士郎「……俺は、偽物なんだ」

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106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 16:02:30.44 ID:OHZxQ4tBO
>>105
別に文句言いたいわけじゃなくて
考察に組み込んでいいのかなっていう
>>1への疑問なんだ
なんかすまん
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 17:40:53.46 ID:Mbg4PQEDO
ワカメが嫌味ったらしい無能じゃないだと……
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 17:46:33.42 ID:9Ofq/2HlO
>>106
それこそ今後語られるかもしれないことで、完結した時に語られてなかった時に質問することだわ
質問する意味がない
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 18:08:01.13 ID:OHZxQ4tBO
>>108
何をそんなに否定したがるのか分からんけど
そもそもその語られるかもって辺りの話だろうに
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 19:10:51.52 ID:9Ofq/2HlO
>>109
否定してるんじゃなくてお前がキモイんだよ
仮に>>1が「そうだよ」って言って、お前以外の誰が得するんだ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 19:28:25.02 ID:dAIR0121o
もー型月厨はすぐレスポンチバトルする
他人のスレでマウントとってどうすんのよマウンテンゴリラか?
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 20:38:42.99 ID:OHZxQ4tBO
>>110
別に誰かが損するわけではないだろ
わざわざレスつけないでスルーすればええやん
何をそんなにキレてるんだ
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 20:58:36.73 ID:fOCCy2moo
>>112
最初に>>1にスルーされて何でスルーされたかも理解できずに聞き返しちゃったお前にスルーしろって言われるとか草はえる
ネタバレになるかも知れないからスルーしたって考える頭が無いんだろうな
ネタバレになるんで言えませんってレスを返すこと自体が既にネタバレになるなんて想像もつかないんだろうな
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/15(土) 21:07:43.35 ID:lVoIldzgo
はいはいいつもの流れいつもの流れ
お前らスレぶっ潰して楽しそうだな
自分が荒らしじゃないって反論あるなら>>1が来るまで書き込まないという行動で示せ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/16(日) 01:58:07.25 ID:AalSII/hO
>>113
スルーはお前に言ってんだよ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/07/16(日) 07:38:15.48 ID:xlrgrhYPO
>>115
病気だな、お前
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/16(日) 10:54:06.07 ID:Td20OLGGo
乙なの
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 17:12:19.86 ID:M+zIEMifo
乙乙楽しみにしてる
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 22:25:26.58 ID:QsLmcZCHo
考察してって>>1自身が言ってるんだよなぁ
そりゃそこに突っ込み入るのは当然な訳でどうみても病気なのはお前なんだよなぁ(呆れ)
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/17(月) 22:31:51.65 ID:QK+XjC+qO
そうか、考察って直接答えを聞くことだったのか
俺の国の言葉じゃないと思うけどどこの国の言葉?
121 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/07/31(月) 23:08:38.31 ID:QHGpUkZY0
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー


「ウオ■ォ……■■オォ……」
月に向かい、その者は吠える。辺りに飛び散った真紅の液体には目も向けず、ただ拳を振るう。

「クス……クスクス……」
地に目を向け、その者は笑う。喜びと哀しみを一緒くたにしたようなその仮面の下で、ただただ"何か"を見つめる。

その両者は狂気に包まれながら、まるで何かを探しているようで。
失ってしまったものを、■■■いた何かを追い求めているようで。


夜が明け、朝日が昇る。
狂気に満ちた二人は姿を消し、血だらけの"何か"だけが後に残されていた。


ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー
122 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/07/31(月) 23:10:45.19 ID:QHGpUkZY0
生存報告を兼ねて1レスの幕間だけ投下しました。短くて申し訳ないです。
次の更新はもうちょい早めに出来ると思います。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/01(火) 00:35:58.60 ID:1ojpoum9o
へいおー
124 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/05(土) 22:03:46.44 ID:em8Lgwja0
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争4日目:開始】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
125 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/05(土) 22:04:26.87 ID:em8Lgwja0
「ーーということで、今日から部活動はしばらく禁止だから、学校が終わったらすぐ帰宅するように!HR終わり!」

藤ねえ……藤村先生による朝のホームルームが終わり、一限が始まるチャイムが鳴る。
部活動禁止令が出た理由は、先日から起きている通り魔事件だ。恐らく、この事件も聖杯戦争によるものだろう。

サーヴァントは人の魂を喰らうことで魔力を蓄え、パワーアップすることが出来る。俗に言う魂喰いだ。
もしこの通り魔事件が魂喰いによるものだとすれば、時間が経てば取り返しのつかないことになる。早急に手をつけないといけない。

そもそも、無関係な人々が犠牲になっている時点で放っておくわけにはいかないのだ。一刻も早く、この事件を止めなければいけない。
一人でも多くの人を守る。それが、今の自分のやるべきことなのだから。
126 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/05(土) 22:05:07.48 ID:em8Lgwja0
『流石です、ご主人様!……でも、何故なんですか?』
(何故って……?)

突然、『キャスター』が話しかけてきた。授業中なので念話で答える。
……というかこのサーヴァント、また頭の中を勝手に読んだらしい。正直なところ、出来れば自重してほしいのだが。

『……率直に申し上げます。ご主人様は気負いすぎです!もっと気楽に、自分の幸せのことも考えていいんです!』
(自分の幸せ……か。……でもさ、それは『キャスター』だってそうじゃない?)
『それは、まあ、私はサーヴァントでございますし?それに、ご主人様と一緒にいれれば私は……』

(じゃあ、こっちだって同じだ。俺は、誰かの役にたてれば、誰かを助けることが出来ればそれで十分だ)
『むぅ……本当ですか?』
(あぁ、もちろん。じゃないと、こんな酔狂な真似は出来ないさ)
127 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/05(土) 22:07:19.77 ID:em8Lgwja0
放課後、商店街で買い物をするついでに探索をすることにした。通り魔事件がサーヴァントやマスターによるものなら、何かしらの痕跡が残っていると踏んでのことだ。
ただ、今回は慎二とは別行動をとっている。常に一緒に行動していては他のマスターに怪しまれるだろうという独断によるものだ。
それ以前に、彼がわざわざこういう自分の身勝手な行動に付き合ってくれると思っていなかったというのもあるが。

