【安価】 ガンダムビルドファイターズトライ・アズールU【艦これ×GBF-T】

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618 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/22(水) 02:36:17.97 ID:bYJirayk0
宇宙空間で剣の鍔迫り合いの火花が飛び散り、2機の高速の機体が宙を駆けながらぶつかり合う。

神通の放つ一閃の衝撃波がデブリをバラバラに切り裂きヴェズルフェルニルの道を塞ぐが、陽炎は一つ一つを見極め躱し妨害を意に介さない。


神通「やはり小細工は…!」

陽炎「倒したきゃ、直接斬ってみなさい!追いつけるもんならね!」


陽炎が機体を反転させて再度、ジャスティスとヴェズルフェルニルは切り結ぶ。

その頃霞は『ガルム』を相手に奮戦し、長波をギリギリのところまで追い詰めていた。


霞「こいつを、受けろ!」

長波「もう何でもアリだな!?」


機体から溢れ出す溶岩、ほぼマグマと言って差し支えないようなものをムチ状にしてガルムの左脚に巻きつけるZZ。

そして動きを止めたところに氷の塊が襲い掛かるが長波はシールドでそれを防ぎつつマグマから左脚の膝関節から下を切り離す。


海風(攻撃軌道予測! 最適な回避・防御パターン推定! まだ…!)

海風「ッ…!」


『スフィア・フォーカス・ビームキャノン』の軌道を全て予測した海風は回避機動を行いつつ躱しきれない攻撃をシールドで吸収する。

だが間髪入れずにマーナガルムが迫り、右腕から放たれたクローアームの打撃がシールドを粉砕してしまう。


阿武隈「これで、そっちの吸収能力は!」

海風(あちらは機体そのものに吸収機構を付与してある、これで『粒子量に比例しての性能向上』のアドバンテージは向こうだけになった…

あと3分もすれば完全にこちらまで追いつく、それまでに『マーナガルム』を倒せなければこちらが負ける!)

海風「だとしても!」


翼から溢れ出す粒子を左腕のブレイドに纏わせて放つ『ウイングガンダム・アズライト』。その一撃は完全に直撃コースだったが阿武隈は咄嗟に『スフィア・クレイドル』を展開して防いでしまう。

しかし完全にダメージを無効化できた訳ではなく、胸部装甲に内蔵されているフィールド発生器が損壊し廃コロニーの壁面に叩きつけられた。


阿武隈「やるね、だけど!」

海風(頭が…! 限定予測でも、あと2分もすれば限界だ…!)

海風「負ける訳には…!」



愛宕「戦況、見立ては?」

萩風「霞さんは優勢、姉さんは拮抗、海風さんは… 劣勢、でしょうね」

天津風「予測の力、使って無いの…?」

朝雲「多分、使ってる。だけど『マーナガルム』は遠隔操作兵装が多い分、動きが読み難いのかも…

だとすればそれが原因で脳にかなり負荷がかかってる筈よ。 海風の予測、もう長くはもたないかも」

萩風「さらに言えば通常の粒子環境下における『アズライトバースト』は他のバーストと比べ特殊性もなく、粒子吸収機構の喪失で弱体化が起きています。

それに比べて『マーナガルム』は時間の経過で性能が上がり続けています。あと1分以内に決着をつけない限り、海風さんの負けは確実かと」

愛宕「残り4分、どうなっちゃうの…?」



視点選択 直下
1.神通『無限に至った先』
2.霞『乗り越えた先は』
3.瑞鳳『世界を焼く真紅の業炎』
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 09:36:44.97 ID:hEoX2j6+0
3で
620 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/23(木) 02:43:22.75 ID:qgy2CTDg0
side-瑞鳳-『世界を焼く真紅の業火』


ニムバス「ぐぅっ…!『真紅の戦乙女』、貴様…!」

瑞鳳「まだだ、もっと燃え上がれ!」


武器を全て投棄したエピオンがスクランブルをその身一つで圧倒する。どれだけ傷付こうと、体が焼ける痛みに襲われても彼女は耐え続けていた。

スクランブルも武装を全て破壊され、各部を再生させることで形をギリギリ保っているという有様であり既にニムバスに勝ち目は無い。


ニムバス「その力とて、貴様の身を食い潰すものだ…!何故そこまでして戦える!?」

瑞鳳「この程度、あの子達の苦しみに比べたら!」


嫌いだった。戦うことしか出来ない自分が、定められた道を進むしか出来なかった自分が、拳を振るい敵を倒すことしか出来ない自分が大嫌いだった。

だけどそんな自分を慕ってくれた人が居る。仲間や教え子、そして未来の娘達。だけど彼女達は要らぬ戦いに身を投じ、『苦しみ』を背負ってしまった。全部、自分のせいで。


瑞鳳「私が、止められていたら!」


昏睡病、EXAMナノマシンの流通を完全に阻止出来なかったことが原因で多くの犠牲者が出た。その怒りを込めて左拳でスクランブルの頭部を殴り、首関節を叩き折る。

彼女の怒りは収まらない。左腕を掴んで炎を纏った手刀で左腕の関節を破壊し、腹部に右拳を一発叩き込み壁際へと追い込んでいく。


ニムバス「ガッ…!?」

瑞鳳「私が、護れていたら!」


両肩の関節を外した上で力任せで引きちぎり損傷部位を炎で炙り溶かす。機体の損傷部分が溶かし、元の形へと再生を封じた瑞鳳はさらに拳を叩き込む。

自分が無力なせいで教え子達を戦いに巻き込み心に傷を負わせてしまった、そんな自分を瑞鳳は許す事が出来ない。そして何より…


瑞鳳「私が、弱くなければ… あの子達は苦しまずに済んだのに!」


未来の自分の死のせいで娘達が、神通と萩風が過酷な運命へと身を投じることになった。何もかもが自分が原因で、何もかも私の弱さが招いたこと。

だからこそ敵以上に不甲斐ない自分が許せない。故に彼女は戦う、『未来の自分』、『弱さを抱えたまま進み続けた自分』の過ちを繰り返さないために。


瑞鳳「私のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと、轟き叫ぶ!」


右拳が黄金色に輝き、背後から炎が大量に放出されその炎はアリーナにも延焼し、会場全体に火の手が及ぶ。

そして瑞鳳は決別の一撃を、全てを終わらせる一撃をニムバスの操るスクランブルの腹部へと叩き込んだ。


瑞鳳「爆熱!ゴッドフィンガァァァァァァァァッ!」

ニムバス「カハッ… こ、これで終わりと、思ってい…」

瑞鳳「ヒート、エェェェェェェェンドッ!」


そのままスクランブルを爆散させるエピオン。そして瑞鳳は息を整えると火の手の回りきったスタジアムを見回し呆れ返る。

これって幾らの負債になるのか、とか大会継続が出来るのか、とか他愛のないことばかり考えているが…


瑞鳳「…これ、私も逃げなきゃだよね?」


このままここに留まればエピオンが溶ける。と言うかもう所々溶け始めていた。スクランブルを破壊した影響で粒子結合が崩壊しつつあるが延焼した炎自体は本物で、実際に熱を持っているのだから。

全力を出し切った直後かつ痛覚共有で散々ダメージを負った肉体にムチを打って彼女はエピオンを操り急いで脱出を敢行する。 仲間達の居る、還るべき場所へと… ただ一つ頭を抱えながらだが。


瑞鳳「どう言い訳しよう、この大惨事!?」


視点選択 直下
1.神通『無限に至った先』
2.霞『乗り越えた先は』
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/23(木) 03:36:14.60 ID:kifA7TFzO
1
622 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/25(土) 02:07:25.95 ID:gfuf+aVg0
side-神通-『無限に至った先』


結晶を刀身に纏った『グラム』を振り下ろす陽炎、その一撃を神通は両手の剣で防ぎ鍔競り合う。

しかし幾度もの打ち合いによる磨耗と軽量化した影響で生じた強度差が決定的となり、ついに『光忠』『貞宗』の刀身が砕け散った。


神通「ッ…!だけど!」


後退し距離を取って今度は腰にマウントしていた『兼光』『兼定』を構えようとする神通だが陽炎は追撃し蹴撃を放ってサーベルの柄を落としてしまった。

そして正面からグラムによる斬撃を加えようとする『ヴェズルフェルニル』に神通はボディーブローを放つ。


陽炎「何っ…!? って当然か、そっちが『本命』だものね…!」

神通「私に拳を使わせるなんて…!」

陽炎(今の一撃で機体にガタが出始めた、システムを維持すれば保って1分ってところね… さっさと決着を着けないと、負けるのはこっちよ…!)

神通(痛覚共有の痛みを躊躇ってなんか居られない…! 一瞬でも躊躇えばこちらが負ける…! ここは真っ向から打って出るしか…!)


向き合う『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』と『ヴェズルフェルニル』。お互いに腹は括った、あとはぶつかるだけ。

先に動いたのは『ヴェズルフェルニル』、陽炎だった。陽炎は持ち前の運動性と高速を活かしジャスティスの背後へと回り込む。


陽炎「これで決めるっ!ヴェズルフェルニル!」

神通(既に動きは見切った、後は私次第… 確実に仕留めるには…!)

神通「私のこの手が真っ赤に燃える…!勝利を創れと轟き叫ぶ!」


黄金色に輝くジャスティスの掌、そして迫るヴェズルフェルニルの不意を突く形で彼女は技を放つ。

ヴェズルフェルニルの粒子結晶で覆われた『グラム』の刀身が振り下ろされ神通も己が一撃を放ち、拳と剣がぶつかり火花が飛び散る。


陽炎「嘘っ!? だけど、負けるかぁぁぁっ!」

神通「アンリミテッド、フィンガァァァァァッ!」


勝負は互角かと思われた、だが次の瞬間『グラム』の刀身が粒子結晶ごと砕け神通の掌がヴェズルフェルニルを捉え、その胸を貫いた。

神通は一気にエネルギーを流し込み、完全にヴェズルフェルニルを破壊しようとするが…


神通「フォール、エン…」

陽炎「タダで、終われるか…!」

神通「しまっ…!?」


神通は失念していたのだ。ヴェズルフェルニル、『ユニコーンガンダム』シリーズには基本的に腕部にサーベルが付属していることを。

そして陽炎はそのサーベルを展開し、『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』の腹を貫き、神通は『刺された』感覚に襲われる。


神通「がッ…!?」

陽炎「一矢は、報いたわよ…!」


粒子の循環が途絶え、2機のクリアパーツから光が消えた。 『アンチェインド・ドライヴ』と『フルブルームバースト』が機能を停止し、機体から火花が溢れ出す。

そして次の瞬間、2機のMSは爆散し宇宙の藻屑へと消えていくのだった…
623 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/27(月) 03:32:32.51 ID:3ezUFqeh0
side-霞-『乗り越えた先は』


霞「機体の粒子残量が…!」

長波「あんな大技、バカみたいに使うからだ!」


機体のエネルギー残量が底を尽きかけている『ブラストアクロスZZ』に『ガルム』が左クローの斬撃を放ち、霞はモーターブレードで防御する。

先ほどまでとは打って変わって霞が追い込まれていた。それは機体内部の粒子を『マグマ』『氷』と言う形で具象化、攻撃へと転化させたことによる大量消費が原因だった。


霞「アンタだって、ギリギリの癖に…!」

長波「こっちは元からカツカツなんだよ!」


しかしガルムのパワーは『アンチェインド・ドライヴ』の影響で上昇し続けており、パワーダウンしかけているZZよりも高い。

形勢の不利を悟った霞は一度距離を取りダブル・キャノンとミライルランチャーによる一斉砲撃を行い、ガルムを攻撃するが長波が展開した『スフィア・クレイドル』に防御されてしまう。


長波「効かないよ、そんな攻撃!」

霞「防御フィールド…!」

霞(どうすれば良いのよ、アレ…!ハイ・メガでも防がれるか、減衰させられるかもしれないし、何より当たる可能性が低い…

でも他の攻撃じゃ絶対に火力が足りない… 『アレ』、やるしか無いわね…!)


霞はシールドを投棄し真っ向から『ガルム』へと機体を突撃させる。絶対に長波は自分の手で倒す、そう決めた以上取れる道はただ一つ。

紫色に輝くクリアパーツから再びマグマが溢れ出し『ガルム』へとソレを振るう。


長波「糞っ… なけなしの粒子で、やけっぱちか!」

霞「違う! もう少し保って、『ブラストアクロスZZ』!」


鞭状のマグマを切り裂こうとした長波が右腕のクローを振るう。しかしその動きこそが霞の最大の狙いだった。

右腕にマグマの鞭が纏わりつき、クローの展開を封じてしまう。長波は振り払おうと機体の腕を振り回すが…


霞「『凍れ』!」

長波「何っ!?」


鞭状のマグマを氷が覆い尽くし、瞬間的に冷却されたマグマが凝固して石化する。長波は唖然となって一瞬思考が止まってしまう。

霞はその隙に乗じて距離を詰める。 ようやく霞の意図に気付いた長波だが既に遅く、霞は機体の残るエネルギーを全て『一撃』へと集めながらガルムへと迫り…


長波「このっ!やらせるかよ!」


残る左腕のクローを振るい、迫るZZの胸部へとそのクローを突き立てる長波。 しかしクローが貫けたのはFAによる追加装甲のみだった。

そして霞の目論見は功を奏し、ガルムの左腕を凍らせることで長波の逃げ道を封じ、その上で『スフィア・クレイドル』の展開範囲の内側へと入ったのだ。


霞「この距離なら、バリアは張れないわね!」

長波「放せ、このっ!」

霞「ハイ・メガ・キャノン、フルパワー!コイツを、喰らえぇぇぇぇぇぇぇっ!」


放出される極大のビームが防御することすら出来なくなった『ガルム』に直撃する。だが直撃しても粒子残量の不足により威力が減衰していたのか頭部を吹き飛ばし、腹に大穴が開いた程度のダメージだった。

しかし致命傷には相違なく、ガルムは大爆発を引き起こし接射を行った『ブラストアクロスZZ』はそれに巻き込まれ、大破してしまう。


霞「粒子残量ゼロ、損傷レベルは機体戦闘続行不可… ここまで、か…」
624 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/27(月) 04:47:17.39 ID:3ezUFqeh0
side-海風-『拮抗の果てに』


『スフィア・フォーカス・ビームキャノン』をブレイドで切り払い、背後から襲い掛かる『スコール』を振り向き様に展開した左脚の『グリフォン・ビームブレイド』で切り裂き破壊する。

海風の脳は限界に近付いていた。それでも未来予測演算の行使を止めず、阿武隈の『マーナガルム』へと喰らいつく。


阿武隈「やるね… だけど…!」

海風「っ、はぁ…!」

海風(『アンチェインド・ドライヴ』の力はもう『アズライトバースト』を上回ってる… 残る勝ち筋は…!)


脳が限界に近付き機体もパワー負けしている以上、技量の劣る海風に既に勝ち筋は殆ど存在していない。しかし『チーム』としての勝ち筋は残っている。

自爆覚悟でマーナガルムを破壊する、そして残るメンバーへと全てを託す。それが『フリューゲル・ヴェント』として『勝利』への最適解だったのだが、神通と霞の機体ステータスが『戦闘不能』へと変化してしまった。


海風「先輩と霞が… でも『ガルム』と『ヴェズルフェルニル』も…」


二人は敵対する2機と相討ちになった、その事実に海風の顔が青ざめる。もう既に勝ち筋は殆ど無い、それどころか勝機が絶望的になったのだから。

しかし海風は絶対に諦めない。ここで負ければ語った想いが、積み重ねた今までが全部無駄になる。譲れない想いがある以上、諦めたくない。


海風「まだ負ける訳には…!アズライト!」


海風の意志に応えるように『ウイングガンダム・アズライト』のツインアイが輝き、各部のクリアパーツが強い輝きを帯びる。

だが相対する阿武隈もまた、勝ちを譲るつもりはなく『全力』を以って海風を倒そうと、最後の切り札を切った。


阿武隈「行くよ、マーナガルム… ジェネレーター・フルドライヴッ!」

海風(『ファイナルウルフストライク』、キジマさんを打ち破った技… 今の『マーナガルム』が使えば限界を迎える筈…!

勝機は、ここに賭けるしか無い… 分の悪い博打ですが、やるしか道は無い…!)

海風「アズライト…! 勝利を、この手で創るために!」


両腕の『アズライトウイングブレイド』に粒子が収束し、膨大なエネルギーを剣が纏い海風は迎撃態勢を整える。

そして次の瞬間、阿武隈の『マーナガルム』が突撃を行いアズライトに迫った。


阿武隈「ファイナルウルフ、ストラァァァァイクッ!」

海風「これで、終われぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


海風も両腕のブレイドを振るい収束させたエネルギーを解き放ち、放たれる刃がマーナガルムと激突する。どちらも一進一退、互いに退かずそしてその余波で周囲のデブリや廃コロニーは吹き飛ばされていく。

しかし勝敗は決してしまった。『アズライトウイングブレイド』の刃がエネルギーに耐え切れず、砕け散ってしまったのだ。


海風「しまっ…!?」

阿武隈「勝負、ありだよ!」


そのまま突っ込んできたマーナガルムにより廃コロニーの残骸へと叩きつけられるウイングガンダム・アズライト。

諦めずに海風は足掻こうとするが『アズライトバースト』の粒子循環が途絶え、機体のパワーがダウンを始めてしまう。


海風「な、何!?」

阿武隈「勝負、ありだよ」


振り下ろされるクローアームが目の前に迫り、海風は目を瞑る。 ここで終わってしまった、その絶望が心に押し寄せ海風は諦めてしまう。

しかし耳に響いたのは機体の爆発音や負けを知らせる音声などではなく、意外なシステムボイスだった。


『OVER THE TIMELIMIT BATTLE ENDED』
625 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/27(月) 05:11:28.54 ID:3ezUFqeh0
天津風「時間切れ…?」

愛宕「確か大会規定じゃ残存機体の数で勝敗が決まる…」

朝雲「先輩の機体はもう駄目、霞の機体も戦闘不能判定、海風の機体は生きてるけど…」

萩風「そしてそれは向こうも同じ… 残るのは『マーナガルム』一機のみです」

天津風「延長戦にもつれこんだ…」


『制限時間となりバトルは終了、両チームとも2機を撃破… 従って、大会規定通りインターバルの後代表者同士による延長戦を行います』


阿武隈「…首の皮、一枚繋がったね」

海風「いえ、あれは海風の負けで…」

阿武隈「違う。勝負はまだ終わってなかった。機体が少しでも動く限り、まだ負けじゃ無い」

海風「阿武隈さん…」

阿武隈「だから次は、延長戦は私が絶対勝つ」

海風「海風も、負けるつもりはありません」


『また現在、近隣施設で発生中の事故の調査・確認のためインターバルの時間を1時間に延長します。皆様、ご理解の方をお願いします』




神通「うぅっ…」

霞「先輩、大丈夫ですか…?」

神通「ダメージのフィードバックが… だけど、大丈夫です…」

萩風「無理しないでください。立つのもやっとの有様で」

神通「でも機体修理をしないと…」

天津風「運営側から許可を頂いてきました。ここからは私と萩風が引き継ぎますから、先輩は朝雲と医務室に行って下さい」

神通「お願いします…」

海風「萩風さん、機体の方は…」

萩風「…思った以上に酷いです。『アズライトバースト』による過剰負荷の影響で、外装は無事でもフレームが軋みをあげています」

海風「そんなにダメージを…」

萩風「そして何より… 根幹である『アズライトバースト』のコア、メインコアは無事ですがサブコア2つが完全に逝きました」

海風「最後の、一撃が原因ですか…!」

霞「それって、ヤバくない…?」

萩風「ヤバイどころの話じゃないですよ… 天津風さん、外装と武器は任せます。こちらのコアとフレームは私がやりますから」

天津風「アズライトをそのまま使うつもり?」

萩風「確かにインターバル延長はしていますが『ロンギフローラム』も『ブラストアクロス』を直すには時間もパーツも足りない。

唯一無事かつ、損傷が軽微な『アズライト』を使う以外道は…」
626 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/28(火) 01:36:54.32 ID:3t2pdRCp0
萩風(とは言ったものの… アズライトのサブコアが破損してるからバーストは使えない。

フレーム自体は共通部品が多いから『フルブルーム』と『アクロス』の生きてる部品を使えば直せなくはないけど…)

萩風「…海風さん、決断をしてください」

海風「決断、ですか」

萩風「今選択肢は2つあります。1つは『現状のままバーストを封印すること』、これならバーストが使えない以外機体出力はそのままで戦えます。

二つ目は『『フレブルーム』か『アクロス』用のコアを移植すること』です。コアもほぼ同一規格ですし、海風さんなら両方の『特性』を行使可能でしょう」

海風「でも海風は明鏡止水には…」

萩風「フルブルーム自体は一定ラインの閾値を越える『意志』があれば誰にでも行使可能です。かなり高めのラインが設定されていますが、海風さんの精神力なら問題なく行使可能でしょう。

それにアクロスもクリアパーツの量は素の状態でもZZを上回ってる以上、余裕で使えると思います。ただあくまでも『使える』だけですが…」

霞「それって、全性能は発揮できないってこと?」

萩風「はい。だけど素の状態で戦うよりは勝機はあるかと」

海風「…それでも、確率はかなり低いでしょう」

萩風「ですが、それで負けたとしても誰も文句は…」

海風「…」

霞「納得しない、って顔だけど」

萩風「我侭を言わないで下さい。これ以外の選択肢は…」

天津風「萩風、1個選択肢隠してるわよね」

霞「天津風?」

天津風「前に瑞鳳さんが『アズライトは同系統のコアを3つ積んでる』って言ってて、今萩風は『他の機体のコアはほぼ同一規格』って言った。つまり…」

海風「『2機のコアをサブの代替にできる』、と言う事ですか…!」

萩風「…理論上は可能です。だけど敢えて選択肢から外したのは…」

「『何が起きるか分からない』、でしょ?」

萩風「お母様!?」

霞「戦いは…?」

瑞鳳「全員、ぶっ潰してきたよ。今頃、警察とか自衛隊にとっ捕まえられてると思う。確かに代替コアに二人の機体のコアは移植できる。

だけどそれは3つのコアに付与された能力が同時に発現しちゃうんだよ」

萩風「海風さんの『粒子量に比例して性能が向上する能力』と姉さんの『人の意志に比例して性能が向上する能力』、霞さんが先ほど発現させた『イマジネーションを粒子を用いて具象化する能力』の3つの特性…

これを行使すれば、海風さんや機体の負荷だってバカにならないし本当に何が起きるかだって予想すら… 最低でもこの前の別荘の戦いで使ったアレレベルの何かが…」

霞「アレ以上のものが…?」

海風「構いません。 危険は承知の上、それにその程度も御せ無ければ海風に『戦う』資格はありません」

萩風「…」

瑞鳳「やってあげて、萩風ちゃん」

萩風「…はぁ… どうなっても、知りませんよ」
627 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/28(火) 02:16:03.57 ID:3t2pdRCp0
陽炎「…どうやら、あっちの揉め事も終わったみたいね」

阿武隈「どう、直りそう?」

長波「ぶっ壊れた部分はね。 改RX-0が共通パーツ多くて助かったよ…

あと背中には陽炎のヤツを移植、胸部装甲には私の使ったから『スフィア・クレイドル』も展開できる」

阿武隈「それだけあれば充分だよ、あとは向こう側を待つだけだね」



天津風「外装は出来たわよ」

萩風「こちらもフレームはなんとか直せました。それに不本意ながらコアも…」

海風「ありがとうございます。これで、戦えます」

天津風「二人の機体の部品も使った、決戦仕様よ。これで存分に戦って来なさい」



ウイングガンダム・アズライト (決勝戦仕様)
武装
・ツインバスターライフルアズライトNEX(サーベル内蔵)
・メッサーツバーグ・ラズールスタイン×6
・アズライトバスターソード×2
・マシンキャノン×2
・ビームガン兼ビームトンファー×2
・グリフォン・ビームブレイド×2
・脚部内蔵パイルバンカー×2
・ハイ・メガ・シールド
・ファトゥム-02
・頭部ハイ・メガ・キャノン
・腹部ハイ・メガ・キャノン
・フィン・ファンネル×3
・刀剣型ビームサーベルビット『兼光』『兼定』

概要
ウイングガンダム・アズライトを対・阿武隈用に、『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』『ブラストアクロスZZ』のパーツを使用し応急処置を施した機体。
2機の武装を受け継いでおり射撃武装も多いが切り離すことも可能であり、デッドウェイトにはならない。またZZのFAも一部使用し防御能力も向上している。
そして破損したサブのコアの代わりに『フルブルームバースト』『アクロスバースト』用のコアを使用、その為誰にも予測できないような能力を持つ可能性がある…
628 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/08/30(木) 03:38:12.87 ID:ssS5jdIy0
形成された砂漠のフィールドに降りる『ウイングガンダム・アズライト』。斃れた仲間達の武装を受け継いだ藍銅鉱の翼は悠然と敵を待ち構える。

そして少し遅れて地面に着地した『マーナガルム』。阿武隈は不敵に笑うが殺気を隠さない。


阿武隈「やっぱり、出てきたね」

海風「この機体は海風の機体ですから。例え、誰かに貰った機体だとしても… 駆け抜けてきた時間は、積み重ねた『これまで』は嘘じゃないから」


海風と『ウイングガンダム・アズライト』は一緒に駆けてきた。機体の姿形が変わろうと、彼女自身が変わろうと共に駆けたという事実は変わらない。

互いに足りないから補いあって、苦楽を共にした愛機に心で海風は語りかける。


海風(やっぱり貴方は海風と『同じ』だったんですね)


最初は不完全だった。力を使えば壊れるからと枷を嵌められた『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』と、何も持っていなかった海風。

『フレスヴェルグ』は新しい力と『アズライト』の名前を得て、海風も様々なものを得た。きっとどちらかが欠けていればそうはならなかっただろう。


海風「力を貸して。 この戦い、絶対に負けたくないから」


機体が唸りをあげ、別荘での戦いで感じた『最高の一体感』が再び訪れる。そして海風も少し微笑み、操縦桿を強く握り締めた。

覚悟は決まった、後は一緒に駆け抜けるだけ。 仲間達の想いを全て背負った、最高の『半身』と共に。そして無機質な音声が鳴り響き、戦いの幕が上がった。


『BATTLE START』


阿武隈「行くよ、『マーナガルム』! 解き放て、『アンチェインド・ドライヴ』ッ!」


最初に動いたのは阿武隈だった。機体のリミッターを解除し鎖を全て解き放つ。

蒼い燐光がフレームから溢れ出し、各部の粒子吸収機構が稼動を始めて輝きが増す。そして海風も続き、SPスロットの力を使う。


海風「先輩と霞の分まで行きますよ、『ウイングガンダム・アズライト』! 解き放て、『アズライトバースト!』」


『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』と『ブラストアクロスZZ』のコアが橙色と紫に輝き、その直後に機体本来のコアが蒼い光を放ち2つのコアも蒼く染まる。

