【艦これ】皐月「司令官がボクのことを子供扱いしてる気がするんだ」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

132 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/25(木) 00:08:25.06 ID:SCfGYY5C0
――現在 皐月の部屋

皐月「でも、そういうこともなかったわけじゃないしなあ……」

時雨「そ、そうなの? 僕はケンカしたり、すごく危ない目にあったりはしたことがなくて……」

皐月「無い方がいいと思うよ! 間違いなく!」

時雨「でも……」

皐月「それにさ、危ないことがあったからって、別にエッチができたわけじゃないんだよ!」

初月「それはそうだろうな」

皐月「で、初月! 結局、ボクはどうすればいいの!?」

初月「え、いや……」

時雨「初月……!」

初月「だから……」

皐月「初月!」

時雨「初月……!」

初月「ええと……」

皐月「うん!」

時雨「……!」

初月「…………ああ、もう知らん! あとは告白でもなんでも、好きにすればいいだろう!」

皐月・時雨「「告白!?」」

初月「そうだ! そこまで相手と様々な経験を積んだと思うならば、あとはハッキリ自分の気持ちを伝えるくらいしかないだろう!」

皐月「それだ! それだよ! じゃあボク、早速行ってくるね!」バッ タタタタ バタン

初月・時雨「「あっ」」

初月「…………」

時雨「…………」

初月「し、しまった! 追うぞ、時雨!」

時雨「うん!」
133 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/25(木) 00:10:15.99 ID:SCfGYY5C0
――執務室

皐月「こんばんは、司令官……!」ガチャッ

司令官「おお、びっくりした。どうしたんだ皐月、初月と時雨と遊んでたんじゃないのか」




皐月「司令官! 抱いて!」

司令官「………………」




司令官「抱っこしてほしいのかな?」

皐月「違うよ! エッチなことをしてほしいの!」

司令官「皐月がおかしくなった」

皐月「おかしくなってない! ボク……ずっと司令官のことが好きだったんだ!」

司令官「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

皐月「だから、エッチなことも動画でいっぱい勉強したんだ! 初月と時雨に大人になるための特訓をしたり、一緒にお風呂に入ったりしたのもみんなそのためだったんだ!」

司令官「全部繋がったな! いやまて動画ってなんだ!?」

皐月「だから×××××を×××な×××で」

司令官「そういうことは言わなくていい! くっ、艦娘のネット環境にもファミリーセーフティを適用するべきだったか……!」

皐月「司令官!」

司令官「な、なんだよ」

皐月「どうなの!?」

司令官「だから何が!」

皐月「ボクとエッチしたいの!? したくないの!?」

司令官「しない!」

皐月「」ガガーン
134 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/25(木) 00:14:15.43 ID:SCfGYY5C0
司令官「あー、そういうのはだな、もっと大人になってから……」

皐月「お、大人になっても司令官は全然反応してくれなかったじゃないか! 辛いものを食べたり、キュアるんの夢を諦めたりしたのに……」

司令官「そういうことか……。あのな、そういうのが大人だと思ってる間はまだ子供なんだよ」

皐月「そんな……! ううっ、初月と時雨め……!」

司令官「二人を恨むのはお門違いじゃないのか。よくわからんが」

皐月「むむむ……」

司令官「……あー、なんだ。皐月の気持ちは嬉しいとは思う」

皐月「えっ! じゃあしよう!?」

司令官「しない! でもな……こうなってしまうと、言いづらいんだが……」

皐月「??????????」

司令官「あのな、俺はな」(手袋を外す)

皐月「あっ……!! それって! ……指輪!?」

司令官「そうだ。俺、結婚してるんだよ。艦娘でも軍人でもないやつと」

皐月「えっ……?」

初月・時雨「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????????????????????????」」
ガラッ ドタドタ グシャッ

司令官「おわっ! な、なんだ、二人もいたのか!」

時雨「し、司令官! 本当なの!?」

初月「裏切ったな司令官! 僕たちをもてあそんでいたわけか!」

司令官「ちょ、ちょっとまて、結婚してるのは本当の話だが、裏切ったって何の話だ。もてあそんだとか」

時雨「グスッ、そんな……ひどい……」

初月「時雨……泣くな……うっ、くっ……」

司令官「な、なんで泣くんだよ! って、ま、まさか……」

時雨「そうだよ……僕も……司令官の、こと……グス……」

初月「ひどい男だ、お前は……散々に優しくしておいて……それなら、僕たちのことなんて放っておいてくれれば……」

皐月「えーっ、そうだったんだ!」

司令官「は!? お、あ、ま、ちょっとまて、そんな、そんな急に言われても……まさかこんなことになるとは」

司令官「い、いや……違うな。ふう……」
135 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/25(木) 00:17:59.44 ID:SCfGYY5C0
司令官「……すまん。気持ちは本当に嬉しい。ありがとう。だが、俺はすでに妻がいる身だ。お前達の気持ちに応えてはやれない。許してくれ」(土下座する)

時雨「あっ……! や、やめてよ司令官! ごめん……僕こそ、びっくりして……」

初月「……そうだ、悪いのは僕だ。勝手に想いを寄せて、それが叶えられなければ、貴方をなじって……申し訳ない」

司令官「いや、俺の方こそ……。……俺からは何もしてやれない。すまない」

皐月「司令官、子供はいるの?」

司令官「え? いや、いない、な」

皐月「そっか」

司令官「……? な、なんだよ」

皐月「なんでもないよ」

司令官「そうか? ならいいんだが……」

皐月「さ、初月、時雨、行こう。ボクたちはフラれちゃったわけだし」

時雨「……さ、皐月はなんともないの……?」

初月「……そうだ、お前こそあんなに必死になって……」

皐月「ボクはいいんだ。二人が元気になってくれれば、それだけでいいよ」

時雨・初月「「皐月っ……!」」ギュッ

司令官「……皐月。侘びというわけではないが……。落ち着く時間も必要だろう。これを預けるから、好きに使ってくれ」(財布を渡す)

