【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その2【クレしん】

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150 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 19:54:23.74 ID:aMmubLhw0
エーテルパラダイス ルザミーネの屋敷前

リーリエは太陽の光を浴びながら、右手にはカザマの入ったボールが、左手にはウルトラビーストのデータが入った端末が握られている。

リーリエ(月の笛も……もうそろそろ……)

きっと、ビーストの世界に行けば、ウルトラビーストを従えた母と戦うかもしれないだろう。そうでなくとも、ビーストからリーリエの身を守るために、しんのすけのポケモンたちの力は必須だ。

リーリエ(やれるだけのことはやりました。あとは――)
151 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 19:55:19.47 ID:aMmubLhw0
〜前日の夜〜

ルザミーネの屋敷の庭で、みんなに見守られながら、リーリエとハウ、ネネとガオガエンが対峙していた。
ネネはピンク色の毛並みのあちこちに火傷があり、ガオガエンの身体にも激しい拳撃の跡が残っている。だが、ネネは片膝をついてガオガエンを睨みつけている一方で、当のガオガエンは不敵そうに笑っていた。

ハウ「ガオガエン! フレアドライブ!」

ガオガエン「ガオオオッ!」ダッ!

ハウの指示を受けたガオガエンは、一気にネネに向かって走り出すと、へそから炎を放出させて全身に纏い始めた!
そして、炎と一体になりながら、ネネに全身をぶつける!

ガオガエン「オオオオッ!!」ゴォォォッ!!

ドンッ!!

キテルグマ「クーーーッ!??」

ガオガエンのフレアドライブを受けたネネの巨体が燃え盛りながら宙を飛び、地面に倒れ伏した。

リーリエ「ネネちゃんさん!」

キテルグマ「ク……クー」ガクッ

ククイ博士「ハウとガオガエンの勝ち、だね」
152 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 19:56:50.66 ID:aMmubLhw0
ハウ「……っぷはぁー! 手に汗握る、すごい戦いだったー!」

リーリエ「お見事です。ハウさん!」

リーリエ「……ですが、あくタイプに有利であるはずのネネちゃんさんが押し負けられるとは思いませんでした。タフさでは、しんちゃんのポケモンさんの中でも一番と思っているのですが……」

ひろし「ネネちゃん――キテルグマの特性はもふもふって言ってな、その名のとおりもふもふとした身体で攻撃を軽減させる代わりに、ほのおタイプの攻撃にはめっぽう弱いんだ」

ククイ博士「そういうことだね。ガオガエンのフレアドライブでは受け止めきれないだろう」

ハウ「うんー。それにねー、おれが逆にリーリエの作戦を真似したのー」

リーリエ「そうだったのですか……。ハウさん、さすがです!」

ハウ「でも、リーリエの戦い方ってーすごいえげつないよねー。作戦に気がつかなきゃ、おれ、負けてたかもー」

リーリエ「え、えげつないって……」

アセロラ「ハウくん、もっと他にも言い方あるでしょー! 間違ってないけど……」

ハウ「うー、ごめんねー」

プルメリ「ま、あたいはあの戦い方、結構好きだよ。なにがなんでも相手を倒そうっていう気迫がビンビンに感じられるね」
153 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 19:57:26.10 ID:aMmubLhw0
グラジオ「だが、同時に弱点も明らかになったな。まずは作戦を悟られないようにすること……そして相手の出すポケモンの性質と傾向を理解しておくべきだ」

リーリエ「はい……今回もアセロラさんとの戦い方も、お互いの手持ちを知っていたからああいうことが出来たんですよね」

グラジオ「リーリエ、ひとつずつミスを潰せばいい。お前には、志を共にする仲間がいるんだからな」

ククイ博士「そうだね。まずはマーレインから貰ったビーストのデータを頭に入れるんだ」

アセロラ「それに、しんちゃんのポケモンたちも、だんだんリーリエちゃんの言うこと、分かってきてるよ」

みさえ「そうね、私ポケモン勝負はさっぱりだけど、リーリエちゃんが強くなっていってるのは分かるわ!」

ひまわり「たい!」

リーリエ「みなさん……本当にありがとうございます。わたし、カザマさんたちと一緒に、もっと頑張ります!」

プルメリ「今度はあたいと戦ってみようか。状態異常についても、知っておいて損はないだろ?」

リーリエ「はい! よろしくお願いします!」

みんなの粘り強い指導と、リーリエとカザマたちが夜通し行った血のにじむ努力は、これから発揮されていくだろう。
154 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 19:59:46.41 ID:aMmubLhw0
リーリエ(あなたたちを、信じます)

コツコツ

グラジオ「リーリエ、ここにいたか」

リーリエ「みなさん……」

みさえ「あなたに渡すものがあるのよ」

アセロラ「リーリエちゃん、はい!」

アセロラが一歩前に出ると、飾り気のない直方体の箱を渡された。リーリエはそれを受け取り、箱を開けると、完全に直った月の笛が陽の光を浴びて青々と輝いていた。

リーリエ「これは……!」

ひろし「さっき、修復が終わったんだ」

ククイ博士「アローラの人たちと、ビッケさんたちエーテル財団の方々が、がむしゃらに修復に勤しんでくれたおかげだね」

プルメリ「これで伝説のポケモンを呼び出すんだろ?」

ハウ「おれもみんな、バッチリ行く準備はできているよー。リーリエはー?」

リーリエ「わたしも……準備万端です!」

アローラの人々と神々の祈りを込めながら修復された月の笛を手に、リーリエたちはグラジオの小型船へと乗り込んだ。

ククイ博士とバーネットはエーテルパラダイスの人やポケモンたちの助けになれるよう、マーレインと協力してビーストへの対抗策を練り、アセロラはエーテルハウスから連れてきた子供を守るために残ることになった。
155 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:00:30.82 ID:aMmubLhw0
リーリエ「みなさん。月の笛からポケモンのことまで……何から何まで、ありがとうございます!」

バーネット「あなたがゼンリョクで頑張るのなら私達も応援するって、それだけよ」

ククイ博士「リーリエ、ハウ、君たちならきっとしんのすけとルザミーネを取り戻せるよ。ポケモンと供に、ゼンリョクで突き進んだ!」

バーネット「みんなの想い、あなたたちに託したからね!」

アセロラ「必ずしんちゃん連れて戻ってきてよ! アセロラ、アローラ防衛隊なのにしんちゃんから防衛隊バッジもらってないんだから」

リーリエ「はい!」

みさえ「さ、出かけるわよ――家族を取り戻しに」

ひろし「そしてすべて終わらせるために――行くぜ!」

全員「おーーーっ!!」
156 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:01:56.46 ID:aMmubLhw0
海上

グラジオの小型船が海を爆走するなか、ひろしたちは渡された昼食のマラサダを次々と口の中へ放り込んでいく!

ひろし「バクバクバクバクバク!!」

みさえ「ガツガツガツガツガツ!!」

ひまわり「チューチューチューチューチュー! !」

ハウ「モグモグモグモグモグモグ!!」

リーリエ「ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ!!」

グラジオ「ボリボリボリボリボリボリボリ!!」

プルメリ「ガリガリガリガリガリガリガリ!!」

シロ「」ポカン
157 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:02:45.62 ID:aMmubLhw0
ポニ島

小型船が海の民の村に停泊すると、一斉にポニの原野へと駆け出した!

全員「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」ドドドドドド!!

ケンタロスすら超える速度で、ポニの原野を突っ切り、ポニの古道を横切っていく!

マッシブーン「ブンブーン!」モストマスキュラー!

アクロマ「いま あなたの めのまえで そんざいかんを はなつ ウルトラビースt」

ひろし「うるせぇ!」バキッ!

アクロマ「おほァ!」ドサッ

ドタドタドタッ!

アクロマ「よ、よろしいっ……なかなかの、パンチです……」ピクピク

マッシブーン「ブーン?」ダイジョウブ?
158 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:03:36.67 ID:aMmubLhw0
ポニの大峡谷

ひろしたちはポニの大峡谷に突入し、勘で洞窟内を駆け巡り、橋を渡り、飛び出した野生のポケモンを無視して突き進んでいく!

全員「うおおおおおおおああああああああ!!!」ドドドドドド!!

試 練 開 始 !

ジャラランガ「ジャラジャランジャン!」バァーン!!

ポニの大峡谷 ぬしポケモン
ジャラランガ 出現!

みさえ「邪魔!」バキッ!

ジャラランガ「ジャランガーーッ!?」ドサッ

試 練 達 成 !

ドタドタドタッ!

ジャラランガ「ジ……ジャラ」ヤッパリ

ジャランゴ「ジャラ?」ダイジョウブ?
159 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:04:42.51 ID:aMmubLhw0
月輪の祭壇

ハウ「あらよっと! ついたー!」

グラジオ「ここが月輪の祭壇……」

みさえ「なんか神秘的な場所ね……」

リーリエ「太陽と月……ここで2本の笛を吹けば……!」

ひろし「ここまで勢いで来ちまったけど、どこで笛を吹けばいいんだ?」

プルメリ「あの階段の上じゃないかい? 登ってみようよ」

満月が見下ろす中、リーリエたちは長い階段を登って祭壇の上部へとやってくる。

リーリエ「月の力、いっぱい感じます……。ほしぐもちゃん……あなたを元の世界に戻すまえに、しんちゃんを取り戻して、かあさまの目を覚まさせます……!」

グラジオ「あの水たまりに囲まれたところに、床に太陽と月の笛と同じ文様があるな……。ここに立って、それぞれ笛を吹くのだろう」

リーリエ「では、にいさまは太陽の笛を。わたしは月の笛を吹きます」

グラジオ「わかった」
160 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:10:22.80 ID:aMmubLhw0
プルメリ「あたいらは儀式の邪魔にならないよう、下がっていようか」

ひろし「ああ」

ひろしたちは階段のそばへ下がり、リーリエは月の文様が描かれた床へ、グラジオは太陽の文様が描かれた床へ立つと、それぞれ笛を取り出した。

リーリエ「月の笛……手になじみます。ひとりでに吹けそう……」

グラジオ「準備はいいか? 始めるぞ」

リーリエ「はい……!」

リーリエとグラジオは太陽と月の笛を口元に持っていくと、そっと息を吹きかけた。
しんのすけはリーリエが笛を吹けないことを不安がっていたが、その心配はなかった。笛そのものが、音色を出しているからだ。
笛から飛び出した鮮やかな音は、祭壇を覆っていき空間そのものに優しく囁いていく。

みさえ「……きれいな音」

そして、笛が歌い終えた瞬間――。

ゴゴゴゴ!!

リーリエ&グラジオ「!」

ハウ「なになにー?!」
161 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:12:28.74 ID:aMmubLhw0
地面が揺れたかと思うと、リーリエとグラジオの周囲の水たまりが光を帯びた。光は床の模様を伝って、正面にある巨大なモニュメントへと駆け抜けていく!
そして、てっぺんにある円形のレリーフにたどり着くと、レリーフがひとりでに開いていった。
開いた箇所からマグマのような朱色の光が溢れ出し、虹色に変色すると、祭壇に向かって光線を照射した! 照射した部分が、小さな光のドームとなる!

ゴソゴソッ!

