【安価】Timeless Heroes【クロスオーバー・ヒーロー】

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1 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 00:34:39.42 ID:3DciI8RXo
――2017年或いはそれより以前より、彼ら≠ヘ我々と共にあった――

超越した存在「Timeless(タイムレス)」

人が生んだ悪意が膨れ上がった時

超自然災害が罪なき人々を襲う時

人知れず涙を流す者がいる時


ある時は人知を超えた特殊な力で

ある時は類稀なる知力や技術を以て

世界に危機が訪れる時、その中心に彼ら≠ヘ居た


彼ら≠ヘ正義でもあり悪でもある

その存在を恐れる者もいるだろう


しかし――

恐れるばかりで良いのだろうか

彼らが正義を愚直なまでに信じる時、力を持たぬ我々は彼らに対し何をすれば良いのだろうか

「Timeless Heroes」

これは正義の為に立ち上がった英雄達の物語である

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1499009679
2 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 00:49:06.34 ID:3DciI8RXo
【説明】
・このスレは同一の世界で様々なヒーローが活躍することを目的にしたスレです

・読者の反応や、アイデアを通して世界が広がっていきます。協力お願いします

・安価とコンマは使ったり使わなかったり

・安価やアイデアの内容を100%反映するわけではありません

・喧嘩しちゃやーよ


【基本設定】

【Timeless(タイムレス)】超能力を始めとした能力を持つ者、類稀な知力や技術を持つ者、人の知るところではない場所から来た者の総称。
               常人との線引きは、「その存在一人で世界を根本的に変えうる力を持つ者」であるか否か。
               先天的にタイムレスである者と、後天的にタイムレスになった者がいる。

・これ以外決まってません。ここから話の流れで増えていきます
3 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 00:59:30.84 ID:3DciI8RXo
【スレの流れ】
主人公を決める(一人〜チームの場合複数人)

話数構成を考える(全1話・3話・6話・12話から)

完結・一区切り

前シリーズを正史として組み込んだ上で次の主人公を決める(今までのシリーズのseason2でも良し)

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:01:45.33 ID:8xmqWYi30
把握
5 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 01:06:07.89 ID:3DciI8RXo
・ということで、最初のヒーローを目覚めさせましょう

・皆さんのアイデアや意見を見て、それを元に妄想を膨らませます

【聞きたいこと】

・どんなヒーローが主人公だといいですか?

・どんな敵がいると嬉しい?

・どんな設定があると面白い?

・具体例を出すのは難しいと思うので、何となくでもOKです

・質問でもOK
6 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 01:07:22.31 ID:3DciI8RXo
・ではここから30分ほど受け付けます
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:08:42.96 ID:Zo3bJhP00
・安価でヒーローや敵を応募するのではだめなのか?
・設定も「↓1〜5まで案を出して〜」形式というはどうだろう
・舞台の国は外国でも架空の国でもOK?
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:09:11.17 ID:8xmqWYi30
あー、>>7と同意見かも
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:09:36.34 ID:rVSI+l+P0
最初の主人公男ですか、出来るなら女騎士とかの戦う女の子系個人的には好きなんですけど無理ですか
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:13:59.84 ID:wAG4LHulO
みんな詰め込みたい要素をギチギチに詰めると思うから
設定が纏まりのない感じになるかも?
それを捌き切れるのであればいいかもしれないが。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:17:50.04 ID:PFWm3AhkO
単純に>>1がテンプレートを出してキャラを安価で募集する一般的な形式じゃないってことでいいのかな?
どれだけ人が集まるかは分かんないけど良くも悪くも自由度が高くなりそう
個人的な意見になるけど正義の味方サイドとか悪の組織サイドとか明確に線引きしたり、単なる勧善懲悪モノにはしたくないなぁ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:27:48.46 ID:u315Ki120
異世界の人類へが敵、別世界から生命エネルギーを奪わないと世界が滅ぶみたいなの好きかな
異世界も奪われたせいで奪わないといけなくなったって感じで
13 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 01:32:35.14 ID:3DciI8RXo
>>7
>>10
>>11
・安価テンプレ用意してキャラ募集するのは考えています。ですが、最初の段階でそれを扱いきれるか分からないので今回はできるだけそれをしない方向で
・設定の形式はそれで募集したいと思います。でも>>2にある通り全部反映できるとは限らないし、安価の内容の通りにするとも限りません
・全然OKです。基本的に主な舞台は現代の地球を考えています

