西住みほ「シン・ボコラ 〜 君の名は進撃のボコ。」

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5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 20:31:17.18 ID:F5xV7vul0
みほ 「ここでですか?」

華 「近くに民家はありませんし、今は周りに私達しかいません。この時間帯、夜中に神社にお参りに来る人も滅多に居ないでしょう」

華 「みほさんの本心をぶちまけてみてはいかがですか?」

沙織 「大丈夫だよ。私達誰にも言わないから」

みほ 「分かりました」

みほ 「スゥー……」

優花里 (西住殿が大きく息を吸い込んでる)

みほ (せーの!)

みほ 「もぉー廃校を賭けた試合なんて嫌だーッ!」

みほ 「こんな人生嫌だーッ!」

みほ 「生まれ変わったら戦車乗りよりも、ボコにして下さーいッ!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 20:38:59.58 ID:F5xV7vul0
沙織 「フフフ、みぽりんは本当にボコが好きなんだね」

優花里 (ボコられグマのボコ、西住殿が魅せられた風変わりなクマのマスコット)

優花里 (……ボコが羨ましいです)

優花里 (戦車道全国大会優勝が大洗学園廃校取り消しの絶対条件……)

優花里 (大洗の廃校とは学校が無くなるだけではありません。それは学園艦という人口3万の町が消えること。学園艦で産まれた自分にとっては生まれ故郷が無くなること)

優花里 (後一つ……)

優花里 (後一つ勝てば誰も艦を追い出されずに済みます)

優花里 (西住殿、お願いします。どうか我が故郷を守って下さい)
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 20:46:22.15 ID:F5xV7vul0
【知波単学園艦 校舎】

絹代 「しかしこいつは思ったより想定外過ぎるぞ」

絹代 「まさか海面からこの学園艦の甲板までよじ登れる生き物が居たとは」

池田 「ですが対処の選択肢は分かりやすいです。『静観』、つまり野放しか、『捕獲』か『駆除』か、もしくは『艦外に追い出す』か……ですね」

細見 「でしたら突撃でよろしいかと」

福田 「私も突撃に同意します」

玉田 「そうだ、一刻も早く突撃すべきだ! そうだろう、皆?」

絹代 (確かに突撃は我が校の伝統だが、事を荒立てず穏便に追い出せないのか……?)

浜田 「ここは突撃だ。主砲とか使えば直ぐ済むだろう」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 20:54:47.62 ID:F5xV7vul0
【都内 首相官邸】

矢口 「ですから総理」

矢口 「自衛隊の運用や国民の避難など、政府による事案対処のあらゆる統合が必要です。直ちに災害緊急事態の布告の宣言をお願いします」

赤坂 「今は超法規的な処置として防衛出動を下すしか対応がありません。この国でそれが決められるのは総理だけです」

大河内 「しかしなあ……」

大河内 「今まで出たことのない、大変な布告だぞ……。その上、初の防衛出動の命令とは……」

矢口  「総理、国民を守ることが第一です」

辻 「総理、警察による短時間での避難誘導は困難です。防衛出動となると、逃げ遅れた住人を戦闘事態に巻き込む覚悟が必要となります」

大河内  「いやいや、それは……」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 21:01:19.81 ID:F5xV7vul0
国平 「日米安保を適用して米軍に駆除を肩代わりしてもらうのはどうですか!?」

花森  「いえ、まずはこの国の政府と自衛隊が動くべきです。安保条約があったとしても米国はあくまで支援の立場です」

菊川 「しかしあれは生物です。下手に刺激すると被害が拡大する恐れがあります!」

赤坂 「そう、生物です。ですから人の力で駆除することができます。同じ自然災害と区分しても、地震や台風とは違います」

東 「総理、ここは苦しいところですが、被害の拡大を防ぐためにも総理のご決断をいただかないと」

大河内  「今ここで決めるのか! 聞いてないぞ!」

東 「時間がありません。ご決断を」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 21:09:44.79 ID:F5xV7vul0
矢口 「結局防衛出動は布告されずか……」

赤坂 「まあ、ある程度予想はしてたが。結局自衛隊の運用は救助活動や避難誘導といった非戦闘行為に限定された」

矢口 「やりきれんな」

赤坂 「つい先日まで、総理は外国人からの政治献金受領問題で追求されていた。それが海洋不明生物の出現で有耶無耶になりつつある」

赤坂 「総理にしてみれば寧ろ今回の騒動は渡りに船、早期解決は望んでないだろう」

矢口 「だからって国民を守らない道理は無い」

赤坂 「お前の言いたいことは分かるが
――」

泉 「そこに居たか矢口」

矢口 「どうした?」

泉 「マズイことになった」

泉 「学園艦の住民が自力で例の生物の駆除を始めたとの情報が入った」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 21:23:12.73 ID:F5xV7vul0
【大洗学園艦 みほ寝室】

ボコ (痛てて……)

ボコ (……あれ、痛くない)

ボコ (さっきまでアイツ等にボコられてたのに)

ボコ (小っこいオイラの……人形?)

ボコ (ここは……何処だ……)

ボコ (オイラが抱いてたのだけじゃない。オイラの姿をした人形が沢山……何なんだ、ここは?)

ボコ (何だ? この手……。足も変だろ!? オイラの身体どうなっちまったんだ!?)

ボコ (何かが身体を覆ってる? クッ……引っ張っても破けない)

ボコ (チクショウ! 何が何だか分かんねえ……)

スッポン!

ボコ 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

ボコ (やっと取れた……これって……)

ボコ (人間が着る『服』ってヤツだよな……)

ボコ (オイラの皮膚おかしなことになってる……博士が言ってた肌色って奴か)

ボコ (これってやっぱり人間になってるのか?  頭にばっかり沢山毛が生えてるし)

ボコ (胸が膨らんでる……)

ボコ (先っちょだけピンクなんだ……)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 21:28:21.63 ID:F5xV7vul0
【大洗学園艦 校舎】

沙織 「みぽりん月曜日からご機嫌ね」

みほ 「はい。沙織さん、実は昨日……」

みほ 「夢の中で私、ボコになったんです」

沙織 「ボコに?」

みほ 「うん。楽しかったぁ」

華 「一昨日お参りに行った時のみほさんの願いを神様が叶えたんですね」

みほ 「私もそう思います。あの時華さんがアドバイスしてくれたおかげです。ありがとう」

華 「私は何もしてませんよ」

優花里 「具体的にはどんな内容の夢でありますか?」

みほ 「ボコになってクジラやイルカと一緒に泳いだり」

麻子 (クジラやイルカと泳ぐ?)

みほ 「無人島の砂浜で日光浴したり」

沙織 (ビーチで日光浴?)

