士郎「……俺は、偽物なんだ」

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180 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 01:43:13.52 ID:etLuyLiK0
『よお、衛宮。ちょうどよかった。教室の掃除当番代わってくれよ』
『あぁ、いいよ』
『流石衛宮だ、やってくれると思ってたぜ』

『いつもすまないな。備品の修理を頼んで』
『気にすんな。このくらいなんて事ないって』
『ありがとう。この恩はいつか返す』
『だから別にいいって。俺が好きでやってることなんだからーー』

いつのまにか場面は代わって、舞台は学校になっていた。
マスターがクラスメイトたちに何かを頼まれ、それを文句の一つも言わずに笑顔で引き受ける姿はもはや見慣れたものだった。
ただ、ここは彼の夢の中だ。ゆえに『キャスター』は聞いてしまった。……彼の心の声を。

「何で自分がやらないといけないんだ」
「出来ることなら降りたい。こんなことやりたくなんてない」
「でも、やめてはいけない。やめられない」
「これは自分で選んだ道なんだから。一度始めてしまったからには、完遂しないといけない」
181 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 01:52:25.08 ID:etLuyLiK0

ーー
ーーー
ーーーー
気づいたら、マスターの夢は終わっていた。『キャスター』の目の前には、見慣れた衛宮邸の壁があった。

(ご主人様は……何故、人助けをしているのでしょう?)

以前マスターは、人助けをする理由として「正義の味方に憧れていた」と話していた。だから友達を助けるのは当然だ、と。
なら、今はどうなのか?憧れて「いる」ではなく「いた」なのは何か理由があるのだろうか……?

それから、その時にボソッと言っていた「偽物」という言葉も気になる。あれは心構えが偽物の正義の味方、ということなのか……?
……ただ、それでもやはり不自然だ。なぜやりたくもないことをやり続けているのだろう?誰も、彼に命令などしていないというのに……
何が、マスターをあそこまで駆り立てるのだろう?

今更になって、『キャスター』は自分のマスターのことを何も知らないことに気づいてしまった。
182 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 02:00:09.30 ID:etLuyLiK0
『キャスター』のマスター、衛宮士郎は己のサーヴァントのことをあまり知ろうとしない……というか、聞こうとするそぶりすらない。
聖杯戦争の5日目になってなお『キャスター』の真名を知らないのが最たる例だ。

きっとそれは、自分自身のことを知られたくない気持ちの裏返しなのではないか、と『キャスター』は推理した。自分が実は嫌々正義の味方をやっていることを知られたくない、という思いが逆に、相手のことを知りたくないという形で出ているのではないだろうか。

……ただ、それはあまりに寂しい。もっと自分のサーヴァントのことを頼ってくれてもいいのに、と『キャスター』は思ってしまう。
ご主人様の悩みは自分の悩み。ご主人様の悩みで、自分も共に悩みたい。辛いことがあるなら、出来れば解決してあげたい。良妻たろうとする『キャスター』は、心からそう思っていた。

「……聞いてみましょうか。ご主人様が起きたら、夢のことも含めて」
183 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/11(土) 02:03:21.46 ID:etLuyLiK0
Q.一月以上更新空けといて内容それだけかよ?
A.すまない……本当にすまない……

最近忙しくて書き溜める余裕が全然ありませんでした。更新できなくて本当ごめんなさい。
今後も不定期更新になりますが、過度な期待はせずに気長に待っていただけると嬉しいです。
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 02:44:18.90 ID:0A3IyDY0O
待ってるで
できれば完結してほしいけど無理ならせめて何も言わずにエタるのはやめてくれよ
無理なら無理と宣言してからいなくなってくれ

リアルを大事にな
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 05:20:41.29 ID:6lYruL8No
お疲れ様
うん、エタの場合は宣言欲しい
が、しかし完走まで頑張って欲しい
リアルを大切にね
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 07:25:29.06 ID:iDFT0+a80
やっぱりこのssの士郎は原作とは違うとこあるんか?

