サターニャ「サタニキア百科事典」

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206 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:09:24.03 ID:6an8YmUi0




「もし天界と魔界が自由に行き来できて、別れなくてもすんだとするでしょ?

そうしたら今度は、なんで寿命なんてものがあるのかって、神様を恨み始めると思うよ。

生まれ変わっても、また出会うようにしてもらったって、きっと一緒。

永遠に一緒であることと、三年間、いや、今、ここで一緒であることは、多分変わりのないことだと思う」


「永遠なんて想像もつかないものを引き合いに出されても、よくわからないわよ」


「まあ聞いてよ……。

無限の過去と無限の未来に挟まれて、剃刀のように研ぎ澄まされた『今』とは、そもそも何か?

今は時間ではなく、ここは場所ではないんだよ、多分。

今そうであることは、永遠にそうであることに勝るよ、きっとね。

永遠なんてくだらない。

だから、好きになることに時間は関係なく、好きであることにもまた時間は関係ない」


207 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:10:07.86 ID:6an8YmUi0




「ふーん、そういうものかしら。その、もっとたくさんって思うことが、好きっていうことのような気もするけど」

「ちなみに遠距離は別れやすいらしいからね。今はどうか知らないけど、ここっていうのは重要だよ、多分」

「一気に俗っぽくなったわ……」

「大切なことは大抵そんなものだよ。お前は何も気にせず他人に突進していればいいよ。それで救われてる人もいる」

「人をイノシシみたいに言うんじゃない。……進行形?」

「お前ってホント、バカだよな」

「理由もなしにバカとか言うな!」

208 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:10:36.76 ID:6an8YmUi0




結局のところ、本質というのは、骨でも肉でもなく、もっと捉えどころのない、

動作や、あるいは認識みたいなものなのではないだろうか。

作業中に話をすると、無意識の奥底にあるものをぽろっと出してしまうこともあるらしく、

ここ最近はガヴリールやヴィネットやラフィエルから色々な話を聞いた。

面白いと思うことも、正しいと思うことも、納得がいかないこともあったが、

それらはどれも、本人の言語の内では一片の真理なのだと思う。

問題は、どの意見を可決するか、ということではない。

いいと思ったものは、伝えたくなるものだ。

つまり、翻訳するということに個性はある。

209 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:11:12.74 ID:6an8YmUi0



『語りえぬものについては、沈黙せねばならない』

下界に住んでいたある昔の人はかつてそう語り、このフレーズは多くの人々を魅了してきた。

でもきっと、初めにそう言った人は孤独な人だったのだと思う。

「語りえぬもの」、つまり、一人の人間の思考が及ばないものは確かに存在する。

私が都会のターミナル駅に行けば、百の単位で語りえぬものがうろついていることだろう。

例えば、すばらしい絵を見て圧倒されたときにはため息しか出ない。

これは、絵画の思考が言語の思考の外側にあるからだ。

言い表せないものを、その色使いや優美な流線形はぴたりと言い当てる。

210 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:11:42.13 ID:6an8YmUi0



しかし、どんなに写実的な絵画も、現実を完全に翻訳することはできない。

それでもなお、人は絵筆を折ることを良しとしなかった。

執拗なまでに絵の具を塗りたくってきた。

語りえぬものだからこそ、人は言い当ててやろうと躍起になる。

伸ばした手の先で消え失せるものほど、欲しくなる。

なぜなら、他の人に伝えるには、まず最初にそうするよりほかないからだ。

火を起こすには、まず石を打ち付けねばならない。

211 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:12:10.49 ID:6an8YmUi0



それに、完全に言いつくすことなんて、必要ないことだと思う。

簡単なことだ。

相手に、同じ方向を向いてもらえばいい。

同じものを見てもらえばいい。

ただ一言、「あっ」と言って指差せば事足りる。

その一言のために、私たちは手を尽くす。

彼女たちは毛糸を使ってみたりもするし、

私なら、例えばそう、チョコを溶かしてみたりもするのだ。

212 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:12:38.23 ID:6an8YmUi0



「それで、だ」

「なによ」

「私がお前に編み物を教えてもらったことに対する借りは、泣き叫ぶお前を慰めることでチャラになった」

「そ、そんなに叫んではなかったはずよ!」