リーリエ「ほしぐもちゃん……?」

プルメリ「リーリエのリュックが!」

リーリエのリュックに入っているコスモッグが、飛び出した。コスモッグはリーリエから離れて、光のドームの中へと入っていく。

ほしぐもちゃん「……!」

グラジオ「コスモッグが……!」

リーリエ「ほしぐもちゃん!」

光のドームの中で、コスモッグも呼応するように輝きだし、光のドームがコスモッグに力を与えるように縮んでいく!
そして、超新星爆発の如く、青く眩い光を放ち、その場にいた全員が目を逸らした。


「マ ヒ ナ ぺ ー ア ! ! !」バサッ!
162 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:13:42.79 ID:aMmubLhw0
進化したコスモッグは、三日月のような巨大な翼を広げながら光のドームのあった場所へと舞い降り、産声を上げるように咆吼を上げた。

リーリエ「……!」

ハウ「コスモッグが進化したー!」

ルナアーラ「……」

みさえ「すごーい……!」

ひまわり「たやーい!」

プルメリ「アローラの伝説のポケモンは……コスモッグの進化系だったのか!」

コスモッグから進化したルナアーラは、真紅の瞳でリーリエたちを見下ろしている。

ひろし「あれが……ルナアーラ!」

――あなた達は『星の繭』と一緒にいるから、必ずルナアーラが現れてくれるはずよ

ひろし(星の繭……こういうことだったのか!)
163 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:14:45.37 ID:aMmubLhw0
リーリエ「ほしぐもちゃん……よかったです……無事で……いきなり飛びだすから……わたし、驚いちゃって……!」

グラジオ「それにしても……笛の音で力を与えるとはな……」

リーリエ「伝説ポケモンに進化させる……すごい儀式だったなんて!」

ルナアーラ「マヒナぺ!」

ハウ「すごいすごいー! コスモッグが進化すると伝説のポケモンになるなんてー! おれ、来てよかったー!」

リーリエ「伝説のポケモンに進化する話なんて、そんなの、本でも読んだことないのに……」

リーリエ「ルナアーラさん……ううん、ほしぐもちゃん! わたし、しんちゃんとかあさまに会いたい!」

ルナアーラ「マヒナぺーアッ!!!」バサッ!

ルナアーラは翼をはためかせると、急上昇した。翼を満月のように広げると、夜空のような青い身体が白くなっていき、額にもうひとつの目が浮き出てきた。
164 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:15:51.63 ID:aMmubLhw0
すると、祭壇のモニュメントに光が出現し、空間が歪んでいく。ルナアーラは第三の目から光を放ち、空間の歪みに当てると、ウルトラホールへと変化した。

グラジオ「ウルトラホール……!」

みさえ「これでしんのすけを助けに行ける!」

その時だった。
銀色の光が祭壇を襲い地面を穿った! 全員が攻撃を受けた方向を見ると、空にはテッカグヤが、祭壇と洞窟の出入り口にアクジキングが立ってた。

テッカグヤ「フー……!」ゴゴゴゴ!!

アクジキング「ズモォォォォッ!!」

ひろし「あいつら! こんなところにまで!」

グラジオ「行け……! ここはオレが食い止める!」スッ

ハウ「おれも手伝うー!」スッ

リーリエ「にいさま! ハウさん!」

プルメリ「リーリエ! グズグズしてる暇はないよ! 早くルナアーラと一緒にウルトラホールの中に飛び込むんだ!」

リーリエ「……はい! お願いします! ほしぐもちゃん!」

ルナアーラ「マヒナぺーア!」グワッ
165 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:18:00.80 ID:aMmubLhw0
ハウ「アローラ防衛隊、ファイヤーだよー!」グッ!

リーリエ「ファイヤー! です!」グッ!

ルナアーラは急降下し、リーリエたち4人をかかえると、ウルトラホールの中へと飛び込んでいった!

バサッ!
グワァァァァッ キィーーーン!

グラジオ「頼んだぞ! ヌル!」ヒョイッ

ハウ「行くよー! ライチュウ!」ヒョイッ

ヌル「オオオッ!」ポンッ

ライチュウ「ライラーイッ!」ポンッ

グラジオ「ハウ……オマエがいてくれてよかった。礼を言う」

ハウ「褒められちゃったー照れるなー」

グラジオ「『BLASTER』は任せた。オレは『GLUTTONY』をやる!」

ハウ「へへー任せられたー! ライチュウ、10まんボル――」

その時、空から1匹のポケモンが回転しながらテッカグヤへと激突し、地面へと落下させる。同時に、ポケモンも地面に着地する。

バンバドロ「ムヒイウンッ!」ズザザザッ!
166 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:18:37.24 ID:aMmubLhw0
グラジオ「バンバドロ――!」

???「まったく……わらわを差し置いてこのポニ島の中で暴れるとはいい度胸じゃ」テクテク

ハウ「ハプウさん!」

ハプウ「お主らが全力疾走する姿が見えてな。ライドギアを渡そうと思ったが、今の状況を見る限り、必要なさそうじゃな」

ハウ「手伝ってくれるのー?」

ハプウ「もちろんじゃ。伝説のポケモンを見れて、気分も良いしな! このハプウとバンバドロ、最初からゼンリョクでビーストを迎え撃とうぞ」

グラジオ「よし……ホールを守りきるぞ!」

ハウ「うんー!」

ハプウ「うむ!」ギンッ!
167 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:19:54.53 ID:aMmubLhw0
ウルトラスペース

ブゥゥゥンッ!

リーリエ「きゃっ!」ドサッ!

ひろし「うわっ……と!」ドサッ!

みさえ「イタタ……」

プルメリ「……ここがビーストの世界」

リーリエたちは周囲を見渡すと、自分たちは別の世界に来たことをまざまざと思い知らされた。
まるで深海にいるような暗さ、奇妙な植物や岩、そして浮遊しているウツロイドたち。見ているだけで不安になる。

リーリエ「思っていたよりきれいな場所で……驚いています。でも……空気がどんよりと、なんだか苦しい……」

みさえ「ここに、しんのすけがいるのよね……」

プルメリ「グズマもね……」
168 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:20:45.45 ID:aMmubLhw0
リーリエはふと、空に浮かんでいるウツロイドをみやった。

リーリエ「博士は……ウルトラビーストもポケモンかもしれないと言ってました。だとすると、ウルトラビーストさんと呼ぶべきでしょうか」

ひろし「ああ、そうかもしれないな」

リーリエ「……行きましょう!」

ルナアーラ「……マヒナぺーア!」

待って、と言いたげに、ルナアーラがリーリエを呼び止めた。

リーリエ「どうした……の?」

ルナアーラが、息を切らしたように身体を震わせてリーリエを見据える。

みさえ「なんだか、弱っている気がするわ」

リーリエ「初めてウルトラホールを開いたから……疲れているのでしょうか?」

ルナアーラ「マヒナぺーア」コクン

プルメリ「さすがに伝説のポケモンといえど、別の世界に行くには相応の体力が必要ってことだね。よく頑張ったよ」

リーリエ「ありがとうね、ほしぐもちゃん。ビーストさんの世界に連れてきてくれて……!次はわたしの番ですね! 必ず、しんちゃんとかあさまをここへ連れてきますから! ここでゆっくり休んでください」

ルナアーラ「マヒナぺィーア」
169 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:21:50.66 ID:aMmubLhw0
みさえ「でも、どうやって探せばいいのかしら?」

すると、ひろしのそばで控えていたシロがリーリエたちの前に立った。

シロ「……」クンクン

ひろし「シロ、どうしたんだ?」

シロ「キャンキャン!」

みさえ「しんのすけの場所が分かるの?」

シロ「アンッ!」

みさえ「シロ……きっと、しんのすけのニオイを嗅いだのよ!」

ひろし「追いかけようぜ! まずは1人でもいいから誰かを見つけるんだ!」

プルメリ「そうだね……代表と一緒にいたグズマなら、なにか知ってるかもしれないね」

リーリエ「しんちゃん、待っててくださいね! 今、助けに行きますから!」
170 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:23:45.75 ID:aMmubLhw0
リーリエたちは、ニオイを辿って歩くシロを先頭にしつつ、ウルトラスペース内を歩き回った。
途中、アローラでうんざりするほど見かけたウルトラビーストたちがウルトラスペース内を闊歩しているのを目撃し、なるべく戦闘を避けるために身を潜めながら進んでいった。迷わないように、あらかじめひろしが持ち込んできた頑丈なロープを地面に垂らして帰り道を作る。

リーリエ「本当に、ビーストさんばかりの世界なんですね……」

プルメリ「多分だけど、この世界は他の世界に繋がる中間地点だと思うよ。だから、ここから様々な世界からビーストが行き交っているんだ」

ひろし「宅配で言うなら、流通した荷物の集まるベースか。ルザミーネはここから、ウルトラビーストをアローラへ『出荷』させてるってところだな」

みさえ「ここに人間が迷い込むこともあるのかしら?」

プルメリ「別の世界からやってきた人間が、アローラに流れ着く。逆もまた然り。可能性はあるかもね」

リーリエ「元の世界へ帰れなくなるなんて……そんなの、悲しいです。かあさまも、グズマさんも、しんちゃんも、そんなことさせません!」

ひろし「ああ――」

シロ「……キャンキャンッ!」

ひろし「シロ? なにか見つけたのか?!」

???「ポケモンの声……?」

プルメリ「……その声、まさかっ!」
171 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:24:58.67 ID:aMmubLhw0
プルメリは人の声がした方へ走り出した。ひろしたちも後に続いていく。
緩やかな岩のカーブを曲がっていくと、果たしてそこには、岩場に座り込んでいるグズマの姿があった。
グズマはプルメリたちの姿を見たとたん、まるで怪物でも見たかのように心底驚いた表情で迎え入れた。

プルメリ「グズマ! グズマなんだね!」

グズマ「……本当に、来やがっただと?」

リーリエ「ご無事だったんですね!」

ひろし「お前、確かエーテルパラダイスでルザミーネと一緒にいた……!」

みさえ「ねえ、しんのすけはどこにいるの?」

グズマ「うるせぇっ! てめーら一斉に喋るな!」

全員「……!」

グズマ「プルメリ、それに代表の娘、後のやつらは知らねえが……」

みさえ「私たちはしんのすけの親よ!」

ひろし「しんのすけはどこに行ったんだ? お前は確かルザミーネと一緒にいたよな?」

グズマ「しんのすけ……あのじゃがいも小僧のことか。そうか、お前らが親かよ」
172 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:26:04.31 ID:aMmubLhw0
リーリエ「お願いします。しんちゃんとかあさまを探しているんです」

グズマ「知らねえよ。ただ、あのじゃがいも小僧とは一度そこら辺で会ったが、帰れる帰るとピーピー喚いて、どこか行っちまったぜ」

ひろし「ということは、少なくともあの後、ルザミーネから逃げられたってことだな!」

みさえ「よかった……!」

グズマ「お前らは代表に連れてこられたってクチじゃねぇな。一体全体どんな手段でこっちに来たのか……。ホントにバカだな」

プルメリ「アンタを連れ戻せるのなら、いくらでもバカになってやるよ」

プルメリ「……なあ、ちょっとグズマとふたりっきりで話、させてくれないかい? アンタらも急いでるんだろ? あたいもグズマを説得したら、すぐに助けに行くからさ。頼む」

ひろし「ああ、ロープはそのまま垂らしておくから、それを伝って来てくれ」

プルメリ「すまないね」

プルメリ「……リーリエ」

リーリエ「はい!」

プルメリ「しんのすけと代表、絶対取り戻すんだよ。お姫様が王子様を救うって物語も、悪くないだろ?」

リーリエ「必ず助け出します! しんちゃんも、かあさまも!」

リーリエたちは再びシロが嗅いでいるしんのすけのニオイを頼りに、ウルトラスペースの奥へと進んでいった。
173 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:28:08.82 ID:aMmubLhw0
残ったプルメリとグズマの間に、沈黙が漂う。最初に口火を切ったのは、グズマだった。