今更だけど士郎ってタマモ的にどうなんだろ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 14:14:54.77 ID:9v/COjbzo
ご主人様って呼んでるから、駄狐的には悪くないんじゃないかな?>士郎
(FGOでは「マスター」呼び)
ただし一夫多妻去勢拳を喰らうことは確定だろうけど。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 20:00:20.48 ID:Plli6iIn0
一夫多妻去勢拳(キック)か
189 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:18:49.56 ID:hpDiDMAI0

自分は、弱虫だ。
何かをしようとする勇気もなければ、何かを止めようとする勇気もない。あの日からずっと、「今まで通り」を維持し続けてきた。
だからこそ、嫌になっても人助けをやめなかったし、聖杯戦争に参加しようが風邪を引こうが変わらない日常を過ごそうとしてきた。
ーーそのせいで、今のような拗れた状況を生み出してしまったわけだが……。

「……ご主人様は、どうして嫌々人助けをしてるんですか?」

「……え?」
190 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:19:41.42 ID:hpDiDMAI0
マスターの夢を見た、と『キャスター』は言った。
その夢のある場面で、自分は人の頼みを嫌々受けていたという。
自分には寝込んでいた間にそんな夢を見た記憶はないのだが……サーヴァントが見る夢は、必ずしもマスターの見ている夢と同じではないらしい。

確かに、表面上は二つ返事で人助けをしている自分が内面では嫌がっている、というのは不自然に見えるだろう。そのわけを知りたくなるのも分かる。だが……


「……ごめん、それはまだ言えない」

「え……?」
191 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:21:02.93 ID:hpDiDMAI0
「……やっぱり、私ではダメでしょうか。まだ信頼が……」
「あぁあぁ、違う違う!『キャスター』が信用出来ないとか、そういうことじゃないから!」

「ただ単に……まだ、打ち明ける勇気がないってだけだから」

自分の心の中について話すとなると、自分の秘密について全て話さないといけなくなってしまう。自分にはまだ、全てをさらけ出す勇気がない。ただそれだけなのだ。

「でも、いつか必ず、全部話すから。だから……それまで待っててくれるか?」
「……はい♪分かりました、ご主人様」
「……ありがとう」

その時突然、まるで狙いすましたようなタイミングで、何処かからか魔力のパルスが響いた。
192 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:21:38.99 ID:hpDiDMAI0
その魔力は戦闘のものにしては微弱で、しかし魔術師なら誰もが感知出来るようなものだった。

「何だ……?」
「さあ……ですが、明らかにわざと出されたもののようですね。どうしますか?」
「罠の可能性もあるしな……とりあえず、使い魔で様子を見るか」

仏壇の引き出しに勝手にしまっている呪符を一枚取り出し、魔力を込める。そうすることで、呪符は手のひらサイズの小人型の使い魔へと姿を変えた。

「さっきの魔力の発信元に飛んでいって」

小人は命令に従い、家の庭から空へと飛んで行く。厳密な場所は分からなくてもおよその方角は分かっているので、そちらに向かってくれればいい。あとは魔力が濃い方へ勝手に行ってくれるはずだ。


適当な頃合いを測って、使い魔と感覚を共有する。使い魔がその時見ていた光景は……

「……教会?」
193 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:24:06.05 ID:hpDiDMAI0
「マスターの諸君、よくぞ集まっていただいた。私が今回の聖杯戦争の監督役を務める、言峰綺礼だ」

視界の先の男が無人の教会の中でそう切り出す。
左右を見ると、確かに使い魔らしき何かの影が見えた。どうやら、他の聖杯戦争の参加者(の使い魔)も先ほどの魔力を感知して教会にやって来ているようだ。

「さて、早速だが本題に入らせていただく。諸君の求める聖杯は、それを求めるものに対してのみサーヴァントとの契約を可能にする。ところが今、一人の裏切り者が現れた」

言峰綺礼は、淡々と話を進めていく。使い魔越しの映像でも、彼が油断ならない人物だということは伝わってきた。
嘘をつく人間には見えないが、真実を素直に話す人間にも見えない。掴み所のない男だ、というのが第一印象だ。
ーー彼に対して自分が強い嫌悪感を抱くのは、彼が対極の存在だからなのだろうか。それとも、瓜二つな存在だからなのだろうか。