そして天に昇るような蒼い光の柱が形成され、各部を『宝石の鎧』が覆いつくす。そして宝石の翼が形成されたのを確認した海風は『メッサーツバーグラズールスタイン』とライフルを連結させ、照準をマーナガルムへ向けた。


阿武隈「その力、例の…!」

海風「この力は二人の『想い』を受け継いだもの… これで、貴女を倒す!」


フィン・ファンネルを射出し前面に展開、さらにシールドのビームキャノンの砲口も同時に照準を合わせる。

そして結晶がライフルの銃身とシールドの砲口、そしてフィン・ファンネルを覆い海風は引き鉄を引く。


海風「まずは、これで!」


放たれる超大出力の砲撃、『ブラストアクロスZZ』のハイ・メガ・キャノンの威力の数倍はあろうビームがマーナガルムに襲い掛かった。

阿武隈は間一髪機体を上昇させて射線から逃れるがその威力に戦慄する。明らかに牽制射を超える一撃であり、普通の機体なら粒子を全て消耗しきるであろう一撃を平気で放っているのだから。


阿武隈「最初からトばすね… ならこっちだって! 『ネージュエール』!」


背部の光の翼の余剰エネルギーが無数の刃に形成されてアズライトに殺到する。海風は銃火器全てを投棄し、『兼光』『兼定』を抜き放つ。

そしてビームの刃の雨を掻い潜りながら『マーナガルム』へと肉薄した。
629 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/09/02(日) 04:03:02.86 ID:r9nFI0U40
霞「あの力、あの時と同じ…」

瑞鳳「違うよ。同質だけど、発生原理は全く違うから」

萩風「…また、何を仕込んだんですか」

瑞鳳「仕込みはしたけど、仕込んだのは大分前… 機体をアズライトに改修した時だし使う事ないだろうから封印してたし」

愛宕「原理が違う、って?」

瑞鳳「前の現象、『アズライトバーストイレギュラー』は海風ちゃんの意志がアリスタを経由して機体自身と共鳴したことで起きたこと。

今のは想定外だけど想定内、『アズライト』を核に『フルブルーム』『アクロス』のコアが共鳴したことで『2つのコアに予め定められた力』を引き出してる状態なの」

天津風「それって『RGハウリング』の…」

瑞鳳「2機のRGシステムを共鳴させて機体能力を増幅させる『RGハウリング』の発展型、って感じかな。問題はその必要なく海風ちゃんが同質の能力を単一で発揮させちゃうことだけど…」

霞「想定外だけど想定内って、コアが3つ共鳴してるのは想定内じゃ…」

「本来ならコアを搭載した3機が共鳴する事で能力を引き出す筈が、単一の機体に3つのコアが収まってしまったことで能力が発動しているのが想定外、と言うことでしょう」

瑞鳳「あれ、もう大丈夫なの?」

神通「ええ、お陰で散々ですが… まだ痛みますし…」

朝雲「フルブルームの弱点ね、ファイターとの感覚共有は… アクロスも燃費が劣悪なのも難点だし」

瑞鳳「やっぱフィードバックの強制カットは入れといた方が良かったかな… まぁ神通ちゃんの言った通り、3機のコアが1機に集中してる状態で発動してるのが想定外なの。

まぁ『フルブルーム』と『アクロス』の本来の担い手じゃ無い分性能は落ちてるから『イレギュラー』と同じ程度の力に納まってるけどね」

天津風「3機が共鳴した時、何が起きるんですか?」

瑞鳳「さぁ?」

萩風「さぁ、って… 無責任過ぎるのでは?」

瑞鳳「だから封印してたんだよ。 本気で『何が起きるか分からない』。 三人のファイターが機体にリンクした状態で3機が共鳴すれば…

意志が増幅されて粒子の持つ『人の心に反応する特性』の影響でそれこそ物理法則を超えた何かトンデモない現象が起きる可能性だってある」

朝雲「萩風と先輩のように時間を遡って過去に行く、とか?」

瑞鳳「その可能性もあるし、もっと別の事象だって起こせる可能性も… 少なくとも手に負える範疇の事じゃなくなるから共鳴能力は封印したんだよ。

でもコアを1つの機体に纏めて搭載した結果、粒子循環によって物理的なリンクが出来て共鳴しちゃったって訳」

萩風「つまり私、間違った事言ってませんでしたよね?」

瑞鳳「…」

神通「何か言ってください、お母様」

愛宕「ま、まぁ今の所は何も起きてないんだから…」
630 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/09/02(日) 05:53:12.96 ID:r9nFI0U40
海風「はぁぁぁぁっ!」

阿武隈「今度は、こっちが押されて…!」


振り下ろされる2本の刃を右腕で粒子結晶のバリアを形成することで受け止めるマーナガルム。先ほどとは打って変わって阿武隈が圧倒される側になっている。

胴に向け阿武隈は左腕でボディーブロ−を放つが海風は瞬時に予測し、生じた隙を逃さず高速で背後い回り込んで『スキーズブラズニル』の翼部を右手の剣で切り裂き破壊した。


阿武隈「このっ…!」

海風「そんな攻撃、当たらない!」


阿武隈は左腕で振り向き様の打撃を放つが海風は即座に後退し、リーチから外れてその攻撃を躱す。そして海風は次の行動を脳内で組み立て、勝利への道筋を創り上げていく。

不敵に笑う海風。予測した無数の未来から『最良』の未来を選び、そこへ至る道をずっと創り出してきた。そして『いつもの言葉』を海風は言い放つ。


海風「整いました、勝利への道筋が!」

阿武隈「そう簡単には、行かせない! リモートドリルバースト!」


右肩部から残っていた『ハティ』を射出し、クローアームで掴みそのまま『ウイングガンダム・アズライト』へと放つ。

海風はマシンキャノンでハティを迎撃し、炎煙を剣で払う。しかしマーナガルムは瞬時に距離を詰め体当たりを行い、ウイングが吹き飛びその衝撃で海風は剣を落としてしまう。


海風「なら、こちらも!」


背中に強引に装着していた『ファトゥム-02』を射出しマーナガルムに直撃させるが、『スフィア・クレイドル』を展開しており機体へのダメージは無い。

さらにクローアームで掴まれた『ファトゥム-02』は握りつぶされ、爆散してしまった。


阿武隈「これで、もうマトモな武器は…!」

海風「果たして、どうでしょうかね?」


スロットを切り替える海風。その直後背中の翼が2枚切り離され、そして二振りの剣になる。海風の『奥の手』だ。

その二振りのバスターソードを掴み、右腕のバスターソードの切っ先をマーナガルムへと向ける。


海風「ブレイドは本命じゃない… こちらが真打です…!」

阿武隈「呆れた… この期に及んでそんなものまであるなんて」

海風「前回は武器ほぼ剥ぎ取られましたからね。それに対する回答ですよ」

阿武隈「だからって、翼まで剣にするのはやり過ぎだよ…!」
631 : ◆6G6UiAPa1Q [saga ]:2018/09/02(日) 07:29:19.82 ID:r9nFI0U40
再度激突する『ウイングガンダム・アズライト』と『マーナガルム』。海風と阿武隈、二人の信念がぶつかり合いフィールド上に火花を散らす。

互いに距離を取り、態勢を整え直して向き合い『マーナガルム』は天へと拳を掲げ、『ウイングガンダム・アズライト』は左腕のバスターソードを投げ捨てて残るバスターソードを両腕で構える。


海風(きっと阿武隈さんは『ファイナルウルフストライク』を使う… パワーはさっきの戦闘から推測可能な粒子吸収速度から試算すると、おおよそ互角レベル。

そして向こうの機体もそろそろ限界点を迎えつつあるのは打ち合いで確認済み、持久戦は向こうが許さない。だからこそ勝利に至る道はここなんだ)

海風「これが最後です『アズライト』! 二人の力で、勝利の先を…!」


バスターソードの刀身に粒子が集束し、結晶の刃が形成される。機体の外装に形成された宝石の鎧も、腕が砕けないよう防御する最低限以外のものが崩れ剣に取り込まれていく。

阿武隈も全てのエネルギーを機体の右腕に集中させ、ブーストのチャージを始め迎え撃つ準備を整える。


阿武隈(ここで勝負を決めないと、機体が保たない… でも焦っちゃ駄目、パワーは互角だから…!)

阿武隈「行くよ『マーナガルム』…!これが最後の一撃だよ!」


互いの機体に膨大なエネルギーが集束し、その余波で2機周辺に形成されているフィールドの地面が崩れ始める。

そして2機は今、最大の一撃を解き放った。


阿武隈「ファイナル… ウルフ、ストライクッ!」

海風「全てを、断ち切れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


2機は宙を駆け、振り下ろされた剣と右腕の拳がぶつかり合い、そのエネルギーの余波でフィールド自体が崩壊を始めてしまう。

だが互いに一歩も退かない。そんなぶつかり合いに遂に決着がついた。


阿武隈「『マーナガルム』ッ!」


『ウイングガンダム・アズライト』のバスターソードがエネルギーの放出とマーナガルムの力に耐え切れずに砕け散る。

だがそこも海風の想定通り。 次の瞬間、頭部と腹部にある発射口からビームは放たれた。


海風「ハイ・メガ・キャノン!」

阿武隈「ッ…!」


通常のガンプラなら消し飛ぶであろう一撃、しかしマーナガルムは両腕をクロスさせ防御する。ハイ・メガ・キャノン自体威力がエネルギーの集束率の低下により本来の威力が出ていないから防げたことだ。

だがそれは阿武隈にとって悪手の選択、そしてハイ・メガ・キャノンの威力不足も海風の勝利への筋書き通り。機体の両腕をクロスさせていたことで、海風の姿が見えなくなっていたのだから。


海風「これでぇぇぇぇぇぇぇっ!」

阿武隈「嘘っ!?」


距離を詰めた海風が放ったのはただの左足による跳び蹴り、しかし阿武隈は知らなかった。 『ウイングガンダム・アズライト』の脚部に何が内蔵されているのかを。

蹴りが両腕に直撃した瞬間、足の裏から内蔵されている杭が飛び出し両腕ごとマーナガルムを貫く。パイルバンカー、今まで隠し通してきた『ジョーカー』を海風は最後の最後で使ったのだ。


海風「海風の、勝ちです…!」


機体が既に限界に近付いていた『マーナガルム』にとってその一撃は致命傷になる。ボロボロだった機体はそのダメージの影響で機能を失い崩れていく。

無機質なシステム音が響く中、フィールドに残っていたのは蒼い輝きを帯びた『宝石』の名を冠する機体だけだった。



BATTLE ENDED

Winner"Flügel Vento"
632 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/17(水) 00:27:18.29 ID:oW5+AeCy0
ようやく復旧… ボチボチ再開します



阿武隈「…私が、負けて…」ガクッ

阿武隈(『真の姿』を晒して、アンチェインドまで貰ったのにまだファイターになって半年も経ってない相手に…!)

海風「阿武隈さん!? どうかしましたか!?」

阿武隈「…なんでも無いよ。大丈夫、だから」

海風「そうですか…? てっきり阿武隈さんにも先輩と同じ現象が起きたのかと…」

阿武隈「え」

海風「フルブルームみたいにダメージフィードバックは起きていないようですが…」

阿武隈「そんな危険なガンプラ使ってたの!?」

海風「はい。海風も、ちょっとフラついて…」フラッ

阿武隈「ちょ、ここで倒れないで!?まだ表彰式も残ってるんだからね!?」ガシッ

海風「す、すみません… なんか、全身に力が…」

阿武隈「もう、たかが『遊び』で命削り過ぎだよ…!」

阿武隈(違う。例えフィードバックで傷付いてでも勝ちたい、って思いがこの子にはあったんだ… その『覚悟』が私を上回った、それだけの話で…)

阿武隈「変わったね、貴女も」

海風「え…?」

阿武隈「最初に会った時より、ずっと良い顔してるから」

海風「ならきっと、そう変えてくれたのは海風の周囲の皆のお陰でしょう。先輩が道をくれて、霞が同じ道に立ってくれて、他の皆も同じ場所に居て…

アズライトだって誰かさんと春雨さんが創って、榛名さんがくれた技術で瑞鳳さんが改修して、そして先輩と霞の機体が無ければここには立てなかった。だからきっと、海風がここまで変われたのは皆のお陰なんです」

阿武隈(ここで浜風さんを名前で呼ばないのもらしいけどね…)

海風「それにここまで来たのだって、阿武隈さん達が居たからですよ」

阿武隈「私達が?」

海風「海風達が初めて、そして唯一『勝てなかった』のは阿武隈さん達です。だからそれを乗り越えたい、って思うのも当然でしょう」

阿武隈「…だから、ここまで来たんだ」

海風「もっと早く当たるかなとは考えましたが、まさかここまで縺れ込むとは思ってませんでしたけど」

阿武隈「まぁそこは数奇な因縁ってことに…」


神通「海風さん!」

霞「海風!大丈夫なの!?」

萩風「だから危ないって言ったのに、全く…!」

天津風「やったじゃない、海風!」

朝雲「凄かったわよ、海風!」


阿武隈「ほら、皆も来てるから。行ってあげたら?」

海風「はい。 では阿武隈さん」

阿武隈「何?」

海風「ありがとう、ございました」

阿武隈(ああ、やっぱり… この子には、本当に敵わないなぁ…)


海風(こうして、海風達の戦いにひとつの幕が下りた。 全てのことに一区切りがついてようやく肩の荷が下りると、そう誰もが信じていた。

これから始まる『最後の戦い』… 加速していく運命のうねりに気付く事が無いまま、束の間の勝利に身を委ねるのだった)


第21話『蒼と白、真紅と青』
633 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/17(水) 00:51:19.75 ID:oW5+AeCy0
お久し振りです。>>1です

ここから物語は最終章にはいります。大体シナリオは決まってるので大丈夫です
そして最終章突入なので主人公格の『神通』『霞』、そして割と不遇な『天津風』の強化編(選ばれなければ次々話に統合、もしくは同時系列扱い)をやります
今回は諸事情により霞&萩風、神通&朝雲、海風&天津風と言った組み合わせになることをご承諾ください

次話選択 下3票先取まで
1.霞『Burning/Glacial My Soul』…諸事情により萩風と共に京都へと身を隠す霞。大鯨のツテを辿り、かつて戦った神風達の下へ向かったが追撃するEXAMキャリアーが彼女達へと襲い掛かる。NTとして、彼女はどうEXAMと向き合うのか…

2.神通『My Fate』…朝雲の家族を護るために彼女と暮らすことになった神通。しかし神通も萩風同様、『前の神通』の人格が目覚めつつあり… そんな中でキャリアーとの戦闘に陥ってしまうが…

3.天津風『感情の果て』…海風と共に仙台へと赴く天津風。天津風は未だに自分の中のガンプラ学園への復讐心を拭えない、その最中彼女達へと海風へ一方的な憎悪を抱くスドウ・シュンスケが襲い掛かる…
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 10:12:25.57 ID:QgWzlXw/0
3で
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 13:26:48.29 ID:+QQkoaCoO
3
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 22:56:07.07 ID:oW5+AeCy0
3
637 : ◆6G6UiAPa1Q [saga sage]:2018/10/17(水) 22:59:36.71 ID:oW5+AeCy0
>>636
ごめんなさい、これミスです
無かった事にしてください
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 13:26:26.92 ID:CorwRJKi0
3
639 : ◆6G6UiAPa1Q [saga sage]:2018/10/20(土) 01:25:57.36 ID:JKaiHStV0
断章『変動する事象』


《静岡某所 EXAMナノマシン製造工場》


古鷹「施設に居た全員の捕縛、完了したみたいです」

衣笠「護衛のテロリストまで雇ってたとはねぇ。ま、衣笠さん達に比べたらド素人にも程があったけど」

SAT隊員「御協力、感謝します。こちら側の被害はお陰で殆どありませんでした」

榛名「いえ、こちらこそ支援に感謝します。今後、クルスト以下メンバーの移送はそちらにお任せします。

物証の類の処分はなるべく早急に。これで『契約』は満了、ですね」

SAT隊員「承知しました。では…」

榛名「さて、向こう側は…」



《世界大会会場 外》


ニムバス「くっ…!」

トリスタン「は、放せ!この!」

警察A「大人しくしろ!逃げられんぞ!」

浜風「テロリスト4名を確保、引渡しを完了します」

警察B「御協力、ありがとうございます。しかし建物は壊滅、ですね」

浜風(瑞鳳さんが『バーニングバースト』を使えばこうもなる、か… いくらなんでもやり過ぎだけど)

夕雲「これで、未来は変わるのかしら…」

浜風「まだ分からない… だけど、細かい事象の変動が大きくなれば全体の流れも変わる筈…」

浜風(この先、何が起きるかは解らない… 念のため、手を打っておくか)
640 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/20(土) 02:07:14.90 ID:JKaiHStV0
《その夜 焼肉屋・個室》


瑞鳳「夜は焼肉っしょ!」(例のポーズ)

萩風「また焼肉… 健康に…」

朝雲「萩風じゃないけど、流石に週に2回目はね…」

瑞鳳「いや、今回は割りと止むを得ない事情があって焼肉なんだけどね。お祝いも兼ねてなんだけど。

ぶっちゃけると私だってお肉はそんなに好きじゃ無いけど、個室で全員で話せるのはここくらいだし」

大鯨「私のツテで借りてるから、盗聴とかは大丈夫よ」

海風「止むを得ない事情?」

神通「一味も捕まえて、施設も抑えたのであれば…」

瑞鳳「だから、だよ。『終わった事だと思い込んでると後で痛い目に合う』、ってよく言うじゃ無い。

対策として、明日から皆をバラバラの場所に夏休み明けまで匿って貰うことにしたの。特に霞ちゃんと海風ちゃんは狙われ易いし」

天津風「霞はまだしも、海風も?」

霞「だって逆恨みとは言っても海風は一味、スドウ・シュンスケに恨まれてるしニムバスにも辛酸を舐めさせてる。狙われるのは当然よ」

瑞鳳「二人ずつに分けて皆を各地に分散させて隠匿することで襲撃のリスクを下げる、って浜風ちゃんが提案したの」

海風「…まぁ、アレの提案なのは気に食わないですが仕方のないことだと思います」

瑞鳳「じゃあお母さん、お願い」

大鯨「まずは海風ちゃんと天津風ちゃん、二人には私達と仙台に来てもらうわ。襲撃の可能性が高い海風ちゃんを護るためには、私達のおひざ元が一番だもの。天津風ちゃんの御両親には連絡済みだし、警護もつけておいたわ」

天津風「仙台には榛名さん達も居るから、大丈夫そうね…」

大鯨「で、霞ちゃんと萩風ちゃんには京都。 京都には私達と似た系統の家系、『人の守護』を生業にしてるところがあるから。既に先方には依頼済みよ」

萩風「何故私を? 単体での強さであれば、姉さんの方が…」

大鯨「萩風ちゃんは気配遮断のスキルがあるし、一応私と同じ鯨流の人間だからよ。本来は流派・東方不敗よりこっちの方が家系的には正統派、だから私の代理としてね」

霞「京都、か… 行くのは初めてかしら…」

神通「では私達は?」

大鯨「東京に残って貰うわ。 だけど可能な限り、二人で行動して。 そうしないと、ご家族に累が及ぶかもしれないから」

朝雲「…もしかして私達って、囮?」

瑞鳳「そう言うわけじゃ無いよ。 バランスとか色々考えた結果だよ。 何がこの先起きるか想像できないから、手を打っておかないと」



神通(既に歴史は変わりはじめている。私が『過去』として学んだ記録よりも大きく、道が逸れ始めていた)

霞(過ぎていく時間は止められないし巻き戻す事なんてできない。だから、『未来』への手を打たないといけない)

海風(出来る事を全力でやって、より良い方向に向かう。それが今海風達のできる最善だから…)」


断章『変動する事象』終
641 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/21(日) 02:27:34.66 ID:wP1CdtwL0
第22話『感情の果て』


《仙台市 仙台駅》


大鯨「はい、ここが仙台よ。長旅、ご苦労様」

海風「思ったよりも栄えてますね…」

榛名「東北最大の地方都市ですから。ただ大きく発展しているのは青葉区などの中心街だけで、他の交通機関で20分もすればド田舎ですよ」

天城「天城の大学のある泉区なんか結構… 都市再開発計画からもハブられてますし」

天津風「えぇ…」

阿武隈「仙台は行政区が泉、青葉、宮城野、太白、若林の5つに分かれてるの。私達が住んでるのは太白で、大鯨さん達の家があるのが宮城野区。榛名姉さんは青葉区ね」

天津風「く、詳しい説明をどうも」

浜風(牛たんの美味しいお店は… 仙台駅の近くにも結構…)

海風「こんな時に、名店の検索をしないで下さい!」ゲシッ

浜風「あだっ!? な、何するんですか!」

海風「食い意地ばかり張って、恥ずかしい…!と言うかなんで居るんですか!」

浜風「だって折角だし… それに私も一応護衛として…」

海風「はぁ… 絶対役に立たないのが予測しなくても目に見えてる」

浜風「一応私だって瑞鳳さんから護身の訓練受けてますよ!」

時雨「だけど浜風、僕らの中でキミが最弱じゃないか。春雨以下だよ?」

浜風「うっ…!?」

春雨「そこは擁護出来ないですね、はい」

浜風「春雨にまで言われた…」

海風「何故お二人まで…」

時雨「護衛だね。 浜風の」

海風「…訓練受けてる癖に護衛対象扱いとは」

時雨「仕方無いよ。生身の戦闘能力は微妙だけど浜風は僕等の中でも指揮や戦況予測に関しては一番だから」

陽炎「まぁその辺の話は置いておいて、これからどうするの?」

長波「こっちは南仙台の家にこれから帰るけど」

大鯨「そうねぇ… 如月ちゃん、手配は終わってる?」

如月「ええ。マンションの部屋の確保は終わって、後は不知火ちゃん達に頼んだ日用品とか必要なものが揃ってれば」

大鯨「じゃあまずは私達の家に来て貰おうかしら」
642 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/21(日) 03:32:01.24 ID:wP1CdtwL0
《中野栄 瑞鳳実家》


海風・天津風「(唖然)」

時雨「まぁ、そうだよね。こんな武家屋敷なんて時代劇にも出てくるかどうかの代物だし」

大鯨「中身はリフォームしてるから大丈夫よ。お陰で歴史的価値は大幅ダウンだけど」

春雨「私達も初めは驚きました、はい」

浜風「では私達は今後の打ち合わせをしてきますので、海風達は別室で待っていてください」


松風「あれ、キミ達だけなのかい?」

海風「確か、松風さんでしたね。はい、海風と天津風さんだけです」

松風「他のも来るかと思ったんだけど… まぁ良いか。数が少ない方が、守り易いし」

天津風「貴女だけ? 他の娘たちは?」

松風「照の字と初の字と朝潮は店、母さんが道楽でやってる模型店の店番。不知火以外の残りの面子は買い物、僕は留守番さ」

海風「残る不知火さんは?」

松風「アイツは如月と一緒で『特別』だから。母さんの代理で仕事してるよ」

天津風「私達と殆ど年も変わらないのに…」

松風「キミ達だってテロリストと戦ってるじゃないか。まともな訓練も受けてない、軍人でもないのに」

天津風「それはそうだけど…」

松風「それと同じさ。 出来る事をやってる、ただそれだけの事だよ。 拾って貰った恩返し、ってのもあるけどね」

天津風(出来る事、か…)

松風「こんな所じゃ暇だろうから、ウチの案内でもするかい? 一応母さんは暇そうなら一通り見学させろ、って言ってるし」



見学場所 直下
1.書庫
2.同上
3.中庭
4.蔵
643 : ◆6G6UiAPa1Q [sage saga]:2018/10/21(日) 03:47:23.28 ID:wP1CdtwL0
あ、誤字ってました

見学場所 直下
1.書庫
2.道場
3.中庭
4.蔵
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 05:29:38.22 ID:G8y8aLINO
1
645 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/22(月) 01:46:17.63 ID:AFEKY64S0
《書庫》


松風「ここは書庫。母さんと父さんの仕事の資料、あとは僕等も読むような本も仕舞ってある。基本的にウチの方針は『本は共有財産』、買った本は誰でも読んでいいってことになってるんだ」

海風「学校の図書室並ですね…」

天津風「何でも揃ってるというか… ってこれモデ○ラの第一号じゃない!ホビージャ○ンの創刊号に宇○船、B-○LUBまで…

それにガンダム関連の資料集も、しかも新品同様の…!ちょっとこれ借りて良い?て言うか貸して!」

松風「駄目。その辺は母さんのだし、保管状態だって良く保ってるんだ。少なくとも部屋からの持ち出しは出来ないよ」

天津風「読みたかたったのに…」

松風「ま、どうせ何か仙台に留まるんだからここに来て読めば良いさ。勿論母さんの許可を取ってだけど」

天津風「分かったわ…」

海風「あ、この本読みたかったヤツ…」

松風「ああ、その辺のは後で返してくれれば持って行っても良いよ。多分母さんの読み終わって死蔵してる本だし」

天津風「何その本?」

海風「医学の本です。図書館なんかにも置いてない専門書なので」

松風「珍しいね、そう言う本に興味を示すなんて。宝石好きって聞いたから、こっちの鉱物事典なんか読むかと思ってた」

海風「実は今度先輩に剣術の指南を頼んでいて… それで怪我した時の応急処置なんかを学んでおこうかと」

天津風「てっきり医者でも目指してるのかと思った」

海風「将来の事なんて、まだハッキリ決まってませんよ。 進学して、手にそれなりの職に結びつくような事はしたいんですけどね」

松風「現実的と言うか、まったく夢が無いね。 もう少し何かないの?」

海風「今の所はまだ何も。 今、この状況に対応するだけで精一杯です」

松風「そうかい。 じゃあキミは?」

天津風「私は… パイロットでも目指してみようかな、って考えてるかしら」

松風「良いじゃないか。民間なら最近増えてきてるらしいし、女性パイロット」

天津風「私が目指してるのは軍用、自衛隊の戦闘機パイロット志望よ」

海風「意外ですね… 航空機が好きなのは知っていましたが」

天津風「私のお父さん、パイロットなの。 今は松島に居る」

松風「なんだ、すぐ近くに居るじゃないか」

海風「松島と言うと、結構エリートじゃ…」

天津風「そうよ。私の自慢で、私もそこに追いつきたいの」

海風「でもガンプラ学園に入学したのは?」

天津風「…触れないで。その名前、聞きたくない」

海風「…分かりました。こちらにも触れて欲しくないものもありますし、お互い様です」

松風「ま、人には触られたくない事の1つや2つはあるさ。 あ、キミ。これは持っていって良いよ」ドサッ

海風「…何です、これ?」

松風「母さんにこれ渡しておけって。剣術の指南書。色んな流派のモノがあるから。あと蔵に行けばもっとあるよ」

海風「既に山なのに、これ以上あるんですね…」
646 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/22(月) 02:35:31.12 ID:AFEKY64S0
《道場》


