国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編

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490 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/10/15(月) 12:17:17.81 ID:WMvbdsn6O
最終回投下前にサーバー落ちて大変キツい思いをしてましたが良かった
11月中には終わらせられると思います
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 14:53:08.30 ID:LZnclbMlO
まっていた‼
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 20:40:04.19 ID:UwfhnuhA0
災難だったな
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 21:27:01.85 ID:BnuV2ujA0
494 : ◆EonfQcY3VgIs [sage]:2018/11/20(火) 19:00:14.33 ID:xe81Ada50
ようやく時間が取れたので、今週末11月24日(土)に最終回を更新します
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/21(水) 23:29:41.19 ID:5xrxCmrtO
待ってる
496 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:03:44.87 ID:ma21ZHtA0


遊び人(………魔族の女が、ゆっくりと構える)

遊び人(泣きじゃくるような顔のまま、まるで弓を引き絞るような動作で、腕を引く)

遊び人(とんでもない衝動が、あいつらの回りに集まり始める…。恐ろしいほどの力が弾け飛ぶ予感だけを、感じることができる)

遊び人(………俺はこんなところで、何をやってんだ…?)

遊び人(つまりは、なんだ。こんなもん、神話の世界の出来事だろうが)

遊び人(どう考えたって場違いだ。全部夢だって言われた方がまだ、現実的だ)

遊び人(………)

遊び人(そうだ…そうだよな)

遊び人(俺には関係のないことだ。俺はただひたすら、夢が醒めるのを待っていれば、そうすればきっと)

遊び人(あのロクでもなくて、クソみたいにつまらない現実に戻れるはずだ)

遊び人(きっとそうなんだ)


遊び人(ああ………いよいよ矢が放たれる)

遊び人(でも………俺には………)

遊び人(なんら関係のないことだ)






魔王「これが」



魔王「私の最後の」


497 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:12:07.77 ID:ma21ZHtA0






魔王「――魔弓だッ!!」




炎獣「 グ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ォ オ ! ! ! 」






     ピ  シ  ッ  …



498 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:13:14.08 ID:ma21ZHtA0

遊び人(っ!?)

遊び人(な、なんだ!? 体が動かねぇ!!)

遊び人(化け物が矢のように放たれたその爆発的な反動で)

遊び人(時間が止まったようになっちまって…)



遊び人(………な)

遊び人(何かが)

遊び人(来る――!!)



















魔k王「…帝「魔…間ypもな雷










帝「海人間7uの王の炎uo獣「大し俺9.たち敵戦力gの大部666分氷姫「いよp0uい6よ…ってワ炎il獣「でも、そ王国9o軍の本体をru壊…。だその....甲.前だ」ぉしっの4ジ木竜「やってiお持yちま


















すかii竜「hdjfほdほっから氷姫「無理すうとt言う儂kらおるとい兵士「qし、王「…今は何兵士陛、ちらの状…。町のら、急の報のこと」「町…いう、器商会か」上げてみよ」はっ」゚サ?い、倉モンは部せ!い!おい、こっちねぇ!めェらしがれ!!」…」員「社。大配完てやす」人「ああ、ご苦「る」 うのじゃ…そうねd」「姫う少魔王「…魔王「無理をこれしビュオ獣「おっ!gえ2た帝t「…fさ「そうったもんじ」「そろそyp0ろていて獣「ドンと来――み王「こうとう人魔王「fあ…と少して…!城 謁国…!?3 それ者「…!」゙ワザワ 獣「港て伝「はっ!王fが…鹿な…! 勇うgことだ…っ」?しく申せd」?令「はっ!令「8我らわずました…!王「な、…!?令「新うやら、魔ですら…!」伝の後直ましまnじく…刻…!!にっ!ガタ」?う…嘘だ…港港町うこの王城お、? って…の半分最送ら滅…町以降を類の戦は…!!」「そん…そん王「……でば子供のきー!れが、港町氷姫「随雷帝「今まっきたもなり明をじてまが…こまで王「え…)?炎獣「え事? 魔王」王「ん、かせてく」魔王…」私たちはまでh類をすめに必ってきた「の作能力特高私鋭による点突肝」氷「かってるわよ。したちで、すhe3d


499 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:14:39.35 ID:ma21ZHtA0


遊び人「ッ!!?」


遊び人(がっ?! な、なんだ………!!)

遊び人(頭に………っ、流れ込んでくる………!!)




獣「勇者を倒さtyえすれ間側y6魔倒すて8て、伏せる4をいっよなi!」雷帝はま神6ti得て…。″いう組q織成化のにる、す」魔王「う。のうり。ま、族軍の方は、今、べてちにねれる人」員「王はどうやkラゴンってiちらtyjましていちらうtyいっか、詳ない。…王国y8士連解析待全れたからなh」」「「「へうなっ員「倉のありっ岸に並べりhjやす砲yuの扱中員こにつ00ぎんでがyた瞬砲弾雨をせkられまぜ?




遊び人(頭が、破裂する………!!)

遊び人( わけの分からない言葉の洪水…っ! 圧倒的な密度の、何か…!!)

遊び人(これ、は…っ、まさか魔王の………!?)

遊び人(――………魔王と炎獣の…)



王「で01ののtを6の化水高驚かされuiけた…生活を実現出」魔王「は、の化を収す必があわ」炎獣…??」うですjかに。争に勝文p0化に術を魔族の職m65人7i層がにられれ…」姫「魔界はますypますてわn?」魔王「うんだiらにもそつもでしの」炎獣「まり…どっbbばよ?氷姫アンぇ…――――――――――――――――――――――――――――俺には難しいことは分からねえけどさ、でも、魔王!!

――炎獣《俺、きっとお前の理想の世界を実現してみせるからな!》

――炎獣《その為に、一番に突っ込んでいくのは俺だっ! 絶体!》


――炎獣《約束する!》


――魔王《……ふふ。ありがとう、炎獣》


500 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:16:15.05 ID:ma21ZHtA0
遊び人(い、今、僅かに聞き取れた)

遊び人(こいつらの声が…。やっぱり、そうだ…!)

遊び人(こいつらの感情が溢れかえって…っ、この空間を伝播してきやがるんだ…!!)

遊び人(あまりにも濃密なエネルギーの暴走に………まるで時間が止まってしまったかのようになっちまって)

遊び人(思い出が、押し寄せる――!)





