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満太郎「この娘って!?」錠二「そうだ、ミューズの小泉花陽だ。」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/05(日) 22:15:31.82 ID:nkTmqI3J0
喰いしん坊!×ラブライブです。

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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:26:32.87 ID:kK/6TlUEo
>>1
止めろアンチ
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:37:55.20 ID:HGLqKHcP0
最近>>2みたいな変なのいるからスレタイとかでクロス作品って分からないようにしといたほうが良いかもよ、期待してる
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/05(日) 22:38:53.65 ID:nkTmqI3J0
花陽(私は小泉花陽です。今日お腹が空いてご飯食べれるお店いったらそこのチャレンジでおにぎり食べに来ようとしたら、ある人に声をかけられました。)

おにぎり、ご飯専門店「およねさん」

花陽「マスターこんにちわー。」

店主「やあ、花陽ちゃんこんにちわ、今日も賞金とご飯食べに来たのかい?」

花陽「そうですよ(^▽^)/ここおにぎり美味しいし、ボリュームもあるから。」

店主「うれしい事言ってくれるねー、じゃあ特別メニューやってみるかい?」

その時

???「オヤジ、今日もチャレンジしに来たぜ。」

???「錠二、今度こそは負けないぜ!ん?おい錠二。」

錠二「ん?なんだ?満太郎?」

満太郎「あの、女の子って?ラブライブのミューズのかよちんじゃねえのか?」

錠二「ああそうだ、俺はここで、小泉花陽が活躍してるのを耳にして、来たが噂はほんとだったみたいだ。後、俺は花陽を見たのは初めてだ。」

満太郎「ああ、俺もだ、後かよちんの喰い動画は、YOUTUBEで見たことあるが、かなりすごかったな。大食いの素質があるぐらい。」

錠二「俺もそう思った、後正道喰いを極めてるからな。後俺は花陽と会って勝負したくてここへ来たのだ。」

花陽(あの人って!?あのTFFの大原満太郎さんとハンター錠二さん!?)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:43:03.85 ID:JfK0tXDUO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:43:11.36 ID:GD07eSAYO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:43:20.65 ID:RqaNzJ1zO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:43:27.81 ID:pxYSRkFeO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:43:36.22 ID:JYZyCpoGO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:43:43.51 ID:1M/WlUv1O
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 22:46:45.69 ID:HGLqKHcP0
…やっぱりこの末尾O埋め立て荒しと「アンチ」発言の末尾oは同じ奴だな、これで確信を得た
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/05(日) 23:21:42.87 ID:nkTmqI3J0
花陽(私は小泉花陽です。今日お腹が空いてご飯食べれるお店いったらそこのチャレンジでおにぎり食べに来ようとしたら、ある人に声をかけられました。)

おにぎり、ご飯専門店「およねさん」

花陽「マスターこんにちわー。」

店主「やあ、花陽ちゃんこんにちわ、今日も賞金とご飯食べに来たのかい?」

花陽「そうですよ(^▽^)/ここおにぎり美味しいし、ボリュームもあるから。」

店主「うれしい事言ってくれるねー、じゃあ特別メニューやってみるかい?」

その時

???「オヤジ、今日もチャレンジしに来たぜ。」

???「錠二、今度こそは負けないぜ!ん?おい錠二。」

錠二「ん?なんだ?満太郎?」

満太郎「あの、女の子って?ラブライブのミューズのかよちんじゃねえのか?」

錠二「ああそうだ、俺はここで、小泉花陽が活躍してるのを耳にして、来たが噂はほんとだったみたいだ。後、俺は花陽を見たのは初めてだ。」

満太郎「ああ、俺もだ、後かよちんの喰い動画は、YOUTUBEで見たことあるが、かなりすごかったな。大食いの素質があるぐらい。」

錠二「俺もそう思った、後正道喰いを極めてるからな。後俺は花陽と会って勝負したくてここへ来たのだ。」

花陽(あの人って!?あのTFFの大原満太郎さんとハンター錠二さん!?)

続き
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:25:28.23 ID:E5Y5c4sLO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:25:35.39 ID:E3ffYbj5O
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:25:43.22 ID:MHKdhkbYO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:25:51.77 ID:7QDEdWANO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:25:59.37 ID:a9MRwUAiO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:26:07.10 ID:e7tpg+v9O
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:26:15.19 ID:l3ayxvqHO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:26:22.91 ID:Th7QrbU7O
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:26:31.64 ID:kyK8s+s4O
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:26:38.43 ID:FzIPWCFCO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/05(日) 23:32:23.07 ID:nkTmqI3J0
花陽(初めてみたよ〜かっこいいなぁ〜余裕のある男の人で、でも声かけられたら・・・。)