商店街のメインストリートは普段通りに営業していたが、心なしか客が少なく活気がないように思われた。
そして、事件現場と思しき細長い路地裏の入り口にはキープアウトテープが張られていた。警察の姿は見えないが、すでにはけてしまったのだろうか。
時間が経っているので血の匂いなどは全くしなかったが、不穏な雰囲気は消えることなく残っていた。


……否。それは、雰囲気なんて漠然としたものではない。
128 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/05(土) 22:08:25.58 ID:em8Lgwja0
『魔力、ですね。しかも、時間が経ってもご主人様が体感出来るほどのものとなると……』
「……あぁ。間違いなく、サーヴァント絡みのものだろうな」

戦闘行為等において放出された魔力はすぐに消えるわけではない。しばらくの間はそこに残存魔力として僅かに留まり続けるのだ。
もっとも、普通なら長い間残り続けるほどのものではない。よほどのことがない限り、精々1〜2時間程度で消えるはずだ。
それが今も残り続けているとなると、人の尺度では測れないほど桁外れの魔力を持つ者……サーヴァントによるものだと考えるのが自然だろう。

しかし……いくらサーヴァントとはいえ、単なる魂喰いで、これほど長時間残るものなのだろうか?
129 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/05(土) 22:09:14.63 ID:em8Lgwja0
昨晩サーヴァント同士の戦闘行為が行われた弓道場の魔力痕は、朝の時点でほぼ完全に消えていた。一方、同じく昨晩発生したらしいこちらの事件跡ではまだ魔力が感じられる。

この差はどういうことだろう。普通に考えれば逆なはずなのに、何が起きているのか。
事件痕でサーヴァント同士の戦いがあって、被害者はそれに巻き込まれた?それなら魔力痕が残っているのは納得出来る。
納得出来るが……あんなに狭い路地裏で戦いが起きるとは思えない。闇討ちのようなものならまだ分かるが、小規模な戦闘だけで弓道場以上に魔力が残るはずがない。

じゃあ、逆に弓道場の方が自然でないとしたら?例えば、戦闘後に何者かが弓道場の魔力痕を消したとしたら……
……いや、いくら桁外れなサーヴァントの魔力量とはいえ、半日以上経っても魔力が感じられるのは不自然だ。
やはり、路地裏の方が異常だ。だが、何が異常だったのかがまるで分からない。与えられている情報が余りに少なすぎる。

ーー事件当時、あの路地裏で何が起きていた?
130 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/05(土) 22:10:17.54 ID:em8Lgwja0
今回の更新は以上です。謎をぶん投げて終わるスタイル。
夏に入ったので、頑張って更新頻度を上げていきたい。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 12:33:14.93 ID:csSuSIyao
乙カレー
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 20:35:18.12 ID:nwnkLEBoo
乙乙
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 14:16:05.67 ID:mFhYeQkzo
おつおつ
134 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/12(土) 21:03:15.22 ID:2DXfZ1Rh0
『ーーご主人様、あまり考えこむのもよくありませんよ。少し風に当たってみては?』
「……あぁ、そうだな」

気づいたら、もう日が落ちかけている。帰る前にと、公園の自動販売機で缶コーヒーを買う。冷え切ったベンチや喉を通るコーヒーの熱さが、今の季節を感じさせた。

「ーーもうすっかり冬だなぁ……」

頬に冷たい風を感じながら、ぼんやりと空を見上げる。思えば、ここ最近はあまりに激動すぎてろくに休めていなかった気がする。
この瞬間だけは、聖杯戦争のことも考えず、頭の中を空っぽにしてリフレッシュしよう。そんな風に思っていた。

だからこそ、気づくのが遅れてしまったのだろう。

周りに、人の気配がほとんどないことに。
135 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/12(土) 21:04:17.06 ID:2DXfZ1Rh0
「っご主人様!敵です!」
『キャスター』が突如実体化し、自分の前で臨戦態勢をとる。自分も慌ててベンチから立ち上がった。
周りには人影が一切ない。どうやら人避けの魔術か何かを使われたらしい。
そして、目の前には自分でも分かるほどの魔力を持ったーー幼い少女がいた。

「こんばんは、お兄ちゃん。こうして会うのは初めてね」
彼女の側にはサーヴァントの姿は見えない。それでも余裕綽々とした態度を崩さないのは、余程の自信があるのか。

「初めまして、シロウ。私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」
そう言い、幼い少女はお辞儀をする。その立ち振る舞い、その所作の一つ一つから、彼女の育ちの良さが感じられた。

「アインツベルン……?ーーというか、どうして名前を!?」

「別にどうだっていいよね。どうせここで死んじゃうんだから!来なさい!『ライダー』!」

イリヤスフィールが高らかに声をあげ、己のサーヴァントーーライダーを呼ぶ。自分も『キャスター』も同じように身構える。
136 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/12(土) 21:05:02.24 ID:2DXfZ1Rh0
ーーが。

中々ライダーが姿を現さない。
イリヤスフィールも決めポーズをしたまま動かない。周りに人気がないのも相まって、まるで時間が止まったかのような錯覚を覚えてしまう。
気まずい沈黙の後、公園の入り口に人影が見えた。

「あ、いたいた。こんな所にいたんだ、マスター」
「遅ーい!私が呼んだらすぐ来なさいって言ったでしょ!」
「いやぁ、本屋さんでイリアスを探してたら遅くなっちゃって」

その姿は……子供だった。イリヤスフィールよりは大きいが、
だが、放たれるオーラはそのシルエットからは似ても似つかぬほど強烈なものだった。覇気……とはまた違う。言うなれば……王気。
そのサーヴァントは少年ながらにして、並々ならぬカリスマを発揮していた。
137 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/12(土) 21:07:03.38 ID:2DXfZ1Rh0
しばらくの間イリヤスフィールの説教が続いたが、やがて『ライダー』がこちらに目を向けた。

