女「君も僕の体がほしいのかい?」男「えっ!?」〜私と僕と欲張りショートケーキ〜

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12 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:23:50.46 ID:bpND8uC50
俺は何とか返答をしようとする。

男「……でも、……それは……」

女「そうだよ」

女「現代の人間社会の在り方として、法的にも倫理的にも決して許されることではない」

女「でも法律も倫理も人間がいるから存在する」

女「法律と倫理が先に存在して、その後に人間が生まれた、わけではないよね」

女「だから僕は男性が女性に、無理やりにでも行為をしたいという欲求をもっていること事態は許容するよ」

女「もちろん性犯罪を許容するわけではないし、そういう行為を実際に行う男性は唾棄すべき存在だよ」

女「思うだけなら許すけど、行動に移すのはだめだ」
13 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:25:26.76 ID:bpND8uC50
男「……」

女「……」

男「私も女性を自分の欲望のために、傷つけるような行為を行う男は軽蔑します」

女「そうか」

男「そうです」

男「……」

女「……」

男(……ああ……)

男(俺の好きな無言の時間だ)

男(もちろん彼女の話を聞くのも好きだけど)

男(できれば彼女にとっても、この時間が苦痛じゃないと良いんだけど)
14 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:27:34.67 ID:bpND8uC50
女「さて共通の見解を得られたところで」

男「?」

彼女は新しいイタズラを考えついた子供のような顔で笑う。

女「自分の欲望のために傷つけるような行為とは、具体的にはどのような行為までを指すのかな?」

男「どのような行為って、例えばセクハラ発言とかですか?」

男(『おっぱいは何カップ?』とかか?)

男(すっごく聞いてみたいけど、絶対に聞けない)

俺は彼女の質問の要領を得ず、思いついたことをそのまま発言する。

女「それもあるけど、例えば」
15 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:28:19.44 ID:bpND8uC50
女「……で……っぱいを眺めるのは?」

男「え? 何て言ったのですか?」

いつも淡々と話す彼女にしては、俯いて妙に歯切れの悪い言い方だった。

女「……っチな……しせんで、……っぱいを眺めるのは?」

今度も消え入りそうな声だった。

男「ごめんなさい。もう一度お願いします」

女「くっ」

男「?」

顔を挙げた彼女は今まで見たことがないような顔をしている。苦虫を噛みつぶしたような顔だ。

そしてまた俯いてしまう。
16 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:29:33.71 ID:bpND8uC50
女「だから!」

突然、彼女は顔を挙げ、声を張り上げる。

女「エ、エッチな視線でおっぱいを眺めるのは、女性を傷つける行為には、入らないのかな!?」

彼女はなんだか、いっぱいいっぱいになりながら、今度こそ聞こえる声で言葉を発した。

男「!?!?!?!」


男(バァ、バレてたぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!)


男(終わった!? 嫌われた!?)

男(どどど、どうしよう!?)

男(あああ、謝らないと)

俺は溜まらず、頭を下げる。

男「……ごめんなさい」
17 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:32:04.21 ID:bpND8uC50
俺は顔を挙げて、言い訳めいたことを呟く。彼女の顔は俯いてしまっていて良く見えない。

男「……俺は、……その無意識で見てしまっていて……その……君を傷つけるつもりは……」

男(いや)

男(これじゃ彼女が嫌っていた自分の欲望のために女性を傷つける唾棄すべき人間そのものじゃないか)

男(もっとしっかり謝らないと)

男「いや、ごめん。もう軽蔑されてるだろうけど、俺が君を傷つけたことに変わりはない」

男「君がもう俺と話したくないなら、話しかけないようにする」

男「俺が視界に入るのが嫌だというなら、もう君に近づかないようにする」

男「俺にできることならなんでもする」

男「本当にすまなかった」

俺はもう一度深く頭を下げる。

男「……」

女「……」
18 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:33:09.91 ID:bpND8uC50
男「……」

女「……」

男(彼女との無言の時間は、例外はあったけど、好きだった)

男(それがこんなに辛い時間になるなんて)

男「……」

女「……」
19 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:35:19.94 ID:bpND8uC50
女「……『俺』って言った」