そして声をかけられた

錠二「お嬢ちゃん、君は小泉花陽だな?」

花陽「!?はっ!はいっ!!そうですっ!!」

満太郎「まあそんなに固くなるなよ、かよちん、俺達は、君と勝負したくてここへ来たんだよ。なあオヤジ。」

店主「あうん、そういう事になるね、満ちゃん、でも花陽ちゃんは女の子だから手加減してやりなよ。」

満太郎「そうは、いかねえよ、ここの張り紙でなんか俺達がここ留守にしてる間、なんかかよちんがトップになってたみたいだからさ。」

24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:01.64 ID:ptHOS8b7O
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:10.15 ID:LhcJQf/cO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:20.02 ID:UCRBqaBSO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:27.87 ID:c33XrfZSO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:35.25 ID:EKMHbMiXO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:42.69 ID:WJmRI7uQO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:50.32 ID:zg1WNNsaO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:34:58.71 ID:9RLf7JGtO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:35:06.85 ID:H0G4dqHVO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:35:15.01 ID:pDzgxsLxO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:35:23.65 ID:XQnOArNgO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/05(日) 23:42:33.37 ID:nkTmqI3J0
店主「やっぱ見透かれてたかぁ〜、ところで、花陽ちゃんは勝負受けてたつの?」

花陽「もちろんです!!憧れのTFFが!!憧れの二人がここで生で見れているので!!」

錠二「じゃあ決まりだな、小泉花陽、お前さんが相手になるのは、こいつ、大原満太郎でいいな?」

満太郎「俺か?いいぜ!!オヤジ勝負は、いつものチャレンジのおにぎり勝負でいいな!!」

店主「もちろん!!」

花陽「受けて立ちます!!」

そして おにぎり大食い競争が始まる!!



36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:43:41.71 ID:aXblZhGWO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:43:49.95 ID:plQ3V1OlO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:43:58.93 ID:IZ/wutaLO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:44:07.52 ID:tj+KcAqsO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:44:15.16 ID:LvSmommdO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:44:22.60 ID:Chu0adQVO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:44:31.39 ID:JgjAu46RO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:44:40.28 ID:0+PkBrmWO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:44:48.87 ID:bgOsHTF1O
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:44:56.42 ID:6jm342HJO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:45:04.85 ID:WoSKVKPEO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:45:12.47 ID:zJNVI01uO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:45:20.02 ID:KO1LBhwQO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:45:29.49 ID:ZnVBFG2UO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/05(日) 23:54:22.60 ID:nkTmqI3J0
満太郎(うん、うまい!ここのおにぎりは、いつも通り、米だけのおにぎりだが口に程よくほつれて塩加減が絶妙だ!)

花陽(おいしーいここのお米、白米最高ですぅこの口に程よくほつれるのと、絶妙な塩加減がたまらないです。あと自然な甘みが)

そして1分もたたないうちに二人はおにぎりを平らげた。

錠二「小泉花陽、中々の食べっぷりだ、食を楽しんでるな。だが、対決となるとどうかな?」



51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:56:09.85 ID:tAmH869PO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:56:17.95 ID:wChtpKECO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:56:26.68 ID:YKyn63PfO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:56:33.66 ID:rGZkx+ANO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:56:41.71 ID:TOWYdgFCO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:56:54.09 ID:M9I4OvDjO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:57:02.04 ID:oNrYT7A1O
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:57:10.57 ID:Ui4PbyD2O
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:57:17.63 ID:2srOcqloO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:57:27.61 ID:TyFq9F0nO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:57:35.71 ID:2EaPFMo5O
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:57:43.66 ID:nxTw9xusO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:58:00.60 ID:gefxtOhgO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:58:08.64 ID:W1LOWWE2O
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 23:58:16.28 ID:otkI+ISYO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/06(月) 00:04:17.87 ID:TxpG9Hli0
喰いしん坊!もしもアニメになったら
声優さんはこれがいいなぁ〜

大原満太郎 草尾毅
獅子戸錠二 中田譲二
鳥飼飛男  小西克幸
ドンブリの安 千葉繁
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:04:58.22 ID:kOkazFQJO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:05:05.06 ID:Hr0aMS9tO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:05:15.43 ID:9RySUrMqO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:05:23.25 ID:QMKp4IqqO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:05:30.87 ID:l0Vn/KTZO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:05:37.91 ID:PadqXIjDO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:05:45.61 ID:1KsU78t6O
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:05:52.73 ID:ePL5dKbIO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:06:00.43 ID:t2OSHh+cO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/06(月) 00:22:17.99 ID:TxpG9Hli0
花陽(でもこれは、憧れの満太郎さんとの対決、後このおにぎりでも喉が渇くんだよね、でもお水飲むのは少なくしなきゃ!)モムモム

満太郎(かよちんやるな!そう言ってる場合じゃねえ、このシンプルでうまいおにぎりでも喰い続けるうちに後の塩辛さと米の腹に溜まるのが難点だ!)モニュモキュ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/06(月) 00:29:06.80 ID:TxpG9Hli0
そして5分が立った!!