松風「ここが道場。僕等も修練でよく使ってよ」

天津風「えーと、武具の山が…」

海風「騎馬用の槍にヌンチャク、ハンマーから弓… よくもまぁ古今東西の武器がここまでゴチャゴチャに…」

松風「ここにあるのは練習用のものばかりさ。 一般的にはお値段は張るけど歴史的な価値とかは殆どないよ」

天津風「貴女達、これを使って鍛えてるの?」

松風「僕達が武術を始めるって決めた時、好きな武器を一人一つ選んで、徒手格闘だけじゃなくてもう1個武器を使った戦い方の練習もしろって母さん達に言われたんだ。

拳一本でやってるのはのわっちだけで、後は全員何かしらの武器を使ってるよ。ああ、でものわっちも篭手は使ってるか」

海風「何故そんなことを…」

松風「ぶっちゃけると僕等が素手の格闘が弱すぎるんだよ。だから武器を使ってそれを補えって事さ。本当に拳の才能があるのはのわっちだけで、僕等にはそう言うのが皆無らしくて」

天津風「でも武器を使う意味はあるの? 元から格闘戦の才能が無いと…」

松風「いや、例えば母さんの場合なんだけど素手だと姉貴や父さんには劣るけど、トンファーとか武器を握れば途端に二人纏めて相手に出来るようになるんだ。

そんな感じで武器との相性次第だと化ける可能性がある、ってことらしいよ。実際、弥生とかそんな感じで武器持っちゃえば中々強いし」

海風「因みに武器は?」

松風「これさ」つメイス

天津風「よりによってそんな武器!?」

海風「実際、振るえるだけの筋力さえあれば技術が要らないので意外と強かったりするんですよね質量武器って。

海風だってアズライトでバスターソード使ってる理由がそれですから」

天津風「機体パワーは桁違いだものね、アズライトは…」

松風「あと榛名と天城も同類だよ。 あの二人、トマホークと槍を持つと並の人間じゃ手をつけられないからね。

あと古鷹もかな? 銃器持った途端、辛うじて物理法則がついてこれるような狙撃術披露するし…」

天津風「そう言う人間も身の回りに居るものね…」

松風「キミ達も何かやってみるかい?」

海風・天津風「遠慮します」

松風「だろうね」
647 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/23(火) 02:03:13.11 ID:kSdKXoV90
《中庭》


松風「で、中庭ね。結構広いから迷ったらここに出れば分かり易いよ」

天津風「もうかなり疲れたんだけど…」

海風「静岡からここまでの疲労もありますし…」

松風「なら休憩しようか。丁度ここに休めるテーブルもあるし。飲み物取ってくるよ」



天津風「鯉まで居るのね、ここ」

松風「母さんの趣味だよ。動物好きで、特に水生生物が好きらしくてね。

ここじゃないけど、別宅みたいなところに魚の飼育専用の建物と、お手伝いまで雇ってさ」

海風「水族館にでもすれば良いじゃないですか」

松風「もうしてるよ。 福島のいわきとか、仙台に新しく出来たとことか、稀少な魚は提供してるし出資もしてるんだぜ」

天津風「やってるのねもう…」

松風「当人曰く慈善事業、だとさ。おかげで東北の地域好感度No.1企業になってるし」

天津風「色んなモンに手を出しすぎじゃ無いかしら?」

松風「流石に車とか飛行機とかは作ってないけど、それ以外なら色々やってるよ。水産加工から不動産業、芸能関連に孤児院経営…

前はもう少し規模は小さかったけど、倒産した企業とか吸収していった結果こうなっちゃったんだと」

海風「吸収ですか…」

松風「倒産した会社にも社員は居るし、そこに生きる技術やノウハウもある。だから迷った人に手を伸ばして見返りとしてそれらを得る、そんな事を繰り返してたら成長しちゃった訳さ」

海風「成るほど… そう言うやり方もありますね…」

松風「すべては人助けのために、って言うのが母さん… ウチの先祖からのやり方さ。僕は血は繋がってないけどね」

天津風「そう言えば大鯨さん達の家系って、『守護者』だって聞いたけど…」

松風「そうさ。 人を人ならざるモノから護る、それだけを使命と生業にして生きてきた家系の一つ。 今もその使命に準じてるのは日本では2・3家しか無いみたいだけど」

海風「人ならざるモノ…」

松風「ああ、大丈夫だよ。キミや霞って娘はちゃんと『人』だから。 もし人に悪意を持って危害を加えるってなら話は別になるけど」

天津風「どう言う括りなのよ…」

松風「人か人じゃ無いかは人の心を持っているか持ってないかで決まる。 例え見た目が化け物になり果てても心が人間なら人間、人の心まで捨てるならそれは人間じゃ無い…

キミ達の持つ力は言わば『人の持つ個性』でしかない。で、連中は個性を否定する、その『人』に仇なす悪意を持った化け物。だからキミらを護り、連中は排除対象と認めたのさ」

天津風「分かるような、分からないような…?」

松風「海風、だっけか。 キミは『人』かい? それとも『化け物』かい?」

海風「…『人』、だと思いたいです」

松風「なら護るべき者だ。 これが判断基準」

天津風「そんな曖昧な…」

松風「そんなもんだよ。 あそこにある碑、あれに刻まれてるのが母さん達の先祖… あの碑に名を刻まれた人達は、そうやって護る為に戦って来たんだから」
648 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/23(火) 03:06:45.34 ID:kSdKXoV90
《蔵》


海風「ここが蔵、ですか…」

松風「正しくは蔵1号だね。 4つあるうちの」

天津風「ここには何が在るの?」

松風「1号は先祖代々伝わる『武』に纏わる文献とか、あとは美術品とか歴史的な資料の類だね。

武術ってのは戦う為のもの、だから後継者が途絶えることで失われるものが多いらしい。それを保管するのがこの蔵さ」

海風「でも失ったものをどうやって?」

松風「秘伝書とか文献なんかをかき集めてるんだよ。そう言うのが無いのは関係した人たちから色々聞き出して、資料化してるんだと。

まぁ案の定古過ぎて劣化して文字が読めなくなったり、そもそも字が読めないものもあったりで…」

天津風「この壷は…」

松風「触らないほうが良いよ。専門家が見たら目玉ひんむいて、泡吹きながら尿漏れするくらいの代物だから」

天津風「ひぃっ!?」

松風「この1号蔵にはそんな類のものがゴロゴロしてるから気を付けてね。あとは昔の暮らしとかを記録した本とかもここに収蔵されてるか」

海風「博物館が建てられそう…」

松風「実際ウチに博物館からの寄贈の要請がわんさかさ。 だけどここは歴代の重ねた歴史だから、どこにも出しちゃ駄目って先祖代々言われてる。

GHQすらここに手出しは出来なかったそうだよ。 この前の震災でちょっとモノが壊れたりしちゃったけどね」

海風「セキュリティ大丈夫なんです?」

松風「ここに来るまで無事で済むと思うかい? ヘリで空からとか地面掘って入ってきても、迎撃できるだけの準備はあるし」

海風「ですよねー…」

松風「キミらに見せられるのはここだけだよ」

天津風「他の蔵は駄目なの?」

松風「内容だけ言っておくと2号は武器蔵で歴史的にヤバめの武器とか収蔵してて、3号蔵はまぁ人が触れちゃいけないような類のものが入ってて、4号は…」

天津風「4号は?」

松風「…」

天津風「何よその沈黙!?」

松風「下手な真実は知らないほうが良いよ」

天津風「そんなヤバイの!?」

松風「ぶっちゃけると… 『人じゃないもの』が」

海風・天津風「!?」

松風「ミイラとか骨とかが大半なんだけどさ…」

海風「それって生きてるのもあるって…」

松風「厳重に封印された悪霊の類とか、死なずの化け物とか…」

天津風「…見た事、ある?」

松風「深海棲艦、化け物と戦ってた僕から見ても… 漏らしかけたね」

海風「うわぁ…」

松風「まぁ人に友好的なのも居るから一概には言えないんだけど… その、ね? おかげであそこだけ地球が壊れでもしない限り壊れないような特殊物質で出来て、まじないの類も幾重にも重ねてるから」

天津風「安心、して良いの…?」

松風「そ、それに今は昔は駄目だったけど今は殺せるような武器もあるし… これとか」

天津風「携帯電話…?」

海風「それ、ファ○ズフォン…」

松風「出所は不明なんだけどね… おもちゃかと思ったら本物でびっくりだよ」
649 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/24(水) 02:31:38.09 ID:wVDLRdIA0
プルルルル

松風「ん? 母さんかな… はい、どうしたの? 分かった、連れて行くよ」

天津風「家の中に内線電話まであるのね…」

海風「と言うかよく蔵に居ると分かりましたね…」

松風「母さんがキミ達をお呼びさ。応接間に行くよ」


《応接間》

大鯨「どう、我が家の感想は?」

海風「す、凄く広かったです」

天津風「色々と凄まじくて…」

大鯨「誰もがそう言うわ。仕方のないことだけど。 で、これからについて説明するわね」

海風「海風達はどうすれば?」

大鯨「二人には青葉区、仙台駅から徒歩15分くらいのところにあるマンションに住んでもらうわ。今そこの隣部屋に榛名ちゃんが住んでるから、何かあったら頼って。

食事や日常生活については可能な限り自分でやって貰うことにはなるけど… 隣に秋月ちゃんも居るから多分大丈夫だと思うから」

天津風「そこに引き篭もっていれば良いんですか?」

大鯨「どこかに出かけても構わないわ。だけど可能な限り買い物とかは近場で済ませること、遠出をするなら変装をして護衛をつけること、戦う『備え』はしておくこと。でも可能な限り交戦は避けることと、今から渡す携帯を持ち歩く事。

で、外出先で『もしも』の事態にあったら点在しているウチの系列会社に逃げ込んで貰えれば対応出来るように通達はしておいたわ。住所と社名の目録は貴女達のアドレスに転送してあるから」

海風「意外と自由はあるんですね」

大鯨「全部縛り付けていたら苦しいだけだもの。ただ貴女達は危険と隣り合わせだってことは留意しておいて」

海風・天津風「はい」

大鯨「一応日用品とかベッドは用意しておいたけど、あと必要なモノ、買っておいたものが好みと合わなかったりしたら部屋に資金をちょっとだけ置いておいたからそれを使ってね」

海風「良いんですか、そこまでして頂いて?」

大鯨「貴女達は守護対象であり、お客様。もてなしは当然じゃない」

天津風「はぁ…」

大鯨「松風ちゃん」

松風「はい。 これがキミ達に渡す携帯だよ」

海風「さっきのファ○ズフォンじゃないですか!?」

大鯨「はぁ… 勝手に持ち出さないの、蔵2号に戻してきなさい。あと渡すならファ○ズじゃなくてサ○ガとオ○ガ、ギアも一緒しなさいな」

海風「その2つのギアもあるんですか!?」

松風「冗談さ。 こっちが本物、まぁ極普通のiPh○neさ」

天津風「流されたわね、見事に」

海風「海風Android派なんですけど…」

松風「じゃあこっちだ。極普通のエクス○リア」

海風「最新機種ですけどね…」

大鯨「じゃあ後は… 天津風ちゃんは隣に、海風ちゃんは此処で待って。あと松風ちゃんは浜風ちゃん呼んで」
650 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/24(水) 04:53:04.78 ID:wVDLRdIA0
浜風「私が呼ばれたと言う事は例の件ですね?」

大鯨「そう、貴女達の戸籍の話よ」

海風「目処が立ったのですか?」

大鯨「実はねぇ… 戸籍自体は作るのは簡単、まぁ手を回せば良いだけなんだけど問題が生じちゃってね…」

浜風「問題、ですか?」

大鯨「戸籍を作るのは良いけど、学校の問題とか色々手を回しきれないのよ。しかも古い戸籍の抹消なんて無理、少なくとも記録は残っちゃうの」

海風「じゃあどうするんです?」

大鯨「ここで一つ提案。 私の養子にならない?」

浜風「養子!?」

大鯨「メリットは今の両親から籍を外せる、手続きも最低限で済むからコストは最低限、法的に守り易くなる、その他色々…

デメリットは苗字が変わることで世間からの目がくること… そしてもう一つが大きいのよ」

海風「…『人の守護』の業を背負うことになる、と言うことですか」

大鯨「そう。一応私の幾つか用意してる偽装戸籍の一つに養子にするつもりなんだけど… 私と偽装とは言え戸籍上の義娘になるってことは、否が応でもその運命に巻き込まれる可能性が生じる」

浜風「―――私は、構いません」

大鯨「良いのね?」

浜風「もう何度も深海棲艦とは矛を交えています。なのでそんなのは今更の話、とっくに戦う覚悟は出来ています」

大鯨「そう… 海風ちゃんは?」

海風「海風は…」

大鯨「考える時間、必要かしら?」

海風「…いいえ。 海風も、それでお願いします。 バビロニアで目の前で救えない命を見て、理不尽に命を奪われるのを見て…

そんなのはもう嫌だから… 海風の力で誰も傷付かない未来が創れるのなら、守護者の業も戦う罪も全部背負います」

大鯨「分かった。手続きはこっちでしておくわ。 じゃあ後は… 大丈夫かしら? あ、ガンプラの整備はこっちでやっておくから。

あと瑞鳳から『例の機能』について聞いたから、使えるようにしておくわね」

海風「例の機能?」

浜風「私の機体、『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』には他の機体にはない特殊機能を有しています。

そしてその機能は『ウイングガンダム・アズライト』にも密接に関わっていますがその能力は特殊状況下、人工粒子影響下でしか使用出来ない難点があって未調整で放置されているんです」

海風「で、その機能の調整を大鯨さんが?」

大鯨「ええ。ビルダーとしては瑞鳳よりちょっと下程度だけど、RGフレームを弄ることくらいは私にも出来るし、予備パーツも貰ってるから」

海風「そう言えば『RGフレーム』って共通部品が多いんですよね? アズライトのフレームは失敗作で他とは変質してる筈なのに、どうして互換性が?」

浜風「今のアズライトのフレームは春雨製の『フレスヴェルグフレーム』と瑞鳳さんの『RGフレームtype-Vプロト』を組み合わせたものです。

変質しているのはコアと胸部フレームだけでそこはオリジナルのまま、他は全部type-Vプロトを用いて改修を施してあります」

大鯨「因みに系譜をホワイトボードに書いてみると、こんな感じ」


・RGフレーム(全ての始祖。搭載機:『ゲイルストライク・クロイツ』『レーゲンデュエル・クロイツ』、春雨製の機体全般)
・RGフレームtype-T改(パワー全振り。搭載機:『ネブラブリッツ・クロイツ』)
・RGフレームtype-U(RGシステムtype-Z搭載型の始祖。搭載機:『ヘイルバスター・クロイツ』『ヴァンセイバー・クロイツ』)
・RGフレームtype-U改(RGハウリング搭載型。搭載機:『ニクスプロヴィデンス・クロイツ(リバイ)』『ミラージュフレーム・クロイツ(リバイ)』)
・RGフレームtype-V(機体とファイターの共振機能搭載、パワー強化。搭載機:『ガンダムエピオン・クロイツ』)
・RGフレームtype-V改(パワーを落とす代わりに共振機能を拡大化させた。搭載機:『インフィニットジャスティス・ロンギフローラム』『ブラストアクロスZZ』)
・RGフレームtype-V改改(共振機能を省き、パワー全振り。搭載機:『ダブルオーガンダム・クロイツ』『ガンダムダブルエックス・クロイツ』)
・RGフレームtype-W(Vを安定させたもの。浜風用のものは特殊機能有り。搭載機:『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』)


海風「じゃあロンギフローラムとブラストアクロスはtype-V改に相当するからtype-Vプロトのアズライトとは互換性があったと」

大鯨「ぶっちゃけると胸部パーツとコア以外はほぼ大差無いのよね。V以降は関節強度はエグイくらい強くなってるけど」

浜風「完全に互換性が無いのはT系統だけで、あとは多少の互換性はあります。この点は覚えておいてください」

海風「覚える意味があるのですかねぇ…」


イベント安価 直下
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/25(木) 15:57:50.44 ID:YwFtYygxO
武器蔵に行く
652 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/26(金) 04:48:46.44 ID:IFJAJKYk0
《蔵2号》


大鯨「よいしょっ、と… ここが蔵2号。所謂武器蔵ね。武器と言っても『曰くつき』のものばっかりの蔵だけど」

海風「海風達をどうしてここに?」

浜風「ここは立ち入るなと瑞鳳さんが以前にも…」

大鯨「そうね。ここに所蔵している武器には『意志』があるものもある。長年に渡ってあり続けた武器に九十九神が宿るなんてザラだもの。迂闊に近付けば取り憑かれる。

九十九神ってどうして百じゃなくて九十九なのか、知ってる?」

浜風「そう言えば聞いた事は…」

大鯨「九十九神は神様の成り損ない、『百』である神に至ることなく存在が定着してしまったもの。

八百万の神として不適格、つまり欠けている神様だから『九十九神』なのよ。諸説ある中の一つ、なんだけどね。人を求めるのも、『百』へと至るためじゃないかって私は考えてる」

海風「足りないモノが、人にあると?」

大鯨「それが何なのか、例えば血の通う肉なのかそれとも人の魂なのかは分からない。だけど九十九神の生じた武器は人を求める、呪いの武器やら妖刀って言うのがソレなのよ」

浜風「成るほど… でも何故尚更私達をここに?」

大鯨「貴女達は私の娘になる、それはさっき海風ちゃんが言った通り『守護者の業』を担うことになるわ。

戦うための道具は要るでしょう? 持っているだけで使わないで済むのが御の字だけど、念のためにね」

浜風「つまりここにある武器から選べ、と?」

大鯨「簡単に言えばね」

海風「しかし海風は武器なんて持った事は…」

大鯨「大丈夫よ。もし貴女に完全に適合するような武具があれば、きっと勝手に身体が動くようになるから。

適当に手にとってみれば大体はわかるわよ。拒絶すれば武具の側から逃げるし」

海風「それって操られてる状態じゃ…」

大鯨「精神力さえあれば制御出来るわ。海風ちゃんの精神力なら問題は無し、寧ろ浜風ちゃんの方が危ないかも」

浜風「メンタル弱い扱いなの何で…」



海風「うわ、さっきのファ○ズフォンだけじゃなくて他のドライバーも揃ってる…」

大鯨「あ、そこのほぼ化石になってるベルトの類は駄目よ。本当に取り返しつかないから」

海風「アー○ルとオー○ドライバーは流石に… と言うかライ○ーズギアってオル○ェノクじゃないと適合しないのでは?」

大鯨「そこはバッチリ弄ってあるわよ。 ハシラジマに持っていってもらって、ベルトの認識機能を弄って貰って」

海風「えー…」

大鯨「まぁ戦○ドライバーとかゴース○ドライバー、あとロ○トドライバーなんかは使っても問題は無いと思うけど…

あまりその辺は持って行って欲しくは無いわね。本当に色々危ないし」

海風「そこは流石に弁えていますよ」




浜風「何と言うか、どれもしっくり来ないような…」

海風「あまり武器なんか詳しくも無いし…」

大鯨「そうね… 無理に選ぶ必要は無いわ。 またいずれ、正式な手続きが済んだあとでも遅くはないし」
653 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/28(日) 01:53:38.53 ID:B2N8LnO20
時雨「終わったかい?」

浜風「ええ。今後の段取りもつきました」

天津風「何の話してたの?」

海風「複雑は話ですよ。天津風さん達は無関係ですけど」

天津風「なら家庭の話ね… それくらいしか私達が無関係なのは無いし」

海風「まぁその位であれば簡単に予想は出来るでしょうし… 後は大鯨さんがマンションまで車で送ってくれるそうです」

春雨「流石に電車はもう飽きましたし、はい… あ、瑞鳳さんから連絡がありました」

浜風「瑞鳳さんは何と?」

春雨「『二人が無事に目的地に到着したのを確認、それぞれ穏便に活動しつつゆっくり休養を』だそうです」

海風「そう言えば瑞鳳さんは何処に?」

浜風「箱根の夕雲の実家です」

時雨「…一番豪勢なとこに陣取ったね」

天津風「え?」

春雨「夕雲の実家は高級旅館でして…」

海風「そう言えばこの前先輩の口を割らそうと実家から貰ったらしいA5飛騨牛を餌にしてたような…」

浜風「その、何と言うか著名な方々もよく利用するようなところなので贈り物が絶えないんです… そこの一部を夕雲経由で瑞鳳さんが受け取ってて…

さらには瑞鳳さんが夕雲の実家問題を解決した時偉く気に入られてるし、凄い高待遇は間違いないんじゃ…」

海風「何かずるい様な、ずるくない様な…」

時雨「まぁ擁護するなら瑞鳳は昏睡病の発覚直後からずっと動いてて、休んでる暇もほぼ無しのハードワークだったから。

各方面とかけあってたのも瑞鳳だし、何なら裏組織一つ一つを虱潰しにして流通ルートを壊滅させたりしてたからね」

浜風「それに『バーニングバースト』を使用したのであればここ数日は立ってるだけでやっとの有様でしょうし… 療養も兼ねて、休んでもらわないと」

天津風「『バーニングバースト』?」

春雨「簡単に言えば『アズライトバーストイレギュラー』の超強化版で、スタジアムを全焼させたのもその力です。はい」

海風・天津風「え」

春雨「必要なのは瑞鳳さんが『ガンプラを完全に精神を同調させ』ることと『肉体のリミッターを全部外すこと』で、肉体・精神的にも過負荷が激しくて常人なら廃人になる程だとか」

時雨「キミ達には弱いところは見せられない、って頑張って平気なフリしてたけどね」

海風「瑞鳳さんが…」

大鯨「お待たせ〜。あら、どうかしたの?」

浜風「いえ、何も。 では行きましょうか」
654 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/28(日) 03:07:28.98 ID:B2N8LnO20
《マンション》


舞風「あー、疲れたぁ…」

弥生「荷物、絶対二人で運ぶ量じゃない…」

大鯨「二人共お疲れ様。来月のお小遣い、2倍ね」

舞風「やったぁ!こっち選んだ甲斐があったよ!」

弥生「じゃんけんで、負けただけ…」

舞風「うっ…!? それは言わないでって…」

野分「はぁ… 舞風、もうお客様が来てるんだからあまり騒がないの」

舞風「はーい。じゃ、後はごゆっくり」

弥生「失礼、します…」

野分「すみません、騒がしくて」

時雨「元気があって良いと思うけど? それにしてもかなり広いね、ここ」

大鯨「ファミリータイプのマンションだもの。4LDKだから一組だけ同じ部屋になっちゃうけど…」

春雨「なら春雨と時雨がその部屋を使います、はい」

浜風「え、なら私達でも…」

海風「断 固 拒 否 し ま す」

浜風「…」

時雨「そうなると思ってたよ、うん」

野分「秋月と如月、私と榛名さんは隣の部屋に居ます。如月は不在がちですが私と秋月はトレーニング以外は居るので何でもおっしゃって下さい」

天津風「スーパーとかはこの近くにあるの?」

野分「徒歩2分のところに大きめのスーパー、アーケードまで出れば飲食店もあって衣類の類も買えますし10分も歩けば駅ですから買い物は大丈夫かと。

コンビニも色々あるけど夜は治安が良いとは言い難いのであまり出歩かないのが賢明です」

天津風「その、模型とかは…」

野分「チェーン店なら駅前に出てヨ○バシとボー○ス、あとは文○堂ホビーとか… あとは八乙女にあるTam○amくらいかしら…?

あとは個人ね。 ここの最寄だとあおば通りの中のデパートの向かい、あとは南仙台の榛名さんの実家に中野栄のウチね」

天津風「榛名さんの実家も模型屋だったのね」

野分「ええ。と言っても榛名さんがやってるなんでも屋としての側面が最近強くなってるけど…」

海風「本業より副業が儲かるってあるあるですよね」

野分「継いでないから副業って訳じゃ… まぁ、その辺は置いておいて… 観光は… この辺何かあるかしら…?」

大鯨「勾当台公園と西公園くらいじゃない? どっちも大きな公園って位で、見所は西公園にSLが飾ってあるくらい?

