【ポケモン】しんのすけ「アローラ地方を冒険するゾ」その2【クレしん】

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43 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:07:46.21 ID:31e3ztue0
いきなり、アクジキングがその巨体を回転させて、尻尾をグラジオとヌルに向けて振り回した。グラジオはすぐに屈んで伏せることができたが、ヌルがにドラゴンテールが直撃して庭園の木に激突してしまう!

ドゴッ!

グラジオ「ヌル!」

ヌル「オオ……オオオ!」グググッ

アクジキング「グモォォ!」バグバグッ!

アクジキングは知ってか知らずか、ヌルの周りの地面に手を伸ばし、口の中へ入れていく。更にヌルのそばの木を引っこ抜いて口に入れると、その舌をヌルに向けて伸ばし始めた。

ヌル「オォォッ……!」

グラジオ「ヌル! 逃げろ!」

アクジキング「グモォォォッ!」

???「ガバイト! ドラゴンクローだ!」

突然、青い影がヌルの前に飛び出してきた!

ガバイト「グァァァッ!」ブンッ

アクジキング「グモォォォォッ?!」ザクッ!
44 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:10:24.16 ID:31e3ztue0
痛みでじたばた暴れるアクジキングから退避させるように、ビブラーバがやってくると、ヌルを持ち上げてグラジオの前に下ろした。そしてグラジオとヌルの前を、コモルーが守るように仁王立ちする。

ビブラーバ「ガガガッ!」

コモルー「オオオ……」

グラジオ「こいつらは……?」

???「いじっぱりのドラコ!」カーン!

???「れいせいのおキン!」カーン!

???「ひかえめのマミ!」カーン!

3人「三人合わせて、『スカル団黒ガバイト隊』!」バァーーーン!!!

グラジオ「」ポカン

アクジキング「」ムシャムシャ

おキン「……リーダー、あたいらもうスカル団じゃないんですよ。改名したほうがいいんじゃないスか?」

ドラコ「あ、あぁ、言われてみればそうだな……」

マミ「普通に『アローラ黒ガバイト隊』でいいんじゃないスか?」

ドラコ「それじゃベタすぎるだろ! もっとこう、ドカーンとインパクトのある名前をだな……」

プルメリ「……あんたら、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」ザッ
45 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:11:20.63 ID:31e3ztue0
ドラコ「姉御!」

グラジオ「オマエら……なぜここにいる?」

プルメリ「そりゃこっちのセリフだよ。グラジオこそどうしてここにいるんだい?」

ドラコ「あたいらは姉御からの命令でウルトラビーストを追い払ってるんだよ」

おキン「そうだよ、それでたまたま危ない目に遭ってるアンタがいたってわけさ」

グラジオ「よせ……あれはお前たちが勝てる相手じゃない」

マミ「グラジオだって1人で挑んでヌルが食われそうになってたじゃねぇか」

ドラコ「そう、あたいら3人の力を合わせれば奴を倒せる! おキン、マミ、行くぞ!」

おキン&マミ「ウス!」

プルメリ「待ちな! グラジオの言うとおり、うかつに手を出しちゃ――!」

ドラコ「ガバイト! げきりん!」

おキン「ビブラーバ! むしのさざめき!」

マミ「コモルー! りゅうのいぶき!」
46 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:13:06.78 ID:31e3ztue0
ガバイト「ガァァァッ!」ブンッ!

ビブラーバ「ガガガッ!」ザザザザッ!!

コモルー「オォォォッ」ゴウッ!

3体のドラゴンポケモンによる一斉砲火がアクジキングへ向かっていく! ビブラーバのむしのざざめきで動きを止めつつ、コモルーのりゅうのいぶきで援護射撃を受けながら。ガバイトの怒涛の攻撃でアクジキングに多大なダメージを与える。

アクジキング「グモ……グモオォォォ!」ブンッ!

アクジキングがダメージを受けて身を悶えさせながら暴れまわる。しかしガバイトたちはそれを回避しつつ、再び攻撃を繰り返す。
するとアクジキングはガバイトたちに向き直ると、その口を大きく開いて息を吸い込むと……。

アクジキング「ヴ ェ ェ ェ ェ ェ ェ ッ ! !」

ドドドドド!!!

ガバイト&ビブラーバ&コモルー「!?」

グラジオ「なっ!?」

プルメリ「!!」

アクジキングの放った逸脱したゲップが一種の衝撃波となって、ガバイトたちを吹き飛ばしていく!

ドゴォォォッ!!

おキン「な、なにぃ!?」

マミ「コモルー!」
47 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:14:03.74 ID:31e3ztue0
プルメリ「今のはゲップか……。あんな隠し玉、持ってたとはね」

ドラコ「くぅっ! こんなやられ方、屈辱的すぎじゃねぇか! おい!」

ザッ

???「今日は厄日だね……」

5人「!」

クチナシ「……こいつと、こんなところで鉢合わせしちまうとはよ」

グラジオ「クチナシさん!」

プルメリ「おっさん!」

クチナシ「グラジオのあんちゃん、元スカル団のねえちゃんたち、あいつはビーストの中でも相当タフな奴なんだわ。下手に数撃っても、食われちまうのがオチだよ」

グラジオ「クチナシさん……アイツを知っているのか?!」

クチナシ「……ま、昔ね」

クチナシ「誰か、フェアリータイプのポケモンを持ってる奴いるかい」

ドラコ「いや……あたいら全員、ドラゴンタイプのポケモン持つってのが黒ガバイト隊のルールだからよ」

プルメリ「あたいも、今のところどくタイプしかいないね」
48 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:17:43.37 ID:31e3ztue0
クチナシ「そうかい。なら、こうするしかねぇか」

クチナシ「アブソル、あいつにれいとうビームだ」

アブソル「ガウッ!」

そばで控えていたアブソルが飛び出すと、アクジキングの大口にひるまず近づくと、青白い光線を放った!

アブソル「オォォッ!」ズピーーッ!!

アクジキング「グモ……!?」ピキキキッ

アブソルのれいとうビームを受けたアクジキングは見る見るうちに氷に覆われていき、次第に動きが鈍くなっていく。

クチナシ「――プルメリの嬢ちゃん、奴を凍らせるよ」

プルメリ「わかったよおっさん、ドヒドイデ! れいとうビーム!」

ドヒドイデ「ドヒドヒッ!」キィーン!

アブソルに続いて、プルメリのそばで控えていたドヒドイデもれいとうビームを発射する!
すると、さらにアクジキングの動きが緩やかになってゆく。

アクジキング「グ……モ……ッ!」ビキビキッ!

ピキッ!

そして、アクジキングの全身が完全に凍結し、動かなくなった。
49 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:18:36.14 ID:31e3ztue0
おキン「おおっ! 凍らせた!」

マミ「こっから巻き返すんですね!」

クチナシ「いや、あのウルトラホールの中に押し戻すよ」

グラジオ「倒すんじゃないのか?」

クチナシ「さっきも言ったがよ、あいつはとんでもなくタフな奴なんだよ。ここにいる戦力だけだと、あいつを倒せても誰かが犠牲になるのは間違いないぜ」

ドラコ「そんなに恐ろしい相手……なのか?」

プルメリ「見てわかるだろ? もうちょっと慎重さっていうの覚えな」

クチナシ「……それより、早くやらないと目覚めちまうよ。ポケモンたちの力を借りて、あいつを元の場所に戻してやんなきゃな」

グラジオ「わかった。それに、アンタに話もあるしな……」
50 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:23:43.82 ID:31e3ztue0
カプの村 モーテル

クチナシ「なるほど……月の笛、ね。それで、この事件の親玉をどうにかするってわけかい」

プルメリ「そんなことが……まさかあの子が代表に狙われるなんてね……」

グラジオ「ああ、そのためにカプ・ブルルからかがやく石を貰えないだろうか」

クチナシ「……正直なところ、あいつが素直に首を縦に振るとは思えねぇけどな」

グラジオ「なぜだ?」

クチナシ「昔一度、この村の奴らがカプ・ブルルの怒りを買う真似をしたからだよ。それ以降、人間不信とまではいかねぇがよ、人に対して警戒しているっていうのはあるね」

マミ「リーダー、こいつら何話してるんすかね?」ヒソヒソ

おキン「カプのことが話題に出てますけど……」ヒソヒソ

ドラコ「さぁな……」ヒソヒソ

クチナシ「俺もしまキングだけど、あいつの姿……しまキングになったときの一度しか見たことねぇんだわ。なにせ、今回の大量発生前、この島の上空にウルトラホールが開かれた時も、カプ・ブルルは静観してたからな」

グラジオ「今は非常事態だ……。月の笛を完成させなければ、このアローラがビーストによって壊滅してしまう」

クチナシ「それもまた、ひとつの定めって奴じゃないのかい? 永遠に続くもんなんてありゃしないんだよ。アローラもまた、こうやって滅ぶ運命なのかもしれないぜ」

グラジオ「そんなものを受け入れられるほど、オレ達は自分の運命を悟ってなんかない。オレ達は最後までビーストたちに抗って、戦い抜く! ヌルと供に!」
51 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:24:48.83 ID:31e3ztue0
グラジオ「そういうクチナシさんこそ、もし諦めているなら、なぜオレたちを助ける? 本当はどこかで、アローラを救いたいという気持ちがあるんじゃないのか?」

クチナシ「……まいったねえ」フッ

コンコンッ
ガララッ

グラジオ「!」

マーレイン「すまないね、思ったより『LIGHTNING』の数が多くて、手間取ってしまったよ」

クチナシ「ま……ちょっとプルメリのねえちゃんとマーレインのあんちゃんと話してな。おれは外の様子、見てくるからよ」

マーレイン「お気をつけて、クチナシさん」

ガララッ ピシャッ!

グラジオ「……そういえば、なぜお前たちがここにいるんだ? さっき解散したといつていたが、スカル団はどうなったたんだ?」

プルメリ「……グラジオの言うとおり、スカル団は解散したのさ、一応ね」
52 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:26:08.60 ID:31e3ztue0
※修正

グラジオ「そういうクチナシさんこそ、もし諦めているなら、なぜオレたちを助ける? 本当はどこかで、アローラを救いたいという気持ちがあるんじゃないのか?」

クチナシ「……まいったねえ」フッ

コンコンッ
ガララッ

グラジオ「!」

マーレイン「すまないね、思ったより『LIGHTNING』の数が多くて、手間取ってしまったよ」

クチナシ「ま……ちょっとプルメリのねえちゃんとマーレインのあんちゃんと話してな。おれは外の様子、見てくるからよ」

マーレイン「お気をつけて、クチナシさん」

ガララッ ピシャッ!

