【安価】Timeless Heroes【クロスオーバー・ヒーロー】

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217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 23:26:04.62 ID:NRMj6yVDO
更新はしばらく出来なさそう?
218 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 15:44:57.73 ID:cG9LBXvXo
・ゆっくりとはじめていきます
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 15:50:13.75 ID:lg4NJiIp0
待ってた
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 16:03:21.52 ID:cn3AoUB90
キター(゚∀゚)!
221 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 16:09:43.43 ID:cG9LBXvXo
#4 Time of fate

 ――あれから1時間後。
 未だ煉瓦造りの壁が燻る古い下水道に、男女二人が足を踏み入れた。彼らには目的があった。
 今から一時間ほど前、ターゲット――アズマ=コンド―を追わせたブラック・ドッグの生命反応が忽然と消えた。彼の生死を確かめる為、更にアズマの回収をする為に彼らは来たのである。
そう、彼らもブラック・ドッグと同じコンラッド=バジョット大佐の手下である。

「生きてると思うか? あの小僧」

屈強な男は女の方に尋ねた。黒髪をポニーテールに纏め上げた美女はのんきに答える。

「彼、しぶといもの。きっと生きてるわ」


 彼らは暫く歩くと、倒れているブラック・ドッグを見つけた。男は小柄な彼をひょいと背負うと

「ほれ見ろ、死んでる」

と呆れたように言った。すると、後方で大きな咳き込みがあった後

「死んでなんかいねえ、勝手に殺すなオッサン。シグナルはターゲットに吹っ飛ばされた時壊れただけだ」

とブラック・ドッグが息を吹き返した。

「ほら、余計なこと言ったから生き返っちゃったわ」

「悪ィ冗談はやめろって!」

女は、ブラック・ドッグをからかい、その犬の顔に似たマスクの鼻をちょんとつついた。
222 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 16:20:48.87 ID:cG9LBXvXo
「で、ターゲットは?」

男はブラック・ドッグに聞いた。彼は数m先を指さした。
そこには大きな黒い繭のようなものが落ちていた。男は気味悪そうにゲェっと餌付いた。

「これがアズマ=コンドーなのか?」

「ああ。気を失う前にコイツ体中から糸を出して、こうなりやがったところまでは覚えている」

「気味悪ぃ」

「全くだ。気色悪いんだよタイムレスなんて連中は」

ブラック・ドッグらは悪態を付いた。それに関して興味なさげに女は繭に近付き、無警戒に触った。
繭の奥からは微かに拍動する音が聞こえていた。

「見て! 生きてる!」

女は少女のように無邪気に二人に叫んだ。

「あの繭、どうした方が良いと思う、ブラック」

「殺さないのか?」

「命令が変わった。生きたまま持って来いとさ」

「聞いてないぞ糞ッ……」

大男は背中のブラック・ドッグに指示を仰いだ。
大男は彼のその戦闘力自体は低いと見ており侮ってはいるものの、その情報収集能力やタイムレスを多数殺してきた経験から導き出される観察眼については信用に値すると考えていた。
少なくとも学のない自分の勘よりは宛てになると。
ブラック・ドッグは答えた。

「前にも似たタイプの虫型タイムレスを殺したが、繭みたいなのを作るのは初めて見た」
「だが、大概繭ってもんは虫が変態前に行うものだ」
「アイツの性質から考えて……この繭から出たら奴はさらに強くなる。或いはあの中で回復しているのかもしれねえ」
「繭を破壊しろ。中のアイツをそこから引きずり出せ」

「どろどろに溶けてなんかねーよな」

「黙ってやれっ」

大男はナイフを取り出し、繭にそれを刺した。
繭からは黒い粘液がぶしゅりと吹き出し、三人の顔を汚した。
223 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 16:23:01.71 ID:cG9LBXvXo
ある程度繭を切り裂いていくと、そこから裸のアズマが転がり出て来た。

「あらご立派!」

女は粘液に濡れたアズマをべたべたと触りながら喜んだ。

すると、何かに気付いたようにブラック・ドッグは大男に「脈を調べろ」と言った。
大男は首を横に振った。
繭と違い、脈を感じないのである。胸が動いている様子もない。

「死んでいるのか」

「分かんねー。タイムレスだからな。何でもありだ。戻るぞ。ドクターに解析してもらうんだ」

「分かった」

大男は言われたままアズマを更に背負おうとした。その時

「おっと、その前に!」

ブラック・ドッグは、左手を見るよう大男に指示した。
224 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 17:52:24.02 ID:cG9LBXvXo
 左手は強い意志の下、硬く握られていた。その中には恐らく彼らの雇い主が求めている重要なデータがあるのであろう。
大男はブラック・ドッグに話した。