「それで、そこに見えるのが相手なのかな?マスター」
「そうよ。やっちゃいなさい『ライダー』!」

『ライダー』が改めてこちらに向き合う。こちらも身構え、臨戦態勢に入る。

「初めまして、『キャスター』のマスターさん……でいいのかな?僕はアレキサンダー。アレクサンドロス3世、でもいいよ。他の名前でもね」
「……アレキサンダー大王?この子供がですか?」

『キャスター』が眉をひそめる。それも当然だ。アレキサンダー、アレクサンドロス、イスカンダル等、数々の異名を持つ『征服王』が、こんな少年だとは到底思えないからだ。

「どういう因果か、この姿で召喚されちゃってさ。大人になったら僕のことも覚えてはいるけど、ちょっと記憶が曖昧でね」
138 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/12(土) 21:07:42.31 ID:2DXfZ1Rh0
「……『ライダー』?」
「おおっと、少ししゃべりすぎた?分かってるよ、マスター」

そう言って『ライダー』……アレキサンダーは腰につけた剣に手をかける。それと同時に、彼の魔力が上昇するのを感じる。

「さあ、出でよブケラファス!蹂躙を始めよう!」
彼が虚空をその剣で切ると、その切っ先から黒く美しい馬が出現した。そして、彼はそれに飛び乗ると、一気にこちらに向かって突進してきた。

「突撃ーー!」
「来ます、ご主人様!」

『キャスター』は咄嗟に詠唱を行い、防壁を作った。どうにか防いでくれている間に、サーヴァント同士の戦いの余波に巻き込まれないように少しだけ移動する。
ここから先に生身の人間が干渉できる余地はない。サーヴァント同士の、英霊たちの戦いだ。
139 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/12(土) 21:10:13.84 ID:2DXfZ1Rh0
本日の更新は以上です。
次回、キャスターvsライダー(書き溜め/zero)
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 22:29:10.03 ID:p3noUM3pO
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 23:44:16.10 ID:ueQHLN5Lo
おつ
142 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:17:05.63 ID:wvKm0gXu0
「とぉっ!はいやっ!」
『キャスター』が符から色とりどりの魔弾を放つ。その弾幕はあまりに美しく、まるで芸術品のようだ。
「甘いよっ!……ほっ!」
しかし『ライダー』は華麗な馬さばきでそれらを避けきる。時に素早く、時に止まりながら見事に全ての弾を回避した。

「……そろそろ当たってくれてもいいんじゃないですか〜?タ……私、そろそろ本気で怒りますよ?」
「当てられるものなら当ててみなよ。僕とブケファラスの動きを捉えられるなら、ね」

心の苛立ちを隠せない『キャスター』とは異なり 、余裕綽々といった表情をしている。しかし内心、『ライダー』ももどかしさを感じていた。
ブケファラスの脚力をもってしても回避が精一杯で、一向に自分の間合いに入ることが出来ない。ダメージ覚悟で突っ込むのも手ではあるが、自分の心許ない対魔力スキルを考えるとリスクとリターンが噛み合わない。
『キャスター』と『ライダー』、どちらのサーヴァントも己の勝機を見出せずにいた。
143 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:18:09.61 ID:wvKm0gXu0
「なあ、イリヤスフィール!答えてくれ!」

サーヴァント同士が激しい戦闘を繰り広げる一方で、キャスターのマスターはライダーのマスターに対して舌戦を仕掛けていた。
真っ向からの魔術での勝負で、あの化け物じみた魔力を持つ少女に勝てるとは思えない。
ならば、自分に残された武器は「口」しかない。

「俺はお前のことを知らないし、お前に恨まれた覚えも全くない。だから教えてくれ!何で俺を狙うんだ!」
その問いに、イリヤスフィールは笑いながら答える。その笑い声は無邪気でありながら邪悪なものに聞こえた。

「そんなの当たり前じゃない。シロウがキリツグを奪ったんだから、その責任を取ってもらうためよ」

「……?……ごめん、話が全く飲み込めないんだけど。キリツグを奪った……?」

自分の記憶の中に、キリツグという名前の人物は一人しかいない。
衛宮切嗣。10年前に火災の中から士郎を拾った命の恩人。満月の綺麗な夜に息を引き取った士郎の育ての親。
それとイリヤスフィールが……どういうことだ?
144 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:18:51.55 ID:wvKm0gXu0
「……いいわ、教えてあげる。メイドのミヤゲってやつ?」
まるで事態を飲み込めていない自分の様子を見てか、呆れたようにイリヤスフィールは言う。

「私のお父様はキリツグ。そしてキリツグは10年前に、聖杯戦争に参加したの。アインツベルン代表としてね」
「なっ……!?」
「でも、キリツグは帰って来なかったの。『絶対に迎えに来る』って約束したのに……分かるわよね?貴方がキリツグを奪ったんだもの!」

堰を切ったように彼女の言葉は続く。
「私は許さない。アインツベルンを裏切って、お母様を裏切って、約束も裏切ったキリツグのことを許さない。そして、私からキリツグを奪ったシロウのことも許さない!」

彼女が怒りを募らせ言葉を発するごとに、彼女の魔力が高まるのを感じる。もし彼女が怒りに任せ、ありったけの魔力で自分に攻撃をしてきたとしたら……
145 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:19:27.89 ID:wvKm0gXu0
ーー今は穏便に事を進めなければいけない。何はともあれ、彼女の怒りを抑えなければ……

「……辛かったんだな」
「な……何よ!知った風な口をきいて!」
「あぁ。俺にお前の気持ちは分からないさ。でも、家族と突然離れ離れになるのがどれだけ辛いかは知ってる」

衛宮士郎は、生みの親とも育ての親とも死に別れてしまった。ある日突然、親と離れなくてはいけなくなってしまったのは自分だってそうだ。それらの苦しみや辛さだって、彼女のそれと通じる所はあるはずだ。