グズマ「お前……本当にオレを連れ戻しに来たってのかよ」

プルメリ「そうだよ。わざわざそのために、伝説のポケモンの力を借りて、ここまで来たんだ」

プルメリ「さ、帰ろう。グズマ」

グズマ「今更なんだってんだ。わかってるんだろ? 今のアローラは、ビーストに破壊され尽くされちまっている。ここにいようがアローラに帰ろうが、変わんねえよ」

プルメリ「ああ、確かに代表のせいで、アローラはひどい有様さ。だけどね、アローラの人たちだって、ただ黙って自分たちの住んでる街を壊されるのを眺めているわけじゃないんだよ」

プルメリ「知ってるかい? しまキングやキャプテン、カプたちだけじゃない。スカル団のみんなも、必死でアローラを守ってるんだよ。アンタが帰ってくるのを待ちながらさ」

グズマ「あいつらが……?」

プルメリ「ああ、あたいもクチナシとマーレインに言いくるめながらも、ビーストと戦ってきたんだ。あいつらも、ビーストとの戦いでたくましく成長してるはずだよ」

グズマ「……だとしてもよ、オレはお前らより代表を選んじまった。あいつらに見せる顔がねぇ」

プルメリ「なんだか、ずいぶん落ち着いたね。こっちでよっぽどエライ目にあったんだね」

プルメリ「しっかりしな! あんたはもうボスじゃないけど、たくさんの人に慕われてるんだからさ! 本当に見限られてるなら、あたいがこんなとこまで迎えに来ないって!」ポンッ

プルメリ「いいかいグズマ、アンタもあたいも元々は誰にも理解されなかった、いわゆるはずれ者だよ。だけどね、その時にはなかったけど、今はあるものがあるんだよ。わかるかい?」

グズマ「は……?」
174 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:29:46.95 ID:aMmubLhw0
プルメリ「『仲間』だよ。みんながアンタの事を理解してる。そしてアンタも、あいつらの事を理解してるんだよ。あたいらには互いに自分たちの痛みを知ってる人達がいる。もう一人ぼっちじゃないんだ」

グズマ「……」

プルメリ「失敗したんならさ、また立ち直りゃいいんじゃないの。そうやって人もポケモンも、強くなっていくんだからさ。今のアローラはボロボロだけど、みんながひとつになって、きっと立ち直っていくよ。今よりとっても良くなってね。そこにグズマもあたいも、居たいだろ?」

プルメリ「そのためにもさ、アローラへ償いをしようよ。グズマの罪も、あたいらみんなが一緒に背負ってあげるからさ」

グズマ「……」

――嘘つけ、スケスケおパンツ団の人たちがいるクセに
――おじさんも、スケスケおパンツ団の人とか、プルメリのおねいさんが迎えに来るもん!

グズマ「――ッ!」

グズマ「グズマァ!! なにやってるんだああ!!」ガクガクッ
175 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:30:21.36 ID:aMmubLhw0
グズマ「……ハァハァ」

プルメリ「吹っ切れたかい? さ、あのヒモを伝って戻りなよ。伝説のポケモンがいるから、一緒にいればきっと帰れるよ」

グズマ「……その前に、代表のところへ行く」

プルメリ「え?」

グズマ「代表には、いろいろ世話になっちまったからな。だから、筋通しに行くんだよ」

プルメリ「……そうかい。ま、あたいもしんのすけの両親と約束しちまったからね。さっさと追いかけようか」

グズマ「……ああ!」
176 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:31:58.30 ID:aMmubLhw0
プルメリがグズマを説得している頃、リーリエたちは先ほどと同様、シロの嗅いでいるしんのすけのニオイを頼りに歩き回っていた。

ひろし「しんのすけ……どこにいるんだ」

リーリエ「でも、よかったです。しんちゃんが無事そうで」

みさえ「当たり前よ、そう簡単に死んでたまるもんですか!」

リーリエ「きっと、いつものような元気な姿で姿を見せてくれます。だから、辛抱強く探しましょう!」

ひろし「ああ、ここに来て諦めるようなオレ達じゃないぜ」

みさえ「ひょっとしたら、向こうから姿を見せちゃったりしてね」

リーリエ「そうですね。そうしたら、みんな心配してましたって、うんと叱らなきゃいけませんね」

ひろし「なんだかしんのすけのお姉ちゃんみたいな口ぶりだな」

リーリエ「ふふっ、島巡りで時間があるとき、しんちゃんの面倒を見てましたから」

みさえ「そのまましんのすけの面倒見てくれると、私たちも楽なんだけどね」

ひろし「そうだな……島巡りが終わったあとも、うちのしんのすけのこと、よろしく頼んだぜ。『お姉ちゃん』」

リーリエ「はい!」ニコッ

シロ「アンアンッ!」

全員「!」
177 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:33:15.32 ID:aMmubLhw0
みさえ「どうしたの? シロ?」

リーリエ「なにか見つけたのでしょうか?」

シロが走り出すと、奥に小さな赤い物体と、白くて細いポケモンが倒れているのを発見し、再び吠えだした。
リーリエは赤い物体に近付くと、それがなにか理解して顔を青ざめさせながら拾った。

リーリエ「これ……しんちゃんのロトム図鑑さんです……!」

みさえ「あっ、そうよ! 誰か忘れていたと思ったら、みんなコイツのこと忘れてたのよ!」

ひろし「なんでこんなところに落ちてるんだ……? とにかく、話を聞いてみようぜ」

リーリエ「ロトム図鑑さん! ロトム図鑑さん! 返事してください!」

ひろし「おいっ、なに寝てやがるんだ。さっさと起きろ!」

ロトム図鑑「」

みさえ「……ちょっと貸してもらってもいい?」

リーリエ「あ、はい。……でも、どうなさるおつもりですか?」
178 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:34:01.86 ID:aMmubLhw0
みさえ「フー……フー……ふんっ!!」

げ    ん

こ    つ

ロトム図鑑「ブヒッ!?」パッ!

ひろし「あ、起きた!」

みさえ「壊れた機械なんて大抵叩けば直るものよ」

ロトム図鑑「私は誰だ……確か、ナギサシティのジムリーダー、デンジだったような……」

ひろし「お前はぶりぶりざえもんだろうが、なに都合のいい思い出し方してるんだよ」

リーリエ「ロトム図鑑さん、しんちゃんがどこに行ったか分かりますか?」

ロトム図鑑「んあ……? お前らなんでこんなところに?」

みさえ「しんのすけがこっちの世界に連れてこられたから助けに来たに決まってるでしょ? で、しんのすけはどこにいるの?」

ロトム図鑑「しんのすけだと……? ここにいないのなら私が知るわけないだろう」

みさえ「あっ、そう。じゃあもう一度ぶっ叩けば思い出すかしら」スッ

ロトム図鑑「待て待て! 本当に知らないのだ! 私は確かにあいつと居たのだが、突然ボディがショートして、そのまま気絶してしまったんだよ!」
179 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:35:06.49 ID:aMmubLhw0
リーリエ「そんな……」

ロトム図鑑「ん? あいつも倒れているではないか」

みさえ「あいつ?」

ロトム図鑑はみさえの手から離れると、すぐそばで倒れている、フェローチェのそばに近づいた。

ロトム図鑑「こいつは以前、アーカラで倒れていたところをしんのすけが助けたウルトラビーストだ。名前は『あい』らしい。こいつならなにか知ってるんじゃないのか?」

ひろし「あい? あいってカスカベに住んでるあの――」

みさえ「いい加減なこと言ってたら、タダじゃおかないからね」

リーリエ「ロトム図鑑さんを信じましょう。まず、このビーストさんを元気にさせなきゃ、なにも始まりません」

リーリエはリュックからげんきのかたまりを取り出して、それを砕きながらひとかけらも残さずフェローチェの口の中に入れて飲み込ませた。

フェローチェ「フェ……フェロ……」ピクッ

ひろし「おっ、気がついたぞ!」

リーリエ「よかった……ビーストさんにもげんきのかたまりは効くみたいですね!」

しかし、喜んでいるリーリエたちとは真逆に、フェローチェはいきなり起き上がると一瞬でリーリエたちと距離を取って、警戒心に満ちた眼差しで睨みつけた。

フェローチェ「フシューッ……!」
180 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:37:00.55 ID:aMmubLhw0
ひろし「なんだ? まるで俺たちに怯えてるみたいだ」

ロトム図鑑「ふむ……リーリエ、お前のニオイがあのフェローチェの敵と同じニオイを感じているようだ」

リーリエ「わたしのニオイ……?」

みさえ「敵と同じニオイってなによ? ちゃんと説明してよ」

すると、リーリエの腰にくっつけているモンスターボールがカタカタと揺れて、カザマとマサオが飛び出した!

ジュナイパー「ホーッ!」ポンッ!

ヨワシ「ヨワッ!」ポンッ!

フェローチェ「フェロ? フェロローッ?!」スッ

ひろし「なんだなんだ?」

リーリエ「カザマさんとマサオさんが飛び出したと思ったら……急に警戒心を解いたみたいです」

ロトム図鑑「奴らも顔見知りだからだろうな。ネネは気に食わない様子だけどな」
181 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:37:42.39 ID:aMmubLhw0
フェローチェ「フェロー?」

ジュナイパー「ホッホーッ! ホー?」

ヨワシ「ヨワワッ、ヨワワ?」

フェローチェ「フェローロ。フェロロ、フェーロー」

ジュナイパー「ホーホー!」

ひろし「なんて言ってるんだ?」

ロトム図鑑「軽い自己紹介と事情説明だな」

ヨワシ「ヨワヨワッ! ヨワシーッ!」

フェローチェ「フェロ……フェローロ!」

ロトム図鑑「どうやら、こっちが味方であることがわかったようだ……。だが、しんのすけは、このビーストを庇ってルザミーネに捕まったあと、どこかへ連れ去られてしまったらしい」

リーリエ「そんなっ……!」

ひろし「あいつ……!」

みさえ「ねぇ、なんとかならないの? どこにいるかわからない?」

ロトム図鑑「おい、しんのすけの居場所はわからんのか?」

フェローチェ「フェロ、フェローロ……」
182 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:39:29.50 ID:aMmubLhw0
ロトム図鑑「一応、アテはあるようだ。だが、そこにいるか正直自信はないらしい」

ひろし「ないよりはましだ! 案内頼むぜ!」

リーリエ「お願いします、ビーストさん! しんちゃんとかあさまのところへ、連れて行って欲しいのです!」

ロトム図鑑「だそうだ」

フェローチェ「フェロ!」

すると、フェローチェ……もとい、あいはシロの代わりに先頭に立って、「ついてきてください」と言いたげに顎でしゃくって歩き出した。

ひろし「とりあえず、ついて行けばいいんだな?」

みさえ「みたいね……」

ロトム図鑑「おい」

みさえ「え?」
183 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:39:59.04 ID:aMmubLhw0
ロトム図鑑「翻訳料五百億万円、ローンまたはクレジット、ウェブマネーでも可」

げ    ん

こ    つ

みさえ「次適当なこと言ったら画面叩き割るからね!」

ロトム図鑑「わ、わかった……もう何も言わん……」

リーリエ「カザマさんもマサオさんも、ありがとうございます」シュンッ

リーリエ「急ぎましょう。なんだか胸騒ぎがして……ならないのです」

ひろし「同感だ。早くしんのすけを見つけよう!」
184 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:40:59.75 ID:aMmubLhw0
先程までの明るさは消え去り、みんな焦りに満ちた表情であいの後をついていく。時折、しんのすけの名を呼びかけながら、ウルトラスペースをさまよい歩く。

どのくらい歩いただろうか。リーリエたちはウルトラスペースの中でもスタジアムの内部のように大きく開けた場所にたどり着いた。
岩や植物があちらこちらに転がっているものの、これといった起伏もない。他にあるものといえば、空に浮かんでいるウツロイドたちのみだ。

フェローチェ「フェロー……」

ロトム図鑑「ここで、しんのすけを最初に見つけたようだ。ルザミーネのお気に入りの場所だそうだ」

ひろし「じゃああのウルトラホールはここに通じてたんだな」

みさえ「しんのすけー! どこにいるのー?」

リーリエ「しんちゃんとかあさまはどこに……?」

リーリエたちがしんのすけとルザミーネの名を呼びかけたその時だった。

ウツロイドたち「じぇるるっぷ……!」

リーリエ「!」

宙を漂っていたウツロイドたちが動き出すと、リーリエたちの目の前に集まり、次々と並び始めた。まるで、ウツロイドで出来た壁が形成しているようだ。
そして、ウツロイドたちの群れが散り散りになると――。

――ああ……! ウルトラビーストの世界……わたくしとビーストちゃんの愛だけが存在する、なんて甘く美しい真実のパラダイス……!!