炎獣^:6さjくそれでj戦?」魔王「、ご帝おyuい、氷!?―――――――――炎獣、珍しいね。そんな顔。         

獣「…゙ュッ?獣「i邪れhるら8oい―――――――――…何だかさ、変な気分なんだ。どうしたらいいか、分かんないんだよ。

501 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:17:56.38 ID:ma21ZHtA0

――炎獣《………なあ、魔王。俺は、どうしたらいいと思う? 俺、悩むの苦手だ》

――魔王《身体動かしてみる、とか?》

――炎獣《お! それいいかもな!》

――魔王《あ、でも。あまり遠くにいかないでね?》

――炎獣《…ああ、うん。…俺の戦いを…しなくちゃ、だもんな》




遊び人(なんだよ、これ)

遊び人(なんだってんだよ…!)

遊び人(魔王と炎獣の絆………。多くの葛藤を乗り越えてきた思いの濁流)

遊び人(やめてくれよ…! 俺に、そんなもんを見せつけないでくれ)

遊び人(俺には関係ないんだ…)

遊び人(手の届かない世界の話なんだ…そうだ)

遊び人(俺には関係ない…っ)




――炎獣《魔王もさ。魔王も不安なのにさ。俺たちを勇気づけてくれて》

――炎獣《ありがとな》

――魔王《っ…》

――炎獣《必ず勝とうな!》

――魔王《………うん。そうだね。一緒に、勝とう!》

502 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:19:00.65 ID:ma21ZHtA0

遊び人(やめてくれって言ってるじゃねえか…っ!)

遊び人(どうあっても、俺の頭のなかに入ってくるつもりかよ!?)

遊び人(俺にどうしろってんだ…放っておいてくれよっ)

遊び人(過酷な運命を切り開いてきた英雄がいるってんなら、そっちで話をつけてくれ!)

遊び人(もう、俺に………見せつけないでくれ)




――炎獣《さあ、行こうぜ。悲しくても、進まなきゃ》

――魔王《炎獣…。…うん! 行きましょう!》




遊び人(炎獣があのガキに近づくにつれて想いの圧が増してきやがる…っ!)

遊び人(こんなもん見せられて、どうしたらいいんだよ!?)

遊び人(分からないんだよ…っ、俺はとっくに諦めちまったんだっ!)

遊び人(俺はそんな風には出来ねぇんだ!! やろうと思ったって出来なかったんだよ!!)

遊び人(負け犬だって居ていいだろうっ!! 俺に求めるなッ!!)





――炎獣《魔王。俺と友達でいてくれて………ありがとう》

――魔王《私をずっと守ってくれて》

――魔王《ありがとう、炎獣》


503 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:20:05.34 ID:ma21ZHtA0


遊び人(怖い…っ)

遊び人(分かってるんだ………俺はこんなところにいるような役どころの人間じゃねぇ…)

遊び人(結局、何もかも誰かの支配の下だったってことだろう。俺はそこで燻り続けて、最後に死ぬ…)

遊び人(その支配を打ち砕くなんて大それたこと、恐ろしくてできやしない。飼い慣らされながら、惨めに生きていて、それでもいいんだ)

遊び人(俺は、俺は…っ、ただの遊び人なんだ! どこにでもいるクソ下らない人生の敗北者なんだよ!)

遊び人(放っておいてくれよ………!!)



――炎獣《俺、きっと守るからっ!》

――炎獣《魔王のこと、守るから………!!》

――魔王《炎獣…! 炎獣っ! 死なないで、お願い…っ!》

504 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:25:19.77 ID:ma21ZHtA0

遊び人(ああ)

遊び人(炎獣と、神が、ぶつかる)

遊び人(途方もない感情が弾ける――)






――魔王《ね、ちょうちょつかまえるあそび、しよっ!》

――炎獣《ちょうちょ?》

――魔王《うん! あ、ほら、とんできた!》

――炎獣《…つかまえ王「こ、いでi…




万がo0一と、わ風jうてましととき54ま王(こ魔王わい!)?(だか、!!)―…』?王()?――ッ







鬼「ッ!y6?ん!?は――」ス!!mw「」王(…、に?が、てる風p1「ッ…ぁ、はぁ」ェ…」?゙ォオォ…魔『……(、イツのは!?ったいらん)(…か、れも王の品ケな! こ加護の正っ魔人『…イそのの尋3b常やい。てもい刀打ちるルやないば、)?とく、ラけて"分!」ュゥウ…


505 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:26:21.47 ID:ma21ZHtA0
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506 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:28:03.11 ID:ma21ZHtA0
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507 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:32:29.22 ID:ma21ZHtA0


遊び人(やめろ!! もう入ってくるな!!)



「いは、自分を1が来る」ろ」魔人『…』「あ、や、物…!」んか…!?」?人』ス――ュッ鬼「んならそ決めさもうでいなrボッ………(…? な、動か))?(か………半身がれ…シャ人『…』…』ル…魔王「ひっ王(ここっ…!!』(あ……ゅうに、むく…)」ドッ魔人』゙ワ…「めに!!バッ?炎獣るなっ!!゙カッ!!『


遊び人(やめろっ!! やめろッ!!)


もい!)…』ズ…?獣(だ、。る――)?雷帝「""…!!」バァッ!!人『』」木「ォオォオッカッゥン…――…』ッ…帝」炎獣「、はあ…魔……タ…や、った、木竜「…様中、か?ええ」「が…神の加がをvした。…儂、い」雷帝「質をがそtにす護。の器らい、っ言れが」「の小な、の6gをめypていと??「、ううことう。なな…、ななる9はもあまppいて「る種、うす。どはに、意をて」……。すが、うくを」む。し、お。よのう」炎獣「」?竜「むん?んじゃ、ってる」…翁。は反。でさえのはきう。んをのくど」雷8帝凰供何かい。…」「…ふうむ「て、うやららっ、竜「なしおる」…

遊び人(やめろぉおぉおッ!!)