皐月「うん……わかった。さ、二人とも行こう? おいしいものでも食べにさ」

時雨・初月「」コクコク

皐月「じゃ、ボクたちは行くね」

司令官「ああ。……ごめんな、皐月」

皐月「……ごめんな? ふふふっ」

司令官「ん?」

皐月「じゃあね、司令官」バタン

司令官「………………」

司令官「…………ふう」ストン ギッ

司令官「まさかこんなことがあるとはな……。あー、よもや、また煙草が恋しくなる日がくるとは」

司令官「…………配置転換も考えたほうがいいか? 同じ姉妹がいるところにでも……」

司令官「…………」

司令官「まさか、皐月がなあ……それに、あの二人まで……」




次回、最終回


かもしれません
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 01:25:58.57 ID:bh+ljmwB0
二次でこんな可愛い時雨初めて見たかもしれない。
大体病んでるか無駄にゲーム以上に心が成熟しすぎて
外見相応の少女の可愛げがさっぱり無いかばっかりだけに。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 05:52:25.11 ID:Dv8rbXsWo

急展開にワロタ
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 01:21:30.63 ID:FsE69DT4o
子どもになるのかな
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/27(土) 21:05:53.10 ID:NXjai9WJ0
さっちんにお父さんと呼んで貰えると聞いて飛んできました
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/10/30(火) 03:21:39.36 ID:ymUICyVL0
>>138
その発想はなかった
141 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 03:29:35.73 ID:ymUICyVL0


「……あ、やっと繋がった。ボクだけど」

「……えっ! そうだったんだ! 大変だったね! 無事でよかったよ」

「ところで話は変わるんだけどさ。前、話してたアレだけど……うん、そう、それ。どうなったかなーって」

「……なるほどね。それから? ……ふーん。そっかそっか。やっぱりね。……そう、やっぱり」

「落ち込まなくても大丈夫だよ。それはね……で……そしたら……ってことだからさ」

「本当だよ。ちゃんと証拠もある。……うん。信じてくれる? そっか」

「これを確認したかったんだ。ありがとう。それじゃ、またね!」

142 : ◆yJGN1SPTmzFo [saga]:2018/10/30(火) 03:31:32.07 ID:ymUICyVL0
―― 一週間後 廊下

司令官「おっ……」

時雨「あっ……」

司令官「…………」

時雨「…………」

司令官「……時雨、昼飯か?」

時雨「うん……午前の訓練は終わったから」

司令官「そうか……」

時雨「…………」

司令官「あー、そうだ。もしかすると時雨には、来週の火曜あたりに違う鎮守府に行ってもらうかもしれない。敵が怪しい動きをしていて、哨戒任務の手が足りないとかで……」

時雨「……わかった。……それだけ?」

司令官「……ああ。それだけだ」

時雨「……じゃあ、僕はこれで。失礼します」

司令官「……お、おお」

時雨「…………」



司令官「…………行ったか」



司令官(あれから一週間。時雨や初月とはずっとこんな感じだ)
143 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 03:34:25.68 ID:ymUICyVL0
司令官(避けられてるというよりは……どんな態度を取ればいいのか、わからなくなってるんだよな……お互いに)

司令官(俺が普段どおり振舞おうとして、逆に気を遣わせてる……滑稽だな)

司令官(こういう感じは十代の特権だと思ってたんだが、まさかオッサンになってから、コレとは。もはや甘くはなく、酸っぱいだけだ)

司令官(そして、皐月は……)



司令官「……おっ」

皐月「あ」

司令官「さ……」

皐月「ごめん用事があるんだ! またね司令官!」クルッ タタタタタタ

司令官「つ……」



司令官(皐月には露骨に避けられてる。一週間、まともに会話すらできてない)

司令官(こんな調子だから、最初は他の艦娘たちから、三人と喧嘩でもしたのか、尻でも触ったかとからかわれてたが……)

司令官(今は真剣に心配されてる始末だ。もちろん理由を言うわけにはいかないわな……)

司令官(三人も、何があったのかを話してはいないらしい)

司令官(結果として、こんな状態が続いている。自業自得ではあるが寂しいもんだ)

司令官(こんなことなら……大体、俺は……)

司令官(いや、だからといってな……)

司令官「はあ……」
144 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 03:41:10.76 ID:ymUICyVL0
――執務室

司令官「…………」ギッ

司令官「………………」

司令官(真面目に配置転換を考えたほうがいいかもしれないな……)

司令官(大分有利を取れてるとはいえ……いや、だからこそ出撃面子が足りてない鎮守府もそこそこある。こんなところで優秀な人員を腐らせておくよりは……)

司令官(こうなった以上、左遷提督の夏休みに付き合わせておくよりは、その方が艦娘としては幸せかもしれないな)

司令官(いっそ俺も提督なんかやめて、一年くらい遊んで、都会に帰ってレストランでも開くか)

司令官(この2年、仕事よりも料理の腕のほうが上がった自信がある)

司令官「……よし、とりあえず鎮守府の艦娘の配置状況をチェック……」


「だーれだっ!」ガバッ


司令官「うおっ!」

「問題です! ワタシは誰でしょう! 制限時間は3秒! ちっちっちっ!」

司令官「い、いきなり何すんだよ! 驚かせるな!」

「残念時間切れー。正解はー!?」パッ

皐月「ボクでしたー! じゃーん!」デデーン

司令官「………………?」

皐月「あれ? どうしたの司令官? ボクの顔忘れちゃった?」

司令官「いや……覚えてるよ」

皐月「でしょ!」

司令官「だから、そこじゃなくて……皐月、なんだよそのテンションは」

皐月「えっ? あー、ちょっと浮かれちゃってるかもね! ふふふふふ!」

司令官「な、なんなんだ! 俺達、ずっと気まずくなってただろ!」

皐月「そうなの? ボクは別に気まずくなかったよ」

司令官「……ど、どういうことだ」

皐月「司令官が勝手に後ろめたくなってたんじゃないの? ふふふ!」

司令官「だってお前も、俺とまともに話もせずに……」

皐月「司令官! お願いがあるんだけど!」
145 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 03:43:32.26 ID:ymUICyVL0
司令官「は?」