グラジオ「……そういえば、なぜお前たちがここにいるんだ? さっき解散したと言ってたが、スカル団はどうなったんだ?」

プルメリ「……グラジオの言うとおり、スカル団は解散したのさ、一応ね」
53 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:29:27.63 ID:31e3ztue0
グラジオ「なに?」

プルメリ「この島とポニ島でね、まぁ色々あったのさ。グズマのことを、しんのすけとリーリエに頼んで、そのままあたいらはこの島に戻ったんだ」

プルメリ「だけど、その矢先にこれだよ。かわいい部下たちをビーストたちの手にかからせたくなかったし、グズマを探そうなんていうムチャもさせたくなかったからね。そのまま、解散したんだよ」

プルメリ「それでも、まだグズマに未練があるのか……それともこのアローラがやっぱり好きなのか、団員のほとんどが戻ってきてね、「自分たちにできることはないか」ってあたいに相談してきたんだよ」

プルメリ「だからあたいは、『グズマが帰ってきたら、みんなでアローラにしでかしたことを償わなきゃいけない。そのためにこのアローラを守りな』って言ってやったのさ」

プルメリ「それをどこで聞きつけたのか……クチナシとマーレインのおっさんコンビに言いくるめられて、こいつらと一緒にアローラの島を巡って、街の人たちの避難の活動と、ビーストの討伐をしていたのさ」

マーレイン「彼女らに償う意識があるなら、それをもっと多くの人に知ってもらうべきと思っただけだよ。それに、プルメリ自身戦力として申し分ないからね」

プルメリ「ありがとよ。それより……しんのすけが代表に連れ去られて、月の笛を直すために、ここへねぇ」

グラジオ「さっき連絡が入ったが……メレメレとアーカラのカプから、かがやく石は貰えたそうだ。残りはこことポニだけだ」

マーレイン「カプ・ブルルは温厚な分、ものぐさなところがあると聞くからね。Zリングを作る目的以外で、かがやく石を人間に渡すことに抵抗があるかもしれない」

グラジオ「どれかひとつでも石が欠けてしまえば、その時点で月の笛は直すことができない。……ビーストが現れたと同時にウルトラホールに飛び込むという案も考えたが、その先がどこに繋がっているかわからないからな……最悪、戻ってこれなくなるかもしれない」

マーレイン「そうだね……たぶん、月の笛を修復するうえでここが一番の山場だと思うよ」

グラジオ「ともかく今は……クチナシさんを説得して、なんとかカプ・ブルルに会わせてもらわなければ何も始まらないがな」
54 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:31:22.55 ID:31e3ztue0
プルメリ「グラジオ、ちょっといいかい?」

グラジオ「……なんだ?」

プルメリ「もしも、その月の笛とやらを直して、代表のもとへ向かうんなら、あたいも連れて行って欲しいんだ」

グラジオ「……本気か? そもそも、グズマを助けるのはしんのすけとリーリエに任せたんじゃなかったのか?」

プルメリ「最初はそうするつもりだった。弱いあたいらが出しゃばるより、2人に任せちまおうって考えてたよ」

プルメリ「でもね、しんのすけに「一緒に助けに行こう」「弱いなら強くなればいい。大事な人なんでしょ」って言われたよ」

プルメリ「悔しいけどね、あんな小さな子供の言葉でもズシンと来るものがあったよ。素直な気持ちに嘘をつき続ける自分がヤになっちゃうね」

プルメリ「グズマはホントバカ! だからね……あたいが引っ張ってでも、あいつは取り戻さなくちゃいけないんだ」

ドラコ「姉御! だったらあたいらも……」

プルメリ「アンタはここでマーレインとクチナシのおっさんの手伝いをしてな。心配すんな、アンタらの気持ちを背負ってグズマを迎えに行ってくるからさ!」

ドラコ「姉御……わかりました!」

グラジオ「もう一度言うが……本当にいいのか? ビーストの世界に行って、命の保証はないんだぜ。たとえあんたでもな」

プルメリ「くどいよ。女に二言はないってね。あいつはあたいが助けに行かなくちゃ」
55 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:32:28.57 ID:31e3ztue0
ガラララッ

クチナシ「グラジオのあんちゃん、いるかい?」

グラジオ「クチナシさん……」

クチナシ「……来なよ、カプ・ブルルに会いたいんだろ? あいつは今、実りの遺跡にいるみたいだからよ」

グラジオ「会わせてくれるのか?」

クチナシ「ああ……だが、プルメリの嬢ちゃん。そっちもついてきな」

プルメリ「あたいもかい? どうして?」

クチナシ「……案外、説得するのに役に立つかもしれないからな」ニヤッ

グラジオ&プルメリ「????」
56 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:35:34.08 ID:31e3ztue0
実りの遺跡

グラジオ「ここが実りの遺跡……」

プルメリ「カプの遺跡の中に入ったのは生まれて初めてだよ……なんだか重苦しい雰囲気だね」

グラジオ「だが……肝心のカプ・ブルルはどこにいるんだ?」

クチナシ「……」テクテク

クチナシは祭壇に上がると、石像にそっと右手を伸ばして触れた。

クチナシ「……聞こえるかい」

グラジオ&プルメリ「!」

クチナシ「ずいぶん久しぶりだね。……こうして語りかけるのはしまキングになって以来だよな」

グラジオ(カプ・ブルルに語りかけているのか?)

クチナシ「わかってるだろ? 外が今、どうなっているのか」

クチナシ「ビーストがわんさかだよ。これまで見てきたもんとは比べ物になんねぇ程にな」

クチナシ「キャプテンも出ずっぱりさ。アセロラに至っては、月の笛を直しているからねぇ」

クチナシ「……そうさ、月の笛、壊されちまったのよ。ビーストを従えてる奴の仕業さ。おかげで向こうにいる親玉をどうにかしようとしても、肝心の伝説のポケモンが呼べないんだわ」
57 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:37:15.34 ID:31e3ztue0
クチナシ「言いたいこと、わかるだろ? お前さんの力、借りたいんだよ」

プルメリ「……」

クチナシ「月の笛を直すために、かがやく石が必要なんだとよ。お前さんなら知ってるんじゃないのかい」

クチナシ「……お前さんが人間に抱く気持ち、わからんでもねぇんだ」

クチナシ「あそこにいる嬢ちゃん。元スカル団の幹部なんだとよ。今はアローラを救うために、スカル団を解散させて、命懸けでビーストと戦ってるぜ」

プルメリ「!」

クチナシ「別に例の件で許しを請うなんて気持ち、これっぽちもないんだわ。だけどよ、今はアローラの危機なんだ。善も悪も関係なしに、みんなが一丸となってビーストの驚異と戦っているんだ」

クチナシ「それでもお前さんは、ここでじっとしているつもりかい? このまま、滅びの運命を受け入れるつもりかい?」

クチナシ「……言いたいことは、それだけだよ。あとは、お前さんの判断に任せるぜ」

そしてクチナシは石像から手を離すと、祭壇から降りてグラジオたちと向き合った。
58 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:38:28.70 ID:31e3ztue0
グラジオ「……クチナシさん。カプ・ブルルは――」

クチナシは肩をすくめた。

クチナシ「……どうだかね。ただ、向こうには向こうなりの考えってものがあるからさ」

プルメリ「おっさん、あたいは……」

チリンチリン!

グラジオ「なんだ……?」

プルメリ「鈴の音?」

――カ プ ゥ ブ ル ル !

祭壇内にカプ・ブルルの咆哮が轟く! 一瞬、グラジオたちが反射的に身構えるが、クチナシが手を上げてグラジオたちを制する。

クチナシ「……やっと、動いてくれたか」ニッ

グラジオ「?」
59 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:38:56.83 ID:31e3ztue0
再びクチナシは祭壇に上がると、一度身をかがめて立ち上がった。その手には、光り輝く石が握られていた。

グラジオ「それは――!」

プルメリ「カプ・ブルルは……認めてくれたのかね」

クチナシ「どうだかね。だけど、嬢ちゃんたちの活躍、カプ・ブルルはちゃんと見てるみたいだぜ? だからこそ、考えを変えたのかもな」

プルメリ「……!」

クチナシ「ほら、かがやく石だ。持って行きな」つ かがやく石

グラジオ「クチナシさん――すまないな」

クチナシ「……頼んだぜ」

グラジオ&プルメリ「ああ!」
60 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:40:34.14 ID:31e3ztue0
ポニ島 海の民の村(ひろし&ハウ)

メレメレ島でカプ・コケコからかがやく石を貰えたひろしとハウは、カプ・レヒレからかがやく石を貰うために、ポニ島へと船を走らせていた。

遠くから見たポニ島は、メレメレ島と比べてみると被害が少ないように見えた。しかし、島に近づいてみると、ビーストによる被害があらわになった。

桟橋が入り組んでいた海の民の村には、停泊しているほとんどの船が姿を消していた。桟橋もところどころが壊れてしまっていて、そのまま岸に船を止めてしまったほうが安全に降りれるという有様だ。

ひろし「よし、まずはハプウちゃんのところへ行ってみようぜ」

???「待ちや!」

ひろし&ハウ「!」

海の民の団長「君ら、何しに来たん? どこの島も今、ビーストっちゅうのがぎょうさん溢れて危険やぞ」

ハウ「おれたちーハプウさんに会いに来たんだー。カプ・レヒレから、かがやく石を貰うためにー」
61 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:41:28.15 ID:31e3ztue0
団長「ハプウちゃんにか? それに島の守り神にも用があるとは……」

ひろし「ハプウちゃんは今、どこに居るんですか?」

団長「今はたぶん、ポニの古道にある家で休んでるはずや。なんでも、戦闘中に怪我してしもうたとか言ってたが……」

ハウ「怪我ー?! だいじょぶなのかなー?」

ひろし「ともかく、まずはハプウちゃんの家に行こう。俺たちは今かがやく石が必要なことだけは話しておかないと」

団長「気を付けなはれや。この村も安全じゃあないし。島を歩けば、とんでもなく強いビーストに襲われてしまうで」

団長「わしも、この島にいるトレーナーさんたちを全員避難させたら、すぐによそへ逃げるつもりや。お前さんらも長居はせん方がええで!」

ひろし「俺たちも、今は一刻を争っている事態です。教えてくれてありがとうございます」

団長「いやいや、礼には及ばん」

ハウ「じゃー急ごー! ハプウさんの怪我も気になるしー」

ひろし「ああ!」
62 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:42:05.22 ID:31e3ztue0
ポニの古道

ひろし「確か……ここらへんだったよな? 島に家がひとつしかなくって、そこにハプウちゃんが住んでるって聞いたが……」

ハウ「あー! バンバドロだー!」

ハウが呼びかけると、畑の近くにいたバンバドロが2人の存在に気付いて、声を上げるとのっしのっしと重い足取りで近づいてきた。よく見るとあちらこちらに小さな傷跡が残っており、幾重にも渡るビーストとの戦いを乗り越えたことを物語っている。

バンバドロ「ムヒイウン!」

ひろし「このポケモン、確かハプウちゃんが連れていたポケモンだよな。ってことは、あの家がハプウちゃんの家か」

ハウ「そうだねー……」

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ひろし「うおっ!?」

ハウ「わーわー! ビースト?!」アタフタ
63 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:43:16.43 ID:31e3ztue0
ひろし「どこだ? どこに現れるんだ?」

ハプウ「なんじゃ、外が騒がしいのう」ガチャ

家のドアが開くと、頭に包帯を巻いたハプウが出てきた。

ハプウ「おお! ハウとひろしか! 無事でなによりじゃ!」

ハウ「その前にこの近くにビーストがいるよー! 早く見つけて倒さないとー!」

ハプウ「ん? ビースト? ……ああ、あいつのことかもしれんな」

ひろし「あいつ?」

ハプウ「そう慌てるな。まずは家に上がれ。エーテルパラダイスに避難した後の話をゆっくり聞かせてもらおうかの」
64 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:44:21.44 ID:31e3ztue0
ハプウの家

ひろしとハウは、ポニ島から避難してエーテルパラダイスで月の笛の修復にかがやく石が必要なことが判明し、カプ・レヒレから石を貰いに来たことを話した。

ハプウ「なるほどなぁ……決してアセロラを侮っていたわけではないが、王朝の知識は脈々と受け継がれておるということか」

ハウ「ところでその頭はー?」

ハプウ「ん? これのことか? いや、実は情けない話じゃが、ビーストと戦っている時に……」

ひろし「戦いの巻き添えを食っちまったのか……?」

ハプウ「いや、ビーストの猛攻にびっくりしてバンバドロから落馬してのう! そのまま頭をぶつけてしまったんじゃ! いやぁ、わしとしたことが、間抜けなことで怪我してしもうたわ! 頭の皮擦りむいただけで幸いじゃ」

ハウ「……」

ひろし「ま、まぁ、無事でなによりだ……」

ハプウ「それにしても、2人はカプ・コケコから石が貰えてなによりじゃな」

ひろし「家に来る前、博士からカプ・テテフから石が手に入ったって連絡が入った。後はウラウラ島とここだけだ」

ハウ「ウラウラ島は今グラジオが行ってるからーおれたちがここに来たのー」

ハプウ「ふむう……」
65 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:45:00.93 ID:31e3ztue0
ハウ「だからハプウさんからカプ・レヒレに石を頂けるかどうか、お願いできないかなー?」