全員「!」
185 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:41:47.16 ID:aMmubLhw0
グニュウッ

ルザミーネ「だというのに! ……なんてしつこいのかしら! 心底ウンザリしますわね。誰の許しを得て、わたくしとビーストだけの美しい世界に来たのです!!」ギロッ

ルザミーネが、侮蔑するようにリーリエたちを見下ろしながら現れた。ポニの大峡谷で見た、ウツロイドとの融合を果たしたあの姿で。

ひろし「うるせぇ! しんのすけを助けに来たのに、いちいちお前の許しがいるかよ!」

みさえ「そうよ! うちのしんのすけを返してっ!」

フェローチェ「フシューッ!」

ルザミーネ「『うちの』しんのすけ、ですって? なにを言っているのかしら? あなた達……」

リーリエ「どういうことですかっ! しんちゃんは? しんちゃんは無事なんですか?」

ルザミーネ「どういうこともなにも、この世界にあるものは、全てわたくしのモノよ?」

ルザミーネ「この美しい景色も! この世界に住むビーストちゃんも!」

ルザミーネ「……そして、しんのすけ君もね! いらっしゃい、わたくしの愛しい息子……」

ルザミーネの呼びかけに答えるように、彼女の背後から誰かが歩いてきた。小さな人影が、ルザミーネの前に現れる。

ルザミーネ「……しんのすけ君」

スッ

しんのすけ「……」
186 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:42:25.94 ID:aMmubLhw0
その姿を一目見た瞬間、リーリエたちは全身が逆立つような恐怖と深い絶望が一斉に押し寄せてきた。

みさえ「いやぁぁぁぁっ!」

リーリエ「しんちゃん……!」

ひろし「しんのすけっ!」

フェローチェ「フェロ……ッ!」

リーリエたちの前に現れたしんのすけの姿は、変わり果てたものだった。頭部にウツロイドがそのままくっつき、ルザミーネのように異形の姿にこそなっていないが、全身がウツロイドの触手によって絡みついている。目も焦点が合っておらず、腕も力なく垂れ下がっている。

しんのすけ「……」グネグネ

ひろし「てめぇ……しんのすけになにしやがったっ!!」

ルザミーネ「ウフフ! 別に? ただ、この子がとっても暴れちゃうものだから、ウツロイドの力を使って、親に愛情を注いでくれる、かわいいわたくしの子供になっただけよ?」

みさえ「あんたの子供ですって? ふざけんじゃないわよ! しんのすけを元に戻して!」

ひまわり「たいっ!」

ルザミーネ「どうして? どうして、こんな可愛い子をどうして手放さなきゃいけないのかしら? もちろん、最初は反抗的だったから、ビーストちゃんの餌にしようと思ったわ」

ルザミーネ「でもね……この子の才能には驚かされてばかりだもの。突然のことがあってもすぐに切り抜けられる頭の良さ、大試練を乗り越えられるポケモントレーナーとしての実力、そしてなにより、こんな幼い子供をビーストちゃんの餌にするなんて、かわいそうですもの」

しんのすけ「それほど……でも……」
187 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:43:13.60 ID:aMmubLhw0
ルザミーネ「ウフフ、こうして見ると本当に愛おしく感じます……おいで」

しんのすけ「……ほい」

ルザミーネはしんのすけを触手でかかえると慈しむような頭を撫でて、優しく笑いかけながらきつく抱きしめた。あたかも彼女がしんのすけの母親であるかのように振舞って。

ルザミーネ「フフフ……愛しいしんのすけ君。わたくしが、ずっと守ってあげます。あなたの心はわたくしのモノ……」ギュッ

リーリエ「――ッ!!」

みさえ「……アンタ! アンタはぁぁっ!」ビキビキビキッ!

ひろし「か、軽々しくしんのすけに触れてんじゃねぇ!」

ロトム図鑑(羨ましいのか羨ましくないのか分からないな)

ルザミーネ「なにを怒っているのかしらねぇ? あの人たちは」

しんのすけ「……」

ルザミーネ「お母さんの温もりはどうかしら? しんのすけ君」

しんのすけ「……40過ぎのおばさんに……こんなことされても……嬉しくない」

ルザミーネ「」イラッ

ロトム図鑑「敵に操られても本質的なところは変わってないようだな」





リーリエ「……もう、ウンザリです」ボソッ
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/15(木) 20:44:17.38 ID:UJf58M9+O





楽しいか?
189 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:44:56.76 ID:aMmubLhw0
ルザミーネ「なにか言ったかしら?」

リーリエ「かあさま」

ルザミーネ「あら? あなたにかあさま、なんて言われる筋合いは無いのですけれども」

リーリエ「わたしと……ポケモン勝負をしていただけませんか? それでわたしが勝ったら、しんちゃんをここにいるご両親に返してください。そして、ウルトラホールを閉じてかあさまも元の世界に帰るのです」

ひろし「リーリエちゃん……」

ルザミーネ「ふうん? なにを言うかと思えば……そう、リーリエ、ポケモントレーナーになったの」

リーリエ「はい、しんちゃんの借り物ですが。あなたとしんちゃんを取り戻すために、カザマさんたちと一緒に、ここまでやってきました」

ルザミーネ「そうやって他人の息子のモンスターボールを持って、トレーナー気取りですか? ずいぶん舐められたものね」

リーリエ「何とでも言ってください。トレーナーさんは、目と目が合った瞬間、勝負を申し込まれたら、受けなければいけないルールがあります。かあさまはご存知ですよね? それとも、背中を向けて逃げるんですか?」

ルザミーネ「言ってくれるわね。……いいわ、相手になってあげる」

ルザミーネ「だけど、もしわたくしが勝ったら、あなたはなにを差し出すの? それ相応の対価を用意しているのでしょう?」

リーリエは向かい合っていた母親と、一瞬目をそらした。薄いピンク色の唇が震える。これから出る言葉を口にすることを、ためらうように。

リーリエ「……ほしぐもちゃんをっ」

ひろし&みさえ「!」
190 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:46:01.60 ID:aMmubLhw0
リーリエ「ほしぐもちゃんを、あなたにお返ししますっ! それでいいですか?」

みさえ「リーリエちゃん!」

ルザミーネ「あのコスモッグのこと? もうわたしには、あんなモノ必要ないのだけれども。アローラにウルトラホールを開けることぐらいなら、今のわたくしには造作もないことですもの」

リーリエ「いいえ、ほしぐもちゃん……コスモッグは伝説のポケモン、ルナアーラの進化前なのです。ポ二島にある月輪の祭壇で太陽と月の笛を吹くことで、コスモッグをルナアーラへと進化させることができます」

ルザミーネ「それは初耳ね。ルナアーラには、ウルトラホールを自由自在に開けられる能力を持っていたわね。……そう、その力を使ってこの世界に来たのね。確かにルナアーラを掌中に収めれば、アローラ以外にもウルトラホールを開けられるかも……悪くないわ」

ルザミーネ「でも、そのルナアーラはどこにいるのかしら? あの子はウルトラビーストだから、ウルトラボール以外では捕獲できないはずだけれども」

リーリエ「あの子は今、わたしたちがここにやってきたところで休んでいます。力を使い始めたばかりですから、その反動で動けないのです。ですから、もしわたしが負けたらほしぐもちゃんのところへ案内いたします。後は……あなたの好きにしてください」

ルザミーネ「分かったわ、取引成立ね。あなたが勝てば、しんのすけ君をウツロイドから解放した上であなたたちにお返しし、ウルトラホールも閉じて向こうの世界へ戻ることも約束します。だけど負けたら、あなたのルナアーラはわたくしのもの、そしてしんのすけ君も返さない。これでいいわね?」

リーリエ「はい」

みさえ「リーリエちゃん! そんなことしたら……」

ひろし「みさえ、よすんだ」

みさえ「だって……!」

ひろし「あれが、リーリエちゃんなりの覚悟なんだ。ここで負けたら、どのみち全てを失う……だからあえて捨て身になって、絶対に負けられないゼンリョクの覚悟で母親に挑もうとしている。俺たちがそんなリーリエちゃんの決意を鈍らせるわけにはいかないだろ」

みさえ「リーリエちゃん……」
191 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:47:06.74 ID:aMmubLhw0
リーリエ「ひろしさん、みさえさん、必ずしんちゃんを取り戻します。わたしを信じてください!」

みさえ「……わかったわ!」

ひろし「ああ、頼んだぜ!」

ルザミーネ「さぁ来なさい。わたくしのビーストちゃんたち……!」バッ!

すると、ルザミーネの周囲に、ビーストが4匹現れた。ウツロイド、デンジュモク、テッカグヤ、あいとは別個体のフェローチェだ。

ルザミーネ「そっちの使用ポケモンは4匹。ならこっちも4匹で相手してあげる」

リーリエ(ウツロイドさん……そして、後の3匹のビーストさん……)

ルザミーネ「光栄に思いなさい。わたくしが選んだ、愛しい子供たちの相手をしてあげるのですから」

ビーストたちは、次々とルザミーネの持っているウルトラボールの中へ入っていく。
リーリエの頭の中に、必死に暗記したウルトラビーストの情報が駆け巡る。同時に、最初に何を出すべきか、決まった。

フェローチェ(あい)「フシューッ!」

リーリエ「ロトム図鑑さん。ボールに入っていないあいさんを参加させることはできないので、なんとか説得していただけませんか? これはわたしたちの戦いなんです」

ロトム図鑑「やれやれ、仕方ないな」

リーリエ「かあさま……覚悟してください。絶対に負けませんから!」スッ

ルザミーネ「かつての親に向かって、なんて口聞くのかしら! その下らない自信もプライドも、全て粉々にしてあげます!」スッ
192 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:47:59.64 ID:aMmubLhw0
今日はここまで。
次回の更新はいつもの通り、明日の夜予定です。

じゃ、そゆことで〜!
193 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/15(木) 20:53:09.82 ID:aMmubLhw0
【おまけ】

このSSを執筆する前に書いた「しんのすけとリーリエ」のコンプセントアートですが……。
塗り絵にでもどうぞ。


194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 21:06:38.46 ID:3PI+GnISO
乙です。
モクロー違和感無さすぎです!
他の手持ちも見たいで#このコメントはげんこつされました。
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 21:08:06.72 ID:gFyIYxMg0

どうしたしんのすけ!お前のメンタルはそんなにやわじゃないはずだ!
ひろみさももうちょっとキレていいと思う
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/15(木) 22:26:41.69 ID:dRe5q3np0
騒動が終息したらケツだけ星人を見て歓喜するルナアーラが見られるんだろうか
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 00:23:57.25 ID:Xu6676nx0
このルザミーネ、原作以上にフルボッコにした方が良いんじゃなかろうか…あの姿を見て、お前が戦えよと何回思ったことか
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 09:21:31.17 ID:f9QGTCGyO
まぁこのルザミーネさんは一応戦ってるから…
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 21:04:43.76 ID:cL00ZGYS0
Z技が使えないのがキツイな
200 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:13:35.16 ID:hGqQJJjA0
エーテル代表の ルザミーネが
勝負を しかけてきた!