皐月「ちょっと手袋を貸して? 両手の手袋をね」

司令官「……訳がわからん」

皐月「いいからいいから! 早く早く!」グッグッ

司令官「ひ、引っ張るなって。わかったわかった」

司令官(何がなんだか全くわからないが、皐月が今まで通りに振舞ってくれるのには、少しばかり安心しちまう……ちょっと様子はおかしいが)ヌギヌギ

司令官「ほら、脱いだぞ? 何に使うんだ」

皐月 「ありがと!」スルッ(露になった指輪を抜き取る)

司令官「あっ! 何すんだ、その指輪はオモチャじゃないぞ!」

皐月「オモチャじゃない? ふぅーん」

皐月「えい」バキッ

司令官「まっ!」

皐月「……ふふふ、やっぱりプラスチック製の金メッキ。オモチャっぽい結婚指輪だね!」

司令官「っ、い、いや、普段はイミテーションを嵌めてるんだよ、無くさないように……」

皐月「そうなんだ! 本物を見せてよ司令官!」

司令官「え……ここには無い」

皐月「じゃあどこにあるの?」

司令官「家だよ、家……」

皐月「家のどこに?」

司令官「もちろん机の引き出しにだな」

皐月「なら、今から家に電話して、奥さんに携帯電話で写真を取って送ってもらえる?」

司令官「し、仕事中だ!」

皐月「ボクとキュアるんを見てくれるのは仕事なのかな?」

司令官「それは……あー……」
146 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 03:44:05.41 ID:ymUICyVL0


皐月「……もうわかってるでしょ? バレてるんだよ! 司令官が結婚してるっていうのは、ウソなんだってさ!」

司令官「うっ……!」

147 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 03:49:21.64 ID:ymUICyVL0
皐月「この一週間でしっかり調べたんだよ? 前に司令官と一緒だった艦娘にも確認したし、経歴の書類も確認したし!」

司令官「書類!? そんなもの、どこから……」

皐月「5年も艦娘をやってたらコネだってできるよ! 現場の艦娘が、指揮官のことを何も調べないと思ったら大間違い!」

司令官「……そもそも、なんで結婚がウソだってわかったんだ。俺がモテなさそうな顔をしてるからか」

皐月「あはははは! 何でわかった!? 何でわかっただってさ!! あはははははは!! 全然違うよ!!」

皐月「いい? ボクたち艦娘は元々が戦闘用の金属でできた艦船なんだよ? 毎日金属の塊な艤装のチェックをして、身に着けて、砲弾を装填してる!」

皐月「ボクたちがどれだけ金属に親しんでると思ってるの? 指輪を見たらすぐにわかったよ。金メッキだって!」

皐月「それにほら、この内側! メッキがはげてきてるでしょ? 嵌めたままにして、新しいのに交換しないから!」(ゴミ箱に指輪を捨てる)ポイ カラン

司令官「し、しかしそれだけじゃ……」

皐月「そもそも司令官が結婚してるなんて話にリアリティがないんだよね! ボクは司令官と一緒に過ごしてたからよーく知ってるよ! ヒマな時もずっと鎮守府に居る上で、滅多に家に連絡もしてないってさ!」

司令官「ぐっ」

皐月「それに……2年前にあの島で遺言を聞いた時も、結婚相手の話なんかしなかったよね? 艦娘かわいさに自分を盾にする司令官殿にしては、ちょっと奥さんに冷たいんじゃないかな?」

皐月「ためしに、子供がいるかどうかを聞いてみたら変な間があるし! もう、わからないほうがおかしいよね!?」

司令官「うう……」

皐月「で、金メッキがはげるくらい、ずっとニセモノの指輪を嵌めてたみたいだからピンと来たんだ! 司令官はずっとこのウソを、何かのために用意してたんだって!」

皐月「ついでに、自分の司令官さんに告白したボクの姉妹にも確認してみたよ! そうしたら、『指輪を見せられて、結婚している』って答が返ってきたって! とてもそうは見えないのに、ね!」

皐月「ついでのついでに確認してみたら、もちろんその司令官さんも結婚してない!」

司令官「……全部お見通しか……」

皐月「そういうこと! たぶん、提督はみーんな艦娘に告白された時のために、オモチャの指輪をはめて、結婚しているってウソを用意してるってことでしょ?」

司令官「……皆じゃないさ。一部の提督だけだよ」

皐月「へえー? 詳しく聞きたいな!」
148 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 03:55:41.24 ID:ymUICyVL0
司令官「……わかったよ。全部話す。しょうもない話だしな」

司令官「……艦娘と提督は職務上も立場的にも、艦娘との繋がりからも、恋愛関係が発生しやすい。それがこじれて問題になることがよくあった。惚れた腫れたは個人の自由っつっても、上司と部下だし、関係がバレれば他の艦娘との関係も悪化しがちだしな……。おまけに艦娘はみんな美人ときた」

司令官「そういう事故をなるたけ防ぐために、艦娘の提督以外の男性との交流機会を増やしたり、恋愛関係の発展を促進したりって涙ぐましい対策が取られたわけだが……それで100%艦娘の心情をどうにかできるわけもない。当たり前だな」