ハプウ「もちろん、お主たちのすることに協力を惜しまないつもりじゃ。ただ……」

ひろし「ただ……?」

ハプウ「カプ・レヒレはおそらく、お前たち2人――あるいはどちらかに試練を課すじゃろうな」

ハウ「試練ー? キャプテンがするようなヤツのことー?」

ハプウ「ま、そうじゃな。試練達成で手に入るのがZクリスタルではなく、かがやく石と言ったところかの」

ひろし「どうしてカプ・レヒレは俺たちに試練を?」

ハプウ「カプ・レヒレは、心身を癒せる特別な水を作り出せる能力をもっておる。かつてポニ島に住んでいた者は、その恩恵を受けていたのじゃ」

ハプウ「だがな、そのためには、カプ・レヒレが作り上げる霧の試練を受けねばならないのだ。その試練を乗り越えた者だけが、水の恩恵に預かることができるのじゃ」

ひろし「つまり、水を手に入れる人たちと同じように、俺たちがかがやく石を持つに値する人間かどうか、カプ・レヒレは試したいわけだな」

ハプウ「その通りじゃ」
66 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:46:10.52 ID:31e3ztue0
ひろし「しんのすけを取り戻せるなら、どんな試練だってこなしてみせるさ。具体的に、何をすりゃいいんだ?」

ハプウ「それはカプ・レヒレが決めることじゃ。まずば彼岸の遺跡に行かねばな」

コンコンッ

全員「!」

???「マツリカ、ただいま戻りましたー。エンドケイプ周辺は異常なしですよー」

ハプウ「おお、そうか。ご苦労じゃったな」

マツリカ「おー? お客さんですか?」

ひろし「誰だ?」

ハウ「キャプテンの証つけてるー」

ハプウ「このふたりがさっき話した人たちじゃ。こちらが島巡りしているハウ、そしてこちらがしんのすけの父のひろしじゃ」

マツリカ「あー、あたしマツリカ。ポニのキャプテンやってます! といっても、普段は絵を描くためフラフラしてて、あたしの試練はないんだけど……」

ハウ「試練が無いキャプテンってなんか新鮮ー」
67 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:48:52.61 ID:31e3ztue0
ハプウ「こんな性格だが絵とポケモントレーナーとしての腕前は確かじゃ。あのデカいビーストも、マツリカが追い払ったでな」

ひろし「あいつをか!?」

ハウ「すごいキャプテンなんだねー!」

マツリカ「いやーたまたまですよ! 相手がフェアリーに弱かっただけで」

ハウ「フェアリータイプのキャプテンなのかー」

ハプウ「弱点を突くだけで倒せるのなら、苦労はいらん。後はもそっとキャプテンである自覚を持てば言うことはないのだがな」

マツリカ「うーん。ハプウさんの言葉は耳が痛いですねー」

マツリカ「アローラも大変なことになっちゃいましたからねー。みんなの力を1つにして、この危機を乗り越えていきましょう!」

ハウ「うんー!」
68 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:49:30.06 ID:31e3ztue0
マツリカ「あ、そうでした! お近づきの印に、フェアリーZをどうぞ!」つフェアリーZ

ハウ「エー! いいのー?」

ひろし「……普通試練を達成してもらうもんなのに、いいのかな」

ハプウ「貰っておけ。しんのすけが帰ってきた時渡してやれ」

マツリカ「おーゼンリョク! ゼンリョク! 遠慮なくどーぞ。そもそもやる試練ないですしね」

ハプウ「マツリカ、わしはこの者たちを連れて彼岸の遺跡に行ってくる。その間、この家の留守を頼んだぞ」

マツリカ「分かりましたー! みなさんお気をつけてー!」
69 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:50:15.64 ID:31e3ztue0
ポニの古道

ハプウの家を出て歩き出すと、再びウルトラホールみっけマーク3のシグナルが鳴り響いた!

ピーピーピー!
ヴ-ヴ-ヴ-!

ハウ「わー! まただー!」

ハプウ「さっきもそれが鳴ってたのう。それはウルトラビーストを見つける装置かなにかなのか?」

ひろし「ああ、ウラウラのキャプテンが作ったらしいけど……ビーストはどこにいるんだ?」

ハプウ「それなら、あそこじゃ」

ハプウはのんびりと自分の畑を指さした。
彼女が耕している畑の上には、ウルトラビースト――カミツルギがふわふわと浮いていた。

ハウ「あれがウルトラビーストー?」

ひろし「今まで見てきた奴らと比べると、ずいぶんちっせぇなぁ」

ハプウ「甘く見るでないぞ。あのビーストの全身は、まさしく魔剣そのものじゃ。なにせ、一太刀でバンバドロの身体に深い切り傷を負わせたからの」
70 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:52:20.13 ID:31e3ztue0
ハウ「ほんとー? しんのすけの群れたマサオのアクアテールも受け止められたのにー?」

ひろし「だったら、早いとこ倒しちまった方が――」

ハプウ「いや、手を出す必要はなかろう。なにせ、あやつはこっち側が仕掛けなければ、攻撃してこないからの。放っておけば大人しくて可愛げのあるやつじゃ」

ハウ「そうなのー? おれ、ビーストってみんな凶暴なものって思ってたからー」

ハプウ「わしもこやつを見るまで同じことを思った。だが、あのビーストのように決して人間と敵対したり破壊活動をするような輩ばかりではないと認識を改めたのじゃ」

ひろし「住む世界が違っても、いろんなビーストがいる――ビーストはそこらのポケモンと変わらないってところか。結局こいつらも、ルザミーネに利用されてるってことだな」

ハウ「おれ……ずっとポケモンって人に使われて変わるものって思ってたー。いい人ならいいポケモンになって、悪い人なら悪いポケモンになるってー……。だけど、ビーストが街を壊しているのを見て、ポケモンってなんなのかわからなくってー……」

ハプウ「その考えも間違っておらん。だが、ポケモンにもビーストにも、人間と同じようにそれぞれ意志があり、性格もあるのじゃ。だからこそ、この世界は成り立ってると言えよう」

ひろし「もしかしたら、ビーストだって、街を壊したいヤツがいるかもしれないし、ただ単にこっちに来て、どうすればいいのか分からないまま慌てているヤツがいるかもしれない」

ハウ「そうかなー? うー……」
71 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:54:57.99 ID:31e3ztue0
ハプウ「ま、どちらにせよ、ビーストは別世界のポケモンだからか、ボールがポケモンと認識してくれないみたいだがの。今は普通のポケモンのように捕まえて意思疎通を図る、というやり方は出来ん」

ひろし「だけどアイツは……」

ハプウ「……うむ、ルザミーネはウツロイドを捕獲しておった。だから近い未来、ビーストとポケモンの境界線が無くなる時が来るかもしれんな」

ハウ「ビーストとも仲良くなれるかなー?」

ひろし「ハウくん自身もビーストと仲良くなれるって思いながら動けば、ひょっとすれば、その心がビーストに届くかもな。あいつらもポケモンなんだからな」

ハウ「……そうだねー! よーし、それじゃあかがやく石を貰って、しんのすけを助けたらビーストたちと友達になってみよー!」

ハプウ「その勢いじゃぞ、ハウ!」
72 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:55:44.89 ID:31e3ztue0
彼岸の遺跡前

ひろしとハウはハプウに連れられて彼岸の遺跡前にやってくると、「まずはそなたらが話したことを、カプ・レヒレに伝えてくる」とハプウ一人だけが遺跡の中へと入っていった。
そして、ハプウが遺跡に入って30分が過ぎた頃、ハプウが遺跡から出てきた。

ハプウ「戻ったぞ」

ハウ「どうだったー?」

ハプウ「案の定というべきか……試練を受けてそれを乗り越えられたら、かがやく石を渡そうとカプ・レヒレは仰っていた」

ハウ「じゃあおれが行くよー! ガオガエンたちと島巡りでたくさん試練をこなしてたから、きっと達成できるってー!」

ハプウ「いや――行くのはお主ではない」

ひろしじゃ、とハプウは指さした。それでもひろしは動じず、むしろ表情に真摯さが出てくる。

ハウ「おじさんがー?」

ひろし「俺が行けばいいんだな?」

ハプウ「カプ・レヒレは、おぬしが試練を達成できたとき、かがやく石を手渡すそうじゃ」

ひろし「試練の内容は?」

ハプウ「遺跡の中を散歩してくればそれでよい。時間で言うなら、10分前後というところかの。そのあいだに、カプ・レヒレはおぬしに石を渡すべきか否か見るそうじゃ」

ハウ「ポケモンとか飛び出してきたりはしないよねー? おじさん、トレーナーじゃないんだよー」
73 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:58:14.74 ID:31e3ztue0
ハプウ「カプの遺跡に野生のポケモンが入るということはないな。その心配は無用じゃ」

ハプウ「ひろしよ、カプ・レヒレがおぬしに課す試練は、霧と幻惑の試練じゃ」

ひろし「霧と幻惑?」

ハプウ「カプ・レヒレは霧を作って幻を作り、相手を自滅させるという戦い方をするのじゃ。その能力を、人を試すためにも使っておるそうじゃ。つまり、どれだけひろしがカプ・レヒレの幻に囚われないか、これが試練の要となるじゃろう」

ひろし「上等だ! 試練を達成して、必ずしんのすけを取り戻してやる!」

ハプウ「では、遺跡の中に入るがよい。一歩足を踏み入れた時点から試練開始じゃ」

ハウ「おじさんー頑張ってー! かがやく石を手に入れて、しんのすけを助けに行こうよー!」

ひろし「ああ、すぐに終わらせてくるぜ!」
74 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:58:54.47 ID:31e3ztue0
彼岸の遺跡

ハプウの言った通り、遺跡の中に一歩足を踏み入れると、奥から青白い霧が立ち込めていた。かろうじて背後にある出入り口に光が差し込んであるのが見えるくらいだ。
遺跡の中は不気味な静寂に包まれており、ハウが不安視していた野生のポケモンが出てくる気配なんて微塵もない。

ひろし「はは……これが試練か。これならお化け屋敷を歩くほうが、よっぽど試練になるぜ」

ひろしは強気な言葉を口に出して不安を紛らわせ、靴が石の床を踏む音を耳にしながらひとまず奥へと進んでいった。
すると、霧の中に、ぼんやりとたくさんの人たちがひろしの前に現れた。

ひろし「こ、これは……?!」

霧が晴れると、ひろしはハウオリシティの砂浜に立っていた。そしてひろしの目の前に立っていた人たちの正体は――。

ビキニのおねえさんA「ひろしさんようこそ、アローラ地方へ!」

ビキニのおねえさんB「お仕事、お疲れでしょう?」

ビキニのおねえさんC「アローラの海、ゆっくり楽しんでいってね!」

「「「アローラー!!!」」」

ひろし「ふおおおおーっ!??」
75 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 20:59:52.04 ID:31e3ztue0
ひろし「な、な、どうなってんだ? 夢でも見ているのか?!」

ビキニのおねえさんD「さぁさぁ、ひろしさん、そんな暑苦しそうな服なんて脱ぎ捨てて!」

ビキニのおねえさんE「海に入って私たちと遊びましょ」

ひろし「き、君たち、やめなさい」デレーッ

ビキニのおねえさんF「なあにデレデレしちゃって、かわいー!」

ひろし「うひひひ! じゃあ脱いじゃおっかなー!」

ひろし「……ハッ!」ピクッ

ひろし(いかんいかん、これはカプ・レヒレの見せている幻なんだ! こんなものに囚われちゃいかん! できるならずっと囚われたいけど)
76 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:00:36.20 ID:31e3ztue0
ひろし「いや、遠慮しておくよ。私は先を急いでいるんで、それじゃ!」

ビキニのおねえさんA「え? ひろしさん、待ってよぉ」

ビキニのおねえさんB「私たちと一緒に遊んでいこうよ!」

ひろし「くぅ〜カプ・レヒレめ……結構エグいことするんだな……」

ひろしは目をつぶってビキニのおねえさん達を振り切って歩き出すと、今度は大勢の人たちが練り歩く足音が聞こえた。目を開けると、今度は普段着から背広姿で繁華街に立っていた。

川口「先輩」

後ろから声をかけてきたのは、ひろしが転勤前、フタバカンパニーに勤めていた後輩の川口だった。

ひろし「川口? お前、なんでこんなところに?」

川口「えぇ? なに言ってるんスか。先輩が誘ってきたんでしょう?」

ひろし「え? そうだっけか?」

川口「さ、早く行きましょう。取引先の人、もう先に入ってますよ」

ひろし「先に入ってる……?」
77 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:01:38.32 ID:31e3ztue0
ひろしが顔を上げると、目の前にはかつて取引先と行き慣れたキャバクラの看板が。先に川口が歩き出して、ひろしに手招きする。

川口「先輩、急ぎましょうよ。遅刻すると取引先にも女の子にも怒られちゃいますよ」

ひろし「あ、あぁ」

ひろし(そうだなぁ……ここでうまくいけば、今後もフタバカンパニーとの関係が良くなるし、業績もアップする。それに、この店のマチコちゃんも可愛いんだよなぁ……)デレーッ

ひろし「……ハッ!」ピクッ

ひろし「……いや、俺はいい」

川口「え?」

ひろし「今は取引先とか、女とかに構っている暇がないんだ。お前にもな」ダッ

川口「えっ? ちょっと先輩! せんぱーい!」

川口の呼び声にも一切無視して、道行く人たちをかき分けるように、繁華街のど真ん中を走っていく。

ひろし(こんな下らない幻を見せて俺を試しているっていうのか! こんなものを見せたって俺の気持ちは変わんねぇ! ルザミーネからしんのすけを取り返して、家族を元通りにしなくちゃいけねぇんだ!)

