【ミリマス】ザ・ミリオンオールスターズ! 〜銀河の果てまで届けちゃいM@S〜

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114 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:37:27.27 ID:vWXpS0ty0

「千早さん。編み込みってこれでいーの?」

「私のも確認お願い。千早ちゃん!」

「ふ、二人とも、私にばかり頼られても……!」

 また、伸び続ける髪を編んで紐状にするのは美希、恵美、千早、麗花の四人である。
 本来ならばこの作業も、可憐にかかればお茶のこさいさいであったのだが……。

「お客さん、この辺りも凝ってますね。……もみもみ」

「はぁっ、はぁっ! んっ! あぁっ!!」

 残念ながら、当の本人がそれどころではない。

 結局それから数十分、ようやく準備が整う頃には、
 可憐はとても戦いに参加できる状態では無くなっていた。

「あう……はぅん……」

 野戦用のシートの上、エレナと共に悩まし気に横たわる可憐を見下ろしながら瑞希が言う。

「篠宮さん……アナタの犠牲、無駄にはしません」

 さらには「勝ってくるぞと勇ましく〜」なんてワンコーラス。

 その隣では出来たばかりの紐の強度を確かめて、美希が「これならいけそうだね」と頷いた。
115 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:38:22.13 ID:vWXpS0ty0

「それじゃあ、手順の再確認を」

 千早がモグランゾーと戦う莉緒たちをチラリと一瞥し、美希たち実行隊に説明を開始する。

「狙うは二本の後ろ足。あの巨体です……とにかくバランスさえ崩せれば、
 そのまま倒れてくれるでしょう。それから手足を拘束して――」

「雪歩の掘った穴の中に、引っ張り込めばいいんだよね? リョーカイしたの、千早さん!」

「では、早速参りましょう。あまり待たせるのも悪いですから」

 頼りがいのあるサムズアップを残して出発した美希と瑞希の背中を見送りながら、
「二人とも格好いいなぁ〜」と麗花が楽しそうに呟いた。

「ハリウッド映画のワンシーンみたいだね。『そして彼女たちは、この国の英雄になったのだ』……なんてなんて♪」

「そ、それは……麗花さん?」

 麗花の何気ない一言を聞き、千早の頬が引きつった。思わず口から出そうになった、
『まさかとは思いますけどそのシーン、今生の別れになったりは?』なんて言葉を飲み込んで……。
116 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:40:09.35 ID:vWXpS0ty0
===

 準備は整い、遂に決着をつける時が来た。

 ビルの合間を我が物顔で進む地底怪獣モグランゾー。彼は今、地上の覇者であった。

 目の前にはちょこまかと動く三匹のうるさいハエがいたものの、
 その固い鎧のような体毛と、その下の鱗のような皮膚によって、何をされても「んで〜?」と首を傾げるほどに効果ない。

 ただ時折、右に行こうとしては左に向きを変えさせられ、
 左に行こうとすれば今度は右に向きを変えざるを得なくなるような……鬱陶しい攻撃が行われる程度だ。

 そしてその度にモグラ獣は鳴き声を上げた。

 次第にそれは大きくなり、この巨大生物が苛立ち始めたことを周囲のアイドルたちに教えてくれる。

「……そろそろですね〜」

 ヒーローネーム『バインドウィップ』、華麗なる鞭使いでもある朋花が辺りを見回して呟いた。

 ……ここまでの展開は順調である。

 モグランゾーの攻撃を避け、誘導しつつ例のプラン――『転んで滑ってすってんてん大作戦』に適した地形まで誘い込む。

 そこは地下施設の少ない地域。少なくともシェルターなどは存在しない、人的被害が出る恐れはない場所だ。

(ちなみに代わりに破壊されることになるであろう建設中の地下路線についてだが、
 こちらは作戦前の話し合いによって「知らなかった」とシラを切りとおすことでメンバーの意見が一致した)

 後は地上で待機する美希たち二人と連携して相手を地面に転がせば、
 雪歩のスコップで作る大穴に獲物を落とし込むだけである。
117 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:41:45.07 ID:vWXpS0ty0

 目標地点まで、ざっと残り数百メートル。怪獣の歩幅にしても数歩分。
 チャンスは一回、二度目のチャレンジは失敗率も跳ね上がり、なおかつ一層の危険が伴うだろう。

「今よっ!」

 莉緒の合図で美希たちが動いた。ビルの影から飛び出す二人の間には、四つの編み紐を束ねた物が。

 上体を動かさない独特の走法で近づくと、そのままモグランゾーの両足に紐を引っ掛けた!

