【艦これ】男の提督はどうやら信頼出来ないらしい

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104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 12:08:38.26 ID:4POzqU/SO
>>103
大本営がそこまでする道理はない
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 12:12:17.74 ID:214XQfVDO
いずれ勘違いには気づいて善良な提督もそれを許すんだろうが
許されても上官に反抗的だったり殴った事実は「なかったこと」にはできないからな
どう落とし前つけるかが見所だな
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 12:41:55.10 ID:/2JgeJLY0
痴漢冤罪ってこんな感じなのかなって。実際にやってなくてもその人たちの主観でしか判断されなかったり
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/09/27(水) 12:42:28.57 ID:AolTty+fO
一発は一発だ
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 15:26:00.14 ID:2xznKiCQO
一応初霜みたいな理解者がいるからまだ良かったな
むしろカタルシス的に自殺寸前まで提督を追い込むべき(ゲス顔)
109 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 17:50:06.49 ID:rTcv8IfOO

 
 当初、俺は誰かを秘書艦にすることによって、その艦娘とある程度信頼関係を気付けたら良いなと思っていた。
 人というのはどうしてもソリが合わない相手、という訳で無ければ、大抵は同じ時間を共有し、共に協力し合うことで分かり合える。艦娘だって人だ。当然その理論が当てはまる……少なくとも俺はそう信じている。

初霜「提督! 何かあれば直ぐに“秘書艦”である、この初霜にお申し付け下さいね!」

 しかしなんとも、初霜は献身的に働こうとしてくれるな。

 おそらく根が元々真面目で、先程の謎のやり取りから一応は俺の事を信頼してくれたのだろう。

提督「……あ、ああ。これから宜しく頼む」

 
110 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 17:51:30.27 ID:rTcv8IfOO


 そう、俺は初霜を秘書艦に選んだ。理由としてはさっき言ったように根が真面目なことと、俺への敵意がないこと。さらに言えば話を聞いたところ、彼女は俺が潮に何かしてしまった事を分かった上で、俺を提督だと認めてくれているらしい。

 加賀達はまだこんな子達相手に、“そんな話”をするのは野暮だと言っていた。だからてっきり初霜は潮の件を知らないものだと思っていたので、これには驚いた。

 と、そんな理由で選んだは良いものの、周囲の反応はどうだろうか。深雪は「お? 別に良いんじゃないか?」とか言ってたけど。正直加賀達には何か言われてもおかしくないよな。なにせ初霜はまだ幼いし、なにより秘書艦としての経験が皆無だし。

 はぁーと溜息を吐く俺に初霜が「肩をお揉みしましょうか?」と言ってきたが、断っておく。

 
111 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 17:53:03.10 ID:rTcv8IfOO

 
提督「おまえら、今日はもう戻って良いぞ。初霜、お前が秘書艦だという事は明日公表する。それにまだ俺も横須賀については昨日の夜からの今日で、正確な指示を出すには至らない。今日はまだ休みだ。それを一応伝えておいてくれ」

深雪「ほーい」

初霜「分かりました……ですが、提督は資料を作成したりと執務があるのでは? 私に何か手伝えることは無いでしょうか?」

提督「うーん、そうだな……」

 ここまであちらから歩み寄ろうとしてくれているのだ。こういう時は何か任せた方が、相手は嬉しかったりする。

提督「じゃあ、“これ”を頼めるか? 深雪も出来れば手伝ってやってくれ」

 もしかしたら、役に立つかも知れないしな。

初霜「承知しました!」

深雪「おっけー、深雪様に任せときな!」

 
112 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 17:56:34.55 ID:rTcv8IfOO
**********************

 この横須賀鎮守府は広い。一ヶ月ほど前までは“彼女(女提督)”の指揮下の元、実に200を超える艦娘が居た。その為部屋の数もまた膨大であり、その中で私こと “曙” と潮の部屋は隣であった。

 提督不在から一ヶ月間、大本営は次々に横須賀艦娘の異動を指示してきた。

 それだけ彼女(女提督)の復帰が難しいと判断されたこと。そして元々、提督になり得る人材というのは稀有であるらしい。つまり何が言いたいかと言えば、この横須賀鎮守府は提督を添える余裕が無いために廃棄される予定であった、ということだ。
 そこに“あいつ”が来た。普通なら歓迎するのが当然だろう。でも殆どの艦娘が受け入れられなかった。
 まだ1ヶ月だ。彼女(女提督)はきっと私達の元に戻ってくると。その想いが心に張り付いて中々拭えないでいたのだ。

 引っ込み思案な潮も彼女(女提督)には心を開いていたし、私だけじゃ与えられなかった幸せを潮は感じていたんだと思う。

 
113 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 17:59:59.64 ID:rTcv8IfOO

 
 しかし、かくいう私はと言えばそれ程まで彼女(女提督)に固執している訳ではなかった。

 誤解しないで欲しいのだけれど、勿論信頼していなかった訳じゃない。ただ学校の教育機関に例えるなら、私にとってあの人は、そういえば先生良かったな、というぐらいの感覚だ。
 だから彼女の身体に関しては気になるが、別段拒絶する意思はなく、新しい提督が“普通”の人であれば、それで良かった。