「……それに、切嗣はお前のことを見捨てたわけじゃないはずだ」
「何言ってるの?キリツグは私を、私たちを捨てたのよ。私、ずっと待ってたのに!」
「言ってたんだ。切嗣が死ぬ前にーー」

「ーー『あの子にもう一度会いたかった』ってさ」
146 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:19:56.78 ID:wvKm0gXu0
「……え?」
嘘だ。今、自分は彼女に嘘をついた。

「その時は分からなかったけどさ、今気づいたんだ。切嗣の言ってた『あの子』って、お前のことなんじゃないかってさ」
違う。自分はそんな言葉は聞いてないし、そんな話をされたこともない。

「……本当なの?」
「あぁ、本当だ。切嗣が死ぬ前に、そう呟いてた」
これだって偽りだ。この場を取り繕うためのでまかせにすぎない。

「……嘘だったら承知しないわよ?」
「嘘じゃない。紛れもなく本当のことだ」
おずおずと自分の顔を覗き込んでくる彼女の瞳を正面から見据える。全てが嘘なんてことはおくびにも出さずに。
あぁーーいつから自分は、こうも簡単に嘘をつける人間になったんだろう。
147 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:21:05.56 ID:wvKm0gXu0
しばらく自分の顔を見続けていたイリヤスフィールは、やがてライダーに向かって叫んだ。
「……っライダー!帰るわよ!」

「ふーん……いいのかい?」
「もういい!つまんない!」

イリヤスフィールはそう吐き捨てるように言うと、急ぎ足で公園から去っていった。その後を『ライダー』が追う。
その後ろ姿を、自分と『キャスター』は黙って見つめていた。


「……キャスター、大丈夫か?怪我とかーー」
彼女らの姿が見えなくなったのを確認して、自分は『キャスター』に向かって言った。

「問題ありません。魔力は少しばかり消耗しましたが、明日には回復しているかと」
「そうか。ならよかった」
「魔力もちゃんと節約してますの。私、家計に優しい良妻狐ですから♪」

『キャスター』の言葉を適当に聞き流しながら、『ライダー』陣営の突破法を考える。
イリヤスフィール。彼女の貯蔵魔力量はケタ違いだ。自分と慎二が持つ全魔力を合わせても彼女の半分にも及ばないだろう。

となると、持久戦は不利。ならば、速攻で倒すしか勝ち目はない。
幸い、先ほどの戦いを見る限り『ライダー』自身の戦闘力は高いとはいえない。慎二と協力するなり、こちらの宝具を展開するなりすれば勝てない相手ではないはずだ。
148 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:22:02.47 ID:wvKm0gXu0
ーー帰り道。

『……はっ!しまった!魔力を節約せずに使っていれば、魔力供給と称してご主人様とにゃんにゃんできたのに……!一生の不覚!』
「念話で全部聞こえてるぞ」

いくら魔力消費を抑えているとはいえ、もし遭遇戦になったら『キャスター』も辛いだろう。ということで、自分は家までの道を急ぎ足で歩いていた。
その時、ふとイリヤスフィールの言葉が脳裏に浮かぶ。

『私は許さない。アインツベルンを裏切って、お母様を裏切って、約束も裏切ったキリツグのことを許せない。そして、私からキリツグを奪ったシロウのことも許さない!』

彼女の思う切嗣は、自分の考えていた切嗣像とはいくらか異なるようだ。その食い違いが何故発生したのか、まるで分からない。
本人に聞ければ手っ取り早いのだが、彼は既にこの世にはいない。聖杯に願えば可能かもしれないが、自分には心に決めた願いがある。そもそもの話、聖杯戦争が終結してから切嗣を生き返らせたところでたぶん遅い。
衛宮切嗣。彼は一体、何者なのかーー

『ご主人様!もう家過ぎちゃってますよ!』
「……あっ」
149 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/08/31(木) 23:24:03.08 ID:wvKm0gXu0
今日の更新は以上です。
もう八月が終わるってマジすか(マジすか)
色々理由はあったんですが、ずっとSSを書き溜める時間が取れませんでした。遅れちゃって本当すみません。
今後も亀進行になるとは思いますが、どうかよろしくお願いします。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/31(木) 23:39:25.14 ID:+DFR52JWO
おつー
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 10:26:28.05 ID:Fvshg4W9O
おつおつ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 19:28:59.74 ID:0hiKy7sSo
おつ
そして9月がはじまる
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 22:11:24.45 ID:SHZz9Qczo
第5次(というか冬木の)聖杯戦争のルールだと、アサシンのクラスは「ハサン・ザッハーハ」以外呼べないんじゃなかったっけ?
Fate/SN本編でアサ二郎が召喚されたのは「マスターがイレギュラー(同じサーバント)だった」からだったはずだけど。
さらに「龍堂寺を触媒にしたから、山門から離れられない」って制約のおまけつき。
ひょっとしてアサ二郎、学校まで山門と石段を担いできたんだろうか……?
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 23:29:39.90 ID:4/tOze7gO
山門については依り代が山門だったからでハサン云々は関係ない
まあアンリマユの影響で反英雄が召喚されてるとかあるしハサン以外きてもそんな驚かない
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 23:41:47.56 ID:q9xITItuo
ハサンが呼ばれるのはアサシンってクラス名自体が語源であるハサンの触媒になってるからだったような
別に触媒を使えば普通に呼べるんでないの、もうひとつ何か召喚対象に関して制限があったような気がするがまぁどちらにせよそんなに問題はないな
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 00:49:17.17 ID:TqiVMR0Io
聖杯に関しての知識のある者しか呼べない、ってのがある
暗殺者として挙げられる程の名を持ち、かつエルサレムに属したアサシン教団の頭目であり聖杯に関する知識を正確に有しているって理由でハサンくらいしかまともに殺として呼べないとかなんとか