「そして、お前にチョコの作り方を教えてやったことは、私の貸しだ」

「ふーん……?」

「一応確認するが、明日はバレンタイン」

「そうね。何が言いたいのよ」

「私は、明日編みぐるみを処分したいんだけど……それで、その……」

「もう、歯切れが悪いわね!」


213 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:13:06.50 ID:6an8YmUi0




一応、私も人並みに意図を察することはできる。

ガヴリールが言いたいのは、彼女がヴィネットにプレゼントを渡す邪魔を私にしてほしくないということだろう。

言われなくても私はそうするつもりだったし、

彼女がそのことをわざわざ持ちかけてくるのは、おそらく私のためであるということも察している。

つまり、彼女は私にラフィエルと二人っきりになる機会をくれたのだ。


「いや、まあ、なんだ。大したことじゃないんだけど」

「そういえば、明日はラフィエルと昼食をとる約束をしていたのよ」

「あ、そうなの?」

「あいつは食べるのが遅いから、昼休みが丸々潰れるわね」


わかっている、という意図を込めて、私は彼女にウインクをした。


「うざ」

「何よ、その言い草は!」


214 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:13:39.81 ID:6an8YmUi0



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「なあ、この店のケーキ、おいしそうだな」


テレビのモニタの中では、アナウンサーが新しくできたカフェのケーキを食べていた。

表示されている地図によると、わりと近場らしい。


「そうね、チョコで漆黒に染まっているところが悪魔的でいいわ」

「まあ、それだけなんだけど」

「もし今度行くなら、付き合ってあげてもいいわよ」

「そうか」


ガヴリールは口に手も当てずに、ふわぁと大きなあくびをした。

215 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:14:12.53 ID:6an8YmUi0


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その日の日記は、付け始めてから一番長い日記になった。

ガヴリールは今の気持ちが大事だと言っていた。

彼女の言うことはわかったつもりだし、それもまた正しいとは思う。

でも、やっぱり語れる過去があるというのは嬉しいことだ。

それに、未来を見据えないというのは、死に対する切実さを欠いた姿勢だ。

私がいつか子供を授かることがあったら、生きているとこんなにいいことがあるのだと教えてあげたい。

だから、私はこれからも日記を続けることにする。

そうだ、私の過去を文章に翻訳したそれを、『サタニキア百科事典』とでも呼ぶことにしようか。


216 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:14:45.00 ID:6an8YmUi0




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     /   〈乂_,/             `、≧=-  -≪         厶__/
    /    \     \          `、\   /  ∨ /      /  \
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day 8:
かんかい【寛解】

(1) 病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態。または見かけ上消滅した状態。

(2) 赦されること。


「完治なんてしない、無くなりはしない……ただ、――と呼ぶのよ」


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217 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:15:33.03 ID:6an8YmUi0



バレンタインの当日、ラフィエルを待ち伏せるために、いつもより早めに学校に向かった。

改めて話をするというのもなんだか落ち着かなかった、というのもあるかもしれない。

朝の冷えた空気は凛としていて、自然にネクタイが締まっていくようで、私は少しだけ背筋を伸ばして姿勢よく歩いた。

自分の教室に入ろうとすると、隣の教室から出てきたらしいラフィエルに声を掛けられた。

昼休みに少し付き合ってほしいというので、私は了承した。

もしかしたら、彼女もヴィネットあたりから聞いていたのかもしれない。

その場でチョコを渡してもよかったのだが、

宿題をまだ済ませていないということにして、なんとなく別れてしまった。

人気がないと、かえって緊張してしまう。

昼休みに教室で、なんでもないことのように渡してしまいたかった。
218 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:16:02.12 ID:6an8YmUi0