リーリエ「お願いします! マサオさん!」ヒョイッ

ルザミーネ「行きなさい! テッカグヤ!」ヒョイッ

ヨワシ(群)「ギョオオオオッ!」ポンッ

テッカグヤ「フー……!」ポンッ

ルザミーネ「テッカグヤ、ギガドレインよ!」

テッカグヤは浮かんでいる腕を緑に輝かせると、マサオの身体から次々とエネルギーを奪い取っていく。

ルザミーネ「吸い尽くしてあげる……」

リーリエ「マサオさん! アクアテールです!」

ヨワシ「ギョオオォォッ!」

マサオは攻撃をこらえつつ、テッカグヤへ距離を詰めると、身体を一回転させてテッカグヤにアクアテールを放つ!

ドズムッ

テッカグヤ「フゥッ……!」グラッ

ヨワシ「ギョッ!」

ひろし「まるで大怪獣バトルだ……!」
201 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:14:41.73 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「さっさとその群れを散らせないとね……テッカグヤ、ヘビーボンバーで群れを一気に叩きつぶしなさい!!」

テッカグヤ「フー……ッ!」ゴウッ!!

テッカグヤの腕の先端が点火すると、ガスを噴射させて勢いよくウルトラスペースの暗い空へと飛び上がっていく。

ひろし「ヤバイ! あの技だ!」

ルザミーネ「ヨワシじゃあこれを避けることなんて出来ないでしょう?」

リーリエ「……!」

テッカグヤは上空へ飛び上がると、方向転換して今度は真っ逆さまにこちらへ落ちてくる。

リーリエ(かあさまの言うとおり、このまま群れを纏ったマサオさんでは、テッカグヤさんの攻撃は間違いなく当たってしまいます。ですが……!)

キィィィン!!

みさえ「こっちに来る!」

ひろし「逃げるぞ!」

リーリエ「マサオさん! 群れを――!」

ドッゴォォォッ!!
202 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:16:35.65 ID:hGqQJJjA0
ひろしとみさえが退避してリーリエの指示が飛んだ数秒後、テッカグヤが頭から地面へと衝突した。着地の衝撃で、大きな揺れが起き、土埃が舞う。

ひろし「ど、どうなったんだ?」

リーリエは思わず体勢を崩し、膝をついた姿勢になる。しかし、場の状況から目を離さず、様子を確認する。

リーリエ(マサオさん――)

土埃が消えると、果たしてそこには、マサオの姿がなかった。いるのは、地面から起き上がろうとするテッカグヤのみだ。

ルザミーネ「潰れた……かしらね」

「ヨ ワ ー ー ッ !」

ルザミーネ「!?」

ひろし「ヨワシの群れが……!」

リーリエ「マサオさん! 元に戻ってハイドロポンプです!」

次々とヨワシの群れがあちらこちらから集まって、1匹のヨワシ――マサオへと集まっていく。そして再び、群れたヨワシへと形を成していった。
元の群れた姿になったマサオは、ヘビーボンバーから体勢を整えようとするテッカグヤの背中に向けてハイドロポンプを放った!

ヨワシ「ギョギョオォォッ」ブシャーーッ!!

テッカグヤ「フゥッ……!」

リーリエ「アクアテール、です!」

そして更に、テッカグヤの背中に向けて尾びれを叩きつけた! テッカグヤの身体が更に地面に埋まり、うめき声をあげる。
203 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:17:34.63 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「信じられない……どうしてそんな」

リーリエ「これがマサオさんの力です。こうやってしんちゃんたちは、予想もつかないことをして、大試練を勝ち抜いてきたんです」

ルザミーネ「テッカグヤ……! 早く起き上がりなさい!」

テッカグヤ「フー……!」ゴウッ!

テッカグヤは噴射口を再点火して、マサオを押しのけて起き上がると、再び腕の先をマサオへと向けた。

ルザミーネ「タネばくだんよ!」

テッカグヤ「フー……!」ドンッ

テッカグヤは腕の先から種子の弾丸を発射すると群れたマサオに直撃、そしてマサオとヨワシたちのエネルギーを吸い取ったかと思うと、光り出して大爆発を起こした。

ドカァァァン!

ヨワシ「ギョオォォーッ!」バラバラッ!

リーリエ(マサオさんっ……耐えてっ!)

タネばくだんの爆風に巻き込まれながら、マサオは、ウツロイドにとりつかれて試合を見つめているしんのすけと目があった。

しんのすけ「……」

ヨワシ「オオ……ギョオオッ!」

マサオが雄叫びを上げた。しんのすけに「僕たちを忘れちゃったの?」と語りかけるように。
204 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:19:06.09 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「マサオさん……」

ルザミーネ「もう一度、ギガドレインよ!」

再びテッカグヤの両腕が光り出して、マサオの群れからどんどん体力を奪っていく。群れを維持していく力を失っていき、ヨワシたちが離れていく。

ヨワシ「ギョ……オオオッ」

ひろし「まずい……! あの分だとあと一発貰えばバラバラになっちまう!」

ルザミーネ「これでとどめよ! タネばくだん!」

テッカグヤ「フー……!」ドンッ

テッカグヤの腕から、種子の弾丸が飛び出した。これでマサオに当たってしまえば、群れがほとんど吹き飛んで、単独の姿に戻ってしまうのはリーリエでも目に見えている。

リーリエ「マサオさんっ!」

ヨワシ「ギョオオオッ!」

突然、マサオが最後の力を振り絞ると、まとっていた群れが再び分離した。
さっきのように、タネバクダンを回避するのみならず、巨大な魚から巨人の姿へ変化し始めた!
205 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:22:42.56 ID:hGqQJJjA0
ドドドドド!

リーリエ「群れたマサオさんが別の姿に?」

ひろし「あれは……カンタムじゃねぇか!」

ヨワシ「オオオォォォッ!!」

その姿は上半身だけで体色こそ青いものの、しんのすけが見ていたロボットアニメの主役――カンタムの姿そのものだった!

しんのすけ「……」

カンタムの姿になったマサオは、2つの腕を象ったヨワシたちをハイドロポンプによる推進力を得て、ロケットパンチの如くテッカグヤへ飛ばした!

ヨワシ「ギョオォォォォッ!!」ドォォォォッ!!

ドッカァァァァァン!!!

テッカグヤ「……!」グラッ

拳状に群れたヨワシたちがテッカグヤに直撃すると、爆風のような衝撃波と供に水と一緒に飛び散っていく!

テッカグヤ「フー……」

ドスンッ!

マサオのカンタムパンチを受けたことで、テッカグヤは体力の限界に達したのか、ぐらりと巨体が傾き、そのまま大きな音を立てながら、地面に倒れてしまった。

リーリエ「すごい……マサオさん、こんなことが出来るなんて!」
206 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:24:13.92 ID:hGqQJJjA0
ひろし「よっしゃっ! まず1匹目だ!」

ひまわり「たい!」

ルザミーネ「……なんてこと!」

リーリエ「かあさま、マサオさんも友達のしんちゃんを取り戻すためにゼンリョクで戦っているんです! 大切な人のためなら、人もポケモンも、強くなれるんです」

ルザミーネ(大切な人に友達、ですか。なら……)

ルザミーネ「しんのすけ君、今度はあなたが戦ってみる?」

しんのすけ「……」ユラリ

リーリエ「!」

ひろし「しんのすけを矢面に立たせるつもりか!」

ルザミーネ「フフ……しんのすけ君もトレーナーですよ? ポケモン勝負で戦わせることになんら問題はありませんわ」

みさえ「あんたが戦いなさいよ!」

ルザミーネ「さ、ボールを持って。あなたが戦って、あのポケモンを倒すの」

しんのすけ「……」

リーリエ「しんちゃん……!」

ヨワシ「オオォォ……!」
207 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:27:50.97 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネに促されて、ウルトラボールを握りながら前に出てくるしんのすけ。
ウツロイドに取り付かれた痛々しい姿と向き合って、リーリエは動揺を隠しきれなかった。

ルザミーネ「頑張って、応援してるから」

しんのすけ「…………」ポイッ

デンジュモク「デンデンジュッ!!」ポンッ!

ルザミーネ「さぁ、どんな技を出せばあの子を倒せるのかしら?」

しんのすけ「……」

しんのすけ「……じゃ、ケツだけ星人して」

全員「」ズルッ

ルザミーネ「そんなワザ覚えてるわけ無いでしょう!」

しんのすけ「なんだ……つまんねーの」

みさえ「リーリエちゃん、今のうちに!」

リーリエ「ハッ! マサオさん! ねっとうです!」

ヨワシ「……ギョオォッ!」ブシューーッ!

マサオは一瞬ためらいがちに、デンジュモクに向けて熱した水鉄砲を吐き出した。ルザミーネが先制を取られたことに気付いた時には、デンジュモクに水が間近に迫っていた。
208 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:28:56.07 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「デンジュモク! ほうでん!」

デンジュモク「デンデンッ!」バチチチッ!

デンジュモクが周囲に電気を解き放ったと同時に、熱湯を浴びて悲鳴を上げる。だが、デンジュモクのほうでんはマサオをまとっているヨワシを全て散らせてしまった!

ヨワシ(単)「ヨ、ヨワッ……!」

リーリエ「マサオさん群れが……!」

ひろし「無理もねぇ、さっきからくさタイプの攻撃を食らってばっかだった。……よく耐えた方だぜ」

ルザミーネ「出るものが出ましたわね。とどめよ。デンジュモク、パワーウィップ!」

デンジュモク「デンデーンッ!」ブンッ

デンジュモクは走り出すと黒い腕を鞭のようにしならせて、勢いに任せてマサオへと振り下ろした!

ドズンッ!

しんのすけ「……」

ほうでんをまともに受けて痺れたマサオは避けることもままならず、デンジュモクの腕に打たれてリーリエの足元まで飛ばされた。

ヨワシ「ヨワ……」

リーリエ「マサオさん……ありがとうございます。きっと、あなたの想いはしんちゃんに届いています……!」シュン
209 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:30:11.61 ID:hGqQJJjA0
ロトム図鑑「これで互いにポケモンの数は同じか」

デンジュモク「ジュジュジューーッ!!」ゴウッ!!

みさえ「なに? あのビースト、急にオーラをまとい始めたわ!」

ひろし「恐らく、あれがビーストブーストだ。ウルトラビーストは、敵を倒せば倒すほど、自らの能力を高める特性を持っているって、博士からもらったデータに書いてあった」

リーリエ「……」

ルザミーネ「さぁ、次のポケモンを出したらどう?」

リーリエ「分かってます……!」

リーリエ「ネネちゃんさん! お願いします!」ヒョイッ

キテルグマ「クーーーッ!」ポンッ!

ルザミーネ「キテルグマ……懐かしいわね」

リーリエ「ええ、かあさまのポケモンさんも今はエーテルパラダイスにいます」

ルザミーネ「生憎だけど、どうでもいいもの。だって、ビーストがいるのだから」

そう言って、ルザミーネはデンジュモクを触手で触れ、更にしんのすけの頭もこれみよがしに撫でる。

ルザミーネ「そして……わたくしには愛しい『息子』がいますもの。アローラに未練なんてないわ」

リーリエ「……ッ! ネネちゃんさん! デンジュモクさんにじしんですっ!」
210 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:33:22.92 ID:hGqQJJjA0
キテルグマ「クゥーッ!!」グワッ!

