衝立にぶつかり手に衝撃が来たのを合図に手を離し、引き出しの中身をじっと見つめる。


殆ど空の空間に、L字型の鉄塊が一つだけ置かれている。

その形状がよく把握できるように横たわっているそれには、英字の刻印が刻まれている。



それは、自動拳銃と呼ばれるものだ。



提督の右手がそれに伸び、掴んだ。

手首が鉄の重さを感じ、手の平と指先にざらついた感触が伝わる。

175 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:22:46.13 ID:RYMOEHea0


所詮俺達はこの世界に無数に存在する有象無象のうちの一つだ。


だから


そのうちの一つや二つ、消えてなくなろうが


この世界には


何の影響も及ぼさない。


十や二十がくたばったところで


この世界は


気にせず回り続ける。


百や千が殺されたところで


あぁそうなんだ怖いねざまぁみろ、ですぐに忘れられる。



気にしない。



心を動かさない。



記憶にも残らない。



どうでもいい他人だからな。


176 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:26:24.86 ID:RYMOEHea0


先程、最後に彼が雪風に言った言葉を思い返しながら

提督は自動拳銃の引き金を右手の人差し指でなぞった。

177 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:28:37.36 ID:RYMOEHea0



伊58は助ける。助けるつもりだ。



だけど



これ以上うちの艦娘を傷付けるつもりなら



本人が助かりたい気が無いんなら



話は



違う。



てめぇの命一つ、本当に消えてなくなろうが




この世界には




何の影響も




及ぼさない。



178 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:30:11.03 ID:RYMOEHea0


提督は自動拳銃をズボンと腰の間に差し込み、

彼の心に呼応するように黒く光る拳銃を


白い制服

白い上着が覆い隠した。

179 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/10(土) 22:34:07.26 ID:RYMOEHea0

☆今回はここまでです☆
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 03:47:22.92 ID:9BUVCQ1Eo
おちゆん
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/11(日) 04:08:04.01 ID:7Ieq1qHfo
懲罰シーンが足りない
182 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 21:58:35.21 ID:Pf2BVjno0
>>1です。
仕事が忙しくなりましたがそれでも楽しくss作っています。
それでは投下を始めさせて頂きます。
183 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 22:04:18.06 ID:Pf2BVjno0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



184 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 22:34:50.19 ID:Pf2BVjno0


「頼めるかな、明石」

携帯端末の熱を頬で感じながら、提督が呟いた。

「うん。これしかないと思っている」

「友提督ん所の明石さんにも俺からお願いしておく。二人で何とかやってくれないか」

「うん。ありがとう。お願いね」

携帯端末を耳から外し、画面に指で触れる。

端末側面のボタンを押し、目的の場所を見据えながら、手の平を手前に向けるように手首を振った。

ブック型の端末カバーが勢い良く閉じ、たん、という音が廊下に響く。


曲がり角の先、目的地から少し遠い場所から、窓側の壁に寄り掛かりながら様子を見る。

話し声は聞こえない。電話中に誰かが通った様子もない。

今、彼女は一人。

彼はそう状況判断した。彼にとって好都合な状況であると、そう感じ取った。


体重を預けていた壁から離れ、歩いて近付いていく。

用意はできた。

やることはやった。

あとはどうにでもなってしまえ。

扉の前まで来た提督は

中指の第二間接の角でこんこんと扉を叩き、僅かに間を置いて、だけど返事を聞かずにドアノブを回した。

185 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 22:38:42.63 ID:Pf2BVjno0


「伊58」

部屋に入ってすぐ、ベッドに横たわる少女に呼びかける。

びくんと身体が跳ねた事以外に返事はない。ただ呼吸だけが聞こえる。

荒い呼吸音だけが鼓膜を震わせる。

怯えている。恐怖している。逃げたがっている。

提督には見て取れる。手に取るようにわかる。

白い制服に対するトラウマ。

金の紋章に対するトラウマ。

提督という存在そのものに対するトラウマ。

両手両足を奪った存在そのものに対するトラウマ。

何もかもを奪った存在そのものに対するトラウマ。

彼にはわかる。わかってしまう。知っているから、推測できてしまうから全てわかってしまう。

だがここから先はわからない。曖昧すぎる推測しかできない。

だが、だから、だからこそ

ここから先は全力で行く。



「お前」

「死にたいんだってな」



殺すつもりで


死ぬ気で。


186 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 22:57:54.43 ID:Pf2BVjno0


「死にたいのか」

「もう生きていたくないのか」

再度伊58に問いかける。

返事はない。だが彼女自身がそう言ったという事を青葉からは聞いている。


どうせこのままだったら死んだ方がマシ。

生きていたって辛いだけ。

そう言ったと、提督は聞いていた。

助かりたくないと、そう考えていると提督は聞いていた。


雪風の表情を思い出す。

彼女は苦しんでいた。泣くのを必死に堪えて、叫んでいた。

伊58の言葉をきっかけに自虐的になってしまった少女の姿を思い出す。

喉を押すその感情が着火剤となる。


あの日、あの時からずっと燃え続けている

青い炎の、彼の狂気の、着火剤となる。

彼の心に小さく、だけど常に揺らめいている青い炎が

着火剤を浴びて大きく燃え上がる。



右手を背中に伸ばす。

上着の下に手を潜り込ませ、手の平の冷たい感触を握り締める。



「だったら」

「俺が今ここで殺してやるよ」



提督は、ただ震えて沈黙する伊58を見据えながら

腰から自動拳銃、オートマチックを引き抜き、向けた。

187 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:18:04.76 ID:Pf2BVjno0


扉の前から歩いて近付いていく。

ベッドの傍まで近寄り、靴のままベッドの上に立つ。

伊58の身体に馬乗りになった提督は、彼女の目の前で銃をいじり出す。

片手を捻り、銃身の側面を伊58に見せ付ける。

もう片手を使い、セーフティを外した。

マガジンリリースを押す。

銃からマガジンが滑るように落ち、提督の手に落ちる。

中に込められた、僅かな緑色を含んだ黄色に光る弾丸を伊58に見せ付ける。

BB弾を発射するモデルガンではない。本物の銃だ。

提督は何も言わないが、伊58には彼が何を言いたいのか痛いほど伝わった。

がちん、という音が響き、マガジンが再び装填され

銃口が半円を描きながら、伊58の額に、こん、と当たった。



「動くなよ」


「今から」


「お前の脳幹をブチ抜く」



「普通の拳銃だけど、艤装を付けていない、結界の無いお前を殺すには十分だ」

額に置いた銃口を下に動かし、彼女の柔らかい唇に当てた。



「こいつを」


「お前の口に突っ込んでブチ抜く」



「拳銃っていうのは他の銃に比べると威力が無いんだ」

「だから額に当ててやるやり方だと、威力不足で銃弾が頭蓋骨滑って死に損なう事があるらしい」

「ショットガンでもあれば外から頭グチャグチャにできるだろうけど、流石にそんなもん積んだ船は今まで見た事ない」

「それと、俺は遠距離から弾を当てられる程腕もよくない」


「だから」


「脳幹に向けて二発」



「それでお前を」



「確実に殺す」


188 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:24:47.71 ID:Pf2BVjno0


左手でオートマチックを支える。

「口を開けろ」

口調を変えず、波を変えず、声量を変えず、提督が伊58に命令する。

口が僅かに開き、白い歯が少しだけ見える。

伊58の口が僅かな、震えるような開閉を繰り返す。


「 開 け ろ 」


二度目の命令を出した。

今度は少し大きな声で、目を見開いて、威嚇するように命令を出す。

伊58は顎を震わせながらゆっくりと口を開けた。

奥歯も、ピンク色の舌も、唾液で濡れた口内の全てを提督の前に曝け出した。

提督はそこに銃口を突き込む。

伊58の顎が限界ギリギリまで開かれ、不快感が耳まで駆け上がる。

189 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:28:52.03 ID:Pf2BVjno0


「俺は時々考える事があるんだ」


「深海棲艦とは何なんだ」


「あいつらの資源は一体どこから来ているんだ」


「あいつらは一体どうやって新種を開発しているんだ」


「あいつらの指揮系統は一体どこにあるんだ」


「あいつらは」


「どこから来て」


「何の為に」


「戦い」


「何が欲しくて」


「生きるのか、って」


伊58の目を見つめながら、銃口を動かさずに提督が呟いた。

190 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:31:32.84 ID:Pf2BVjno0



「艦娘が」

「轟沈した艦娘が深海棲艦となり、敵となる」

「よく聞くケースだ」



「深海棲艦になった後の艦級は場合によってそれぞれだが」

「見た目は、元になった艦娘のそれに似たものになるケースが多い」

「…それがどういう事か」




「深海棲艦は」

「艦娘の死体を使って」

「新しい深海棲艦を生み出す事ができるって事じゃないか?」



191 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:34:04.84 ID:Pf2BVjno0


そこまで言い切り、部屋には一瞬の沈黙が訪れた。

伊58の目を見据えながら、提督が鼻で深呼吸する。



「じゃあお前はこれからどうなる?」

「お前が死んだらそこからどうなる?」



「ここで俺が殺すお前は一体どうなるんだ?」

「お前も」

「深海棲艦になるのか?」

「俺が殺したらお前も深海棲艦になるのか?」

「お前も人を憎んで俺達の敵になるのか?」

192 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:40:56.81 ID:Pf2BVjno0


伊58は困惑した。そんなものはわからないからだ。

そもそも提督が何の為にこんな話をしているのかすらわからない。

だがもし、これから自分が深海棲艦になるのなら、もうそれでもいいと彼女は感じた。

今よりも、今のみじめな自分よりも、ずっとましなはずだ。

だから、もうそれでもいいと考えた。

もう、人の世界に生きる権利なんて無いのだから。

ここで生きていく未来が一切見えないのだから。

失った右腕が

左腕が

右脚が

左脚が

痛むから。

その痛みが止まるのなら。

嫌な思いをしなくなるのなら、もうそれでもいいと。

そう考えた。

193 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:50:47.54 ID:Pf2BVjno0


そんな伊58の意志も解さず提督は言葉を続けていく。

今の彼にとって伊58の意志は彼自身の意志決定と何の関係なかった。

話したいから話す。

伝えたいから伝える。

伝えなければいけない事だから、伝える。

だから彼は言葉を続けていく。

「俺はな、他のキチガイ提督みたいに」



「悲劇のヒーローぶりたいだけで」


「 わ ざ と 轟 沈 さ せ て 」


「 悦 に 入 る よ う な 」


「そんな事は、したくない」



「それが深海棲艦に餌与える事になるなんて」

「そんな考えが及ばないほど」



「 ド 低 脳 な脳ミソも、もう持ち合わせちゃいない」



「命を脅かす敵なんて一人でも少ないほうがマシに決まっている」

「ただでさえ、今でも手一杯なんだ」

「無駄に敵を増やすわけにはいかねぇんだよ」

194 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:53:37.48 ID:Pf2BVjno0




「死にたいなら勝手に死ね」


「俺が手伝ってやる」




「だけどな」




「俺はお前を殺したその後」




「お前の死体を念入りに潰す」



195 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:56:14.82 ID:Pf2BVjno0


伊58が雪風によって救助され、この泊地に連れて来られてから5日

今日、提督がこの部屋に入ってから約3分

紆余曲折を経て

ようやく彼は、彼自身の思いを彼女に伝える事ができた。

196 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/21(水) 23:59:03.38 ID:Pf2BVjno0



「深海棲艦が」



「奴らが一切利用できないように、念入りに潰す」



「二度とこの世に蘇られないように」



「この世に二度と戻って来れないように」



「バラバラに」



「粉々に」



「グチャグチャに」



「跡形もなく」



「潰す」



「潰して」



「燃やす」



「何もかもを灰にしてやる」



「二度とこの世に」



「戻ってこられないように」



「完全に消え去るまで」



「何度でも」



「何度でも」



「潰して」



「燃やして」



「灰にする」


197 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/22(木) 00:09:49.19 ID:rJoW6pKe0

☆今回はここまでです☆

前川みくさんはネコのアマゾン。
198 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/06/22(木) 00:11:25.95 ID:rJoW6pKe0
ちょっと修正します。楽しくなってつい入れましたけどこの台詞量で3分は短すぎィ!!