皐月「そっかー、それでボクの姉妹も……」

司令官「艦娘が提督に恋愛感情を抱いた結果をコントロールするための方策が必要だ。しかし、どんな方策が有効かを実証する、ってわけにもいかない……。で、そのいくつかを俺達は試させられているってわけだ」

司令官「その結果、俺や、皐月の姉妹の上司に当てられたのが、『既婚である』って設定さ」

皐月「……ふぅうーん……なるほどねえー。大体想像通り、かな!」

司令官「俺には縁の無い話だと思ってたんだが、まさか実際に使って、しかもその場で見破られるとはなあ」

皐月「司令官はバカだなー、こんなわかりやすいウソ、誰だってわかるよ!」

司令官「……一応初月と時雨は信じてるんだろ?」

皐月「二人とも慌ててたんじゃない? ウソつきで意地悪な司令官を知らないからさ!」

司令官「……全くお前ってやつは、全く……。そうだったな。そうだった。最初からそうだったよなあ、お前は」

皐月「………………」ニヤニヤ
149 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 04:00:33.56 ID:ymUICyVL0
――二年前 基地裏手の崖

司令官「あれは……まさか……! あいつ、何で!」

皐月「お待たせ! 新しい船だよ!」

司令官「お前! 何で……!」

皐月「話はあとあと! 乗って乗って!」グイグイ ポイッ

司令官「うおっ!」ゴロゴロゴロ

如月「あらあら、乱暴ね。……救出対象の乗船確認!」

睦月「了解! 睦月が先導するよ! みんなは後ろと横を……」

長月「……まて、敵の気配がする。皐月! 私と文月は北側に回る!」

文月「わかったー! 適当にかきまわすから、その間に脱出してー!」

皐月「うん! お願い!」

司令官「おい、無理をするな! 敵の数がどのくらいかも……」

長月「なに、この程度は何でもないさ!」

文月「そうそう、ご期待にはお応えするよ、司令官さん!」

司令官「なに?」

文月「『絶対に戻ってくるって信じてる』んでしょ? だったら、文月たちだって裏切らないもん!」

長月「そういうことだ。その言葉通り、信じて待っていてくれればいい……行くぞ!」

司令官「は!? ……皐月、お前!」

皐月「ほらほらあ、ハッパをかけた当人がおたおたしてちゃみっともないよ! どんと座って構えててよ、司令官さん!」

司令官(こいつ……! しかし今は)

司令官「……ああ、わかったよ……。その通りだな」

皐月「そうそう! それでいいんだよ! 強引に突破するから、しっかり掴まっててね!」

睦月「『睦月型ならできる』って言ってくれたんだから!」

如月「上手にしてあげなきゃ、女がすたるってものよね?」

司令官(くそ、皐月め! デタラメを……!)

皐月「じゃ、行くよー!」
150 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 04:04:01.20 ID:ymUICyVL0
―― 船上

(……そして、俺達は脱出に成功した)

(今は船に俺と救出部隊の全員を乗せ、当初の予定通り避難先の鎮守府に向かっている)

(意外……というか、異様なほどにすんなり行ったのには理由がある)

(一つは、皐月たちが何の連絡もないうちから新しい船と増援が用意され、こちらに向かってていたからだ)

(おかげで救出部隊は無謀な時間稼ぎの戦闘に入ることなく、島へと向かうことができたようだ)



操縦席の吹雪「うちの司令官は準備がいいんです」

操縦席の吹雪「そろそろあいつの悪運も尽きる頃だろう、って」

操縦席の吹雪「……必要とされてるってことですよ。それはちゃんとわかってください」

操縦席の吹雪「……軍に、っていうだけじゃないですからね。それもわかってくださいね」

司令官「…………」


(もう一つの理由は、救出部隊である睦月型たちの奮戦だった)

(俺が事前に読み込んでいたスペックから想定していたよりも、ずっと彼女たちの戦闘能力は高かった)

(艤装の性能に多少のハンデがあっても……いや、むしろその分だけ厳しい訓練を積んでいたんだろう)

(そして中でも、皐月の活躍は頭一つ抜けていたと言っていい)
151 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 04:06:48.95 ID:ymUICyVL0
皐月「みんな寝ちゃったね。ボクが上陸してる間も、ずっと海上で警戒していてくれてたから疲れちゃったみたい」

司令官「……そういうお前は平気なのか。お前こそ俺を庇って周囲を警戒しながら、散々走り回ってただろ」

皐月「まあねー。へへー。ボクが上陸した理由、わかってくれた?」

司令官「…………」

皐月「あれ? どうしたの?」

司令官「……起こしちゃ悪い。少し外で話そう」カンカン

皐月「はいはい」カンカン
152 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 04:36:20.59 ID:ymUICyVL0
皐月「もう夕方だねー。ほら、水平線に沈む夕焼け。ま、見飽きたけどー」

司令官「なぜ救出部隊に嘘をついたんだ」

皐月「あー、空あかーい」

司令官「……おい」

皐月「あはは、司令官を助けるためだよー」

司令官「俺は逃げろと言ったはずだ」

皐月「逃げたら司令官は死んじゃったじゃん」

司令官「言っただろ、俺は隠れると……」

皐月「陣地破壊用の爆弾をたくさん仕掛けてある島の、どこに隠れるって?」

司令官「逃げ込めるシェルターを用意していたんだよ。俺一人ならそこに……」

皐月「それは当初の計画で、今はそこにも爆弾がギッシリ」

司令官「な、なんで知ってるんだよ!?」

皐月「それはね! 調べたからだよ!」

司令官「どうやって!」

皐月「ふふふ、大規模かつ無茶な作戦には、元ネタが付き物!」

皐月「ずっと深海棲艦にリードされてた開戦当初に、この島に深海棲艦をわざと上陸させてから爆弾で吹き飛ばす作戦があったんだよね? 当時の艦娘の活躍でお蔵入りしたみたいだけど……」