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「サターニャさん、ついてきてくださいね」


私はラフィエルに連れられて廊下を歩いていた。

手には昼食とチョコの包みを持っていて、彼女はカバンごと持ってきていた。

彼女の背中を見ながら階段を上がっていくと、

私が入学したての頃に慣れ親しんでいた場所へとたどり着いた。


「こんなところで食べるの? まあ、いいけど」

「いえ、まだ到着じゃありませんよ。紐が渡してありますが、またいでください」

「え、そこってほこりっぽいだけよ?」


階段の屋上へと続くドアのある踊り場は、立ち入り禁止と張り紙をされたロープが掛けられている。

物理的に乗り越えることは容易だが、心理的には結構障害物になるらしく、

生徒たちが立ち入らないため薄くほこりが積もっている。

何故それを私が知っているか……それは、聞かないでほしい。



ラフィエルはその閉じっぱなしの改札をやすやすと乗り越え、ドアノブに手を掛ける。


「外で食べるごはんは、きっとおいしいですよ」


吹き込んだ一陣の風が私の頬を撫でた。


219 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:16:29.93 ID:6an8YmUi0



「屋上は立ち入り禁止じゃなかったっけ」

「朝、窓から屋上に飛んではいって、鍵を開けておいたんですよ」

「だからあんな早くに登校してたの? とても天使とは思えないわね」

「善行のためですからね、やむなしです」


屋上は金網で囲まれたコンクリートの床があるきりで、

おそらく生徒の立ち入りを想定していないため、特にベンチなどはない。

しかし、普段見ることの少ない、遮るもののない青空というのは解放感があって、少し寒いのも気にならなかった。


220 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:16:58.18 ID:6an8YmUi0



「ではこれから、サターニャさんのために、ショー、あるいは儀式をお見せいたします」

「出し物? 面白そうじゃない」

「この中に何が入っているかわかりますか?」


ラフィエルは持っているバッグの中からお弁当箱くらいの大きさの紙袋を取り出した。


「何それ。答え方次第じゃ、私がすごく自意識過剰みたいになるじゃない。知らないわよ」


221 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:17:36.03 ID:6an8YmUi0


「この中には、悪魔祓いの教科書が入っています」

「へ……?」

思わず間抜けな声が漏れてしまった。

そんなものをプレゼントするつもりなのだろうか。

悪魔にわざわざそんなものを押し付けるなんて、どんな嫌がらせだ。

それはもう、宣戦布告じゃないか。

222 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:18:05.10 ID:6an8YmUi0



「今からこれを燃やします」

「燃やすなんて、ふざけるんじゃ……えっ、燃やすの?」

「ああ、ご心配には及びません。天界の書物は灰が残らないんですよ」

「そんなことじゃない!」

「油をしみ込ませましたし、それに火力でしたら申し分ありませんよ。このバーナー、業務用ですから」


ラフィエルはそう言って、スプレー缶と拳銃が一体化したような物々しいバーナーを取り出した。


「そうでもなくって……あんた、正気?」

「形あるものはいずれ崩れますからね。この本も、焼却されるのがちょっと早かったというだけのことです」

「論点はそこでもないわ……」

「点火しまーす」


ラフィエルが笑顔で銃口を紙袋に突きつけ、引き金に手を掛ける。


「待って! ちょっと待ちなさい!」

223 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:18:31.55 ID:6an8YmUi0



「なんでしょう?」

「なんでこんなことをするのよ! それに、まだ読めるんでしょう?」


自分でも的外れなことを言っている自覚はあったが、私も混乱していた。

こんなことをみすみすやらせて、彼女が天界に強制送還されてはたまったものではない。


「あらゆる道具は使い捨てですからね。

古びない道具があるとすれば、それは何ものとも触れていないっていうことですから。

それが実体を持たないものであってもそうです

例えば……いえ、神様に怒られそうなので、この話は、これ以上はやめておきましょう」


「それよ。私が言いたいのはそこ」

「はぁ。どこでしょうか」


224 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:19:23.42 ID:6an8YmUi0