>>195


伊58が雪風によって救助され、この泊地に連れて来られてから5日

今日、提督がこの部屋に入ってから約10分

紆余曲折を経て

ようやく彼は、彼自身の思いを彼女に伝える事ができた。

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 01:47:53.97 ID:QMb8yGDGo
おつのん
200 : ◆ZFgfLAc.nk [saga sage]:2017/07/06(木) 22:55:19.64 ID:B7JfaPTK0
>>1です。
多忙の為投下ができませんが、スレ落ち防止の生存報告だけ入れておきます。
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/07(金) 09:26:03.14 ID:oepBuDGGo
MAJIか!待ってる!
202 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 21:12:52.96 ID:3LCGAcBQ0
>>1です。
投下を始めさせて頂きます。
203 : ◆ZFgfLAc.nk [saga sage]:2017/07/14(金) 21:17:03.81 ID:3LCGAcBQ0


伊58以外、それ以外が世界から消え去ったかのように、彼女だけを見据えながら提督は話を続けた。

怒鳴るわけでもなく、萎縮するわけでもなく

ただ淡々と、一切捻じ曲げずに事実だけを突きつけるかのように

はっきりとした口調で、死を望む彼女の未来を説明していく。

204 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 21:18:32.05 ID:3LCGAcBQ0



「特に」



「脳」


「心臓」


「子宮」


「徹底的に潰す」


「脳を潰せば、物の判断ができないし身体を動かすこともできない」

「心臓を潰せば、血液が全身に行き渡る事がない。要するに動けない、生きられない」

「子宮を潰せば、新しい命、新しい敵がそこから湧いて出てくる事は無い」


「だから、潰す」


「全部潰す」


「一つ残らず潰す」


「その周囲の部品も全部潰す」


「深海棲艦には耳鼻目口髪の毛一本、たんぱく質カルシウムの一かけらすら与えてやらねぇ」


「砕いて、刻んで、燃やして、灰になるまで叩き潰す」


「家族の元に送る、なんてふざけた事は絶対にしない」


「この世界から完全に消えてなくなってもらう」


205 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 21:20:03.55 ID:3LCGAcBQ0


一瞬の沈黙がこの場に訪れた。

提督の鼻から空気が吸い込まれる音、空気を吹き出す音が流れた後

彼は再び、今度はゆっくりと、そして更にはっきりと、口を開いた。


「それでいいな?」


そして銃を握った右手を前面に押し出す。

伊58の顎が更に開かれ、喉と顎に感じる異物感が吐き気を催す。

206 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 21:27:23.40 ID:3LCGAcBQ0


「脅しだと思ったか?」

「やらないと思うか?」



「やるぞ」



「だってお前は」

「雪風を傷付けた」


「お前を助けようと必死になってるあいつに酷い言葉を浴びせて傷付けた」

「お前のせいで、雪風が傷付いた」

「雪風は、お前を、助けたいと思っていたのに」

「お前のせいで」


目の前の拳銃と提督の右手に定められていた伊58の焦点の、そのはるか遠くで、提督は僅かに表情を歪めていた。

喉奥と海馬から湧き出る苦すぎる思い出が、彼の目尻を下げさせ、歯を食い縛らせる。


頭の中の声、軍艦の記憶、それが艦娘に牙を剥く事例。


赤城との思い出。


如月との思い出。


そして、今度は、雪風。


三度目に立ち塞がったこの苦境への憎しみを、彼は隠しきれなかった。

その引き金となった事象への憎しみを、彼は抑えきれなかった。

だからこそ彼は、暴挙に出る決意をした。

207 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 21:30:59.65 ID:3LCGAcBQ0


「だから」

「お前がこれ以上あいつを傷付ける前にブッ殺さなきゃいけねぇんだよ」

「じゃなきゃあ、あいつがダメになっちまう」

「雪風だけじゃない」

「他のみんなもだ」


「お前がそうやって喚いて騒いで」

「みんなが傷付いていく前に」


「お前を殺す」

208 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 21:42:02.06 ID:3LCGAcBQ0


軍艦雪風の記憶を蘇らせた原因、伊58の殺害を提督は決意した。

これ以上、自分の周囲の艦娘が傷付くところを見たくなかったからだ。

自分の周囲の艦娘を傷付けていく伊58の存在を、提督は許してはおけなかった。

殺した先どうなるか、その結果どうなるか、その未来を彼が予想していないわけではない。

伊58を助けようとした雪風がどう思うか、潜水艦娘達がどう思うか、泊地の艦娘達がどう思うか。

提督がそれを予想していないわけではない。

だが彼は、その先自分がどうするかも既に決めていた。

209 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 21:46:09.21 ID:3LCGAcBQ0



「別にお前一人だけじゃないさ」



「お前を殺して」



「お前の死体を完全に処理した後」




「俺も死んでやる」



210 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:17:00.50 ID:3LCGAcBQ0


提督が伊58に対して抱いている感情は殺意だけではない。

惨たらしい目に遭った彼女に対する憐れみも、助けたいと感じる正義感も持ち合わせている。

彼の中で目の前の伊58という存在は、既に他の艦娘達と差が無いほどの存在になっていた。

大切な友人の一人。仲間の一人であると、彼は伊58をそう見ていた。


だからこそ、提督が伊58を殺す時は、彼自身も死ぬ時だ。


それは彼が、この仕事を続けていく上で定めた対価だった。

自分が無能であると知っているからこそ、文字通り死ぬ気で作戦を立てる。

仲間を誰一人として死なせない。死なせてはいけない。

その考えを実現する為に、彼は対価に自分の命を捧げた。


この戦争で戦死するという事が、どんなに惨たらしい結果をもたらすかを、彼はかつて味わった痛苦と共に思い知った。

名誉も、権利も、何もかもを失う。ただ失う。ただ失うだけなのだと。

その先に残るものは何もない。何もかもを悪意という名の狂った獣に食い尽くされるのみ。

この世界は、人の味を覚えた羆のように唾液を垂らし、舌を突き出し、歯を剥き出し、眼をギラギラと光らせる、狂った獣が跋扈し支配している。

彼は、ここまでの人生でそれを悟ってしまった。

大切な仲間が、狂った獣どもに食い荒らされるなんて事は許されない。

だからこそ、どんな手を使ってでも全員で生き延びようと、彼は決意した。


仲間を一人でも死なせないように。全員で生き残ってこの戦争を終わらせる為に。

だけども自分は無能である。自分に誰かを守る力は無い。故に彼は自分の命を制約として捧げた。

万が一仲間が犠牲になるような事があれば、命の責任を、彼自身の命で払う。

それは、指揮官として致命的な思い上がりである事も、提督はその頭の片隅で理解していた。

だが制約と反逆と自己否定を同意義とするその狂気に彼は身を委ねたのだ。


誰かが犠牲になっても、それでもなおヘラヘラと生きていく事を、彼は何よりも嫌っていた。

そうしてでも生きていく人間を、狂人と罵り、外道と誹り、心の底から軽蔑していた。

例え、その結果が自分の目論見通りだとしても、彼はその先を生きるつもりは一切無かった。

伊58という仲間を自分自身の手で殺しておきながら、その先を生きるつもりは一切無かった。

例えそれが他の仲間を守る為のものだとしても、彼はその先を生きるつもりは一切無かった。

211 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:25:27.68 ID:3LCGAcBQ0


提督が何を考え、伊58に銃を突きつけるに至ったか。


根本から言ってしまえば、

彼女が死にたがっている現状を打破する事。

それしか考えていなかった。


銃を突き付け、殺害の意志を見せる事で彼女がどう動くかという問題は、彼にとって大したことではなかった。


もし恐怖や抵抗の意志が見られたのならばそれでいい。

彼女の生きる意志を煽り、全力を持って支えよう。

それは恐らく一番最善の結果になるはずだ。

だが、常に最善の結果が起こるとは限らない。故に最悪の結果が起こった場合も考えた。


もしそれでも死を選ぶというのなら、そのまま望み通り殺してやろう。

そして自分も、後を追おう。


これで、どちらに転んでも死にたがりの伊58は居なくなる。彼女に仲間が傷付けられる事は無くなる。

彼が考えていたのは、それだけだった。

どちらに転んだとしても、彼にとってはメリットしかないと。

だからこそ、提督は伊58の殺害方法を彼女本人に念入りに話した。

それで恐怖を感じて、生きたいと思うならそれでいい。

それでも死にたいと思うのならばそれでもいい。

いや、死にたいと思ってくれていたほうが都合がいいかもしれない。

それで、自分も、死ねるのならば。

この世界に不要な自分が消えてなくなるのであれば。


「俺が道連れになってやる」

「だから安心して死ね」


どちらに転んでも、提督にとっては都合が良い。

何もかもが、全てが彼の思惑通りに事が進む。

212 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:26:48.72 ID:3LCGAcBQ0



そのはずだった。



そのはずだった。



そのはずだった。



提督は気付いていなかった。



彼が予想していなかった事が、三つも、起きていた事に



彼は気付いていなかった。


213 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:27:48.39 ID:3LCGAcBQ0



彼の口角は、彼自身も気付かない内に、はっきりとわかるほどに上がっていた。



そして伊58は、提督のその表情に焦点を当てていた。当ててしまっていた。




その瞬間、この場の状況が一気に動き出した。



214 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:30:26.04 ID:3LCGAcBQ0


伊58の肩が、震えだす。


伊58の顎が、かたかたと揺れ、銃身にこつこつと音を立てていく。


伊58の瞳に、涙が浮かびだす。


提督は伊58のその様子を、恐怖していると捉えた。


伊58は死にたくないと、生きたいと思い始めている。


それならば、と既に口角が元に戻っている口を開いた。


「何震えてるんだよ」

「怖いかよ」

「さっさと死んだ方がいいなんて言ってたくせに」

「今さら、怖いのかよ」

「死んだ後の事なんてどうだっていいだろ」


一拍置いて息を吸い


「死にたいんだろう!?」


叫んだ。


「もう生きているのが嫌なんだろう!?」


叫んだ。


「そう言ったのはお前じゃないか!!」


大きく息を吸い、吐き出す。

全身の力が空気と一緒に抜けていく。

右手の力も抜け、伊58に突きつけた銃口も僅かに下がった。

215 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:32:42.59 ID:3LCGAcBQ0


「でも違うよな」


「お前は」


「ただ逃げたいだけだ」


「嫌な事を投げ出して、逃げたいだけだ」

「死にたいなんてな、本当に死にたいなんてな、誰も思わないんだよ」

「ただ逃げたいだけ。逃げたくて、逃げたくて、逃げる手段がそれしかないから、死ぬだけだ」

「お前だってそうだろう」

「両手両足吹っ飛んで、これからどうやって生きていけばいいのかもわからない」

「でも生きていたい」

「でも生きていく手段がわからない」

「幸せになれる方法が全然思い付かない」


「だから」


「しょうがなく」


「死にたいだけだろ?」

216 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:36:18.99 ID:3LCGAcBQ0


右手の人差し指、トリガーにかけていた指を外す。

銃口が伊58の口から離れ、光を反射する細い糸がつう、と銃口に伸びた。


「教えろよ」

「そういう、嫌な事とか遠慮してる事とか全部取っ払ってさ」

「お前が本当にしたい事って何?」


「生きたい?」


「まだ生きていたい!?」


口調の激しさを動きにも乗せるように、拳銃から手を離して伊58の両肩を掴んだ。



「 答 え ろ ! ! ! 」



「生きたいのか!!!!」


「死にたいのか!!!!」


「答えろ!!!」


伊58の肩は震えていた。提督の両手もまた震えていた。

既に答えは見えていた。だが、伊58自身の口からそれを言わなければ意味が無い。



「 答 え ろ ! ! ! 」



右手を離し、伊58の頭の傍に置き、右腕を支えにしながら伊58に顔を近づける。


「答えろよ。巡潜乙型改二三番艦娘伊58」

「俺は、お前がどうしたいかを知りたいんだよ」


「俺がどうとか」

「何がどうとかじゃなくて」


「お前が」


「どうしたいかだけを知りたいんだよ」


「生きたいのか、死にたいのか」

「はっきり教えてくれよ」


「じゃなきゃ」


「どうしたらいいのか、わからねぇんだよ」

217 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:37:18.22 ID:3LCGAcBQ0


言葉が途切れ、二人の呼吸だけが聞こえる。

その時間の中でも提督はずっと伊58だけを見続けていた。

そして、伊58の口が開く。




「死にたくない」



218 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:39:08.52 ID:3LCGAcBQ0


ぽつりと呟いたその言葉が


「死にたくない」


彼女の心の中で増幅していく。


「死にたくない」


制御弁を失った彼女の本心が溢れ出していく


「死にたくない」


口から言葉を、目から涙を、溢れ出していく。


「…生きていたい」


ようやく伊58の本心を引き出した。

安心感と伊58に対する同情から、溢れ出しそうになる涙を堪えながら提督は答えた。


「だったら」

「死にたいなんていうんじゃねぇよ」

「諦めるんじゃねぇよ」

「何を犠牲にしてでも」

「どんな手段を使ってでも生き延びるんだ」

219 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:41:12.33 ID:3LCGAcBQ0


ふ、と力が抜けて提督はベッドに、伊58の隣に、肩から倒れこんだ。

ベッドに頭の重さを預けながらも伊58の顔を見つめる。

伊58も、両手両足を失った彼女に残った僅かな自由を行使した。

首を提督に向け、彼の顔を見つめた。

涙が顔を横切り、頬に湿った感覚が触れる。


「わからねぇか」

「生き方がわからねぇか」

「一人ぼっちが怖いか」

「だったら」

「俺が一緒に考えるよ」

「お前が今を生きる手段は俺が用意する」

「だから」

「死にたくないなら、死にたいなんて絶対に言うんじゃねぇ」

「生きろよ」

「どんな手段を使ってでも」

220 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:47:08.89 ID:3LCGAcBQ0


伊58の身体が提督の腕で引き寄せられる。

伊58の頭が提督の胸に押し付けられ、ボタンの冷たい感覚が彼女の顔面に触れた。

そしてそのボタンと、分厚い布の奥で動く、彼の心臓を頬で感じた。


「お前が生きて行けるようになるまで」

「俺が、一緒にいてやるから」


その言葉を聞いた途端、伊58の中にあった感情の爆弾が爆発した。

その衝撃が涙液を押し出し、声帯を激しく震わせた。

221 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:47:42.62 ID:3LCGAcBQ0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