ひろし「いい加減にし――ッ!?」

気が付くと、ひろしは繁華街から見慣れた住宅街へと移動していた。鞄を握った背広姿も変わっていない。繁華街のけたたましさも消えており、時折夜行性のポケモンの鳴き声が聞こえるのみだ。

ひろし「ここは……カスカベ地方か?」
78 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:03:41.36 ID:31e3ztue0
ひろしは鞄を手に、懐かしいアクションタウンの住宅街を歩き出すと、すぐ近くに懐かしささえ感じる、赤い色の屋根と白い壁の一軒家がひろしの前に現れた。
表札には、ひろし以下、家族の名前が書かれている。

ひろし「……!」

1階の家の窓には明かりがついている。中で聴き慣れた楽しげな声が聞こえてくる。ひろしは無視して通り過ぎようとした。
だけど足は、自然と玄関へと向けていた。チャイムを押すと、すぐに玄関に明かりがついて、足音が聞こえる。
そして、鍵が開く音がすると、ドアが開かれた。

みさえ「おかえりなさい、あなた」

ひろし「みさえ……」
79 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:04:26.76 ID:31e3ztue0
みさえ「どうしたの? そんなところでぼーっとつっ立っちゃって。早く入りなさいよ」

ひろし「あ、あぁ」

みさえに促されるまま、家の中へ入るひろし。

ひろし(嘘だ。これは幻だ。俺たちの家は今、アローラのメレメレ島に……それももう燃えちまってるはずだ)

ひまわり「た!」

ひろし「ひまわり……」

ひろしのスーツを引っ張って、抱っこするようせがんでいる。ひろしはひまわりを優しく抱きかかえると、確かにひまわりに触れているような感触がした。

ひまわり「きゃきゃ〜い♪」

みさえ「あなた、晩ご飯の準備できてるわよ。早く洗濯機に入れて、みんなでご飯にしましょ」

ひろし「みんなで……?」

みさえ「ところでしんのすけー! パパにおかえり言ったー?」

ひろし「……しんのすけ?!」

すると家の奥から、まだあれから半日と少し過ぎただけなのに、もう長いあいだ聞いていない気さえする声が聞こえてきた。

「あとでねー」

ひろし「――!」
80 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:05:17.02 ID:31e3ztue0
みさえ「今おかえり言いなさい! ひょっとしたら、おみやげがあるかも……」

「えっ? ホントホント!?」

ドタドタドタと聞こえてくる足音、そして廊下にあらわれたのは、

しんのすけ「とーちゃん! おみやげあるってホント?」

ひろし「しんのすけ!」

ひまわりとカバンを下ろすと、なりふり構わずしんのすけに駆け寄って、両肩を掴んだ。

ひろし「大丈夫か? 怪我は? ルザミーネとビーストになにかされなかったか?」

しんのすけ「ルミザーネ? ビースト? なにそれ?」キョトン

ひろし「え……?」

みさえ「やだ、あなたったら。いきなりごっこ遊びしようとしても、しんのすけだってびっくりしちゃうわよ」

しんのすけ「おおっ! アクション仮面LMS! メガルカリオとセットだ! とーちゃんありがとー!」

みさえ「こらっ! パパのカバン勝手に開けちゃダメでしょ!」

しんのすけ「ワッハハハハ! アクション仮面&ルカリオ参上! とおっ!」ドタドタドタ
81 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:06:13.30 ID:31e3ztue0
みさえ「……ったくもう、高かったでしょ?」

ひろし「あ、あぁ……」

みさえ「さ、あなた。服、洗濯機に入れてきて。その間にご飯並べちゃうから」

ひろし「……」

ひろしは言われるがまま、着ていた背広とワイシャツを洗濯機に入れて普段着に着替えると、居間へと向かった。
居間の真ん中にあるテーブルには、みさえの作った肉じゃがや野菜炒めといったオカズ、ひろしの座る位置にはビールと枝豆が置いてあった。

ひろし(そういえば、最近こうやって家族とテーブルを囲んで、飯食ってなかった気がするなぁ)

ひろしがいつも晩御飯を食べるときに座っている位置に腰を下ろすと、しんのすけが顔を紅潮させながら近寄ってきた。

しんのすけ「とーちゃん、お礼に肩揉んだげる」

ひろし「おっ、いいのか?」

しんのすけ「うん、アクション仮面買ってくれたお礼」

ひろし「じゃあ頼むよ」

しんのすけ「うん……」
82 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:06:51.67 ID:31e3ztue0
モミモミ

ひろし「おおっ、こりゃいい……ってどこ揉んでるんだ!」

しんのすけ「男の人はここ揉むと気持ちいいってとーちゃんの本読んで……」

ひろし「ば、バカっ! そんな本お前が読むな!」

げ    ん

こ    つ

しんのすけ&ひろし「」

みさえ「パパの本勝手に見ちゃダメでしょ! あなたもしんのすけの手が届くようなところにふしだらな本を置かないで!」

ひろし「は、はい……」ピクピクッ

ひろし(……この痛みも、幻なのか?)
83 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:07:52.45 ID:31e3ztue0
みさえのげんこつを受けながらも、晩御飯を囲むひろしたち。みさえは今日も家事が忙しかったことと、しんのすけが化粧品で落書きしたことを話していく。

みさえ「まったく、どうしていつもママの化粧品にいたずらするの?」

しんのすけ「だって面白いんだもーん」

ひろし「ダメじゃないか、勝手にかーちゃんのものをいたずらに使っちゃ」

ひまわり「たーい」

何気なく続いていく、家族たちの会話。

ひろし(そうだ……俺は……ここで)

ひろし(これで良いんだ……家族がみんな揃って……これで……)
84 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:08:43.09 ID:31e3ztue0
今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。

じゃ、そゆことで〜
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 21:09:31.59 ID:pHeRlmR6O
気になるとこで区切りますなぁ…おつ
86 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:11:22.20 ID:31e3ztue0
【おまけ】

〜もしもしんのすけがマツリカと出会ったら〜

しんのすけ「みーてみたいーなーチラ見するチラーミィー♪」

マツリカ「おー、ナイスモチーフ!」

しんのすけ「ほほー?」

マツリカ「絵に描くとしたら、ポニの小さな旅人、ですねー!」

しんのすけ「おねいさん、誰?」

マツリカ「あーあたし、マツリカ。キャプテンやってます!」

しんのすけ「それはそれは、ご苦労さんですなぁ。その顔の刺青を見る限りカタギの人ではありませんな」

マツリカ「刺青じゃないですよ。ただのペイントですよー」

しんのすけ「てゆうか、キャプテンなら試練とかやるの?」

マツリカ「あー……今は絵を描くため、フラフラしててあたしの試練はないんだよね……」

しんのすけ「ほうほう、ニートですな」

マツリカ「うわぁーっ! マツリカ小さな子供にグサリと刺さるようなこと言われたー!」
87 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:12:29.25 ID:31e3ztue0
しんのすけ「あはあはあは、面白いおねいさんだね」

マツリカ「君はしんのすけくん、ですよねー? イリマくんから聞いてますよー。カスカベ地方から来たんですよね?」

マツリカ「アローラってとっても開放的でワンダーですよね! 特にポニの大峡谷って一層そう思うのですよね」

しんのすけ「おねいさんはとってもヘンダーな人だけどね」

マツリカ「うまいこと言うねーキミ」

マツリカ「あ、そうでしたそうでした! お近づきの印に、フェアリーZ、あげちゃいますね!」

しんのすけは フェアリーZを 手に入れた!

しんのすけ「え? 貰っちゃっていいの? なんかあっさりー」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 21:12:50.80 ID:0QhIDrqT0
おつ

大人帝国的な精神攻撃だな
89 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/13(火) 21:13:34.11 ID:31e3ztue0
マツリカ「フェアリーのZワザは、こうしてこうすればいいですからねー」

バッ! バッ! キューン ピカー!

しんのすけ「ほうほう、こうすればいいのですな」

バッ! バッ! プリプリ ピカー!

マツリカ「……!」ピクッ

しんのすけ「……おねいさん?」

マツリカ「おおっ、これは最高にナイスなモチーフ! 絵に描くとしたらポニのダブルマウンテンってところですね! 観察させてもらいますねー」カキカキサラサラ

しんのすけ「い、いやああああん! オラのおしり描かないでえっちい!! けだもの〜!!」ダッ!

マツリカ「わっ、ちょっとストップ! そのお尻のラインだけでもスケッチさせてよー!」ダダダ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 21:23:32.57 ID:hGEiMga00

ハプゥの出会ったカミツルギはおまたのおじさんの生まれ変わりかな
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/13(火) 21:44:23.98 ID:2Q2pESf60
>>90
畑でぼんやり青空を見上げていたら、もしかしたら…。
92 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:00:42.76 ID:Y7xDIbbj0
???「騒がしいと思って来てみりゃ、まさかお前がいるとはよ」

しんのすけ&フェローチェ&ロトム図鑑「!」

しんのすけたちが一斉に声のした方向へ振り返ると、奇妙な形の木の枝に、グズマが座っていた。

グズマ「なんにも恐れない、むしろ恐れさせてなんぼのスカル団ボス、いわゆるグズマさまだがよ……言わせてもらうぜ、おまえらバカだな」

しんのすけ「くさやのおじさん、そこにお引越ししたの? 家賃いくら?」

グズマ「グズマだと言ってるだろうが。それに、引っ越したわけじゃねぇ」

グズマは木の枝から降りると、しんのすけたちに心底呆れるような表情で近づいてきた。

フェローチェ『しん様と同じ人間……。お知り合いですの?』

しんのすけ「スケスケおパンツ団のボスのくさやっていうおじさん」

ロトム図鑑「下着ドロ集団のボスだ」

グズマ「また何ぶつくさしゃべってやがる。そこにいるビーストとでも仲良くなったつもりかよ」

しんのすけ「まーね、あいちゃんに似てたもんですから」
93 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:01:49.91 ID:Y7xDIbbj0
グズマ「一体全体どんな手段を使ったのかさっぱり想像つかねえが、こんなところに来やがって……。つーか、なんで下半身丸出しなんだ」

しんのすけ「オラたち、妖怪メノクラゲオババに連れてこられちゃったの。で、あいちゃんに助けてもらいながら、元の世界に帰る道を探してるところー」

グズマ「妖怪メノクラゲオババ? お前……代表に連れてこられたのか?」

しんのすけ「だからそうだって言ってるじゃん」

グズマ「よく生きていられたな。ああ……あの人はもうヤバい、ヤバすぎる!」

グズマ「ウルトラビーストにすっかり夢中……もう誰の言葉も想いも届かねえ!!」

グズマ「俺もあいつを捕まえようとしたんだよ。けど、あいつにとりつかれてよ……」

グズマは宙に浮かんでいるウツロイドの1匹を指さした。

グズマ「するとよお! 体も! 心も! 勝手に目覚めてしまってよ!」

グズマ「自分が自分じゃなくなるようで、怖くなっちまうんだよお……!!」ガタガタ
94 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:02:38.03 ID:Y7xDIbbj0
グズマは目を見開きながら、息を乱し、髪を掻き、身体を震わせた。
自分がウツロイドに襲われて攻撃を受けたときの瞬間、訪れた力強くてどす黒い感覚と、ウツロイドと合体してマザービーストと化し、狂ったように笑いながらビーストに囲まれるルザミーネの姿に、おびえているのだ。