>>153
小次郎が山門担いで動き回るのは公式ネタだぞ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 01:23:11.28 ID:p9UWtIESO
ここは一つ、こまけぇことはいいんだよの精神で
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 06:59:01.73 ID:2GC9yPG9O
同じ聖杯使ってるアポでも普通にハサン以外のアサシン喚べてるしなぁ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 10:24:54.96 ID:khUZJOrhO
それもそうだった
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/02(土) 18:51:17.45 ID:g/c/9p2oO
>>156
聖杯についての知識は聖杯から与えられるから関係ないと思うけど…
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/03(日) 01:01:39.83 ID:YOap4Wneo
>>160
お前、もしブラックロータスやるわって言われたらどうする?
ブラックロータスが何か判んない奴にとって、いくら価値があろうが良くわからない物なんか怖くて貰えないだろ

冬木聖杯が基本的に日本鯖を呼べない理由がそれ、キリスト教の知識がないといくら聖杯をくれるって言われてもナンノコッチャにしかならない

というか聖杯の知識って、聖杯戦争に参加する鯖に聖杯戦争が行われる時代の基本的な文化や思考方針を英霊に教えるってだけで聖杯がどんな物かを教える知識じゃないから
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/09/03(日) 12:09:25.35 ID:hgypPKg2o
コンマテ読み返してみたら、Vのクラス解説に「アサシンという言葉自体が“ハサン”を意味しており、クラス名自体が触媒となり普通に召喚すればハサン・ザッハーハの名を持つ誰が召喚される」って書いてあったわ。
つまりルールを逆に読めば
・アサシンという弱い方から数えた方が早いサーバントを召喚すると決める
・アサシンのクラスに当てはまりそうな英雄を召喚すると強く決める
・召喚する相手と強い縁を持つ触媒を用意する
これで「ハサン以外のアサシン」が召喚できるっぽい。
(バーサーカーみたいに「アサシン限定の召喚の儀」があるのかどうかは不明)

>>158
アポはアレ「並行世界の事件」だって、公式で明言してるし。
そもそもApocrypha=外典だし、あれはGOみたいなもんだぞ?
163 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/09/18(月) 17:55:57.70 ID:NXdKGVNR0
「だーー、もう!イライラする!」
「まあまあ。落ち着いてよマスター」
「むー……」

アインツベルン城にて、イリヤスフィールは不機嫌さを隠せずにいた。だが、「何に対してイラついているのか」は彼女自身には分からずにいた。
自分が何に対してイラついているのかが分からないことにすら苛立ちを感じているほどだ。
はじめは衛宮士郎を本気で殺そうと思って戦いを仕掛けたのに、気付いたら彼のペースに呑まれていた。
そして、彼が最後に放った言葉。

『切嗣が死に際に呟いていた。「あの子にもう一度会いたかった」ってさ』

この言葉がずっと、彼女の頭から離れずにいた。
164 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/09/18(月) 17:56:41.02 ID:NXdKGVNR0
頭を抱えながらベッドの上で身悶えるイリヤスフィールの横で、アレキサンダーはニヤリと笑っていた。ただ、それは彼女の様子を見てのことではない。
この聖杯戦争に呼ばれた当初は、そこまでやる気があったわけではなかった。今の自分には強く叶えたい願いはない。戦うこともーー嫌いというほどではないが、かといって好きでもない。
マスターとサーヴァントという主従関係を結んである以上、マスターの言うことには従うつもりではいたが、本気で戦い抜いて勝ちたいという気持ちは全くなかった。

ただ、先刻の戦闘で『キャスター』主従に出会ったことで話は変わった。
『キャスター』の魔術や戦いに惹かれた、というわけではない。無論、彼女の容姿に惚れたわけでもない。
むしろアレキサンダーが興味を持ったのは、そのマスターの方だ。
己の真意に気づかれまいと顔に貼り付けた笑顔の仮面。まことしやかに嘘を言う演技。そして、自身に対してすら嘘をつきながらも決して芯を曲げないという、ある種矛盾したその精神。
"アレ"をもっと観察してみたい。その仮面の下に隠された素顔を見てみたい。
神童と呼ばれた英雄、アレキサンダー。彼の聖杯戦争に、今やっと目的が誕生した。
165 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/09/18(月) 17:57:13.76 ID:NXdKGVNR0
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争4日目:終了】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
166 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/09/18(月) 18:04:01.43 ID:NXdKGVNR0
変な時間に中途半端な内容を投下していくスタイル。

神童アレキサンダー君は察しがいいので、士郎の嘘に気付いています。ただ、面白そうなのでイリヤには言わない。
イリヤに真実を伝えるよりは、自分の中だけに留めておいて楽しみたい。……みたいな感じです。
あと、自分なりに凝った部分もあったりしますが、基本的には原作との整合性はあまり気にしない方針です。気にしすぎると埒が明かない……というかSS自体書けなくなっちゃうので。よしなに。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/18(月) 22:37:27.31 ID:SVtAKr2co
おつ
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/19(火) 22:46:54.24 ID:dghqJeZf0
残す所まだ出てないのはバーサーカー陣営だけか、一体誰が来るんだか個人的にはペンテシレイヤが来て欲しいけど無理かな
169 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/10/05(木) 20:04:39.69 ID:qwKvw3Y90
△▲△▲△▲△▲△▲△▲△


【聖杯戦争5日目:開始】


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
170 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/10/05(木) 20:05:29.42 ID:qwKvw3Y90

頭が痛い。
目を覚ました瞬間にまず思ったことがそれだった。

昨日はイリヤスフィールとの戦闘の後は特にイベントは起こらなかった。ので、夕飯を作ったり、蔵で魔術の鍛錬をしたり、いつも通りー戦争が始まる前と同じようなーの過ごし方をしていた。
そして深夜に布団に入り、早朝に目を覚ます。ずっと続けてきた日常だ。聖杯戦争が終わった後でも、衛宮士郎はこんな日々を過ごすのだろう。