222 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:48:39.42 ID:3LCGAcBQ0



「私が」



「生きて」



「行けるようになったら」



「あなたはどうするの?」


223 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:50:02.19 ID:3LCGAcBQ0


感情の爆弾による熱も衝撃も過ぎ去った伊58の心の中で、


彼女自身も気付いていないその疑問が


彼女の心の隅の隅で、消えない線香のように、いつまでも燃え続けていた。


いつまでも。


いつまでも。


いつまでも。

224 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:52:15.44 ID:3LCGAcBQ0



提督が気付かなかった三つ目の誤算。



それは



伊58が死を拒絶した最たる理由。


225 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:55:31.27 ID:3LCGAcBQ0


提督が無意識に口角を上げているのを見た瞬間、伊58は危機感と焦りを覚え始めた。

ここで死ねない。死にたくない。そう感じるようになった。

死ぬのが怖くなった。

死んではいけない、と感じるようになった。


それは、すぐそこまで近付いていた救いに気付いた為だったのか。

それは、死という未知に対する恐怖から湧き出た感情だったのか。

それは、予想以上に惨たらしい未来に対する拒絶感だったのか。


確かに、それもあった。

だがそれだけではなかった。


提督も伊58自身も気付いていない、三つ目の誤算がそこにあった。

226 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 22:59:59.81 ID:3LCGAcBQ0


俺も死んでやる、と言い切った提督の表情は柔らかかった。

その口調は、艦娘になってから出会った誰よりも優しかった。

その言葉が嘘偽りのものではないとはっきりとわかった。

それを伊58が知覚した瞬間、彼女の中で彼女自身も気付いていない、一つの意志が湧き出ていた。

そしてその意志は、確かに伊58に呼びかけていた。

227 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 23:00:41.68 ID:3LCGAcBQ0





この、雄を、死なせてはいけない。




228 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 23:07:47.35 ID:3LCGAcBQ0


その言葉は彼女の知覚に捉われる事は無く、だが確実に彼女の心に危機感を感じさせていた。

そして彼女は死を拒絶した。

目の前の雄を死なせない為に、望んだ死、目の前まで迫った死を拒絶した。

まるで赤子が教わりもしないまま呼吸し始めるかのように。

まるで蜘蛛が教わりもしないまま巣を張り始めるかのように。

従うのが当然と言わんばかりに、彼女はその意志に応えた。



それは、その意志は

彼女の本能とも言える『命令』であった。


229 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/14(金) 23:23:09.32 ID:3LCGAcBQ0

☆今回はここまでです☆

少し前の話になりますが、限定SSRみくにゃんがきました。うちにはもう4種類くらいみくにゃんがいます。
何でこんなにみくにゃんが出てくるんでしょうか。この永遠の謎に余の心はかき乱されるのだ。
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 01:17:53.92 ID:as2Fl4bmo
おつかーレ
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 20:06:40.26 ID:0L6ypvHVO
まさか嫌儲のノリをこんなとこで見るとは思わなんだ
232 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 20:48:07.82 ID:LPxJUIOu0
>>1です。
イベントが近付いてまいりました。
前回新規実装された海防艦娘達に活躍の場があるのか、今から楽しみですね。

それでは、投下を始めさせて頂きます。
233 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 20:58:28.30 ID:LPxJUIOu0


「随分」


「荒っぽいやり方するんだね」

234 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:10:01.24 ID:LPxJUIOu0


伊58「!!」ビクッ

提督「那珂」

那珂「おはよ、提督」

提督「どうしたの?」

那珂「提督を止めるはずだったの」

那珂「でも」

那珂「なんとかなったみたいだね」


伊58「………」

那珂「流石に那珂ちゃんも焦っちゃったよ。本当に撃つんじゃないかーって」

提督「撃つつもりだったよ」

提督「伊58が本当に死にたいって思ってたんならね」


那珂「カメラに映ってるの、わかってるでしょ?」

提督「それなら俺が拳銃取り出した時に止めればよかったじゃない?」

提督「全部見てたんだろ」


那珂「………」

提督「………」

伊58「………」


提督「…まぁ、いいや」

提督「とにかく、俺はもう伊58を殺そうとはしないよ」

提督「騒がせちゃってごめんな。この件はもう終わった」


那珂「でも」

那珂「まだやる事は残ってるんだよね」

235 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:13:26.31 ID:LPxJUIOu0


那珂「明石ちゃんから話聞いたよ?」

那珂「アレ、また作るんでしょ?」

那珂「説明するより実例見せたほうが早いんじゃない?」



那珂「那珂ちゃんの靴の事」


236 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:20:08.28 ID:LPxJUIOu0


「伊58ちゃん」

「ちょっと見せたいものがあるんだ」

そう言いながら那珂は部屋の隅に置いてある椅子を引っ張り出し、座った。

ニーソックスに包まれた右脚をぴんと伸ばし、装甲で覆われた靴の踵を床に付ける。

その右脚を、両手で締め付けるように掴んだ。

那珂の手が震える。腕に力を入れているのが傍から見てもわかる



その彼女の様子は

自分の脚を自分で引き抜こうとでもしているかのように見えた。



全身から腕に巡る力の流れが那珂の肩を震わせる。

ぎゅ、と噤んだ彼女の唇から小さく声が漏れる。


そして




那珂の右脚が、もぎ取れた。



237 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:23:23.99 ID:LPxJUIOu0


思わず目をつむり、視線を逸らした伊58を那珂が静止する。

「ちゃんと見て」

伊58の視線を待ち構えるように、那珂は千切れた自分の右脚の切断面を伊58に向けた。

伊58が恐る恐る逸らした視線を戻す。



そこには


那珂の右脚には


骨も


肉も


滴るはずの血も


神経も無く


ただ無機質な鉄の塊


大きな接続端子が貼り付いていた。


238 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:26:11.73 ID:LPxJUIOu0


状況が飲み込めず困惑する伊58に対して那珂が説明を始める。

「那珂ちゃんね、義足なんだ」


「昔ちょっと色々あってね」

「自分の両脚がもう無いの」

「修復剤を使っても、元には戻らなかった」


「それで、脚の代わりに明石ちゃんが作ってくれたのがこれ」

「艤装の神経接続技術を応用して作った義足…」

「というか、艤足かな?」

「艤装の艤の字で、艤足」

239 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:40:14.00 ID:LPxJUIOu0


艦娘には普通の人間とは違う、ある特徴がある。

艦娘は人体には存在し得ない稼動域を獲得し、それを自分の手足のように駆使することができる。

己が背負う艤装と己の神経を接続する事で、己の身体そのものとして艤装を扱うことができる。


その技術は、様々な箇所で使われている。

伊勢型艦娘の主砲

初春型艦娘や叢雲型艦娘のサブアーム

天龍型艦娘や龍田型艦娘のヘッドパーツ

多くの艦娘の魚雷発射管、エトセトラ。


艦娘と、彼女達が扱う艤装の開発企業内ではごく当たり前となっているその技術を使って

この小さな泊地に所属する那珂は、自分の新しい脚を獲得した。

那珂型艦娘の脚部艤装を改造・増設し

彼女の新しい脚として作り上げていた。

240 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:45:40.48 ID:LPxJUIOu0


「これが無いと那珂ちゃんは海に出ることもできないし、歩く事もできない」

「でも今はこれがあるから歩けるし、海に出て戦う事もできる」

説明を続けながら、那珂は覆うものを無くして重力に従い垂れ下がったニーソックスの端を掴みするりと脱がしていく。

ニーソックスがめくれ上がっていき、その下に隠されていた鉄の塊が大気と伊58の視線の前に晒された。


「伊58ちゃんにも、これを作ってあげる」

「一生ベッドの上で過ごすなんて事がないようにしてあげる」

「もう腕も脚も元通りにはならないけど」

「新しい腕と脚なら作ってあげることができるから」

241 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 21:54:25.23 ID:LPxJUIOu0


今の現状を打破する具体案と具体例を提示され、伊58は自分の心が軽くなるのを感じた。

また歩く事ができる。それすらも奪われた彼女には、それだけの事で嬉しくなった。

元通りとはいかなくても、やり直すことはできるかもしれない。

それだけの事で、彼女は自分の未来が少し明るくなったように感じた。


「でも」

しかし

「覚悟はして貰うよ」

すぐにでも作って欲しいと言う顔をしている伊58を静止したのは

その具体案の提示者、那珂だった。


「これはね、どこかの企業が正式に開発したものでもなければ」

「大本営の許可だって下りていない」

「違法ギリギリ…というか完全違法の改造品だから」



「付ける時」


「物凄く」


「痛いよ」



「那珂ちゃんもね、最初付けた時ね」



「このまま死ぬんじゃないかって思ったもの」



「痛さから言ったら」

「ここで提督に撃たれて死んだ方がマシかもしれない」




「それでも付ける?」



242 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 22:02:01.63 ID:LPxJUIOu0


冷たい目で、伊58を見つめる彼女の表情は、まるで先程までの提督のそれを思わせた。

挑戦しようが諦めようが、どちらでも構わない、そう感じていた。

伊58がようやく手に入れた生きる意志に水を差すに等しいその行為を、提督は黙って見守っていた。


那珂の艤足は、彼女自身の希望で提督が接続した。

彼女の言葉を聞いて、その時の光景を思い出す。


骨折のそれとは比較にもならない、常軌を逸した痛がり方。


部屋に響く絶叫。


痛みを逃がそうとしたかったのか、のた打ち回る身体。


布を口に噛ませ、それでも尚漏れる呻き声。


海老反りになる身体。


痙攣する身体。


身体から吹き出す脂汗。


意識をグチャグチャに掻き混ぜる激痛に、青くなる顔。


全て覚えている。だから那珂の言った事は嘘ではないとわかる。

否、那珂自身が、彼女自身が艤肢の事実を一番よくわかっているはずだ。

だから黙っていた。それが嫌なら、諦めるべきだと思っていた。

普通の義肢を付けるという選択肢もあるし、全く付けずに自分が介護するという選択肢もあるのだ。

もしくは、子供の頃道徳教育の一環で読んだ本の著者のように、電動の車椅子を用意するという選択肢もある。

冷静に考えれば、他の選択肢なんていくらでも見つかる。

だから、もしこの話を聞いて艤肢を付けないとなったとしてもそれは仕方の無い事だと提督は考えていた。


那珂が何故この話を持ち出したのか、その真意を見ない振りをして


提督は伊58が答えを出す、その瞬間が来るまで黙って見守っていた。

243 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 22:06:40.55 ID:LPxJUIOu0


伊58は、真っ直ぐ那珂を見つめながら問いかけた。


「那珂さんは」

「どうして脚が無くなったんでちか?」


脚を失ったもの同士、遠慮は要らないという意志からか、直球で飛んできたその問いに那珂は一瞬言葉に詰まる。

「…あまり言いたくない」

伊58の目線に耐え切れずに那珂が目を逸らした。

脚が無くなった時の記憶を思い出したくない。

というのと、彼女の目から感じられる意志に根負けしたのだ。

その程度の事実で、折れるものではないという、彼女の覚悟に根負けしたのだ。



「腕が」

「脚が」

「吹き飛ぶのと、それ、どっちが痛いんでちか?」



伊58は既に両腕と両脚が吹き飛ばされている。

爆発によって一つ一つもぎ取られ、激痛にのた打ち回った経験がある。


それに比べれば

これからを生きる為に必要な痛みなんて、どうって事はない。


彼女のそういう意志を、提督と那珂は十二分に感じ取っていた。


「やるよ」

「どんな手段を使ってでもって、提督が言ったんだから」


伊58は提督を見つめながら、期待を込めた目で見つめた。


「提督」

「艤足を、作って」

「お願い。作って、ください」

244 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 22:10:38.56 ID:LPxJUIOu0


この目に、言葉に、提督が応える。

「わかった」

「一番いい奴を作ってやる」

「絶対作ってやる」

「どんな事をしたって、絶対作ってやる」

堪えきれず、ついに溢れ出した涙を拭うことなく応えた。

245 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 22:19:18.93 ID:LPxJUIOu0