皐月「今回の作戦はその再利用なんでしょ?」

司令官「……そうだ」

皐月「当時の作戦には避難用のシェルターはなかったよね。深海棲艦に陣地を要塞化させてから、まとめて吹き飛ばす予定だったから」

司令官「…………」

皐月「でも今回の作戦は、ギリギリまで島に人が残って敵をおびきよせる必要があった。そうしなきゃ、わざわざ深海棲艦も上陸してこないからね!」

皐月「対応として急遽設置されたシェルターだけど……そこに隠れても、仕掛けた爆弾が爆発して、更に砲撃も加われば最大限に見ても生存率は3、4割ってところ? 司令官さんは人間だしね」

司令官「…………」

皐月「そこでボクは合理主義者の作戦立案者さんなら、書類はそのまま、自分の判断で爆弾をシェルターにも仕掛けておくかも? ……そう考えて爆弾の数を数えてみたら、あら不思議!」

司令官「…………」

皐月「司令官さんは爆弾のことを知ってたから、ボクたちが戻ってきた時も脱出用の崖から移動もしてなかった。そうだよね? シェルターが使えないなら移動するのは無意味だし、ギリギリまで海が見えるところで、できるかぎり戦況を確認したかった!」

司令官「……最初から知ってたってわけか」

皐月「まあね。爆弾を仕掛けていたことは、この鎮守府の艦娘に確認してたよ。機密だったんだろうけど、司令官さんのことを死なせたくなかったんだねぇー。騙されたのに、けなげだなー」

司令官「…………」

皐月「『絶対に助けて』ってお願いされた。だからボクは全力を尽くした。みんなにも尽くしてもらったんだよ」

司令官「……それでお前達が死んだら、元も子もない」

皐月「………………」ガッ(胸倉をつかむ)

司令官「…………」

皐月「ボクは自殺させるために来たわけじゃないって言った」

司令官「自殺じゃない。俺は艦娘のために……」

皐月「…………」

司令官「……いや、そうじゃないな。俺が辛かったんだ。艦娘を戦わせて、死地に向かわせるのが……」

皐月「…………」

司令官「指揮官失格だな」

皐月「かもね。司令官さん……。ひとつ教えてあげる」グイッ
153 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 04:40:04.99 ID:ymUICyVL0
皐月「ボクたちは大事にされたら嬉しいけれど、大事にされすぎるのは辛いだけ」

皐月「この姿はボクの誇りだよ。生きている人を守って戦うために『生まれた』んだ。後悔はしてない」

司令官「……そうか」

皐月「そういうこと! 納得できないなら提督なんかやめたほうがいいよ! それがお互いのため! はい、この話は終わり」パッ

司令官「ああ……すまなかった」

皐月「いえいえお気になさらず、司令官殿!」

皐月「……そ・れ・よ・り・も、さ。もっと大事なことをボク達に言うべきなんじゃない?」

司令官「ん?」

皐月「本当は皆の前で言ってもらうべきなんだけど、でも、ちょっとくらい先払いしてもらってもいいよね? ボクも結構、頑張ったし!」

司令官「……そうか。そうだな」

皐月「さ、どうぞ!」
154 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/30(火) 04:40:53.12 ID:ymUICyVL0





司令官「助けてくれてありがとう、皐月。死んでもいいと思ってたが、俺は……今はやっぱり、生きていてよかったと思えるよ」

皐月「うん……だよね!」






(その時の皐月の笑顔が……夕焼けを背にしたその顔が、今もずっと残っている……)




155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/10/30(火) 04:41:40.86 ID:ymUICyVL0
次回 最終回(かもしれません)
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/30(火) 08:35:43.48 ID:hbPodnVS0
おつ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 08:56:53.33 ID:vTS+FvdRo
おつかーレ
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 18:18:19.28 ID:EWig5Chfo
おつおつ
159 : ◆yJGN1SPTmzFo [saga]:2018/10/31(水) 00:09:43.33 ID:Z/XAsDLX0
――現在 執務室

司令官「お前は昔から、俺のウソをあっさり見破って……むしろ俺が騙される側だ」

皐月「そういう言い方はひどいんじゃないかな! ボクは司令官のどうしようもないウソを指摘してあげてるだけだよ!」

司令官「……皐月、怒ってるよな」

皐月「怒ってる!? 怒ってるだって! あはははは! 当たり前じゃん!」

司令官「……真剣に告白してくれたのに、俺はこんな上から押し付けられたウソでお前達をごまかして」

皐月「違うッ!!」

司令官「っ」ビクッ

皐月「ボクは……ボクはうぬぼれてたんだ」

皐月「司令官とたった2年過ごしただけで、ちょっとくらいは特別な存在になれてるはずだって……だから、エッチだって真剣に勉強したんだ。でも……!」

皐月「なのに、ボクは司令官にとっては子供で……こんなウソでごまかされて……そんな程度の艦娘だったってことだよね」

皐月「それが悔しい……!」

司令官「皐月……」

皐月「……いいんだ。司令官。ボクのことなんてどうでもよかったんだから。それならそれでいいんだ。ボクが勝手に怒って、八つ当たりしただけだよ」

司令官「……お前は、俺にとってどうでもいい相手なんかじゃない」

皐月「いいよ、気をつかわなくても」

司令官「……確かに俺はお前のことを子供だと思ってたな」

皐月「実際にそうだもんね。ボクは子供だから」

司令官「だから、俺のほうに準備ができてなかったんだ。焦って、何とかしようとして、安易なウソに飛びついてしまったのかな。……でもな」

皐月「……でも?」

司令官「俺は……」
160 : ◆yJGN1SPTmzFo [saga]:2018/10/31(水) 00:10:30.21 ID:Z/XAsDLX0






「「ちょっと待ったーっ!!」」





161 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/31(水) 00:12:37.00 ID:Z/XAsDLX0
初月「そこまでだ!」バアーン