「こんな、神への反逆みたいな、悪魔的な行いをしちゃっていいの?」


「善良ではないかもしれませんが、これは善なる行いではあるはずですよ。

もっとも、それに自覚的であることは悪かもしれませんが」


ああ、そういうことか……。

ラフィエルのテンションが雑というか、口調がやけに軽かったので見えづらかったが、彼女の意図がようやく読めた。

彼女がしようとしているのは、私に対する意思表示だ。

少々物騒ではあるが、これは彼女なりの善行、つまり献身なのだ。

私が止めるのも野暮というか、見届けることもまた彼女のためなのかもしれない。


225 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:19:51.02 ID:6an8YmUi0


「私が止めるのも変だし、これ以上は言わないけど……。

まったく、とんでもない大天使様ね。こんなの、聞いたことがないわ」


「お褒めにあずかり光栄です、ふふ」


ラフィエルは片手に本を持って上の方に火をつけた。

ボッという音とともにバーナーから青い炎が噴出し、すぐに紙袋へと燃え移った。

薄茶色の紙袋に灯る赤い炎は聖火を宿した松明のようで、

彼女の長い銀髪がその光を反射してきらきらと輝いた。

燃える紙袋をそっと地面に置くと瞬く間に全体が火に包まれ、白い煙が上がった。

226 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:20:19.41 ID:6an8YmUi0




本が燃えている間、私たちが声を出して言葉を交わすことは無かった。

私たちは赤々と燃える本をじっと見つめていた。

まるで、周囲の音も一緒に燃えてしまっているかのように静かだった。

ふと気になって煙を目で追う。

煙は少し上昇すると風にかき消えてしまったが、雲のない空によく映えた。

それは狼煙だった。

そのとき、私たちは確かに語り合っていたのだと思う。


227 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:21:32.48 ID:6an8YmUi0



悪魔祓いの本はどんどん小さくなっていき、最後に一瞬だけ白く強い光を放った後、跡形もなく消えた。


「これで、悪は去りましたね」

「あんた、悪とか言って平気なの?」


私は呆れたふりをしながら、袋を持つ手に力を込めた。

いよいよ時間が迫ってきている。

もう、私は逃げたりなんてしない。

大切なのは、行動で示すことだ。

言いたいことは、ちゃんと伝えると決めたのだ。

早いところ、渡すものを渡してしまわないと……。

袋を持っている左手の手首を右手で掴むと、編みこまれた紐の感触がする。

思えば、このミサンガはこの一か月ほどはずっと一緒だった。

そんなに手荒に扱っているつもりはなかったが、あちこちほつれてきていて、少し愛着もわいている。

そのでこぼこした表面をなぞっていると、不思議と緊張もほぐれるようだった。


228 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:22:06.89 ID:6an8YmUi0



私は意を決して、手に持っていた紙袋を彼女に手渡した。


「これ、あげるわ。この前は私が悪かったから、そのお詫び」

「ありがとうございます、サターニャさん」


賞状をもらう時のように、彼女は恭しい手つきで私の差し出した包みを受け取った。

その重さが私の手から彼女の手に移ると、私の肩も少し軽くなったようで、

彼女に悟られないように、私はそっと息を漏らした。



「一応生ものらしいから、数日のうちに食べきって頂戴」

「いえいえ、一生かけて味わい尽くす所存です」

「大げさよ! そんなに気に入ったなら、また作ってあげるから」

「そうですか、期待してますね」

「まったく……」

229 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:22:33.91 ID:6an8YmUi0




「わたしはプレゼントをもらうことで、確かに心からの謝罪を感じました」

「そう、よかったわね」


「でも、このプレゼントには、もっと気持ちを伝える力があると思うんですよ。

最大値を100とするなら、謝罪は20くらい」


彼女は、まるで真犯人を言い当てるときの探偵のように、

さも重要な事実を見落としているとばかりに芝居がかった深刻な口調で何やら言い始めた。


「余力があるのはいいことじゃない。持ち越しはできないの?」

「だめですよ、今日の分は、今日使い切らないと。他の気持ちも込めてみてください」


230 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:23:02.99 ID:6an8YmUi0