 潮を守れれば、それで良かった。

曙「……なのにっ! あのクソ提督!!」

 初めて会った時、ちゃんと迎え入れて、挨拶をしようと思った。そしたら遅れてくるものだから、「シャキッとしなさいよ」と声を掛けるために、横須賀鎮守府の資料を持って渡しに行ってあげようとした。

 そしていざ執務室の扉の前に立った時、部屋の中から加賀さんの叱咤の声が聞こえてきた。


 
114 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 18:07:31.00 ID:rTcv8IfOO
>>113
そういえば、良い先生だったな
です。ミスです。
115 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 23:07:24.73 ID:GbbDXq050

 
 提督が1人でいると思っていた私は思わず聞き耳を立ててしまったのだ。
 中の様子は……提督が加賀さんに遅刻を叱られて、たじたじといったところだろうか。

 元々遅刻についてはしっかりして欲しいと思っていたし、それは良いのだが、少々言い過ぎというか……。

 よしっ、ここはこの私が一言いってやるか。

 落ち着け、落ち着くのよ私。

 執務室の扉を開け、中へと入る。


 ーーーー。


 
116 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 23:15:02.86 ID:GbbDXq050


 彼は優しそうな顔をしていた。歳はまだ20代半ばぐらいだろうか、容姿は中々に整っていて軍服越しにもその肉体が鍛えられたものであることがありありと伝わってくる。

赤城「何か理由があったのではないでしょうか?」

提督「ああ、まあ一応……」

 提督は私に気付いて、その時初めて彼と目が合った。

曙「ふんっ! どうだか」

 ーーあ、あれ?

 私は内心焦った。何故か彼を目の前にして、思ってもみない言動が口をついて出たのだ。
 深層心理ではなんとやら? いや違う。これは……。


 
117 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 23:20:58.77 ID:GbbDXq050

 
曙「ほら“クソ”提督、これ読んどきなさいよ」

 挙げ句の果てにはクソ呼ばわり……初対面の、 それも上官に対してこの態度はないでしょ、私。

 ……しかも勢い余って折角善意で持ってきた資料を提督の机の上目掛けて放ってしまった。

 あまりにも酷い、ファーストコンタクト。

 “恥ずかしさ”のあまり、居たたまれなくなった私は、

曙「それじゃあ、私ももう行くから」

 出来るだけそれを顔に出さないように、急いで執務室を飛び出した。出る時に力のコントロールが上手くいかず、少々扉をきつく閉めてしまった気がした。
 ……しかし冷静に見えて、全く冷静でなかった私はそんな事御構い無しに、直ぐに自室に向かい1人で反省会を行なった。

 
118 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 23:30:40.67 ID:GbbDXq050

 
曙「でも、結局はそれで良かったのよ……」

 だって彼は、クソ提督は本当にクソ提督だったから。

 そっと自分の右手を見やる。初めて人を叩いてしまった。あの時、潮が涙を零し、提督の優しそうな顔は嘘なのだと分かって、潮を気付けた彼に激情を抱いた。
 勿論、潮を傷付けた事が許せなかったのはある。が……それと同時に『裏切られた』、そんな気がしたのかもしれない。

 彼の赤く腫れ上がった頬を見て、同じ様に赤くなった私の手を見て、人を叩く事は、振るった側も振るわれた側も痛いのだと知った。

 でも、今私の手は赤くない。それは彼も同じだろう。

 しかし、“潮は今も痛がっている”

 
119 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 23:41:56.84 ID:GbbDXq050


 潮は部屋に引きこもっていた。

 そう。彼が潮に付けたのは、もしかしたら一生消えないかもしれない心の傷だったのだ。元々男嫌いだった潮がもし今回の件で、今後男性との一切の接触を断たざるを得ないとなれば、私は本当に彼を許せない。
 
 私は潮の部屋をノックする。

曙「潮、さっき深雪から連絡があったんだけどね、今日はまだ休みだって……」

 ーーーー。

 返事はない。

曙「だから、今日はあいつには会わなくて良いの。まあもし会ってまた潮に変な事してきそうになっても、私がぶっ飛ばしてあげるわ」

 ーーーー。

曙「ほ、本当よ? 知ってる? 私昨日あいつの事この手で、ぶっ叩いてやったんだからーー
 ガチャッ!

曙「ーーーーっ!!」

 そこまで言った時、今まで返事すらしなかった潮が、急に部屋を開けて私に抱きついてきた。

潮「ごめんね、曙ちゃん」

 
120 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/27(水) 23:58:47.31 ID:GbbDXq050

 
曙「え……え? 何? どうしたのよ潮?」

 意味が分からない。どうして潮が私に謝ってるの?