ネネも「目ェ覚ましなさいよバカしん!」と言わんばかりに、ピッピ人形を両手に持って地面に叩きつけ、衝撃波を放った!
地面が揺れて地割れが生じ、まっすぐにデンジュモクへと向かっていく!

ルザミーネ「デンジュモク、かわしてシグナルビームよ」

デンジュモク「デンジュッ!」パッ!

デンジュモクの頭部が点灯したと同時に、ジャンプしてじしんを避けると、頭部が赤や青、緑黄色と変色しながら、不思議な色の光線をネネに向けて発射した。じしんを使った直後のネネには避ける余裕はなく、極彩色の光を浴びて体勢を崩してしまった。

キテルグマ「ク……クゥ……!」ユラリッ

みさえ「なんだか様子が変よ?」

リーリエ「ネネちゃんさん、どうなさったのですか……?」

キテルグマ「クゥ……クーーッ!」ブンブンッ!

ロトム図鑑「なにもないところを攻撃してどうすんだよ」

ひろし「まさか……今の攻撃で、混乱してちまったっていうのか?」

ルザミーネ「フフッ、デンジュモク、更に10まんボルトよ!」

デンジュモク「デンジューッ!」バチチチッ!

デンジュモクは自らの手足と尻尾を地面にくっつけて木のような形状になると、全身から電気を放ち、キテルグマに命中させた!

キテルグマ「クーーッ!?」ビリビリッ!!
211 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:36:05.14 ID:hGqQJJjA0
電撃がネネの全身を駆け巡り、痺れながら膝をつく。
それを根性で立ち上がり、気合を入れるように咆哮すると、リーリエの指示を受ける訳もなく、ピッピ人形を握り、デンジュモクに渾身のアームハンマーを振り下ろした!

キテルグマ「クーーーッ!!」

ドズムッ!!

デンジュモク「デンンッ!」

アームハンマーで吹っ飛ばされたデンジュモクが、しんのすけの眼前に転がってくる!

しんのすけ「……」

リーリエ「しんちゃん!」

みさえ「しんのすけ!」

キテルグマ「クウッ……!?」
212 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:37:09.25 ID:hGqQJJjA0
すかさずルザミーネが飛び出すとしんのすけを触手で掴み、抱き寄せた。

ルザミーネ「大丈夫? しんのすけ君?」

しんのすけ「……」

ルザミーネ「かわいそうに、ひどいことするポケモンね……。どこにも怪我はない?」

しんのすけ「……へーき」

リーリエ「……!」ギリッ

ひろし「ふざけんな! あんたが前に出さなきゃしんのすけは危ない目に遭わなかったんだろうが!」

ルザミーネ「フフッ……それより、よそ見してていいのかしら?」

リーリエ「え――」

デンジュモクは既に立ち上がっており、両腕をネネに向けて伸ばしていた。両腕の金属コードらしき箇所に、見る見るうちに電気が溜まっていく。

ひろし「やばい! あれは……」

ルザミーネ「デンジュモク! でんじほうを放ちなさい!」

デンジュモク「デンデンジュッ!」カッ

ドウッ!!
213 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:38:41.40 ID:hGqQJJjA0
一瞬の閃光の後、デンジュモクの両腕から、極太の電撃が発射された。しんのすけに誤って攻撃して呆然としていたネネが我に返った時には、既に電撃は目の前まで迫っていた。

キテルグマ「クーーーッ!?」

電撃を浴びてネネの巨体が後方に吹っ飛び、そのまま岩盤へと激突した。でんじほうの攻撃が収まったところで、身体を痙攣させながら倒れる。

キテルグマ「ク……クウっ」バチバチッ

ひろし「でんじほう……電気タイプの中でも最強の技だ。あんなもの喰らったらひとたまりもねぇ」

ルザミーネ「これで2匹目、ね」

リーリエはネネのもとへ近寄ると、その場でルザミーネに背中を向けて無言で立ち尽くした。

ルザミーネ「どうしたの? 早く次のポケモンを出しなさい」

リーリエ「……ネネちゃんさんっ!」

キテルグマ「……」
214 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:39:47.74 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「今まで攻撃を受けてがまんした分、思いっきり暴れてくださいっ!」

キテルグマ「クーーーッ!!」ガバッ!

元気を取り戻したようにネネが起き上がり、ピッピ人形をぐるんぐるんと振り回しながらデンジュモクへと急接近した。
そして、デンジュモクの目の前で垂直にジャンプすると、勢いに任せてピッピ人形をデンジュモクの脳天に向けて振り下ろした!

ド ス ン ッ ! !

デンジュモク「デン゛ッ!??」

ルザミーネ「!?」

キテルグマ「フンッ! フンッ! フンッ!」ドゴドゴドゴッ!!

今までの攻撃全てを倍返しをするように、ネネは何度もデンジュモクを殴りつけると、コードを束ねたようなの胴体を掴み、そのままネネがでんじほうを受けて直撃した岩盤へと投げつけた!

キテルグマ「クァァァッ!!」

ドゴッ!
パラパラ……

デンジュモク「デ、デン……!」

ルザミーネ「いったいどこからそんな力が……!」
215 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:45:16.67 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「ネネちゃんさんは、常に自分が威力の高い技を喰らえば喰らうほど、その分倍返しにして相手を攻撃する、がまんがあるんです」

ルザミーネ「威力の高い技を喰らうほど……っ」

ルザミーネ「まさか、デンジュモクがビーストブーストで技の威力を高めることを読んでいたというの? ビーストではない普通のポケモンが、デンジュモクの攻撃を耐え切ると本気で思っていたの?!」

リーリエ「わたしは最初から、ネネちゃんさんの力を信じてました。それだけです!」

キテルグマ「クーッ!」

ネネはリーリエの言葉を肯定するように声を上げると、しんのすけへ振り向いた。

キテルグマ「クー……クゥーッ!」

しんのすけ「……」

ネネがしんのすけに対して呼びかけらしき唸り声を出すと、背後で岩盤に叩きつけられたデンジュモクがふらりと立ち上がった。ネネもデンジュモクの存在に気づいて向き直る。

デンジュモク「デンジュゥ……」ユラッ

キテルグマ「クーッ……!」

ルザミーネ「デンジュモク……ほうでんよ!」

リーリエ「ネネちゃんさん! アームハンマーです!」
216 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:46:12.74 ID:hGqQJJjA0
デンジュモク「デンジュッ!!」バチチチッ!

キテルグマ「クーーッ!!」ダッ!

デンジュモクが自身を中心に電撃を発し、ネネがピッピ人形を掴んで腕の筋肉に力を込める。
電撃が空中を走り、それがネネに当たるものの、一切怯まずデンジュモクに接近する。そして再びデンジュモクに向けて、ピッピ人形を叩きつける!

キテルグマ「クゥゥゥーーッ!!」

ド ゴ ッ !

デンジュモク「デンッデ……!」

そこでネネの体力が尽きてしまったのか、デンジュモクにのしかかる形で、両者が倒れ込んだ。

ドサッ

キテルグマ「ク……クッ」ガクッ

デンジュモク「デ……デンジュッ……」パタッ

デンジュモクも一度、空に向かって腕を伸ばしたものの、そのままパタリと音を立てて崩れ落ちてしまった。

ひろし「引き分け……」

ルザミーネ「そんな……たかがキテルグマに、ビーストブーストで力を高めたビーストちゃんと引き分けるなんて!」
217 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:49:08.93 ID:hGqQJJjA0
2体のビーストが倒れて屈辱と焦りを見せるルザミーネとは対照的に、リーリエはねぎらうようにネネへ話しかける。

リーリエ「ネネちゃんさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください……」シュン

ここまではうまくいった。残りはお互いに2匹。ここが正念場だ。相手が何を出してくるか、そしてその後に行われる戦いの勝敗で全てが決まる。

リーリエ「カザマさん! お願いします!」ヒョイッ

ジュナイパー「ホーッ!」ポンッ

ルザミーネ「ジュナイパー……。知っているわ。確か、しんのすけ君が連れていたフクスローの進化系ね。なら……!」スッ

ルザミーネ「行きなさい! ウツロイド!」ヒョイッ

ウツロイド「じぇるるっぷ……」ポンッ!

ジュナイパー「……ホーッ!」バサッ

ルザミーネ「ウフフ! デジャヴを感じますわ……。こういう趣向もありだと思ったのだけど、ねぇひろしさん」

ひろし「……!」

リーリエ(ウツロイドさん……。以前、パラダイスでしんちゃんとカザマさんが一度、相手にしたとひろしさんとハウさんがおっしゃってた……だからかあさまは出したのですね)
218 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:52:16.78 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「あの時の決着、付けてもよくってよ。ウツロイド、ヘドロばくだん!」

リーリエ「カザマさん! かげぬいです!」

ウツロイド「じぇるるっ!」バシャッ!

ジュナイパー「ホーッ!」グググッ

カザマが2本の矢羽根をつがえ、ウツロイドが毒の塊を精製し先に発射した!
放物線を描きながら飛んでくるヘドロばくだんを、カザマが矢羽根をつがえたまま横に跳躍しつつ回避、しかしウツロイドもカザマを追うようにヘドロばくだんを次々と発射する。

ジュナイパー「じぇるるっぷ……!」バシャッバシャッバシャッ!

ジュナイパー「ホーッ!」バシュッ!

ウツロイドが新しいヘドロばくだんを精製するタイミングを見計らい、引き絞った弦から手を放した。同時にヘドロばくだんも飛び出す。
1本目の矢羽根がヘドロばくだんを貫いて破裂させ、もう1本の矢羽根がウツロイドの影に突き刺さり、黒い爆発を起こした!

ドゴォォォン!

ウツロイド「じぇるっ……!」

リーリエ「更にリーフブレードですっ!」

ジュナイパー「ホーッ!」ジャキンッ!

カザマはウツロイドに接近すると、自らの翼を鋭く逆立て、ウツロイドへと斬りかかる!
219 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:57:21.56 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「ウツロイド、ヘドロウェーブ!」

ウツロイド「じぇるるっぷ!」グワッ!

ウツロイドの全身から毒液がにじみ出ると、自らの触手にまとって身体を回転させると、大量の毒が周囲に拡散していく。

ジュナイパー「ホッ……!」

ウツロイドの放った毒の波状攻撃がカザマに直撃し、リーフブレードが空振りに終わってしまう。

ルザミーネ「まだまだよ……! アシッドボム!」

今度はウツロイドの身体から酸性の毒が発射された。ヘドロウェーブのダメージにひるんでいるカザマに直撃し、煙を上げながら、身体を溶かしていく。

ジュナイパー「ホ、ホーッ!」ジュウウ

リーリエ「カザマさんっ!」
220 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 21:59:30.97 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「そして、パワージェム!」

ウツロイド「じぇるるっぷ!」ブゥゥン!

ウツロイドの周囲に輝く岩石が作り出されたかと思うと、そこから次々と弱ったジュナイパーに向けて光線が照射される!

ドンドンドンッ!

ジュナイパー「ホーーッ!?」

リーリエ「!」

パワージェムの光に当たったカザマが、リーリエの立っている方向へと飛ばされ、彼女に激突して空中に吹っ飛ばされる!