「ふっ、ぬぅっ!!」

「はああぁぁっ!!」

 そして満身の力を込めて紐を引く! 

 さらには莉緒と雪歩がモグランゾーの背後から攻撃を仕掛け、怪獣の重心バランスを崩そうと試みる。

 足元は後ろへ、上半身は前へと動かされ、たまらずグラつくモグランゾー。

「そのまま! 行けますぅ!」雪歩の叫びに朋花が動く。

 ダメ押しとばかりに相手の腕に鞭を絡め、そのまま自分のいる方へ――
 モグランゾーから見て前方へとその巨大な体を引っ張った!

「……よし!」

 その瞬間を、千早は確かに見届けた。
 地底怪獣が一際大きな声を上げて前のめりにゆっくりと、地面の上に倒れ込む……。

 次いで激しい揺れが辺りを襲い、遅れてとてもくぐもった、重たい音が鳴り響く。
 大量の土煙を舞いあげて、遂に彼女たちはやり遂げたのだ!

「後はこのまま、手足を拘束さえすれば――」

 しかし、千早たちが喜べたのはここまでだ。
 メンバーの中で真っ先に違和感を覚えた麗花が「あ、あれれ?」と驚きの声を上げる。

「モグランゾー……元気だよ?」
118 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:42:54.23 ID:vWXpS0ty0
===

「これは……まさか!」

 モグランゾーの足元で、紐を手にしたままの瑞希が言う。

 とはいえ、考えてみれば当然だ。

 そもそも相手は何だった? 巨大な地底怪獣である前に、元は大きなモグラなのだ。

「そ、そんなのってアリ!?」

 目の前に広がる光景に、信じられないのは莉緒も同じ。二足歩行から四足へ。
 退化の過程を辿ると言うよりは、生き物本来の姿に戻ったと言うべきか。

 二足で歩いていた時よりも俊敏に、自分たちの前から逃げ出すように走り出したモグランゾーの後姿を、
 彼女は呆気に取られたように眺めている。その間にも敵は急旋回で向きを変え、地上にいる美希たち目がけて走り出す!

「わわっ!?」

「危ない!」

 間一髪! すんでのところで身をひるがえし、
 弾丸のような突進を交わす美希と瑞希。

 さらに雪歩も攻撃の為に近づくが……。

「あっ、て、天空橋さん!」

 雪歩が困惑した声を上げる。それもそのハズ、モグランゾーの背中には、
 鞭を絡めたままの朋花の姿があったのだ。
119 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:44:40.38 ID:vWXpS0ty0

「こ、これは困ったことになりました……!」

 今や彼女は猛る猪の背に跨っているのと同じである。

「モグラではなく豚さんなら、夢の一つが叶いましたのに〜」

「そっちぃっ!?」

 とはいえ、冷静さを欠いたりはしていないらしい。
 雪歩のツッコミを聖母の微笑みで受け流すと、彼女は鞭を操る腕に力を込める。

「先ほどまでならいざ知らず……。私のお仕置きは強烈ですよ!」

 瞬間、地底怪獣の巨体が宙に舞った。朋花の取った行動を瞬時に理解した莉緒が、
「見た目に似合わず派手好きね!」なんて嬉しそうに声を上げる。

 そして飛んできたモグランゾーを受け止める為に、最大出力で生成される超巨大なキネティック・シールド! 

「くっ! うぅっ!!」シールドを支えるために突き出した、
 その両腕に伝わる衝撃を美貌と根性で受け止めて、莉緒がモグランゾーの勢いを完璧に殺し切る。


 朋花の取った行動は、まさに捨て身の攻撃だった。

 超高速で移動するモグランゾーの、鞭が絡んだ片手の動きを力の限り邪魔することで、
 この巨大モグラを手玉に取ったのである! 