力gの大部分氷姫「い 』「あ、や、物…!」んか…!?」?人』ス――ュッ鬼「んならそ決めさもうでいなrボッ… !y6?ん!?は――」ス!!mw「」王(…、に?が、てる風p1「ッ…ぁ、はぁ」ェ…」?゙ォオォ…魔『……(、イツのは!?ったいらん)(…か、れも王の品ケな! こ加護の正っ魔人『…イそのの尋3b常やい。てもい刀打ちるルやないば、)?とく、ラけて"分!」ュゥウ ……(…? な、動か))?(か………半身がれ…シャ人『…』…』ル…魔王「ひっ王(ここっ…!!』(あ……ゅうに、むく…)」ドッ魔人』゙ワ…「めに! よいよ…ってワ炎獣「でも、そ王国軍の本体をru壊…。だその甲前だ」ぉしっのジ木竜「やってお持ちますか竜「hdjfほdほっから氷姫「無理すうとt言う儂kらおるとい兵士「qし、王「…今は何兵士陛、ちらの状…。町のら、急の報のこと」「町…いう、器商会か」上げてみよ」はっ」゚サ?い、倉モンは部せ!い!おい、こっちねぇ!めェらしがれ!!」…」員「社か。大配完てやす」人「ああ、ご苦「る」うの
508 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:33:52.83 ID:ma21ZHtA0
」雷帝「質をがそにす護。の器らい、っ言れが」「の小な、のをめていと??「、ううことう。なな…、ななるはもあまいて「る種、うす。どはに、意をて」……。すが、うくを」む。し、お。よのう」炎獣「」?竜「むん?んじゃ、ってる」…「炎タタ「! ぬしじゃ 「                  」 そjくそれでj戦?」魔王「、治竜「う6j帝「!?…あれス…?姫「もyu……ん雷!」魔王かった…倒のね竜「全無をしおヒュィイ炎獣「…獣「がko0で倒し「何?」「――






遊び人(――え?)







「         」





遊び人(………お)


遊び人(お前は)




































 ――――ゴ――――ゥ――ン――――ッ――!!!――――













509 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:35:27.94 ID:ma21ZHtA0




















魔王(………)




魔王(終わった)






510 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:37:10.43 ID:ma21ZHtA0



魔王(出し尽くした)



魔王(私の全てを)



魔王(全てを引き替えに、私は)



魔王(ーーあの子供を倒した)



魔王(そうして私は今度こそ失ったんだ)








魔王(炎獣を)




511 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:38:49.48 ID:ma21ZHtA0



魔王(隣には、誰もいないし)


魔王(私の体はもう動かない)


魔王(――私の旅は終わった)


魔王(もうこれ以上、どこに行きようもない)


魔王(そうして私は、何を得たのだろう?)


魔王(分からない。………けれど確かなことは)


魔王(神は死んだ。もう勇者も魔王も生まれない)


魔王(こんな苦しみを味わう者は、もう現れない)


魔王(だからこれでいい。どこへ行く必要もない)



魔王(ただゆっくり)



魔王(ここで朽ちてゆこう)



魔王(………炎、獣)



512 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:49:23.76 ID:ma21ZHtA0



魔王(私も………そっちに、行く…)



魔王(………よ…)











魔王「」




































少年「はは。まだ死ぬには早いよ、魔王」

513 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 09:50:25.23 ID:ma21ZHtA0

少年「いやあ、危なかった」

少年「思いのほかダメージを受けてしまったなぁ…まさか、君達がここまでやるとは…」


少年「ふっ、くくく。ねえ」

少年「本当にさ、僕は信じられないんだよ…」


少年「まさかただのいち生命が、この世界の管理者である僕を、ここまで追い詰めるなんて…!」

少年「こんなスリリングな戦いが、描かれることになるなんて………っ!」


少年「魔王には今回人類へ大きなダメージを与えてもらうために、今までにないほど強大な加護を授けていた…それがそのまま我が身に返ってきたことで思わぬ被害を…」

少年「いや! そんな無粋なことはどうでもいい! それよりも炎獣の決死の覚悟! そして溢れだす美しい想い出たちっ!」

少年「ああ…っ、本当に胸を打たれたよ! 言葉に出来ないくらいっ!」


少年「…そうして魔王。君自身も最早空っぽになるほど自らを犠牲にして魔弓を放った――」

少年「けれど僕は倒れなかった。この身に一握りの力を残してこうして立っている」

少年「惜しかった…! あと一歩で君達は成し遂げられず………そして全ての努力は水泡に帰す」


少年「そう。――心地の良いバッドエンドだ」

514 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:27:53.29 ID:ma21ZHtA0

少年「魔王…そして四天王」

少年「それに魔法使いの思惑。国王の策。………管理者である僕を倒そうという謀の全ては、敗北したんだよ」


少年「ふふ。上質な悲劇って、なんて甘美なんだろう………うっとりしてしまうよ」

少年「ああ…たまらないなぁ。いつだって僕の作り上げた魔王と勇者は情感豊かな物語を紡いでくれる」

少年「僕の美しい友人であり、想い人であり、ママのような理解者さ」

少年「今回のお話も心に染み入るね…。………でも、これだけの幕引きを見てしまった今」


少年「――更に情熱的なストーリーを見てみたくなってしまうよね…?」


少年「…ふふふ!僕に良いアイディアがあるんだ………!」

少年「僕の身に残る力を、全てまとめて君に与えよう、魔王!」

少年「今や脱け殻同然の君には、抗う力はない。…今度は純粋な殺戮兵器になってしまうだろう」

少年「そうなった君は、あの荒廃した世界に現世の地獄を形作ることとなる…!」

少年「ああ、わくわくしてきた! 君は恐ろしい残忍さで破壊の限りを尽くし、そして人々にこう呼ばれるんだ」


少年「"大魔王"、ってね!」


少年「ふふふっ! 誰一人として君に立ち向かえる力の持ち主などいないのだ! きっと夢のような混沌に陥るだろう!」

少年「世界は暗黒の時代を迎えることになる………ふふふ。けれど安心して」

少年「また僕の力がこの身に戻ったら、今度は大きな力を宿した黄金の勇者を作り上げてあげるから」

少年「そうして、希望を切り開く夢の冒険が、再び始まるのさ」

515 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:29:22.25 ID:ma21ZHtA0

少年「ただ、君に力の全てを与えてしまったら、次に勇者を作れるのはいつになってしまうかな…君達の感覚で言えば百年近く後になるかも」

少年「大魔王たる君を見ていれば退屈しなさそうだけど、出来れば今の君にももう少し楽しませて欲しいなぁ………」

少年「………いや、どうやらここから君の逆転はなさそうだね。少しばかり、寂しいよ」

少年「人々の祈りが君に届いて奇跡の復活、とかさ。最後の最後の想いの力で再起、とかさ。そんな展開もちょっと見てみたかったかもね」

少年「…でも、まあ」

少年「これで終わりだね」


少年「…魔王。楽しませてくれて、ありがとう」

少年「さあ、改めて君に邪神の加護を与えよう」

少年「大丈夫。圧倒的な力に任せていれば、君に約束されるのはただ至福の感覚のみだ」


少年「僕に残されたこの力の全てを吸いとって、絶大な力に身をゆだね――」

少年「人の世の地獄の物語を紡ぐ、偉大なる存在に――」




少年「大魔王になるがいい!!」




516 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:30:08.03 ID:ma21ZHtA0



――ォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォォオォオォオォォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオ…!!!