みほ 「それから何か食べてたような気がするんだけど……思い出せない」

華 (食事……)

みほ 「最後はちゃんと他の動物達にボコって貰えてそこで目が覚めたの」

優花里 (色々とツッコミどころはありますが、元気な西住殿の満面の笑顔を見られて自分は嬉しいです)

華 「ボコって熊ですよね」

みほ 「うん」

麻子 「まあ、夢だしな……。ところで西住さんはニュース見てないのか?」

みほ 「ニュース? 何かあったんですか?」

華 「知らないのですか? 知波単で謎の生物が暴れている話」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 21:36:21.23 ID:F5xV7vul0
【知波単学園艦 路上】

絹代 (これまでも敗北は経験してきたが……)

キュラキュラキュラキュラキュラ……

絹代 (帰路において戦車の無限軌道の音がこんなにも虚しく心に響いたことは無い……)

知波単住民A 「化け物をやっつけに行くって聞いてたが……」

知波単住民B 「なんだありゃあ……」

知波単住民C 「出撃した時の二割位しか帰って来てないじゃねえか?」

福田母 「すみません……娘は、娘はおりませんか?」

絹代 「停止!」

絹代 「危ないですよ! 急に飛び出すと」

福田母 「すみません。……私、福田の母です。いつも娘がお世話になっております。娘は、娘はおりませんか?」

絹代 「……福田の母親だ。持ってこい」

玉田 「はい……」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 21:48:01.39 ID:F5xV7vul0
玉田 「持って来ました」

絹代 「ああ」

絹代 「こちらを」

福田母 (包み?)

細見 (福田の母上が包みを開けている……福田、親不孝者め……)

福田母 (!?)

福田母 (この血塗れの眼鏡、まさか!?)

絹代 「これだけしか……これだけしか取り返せませんでした」

福田母 「ヴヴヴヴッ! ……何でこの子が……ヴヴ……」

絹代 (人目を憚らず号泣されている。無理も無い……)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 21:53:04.71 ID:F5xV7vul0
福田母 「グスッ……役に……立ったんですよね?」

絹代 「!」

福田母 「例え直接の手柄を立てた訳でなくても、娘の死は知波単の反撃の糧になったんですよね!?」

絹代 「ええ、勿論」

絹代 「……」

絹代 「いや……」





絹代 「私が無能なばかりに!」

絹代 「ただいたずらに生徒を死なせ!」

絹代 「奴らを艦から追い払うことが出来ませんでした!」

絹代 「我々は今回、何の成果も得られませんでした!」

《知波単学園艦、巨大海洋不明生物の駆除を断念。全住民の本土疎開を決定》
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/29(土) 22:01:18.15 ID:F5xV7vul0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 13:18:24.00 ID:bESWA+GnO
既にお腹いっぱいになりそうなんだけど、これに艦これとけもフレ混ぜようとしてたとか頭狂ってる
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/30(日) 16:39:04.30 ID:jvkz1LUKO
死者が出るのか...
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 19:25:52.25 ID:rvYj2yxh0
絹代 「よくぞ来てくれました」

ケイ 「Thank you. ……友人のパーティからエアポートまで直行だったので着替えを用意する時間もなかった」

ケイ (……ZARAは無さそうね?)

細見 (サンダースからの支援の申し出……)

玉田 (動きが性急過ぎるな)
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 19:32:02.14 ID:rvYj2yxh0
ケイ 「今回のことは何と言えばいいか……」

絹代 「真っ先に支援の手を差し伸べて下さったサンダースの皆さんに感謝します」

ケイ 「困った時はお互い様よ。避難誘導は自衛隊や警察に任せるとして、私は同じ戦車乗りとして出来ることをしたい」

ケイ 「ストレートに聞くわ」

ケイ 「貴方達の受け入れ先は戦車も混みで受け入れてくれるの?」

絹代 「いいえ、荷物は最小限にと言われてます」

ケイ 「今動かせるのは何両?」

絹代 「8両です。他はあの怪物達に撃破されて……」

ケイ 「OK。その8両、サンダースで預かるわ」

ケイ 「貴方達が再び戦車道が出来る日まで」

絹代 「ありがとうございます……。このご恩は必ず……」

ケイ 「聞いての通りよ、ナオミ。オペレーション『フレンズ』発動」

ナオミ 「イエス、マム!」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 19:39:39.21 ID:rvYj2yxh0

ケイ 「ところで一つお願いがあるんだけど」

絹代 「はい、何なりと」

ケイ 「今の件とtradeして貴方達の蓄積情報を私に頂戴。ただし第三者にintelligenceは流さない。Just Saunders Chihatan, so win win」

絹代 「申し訳ないのですが……」

ケイ 「It's a joke、交換条件になんてしないわ。貴方達の戦車はきちんと預かって必ず返す」

絹代 「いえ、そうでは無くて……」

絹代 「自分、外来語が苦手で」

ケイ 「Oh I'm sorry」

絹代 「……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 19:47:07.43 ID:rvYj2yxh0
【大洗学園艦 校庭】

沙織 「覚えてないのぉ?」

みほ 「うん」

沙織 「昨日は自分の机もロッカーも忘れたって言って、髪は寝癖付いてたし」

みほ 「ええっ!?」

優花里 「何と言うか記憶喪失みたいでした」

麻子 「でも西住さん、昨日はマジでちょっと変だった? どっか体調悪いんじゃないか?」

みほ 「元気だけどなぁ……」

沙織 「ストレスとかじゃない? ほら、決戦戦ももうすぐでしょ」

華 「それから一人称がたまに『オイラ』でした。熊本の方言ですか?」

みほ 「えええっ!?」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 19:56:07.79 ID:rvYj2yxh0
【サンダース学園艦 会議室】

カチューシャ 「そろそろ……」

カチューシャ 「今日の会談の本題に入らない?」

ダージリン 「同意するわ」

ダージリン 「元々この3校でのトップ会談は全国大会で連覇を続ける黒森峰の優勝を阻止する為に、私達よりもずっと前の代から続いて来たもの」

ダージリン 「3校共敗退したこのタイミングで席を設けるにしても反省会なら決勝を見届けた後でもいい筈」

ダージリン 「例の知波単を襲った怪物の件ね」

カチューシャ 「ケイ? カチューシャとダージリンを呼んだ理由、話して頂戴」

ケイ 「OK。まずはこれを見て」

ダージリン 「これは?」

ケイ 「ある学者が残したUMAの資料よ」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 20:04:22.77 ID:rvYj2yxh0
ケイ 「この資料に書かれていることが本当なら、UMAの正体は進化を遂げた太古の海洋生物」

ケイ 「彼らはこれまで地球に存在したどの動物よりも巨大で……」

ケイ 「同じ種でありながら個体毎に様々な形態を持つ」

カチューシャ 「これは……『撲堪等』……ボ、コ、ラ、って読むのか?」

ケイ 「Yes. These monsters code name is ……」

ケイ 「バッコーラ」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/30(日) 20:09:55.25 ID:rvYj2yxh0
今日はここまで。
オペレーション『フレンズ』は東日本大震災での米軍の『トモダチ』作戦が元ネタです。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/03(水) 12:09:37.13 ID:LvE7IsYq0
ケイ 「そして知波単を襲ったのはそのうち5体」