「えー……。じゃあ、前に弟子になってくれてありがとう。クビにしちゃったけど」

「それは5くらいですね」

「身体測定の時に勝負出来て楽しかったわ」

「3くらいです」

「判定が厳しいのよ!」

「まだまだサターニャさんの手には、たくさんの富が残されていますよ。贅沢は味方、さあ、もっと使いましょう」


ラフィエルが私にウインクをする。

これを言うのは少し照れくさいが……。


231 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:23:29.48 ID:6an8YmUi0



「……これからも、仲良くしてほしい」

「おめでとうございます、合格です!」


ラフィエルがパチリと両手を胸の前で打ち合わせる。

彼女は、赤ん坊が初めて自分の名前を呼んだ時の母親のように、いつにもましてにこやかだった。


「完全にあんたの裁量次第なのね」

「先のことはわかりませんからね、上限なしです」


私は肩をすくめ、小さくため息をついた。

でも、こういう風にからかわれるのもなんだか少し懐かしくて、

自然と口元はほころんでいたように思う。


232 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:23:56.78 ID:6an8YmUi0



ラフィエルはバッグから紙袋を取り出した。

大きさは、私が使っている枕の半分くらいだろうか。


「これは、先日の謝罪と、いつも私がサターニャさんで楽しんでいることへの感謝の……

いえ、この言い方はよくありませんね。

私と、友達でいてくれることへの感謝の気持ちです。

これからも、よろしくお願いしますね」


「そう、ありがたく受け取るわ。開けてもいい?」

「どうぞ。こちらこそ、ありがとうございます」

233 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:24:25.94 ID:6an8YmUi0



セロハンテープをはがして中を覗くと、毛糸の布地が見えた。

取り出してみると、細めの糸で精緻に編まれたマフラーだった。

端っこは丸く、肉球のような模様がついていて、猫の手のようになっている。


「これ、端っこは手袋になっているんですよ」


よく見ると末端から少し離れた場所にスリットが入っていて、ミトンになっているらしい。


「へぇ、そうなんだ。面白いものを見つけたわね」

「作るの、結構大変だったんですよ」

「えっ、これ手作りだったの!? あんた、めちゃくちゃ上手じゃない!」


これなら、ガヴリールかヴィネットに編み物を教えるのを手伝ってもらえたんじゃ……。

まあ、私も楽しかったし、いいか。

234 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:24:54.21 ID:6an8YmUi0



「でも、あんたの定義によると、友達は金銭の授受をしないのよね?」

「それはまあ、そうなりますね」

「だとすれば、私たちはもう、友達以上ってことね!」


天使を親友に持つ悪魔っていうのも、なかなかドラマチックで悪くない。


「と、友達以上……ですか。それってつまり……」

「あ、早くお昼ご飯を食べないと、休み時間が終わっちゃうわよ」

「え、あ、そうですね、はい。食べましょう!」


ラフィエルは胸の前でグッと握りこぶしを作って見せた。


「何よ、やけに元気じゃない」

「うふふ、なんででしょうね」

235 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:25:39.17 ID:6an8YmUi0


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ラフィエルが悪魔祓いの教科書を燃やした時に、私はその中身を確認しなかった。

目にするだけでもダメージを食らうので、その配慮だろうとは思うが、

もしかしたら本当は別の本だったのかもしれないし、本ですらなかったのかもしれない。

でも、そんなことは私にはどうでもいいことだ。

先に食べ終わって手持ち無沙汰になった私は、何度見ても変わるはずもないのに、

彼女にもらった袋の中を覗いて、その柔らかな秩序を確かめ、

それを構築した彼女の手さばきに思いを馳せた。

236 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:26:53.06 ID:6an8YmUi0



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放課後はラフィエルに一緒に帰ろうと誘われていたので、授業が終わるとすぐに隣の教室へ向かった。