少年「…ふふ。そうだ」

少年「空っぽで、感情さえ抱けない君はもはや受け入れるしかない」

少年「逆らうことも許されない全ての生命は、畏怖を持って君に従うだろうね」

少年「…ああ、でも彼女がいたな。そう、冥王」

少年「けれどさしもの冥王も、この力には敵わないだろうね。…ふふ。いよいよ自分に死期が迫ったら、果たして彼女はどんな思いを胸に戦うのかな…っ?」

少年「楽しみだなぁ…! 冥王すら敵わない崇高なる大魔王………!」

少年「ふふふ! 君はこの後百年、世にも恐ろしい修羅の物語を刻むんだ!」

少年「さあ………新たなストーリーの幕開けだ!!」



















魔王(――――――)

517 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:31:17.64 ID:ma21ZHtA0

少年「…ん?」

少年「なんだ…? 魔王に…」



魔王(――――――)



少年「感情の、揺らぎ?」

少年「いや。まさかそんなはずないよね」

少年「あの魔弓と引き替えに、魔王は全てを失ったんだから」



魔王(――――たい)



少年「!?」



魔王(――――――苦しい――)


魔王(――痛い――――)



518 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:32:03.29 ID:ma21ZHtA0

少年「なんだ、これ」

少年「感情が………芽生えている…?」


魔王(――――やめて――)


魔王(もう――――戦え――ない――――のに――)



少年「…苦痛?」

少年「痛みのようなものが、魔王の自我を呼び覚ましている」

少年「そんな…まさか。何故………!?」

少年「一体、誰がこんなことを………」



魔王(――や――めて――――)

魔王(――――もう――休ませ――――て)



『ふざけんじゃねぇ』

『てめぇみたいな悪人を、楽にさせてたまるか』

『俺はお前が憎い』

『俺の全てを奪ったお前が』

『俺の愛しい仲間も、愛しい女も、全て全て…!』


『お前が殺したんだ!!』


519 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 15:32:53.10 ID:ma21ZHtA0

魔王(――あ――ああ――)


魔王(あなたは――――)



『覚えてくれていなくて結構だ。どうせ俺は、お前が蹴散らした虫けらに過ぎねぇんだからな!』

『くそ! くそ! くそ!』

『何が勇者一行だ!! 俺はまんまと操られて、お前に全てを奪われた!!』


盗賊『呪ってやるぞ、魔王――!!』

520 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:41:36.91 ID:ma21ZHtA0

盗賊『お前のせいだ!!』

盗賊『お前が攻めてきたせいでみんな死んだ!!』

盗賊『剣士も、エルフも、斧使いも、騎士も、魔女も、狩人も、吸血鬼も!!』

盗賊『軍師も………っ!!』

盗賊『お前の…お前のせいで!!』


魔王(――――痛い――)

魔王(――苦し――――い)



少年「これは………っ、死者の念…!?」

少年「この無の世界に蠢く亡者の意識が…」

少年「魔王に向かって集まり始めている、のか…!」


魔王(――焼けるようだ)

魔王(助けて――)



戦士『…助けて?』


戦士『助けて、だと? お前が?』

戦士『あれだけ殺しておいて、自分だけ楽になりたいと?』

戦士『笑わせるな。もっと苦しめ』

戦士『死よりも激しい辛苦こそ、お前に相応しい………魔王』

521 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:42:45.60 ID:ma21ZHtA0

戦士『ふふ…滑稽だ。死んでしまえば生者を恨むことしか出来ない』

戦士『しかしそれが許されるのならば、甘んじよう』

戦士『何より目の前に仇がいるのだ』

戦士『――苦しめ』

魔王(………く、首が)

戦士『苦しめ!』

魔王「や、め………かふッ!!」

戦士『苦しめ!!』




少年「………憎悪」

少年「この物語の犠牲者の魂が…自らを葬った根源を嗅ぎ付け」

少年「その怨嗟が、魔王に感覚を呼び起こしている…!」

少年(死後の気の狂うような静寂を漂う者にとって………死にかけの仇など、格好の餌食だ)



武闘家『おぬしはまだそんな所にいるのか?』

武闘家『悠々と生者を気取って?』

武闘家『…許せぬ』



武闘家『許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ許せぬ』

522 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:43:31.92 ID:ma21ZHtA0

魔王「うぐっ…!! あっ、ぐぁっ!!」


商人『魔王!! 貴様が!!』

商人『貴様が全てを奪ったッ!!』

商人『今こそその代償を払えッ!!』



少年(ゆ、勇者一行………!)

少年(無惨に散った彼らの途方もない怨嗟が吹き出してくる――)


少年(いや、それだけじゃない!)




女勇者『お前さえいなければ…!!!』

523 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:44:30.69 ID:ma21ZHtA0


教皇『苦しめ!!!』


軍師『憎い…!!! あなたが、憎い!!!』


虚無『苦痛を味わえ!!!』


兄『もがき懺悔しろ!!!』


『お前のせいで………』

『お前のせいで………!!』




魔王「うガっ、ゴッ」

魔王「や、メテ」

魔王「おっ、ネガ、いッ………」


524 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:45:32.08 ID:ma21ZHtA0

少年(物語を動かした人物だけじゃない…名もなき兵士から…犠牲になった町民に魔族まで)

少年(この大戦のために死した数えきれない魂が怒号を上げている)

少年(それらがもたらす無数の苦痛は、魔王に意識を取り戻し――)

少年(膨れ上がった呪力は、僕の支配を拒む………!!)



魔王「ぐぁあッ…!!」



魔法使い『――本当は僕がそこに立っているはずだった』

魔法使い『何故僕ではなく、お前がそこにいる?』

魔法使い『…死の苦しみよりもずっと狂気に満ちた悪意を、お前に』


魔法使い『苦しめ』



魔法使い『苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ苦しめ』



魔王「うぎッ、がっ!!」

魔王「た、たすっ」

魔王「助け――」


先代『………お前………ば………』


魔王「!!」

魔王(お、お父さ)






先代『お前さえ生まれなければ』


525 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:46:27.12 ID:ma21ZHtA0


魔王「そ」

魔王「んな」




魔王「あああ」



魔王「あああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああっ!!!」





魔王「あ――――――」













木竜『あなたの』









炎獣『お前の』








526 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:47:12.17 ID:ma21ZHtA0








炎獣『お前のせいだ』
















魔王「――――――――――――」







   バ  チ  ッ !!



527 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:48:08.93 ID:ma21ZHtA0




少年「っ!!」


少年(は………弾かれた………っ!)