ダージリン 「どうしてそれを?」

ケイ 「キヌヨから聞いたわ」

カチューシャ 「人道支援という名の情報収集か?」

ケイ 「否定はしないわ。そのモンスターがサンダースを襲う可能性だってあるし備えは大切よ」

カチューシャ 「フン、そのプーガロがプラウダに侵攻して来たら返り討ちにしてやるわ」

ダージリン (資料によると『ボコラ』とは『ボコ達』という意味で彼らの総称を指す。そして各個体にはそれぞれ名前がある)

ダージリン (青い皮膚で猫とも狸ともつかない風貌の『ドーラ』)

ダージリン (同じく猫に近い容姿ながら赤と白のコントラストが際立つ『ケイティ』)

ダージリン (鼠を思わせる外見の『マッキー』)

ダージリン (猿に似た姿の『ジークン』)

ダージリン (ワニみたいな格好の『エリガン』)

ダージリン (そして見た目がクマの『ボコ』)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/03(水) 12:35:31.62 ID:LvE7IsYq0
ケイ 「ただ一つ気になることがあるの」

ケイ 「professorマキの資料によると、この生物は6体、その存在が確認されている」

ケイ 「資料とキヌヨから聞いた話とを照らし合わせると、知波単を襲ったUMAの中に居なかった1体は連中のnamed monster……」

ケイ 「バッコゥ」

カチューシャ 「ボコでしょ?」

ケイ 「……その1体がどうしてその場に居なかったのか?」

ダージリン 「こんな格言を知ってる?」

ダージリン 「この世の中に人間ほど凶暴な動物はいない。狼は共食いをしないが、人間は人間を生きながらにして丸呑みにする」

カチューシャ 「ガルシンね」

ダージリン 「ペコが居なくても何とかなるものね。フセーヴォロド・ガルシンをご存知とは流石プラウダの隊長だわ」

カチューシャ 「フン、ロシア文学はカチューシャにとって嗜みの一つよ」

ケイ 「人間程凶暴で無くても共食いする生き物はいる。彼らが該当するかは想像の域を出ないけど」

ダージリン 「こちらとしては寧ろ共食いしてくれた方が有り難いわ。駆除の手間が省けますもの」

ケイ 「That's right. そして懸念すべきは……」

ケイ 「連中が今後人間を捕食する可能性ね」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/03(水) 12:52:59.59 ID:LvE7IsYq0
【大洗学園艦 教室】
女教師 「『たそ彼』、これが『黄昏時』の語源ね。黄昏時は分かるでしょう?」

女教師 「夕方、昼でも夜でもない時間。世界の輪郭がぼやけて、人ならざるものに出会うかもしれない時間。もっと古くは『かれたそ時』とか『かはたれ時』とも言ったそうです」

ボコ (人ならざるもの……オイラのことか)

ボコ (最初は戸惑ってばかりだった)

ボコ (人間って腰の位置も高いし、こんな細くて長い足でよくバランス取れると思ってた)

ボコ (それでもオイラは天才だから歩いたり走ったりは普通に出来たが)
 
ボコ (学校の勉強難し過ぎだろ……)

ボコ (昔、博士が『クジラやイルカより賢い生き物が居る』って喜んで、オイラ達に読み書き算盤を教えてくれたが)

ボコ (ここの勉強はそんなレベルじゃねえ)

ボコ (あのモジャモジャ頭が色々教えてくれなかったら今頃……)

ボコ (ノート、そろそろ次のぺージを)

ペラリ



『あなたは誰?』



ボコ (ん? 何だこの書き込み)
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/03(水) 13:25:28.09 ID:LvE7IsYq0
みほ (最近家に帰ると物の置き場所が変わってる)

みほ (時々身に覚えの無いことを心配される)

みほ (記憶に無い授業の板書が、私と違う誰か別の人の筆跡でノートに書き込まれてる。この筆跡の人ってまさかとは思ってたけど……)



『あなたは誰?』

『オイラ、ボコだぜ』




みほ 「これって……これってもしかして……!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/03(水) 13:51:05.04 ID:LvE7IsYq0
【太平洋 東日本沖】

ボコ 「また負けた……」

ジークン 「こいつ、今日は普通だな」

ドーラ 「昨日は何かワザとやられてた感があった」

エリガン 「昨日はなんか……可愛かった」

ジークン 「えぇ……?」

ボコ 「ワザとやられる訳ないだろ!」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/03(水) 14:04:17.25 ID:LvE7IsYq0
ボコ 「はぁああ……!? これってもしかして本当に……!」

みほ 「私、夢の中でボコと……」

ボコ 「オイラは、夢の中であの人間と……」

みほ&ボコ 「「入れ替わってるぅ!?」」

みほ (何が起きているのか、だんだん分かってきた。ボコは見た目はクマに似てるけど実際は海に棲む新種の生物で)

みほ (ボコ達を調査した牧博士から、言葉や人間に関する知識を教わっていた)

ボコ (どデカイ船に住むみほとの入れ替わりは不定期で、トリガーはボコられること。原因は不明)
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/03(水) 14:08:26.33 ID:LvE7IsYq0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/03(水) 19:23:56.00 ID:qvNL5v5J0
乙ですわ
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/03(水) 19:41:05.13 ID:QguWLQ1I0
普通に面白そうで草
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 12:07:50.13 ID:7kF2RjrO0
ボコ 「それでも、オイラ達は確かに入れ替わっている。周囲の反応がそれを証明している。だから――」

みほ 「だから私達はお互いの生活を守る為ルールを決めた。入れ替わってしまっている時の注意点や守るべき禁止事項」

みほ (この謎現象をとにかくも乗り越えるために協力し合うこと。それなのに……)

ボコ (それなのに……)

ボコ (あの人間は!)