観光がしたいなら駅に出れば観光用の循環バスとか秋保とか観光地行きバスもあるわよ。鉄道使えば仙台空港と利府の新幹線基地、あとは三陸方面なら気仙沼に松島もあるわ」

天津風「い、色々あるんですね…」

大鯨「勿論見て欲しいのは海の○水族館と仙台港だけどね」

天津風・海風「あ、はい」


イベント選択 直下
1.海風『未知の地に』
2.天津風『空への憧憬』
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/28(日) 09:50:11.60 ID:vVIWt0w70
1で
656 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/29(月) 03:41:29.72 ID:HIwDuUJz0
side-海風-『未知の地に』

《仙台市内 アーケード街》


野分「ここの路地は行き止まりで、あそこの路地は今工事で通行止めです」

海風「成るほど…」メモメモ

秋月「あの、さっきから何を…?」

海風「逃走経路の確認です。マンションや周辺で襲撃があった時の為に確認は必要でしょう」

野分「確かに逃げ道の確保は必要ね… あ、そこの路地は裏通りに繋がってて右に曲がると勾当台公園に着きます」

海風「左は?」

野分「大通りに出て、そこを右に真っ直ぐ行けば駅に出ます。でも人に紛れるなら公園駅から地下鉄に乗ったほうが良いかしら…

地下鉄はここを通っているのは南北線で終着駅は泉中央と住宅街のある富沢、仙台駅で東西線に乗れば動物園のある八木山と浜に近い荒井が終着駅ね」

海風「ありがとうございます。 じゃあ次は逃げ込めそうな施設は…」

野分「この近場なら県庁と市役所があります。あとはデパートが幾つかに、確か県警本部があったかと」

海風「県警本部があるなら何とかなりそうですね」

秋月「あ、少し良いですか?」

海風「どうしました?」

秋月「ここの周辺なんですけど、大きな病院が2箇所あるんです。1つは普通の大きめの病院で、もう一つは大学病院なんですけど…」

海風「成るほど、医療施設も確認しておいて…」

秋月「それだけじゃなくて、その… その2箇所の病院に、昏睡病の罹患者の3割が入院しているんです」

海風「罹患者が…?」

秋月「はい。一応その事を頭に入れておいて欲しい、とお母さんが言ってました」

海風「…分かりました。留意しておきます」



海風「大体このくらいで良いでしょう。二人共、ありがとうございました」

野分「いえ、母さんに助けになれと言われてるから。 だけど貴女も真面目ですね」

海風「ここは未知の場所ですから。 把握しておかないと、イザと言う時に動けませんし。それに結構、こう言うのも好きなんです」

秋月「場所の把握とか、ですか?」

海風「自分の知らない街や風景を見て歩いて隅々まで知るのも、楽しいですよ」

海風(だけど身の安全は自分で護らないと… あまり襲われる、と言うのは想像したくはないけど)

野分「あ、そうだ。 そろそろ良い時間ですし、お茶でもどうです?この辺に結構オススメのお店があるんですよ」

海風「良いですね。 試しに行ってみたいです」
657 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/30(火) 02:40:30.52 ID:Q9g+Khbz0
カランカラン

<イラッシャイマセー


榛名「あら…」

海風「あれ、榛名さん…?」

野分「ここに居たんですか?」

榛名「ええ。実家で用事を済ませて、こちらに戻ってきました」

秋月「用事?」

榛名「破損した3機と天城達の機体の回収です。阿武隈達のは修復と調整、天城と満潮の機体にはUC-Dを搭載しようかと。

勿論『ファヴニール』『エイクスュリュニル』『ラタトスク』、そしてここに無い機体にも搭載予定です」

海風「しかしアレは…」

榛名「勿論、欠陥があるのは知っています。力にリミッターをかけられないから際限なくパワーを増幅させて自壊を招く、オリジナルである『ウイングガンダム・フレスヴェルグ』から続く欠点であり改良できなかった点です。

その改良理論自体は完成していますが、今のデータではどうにも… それでもEXAMの脅威が残っている以上、力は必要です」

海風「それだけじゃありません。機体内部に蓄積された粒子が人に感応して、共鳴現象を引き起こす可能性だってあるんです。

ファイターの過負荷だって馬鹿にならないし、制御不能になって暴走すれば…」

榛名「分かっています。だから使用した実機のデータが必要なんです。 完全に制御を行うために」

海風「と言うかやっぱりコピーじゃないですか」

榛名「…」

海風「何とか言ってくださいよ」

榛名「春雨さんには申し訳なく思っています、はい」

海風「しかもサラっと言ってますけど、瑞鳳さんすら至らなかったフレスヴェルグのフレーム技術を完全再現したと」

榛名「いえ、粒子貯蔵の技術までは出来ていないので完全とは言い難いかと」

海風「それでも、大まかな理論は模倣出来ていると」

榛名「ええ。それは完璧に出来ています」

海風「呆れた…」

榛名「…丁度良かったです。海風さん、少しお話があります。座って、何か適当なものを頼んでください。奢りますから」

海風「はぁ…」

榛名「野分さんと秋月さんも。好きなモノをどうぞ」
658 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/10/31(水) 03:51:28.94 ID:dRuJfKTl0
海風「UC-Dのデータ取得の依頼…?」

榛名「海風さんはオリジナルの『モード・アズール』の使用経験があり、完全制御した唯一の人間です。

さらには強化された『アズライトバースト』、その変質状態すら制御してみせた… 貴女以上に適役は居ません」

海風「具体的にはどうしろ、と? まさかアズライトのデータを…」

榛名「いえ、貴女とアズライトのデータは正直参考にならないんです。貴女達はもう人と機体が完全に同調している状態、未知の領域に達しているので」

野分「未知の領域…?」

榛名「その一端があの力、『アズライトバースト』の変質形態… 更なる可能性を引き出せば… …いえ、ここで話すことではありませんね」

秋月(榛名さんが口をつぐんだ… 一体何を…?)

海風「では、どうデータを?」

榛名「貴女に改RX-0、既に改修を加えUC-Dを搭載済みの機体を貸与します。 その機体で他の機体とのUC-D使用時の交戦データを複数採取してください。

欲しいのは発動時の稼動データだけ、他のデータは破棄するとお約束しましょう」

海風「もう改修した機体が…」

榛名「一番最初、実験的に導入した機体です。 これが、その機体…」

海風「青い『スヴァジルファリ』…?」

榛名「元々は榛名用の予備機、3機の性能を統合させた実験用の機体『RX-0[Fg]フィルギア』です。

パワーはアズライトに劣りますが、性能は引けをとらない筈かと」

海風「『フィルギア』…」

榛名「勿論報酬はありますし、条件はそちらでお決めください。どうかお願いします」



依頼に… 選択 直下
1.応える
2.依頼を受けない
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 10:34:46.88 ID:ZmviJPutO
1
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/31(水) 10:34:54.93 ID:tahLP7Sg0
1で
661 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/03(土) 02:30:54.44 ID:ceLtQ+Ct0
海風「ではこちらから3つ条件を提示させて頂きます。これを飲めなければテストは請け負えません」

榛名「条件は?」

海風「1つ、取得データ及びUC-D基礎理論データの春雨さんと瑞鳳さんへの開示。あれは元々の技術はこちらのものですから」

榛名「構いません。元々、『シームルグ』と『カラドリウス』導入するつもりでいましたし」

海風「2つ、交戦するファイターは海風との交戦経験が無くこれから戦う可能性が無いファイターであり、その人物から海風のデータの供与を受け無いこと。

榛名さん自身は採らない、と言いましたがテストの相手がそうとは限りません。そちらにこちらのデータだけが渡るのは不公平です」

榛名「分かりました。 大会に参加しない、不知火さん達に協力を仰ぎましょう」

海風「そして最後の3つ目は… 『ウイングガンダム・アズライト』及びこちらの予備機である『ガンダム・バエルセレスタイト』の2機分の改修パーツの供与です。

仕様書は後程お渡しします。また設計データ等は完成後こちらに譲渡しそちらの分は破棄、一切の複製や再現を禁じます」

野分「最後のは些か吹っかけ過ぎじゃ…」

榛名「別にそこまでの無茶ではありません。寧ろ前者二つはこちらで配慮すべき事であって当然のこと、こちらとしては実質的に条件は1つだけかつ1人分の機体を強化するだけで全ての『改RX-0』が強化される…

こちらにとっては好条件、損より利益の方が大きい美味い話です。だけど海風さん、今は協力関係とは言え普段は競い合う相手ですよ? もしかすれば機体パーツに何かしら仕込む可能性も否定できないのでは?」

海風「榛名さんのお仕事は信用が第一、ですよね? しかもビルダーとしての誇りもある、そんな人物がわざわざ自分の名を貶める行為をしますか?」

榛名「必要であれば、しますがね。 今回はその時では無いので絶対にしませんが。疑うのであれば瑞鳳さんと春雨さんの二重チェックでもして頂ければ」

海風「そこまで言うのであれば大丈夫です」

榛名「あと仕様書を頂いても無理なモノ、例えば確実に強度が足りなくなるような無茶な装備などは承れません」

海風「そこは後程すりあわせを行いましょう。その場合の仕様変更は仕方無いことなので」

榛名「ではこの条件で契約の締結と言う事で」

海風「ええ。仕様書の形式は紙媒体と電子どちらで?」

榛名「電子で。3DCADの図面とか送られても素人のモノは手直しに時間がかかるので出来れば文書で」

海風「元々CADなんか弄れるのは天津風さんぐらいなので大丈夫です。では後程送付します」

秋月(何だか、この二人怖いです…)

野分(顔は割りと笑みなのに腹の探りあいしてて変なオーラが…)


・機体変更(一時)
海風:RX-0[Fg]『フィルギア』

RX-0[Fg]フィルギア
武装
・60mmバルカン砲
・ビーム・サーベル×4
・専用ソード・ライフル『レーヴァテインS』
・クロー・シールド
・肩部ビームキャノン×2
概要
改RX-0の『スレイプニル』『スヴァジルファリ』『ガルム』の同型機であり性能統合機。
それぞれの能力は特化させた同型3機にこそ少しだけ劣るものの高い水準の性能を誇り改RX-0の中でも上位機種に該当する。
機体特性は『スレイプニル』に近く、武装は『スヴァジルファリ』と同じで、頭部は『ガルム』同様バンシィベース。
専用武装の『レーヴァテインS』は天城用の『レーヴァティン』に性能は近い。しかし『コード・ブレイヴ』発動時には天城・間宮機両方の能力を行使可能と言う破格の能力を持つ。因みにクローを使えば長波機の『コード・ブレイヴ』も使用できる。
ステルス機能は持っておらず機体特性が『スレイプニル』に近いため燃費は良い。また3機共通の能力『スフィアクレイドル』『シャドー』の能力は保持したまま。
塗装は青。NT-D使用時には蒼い光を各部から発する。海風が使用するために調整した結果とのこと。
モチーフ『ラフトクランズ』。天城の『アウルン』と間宮の『ファウネア』、長波の『カロクアラ』と3機はOG版ベースだが本機のみスパロボJの『隠し主人公機仕様』となっている。
余談ではあるが本機の同型は上記の3機だけでなく残り2機程存在している。しかし2機とも『コード・ブレイヴ』発動機能はオミット、扱い易さを優先しているため性能も低めらしい。
662 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/03(土) 04:22:10.16 ID:ceLtQ+Ct0
海風「そう言えば青葉さん達ってどうしてるんです?」

榛名「向こう側で事後処理と工作を。実は不穏な動きが…」

秋月「不穏な動き…?」

榛名「工場にあった機材は警察が全て押収しようとしているのですが… 陸自が引渡しの要求をしているらしく一触即発らしいんです」

野分「陸自がナノマシンを…?」

榛名「夕張さんが以前盗み出したデータの中にナノマシン絡みのものがあった、と言うのは知っていますね」

海風「あぁ、それは一応バビロニア事件の際のブリーフィングで聞きました」

榛名「ナノマシンは本来医療目的のものとして開発されました。もしEXAMなど入れなければナノマシンによる応急治療で致命傷で無ければ銃創でも数分で治癒できる程の効果があったそうです。

もしかすれば陸自はナノマシンを独自開発するつもりなのかもしれません。現状でも、脳を作り変えることすら出来てしまうナノマシンですから」

海風「どこのG4ですか一体…」

秋月「じーふぉー?」

海風「警察が対化け物用にって作った装備の内危険だからと設計段階で封印していたものを自衛隊が持ち出して実際に作った、って内容の作品があるんですよ。

そのモノ自体は強力なものでしたがAIに致命的な欠陥を抱えていて、結局人の手に負えなくなってしまうんです」

秋月「それで、どうなったのですか?」

海風「そのモノはパワードスーツなんですけど、AIによる過負荷によって装着者は死んでしまいました。しかしAIが勝手に再起動して、その人の遺体すら部品にして動き出そうとして…

で、対峙した似たようなパワードスーツを装着した警察官の怒りの銃撃でようやく沈黙して、まぁ作品はそこで終わりです」

榛名「もしナノマシンの独自開発など行えばおそらく海風さんの言う様に『人の手に負えなくなる』のは目に見えています。

なのにそれすら分かっていない、一部の自衛隊のお偉方が居るんです。なので青葉さん達には監視と警察への協力を頼んでいます」

海風「…もしかすれば、『完全制御出来る手立てがある』可能性は?」

秋月「まさか、そんな事…」

野分「だけど、単純に考えるとそんなに強気に出られるのは何かしら理由があってのことかも…」

榛名「やはり海風さんもその結論に達しましたか… 海風さん、『能力』を使ってください」

海風「予測する事象は? どの規模の予測で?」

榛名「『自衛隊が何をしてくるか』の中で最も可能性が高いものを、最大予測で」

海風「分かりました。 2分、あと可能な限りの糖分をください」

榛名「すみません、注文お願いします!」



海風「…予測終了しました。頭いた…」

榛名「とりあえずホットチョコレートで、一気に糖分を流し込んでください」

海風「いえ、まず結論から… 『自衛隊が護送車もしくは留置場所を極秘裏に襲撃、クルストの身柄の保護』が一番高いです。最大予測を行使して745パターンを予測した結果534通りが該当しました」

野分「そんなに多いんですか…!?」

海風「いくつか条件を変えて、分岐予測をした結果ですけど… 自前で作れる、なんて可能性は2通りしかありませんでした。

そして出来たとしても、ナノ・ハザードを高確率で引き起こして… 阻止しない場合、良い結果はありません」

秋月「榛名さん、これって…」

榛名「分かりました。 大鯨さんを経由して現地警察に連絡、そして青葉さんたちによる警戒強化にPMCの導入も視野に『テミス』を…」

海風「テミス?」

秋月「榛名さんのお知り合いの古巣のPMCらしいです」

海風「何でそんな知り合いが居るんですかねぇ…」


イベント選択 直下
1.天津風『感情とソラ』
2.浜風『心の落ち着き』
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/03(土) 08:50:43.49 ID:JW4TqOUjO
2
664 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/05(月) 02:43:11.64 ID:FyRSU+N00
side-浜風-『心の落ち着き』

《マンション リビング》


浜風「ふぅ… ああ、極楽…」グデー

春雨「…コーヒー牛乳飲みながらマッサージチェア使ってると、零しますよ」

浜風「春雨? どうかしましたか?」

春雨「なんか堪能してるな、と思って…」

浜風「ようやく、少しは肩の荷が下りたんです。これくらいの贅沢良いじゃないですか」

春雨「でもまだ終わった訳じゃ…」

浜風「…この4ヶ月、ずっと戦ってました。今の日常を守りたくて、関わらせたくないと言う瑞鳳さんに反抗してまで。

でも止められなくて沢山の犠牲者を出して、自分の無力さを改めて思い知らされた気分です」

春雨「浜風だからこそ防げた犠牲もあったと思いますよ、はい」

浜風「だけど結局全員を救えなかった。挙句、海風まで戦いに巻き込んで要らぬ力を目覚めさせて…

私がスドウ・シュンスケが薬を手にする前にクルスト達を止められていれば、あの子も霞さん達も傷付くことは無かったのに…!」

春雨「だけど海風さん達の参戦が明暗を分けたのも事実です。神通さんが未来の情報を齎して、霞さんがこちらを妨害するアナハイムの崩壊の引き金を引いて、海風さんが決勝戦でのテロ発生を予測して…

海風さん達が居なければ私達の未来は無かった、それは紛れも無い事実です。はい」

浜風「だからこそ自分が、自分の無力さが、何の力も持っていない自分自身が許せ無いんです。

これがただの現実逃避だってのは頭では分かっています。だけどこんな事実を突きつけられたら逃避したくなりますよ…」

春雨「浜風だって強いですよ。自分が志半ばで斃れると告げられても逃げないで戦って、運命を変えたんです」

浜風「春雨…」

春雨「それにもう一度言いますが浜風が戦わなければ生じた犠牲だってある、それを止めただけ立派だと思います。はい」

浜風「…やっぱり、春雨には敵いませんね。 少しだけ心の靄が取れた気がします」

春雨「ならこのまま気分転換に少しでかけませんか? この辺少し歩いてみたいんです、はい」

浜風「時雨でも誘えばよかったでしょうに」

春雨「時雨は天津風さんと一緒に先ほど出かけましたよ?」

浜風「…気付かなかった。海風が野分さん達と出かけたのは知ってたけど…」

春雨「…相変らず海風さん以外のことは眼中に無いんですね…」
665 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/06(火) 02:03:46.67 ID:mdCChN2p0
《市街地》


春雨「…まだ食べるんですか?」

浜風「勿論。次はここの鯛焼きを…」

春雨「いくらなんでも4件目はやり過ぎです、はい」

浜風「でもまだ抹茶ソフトとひょうたん揚げ(蒲鉾を2つ刺して揚げた食べ物)にずんだシェイクしか…」

春雨「もう充分だと思いますけど。それよりあっちに模型のお店が…」

浜風「…こんな遠方に来て模型ですか?」

春雨「え、駄目…?」

浜風「マンションに戻れば徒歩5分もせずに模型屋があって10分もあればヨ○バシもボー○スもあるのに…?」

春雨「個人経営のお店だからレアなキットが残ってる可能性があるんです…!」

浜風「いや春雨の実家だって模型屋ですし、そもそも春雨ガンプラ以外作らないでしょうし、何よりイベント限定品とか売れ筋になりそうなのは軒並み2個くらいストックしてるじゃないですか」

春雨「め、メタルビルドとかロボット魂とかあるかも…」

浜風「ロボット魂はまだしもメタルビルドはもう全部揃えた上でもう1個ずつストックしてるじゃないですか」

春雨「…」

浜風「…」

春雨「しょ、書籍…」

浜風「無理して理由作らないでください」

春雨「…」

浜風「…」

春雨「春雨達って、する事がいつもワンパターンな気が…」

浜風「時雨と夕雲の貴重さがよく分かりますね… 二人だと食べるか模型見るかどっちかしかしてないです」

春雨「次は海風さんを連れてきましょう。あの子ならきっと観光とか楽しんで…」

浜風「どうだろう… あの子どちらかと言えばマイペースだから変な方向に楽しみそうで付いて行け無い気が…」

春雨「時雨と夕雲の貴重さが身に染みます… 好奇心旺盛で何でも楽しむ時雨と観光地出身だから楽しむ方法を熟知してる夕雲が…」

666 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/06(火) 04:32:08.01 ID:mdCChN2p0
side-天津風-『感情とソラ』


《仙台空港》

時雨「…仙台空港って言う割には、ここ仙台市内じゃないんだね」

天津風「そうみたいですね」

時雨「そう言うもの、なのかな?」

天津風「流石に空港なんか市街地に建てたら騒音問題で訴えられますよ」

時雨「確かに、それもそうか…」

天津風「…」

時雨「…何か僕に不満でもあるのかい?」

天津風「別に」

時雨「あの時、僕がキミを叩きのめした事を根に持ってる?」

天津風「その件は時雨さんが正しい、って事は理解してます。ガンプラ学園への恨みを捨て切れて無い自分が悪いって」

時雨「だけどまだ心の中にしこりがある、って訳か…」

天津風「時雨さん、貴女は誰かを潰して立てない程に叩きのめしたいって思った事はありますか?」

時雨「無いといえば嘘になるかな。 この前出会ったシェリンドン・ロナとかナノマシンをばら撒いた連中とか」

天津風「いや、そう言うのじゃなくて… こう、個人的な恨みとか…」

時雨「無いね」

天津風「聞いた私がバカだった…」

時雨「だって恨むような相手に遭った事が無いし。学校だって通ってないのに、そう言う相手を見つけるほうが難しいって」

天津風「え、通ってないんですか!?」

時雨「一応高校生だけど、通信制で日中は基本店番だから。因みに中学校には通ってないから高校が学校デビューだよ」

天津風「はぁ… 頭痛い…」

時雨「…でも、そうだね。キミの身近に恨みとか嫉妬とか、ヤバめの感情の塊だったのが居るじゃないか」

天津風「海風、ですか?」

時雨「そうさ。 求める答えとは違うと思うけど、参考くらいにはなるんじゃないかな」

天津風「でも海風は私と違って、何でも持ってて…」

時雨「いや、その逆さ。彼女は『何も持ってなかった』、そこがあの子のスタートラインだよ」

天津風「何も持ってなかった…?」

時雨「キミは最初からガンプラ学園、あの結構恥ずかしい名前の学校に入るだけの才能を持ってた。

浜風と夕雲、春雨を新設時にスカウトしてきたようなガンプラに関してだけは超名門に… だけどあの子はソレすら無かった」

天津風「…でも海風は今の私よりずっと強くなって…」

時雨「それは心の差だよ。 あの子の動機、なんて僕には分からない。最初はキミのように負の感情で戦ってたのかもしれない。

だけど今のあの子は前向きな感情で戦って、今じゃ『ウイングガンダム・アズライト』と完全に同調すら果たした。ここがキミとの差さ」

天津風「私と海風の差…」

時雨「人は憎しみだけじゃ強くなれない。 強くなれてもそれは一過性、いずれ限界が来る。 だから目指さなきゃならないのはその先さ」
667 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/08(木) 03:40:35.01 ID:d62G5I280
天津風「時雨さん、貴女に夢はありますか?」

時雨「夢、か… 考えた事はそんなに無いかも。目先の事は考えてても、その先までは特に」

天津風「私にはなりたいものがあった、だけどその夢を奪われたんです。たった一度の敗北で、資格無しって言われて…」

時雨「ガンプラ学園の事? 確かに、前に矢矧が苦言を呈してたよ。 『流石に入学直後に一発退学はやり過ぎ、こんなんじゃ生徒の伸び代が駄目になる』って」

天津風「矢矧… メイジンが…!?」

時雨「そうさ。僕これでも、矢矧とはたまにプライベートで会うんだよ。主に愚痴ばっか聞いてる。

特にガンプラ学園の教育方針には相当頭にきてるみたいでさ、『旧ガンプラ塾を廃止したのに教育方法をそのまま継いじゃ意味は無いでしょ』ってもね」

天津風「だけど相当マイルドになってるって聞いてますけど…」

時雨「全然だよ。現にキミみたいな子が出ている時点で、褒められたような場所じゃないと思うし。夢を目指す人達を育む場として現実を教えるのも確かに役目ではある。

そこから夢を諦めてしまう子が出るのは仕方無い、だけどこれじゃただの暴力と変わらないよ。一方的に見切りをつけて潰すのは絶対に違う、理不尽に可能性を潰すEXAMと何ら変わらないじゃないか」

天津風「時雨さん…」

時雨「それに矢矧だって僕等には僅差で負けて、浜風や夕雲にも負けて、飛龍達にはフルボッコにされてるんだよ?

だけど矢矧のメイジンとしての支持は厚い。 先代の頃よりもガンプラに興味を持ったファイターだって増えてる、それは矢矧が掲げる『楽しいガンプラバトル』が理由じゃないかって僕は思う」

天津風「『楽しいガンプラバトル』…」

時雨「ただ強いだけじゃ駄目なんだ。 それではいずれ誰もが離れて、孤独しか残らない… だから楽しんでいる手本を見せる、それが彼女のやり方なんだよ。

それにキミは弱かった事で得たものもあった。 キミの周りには今誰が居る?」

天津風「誰って…」

時雨「頼りになる仲間に、先生が居るじゃないか。 些か思考のネジは10本くらい外れてるのが多いけど。

失った夢を『呪い』のままにするか、糧にして新しい『ソラ』へと向かうかはキミ次第だよ」

天津風「私は…」

時雨「そろそろ帰るよ。あと春雨が心配するし、何より今日はもうこの後の便は少ないからね」

天津風「分かりました」

時雨「あと、一つ聞きたいんだけど」

天津風「何ですか?」

時雨「キミにとっての『ソラ』って何?」

天津風「え…?」

時雨「少し解り難いか… ソラをどう感じるか、ってことさ」

天津風「私にとって空は…」

時雨「ま、この答えはまたの機会に聞かせてもらうよ。試しに海風にも聞いてみたら? きっと、面白い答えが返ってくると思う」
668 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/08(木) 04:30:52.79 ID:d62G5I280
《夜 マンション》


浜風「全員、揃いましたね?」

春雨「揃ってます、はい」

海風「何ですか… 食べ過ぎて少し眠いんですけど…」

天津風「牛タンは暫く見たくない」

時雨「まさか帰ったら大鯨さんが部屋のベランダで七輪使って山盛りの牛タンを焼いてたなんて…」

春雨「わんこ蕎麦ならぬわんこ牛タンでした…」

浜風「しかも残りは全部冷凍庫に… ってそうじゃなくて、明日の事について話しましょう」

天津風「明日の事?」

浜風「出かけるにしろ引き篭もるにしろ、それぞれの予定を全員が把握しておく方が良いと思います」

時雨「そうだね。出先で何かあった時困るし、把握しておくに越した事はないから」

海風「海風は野分さん達と図書館、あと中野栄に行きます。早速水族館の方に行ってみようかと」

天津風「私は… どこかに出かけたい、って思ってます」

浜風「では私はここで待機を。 護衛は今日と同じで天津風さんに時雨、春雨は私に就いて下さい。海風は野分さん達に任せたほうが戦力的に安心ですし。

後は… 夕飯のローテーションとか考えておかないと…」

時雨「この中で料理出来ない人、手をあげて」

浜風「…」ビシッ

海風「…自炊すら出来ないなんて」

浜風「だ、だって下宿だし必要ないから…」

春雨「やっても基礎も出来ないのに凝ろうとして失敗するのが常です、はい」

海風「うわ、最低なパターン…」

浜風「」ガーン

時雨「いや、もっと最低なのは出来るって自己申告してる癖に実態はメシマズってパターンだよ」

如月「そうね、天城さんとか天城さんとか…」

海風「っていつの間に!?」

如月「合鍵貰ってるもの。ちょっと様子見にね」

時雨「天城って人の、そんなに酷いのかい…?」

如月「例えばエビチリを作ったら食べた人が突発的に海老アレルギー発症したり、高校の調理実習でクラス全員が当時人気だった天城さんのモノを食べて食中毒を起こしたり…」

春雨「最早テロでしかない気が…」

如月「その癖料理したがるから、天城さんがキッチンに入るのを陽炎ちゃん達が総出で抑えこむのがほぼ毎日の榛名さんご一家の日常ね」

海風「ひ、酷い…」

如月「だから忠告ね。 天城さんの持って来た食べ物は全力で受け取り拒否と置いて行ったらこのマスクとゴム手袋と防護服とトングを使って廃棄、作るって言い出だしたら野分ちゃんと榛名さんを絶対に召喚して阻止。

病院のお世話になったり今後食品アレルギーを患いたくなければね… 決して、怖い物見たさに食べるなんて選択は駄目よ…!」


イベント選択 直下
1.『対極の二人』
2.『三人の思い出』
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/08(木) 10:27:47.47 ID:s3JwcPh20
1
670 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/10(土) 04:35:49.49 ID:hWtUTpr40
side-海風&天津風-『対極の二人』


海風「話、とは?」

天津風「単刀直入に聞くわ。貴女、『空』をどう思う?」

海風「いや、意味わかりませんて」

天津風「だから、貴女にとっての『空』って何?」

海風「と言われても… まず貴女の回答はどうなんですか」

天津風「私にとっての『空』は… 空は…」

海風「…答えが出せない、んですか?」

天津風「…みたいね。時雨さんに言われて考えたけど、結局自分の答えを見いだせなくて…

だから聞いてみようと思ったの。海風に聞けば面白い答えが聞ける筈だ、って言うから」

海風「海風にとっての空は… 偽物で、虚ろな鏡みたいなものでした」

天津風「偽物…?」

海風「何か本物って感覚がしない、見ているだけで苛立つような偽物の青が世界を覆って…

神経を逆撫でしてるみたいで大嫌いでした。まるで自分だけが世界から隔絶されているような感覚で、お前は空っぽだって言われてるみたいで。実際、そうなんですけどね」

天津風「何か嫌なことでもあったの?」

海風「いえ、寧ろ『何も無かった』んです。 海風自体何も無い、目指すべきものも生きる為の道標もあやふや…

そして何より海風は自分や世界に価値を見出すことが出来なかったんです。世界がセピア色のように見えて、って何か厨二病みたいな発言してる気がする…」

天津風「何も無かった、か…」

海風「だから鉱物に惹かれたのはきっと綺麗でハッキリと色があって、価値があるからなんだと思います」

天津風「でも『だった』、って事は何か心境の変化でもあったんでしょ?」

海風「そうですね。自分が空っぽだったことに気付いて、ようやく世界に色が少しずつ見えてきて… 何がしたいか、何処に進みたいかが分かってきました。

これも多分、先輩や霞に出会ってガンプラバトルに身を投じたお陰でしょう」


時雨『いや、その逆さ。彼女は『何も持ってなかった』、そこがあの子のスタートラインだよ』


天津風(海風は二人に出会うまで本当に何も無かったんだ… 私はメイジンになりたいって目標もあって、ガンプラ学園に入れるだけの力もあった。

だけど今度は真逆になって、夢も無くて力だって追い越された私と色んなものを手に入れた海風と…)

天津風「私と海風、どこに差が出来たって言うの…」

海風「天津風さん?」

天津風「私だって人一倍努力して、認められるだけの力を持ってガンプラ学園に入った筈なのに、結果が退学させられて何もかも奪われて…!