潮「だって曙ちゃん、誰かを叩くなんて……出来ない人…だよ。私はそれを知ってる。そんな曙ちゃんが、私……なんかの為に…手をあげるなんて」

 何を言ってるの? 確かにあの時私は初めてこの手で人を叩いたけど、そんなの別に普通でしょう? そもそも私、艦装纏って深海棲艦と戦ってるのよ? 敵だけど、誰かを傷つけるなんて私は慣れてるのよ。だから私がやった事は別に後悔でもなんでもなくて、だから昨日私があいつを殴ったからって、だから何?って感じで、だから、

 ……だからーー


 
潮「『痛かった』よね……」

 

曙「ーーーーぁ」

 その言葉を潮が口にした時、まるで心の奥底でダムが決壊したかのように、涙が溢れてきた。

 
121 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/28(木) 00:11:01.36 ID:5MFDAOXN0

 
曙「……がった」

潮「うん」

曙「いだがっだよぉ……」

潮「うん」

 今度は私が潮に抱き付いた。“怖かったし、痛かった”私はそんな純粋な感情を、ただ殺していただけだったのだ。
 それが潮の言葉で一気に鎖を解かれ、感情を爆発させる。

潮「よしよし……」

 一通り泣き終えて、いまだ赤い目を擦りながら私は潮に言った。

 
122 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/28(木) 00:12:59.79 ID:5MFDAOXN0


 
曙「まさか守ろうとしていたあんたに、慰さめられてるなんてね……」

潮「違うよ? ……曙ちゃんが何度もドア越しに声を掛けてくれたから……私は曙ちゃんに、勇気を貰ったの。やっぱり、曙ちゃんはすごいなぁ」

 そう言って嬉しそうに笑う潮に、私は心の中でありがとうと呟く。

 そして私は提案した。

曙「潮、今日休みだし、久しぶりに外出しない?」

 
***************************


 今日はここまでにします。
123 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/28(木) 00:18:20.24 ID:5MFDAOXN0
後ですが>>43で行なった他に登場させる艦娘というのが、多数決の体を成せていないので、今も募集中です。
1人3人までオッケーなのでよろしくお願いします。
それと同時に、このままいくとかなり長い話になりますので、コンパクトに済ませて欲しければ、1。長くて良いなら2を選んでほしいです。


御協力よろしくお願いします。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 00:22:06.20 ID:WeUYj4Gm0
乙です

かなり長いのか
長過ぎてもだれるから1かな
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 00:52:43.10 ID:kQZTCQec0
1
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 01:09:05.03 ID:TgGQInUHo
乙でした

2で鳳翔と叢雲
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 01:30:12.75 ID:Yv9mC2Z/o
あんまり長いとストレス溜まるやつだろこれ
1で
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 01:32:51.39 ID:Yv9mC2Z/o
それと好きなキャラが加賀や曙みたいな使い方されたら嫌だろww
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 02:04:53.21 ID:n1JluzFL0

この手の話大好きなので長く読みたい
艦娘募集は陽炎・不知火・黒潮で
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 04:36:49.06 ID:gDxmJ7fDO
>>128
こういう話では思い込みが強くて中々自分の非を認めない、
そして色々やらかす所謂損な役回りが必要不可欠だから…

長めにやると胸糞ターンも必然的に長くなるから判断が難しいな
胸糞ターンに筆が引き摺られて予定していたハッピーエンドにならないかもよ?
まあ覆水盆に返らずなビターエンドも需要がないわけじゃないけどね
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 08:14:21.25 ID:dBXmLOkJo

長編をじっくり読みたいので、
募集は満潮 霞 摩耶様
132 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/28(木) 09:45:41.71 ID:5MFDAOXN0

意見が綺麗に分かれているので、もう少しだけ募集します。
後、今日は用事があるので恐らく書き込めません。明日になります。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 11:04:04.35 ID:qPNtwYAtO
今まで艦娘が200以上いた施設に対して「後任がいないから廃棄ね、え、いた?じゃあ存続でいいよ、人数は10人程度しか残さないけど」って無能過ぎない?
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 11:46:30.93 ID:gDxmJ7fDO
>>133
分からないぞ?200人のうち詳しく調べたら10名程度しか戦力にならなかったとか
あるいは数を誤魔化して横領紛いの事をしてたとか
前任が慕われていたとしても有能で清廉潔白だったとはかぎらないし


文章は長くなってもいいけどエンドは2つに分岐してほしいな
一応丸く収まるハッピーエンドと、後悔先に立たずの胸糞エンドとで
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 17:20:39.01 ID:Znpt2j0qO
2で
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 19:24:17.00 ID:0g4fr/3W0
この潮からものすごいどす黒さを感じてしまう。前任の女提督ももしかしたらナニカサレてしまったのでは・・・
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 20:57:19.90 ID:4A3QCAIko
現状提督側の非が大きい上に和解した後に謝れば終わるような問題(悪手ではあるけど)しかないのに胸糞とか艦娘絶望させろとか言ってる包容力の欠片も無いような器の小っちゃい小っちゃいレスしてるのが何人かいるのに大草原
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 21:07:31.47 ID:Ti5QWnrvo
艦娘の多くが排他的なのは確かだと思うけどね
仮にこの提督と和解しても、他所の悪くもなんともない提督とトラブったりしそう
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 22:33:25.68 ID:MKshWZwxo
いくら非があるからって上司に暴力を振るうのはいいんですかね?
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 22:51:24.78 ID:AEue9PMwo
ギャグならいいけどシリアス展開で暴力上等はあれだが期待してる
もしかしたら艦娘というのは非常に扱いにくいので提督のなり手が少ないのかも
頑張ってくれ>1
141 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:35:39.86 ID:PMhxCXB60
2ですね。
書き込めないと言いましたが、少しだけ更新しておきます。
142 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:38:48.11 ID:PMhxCXB60