「強く握っているだけに見えるが? ならこじ開けちまえば」

「見ろ。掌のそこだけ硬化している。恐らく覚醒した時からこの状態だったんだと思うぜ。守れるよう進化したんだろ。よっぽどあのUSBを守りたかったんだろうな」

「そんなに友情≠ニやら大事だったのかねェ。冷血漢の元軍人アズマ=コンドーがここまで躍起になるたあ――」

「そりゃ子供の時から親戚の世話になってて、そこの家に迷惑かけないよう奨学金稼ぐためにガリ勉してたんだ
。アイツもカラム博士に会うまではそれなりに孤独な生活を送ってきたんだろうよ」

「さっすがA級プロファイラーだな、ブラック・ドッグ先生はよォ」

「うるせえ。帰るぞ」

 3人はアズマを連れて、下水道を奥へ進む。これから向かうのは彼らの拠点。
――コンラッド=バジョット邸である。

*
225 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 18:07:33.39 ID:cG9LBXvXo
*
 ネイビーの家系であるバジョット家に生まれたコンラッドは、裕福な家庭で育った。
彼は父に代わって少将まで務めた祖父が勉強と愛国心とは何たるかを教わった。ただし、彼の祖父は暴力的な教え方を好んだ。
度重なる暴力と監禁により彼の心は歪んだものへと変わった。
彼の国を愛する心は、暴力的な防衛心、国の意志に反する者への激しい嫌悪感を中心に固められていったのである。
このことは軍の内部の人間は皆、知っていることであった。

 彼は軍人としては優秀であった。
それ故に、誰も言及されない事柄であったのである。

 彼は現在、NROの上級顧問として在籍している。
国家安全の為、新型偵察衛星による朝鮮民主主義人民共和国への警戒案を秘密裏に樹立させており、評価が上がっている一方、更にその裏で私設部隊を作り上げ、彼の信じる道に反したものに対して彼なりの正義≠執行しているのである。
226 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 18:09:53.42 ID:cG9LBXvXo
 それがこうして郊外に聳え立つ屋敷、コンラッド邸に集まる5人の構成員である。

5人はコンラッドを囲んで会食をしていた。

「やあ、みんな。よく集まってくれた。嬉しいよ」

コンラッドは食事の手を止めて全員に言った。
全員は彼の言葉を無視して下品に食事を続けた。コンラッドは話を続ける。

「……君たちは我が国の為に集まってくれた。勇気ある英雄達だ。君たちの人数は分隊にも満たないが、その力は大隊に勝る」

「英雄(ヒーロー)? 俺達、世間的にはヴィラン側だけどな」

 コンラッドと向かい合って、奥に座る包帯で全身を巻いたブラック・ドッグが口をはさんだ。コンラッドは話を続ける。

「英雄は高潔なる意志の下に戦わなくてはいけない。君たちはその条件に十分当てはまる正しい者たちだ」
「……我々は国の忠実なる犬でなくてはいけない。我々は正義を執行する忠犬となって働く必要がある」
「私は、それを遂行する為の私設部隊にそろそろ名前を付けようと思う。どうだね?」

「好きにしたまえ。私は寛大だ」

ブラック・ドッグの隣に座る熟年の男性は言った。

「"Dogs"……これが我が部隊の名前……」
「我々は……この国を守る……忠犬だ……」
「タイムレスが現れ、この国の正義は変わった。一人のタイムレスによって世界の勢力が覆る。それ程彼らの力は大きいということだ」
「その脅威にアメリカは……この国に住む我々は常に晒されている」
「恐怖の中で暮らすことは辛いものだ……かつて私も恐怖の中で暮らしていた」
「恐怖は打ち消さねばならない。打ち消すためには力が必要だ……君たちの力が……必要だ」
「"Dogs"……世界の不安は我々が取り除く……あのデータを以て……」
「返してもらうぞ……アズマ=コンドー……"あのデータ"はもうお前の親友のものという範疇を越えている。あれはアメリカの……世界のものだ!!」
227 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 18:28:21.30 ID:cG9LBXvXo

「ブラック・ドッグ、お前の名前を参考にしてコードネームを付けた。犬(dog)の部隊だからな。それにちなんだ方が面白いと思った」

「好きにしろ。俺らは好きにやれりゃあ良い」

「では――」

 コンラッドはブラックドッグの隣に座る熟年男性を手のひらで指した。

「Dr.マギネシア。貴方を今日からマッド・ドッグ(狂犬)と呼ぶ」

熟年の男――マッド・ドッグは嬉しそうに山高帽をぐいと上げてみせた。

「私の部下の中からスカウトした――ハウンド・ドッグ(猟犬)」

大男はそう呼ばれた。

「パピヨン」

女はそう呼ばれた。
彼女は不満げに頬を膨らます。

「ちょっとコンラッドぉ、私は前のコードのままなのォ?」

「パピヨンはパピヨンでも今はPhaleneだ。それに私はお前の本名を知らない」

「蝶から犬へ格下げね」

パピヨンはコンラッドから、その意味を聞き肩をすくめた。
228 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 19:07:58.18 ID:cG9LBXvXo
「最後に――」