布団から身を起こし、寝巻から着替える。外はまだ日が昇りきっておらず、薄暗い。
何となく頭の回転が遅い気がするが、かといって日々のルーティンを崩すわけにもいかない。
まずは軽いランニングからだ。走っているうちに、きっと体調も元どおりに良くなるだろう。
171 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/10/05(木) 20:07:01.64 ID:qwKvw3Y90
「……士郎、大丈夫?体調悪いんじゃない?」
「え?あ、まぁ……」

そう思っていたが、現実はそんなに甘くなかった。
ランニング後は頭がスッキリした……どころか真逆で、全身を駆け巡る悪寒と、脳を揺さぶられているかのような吐き気に襲われた。
それでもどうにか顔に出さないようにして、朝食を作ったわけだが……
やはり彼女の目は誤魔化せなかった。これが「藤村先生」としての面なのか、「藤ねえ」としての面なのかは定かではないが。

「さっきからご飯食べるのも遅いし。本当に大丈夫?」
「いや、平気だって。ちょっと頭が痛いだけだから」
「無理しちゃダメよ〜?本当、士郎ったら昔っから無茶ばっかりして大変なんだから」

それからしばらく藤ねえの昔話が続いたので、曖昧な返事をしながら朝食を食べ進める。普段通りに炊き上げたはずの白飯は、まるで味がしなかった。
172 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/10/05(木) 20:08:13.10 ID:qwKvw3Y90
「それじゃあ、本当に無理しないでね?辛かったら学校休んでもいいから」

藤村先生はそう言い残し、一足先に学校へと向かっていった。
彼女の姿が見えなくなったのを確認して、体温計で熱を測る。結果、38.7℃。

「……『キャスター』」
「はいっ!何でしょう、ご主人様!」

自分が呼びかけると、『キャスター』はすぐに反応した。彼女には(寝ている時を除いて)常に自分の側で霊体化してもらっている。敵にマスターだと察知されやすくなるデメリットはあるが、それよりも安全性を求めた結果だ。

「今日はもう学校休んで寝るから、家の周りの警戒をしててくれないか?」
「えっ」
「えっ?」
「そこは”看病してほしい”とか”添い寝してほしい”とかじゃないんですか?」
「あー……いや、それは遠慮しとくよ。恥ずかしいし」
173 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/10/05(木) 20:09:41.22 ID:qwKvw3Y90
「もー、ご主人様ったらシャイなんですからー。私達の関係なんですから、遠慮する必要も恥ずかしがる必要もないんですよ?」

相手の本当の名前を知らない関係を「私達の関係」と言っていいのだろうか。いや、こんな掛け合いが出来るくらいだし、親しくないとは逆立ちしても言えないが。

「それにさ……ほら、『キャスター』が看病に夢中になってる間に敵に攻め込まれたら対処のしようがないだろ?」
「それは……そうかも知れませんけど」
「……まあ、今は気持ちだけ受け取っておくよ。明日体調が回復したら……そうだな、どこかにデートでもいくか?」
「デ、デート!?キャー、ご主人様ってば大胆?」

……こんな事を言うキャラでもなかった。言ってから反省してしまう。
まあ、これも全部風邪のせいってことにしておこう。そう思いながら、水の入ったコップを片手に寝室へと足を運んだ。
174 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/10/05(木) 20:13:04.20 ID:qwKvw3Y90
今回の投下は以上です。
一応言っておくと、藤村先生と藤ねえみたいな使い分けはわざとしてますので。

夏が終わるまでに完結させるなんて言ってた過去の自分をぶん殴りたい。
175 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/10/05(木) 20:15:23.25 ID:qwKvw3Y90
※文字化けしてるので追記
「デ、デート!?キャー、ご主人様ってば大胆?」 ← ここの?はハートマークに脳内変換しといてください
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 19:06:42.50 ID:PFfgNUdNo
おつかーレ
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 10:34:25.15 ID:A6Aef2XX0
期待
頑張ってくれ
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 16:15:34.16 ID:gXZCxH3ao
再開まだ?
179 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 01:42:18.33 ID:etLuyLiK0
ーーーー
ーーー
ーー

魔術師と契約しているサーヴァントは、マスターの夢を見ることがある。正確にはマスターの過去の記憶を夢として見ることがある、だが。
まさに今、『キャスター』は自分のマスター……衛宮士郎の夢を見ていた。

目に映ったのは、辺り一面真っ赤な交差点だった。
地面を焼くような炎と、倒れている女性から流れる血。近くにはトラックも横転していて、地面には鉄柱が突き刺さっている。
そんな地獄絵図が広がる交差点の真ん中に、見慣れた赤毛の少年が棒立ちしていた。
これが、マスターが経験したという冬木の大災害なのだろうか?ただ、何か違和感が……
180 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 01:43:13.52 ID:etLuyLiK0
『よお、衛宮。ちょうどよかった。教室の掃除当番代わってくれよ』
『あぁ、いいよ』
『流石衛宮だ、やってくれると思ってたぜ』

『いつもすまないな。備品の修理を頼んで』
『気にすんな。このくらいなんて事ないって』
『ありがとう。この恩はいつか返す』
『だから別にいいって。俺が好きでやってることなんだからーー』

いつのまにか場面は代わって、舞台は学校になっていた。
マスターがクラスメイトたちに何かを頼まれ、それを文句の一つも言わずに笑顔で引き受ける姿はもはや見慣れたものだった。
ただ、ここは彼の夢の中だ。ゆえに『キャスター』は聞いてしまった。……彼の心の声を。

「何で自分がやらないといけないんだ」
「出来ることなら降りたい。こんなことやりたくなんてない」
「でも、やめてはいけない。やめられない」
「これは自分で選んだ道なんだから。一度始めてしまったからには、完遂しないといけない」
181 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 01:52:25.08 ID:etLuyLiK0

ーー
ーーー
ーーーー
気づいたら、マスターの夢は終わっていた。『キャスター』の目の前には、見慣れた衛宮邸の壁があった。

(ご主人様は……何故、人助けをしているのでしょう?)