「『バーサーカー』のマスター。その者は、 冬木市内で今なお発生している通り魔事件の犯人で、己の欲を満たすためにサーヴァントを使役している」
194 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2017/11/29(水) 23:28:52.28 ID:hpDiDMAI0
今回は以上です。ギリギリ11月に間に合ってよかった……
いい加減誰か脱落させないとペース遅すぎんだろってことで討伐令イベントです。
士郎の秘密は物語の幹になる部分なので、終盤まで内緒ってことでどうか1つ。考察などはご自由にどうぞ。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/30(木) 01:29:35.73 ID:HhYt+QPR0
今は亡き士郎に瀕死の所をアヴァロンを埋め込まれ命を救われた。
偽者の夢を追い求めた士郎の遺志を継ぎ、偽者の偽者として生きる。
切嗣の一部分を理想とし自分を殺した士郎の一部を理想とし自分を殺してる。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 18:19:27.06 ID:XkICHdf1o
おつん
197 : ◆026JPAkZvkOC [sage saga]:2017/12/20(水) 23:55:21.18 ID:s9appvHx0
【報告】今月は更新出来なさそうです。本当すみません。
来月(というか来年)になったらまた更新出来ると思うので、よろしくお願いします。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/21(木) 15:12:56.18 ID:UqgBfbkto
ゆったりと頑張ってどうぞ
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/27(水) 18:23:00.12 ID:nx1fQd3To
うい
200 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2018/01/14(日) 22:31:36.99 ID:gDWTlMi10
『で、衛宮はどーすんのさ?』

言峰神父から発表があった日の夜、慎二から電話がかかってきた。

「『バーサーカー』討伐のことだろ?勿論参加するさ。無関係な街の人が犠牲になってるのに、放っておけるわけないだろ」
『ハ、衛宮ならそう言うと思ったよ』
「そういう慎二はどうなんだ?お前が参加しないっていうなら、俺は別に引き止めはしないけど……」

『バーサーカー』に夢中になっている間に他の参加者に隙を突かれる危険性もある。アクションを起こすことには必ずリスクも伴うのだ。

『僕が参加しないって言っても、衛宮はやるんだろう?なら僕もやるしかないさ。仮にも同盟者で友達なんだ、勝手に死なれたら困るしね』
「そうか……ありがとう」
『別に礼を言われる筋合いはないさ。それに、討伐報酬も欲しいしね』

言峰綺礼神父に討伐報酬として提示されたのは令呪一角。サーヴァントへの絶対命令権である令呪を増やせるというのはこの戦争においては非常に大きい。
ただ、マスターである自分に非常に忠実な『キャスター』がサーヴァントである以上、自分の場合は是が非でも欲しい……というわけでもないというのが正直なところだ。もちろん、貰えるものなら貰わない手はないが。
201 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2018/01/14(日) 22:32:09.55 ID:gDWTlMi10
『じゃあ、まずは衛宮たちが「バーサーカー」の居場所を見つけて、場所が分かり次第僕の「ランサー」とそっちの「キャスター」が叩く。それでいいな?』

言峰神父から与えられた情報はほぼ「『バーサーカー』のマスターが通り魔事件の犯人だ」ということのみだ。
『バーサーカー』がどんなサーヴァントなのか、真名は何なのか、いつどこに現れるのかなどの情報は一切ない。それらは自分で探れということなのだろうか。

というかそもそも、何故神父は『バーサーカー』のマスターが通り魔だということを知っているのだろうか。監督役である彼はどれだけの情報を持っているのか。考えれば考えるほど不気味で仕方ない。

『……衛宮、聞いてるか?』
「ん?……あぁ大丈夫、聞いてる。ちょっとぼーっとしてただけだ」
『おいおい……ま、精々僕らの足手まといにならないように頑張ってくれよな』
「分かってる。じゃあ、『バーサーカー』っぽい奴を見つけ次第、そっちに『キャスター』を向かわせるから」

電話を切った後、呪符数枚を仏壇から取り出し、それらをポケットに突っ込む。商店街付近に見張りのポイントを絞るなら、数はそこまでなくとも十分だろう。

「ご主人様、体調の方は大丈夫ですか?」
「寝たら治った」

そんな会話をしながら、自分と『キャスター』は商店街へと向かった。
202 : ◆026JPAkZvkOC [saga]:2018/01/14(日) 22:34:34.14 ID:gDWTlMi10
今回の更新はここまでです。
本当はもうちょっと溜まってから更新したかったのですが、「今日更新しなかったらお前は二度と更新しない」という天の声が聞こえた気がしたので投稿しました。
次は今月末くらいに……なればいいなぁ……
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 23:59:41.32 ID:jomFbQxdO
楽しみにしてます
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 17:16:10.40 ID:RlZfpxg6o
おつおつ
楽しみにしてるで
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/13(火) 10:49:29.20 ID:DK1LFfuC0
エタるんじゃねえぞ...
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/05(木) 22:38:24.97 ID:fMOvwniy0
エタった?
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 21:57:29.06 ID:ABvu9ffL0
面白いSSばかりエタって悲しいわ
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/25(水) 16:04:13.75 ID:tc4FcV8I0
まだ?
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