提督「うし!」ガバッ

提督「とりあえず、メシだ!」

伊58「え」

那珂「いきなりだね」

提督「そうでもないでしょ。もういい時間だろ?」

那珂「あ…ほんとだ。もうこんな時間なんだ」


提督「伊58、ここ最近ちゃんと食べてなかっただろ?」

伊58「う、うん」

提督「艤足付けるにもそれなりに体力いるし、ちゃんと食べて備えようぜ」

提督「俺、ちょっと伊良子ちゃんの所行ってくるよ」

提督「今日はごちそうにして貰うからな」

提督「準備ができたら食堂に案内するよ」

提督「みんなで食べようぜ!みんなでー!!」ガチャ

246 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 22:32:33.09 ID:LPxJUIOu0


バタン

那珂「………」

伊58「………」

那珂「本当に」ボソッ

那珂「死にたいなんて、誰も思わないなんて」

那珂「どの口で言ってるんだか」

那珂「しょうがなく死にたいだけなんて」

那珂「どの口で言ってるんだか」



「提督だって、そうなんじゃないの…?」



伊58(那珂、さん…)

那珂「いつもそう」

那珂「あいつのそういう所」

那珂「本当に、大嫌い…」

那珂「本当に、本当に…」


伊58「………」

那珂「伊58ちゃん」

那珂「艤足」




那珂(私の)


那珂( 私 だ け の だ っ た )


那珂(シンデレラの、靴)




那珂「大事にしてね」

伊58「………うん」

247 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 22:37:52.39 ID:LPxJUIOu0


提督「」ピッピッピッ

提督「あっもしもし、大淀?」

提督「うん!伊58の事は何とかなったよ!!」

提督「でね、今日はみんな食堂に集まってくれって言っておいて!」



「伊58の歓迎会、やってなかっただろ?」


「今日やろうぜ!!!」


248 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/07/29(土) 22:43:24.73 ID:LPxJUIOu0

☆今回はここまでです☆

流石に今回の限定みくにゃんもひょいと出てくれるって事はありませんでしたねぇ…
ティアラ全然出てこないのに手に入ってもアレですが…
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/29(土) 23:51:41.85 ID:MFJQ86fUo
おつかれちゃん
250 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 21:52:58.14 ID:QhBsopZF0
>>1です。
夏イベントが始まりました。期間が4週間と長めなので慌てず計画的に攻略していきましょう。
そういう私もまだE-2です。

それでは投下を始めさせて頂きます。
251 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 21:54:27.91 ID:QhBsopZF0


携帯端末に指で触れ、手首を振ってブック型のカバーを閉じる。

たん、という音を立てながら閉じた携帯端末をポケットに突っ込み

提督は鼻歌を歌い始める。

この場所に無いギターの代わりとして。


『私には』


『見える』


口を開き、言葉を紡ぎ、彼は歌い始める。


『狂気の月が』


『昇っていく』


日本語ではなく、英語で。


『私の行く手には』

『数々の』

『災い』


彼は上機嫌な様子で歌を歌い始めた。


『私の目の前に広がる』

『地震と雷』


彼の脳内で流れるアップテンポのリズムが彼の気分を高めていく。


『私にはわかる』

『今の時代は狂っている』

252 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 21:55:33.71 ID:QhBsopZF0



『今夜は外に出てはいけません』


『でないと君は殺される』


『狂気の月が昇っているのだから』


253 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 21:59:08.49 ID:QhBsopZF0


『私には見える』

食堂の壁沿いに作られたステージの上で、提督がマイクを持って歌っている。

比叡と金剛が演奏するギターと霧島が叩くドラムの音が食堂に響く。

『狂気の月が昇っていく』

食堂は急ごしらえの飾りつけがされ、テーブルには様々な料理が並んでいる。

伊58とのやり取りの後提督は、伊良子だけではなく足柄や大和にも協力を頼み込んだ。

そのせいもあって、多少脂っこいものが多くなったが、比較的豪勢な歓迎会を開くことができた。

だが、主賓であるはずの伊58は未だ状況を受け入れられずに呆然としていた。

『私の行く手には』

「伊58ちゃん」

「どう?那珂ちゃんプロデュースのアイドルは」

食べ物が山盛りになった皿を伊58の目の前に置いた那珂が、伊58の顔を自信たっぷりに覗き込む。

「アイドル…ってったって」

いわゆるドヤ顔をしている那珂に、困惑の表情を変えずに伊58が呟いた。

『数々の災い』

歌う提督に再び視線を向ける。

英語に詳しくない伊58にはあまり意味のわからない言葉で、彼は満足そうに歌っている。

『私の目の前に広がる』

「那珂ちゃんはもうアイドルになれないもん」

『地震と雷』

「カタワでアイドルなんて、気持ち悪がられてできないし」

『私にはわかる』

「那珂ちゃん、だからね」

『今の時代は狂っている』

「ま」

「とにかく、あれがうちの提督って事」

「変わってるでしょ?」

那珂は伊58に、悪戯っぽく笑いかけた。

伊58はそれに対して苦笑いしかできなかった。

254 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 21:59:49.54 ID:QhBsopZF0



『今夜は外に出てはいけません』


『でないと君は殺される』


『狂気の月が昇っているのだから』


255 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:01:59.46 ID:QhBsopZF0


『聞こえる』

伊58はまだ納得できていなかった。

否、納得したいという感情を邪魔する何かがあった。

『けたたましい嵐の音が』

それは例えるなら、魔女の餌になる為にぶくぶくと太らされる子供の気分か。

『感じ取る』

提督の涙を見ても尚、今までの経験が彼女の感情に枷を付けていた。

彼女にとって、この光景があまりにも非現実的すぎるのだ。

悪い、たちの悪い夢でも見ているかのような感覚が彼女の頭の中でぐるぐると渦巻いている。

どの瞬間に、いつもの罵声が、暴力が飛んでくるのだろうかという不安が彼女の背筋を引きつらせる。


『最後の時が訪れる』

「こんばんは、伊58ちゃん」

その時突然、とても久々に聞くような、自分の名前を呼ばれ、伊58は声の方向に視線を動かす。

その先にいたのは、睦月型駆逐艦二番艦娘如月。

黒いカーディガンを羽織り、月のバッジを付け、胸ポケットに造花を挿し、彼女は伊58に微笑んだ。

256 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:04:38.66 ID:QhBsopZF0


だが彼女の姿を伊58が認識した瞬間

『恐ろしい』


「ひぃあッ!!!!」

伊58は短いけれど大きな悲鳴を上げた。


『河川が、溢れ、返って』

悲鳴が提督の耳にも入り、歌声が途切れる。

異常を察知した提督が左手を上げ、演奏している金剛達を静止した。

257 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:07:17.53 ID:QhBsopZF0


「あ…あぁあ…!!如月…如月…!!!」

目を見開き、伊58が震えている。

「やめて!!!」

近付こうとする如月を、伊58が絶叫して拒絶する。

「もうやだ…!!コーラはもう嫌でち!!!」

「こ、コーラ?」

予想外の、意味不明の反応をされ、周囲の注目も集めてしまった如月が困惑する。

「私、何も…」

自己弁護のように口から漏れた言葉が、自分の聴覚を刺激した瞬間


彼女の海馬が急激に活動した。

彼女にとってあまりにも大切な、大切な、傷の記憶が呼び起こされる。

自分に向けられる恐怖の感情と、かつて自分が抱えていた恐怖の感情。それの類似点。

この子は、あの時の私と、同じだ。と。


如月は肩の力を抜き、カーディガンを脱いだ。

脱いだカーディガンを近くの椅子に掛け、両方の手の平を伊58に向けながらゆっくりと近付いた。

何も持っていない。何も危害を加えない。絶対に傷付けない。

何も持っていない。何も危害を加えない。絶対に傷付けない。

何も持っていない。何も危害を加えない。絶対に傷付けない。

何も持っていない。何も危害を加えない。絶対に傷付けない。

何も持っていない。何も危害を加えない。絶対に傷付けない。

心の中で何度も強く念じながら、ゆっくりと近付き、膝を着き

伊58を抱きしめた。

258 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:10:09.83 ID:QhBsopZF0


「大丈夫よ」

伊58の耳元で諭すように如月が呟く。


「誰も貴方を傷付けない」

「絶対に、約束するわ」

「ここの秘書艦である私、如月と」

「そこで歌っている、私の司令官が」

「貴方を絶対傷付けないって、約束する」

「嘘吐いたら針千本だって飲んであげる」

「だから、信じて」


背中に回された如月の手の平の熱を感じながら

伊58はゆっくりと心を落ち着かせていった。

へばり付いた疑念が、如月の手の平から感じる熱によって

蟻に解体される虫が徐々に千切られ無くなっていくかのように消えていく。

そして誰も声を発しない、静寂が食堂に訪れた。


伊58の力が抜けていく事を自分の腕の中で感じた如月は、伊58の背中をぽんぽんと手の平で軽く叩いた。

かつて自分がそうされたように。かつて自分がそう慰められたように。

腕を下ろし、伊58の身体から離れ、如月は振り返る。大切な思い出をくれた男と向き合う為に。

その男、提督はステージから降りて彼女達の方に近付いてきていた。

「ごめんなさい、司令官」

「いや、俺はいいんだけど」

「大丈夫、なのか?伊58?」

如月の後ろで座り込んでいる伊58を、身体を傾け覗き込みながら尋ねると

伊58は首を縦に振り、うん、と小さく答えた。

「びっくりさせちゃって、ごめんなさい」

「いや、しょうがねーよ。気にしないで」

伊58に代わって謝罪をする如月に対し、提督はへらへらと手を振りながらステージに戻っていった。


「………うし」

「じゃ、再開しよ。2番の最初からー」

「はーい」

比叡がギターを持ち直し、改めて演奏を始める。

それに合わせて、霧島がドラムを叩き始める。

先程までの静寂を吹き飛ばすかのような、楽しげなリズムが再び食堂から湧き上がった。

259 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:12:19.13 ID:QhBsopZF0


『聞こえる。けたたましい嵐の音が』

『感じ取る。最後の時が訪れる』

『恐ろしい』

『河川が溢れ返っている』

歌いながら、提督は伊58の方をちらりと見た。

彼女は那珂に支えられ、椅子に座りなおしていた。

そしてその傍にいる如月がこちらに手を振ったのも見えた。

『聞こえる』

彼女の手の平にあった黄色い光の残照が宙に漂い

『怒号と破滅の怨嗟の声が』

安っぽいが煌びやかな飾り付けの光と混ざって消えた。

260 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:13:03.48 ID:QhBsopZF0



『今夜は外に出てはいけません』


『でないと君は殺される』


『狂気の月が昇っている』


261 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:16:57.42 ID:QhBsopZF0


先程の静寂を消し去りたいかのように、食堂に音が溢れ返る。

一部の艦娘は手に持ったタンバリンを叩き

他の艦娘はリズムに合わせ手拍子を叩く。

その歌詞とは裏腹に、誰もが笑顔でその瞬間を楽しんでいた。

彼がこの歌を歌う意図を気付かない振りをして。


『身辺整理はできているだろうな?』

母国語を捨て、英語の歌を歌う意図。

『いい加減受け入れて死ね』

オカルト的で、破滅的な歌詞の歌を歌う意図。

『最悪な天気のど真ん中にいるように感じるのは』

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、略称CCR

1960年代後半のアメリカ合衆国でデビューしたサザンロックの先駆けとなったバンド。

Bad Moon Rising

アメリカ音楽産業で最も権威のある音楽チャート、ビルボードのシングルチャートで全米二位を獲得したCCRの楽曲。

第二次世界大戦後の新たな狂気、ベトナム戦争を背景に人気を伸ばしたこの曲を彼は今歌っている。

大日本帝国軍を打ち倒したアメリカ軍が敗北したと言われている、ベトナム戦争をイメージさせるこの曲を。

その意図を、彼女達の一部は気付かず、一部は気付かない振りをして、今この瞬間を楽しんでいた。

その閃きは今この場では無粋であると感じたから。

彼の意図が何であれ、提督は今この瞬間を楽しみ、、隣の友人達が今この瞬間を楽しみ、自分も今この瞬間を楽しんでいるのだから。

『何もかも自業自得だって事だ』

262 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:18:03.32 ID:QhBsopZF0



『今夜は外に出てはいけません』


『でないと君は殺される』


『狂気の月が昇っている』



『今夜は外に出てはいけません』


『でないと君は殺される』


『狂気の月が昇っている』


263 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:19:37.59 ID:QhBsopZF0




曲の終わりに霧島が思いっきり叩いたシンバルの音が、その場の空気を暫くの間揺らし続けた。



264 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/08/16(水) 22:26:12.62 ID:QhBsopZF0