リーリエ「きゃああっ……!!」

しんのすけ「……!」

目の前の景色が何度も回転したかと思うと、リーリエは頭を打って、カザマと一緒に地面に転がってしまった。今まで感じたことのない、意識を失いそうな鈍い痛みがリーリエを襲い、うつ伏せに倒れる。

リーリエ「あっ……う、うぅ……」

みさえ「リーリエちゃん!」

ひろし「大丈夫か!?」

ロトム図鑑「そもそも、どくタイプの技を使うやつにカザマを出してもな……Zリングも持ってないし」

みさえ「弱気になってどうするのよ! リーリエちゃんは勝つわ!」
221 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:00:28.27 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「これでわかったでしょう? Zリングも持ってないアナタが、ビーストちゃんに……このわたくしに勝てると本気で思ってるの?」

ルザミーネ「そもそも! 子供が親に逆らい、あまつさえ歯向かおうとするなんて……傲慢にもほどがあります! これは罰です!!」

リーリエ「……」ユラッ

ジュナイパー「ホー……!」ユラッ

ルザミーネ「まだ戦うというの?」

ルザミーネが追い打ちをかけるように言葉を投げかけるが、リーリエとカザマはふらふらと、それでいてしっかりとした足取りで立ち上がった。頭を打った時に擦りむいたのか血が流れ、腕でこすって拭き取る。
222 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:01:46.93 ID:hGqQJJjA0
リーリエ(しんちゃん……! あなたはいつもお下品で、ナンパして、周りを困らせて……。今だって、かあさまに操られているのにインドぞうさん丸出しで……)

――ケツだけ星人〜ぶりぶり〜ぶりぶり〜
――まったく参っちゃうよね。方向音痴を探すのにも一苦労ですよ
――ほほーう? オラたちが待ってる間にお洋服を買ってたのですか。それも、気合を入れないと着れそうもない服なんて買って

リーリエ(でも! あなたは、わたしを守ってくれました! わたしを変えてくれました!)

――ハァーやれやれ、しょーがないなぁ
――リーリエちゃんには指一本触れさせないゾ!
――今日はオラが布団になったげるから。いっぱい泣いていいよ

リーリエ(しんちゃん――わたしの夢で、憧れで、ほしぐもちゃんと同じくらいかけがえのない大切な人……あなたを、失いたくないです!)

――ずっと、わたしを守ってくれてありがとうね。今度はわたしが、ゼンリョクであなたを守ってみせますから。しんちゃんが、わたしを守ってくれたように

リーリエ「わたしは約束したんです! しんちゃんを守るって! だから……」

――リーリエちゃん

リーリエ「絶対に――負けられないんですっ!!」ギンッ!

ジュナイパー「ホーーーーッ!」ゴウッ
223 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:04:57.84 ID:hGqQJJjA0
みさえ「その勢いよ! リーリエちゃん!」

ひろし(カザマくんに一瞬、赤いオーラが?)

しんのすけ「……」

ルザミーネ「打ちのめしても何度も何度も立ち上がって……本当に目障りなコね!」

ルザミーネ「ウツロイド、もう一度ヘドロばくd……」

ヒュンヒュンヒュンッ!

ウツロイド「じぇるるっ……!?」ドスドスドスッ!

ルザミーネ「矢が……?!」

ジュナイパー「……ホー!」

リーリエ「ふいうち、です」

リーリエ「そしてカザマさん! 続けてかげぬいです!」

ジュナイパー「ホッホーッ!」
224 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:06:38.29 ID:hGqQJJjA0
ヘドロばくだんやヘドロウェーブに当たらないためにウツロイドと距離をとったカザマは3本の矢をつがえると、上空に向けて矢を一斉に曲射した。
影の矢が放物線軌道を描いて、次々とウツロイドに向けて勢いよく落ちていく!

ドカンッ! ドカンッ! ドカンッ!

ウツロイド「じぇ……じぇるっ!」

ルザミーネ「こうなったら……しんのすけくん!」

しんのすけ「……!」ピクッ

再びしんのすけが、ルザミーネの前に出てくる。

リーリエ「……また、しんちゃんを盾にするつもりですか!」

しかし、ルザミーネは笑顔を浮かべたまま、首を横に振って否定した。

ルザミーネ「リーリエ。わたくしがなぜ、しんのすけ君を息子として迎え入れたのか、その理由を見せてあげますわ。さぁ、しんのすけ君! ウツロイドにZパワーを与えなさい」

しんのすけ「ほい……」

しんのすけはZリングを掲げると、構えを取り始めた。

ジュナイパー「ホホーッ!?」

みさえ「あの構えって……」

リーリエ「しんちゃんを利用して……Zワザを使うつもりですか!」

ひろし「きたねーぞてめぇ!!」
225 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:07:35.36 ID:hGqQJJjA0
バッ バッ ゴポポポッ ブリッ!

ルザミーネ「おしりは見せなくていいの!」

ピカッ! ゴウッ!!

ウツロイドは Zパワーを 身体に まとった!

ウツロイドが 解き放つ
全力の Zワザ!

ウツロイド「じぇるるっぷ……!!」

ア シ ッ ド ポ イ ズ ン デ リ ー ト !

ウツロイドは触手を大きく広げると、毒の奔流が周りに広がっていく。
やがて、猛毒の雨あられが降り注ぐ中、毒の沼と化した地面が柔らかくなっていく。

ジュナイパー「ホ、ホーッ!」ズブッ

リーリエ「カザマさんっ!」

すると、カザマがどんどん、毒の沼へと沈んでいく。翼をジタバタさせて暴れるも、余計に深く落ちていくだけだ。

ズブズブズブ……

ジュナイパー「……!」

そして、完全にカザマの姿が毒の沼へと姿を消してしまった。
226 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:09:48.25 ID:hGqQJJjA0
ひろし「どくタイプのZワザ……これじゃあ……」

ルザミーネ「ふふ、これで終わり……」

ヒュンヒュンヒュンッ!!

その時、次々とかげぬいによる矢が飛来し、ウツロイドに襲いかかった!

ドカンッ! ドカンッ! ドカンッ!

ウツロイド「じぇるっ!?」

ジュナイパー「ホー!」ググッ

リーリエ「カザマさんっ! 無事だったんですね!」

ルザミーネ「そんな……なぜ?!」

離れた所からかげぬいで射撃をしているカザマの姿に仰天したルザミーネは、カザマが沈んだ場所をみやった。

ルザミーネ「あれはっ……!」

そこには、草で編まれた人形が転がっていた。

ひろし「そうか、みがわりか!」
227 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:11:31.35 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「これならっ! カザマさん! ブレイブバードです!」

ジュナイパー「ホーーッ!!」ゴウッ!!

かげぬいのダメージで動けないところで、カザマが地上からジャンプし、勢いよく滑空して一直線にウツロイドへ向かっていく!

ドンッ!!

ウツロイド「じぇるっ……!!」

カザマ自身が1本の巨大な矢になったかのように、ウツロイドへと突進し、吹っ飛ばしていく。ウツロイドは悲鳴を上げるまもなく、ウルトラスペースの空を舞い、地面へと落下して動かなくなった。

ウツロイド「」ピクピクッ

ルザミーネ「……ウツロイドまで!」キッ!

ひろし「よしっ、これであいつは最後の1匹だ!」

みさえ「リーリエちゃん! もう少し! もう少しで勝てるわよっ!」

ひまわり「たいやーっ!」

ロトム図鑑「ビーストもたいしたことないな」

ジュナイパー「ホホーッ! ホーッ!」ダカラオマエガエラソウニスルナッ!!
228 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:12:56.58 ID:hGqQJJjA0
ジュナイパー「ホッ……!」ガクッ

みさえ「どうしたの?」

ひろし「おそらく、弱点の攻撃を食らったことに加えて、みがわりとブレイブバードによる反動だろう。どくタイプの相手によくやったぜ、カザマくん……」

リーリエ「カザマさん、もう大丈夫です。後はわたしとボーちゃんに任せてください!」

ジュナイパー「ホッホー……」シュンッ!

ひろし「しんのすけ! もう少し待ってろ! もうすぐお前を助けてやるからな!」

ルザミーネが全身を震わせながら、最後に残ったウルトラボールを掲げる。

ルザミーネ「まだよ……! まだわたくしにはフェローチェがいます!」

ルザミーネ「行きなさい! フェローチェ!」ヒョイッ!

フェローチェ「フェローッ!!」ポンッ!

ルザミーネ「ウツロイドを失ってしまったのは惜しいですけれども、しんのすけ君のエースポケモンが倒れた今、あなたの残りのポケモンを倒すにはこの子で充分です!」

リーリエ「……」

ルザミーネ「どうしたのかしら? 勝てないと悟って、降参する覚悟を決めたのかしら」

リーリエ「……この時を、待ってました」
229 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:18:24.74 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「……?」

リーリエ「わたしは待っていたんです。かあさまの最後のポケモンが、フェローチェさんになったこの時を!」スッ

ルザミーネ「なんですって……!」

リーリエ「わたしの最後のポケモンさん。この子で、フェローチェさんを倒します! ボーちゃんさんっ!」ヒョイッ

ミミッキュ「ボ!」ポンッ!

ルザミーネ「そのポケモン……確かにゴーストタイプだから、フェローチェのかくとう技は防げますわ。けれど、それで勝ったと思わないことね」

ルザミーネ「そのまま今度こそ、Zワザで倒してあげる!しんのすけ君!」

しんのすけ「……」

しんのすけは再びZリングを掲げると、構えを取り始めた。

リーリエ「かあさま……またZワザを使う気ですか! そんなことしたらしんちゃんが!」

ひろし「やめろ! Zワザはしんのすけの体力を使っちまうんだぞっ!」

しんのすけ「……!」ブルブル

しかし、ひろしの言葉を無視するように、しんのすけは震える手でZワザのポーズを取り始める。
230 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:19:55.25 ID:hGqQJJjA0
バッ バッ ブリブリ ジャキンッ!

ピカッ! ゴウッ!!

フェローチェは Zパワーを 身体に まとった!

フェローチェが 解き放つ
全力の Zワザ!

フェローチェ「フェローッ!!」

ぜ っ た い ほ し ょ く か い て ん ざ ん !

しんのすけ「ああんっ……」フラッ

ドサッ!

ひろし「し、しんのすけっ!」

みさえ「そんなっ!」

リーリエ「しんちゃん!」

思わず駆け寄ろうとするが、なんとか踏みとどまった。今はまだ勝負の最中だ。
それに、相手は目論見通りフェローチェのみになったけれども、ここで隙を見せたら逆転を許してしまいかねない。
焦る気持ちを落ち着かせて、冷静さを取り戻す。
231 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:24:40.51 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「かあさまっ……!」

しんのすけ「」

ルザミーネ「ふふ……二度使っただけで倒れちゃうなんて、使えない子」

みさえ「許せない……! アンタは絶対に許さない!」

ルザミーネ「さぁ行きなさい! フェローチェ!」

フェローチェ「フェロローッ!!」

フェローチェは口から糸を吐き出すと、ボーちゃんの全身に巻きつけて、繭のように覆い尽くしてしまった。

ミミッキュ「ボ……!」

それを握って振り上げ、糸に巻きつけられたボーちゃんを地面に叩きつける。

ドシャアッ!

フェローチェ「ロォォォッ!」

フェローチェは出している糸を切り、ボーちゃんを空中に投げつけると、フェローチェが飛び出し、手刀で糸ごとボーちゃんを切り裂いた!

フェローチェ「フェロォォッ!!」

ザンッ!!

ひろし&みさえ「!!」
232 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:27:21.18 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「……」

ひろしとみさえがZワザの威力に衝撃を受け、ルザミーネが勝ちを確信している一方で、リーリエは冷静さを保ったまま、切り裂かれた糸を凝視していた。

ルザミーネ「これでわたくしの勝ち、ですね」

リーリエ「いいえ」

すると、影の手が伸びてきて、フェローチェの吐き出した糸を引きちぎっていく。そして、ボーちゃんが糸を突き破る形で飛び出してきた!