しんのすけ「……で?」

グズマ「は?」

しんのすけ「くさやのおじさんはこれからどうすんの?」

グズマ「どうするって……なにもしようがねえだろうが。こんなどんよりとした……よくわからん、ビーストだけの世界で……なにが出来るって言うんだ」

しんのすけ「じゃあ、オラたちと一緒に元の世界に帰ろうよ。どうせ暇なら」

グズマ「……本当にバカだな、お前」

しんのすけ「いやぁ、照れますなぁ。おバカなんて、しょっちゅう言われてますから」

グズマ「褒めちゃいねえよ」

グズマ「本気でこの世界から帰れると思ってんのか? あんなバケモンみてぇなビーストに、狂っちまった代表! この世界にはそれしかねぇんだ!」

しんのすけ「でもオラ、まだ島巡り終わってないし、かーちゃんもとーちゃんも、リーリエちゃんもみんなオラのこと待ってるだろうし」

グズマ「いいか、代表は既に、多くのビーストを手に入れて、アローラに穴を開ける力を得た! 今頃アローラはビーストで溢れかえって、地獄になっているだろうぜ……」

グズマ「そんな世界に帰ったところでなんになるってんだ。だったらこのまま、何もしねぇでじっとしてるほうがいい。行くも地獄、行かぬも地獄なら、わざわざ帰る意味なんてねぇよ。島巡りなんてする意味もねぇ」
95 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:03:26.11 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「んー困りましたなあ」

――……スカル団にいる奴らみんなそうなんだ。グズマのように、誰にも認められず、島巡りを脱落していった子たちばっかなんだよ
――スカル団のみんなは、人々に認められない辛さっていうものを分かっているのさ。特にグズマは痛いほどにね。だからみんな慕っているのさ。グズマが代表を慕っているように

しんのすけ「……!」

しんのすけ「でもおじさんも、おじさんのこと待ってる人がいるんじゃない?」

グズマ「俺を待ってる人だと? くだらねぇ……」

グズマ「俺にとっちゃ、代表が全てだったんだよ。だけど、代表がああなっちまった以上、もうどこにも行ったって意味ねぇだろ……」

しんのすけ「嘘つけ、スケスケおパンツ団の人たちがいるクセに」

グズマ「……!」

グズマ「……そいつらが、今更なんだって言うんだ。どうせ、まとめてビーストの餌食になっちまってるさ」

グズマ「いいか、この世界から絶対に出られねぇ。このグズマ様が言うんだから間違いねぇ! たとえ出られても、お前が島巡りしてきたアローラも、見知った人間ももういねえんだよ!」

しんのすけ「ぜぇったい出る! オラが無理でも、とーちゃんとかーちゃん、ひまにシロ、ハウくんにリーリエちゃん、ハカセにクジラくん、カザマくんにマサオくん、ネネちゃんボーちゃんがお迎えに来てくれるもん!」
96 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:04:21.00 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「おじさんも、スケスケおパンツ団の人とか、プルメリのおねいさんが迎えに来るもん!」

グズマ「ビーストにも勝てない連中が、こっちに来れるわけねえだろうが! それこそ、代表が招き入れない限りはな!」

しんのすけ「もー頭きた! おじさんのニートっぷり、もうママ知らないんだから! ずっと下着ドロでもしてなさいよ!」プンプン!

グズマ「ちょっと待て、誰がニートだ! それに下着ドロじゃねぇっつってんだろ!」

しんのすけ「さ、行こ! あいちゃん、ぶりぶりざえもん!」

テクテク

グズマ「……なんなんだ、あのじゃがいも小僧」
97 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:41:14.13 ID:Y7xDIbbj0
その頃――。
ひろしは彼岸の遺跡の中で、偽りの家族たちと供に晩ご飯を食べながら、テレビを眺めていた。

『……タワーにて、ミツル選手がなんと前人未到の100連勝を達成! 期待のホープである彼を止められるものはいないのか!』

みさえ「すごいものねぇ、ミツルくん。ホウエン出身の私からしてみたら誇りよ〜」

しんのすけ「そーいや、今日、マサオくんがね、風間くんとのポケモン勝負で負けて泣いちゃったの」

みさえ「あらまぁ、本当? でも風間くん、本当にポケモン強いからねー。将来はカスカベ地方のチャンピオンかしら?」

しんのすけ「ねぇねぇ、とーちゃんも昔トレーナーだつたんだよね?」

ひろし「ああ、とーちゃんが11歳の頃、シンオウ地方を旅してたんだ。じーちゃんちに行ったことあるだろ? あそこのすぐ近くがシンオウ地方なんだ。雪なんかいつも積もってるぞぉ」
98 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:42:23.27 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「シンオウ地方って言ったら、やっぱシロナおねいさんだよねー。あの金色に輝く髪、アバンティー感じる黒い衣装! 一度耳掃除されたいなぁ〜」

ひろし「それを言うならアダルティーな」

しんのすけ「じーちゃんちにいるあのおさるさん、元気にしてるかな? また行きたいなー」

ひまわり「たい!」

ひろし「しんのすけもひまも、ゴウカザルのことすごい気に入ってたもんなぁ。また会いに行こうな」

みさえ「またトレーナーになってチャンピオン目指してみたら?」

ひろし「よしてくれよぉ、こんな歳でジムなんて挑戦できる余裕なんてないって」

しんのすけ「かーちゃん、オラもポケモン欲しいー! とーちゃんや風間くんみたいにトレーナーなりたい」

ひろし(ポケモン……トレーナー)ピクリ
99 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:43:24.78 ID:Y7xDIbbj0
――オラだって、オラのお友達とゼンリョクでハプウちゃんに勝つ!
――マサオくんっ! ファイヤーーーッ!!

ひろし「……」

みさえ「だーめ。アンタ、シロの世話だってロクにできてないんだから」

しんのすけ「え〜んお願いいたしますお母様〜」

みさえ「アンタが10歳になったらね」

しんのすけ「……妖怪ケチケチオババ」ボソッ

みさえ「なんですってぇ!」

ひろし「……」スッ

みさえ「あなた?」

しんのすけ「どうしたの? とーちゃん? いぼ痔でも悪化した?」

ひろし「ごめん……しんのすけ、みさえ、ひま、シロ。俺がいるべき場所は、ここじゃないみたいだ」
100 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:44:40.32 ID:Y7xDIbbj0
ひろしはみさえの幻たちに笑いかけると、困惑したようにみさえとしんのすけがひろしの顔を覗く。

みさえ「どういうこと?」

ひろし「俺は、やらなくちゃいけないことがあるんだ。だから、ここに留まってるわけにはいかないんだ」

みさえ「やらなくちゃいけないことって、なに?」

ひろし「いなくなっちまった家族を、取り戻すことだ」

みさえ「 私たちはここにいるじゃない。あなたは何が不満なの?」

しんのすけ「とーちゃん。ひょっとして、オラたちのこと、捨てちゃうの?」

ひまわり「えっ……えっ……!」

みさえとしんのすけの言葉が、ひろしの胸に深々と突き刺さる。ひまわりと外にいるシロも、どこか泣きそうな顔でこっちを見てくる。

みさえ「おかしなこと言わないで。私たちはここにいるじゃない。それとも、別の家族がいるって言うの?」

しんのすけ「おおっ、とーちゃん不倫!」

みさえ「私たち家族とずっと一緒にいる――それが、あなたにとっての望みでしょ? それを捨てちゃうつもり?」
101 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:45:28.96 ID:Y7xDIbbj0
ひろしは少し苦笑いを浮かべた。やっぱり、幻だ。
こんなごく当然のことを、みさえはいちいち口になんて出したりしない。こんなふうに責め立てたりせず、真剣にひろしの言葉を聞いてくれるはずだ。
これは、カプ・レヒレからの問いかけなのだ。

ひろし「ああ、確かに俺が望んでるものさ。だけど、こんな形で手に入れるものじゃない」

ひろし「みさえとひまわり、シロはエーテルパラダイスで俺たちの帰りを待っている! そしてしんのすけは、ウルトラホールの先で俺たちの助けを待っているんだ!」

ひろし「俺は紛い物の幻想が欲しくてここに来たわけじゃない! 俺は、俺たち家族がもう一度揃うためにかがやく石を求めてここに来たんだ!」

ひろし「そして、しんのすけをとりもどして、この幻を現実のものにしてみせる! これが俺の望みだ!」

みさえ「あなた……」

ひまわり「たい……」

しんのすけ「とーちゃん……」

しばらくの沈黙。しんのすけもみさえもひまわりもシロも、じっとひろしを見ている。不安な表情は消え去り、ひたむきな面持ちでひろしを見据えている。
102 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:47:51.53 ID:Y7xDIbbj0
みさえが笑みを浮かべながら、沈黙を破った。

みさえ「……あなたの覚悟と願い、『私』に伝わってきたわ」

しんのすけ「とーちゃんは家族思いなんだね」

しんのすけたちの言葉を聞いて、ひろしも釣られて表情が緩む。

ひろし「ああ、こうやって息子の姿で面向かって言われると、ちょっと照れるけどな」

しんのすけ「ほい、とーちゃん!」

しんのすけが一歩前へ出て、ほんのりと光を放つ、かがやく石を差し出した。

ひろし「これは……!」

みさえ「それで月の笛を直して、ルナアーラを呼びなさい。あなた達は『星の繭』と一緒にいるから、必ずルナアーラが現れてくれるはずよ」

ひろし「星の繭?」

しんのすけ「だいじょーぶ、すぐに分かりますからー」

みさえ「あなた、頑張って! 絶対にしんのすけを取り戻すのよ!」

しんのすけ「『オラ』、手伝ってあげられないけど、応援するからー!」

ひまわり「たい!」

シロ「アンっ!」
103 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:49:03.64 ID:Y7xDIbbj0
ひろし「……ありがとな、カプ・レヒレ!」

ひろしはしんのすけ達の幻に一礼をすると、かがやく石を握って踵を返した。気が付けば、霧は消え失せており、出口が目の前にあった。
そのまま彼岸の遺跡を出て行くと、既に結果を知っているのか満足気な表情のハプウとハウが出迎えた。

ハプウ「うまくいったようじゃな。カプ・レヒレも「久方ぶりに芯の通った人が来た」満足そうじゃった」

ハウ「やったねー! おじさんさすがだよー!」

ひろし「幻だけど、俺がなんのために戦おうとしているのか、改めて思い出すことができたよ。カプ・レヒレには感謝しなくっちゃな」

ハプウ「うむ!」ニッ

ハウ「よーし! これで後はウラウラ島のグラジオたちだけだねー! 早くエーテルパラダイスに戻ろー!」

ひろし「おう、早くみんなを安心させないとな!」
104 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:50:00.27 ID:Y7xDIbbj0
※修正

ひろし「……ありがとな、カプ・レヒレ!」

ひろしはしんのすけ達の幻に一礼をすると、かがやく石を握って踵を返した。気が付けば、霧は消え失せており、出口が目の前にあった。
そのまま彼岸の遺跡を出て行くと、既に結果を知っているのか満足気な表情のハプウとハウが出迎えた。

ハプウ「うまくいったようじゃな。カプ・レヒレも「久方ぶりに芯の通った人が来た」と満足そうじゃった」

ハウ「やったねー! おじさんさすがだよー!」

ひろし「幻だけど、俺がなんのために戦おうとしているのか、改めて思い出すことができたよ。カプ・レヒレには感謝しなくっちゃな」

ハプウ「うむ!」ニッ

ハウ「よーし! これで後はウラウラ島のグラジオたちだけだねー! 早くエーテルパラダイスに戻ろー!」

ひろし「おう、早くみんなを安心させないとな!」
105 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:51:09.13 ID:Y7xDIbbj0
エーテルパラダイス ルザミーネの屋敷前 広場

リーリエ「マサオさん! アクアテールです!」

ヨワシ「ギョオオォォッ!」ゴウッ!