時雨「話は全部聞かせてもらったよ!」ダーン

司令官「えええええこのタイミングで出てくる!?」

皐月「あっ、二人とも、もう入ってきちゃったの?」

司令官「は!?」

初月「皐月が司令官に本当のことを話させるから、扉の外で聞いていてくれと言われたが……!」

時雨「まさかこんな真実があったなんて! だまされたよ……!」

司令官「え、皐月? なんで二人を呼んで……?」

皐月「え? だって二人も司令官のことが好きだって言ってたから。本当のことを聞いてもらったほうがいいかなーって」

司令官「そうか! 皐月! お前やっぱり子供だったんだな!?」

皐月「むっ! またそうやって子供扱いする!」

初月「正直子供だと思う。皐月、お前は引っ込んでいろ」

皐月「何だとー!」

時雨「うう……テンション高く突入してみたけど……僕はちょっとついていけない……」

司令官「あのな、皐月、こういう話はな……もっとこう……なんというか……」

初月「いいか! 皐月! 恋愛は戦争以上に激しい生存競争。……一人と一人が残るまでの潰しあいなんだ(と少女マンガで言っていた)。それをわかっていないお前はまだまだということだ!」

皐月「えーっ! そんなことないよ! みんな仲良くしたほうがいいじゃない! 動画にも複数人数で一緒にっていうのが」ムグムグ(時雨におさえられる)

時雨「さ、皐月! もうやめよう、ね!」ガシッ
162 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/31(水) 00:13:39.78 ID:Z/XAsDLX0
初月「司令官。……そういうわけなので僕たちにはまだ時間が必要だと思う」

司令官「あー……そうだな。そういうことにしよう」

皐月「むーむーむー!(司令官はまたそうやってごまかして先送りにする!) むーむーむー!(ボクのことなんかどうでもいいんだ!)」

時雨「皐月、焦ることはないから、ね? 僕たちもゆっくり大人になっていけばいいんだよ」ズルズル

初月「では、邪魔したな、司令官」ズルズル

司令官「あー、うん」

初月「それと……。もうウソはつかないでくれよ」

時雨「……本当にね」

司令官「……申し訳ない」

バタン

司令官「…………」

司令官「………………」

司令官「……………………とりあえず」スクッ

司令官「俺の夏休みは終わりだな。真面目に戦争を終わらせるとするか」




おわり
163 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/31(水) 00:17:00.89 ID:Z/XAsDLX0
エピローグ



――二年前 新しい基地前

司令官「ここが新しい職場か」ザッ



司令官(作戦は成功した。激しく消耗した深海棲艦たちは、俺達の目論見どおり大きく前線を後退させたようだ)

司令官(そして基地を失った俺はこの小さな新基地への赴任を命じられた)

司令官(名目上は転任。実際は基地を失陥させた責任を取らされた、事実上の左遷……)

司令官(……と、いうのも建前で、実際は敵をわざと引き込んで基地を犠牲にする、そういう危険で無茶な作戦を表に出さないためのカモフラージュ)

司令官(あの戦いは、押し寄せる深海棲艦に対応できずついに防衛網を突破され、あわや本土への直接攻撃……。そうなるところを、かろうじて応援の艦娘の活躍と、島の自爆で、敵に損害を与えて撤退に成功させることができた)

司令官(そういうことになった。ま、俺が書いたシナリオだ)

司令官(市民は改めて深海棲艦に対する危機感を募らせ、華々しく戦い抜いた艦娘を賛美する。軍はこの教訓を活かすべきと主張し、更なる予算を獲得する……)

司令官(……そう都合良く行くかどうかはこれからの話だが)



司令官「……さて、新しい基地に新しい艦娘。また1からのスタートだな」

司令官「とりあえず、新人艦娘が来るまで、昼寝でも」ガチャ



「わっ!!」バッ



司令官「うおうっ!」ズサッ

皐月「びっくりした? こんにちは、司令官さん!」トコトコ

司令官「ああ、驚いたよ! まったく……! ……なんでここにお前がいるんだ」

皐月「それはボクがこの鎮守府の艦娘・第一号だから? こういうのも初期艦っていうのかな?」
164 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/31(水) 00:20:42.85 ID:Z/XAsDLX0
司令官「なに? なんでお前が……」