>>9
・ムリってことはないけど最初は男かなー。女主人公についてはよく考えておきます
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:39:32.37 ID:wAG4LHulO
おk とりあえず今思いつくとしたら

・敵勢力はそれぞれの目的の為に一時的に手を組んでいる(いざとなれば一旦ヒーローと手を組んで邪魔な敵を排除しようとしたりする、逆もまた然り)

・初期段階では敵勢力に所属しているが話の展開によって永続的にヒーロー側につく者がいる。

ぐらいだな。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:43:12.39 ID:Zo3bJhP00
異世界が関係するのもいいんじゃないかな?
舞台がそういう別の世界をつなぐワープゲートの入り口になっているかさ
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:44:39.67 ID:8xmqWYi30
それなんてナムカプ
17 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 01:47:33.48 ID:3DciI8RXo
・主な質問についてはこれくらいかな? なんとなく思いついてきました

・では、これから設定の形式をさらに募ります

↓1〜4【キャラや設定についてアイデアください】
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:50:34.69 ID:8xmqWYi30
主人公は世界の均衡を保つ為に組織された特殊部隊の隊長
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:50:58.05 ID:TRLjkbGK0
侍をモチーフとした姿で、白い着物に蒼い袴を着用し、帯刀している。
性格は軽薄飄々として掴み所がないが、神算鬼謀の策士でもある。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:55:47.02 ID:m0ipqTJKO
身長は高めで容姿の整った優男。線は細いが鍛えあげられた肉体をしている。
黒髪赤目、髪型はポニーテール(うなじ辺りまでの長さ)。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 01:57:12.13 ID:VG6vfjXr0
決して私情を挟まない冷徹な人間だが、心の何処かに葛藤がある
22 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 02:10:02.83 ID:3DciI8RXo
・ありがとうございます。大体話が見えてきました

・じゃあ話数構成を考えましょう。終着点が見える方が良いので

・コンマで決めちゃおう。短縮もあるのであくまで予定で

【直下コンマ下一桁】
0:全12話(メチャ大変)
987:全6話
654:全3話
321:全1話
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 02:10:39.59 ID:8xmqWYi30
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 02:10:41.97 ID:VG6vfjXr0
25 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 03:03:39.18 ID:3DciI8RXo
Next…

First Timeless Hero:Ultimate fate of the universe

#1 Pirot 開かれる門
 理論上の可能性だった平行世界の痕跡が観測されてから1年。その存在を確かなものとする為、アメリカでは秘密裏に観測施設を設立。研究を行っていた。
成果を急ぐ政府の圧力に苦しむ研究所は、並行世界に存在する新たなエネルギー資源を得る為、無謀にも確立されていない危険な方法で新たな研究を始める。
研究のプロジェクトリーダーに選ばれた優れた知性を持つタイムレス「カラム = チャーチル」は、同じ研究所に機密保持部に勤める友人「コンドー=アズマ」に、自らに課せられた重責と不安について相談しに来ていた。
26 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 03:18:39.95 ID:3DciI8RXo
・このような感じで進めていきたいと思います

・現在#〜3までの展開は大まかに思いついています(全6話予定)

・意見、アイデアについてはまだまだ募集中です

・今日はこのへんで
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/03(月) 08:44:22.44 ID:ts1Rhc4fO
HXZがやりたいなら初めからHXZの世界線でやればいいのに
28 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/03(月) 23:59:50.88 ID:3DciI8RXo
・はじめていきたいと思います
29 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 00:09:29.23 ID:vlXqhbp/o
#1 Pilot

――僕らは友だちだ

そりゃたまにケンカする時だってあったさ

でも、次の日には一緒にいつもの店でタコスを食べに行っていただろ?