みほ (あの生き物は!)
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 12:14:23.44 ID:7kF2RjrO0
【大洗学園艦 教室】

みほ (このノートの書き込み、ボコの字ね)




『〔あんこうチーム〕
装填手……秋山優花里(人間、モジャモジャ頭)
操縦手……冷泉麻子(人間、小っこい寝ぼすけ)
砲手……五十鈴華(人間、ノッポの大食い)
通信手……武部沙織(人間、おっばいメガネ)

チーム名はあんこうなのに全員人間』



みほ (どういう覚え方してるの……)
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 12:23:02.10 ID:7kF2RjrO0
【太平洋 東日本沖】

みほ 「お願いです。どうかもう人間を襲うのは止めて下さい」

マッキー 「日頃突っかかってくる癖に調子良くね?」

ドーラ 「人間とボコは仲ええなあ」

ケイティ 「こんなキャラだっけ?」

エリガン 「だったら……」

エリガン 「何か面白いことやってみせなさいよ」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/04(木) 12:34:10.60 ID:7kF2RjrO0
みほ 「こっち来て アンアン 逃げないで アンアン♪」

ケイティ 「えぇ! 私絶対無理!」

エリガン 「よく人前で出来るわね……」

ジークン 「それは何て言うんですか? 腰を振って動き回る奴」

みほ 「あんこう音頭です」

みほ 「お鍋はアツアツ♪」

みほ 「おいしくってアツアツ♪」

みほ 「味噌でしょうゆでアッツアツ♪」

ボコ 「オイラの身体で恥ずかしいことしてんじゃねえ! おかげで甜められっ放しじゃねえか!」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 12:53:31.56 ID:7kF2RjrO0
【大洗学園艦 更衣室】

ボコ (フーッ、今日の戦車道の練習も終わったぜ) 

ボコ (相変わらず着替えが面倒くせぇ……そうだ!)
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 13:08:34.68 ID:7kF2RjrO0
【大洗学園艦 通学路】

ボコ 「チキショウ、雨が降って来やがった」

優花里 (チキショウ? 来やがった?)

ボコ 「優花里さん、喫茶店まで走ってそこで雨宿りがてらお茶しない?」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 13:22:41.62 ID:7kF2RjrO0
【大洗学園艦 戦車喫茶『エクレール』】

優花里 「西住殿からお茶にお誘い頂きありがとうございます」

ボコ 「気にしないで下さい。優花里さんにはいつも助けて貰ってるから」

ボコ (どうだ、あいつの真似も板についてきただろ)

優花里 (これは気づいてないだけでしょうか? それとも誘っているのでしょうか?)

優花里 (先の戦争では、旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあってほしいという発想などにしがみついたために、国民に300万人以上の犠牲者が出ています。根拠のない楽観は禁物です)

優花里 (誘っている訳ではないとして……)

優花里 (今にもパンツが見えそうな西住殿の座り方は一体……)

優花里 (そして何よりも……)

優花里 (何故ノーブラなのですか!?)

優花里 (制服が濡れたせいで透けてますよ!)

ボコ (一番小っこいのを一着くらい省いても問題ねえよな)

みほ 「下着はちゃんと着けて下さい! 人生の基本でしょ? あとスカート注意!」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 13:37:41.15 ID:7kF2RjrO0
ボコ 「戦車道とか無理だろ!? それに練習入れ過ぎ」

みほ 「決勝戦近いし、ボコが入れ替わってる日は練習にならないから」

ボコ 「ん〜うめぇ……」

みほ 「エクレールで人のお金無駄遣いしないで下さい 」

ボコ 「食ってるのはお前の身体」

みほ 「食べた記憶無いのに服が少しキツくなり始めてるし……」

みほ 「ちょっとボコ、どうして澤さんからラブレター貰ってるの? それに優花里さんとデートの約束ってどういうこと?」

ボコ 「お前、オイラに人生預けたほうがモテんじゃね?」

みほ 「自惚れないで。彼女いないくせに! 」

ボコ 「お前だっていねえじゃねえか!」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 14:06:04.45 ID:JwIplp8k0
【静岡 東富士演習場】

みほ (遂に決勝が始まる……)

みほ (試合の行方ともう二つ心配事が)

みほ (一つ目はボコ、今日は出て来ないで)

みほ (お願い……)

場内アナウンス 「決勝戦の前に、本大会出場校である知波単学園の、巨大海洋不明生物による死没者に黙祷を捧げます。会場の皆様もどうかご起立願います」 

場内放送アナウンス 「黙祷」

みほ (もう一つは、ボコの仲間達をまだ説得出来ずにいること。もしまた人が襲われたら……)

みほ (知波単で亡くなられた皆さん。どうか安らかにお眠り下さい。必ず平和な海を取り戻します)
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/04(木) 14:15:27.22 ID:JwIplp8k0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/04(木) 14:16:53.52 ID:eP/M5jRlo
今日初めて読んだが、淡々と版権キャラが死んでるのが怖いと言えば怖い
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/05(金) 00:50:26.79 ID:Be5WjRLqO
これでスターウォーズやパイレーツオブカリビアンまでぶち込んだらどうなることか
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 15:04:24.87 ID:H6IgoR/j0
みほ (川を渡河中にうさぎさんチームがエンスト……)

梓 「私達は大丈夫です。隊長達は早く行って下さい!」

優花里 「危ない」

沙織 「このままだと横転しちゃう」

麻子 「もたもたしていると黒森峰が来るぞ」

華 「でも、ウサギさんチームが流されたりしたら……」

みほ 「……」

沙織 「行ってあげなよ、こっちは私たちが見るから」

みほ 「沙織さん……」

みほ 「優花里さん、ワイヤーにロープを」

優花里 「はい!」

みほ 「みんな、少しだけ待ってて下さい」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 15:27:12.71 ID:H6IgoR/j0
みほ (ロープを腰に巻いて、八艘跳びの要領で各戦車の間をジャンプしながらM3に取り付く)

みほ (助けるんだ、うさぎさんチームを……そして勝つんだ。せーの!)

ポオォン! グラッ?

みほ (え、視界が?)

ドボォン! ゴポゴポゴポゴポ……
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 15:38:43.52 ID:H6IgoR/j0
【太平洋 東日本沖】

みほ (……)

みほ (ハッ!? 水中? 落ちた?)

みほ (ジャンプに失敗した。早く上が、痛ッ!?)

みほ (身体のあちこちが痛む、イタタ……、それに、水中なのに息苦しくない)

みほ (まさか入れ替わってる!)

みほ (ボコにはあれだけ喧嘩しないでって言ったのに……)

みほ (決勝戦が終わるまでは絶対に喧嘩しないでって……)
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 15:45:56.42 ID:H6IgoR/j0
みほ 「誰かーッ! 誰かいねえかーッ! ビビッてんじゃねえぞーッ! とっとと返事しやがれーッ!」

みほ (ボコならこんな風に叫ぶかな)

みほ (入れ替わりが起きたということはボコをボコった生き物達がまだ近くに居る筈)

みほ (誰でもいい、私を見つけて。そしてボコッて!)

みほ (早く戻らなきゃいけないの!)
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 15:58:28.15 ID:H6IgoR/j0
【静岡 東富士演習場】

優花里 「西住殿!」

ボコ 「……状況は?」

ボコ (水中からロープで引っ張られて戦車に乗った。何で川の中で立ち止まってるんだ?)