ミミッキュ「ボーッ!」

ルザミーネ「しまった! ばけのかわ……っ!」

リーリエ「Zワザを使ってもムダです!! ボーちゃんさん! じゃれつくです!!」

ミミッキュ「ボーーーッ!」グワッ!

Zワザを受けてばけのかわが剥がれたボーちゃんは、影の手でフェローチェを振り払い、逆に倒れ込ませると、フェローチェに向けて激しくもみあった!

ポカポカドカドカ!

フェローチェ「フェロ! フェローッ!」

傍から見れば激しいスキンシップを受けているように感じるが、フェローチェは苦痛に満ちた悲鳴を上げている。
233 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:31:26.62 ID:hGqQJJjA0
みさえ「どうして、ただじゃれつかれているだけなのに苦しそうなの?」

ひろし「じゃれつくはフェアリータイプの技だ! あのビーストはむし・かくとうだから、弱点の1つなんだ!」

ひろし「そしてフェローチェと呼ばれたあのビーストは、素早い代わりにとても打たれ弱いんだ!」

みさえ「それじゃあ……!」

ひろしの解説を聞いた瞬間、ルザミーネはリーリエに目を瞠った。そこでようやく、リーリエの狙いに気が付いた。

ルザミーネ「まさか……あなたはわたくしがフェローチェを最後に出すように誘導したというの?!」

リーリエ「……」

そしてフェローチェはだんだん体力を失っていき、ボーちゃんがフェローチェから離れたときには、ぐったりと動かなくなってしまっていた。

フェローチェ「」ピクピクッ

ミミッキュ「ボーッ……」
234 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:32:33.38 ID:hGqQJJjA0
ひろし「よっしゃあっ! ざまーみろルザミーネ!!」グッ

みさえ「言ったでしょ? 必ずリーリエちゃんが勝つって!!」

ひまわり「たいやーっ!」

リーリエ「しんちゃんっ!」シュンッ

リーリエはボーちゃんをボールに戻すと、すぐさまルザミーネのそばで横たわっているしんのすけを抱きかかえた。

リーリエ「しんちゃん! しっかりして! しんちゃんっ!」

しんのすけ「……」

ルザミーネ「……アアアウッ!」

目の前の敗北に唖然としていたルザミーネは、目を大きく見開くと、2本の触手で頭部を掴み、その場で暴れだした。

ルザミーネ「どうして! どうして! どうしてわたくしのビーストちゃんたちがあああっ!!」グニャグニャッ!!

リーリエ「……」

リーリエはしんのすけを抱きかかえたまま、口を一文字にして真摯な表情で、ルザミーネと向き合う。
235 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:34:24.41 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「……かあさま、わたしはまだまだトレーナーとして未熟です。やっぱり、しんちゃんのポケモンさんは、しんちゃんしかゼンリョクを引き出すことはできないというのをこの戦いで実感しました」

リーリエ「それでもあなたがなぜ負けたのか、分かりますか?」

ルザミーネ「!?」ギロッ

リーリエ「あなたの敗因は、最初にビーストさんを見せびらかしたことで、わたしにどんなビーストさんを使ってくるのか教えたからです!」

リーリエ「そして――あなたがポケモンさんを、ビーストさんを、自分を美しく見せるための道具としか見てなかったからです!」

ルザミーネ「それがなんだというのですか! 全てがわたくしの愛で満たされて、美しくなればそれでいいの!」

リーリエ「子供は親のモノではありません! ポケモンもトレーナーが好きにしていい モノではありません!」

リーリエ「わたしも生きています! コスモッグも生きています! しんちゃんも、ビーストさんもみんな生きています! モノではないのです!」

リーリエ「かあさま……もうたくさんの人に迷惑をかけること、やめましょう。一緒に帰って、みなさんに謝って……」




――きゃあああああっ!!!
236 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:35:32.94 ID:hGqQJJjA0
ひろし「みさえっ!」

リーリエ「!」

みさえの悲鳴が響き、リーリエは驚いて振り返ると、恐らくルザミーネがゲットしたであろうウツロイドがみさえへと襲いかかっていた! みさえはひまわりをかばうように抱えながら、その場に座り込んでいた。
ロトム図鑑とフェローチェ、シロの周りにも、助けを妨害するように、ウツロイドが3匹を取り囲んでいく。

ウツロイドたち「じぇるるっぷ……!」

ロトム図鑑「うわっ! こっちくんな!」

フェローチェ(あい)「フェローッ!」

シロ「キャンキャンッ!」

リーリエ「みさえさんっ!」

リーリエ「かあさまっ! なにをするつもりですか!」

ルザミーネ「……確かに、勝負に勝ったらしんのすけ君を返すと言いましたわ」

ルザミーネの顔に、ニヤニヤとした不気味な笑みが戻ってくる。

ルザミーネ「だけど、あなた方を無事に帰すと一言も約束してません! 言ったでしょう? 誰の許しを得てここにやってきたのですか? 招かれざる客を歓迎するほど、わたくしは寛容ではありませんの!」
237 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:36:48.42 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「かあさまっ! もうやめて!」

ひろし「ぐぅっ、きったねぇぞ……てめぇっ!」バッ

ひろしは靴を脱いでルザミーネに嗅がせて怯ませるために突っ込もうとすると、触手が伸びて、ひろしとリーリエを捕らえた!

シュルルッ!

ひろし「ぐっ!」ググッ

リーリエ「きゃあっ!」ググッ

ルザミーネ「ウフフ!」

リーリエ「ううっ……かあさまっ!」グググッ

ひろし「くっそおおっ! こんなもんっ」グググッ

ルザミーネ「リーリエ、親に逆らった挙句、わたくしのプライドを傷付けた報い……受けてもらいます! まずはその目で、あなたの味方がわたくしのウツロイドによって命を落とすさまを見届けなさい!」

更に事態は悪化するように、ウツロイドたちがみさえに近づいていく。

みさえ「いやっ……来ないで!」
238 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:37:32.03 ID:hGqQJJjA0
ウツロイドたち「じぇるるっぷ!」グワッ

せめてひまわりだけでも、とひまわりを守るようにみさえはうずくまると、一斉にウツロイドたちがみさえへと覆いかぶさってきた!

みさえ「ひいいいーーーっ!!」

リーリエ「みさえさんっ!」

ひろし「みさえーーっ!! ひまわりーーーっ!! やめろーーーっ!!!」

しんのすけ「……」

みさえ「いやあああああああっ!!」

クチュッ!
グニャグニャッ!
239 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:40:06.04 ID:hGqQJJjA0
もぞもぞとウツロイドたちが動きだした。あの内側で何が起きているのかわからない。
ひろしとリーリエの頭の中に、最悪のシナリオが掻き立てられる。

リーリエ「そん……な……」

ひろし「み……さえ……ひまわり……」ボウゼン

ルザミーネ「ウフッ、アハハハハっ!!」

その光景を勝ち誇るように嘲笑っていたのは、ルザミーネただひとりだった。ひろしもリーリエも、このおぞましい光景から無意識に目をそらしていた。

ルザミーネ「アハハハハハハハハ!!」

ゴ ス ッ ! !

ルザミーネ「アグゥッ!?」

ひろし&リーリエ「!?」

いきなり黒くて巨大な影が現れたかと思うと、大きな衝撃とともにルザミーネが後ろへ吹っ飛び、岩壁へと激突した。
その際に触手の力が緩まり、すぐにひろしとリーリエは拘束を破ってルザミーネから離れた。彼女は、驚愕に目が見開かれ、苦しそうにもんどりうっている。

ルザミーネ「う……がっ……ああ」ガクガク

ひろし「なにが起きたんだ?」

リーリエ「……!」
240 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:40:57.41 ID:hGqQJJjA0
リーリエ「ひ、ひろしさん……後ろです」

ひろし「え?」

リーリエに言われ、ひろしが背後を振り返ると、そこには予想だにしない光景が広がっていた。
さっきまでみさえに襲いかかっていたウツロイドたちが地面に転がっており、ロトム図鑑とあい、シロが唖然として立ち尽くしていた。
瀕死になったウツロイドたちの上に浮かんでいたのは――。
241 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:41:33.52 ID:hGqQJJjA0
「うちの娘に!」

8本の巨大な触手――。

「うちの夫に!」

触手に抱えられるひまわり――。

「うちの息子に!」

黒く染まりきった身体――。

「うちの家族に!!」

ウツロイドの頭部に覆われ、憤怒の光を宿しながらルザミーネを睨みつける金色の目――。

みさえ(マザービースト)「手ェ出してんじゃないわよッ! 妖怪メノクラゲババアッッ!!」

ウツロイドと融合し、異形の姿となったルザミーネ同様、マザービーストとして覚醒したみさえが、ウルトラスペースに君臨していた。

ひろし「」

リーリエ「」
242 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:45:20.51 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「そんな……わたくしと同じように、ウツロイドの愛を受け入れたというの……?」

ここに来て初めて、ルザミーネは心の奥底から予想外といった表情を見せた。しかしみさえはそんなルザミーネを無視して、ひろしへと近づいた。

みさえ「あなた、ひまをお願い」フワッ

ひまわり「たい……」

ひろし「み、みさえ……その姿、大丈夫なのか?」

みさえ「心配しないで。……リーリエちゃん」

リーリエ「は、はいっ」

みさえ「よく頑張ったわね。しんのすけのために、ありがとう」ナデナデ

みさえ「ちょっとあなたのママと『お話』してくるわ。その間、もう少ししんのすけのこと、お願いね」

リーリエ「え?」
243 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:46:15.36 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「……許せない! ウツロイドは、わたくしだけのモノなのにっ!」ギリリッ!

ゴウッ!!

怒号を上げながら、ルザミーネは輝く岩を作り出し、極太の光線をみさえに向けて発射する!

みさえ「……」スッ

しかし、みさえは1本の触手を光線に向けてかざすと、壁に阻まれたように光線が押さえつけられ、そのまま分解するように消滅した。

ゴウッ!

シュウウウ
244 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:47:19.62 ID:hGqQJJjA0
ルザミーネ「なっ……」

ひろし「す、すげぇ……」

みさえ「――ルザミーネさん」

ルザミーネ「!」

みさえ「アンタがビーストの母だとか、自分を美しく見せるだとか、そんなの正直どうでもいいの」

みさえ「ただね、他人の息子に……家族に手を出したらどうなるか、ホンモノの母親の怒りってものを、ゼンリョクで思い知らせてあげるわ!! 覚悟しなさい!!!」

みさえ「……スゥーッ」

みさえ「はぁぁぁぁぁっ!!!」

ゴウッ
バチチチッ!!!

覚醒したみさえが雄叫びを上げた瞬間、スパークの走った真紅のオーラを全身に纏い、周囲の大地に衝撃波が走り、石の破片が宙に浮かびヒビが入る!
245 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 22:49:46.64 ID:hGqQJJjA0
今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。
ルザミーネファンのみなさん、ごめんなさい。いよいよハイパーフルボッコのお時間です。

じゃ、そゆことで〜

あっ、とーちゃん退院おでめとう! 今のとーちゃんも代役お疲れ様!
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 22:53:30.96 ID:65I1bDFt0
おつです

げんこつとかグリグリは何タイプになるんだろうな(戦慄)
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 22:55:26.74 ID:Ke6TYA4A0

ルザミーネは野原一家(というかみさえ)をナメすぎた、それが敗因
最初からみさえが実力行使すればよかったんじゃね?というのは置いといて
ルザミーネの母親力が1ならみさえは100万だからな
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/16(金) 22:57:24.47 ID:cL00ZGYS0
BBAB↑↓
249 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/16(金) 23:26:59.44 ID:hGqQJJjA0
【おまけ】

このSSを執筆する前に書いた「母VS母」のコンプセントアートですが……。
塗り絵にでもどうぞ。

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