群れた姿のマサオの巨大な尾ひれがシロデスナに叩きつけられ、水しぶきと砂が飛び散っていく。
しかし、シロデスナがマサオのアクアテールで砂の身体が固まったことを確認すると、アセロラも負けじとシロデスナに指示を送る。

アセロラ「シロデスナ! シャドーボール!」

シロデスナ「デッスナー!」ドンドンドンッ!

リーリエ「マサオさん! シロデスナさんにハイドロポンプです!」

ヨワシ「……!?」ピクッ

シロデスナの口から次々と影の弾丸が発射される。一方のマサオはリーリエの指示に一瞬動きを止めて、戸惑う様子を見せた。
106 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:52:09.23 ID:Y7xDIbbj0
その隙に、次々とシャドーボールがマサオに当たっていく。

ヨワシ(単)「ヨワーッ!?」ドンッ!

リーリエ「マサオさん!」

シャドーボールが直撃したマサオは単独の姿に戻り、そのまま吹き飛ばされて、壁に激突。戦闘不能になった。

アセロラ「またまたアセロラちゃんの勝ち!」ムフー

リーリエ「大丈夫ですか? マサオさん。今元気にしますからね」

ヨワシ「ヨワー……」

リーリエがバッグからかいふくのくすりを取り出して、アセロラのポケモンと戦って傷ついたカザマを元気にしていく。

アセロラ「またマサオくん、リーリエちゃんの指示無視しちゃったねー」

リーリエ「はい……どうしてなのか、まだわかりません」

アセロラ「でも不思議だよね。見た感じ、マサオくんも他のポケモンも別にリーリエちゃんのことを警戒しているっていう態度じゃないもん」

ヨワシ「ヨワ……」

リーリエ「……」

みさえ「みんなー晩ご飯作ったわよー! そろそろ休憩にしたら?」

リーリエ「あ、はい!」
107 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:54:31.47 ID:Y7xDIbbj0
リーリエたちは居住区の一室に戻ると、みさえがリーリエたちに晩ご飯のシチューとお手製のマラサダを振舞った。

みさえ「さ、どんどん食べて。たくさん作ったから」

リーリエ「わぁ……いただきます!」

アセロラ「うん、とってもおいしい!」モグモグ

みさえ「ごめんなさいね、あり合わせのものでしか作れなかったけれども」

リーリエ「そんなことないです」

みさえ「リーリエちゃん、カザマくんたちはどう? 言うこと、聞いてくれる?」

リーリエ「いいえ……その、やっぱりお願いを無視してしまうことがしばしば……」

みさえ「そうなの……やっぱり、人から預かったポケモンに言うことを聞かせるのって大変なのね」

アセロラ「うーん、どうかなぁ? 本当にリーリエちゃんの言うこと、聞いてないなら指示を無視するだけじゃすまないよ」
108 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:57:37.79 ID:Y7xDIbbj0
リーリエ「たとえば、どういうものでしょうか?」

アセロラ「そうだね、戦ってる最中に寝ちゃったり、なまけちゃったり、最悪自分を攻撃しちゃうこととかがしょっちゅう起きるんだよ」

みさえ「聞いたことあるわ。ポケモンはトレーナーの実力を見ていて、ジムから貰えるバッジの数で言うことを聞く度合いも変わってくるって」

リーリエ「そういうふうなこと、全然ないんですよね。カザマさんたちはあくまでお願いを聞かないだけで、怠けるようなことはしません」

リーリエは、テーブルのそばでポケマメを食べさせているカザマたちをみやった。カザマとボーちゃんは黙々と食べているが、マサオとネネはなにか妙なやりとりをしながらポケマメを食べている。

ジュナイパー&ミミッキュ「…………」

キテルグマ「クーーッ。クゥー!」

ヨワシ「ヨワァ……ヨワヨワシー」

アセロラ「……やっぱり、しんちゃんの戦い方って、普通のトレーナーから見てみると、とっても変わってるってアセロラ思うんだ」

みさえ「そうねぇ、ハプウちゃんと戦っている時も、ほとんど指示してなかったもの」

リーリエ「その戦い方に慣れすぎて……カザマさんたちは指示を受けて行動するということができないのでしょうか」

アセロラ「たぶんそれだね。もらったポケモンは扱いが大変なのは当たり前だけど、ここまで難しいというのはわりと珍しいよ!」

そこでリーリエはふと思った。ライチやハプウとの大大試練と、しんのすけの戦い様を何度も見守ってきた。
しんのすけは命令せずとも、息のあったコンビネーションを繰り出し、会話しているようにポケモンに話しかけていた。

リーリエ(まさか本当にしんちゃんはポケモンさんと……)
109 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 19:58:42.62 ID:Y7xDIbbj0
リーリエ「……でも必ず、しんちゃんのポケモンさんとは、心を通わせてみせます! しんちゃんを助けたいという気持ちは、わたしもポケモンさんとも一緒ですから!」

アセロラ「うん、その意気込みを忘れなきゃ、きっとポケモンも応えてくれるよ!」

アセロラ「それに、リーリエちゃんのあの戦い方、びっくりしちゃったよ。シロデスナはね、みずタイプの攻撃を受けると砂が固まって防御力が高まっちゃう『みずがため』という特性を持っているんだ! だから、みずタイプとは相性が悪いようで実は優位に立てるんだ!」

リーリエ「なるほど……でしたらカザマさんを出すべきでしたね」

みさえ「それにしても……かがやく石を取りに行ったきりなにも連絡はないけれど、みんな無事かしら?」

リーリエ「ここはまだビーストさんがいないだけ安全ですが……島にはビーストさんがたくさんいますから、みなさんのことがとっても心配です」

ククイ博士「心配してくれたのかい? うれしいぜ!」

リーリエ「きゃっ!」ビクッ

みさえ「博士! いつのまに帰ってきたんですか?」

ククイ博士「ええ、どうやら僕らが一番乗りだったようですね」

バーネット「リーリエ、元気にしてた?」

リーリエ「バーネットさん! お久しぶりです!」
110 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:02:33.10 ID:Y7xDIbbj0
バーネット「リーリエ、本当にイメチェンしたのね! 顔つきがとっても引き締まってるし、まるで別人みたい!」

リーリエ「はい! 進化したゼンリョクの姿、です。しんちゃんから預かったのですが……ポケモントレーナーにもなりました!」

みさえ「えーっと、どちら様で……?」

ククイ博士「紹介します。僕の奥さんで、アーカラ島の空間研究所の所長をしているバーネット博士です!

ククイ博士「バーネット、こちらはしんのすけのお母さんの野原みさえさん、そしてメレメレ島のキャプテンのアセロラ。彼女から月の笛の情報を提供してもらったんだ!」

バーネット「バーネットです、よろしくね。ククイから話は聞いています。私たち空間研究所も、事態の解決に協力していくつもりです」

みさえ「あ、どうも……」ペコリ
111 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:03:28.70 ID:Y7xDIbbj0
アセロラ「博士! かがやく石は貰えた?」

ククイ博士「ああ! カプ・テテフはてだすけしてくれたよ。それに、メレメレ島に行ったひろしさんとハウからも、カプ・コケコからかがやく石が貰えたって連絡が来たからね!」つ かがやく石

アセロラ「おー、後はウラウラ島とポニ島だね!」

ククイ博士「ひろしさんたちも、今はポニ島にいるんじゃないかな?」

リーリエ「ハプウさんなら、きっと協力してくれますよね!」

アセロラ「クチナシのおじさんも、きっとわかってくれるよ!」

ククイ博士「そうだね! 3人を信じて待とうよ」

みさえ「さ、博士もバーネットさんもどうぞ。晩ご飯の用意できますので」

ククイ博士「おっ! いいんですか?」

バーネット「では、お言葉に甘えさせていただきますね!」
112 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:05:17.77 ID:Y7xDIbbj0
ククイ博士「リーリエ、ポケモントレーナーになってみて気分はどうだい?」

リーリエ「はい! まだ、しんちゃんのポケモンさんとは上手く連携は取れていませんが……ポケモンさんと一緒に戦っていると、こんなに胸がドキドキするなんて思いませんでした!」

ククイ博士「そうだろ? 君が自分のポケモンを持つようになれば、もっとドキドキするような事が起きるぜ!」

バーネット「リーリエがトレーナーデビュー……なにか感慨深いね」

みさえ「あたしもポケモントレーナーになってみようかしら」

アセロラ「しんちゃんのお母さんはポケモントレーナーじゃないの?」

みさえ「うん、あなたたちくらいの年の頃は家のことを手伝っていたから」

バーネット「どこ出身なんですか?」

みさえ「ホウエン地方のフエンタウンってところです。その後はカントー地方に上京して、その後はカスカベ地方に住んでいました」

ククイ博士「ホウエン地方は暖かいですから、アローラの気候にもすぐ慣れたのでは?」

みさえ「ええ、わりと」
113 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:16:02.66 ID:Y7xDIbbj0
トントン
ウィーン

ビッケ「お食事中、失礼します」

リーリエ「ビッケさん。どうかなさったのですか?」

ビッケ「グラジオさまと、野原ひろしさん、ハウさんの船が戻りました」

ククイ博士「おっ、みんな戻ってきたのか!」

ハウ「戻ってきたよー!」ヒョコッ

ククイ博士「うおっ!」

リーリエ「ハウさん!」

ハウ「美味しそうなニオイに誘われてたらついたー」

グラジオ「博士は先に着いたようだな」

みさえ「みんな、石は貰えたの?」

ひろし「ああ、みんなカプから認めてもらえたぜ!」

ひろし達3人はそれぞれカプから貰ったかがやく石を、リーリエたちに見せた。

アセロラ「みんなカプから認められるなんてすごすぎ! グラジオくんもすっごい苦労したでしょ?」
114 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:20:39.38 ID:Y7xDIbbj0
ハウ「しまキングたちが手伝ってくれたおかげだよー」

グラジオ「そうだな……それに、彼女がいなければ、正直石が手に入ったかどうか分からなかったな」

アセロラ「彼女?」

グラジオが頷くと、「来い」と手で部屋の外へ誰かに向かって合図を送った。すると足音が近付いて、『彼女』が部屋に入ってきた。

プルメリ「……」

リーリエ「プルメリさん?!」

アセロラ「エー! なんでー!?」

みさえ「誰?」

ククイ博士「そうか、君がマーレインの言っていた『思わぬ協力者』か」

ハウ「おれもびっくりしたよー! スカル団の幹部が協力してくれるなんてー」

プルメリ「元、だよ。もうスカル団は解散したんだ」
115 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:21:46.62 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「今、アローラ全域に渡って元スカル団のしたっぱたちが救助活動を行っている……。オレもこの目で見たからな。だからこそ、カプ・ブルルは石をくれたんだ。スカル団が解散して、アローラのために行動していることが、あいつの心を動かしたらしい」

ひろし「にわかには信じられないけどな……」

プルメリ「グズマをビーストの世界から取り戻して、罪を償わせなきゃいけないからね。そのため、あたいもアンタたちと一緒に行動したいのさ。……わがままなのは承知の上だけどね」

リーリエ「プルメリさんも力を貸してくれるなんて頼もしいです! 一緒にグズマさんを助けに行きましょう!」

プルメリ「あぁ、そうだね」

プルメリ「その前に、ひろしとみさえ……だったね。まず、謝らせてくれないか?」

ひろし「え……?」
116 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:23:26.45 ID:Y7xDIbbj0
プルメリ「……あたいがスカル団にいた頃、したっぱたちがしんのすけにちょっかいだしては、返り討ちに遭ってね。その報復に何度もあいつにポケモン勝負をしかけて、倒そうとしていたんだ」