麻子 「相変わらずだ。黒森峰はまだ追い付いていない」

沙織 「早くうさぎさんチームを助けないと!」

ボコ 「……」

華 「みほさんを少し休ませましょう、ずぶ濡れですし。優花里さん、代わりにうさぎさんチームの救助に行って貰えますか?」

優花里 「はい」

麻子 「西住さんの面倒はこっちで見る」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 16:27:29.91 ID:H6IgoR/j0
【静岡 東富士演習場】

沙織 「大丈夫? ハイ、タオル」

ボコ 「ありがとうございます。皆さん心配かけました」

華 「……」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 16:35:05.53 ID:H6IgoR/j0
沙織 「着替えはゆかりんが持ってたら貸して貰おう。サイズはほとんど同じでしょ。それまでは私のジャケット羽織ってて」

ボコ 「はい……」

華 「みほさん?」

華 「私の誕生日、覚えてますか?」

ボコ 「えっ? もしかして今日だったの?」

華 「私の誕生日が思い出せないなら他の人の誕生日は思い出せますか?」

みほ 「大丈夫だよ、意識もはっきりしてるし」

華 「答えて下さい」

みほ 「えっと、優花里さんの誕生日が6月6日で……」

華 「みほさん、貴方の誕生日はいつですか?」

ボコ 「……」

麻子 「おい……記憶が混濁してるのか?」

沙織 「まさかさっき川に落ちた時のショックで!」

華 「なるほど……最近様子がおかしいとは思ってましたが……」

華 「今はみほさんの裏の人格がみほさんの身体を乗っ取っているようです」

華 「単刀直入にいいます」

華 「みほさんを返して下さい」

ボコ 「何を言ってるの華さん。私はここに居るよ」

ボコ (二重人格とは違うが結構いい線突いてきやがる)
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/06(土) 16:43:14.73 ID:H6IgoR/j0
>>53は書き間違えました。
>>55と差し替えで読んで下さい。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 16:44:28.61 ID:H6IgoR/j0
沙織 「着替えはゆかりんが持ってたら貸して貰おう。サイズはほとんど同じでしょ。それまでは私のジャケット羽織ってて」

ボコ 「はい……」

華 「みほさん?」

華 「私の誕生日、覚えてますか?」

ボコ 「えっ? もしかして今日だったの?」

華 「私の誕生日が思い出せないなら他の人の誕生日は思い出せますか?」

ボコ 「大丈夫だよ、意識もはっきりしてるし」

華 「答えて下さい」

ボコ 「えっと、優花里さんの誕生日が6月6日で……」

華 「みほさん、貴方の誕生日はいつですか?」

ボコ 「……」

麻子 「おい……記憶が混濁してるのか?」

沙織 「まさかさっき川に落ちた時のショックで!」

華 「なるほど……最近様子がおかしいとは思ってましたが……」

華 「今はみほさんの裏の人格がみほさんの身体を乗っ取っているようです」

華 「単刀直入にいいます」

華 「みほさんを返して下さい」

ボコ 「何を言ってるの華さん。私はここに居るよ」

ボコ (二重人格とは違うが結構いい線突いてきやがる)
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/06(土) 16:47:21.03 ID:H6IgoR/j0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 19:54:21.97 ID:RqXHPpWj0
【太平洋 東日本沖】

みほ (誰も来ない……)

みほ (ボコ……)

みほ (早く帰りたい……帰らないと……)

みほ (どうしてボコられないと帰れないんだろ……)

みほ (……)

みほ (そうだ!)

みほ (もし入れ替わりのきっかけが、単純に身体のダメージによるものだとしたら)

ボコッ、ボコッ

みほ (自分で自分を殴ってもなかなか上手くいかない)

みほ (もっとダメージが必要なのかな)

みほ (手っ取り早くダメージを与える方法……)
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 20:01:20.34 ID:RqXHPpWj0
【静岡 東富士演習場】

華 「さっきのタオルでの身体の拭き方を始め、みほさんにしては動きに女の子らしさや品がありません」

華 「貴方は誰ですか?」

ボコ 「今日の華さん何か変だよ、沙織さんもそう思うでしょ」

沙織 「ごめん。私も前々から思ってたけど言い出せなかった」

沙織 「みぽりん時々別人になるの」

沙織 「いつか本人の口から話してくれるまで待とうって思ってたけど」

麻子 「いくら見た目がそのままだからって口調だけ真似てもバレバレだ」

麻子 「恐らく秋山さんも気付いてるだろ」

ボコ 「お前ら、さっきから言いたい放題……」

華 「……遂に正体を現しましたね」

ボコ 「オイラは経験したんだ。この身体であいつの日常を。そしてみほとも沢山意見を交わしてきた」

ボコ 「皆の前では健気に振る舞い、周りに気配りしつつ、一人で悩みながらそれでも弱音を吐かずに頑張ってきたあいつを」

ボコ 「お前等揃いも揃ってみほをアテにし過ぎだ!」

華 「そんなこと、言われなくても分かってます!」

華 「脅迫してまでみほさんに戦車道を履修させようとした生徒会の横暴に対し最終的に全員が口を噤んたのは、みほさんを隊長にしないと大会を勝ち抜けないことが分かっていたからです」

華 「大洗に来る前にも黒森峰では敗戦の責任を問われ、実家を勘当され、心休まる時の無かったであろうみほさんがプレッシャーに耐えかねて生み出した人格が貴方なのでしょう」

華 「そこまでみほさんを追い詰めてしまったこと、彼女に多くを背負わせてしまったこと……」

華 「私を含め、人類全てに罪がある!」

沙織 「そんなスケールの大きな話!?」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 20:07:29.41 ID:RqXHPpWj0
華 「私達は勝って、みほさんの戦車道が正しいことを証明することでみほさんに報いたい」

華 「そして何よりも最後までみほさんと一緒に戦いたい」

華 「その為にも彼女を返して下さい」

ボコ 「……そうだ、華」

華 「?」

ボコ 「お前次の生徒会長に立候補しろ」

ボコ 「そして会長になったら今の会長をボコってこう言いな」

ボコ 「『殴り返してみろ』ってな」

ボコ 「ただその前にオイラをボコれ」

ボコ 「そしたらみほに会わせてやる」

麻子 「普通に元に戻れよ」

ボコ 「あったらやってらぁ! 他に方法がねえんだ!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/07(日) 20:15:55.62 ID:RqXHPpWj0
優花里 「秋山優花里、只今帰還――」

ドカッ

麻子 「さっさと西住さんに戻れ」

バキッ

華 「カッコつける暇があったらとっとと退場して下さい」

ベシッ

沙織 「ごめんね、時間ないから」

優花里 「何やってんですか!」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 20:20:49.28 ID:RqXHPpWj0
優花里 「西住殿〜」

麻子 (秋山さんが西住さんを抱き締めて泣いてる)

沙織 「ごめんね、でもこうするしか」

優花里 「事情は分かりました。だからってあんまりです!」

優花里 「あんこうチームから袋叩きに遭う西住殿なんて見たくなかったです。ウウウ……」

ボコ 「優花里〜、オイラの為に泣いてくれるのか。お前いい女だな」

麻子 (違えよ)

華 (みほさんが戻って来ない、このままでは……)
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 20:28:20.63 ID:RqXHPpWj0
【太平洋 東日本沖】

みほ (これまで入れ替わってきたから分かっている……ボコの再生能力の高さは折り紙付き)

みほ (どの位痛いのかな? 自分では経験したことが無いから)

みほ (迷ってる暇は無い、やれることをやるんだ)

みほ (ボコ、ごめんね……)

みほ (ハァ……。この身体でオ◯ッコする度に思ってたけど)

みほ (リアル過ぎ)

グチャ!
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 20:37:49.83 ID:RqXHPpWj0
【静岡 東富士演習場】

ボコ ガクッ

優花里 「!」

優花里 「西住殿!? 西住殿!?」

沙織 (みぽりんグッタリしてる……)

華 (裏人格が落ちた!?)