 結果は走っている人間の足を払うが如く。支えを欠いてバランスも崩したその巨体は、
 勢いそのまま地面をもんどりうちながら、莉緒の張ったシールドに突っ込んだと言うワケだ。

 が、しかし。当然そんなことをすれば、背中に乗っていた朋花も無事では済まないことになる。
 いくら莉緒が受け止めてくれるだろうという信頼はあったとて、自分の身が危険なことには変わりない。

 だが、彼女は幾多の迷える子豚ちゃんを導く聖母であり、誉れ高き天空騎士団の指導者なのだ。

 朋花の辞書の最初のページにある言葉、それは無償の『自己犠牲』……
 そしてまた幸運だったのは、この場に天使がいたことである。
120 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:45:46.57 ID:vWXpS0ty0

「だ、大丈夫? 天空橋さん」

「……雪歩さん」

 モグランゾーが弾け飛んだその瞬間、雪歩は放り出された朋花を受け止めた。
 すっかり荒れ果てた道路まで舞い降りると、彼女は抱き留めていた朋花を下ろす。

「ふふっ。……ありがとうございます、私の大天使さん」

 朋花が微笑みながらお礼を言うと、雪歩が顔を真っ赤にして「だ、だ、大天使!? わ、私は小間使い天使が関の山で……!」
 なんてしどろもどろに言葉を返す。その傍では瑞希たちが、当初の予定通りモグランゾーの手足を紐で縛り上げ。

「雪歩! そんなトコで赤くなってないで、早く早く!」

 美希に呼ばれて、雪歩が「あっ! う、うん。そうだね!」朋花を受け止める際に放り投げたスコップを呼び戻し、
 地面を掘るために高々と腕を振り上げた――採掘天使の本領発揮である!

「はあっ!」

 カツン! 渇いた音が辺りに響いた次の瞬間、
 スコップの先端が当たった場所を中心に、グズグズと亀裂が周囲に広がって行く。
121 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:47:29.86 ID:vWXpS0ty0

「そ、それじゃあみんな、避難しよう!」

 雪歩の合図に、アイドルたちは伸びてしまっているモグランゾーをその場に残して安全圏まで移動する。

 次第、円形に広がっていた亀裂がミシリと不気味な音を立て、そのまま地面に飲みこまれた! 
 ……そう、まさに大地が口を開けたかのように、地底怪獣の巨体もろともだ。

 後には爆弾が落ちてもこうは綺麗に作れまいというほどに、見事なまでの丸い穴。
 その深さが一体どこまで続くのか? 地上から覗いただけではとても窺い知ることができないほどの奈落である。

「……終わった、の?」

 久々に全エネルギーを使い果たした疲労感。莉緒が誰ともなしに呟いたその時だ。

 漆黒の暗さが満ちた穴の中から、何か、"何か"がじわりじわりと染み出すように空へ向かって登って行く。
 それはまるで煙のようであり、また靄や霧のようであり。

 しかしその場にいた全員は、無言のうちに直感で、その正体に気づいていた。

「あれが、今回の騒動の原因ですか」

 瑞希が一歩、皆より前に踏み出した。一体いつ用意していたのか、
 彼女は右手に持った小さな十字架を胸の前で構えると。

「悪霊退散……エクソシスト瑞希、出番だぞ」

「ええっ!?」

「コホン! ……イッツ、ジョーク」

 驚く皆に微笑む瑞希。「それに私は、お化けの類が苦手です」言って、
 今度は十字架よりも物騒な対空用の自動追尾式ロケットランチャーを肩に構えたのである。

 ……それこそ、一体何処に用意していたのかと訊きたくなるほど突然に。

「ですが、手品は少々自信あり」

 そして、しめやかにミサイルは発射された。ひゅるるるる……と煙を引き、
 空中で集まり出していた靄に命中、爆散! 一同が唖然とする中で、彼女はグッと親指を立て皆に宣言したのである。

「目標破壊、戦闘終了。……一先ず危機は去りました」
122 : ◆Xz5sQ/W/66 [sage]:2017/08/15(火) 10:49:01.25 ID:vWXpS0ty0
ここまで。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/04(日) 15:26:42.77 ID:QxeXLVt6o
今更ながら追いついた
続きあるなら楽しみにしてる
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/17(金) 17:37:31.18 ID:pSdgLK+80
??
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