最初は二人目も合わせずに店に入って、帰りには笑いながら出ていく

いつものことさ

僕らは友達

それはいつどんな時だって変わらない事実

だからさ

大丈夫だよ

初めて会った日

君が僕に話しかけてくれた言葉、覚えているかい――?
30 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 00:25:25.04 ID:vlXqhbp/o


「待て」

深夜の空港、目深に帽子を被り足早にカウンターへと急ぐ男がいた。
彼≠ヘその男の肩を強く掴んだ。

目深帽の男は小さく悲鳴を上げ、振り向いた。

「誰かと間違えているのでは?」

とぼけてみせるが、その声は震えていた。
目深帽の男は彼≠フ正体をもちろん知っていた。声をかけられた理由も。

「オーラフ = ラングリッジだな。先々月退職した――」

彼≠ヘネームプレートを見せ形式上の*{人確認を取った。彼≠ヘ続けた。

「オーラフ、君には、ある疑いがかかっている。研究所の情報流出についてだ」
「機密を漏らすことは禁じられている。入る時に聞いていただろう。規約違反だ」
「これから自分がどこへ行くか、分かっているな?」
31 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 00:47:48.33 ID:vlXqhbp/o
 オーラフは必死に弁明をした。
自分の娘が今、病に侵されていること。多額の手術費用が必要であること。
しかし、その言葉は彼≠ノは届かない。

「そこらの研究員の倍は出ているはずだ。今の給料で足りなかったなら、上に何故交渉しなかった」

彼≠ヘその一言で一蹴し、オーラフに手錠をかけ、空港前で待つタクシーまで連行した。
オーラフが犯した罪は死を以て償うこととなっていた。
これから彼は、空港ロビーで忘れ物をしたことに気付き、タクシーで家へと戻る途中事故に会うことが決まっていた。

彼≠ヘ泣き叫ぶオーラフの首に注射をし、眠らせた。せめてもの配慮だった。

「これも世界の均衡を保つためだ。勝手な行動は許されない」

彼≠ヘ眠るオーラフをタクシーのシートに座らせ、ドアを強く閉めた。
32 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 01:34:42.10 ID:vlXqhbp/o
 彼≠フ名は「コンドー=アズマ」。
とある研究所の機密保持部の部長である。彼らの仕事は研究所の情報流出を未然に防ぐこと。
防ぐと言ってもその方法は荒く、残酷なもので「暗殺」という手段でほぼ行われていた。

 アズマ自身、何故オーラフがあのような危険な橋を渡るのか知っていた。
また、オーラフが持ち出そうとしていた情報に、どれ程の価値があるのかも。
あの情報を然る場所に与えれば、数十年働いただけでは得られないであろう報酬を与えられるであろう。あるいは口封じのために消されるかである。

情報流出を避けるために、流出元を暗殺するなんてまるでスパイ小説の中での出来事だと彼≠ヘ考えていた。

だが、その情報が流出したことで世界にどのような影響が及ぶかについても彼≠ヘ知っていた。

そうだとしても――

彼の中には葛藤があった。
U.S. Armyとしての実績を持ち、16年前のテロ教団指導者の殺害を目的とした作戦への参加経験がある彼≠ナも、自国の人間を防衛のためとはいえ殺めるのは――苦しい。

それを親友にも打ち明けることすらできず、毎夜今まで職務を執行してきた者の亡霊達に囲まれ、首元にアンプルを当てられる夢を見ていた。

それでも部を抜けられないのは、彼自身の責任感の強さと彼もまたオーラフの立場に立つかもしれないという恐怖感を持っていた為であった。

アズマが研究所の情報を外部に流すことは恐らくない。

しかし、いくつかの戦場を生きてきた彼は知っていた。死はいつでも誰かの背後に立っている。
情報流出の疑いありとの密告を受け、研究所職員を処罰したことがあった。
機密保持部は一般の司法組織ではない為、捜査は独自で行われている。

部に元CIAの調査官がいたとしても――だ。
その処罰の内容に死≠オかない以上、死んでからそれが冤罪だと知った時。密告が何らかの私怨を含んだ虚偽だった時。

そのようなケースは今までに報告されていないが、アズマは常に不安に駆られていた。
33 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 01:53:00.54 ID:vlXqhbp/o
*

 今、世間を賑わす一つの言葉――「並行世界の尾」。
1年前、理論上の可能性だった平行世界の痕跡が、並外れた視点と知性を持つ若き科学者でありタイムレスの「カラム = チャーチル」博士によって観測された。
「並行世界の尾」とは、並行世界の存在の可能性について指す言葉である。
今、我々が住むこの宇宙に似た物質・構造で作られた世界が幾重にも重なり存在する。
その証明が、数十年の内にできるという。