 
提督「よし、大体纏められたかな」

 後はもう数分足らずで決着がつくだろう。我ながらよく頑張った。軍学校でも“比較“”成績優秀だっただけのことはあるぞ、俺。

 時刻を確認すれば、今11時を回ったところだ。

 俺はこの後の予定を確認する。

 まず、昨日曙から貰った資料の中にあった地図を参考に、訓練所へ行く。

 風呂の件はこの地図に頼りきりで取り返しのつかない事になったからな。気を付けなければならない。

ーーでもやっぱり、どう見ても “風呂” って書いてあるけどなぁ。

 といっても、訓練所に関しては流石に“そのようなこと”が起きるとは考えにくいが。
 では何故、訓練所へ向かうか。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 00:39:16.05 ID:7p2bNm850
まってました
144 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:39:39.02 ID:PMhxCXB60
>>142

比較→比較的 です。ミスです。
145 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:42:19.23 ID:PMhxCXB60

 
 この1ヶ月……いやそれ以前からこの時間帯、加賀と赤城は出撃のない日は欠かさずここで訓練をしている。ここを逃せば彼女達の居場所は疎ら(まばら)になってしまうので、出来れば抑えておきたい。

 次に大井だ。命令無視を咎める訳ではないが、しっかりと一度話をしないと事態は悪化するだけ。このままの関係では、仕事もままならない。それに彼女の精神状態もしっかりチェックしておかなければ、何かあっては後で困る。

 俺は服装を整えた後、執務室を出て訓練所へと向かう。

提督「取り敢えずはここまで。あまり一気に計画を立てても、こなせなければしょうがない」

 
 
146 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:46:02.54 ID:PMhxCXB60

 
 ……っと、言ったそばから計画が狂いそうになった。

 何故なら廊下の十字路で曙と潮にバッタリと会ってしまったからだ。いや……会ってしまったなどと、彼女達とのコンタクトを嘆くような自分を少し叱咤する。
 俺は声を掛けた。

提督「や、やあ……」

潮「…………ぁ」

曙「…………どうも」

 声をかけられて彼女達が俺の存在に気付くと同時、曙が物凄い形相で俺を睨み付けてきた。潮はといえば、そんな曙の陰に隠れて、俺と目を合わせようとしない。

 小刻みに震える肩を見るに、やはり俺に対して怯えているのだろう。

提督「潮、昨日は本当に申し訳ないことをしてしまった。しかし信じてほしい。決してあれはわざとではなかったのだ」

 
147 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:48:48.98 ID:PMhxCXB60


 俺は軍帽を脱ぎ、誠心誠意頭を下げた。目線は低く、潮が出来るだけ怖がらないように。

 それは本来上官が部下にする様な簡単な謝罪ではなかった。それは、一挙手一投足が洗練された最敬礼であった。


 腰を折ること5秒、ようやく上げた視線の先に、しかし彼女達は居なかった。

 ーーあぁ。


 頭を下げている時に聞こえた曙の“舌打ち”。

 俺は去来する喪失感に胸を焼かれながらも、そのまま軍服を被り直して訓練所へ向かった。

 
148 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:50:52.17 ID:PMhxCXB60

 
曙「それじゃあ、行きましょ」

潮「ーーうんっ!」

 まだ少し表情は暗いけど潮の、そして私自身の気分転換にもなると思うし、我ながらこの提案は良かったと思う。

 しかし久し振りの外出だ。元々休みという休みは彼女(女提督)の時から少なく、あまりフリーな時間を過ごした事は無かった。だからというのもあるだろうか、この1ヶ月間に渡る休みを私達は持て余していたのだ。それは何をするか分からなかったというのもあるし、もしかしたら彼女が帰ってくるのではという期待を込めて鎮守府で待っていたというのもある。

 その間に次々に艦娘が異動されて、どんどん寂しくなっていったのよね。

 
149 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:52:35.60 ID:PMhxCXB60


 もしあのどうしようもない“クソ提督”が来なかったから、私達も離れ離れになっていたのだろうか。その点だけでいえば、感謝するべきなのかもしれない。

 隣を歩く潮を見やる。

 ーー潮、あんたは昨日のこと、それからあいつのこと、どう思ってんの?