☆今回はここまでです☆

今回はURL貼りません。
CCRはデビュー当初、醜い面相の男達というバンド名だったらしいですが、レコード会社は彼等に何を思ってそう名付けたのでしょうか。
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/16(水) 23:28:58.23 ID:wW71kcUpo
おつ
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/17(木) 09:17:20.77 ID:DxU0qel3o
水の代わりに毎日のようにコーラを飲まされたらそりゃトラウマになるよな…
267 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/03(日) 20:53:12.89 ID:1smkBa3c0
>>1です。イベントやったりで投下はできませんが生存報告を…
今E-6やっております。
268 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 20:29:25.51 ID:4Yj+itrc0
>>1です。お久しぶりです。
イベントお疲れ様でした。私は何とか完走する事ができました。
途中でデレステにイベント限定まゆが来ましたが、そちらも何とか取れました。

それでは投下を始めさせて頂きます。
269 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:33:32.65 ID:4Yj+itrc0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



270 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:37:03.27 ID:4Yj+itrc0



『轟!』



『沈!』


271 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:37:47.64 ID:4Yj+itrc0



『轟!』

 

『沈!』


272 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:38:36.54 ID:4Yj+itrc0



『テレ!』



『ビで!』



『轟!』



『沈!』


273 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:45:11.11 ID:4Yj+itrc0


『轟!』

『沈!』


パラオの町の一角が熱狂の渦に包まれている。


『轟!』

『沈!』


リズムに合わせ、右手を掲げる。

その様子を、まるで民衆を導く自由の女神、絵画の1シーンのように感じる者もいた。

市民達がリズムに合わせて、手に持ったプラカードを掲げる。

彼らの中心で、『艦特会』と書かれた横断幕を両手で掴んだ市民達がリズムに合わせて横断幕を掲げる。


艦特会、正式名称『艦豚特権を撲滅する地球市民の会』。

大規模な艦娘反対団体である『盾』、別名『SEALD』傘下の組織である。

彼ら艦娘反対団体はここ数ヶ月の間に急激に人数を増やし、大本営がある日本本土や泊地が設立された各国で日々デモを行っている。

274 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:53:05.33 ID:4Yj+itrc0


『テレ!』

『ビで!』

『轟!』

『沈!』


彼らを蜂起させたのは、ある一つのドキュメンタリー番組だった。

とある鎮守府への密着取材を行い、艦娘の実態を国民に伝えるという意図を持って放送された番組だ。

一種のプロモーション。一種のプロパガンダ。そういうものであると誰もが考えていた。


だがその番組で放送されたものは、多くの人々の予想を反するものだった。

艦娘の轟沈、慢心、傲慢、虚栄、エゴイズム。

艦娘の負の側面を凝縮し映像化したそれは全世界にばら撒かれ、大いに騒がせた。

一般市民にとっても、艦娘を指揮する特務提督にとっても、大本営にとっても、それは尋常ではない影響を与えた。


艦娘・大本営という組織に失望し、特務提督の職を辞職する者も出た。

艦娘・大本営への不信感を募らせる者も出た。

元々彼女らに不満を抱いていた者は今こそが好機と動き出した。

そしてその映像を見た一部の市民は彼ら独自の真理を悟った。

275 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:55:16.21 ID:4Yj+itrc0



艦娘が、艦娘こそが、この世界の癌なのだと。

艦娘達は政府と結託し、自分達の正体を隠しながら横暴を繰り返しているのだと。


276 : ◆ZFgfLAc.nk [sage]:2017/09/18(月) 20:56:37.98 ID:4Yj+itrc0


この世界に突然現れた深海棲艦、そして艦娘。

彼女達は一体何故現れたのか、その正体は何なのか。

日々研究が続けられているが、それらは未だ判明していない。

だが絶対正義の賢者の慧眼を得た彼等は、ネットで真実を突き止めたのだ。

277 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:02:06.73 ID:4Yj+itrc0




艦娘の正体は、731部隊が遺したデータを元に作られた生物兵器だ。



278 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:08:08.67 ID:4Yj+itrc0


731部隊。第二次世界大戦期の大日本帝国軍に存在した研究機関の一つ。

戦争の最中捕らえた捕虜を使って生物兵器の研究・開発を行っていたマッドサイエンティスト集団だ。

第二次世界大戦末期、追い詰められた大日本帝国は731部隊に命令を下した。


軍艦の魂と力を持った人型サイズの生物兵器を開発せよ、と。

大日本帝国の優れた技術を結集して作られた戦艦大和の力を持った生物兵器を開発せよ、と。

かつて最強と謳われた南雲機動部隊の力を持った生物兵器を開発せよ、と。

その力を以って鬼畜米英を叩きのめし、世界征服の野望を叶えるのだ、と。


一見馬鹿馬鹿しくも思える命令だが、元々大日本帝国軍は神霊・心霊現象を利用した侵略を得意としていたのだ。

大日本帝国傘下の朝鮮総督府が風水を利用し、庁舎等の建物を使って大地に大日本と刻み込む事で

朝鮮民族の民族精気を抹殺し、今も尚苦しめている事はあまりにも有名な話である。





731部隊も其の例外では無い事は想像に難くない。





279 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:12:46.96 ID:4Yj+itrc0


731部隊は直に研究と開発を開始した。

大韓民国の市民を慰安婦と言う建前で強制連行し、人体実験を行ったのだ。

20万人以上の女性が大日本帝国軍に因って拉致され、日々の虐待や実験の中で死んで逝った。

だが、731部隊は結果を出す事の無いまま、戦争は終焉を迎える。

20万人以上の無辜の犠牲の上で出来上がったおぞましき生物兵器のデータだけを残し、731部隊も歴史の闇に消え去った。



しかし彼等は、大日本帝国軍の残党は死に絶えては居なかったのだ。

50年以上の時を経て、大日本帝国軍の残党は再び動き出した。

大日本帝国による世界征服を実現するために、731部隊が遺したデータを手に、彼等は動き出した。

彼等は地震の混乱に乗じて原子力発電所を攻撃、メルトダウンを引き起こす事で日本中を放射能で覆い尽くした。



その放射能によって人が変異したミュータント、それこそが731部隊が研究していた生物兵器の完成形。

それこそが、艦娘である。


280 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:23:53.79 ID:4Yj+itrc0


50年以上の時を経て、最悪のマッドサイエンティスト集団が開発した悪魔の兵器が完成してしまった。

その後大日本帝国軍の残党は各地で女性を拉致し、強制的に艦娘に変異させ、

反乱の芽を摘む為に指揮官に恋愛感情を抱くように洗脳手術を行った。

そうして身体も心も完全に支配した後、政治家官僚に性接待の道具として利用した。

そして彼等は内閣・国会を篭絡し、秘密裏に日本を支配した。

日本は、再び大日本帝国という最も恥ずべき者達の手に落ちたのだ。

今や内閣は彼等の息のかかった極右の連中のみで構成された危険な集団に成り代わってしまったのだ。


だが彼等は其処で止まらない。彼等の野望は大日本帝国による世界の支配なのだ。

日本を支配し、横須賀に大本営という巣を作った彼等は、その魔手を世界に伸ばし始めた。

パラオ、ミクロネシア連邦、フィリピン、インドネシア、ブルネイ、パプアニューギニア、ロシア。

彼等は都合の良い理由を並べ、其の地に鎮守府を設置していく事で実質的な軍事支配を行い始めたのだ。

天皇制の下に世界を支配するために。

もしくは共産主義の下に世界を支配する為に。

もしくは全ての富を自分達が独占する為に。

もしくは日本を滅ぼす為に。

もしくは自分達が神となる為に。

もしくは深海棲艦に世界を売り渡す為に。

もしくは彼等のくだらない復讐の為に。

もしくは彼等の破滅欲求の為に。

其の為に彼等はいずれ大韓民国にも侵略し、あのおぞましき虐殺を再び繰り広げるに違いない。

彼等は、1足す1が2になるのと同じくらい当然の事として、それを確信した。

281 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:25:14.76 ID:4Yj+itrc0

ちなみに深海棲艦が何なのかは艦娘反対団体の中でも意見が分かれる所だったが、彼らにとってそんな些細な事はどうでもよかった。
282 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:30:02.49 ID:4Yj+itrc0


『轟沈轟沈!お前ら非人!!』

『轟沈轟沈!俺らは善人!!』

『轟沈轟沈!返せよ税金!!』

『轟沈轟沈!こいつは聖戦!!』

『轟沈轟沈!艦豚厳禁!!!』


正義の心の下に、彼らの思いは一つになった。

言葉が意味を無くす程に、彼らの心は一つになった。

艦娘を一刻も早く排除する。その名目の下に彼らの思いは一つになった。

娘、という名前を使うことすらおこがましいほどの害悪である艦娘に対し、彼らは豚という新たな名称を与えた。

そして彼らは武器を手にし、人の形をした艦豚達を、その正当な名称の通り豚の死体のようなモノに変えていく。

休暇中で非武装な時を狙い、集団で襲い掛かり、彼女達を次々と殺害していく。

今もこのパラオの町の片隅には、彼らによって作り上げられた艦娘の惨殺死体が未だ見つからずに転がっているかもしれない。

283 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:31:38.06 ID:4Yj+itrc0


『沈沈沈沈沈カス女!!』


『沈沈シャブシャブ沈カス女!!』


『死ね!!』


『『死ね!!!』』


『死ね!!』


『『死ね!!!』』


『死ね!!』


『『死ね!!!』』


『死ね!!』


『『死ね!!!』』


彼らは町を歩きながら、正義の経典を読み上げていく。

艦娘達がこの世に害をなす存在である事を知らしめる為に。

声を張り上げ、この世界の中心となったかのように正義を叫ぶ。叫び続ける。



その横の道路を一台の車が通り過ぎていった。


284 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:33:22.75 ID:4Yj+itrc0


軽快な音楽が車内に響き、外の罵声をいくらか掻き消す。

音楽のリズムに乗せて英語が聞こえる。

響くエンジン音。

外の罵声が遠のき、聞こえなくなっていく。

音楽のリズムを無視して独自のリズムを刻むウィンカー。

ウィンカーが切れる音。

流れる軽快な音楽。

リズムに乗せて発音される英語。

響くエンジン音。

音楽のリズムを無視して独自のリズムを刻むウィンカー。

ウィンカーが切れる音。


「そろそろだよ」

車のハンドルを握っている提督が、前を向いたまま横と後ろに声をかけた。

285 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:35:25.55 ID:4Yj+itrc0


独特な駆動音と共に、ガラスとゴムが擦れる音が空気を震わせる。

「こんにちはー。俺でーす」

車のガラスの向こうで、門が開く音が響く。

再びエンジンが音を立て、開いた道の先へと車が進んでいく。

「相変わらずここはでっかいなぁ」

遊園地に遊びに来た小学生のような気風で提督が呟いた。


ここは、パラオ特別鎮守府。

泊地が設立されるパラオにおいての特別中の特別。

その地に、提督達は十年ものの中古車で、コンビニに行くかのような気軽さで入り込んだ。

286 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:38:39.17 ID:4Yj+itrc0


「はい。到着ー」

鎮守府の敷地内に描かれた白線と白線の間で、車の動きと音楽が止まった。

古ぼけた車から、少女達が扉を開けて姿を現す。

白いワンピースを着た少女が二人。一人は麦わら帽子を被っている。

青いTシャツの少女が一人。真新しいものを見るかのように周囲を見回している。

車から出た提督が、反対側、助手席側に回り込み扉を開け、支えにならんと手を伸ばした。

助手席に座っていたのは、もう一人の青いTシャツの少女。

その両手と両脚は、機械で作られた義肢だ。

義肢の少女、伊58は提督の手の平に機械の手の平を乗せ、ゆっくりと動き始めた。

扉の縁を踏み、アスファルトに機械の足を付ける。

この瞬間、彼女のすぐ目の前を遮るかのように伸ばされた提督の左腕は無意味なものと化した。

「ここが、パラオ特別鎮守府」

目の前の建物を見上げながら伊58が呟いた。

287 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:43:59.87 ID:4Yj+itrc0


ボロボロの泊地とは違う、立派な建物だ。

この建物、否、この敷地を管轄している提督の能力を表現しているかのように立派に聳え立っている。

特別鎮守府とは、大本営から特別に許可され設立される鎮守府である。


と言うのも、大本営の方針でパラオに鎮守府を設立しない決まりがあるからだ。

深海棲艦防衛本部であり、それらの最終目標である日本は泊地よりも大きい鎮守府が設立されている。

本部相応の軍事力を持つ日本本土に比べ、外国に設立される艦娘基地の軍事力は乏しい。

日々の研究によって、深海棲艦にとって諸外国の艦娘基地侵略というのはあくまで日本に攻め込む為の足がかりに過ぎないのだと判断された。

故に、日本から離れたパラオでは鎮守府は設立されず、小規模な泊地や基地が設立されている。

武力も、人員も、過剰に与える必要は無いからだ。それが、大本営の判断だった。


だがしかし、その例外が、ここパラオ特別鎮守府だ。

過剰に思える軍事力を与えるだけの価値があると判断された唯一の例外が、ここパラオ特別鎮守府なのだ。


『パラオの英雄』。このパラオ特別鎮守府を管轄する特務提督の異名だ。

大本営上層部でその名前を知らない者は居ない。

悪名高きアイアンボトムサウンド、AL/MI作戦後期における深海棲艦の本土強襲エトセトラ。

彼はその魔の海域を『味方に一切の犠牲を出さずに』突破し、敵側の策を読み本土防衛に成功した。

戦略眼・艦隊運用能力・用兵能力に秀で、あらゆる特務提督の中でも五本の指に入るほどの実力者、文字通りの英雄。

英雄がその力を存分に振るう為に特別に許可された鎮守府。

それが、パラオ特別鎮守府である。

この鎮守府は彼の功績を讃える凱旋門であると同時に、パラオを襲う万が一の可能性すらも防ぐ最強の防衛基地なのである。


その輝かしき土地に、提督達は私服で、中古車に乗ってやって来たのである。

288 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 21:56:37.30 ID:4Yj+itrc0