 さらに、その並行世界の存在を実証するために今月、世界初の観測実験が行われる。
その発見が我々人類の生活を飛躍的に便利にするものではないかもしれない。
だが、昨今世界を不安に陥れている自然災害や経済問題。それを一時忘れさせているのだから、科学は偉大だ。

アズマの所属する研究所は、それについての調査を行っていた。

表向きにはだが。

*
34 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 02:26:44.42 ID:vlXqhbp/o
――研究所

「おはようございます、博士」
「おはよう、カラム。調子はどうだい」

研究所は観測実験を1週間に控え、静かに沸き立っていた。
朝、カラムが出所すると大学の同期バッブと研究員ケインが声をかけて来た。

昨日の夜、空港近くでタクシーで事故が起き、元研究所職員が死亡したことを彼らは知ってはいたが、この件に関しては誰も話そうとはしなかった。

「やあケイン、バッブ。ああ、僕は――」

「いやいや、お前に聞いているんじゃあない。お前の奥さんに聞いているんだ。お腹に赤ちゃんがいるんだろ?」

「やあひどいなぁ。僕のこと心配してくれたっていいだろ。実験が近づいているんだから」

カラムには出産を控える妻がいた。

「お前なら訳ないだろ。なんせアメリカが誇る類稀なる知性を持ったタイムレス≠ネんだからな。さすがだぜ」

「バッブ、褒めても何も出ないよ」

「ランチは?」

「しょうがない。今日は出すよ。この間の研究発表の評価も良かったみたいだし、お祝いだ」

「ハハ、さっすが太っ腹だぜ博士ーっ」


「――ああ、リンは元気だよ。周期も安定している。今日は病院へ行っているんだ。経過を聞くのが楽しみだよ」
35 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 03:02:49.86 ID:vlXqhbp/o
そこにカラムの研究室秘書ラヴィニアが足早にやってきた。

「――博士」

「ああ、ラヴィニア。どうかした?」

「それが――」

ラヴィニアはバッブとケインに見聞きされないようカラムに続けた。
カラムは彼らと部署≠ェ違う。彼らにとってカラムは量子科学・量子力学の研究を行う研究者である。
が、実際のところ彼には、他にも研究所内である役割≠担っていた。

「DOEとDoDから、博士とお話ししたいと――」

カラムは眉間に皺を寄せた。
彼にとって憂鬱な1日が始まる。
36 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/04(火) 03:13:09.72 ID:vlXqhbp/o
・かなり進みが悪いですが今日はここまで

・chapter1ってことで

・意見、アイデアについてはまだまだ募集中です!

・ではこのへんで
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/04(火) 07:40:08.51 ID:astje4xs0
乙。これからに期待
38 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 01:27:22.40 ID:hHTQKwago
・はじめていきたいと思います
39 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 01:47:37.00 ID:hHTQKwago
 カラムが会議室に行くと、二人の中年男性が座っていた。アメリカ政府の役人であった。
彼らはカラムに自己紹介をする。

「多忙のところ申し訳ない……直接会うのは初めてでしたな。私はDOE情報部のジョーン=マカロク」
「私は、NROのコンラッド=バジョットだ。よろしく」

「ええ、どうも……」

「で、いきなりだが本題に入りたい。今、研究の段階は、どれ程進んでいる?」

彼らはいつも同じことをカラムに聞いてきた。
今日に関して今までと違うことと言えば、使者を通さず直接カラム自身に会うことで圧をかけにきたことくらいであった。
カラムは彼らと同じようにいつもと同じように答えた。

「そちらにお送りした資料に書いてある通りです」
40 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 02:00:48.70 ID:hHTQKwago
「そうではないのです。カラム博士。分かっているでしょう」

ジョーンは眉間の皺を強く押さえ、言った。
カラムは何も言わなかった。

沈黙が暫し続き、コンラッドが口を開いた。

「では、単刀直入に聞きたい」
「我が国は……いや、地球……全宇宙は――」

「本当に助かる見込みがないのか?」
41 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 02:41:55.76 ID:hHTQKwago
*

 今、世間を賑わす一つの言葉――「並行世界の尾」。
カラム = チャーチル博士は、波動関数の分析を行っていた際、粒子の波形の中から偶然発見された所謂副次的なものであった。