みさえ「……!」

プルメリ「それにウラウラ島では、そこにいるキャプテンの子供たちのヤングースを人質に取って、しんのすけに1人であたいらのところまで来るよう脅したんだよ」

ひろし「お前っ……」

リーリエ「でも、それはかあさまがほしぐもちゃんを狙っていたからで……」

プルメリ「それでもね、しんのすけを危ない目に合わせたことには違いないんだ。だから、アンタたちに今ここで追い出されても、文句を言える立場じゃないんだよ」

アセロラ「……」

プルメリ「だから、そのワビになれるかどうかわからないけど……あんたたちの息子さんを助ける手伝いをさせてくれないか?」

ひろし「……」

みさえ「……」
117 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:25:19.62 ID:Y7xDIbbj0
ひろし「はっきり言って、今の話を聞いて本当のことなら俺たちはお前を許さない。うちのしんのすけをアンタたちのせいで危ない目に遭わせたんだからな」

プルメリ「……」

ひろし「だから、お前もしんのすけを助けるのに協力するんだ。しんのすけを助けられたら、そんときはアンタがしんのすけにしたことを許してやる」

みさえ「そうよね、あなたは元スカル団でも幹部だったんでしょ。私たちの力になってくれるのなら、それで充分」

ひまわり「たい!」

プルメリ「……!」

アセロラ「そうだね、ヤンちゃんのぶんもちゃんと償ってもらわないと!」

ひろし「みんなも、それで文句はないよな?」

リーリエ「はい!」

ハウ「異議なしー!」

アセロラ「異議なーし!」

ククイ博士「ハウとアセロラと同じ意見だぜ! 僕は君を喜んで迎え入れるよ!」

バーネット「スカル団も手を貸してくれるなんて、びっくりだよ。でも私たちにとって心強いよ」

グラジオ「……そうだな。用心棒をしていたオレが言えた身分ではないが」

118 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:26:52.47 ID:Y7xDIbbj0
プルメリ「みんな……すまないね。礼を言うよ。……あたいらは、カプやアローラの人たちに赦される時が来るもんかね」

ククイ博士「赦されるさ。君たちはアローラを守り、自分たちの罪を償おうとがむしゃらに努力しているんだろ? いつかカプもわかってくれるよ」

プルメリ「そう言ってもらえると、あたいらも救われるんだけどねえ」

みさえ「さ、みんな上がって! 疲れたでしょ? 晩ご飯用意できてるわ」

ひろし「おっ、サンキュー!」

プルメリ「あたいもいいのかい?」

みさえ「いいのいいの。プルメリ……ちゃんだっけ? ずっとビーストと戦ってお腹すいてるでしょ?」

ハウ「わーい! おばさんおれ大盛りねー!」

グラジオ「フッ……気が付くと賑やかになったもんだな」

ククイ博士「というか、部屋に入りきらないんじゃないのか?」
119 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:28:34.52 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「ビッケ、石はここに4つ揃った。月の笛の解析状況は?」

ビッケ「はい! アセロラさんの協力もあって、内部構造及び材質の分析が終わりました」

グラジオ「どのくらいの時間を要せば修復できる?」

ビッケ「おそらくですが……財団が総力を上げて取り掛かれば2日――いえ、1日のお時間をいただければ、修復が終わるかと」

グラジオ「なら……頼む」

リーリエ「ビッケさん……よろしくお願いします!」

ビッケ「お任せ下さい!」
120 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:31:35.33 ID:Y7xDIbbj0
エーテルパラダイス 財団職員専用食堂

人数が多くなってしまったことで、居住区から食堂へ移動すると、全員で改めて食事を再開した。さすがに大人数の食事は出来ていないのでバーネットとアセロラも加わって追加の分を作り、それぞれ晩御飯を愉しんだ。

アセロラ「はーいひまちゃーん、あーん」

ひまわり「あーん」ムシャムシャ

バーネット「ふふっ、子供がいるっていうのも、いいかもね」ナデナデ

みさえ「博士はまだお子さんは……?」

ククイ博士「まだいないですね。僕らもこうして会う時間が少ないんですよ」

バーネット「でもそろそろ、夫婦らしく同居するっていうのも悪くないんじゃない?」

ククイ博士「そうだね、ハニー。研究所も潰れてしまったから、これを機に新居を建てるというのも、悪くないかもね」

プルメリ「グラジオ、そういえばあれを渡すの、忘れてないかい?」

グラジオ「ああ、オマエらに渡しておくものがあったな。今アローラにいるウルトラビーストのデータだ。マーレインが作ったそうだ」

アセロラ「マーレインくん、やるじゃん! こんなに早くビーストのタイプも分析しちゃうなんて!」
121 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:32:56.76 ID:Y7xDIbbj0
ハウ「あれー? でもこの『BLASTER』っていうの、たぶんくさ・はがねじゃないと思うよー」

グラジオ「ほう……?」

ハウ「おれとおじさんがメレメレに戻った時にこのビーストと出会って戦ったんだけどー、その時カプ・コケコが助けてくれたんだー。その時放ったかみなりが、抜群に効いていたんだよー。くさタイプだったら、たぶんあの時倒れてないと思うんだー」

ククイ博士「となると、このビーストのタイプはひこう、みずタイプのどれかが入っているってことだね。見た目からして、ひこうタイプなのは間違いないだろう」

ひろし「はがね・ひこうか……。じめんが効かないのはやっかいだな」

ククイ博士「よーし、このミスをさっそくマーレインに送って修正してもらうとするかな。ハウ、お手柄だよ」

ハウ「じゃーご褒美にグラジオの残したマラサダ貰っていいー?」

グラジオ「どうしてオレなんだ……!」

リーリエ「……ふふっ」

リーリエ(みなさんとこうして食事して……本当に明るくて、楽しいです)

そんな楽しげなやり取りをリーリエは目を細くして眺めていると、ふとしんのすけの事を思い出した。
……ここにいるべきあの少年は、いないのだ。

リーリエ(しんちゃん……お腹、すいてないかな。かあさまに、ひどい目に合わされていなければ、いいのですが)チクン
122 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:35:43.86 ID:Y7xDIbbj0
リーリエ「……みなさんは、しんちゃんと出会っているんですよね」

ハウ「んー? それはリーリエも一緒じゃないのー? ここにいる人たちみんなリーリエと会ってるよー?」

リーリエ「でも、もしわたし一人だけだと、こんなに出会えたというのはきっと無かったです。こうして、みなさんと一緒に食事ができることも有り得なかったと思います」

グラジオ「ああ……。元スカル団の幹部にポケモン博士、キャプテン、しまキングの孫、財団の職員、そしてオレら……ごった煮もいいところだ」

ハウ「みんな、しんのすけが引き合わせてくれたんだねー」

リーリエ「だから……しんちゃんも欠けちゃ、いけないですよね」

プルメリ「……リーリエ」
123 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:36:53.84 ID:Y7xDIbbj0
ククイ博士「だったら、取り戻せばいいだけさ! しんのすけを取り返して、またみんなでこうやって晩ご飯を食べようぜ!」

ひろし「そうだな。俺たちも、こっちに来てまだ家族と一緒に晩ご飯を食べることすら出来てないからな」

みさえ「そうね……」

バーネット「次はわたしも本格的に手伝おうかしら?」

アセロラ「アセロラも今度はゼンリョクで腕を振るうからね! みんなで晩御飯作るって約束、まだ果たしてないし」

ハウ「おれー、いっぱいマラサダ買ってきてーみんなに分けてあげたいー」

ククイ博士「と言いつつ、マラサダを独り占めしちゃうんじゃないか?」

ハウ「えー? やだなーそんなことしないよー」

\アッハッハッハッ!/

リーリエ(そうですね……奪われたのなら、取り戻せばいい。それだけです)

リーリエ(しんちゃん、必ず無事でいると信じています)

リーリエ(絶対にかあさまもあなたも、取り戻します。そのために、わたしもゼンリョクで頑張ります)

リーリエ(ビーストの世界から戻ってきたら、みんなでパーティーをしましょう。きっと、今よりもっと明るくて、楽しくて、盛り上がると思います)

リーリエ(待っててくださいね。しんちゃん)
124 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:38:15.02 ID:Y7xDIbbj0
エーテルパラダイス 2階 保護区テラス

賑やかな食事が終わり、リーリエたちは各々の割り当てられた部屋に戻って明日に備えて身体を休めていた。
グラジオはそんな中、テラスで月明かりに照らされた海面を眺めていた。
グラジオはマリエ庭園でのアクジキングとの死闘を思い出し、タイプ:ヌルの入ったモンスターボールを取り出して覗いた。

グラジオ「ヌル……すまないことをした。あの時、オレが驕ってさえいなければ、オマエを危険な目に合わせることもなかった」

ひろし「よう、グラジオくん」

グラジオ「……ひろしか?」

ひろし「こんなところで何してるんだ?」

グラジオ「ああ……ああいう雰囲気の中にいるのは初めてだからな。だから、こうして夜風に当たりながら、一人で頭を落ち着かせていた」

ひろし「そうか。俺達はまぁ、食後の散歩のようなものさ。ここに来れば、たくさんポケモンも見られてひまも喜ぶしな。それでたまたま君を見かけたんだ」

グラジオ「フッ……そうか」
125 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:39:17.47 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「……ひろし、みさえ」

ひろし「ん?」

グラジオ「……オレは、こっちの事情にアンタたちの息子を巻き込んでしまって、申し訳ないと思っている」

みさえ「ううん、あなたが謝ることじゃないわ」

ひろし「なーに、あいつがそう簡単にくたばったりしないさ」

グラジオ「……そうだな。あいつは強い。そこはオレも認める」

ひろし「なにせ、自慢の息子だからな」

みさえ「そうそう、将来は他の地方のチャンピオンを倒せるようなトレーナーなってもらわないと」

ひろし「そのためにも、あいつを助けに行かなくちゃな」

グラジオ「……お前たちもウルトラホールの中へ行くつもりなのか?」

みさえ「当たり前でしょ!」

グラジオ「よせ……。ポケモントレーナーではないお前たちが行って、生きて帰れるような場所じゃないぞ」

ひろし「忠告ありがとよ。でも、俺たちは家族だ。誰か一人が危ない目にあったら、みんなで助けに行くんだ。家族と一緒にいれば、世界の危機だろうが、なんだろうが乗り越えられる」

みさえ「あなたはまだ子供だから分からないけれど、子供のためなら、親はなんだって出来るものなのよ」

グラジオ「……」
126 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:40:37.84 ID:Y7xDIbbj0
グラジオ「まっ、そうだろうな。ひろしはここでリーリエを救出するとき、ためらわずオレたちについてきたからな」

グラジオ「……しんのすけが羨ましく思う。子供の為に命をかけてくれている親が居るとはな」

ひろし「父親はどうしたんだ?」

グラジオ「父は――ウルトラホールとウルトラビーストの存在を初めて発見した人なんだ。だが……父は、ウルトラホールの実験中に消えた。残されたのは、ウルトラビーストの資料と、弱ったコスモッグだけだ」

ひろし「まさか、ルザミーネがウルトラビーストに惹かれたのって――」

グラジオ「もしも、母がウルトラビーストへ向けた理由が、父への想いだとしたらオレとしては救われるがな。オレは、母がウルトラビーストを欲したあの行動がわからんでもない」

みさえ「だからって、子供をないがしろにする理由にはならないわ」

グラジオ「……だが、それでもオレたちにとって、母なんだ」

みさえ「……」

ひろし「なあ、グラジオくん」

グラジオ「なんだ?」

リーリエ(にいさまとしんちゃんのご両親方……なにを話しているのでしょうか?)
127 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:41:32.21 ID:Y7xDIbbj0
たまたまほしぐもちゃんを連れて散歩に来たリーリエがエレベーターを上がると、話し声が聞こえて、彼らの会話に耳を立てる。

ひろし「子供は親を見て成長するもんだけど、親も子供を見て成長していくんだよ。俺もみさえも、しんのすけと一緒にいてたくさん教わったものがあるんだ」

グラジオ「教わった……?」

みさえ「そうね。こっちに来て、あの子が島巡りして――しんのすけがハプウちゃんの大試練をやり遂げた姿を見て、私も教えられたわ。あの子が自分の足であそこまで来たのね、って」