ラフィエルからもらったマフラーを巻いていると、良いマフラーだな、とガヴリールが珍しく素直に褒めてくれた。

もしかすると、ガヴリールはラフィエルがこのマフラーを用意していることを知っていたのかもしれない。

彼女の言っていた、とある筋というのは、ラフィエルのことなのかも。

明日もしガヴリールが新しいマフラーを着けてきたら、私も褒めてあげようと思う。


237 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:27:19.40 ID:6an8YmUi0


ラフィエルのクラスの方が早く授業が終わっていたらしく、彼女は自分の席で待っていた。

私が彼女を呼ぶと、彼女もまたサターニャさんと呼び返してきた。

その声音は、いつもより少しだけ高く、弾んでいたように思う。

238 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:28:11.53 ID:6an8YmUi0



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「これが、本来の用途なわけ?」

「暖かいですよね……ご不満ですか?」

「あんたの一言のせいでね! 手をはなしなさい!」


ラフィエルのくれたマフラーは比較的長く、末端がちょうど手の位置にくる。

外に出るとやはりまだ風が冷たく、せっかくなので手袋になっている部分に手を入れてみようとしていると、

先にラフィエルが手にはめてしまった。

若干首が引っ張られる感覚はあったが、我慢できないほどでもないので放っておいた。

しかし、勘のよい私は見逃さなかった……犬に散歩をさせているおばさんが、こちらを見てくすりと笑ったことを。

傍から見ると、私がラフィエルに散歩させられているみたいではないか!

ラフィエルを傷つけてはいけないと、やんわりとやめさせようとしたが、

彼女はあろうことか、「悪魔たるもの、使い魔の気持ちも知っておくべきです」などと言い出したのだ。



239 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:28:39.02 ID:6an8YmUi0



「はーなーせー!」


私がマフラーを持って軽く引っ張ると、破れると思ったのか、さすがの彼女も手を抜いた。


「サターニャさんは、私がしもやけになってもいいとおっしゃるんですね」

「いつも手袋なんてしてなかったじゃない!」

「同じ本を燃やした仲じゃないですか」

「あんたが勝手に焼いただけでしょ!?」


「なんでそんなつれないことを言うんですか……。

仕方ないので、この高性能なバーナーで暖を取らなければ。

そういえば、サターニャさんの髪って赤くてよく燃えそうですね」


「なんてことを言うのかしらこの天使は。末恐ろしいわ……」

240 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:29:09.57 ID:6an8YmUi0



「そんなことしなくても、こうすればいいでしょう?」


私はラフィエルの手を掴み、ぎゅっと握る。

すると、バチッという音とともに、指先に刺すような衝撃が走る。

完全な不意打ちに、私は思わず彼女の手を振り払ってしまった。

これは一体……。

手のひらに目を遣り、はたと手首に巻かれた紐を思い出す。


「あっ……。ごめん、最近ミサンガサンダーつけっぱなしで」

「あーはい、怒ってませんよ。ええ、全く」


ラフィエルは手を差し出した姿勢のまま、先程と変わりない笑みを浮かべてそう言った。

こういうのを、貼り付いた笑顔とでもいうのだろうか。

241 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:29:44.72 ID:6an8YmUi0



「ご、ごめんなさい……すぐ外すから」

「あ、別にそのままで結構ですよ。気持ちは伝わってますから」

「そう? それならいいんだけど……あれ、なんか引っかかって外れない」


結び目が固結びになってしまっていたのか、ミサンガはいくら引っ張っても外れてくれなかった。


「あー、でも一応言っておきますね。

サターニャさんの……。サターニャさんの……ぼけなすー!」


ラフィエルはくるりと私に背を向けて走り出した。


「ぼけなすって……。あっ、ちょっと待って。待ちなさいよー!」


無理に力が掛かったせいか、ミサンガはほつれた部分からちぎれてしまった。

不良品だったのだろうか……だが、それは今はどうでもいい。

242 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:30:16.50 ID:6an8YmUi0



また私は失敗してしまった!