なのに始めてたった4ヶ月で自分の機体だって他の人任せの海風や霞は私を追い抜いて…」

海風「…それはきっと、心の在り方だと思います。海風だってこの心境に至るまで、勝手に恨まれてスドウ・シュンスケに何度も襲われるわ向き合いたくも無かった相手に向き合わされるわ…

色々あって、その末に未来を創るために戦うと決めたんです。確かに自分の今まで全部を否定された天津風さんは辛いと思いますが、そこに囚われて後ろ向きなんです」

天津風「前を向けてないって言うの…!?」

海風「先輩だって折れそうになったし、霞だって最初は人を拒絶してました。だけどそこから二人は一歩踏み出して、前に進んだ。

だけど天津風さんは復讐に囚われて後ろ歩き状態、前に向かって全力ダッシュしてる人にムーンウォークが追いつけますか?」

天津風「あ…」

海風「きっと必要なのは何もかもを振り切る心と前をむくための少しの勇気、これだけあればきっと追いつけるかもしれませんよ」
671 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/11(日) 04:35:43.91 ID:jJFzXRn10
天津風「…今の私を全否定、か。もしかして海風、私の事嫌い?」

海風「さぁ?」

天津風「否定しなさいよ」

海風「少し否定出来ないと言うか… 正確には『嫌いだった』、なんですけど」

天津風「え」

海風「転校当初から大会までの自分の言動をお忘れで? 人の指示に従わないわ自分だけ突出しようとするわ目立とうとするわ…

挙句ウチのアレを知ってた癖に全員と共謀して伏せていて一人だけ謝罪無いのに恨みが無いとでも?」

天津風「前3つは心当たりあるけど、最後のは知ってたけど朝雲以外みんな知らないフリしてたから私も便乗しただけで共謀はしてないから…」

海風「問答無用。罪は罪です」

天津風「弁解ぐらいさせなさいよ!?」

海風「嫌です。 自惚れが抜けてなくてチーム戦を毎度台無しにしかけて…」

天津風「あ、アンタだって私に結構辛烈な言葉浴びせてたでしょうが!?」

海風「あの程度で… 本当に怒っていたら産まれたことを後悔させてましたよ」

天津風「…でも、だったって事は多少見直されたわけ?」

海風「まぁ、そうですね。 過去の話を知れば、なんとなく言動を理解出来るようになりましたし落ち着いてはきていたので」

天津風「本当アンタの上から目線はどうにかならないの…!そう言うとこムカつくんだけど」

海風「ムカついてたのはこちらもです。自分身勝手で傲慢なことばかりやって、結構フラストレーションが溜まったんですよ」

天津風「今からでも決着つけてやりましょうか…!?」

海風「良いですよ。丁度バトルをしなければならない事情もあるので、白黒つけましょうか?」



《春雨・時雨の部屋》


時雨「なんか部屋五月蝿いし殺気が駄々漏れなんだけど」

春雨「…もしかしてあの二人、相性最悪なんじゃ…?」

時雨「うん、最悪だと思う。性格的にもソリが合わないし、バトルでも機体が可変機で被ってるし、多分根本的に対極なんだろうさ」

春雨「対極?」

時雨「何も持ってないのに色々なものを得た海風と最初から持ってたのに何もかもを失ったあの子… 天津風、だっけ?

機体も今は蒼のアズライトと赤いハルートで真逆だし、全部振り切って前向きな海風と復讐一筋なのに果たせ無くて後ろ向きな天津風じゃどう見ても対極じゃないか」

春雨「瑞鳳さん、バランス取った結果とは言えどうしてこんなチョイスにしたんですか…」

時雨「今回の二人ずつに分けた3つの組み合わせ、どうにも人間関係が微妙な組み合わせだし。京都組はあまり信頼関係が築けてない、東京残留組は『普通の家庭』と『特殊な家庭』の人間同士…

まぁここの機体の相性は良いのにそのほか全部悪い二人組よりは遥かにマシだろうけどさ。せめて緩衝材が欲しかったね」

春雨「もしかして私達が送り込まれたのは…」

時雨「大方、緩衝材をやれってことだよきっと。 …今から三日月あたり呼びたいね。切符代は払うから…」

春雨「三日月ならきっと時雨以上に裏人格がズバズバ斬りこんでくれますし、はい… 明日電話しましょう」
672 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/13(火) 00:13:06.69 ID:8cgyxebY0
《翌日 模型店エンガノ1号店(大鯨経営)》


天津風「じゃあ始めるわよ。まさか初めての機体だからって負けても文句は言わないわよね?」

海風「それはこちらの台詞です。寧ろ初めての機体に自分の機体が負けても喚かないでください」

榛名「いや、あの… 二人共、テストの都合上ダメージレベルAですからね…? 加減は…」

時雨「何を言っても無駄さ。ああなったら止めるのは…」

野分「なんであんなに殺伐としてるんですか…」

松風「榛名、もう腹括ってもう1・2機用意しておいたら?」

榛名「でも海風さんが能力的に使えるの、多分フィルギアくらいでは…?」

時雨「いや、海風の適応能力は意外に高いからどんな機体でも大丈夫さ。アズライトに対して異様に同調率は高いけど」

榛名「高いどころか計測値がオーバーフローしてるんですけど… 阿武隈が渡り合えてたのが不思議なくらいには」



Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field to "Speace"

Please set your GUNPLA

BATTLE START!



海風「動作の確認は終わったし、そろそろこちらに…」

天津風「可変機じゃないアンタなんか!」

海風「想定より少しだけ早かったですね。交戦開始します」

天津風「私に喧嘩売った事、後悔しなさいよ!」


ハルートから発射される大量のミサイル。ありったけの量を天津風は放ち、確実に海風に対して先手を取るつもりなのだろう。

しかし海風と『フィルギア』は微動だにせず、刀身に粒子結晶を纏わせた『レーヴァティンS』を振るいその衝撃波だけでミサイル全てを切り払う。


天津風「嘘!?」

海風「弾頭の軌道は予測済み、なら出来ない道理はありません」

天津風(ならスピードで翻弄して…)

海風「大方スピードで翻弄するつもりでしょうが…」


粒子結晶の刀身が砕け散り、海風は『レーヴァティンS』をライフルモードへと切り替え、ビームをハルートの近くにあったデブリへと放つ。

そして直撃したデブリが砕け、その破片がハルートへと襲い掛かり天津風はその迎撃のために機体をMS形態へと変形させた。


天津風「足止めされるなんて…!」

海風「はいもう一発」


『レーヴァティンS』から放たれた2射目が今度はハルートの胸部に直撃するも、威力が絞られており胸部装甲を吹き飛ばしただけに留まる。

天津風は威力が絞られていた理由が分からなかったが、機体を変形させようとしてその理由に気付く。


天津風「変形出来ない…!? 変形機構をヤったの!?」

海風「これでご自慢の航空マニューバは封じましたよ」
673 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/13(火) 01:04:00.82 ID:8cgyxebY0
野分「戦況が一気に傾きましたね」

時雨「キミは海風と天津風、どっちが強いと思う?」

野分「え… それは海風さんの方が…」

時雨「答えは一長一短の互角さ。 状況次第でどちらにも傾く、今回は可変機と非可変機で『ハルートに追いつけない』と判断してるから可変能力を封じた。

でもアズライトを使ってた場合高速戦闘が主になるから勝敗は天津風に傾くんだよ。何故だか分かるかい?」

野分「えと…」

榛名「秀でているものが違うから、ですよ。 天津風さんの場合は機体の操縦技術が高い、反して海風さんは状況に対する最適を選ぶ適応能力が高い…

そしてそれは互いに真逆、天津風さんは状況に対する適応・対処能力が低く海風さんは操縦能力がイマイチ。同じ土俵に立てば天津風さん、違う土俵なら海風さんが有利です」

時雨「あとは相手への対応の差、かな?天津風は目の前の敵が強ければ自分の領域に持ち込んで対処をする、海風は数手打ち合って敵の手を知ってから優位に立てるように立ち回る。

今回の場合は互いにチームメイトでお互いの腕や技を知り尽くしてるからこそ海風が優位に立っているのさ」

野分「成るほど…」

時雨「多分決着はすぐつくよ。互いにトランザムとアンチェインド状態になってるし」



天津風「振り切れない…!このっ!」

海風「これで、決めます!粒子バスターソード!」


振り下ろされた巨大な刃がハルートに叩きつけられ、その攻撃を天津風は両腕のソードライフルで防ぐものの質量差に勝てる筈もなく吹き飛ばされデブリに叩きつけられる。

そして海風は刀身の形成を解除し再びライフルモードへと切り替えその銃口をハルートへと向けた。


海風「これで終わりです」

天津風「…ま、負けた…」




海風「データの方は?」

榛名「この調子ならあと2回も戦えば必要分は揃いますが… 次はなるべく長時間の稼動データが欲しいですね。

機体の臨界を見極めるためにと、過負荷が機体にどのような影響を与えるのかのデータを」

海風「分かりました。それで天津風さん、何か言う事は?」

天津風「うぅ… 私が負けるなんて…」

時雨「まぁ今回の場合は分が悪かったさ。キミは相手の機体が初見だし向こうにデータも知り尽くされてる、そこが致命的だったね」

天津風(やっぱり私は海風にすら劣ってる… 後ろ向き、なのね…)
674 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/13(火) 01:52:16.43 ID:8cgyxebY0
時雨「で、海風。キミ人の話聞いてた?」

海風「はい。ダメージレベルAで取ると」

時雨「それ覚えてて戦った?」

海風「…忘れてました」

時雨「ハルートが盛大に壊れちゃったじゃないか。原型留めてるけどさ」

海風「大変申し訳なく思っております」

天津風「これパーツ新造しなおさないと… いや壊れた部分総とっかえして改修した方が早い…?」



《アウトレットモール フードコート》


松風「で、その後初と照の字が相手になったけど二人共結局手も足も出ずにボロ負けか」

初月「仕方無いじゃないか… 機体に性能差もあったし実力だって…」

照月「照月も改RX-0なら戦えたと思うんだけどなぁ…」

時雨「いや、二人共まだ技術が足りてないね。まともに対抗したいなら…」

海風「お待たせしました。 豚丼、でしたっけ?」

時雨「うん、ありがとう。天津風たちは?」

海風「二人は親子丼のところに並んでます」



天津風「はぁ、憂鬱…」

野分「元気出してください。機体なら直せば…」

天津風「そう言う問題じゃ無いの… 私が海風に負けたって、もう下に朝雲くらいしか居ないのよ…」

野分「あぁ、そっち…」

天津風(私、もう自身とかこっ酷く打ち砕かれたわ… あんなに、自分が強いって思ってたのがバカみたい…)




イベント 直下
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/16(金) 10:56:27.99 ID:Ipt7R94sO
子供に囲まれる
676 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/18(日) 03:18:59.04 ID:4dnn21oK0
<ねぇ、あの子達って…

<どうしてこんな所に…?


海風「なんか凄い注目されてるんですけど…」

初月「キミ達、全国大会がテレビ中継しているのを忘れてたのか?」

海風「忘れてはいませんが… ここまで注目されるものではないかと…」

照月「えっとね、仙台駅を出たところに大きな街頭モニターあるのは知ってる?」

天津風「確かにあったわね… 確か二つの大きな出口のどっちにもあったけど」

照月「そのモニターで大きく放送されちゃったの。宮城代表のバトルだったし…」

天津風「でもこれだけ注目されるのはおかしくない…?」

初月「それで済めば良かったんだが… 母さんが根回しして、仙台中の色んな公共施設のモニターでその中継を流したんだ」

海風「あの人何してくれてるんですか…!?」

天津風「甲子園の応援のノリをやったのね…」

照月「陽炎ちゃん達の学校、チームのスポンサーだし… 貴女達も瑞鳳姉の教え子、って事で贔屓にしてるから」

海風「だけどそれだけでこうはならない様な…」

野分「…二人共、母さんはどんな立場の人間かお忘れで?」

天津風「…グループ企業の会長よね」

野分「その規模は東北最大級の地域密着型、そして様々な業種に幅広く食い込んでいます。つまり…」

海風「傘下企業や施設の設備モニターを使って流した、と」

照月「それだけなら良かったけどね。 グループ内でその日だけ、中継の為に休み時間を延長させたりとかしちゃって…」

時雨「職権乱用って言葉が生温い事してるね」

初月「だから多分、キミ達は一種の有名人になってる。 一過性のものだとは思うが…」


「ねぇねぇお姉さん!お姉さん達東京の人でしょ!?」

「何で仙台に来てるの? ガンプラ見せて!」

「あの時のアレ見せて! あの羽根みたいなのがブワーってやつ!」


時雨「…このままだと子供に囲まれる。撤退だ」

海風「ええ、数の暴力で来る鉄血のMA相手にMWが少数では絶対に無理です…!」

天津風「考えたくもない例えね、それ…!」

野分「ほとぼりは冷めないでしょうから別の場所に移動しましょう…!」
677 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/20(火) 03:38:47.70 ID:HCBuhzPU0
《水族館》


初月「ここなら誰にも見つからないな…」

天津風「まぁ、暗いし誰が誰だか分からない筈ね…」

海風「それに子供だってここまでは追いかけて来ないでしょう」

照月「入館料かかるもんね」

野分「私達は年パス持ってるけど」

天津風「その気になれば貴女達なら自転車漕げばすぐ着く距離だものね」

時雨「…うん、分かった。報告しておくよ」ピッ

松風「ここは通話禁止だぞ」

時雨「ごめん、火急の話だったから」

野分「何かトラブルが…?」

時雨「テロリストたちの移送が決まったそうだよ。全員、各地に分散させて警察や自衛隊の監視下においておくって。

あの後から加わった学生を除いた全員裁判で死刑判決は免れられない、って言うのが青葉の報告さ」

海風「死刑…」

野分「当然の報いです。それに未成年だから死刑を免れたスドウ・シュンスケも厳重に処罰されるでしょう」

松風「言い逃れ出来ない程の大量殺人犯で、しかもキミ達も殺そうとした相手でもある。同情なんかしない方が良い」

海風「分かってはいるのですが…」

照月「でも各地に分散、って事はこの辺にも来ちゃうの?」

時雨「北は東北通りこして北海道の釧路だそうだ。残りは市ヶ谷、岩国、佐世保、横須賀、徳島、鹿児島のどこかになるって」

天津風「いっその事無人島にでも送れば良いのに…」

初月「泳いで逃げる可能性があるじゃないか」

海風「ありましたね、愛媛だかの島から泳いで逃げたの…」

松風「ま、辛気臭い話は置いておいて楽しもうじゃ無いか。僕等はちょっと飽きてるけどね」



海風「水族館って小学校の遠足以来ですが、中々見応えがありますね」

時雨「沖縄だっけ、キミの居たところは」

海風「ええ。有名なところで…」

松風「ああ、あそこかい。確か…」



野分「…まだ引き摺ってるんですか?」

天津風「イマイチ納得がいかないのよ… 私が弱いのは分かった、だけどどうして海風は強いの…!」

野分「天津風さん、貴女の好きは何?」

天津風「『好き』…?」

野分「ガンプラバトルが好きなのかガンプラバトルで得られる勝利が好きなのか、どちらですか」

天津風「それはガンプラバトルが好きで…」

野分「私には、今の貴女はそうは見えない。きっとどこかで負けた自分が許せなくて、勝利に拘り過ぎているんだと私の目には見える。

弱さを受け入れたくなくて強さや勝ちに拘ってしまうのはよくあること。 だって私もそうだったから」

天津風「貴女が…?」

野分「私は姉さんみたいになりたくて東方不敗の門を叩いた。 あの時の私は弱くて、憧れた強さだけを求めて、我武者羅に修業してもすぐ姉さんには地に伏せられて…

自分の弱さを認めたくなくて、それで無謀な戦いを挑んでは負けてを繰り返して… で、諭されたの。『自分の弱さを受け入れられない限り強くなれないし、何処にも行けないで躓いて転ぶだけだよ』って」

天津風「弱さを、受け入れる…」

野分「自分の弱さを受け入れる、って言うのは勇気が必要かもしれない。 だけど本当に前に進みたいなら、逃げちゃ駄目。そこから目を背けたら絶対に前に進めなくなる」
678 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/20(火) 04:21:34.22 ID:HCBuhzPU0
天津風「貴女、結構良い人ね」

野分「そう、ですか?」

天津風「と言うか海風より話が受け入れ易かった」

野分「多分彼女、不器用なんだと思います。 人に慣れてなくて言い方がきつくなったりしてしまうのはよくあることです」

天津風「いや、キツイってモンじゃないでしょ… 罵倒すると放送禁止用語並べてくるし、バッサリ傷抉るし…」

野分「そう言う部分もある、のでしょう。 だけど貴女は知ってる筈です。彼女が何故戦いに身を投じたのか、どうして戦おうとするのかを」

天津風「…」

天津風(海風が富士の別荘で切った啖呵、アレは私も聞いてたけど最初は何を言っているのか訳が分からなかった…

だけどアイツはずっと自分じゃなく『誰か』を優先してた。先輩を奮い立たせたのも、身を挺して霞を守ったのも)

天津風「誰かのために戦う、か…」

天津風(私には出来そうにないわね… ガンプラ学園への復讐のために全部利用してただけの私に…)

野分「きっと貴女にも出来ると思いますよ」

天津風「え…?」

野分「自分のためだって良いんです。いつかそれが大事な誰かに変わることもあるでしょう」

野分(私が私を『信じてくれた誰か』の為に戦うと決めたのと同じ様に、きっと…)

プルルルルルルル

天津風「あ…」

野分「ここ、電話厳禁ですよ。あっちで出てください」

天津風「分かってる… 一体誰が…」



《その夜》


浜風「松島へ?」

天津風「はい。父が明日非番で、良かったら昼食にでもって」

海風「何で天津風さんが仙台に居るのを…」

天津風「大鯨さんから直接連絡があったみたい。事情は直接聞いてて、私がここに居るのは周囲には秘密にしてるって」

時雨「別に家族に会う、って言うのは良い事だとは思う。だけど今は仙台から離れるべきじゃ…」

「良いと思いますよ。丁度こちらも松島に行く用事がありましたし、護衛に就けますから」

春雨「榛名さん、せめてチャイム鳴らしてください」

榛名「次回からはそうします」

海風「松島への用事とは?」

榛名「大鯨さんのお使いです」

春雨「ああ、お仕事ですね。はい」

時雨「じゃあ明日は僕達は別行動を取らせて貰うよ」

浜風「迎え、ですね。分かりました」

天津風「誰か呼んだんですか?」

春雨「三日月だけ呼んだんですけど… 何故かお母さんまで来ることになって…」

海風「ま、まぁ大人の保護者は必要だと思いますから…」

時雨「終わったら仙台から松島に向かうよ」
679 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/24(土) 02:26:10.17 ID:CTOpW1KU0
《翌日 松島》


海風「野分さん、こっちに居ても良いんですか?」

野分「親子の団欒を邪魔する訳にはいかないでしょう」

海風「そうは言っても護衛対象ですよ」

榛名「彼女は余程の事でないと狙われないでしょう。感応波や特別な能力、彼等の判定基準を逃れていますし」

海風「とは言っても…」

野分「意外と心配性ですね」

海風「…あれでも、仲間です。一緒に戦ってきた」

榛名「まぁ、念には念を入れて護衛役を陰につけてますけどね」



「その、何だ… 退学になった、って聞いてたからもっと落ち込んでるのかと思った」

天津風「まだ、少しだけ思うところはあるけど… 一応、元気にはやってる」

「大変だったな。だけど古巣を倒して優勝して、凄かったじゃ無いか」

天津風「私が直接倒した訳じゃないし… 嬉しいけど、引導は自分で渡したかった…」


長波「あーあ、私達がアイツ等ブチのめしたこと根にもたれてる」コソコソ

阿武隈「特にアドウ・サガへの恨みが酷かったもんね」コソコソ

陽炎「何、それってアイツ倒した私まで恨まれてる…!?」コソコソ

阿武隈「恨まれてはいないと思うよ?だけどコンプレックスは刺激されるよね」コソコソ

長波「アレは酷かったよな… 機体の相性が原因なんだけど」コソコソ

陽炎「ファングは追いつけないしアームの速度の遅さを見抜かれてるし、挙句切り札も普通に避けられたし。

あ、すみません。穴子丼ください 二人は?」コソコソ

阿武隈「私は… 牡蠣ラーメンで」コソコソ

長波「牡蠣バーガー一つお願いします」コソコソ


「…あれは知り合いかい?」

天津風「決勝戦の対戦相手… 何でコソコソ着いて来てるのよ。しかもバレてるし」

「ず、随分普通の子達だね」

天津風「見た目はね… だけど強い。ガンプラ学園を倒してウチのチームが2機相討ちになって、最後の機体だってギリギリだったし」

天津風(ウチのトップ2の霞と先輩が戦闘不能、海風だってタイムリミットが無ければ負けてた相手… 多分私なら諦めてた。

なのに海風は、諦めないで立ち向かって勝ちをもぎ取って…)

「…なぁ、お母さんに聞いたんだがお前にガンプラ学園にもう一度入学しないか、って話が来てるらしいんだ」


阿武隈・陽炎・長波「!?」


天津風「もう一度、ガンプラ学園に…!?」

「そうだ。お前が目指してたメイジンとやらにまた成れる可能性が出てきてる。しかも戻ればレギュラー待遇だって…」

天津風「…一度追い出しておいて、本当に都合の良い事言うわね」

天津風(これを逃せば私はもう二度とメイジンになる道を歩めない… だけど、本当にそれで良いの…?)
680 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/24(土) 03:00:36.73 ID:CTOpW1KU0
長波「マジかぁ… そこまでやるか普通…」

阿武隈「姉さんが聞いたら今すぐ静岡飛んで学園の教員全員の首削ぎ落としに行きそう」

陽炎「青葉達に言ってダイナマイトでも仕掛けて… って、言ってる側から青葉から電話だよ…」プルルル

阿武隈「姉さんじゃなくて陽炎ちゃんに?」

陽炎「青葉? どうし… 何ですって!? わかった、すぐ動く!」

長波「どうしたんだ、急に…」

陽炎「車で移送されてた筈のスドウ・シュンスケが宮城近郊で逃げ出した…! それ以上にもっとヤバイ事態かも…」

阿武隈「ヤバイ事態…!?」

陽炎「ちょっと、そこの二人!」

天津風「え、な、何!?」

「一体急に何を…」

陽炎「今すぐ市街地から逃げるわよ!」

天津風「え!?」

陽炎「奴等、今までの罹患者を操って暴れてんのよ! 宮城の昏睡病罹患者全員を操ってね!」


《仙台市街地》


時雨「っ…!どうなってるんだ、一体!?」

春雨「まるでゾンビのように… お母さん、避難誘導を!」

翔鶴「分かったわ!」

時雨「三日月、来て早々だけど戦うよ…!」

三日月(裏)「分かっている。この状況、看過は出来ん」

浜風「海風の予測が嫌な方向に的中しましたね…!」



《仙台港》

大鯨「皆、秋月ちゃんと如月ちゃん以外これに乗って! 二人は仙台市内の時雨ちゃん達の援護に!」

秋月・如月「は、はい!」

不知火「私達は!?」

大鯨「松島の増援に向かう! 艤装の封印を一時解除、装着を許可!ただし発砲は厳禁、戦闘は格闘のみとします!」


《松島市内》

榛名「了解。 では指定場所で合流を」ピッ

海風「アイツが、この近くに潜んでる…!」

野分「確か松島の罹患者は7… だけどここは石巻が近い…!」

榛名「ええ、恐らく石巻方面からも来るでしょう…!」
681 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/26(月) 02:56:15.61 ID:Fz1E26zd0
《松島基地近郊》