 気分を害す話題かもしれないが、そう私が潮に聞こうとした時だった。
 ……いや、正確に言えばそれは愚問だったと直ぐに分かったのだ。


 膝はガクガクと震え、顔色も心なしか悪い。歯茎がカチカチと震えるような音を立てている。


提督「や、やあ……」

 急に潮の様子がおかしくなったかと思ったら、“こいつ”が来たのか。

 
150 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 00:53:18.30 ID:PMhxCXB60
中途半端で申し訳ございません。
続きは明日です。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 00:55:51.25 ID:7p2bNm850
乙です
152 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 01:04:16.67 ID:PMhxCXB60
>>147
軍服→軍帽
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 01:10:04.49 ID:lwMDrzhSO
曙嫌い
曙太郎すき
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 02:19:18.28 ID:QzoGZVXDO
ガンジーも助走つけて殴るレベル…まではまだ行ってないな
トランプ大統領なら確実に行っていたが
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 05:10:47.60 ID:KE0pzk/PO
潮とかこんなゴミメンタルでよく艦娘なんかやってるな
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 11:01:45.73 ID:5SfNABE+0
確かに一瞬体見られたってだけなのにまるで襲われたとでもいうような怯え方だな
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 11:12:43.68 ID:ftzuOME/O
毎回一度は初霜ちゃん出してくれよ
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 12:40:45.25 ID:g7Jx6/BXO
でもお前ら何かされた訳でも無いのにコミュ障じゃん?
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 16:28:23.13 ID:Tt44UZIMO
外出するのに許可も申請もいらんの?
ってか比較的平和と言っても大施設に10人しかいないのに休み取ったり引きこもったりって軍属としてどうなのよ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 16:35:09.82 ID:JmLHKGjvO
なんかえらく細かい設定を気にする人多いな
こまけぇことはいいんだよ
161 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 16:44:09.56 ID:WSkc1uIiO

>>159
外出についてはこの先で触れます。
休みを取るのは仕方がありません。むしろ司令官がいない状況で勝手に出撃してはいけません。

申し訳ありませんがこれ以上は返答いたしません。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 17:01:39.28 ID:Tt44UZIMO
上がいないから出撃等が出来ないってのは分かるけどその場合「休み」じゃなくて「待機」になるのでは?
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 17:09:28.50 ID:RSvtRrr9o
もし「司令官がいないから休みだー!」って全員出かけて無人になったところを攻め落とされたりなんかしたら笑い話にもならんな
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 18:17:19.36 ID:8q1tD8wAO
船も半舷上陸ってのがあるでしょ
最低限の人員は残して交代で休んでるよ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 21:39:45.08 ID:LwpHzzjj0
>>163君は1が言ってる外出についてはこの先で触れるって意味が分からないの?
つか仮に言って無くても君本気で全員一気に出かけるとか有ると思ってんの?
ちょっとは自分で考えような?


166 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:24:18.04 ID:WSkc1uIiO

 
 クソ提督のやつ、何をおどおどしているの? もしかしてまた何か企んでるってわけ?

曙「…………どうも」

 私は改めて心に決めた。
 絶対にこいつから潮を守ってみせると。

 背後に隠れる潮を片手を広げてクソ提督から庇う様に立ち止まる。

 ……触れているからよく分かる、潮は本当にこいつに怯えている。

 もしこのまま彼女が男性に対して恐怖心を抱いたままであったなら、この男は一体どうするつもりなのだろうか。いや、そんなこと考えるまでもないわね。

 昨日の会話、思い出すだけで腹わたが煮えくり返りそうになる。


 
167 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:27:01.37 ID:WSkc1uIiO

**********************

加賀「あなたにとっての艦娘とは一体何?」

提督「共に戦う仲間であり、この鎮守府では家族のような存在だと思っている」

加賀「…………」

加賀「次は無いわよ。あなたにとって艦娘とは一体何?」

提督「嬉しいときは一緒に笑って、悲しい時は一緒に泣く。そうして色んな困難を共に乗り越えていく。俺にとっての君達は、そんなかけがえのない存在だ」

*********************

曙「………………」

 そう。考えるまでもない。




 ーーだってこいつは“嘘つき”なのだから。



 




168 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:29:03.31 ID:WSkc1uIiO


 そう思った矢先のことだった。こいつは、とんでもないことをしてきたのだ。

提督「潮、昨日は本当に申し訳ないことをしてしまった。しかし信じてほしい。決してあれはわざとではなかったのだ」

曙「ーーーーっつぅ!?」

 予想外の事に私は驚いて思わず一歩退いて、踵を観葉植物の鉢にぶつけてしまった。痛みに “変な声” を上げてしまったが、今はそんなことを気にしている余裕はない。

 ーーこいつは、一体何をしているの?

 事もあろうに“提督”が、艦娘相手に軍帽を脱いで“最敬礼”をしている。

 訳が分からない。だってこいつは悪い奴で、私達をいやらしい目で見て、私欲の為に利用しようとしているはず……それにわざとじゃないって?

 ーーまさか。

 こいつは嘘を吐くためならプライドすら捨てるというの?