 コンラッドは隣に座る黒人の青年を見た。
彼は図体は大きい割に、気が小さく会食が始まってからおどおどとしており、食事については一切手を付けていなかった。

「どうした、ペット・ドッグ(飼い犬)。食欲がないのか?」

 ペット・ドッグと呼ばれた青年はそうコンラッドに聞かれたが、もじもじしており中々言葉が出てこなかった。
その態度に苛立ったハウンドは、テーブルを思い切り蹴った。テーブルの上のワイングラスが転がり落ち、割れる。
音に驚いたペットは小さな悲鳴を上げた。

「いや、その――」

ペットは弁明する。

「"メリー達"がまだ何も食べていないんだ。だから僕は……後で……良い」

それを聞くとコンラッドは「そうか」とだけ答え、使用人に"メリー達"に対し"餌"の用意をしろと命じた。
使用人が部屋を出ていくと、コンラッドはペットに「食べたまえ」と肩を叩く。
冷めてしまったテーブルの上の料理が下げられ、新たに料理が置かれた。
229 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 19:13:41.10 ID:cG9LBXvXo
「あのガキに随分とお優しいなァ、コンラッド殿ォ」

皆、用意された飯を意地汚く喰らう中、ブラック・ドッグはペットの待遇の差を不満げに言った。

「口を慎め、ブラック」
「彼は優秀なタイムレスだ。今回の"更なる計画"に必要不可欠な人員なのだ」

「……けっ、こいつもタイムレスかよ! どいつもこいつもタイムレスタイムレス……」

ブラックは床に唾を吐き、大広間を後にした。彼はその行動が分かる通り、大のタイムレス嫌いであった。

それを皮切りに他の構成員も何かと理由を付けて広間を去って行った。

残ったのはコンラッドとマッド・ドッグだけとなった。
230 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 19:21:32.43 ID:cG9LBXvXo
「ドクター、アズマの様子は?」

コンラッドが口を開いた。マッドは答える。

「坊やはまだ眠ったままだ、コンラッド。私もそろそろ研究室に戻るよ。"アレ"をはじめようと思っていたところだ」
「"再実験"成功の暁には坊やは私のものになるのだろう?」

「構わない。あのデータさえ無事であれば、奴はもう用済みだ」

「そうか、そうか。ははは」

マッドは杖を回し、上機嫌で大広間を出て行った。
彼が向かう先は、屋敷の中に在る自分の研究室であった。
Dogsの構成員は事情により、全員拠点持たず活動する者ばかりであった為、コンラッドが屋敷の部屋を一人ずつに明け渡したのである。
彼らはコンラッドの想定以上に実力が高かったが、それと同時に個性も強かった。
"首輪"が必要であった。
 彼らはコンラッドの許可無しに、この屋敷を出ることはできない。
無断で外に出よう、勝手な行動を起こそうものなら、彼の正義に反したと見なされすぐさま粛清の準備が始まるであろう。
Dogs以外にも私設兵はいる。その意識をさせることで暴走の抑止力にしたのである。

 マッドの笑い声は屋敷に響き渡った。

*
231 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 19:39:33.27 ID:cG9LBXvXo
*

 研究室の中央にはベッドが置かれていた。そこに裸で横たわるのは、コンドー=アズマ。
彼は仮死状態にあった。呼吸は無く、脈も機械を通さなければ確認できない程弱いものとなっていた。

 ベッドの前に立つのはマッド・ドッグこと――マギア・マギネシア博士。
彼は眠るアズマの口元に酸素マスクを付けた。アズマの眠りは更に深い眠りの中に落ちていった。

マッドは眠るアズマの左掌を、それはまるで恋人の物のように撫でた。その手は固く閉ざされたままである。
マッドは呟く。

「ああ……私のかわいい坊や……ブラックから聞いたよ。お前は友人の為に、その身体を黒く染めて戦っていると」
「私はその魂を尊敬する。お前の精神性はまさに――タイムレス・ヒーロー(超越した英雄)と言えるだろう」
「しかし、そんなお前の身体にメスを入れるのは本当に心苦しいよ……でも仕方ないのだ」
「固く閉ざされた手を開かせるためには……"切断"するしかないんだ……許してくれ、坊や」
「君の身体は"苦痛"を与える度、強くなっていくそうだ。手術中に覚醒されては大変だから麻酔は強いものを使わせてもらうよ――」
「ははは、かわいい、私のかわいい坊や……目が覚めた時、守るべき"親友の意志"が己の手首ごと消えていたら……どんな顔をすることか」
「ははは、ははは、ものすごく――楽しみだ」

マッドは静かにメスを取った。

*
232 : ◆RbLyhCxL4nw3 [saga]:2017/08/23(水) 19:42:38.50 ID:cG9LBXvXo
・中断

・最後に向けての大事な回。最長になるかもしれません

・ここが全体の1/5です

・意見、アイデアについてはまだまだ募集中です!

・ではこのへんで
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 19:53:28.92 ID:cn3AoUB90
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/23(水) 19:58:06.20 ID:lg4NJiIp0

どのキャラも魅力的に描かれていて素敵だ
235 : ◆RbLyhCxL4nw3 [sage]:2017/11/08(水) 21:35:48.34 ID:AzPHANmro
保守
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