以前マスターは、人助けをする理由として「正義の味方に憧れていた」と話していた。だから友達を助けるのは当然だ、と。
なら、今はどうなのか?憧れて「いる」ではなく「いた」なのは何か理由があるのだろうか……?

それから、その時にボソッと言っていた「偽物」という言葉も気になる。あれは心構えが偽物の正義の味方、ということなのか……?
……ただ、それでもやはり不自然だ。なぜやりたくもないことをやり続けているのだろう?誰も、彼に命令などしていないというのに……
何が、マスターをあそこまで駆り立てるのだろう?

今更になって、『キャスター』は自分のマスターのことを何も知らないことに気づいてしまった。
182 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 02:00:09.30 ID:etLuyLiK0
『キャスター』のマスター、衛宮士郎は己のサーヴァントのことをあまり知ろうとしない……というか、聞こうとするそぶりすらない。
聖杯戦争の5日目になってなお『キャスター』の真名を知らないのが最たる例だ。

きっとそれは、自分自身のことを知られたくない気持ちの裏返しなのではないか、と『キャスター』は推理した。自分が実は嫌々正義の味方をやっていることを知られたくない、という思いが逆に、相手のことを知りたくないという形で出ているのではないだろうか。

……ただ、それはあまりに寂しい。もっと自分のサーヴァントのことを頼ってくれてもいいのに、と『キャスター』は思ってしまう。
ご主人様の悩みは自分の悩み。ご主人様の悩みで、自分も共に悩みたい。辛いことがあるなら、出来れば解決してあげたい。良妻たろうとする『キャスター』は、心からそう思っていた。

「……聞いてみましょうか。ご主人様が起きたら、夢のことも含めて」
183 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 02:03:21.46 ID:etLuyLiK0
Q.一月以上更新空けといて内容それだけかよ?
A.すまない……本当にすまない……

最近忙しくて書き溜める余裕が全然ありませんでした。更新できなくて本当ごめんなさい。
今後も不定期更新になりますが、過度な期待はせずに気長に待っていただけると嬉しいです。
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 02:44:18.90 ID:0A3IyDY0O
待ってるで
できれば完結してほしいけど無理ならせめて何も言わずにエタるのはやめてくれよ
無理なら無理と宣言してからいなくなってくれ

リアルを大事にな
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 05:20:41.29 ID:6lYruL8No
お疲れ様
うん、エタの場合は宣言欲しい
が、しかし完走まで頑張って欲しい
リアルを大切にね
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 07:25:29.06 ID:iDFT0+a80
やっぱりこのssの士郎は原作とは違うとこあるんか?

今更だけど士郎ってタマモ的にどうなんだろ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 14:14:54.77 ID:9v/COjbzo
ご主人様って呼んでるから、駄狐的には悪くないんじゃないかな?>士郎
(FGOでは「マスター」呼び)
ただし一夫多妻去勢拳を喰らうことは確定だろうけど。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 20:00:20.48 ID:Plli6iIn0
一夫多妻去勢拳(キック)か
189 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:18:49.56 ID:hpDiDMAI0

自分は、弱虫だ。
何かをしようとする勇気もなければ、何かを止めようとする勇気もない。あの日からずっと、「今まで通り」を維持し続けてきた。
だからこそ、嫌になっても人助けをやめなかったし、聖杯戦争に参加しようが風邪を引こうが変わらない日常を過ごそうとしてきた。
ーーそのせいで、今のような拗れた状況を生み出してしまったわけだが……。

「……ご主人様は、どうして嫌々人助けをしてるんですか?」

「……え?」
190 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:19:41.42 ID:hpDiDMAI0
マスターの夢を見た、と『キャスター』は言った。
その夢のある場面で、自分は人の頼みを嫌々受けていたという。
自分には寝込んでいた間にそんな夢を見た記憶はないのだが……サーヴァントが見る夢は、必ずしもマスターの見ている夢と同じではないらしい。

確かに、表面上は二つ返事で人助けをしている自分が内面では嫌がっている、というのは不自然に見えるだろう。そのわけを知りたくなるのも分かる。だが……


「……ごめん、それはまだ言えない」

「え……?」
191 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:21:02.93 ID:hpDiDMAI0
「……やっぱり、私ではダメでしょうか。まだ信頼が……」
「あぁあぁ、違う違う!『キャスター』が信用出来ないとか、そういうことじゃないから!」

「ただ単に……まだ、打ち明ける勇気がないってだけだから」

自分の心の中について話すとなると、自分の秘密について全て話さないといけなくなってしまう。自分にはまだ、全てをさらけ出す勇気がない。ただそれだけなのだ。

「でも、いつか必ず、全部話すから。だから……それまで待っててくれるか?」
「……はい♪分かりました、ご主人様」
「……ありがとう」

その時突然、まるで狙いすましたようなタイミングで、何処かからか魔力のパルスが響いた。
192 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:21:38.99 ID:hpDiDMAI0
その魔力は戦闘のものにしては微弱で、しかし魔術師なら誰もが感知出来るようなものだった。

「何だ……?」
「さあ……ですが、明らかにわざと出されたもののようですね。どうしますか?」
「罠の可能性もあるしな……とりあえず、使い魔で様子を見るか」

仏壇の引き出しに勝手にしまっている呪符を一枚取り出し、魔力を込める。そうすることで、呪符は手のひらサイズの小人型の使い魔へと姿を変えた。

「さっきの魔力の発信元に飛んでいって」

小人は命令に従い、家の庭から空へと飛んで行く。厳密な場所は分からなくてもおよその方角は分かっているので、そちらに向かってくれればいい。あとは魔力が濃い方へ勝手に行ってくれるはずだ。


適当な頃合いを測って、使い魔と感覚を共有する。使い魔がその時見ていた光景は……

「……教会?」
193 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:24:06.05 ID:hpDiDMAI0
「マスターの諸君、よくぞ集まっていただいた。私が今回の聖杯戦争の監督役を務める、言峰綺礼だ」