皐月「さあねー。頼りない提督さんに、とっても頼もしい艦娘をつけてくれたんじゃないかなー?」

司令官「……あのな、この基地は管轄範囲に深海棲艦がほとんど出ていないんだぞ。単にこの地区に鎮守府がないのを不安がった住民に対する言い訳みたいな……」

皐月「それくらいわかってるよ。ちゃんと調べたからね」

司令官「……。じゃ、わかるだろ? お前みたいな優秀な艦娘はもったいない……」

皐月「……ああもう。決まったことをぐちぐち言っても仕方ないよ! ほら、荷物を置いてきなよ!」ドンドン

司令官「お、押すなっての! 全く、上は何を考えてんだか……」

皐月「あのさ、優秀な艦娘が着てくれたと思ってるなら、もっと喜んだらどうなの? 文句ばっかり言って!」ドンッ

司令官「お、押すな! お前だって言ってただろ、誰かを守って戦うために生まれたって! こんなところでその力を腐らせるのは……」

皐月「……ボクが腐るかどうかは提督次第! それは司令官さんの仕事!」

司令官「なんでこうなったんだ。俺は激戦区を務め上げて深海棲艦を吹き飛ばした褒美に、夏休みをもらったつもりだったんだがな……。給料もそんなに下がってないし」

皐月「夏休み? それなに?」

司令官「……そういや艦娘には夏休みはないか。夏はみんな、休めるものなんだよ」

皐月「みんなが休んだら深海棲艦に負けちゃうじゃん!」

司令官「……まあな。そりゃな」

皐月「それに、今は5月! 夏にはまだ早いよ」

司令官「わかったわかった」

皐月「適当なこと言ってないで、ちゃんと仕事ができるようにしよ」

司令官「二人だけで再スタートか……。早く新しい艦娘が来てくれるといいんだが」

皐月「とりあえず、何する?」

司令官「執務室。テレビを設置する」

皐月「え、真っ先に?」

司令官「録画してる番組があるんだよ。キュアるんとか」

皐月「きゅあるん?」

司令官「『Jeざす! キュアるん』。アニメだよ。見てないのか? 艦娘にもファンが多いな」

皐月「部屋にテレビは置いてなかったから……」

司令官「なるほどね。俺もそう真剣に見てるわけじゃない、が……。なら、鑑賞会と行くか」

皐月「ええ? 仕事は?」

司令官「初日に仕事なんかないだろ。艦娘も一人しかいない。訓練の準備だって出来てない。テレビを設置したらメシを作って、キュアるんを見て、寝る」
165 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/31(水) 00:22:34.92 ID:Z/XAsDLX0
皐月「それじゃ、休みと変わらないんじゃ……」

司令官「言っただろ、夏休み……いや、5月だからゴールデンウィークだ」

皐月「ごーるでんうぃーく?」

司令官「簡単に言えば、5月も休めるってことだ」

皐月「休んでばっかりじゃん」

司令官「休みが不満なら、違う鎮守府に行ってもいいんだぞ」

皐月「むっ。そうやってボクを追い出そうとしても無駄だからね」

司令官「なんだそりゃ。じゃ、キュアるんに付き合え」

皐月「はいはい、わかりましたよ、司令官さん」

司令官「……その、『司令官さん』ってのも、今更ながら他人行儀だな」

皐月「なら、ボクの名前もちゃんと呼んでよね。『お前』じゃなくて」


司令官「じゃ……皐月」

皐月「うん。司令官」


司令官「……。司令官じゃ、あんまり変わらんな」

皐月「へへー。名前で呼んであげてもいいけど?」

司令官「それはまた今度な」

皐月「照れちゃって。今度っていつ?」

司令官「またいつか、だ……」
166 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/31(水) 00:23:34.65 ID:Z/XAsDLX0




皐月(………………ねえ、司令官)

皐月(ボクはずっと、あの時から)

皐月(皐月って呼んでもらえたのが)

皐月(結構、嬉しかったんだよ――)


おわり



167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 00:30:51.04 ID:Brf0fUAH0
おつ
よかったぞ
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/10/31(水) 00:43:50.70 ID:nh1FGeoW0
おつでした
(えうーも待ってていいのかい?)
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 01:57:05.02 ID:iuRwZWSVo
おつかれだでー
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 03:55:50.07 ID:2s4QHom5o
おつ
楽しかった
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 04:10:32.98 ID:SAVt8b6yO
乙乙
もっと皐月流行れ
172 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/10/31(水) 23:11:33.75 ID:Z/XAsDLX0
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
最初はさらっと終わらせるつもりだったのですが、いきあたりばったりで始めたため、
ラストがどうにもキマらず、何回も没にしてるうちにエタりかけてしまいました

結局のところは、読んでいただき、レスをしてくださったみなさまのおかげで完結させることができました
こういうフレーズ、いろんな本のあとがきに書いてありますが、作品を書くたびに、
ホントにそうだな リップサービスどころではない、マジな話だな と実感します

本当にありがとうございます

>>168
多素死病を終わらせないといけないので…その後に…多分…これもラストがキマらなくて
あまり期待せず忘れてお待ちください
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/01(木) 00:11:40.38 ID:6TxCnwYKo
おつおつ
きれいに終わった 完結おめでとう
174 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/11/01(木) 01:17:21.02 ID:FCmNQ16T0
おまけ

如月バースト


――某鎮守府

長門「睦月、少しいいか」

睦月「あっ……長門さん……。な、なんですか? 睦月にご用ですか?」

長門「少し相談したいことがあってな。というのも、最近、如月の様子がおかしい……妙に塞ぎこんでいる気がする」

睦月「そ、そう、かな? そんなことはないんじゃ……」

長門「いや、おかしい。それに、よく私の方をひどく暗い目で見つめているし……。私の部屋の扉に白百合や菊やカーネーションを貼りつけているところも見た」

睦月「そ、そんなことしてたの如月ちゃん!?」

長門「その上、一緒に出撃すると私の顔スレスレに砲弾を飛ばしたり、二本の魚雷の航跡の間に私を通したり……」

睦月「うわ……」

長門「私が彼女を怒らせてしまったのだろうか。思い当たることがなくてな。何か、心当たりはあるか?」

睦月「それは……あります」

長門「あるのか!」

睦月「でも、でも、睦月の口から言うのは……。睦月がちゃんと如月ちゃんに話しますから……」

長門「いや……私に原因があるなら、私から話したい」

睦月「そ、それは余計にこじれるからやめたほうが!」

長門「こじれても構わん! たとえこじれても、それは前進しているということだ! この長門、力づくで解いてみせる!」ズンズンズン

睦月「あっ、ちょっと、待ってー! 待ってくださーい!」ガシッ

長門「止めるな、睦月!」ズンズンズンズンズンズンズン

睦月「ううー全然とめられないー!」ズルズルズルズルズルズルズル
175 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/11/01(木) 01:20:03.68 ID:FCmNQ16T0
――如月の部屋の前

