【ミリマス】志保「愛する貴方へ、一生のお願い」

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1 : ◆T4kibqjt.s [saga]:2017/08/07(月) 22:34:41.77 ID:LNwQNfqF0
※何年か未来のお話です 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1502112881
2 : ◆T4kibqjt.s [saga]:2017/08/07(月) 22:38:39.24 ID:LNwQNfqF0
ステージを終えた私は、あの人を探していた。勿論、歌やダンスの出来を褒めてもらう為に。あれだけ完璧にこなしたんだもの、頭の一つ位撫でて貰ってもバチは当たらないと思う。


「志保」


すると向こうで、嬉しそうな顔をしたあの人が私を手招いているのが見える。

従わない理由は無い。私は堪らず駆け出し、衣装のままなのも構わず彼の腕の中に飛び込んだ。ちょっと汗臭いけど、この臭いは嫌いじゃない。


あぁ…やっぱりこれ、安心するなぁ。


「志保。おい志保っ」


…何ですか、そのぶっきらぼうな言い方は。恋人の名前を呼ぶんだから、もう少し位甘く囁く努力をするべきです。

それに何度も名前を呼ばなくても、私は貴方の腕の中に居るじゃないですか。人が気持ち良く甘えているというのに、当の貴方が水を差さないで下さい。全く、ムードも満足に作れないんですね。


「志保、起きろって。志保!」


あぁもう、さっきからうるさいですよ。私は起きてます。ほら、目もこんなにぱっちり…



ぱっちり…んんっ…




…ぱちっ。
3 : ◆T4kibqjt.s [saga]:2017/08/07(月) 22:42:55.26 ID:LNwQNfqF0
「もぉっ、うるひゃいれふぅ…んぇ?」


気が付くと、私を抱き締めていた筈の男は一メートル程離れた所で横向きに立っていた。


「んぅ…んん〜っ…!」

「ったく、やっと起き…おわっ!?」


いくら寛容な私でも、これには流石に腹が立った。ステージを完璧にこなした私に褒め言葉の一つも無いどころか、良い雰囲気を壊した挙句に抱き締めていた恋人を手放したのだから。


「なにはなれてるんですかぁ…ほら、ぎゅってしてくやひゃい…」


もう、この人は本当に手が掛かるんだから。結局私からしなくちゃいけないじゃないですか…仕方の無い人ですね。

心の中で軽くため息をつきつつ、何故か私の腕に引っかかっていた邪魔な布をぺいっとはねのけ、彼に両手を伸ばして抱き締める。

さっきよりはっきりとPさんを感じられている気がして、その嬉しさを発散させるかのようにPさんの胸に額をすりすりと擦りつける。


「えへへぇ…♪」


えへへぇ…♪
4 : ◆T4kibqjt.s [saga]:2017/08/07(月) 22:45:44.57 ID:LNwQNfqF0
「えへへぇって…志保、お前寝ぼけてんな!?起〜き〜ろ〜!」  

「んぇ…?ひゃっ…!?」


本能の赴くまましばらくすりすりしていたが、突然彼に肩を掴まれて引っペがされ、そのままユサユサと前後に揺さぶられる。


「あぇうっ、んぁっ…うくっ…………あっ!…や、えっうそ、やだっ…!」


一往復毎に覚醒していく私の頭は十往復もする頃には完全に状況を理解し、恥ずかしさの余り沸騰してしまっていた。


「はぁ、やっと起きたか。お腹出して寝たら風邪ひくだろうが」

「あたっ……ごめんなさい」

ツンとおでこを突かれる。いたいです。





余談ですけど、さっき放り投げた布はPさんのシャツでした。…別に寝ていた私がそれを持っていた事に深い意味はありませんから。
  




…何ですかPさん。私をいじめて楽しいですか?

5 : ◆T4kibqjt.s [saga]:2017/08/07(月) 22:47:18.04 ID:LNwQNfqF0
「帰りが早くなるならちゃんと連絡して下さい」


腕を組み、絶対にPさんの顔を見ないように窓の外を見ながら彼の思慮不足を指摘する。


「いや、驚かせようと思ってな…ふふっ」

「…そんな事で一々驚きません」


…そういえば窓って反射するんだった。嫌らしく弧を描いたあの人の口が見える。今すぐ逸らしたかったが、窓を選択した己の失敗を認めたくは無いのでそれを睨みつける。


「えぇー…でも志保、嬉しかっただろ?」

「…………」


図星を突かれたが、これ以上彼を調子に乗らせてはならない。


「…別に?」

「声上擦ってるぞ、えへへぇ沢志保さん?」

「な……くぅっ…」


できるだけ余裕たっぷりに言ったが、こんなチャチなハッタリでは現状のアドバンテージの差は到底覆せなかった。


…くやしい。
6 : ◆T4kibqjt.s [saga]:2017/08/07(月) 22:51:32.93 ID:LNwQNfqF0
「……………ふぅっ」

素早く肺の中の空気を吐くのと同時にかくん、と肩を下げて力を抜いた。

…いや、もういい。ここで私が意地を張るのは色々な意味で建設的では無いし、もうそんな子供でも無い。………この人とは違って。


「はぁ…分かりました、認めますよ。貴方が早く帰って来てくれて嬉しいです。これで良いですか?」


参りましたと両手を上げ、苦笑しながら私は折れた。それに、早く帰って来てくれて嬉しいというのは紛れもない本音なんだしね。


「うん」


Pさんは満足気に頷いた。

全く…外ではあんなに大人っぽくてキリッとしていて格好良いのに(渋さは足りないけど)、私といる時はこんな感じで意地悪な子供になるんだから。


「…ふふっ」


それについての不満は少しあったが、それが私にだけ見せるPさんの素の表情だと思うとそんなに悪い気分では無かった。同時に、私以外には見せないで欲しいとも思った。


「俺も早く志保に会えて嬉しいぞ!…あ、これ他の奴には秘密な?恥ずかしいから」

「…っ。はい」


当たり前じゃないですか。…バカ。

「あはは、からかってごめんな」



本当ですよ。
7 : ◆T4kibqjt.s [saga]:2017/08/07(月) 22:55:47.09 ID:LNwQNfqF0
「ほら、おいで」


彼がこちらへ両手を広げている。おそらくハグの誘いと見ていいだろう。

しかし見たところ、私に意地悪をしそうな色が完全に顔から消えていない。だから、まだおいそれと甘い誘いに乗る訳にはいかない。


「志保〜?」

「……」


…我慢我慢。
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