シュゥウウウウ………




魔王「………」 ユラ…





少年「………ま、魔王」


少年「一体………何が、どうなったんだ」


少年「僕の干渉は及んでいない。それなのに君は」


少年「――君は、立っている………!!」



魔王「………」


528 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:49:19.01 ID:ma21ZHtA0


少年「その原動力は僕の与えた力では、ない………」

少年「僕の力を、押し退けた上で君は…――君は甦ってみせた」

少年「それを可能にしたのは、生者の祈りでも、希望の力でもなく…」



魔王「………ふふ」



少年「!」


魔王「どうして?」

魔王「どうして私は生きてるの?」


529 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:50:03.07 ID:ma21ZHtA0

魔王「私は…沢山の人々を死に追いやった」

魔王「…戦場の片隅で事切れた兵士の一人に至るまで」

魔王「その呪いは今、私に返ってきた」

魔王「ああ。きっとこうなって然るべきだったのかもしれない」


少年「ま、魔王………」


魔王「苦痛が疼く。それは片時も私から離れることはない」

魔王「これは永遠の呪い。私に与えられた罰」

魔王「分かっていた。私がどんなことを成し遂げようと、多くを殺めた罪人に他ならないということ」


魔王「――けれど、目の当たりにしたくはなかった」

魔王「お父様にも、爺にも………炎獣にも」


魔王「死の世界の苦痛を前にしたその時には、もう」



魔王「私は………許されるはずがないんだ」


530 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:50:55.63 ID:ma21ZHtA0

魔王「私さえ、いなければ」

魔王「彼らは今も生きていたはずだった」

魔王「………炎獣も」

魔王「ねえ」


少年「!」


魔王「私が愛していたはずの命の怨恨が、血となって巡っているかのように、私を責め立てるの」

魔王「ずっと、ずっと、ずっと………絶え間なく」


少年「………」


魔王「あのまま、あなたの力で自我を消し去ってしまった方が、ずっと楽だった…」

魔王「………今の私にあるのは、身を切るような痛み」

魔王「心臓が鼓動するたびに身体を内から食い破ろうとする、怨念」

魔王「ねえ、どうして?」




魔王「どうしてあのまま私を支配してくれなかったの?」







少年「ふっ、ふふふ」


少年「あはははははははははははははは!!」

531 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:51:45.47 ID:ma21ZHtA0


少年「これは、凄い!! 君は素晴らしいよ、魔王!!」


少年「君は絶体絶命のピンチを切り抜けた…! それを可能にしたのは死した者の恨み!」


少年「魔王を名乗る者に相応しい復活だ!! 僕の力に明け渡すこともなく、君は生き延びることに成功したんだ!」


少年「けれど、呪いによって得た生に、君はもはや喜びを感じられない…!」


少年「多くの者の憎しみを一身に受けて………大切だった仲間にすら恨みを向けられて」




少年「――君の気高さは、失われてしまった…!!」





魔王「お願い」

魔王「もう私を殺して」

532 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:52:55.04 ID:ma21ZHtA0

少年「くくくくく…!」

少年「君の"意思"は、最後の最後のところで君を支えていた光だった!!」

少年「君を君たらしめていた大事なものを、失ってしまったんだ…!!」


魔王「………」


少年「ああ…! なんたる美しい絶望だろう」

少年「ふふふ…。魔王。傷心の君をさらに突き放してしまうようだけどね」

少年「君を殺そうにも、僕にはもうそんな力は残っていないんだよ?」

魔王「…どう、して?」

少年「残った力の全てを君に授けるつもりだったからねぇ。それが弾き飛ばされてしまって、僕には何の力も残っていない」

少年「力の復活までには時間を要する。力を失ってしまったのだから、それまでは僕も取るに足らない非力な子供と一緒さ」

魔王「そんな………」

少年「悲しいよね。辛いよね。ごめんね?」

少年「でも、逆に考えてごらん? 僕は今なんの力もないただの子供なんだよ?」


少年「今なら、首を絞めてでも僕を殺してしまえるんだよ」

少年「君がここに来た望みは、そういうことだったはずだろう?」


魔王「………」

魔王「私には」

魔王「もう、どうすることも出来ない」

魔王「何かを為そうなんて気持ちは」

魔王「欠片も沸いてこない…」


533 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:54:12.74 ID:ma21ZHtA0

少年「あはっ!」

少年「あははははははははははは!! 魔王! 僕を倒そうとやって来た君には、絶好のチャンスなのに!!」

少年「当の君は、ただ生きているのでやっと!!」

少年「――僕らは生きているのに、互いに命を奪い合うだけの力がないんだよ…!!」

魔王「………」

少年「こんな形のゲームオーバーが今までにあっただろうか!!」

少年「引き分けを迎え、お互いに手を出せないまま茫然としているしかない結末…!」

少年「ふふふ! 僕ひとりでは到底思い付かなかったシナリオだ…!」

少年「賢者………本当にありがとう。君のお陰で今までにない展開を楽しむことが出来た」

少年「興奮が、収まらないよ…!」

魔王「………」

少年「魔王が港町より人間の王国に攻め入った、今回の魔王勇者大戦」


少年「その結末は………」

534 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 17:55:08.32 ID:ma21ZHtA0



少年「――"静寂"だったんだ」




少年「魔王………君はこの物語の主役だった」

少年「仲間と協力し、押し寄せる強敵と困難を退け、世界の謎に挑みかかった」

少年「けれど、最後に僕と引き分けた」

少年「この世の管理者たる僕のことは、やはり倒すことなど出来なかった」

少年「君は所詮、作られた物語の登場人物に過ぎなかった。つまりはそういうことさ」

少年「これで、幕引きだ」



魔王「………………」


535 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 20:44:50.43 ID:ma21ZHtAo

少年「…ふふ! これは次の魔王勇者大戦も楽しみだなぁ」

少年「今回の悲劇ほどのお話にはならないかもね。でも、この戦いを越えてまた新たな英雄が生まれると思うと…ふふふ」

少年「そう、次だ。この余韻に浸るのも良いけど、もう僕は次の準備へ取り掛からないと」

少年「今回は、これ以上展開のしようもないからね…」


魔王「………」

少年「…表情のない人形のようだね。魔王。つまらないや」

少年「そんな顔をしていたって、誰も君を殺してはくれないんだよ、もう。あっちに行ってよ」

少年「僕は次のお話を考えるのに忙しいんだ。ふふ」


少年「…」

536 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 20:58:44.15 ID:ma21ZHtA0