そして二人は道具を出した

それは、水の入った霧吹きだ!!

錠二「ほう!満太郎は当然として、小泉花陽もこれと来たか。大したものだ、満太郎、小泉花陽は一筋縄じゃいかないぞ。」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:39:59.22 ID:1I5z6qM8O
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:40:06.09 ID:afCveCgZO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:40:13.64 ID:HJKC8EnZO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:40:21.31 ID:l6Tny3LzO
海未「がっ、あっ、あっ、」


 打撃による痛覚以上に、脳が揺れ平衡感覚が狂ったことが問題でした。
 歪む視界に屈しそうになりながら、足を止めてはならないとステップを踏み続けます。
 追撃を防ごうと足を振り回して蹴りを繰り出しますが、既に凛は距離を取っていました。


海未(追撃する絶好の機会に身を退いている、ということは……!)


 勘だけを頼りに脇へと飛び込み地面を転がりました。
 同時に鳴り響く銃声。
 予測も何もありませんでしたが、被弾していないことから狙撃を躱せたことを察しました。

 床を一回転してから立ち上がり、銃声が鳴った八時方向へと顔を向けると、私を狙う銃口が大型フォークリフトの陰から覗いていました。


花陽「これでも当たらない……!」

海未「避けたのは完全に運です。っつう……狙撃の方角を予測したわけではありません」

凛「初めて海未ちゃん騙せたのにぃ」

海未「視線のフェイントは見事でした。ちなみに脳を揺らすなら、厚手のグローブで顎を狙うと尚良いですよ」

凛「次はそうするよっ!」


 決定打を回避したことに安堵する一方、完璧に設計された一連の攻撃に思わず舌を巻きました。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:40:28.34 ID:7v0DfwbhO
 窮屈な通路を縫って進んだ先には、数十メートル四方の開けたスペースがぽっかりと空いていました。
 密集した大型機器類が壁の様になって周囲を取り囲む、視界の悪いリングです。

 スペースに出て、物陰や死角を探っていると、いつの間にか花陽の姿が消えていました。
 高台にでも通じているのでしょうか、金属製の階段を上るカンカンという足音だけが物陰となったタンクの裏側から聞こえてきます。


凛「戦いはもう始まっているのだあ!」

海未「なるほど。花陽が身を隠せる物陰の多い戦場を選んだわけですか」

凛「自分たちに有利な戦場を選びなさいっていつも言われてたからね!」

海未「教えを素直に取り入れるのが二人の長所です。その辺り、にこも素直なら良いのですが」

凛「にこちゃんは居ないけど……二人でも、勝つから」


 一秒前の談笑モードはどこへやら。
 マフィア界で並ぶ者無しと称されていた私相手にたった一人で相対する凛からは、微塵も気後れする様子どころか、妥当する気満々の気概を感じます。


海未「……良い意気込みです。三人同時に相手する以上の圧力を覚えますよ」


 教え子たちの成長は嬉しいものですね。
 弟子に負かされることが師匠の夢と言う方もいますけど、私もその口かもしれません。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:40:36.79 ID:Na9KYMfCO
―――


 対峙する私たち三人を残して、絵里は一足先に廃工場内へと進んでゆきました。
 凛と花陽も進行を妨げることはなく、素直に絵里を通しました。


凛「……これで準備は整ったかな」

海未「ええ。絵里を通して貰い感謝します」

花陽「戦う相手は海未ちゃんだから。こっち、ついてきて」


 二人に従い、私もまた一足遅れて廃工場内へと踏み入りました。

 案内されたのは、ことりと絵里が上がった階段の先ではなく、一階フロアの奥でした。
 居並ぶのは、鉄製のクレーンやコンベア、人が何人も入りそうな大型タンクの列、それらを繋ぐ配管の数々。
 もう稼働することのない大型機器類や使用されぬまま放置された廃材が埃を被った状態で残されている、薄暗く湿った旧作業場でした。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:40:45.11 ID:WZGTfJOYO
海未「ラブアロー」

凛「もうさせないにゃあああ!」


 花陽を狙う私を阻止すべく、凛が突進してきました。
 ですが想定内です。
 弓を引く構えを解いて、迫りくる凛へと自ら踏み込み、肩を捻じ込むようにして当て身を喰らわせました。