ひろし「だからさ、グラジオ君もリーリエちゃんも、自分たちがあいつから離れて学んだこと、考えたことをルザミーネにガツンと教えてやるんだ」

リーリエ「!」

グラジオ「……」

グラジオ「フッ……そうだな。このまま何も言わず、終わるわけにはいかない。必ず取り戻すぞ。全てを」

ひろし「ああ!」

みさえ「ええ!」

ひまわり「たい!」

シロ「アンッ!」

リーリエ(……!)コクン

ひろし「お前のためにみんながゼンリョクを出しているんだ――だから無事でいろよ、しんのすけ!」
128 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:46:20.20 ID:Y7xDIbbj0
――その頃、しんのすけは……。

しんのすけ「うー、おまたが冷えるとおしっこもすぐ出ちゃいますなぁ」ジョボボボ

しんのすけ「でも、なんかZリングはあったかいのよねぇ」

さっきから熱を帯びているZリングを眺めると、うっすらと赤く煌めかせていた。こんなこと、今までなかったのに。

しんのすけ「まったく、くさやのおじさんには頭にきますな!」

ロトム図鑑「あいつが言い訳並べてでも帰りたくないってことは、ここにはたくさんのスケスケおパンツが……?」

フェローチェ『あの方も、しん様と同じ世界の方なのですね』

しんのすけ「まーね」

しんのすけ「あープンプン怒ってたら腹減っちゃったぁ。とーちゃんからもらったポケマメでも食べるか」

しんのすけ「あいちゃんもたべる?」ポリポリ

フェローチェ『まぁ、しん様が下さる食べものは、なんでも口に入れられますわん!』スッ

フェローチェ『しん様は、向こうの世界でどんなことをしていらしているのですか?』モグモグ
129 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:53:32.31 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「オラたち、島巡りしてるの」

フェローチェ『島巡り?』

ロトム図鑑「オレ達、自分探しの旅をしているのさ」

しんのすけ「ついでにきれいなおねいさんとかも見つかるといいかなーって」

フェローチェ『旅、ですか。それは素晴らしいですわ。先ほどのグズマ……という方はしん様のお仲間ですか?』

しんのすけ「ううん、くさやのおじさんはスケスケおパンツ団っていう、ポケモンとスケスケおパンツを盗るあくどい集団のボスなんだゾ」

フェローチェ『ということは、しん様たちの敵……ということですわね』

ロトム図鑑「だが様子がおかしかったな。心なしか、大人しくなったような気もするぞ」

しんのすけ「どーせ盗んだスケスケおパンツがおばさんのものだったんでしょ」

フェローチェ『しん様は、島巡りをして、どうなさるのですか?』

しんのすけ「オラー? オラはね、島巡りチャンピオンになって、おねいさんたちにモテモテになるのが夢なの。チャンピオンになったら、ゆーめーになるらしいですから」

フェローチェ『島巡りチャンピオンですか……あの、もしよろしければですけど』

しんのすけ「お?」

フェローチェ『あいも、旅の仲間に加えさせてもらえないでしょうか?』テレテレ
130 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 20:58:16.17 ID:Y7xDIbbj0
しんのすけ「なんで?」

フェローチェ『もちろん、しん様があいの命を救ってくださったからですわ! それにあいが住んでいた世界はもう飽きてしまいましたし、こっちの世界の人間やポケモンという生き物の暮らしをキチンと見てみたいからですわん』

しんのすけ「そーいえば、あいちゃんってなんで倒れてたの?」

フェローチェ『何度かこの世界に「穴」が開かれたことはお話しましたね。その穴を、あいは好奇心でくぐり抜けて、何度かアローラ地方を訪れたことがありますの』

フェローチェ『ですが……あいのことが珍しいのでしょうか。何度か、真っ白な人間たちが、あいを追いかけてきて――それで、応戦して疲れ果てていたら、しん様が助けてくださつたのですわ』

しんのすけ「ふーん」

ロトム図鑑「しんのすけ! 仲間に加えようぜ! こいつを加えれば戦力もアップするだろ?」

ロトム図鑑(ウルトラビーストを持ち帰れば、世界初のウルトラビーストを登録した図鑑として名を馳せるからな!)

しんのすけ「うーん……ま、いいけど。マサオくんとの約束もあるし」

フェローチェ『ありがとうございます、しん様!』

ロトム図鑑「よっしゃあ! ウルトラビーストゲットだぜ! そうと決まれば、さっさとこんな世界を出るぞ!」

――ウフフ、そうは行きません

全員「!?」
131 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:01:25.05 ID:Y7xDIbbj0
声が聞こえたと同時に、しんのすけたちに向かって電気が走ってきた!

ロトム図鑑「危ない! 避けろ!」

しんのすけとあいちゃんはすかさず回避するが、逃げ遅れたぶりぶりざえもんが電撃をモロに喰らいながら、岩に叩きつけられる!

ビリビリビリビリッ!!!

ロトム図鑑「ブヒィィィィ!!」ビリビリッ!

しんのすけ「ぶりぶりざえもん!」

ロトム図鑑「し……しんのす……」バチッ! バチチチッ!

ロトム図鑑「」バチッ! バチッ!

しんのすけ「ぶりぶりざえもんっ!」

しんのすけはロトム図鑑を拾い上げて揺さぶるも、ぶりぶりざえもんの目は閉じられており、画面になにも表示されていない。

ルザミーネ「ウフフ! やっと見つけた……。探しましたよ。しんのすけ君!」

しんのすけ&フェローチェ「!」

顔を上げると、しんのすけたちの前にウツロイドやデンジュモク、マッシブーンといったウルトラビーストと、それを率いるようにルザミーネが笑みを浮かべながら浮かんでいた。
132 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:02:34.19 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネ「ふうん、そこのフェローチェ……あなたがしんのすけ君を助けたのね。なぜその子を助けたのかわかりませんが、わたくしの愛を受けないのなら、ビーストであろうと敵です」

しんのすけ「妖怪メノクラゲオババ!」

ルザミーネ「しんのすけ君……その減らず口もいい加減閉ざすよう、教育してあげるわ」

ルザミーネ「さぁ愛しい子供達、この子を、新しい我が子として迎え入れます。しんのすけ君を捕まえなさい!」

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」

デンジュモク「デンデンジュッ!」

マッシブーン「ブーン!」ハルクホーガン!

フェローチェ『しん様、下がってくださいませ!』フッ!

あいが飛び出すと、マッシブーンが拳を振り上げるよりも先に、顔面を蹴り飛ばす!

マッシブーン「ブンッ?!」ドカッ!

ウツロイド「じぇるるっぷ!」バシャッ!

ウツロイドが毒を飛ばして、あいに直撃するが、姿が消えた。あいは空中にとびあがり、ウツロイドを踏みつけるように頭部へ一撃を入れた!

ウツロイド「じぇ、じぇるる……!」
133 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:03:23.75 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネ「あのフェローチェ……目障りね。デンジュモク、フェローチェにさいみんじゅつよ!」

デンジュモク「デンデンッ!」ギィーッ

フェローチェ『うっ……!』クラッ

デンジュモクは両手足と尻尾を地面にくっつけて木のような形状になると、頭部の光をチカチカと点滅させて奇妙な音を立て始めた。光と音を聞いた瞬間、あいの意識が遠くなり始める。しかし――。

しんのすけ「ぶりぶりざえもんの仇! ケツだけアターック!」ドカッ!

デンジュモク「デン!?」

フェローチェ『しん様!』

かろうじて意識を留めたあいは、デンジュモクへ向けて一直線に飛び出し、とびひざげりを放ち、デンジュモクに命中。そのまま倒れた!

フェローチェ『しん様、また助けていただき、ありがとうございます!』

しんのすけ「それほどでも」

ルザミーネ「しんのすけ君……!」
134 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:07:09.86 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネは怒りに任せて一斉に触手を振り下ろすと、衝撃波が走って地面を抉っていく!

ブンッ
ガガガガッ!

しんのすけ&あい「!」ピョンッ!

ルザミーネ「行きなさい! ウツロイドたち!」

ウツロイド「じぇるるっぷ……!」キィィン

ドンドンドンッ!!

ルザミーネの命令を受けたウツロイドたちが、次々と眩く光る石を出現させて、そこから光線を放っていく!
しんのすけとあいはウツロイドたちのパワージェムをかわし続けていく。その真っ只中を、ルザミーネがあい目掛けて突っこんできた!

ルザミーネ「消え失せなさいっ!」グワッ!

フェローチェ「!」

触手をあいに向けて振り下ろす瞬間、しんのすけが飛び出して、あいを押しのけた。

しんのすけ「あいちゃん危ない!」ドンッ!

フェローチェ『しん様!』
135 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:08:04.34 ID:Y7xDIbbj0
シュルルルルッ!

しんのすけ「おわっ!?」

ルザミーネ「うふふっ、また捕まえた!」

しんのすけ「また捕まっちゃったあ!!」グググッ

フェローチェ『そんな……しん様! あいを庇って……!』

ルザミーネ「……わたくしの愛を拒絶するモノは、例えビーストであっても許しませんよ。徹底的に痛めつけなさい!」

ウツロイド「じぇるるっぷ!」バッ!

フェローチェが動き出そうとする直前、ウツロイドたちがパワージェムをフェローチェに向けて一斉放火した!

ドンドンドンッ!

フェローチェ『あああっ!』

しんのすけ「あいちゃん!」
136 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:10:00.78 ID:Y7xDIbbj0
ルザミーネ「さあ、しんのすけくん。わたくしと同じようにウツロイドと混じり合いなさい。……そして供に生きましょう? この美しい愛の世界で……」

しんのすけ「うわー! 40過ぎの妖怪メノクラゲオババとずっと暮らすとかやだやだやだ! 離せぇぇぇっ!!」ジタバタジタバタ

ルザミーネに拘束されているしんのすけの頭上に、もう1匹のウツロイドがしんのすけに覆い被さろうと、垂直に降りてくる。しんのすけは身の危険を感じ、暴れ逃げ出そうとするががっちりと固定されたかのように体を動かすことが出来なかった。

ウツロイド「じぇるるっぷ……」フヨォ

フェローチェ『ううっ……しん様……!!』

ルザミーネ「さあいらっしゃい……」ニヤァッ

しんのすけ「おわっ、おわぁぁぁぁっ!!」

クチュッ
グニャグニャ……






じ ぇ る る っ ぷ
137 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:10:39.35 ID:Y7xDIbbj0
今日はここまで。
次回の更新はいつものように明日の夜です。

じゃ、そゆことで〜
138 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:11:34.67 ID:Y7xDIbbj0
【おまけ】

アセロラ「わ〜かわいいー! しんちゃんの妹?」

ひまわり「た?」

みさえ「うん、ひまわりっていうの」

アセロラ「抱っこしてみてもいい?」

みさえ「いいわよー。気をつけてね」ハイ

アセロラ「アローラ、ひまちゃん! 古代のプリンセス、アセロラちゃんでーす!」

ひまわり「たぁ?」

みさえ「あ、そうだ。ちょっと下の階に行って荷物取りに行ってくるから、ちょっとひまの面倒見てくれる?」

アセロラ「はーい! じゃあひまちゃん、アセロラちゃんと遊んでお母さん待ってようねー!」

みさえ「じゃあお願いね」ガチャ
139 :超超ゴルーグロボ ◆g/SXBgh1y6 [saga]:2017/06/14(水) 21:12:11.13 ID:Y7xDIbbj0
バタン

みさえ「そういえば、なにか言い忘れていた気がするけど……」

アセロラ「ほーらひまわりちゃーん、ゴーストのZポーズだよー♪」

ひまわり「ほーほー」

みさえ「……ま、いいか。楽しそうだし」

〜数分後〜

ひまわり「きゃきゃきゃー♪」ダダダダ!

アセロラ「あー! その腕輪大事なものだから持ってっちゃダメ! アセロラちゃん、とってもアングリーになっちゃうよ!」ドタドタドタ!

みさえ「そうそう、光り物はひまの前に出しちゃダメって言おうとしたけど……手遅れだったわね」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 21:12:53.47 ID:3++qV3i50
原作以上にルザミーネが悪辣になってるな
モーン博士の話題が出たってことは…
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 21:14:30.55 ID:NEbhYuum0
今まで人の生き死に、別れを経験してきた5歳児のメンタルなら寄生に耐えられそうな気がする
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/14(水) 21:21:00.61 ID:NEbhYuum0
↑続き そもそも増幅させるべき憎しみのないしんのすけに通じなそう
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