しかし、急いで追いかける私は、案外悪くない気分だった。

数メートル先を早足で歩くラフィエルもおそらくは、似たような気持ちだったんじゃないかと思う。

なんとか追いついた私は、白い息を吐きながら、彼女に再び左手を差し出した。

243 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:32:11.92 ID:6an8YmUi0



                                     ,.. :':^´: : : : : : `丶.、
                                  / : : : : : : : : : : : : : : : : :\
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         ..'^´      rべ^ヽ、             j、_: : :{ミ、 : : : j : : : : : :/:r、 : : : : :l..1
        , '               ヽ                {ヾミk_lミ}:/:/:| : : : : : l:/l/ト、1:; .:i|.:}
       ./_n_   ,    1 ! 、 _n_、           ': .:{:⌒:`Y: : :_| : : : : : l'r=-kLl:}.:/j.:l
       j || i . ,!    i _}、 1 || }            V:7: : :_}: : :i^|:. : : : :| ` {j j/:: .:'
       | !   |/ァ弋、  j il' ヽ`l.  l                 ヾ7レ'^k: ::ペ| : : : 、.:| ヽ:、、 `}:7
       | |  l/_,.。x、`~ ´r=ぇ゙l.  |                 ./:.:j: l:|:.ヽ:..:;l:.| : : |、|       j :'
       | 1  .{´..::    ,   .::.|i  }               .':.::/: :i:}゙ヾ:/^'代 : :l^{.   n:' :|
       | !.  {        ,{.  |              {:./ : : / .r'}  l,ヽ :|...,_   /:メ:{
      /:} 1  lヽ.   ` '’ ィ.1  |            ,。.ゞ.--:'-j^ ヽ、_ 入ト、 ̄}:./ '!
    〈:.:.| .il,  l.i }`' - l^.i | .| |            / ..ヽ ... ... ..{:.、   ハ { / ト:-.'゙、
    ヾ.! j {  Yイ   ヘ! <|  |            ,r/ ... ..'、 .. ... '..ヽ ./:x`'V^}_,!... ...i.:、
     /::レ'^ヽl  li]- 、  .r-iT ,.{. ト、         ./ ..'、.. ... i ... ... ...`^lヾ::、l_jヘ... ...N.. h、
    ./:/./  / ! '{t- 、..。-‐く | j 〉       / ... ヽ .. .... } ... ... ... ...l `{::::}丶... ..ヽ ..ヘ
   〈::::7'、 / 1 }!.   l    !| }ノ、    / ... ... ... ... j:.. ./... ... ... .:.1  }:::i. ':o .. ヘ....ヘ
    `j  :/'丶、}N    l _,..。-l'レ{  、   /... .. i ... ... /:ィ::. :.. ... ..: .:. .:}  1:::l  } ... ..::}:.. .ヘ
    i  .j    '’   ̄ ̄       |  '、 / ... ... 、 ... / ‘::.l::.. ..: ..: .:. .:.j   |::::1 .j.. ..: .:.|:... ...ヽ
     |  :{ : :             . : }  .} ./ ..: .:. ... . Y/   V:.. ..: ..: .:. : イ  l:::::} .fo..:: :.リ:.. .. ...ヽ
    .'  1 : : :      : : :,> '" ̄ //`/ ... ..、 ..V}     ./:.. .:. .:. :. . ...1   }:::::! 1 .. ...メ、:.. ... ...ヽ
    |   1: : :   . : : :/     // ヽ. ... ... `.\    Y:.. ...  . ... ...|  |:::::l: |... ....{ V:´.. ` ...ヘ
    {  .:{l : : : .  : : : :l    rィ/lト、  ヽ.. ... ... ...ヘ   .{:.. ... ... .. ...|  {:::::j! |o... ..} /´ ... .. ...ノ



──────────────────────────────────────

day 9:
いきょうと【異教徒】

(1) 自分が信仰する宗教と異なる宗教を信仰している人。

(2) 他者一般。

(3) 特に親しい友達のこと。[【友達】同じ思想を共有する者達ではなく、互いの違いを認めた者同士のこと。]