榛名「了解しました。浜風さん、仙台市内は任せました」ピッ

海風「仙台の方は?」

榛名「多少の混乱は見られますが沈静化に向かっているようです。市内に残った7割を拘束、既に眠らせたと」

海風「そうですか… でも問題は罹患者に襲われた人間が感染して、さらに操られてる人間が増えてることと…」

榛名「残り3割の罹患者と岩沼・名取・多賀城・石巻の罹患者が市街地に向かっていることでしょう。そして何より陸自の多賀城駐屯地との連絡が途絶しているのも…

貴女の予測が、嫌な形で的中しましたね。恐らく陸自はこの事態に1枚噛んで…」

「そんな馬鹿な話がある訳ないだろう!」

天津風「お父さん、落ち着いて!」

海風「…言いたい気持ちは分かります。守るべき国民に対して銃を向けるなんて本来あってはなりません。

しかし多賀城との通信が途絶してると言う事は大きく分けて3つの可能性に分けられます」

「3つ?」

海風「1つ目は多賀城が制圧させられている可能性、これは最も低い可能性です。2つ目はどちらかの通信設備が壊れているか妨害されていること、こちらは松島基地の設備が生きているし、携帯も繋がっている以上は多賀城に問題がある…

そして3つ目で最も高い可能性が、陸上自衛隊がこの事態を手引きしている可能性です。例え多賀城駐屯地の部隊が関与しなくとも、陸自には不穏な動きが出ているのは確認されていますし」

「どうしてキミにそれが分かる?キミは天津風と同じ子供で…」

天津風「この子は… 一種の超能力に近い能力があるの。 未来を、かなり高い精度で予測する『未来予測演算』って能力よ。

世界大会会場のテロを察知して、早いうちに対処できたのもこの子の力のお陰で…」

海風「お陰でスドウ・シュンスケ、今回の首謀者と思われる人間に狙われているんですけどね。逆恨みもあるでしょうけど」

野分「しかしこれからどうすれば…」

海風「一番良いのが今からこちらに向かっている敵が揃う前に首謀者を討つこと、ですけど如何せん到達予測時間が1時間以内であることを考えると無理、でしょう。今から行っても挟み撃ちにされるだけです。

2番目はこの基地にあるF-2を使ってJDAMなどで首謀者ごと一網打尽にする、人道的に憚られるような無理な方法です」

「そんなの、認められる訳が…!」

海風「だから無理だと言いました。そして第3の方法… これは我々にしかできない方法です。今まで彼等は人工粒子を利用して何かしらのアクションを起こしてきました。

これを逆手にとりガンプラで中枢部に突入、首謀者を撃破するという方法です。問題は戦力が絶対的に不足していることでしょうけど」

阿武隈「貴女達の2機と改RX-0が5機だけ…」

海風「しかも今、海風はアズライトを欠いています。バエルでは到底…」

榛名「一応『フィルギア』はありますけど」

海風「それならアズライトに近い戦いが出来ますが… それでも戦力的には不利です。今から春雨さん達を呼ぼうにも交通が隔絶されてる今…」

野分「いえ、先ほどお母さんから連絡があって海路を使ってこちらに向かっていると。しかも『アズライトを持って来ている』とも」

海風「ならいける、かもしれません…!」
682 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/11/28(水) 04:17:48.60 ID:y78+gNuM0
《2時間後 松島基地・司令部》


基地司令「…大鯨さん、やはり貴女の言う通りでした。先ほど偵察に赴いたUH-60が確認したところ多賀城駐屯地は機能不全状態、司令設備などが何者かにより襲撃・破壊され全く動けないそうです。

襲撃犯はの8割は制圧され残り2割は逃亡しましたが内部犯かテロリストによる犯行の可能性が高く、調査を進めておりそのためこちらへの救援は出せないと」

大鯨「いつまた襲撃されうか分からないし、復旧の目処が立たない以上仕方のないことです。他の県内の駐屯地への要請は?」

基地司令「行っていますが未だに目処は立っていません。空自も三沢と百里の方に要請はしていますが如何せん陸戦用の部隊が無い以上は…」

大鯨「市民を爆撃する訳にはいかないですから。頼みの綱の多賀城は動かないのでは、松島基地で対処するしか…

かと言ってこの基地にある装備では警備隊を投入するかF-2Bによる対地攻撃しか方法が無い。後者は最悪な方法かつ国民からの批判は免れられないし前者を行っている間にこちらに襲撃を受ければ一貫のお仕舞いでしょうし」

基地司令「上に判断を仰いでいますがどうも腰が重いようで」

大鯨「では私達『一族』が動きましょう。 とは言っても今は待つことしか出来ないのですけど」

基地司令「何か策が?」

大鯨「あの子の予測では今日中に向こうがアクション、恐らく市内の中心地で粒子結晶を使い市街地を覆い防衛網を構築しようとする筈です。

それに乗じて我々が強行突破をかけ、首謀者を撃破・無力化を行います。それまでは市街地に取り残された人々の安否を祈るしか…」

基地司令「彼女、あの未来予測を行う少女の話、信用できると?」

大鯨「ええ。 彼女の予測は今の所一度も外れていない、それに彼女はテロリストとの交戦経験が4度あり敵の手の内は知っています。

信用に足るべきだと私は思いますよ。現に私が貴方に依頼したことの全て、彼女の指示ですから」

基地司令「彼女は一体…」

大鯨「私達が抱えうる最大の切り札の一角で未来への希望の一人、と言っておきます。 制圧した襲撃犯からの情報は?」

基地司令「それが、全員死亡したらしく… 装備は恐らく不法に国内に持ち込まれた品、との情報があります。また全員日系人らしいとのことで」

大鯨「それだけでは外部犯か特殊部隊の人間か判別が出来ませんね… 陸自には『極秘の特殊部隊』があると聞いていますし、その可能性も否定はできないでしょう」

基地司令「やはり陸自内部の犯行、と?」

大鯨「さぁ? ですが恐らく何かを試そうとしているのでは無いかと」

基地司令「試す?」

大鯨「ええ。昏睡病の真価、いやナノマシンの真の力を…」

「司令! 緊急通信です! 市街地を占拠した人物を名乗る人間から!」

基地司令「なんだと!?」

大鯨「恐らく彼の目的は…!彼女に繋いでください」


海風「…貴方もいい加減にしつこいですね、スドウ・シュンスケ。3度も倒され2度も捕まったくせにしつこく、東京から静岡に果ては宮城と…

逆恨みも甚だしい上にストーカーも加わって気持ち悪いにも程があります。いっそ、本当にJDAM叩き込んでやりましょうか?」

スドウ『ジェイダ…? まぁ良い、言っていろ。すぐに貴様を殺してやる…! と、言いたい所だが…』

天津風(JDAM知らないの?)

野分(知ってるほうが少数かと…)

海風「勿体ぶらずに早く要件を。 こちらは貴方と話すだけで虫唾が走って反吐が出そうなんです」

スドウ『簡単なゲームをしようじゃないか。 こっちには逃げ遅れて隠れてる奴等が何人もいる… 俺は今日の0時から1時間ごとに20人、そいつ等を殺す。今から粒子を市街地全域にばら撒いてな』

海風「遂に性根まで腐り堕ちましたか…!命を、ゲーム感覚で殺すなんて…!」

スドウ『それが嫌なら俺がどこに居るか辿り着いて倒してみろ! それに爆撃しても無駄、粒子の不可視の障壁で市内を覆って爆撃なんぞ出来ないからな!

ゲーム開始は0時から、1時間ごとに20人殺してやるよ! 俺に辿り着いて、勝てる訳が無いがな!』ブチッ

海風「…至急、作戦会議を行います。 自衛隊隊員の方々とこちらの面子全員を集めてください」
683 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/06(木) 04:08:30.42 ID:vy25emDi0
《ブリーフィングルーム》


基地司令「無謀過ぎる…!」

海風「しかし増援を待つ猶予はありません。現在午後3時、刻限まで10時間を切っています。

ここで彼を仕留めず被害が出るのを待てと、誰かが死ぬのを黙ってみていろと言うのですか」

天津風「だからって、アンタの作戦は無茶なのよ!? 単機で囮になって、他の部隊を救助にまわすなんて…!」

海風「彼は海風が止めなくてはならないんです… あの日、自分の怒りを押さえ込めていれば彼はテロリストに身を落とさずに済んだ…

そして地区決勝で殺しておけば、こんな事態にだってならずに済んだんです…!」

天津風「海風…」

大鯨「実際、そのプランは出来なくはない。救出だけなら私達が護衛をしつつ先導すれば良いけど彼を止められない、かと言って彼を倒すことに部隊を傾注すれば救助にまわす人が少なくなって犠牲者が確実に出る。

どっちも取らなきゃいけない以上、海風ちゃんの作戦プラン自体は理に適っているし何より最も成功する確率が高い。海風ちゃんの生存、と言う可能性を除けば」

野分「また理性の暴走を…」

大鯨「いえ、暴走はしてない。 寧ろ暴走していない分、性質が悪い」

海風「…」

大鯨「自分がなに言ってるか、なんて陳腐な説教するつもりは無いけど… 少なくとも現状のプランは容認できない。

最低でも3機編隊、小隊編成で戦うことがこの作戦を容認する条件よ」

海風「ですが3機も割く余裕は…」

「いえ、ありますよ。丁度増援がここに居ますから」

海風「…」

浜風「無視しないでください」

海風「仙台市内はどうしたんですか」

浜風「時雨達に任せました。それに恐らく皆こちらに向かっている頃合かと。 あ、これタクシーの領収書です」

大鯨「後で精算しておくわ」

海風「仮に貴女がここに加わったとして、主要の指揮官を二人も同じ小隊に配備するのは効率的ではありません」

浜風「いいえ、今の私は『駒』です。 海風、今の状態なら未来予測を使える海風の方が指揮には向いています。だから指揮権限は貴女に譲渡、この場においては一人の『駒』として戦います。

それに私の『ウインウガンダムゼロ・クロイツ』はアズライトの影響下でしか『全力』を奮えません。なら最も効率が良いのは私が貴女の僚機になること、でしょう」

海風「うぐ…! ですが貴女を仮に僚機として、もう1機は? 機体性能や連携精度の問題がある以上…」

天津風「…私が、私が行く」

基地司令「キミは航空隊の…」

天津風「私なら海風との戦術フォーメーションが使える。それに編成バランスだって悪くは無い」

海風「しかし天津風さんは…」

天津風「もうとっくに2度も戦ってるのよ、覚悟なんてとうに出来てる。それにガンプラをテロに使う連中なんて、一度ぶっ飛ばさないと気が済まないのよ…!」

海風「いえ、機体の方が… ハルートは壊れて…」

天津風「忘れた? 私にはもう1機、ガンプラがある」

浜風「『シューティングスターガンダム』、しかしアレは地区用の機体だと瑞鳳さんに聞いていますが」

天津風「ハルートの代わりに使えるよう、改修は済ませてあります。2機に性能は遠く及ばないかもしれないけど、足並みだけは合わせられます」

大鯨「なら決まり、ね。 司令、作戦の伝達及び準備を急がせて下さい。また作戦に参加する自衛隊員には休養、あとこちらのメンバーにも施設の一部を解放してください」

司令「わ、わかりました!」
684 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/06(木) 04:49:52.28 ID:vy25emDi0
海風「どうしてさっきはあんな事を…!貴女の親御さんだって、この基地に居るんでしょう…!」

天津風「大丈夫よ、死ぬつもりは無いから。その点はアンタより遥かにマシじゃない」

海風「だからと言って…!」

天津風「ここで動かなかったら絶対私は後悔する。それだけはしたくない… 仲間を一人で死地に行かせるなら、私も戦う。

アンタが背負う重み、私にも背負わせなさいよ」

海風「天津風さん…」

天津風「私ね、ずっと迷ってた… ガンプラ学園に復讐も出来なくて、挙句再編入の話まで来て…

何がしたいのか、何を守りたいのか、どこに行きたいのか、どう進みたいのか… 全部分からなかった」

海風「…」

天津風「今でもそれは分からない。時雨さんの質問の答えだってまだ出せてないけど…

だけど、迷ってるうちに人が死ぬのを看過するくらいなら、私は戦う。『フリューゲル・ヴェント』の天津風として、誰かを守るために」

海風「誰かを、守るため…」

天津風「アンタだってそうじゃないの? ずっと誰かの為に戦って、皆の笑顔の為に戦うって決めたんでしょ」

海風「ど、どこでそれを…!?」

天津風「別荘の戦いの時の混信で。 …正直、私心のどこかで意地張って、アンタに嫉妬してた」

海風「嫉妬…?」

天津風「私は何も持ってないのにアンタだけ色々持ってる、って。でも私は、本当は持ってたものを見ようとしなかっただけなのに…

ガンプラ学園の生徒って地位も、メイジン候補生って名前も失くした私が唯一手に入れてたものなのに、それを見ようとしてなかった」

海風「それは?」

天津風「内緒、よ」

海風「あ、はい」

天津風「でも私は戦う。この機体、シューティングスターを受け継ぐ…」


天津風 機体改造

・ベース機:シューティングスターガンダム
・機体改造内容安価 ↓2
・機体名 安価 ↓3

条件
改造内容:可変機構は維持、あとは自由(度が過ぎるのはNG)
名前:○○スター(例:『ポーラスター』『ライジングスター』など)、もしくは天体事象に関する名称を使用すること


シューティングスターガンダム(参考)
武装
・シールド(ビーム・サーベル×2)
・60mmバルカン砲
・ロング・メガ・バスター
・レールガン付属ビーム・ライフル
・プロトフィン・ファンネル×2
・ハイ・メガ・キャノン(シールド装備型)
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 09:35:13.23 ID:qz0O4iLu0
踏み台
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/07(金) 12:45:10.00 ID:I2itEFfOO
バイタルパートへプラ板や金属製パーツを装備し、それ以外のパーツは肉抜きを限界まで
ライフルはビームマグナムを長砲身化したものに変更、それに合わせ腕部は関節を強化
バックパックはバインダーを大型化し、ZZのビームカノン兼ハイパービームサーベルを追加
また、ウェポンラックを増やしミサイルコンテナの増設が可能に
脚部にハルート最終決戦仕様のブースターユニットを装備、パージは任意で可能に
色はベース機そのままで変更なし
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/09(日) 10:56:39.53 ID:D9J0vdRPO
アルコアルガンダム
(死兆星ことアルコルから命名)
688 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/13(木) 01:41:15.89 ID:JctDumfU0
天津風「『アルコアルガンダム』で、アイツを倒す」


アルコアルガンダム
武装
・シールド(ビーム・サーベル×2+ハイ・メガ・キャノン)
・60mmバルカン砲
・ロング・ビーム・マグナム
・ダブル・キャノン(ハイパー・ビーム・サーベル)
・ミサイルコンテナ
・ハルート用追加ブースター改(シザービット×10)

概要
デルタガンダムの改修機『シューティングスターガンダム』をさらに改修した機体。ハルート製作と並行で改修されており共通のパーツが一部存在する。
全体的なアップデートを施し性能は以前と比較してかなり高いがチームメイトの機体インフレには流石についていけていない。しかし追随は可能。
機体の胸部などには金属パーツやプラ板などで加工し防御性能を高めているが他の外装は可能な限り軽量化の肉抜きをした。
また機体フレームを瑞鳳から教授された初期型『RGフレーム』を基にした可変フレームへと変更、剛性を高めており外装の脆さを補っている。
武装はシールド以外は大幅に変更、主武装は長砲身化した『ロング・ビーム・マグナム』になっておりカートリッジ式の採用で継戦能力を高めた(因みにだが『ラスト・サン』にてデルタカイがマグナムを装備しており、またデルタカイ自体もデルタの改修機のため原作再現としても割と堅実な選択肢)。
バックパックはウイングバインダーを大型化、ZZガンダム用のダブル・キャノンを追加装備。ウェポンラックも追加しておりミサイルコンテナの携行が可能。
脚部にはハルート用のものを改修したブースターユニットを装備。ただし太陽炉搭載機では無いため噴射ノズルは通常のものに変更、さらに本体と同じ推力偏向ノズルへと改造されている。
そして最近、ベースとなった『RGフレーム』を活かしインフレへと追いつくための『力』を内蔵したとかしないとか…
『死兆星』の名前を冠した流れ星の向かう先は未だに分からない。しかし天津風は戦う、自らの目指す先を見つけるため、そして『守りたいもの』のために…


海風「アルコアル… 『アルコル』、死兆星を意味する天体の…」

天津風「そう。昔は視力検査にも使われてた、って逸話もあるわ。 性能はハルートと同じ位、って考えて」

海風「わかりました。ですが親御さんは…」

「天津風!」

天津風「お父さん…」

「司令に聞いた。何で作戦に志願をしたんだ!」

天津風「もう2回、アイツ等とは戦ってる。それに今手の空いてる人間を遊ばせる訳にはいかないでしょ」

「だとしてもだ…! 避難支援ならわかるが、何故前線になんか…」

海風「申し訳ありません。海風が前線に立つ必要が在る以上、フォーメーションに対応できる僚機が必要なんです」

天津風「海風…」

「何故キミのような子供が前線に立たなきゃならない? キミは指揮を担当してるって…」

海風「彼の目標が、海風だからです。 彼をテロリストの身に落としたのは海風の責任、だから囮役として必要…

あとテロリストとは4回戦って、バビロニア事件の時にも居合わせて… 何より彼を止めるには『ウイングガンダム・アズライト』が必要なんです」

「機体を他の人に任せることは?」

海風「無理です。『アズライトバースト』の真価を引き出すには海風が必要で、下手に他の人が使えば最悪暴走して一帯に被害が…」

天津風「この子の話は本当なの。完全に制御しても、焼け野原作ったし… 何よりテロリストの行動を予測する力がある以上、海風をぶつけるのが最適解だから」

「こんな子供に武器を取らせるなんて…」

海風「ガンダムなら、よくある話でしょう。 確かに本当なら間違ってる、子供が武器を持ってはいけないのは倫理的に見て正しいのでしょう。

だけどここで戦わないと、本当に誰も何も守れないし救えない。だから戦います、多くの人の未来を『創る』ために」

「…事情は分かった。なら…」
689 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/13(木) 02:33:35.73 ID:JctDumfU0
《夜11:00 松島市街地》


海風「全小隊へ、作戦行動開始。 以降はバトルシステムの通信機能は近距離以外は効きません。

なので先ほどの伝達どおり自衛隊の作戦参加者のMS小隊『マツシマ隊』『インパルス隊』はレーダーと中継機と補給設備の設置、不知火さん達の『イージス隊』は作業の防衛と周辺警戒を」

『マツシマ01、了解しました』

『インパルス01、同じく』

不知火『イージス01以下、了解』

海風「大鯨さん達『ホエール隊』は参加者の生身の本体の防衛を。残存の榛名さんの『ブレイヴ隊』と阿武隈さんの『ホワイト隊』、春雨さんの『レイニー隊』と如月さんの『アサルト隊』は生存者の救出・保護、避難誘導を。

我々『アズール隊』は遊撃しつつ敵首魁をあぶり出し撃破を行います。あと捜索部隊は交戦を避けスドウ・シュンスケの本体の捜索・確保を。 では全隊、散開を」

大鯨・榛名・阿武隈・春雨・如月『了解』

間宮『捜索部隊、了解です』


部隊編成
・アズール隊(海風・浜風・天津風・天津風父)
・ブレイヴ隊(榛名・天城・満潮)
・ホワイト隊(阿武隈・陽炎・長波)
・アサルト隊(如月・野分・秋月)
・レイニー隊(春雨・時雨・三日月)
・ホエール隊(大鯨・照月・初月・弥生)
・イージス隊(不知火・朝潮・松風・舞風)
・マツシマ隊(有志参加者×6)
・インパルス隊(有志参加者×6)
・捜索部隊(間宮&自衛隊基地警備隊)


天津風「ホエールとイージス、多くない?」

海風「天城さんと満潮さんが駆けつけてくれたお陰で人数に余裕が出来たんです。満潮さんに関しては間宮さんと同じ便で静岡から帰って来た直後なのに」

浜風「間宮さんは彼の生身の身体の捜索を基地警備隊と協力で行って貰っています。彼女だけガンプラでですけど」

天津風「あと何で私の機体に掴まってるの」

海風「エネルギーの節約です。いつもの役でしょう」

浜風「すみません、連戦か長期戦が見込まれる以上はエネルギーは必須でして…」

天津風「あとお父さん、その機体どうしたの」

「作戦用に支給されたんだ。確かホエールグループの会長が貸してくださったと」

海風「アズール04、まさか貴方までここに付いて来るとは…」

「足手まといにはならない。これでも、天津風にガンプラと戦い方を教えたのは私だからな」

浜風「それを『EWACジェガン』で言われても…」

海風「04は可能な限り下がって策敵に集中してください。03、フォローは任せました」
690 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/16(日) 03:08:22.88 ID:0IIC6Cnj0
「む… 来るぞ!アンノウン多数確認、3時の方向。距離200、数28」

海風「01了解。恐らくこの機体群は斥候、偵察部隊だと思われます。やり過ごす事も可能ですけど…」

浜風「我々の目的は敵首魁のあぶり出し、つまりこの部隊を撃破することは我々の目的に繋がります」

海風「03、意見は?」

天津風「対応は01に任せる」

海風「了解。 04は敵機から隠れつつ策敵を継続、03はこちらの後方で火力支援を。ただ04にも気を配り、いざとなれば護衛に回ってください」

天津風「わかった。兵装の制限は?」

海風「使い果たさない程度に、あとはそちらの配分に任せます」

天津風「03、了解」

海風「02は敵部隊の左翼に展開、こちらが右翼に展開して合図を出しますのでそれを目安に戦闘を開始してください。

その後の行動はこちらから適宜指示をします。 ただ可能な限りの消耗は避け、特に大出力の砲撃は控えるように」

浜風「02より、ならそちらのライフルを貸してください。互換性はあるし、どうせいつも投げ捨ててるのならこちらが使います」

海風「確かに、こちらのライフルはジェネレータを内蔵してて本体からのエネルギー消費は殆ど無いからその方が有用か… メッサーツバーグは?」

浜風「それはそちらが使ってください。不要になれば投棄してくれれば後で私が回収、使わせてもらいます」

海風「了解。では全機、指示通りに展開してください」



海風「01、03展開完了。02、そちらは?」

浜風「完了しています」

海風「では… 戦闘、開始します!」

浜風「ツインバスターライフル、2本同時発射します!」


浜風は両腕に持った『ツイン・バスターライフル・クロイツ』『ツイン・バスターライフル・アズライトNEX』を同時に放ち、先行していた6機のMSが呑み込まれて爆散する。

そして敵の目が浜風の駆る『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』へと集中した瞬間を見計らい海風が『メッサーツバーグ・ラズールスタイン』を6基全て連結させた一撃を放ち、さらに4機撃破した。


天津風「残存敵機、残り18よ!」

海風「突撃します、援護を!」


メッサーツバーグを投棄した海風はブレイドを右手で抜き放ち、一直線に敵部隊との距離を詰めていく。迎撃の弾幕を容易く潜り抜け、手近に居た『ジン』へとブレイドを突き立ててその胴を両断し破壊する。

さらに両脇から挟み込むように襲い掛かってくる『ジェガン』と『ギラ・ズール』の攻撃を後ろに下がって回避し、今度は左腕で抜き放ったブレイドと右腕のブレイドを投擲、そのまま2機を破壊した。


海風「これで、残りは15… っと!」


丸腰になったと誤認したAIがアズライトへとMSを殺到させ、サーベルでそのまま串刺しにしてしまおうとするがそれ程海風は甘くない。右腕部に装備されたビームトンファーを使って『ジムV』の腹部を貫き破壊し、さらにシールドで『グレイズ』を殴りつけて吹き飛ばす。

さらにそこに『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』が現れドラグーンを射出、纏めて2機をビームで屠りながら包囲網に孔を開け、アズライトと背中合わせの状態となる。


浜風「全く、思い切りが良いのは構いませんがメインウエポンを簡単に投げないで下さい!」

海風「別に無策で投げた訳では無いので、問題はないでしょう」


海風がブレイドを投げたのには策があった。 投擲した相手の『ジェガン』と『ギラ・ズール』は爆発し、ブレイドが爆風で吹き飛ばされた。

そして吹き飛ばされたブレイドが再び海風の下へと流れ着き、ブレイドをそのままキャッチした海風は不敵に笑い、浜風はそれに呆れて溜息を吐く。


浜風「無駄な事に『予測』を使って… もし戻らなかったらどうする気だったの…」

海風「その時はその時です。 まだやれますね?」

浜風「誰に言ってるんですか。 残り11機、1分で片付けますよ!」

海風「了解!」
691 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/17(月) 03:13:39.70 ID:6l3bStBs0
天津風「敵機全滅を確認… 戦闘時間は2分って…」

海風「所詮は単純なCPUです。 動きは単調、数だけ居たところで脅威とは言い難いかと」

浜風「とは言え、連戦は避けたいところね。エネルギー量は充分残ってるけど、神経を余計なところに割きたくない」

海風「炙りだしたいのは山々ですけど、その前に消耗するのは本末転倒ですし。敵もソレを狙っているのでしょうが」

天津風「じゃあどうするのよ」

海風「だから救助作戦を並行して行っているんです。人質が居なくなれば向こうは焦る、しかもフィールドを自ら限定しているからこちらは包囲網も形成し易い。

さらにこちらは指定された時刻より1時間も早く動いた。 これで向こうは形振り構わず動くしか勝ち目は無いわけですよ」

天津風「でもそれって向こうが約束を守る保障が… 人質を盾にする可能性もある訳だし」

海風「だから救助部隊を海風達より実力が同等か上の人達で固めました。 榛名さんや春雨さん達は言わずもかな、阿武隈さん達だって海風よりも強いですし如月さん達も負けていない…

救助部隊を攻めても返り討ちが関の山、人質だってあの人達であれば救助は簡単に出来る筈です」

浜風「布陣としては完璧、敵にとっては完全な嫌がらせでしょう。なら敵が狙うのは限られる…」

海風「遊撃部隊である海風達かこちらの生身の身体か、です。04、敵の状況は?」

「こちらに接近する反応は無し。しかしブレイヴ・ホワイト隊が敵機と交戦、敵部隊を撃破した模様」

海風「偶発的遭遇か、それとも救助妨害が目的か… どちらにしろ、こちらの居場所と目的がバレている可能性がありますね。

全機、ここを移動します。このフィールドの広がりの中心部へと移動、敵の出方を探ります。その間、積極的な交戦は避け隠密行動を取りましょう」




浜風「もうすぐ40分経過… 無人機は3度見かけて1度戦ったけど、スドウ・シュンスケは見つからない…」

天津風「もっと積極的に交戦するべきかしら?」

海風「04、救助活動の状況は?」

「今の所は順調、との報告が。補給設備とレーダーの敷設も順調、と」

海風「分かりました。予定通りならこの周辺に確かポイントが現時点で設置されている筈です。そこで一端休憩を取りましょう」



海風「ふぅ… 甘い物が欲しい…」

浜風「少し喉も渇いてるし、交代で見張りと補給をしつつ水分や糖分も摂った方が良いかも」

海風「03と04がお先にどうぞ。 こちらは後で構いません」

天津風「ありがと。先に頂くわ」


イベント選択 直下
1.海風&浜風『いつか届く場所に』
2.天津風『流星のあとさき』
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/17(月) 09:21:08.72 ID:m3/atIKI0
1で
693 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/19(水) 02:52:53.98 ID:QpVvPxcL0
side-海風&浜風-『いつか届く場所に』