凛「がっ! はっ……」

海未「工夫の無い特攻では止められませんよ」


 凛が崩れ落ちるのを確認して、改めてライフル弾の射出を狙います。
 が、当て身の衝撃で落としてしまったのか、手元から銃弾が消えていました。


海未「おや? どこに行ったのでしょう……仕方ありません。何か代用品を……お。いいですね」


 辺りを見渡すと、鉄パイプが無造作に転がっているのを見つけました。
 近付いて拾い上げると、直径三センチ程、長さ九十センチ程の鉄パイプは、銃弾よりも射やすそうに思えました。
 やはり射るなら長物に限るという持論を持っているんですよね。完全に好みの問題でしょうけれど。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:40:54.63 ID:K9b73sFdO
 ところで私の秘蔵の武器である弓についてですが。

 秘蔵と言えど、誰にも披露したことがないというわけではありませんし、試しに射てみたいとの申し出に応じて貸したことだってあります。
 しかしながら「弦が硬すぎて数ミリも引けない」「そもそも重すぎて持てない」「こんなの扱える人間はいない」等、散々文句を言われる始末。
 これまでまともに射れた方は一人もいませんでした。

 確かに少々頑丈な作りとはいえ、そんな言うほどでもないと、毎回お手本を見せる羽目になるのですが……。


 ギチ ギチ ギチッ
 ギヂッ  ギヂッッッ
 ギ  ヂ  ッ


 今もまたお手本の場面さながらに、弦を限界いっぱいまで引き絞りました。
 耳元からは、両端に繋がれた弦に引っ張られて弧をしならせる弓のギヂギヂギヂという苦し気な呻き声が鳴り続けます。

 狙いを定め、体勢を整え、呼吸を止めて。
 何時からか、射る時に口にするようになっていたお決まりの台詞が、今回も自然と出てきました。


海未「ラブアロー……」


 ギ


 シュート、と呟くと同時に右手を離し、弦に添えていたバレットを射出しました。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:41:38.11 ID:cE9ePAVLO
なにがあこがれだよ
これだからクロスはゴミなんだよ
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 00:50:10.37 ID:BaR3RgKAO
しかもなんでラブライブが後なんだよカス
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/03/06(月) 01:22:49.58 ID:TxpG9Hli0
やっと止んだか

なんだったんだぁ〜?一体
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/06(月) 02:24:05.88 ID:vp0Z1UbN0
>>88

最近、ラブライブと他の作品のクロスに粘着してる荒し

確認できた時点で既に8つ以上のスレが埋め立て被害に遭ってる
IDが飛行機飛ばしまくりの単発末尾Oだからすぐにわかる

後、「>>1はアンチ」「>>1 やめろ」「クロスはゴミ」「ラブライブでやる意味あったか?」とか言い出す末尾oが必ず出たら
そいつも末尾Oと同じ奴、複数回線持ちのキチガイ



>>87
>>88

証拠も無く疑うのは悪いんだろうけどIDが末尾Oでこんだけやらかしてる以上こいつ等、ほぼ同一犯


>>1、もしまた何か書くなら書き貯めて一気に投下するか、スレタイにクロスと分からないようにした方が良いよ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 02:28:18.91 ID:IbMMALLy0
ラブライブとのクロスが荒れるの分かってるならやらなきゃいいじゃん
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 02:35:06.99 ID:yFTb481t0
やりたい奴がいるから書くんだろ
荒れるのであなたは心の底からやりたい事でしょうがやめてくださいねって言えばハイそうですかと言うのか?人間はそんな単純じゃない
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 02:39:16.37 ID:VF8mjXoM0
ここじゃなく管理がしっかりしてるところでやればとは思うがね
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 03:24:26.73 ID:yFTb481t0
それは同意だがどこでやるかは個人の自由、とやかく言うのはお門違い
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 03:54:25.97 ID:3gStqsiuo
書くのは勝手
ラブライブさえ関わらなければな
>>1はラブライブを他作品上げに使うゴミ
さっさとしね
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 06:19:50.44 ID:6JTRHF8yo
ラブライブ!板でワッチョイつけてスレたてればいいのに
ここは管理人が無能だから簡単に荒らされるよ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/06(月) 08:04:06.25 ID:vp0Z1UbN0
>後、「>>1はアンチ」「>>1 やめろ」「クロスはゴミ」「ラブライブでやる意味あったか?」とか言い出す末尾oが必ず出たら
>そいつも末尾Oと同じ奴、複数回線持ちのキチガイ


>>94

ID:3gStqsiuo
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 08:35:05.75 ID:FmPiNKyH0
ラブライブ板でやればいいんじゃないかな
そこで荒らされたら知らん
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 11:51:19.57 ID:6xrVUZIO0
ラ!板はもっと駄目だろ、管理人自体がそもそも存在してないし向こうの方が埋め立て荒らしがヤバい
なんかやたらラ!板に行ったら言うのがいるが他人に薦めるにしてももうちょい調べてあげなよ…
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 18:58:09.63 ID:QMzkHY8ZO
荒らされてしまえって事だろ
諦めて消えろ
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