「これにて、私と――たちとの一幕は、おしまい」

──────────────────────────────────────

244 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:32:45.98 ID:6an8YmUi0






       ,イ三三ェ.、,_           /......ヽ、/.....ヽ r:、 }. ヾ
       ./三三三三三]      ./.^'ー.-/..._;..。--r:ー:-.、...ヘ.}.:、
     f三>'^7^ヾr'´   ,.、,_ /......._,.ィ:^: :{: : : : :'、: : 1: :ヽ、..ヽ
     レ'゙  /  .j  .,、 /... ......>i7: :r{: : :/i : .: : : : : : :}: : 1.:.\.Y
         /  .|  /...`'...._,。:'´: .:|:{:.、{_i: .:j ': :l、:. :. :i :|':_; i:. :i:}:リ
        .'    lヽ/..._,ィ!   : : : :代.:| T'|-、,_:.|ヾ:. : :}.ィ'}:/}: :jl:r!
        ゜  ./...,/ : :i : : : : : : Nヘ:!  ヾ  ` ヽ:.// ' f|:/.:゙.:}
.         j  .入j^ : : : :| : : : : : :゙{  ≒zx=‐'    ゜ `^~ V : : :|
      |  / !: : : : .:{: : : : : : :i; :、 ,.,.,..,        `  '':Y : : !
     ,。‐ { 人 ': : : .:i,.:{ : : : : : : {ヾ:.、            j: .: :}
     { ... ..`´... 1j: : : : :ヘ1: .: : : : : |  \      ァv '^7  ./: :j:.j
    '、... ... ... ノ'{: :、: : : .:|: :i : : : : :!       '、 .ノ  /:.: .;'|:'
     `ー-=‐'ノ'^;. .:ヽ: : :1.:ト! : : :i :l,           /:. : :7.リ
          '^   ヽ:. :.\:ヘ:}ヽ: : :ト:1      r:.--:-r‐}:1:. :/
                \: : ::``.:.:ヘ: :Vヘ!     .ハ:.、_;iノ,_ ノ |: :'
     _,、       /´ ̄``'L'ヽ.V:.、     .{`''弋.:T,>ヽ!/
    /ミ{,      /       \:ヘ:`. :ヽ''ー 、 / 〉:.:ヘ ト、 jェ、
  ,イ三三ヘ    .'        ヾ弋 : : ヘ`'..ー:‐:'^:代: :ヘ.l 1 /三k、
 r三三三三k、   !     ヽ..   丶'、:: : :.\./´丶:}. V: :ヘ ^!三三:、
/三三三三三ミIェ、|      \..  `ヘ : : : :ヽ    1: : :'、 'マ三三、
ミ三三三三三三三{        ` 、..  }゚、: : : :.ヘ     }:. : :.}   寸ミ三i、



──────────────────────────────────────

editor's note
とみ【富】

(1) 人間の生活を豊かにするのに役立つ物資・資源。

(2) 物語の終わりに手にするもの。

(3) 新たな物語の火種となるもの。

(4) 私たちの日々。


「それが、私の――よ。ふふ、せいぜい妬むことね!」

──────────────────────────────────────


245 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:33:13.28 ID:6an8YmUi0
246 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:34:16.37 ID:6an8YmUi0


これでおしまいです。何より読んでいただけることがすごく嬉しいです。
拙文にお付き合い頂きありがとうございました。

247 : ◆n0ZM40SC3M [sage saga]:2017/05/08(月) 02:34:58.53 ID:6an8YmUi0

この場を借りて、AA職人の方々にお礼を申し上げます。
かわいいAA、かっこいいAA、色々ありますが、みな素敵なAAで、見ていてモチベーションがとても湧いてきます。
何度励まされたかわかりません。本当にありがとうございます。
今後も使わせていただくことがあるかと思いますが、ご容赦いただけると幸いです。

248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 04:44:33.79 ID:Zpk9bIp8o
一気に書ききったのか
すげーな
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 05:12:42.73 ID:IojIQA+7o
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 09:25:21.15 ID:XXaDEV+WO
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 10:42:45.95 ID:akE3Js2v0
自分の好きな作品でこういうssが読めるのはすごく幸せなことだ
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 13:18:30.96 ID:e73hk31M0
乙えがった
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/08(月) 15:34:11.85 ID:Zpk9bIp8o
読み終わった
良かった
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2017/06/13(火) 22:08:28.04 ID:qI0bMcUHo
良作
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 03:27:43.11 ID:qBk+hby4o
一気に読んでしまった乙です
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