海風「02、機体の調子は?」

浜風「問題ありませんけど… それがどうかしましたか?」

海風「いえ、別に。ライフル二丁の過負荷が無いか確認しただけです」

浜風「二丁程度で壊れるなら、クロイツの名を冠してませんよ。 それにこのライフル、軽くて出力もあるから凄く便利で… このまま欲しいくらいです」

海風「…」

浜風「どうかしました?」

海風「いえ、内心ちょっと呆れてただけです。少しでも心配した自分に」

浜風「心配、してくれるんですね」

海風「…言いたくはありませんが、貴女は海風の唯一の身内です。何かあれば困るし、貴女は一応世界の分岐の基点の可能性がある以上、倒れてもらっちゃ困るんです」

浜風「まさか、貴女からそんな言葉を聞けるとは思いませんでした」

海風「貴女に対する怒りとか、まだ消えた訳じゃないので勘違いをしないでください。 まだ『やりたい事』が残っているんですから」

浜風「やりたいこと? もう何度も殴られてるような…」

海風「まだ貴女と海風は戦って無い」

浜風「ああ、ガンプラバトルで…」

海風「はい。貴女は海風が倒したい、最大の目標です」

浜風「海風…」

海風「…ずっと戦ってきました。誰かに導かれるまま、夢中になって… たった4ヶ月、意外なくらいに歩みは早かったけど、未だに目指す場所には届いていない…

だから海風が届くまで『チャンピオンのままの貴女』に居て欲しいから、チャンピオンの貴女を倒さなきゃ意味がないんです」

浜風「…海風、この先ガンプラバトルはどうなると思います? テロにこうやって使われたのが世間に露呈した以上、今のままじゃ…」

海風「少なくとも、何らかの措置がとられるでしょうね。 『ハシラジマのある世界』ではお台場で起きた暴走事故が原因でアリスタの研究・利用に規制がかかったと聞いていますし」

浜風「その結果、全てが人工粒子に代わった… だけどこちら側はその人工粒子を利用してテロが起きた。それにアリスタが原因の暴走事故も今後起こらないとは限らない…

状況的には詰みに近いです。平行世界から暴走しない粒子の製造技術を譲り受けるか、新しい環境下でのバトルへと移行するかのどちらかが最適解でしょう」

海風「だから、その前に貴女を倒したいんです。 貴女を倒して、ようやく海風は…」

浜風「スタートライン?」

海風「…もう、スタートラインには立っていますよ。今は道の途中、海風が見たいのはゴールの先… 未だ見えない未来に…」

ヴィーッ ヴィーッ

浜風「接近警報…! 敵が『EWACジェガン』の策敵範囲に入った…!」

海風「数… 76…!?」

浜風「恐らくこれが本隊です!」

海風「02、補給作業中断!エネルギー残量は!」

浜風「90%!機体状況、オールグリ−ン!」

海風「了解! こっちも、いける…!」

浜風「…約束です。この一件が終わって海風が私と並べる、そう判断した時… 貴女と戦いましょう。だからそれまで…」

海風「そんな死亡フラグ掲げないでください。 ここはお互い生き残る、それだけで良いでしょう」

浜風「そうですね… 行くぞ、海風! アズライトとクロイツの力、テロリスト共に刻み付ける!」

海風「ああ、もう…!指揮官はこっちです! ここが正念場、オールウエポンズフリー! 真正面から敵に対し、仕掛けます!」
694 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/25(火) 04:57:47.93 ID:xdbaT1mW0
「クク… ようやく、ようやくこの日が…!」

浜風「海風、回避!」

海風「ッ!」


大出力のビーム砲撃を上昇することで避け、放たれてきた方角へと『アズライトウイングブレイド』の剣先を向ける。

殺気を感じ取った海風は相手をモニター越しに睨みつけ、その怒りを隠さない。


海風「スドウ・シュンスケ、ようやくお出ましですか…!」

スドウ「殺してやる… 今日こそ、お前を!」

海風(殺気が以前と違う。 行動予測警戒レベルを最大に変更、攻勢に出るのはリスクが大きい。パターンを幾つか見出すまで回避・防御予測に専念か、一気に潰すか…)

海風「散々言っていますが、逆恨みも甚だしいです。 そんな今更、『百万式』の改造機を出した所で…」

浜風(あれは恐らくスクランブルとのミキシング機… 完全修復はできなかったからスクランブルで無理矢理修復したのか)

スドウ「黙れ!俺は、お前のせいで…!」

海風「だからそれが逆恨みだと何度言えば… 呆れますよ、全く」

浜風「一応、聞いておきますが… 今から投降すれば裁判での扱いは多少マシになります。もし投降しなければ貴方は少年法など関係なく、テロリストとして処断されるでしょう。 

警告は一度だけだ。これより10数えるうちに武装解除、フィールドの解除を行わない場合…」

スドウ「黙れぇぇぇぇぇぇっ!」


『百万式』『とスクランブルガンダム』の部品で構成されたチグハグの機体から放たれるビームランチャーの攻撃、それを浜風はツインバスターライフルの一撃で相殺する。

それを警告を無視、と判断した浜風はその銃口を躊躇いも無く彼へと向けた。


浜風「投降の意志なしと判断、これより敵機を撃破・鎮圧を行います。海風、指揮を!」

海風「了解!04、後退しつつ通信範囲内まで移動し救援の要請! 03は無人機を牽制、02フォローを!」


連結させたブレイドを両腕に構え、意識を集中させる。呼吸を整えて感覚を研ぎ澄まし、機体と自分を重ね合わせる。

そして『一体感』が訪れ、海風はその力の名を叫ぶ。


海風「解き放て!アズライト、ッ…!?」


不意に体の脈流が止まったかの感覚に襲われ、意識をわざと乱す事で無理矢理機体とリンクした自分を切り離した。

このまま力を行使していれば恐らく死んでいたかもしれない、海風の脳が予測・警鐘を鳴らしたから咄嗟に出来たことだ。


浜風「海風っ!? 何をした、スドウ・シュンスケ!?」

海風「粒子の、循環が… 阻まれ、て…!」

スドウ「かかったな、化け物が…!」

海風「危なかった… このフィールド自体が、罠だったなんて…!」

天津風「RGは機体に粒子を循環させて性能をブーストする機能… アンチ・RGフィールドってこと…!?」

浜風「くっ… こちらのRGも機能を…!これでは他の部隊もNT-DやRGは使え無い…」

海風「マズっ… 今ので、機体に不具合が…!」

スドウ「このまま嬲り殺しだ!行け、無人機共!」
695 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/25(火) 05:38:08.06 ID:xdbaT1mW0
無人機と百万式の攻撃に執拗にさらされる海風と『ウイングガンダム・アズライト』。反撃しようにも射撃兵装は既に浜風に預けており近接武装しか無い今、防御に徹するしかない。

シールドの粒子吸収機構を使って防御しつつ、粒子を溜め込むこんではいるがそろそろ許容値をオーバーしそうで焦りが出始めた。


海風(粒子貯蔵率理論限界値まで残り20%、あと10回吸収する前に『アズライトバースト』で放出しないと機体が破裂する…!)

浜風「この無人機、出力がおかしい… こんなビーム、並の機体では…!」

海風「恐らくエグザムによるブーストが機体のビームにもかかって…」

浜風「しかも増殖速度も尋常じゃ無い… アンチRGに無人機に対するバフ、いつも以上にキツい…!」


浜風がアズライトを護るようにドラグーンやライフルを使って無人機を撃ち落とすが破壊速度を上回る速度で敵が増殖していく。

何かしらの糸口を見出そうとする二人だが、粒子関連技術についてはからっきしであり追い込まれる。しかし状況を打開する手立てを見出せる人間が一人居た。


天津風(確か最初に戦った時、ジャミングがあったけど深手を与えたらジャミングが途絶したって言ってた… もしかして…!)

天津風「殺気がこっちに向いて無い、今なら!」


照準を合わせ、マグナムを放つ天津風。一撃が百万式の肩アーマーを吹き飛ばすも即座に再生、傷が無かったことになる。

しかし天津風はこれで気付いた。 通信のジャミングが一瞬だけ、再生の瞬間だけ消えていたことに。


天津風(やっぱり相手は再生とジャミング同時並行で出来ない… ならこのフィールドの循環阻害も消える可能性がある…?)

スドウ「貴様、見逃してやっていればいい気になって…!」

天津風(でもそれには深手を致命傷クラスにまで追い込むしか無い… でも現状できるのは私だけ… なら答えは!)

天津風「二人共、『勝利の道筋』、整ったかも!」

海風「天津風さん!?」

天津風「道を拓いて! 私なら、『それ』が出来る!」

浜風「一体何を…」

海風「分かりました!02、03を支援してください!この状況、打開できるのは03だけです!」

浜風「だとしても、その内容を…」

海風「いいから! …信じます、絶対に成し遂げてください!」

天津風「分かってる! 行くわよ、アルコアル!」
696 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/27(木) 06:26:55.22 ID:esS11Xy/0
スドウ「まずは、貴様が死ね!」

天津風「ソードビット、射出!」


変形したアルコアルガンダムが一気に百万式との距離を詰めながらソードビットを射出する。スクランブル用のライフルを使い、並みの人間より早い速度で反射しながらスドウはビットに対応し撃墜していく。

だがビットを落とされるのは想定内、天津風の布石に過ぎなかった。次の瞬間、天津風はブースターを切り離し質量弾として百万式へとぶつける。ビットに対処していたスドウの反応が遅れ、ユニットが直撃し百万式は地面へと叩きつけられた。


スドウ「ば、馬鹿な…!? EXAMの反射を…!」

天津風「いくらソフトが良くてもハードが悪ければ!」

天津風(確かにEXAMの反応速度は尋常じゃ無い。だけど霞ほどじゃないし海風の予測みたいに先手先手を打ってこない、その場での対処だけ。

それに加えてアイツは一つの目標に拘る癖がある。元々マルチタスクの処理が苦手なのか、EXAMの影響かで視野狭窄気味。加えて機体もチグハグの状態で万全じゃない。それなら…)

天津風「対処法も、倒す手段もいくらでもあるのよ!」


天津風はただ負けて終わってただけじゃない。そこから自分より強いチームメイトとずっと一緒に戦い抜いて、その中で知らずの内に鍛えていたのだ。

目の前の『EXAM』なんかより強い相手は沢山知っている、そう言う人と戦い研鑽を続けてきたことで彼女の内に磨かれた力がある。


スドウ「なんだ、コイツ!」

天津風「逃がさない!」


不利を悟り逃走を図る百万式を背中から追う。ベース機は同じ『デルタガンダム』だが可変能力を捨てた『百万式』と空戦に特化させた『アルコアルガンダム』では大きな速度差がある。

加えて大気圏内である以上、天津風に地の利がありアドバンテージは揺るがない。マニューバの回避位置を予測しマグナムを放ち、背部スラスターを破壊する。


スドウ「しまっ…!?」

天津風「アンタには同情する!だけど逆恨みばかりで、前に進めないアンタは絶対間違ってる!」


スドウ・シュンスケの気持ちは痛いほど分かる。強くなりたくてどんな力にも縋ろうとする気持ちも、誰かを見返したくて人のせいにしたくなる気持ちも。

だがその上で天津風は断じた。自分と彼は違う、自分の弱さを受け入れて前に進もうとする天津風と力に溺れて暴れるだけのスドウは絶対に違うと。


スドウ「黙れぇぇぇぇぇっ!お前も、死ねぇぇぇぇぇっ!」

天津風(やっぱり予想通りだった。ここで撃ってくるのはメガランチャーしかない、ここが狙い目!)

天津風「『NT-D』!」


反転し、チャージしていたメガランチャーを放つ百万式。スドウは必殺を確信するが、それこそ天津風の狙いだった。

射線にあった『何か』が爆発し、スドウは『アルコアルガンダム』を倒したと誤認する。だがランチャーにマグナムのビームが直撃し、爆散した。


スドウ「嘘だ… 何故、まだ生きている!」

天津風「『NT-D』… 違う、『ナイトロドライヴ』。この機体のフレームはRGフレームのデッドコピー。だからこそ、アンタの小細工が通じ無い!」

天津風(私はまだ未熟で、技術も足りないから粒子を循環させる流路を形成できなかったせいで『放出』って形でしか使えない。それが今、活きた!)


循環を阻害するとしても、放出ならばジャミングの意味を成さない。これが現段階で天津風が使える最大の切り札にして、唯一の対抗策。

MS形態で各部から蒼い炎を放出するアルコアルガンダム。先ほど切り離したミサイルコンテナとハイ・メガ・キャノンが無くともマグナムとサーベルはある。


スドウ「貴様ぁぁぁぁぁぁっ!」

天津風「この、タイミンングなら!」


距離を詰める百万式に向け突撃を行う。回避行動は取らない、取ったとしてもしつこく粘られるのであればここで決めたほうが良い。

そしてスドウの間合いに入り、サーベルが振り下ろされた瞬間を狙い彼女はマグナムを頭部に向けて放ち、左腕を切り裂かれたが百万式の頭部を吹き飛ばす!


スドウ「ぐっ、この…!」

天津風(これで、道は整った!駆けるのは任せる!)
697 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2018/12/27(木) 07:00:33.17 ID:esS11Xy/0
スドウ「貴様、貴様だけは!」


機体を再生させ、傷一つ残らない状態に百万式は元通りになってしまう。そしてライフルの銃口をアルコアルガンダムへと向け、エネルギーを集束させる。

だが天津風は動じない。そして不敵に笑い、饒舌にスドウへと語りかけた。


天津風「私もね、全部を失った。ガンプラ学園を退学させられて、地位も名誉も、誇りさえもね」

スドウ「それがどうした!貴様は、もう死ぬんだから…」

天津風「だけど私は『仲間』を手に入れた! だから私は戦う、私の為に、私を信じてくれる『仲間』のために!」


次の瞬間、天へと昇るような蒼い光の柱が形成され、スドウは呆気に取られて、天津風は勝利の確信を得る。

これが天津風の狙いだった。 自分が百万式にエネルギーの無駄遣いをさせ、さらにダメージを与えることで消耗を大きくする。そして再生する際に消耗するエネルギーで敵のジャミングが一時的に途絶え、その瞬間を海風は絶対に逃さないと信じて。


海風「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」


全身に宝石の鎧を纏った『ウイングガンダム・アズライト』が凄まじい速度で迫り、百万式へと連結させた『ウイングアズライトブレイド』を振るう。

その刃の衝撃波が百万式を吹き飛ばし、電柱へと叩き付け、その破壊力により電柱が折れて百万式はそのまま押し潰される。


海風「まったく… 無茶が過ぎます」

天津風「アンタ達と一緒に居すぎて、肝が据わったのよ。…ありがと、信じてくれて」

海風「信じると言いました。後は任せて、後退してください」

天津風「分かった。任せる」

スドウ「馬鹿な…! 何故、使えるんだ!?」

海風「一度ジャミングが途絶えた隙に、ですよ。それで再度ジャミングが展開されたとしても、一度流れた規格外の量の粒子は止められない。

決壊しているダムを塞き止める方法があるとでも? しかも散々ビームを撃ってくれたお陰でエネルギーの量はほぼ上限いっぱいですよ?」


刀身に宝石を纏わせ、右腕のブレイドを百万式へと向ける。そしてその隣にRGシステムを起動させた『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』も追いつく。

武装が違うとは言えほぼ同型の機体を使う、蒼き瞳を持った姉妹。日本最強と世界最強の姉妹が、隣に並び立つ。


浜風「決めるぞ、海風。 私に『許可』を」

海風「許可します。 モード『ハウリング』!」

浜風「システム『イミテーション・アズライト』!」


2機のクリアパーツの煌きが強くなり、『ウイングガンダムゼロ・クロイツ』の機体に変化が訪れる。

アズライト同様、白銀の機体に蒼い宝石の鎧が形成され、各部を覆い尽くす。


スドウ「なっ…!?」

浜風「この機体の真価は『ウイングガンダム・アズライト』と同調させ機体を同じ状態へと擬似的に変化させる…

つまり私の機体もイレギュラー状態の『アズライトバースト』と同じ状態になった」

海風「ロクでも無い機能ですが… 貴方を倒すには充分過ぎるでしょう」

スドウ「ひっ…!?」

海風「貴方の『結末』はここだ…!もう逃がさない、ここで終わらせる!」
698 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/05(土) 03:56:43.17 ID:FxpOWTCz0
電柱の残骸から這い出た百万式の背後に瞬時に回りこんだアズライトが右腕のブレイドを振り降ろし、右腕を切り落とす。

焦るスドウがサーベルを振り回して背後に居る筈のアズライトを攻撃しようとするが既にアズライトはその場に居らずに空振り、スドウの反応を上回る速度でアズライトが百万式の頭部を蹴り壊した。


スドウ「クソッ!何で反応できないんだよ!」

海風「受信から動作までの速度を上回ってしまえば!」


再度背後に回りこんで膝蹴りを叩き込み、その上で無防備になった百万式に左腕のブレイドを振るい衝撃波で吹き飛ばす。

そして叩きつけられた百万式にドラグーンが迫り、両脚と左腕を貫き破壊する。


浜風「加えて、複数同時の攻撃には弱い。全方位から同時に来る殺気へは対処が遅れる…!」

スドウ「ふざけるな! まだ、終われ無いんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


再生した百万式の機体内部から粒子結晶が生えはじめ、地面からも増殖した粒子結晶が溢れ刃となって2機へと襲い掛かる。

浜風は二丁のツインバスターライフルでその結晶を焼き払い、海風は結晶を宝石を纏わせたブレイドで叩き割った。


海風「人工粒子の結晶体が見つからないのはそう言うカラクリでしたか」

浜風「機体と結晶の融合現象… 事故があったことは矢矧さんから聞いていたけど、まさか制御していようとは」

スドウ「そうだ!これでお前達と…」

海風・浜風「「その程度で?」」


スドウが殺気に対し反射的に攻撃をしかけるが海風と浜風の駆る2機のウイングゼロは結晶による攻撃を回避し百万式との距離を瞬時に詰める。

最早二人にとってスドウの攻撃など児戯に等しく、既に隠している手の内を晒した相手など恐るに足りない。


浜風「ここで、決める! 海風!」

海風「了解!」


アズライトがさらに距離を詰めて百万式の正面からブレイド2本を投擲し、スドウにその攻撃を避けられた。

だがアズライトがその回避位置に予め移動しており、粒子結晶を纏わせた拳を背中から叩き込み百万式を上空へと吹き飛ばした。


スドウ「何ぃっ!?」

海風「今!」

浜風「メッサーツバーグ全基連結、ドラグーン連結・マグナモード!」


左で持った海風用のツインバスターライフルには先程海風が投げ捨てた『メッサーツバーグラズールスタイン』、浜風用のツインバスターライフルにはドラグーンが連結している。

さらに2つのツインバスターライフルを宝石が覆い尽くし、さらに機体の正面には光の『門』のようなものが形成され銃身にエネルギーが集束する。


浜風「プラフスキー・パワーゲート展開、エネルギー最大集束完了!」


照準を上空へと吹き飛ばされた百万式へと向け、狙いを定める。今から放つ一撃は地上にすら被害が及ぶ可能性があり、敵機を空へと上げたのはそのためだ。

そして浜風は『断罪』の一撃を、スドウの駆る百万式へと解き放つ。


浜風「貴方に、十字架の裁きを下す! クロイツ、エグゼキューションッ!」


超大出力の粒子ビーム、以前海風が別荘での戦いで放ったライフルの一撃よりも数倍はあろう極大のビームが上空の、落下しつつある百万式に放たれる。

咄嗟に結晶を防御へと転化し攻撃を防ぐスドウ。しかしその威力は相殺しきれるはずもなく、バイタルパートは護れたが四肢が焼かれ再生すら困難なほどの損傷を受けた。それでもスドウは反撃の糸口を探そうとするが…


スドウ「くっ…! だが、まだ…!」

海風「言いましたよ、貴方の『結末』はここだと」


そう、海風が何もしない訳が無い。 かつて様々な人物に苦汁を嘗めさせてきた海風が、簡単に見逃す筈など無いのだ。

『アズライトバスターソード』を1振りだけ抜き放ち、両腕で構える。そして先程よりも大きな『光の柱』が形成され、周囲を明るく照らす。
699 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/05(土) 04:43:03.79 ID:FxpOWTCz0
海風が目を瞑って意識を集中させているが、頭の中ではある言葉を反芻していた。

それは先程大鯨と会話を交わした際に言われた言葉だった。


大鯨「ねぇ、どうして決勝戦で阿武隈ちゃんに競り負けたと思う?」

海風「武装の強度不足、でしょうか?」

大鯨「ハズレ」


そう言って大鯨は空中へと持っていたコーヒーの空き缶を放り投げ、拳から気弾を放って弾き飛ばす。

弾き飛んだ空き缶を海風がキャッチすると凹みはあるが、そこまで大きな傷は無いように見えた。


海風「…?」

大鯨「気弾程度じゃ驚かないのね」

海風「慣れました」

大鯨「あら、そう? じゃあもう一回こっちに投げて」


言われた通りに投げ返す海風。 それを見ていた大鯨はもう一度拳に力を集めて声と一緒に技を放つ。


大鯨「青龍鱗ッ!」


大鯨の拳から放たれた気弾がコーヒー缶を木っ端微塵に吹き飛ばし、海風は唖然となる。


大鯨「今のとさっきの、何が違う? 因みにどっちも気を集めた時間は一緒よ」

海風「…技名?」

大鯨「正解。これ御褒美」


いつも着ているフリルのエプロンのポケットからジュース缶を投げ、海風がキャッチする。


海風「ありがとうございます」

大鯨「技名って言うのはね、力の定義なのよ」

海風「定義?」

大鯨「何をしたいか、何をどうするための力なのか、って言う指向性を持たせてそれを言葉で定義するのが技名。

非現実的、って言われればそれまでだけど… 指向性を持った一撃とあやふやなままの一撃の差って、今のみたいに結構大きいのよ」

海風「だから、あやふやなままで指向性が無かったから阿武隈さんの『ファイナルウルフストライク』に競り負けた、と?」

大鯨「そういうこと。 意外と、言葉の力ってバカにならないのよ? まぁ傍から見ればちょっとダサいかもしれないし躊躇うのも仕方ないことだけど…

だけど少し唱えるだけでも違う。 機会があれば試してみるのもアリね」
700 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/06(日) 03:25:59.18 ID:paaSelm/0
海風(『何をしたいか』『何のための力』なのか…)


言葉を頭の中で反芻する海風。きっと以前の空虚な自分では決して出せなかっただろう。だけど今は違う、そう海風は自分を信じる。

もう何もない空虚な自分は居ない。だからこそ、戦うと決めたのだから。


海風(『何をしたいか』なんて決まってる。 皆が笑顔で居られる世界を創る、それが海風の答えだから)


その為に何をすれば良いのか、海風は答えを出すべく『未来予測演算』を走らせようとするが止めた。

きっと『余計な未来』を視てしまえば集中が途切れ、集束させているエネルギーが無駄になるから。そしてもう一つだけ、演算を止めた理由があった。


海風(海風自身が決めなきゃ。 未来を視るんじゃなくて、心で決めなきゃ駄目なんだ)


そうでないと海風自身が出した答えにはならない、そう海風は断ずる。だから今度は思い出す、積み重ねてきた『これまで』の記憶を。

どうしてここまで来たのか、何を選んで進んできたのか、そしてその根底には何があったのだろうか、と。


海風(皆に出会って、未来を創る為に戦うって決めて、初めてガンプラに触れて… きっと、空虚で空っぽな自分自身を変えたかったから。

居場所が欲しくて、違う自分に憧れて… 『本物の空』に手を伸ばしたいって思ったから)


答えは決まった。 その瞬間アズライトの輝きが増していき、有機的な形状の宝石の翼が形成され、バスターソードを宝石の刀身が覆い尽くす。

さらに海風は意識を集中させ、バスターソードへとエネルギーを集束、刀身をさらに巨大化させていく。


海風(何をするための力なのか… 空虚な自分を終わらせて、『偽物の空』を砕くための…!)