『変身一発』と書かれたふざけたTシャツを着た提督は鼻歌を歌いながら扉を開けた。

建物一階、ロビーはまるで高級ホテルのように床が磨かれ、華やかさと落ち着きを高レベルで両立させている空間になっていた。


「はっちゃーんさーん」

ソファに座って本を読んでいた女性を視界に納め、手を振って呼びかける。

「はっちゃんさーん!グゥーーーーテンモルゲンッ!」

「提督さん」

「それ、気が抜けるから止めてって言ったよね」

僅かに眉間に皺を寄せた女性が本を閉じ、ソファから立ち上がる。

その様子は寝起きでもないし超スッキリもしていない。

可笑しな訛りを持った七人の愉快な小人達もいない。

狡賢い継母はいないし謀略も何も無いし幾度も死にかけた経験も無い。

だが金色の髪と碧眼、そして眼鏡で飾られた女性の顔は、まだ少女と呼んでも違和感が無いほどに幼く、また美しく整えられてもいた。



彼女の名前は伊8。巡潜三型二番艦潜水艦娘伊8。

彼女もまた、艦娘である。


289 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/18(月) 22:03:07.05 ID:4Yj+itrc0

☆今回はここまでです☆

祝 CSMカイザギア予約開始
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 22:37:45.60 ID:SVtAKr2co
おつきゅん
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 10:21:55.31 ID:seJI69HIo
おつ、何だが何か行き成り内容がアレっぽくなったんだが大丈夫か?
最初はのっとりされたのと思ったゾww
292 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:12:14.62 ID:jCTtTKp70
正真正銘純度100%の>>1です。フュージョンライズ要素はありません。
諸事情により(いつもに比べて)早めにできたので今から投下を始めさせて頂きます。
293 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:16:22.93 ID:jCTtTKp70


提督「でもよっちゃんはよっちゃん様って言わないと怒るから、はっちゃんははっちゃんさんって言った方が失礼じゃないんじゃないっすか」

U-511「よっちゃん…?」

伊401「するめじゃなくて酢漬けなの?」

伊8「世直●マンか」

伊401「世直●マン」

提督「ラッキ●マンの敵キャラ」

伊8「あれ、後で味方になるよ」

提督「え、マジすか。あの時代のジ●ンプ敵が味方になる展開多すぎやしませんかね」

伊8「雷電」

提督「敵のハリアーだ」

伊8「それは違う。色々と違う」

294 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:21:22.49 ID:jCTtTKp70


伊58「…あの」

伊8「あ」

伊8「はじめまして。私は伊8。はちだよ」

伊58「はち………」

伊8「と言っても」

伊8「前に伊8型に会った事あるのかな?」

伊58「…うん」

伊8「じゃあ」


伊8「面倒な事は抜きにしましょう」

提督「面倒ってあーた」


伊8「それより早く行きましょう。友提督も待ってるし」

提督「ん…まぁそうっすね」

295 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:29:06.06 ID:jCTtTKp70


如月「8さん。あの…頼んでいたものって届いてますか?」

伊8「うん。千歳さんが用意してくれたよ」

如月「ありがとうございます」

伊8「千歳さんから聞いたけど、凄いね如月ちゃんは。もうあんな本読むんだ」

如月「勉強しなくちゃいけませんから。色々と」


睦月「如月ちゃん!!」

如月「!!」


提督「あぁ、こんにちは睦月さん」

睦月「こんにちは如月ちゃん!!」

如月「こんにちは。睦月ちゃん」ニコッ

提督「………こんにちはー睦月さーん」

睦月「提督さんもこんにちは!」

如月「………」

睦月「如月ちゃんから頼まれてた本、用意してあるよ!!」

睦月「これと、これと…」


曙「これとこれも追加」

曙「睦月、アンタ先走りしすぎ」

296 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:32:24.22 ID:jCTtTKp70


如月「!こんにちは、曙ちゃん」

曙「久しぶりね。如月」

曙「潮から聞いたわよ。あんた秘書艦になれたんですってね」

如月「えぇ。お陰さまで」

曙「第…四、秘書艦だっけ?那珂型と羽黒型と赤城型の次だから」

如月「そうね。第四秘書艦」

曙「第四か…まぁた結構数がいるわね。普通そんなに秘書艦置かないわよ」(うちの倍よ倍)

提督「補佐も入れればもっといるよ」

曙「へぇ…まぁとにかく、おめでとう。如月」

如月「ありがとう、曙ちゃん」


睦月「何か難しそうな本だけど、これって秘書艦業務と関係あるにゃしか?」

如月「あぁいえ。これは私個人でお願いしていたもの。秘書艦業務とは関係ないわ」

曙「個人的に…教科書と参考書と、赤本をねぇ…」

如月「艦娘だからってお勉強を疎かにはできないもの」

曙「それもそうだけど、それにしてもレベル高すぎじゃない?」

曙「これ、高校とか大学とか書いてあるんだけど」

睦月「如月ちゃん頭いいんだね!」

如月「…そんな事は無いわよ。ちょっと先が気になってるだけ」

曙「………」

如月「………」

297 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:35:15.92 ID:jCTtTKp70


曙「如月」

如月「?」

曙「あまり無理な事はするもんじゃないわよ」

曙「………と言って」

曙「止まるもんでもないとは思うけど」

睦月「?」

如月「やっぱりわかっちゃう?」

曙「ここ数ヶ月間、毎週のように話してればね」

曙「…ほんとアンタは、何と言うか」ヘッ

如月「誰かに影響されちゃったのよ。ねぇ、曙ちゃん?」

曙「どっちかっていうとそっちのアホのせいでしょ」


提督(アホでーす)ヒラヒラ

曙(本当にアホじゃないかコイツ)

提督(酷いぜ曙太郎)

曙(お前後で殺す)


如月「どっちもよ」

298 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:39:26.79 ID:jCTtTKp70


如月「曙ちゃんも司令官も」

如月「私のお尻を叩いてくれなかったら今の私はいなかったわ」

曙「私はノーマルよ」

如月「っ曙ちゃんがそうって意味じゃなくて」

曙「え?」

299 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:43:31.48 ID:jCTtTKp70


曙「叩かれてはいるの?」


U-511「如月、お尻叩かれてるの?」


如月「………」


伊8「………え?何で顔赤くするの?」


曙「」


曙「おい」

提督「赦しは請わぬ」

曙「何やってんのアンタ駆逐艦娘にお前」

提督「赦しは請わぬ」

曙「赦しは請わぬじゃねぇよおい、クソアホ提督おいコラ」

提督「赦しは請わぬ」

300 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:47:00.73 ID:jCTtTKp70


漣「はいはい。真昼間からド下な話はやめちくりー」

曙「休日の真昼間からホモビデオの音声抜き出してた奴が何を言ってるんだか」


漣「赦しは請わぬ」

曙「てめぇ」


漣「こんにちは、提督様。うちのボーノがとんだご迷惑をおかけしやがっておりますです」ペコリ

提督「こんにちは、漣さん」

提督「ボノロンは森の戦士だからこのくらい血気盛んでいいんじゃないっすかね」

曙「誰がデビルリバ●スか」

漣「デビルリバ…あぁ、だから相方が犬なんだあれ」

提督「そう。彼はジャ●カルの生まれ変わりなんだロン」

漣「やはりボノロンは北斗●拳」

曙「原●夫に怒られろお前ら」

301 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 21:58:02.47 ID:jCTtTKp70


伊58(な、何これ)

伊401(提督、ここだといつもこんな感じだよ)

伊58(え、えぇ…いつも?)

伊401(うん)

伊58(えぇぇええ…あの…)


『だったら、死にたいなんていうんじゃねぇよ。諦めるんじゃねぇよ』

『何を犠牲にしてでも、どんな手段を使ってでも生き延びるんだ』


伊58(あの提督が…)


漣「という事はあのデカイ木の中には」

提督「ラオ●の死体が埋まっている」

漣「立派な漢立ちの結果ですか。拳は枝葉となって天高く掲げられたのですか」

曙「アンタら子供向け絵本の世界を核の炎で包んで楽しい?」

提督「カクノ ホノオデ タノシイナ」

漣「おうしあわせエンドやめろや」


伊58(これなんでちか?)

伊58(えぇえええ…えぇえええええええーーーー………)

302 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 22:08:20.74 ID:jCTtTKp70


提督「で」

提督「何か凄いわちゃわちゃしてきたけど、漣さんはどんな用でここに?」

漣「あぁそうですね。外野が付いて来ないから本題に入りましょう」

伊8(…あれに付いて来いと?)

伊401(話に入らせる気無かったよね?)


漣「ご主人様がお部屋でお待ちです…が」

漣「図書室までお見送りしてから来ますよね?多分」

提督「うん」

漣「それじゃあ、お荷物はお預かりします」

提督「え、いやいいよこれくらい。自分で持ってるから」

漣「いえいえ。提督様はご主人様の無二の親友」

漣「そんな大事なお客様のお手を煩わせるわけには参りません」


漣「つーかさっさと準備してさっさと始めたいんです。だから早く荷物よこせよこのロリコン」

提督「ロリコン!?」


如月「漣ちゃん。流石に今の言葉は聞き逃せないわ」

漣「オゥ林田」


如月「司令官は赤城さんとかにも手を出しているからロリコンじゃなくてただの節操無しだわ」

漣「それもっとダメじゃね?」


提督「否定はしねぇ」

曙「建前だけでもツッこめよ」


提督「まぁそういう事ならお願いしますよ。漣さん」(このキャリーバッグに入れてありますんで)

漣「はい確かに。それじゃあボーノ、提督様の案内ヨロシクゥ!」


曙「はいはい」ゲシッ

提督「膝裏キックナンデ!?」

伊401(多分無視したからだと思うんだけど)


漣「あとムッキーはヒトヒトサンマルから遠征任務だよね?見送った後食堂でご飯食べて準備してね」

睦月「りょ、了解にゃし」

漣「じゃ、こっちは準備進めておくんで早めに来てくださいねー」ゴロゴロ

303 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 22:15:39.15 ID:jCTtTKp70


伊58「………」

提督「なんて様だ。まるで嵐が過ぎ去ったかのようだ」

曙「誰が原因だと思ってるのよ」

提督「わし(53)」

曙「クソが」

伊401(曙ちゃんも原因なんだよなぁ)

如月(曙ちゃんも原因なのよねぇ…)

伊8(曙も原因だと思うんだよなぁ…)


伊8「じゃあ、ちゃちゃっと行きましょう。ゴーヤ、大丈夫?」

伊58「………」

伊8「…ゴーヤ?」


U-511「でっち」

伊58「!!」ビクッ

U-511「呼ばれてる」


伊58「あ…あぁ、うん!何の話でちか!?」

伊8「…まだ歩くけど、艤足は大丈夫?辛くない?」

伊58「大丈夫でち」

提督「辛くなったらすぐ言ってくれよ」

伊58「大丈夫だってぇ。それより早く行こう?」

304 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/09/26(火) 22:31:04.66 ID:jCTtTKp70

☆今回はここまでです☆
305 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 21:48:32.11 ID:blNRNUc70
>>1です。
投下を始めさせて頂きます。
306 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 21:49:58.20 ID:blNRNUc70


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



307 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 21:56:07.87 ID:blNRNUc70