少年「僕が力を取り戻して次の魔王勇者大戦を始めるまでには長い時間がかかる。それまでに次のお話を…」

少年「………」

少年「うん。時間はいっぱいあるんだ。いくらでも考えられる」

少年「…そう。いっぱい………」

魔王「………」

少年「いや、少しの間の出来事だ。力を取り戻すまでなんて。永い時を過ごしてきた僕にはあっという間だよ」

少年「そう。少しの間………」

少年「………いや、でも」

少年「あれ?」



少年「………」


537 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 20:59:41.20 ID:ma21ZHtA0

少年「そうだ…! ね、ねえ魔王!」

少年「君、僕の話し相手になってよ。一緒に物語を考えようじゃないか!」

少年「どうせすることもないんだし、さ。いいだろう? 魔王」

魔王「………もう」

魔王「私を殺して」

少年「………」

少年「…ちぇ」

少年「なんだい。話し相手にもなってくれないのか…」

少年「…どうやって時間を潰そうか」

少年「今まで、いつだって僕の作った英雄達の物語が側にいてくれた」

少年「勇者と魔王を巡る夢の冒険が…僕を楽しませてくれた」

魔王「………」

少年「でも次のお話を始めるまで………」


少年「――あと、百年もかかる」

538 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:00:22.26 ID:ma21ZHtA0

少年「………」

少年「…百年…」

少年「………百年も」


少年「………………」


少年「………ど」



少年「どうしたらいいんだ?」


539 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:01:13.55 ID:ma21ZHtA0



少年「今の僕は完全に力を失ってしまって、例え小さな勇者でさえ作ることは出来ない」

少年「こんなことは………こんなことは、今までになかった」


少年「ここは無の空間。元々なんにもない場所なんだ。だから」

少年「こ…困ったな。物語があったからこそ、僕は時間を忘れて没頭していられたのに」

少年「こんな空白、し、知らない………」


少年「――…空白?」

少年「空白が、百年も続く………?」



少年「は、はは。想像しただけで………」

少年「ど、どうしたらいいんだ…? も、物語がないなんて、僕は…」

少年「そもそも僕は………この無の空間で」

少年「無の空間に、たった一人で…」

少年「………あれ」

少年「あれ。…あ、あれ?」

少年「どうしよう」




少年「物語を失った僕は」

少年「生きているといえるのか?」

540 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:02:00.17 ID:ma21ZHtA0

少年「あれっ。あれっ?」

少年「どうしよう、どうしようどうしよう」


少年「ど、どうしたらいい?」


少年「ねえ」


少年「ねえ、ねえ!」


少年「ねえってば!!」




魔王「………」


魔王「私には」



魔王「どうすることも出来ない…」






少年「――!!」

541 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:02:38.90 ID:ma21ZHtA0

少年「は、ははは…!」

少年「そん、な…あまりに酷いじゃないか」

少年「そうだ………これはあまりに酷すぎるよ」

少年「…おい」

少年「おいっ!」

少年「ふざけるなよ!!」

少年「君がっ、君が僕の力を拒んだりするからっ!!」

少年「こんなこと、ありえないはずだったんだ……!! 亡者の思念を引き寄せて、僕の力を寄せ付けないなんて…っ」

少年「僕は、この世界の制作者であり管理者だぞっ…!! それを、それを――」



魔王「………」

魔王「あなたは、狡猾で老獪なようで」



魔王「その実」


魔王「本当にただの子供でしかないのね」






少年「…ッ!!」

542 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:03:25.15 ID:ma21ZHtA0

少年「黙れッ! 黙れよッ!」

少年「お前がこんなところまで攻めてきたから、こんなことになったんだろ!?」

少年「お前がいなければ、こんなことにはならなかったんだっ、魔王っ!!」

少年「なんとかしなきゃいけないんだよ!! そうじゃなきゃ、く、空白が来るんだっ!!」

少年「君なら何とか出来るはずだろっ!?」

少年「………そ、そうだ。そうだよ」

少年「き、君はあれだけの困難を乗り越えてきたんだ。多くのことを、成し遂げたじゃないか」

少年「僕は見ていた。君は主人公なんだよ、この物語のさ…。だ、だから」

少年「僕のことだって助けてくれてもいいだろっ…!?」

少年「ねえっ!!」

少年「おいっ!! なんとかいえよッ!!」


魔王「………」



少年「こんなのって」

少年「こんなのってないよ!!」

543 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:04:18.54 ID:ma21ZHtA0

少年「あ、あんまりだ!!」

少年「も、物語が、ないなんて」

少年「あまりにもひどすぎるよ!!」

少年「ああ………ああ!!」

少年「く、空白がやってくる!! 物語のないっ、空白が!!」

少年「そんなの、耐えられないんだよう、僕には!!」

少年「だからお話がいるんだ!!」

少年「ずっと、それがあったから僕は………っ」

少年「なのにっ、なのに!!」

少年「こ、こんなこと!!」

少年「物語がなくなっちゃったら、僕っ!」


少年「ひっ…一人きりなんだよぉっ!!」

544 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:05:01.05 ID:ma21ZHtA0

少年「だ、誰か!!」

少年「誰か、お願いだ!!」

少年「ママ!!」

少年「ママ!! どこ!?」

少年「たっ………助けて!!」

少年「お願いだ!!」

少年「僕に…っ」

少年「お話を………っ。ねぇ!」


少年「聞いているんだろう!? 賢者…っ!!」


少年「――………まさか」




少年「まさか、こうなることまで全て分かってて僕を………っ」




















遊び人「………おい」

545 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:05:52.18 ID:ma21ZHtA0

少年「ああ」

少年「ああっ、そうだ…」

少年「君がっ、君がいたじゃないか!! 遊び人!!」

少年「ねえ、お話を、お話を聞かせてよ!!」

少年「君なら面白可笑しい話をたくさん知ってるはずだ!! そうでしょう!?」

少年「何でもいいっ、話して聞かせてよ!!」

少年「例えば、例えばさ!!」

少年「そう、そうだなぁっ、えっと」

少年「ああそうだ…! 全ての冒険を終わらせた勇者が、その後どうなったのか、とかさ!!」

少年「ぼ、僕知らないんだよ! ひとつお話が終わったら次のお話作りに取りかかっちゃっていたからさ!!」

少年「ねえっ、君ならそういう」

少年「そういうさ、面白い話を知ってるはずだよね!?」

少年「ねえ、ねえ、ねえ」

少年「ねえってば!!」


遊び人「………」ス…


少年「………え?」

少年「何? それ………?」

546 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:06:43.47 ID:ma21ZHtA0

少年「君、そんなもの持っていたっけ?」

少年「ふふ、はは。おかしいね。君がそんなものを持っているなんて」

少年「だって君は、何も出来ない遊び人なのにさ。不釣り合いだね、なんかさ」

少年「でも、どこかで見たことある形だな」

少年「ああ、そうだ! それは"どうのつるぎ"じゃないか!」

少年「その剣は確か、勇s

547 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:07:31.31 ID:ma21ZHtA0


ズブッ…

548 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:08:13.80 ID:ma21ZHtA0

少年「………?」

少年「………は………ふ」

少年「あ………ああ…」

少年「こ…これは………ど」

少年「どういう………こと…?」

少年「なん…で、君………が…こん………なこと………?」

少年「君、に…は………大それ…た………事………なん…て」

少年「こ…れっ…………ぽっちも…………」


少年「…………あ…………あ…………」


少年「痛い…!!」

少年「痛い痛い痛い痛い痛い!!」

549 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:08:55.95 ID:ma21ZHtA0

少年「痛いっ!!」

少年「痛いィっ!!」

少年「痛いよぉッ!!」

少年「いたいいたいいたいッ!!」

少年「た、助けてッママ!!」

少年「いたいいたいいたいいたいいたいいたいィッ!!」

550 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:09:36.20 ID:ma21ZHtA0

少年「あ"あ"あ"ッ!! くそっ!!」

少年「なん"っ、でッ!!」

少年「痛いよォッ!!!」

少年「あは!!!」

少年「あはははははははははははははは!!!」

551 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:10:20.20 ID:ma21ZHtA0

少年「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」




少年「アハハはははっははッははハハハははハハハははハははははハハはっはははハハハはハハハハハハハハハハハハは!!!!」








少年「はは………ッ」




少年「………か、ふ………」

552 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:11:06.85 ID:ma21ZHtA0


少年「………け」


少年「………賢、者………」


少年「賢…者………。ね、え………賢…」


少年「………助け…て…よ………」



少年「………さ」


少年「さむ………い………」

553 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:12:29.91 ID:ma21ZHtA0


少年「………か………は………」


少年「………い………たい………」


少年「………さむ………い………」





少年「………死に…たく………」


少年「………………ない」



少年「…ま…だ………僕の………作っ、た………世…界………で」


少年「………僕…の………ため………だ…け………の」



少年「………物………語………を」

554 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:13:11.91 ID:ma21ZHtA0


少年「………………死………にたく」



少年「………ない………………」





少年「………?」



少年「………なん、だ………」


少年「………ぼ…く………は………」








少年「――ちゃん…と………………」



少年「………………生きて………た………………」







少年「………………のか………………」


555 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:14:00.78 ID:ma21ZHtA0


遊び人「………物語ってのぁよ」




遊び人「最後までどうなるか分からねぇから、面白ぇんだろうが」





少年「………………」





遊び人「思いがけず端役に殺される気分は、どうだ?」



遊び人「神様よぉ」






少年「………ぼ」



少年「く………」



少年「………生…き………」



少年「………………て………………」



少年「………………………………た」





遊び人「………知るか」



遊び人「てめぇの…」



遊び人「てめぇのおままごとはよ………」





遊び人「俺に言わせりゃあ」
556 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:15:05.21 ID:ma21ZHtA0