簡単に言ってしまえば、一枚の紙を数百枚重ねれば立体が生まれるのと同じように、我々今暮らすこの次元も我々とほぼ%ッじ大きさの世界が複数重なりあうことで成り立っていることの発見である。

理論上、この考えは元より存在していた。
しかし、カラムが発見したのは、その並行世界を繋ぐ一つのベクトル(軸)であった。
この軸こそが並行世界を繋ぐものである。

我々の暮らすこの次元は、まるで古代の象徴ウロボロスのように並行世界同士が隣り合う世界の尾≠噛むことで一つの円形の次元を作り上げている
その並行世界を噛み合わせる粒子波形の流れをカラムは「並行世界の尾」と呼んだ。

しかし、ここからが問題であった。
42 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 03:15:45.22 ID:hHTQKwago
 現段階で観測できる「並行世界の尾」は、隣り合った世界についてのみ。
自分の世界が?みついている相手の尾か、噛みつかれている自分の尾といったところか。

その波形の強さ、歪みの根源、エネルギーの発散について更に調べていく内、カラムはエントロピーとの関連性を疑った。

カラムはまず、自分の世界が?みついている相手の尾の熱的量を計算し、次に自分の世界の尾も同じようにした。

そして、それを比べると――

我々の住む世界(以下基本世界とする)の「並行世界の尾」は大変不安定な状況にあることが分かった。

特に基本世界の中で発生した熱量の発散の停滞が顕著であった。

ここで彼が考えたのが宇宙の熱的死≠ナある。
「並行世界の尾」が基本世界のエントロピーと同じ或いは近い値を持つ熱量だとすると、この世界の値は隣り合う世界の持つ熱量と比べ、明らかに異常なものであり、実際こうしている今でも発散されずに残ったエネルギーが増大している。
また、近年観測される超自然災害、NROが発表した天体の異常事象との繋がり。

ここから導き出された答えは――近い未来における基本世界の崩壊であった。

当時カブリ理論物理学研究所に勤めていた彼はこの論文を米政府に提出した。
ここから全てが始まったのである。
43 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 04:02:42.41 ID:hHTQKwago
並行世界の存在証明と、近い未来における基本世界の崩壊の可能性。

カラムは、既に幼少期から政府公認のタイムレスであった。
政府の呼んだ国内の物理的学術に優れたタイムレスでない学者らにそれが正しい情報なのか計算させたところ、3年後やはりそれは正しいことが証明された。
可視化された世界の終わり。そんな彼からの報告を受けた米政府は――恐怖に慄いた。

世界で初めて観測されたこの情報を世界を混乱に陥れぬよう、世界の警察としてはどうしても他国に漏らす訳にはいかなかった。

すぐさま情報統制を敷いた。

カラムが出した証明は、並行世界の存在証明のみとなり、基本世界の崩壊については徹底して隠匿され、本国さらには政府内のみの情報とした。
それが、いずれ他国或いは政府に属さないタイムレスらによって証明されたとしても、である。

ともかく、何としてでも数年以内に解決策・延命策を見つけ出す必要があった。
この統制は時間稼ぎの意味もあった。

カラムによって提示された残された基本世界の余命は――

「長くとも200年以内。早ければ1秒後」
44 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 05:16:47.69 ID:hHTQKwago
 政府は新たに研究所を立ち上げ、その一つの室長にカラムを推薦した。
カラムの役職は表向き並行世界の存在を確かなものとする研究を行っているとしている。
カラムの所属する研究室以外の職員も皆そうだと考えていた。

彼の所属する研究施設は他の物とは規模が違う。
政府が秘密裏に用意した資金源によって設立した特殊な観測施設であった。
政府の要請を受けて参加したカラムが、基本世界の延命手段を探る為に必要とした施設内容は破格の物であった。
だが、政府も世界の存亡を背負う以上、資金を出すことに対して惜しむことは無かった。

とは言え、明日へと知れぬ宇宙滅亡、政府も悠長に待ってはいられなかった。

解決策を見つける為の期限が設けられていた。
それが今月――さらに言えば来週に迫る世界初の観測実験である。

*
45 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/06(木) 05:53:59.59 ID:hHTQKwago
・今日はここまで 思いのほか進まなくてごめんなさい

・chapter1.5くらいですね

・意見、アイデアについてはまだまだ募集中です!