 
169 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:32:07.01 ID:WSkc1uIiO


 固まったまま“提督を見下ろす”私の背後で、潮が服の袖をギュッと掴んできた。それに現実に引き戻されたわたしが振り返ると、彼女は小声でこう言ってきた。

潮「曙ちゃんお願い、今はまだ無理……」

曙「……分かった。行きましょう」

 ボソリとそう呟いて私達はクソ提督を置いていった。少しだけ、ほんの少しだけ悪い気がしないではなかったけど、こいつが本気で潮に謝罪する気があるのなら、彼女の精神状態を分かっていないはずはない。

 それに “わざとじゃない” なんて言葉がよく言えたものね。

 ーーだって資料はこの私がちゃんと渡したのだから。

 謝罪を許さない……以外の悪態をつかなかっただけマシと思って欲しい。

 既に大本営への連絡は取ってある。

 私達は横須賀鎮守府を後にした。


 
170 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:34:53.39 ID:WSkc1uIiO

**********************


提督「あー、舌打ちとか生まれて初めてされたかも……」


 ーー流石に心が痛いな。





 
 俺が提督になると決めたのは、今から3年程前のことだった。

 元々家が途轍もなく裕福だった俺は、何不自由なく暮らしていた。

 10年程前からだ。
 深海棲艦だのなんだのと世間は騒いでいたが、俺の周りはまるで何事もないかのように時間が流れる。俺自身も無知でその出来事をまるで違う世界で起こっているかのように、楽観視していた。

 しかし、ある日俺は知ったのだ。

 
171 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:38:15.15 ID:WSkc1uIiO


 その日は丁度俺の20になる誕生日だった。
 父親の会社を継ぐ事が当たり前のように決まっており、俺もまたそれを受け入れ、将来は明るかった。
 その時海外で仕事をしていた叔父も、俺の誕生日だから帰ってくる。彼はどんなに忙しくてもそうだった。そういう人だったのだ。

 ……その“予定”だった。

 俺は小さい頃から叔父がとても好きだった。
 叔父は海外を飛び回っており、会う機会はあまりなかったが、彼は家に帰ってくるたびに俺に土産をくれたり、話をしてくれた。
 時に叔父が持ってきたワインを間違えて飲み、目を回しながら昏倒したこともあった。彼の話す、与えてくれる何もかもが、俺には新鮮だったのだ。

 その日も、俺は叔父が帰ってくるのがとても楽しみだった。

 子供かと思われても仕方ないかもしれないが、どうしても言ってやりたかったのだ、やっと酒が飲める歳になったんだ……と。

 
172 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:40:26.66 ID:WSkc1uIiO


 ……しかし叔父が帰ることはなかった。

 原因は船の沈没。それも“深海棲艦によるもの”だった。それは全くの無警戒。今まで出現したことのない海域でのことだったらしい。

 俺は泣いた。

 それこそ誕生日なんてめでたくない、その日は俺の人生の中で最も最悪の日であった。

 それからだった、俺が約束された将来を蹴ってまで“この仕事”を目指したのは。
 しかしそれは別に復讐心からというわけではない。俺はただ純粋に救いたかったのだ。これ以上叔父のような犠牲者が出ないように、人々が安心して暮らせるように。


 
173 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:42:16.89 ID:WSkc1uIiO


 
 そして提督になる条件の内、最も重要視されるのは“妖精”が見えることだった。妖精の協力無くして艦娘を建造することは無理。言わばそれは適正のようなもの。

 最初は提督ではなく、大本営で直接働くつもりだったのだが丁度1週間前、俺は妖精が見えることに気がついた。

 その時初めて艦娘を見たのだが、あろうことかその装備の上で“小人”が寝そべっていたのだ。俺は思わず指を差し、「あっ」と呟いた。

 その後すぐに話が進んでいき、あっという間に俺は横須賀鎮守府の提督として着任することになったのだ。



 しかしまだ、俺はこの横須賀鎮守府で妖精を“見たことがない”


 
174 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:44:10.74 ID:WSkc1uIiO


 これはまだこの横須賀鎮守府が鎮守府として機能していない、ということが原因だ……多分。

 妖精自体の容姿が小さい艦娘の様なので、一応“彼女”達と呼ぶことにするが、彼女達に関しては一体どこから生まれてくるのか、また生態についても全く知られていない。だから一概に何が原因かは分からないのだ。

提督「……分からないことはまだまだあるし、つまづくことも、そうやって耐え切れなくなる時だってあるかもしれない」


 ーーだけど、


提督「だけど諦めない。艦娘達なんか身体を張って国民を守ろうとしてくれているんだ。それに比べたら、俺なんて大して危険にも晒されていないし、何より今は俺が司令官なのだ。弱音を吐くわけにはいかない」


 俺は訓練場の戸を開けた。

 
175 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 22:47:33.22 ID:WSkc1uIiO


**********************

 静寂が支配する中、ただそこには、ほっしりと一定の周期でもって響いていました。

 それは紛れも無い弓術。

 弾かれた5本の矢はいずれも的の真ん中を射ています。しかし、彼女にとってこれは不調以外の何物でもありませんでした。


 私ーー赤城は彼女に問いました。



赤城「加賀さん、今日は少し乱れていますね……昨日の、いえ提督の事でしょうか?」

 3cm。
 常時の彼女であれば中白に隣接した矢の距離は1cmを切ります。それが今日はその3倍です。“彼女にとって”これを不調と言わずしてなんというのでしょう。

 
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 22:56:13.56 ID:RSvtRrr9o
>>165
「もし」って言ってるじゃん、何キレて本気に受け取ってんだよ……もしかしてアホ?
ネタにピキピキしてマジレスとかダサすぎだろ
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 23:04:17.53 ID:dQSFoVAKO
頭を下げて敬礼で謝るって意味不明なんだけど……
敬礼って謝意を表すものじゃないし、頭を下げても最大45度だから深く下げてるわけでもないし……
178 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:07:58.56 ID:WSkc1uIiO
>>177
すいませんマジでミスです。無知でした。
謝罪は70度ですし、最敬礼でもないですね。これは本当に申し訳ございませんでした。
179 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:09:46.55 ID:WSkc1uIiO