男「……へっ?」

彼女の予想外の返答に思わず変な声がでた。

顔を挙げるといつもの淡々とした表情の彼女だった。

女「ずっと気になってた」

女「君は男友達と話すときは、『俺』って自分を呼ぶのに」

女「僕や女性、目上の方と話すときは自分を『私』って呼ぶよね」

女「僕は女なのに、自分のことを『僕』って呼ぶ変な奴だから、余計に気になった」

女「目上の方に対して、『私』を使うのは敬語の表現だから良いけど」

女「僕にたいして使うのは、距離を取られているみたいで嫌だった」

男(なんだ? 傷ついて怒ってるんじゃないのか?)
20 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:36:39.25 ID:bpND8uC50
彼女は続ける。

女「それに僕と話すとき、すごく言葉を選んでいる気がする」

男(それもバレてる)

女「でもそれって、君の優しさだよね」

男「……」

女「僕に対して敬語で話すのは、失礼がないように」

女「僕と話すときに言葉を選んでるのは、僕を傷つけないようにするためでしょ」

女「だから君の優しさに免じて、許してあげる」

男「許して……くれるんですか?」

女「だって僕がいったんだよ」

女「『君も僕の体がほしいのかい?』って」

女「それで僕の体をまったく意識しないのは、なんか腹が立つよね」
21 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:37:33.64 ID:bpND8uC50
女「それにさ、『話しかけないようにする』」

女「『近づかないようにする』ってさ」

女「君から話しかけたり、僕に近づいたことなんてあったかな?」

男「うっ!」

女「それに『なんでもする』っていったよね」

男「ううっ!」

彼女に痛い所を突かれる。

22 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:38:38.80 ID:bpND8uC50
女「なんにしようかな〜」

女「どうしようかな〜」

彼女は新しいイタズラを考える子供みたいな表情をしている。

女「まずはこれから僕と話すときに、『私』って言うのやめてもらおうかな」

女「女が『僕』で、男が『私』だと、ややこしいし」

女「次に敬語禁止」

女「それと次の休みにショートケーキが有名なお店に付き合ってもらおうかな、あとは――」

男「えぇ、……まだあるんですか?」

女「『まだあるんですか?』っだって」

彼女は怒気の孕んだ声をあげ、不機嫌な顔をする。

男「……」
23 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:39:40.36 ID:bpND8uC50
男「……まだあるのか……」

女「ついでに僕の部屋の模様替えでも、してもらおうかな」

男「もういいよ。俺の体で、できることなら」

男「俺の体を好きにしろ」

女「ええ、君の体はもう僕のものだよ」

彼女は満足そうに笑っている。

女「さあ、話の続きを聞いてもらおうかな」

女「次はどうして女性が男性の心に執着する傾向にあるのか? ってことさ。それは――」

彼女は饒舌に語り出す。

男「……」

男(一時はどうなることかと思ったけど、また彼女の話を聞けるだけでこんなにも嬉しい)

―――――――

――――
24 : ◆2oYpLZIXqc [saga]:2017/07/01(土) 18:41:29.97 ID:bpND8uC50
――――

―――――――

女「まあ、あくまでも傾向ってだけだからね」

女「僕みたいな欲張りな例外もいる」

男「?」

女「ついでにいうと、僕はイチゴが好きなんだ」

男「??」

女「そして僕はショートケーキのイチゴは、最後にとっておいて食べるんだ」

男「???」

女「ふふふ、分からないかな?」

女「ああ、次の休みが楽しみだよ!」

男「????」

女「そのときに僕の質問の答えも、もらおうかな?」

男「?????」

彼女にとってのイチゴがなんなのか、俺にはまだわからない。


女「君も僕の体がほしいのかい?」男「えっ!?」〜私と僕と欲張りショートケーキ〜

終わり




読んで頂き本当にありがとうございました。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/02(日) 22:12:07.39 ID:Li9y08Fwo

こういう短編もいいね
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 08:09:53.28 ID:qCgaAMXLo
かなりよかった
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/05(木) 03:17:04.07 ID:XGVUu0Gd0
ギュン!      ギュ
     ギュン!   ギャンッ!!
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/04(土) 16:53:14.60 ID:6KvSKp2jO
A
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/25(火) 12:41:11.02 ID:PM3eutdgo
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