睦月「あ」

睦月「ここここ」チョイチョイ

提督「おう」

伊58「…ここが」


伊58「ここがハチの図書室なんだ」

U-511「ここがはっちゃんの居場所?溜まり場?」

伊401「凄いね。なんか学校みたい」

如月「あぁそれわかるわ。中も本当にそんな感じよ」

伊401「そうなんだ!んー、なんか懐かしい気持ちになってきた」


伊8「私の趣味で作ってもらったようなもんだから置いてる本の内容偏ってるかもしれないけどね」

伊401「漫画ある?」

伊8「あるよ」

伊401「なら大丈夫」

308 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:04:44.73 ID:blNRNUc70


提督「じゃあ俺は友提督んとこ行くから。何かあったら携帯に電話ちょうだいね」

伊401「はーい」

提督「睦月さんも、遠征任務気を付けてね」

睦月「…早く着いたし、ちょっとぐらいここにいてもいいんじゃ」

提督「だーめ。仕事でしょ?スケジュールに余裕を持った行動をしなさい」

睦月「いいじゃん!久しぶりに如月ちゃんに会えたんだし、ちょっとぐらい!」

曙「………」

提督「それで遅れたら他の人に迷惑かかっちゃうよ?」

睦月「でも、時間に余裕はあるし」

提督「つったって飯食ってってやってたらあっという間だよ」

睦月「ご飯なんてパパっと食べれば大丈夫にゃし!」

提督「すぐ身体動かす事になるんだからゆっくり食べなきゃ、後で辛いよ?」

提督「遠征任務でも、体調は万全にしておかないと何があるかわからないんだし…」

睦月「でもぉ…」


如月「………」

如月「司令官」チョイチョイ

提督「ん」

309 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:05:33.86 ID:blNRNUc70





如月「ん」チュッ




310 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:07:05.99 ID:blNRNUc70



睦月「!?」



伊401「!?」



伊58「!?」



U-511「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」



曙(やりおった)



伊8(やりおる)


311 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:14:05.12 ID:blNRNUc70


提督「お前」

如月「そろそろ行かないと、友提督さんが待ちくたびれちゃうわ」


提督「え」

如月「早く行ってあげて」


提督「あ、あぁうん。そうだな」

如月「私は今のでしばらくは我慢するから」

如月「また後で…」



「もぉっと、深いの、お・ね・が・い・ね♪」ペロ



伊401「深っ…」

提督「」

曙(やはりロリコン)

312 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:17:10.83 ID:blNRNUc70


伊401「ふか…ふか…ふか…まる…」

U-511「がばいと……がぶりあす……」

伊58「おう二人とも気をしっかり保つでち」

伊401「ま、まうす…まうす…」



伊401「まうす、とぅ…まうす……まうす……みっ」



伊8(いかん!!)ハッ

伊58(これ以上はしおいを再起不能にしてでも!!!)

313 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:21:20.71 ID:blNRNUc70




伊401「………つ●まんぐろーぶ」




伊58「っしゃぁ!よく耐えたぁ!!ミッツ●マングローブ!!ミッツ●マングローブなら大丈夫!!!」グッ

伊8「ブルーライトヨコスカ大本営ー」フリフリ



曙「これがこの世の終わりの光景か」


314 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:28:21.29 ID:blNRNUc70


如月「睦月ちゃんも」

睦月「え」

如月「司令官さんと友提督さんを困らせちゃ駄目よ」

如月「睦月ちゃん、今度の遠征任務の後の予定は?」

睦月「え、ないけど」

如月「よかった」ニコッ

如月「私達今日はずっとこっちにいるから、また後でゆっくり時間作ってお話しましょう?ね?」

睦月「う、うん。そうだね」


提督「ん、うん」

提督「ユー、しおい、ゴーヤ。それじゃあ何かわからない事があったらハチさんに聞けよ」

伊401「え」

伊58「あ」

U-511「うん」

伊8「任されました」

提督「じゃ、俺は友提督のとこ行くから。気をつけてな」

伊401「はーい」


如月「司令官」

提督「どしたの今度は」

如月 ( ´∀`)b

提督 ( 0*0)?

提督 ( 0*0)b


睦月「………」

伊401「………」

U-511(…何だろう。この気持ち)

315 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:32:30.62 ID:blNRNUc70

>>314 ミスしました。修正します。



如月「睦月ちゃんも」

睦月「え」

如月「司令官と友提督さんを困らせちゃ駄目よ」

如月「遠征任務の後って今日の予定はあるの?」

睦月「え、ないけど」

如月「よかった」ニコッ

如月「私達今日はずっとこっちにいるから、また後でゆっくり時間作ってお話しましょう?ね?」

睦月「う、うん。そうだね」


提督「ん、うん」

提督「ユー、しおい、ゴーヤ。それじゃあ何かわからない事があったらハチさんに聞けよ」

伊401「え」

伊58「あ」

U-511「うん」

伊8「任されました」

提督「じゃ、俺は友提督のとこ行くから。気をつけてな」

伊401「はーい」


如月「司令官」

提督「どしたの今度は」

如月 ( ´∀`)b

提督 ( 0*0)?

提督 ( 0*0)b


睦月「………」

伊401「………」

U-511(…何だろう。この気持ち)

316 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:35:54.71 ID:blNRNUc70


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



317 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:44:02.46 ID:blNRNUc70


睦月「提督さんはいいよね」

提督「何が?」

睦月「何が、って…」

提督「如月と一緒にいる事が?」

睦月「提督さんはずっと如月ちゃんと一緒にいられるからさ」

睦月「睦月は、こうやって来てくれた時とか遊びに行く時にしか会えないのに」

提督「もっと遊びに来てもいいんだよ?俺はいつでも歓迎するけど」

睦月「任務が忙しくて、そういうわけにもいかないじゃん」

睦月「だからさ。提督さんが羨ましい」


提督「…羨ましいかあ」

提督「…じゃあさ」

提督「睦月さんはどうしたらいいと思う?」ニコッ


睦月「…何を」

提督「俺さ」

提督「如月が俺の所にいる事が、本当に正しい事なのかがわからないんだ」


曙「………」ピク

提督「睦月さんは、如月と一緒にいたいんだろう?」

提督「…だったら、如月はこの鎮守府に異動した方がいいんじゃないかって考えてる」

提督「俺は未だ特務中佐の特務提督、泊地もボロボロだ」

提督「でも、友提督は『パラオの英雄』なんて呼ばれて、こんな立派な鎮守府も持っている」

提督「アイツなら、如月を俺以上に上手く戦術に組み込んで、如月を活躍させてあげられるかもしれない」

318 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:46:18.74 ID:blNRNUc70


提督「そうしたら、もしかしたら如月は」




曙「 黙 れ 」




提督「!?」

曙「睦月も、あまりわがままを言わないの」

睦月「でも」


曙「でもじゃない!」


睦月「………」

曙「…睦月。私は、ちょっとコイツと話があるから。先行ってて」グッ

睦月「…うん。わかった」

319 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:47:48.39 ID:blNRNUc70


曙「何であんな事を言ったの」

曙「本気で異動した方がいいと思った?それとも義姉へのリップサービス?」


提督「俺は本気だった」

曙「でしょうね」

提督「こっちの鎮守府で活躍すれば注目だって集まる」

提督「そしたら如月の世間の評価だって変わるかもしれないって考えたんだ」

提督「『パラオの英雄』が指揮する艦隊の一人だ。誰も悪くは言えない!」

提督「だから」



曙「アホか」

提督「アホって…」



曙「何でアンタ達二人とも、自分の事ばかりで」

曙「如月の事を考えないの?」

320 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:51:28.39 ID:blNRNUc70


提督「考えてるさ!」

提督「さっきの事もそうだし、こっちには睦月さんも曙さんもいる!」


曙「そういう事を言ってるんじゃない」


曙「気付いてないって事は無いでしょう?」



曙「如月は、アンタの事が好きだって」



提督「………」

提督(また、それか…)



曙「睦月が来ればそりゃ話はする」

曙「他の人から話題振られれば受け答えだってするでしょ」

曙「遊びに誘われれば一緒に遊んだりもするでしょ」

曙「それが人と人のコミュニケーションってもんなんだから。そんなもん私でもわかるわよ」




「でもね。あの子は」


「できる事ならずっと、アンタといたいと思っている」


「私だってそうだって気付けたのに、アンタが気付いてないわけないでしょ?」



321 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:53:57.60 ID:blNRNUc70


提督「………」

曙「私だって…」


曙「……………」



曙「ごめん。さっきの言葉、撤回するわ」

曙「私も」

曙「私の事しか考えていない」



提督「え?」

曙「私はね」




曙「打算で、如月に近付いたのよ」



322 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 22:57:13.07 ID:blNRNUc70


「この鎮守府に配属されて、色々あって」

「如月の、あの事を知った時」

「胸が痛くなった」

「悲しくなった」

「嫌な思い出が沢山出てきた」



「私のじゃない」

「………駆逐艦曙の記憶が、頭の中から湧き出てきた」


323 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:03:09.23 ID:blNRNUc70



「スラバヤ沖海戦」



「…珊瑚海海戦」



「駆逐艦曙は、ずぅっと悪口ばかり言われてきた」



「敵前逃亡だの」



「作戦が失敗したのは全部曙が悪いだの」



「弾薬消耗数報告書に曙だけ記載しないだの」



「空母翔鶴が沈んだのだって!」



「全部何もかも駆逐艦曙が悪いって!!」



「…そう、言われ続けた」



「死に物狂いで戦って、それでも、何にもならなかった思いが」

「その時の思いが、記憶が、恨みが、私の頭の中でずぅっとぐるぐる渦巻いている」

「如月の事を知った時」

「あの、どうしようもない」



「怒りと」



「やるせなさと」



「もう色々が」



「ぐちゃぐちゃになって湧き出てきた」



「あの子は、あの時の駆逐艦曙と同じ」

「悪意を一身に受けて、何もできないで泣くしかできない」

「何を言われても、何も言い返せない。その権利すらない」


324 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:04:40.01 ID:blNRNUc70



「例え何て言ったって」



「何をしたって」



「誰も考えを変えようともしない」



「誰も見向きもしない」



「誰も評価をしてくれない!」



「労ってもくれない!!」



「泣いたって!」



「怒ったって!」



「焦ったって!」



「悔しがったって!」



「何したって!!もうどうにもならない!!!」




「…何も変わらないのよ。艦娘如月も、駆逐艦曙も」

325 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:07:16.82 ID:blNRNUc70


「如月を見ていると、その記憶が嫌でも湧いてくる」

「私はその、嫌な思いを消したいから」

「如月を支えて、もしあの子を笑顔にできたら」

「その嫌な思いを過去のものとして、忘れられると思って、如月に近付いた」


「何も言わずに、メアド書いた紙を渡して」

「『何かあったら相談に乗る』ってだけ伝えて」

「…あの子は律儀にメールしてきたわよ」

「色々な事をメールしてきてくれた」

「私も必死になってメールを返したわよ」

「あの子を笑顔にするのは私の役目だって、勝手にそう思ってたから」


「相談もされたし、それ以外の色々な話もしたわ」

「漫画の話とか趣味の話とか流行のアクセサリーの話とか」

「これからの事、戦争が終わったら何をするかとか」

326 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:10:29.67 ID:blNRNUc70


曙「そうやっている内に少しずつ考えるようになった」



曙「私は、余計な事をしたんじゃないかって」

曙「私なんて、いらなかったんじゃないかって」



提督「そんな事は無いと思うよ!」

提督「如月とメールやり取りしてるってのは聞いてたし、メール打ってるのを見た事もある」

提督「義務だのでやってる感じでもなかった」

提督「楽しそうだなって、横から見てて思ったよ?」



曙「でもね!!!」



曙「私と如月の間にいつもアンタがいた!!!」

曙「アンタが読んでるから、アンタが好きそうだから、アンタと一緒にいたいから」

曙「いつもアンタが、私達の話の中にいた」

327 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:12:50.93 ID:blNRNUc70


提督「………」

曙「如月にとっての、アンタの存在ってのがとんでもなく大きいって事、わかるでしょう?」

曙「あの子は、アンタの事が好きだって、わかるでしょう?」



曙「睦月も私も、如月にとっては何の違いもない」

曙「ただ、近くに来たから話相手に『なってあげてる』だけ」

曙「本当は、アンタの傍にずうっといたいんだ」

曙「だってあの子はずっと、アンタの事を第一に考えているって、わかっちゃったんだもの」



提督「………」

328 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:17:56.75 ID:blNRNUc70


曙「クソアホ提督」

曙「アンタから見て、今の私はどう映っているの?」

曙「私と如月の事を、どう思っているの?」


提督「いい友達だと思っている」

提督「曙さんは打算だなんだっていうけど、絶対そうじゃない」

提督「曙さんは、凄い優しい人なんだって、思った」

提督「如月は本当にいい友達を持ったんだって、今話を聞いてて思ったよ」

提督「………本当に、本当にありがとう」

曙「そんな言葉を聞きたいんじゃない。私は自分勝手な理由で友達をやっているだけ」

曙「如月を幸せにして、それで自分の嫌な気持ちを消して自己満足したいだけ」

曙「…如月の事なんて、何も考えていなかったのよ」

曙「こんなの、優しさなんかじゃない」

曙「自分が、何かをできるなんて思い上がっていただけなのよ」

曙「…ほんと、馬鹿みたいに」

提督「………」



曙「私は、アンタにはなれないし」

曙「如月は、もうアンタ無しじゃ生きられない」


329 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:20:44.49 ID:blNRNUc70



「如月は」


「艦娘としての明るい未来なんて、もう一切考えていない」


「そんなものはもう二度と手に入らない」


「もうどうにもならないものだって」



「諦めて」


「捨てたのよ。そんな未来」



「あの子は」


「家族と、アンタの傍にいる事以外」



「もう何の」


「夢も、希望も、持ち合わせていない」




「だから、アンタと引き換えに得られる名誉なんて…ありがた迷惑でしかないのよ」



330 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:31:41.60 ID:blNRNUc70


曙「例え言葉にしていなくても、あの子の気持ちは絶対に変わらない」

曙「その気持ちを、気付かないフリをするな。拒否しようとするな」

提督「………」

曙「アンタのあの言葉は、如月の気持ちを裏切ってるのと同じよ」

曙「アンタが一番言っちゃいけない。最低の言葉」

曙「もしアンタが、このまま如月の気持ちを裏切ろうって考えているんだったら」


曙「私は、アンタをブッ殺すわ」



曙「アンタだけじゃない。アンタの周りの秘書艦、羽黒も赤城も、那珂も全員全員ブッ殺してやるわ」

曙「アンタの周りの人間、全員ブッ殺してやるから」

曙「如月の友達として」

曙「如月を裏切ったら、絶対、絶対ブッ殺してやるから」



提督「………」

曙「それが、アンタになれない私が唯一、如月にしてあげられる事」

曙「覚え、ときなさい。アンタがあの子を裏切ったら、うらぎったら」フルフル

曙「絶対、ぜったい」ポロポロ

提督(曙さん…)




曙「わたしが、アンタを、ブッ殺して、やるからぁ!」ダッ




ダダダダダダダダ!!!!