 
加賀「ごめんなさい……」

 それだけ。彼女は私の問いに半分だけ答えました。ですが、私にはそれで分かりました。

赤城「稽古に私情は挟まないこと。……3本」

加賀「はい!」

 心頭滅却。その達人級の業は心の乱れを鋭敏に感じ取り、途端に錆びてその鋭さを失います。

加賀「…………」

 加賀さんは1本2本と、見事完璧にど真ん中を射抜いて見せました。


 ーーやはり、流石は加賀さんです。


 
180 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:11:01.64 ID:WSkc1uIiO


 しかし、続く3本目を射るその瞬間でした。

 微かに床の軋む音。

赤城「……誰かいるのって、ーーっ提督!?」

加賀「ーーーーなっ!?」

 加賀さんの放った3本目は的を大きく外れ、明後日の方向へと飛んでいきました。

 まあ、それは今回限りは仕方ないことにしておきます。何故ならそこには紛れもない、道場へと立礼をしている提督が居たのですから。

 
181 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:12:20.04 ID:WSkc1uIiO

 
 ズカズカと入ってこない辺り、やはり彼は“弁えている”、そう私は思いました。

加賀「何の用? 私を咎めにきたの?」

赤城「いえ、そうではなさそうです。そもそも咎めに来た方が、この様に丁寧に道場へ敬意を払うでしょうか。そうですよね、提督?」


 もし本当に加賀さんを罰しに来たのなら、提督自ら出向かれるのではなく十中八九呼び出しでしょう。


提督「ああ、勿論だ。昨日の件は全く関係ない」

 
182 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:13:49.64 ID:WSkc1uIiO

 
加賀「じゃあ何? こんなところで油を売っていて良いのかしら? 執務は放棄?」

赤城「加賀さん、そんな言い方! 提督は昨日の夜来られたばかりなのですよ? それであの膨大な量の執務作業、少しぐらい休憩を取ってもーー

提督「いや、執務ならもうほぼ終わった」

加賀赤城「「ーーーーっはい?」」

 私と加賀さんの声が重なった。

 いや、それも当然……

 ーーというか今のは私の聞き間違いですよね?

 思わず加賀さんの方へ顔を向けると、そこには今全く私と同じ顔をしている彼女が居ました。

 
183 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:15:25.26 ID:WSkc1uIiO

 
提督「ん? どうした2人とも?」

加賀「いえ、今貴方の口から執務が終わったなどという妄言が聞こえた様に思えたのだけれど、聞き間違いよね?」

提督「いや、終わってはない」

赤城「で、ですよね!」

 流石にそれは人間技ではない。提督はまだ秘書艦すら居ないし、居たとしても正午にもいかぬうちに終わるはずは無い。

提督「いやまあ、後は数枚纏めるだけだから10分ぐらいで終わるかな?」

 …………。

 訪れた沈黙に提督は疑問符を浮かべています。

 そして私達は顔を見合わせたまま固まってしまいました。

 


184 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:23:31.75 ID:WSkc1uIiO


 言わば着任初日。出撃がないとはいえ少し見かけましたが、あの量は“エグい”と流石に思いました。

 それは下手をすれば普通に鎮守府として機能してからより多く、実の事を言えば、私はお昼から提督を手伝いに行こうと思っていました。
 提督は若く、初めての執務であの量では、簡単に日を跨いでしまうと思ったからです。

赤城「提督はその、本当に大丈夫なのですね?」

加賀「正直信じられないのだけど……」

提督「???」

 駄目です。提督はずっと意味が分からないといったご様子。きっと終わったと勘違いされているのでしょう。これは後で私が確認しておかないと……。
 加賀さんの方を見ると、ああ。これはもう呆れている顔ですね。

 私はおほんっと咳払いした後、

赤城「……ところで、提督は一体どの様な御用件で?」

提督「ああ、それなんだが」

赤城「ーーーー?」

提督「お前らちょっと俺と勝負しないか?」

 
185 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/29(金) 23:26:45.53 ID:WSkc1uIiO
今日はこれで終わります。

最敬礼の件、本当に申し訳ございませんでした。自分としては土下座を除く、“最大の謝罪”という意味合いで使っておりました。

駄文でまだまだ未熟ですが、どうかこれからもお付き合い下さい。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 23:46:04.95 ID:tJIcUsuvO
何だ、自称普通系キャラか
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 23:51:19.27 ID:aBqgUD9y0
あんま読者に気後れしちゃ駄目よ