みほ 「ヴゴオッ!」

あんこうチーム(みほ除く) 「!?」

みほ 「ヴグウウッ……ハァ、ハァ、ハァ」

みほ (もう痛くな、イテテテ……)

みほ (今度は身体のあちこちが痛い)

優花里 「西住殿!」 

沙織 「みぽりん!」

麻子 「西住さん!」

華 「みほさん!」

みほ 「4号の天井……私、戻ってこれたんだ……」 

優花里 「いつもの西住殿です!」

沙織 「良かった……本当に良かった」

華 「一時はどうなることかと思いました」

麻子 「これで戦えるな」

優花里 「西住殿、M3とのワイヤー連結終わっております!」

みほ 「優花里さん、沙織さん、華さん、麻子さん……みんな、心配かけてごめんなさい」

沙織 「いいっていいって」

華 「お互い謝るのは後、今は試合のことを考えましょう」

麻子 「そうだな」

麻子 (私達も西住さんボコってしまったし)

優花里 「西住殿、指示をお願いします!」

みほ 「分かりました。M3を牽引して川を渡ります。全員持ち場について下さい」

みほ 「麻子さん、いけますか?」

麻子 「何時でも行けるよ」

みほ 「パンツァー・フォー!」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 20:44:12.17 ID:fXciEeWLo
ボコられ損のみほ
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 20:46:54.12 ID:RqXHPpWj0
その後、大洗女子学園戦車道チー厶は名門黒森峰を破って優勝を果たした。
大洗が初めて高校戦車道全国大会を制した快挙であったが、それを歓喜するには失われたものがあまりにも大きな者が居た。

【太平洋 東日本沖】

ボコ (死ぬ……痛みで吐きそう……)

ボコ (戻ってきた途端オッドボールかよ……)
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/07(日) 20:52:18.23 ID:RqXHPpWj0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
これにて序盤終了。
しばらく書き溜めてから1〜2週間後また投下します。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 21:12:54.83 ID:LiwtyPGAo
ボコのポコがホコだけになってしまった……
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 21:48:07.23 ID:fXciEeWLo
仕方ないとはいえ金玉千切るなんてみほの度胸は狂ってるぜ
再生するのか…?
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 22:12:00.81 ID:4a74rCuT0
>>68
お、折り紙付きだから(震え声)
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/12(金) 23:03:15.87 ID:+qdz2vrb0
【某県 避難所】?

浜田 「このご馳走は何でありますか!? ひょっとして誰かが怪物を殲滅したお祝いですか?」

絹代 「慌てるな浜田。今日はアンツィオ高校が炊き出しに来てくれたのだ」

ペパロニ 「アンツィオ名物鉄板ナポリタンだよ〜!」

細見 「この香ばしい香り……西隊長!」

細見 「細見、辛抱たまらんであります!」

玉田 「西隊長、早く、早く突撃命令を!」

絹代 「待て待て。食事は逃げはしない。まずは食事の前の手洗いだ」

玉田と細見と浜田 「はい!」

カルパッチョ 「沢山あるので落ち着いて並んで下さ〜い」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/12(金) 23:14:43.70 ID:+qdz2vrb0
玉田 (避難所暮らしの前よりも豪勢だ……)

絹代 「全員行き渡ったか?」

知波単戦車道履修者一同 「はい!」

絹代 「今日はアンツィオ高校の皆さんから温かいご支援を頂いた!」

絹代 「アンツィオの皆さん、ありがとうございました!」

知波単戦車道履修者一同 「ありがとうございました!」

絹代 「では全員背筋を伸ばーせー」

絹代 「いたーだきーます!」

知波単戦車道履修者一同 「いたーだきーます!」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/12(金) 23:28:06.73 ID:+qdz2vrb0
アンチョビ 「ここに居たのか」

絹代 「はい、折角美味しいご馳走を頂いたので」

アンチョビ (慰霊碑にアンツィオの料理をお供えしていたのか)

絹代 「皆、喜んでいます。感謝しきれません」

アンチョビ 「そう言って貰えると嬉しいよ。私もお祈りしていいか?」

絹代 「ありがとうございます。お願いします」

絹代 (アンツィオ高校は主力のP40の修理費もままならないと聞いていたが、そんな中こうして炊き出しに来てくれるとは)

絹代 (だがそのことに触れるのは失礼だ。今はただ感謝の気持ちでご好意に甘えよう)
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/12(金) 23:37:03.50 ID:+qdz2vrb0
アンチョビ 「思ったより大丈夫そうだな」

絹代 「『カラ元気も元気のうち』と言います。少なくとも隊員達の前ではいつまでも泣いていられません」

アンチョビ 「辛いな……」

絹代 「はい……本当に辛い思いをしました」

絹代 「しかしサンダースの時といい、今といい、こうして人の温かみを、善意を感じると……」

絹代 「世の中決して捨てた物ではないと思えるのです」

ボロロン♪

ミカ 「世界は残酷だ」

ミカ 「そしてとても美しい」

絹代 「貴方は?」

ミカ 「風に吹かれてやって来たのさ」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:02:09.06 ID:KGFEZM5Q0
カルパッチョ 「大変です! ……今よろしかったですか?」

アンチョビ 「問題無いぞ。どうしたカルパッチョ?」

カルパッチョ 「ネットでニュースを見てたら海洋不明生物が再び出現したって記事が――」

絹代 「どこだ? どこに現れた!?」

カルパッチョ 「海洋不明生物の出現場所は……」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:16:37.42 ID:KGFEZM5Q0
【プラウダ学園艦 練兵場】

カチューシャ 「プラウダは知波単とは違う」

クラーラ 「目標との距離1500」

カチューシャ 「分かったわ、手筈通り行くわよ」

クラーラ 「はい」

ノンナ 「了解」

カチューシャ 「ノコノコ現れたデカいだけのウスノロ共に人類こそが万物の霊長だと思い知らせてやるんだから」

カチューシャ 「さあ、カチューシャにケンカを売ったことを死ぬ程後悔しなさい!」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/13(土) 00:18:41.66 ID:KGFEZM5Q0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 19:21:51.17 ID:Uecv7TDX0
【プラウダ学園艦 緑地帯】

ノンナ (目的は相手を挑発して誘導すること……)

ドオォン!