提督「曙さん!!」

提督「……………」

331 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/08(日) 23:33:56.36 ID:blNRNUc70

☆今回はここまでです☆

ぼのらぎ流行しませんかね
332 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:27:26.91 ID:O/psqKXP0
>>1です。
秋刀魚祭りお疲れ様でした。私は今回完走を目標に出撃を繰り返し、無事初完走できました。
そして来月のイベントに備えて、備蓄と演習を回す日々に戻ります。

それでは今から投下を始めさせて頂きます。
333 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:28:42.88 ID:O/psqKXP0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



334 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:31:17.37 ID:O/psqKXP0


提督「おっーす」ガチャ

友提督「おう」

友提督「聞いてたより遅かったな」

提督「あーごめんごめん。色々見てたら遅くなった」


漣「あれ、ボノロンは?一緒に来ると思ってたんですけど」

提督「あぁー…」


提督「俺ここまでの道ならわかるし、睦月と話する事があるって言うから途中で別れちゃったわ」



雲龍「遠征があるのに?」

提督「うん。まぁ、色々話したい事があるんだと」



雲龍「あの二人がそんなに話してる所見た事がないわ」

提督「まぁ色々あるんですよ多分」

雲龍「ふぅん………」



提督「それより準備は?」

漣「できてますよ」

提督「あぁありがとう」


友提督「それじゃあ、始めるか…」

提督「あぁ…」

335 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:32:25.34 ID:O/psqKXP0




友提督「勝てば天国」




提督「負ければ地獄」




漣「知力体力時の運」




雲龍「早く来い来い木曜日」



336 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:33:31.84 ID:O/psqKXP0




「カー●ィの」



「エ●●イド………!!」ピコーン



337 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:34:29.64 ID:O/psqKXP0




雲龍「チャージ三回」



提督「フリーエントリー!!」



友提督「ノーオプションバトル!!」



漣「やってやる!やってやるぞぉー!!」



338 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:35:01.13 ID:O/psqKXP0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



339 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:37:04.82 ID:O/psqKXP0


友提督「………」カチカチ

雲龍「………」カチカチ

漣(お、あとパーツ一個)カチカチ



提督「……………」カチカチ


340 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:39:10.10 ID:O/psqKXP0


「気付いてないって事は無いでしょう?」

「如月は、アンタの事が好きだって」


「あの子はできる事ならずっと、アンタといたいと思っている」

「あの子は、家族とアンタの傍にいる事以外、もう何の夢も希望も持ち合わせていない」



「あの子の事を大切に思っているのなら、ちゃんと向き合ってあげて」


341 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:42:42.75 ID:O/psqKXP0


提督「………」グッ



漣「ぬはははは!!とったぁ!!!」テレーン

提督「あ」



友提督「やっべやっべハイドラやっべ」

雲龍「まだ慌てるようなあわわあわわわわわわわわ」

提督「なんか殺る気満々じゃありませんこと漣=サン!?」

漣「モチよ!これこそハイドラの楽しみ方でんがな!!」

漣「見せてあげよう!楽太の雷を!!」


漣「ファイナルベントォー!!」ズバーン!

提督「うぉおい!?俺のデビルスターーーー!!!!」

漣「フフフ…デッドエンド!!」ズガーン!



漣「さらにもう一発」ズン

提督「ぬわー!?!?」



友提督「青玉が飛んでいく…時速200kmに撥ねられ飛んでいく…」





雲龍「隙あり」ポイ

友提督「 ボ ム ー ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」




342 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:43:29.15 ID:O/psqKXP0


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・



343 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:45:13.58 ID:O/psqKXP0



漣「フフーン!」



漣「ライバルは皆ブッ壊しました!これで漣の勝利は確実です!」

漣「ゼロヨンだろうがレースだろうがハイジャンプだろうがバトルロイヤルだろうが何でもきてみんしゃい!!」

344 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:46:23.29 ID:O/psqKXP0







「VSデデデ」テテーン






345 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:47:52.50 ID:O/psqKXP0



漣「」

漣「オーウイェー…」



友提督「よろしく」ポン

提督「シクヨロ」ポン

雲龍「夜露死苦」モニュ


提督「初期マシンじゃあの大王に勝てませんからねぇ」

友提督「デビルスターあったら違ったかもしれませんがねぇ」

雲龍「ラピュタ王に全部壊されましたからねぇ」

漣「や…」


漣「や、や…」

346 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:50:31.74 ID:O/psqKXP0




漣「 や っ て や ろ う じ ゃ あ り ま せ ん か ー ! ! 」




漣「覚悟しやがれぇこのクソペンギンがぁー!!」ドルルルルルルルルルルルル


漣「ペンギンが屋外に出てくるんじゃねー!!」


漣「ペンギンはー!!!」


漣「ビルの中でー!!!」






漣「エログッズ売ってりゃいいんだよォォォォォォォォォォォーッ!!!!!」






提督「はははははははははは」

提督「ははは…」


提督「……………」

347 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:52:00.22 ID:O/psqKXP0



「如月ちゃんは、あなたの事を愛しているわ」

「人として、異性として、心の底から愛している」

「そんなあなたが、居なくなったら、もう二度と会えないと知ったら」

「遺された如月ちゃんは…もう二度と立ち直れなくなる」



「別の男を好きになるまで、俺の代わりにあいつを支えてください」

「俺じゃなきゃいけない理由なんて、どこにもない」

「大事なのは」

「あの子の心の支えになれる存在、であって」

「俺じゃない」


348 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:55:01.14 ID:O/psqKXP0


提督(そう、俺じゃない)

提督(俺である必要は無い)

提督(いや…そもそも…それを…わかっていて……)

提督(何で………………なんだ?)



雲龍「……………」ジッ


349 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 21:57:13.97 ID:O/psqKXP0


ズバーン


提督「あ」

漣「だめでしたーてへぺろ☆」

友提督「ハハッワロス」

漣「………まぁこんな事もあります!それより次行k」
雲龍「ゆるさないわ」

漣「え?」


雲龍「提督のデビルスターと」

雲龍「私のワゴンスターと」

雲龍「友提督のウィリースクーターの恨み」ガシッ

漣「ちょっウィリーは雲龍さんが、あ、アーッ!!!!」ズルズル


バタン


友提督「………どしたんだろ」

提督「………どしたんだろね」

友提督「…次は、漣にパーツ取らせたらダメだな」

提督「そうだな」

350 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:03:24.66 ID:O/psqKXP0


提督「………」

提督「なぁ友提督」

友提督「ん」

提督「お前今何人くらいに手付けてんの?」

友提督「あ?」

提督「艦娘」

友提督「嫁だけだよ」

提督「そうなの?」

友提督「そうなのって、お前と同じ位って思われるとちょっと困るぞ」

提督「そう言われると何も言えねぇ」


友提督「お前はどうなんだよ」

提督「………」

友提督「………おい?」

提督「………50は越えてる」

友提督「…マジかよ」

提督「駆逐艦娘(如月)に手出してから、何かもう色々とズブズブになっちまって」

友提督「お前、死ぬなよ」

提督「どうだろうな。死ぬかもしれねぇ」

友提督「おい、国防の任に就いた特務提督が部下に手を出しまくって腹上死とかネタにしかならねぇぞ」

351 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:07:40.75 ID:O/psqKXP0


提督「……………」


提督「俺には、よくわからねぇ」

友提督「何が?」

提督「艦娘の…何ていうの?性欲?」

提督「他の所も、上から下まで、みんなそういう話に興味あるもんなのか?」

提督「それでみんな、そこの提督の事が好き、って」

提督「んなラノベみたいな事が…」

友提督「………」


提督「噂だと洗脳手術で恋愛感情を植え付けてるとか聞くけど」

友提督「…お前な。俺にはその艦娘の嫁がいるんだぞ?」

提督「ただの噂だよ。信じちゃいないけど、聞いた事くらいあるだろ?」

友提督「まぁな」

提督「信じちゃいない…でも、その事を考えれば考えるほど、よくわからなくなる」

提督「人の感情を技術でどうこうできるっつってもさ、何でわざわざ恋愛感情なんだ?」

提督「命令違反を防ぐためとかだったら、いっそ感情を全部消してしまえばよかったのに」

提督「もし本当に感情を洗脳で何とかしてるんだったら、それをしない理由ってのがわからん」

提督「…そもそも」

352 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:16:16.46 ID:O/psqKXP0


(もしそんな、本当に人の感情を技術で操れるんだったら)

(対象とするべきは、むしろ………)




(人間、そのものだ)


(艦娘じゃなくて一般人を、片っ端から洗脳してしまえばいいんだ)


(大本営に逆らえなくなるように、全員まとめて…)




(艦娘反対派の奴らが言うとおり)

(大本営に、全国から女性を拉致して艦娘に仕立て上げるくらいの力があるなら、それができないとは言い切れない)

(そうすれば…そうしておけば…)

(あんなクソみてぇな反対集団の奴らもみんな…いなくなる)

(…如月だって、今よりマシな人生を送れた)


(でも、大本営はそれをしなかった。できるのなら、そうしていたはずなのに)

(それが、『大本営による洗脳説』を否定できる、不可逆の証拠になる)



(でも、そうだとしたら………)


353 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:20:51.11 ID:O/psqKXP0


提督「………」

友提督「おい、大丈夫か」

提督「………」

提督「艦娘がどうして人の身体を持っているのか」

提督「どうして若い女性の姿をして…しなければいけなかったのか」




提督「どうして艦娘は」


提督「艦『娘』なんだ?」


提督「どうして男じゃ駄目だったんだ?」


提督「どうしてただの兵器じゃ駄目だったんだ?」


提督「どうして若い女性なんだ?」




提督「どうして」


提督「みんな」


提督「好きだから、なんて、言うんだよ」



354 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:23:18.12 ID:O/psqKXP0


友提督「その話を俺にしてどうしたいんだよ」

提督「わからねぇ。わからねぇけど」

提督「自分だけで考えてたらどうにかなっちまいそうだったから」


友提督「納得できないのか。自分が好かれているって事が」

友提督「根本はそこだろ?」


提督「………」

提督「納得できない」

提督「…何か」

提督「怖い。怖いんだよ」

友提督「怖い?好かれている事が?」

提督「求められている事が」

提督「わからねぇんだよ。あいつらが何を考えているか」

355 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:26:26.93 ID:O/psqKXP0



「何で」



「何で俺なんだ?」



「何で俺を選んだ?」



「何であいつらは俺を選んだんだ?」



「何で俺について来ているんだ?」



「何で俺じゃなきゃ駄目なんだ?」



「俺が」



「俺が何をした?」



「何を考えても」



「何を聞いても」



「わからねぇ」



「納得できねぇ」


356 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:27:55.08 ID:O/psqKXP0




「何がどうなってるんだよ」




「誰か」




「誰か説明してくれよ」



357 : ◆ZFgfLAc.nk [saga]:2017/10/19(木) 22:37:48.00 ID:O/psqKXP0

☆デデデン!(今回はここまでです)☆

最近色々賑わせるアレやコレがありますが、
今回触れた艦娘とは何かという所は真面目に考えたので例えどれだけ時間がかかってでも書ききりたいです。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 14:55:37.87 ID:utD77MSQo
おつ
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 09:04:48.04 ID:oS+mrgIWO
乙!
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