応援してる
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 23:57:31.32 ID:thIL3BWdO
無自覚俺ツエー系か…
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 00:15:32.23 ID:R6nVcPiwO
初霜の即落ちした時の対応とか、よく考えたらそっち系なのは明白だったな……
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 01:23:49.22 ID:RsofMvMSo
それ系ならそれ系で楽しむから、うん
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/30(土) 01:43:15.31 ID:TioUUjvi0
乙でした
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/09/30(土) 01:44:18.01 ID:/hhaSZmJ0
艦娘に対抗というか釣り合うにはある程度は能力ないとなあ
いいんじゃないの
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 02:36:35.85 ID:xVA4tSRho
またオレ何かやっちゃいました?って言いそう
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 05:01:08.93 ID:xBv91yODO
有能な提督を認められる度量があればまだいいが
無能なくせにプライドの高い子ほど意固地になって頑なに拒絶しそうだよな
誰とは言わんが
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 13:20:05.00 ID:BdDUJhaIo
そんな曙や加賀みたいなヤツ居るわけないやろ
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 13:37:08.45 ID:gh016Y0yO
とりあえず赤城さんを落として心酔させて
さすていしてもらわなきゃ…
面白いから毎日更新しろください
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 14:09:11.96 ID:a6ryctoLo
曙は提督の覗き行為(誤解)を大本営に密告したのかな?
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 17:16:05.72 ID:xRro4WK4O
こういう無自覚超人って、実際にいると自分より出来ない奴を努力が足りないか無能としか思えない危険人物だよな。ワタミのアイツがそうだし。
199 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/30(土) 22:12:45.29 ID:El68fOKQ0

 
************************

 
「元帥殿、艦娘の外出願いが出ておりますが」

 私は憲兵隊一部の部隊の指揮を預からせて頂いている者です。
 此度は電話応答から引き継ぎ、元帥殿へと知らせるよう仰せつかっております。

元帥「外出願い? そんなもの、その鎮守府の提督に申せば良かろう?」

「いえそれが……例の横須賀鎮守府でして……」

 ーーというか直接的に此処へ掛けてくるなど、“あの鎮守府”以外にあるものか。


 
200 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/30(土) 22:14:04.04 ID:El68fOKQ0

 
元帥「あー、成る程。しかしおかしいな。あそこには昨日づけで“彼”が着任したはずなのだが……」

「例の“彼”ですか……しかしあそこに残った艦娘は僅か11人。提督への連絡が混む事も無い。もしかして彼は信頼されていないのでは?」

元帥「ふむ……いやまさか彼に限ってそんな事はないだろう」


 ーー彼。


 軍の上層部に就く事の絶対条件として、有り体に言えば三つの要素、心・技・体が挙げられる。
 
 しかしそんなものは軍学校を卒業すれば大抵身に付いているし、そこからどう精進していくか、どう自分を上司に売り込むか、そこが鍵だ。


 
201 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/30(土) 22:15:39.63 ID:El68fOKQ0


 しかしこと提督になる絶対条件においては、ここに『妖精が見える』というものが付いてくる。

 私は見たことが無いので分からないが、妖精は自分を見つけてくれる人間に協力してくれるらしい。要は妖精に好かれれば好かれるほどに、仕事は円滑に進む傾向にある。

 一説に、『妖精はその艦娘と一心同体である』というのがある。故に艦娘が提督を信頼していれば、その妖精もまた提督を信頼する。

「彼が信頼されていないということは、その妖精と“ケンカ”でもしましたかね?」

 私の言葉に、元帥殿が笑う。

元帥「ハッハッハ、まあ妖精とケンカなど後にも先にも“彼しか”出来ないだろうな」

「そうですね……」

 
202 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/30(土) 22:17:10.33 ID:El68fOKQ0


 なにせ横須賀鎮守府に新しく着任した彼は、なんと妖精と“話せる”らしいのだ。

 こんな人間は聞いたことがない。他の鎮守府の提督は、勿論妖精が見えるものの、言語難により正確な意思疎通は出来ない。が、彼は事もあろうにそんな妖精と、“談笑”したことがあるらしい。

 艦娘を連れた提督がその様子を目撃しているので間違いない。

 確かに、それが嘘の類でなければ稀有の中の稀有。提督に抜擢しない手はないのかもしれない。

「ですが、いくら妖精と会話が出来る力があったとはいえ、やはり他が伴っていなければ提督は務まりませんよ。聞くところによれば彼の成績は『中の上』、提督として多くの艦娘を纏めるならば、せめて上位15%以内には食い込んでもらわないと……」

 言いかけて、ハッと気付いた。この発言は、元帥殿の決定に文句をつけているも同然。一介の部隊長に過ぎない私にはあまりにも僭越すぎた。

 
203 : ◆IJfM0QLMGnst [saga]:2017/09/30(土) 22:18:30.43 ID:El68fOKQ0

 
「も、申し訳ございません! 私は元帥殿の御決断を何よりも尊……

元帥「ーーいや、まあそれなんだが」

「ーーーー?」

 ど、どうしたと言うのだろうか。ま、まさか今の失言がそのまま私の失職になるというのか!? そんな、あんまりだ。

元帥「彼、全部満点なんだよね」


「…………はい?」


元帥「いや、実技筆記面接に至るまで、彼は文句無しの満点。いわゆる“天才”だ」

「え、いやでも成績は確かに『中の上』と報告されていましたし、彼にもそう伝えた筈なのですが……」


 
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