遊び人「とんだ、三文芝居だったよ」


 ブン…











――ドスッ


557 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:16:00.93 ID:ma21ZHtA0




少年「ぐヒゅ」



少年「ゴ」




















少年「」








558 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:16:57.83 ID:ma21ZHtA0


魔王「………………」



魔王「………死…んだ」



魔王「神であったものが…」



魔王「憐れな古代人の少年が…」






少年「」







遊び人「………」


559 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:17:48.54 ID:ma21ZHtA0


魔王「――今度こそ終わった」

魔王「あまりに突然に。けれど絶対的に」

魔王「終わったんだ。これで」

魔王「全てが、終わった」

魔王「まさか………あなたが」


魔王「あなたが終わらせることになるなんて…」



遊び人「………」



魔王「………」

魔王「どうして?」

魔王「ふふ………ただの気まぐれ?」



遊び人「………こいつを」

遊び人「この剣を、俺に届けた奴がいた」

560 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:18:42.93 ID:ma21ZHtA0


魔王「…どうの、つるぎ」

魔王「とてもありふれた剣。旅立つ新米の冒険者が手にするような」

魔王「それを…誰かがあなたに、届けた?」



遊び人「そいつは多分」

遊び人「なけなしの勇気を振り絞ってここに来たんだ」

561 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:20:00.36 ID:ma21ZHtA0

遊び人「お前の魔弓で次元が揺らいだ時に」

遊び人「その小さな隙間を縫ってここに来た」

遊び人「…それが奴の精一杯だったんだ」


魔王「あの瞬間に、ここに、来た?」

魔王「そんなことが出来る人が…? だって扉を潜る資格があるのは――」


遊び人「あいつの"勇気"を見たら」

遊び人「俺にもやらなきゃならないことがある気がした」

遊び人「ただ、それだけのことだ」

遊び人「あれが誰だったかなんて………知ったことじゃねぇ」


魔王「………」

562 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:20:54.55 ID:ma21ZHtA0


魔王「………そうか」

魔王「ずっと、いたんだ」

魔王「ずっと、あの謁見の間にいたんだ」


魔王「この物語が始まった、あの瞬間からずっと」

魔王「私達が、勇者一行を倒して王国に近づく間も」

魔王「たった一人で、恐怖に震えながら」



魔王「それでも、逃げ出したわけじゃなかったんだ」


563 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:21:54.43 ID:ma21ZHtA0


魔王「ずっとずっと、隠れ続けていた」


魔王「そして最後の最後、あの一瞬」


魔王「小さな、ありったけの"勇気"を抱き締めて」



魔王「私達に………その剣を届けてくれた」








魔王「ありがとう………………勇気ある者」


564 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:22:36.89 ID:ma21ZHtA0


魔王「勇者」


565 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:36:11.89 ID:ma21ZHtA0



遊び人「………奴はもういない」

遊び人「この無の空間は、もう穴だらけだ。そこら中が元の世界に繋がって………じきに崩れ去る」

遊び人「神は、死んだんだからな」


魔王「………そうね」


遊び人「俺も、帰るんだ」

遊び人「あの、クソみたいな街角に」


魔王「ねえ」

魔王「ひとつお願いがあるの」


遊び人「…」














魔王「…………――私も、殺して」

566 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:37:05.68 ID:ma21ZHtA0


遊び人「………」


魔王「………」


遊び人「………なんでだよ」


遊び人「全部終わったじゃねえか。終わったってのになんで」


遊び人「なんであんたが死のうとするんだよ」





魔王「ふふ」


魔王「もう私には………物語がどんな結末を迎えたって関係がないの」


567 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:38:00.17 ID:ma21ZHtA0


魔王「死した人々の呪いは、私からあらゆるものを取り去ってしまった」


魔王「………私の価値あるものは全て失われてしまった」


魔王「思い出もどす黒く塗りつぶされて、希望は生まれた途端に拒絶され続ける」


魔王「言葉を発しているのだって辛いの。でもね、死に辿り着けるなら」


魔王「そのためだったら、笑うことだってできる」ニコ



魔王「ね………お願い」





魔王「私を、殺して」












遊び人「………」





遊び人「断る」

568 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:38:55.91 ID:ma21ZHtA0


遊び人「こんなことは最初で最後だ」

遊び人「俺の人生で、こんな大袈裟なことは金輪際ごめんだ」


遊び人「今日のことは、忘れる」

遊び人「もう夢はおしまいだ。再び見ることはねぇ」

遊び人「俺は、あのクソッタレな毎日に戻るんだ」

遊び人「だからもう二度と………」


遊び人「俺に関わるな」





遊び人「――あばよ」





569 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:39:49.91 ID:ma21ZHtA0



魔王「………………」



魔王「…?」




魔王「ああ…そうか」


魔王「これ以上、戦いはない」


魔王「魔王勇者大戦は終わった」


570 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:40:29.59 ID:ma21ZHtA0


魔王「――私は、生き残ったのか」


571 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:41:29.22 ID:ma21ZHtA0


魔王「生きなきゃいけないんだ」


魔王「………生きる」




魔王「私はまだ、この身体を」

魔王「呪われた血の走る身体を引き摺って」

魔王「生きなきゃいけない」


魔王「………」

572 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:42:28.51 ID:ma21ZHtA0

魔王「ねぇ…」


少年「」


魔王「あなたは私が物語の主人公であると言った」