ゴスッ!

エリガン 「痛っ!」

ドーラ 「撃って来やがった」

エリガン 「やったわね!」

ドオォン!

ゴスッ!

マッキー 「アガッ!? イッテーなぁ……調子に乗りやがって!」

エリガン 「ケイティ、見てよ。血とか出てない?」

ケイティ 「ちょっと頭見せて……大丈夫」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 19:39:38.06 ID:Uecv7TDX0
ノンナ 「全弾命中。……効果見られません。……目標が接近してきます」

カチューシャ 「後退する振りをしながらそのまま練兵場までエスコートしてやりなさい」

ノンナ 「分かりました」

カチューシャ (ケイの資料にあった通りやたら硬いわ。知波単の戦車では接射に近い距離で漸くダメージを与えられたって話だし……)

カチューシャ (遠距離砲撃が効かないなら近距離から集中砲火すればいいのよ)
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 19:46:15.68 ID:Uecv7TDX0
【プラウダ学園艦 練兵場】

ノンナ 「目標、予定ポイントに到達」

カチューシャ 「流石ノンナね。さあ、ここから反撃よ!」

カチューシャ (所詮下等生物ね。ミホーシャの方がよっぽどか手強かった)
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 19:51:19.68 ID:Uecv7TDX0
マッキー 「ありゃ……敵の援軍か?」

ジークン 「……いや、違う。多分待ち伏せだ」

ドーラ 「一旦下がるか?」

ケイティ 「駄目、後ろからも来た!」

エリガン 「囲まれた!?」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 20:18:43.28 ID:Uecv7TDX0
クラーラ (呆気ないです)

クラーラ (基本戦術は準決勝で大洗に使ったのと同じ。違いは……)

クラーラ (大洗との試合では15両だったのに対し、今回は50両を投入)

クラーラ (50両を4個中隊に分け、第二中隊と第三中隊で敵を前後から包囲。さらにその外側から第一中隊と第四中隊が包囲)

クラーラ (50両での二重包囲が完成した。これの突破は容易には出来ないでしょう)

アリーナ 「大っきなあ100メートルはあるし……折角だしスマホで写真撮るだ」

ニーナ 「後で写真転送してぐれ」

アリーナ 「わがった」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 20:23:23.60 ID:Uecv7TDX0
カチューシャ (包囲網は完成した。後は……)

フラッグ車通信手 「隊長、入電です」

カチューシャ 「何?」

フラッグ車通信手 「後方から新手の敵です」

ボコ 「うぉぉぉおお!」

カチューシャ (遊撃?)
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 20:28:45.39 ID:Uecv7TDX0
カチューシャ (遊撃を用意する知恵があったとはね)

カチューシャ (カチューシャの居る第一中隊の背後を突いたのは褒めてあげるわ)

カチューシャ 「第一中隊反転。新手を叩くわ」

カチューシャ 「カチューシャの合図で敵の左脚に一斉射よ。敵が硬いからしっかり引き付けなさい」

ノンナ (包囲が一重ならこの機に敵が総力で一点突破を狙えば包囲網を破れたかも知れませんが、これで終わりですね)
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 20:38:07.76 ID:Uecv7TDX0
カチューシャ (目標との距離……300……250……200……150!)

カチューシャ 「第一中隊、一斉射!」

ドンドドドオォン!

ドグシャァ!

ボコ 「イッ!」

ボコ (痛え、撃たれた!)

カチューシャ 「やっぱり近くから撃てば効……!」

タッタッタッ、グラッ……グシャァ!

ジークン (足を撃たれたボコが片足立ちで2、3歩跳ねてから……)

ドーラ (派手に転倒しやがった)

ケイティ (コケた時に何か巻き込まなかった?)





プラウダ車長A 「大変……」

プラウダ車長B 「フラッグ車が敵の下敷きになったわ!」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/14(日) 20:42:06.11 ID:Uecv7TDX0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/15(月) 05:20:43.53 ID:2J92WiE2o
カチューシャがフラッグ車内ならボコの重みで更に小さくなっちゃう
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 20:37:23.62 ID:Ly3XBGsR0
ジークン 「チャンスだ」

エリガン 「ジークン?」

ジークン 「連中の動きが止まった。ボコと合流して奴らを叩くぞ」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 20:46:01.31 ID:Ly3XBGsR0
プラウダ車長A (囲んでた敵がこっちに来た!?)

プラウダ車長A 「フラッグ車との通信は?」

プラウダ通信手A 「フラッグ車、応答ありません!」

プラウダ車長A (フラッグ車がやられたのに……どうすればいいのよ)

プラウダ車長A 「ノンナ副隊長に繋いで!」

プラウダ通信手 「はい!」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 20:51:53.53 ID:Ly3XBGsR0
ノンナ 「いい人生だった……」

ノンナ車通信手 「諦めちゃ駄目!」

ノンナ 「これはもう必要ありません」

ノンナ車装填手 「……そのノートは?」

ノンナ 「カチューシャ日記」

ノンナ車砲手 「ちょっ!? ノンナさん! そこで火付けないで!」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 20:57:27.81 ID:Ly3XBGsR0
プラウダ通信手A 「副隊長車より! 副隊長は指揮が取れる状態にないとのことです」

プラウダ車長A 「……クラーラ中隊長に繋いで」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:01:48.11 ID:Ly3XBGsR0
クラーラ 「悪魔の末裔が! 根絶やしにしてやる!」

クラーラ車装填手 「クラーラさん、落ち着いて!」

クラーラ車操縦手 「きっと隊長は生きてるって!」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:16:21.69 ID:Ly3XBGsR0
プラウダ通信手A 「クラーラ車より! クラーラ中隊長、指揮が取れる状態にないとのことです」

プラウダ車長A 「何なのよ、もう!」



小さな暴君カチューシャを頂点とし、その命令を遵守することで統率される現在のプラウダ戦車道。命令に背いたり失態を晒したら「シベリア送り25ルーブル」等の厳しい処分が待っている。
この体制は「新たな提案をして藪蛇になったり、命令が無い時に独自の判断で行動して処分の対象になる位なら命令さえ守っていればいい」という風潮を生み、各車長の自己判断能力の成長を阻害した。
また、補佐役のノンナとクラーラは熱烈なカチューシャの信奉者兼保護者であり、カチューシャに不測の事態が起こるやいなや補佐役も含め指揮系統が麻痺するという欠点があった。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:22:12.15 ID:Ly3XBGsR0
今日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 22:28:13.54 ID:Ly3XBGsR0
1です
ちょっとだけ追加
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:29:08.25 ID:Ly3XBGsR0
カチューシャ 「もう、泣かないの。カチューシャは無事だったんだから。それより早く来なさい、いいわね」