その為の力、そう海風は確信を抱く。 次の瞬間、アズライトが加速し百万式との距離を詰める。 最早逃げる術の無いスドウは怯えるしかない。

巨大に膨張した宝石の剣の間合いにまで一直線にアズライトは駆けていく。海風と『ウイングガンダム・アズライト』が重ねてきた全てを乗せて。


スドウ「や、やだ…! 嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

海風「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


スドウの悲鳴を遮るが如く海風は叫ぶ。自分が今成すべきことを、何をするための力であるのかを。

そして重ねてきた『これまで』と共に、海風は必殺の一撃を目の前の敵と、世界を覆い尽くす『偽りの空』へと解き放つ!
701 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/06(日) 03:28:31.49 ID:paaSelm/0















海風「フェイクアズールッ…! ブレイカァァァァァァァァァァッ!」













702 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/06(日) 04:19:39.16 ID:paaSelm/0
宝石の剣が動けなくなった百万式へと叩きつけられ、百万式は成す術も無く切り裂かれる。

そして宝石の内部に集束させられていたエネルギーが一気に放出、蒼いエネルギーの奔流となって放射され、切り裂かれた百万式どころか数百メートル以上の上空に存在していた雲すらも切り裂いた。


海風「これが、海風の出した答えだから」


海風とアズライトは背を向け、振り返らない。例えどんな『結末』が齎されようと、止まらないと誓ったのだから。

そして粒子のフィールドが消えるその前に、地上へと落下していくアズライト。エネルギーを使い果たして姿勢制御が上手くいかない。


天津風「ったく、帰りのエネルギーくらい残しなさいよ」


落下するアズライトの手を掴んだのは天津風の駆る『アルコアルガンダム』だ。彼女が機体の推力を活かして地上への落下速度を和らげる。

そして2機が地上へと着陸し、通信チャンネルを広域に切り替えて海風は宣言した。


海風「作戦終了。 敵首魁及びその機体の撃破・消滅を確認しました。 粒子フィールドは間もなく消えますが、引き続き残る避難民の救助にあたってください」




海風「ああ、しんど…」

大鯨「お疲れ様。アドバイス通りだったでしょ?」

海風「ええ。ですが、かなり気だるいです…」

大鯨「やっぱり、貴女も『アシムレイト』してたのね」

海風「『アシムレイト』?」

大鯨「人とガンプラが完全に同調した時に発現する力よ」

浜風「やっぱり海風も、でしたか…」

大鯨「ええ、そうみたい」

海風「何です、それ」

浜風「機体とファイターが同調する事で、機体性能を爆発的に向上させる力です。精神力が強い人間程発現し易いのですが…

確認出来た事例が海風と瑞鳳さんだけ、二人目の事例と言うべきでしょうね」

大鯨「気だるいのは精神力を消耗している証拠。 だけど瑞鳳よりは消耗はしてないみたい」

浜風「海風が規格外の精神力を持っている、と言う事でしょう。それにアズライトの側にも何かしらある可能性も…」

海風「アズライトが?」

大鯨「貴女とアズライトは同調率が規格外なの。瑞鳳ですら辿り着いて無い域、未知の領域に踏み込んでる… 恐らく『アシムレイト』すら超えてるかもしれない」

浜風「瑞鳳さんすら自分の放出した炎のダメージを受けてるのに、海風は力を完全に制御しているのがその証拠でしょう。ある意味、これが海風の『進化』なのかも…」

海風「『進化』…」

大鯨「でも、力を使うのは控えたほうが良いかもしれないわね。何が起きるか解らない以上、完全に解明されるまでの間は火急の危機以外の時は」

浜風「ただでさえ海風は未来予測演算で過負荷を脳にかけているのに、下手をすれば取り返しがつかなくなる」

海風「分かりました」

榛名「大鯨さん、それにお二人共。間宮さんから報告です」

海風「見つかったんですか?」

榛名「ええ。役場の屋上付近に居たのを発見したのですが…」
703 : ◆6G6UiAPa1Q [!]:2019/01/08(火) 04:43:31.45 ID:eqpKLlju0
《松島町役場 屋上》


海風「スドウ・シュンスケ…」

スドウ「あ、が…!」

天津風「ひっ…!?」

大鯨「…天津風ちゃん、目を瞑って。これは貴女が見ちゃいけない」

天津風「…い、いえ。私にも『責任』があります。だけど、これは…」

阿武隈「ナノマシンの影響なの…?」

天城「影響と言うよりナノマシンの自爆プロセス、と言うべきでしょうか… 恐らく頭の血管をナノが破裂させて、投与者を死へと至らしめる…」

陽炎「体の良い口封じ、って訳ね。 もう助からないのは一目瞭然だし」

スドウ「何故ェ… どう、して…!」

長波「…切り捨てられたんだよ、お前は。どれだけ強化しても私達に勝てなかったから」

海風「…これが、貴方の選んだ結末です。 …どうして、どうしてあの日薬なんか受け取って、使ったんですか!

それが悪い事だと分かっていた筈です! 力なんてどうにでもなる、その時勝てなくてもいつか報われたかもしれない、なのに…!」

スドウ「だ、まれ…!オマエが… オマ、エが居な、けれ、ば…!」

天津風「…確かに、海風が貴方に怒ったのは事実。かなり理不尽だったとは思う。だけど犯罪にまで手を染めてまで、そんな力が欲しかったの…?

その時負けたとしても、いつかきっと戦うチャンスだってあったのかもしれない。その可能性をふいにして、未来まで潰して…」

浜風「…二人共、もう良いです。 これが彼の望んだ結末なのですから」

スドウ「ちが、俺、は…」

浜風「同じでしょう。 貴方はただのテロリスト、誰から見てもそれは変わらない。 その分岐に立って、歩き出したのは貴方なのだから」

スドウ「お、れ、は…」

浜風「話してもらいます。 誰に手引きされたのか、クルストやニムバスは何をするつもりなのかを…!」

スドウ「う、あ… ぁ…」

大鯨「…息絶えた、みたいね」

浜風「貴重な情報源を… だから、消したのか…」

海風「…」グッ

阿武隈「大丈夫?」

海風「…はい。振り向かないって、決めたから」

陽炎「それでも、辛い時は泣いても良い。まだ子供なんだから」

長波「自分を責めるな。コイツがこうなったのは、お前のせいじゃない」

海風「だけど…」

天城「悪いのは『大人』です。子供が、責を負う必要はありませんよ」

榛名「今はせめて、冥福だけでも祈りましょう」
704 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/08(火) 05:24:06.03 ID:eqpKLlju0
海風(その後すぐ、海風達は松島を発った。事後処理は陸上自衛隊の多賀城基地の部隊が行うらしい)


大鯨「…さて、誰が皆の居所を流したんでしょうね?」

不知火「恐らく伝達した一部の人間から漏れた可能性が高いかと」

大鯨「つまり、ウチのグループ傘下企業の上役か、あるいは自衛隊高官か政府の人間の中に手引きした人間が居るってわけね」

不知火「どうしますか?」

大鯨「その前に全員を一度別の場所に匿いましょう。 手配を進めて」

不知火「分かりました」


天津風(誰が手引きし、情報を流したのか不明な以上手の出しようが無い。私達は念を入れて隠れ家を変えることになった)


浜風「他の四人は?」

海風「特に変わりはないそうです」

天津風「襲撃はされてないのね。霞あたりが狙われそうだったのに」

浜風「移送の護衛を増やしたそうですし、逃げられないでしょう。内部犯がいればオシマイですけど」

海風「嫌なことを…」

時雨「ともかく、だ。僕等も2度目が無いとは限らない、警戒は緩めないようにしなきゃ」

春雨「罹患者の人達はまた昏睡して、病院に収容されましたが…」

三日月(裏)「ああ、まさから奴等罹患者を操ることも出来たとはな」

海風「それで1億のパンデミックを起こすつもり、だったのでしょうか…」

浜風「可能性は高いわね…」

天津風「なら、絶対止めなきゃ…!」



天津風(私達にはもう進むしか道は無い。止まれば悲劇は起きるし、止まらなくても悲劇を止められるかは分からない。

だけど私達は、戦うしか無いんだ。胸に抱いた決意や覚悟を失くさないために)

海風(信じた明日をこの手で創る、皆で笑顔で居られる世界にするために戦う、そう海風は決めているから)

天津風(私は私が信じる想いのため、そして私を信じてくれる人の為に… ようやく抱いた決意を、失くしたくないから)

海風(だから進むんだ。その先にある未来まで。 二人の信じる、明日の先へと)


第22話『感情の果て』 終
705 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/08(火) 05:41:08.27 ID:eqpKLlju0
次話選択 下3票先取まで


1.霞『ゼロ度の炎』…諸事情により萩風と共に京都へと身を隠す霞。大鯨のツテを辿り、かつて戦った神風達の下へ向かったが追撃するEXAMキャリアーが彼女達へと襲い掛かる。NTとして、彼女はどうEXAMと向き合うのか…

2.神通『Lost Heaven』…朝雲の家族を護るために彼女と暮らすことになった神通。しかし神通も萩風同様、『前の神通』の人格が目覚めつつあり… そんな中でキャリアーとの戦闘に陥ってしまうが…

3.霞&神通『過去と未来』…海風&天津風襲撃の報を受け東京で合流する残りのメンバー。霞・神通の二人はそれぞれに『問題』を抱え込んでしまう。そこに現れるEXAMキャリアーと戦うが…

4.海風『Path of Victory』…東京へと戻り合流を果たした海風と天津風。束の間の休息で親交を深めるメンバーだったが、ニムバスがお台場を占拠したとの報が入る。(※神通・霞が『問題』を解消した、と言う前提の話)。
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 09:45:53.04 ID:Gohj+Epu0
3で
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/09(水) 04:46:55.28 ID:tJpTE47uO
2で
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/09(水) 10:51:37.43 ID:+R+w25noO
3
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/13(日) 18:28:17.01 ID:rPEr8nGfO
3
710 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/14(月) 03:03:13.28 ID:p7fG1NkG0
第23話『過去と未来』


《東京 甘味処・間宮》


神通「宮城の二人が襲われた!?」

衣笠「スドウ・シュンスケに襲われて、松島で交戦し撃破したらしいよ」

朝雲「松島って、確か天津風のお父さんの職場だったっけ… 二人は無事なんですか?」

古鷹「無事で特に被害も無いって。はい、宇治金時持って来たよ。間宮さんのレシピだけど、あんまり美味しくなかったらごめんね」

神通「なら良かった…」

衣笠「だけどスドウ・シュンスケ、死んじゃったって。ナノに自殺機能があって、口封じされたみたい」

朝雲「酷いわね… 使えるだけ使って、殺すなんて…」

古鷹「それだけじゃない。倒した相手が結果的に死んじゃった事は二人にも小さく無いショックがあった筈だよ」

衣笠「お前が殺したんだー、とか言われてるようなもんだからね。仕方の無い、不慮の出来事だったとしても」

神通「そうですね… 向こうの人達が二人に何かしらフォローをしてくれると良いんですけど…」

衣笠「大鯨さんも榛名も居るんだから大丈夫でしょ。それに戦うって決めた以上遅かれ早かれ味わうことになるのは覚悟してる筈だし。

特に妹ちゃんの方はバビロニアの一件だって自分の目で見てきてるし、その上で戦ったんだから『そうする』覚悟もあったと思うよ」

朝雲「覚悟…」

古鷹「…今ここで、手を引いて無関係な場所に戻っても誰も文句は言わないよ」

朝雲「いえ… 私もとっくに決めてるし、だからちゃんと戦います」

衣笠「ま、なるべく人は殺さない方が良いんだけどね。そう言うのは大人が背負い込むべきだし」

神通「せっかく終わらせたと思ったのに、誰が手引きを…」

古鷹「その大人、かな? 昨日身元不明の部隊が多賀城駐屯地を襲撃して、襲撃犯の遺体から身元の調査しようとしたら上からの圧力で阻止されたみたいだよ」

朝雲「それって、自衛隊の幹部が関わってるってことになるんじゃ…」

衣笠「もしくは政治家の偉い人とかね。 ナノマシンの技術はどこも欲しがってるし、その『性能』だって見たい人間はいくらでも居るもの」

神通「勝手が過ぎます…!それで世界が混乱して、大きな犠牲を出すのに…!」

古鷹「だってその事を知らないし、多分そうなる事すら予想してもない。 目の前に餌を吊るされて、崖まで一直線に走らされてる馬と同じなんだよ。

多分松島の一件だって表沙汰にはならないし、確実に『なかったこと』にされるから… 破滅が迫ってるのに誰も気付かない」

朝雲「じゃあ止められるのは私達だけ、ってこと…」

衣笠「そうなるね。もっと大きな『何か』が起きない限り。 …早く食べないとかき氷、溶けちゃうよ」

神通「あ、はい」

朝雲「そう言えばお店開けないんです? 私達は呼ばれたから来たんですけど」

古鷹「間宮さんが居ないのに開けられないよ。 それにもうここも、事件解決次第引き払う予定だから」

衣笠「しかも物騒な話するなら尚更、ね」
711 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/01/27(日) 02:10:50.22 ID:FjRTBIXX0
古鷹「あとはここからが本題なんだけど… 昨日の襲撃を受けて急遽、京都組の帰還を早めることになったの」

神通「萩風と霞さん、それと愛宕先生をですか?」

衣笠「あと1時間後くらいの新幹線で東京に戻るって」

朝雲「宮城組は?」

古鷹「宮城の二人は二度目の襲撃の可能性を考えて、一旦どこかの場所を経由して数日ほとぼりを醒ましてから、だって」

衣笠「…ここだけの話、戻すことにしたのは全員の居場所がバレてる可能性があるから、なんだけどね」

神通「え…?」

古鷹「大鯨さん達が皆を隠そうとした時、EXAMキャリアーの移送を厳重に行うことを政府に依頼してたらしくて…

その時に貴女達のこと、昏睡病と何度も戦って狙われてる可能性のある学生を匿ってるってだけ話をしたの」

朝雲「そこで確実に大鯨さんのお膝元の宮城を襲撃したら案の定、だったって訳ね…」

古鷹「移送の話が何日かおいてから決まったのも、宮城に居るって確証を掴むための時間稼ぎだったのかも…

それに京都の方も漏れてる可能性は否定できないから、京都組をこっちに戻すことが今朝決まったの」

衣笠「纏めたほうが護り易いからね。衣笠さんだって、その方がやりやすいし」

神通「たった一人でテロリストのアジトを殲滅した事は聞き及んでいます。とても頼もしい限りかと」

衣笠「そうそう、大船に乗ったつもりでね!」

朝雲(…実際は先輩の方が強いんだけどね)

古鷹「だからこの後三人を迎えに行って、それぞれをまた二箇所の家に分けるの。一組は霞ちゃんって子の家、もう一組は萩風ちゃんの家ね」

朝雲「ウチは良いんですか?」

古鷹「御両親もそろそろ迷惑するだろうから、って榛名さん達の配慮だよ」

神通「それなら私が霞さんの護衛を引き継ぎます。霞さんの家は今の私の家でもあるので」

朝雲「萩風のマンションは私の家二号みたいなものだし、私が萩風のところに行きます」

衣笠「はいよ。じゃあ、迎えに行きますか」


《一方その頃 新幹線車内》

愛宕「すみません、ビー」バシィッ

愛宕「い゛だっ!?」

萩風「すみません、コーヒー3つお願いします」

「は、はい!」

愛宕「もう、先生に何するのよ!?」

萩風「先生ならもっと先生らしい言動を心がけてください。お昼の新幹線で、しかも生徒が居るのにビールを飲む教師が居て良いとでも?」

愛宕「だって、向こうじゃ呑ませて貰えなくてぇ…」

萩風「当たり前です。 寧ろ衣食住の面倒見てもらえただけでも感謝すべきです」

愛宕「だからって先生を殴らなくても…」

萩風「お母様から許可は頂いてます。『お酒の呑もうとしたらブン殴ってでも止めろ』と」

愛宕「瑞鳳が元凶ね…!」

霞「もう色々と、頭痛くなってきたわ…」
712 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/02/14(木) 01:28:52.97 ID:5P+Kio2T0
《東京駅》


神通「二人共、無事に戻って来れて良かったです」

霞「京都は特に問題とかは無かったです。その、滞留先以外は…」

朝雲「なに、変な山奥とか泊まってたの?」

萩風「全国一回戦で戦った『風の会』の3人組の家だったんです…」

朝雲「顔見知りだったのね… あの3人、萩風達と同じタイプの家系だったの?」

萩風「どちらかと言えば陰陽系、オカルト方面ですね。私達は場合によって人とも戦いますが、向こうは怪異専門です。

なのであちらは譜術やまじないに特化していて、対人戦闘の類は私達の方が秀でています」

霞「お陰で萩風が戦闘訓練に駆りだされてあっちの連中鍛えさせられたり、感応できる私も巻き添えにされたり大変だった。

もう暫く幽霊の類の除霊に付き合わされるのは勘弁ね… おぞましいったらありゃしない」

神通「除霊までさせられてきたんですね…」

萩風「そちらは?」

朝雲「平和と言えば平和だったわね。何も起きず何も変わらず、ずっとそんな感じ」

霞「羨ましいわね、まったく」

朝雲「仙台の二人には言わないでよ」

霞「分かってるわよ。海風と天津風、スドウを倒したって…」

萩風「そしてスドウは死亡、結果二人は間接的に彼の死に関わってしまった… 触れないほうが二人の為でしょう」

神通「ナノマシンに敗北したキャリアーを殺す機能が備わっていたのは想定外のことです。彼女達が気に病む必要は…」

萩風「必要が無くとも、気に病んでしまうというものが人間です。榛名さん達が何とかしてくれることを祈りましょう」

朝雲「…ところで愛宕先生は?」

愛宕「うぅ、お酒…」

萩風「禁酒生活で発狂寸前になってます」

朝雲「アル中みたいね…」

神通「しかし範たる教師である以上、生徒の前でお酒はいけませんよ」

愛宕「でも私、臨時教員だから半年もすれば担任も顧問も終わりなのに…」

霞「それが先生の言う台詞か…」
713 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/02/14(木) 02:00:49.27 ID:5P+Kio2T0
《霞の家》


霞「久々の家だから落ち着くかな、って思ったけど… 何です、これ」

神通「海風さんが世界大会のイベントで獲得してしまったガンプラ一年分だそうです… 運びこむの、大変でした」

霞「アイツ何してくれてんのよ…!」

神通「責めるなら無理矢理参加させた夕雲さん達を責めるべきかと」

霞「えぇ… でもどうするのよ、これ… このままだと日常生活にも支障きたすレベルよ…」

神通「蒼龍さん達がこのあと引き取りに来てくれるそうなのですが… 大会の影響で店の在庫が足りなくなったので、欲しいとのことです」

霞「海風は?」

神通「一応、好きにして良いと言っていました」

霞「なら必要分とか欲しいキットだけ確保して、後は蒼龍さん達に引き渡すか…」



霞「先輩、あとどれ要ります?」

神通「もうこちらは欲しい分は確保しました」

霞「私の分も終わったし、萩風と朝雲が欲しいって言ってるのも確保したし… あとは海風達に連絡つけば良かったのに」

神通「一応二人の好きそうなキットは確保しておきましたが… まだ300個以上もあるとは」

霞「本当、PPSEとスポンサーも馬鹿と言うか…」

神通「…霞さん、何か隠してませんか?」

霞「先輩こそ」

神通「…バレてましたか」

霞「意識、魂が二つ… 『もう一人』が目覚めかかってるんですか」

神通「はい… と言うか、私が消えかかっているんです」

霞「先輩が…!?」

神通「私が生まれる未来への因果が消えかかってる、と朝雲さんが…」

霞「このまま未来が変われば先輩は生まれない、だから消える… でも萩風はそんな兆候は…」

神通「あの子は既にこの時代の『萩風』と完全に置き換わってます。だからあの子の因果は固定され未来へ戻ることは出来なくなった。

でも私は置き換わってないので未来に戻ることは出来ますが、その未来が既に消えかかっていて…」

霞「確定と同時に先輩は消滅する、もしくはその前に消える…」

神通「はい。あくまでも朝雲さんの仮説ですが」

霞「アイツ、なんでこの頭の回転をテストにまわさないのよ…」

神通「しかし隠し事をしているのは霞さんもでしょう。例の夢はもう見ていないと聞きましたが?」

霞「もう悪夢は見ていません。だけど、毎晩私に語りかけてくるんです。『マリオン』が」

神通「マリオン、EXAMのコアとなった少女の…」

霞「日に日にそれが強くなっていって… まるで、何かを訴えてくるような…」


イベント選択 直下
1.朝雲・萩風『仲間として』
2.神通『花散るその前に』
3.霞『受け継いだ命』
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/14(木) 09:39:16.57 ID:GJsGnazy0
2で
715 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/02/17(日) 03:37:58.16 ID:TB3VXd8F0
side-神通-『花散るその前に』


私の『時間』はそう長くない、自分でも分かってる。本来不可能な筈の時間改変、その代償なのだから仕方の無いことだと思う。

それでもこの歩みを止めることは許されない。幾多の螺旋を超えてようやく辿り着いた時間軸、ここで歩みを止めたらきっと未来に悲劇が訪れるから。


神通(…けど私は、その未来を見る事ができない)


分岐が生じかけている現時点で私の存在はおぼろげになりつつあるのに、未来が確定すれば今度こそ消えてしまうだろう。

否、その前に消える可能性の方が高いかもしれない。今はそれが何よりも怖かった。


神通(多くのものを得すぎたから…)


決して立ち止まらない心、何度でも立ち上がる勇気、そして護るべき仲間達や自らの剣を託せる人。様々な人やものに触れ、学んできた。

お母様から、愛宕先生から、朝雲さんから、天津風さんから、霞さんから、そして何より海風さんから、多くのものを得て戦った。


神通(だから今度は、私が『創る』番)


大事な人たちが笑っていける未来を。決してその未来を見る事が叶わなくとも、この手で報いることができるのなら。

それだけで私は、私が今ここで生きている意味を見出すことができるのだから。


神通(…『契約』は護れないけど、私が居なくても彼女ならきっと大丈夫でしょう)


海風さんに剣術を教える、と言う約束はきっと護れない。だけど彼女にはそんなものは必要無いだろう。

もうそんなものが必要が無いくらい彼女は強い。 最初から海風さんが戦って成長している姿を見てきて、今なら確信を抱ける。


神通(思えば、助けられてばかりだった)


彼女のどこまでも前を向いて進み続ける姿勢、誰かを護りたいという想い、そのどれもが私を奮い立たせてきた。

きっと彼女なら私なんてもう要らないだろう。ならばもう、思い遺すことは何もない。


神通(花はいつか散るもの。だけど花が全て散り落ちるその前に… 新しい未来を、創ってみせる)


それが私の、残された時間で決めた『やるべきこと』だった。
716 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/02/21(木) 01:55:03.46 ID:WHdCvypQ0
side-霞-『Burnning/Glacial My Soul』


『助けて』、ふとそんな声が聞こえた気がした。耳からではなく脳に直接響くような声、感応波による声だとすぐ分かる。

微弱で今にも消え入りそうな『声』、だけどそれを私は拾うことが出来る。ニュータイプであることを受け入れてから、感応波は日増しに強くなっているようだ。


霞(どうして、私なの?)


分からない。どうして声が私にだけ聞こえるのか、どうして私がニュータイプとして目覚めることになったのか、『彼女』は私に何をさせたいのか。

だけど『彼女』は問いに答えず、ただ一方的に細い声で叫ぶばかりで、私の欲しい回答は得られない。


霞(私がやらなきゃいけないこと…)


私に何が出来る? 私に誰かを救う力なんて無いし、ニュータイプの共感能力も相手が拒めば意味も無いものだ。

ただ一つあるとすれば『戦う力』だけで、それは『誤解なく分かり合う』ニュータイプの在り方を真っ向から否定していることになる。


霞(じゃあ私がやりたい事)


決まってる。大事な人達を護りたい、それだけ。それだけで戦ってきて、そしてここまで辿り着いた。

矛盾している、と自分でも思う。分かり合う力を戦うためにしか使わない、本末転倒にも程があるだろう。


霞(だけどそれが『私の力』だから)


『マグマ』と『氷』、偶然ながら私が『アクロスバースト』で発現させた力。相反する心象が私の中にあったからこそ生まれたもの。

多分、この力は私一人のものじゃない。私一人だけなら片方しか発現しない筈かっただろう。


霞(きっと私の道はあの日から一人分の道じゃなかったんだ)


あの事故の日、私が生き残った理由は『誰か』が私に命をくれたからだと思う。だからきっと私と『誰か』の命が相反する力の源になっているのかもしれない。

なら余計に私は死ねなくなった。命を誰かから受け継いでいる以上、私には生きて誰かを助ける義務がある。


霞(今を生きるみんなの命を未来に繋ぐ。そのために私は戦う)


例えソレが矛盾を孕んだ生き方だったとしても、私は私の信じる道を行く。私の『共犯』が進む道の隣、誰かの未来を創る道を。

そのためなら私は迷わない。戦いを終わらせて、皆を救う道をひたすらに進む。 それが私の心に決めた道だから。
717 : ◆6G6UiAPa1Q [saga]:2019/02/28(木) 03:25:38.20 ID:+eW8m+rg0
side-朝雲&萩風-『仲間として』


萩風「心配、ですか。姉さんと霞さんが」

朝雲「そりゃそうよ。あの二人、抱え込む癖あるんだもの」

萩風「同じ抱え込むタイプでもその悩みがまだ『普通』な分、海風さんの方がだいぶマシですね。あの二人は事情が事情なだけに解決は自分でして貰うしか無いのも面倒というか…」

朝雲「下手なアドバイスすら出来ないしね。霞にはリタが居れば良かったのに… 平行世界から呼べないの?」

萩風「今は無理でしょう。彼女達も今、世界を脅かす敵と戦っているんですから」

朝雲「…『深海棲艦の大規模侵攻』、私達の世界で15年近く後に起きる事象が向こうじゃ今起きてるのよね」

萩風「はい。未来の話では向こう側も犠牲は無いものの大きな手傷を負ってこちら側の協力要請に応えられなかった、と。

寧ろ私達の世界の側から戦力を供給すべきなのに、浜風さん達の犠牲でそれが出来なかったと悔やんでいました」

朝雲「瑞鳳さんなら、本気で死に際まで引き摺りそうね…」

萩風「と言うか何で知ってるんですか」

朝雲「リンクしてるからよ、萩風と。 記憶までは読み取れないけど、今考えてることなら多少は分かる」

萩風「…やっぱり、人の考え読んでた」

朝雲「私と萩風のパス、どうやらまだ切れて無いみたいなのよね。嵐ってのは即座に切れたのに」

萩風「『私』との縁が薄いから、でしょう。朝雲さんと『今の私』の縁は深いけど、彼女と『今の私』は縁が希薄ですし」

朝雲「ま、多分コレの影響もあるけどね」

萩風「あ、私のチョーカー… 無いと思ったら…」

朝雲「アリスタ、だっけ? 多分これが私と萩風を繋いで、楔にしてるのよ」

萩風「多分私の存在が安定しているのは繋がっている朝雲さんが楔になってるから…」

朝雲「未来に帰れる可能性を放棄してこの時代に残るって決めた、ってのもあるだろうけどね。半々、ってところかしら?」

萩風「だけど姉さんには楔になる人間が居ない、だから不安定なのかも…」

朝雲「楔になれる人間は居るのにね」

萩風「海風さん、ですよね」

朝雲「あの二人、互いにリンク経験はあるし互いのアリスタを交換してる。多分不安定なのは迷いがあるから、だと思うんだけど」

萩風「この期に及んでまだ迷ってるの、あの人…」

朝雲「もしくは消えることを前提にしてるのかもしれない。もう一人の自分、『本来の先輩』に存在を返すために」

萩風「それで自分も消滅したら元の子も無いのに…」

朝雲「だけど私達が干渉すべきことじゃない、選ぶのは先輩なんだから。まぁ消えられたら困るけど…」

萩風「どうすることも出来ないのがもどかしいわね…」

朝雲「私達には無理な案件ね、どっちも。戦いになればサポートすれば良いんじゃないかしら」

萩風「それしか無い、のよね… だけど私は、少しだけ幸運ね」

朝雲「ん?」

萩風「何でもないです。お風呂入ってきます」

朝雲「なら、背中くらい流したげるわよ。 私は萩風の『パートナー』で『楔』だもの」

萩風「あと居候でもありますが」

朝雲「痛いところを突いて来たわね…」
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