・ではこのへんで
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 07:49:10.71 ID:y5ZjZkY40
乙。
47 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 15:33:11.48 ID:8TsD+Jozo
・はじめて行きましょう
48 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 15:34:54.06 ID:8TsD+Jozo
*

「――それも資料にある通りです」

カラムは答えた。


今回の観測実験とは表向きの発表。

実際、この実験にはもう一つの側面があった。

――基本世界の崩壊を防ぐ為の方法についての具体的な解決策。研究成果発表。

それ故、実験はカラムが発表した基本世界崩壊の事実を知る政府高官のみ観覧が許されていた。
49 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 16:15:35.19 ID:8TsD+Jozo
実験内容はこうである。

真空にした部屋に、水素やヘリウムを想とした気体、所謂星雲ガスを再現したものを注入。
模擬宇宙空間を作り上げる。

そこにカラムが発見した基本世界と隣接する平行世界とを隔てる壁を開くことができるであろう理論上の波形を流し入れる。
ここまでは、観測実験=B隣り合う並行世界の宇宙を観ることが可能である。

次に――

基本世界と隣接する並行世界とを繋ぐ@ア子を照射。

そう、繋ぐ≠アとが重要なのである。

これを行うことによって宇宙空間のエネルギー法則に従い、エントロピーが低下傾向にある基本世界に、隣り合う並行世界のエントロピーを流しいれることができるという考えである。

これが基本世界の崩壊を防ぐ為の具体的な解決策であった。
50 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 16:52:46.04 ID:8TsD+Jozo
「しかし――」

カラムは続けた。

「この実験は無謀です。これは資料にもありますが、シミュレーションの結果、並行世界を繋ぐ粒子照射後の疑似宇宙空間が安定しないことが分かっています」
「何が起こるか分からないということです」

「実験の責任は負いかねる、ということですかな?」

ジョーンがそう尋ねた。
「いえ、そういう意味では」とカラムが言いかけるが、ジョーンは彼の真意を汲むこと無く話を続けた。

「実験中に起こった事故について、責任は問わない。例え我々の上官が死んでも、です」
「君はアメリカが誇るタイムレスだ。国の頭脳――いや、世界の頭脳をそんなこと≠ナ潰す訳にはいかない」
「結果さえ出してくれれば、我々政府は君を全力でバックアップすると約束しましょう」
51 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 17:20:52.56 ID:8TsD+Jozo
(――そうじゃない!)

カラムは苛立っていた。

研究所を巻き込む事故。政府高官の死。それに対する責任。
カラムが危惧する問題はそれだけではなかった。
ジョーンとコンラッドは、成果を急ぐばかりに大事なことを見落としていた。

並行世界は未知の領域。
生命が存在しないであろう並行世界の宇宙空間でさえ基本世界と同じ性質とは言え、内容が違った場合、そこに発生する宇宙線が周囲にもたらす影響は未知数である。
カラムの言う通り何が起こるか分からないのだ。
52 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 17:50:45.93 ID:8TsD+Jozo
 実験そのものが無謀。

それは実験が成功した際でも同じだとカラムは考えていた。
並行世界からエントロピーを基本世界へ流れ込ませるという事は、即ち並行世界の寿命を奪うこと。
今回観測、接続する隣接した並行世界に人間のような生命体が存在する時――
その生命を奪ってしまうことになるのではないか。

基本世界を延命する為に、並行世界を殺す。
それが自然の摂理を大きく逸脱した行為であることは、学者であるカラムが一番に理解していた。

基本世界崩壊を食い止める手段を発見したその日から、そんなジレンマが彼を苦しめていた。
53 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 18:05:48.99 ID:8TsD+Jozo
並行世界の尾≠フ存在と、基本世界の崩壊の可能性を発見してから3年。
世間に並行世界の尾≠フみ発表をしてから、1年。
崩壊を止める方法を発見してから、同じく1年。
政府から目に見える成果を期限付き≠ナ求められて、4年。

(――短すぎる)

カラムの想定では実験が安定を得るには、短くとも15年。
政府が提示した期間は、余りに短すぎるものだった。
54 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 20:34:33.69 ID:8TsD+Jozo
「で、軍からの報酬についてだが――」
「実験時の安全配備は――」