カチューシャ 「じきにクラーラが迎えに来るわ。あなた達はそれまでここで待ってなさい」

フラッグ車装填手 「隊長は?」

カチューシャ 「カチューシャは他の皆を助けに行くわ」

フラッグ車砲手 「気をつけて」

カチューシャ (フラッグ車のハッチが変形して少ししか開かなくて、カチューシャだけが外に出られた)

カチューシャ 「小さいことが役に立つ時もあるのね」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:36:43.40 ID:Ly3XBGsR0
クラーラ 「二人とも振り落とされないように気をつけて!」

クラーラ (途中でニーナとアリーナを拾った。それはKV-2を失ったことを意味する)

ニーナ 「あの化けもん難儀だべ……」

アリーナ 「んだんだ」

クラーラ (既に勝敗は決した……)

クラーラ (ひしゃげたフラッグ車を見た私達は思い知った。これは試合では無く命のやり取りだと。私達もああなるかもしれないのだと)

クラーラ (結果的にカチューシャ様の無事は確認出来たが、一旦恐怖の伝染した味方がこんなにも脆いなんて……)

クラーラ (害獣駆除などという生易しいものではなかったのよ)

二ーナ 「警戒! 3時方向!」

クラーラ 「!?」

ドガァッ!
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:42:07.73 ID:Ly3XBGsR0
カチューシャ 「クラーラ!」

カチューシャ (クラーラがひっくり返った戦車の下敷きに!)

クラーラ 「カチューシャ様、遅くなりました……。携帯で声を聞けた時はほっとしました」

アリーナ 「走る怪物に戦車が巻き込まれて……」

ニーナ 「わだす達は放り出されたから助がりましたが……」

カチューシャ 「クラーラを助けるわよ、手伝いなさい!」

アリーナとニーナ 「はい!」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:48:16.94 ID:Ly3XBGsR0
今度こそ今日はここまで
お休みなさい
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 19:38:59.58 ID:sIsVphMH0
クラーラ 「私の足は戦車に潰されて、ここから出られたとしても走れません。……分かりますよね」

カチューシャ 「カチューシャが担いで走るわよ!」

クラーラ 「最後くらい言うこと聞いて下さい!」

クラーラ 「ニーナ! アリーナ!」

ニーナ 「嫌だーっ!」

アリーナ 「最後なんてそったら悲しいごと言わねでけろー!」

クラーラ (このままでは四人共……ボコラの餌食に……あれは?)

クラーラ (ノンナ様! ノンナ様が来てくれた)

カチューシャ 「ノンナ! 戦車は?」

ノンナ 「申し訳ありません、私が搭乗していたIS-2は撃破されました。それからは戦車を捨ててカチューシャを探していたのです」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 19:44:26.16 ID:sIsVphMH0
クラーラ 「ノンナ様! 三人を連れて逃げて!」

ノンナ 「見くびって貰っては困りますクラーラ。私は四人共きっちり助けます」

ニーナ 「ありがてえ、百人力だ!」

クラーラ 「ノンナ様、戦っては駄目! お願い!」

ノンナ (三人なら、三人なら確実に助けられる。しかし私は……四人共助ける!)

ノンナ 「ライカ、おいで」

ライカ(犬 シベリアンハスキー) 「ハッ、ハッ、ハッ」

ノンナ 「ライカ、いい子ね。訓練通りにやればいいから」

カチューシャ (ノンナが跪いて犬の頭や首を撫でてる)

ノンナ 「目標はこちらに接近するクマに似た生き物よ。ライカ、行きなさい!」

ライカ 「ワン!」

タッタッタッタッタッタッタッ……

ドゴオオオン!

カチューシャ (対戦車犬か)

※対戦車犬
第二次世界大戦時、ソ連に実在した軍用犬。訓練した犬に爆弾を背負わせ、敵戦車に特攻、自爆させる。実際には自軍の戦車に潜り込んで自爆する犬が出るという問題を抱えていた。犬が可哀想だが、旧日本軍が人間で同様のことを行っていたことを考えると何とも言えない話である。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 19:55:39.84 ID:sIsVphMH0
ニーナ 「やったか……?」

ノンナ (効いてない……)

カチューシャ (分かってたわ……。犬一頭が背負える爆薬の量なんてたかが知れてる)

クラーラ 「もう十分です。撤退して下さい」

ノンナ 「そんなことばかり言ってたらカチューシャに嫌われますよ」

クラーラ 「この状況を何とかする為なら嫌われて結構」

クラーラ 「ノンナ様……」

クラーラ 「貴方はカチューシャ様をここで死なせる気?」

ノンナ 「!」

クラーラ 「ノンナッ!」

ノンナ 「……」

ガシッ

カチューシャ 「何ッ?」

カチューシャ 「ノンナ、誰が肩車しろと言った? クラーラがまだッ!」

クラーラ 「スパシーバ、ノンナ」

ノンナ 「アリーナ、ニーナ、ついて来なさい」

カチューシャ 「クラーラ! クラーラアァァァ!」

アリーナ 「クラーラさん、許して下さい……」

ニーナ 「すみません……」

クラーラ 「カチューシャ! 生き延びるのよおおおおぉ!」

カチューシャ 「ノンナ、戻りなさい! 命令よ!」

クラーラ (四人の姿が遠ざかって行く……)

クラーラ (ああ、行かないで……)

アリーナ (クラーラさん、普段は『カチューシャ様』と呼んでるけどさっきだけは……)
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 20:06:13.13 ID:sIsVphMH0
カチューシャ (怪物が戦車を退けてクラーラを捕まえた!)

カチューシャ 「やめろぉぉおおお!」

ガブリッ!
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 20:11:45.29 ID:sIsVphMH0
ニーナ 「ここは地獄だ……」

アリーナ 「あんデカい奴さ勝でる訳がね」

カチューシャ 「ノンナ、あんたシベリア送りじゃ済まないわよ!」

ポカポカポカポカ

ノンナ (カチューシャに頭を叩かれても大して痛くはない。それよりも痛いのは……)

カチューシャ 「あんた、よくも仲間を見殺しにしたわね……」

カチューシャ 「この人殺しィ!」

ノンナ 「……」

アリーナ (止まっただ……)

ドサッ!

カチューシャ 「グッ! 痛っ……」

 (ノンナ副隊長が隊長を振り落とした!?)

ノンナ 「同志カチューシャ、貴方がクラーラを助けられなかったのは、貴方に力が無かったからです」

カチューシャ 「!」

ノンナ 「そして……」

ノンナ 「私にも力が無かったんです!」

ノンナ 「ウウウ……すみません、本当にすみません……ウウ……」

カチューシャ 「……」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 20:15:29.15 ID:sIsVphMH0
>>103は書き間違えました。
>>105と差し替えて下さい。
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