魔王「………でも、例えそうであったとして」

魔王「私みたいに愚かな主人公に、何の意味があるのかな?」


魔王「幾つもの大きな過ちを犯し、大切な仲間さえ守れず」

魔王「ふふ…最後の敵を、この手で倒すことすら出来ず」

魔王「魔族も人間も、数えきれない命を奪った私は」




魔王「少しでも価値のある、主人公だったのかな………」

573 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:43:18.74 ID:ma21ZHtA0

魔王「………英雄たる強い想いの人々は、この戦いには沢山いた」

魔王「なぜ、私が…」

魔王「私だけが、こんな風に生き延びているのか」

魔王「………分からない」

魔王(分からない)


魔王(………)


魔王(ねえ、私は)


魔王(主役だから、生き延びたのだろうか)







魔王(そんな生に)


574 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:44:04.47 ID:ma21ZHtA0


魔王(なんの意味があるんだろう)





フワ …



575 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:45:01.35 ID:ma21ZHtA0

魔王「…あの世界の風だ」

魔王「私は、戻るのか」



魔王「――少しだけ、実感が沸いてきた」

魔王「………私が、永遠に許されることのない罰と共に生き延びてしまったこと」



魔王「――ようやく、意識が際立ってきた」

魔王「同時に身体中を這いまわる痛みもより鮮明になってくる」



魔王「――にわかに、気力も戻ってきた」

魔王「今なら自ら断つことが出来る気がする」














魔王「私自身の、命を」


576 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:46:19.41 ID:ma21ZHtA0


カラン…



魔王「! これは…」

魔王「………どうのつるぎ」

魔王「…そう。置いていってくれたのね」

魔王「ふふ…。せめてもの情け? …私が自分で終わらせられるように」



魔王「…」チャキ…



魔王「この刃を喉元に突き刺せば」

魔王「全てから、解放される。身体中の激痛からも、泥のように心から溢れる悲しみからも」



魔王「価値のない役目からも」


577 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:47:07.32 ID:ma21ZHtA0

魔王(本当にいいの?)


魔王「………迷う必要なんて、ないわ」


魔王「私は、多くの人にとって死神でしかなかったのだから」

魔王「父上にとっても………爺にとっても」


魔王「炎獣にとっても」


魔王「………………」



魔王「勇者の剣で、魔王が死ぬ」

魔王「…ふふ。結局、とてもありきたりな結末を辿るのね」

578 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:48:05.95 ID:ma21ZHtA0

魔王(――そうか)

魔王(こういうことだったんだ)




――魔法使い「予言、しましょうッ………魔王!!」

――魔法使い「――この物語の終わりは、あなたの、死だ!!」



魔王(あなたは、この瞬間のことを、言っていたのね)


魔王(あなたたちは、全部知っていたんだ)

579 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:48:53.54 ID:ma21ZHtA0

魔王(ふふ)




魔王(沢山の戦いがあった)



魔王(沢山の死があった)



魔王(その数だけ、物語があった)



魔王(でも)



魔王(なんだかあっという間だったなぁ………)

580 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:49:47.70 ID:ma21ZHtA0


魔王(そして最後に………魔王の物語が、幕を閉じるんだ)



魔王(………………なんだか)



魔王(意識が、ぶつ切りになってきた)

581 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:51:01.52 ID:ma21ZHtA0

魔王(いけない)



魔王(意識を手放してしまう前に)



魔王(せめて自分で、決着をつけよう)

582 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:51:43.95 ID:ma21ZHtA0

魔王(はやく)



魔王(急いで)



魔王(ああ、手が震える)

583 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:52:28.14 ID:ma21ZHtA0

魔王(………勇者)



魔王(あなたの勇気を、私にも)



魔王(終わらせるための、勇気を)

584 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:53:10.50 ID:ma21ZHtA0

魔王「………」チャキ………



魔王(そうだ)



魔王(それでいい)

585 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 21:53:52.62 ID:ma21ZHtA0

魔王(さよなら)



魔王(世界)

586 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 22:00:17.64 ID:ma21ZHtA0

魔王「…これで」



魔王「本当に」

587 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 22:00:59.51 ID:ma21ZHtA0




魔王「――全て、おしまい」














































588 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 22:01:41.82 ID:ma21ZHtA0



















































「それから」

589 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2018/11/24(土) 22:02:46.21 ID:ma21ZHtA0

「どうやら世界は、新しく生まれ変わったようでした」



「というのも、私達はその大きな確変の瞬間を目にすることはなかったのです」



「同じ日が昇り、同じ風が吹き、今までと同じ空の下で、私達に分かることといえば」



「"魔王と勇者を失った"、という事実だけでした」



「そして、二度と現れることはないのです」



「数え切れないほどの生命の死が、黄金の鎖のように長く長く続いた物語の果てに、私達はもう」



「自分の人生を自分で生きていくしかないのです」



「この先の世界に――」

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