視界の先の男が無人の教会の中でそう切り出す。
左右を見ると、確かに使い魔らしき何かの影が見えた。どうやら、他の聖杯戦争の参加者(の使い魔)も先ほどの魔力を感知して教会にやって来ているようだ。

「さて、早速だが本題に入らせていただく。諸君の求める聖杯は、それを求めるものに対してのみサーヴァントとの契約を可能にする。ところが今、一人の裏切り者が現れた」

言峰綺礼は、淡々と話を進めていく。使い魔越しの映像でも、彼が油断ならない人物だということは伝わってきた。
嘘をつく人間には見えないが、真実を素直に話す人間にも見えない。掴み所のない男だ、というのが第一印象だ。
ーー彼に対して自分が強い嫌悪感を抱くのは、彼が対極の存在だからなのだろうか。それとも、瓜二つな存在だからなのだろうか。


「『バーサーカー』のマスター。その者は、 冬木市内で今なお発生している通り魔事件の犯人で、己の欲を満たすためにサーヴァントを使役している」
194 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:28:52.28 ID:hpDiDMAI0
今回は以上です。ギリギリ11月に間に合ってよかった……
いい加減誰か脱落させないとペース遅すぎんだろってことで討伐令イベントです。
士郎の秘密は物語の幹になる部分なので、終盤まで内緒ってことでどうか1つ。考察などはご自由にどうぞ。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/30(木) 01:29:35.73 ID:HhYt+QPR0
今は亡き士郎に瀕死の所をアヴァロンを埋め込まれ命を救われた。
偽者の夢を追い求めた士郎の遺志を継ぎ、偽者の偽者として生きる。
切嗣の一部分を理想とし自分を殺した士郎の一部を理想とし自分を殺してる。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 18:19:27.06 ID:XkICHdf1o
おつん
197 : ◆026JPAkZvkOC [sage saga]:2017/12/20(水) 23:55:21.18 ID:s9appvHx0
【報告】今月は更新出来なさそうです。本当すみません。
来月(というか来年)になったらまた更新出来ると思うので、よろしくお願いします。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/21(木) 15:12:56.18 ID:UqgBfbkto
ゆったりと頑張ってどうぞ
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/27(水) 18:23:00.12 ID:nx1fQd3To
うい
200 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2018/01/14(日) 22:31:36.99 ID:gDWTlMi10
『で、衛宮はどーすんのさ?』

言峰神父から発表があった日の夜、慎二から電話がかかってきた。

「『バーサーカー』討伐のことだろ?勿論参加するさ。無関係な街の人が犠牲になってるのに、放っておけるわけないだろ」
『ハ、衛宮ならそう言うと思ったよ』
「そういう慎二はどうなんだ?お前が参加しないっていうなら、俺は別に引き止めはしないけど……」

『バーサーカー』に夢中になっている間に他の参加者に隙を突かれる危険性もある。アクションを起こすことには必ずリスクも伴うのだ。

『僕が参加しないって言っても、衛宮はやるんだろう?なら僕もやるしかないさ。仮にも同盟者で友達なんだ、勝手に死なれたら困るしね』
「そうか……ありがとう」
『別に礼を言われる筋合いはないさ。それに、討伐報酬も欲しいしね』

言峰綺礼神父に討伐報酬として提示されたのは令呪一角。サーヴァントへの絶対命令権である令呪を増やせるというのはこの戦争においては非常に大きい。
ただ、マスターである自分に非常に忠実な『キャスター』がサーヴァントである以上、自分の場合は是が非でも欲しい……というわけでもないというのが正直なところだ。もちろん、貰えるものなら貰わない手はないが。
201 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2018/01/14(日) 22:32:09.55 ID:gDWTlMi10
『じゃあ、まずは衛宮たちが「バーサーカー」の居場所を見つけて、場所が分かり次第僕の「ランサー」とそっちの「キャスター」が叩く。それでいいな?』

言峰神父から与えられた情報はほぼ「『バーサーカー』のマスターが通り魔事件の犯人だ」ということのみだ。
『バーサーカー』がどんなサーヴァントなのか、真名は何なのか、いつどこに現れるのかなどの情報は一切ない。それらは自分で探れということなのだろうか。

というかそもそも、何故神父は『バーサーカー』のマスターが通り魔だということを知っているのだろうか。監督役である彼はどれだけの情報を持っているのか。考えれば考えるほど不気味で仕方ない。

『……衛宮、聞いてるか?』
「ん?……あぁ大丈夫、聞いてる。ちょっとぼーっとしてただけだ」
『おいおい……ま、精々僕らの足手まといにならないように頑張ってくれよな』
「分かってる。じゃあ、『バーサーカー』っぽい奴を見つけ次第、そっちに『キャスター』を向かわせるから」

電話を切った後、呪符数枚を仏壇から取り出し、それらをポケットに突っ込む。商店街付近に見張りのポイントを絞るなら、数はそこまでなくとも十分だろう。

「ご主人様、体調の方は大丈夫ですか?」
「寝たら治った」

そんな会話をしながら、自分と『キャスター』は商店街へと向かった。
202 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2018/01/14(日) 22:34:34.14 ID:gDWTlMi10
今回の更新はここまでです。
本当はもうちょっと溜まってから更新したかったのですが、「今日更新しなかったらお前は二度と更新しない」という天の声が聞こえた気がしたので投稿しました。
次は今月末くらいに……なればいいなぁ……
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 23:59:41.32 ID:jomFbQxdO
楽しみにしてます
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 17:16:10.40 ID:RlZfpxg6o
おつおつ
楽しみにしてるで
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/13(火) 10:49:29.20 ID:DK1LFfuC0
エタるんじゃねえぞ...
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 22:38:24.97 ID:fMOvwniy0
エタった?
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 21:57:29.06 ID:ABvu9ffL0
面白いSSばかりエタって悲しいわ
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/25(水) 16:04:13.75 ID:tc4FcV8I0
まだ?
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