 そんな不安をよそに、話は平行線を辿っていた。
実験予定日は変わらず、来週に行われる。これは決定事項であった。

何とか――

何とか実験を遅らせることはできないのか――

彼の頭脳を以てしても、実験を遅らせる手立ては思いつかない。
いや、思い付いたとしても実行できない理由があった。

「ふう――」

ジョーンは一息つき、テーブルの上のカップに指をかけ、カラムにこう聞いた。

「それでだが、カラム博士。奥さんは元気ですかな?」
「確か――あと数か月でお子さんも生まれるそうで」
「ご家族も実験の成功を楽しみに待っているでしょう」

 政府が認めたタイムレス――彼らは、その貴重な能力を十分に活かすことができ、且つ差別されることなく暮らせるよう手厚く保護される。
が、彼らに対して行われる保護≠ニは、事実監視≠ノ近く、プライベートは無いに等しかった。
それでもカラムは大学在籍時に出会ったリン=デュゲイ≠ニ結婚した。
幼少期より政府の育成施設預けられ育ってきた彼が、初めて愛し、作り上げた家族≠ナあった。

 今、彼の立場が危うくなった時、一番の被害を被るのは彼女。
カラムは、それを失うことが怖かった。
それが彼の実験期間について口を出せない理由である。
彼女は所謂、人質。高い知能指数を持つ彼でも、国に飼われる身である以上、不自由を拭い去る方法は思いつけど実行できなかった。

見えない銃口をこめかみに突き付けられているような気分であった。
55 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/10(月) 20:39:39.56 ID:8TsD+Jozo
・今日はここまで

・chapter1.8くらいですね

・意見、アイデアについてはまだまだ募集中です!

・ではこのへんで
56 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/14(金) 18:12:58.40 ID:NyMu1gOCo
・はじめて行きましょう
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/14(金) 18:43:58.84 ID:0Qr6GyLN0
わーい
58 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/14(金) 19:09:25.93 ID:NyMu1gOCo
続いてコンラッドも話し始めた。

「そうだカラム博士。アズマは元気かね?」
「ええ。アズマはいつも通りですよ。無口で、いつも眉間に皺を寄せていて」
「だから気に入っているんだ。奴は無駄なことを喋らないし、考えない。常に任務に忠実な男だ」
「そう……ですか」

 カラムは、機密保持部のアズマと、大学時代から旧知の間柄であった。
しかし、親友の話をするカラムの表情は明かに曇っていた。
その理由は、無謀な実験の日が避けようなく近づいていることだけではない。
カラムは、コンラッドの言葉が、ただ同じ研究所に居る自分の友人のことを聞いただけとは思えなかったのである。

「なあ、カラム博士。昨日の空港側で起きた事故の件、知っているかね?」
「ええ、まあ」
「あれの被害者は偶然にも≠アの研究室の元職員だったそうだ。それも――」
「知っています。オーラフは……優秀な研究員でした。よく家族の話をしていた。優しい……人でしたよ」
「そうか」

コンラッドは付け加えた。

「もし――もしものことだが、君がこの研究所を離れると言うのなら、事故には気を付けると良い」
「それは君だけに関して言っているのではない。君の妻や子供にも言えることだ」

「コンラッド上級顧問、それは脅しですか……?」

カラムは聞いた。その声はひどく震えていた。
守るべきもの≠ェできる前まで、彼はこのようなことをするのに勇気などいらなかった。
だが、それが彼を弱くした。

コンラッドは何か変わった様子も無く答える。

「何のことだねカラム博士。私は交通事故に気を付けろ、と言っただけだが。交通規則を尊守することは市民の特権だと思わないのかな?」
「――実験結果、楽しみにしているよ」


不安は尽きぬまま、その時は訪れようとしていた。

*
59 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/07/14(金) 21:25:36.88 ID:NyMu1gOCo
*

 夜、カラムとアズマはいつもの店≠ナ待ち合わせていた。

「カラム、リンを家に置いていていいのか?」

「やあ、アズマ。ああ、リンには今夜のことはもう連絡している。それに、ここにはそんなに長くはいないよ」

「その方が良い。つまむものは先に頼んでおいた。何か飲むか?」

「じゃあ、ミルクを――」
60 : ◆RbLyhCxL4nw3 [sage]:2017/07/14(金) 21:58:32.19 ID:NyMu1gOCo
・ごめんなさいちょっと中断
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