長門「如月、いるか! 長門だ! 話をしたい!」ドンドン

睦月「き、如月ちゃーん……? 睦月もいるから、あんまり危ないことはしないで、出てきてくれると嬉しいな……」

長門「………………」

睦月「………………」

長門「いないのか? いや、気配はする」

睦月「あの、やっぱり睦月から話をしたほうが……」

長門「気持ちは嬉しいが、それでは……」



「ナガトオォォォ!」ガシャーン



長門「!? 後ろかっ!」バッ

「シャアッ!」シュババッ ズオウッ

長門「くっ! フッ!」ブオン

「キイッ!」ヒュッ タタタッ

睦月「ああっ! 窓から飛び込んできた如月ちゃんが長門さんに襲い掛かって手刀を突きたてようとしたのを、長門さんが左手で防御し右手で反撃のフックを繰り出したけど、それを如月ちゃんが宙でとんぼをきって着地と同時に四つんばいで床と壁を蹴って天井にくっついて間合いを取った!?」

如月「シュウウウウ! ナガト……コロス!!」ズズズズ

長門「ぬう……もはや艦娘とも呼べぬ化生と成り果てたか、如月!」ジリジリ

睦月「や、やめて、如月ちゃん!」
176 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/11/01(木) 01:22:31.72 ID:FCmNQ16T0
如月「ケアアアアッ!」ダアンッ ゴウォッ

長門「うっ!?」ドォン ダアン

如月「殺(ト)ッタッ!」ヒュヒュッ

長門「甘い!」ガシッ グオッ

如月「ギッ!?」ググググ ドスッ ザクッ

長門「離さんよ! 終わりだッ!!」ブオンッ ドオオオオオオオン

如月「キハッ! キゃアああアああああっ! かはっ……」ガクッ…

睦月「す、すごい勢いで飛び掛った如月ちゃんが長門さんにぶつかって押し倒して、そのまま馬乗りになってトドメを刺そうとしたけど長門さんの腕に身体をつかまれて立ち上がられて透かされ、必死で逃れようと手指を長門さんに突き刺しても、離さない長門さんがパワーボムで如月ちゃんを床に叩きつけたっ!?」

如月「う、うう……」

睦月「如月ちゃん! 如月ちゃん、大丈夫!? 正気に戻って!」

如月「…………ずっと正気だけど」

睦月「……さっきの、正気でやってたの……」

長門「ふう……つつ。改二になっていなかったら……そして、指輪をもらっていなかったら危なかったかもしれないな」

如月「うっ!」

睦月「なんて念入りなトドメ!」

如月「うっ、うっ……ううう……うわあああああん! わあああああん!」バタバタ
177 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/11/01(木) 01:27:43.24 ID:FCmNQ16T0
長門「……睦月、どうしたんだ如月は」

如月「えーっとぉ……もう全部話しちゃいますけど、如月ちゃん、司令官のことが好きだったのに、長門さんが先に指輪を受け取っちゃったから、嫉妬と怒りでおかしくなって……」

長門「なに? そんなに如月は指輪が欲しかったのか?」

如月「欲しいに決まってるじゃない!! このクソ戦艦!! わたしの司令官をぉぉぉおおおお!!! わああああん!」

長門「落ち着け、如月。こんなものは所詮、儀式の道具だろう。大した意味があるわけじゃない」

如月「はああああ!? クソッ、これが司令官の本命の余裕ってわけ!? 殺す! 絶対に殺す!」

睦月「ああ、長門さんもうそのくらいで……」

長門「本命とは失礼だな。私は別に司令官の恋人でも妻でもない。付き合っている男は別にいる」

如月「えっ」

睦月「えっ」

長門「この間の艦娘交流会で出会った男性でな……。プロレスラーなのだそうだ。さっきの技も、実地でかけてもらって覚えたんだ(艦娘は頑丈なので平気なのだ)。まあ、海上では威力が出ないから深海棲艦相手には使えないんだが」

如月「だ、だって指輪!」

長門「だから、儀式用の道具だろう。ケッコンカッコカリというのは、婚礼を模して艦娘と提督の呪術的繋がりを強化する儀式で……」

如月「じゃ、じゃあなんで指輪をみせびらかして!」

長門「……指が太すぎて、手袋越しだときつくてな」

如月「ええ……わ、私の懊悩はなんだったの……」



睦月「…………」ユラリ



如月「あっ、むつ……」

睦月「……き・さ・ら・ぎ・チャン……?」ゴゴゴゴゴゴ

如月「ひっ、睦月ちゃんがこれまでになく怖いオーラを……ごめんなさいぃぃ」

睦月「……いいよ、如月ちゃん。許してあげる」

如月「ほ、ほんとう……?」

睦月「ずっと如月ちゃんが苦しんでるのわかってたから……呑み過ぎて暴れたことも、鎮守府におぶって運んだことも、その途中で睦月の制服に吐いたことも、翌日に全部忘れてたことも、その後また呑んで暴れて運んで吐いて忘れてを繰り返したことも……許してあげる」

如月「本当にっ、本当に申し訳ありませんでしたっ」
178 : ◆yJGN1SPTmzFo [sage saga]:2018/11/01(木) 01:29:02.53 ID:FCmNQ16T0
睦月「その代わり、今から司令官を呼んでくるから、ここで告白して」

如月「えっ!? む、無理!!」

睦月「無理じゃない! すぐやって! そしてこの窓と廊下と二人の惨状を説明して!」

如月「えええええ!!」

睦月「長門さん、如月ちゃんを抑えておいて! 司令官!! しれいかーーーーん!!」ダダダダダダ

長門「如月、ここが女の見せ所だ」ガシッ ガチッ

如月「うそーーーー! ちょっとーーーー! やだーーー! せめて、せめて身体を洗って服を着替えて下着を替えてお化粧をさせてえーーーー!」ジタバタ



如月バースト おわり
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/01(木) 01:49:15.45 ID:6TxCnwYKo
乙乙
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/01(木) 10:12:26.76 ID:uXwV3FI1o
解説役の睦月ちゃん
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/01(木) 14:07:06.19 ID:QTcSjXXDO
怒ったさっちん怖いけど素敵
119.53 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)