【多重クロス・安価】色々なキャラで人理修復【FGO】

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120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/20(金) 21:39:29.52 ID:eDK3G6gk0
一応、木村 光夫で
121 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/20(金) 22:00:25.00 ID:yaa1wIbQ0
あー、オリ主がどうとか、そこまで深く考えての安価ではなかったです。
マスター呼びだと味気ないので、適当に名前募集してみようかな的な感じでした。考えが至らず申し訳ありません。

そういう風に捉えてしまうという方もいるようなので、名前はデフォルトで『藤丸立香』にしようと思います。
候補を出して頂いた方も、申し訳ありませんでした。
また書き溜めができたら、更新していきます。
122 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 00:55:37.67 ID:cGOwQels0
更新します。
123 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 00:56:47.31 ID:cGOwQels0
 四つの影がぶつかり合っては離れていく。



 アムロは盾とビームライフルを、七花は両の手を掲げて、それぞれの対峙するサーヴァントと戦闘を繰り広げる。



 比較的有利に戦況を進めているのはアムロだった。



 俊敏に周囲を動き回る相手へ、的確な射撃を繰り出していく。



 相手が接近しようとすれば弾幕を張り、近付けさせず。



 かと思えば、唐突に急接近してビームサーベルを振るう。



 意表を突かれた相手が退こうとすれば、今度は針穴を通す如く狙撃で、その脚を縫い付ける。



 変幻自在の戦闘。



 それはサーヴァントを相手としても変わらずに。



 伝説のエースの力を見せ付けていた。



 対する七花はというと、一言で現すならば膠着状態。



 振るわれる長槍と、振るわれる両腕が、二人の間に数え切れぬ程の火花を散らす。



 鳴り響く金属音。



 生身と刃物とがぶつかり合うでは、断じてない。



 一撃一撃がおおよそ必殺の打ち合いなのだろう。



 まともに喰らえば、数百もの命があろうと足りない筈だ。



 それを互いに紙一重の所で躱し、逸らし、防ぎ合う。



 とはいえ、均衡は完全ではなく、両者共に僅かずつではあるものの傷が増えていく。
124 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 00:58:10.77 ID:cGOwQels0


 僕に出来るのは、回復魔術を繰り返し唱えるだけだった。



 微々たる回復量ではあるけど、殆ど意味のない行為なのかもしれないけど、それでも僕に出来る事は何でもやるつもりだった。



 ―――勝ってくれ。



 その想いと共に、魔力を七花へと流し続ける。



 長く長く―――まるで永劫と続くかと思われた均衡。



 不意に、それが終わる。



 まるで、前触れもなく、相手の戦い方が変化したのだ。



 速度を重視した突きから一転、渾身を籠めた突きへと。



 瞬時に、予兆もなく、戦法が変わる。



 その変化に、七花は対応することが出来なかった。



 七花も両腕を振るうが、速度を重視したそれでは相手の渾身を受け止めきれない。




 防ぎ、いなしきれなかった刃が、七花の肉を裂いた。



 宙を舞う鮮血。



 その細身の体が、この世界に来て初めて傾いだ。




「―――七花!」




 思わず叫んだ時には、既に追撃が振るわれていて。



 七花の身体が、まるで弾丸のような勢いで吹き飛ばされていた。


125 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:02:13.35 ID:cGOwQels0



 ―――驚くべきは、相手の技術、なのだろう。



 唐突に変化した戦法。



 ほんの一瞬を境とした緩急。



 経験の差、とでも言えば良いのか。



 相手の方が、七花よりも戦上手であった。 



 七花は、戦いの経験がそう多い方ではない。



 刀集めの旅を続けた一年―――それが、彼の経験値の全てだ。



 例え、その後の『描かれぬ物語』で旅を続けていたとしても、それがあの刀集めの経験を上回るとは思えない。




 凄まじい力を有する七花であるが、経験という点に於いて、彼は未熟と言えた。



 その差が、今この瞬間に現れたのだ。



 

「七花、無事か……!?」
「七花さん……!」




 焦燥が口から漏れた。



 それは、自分を盾で守り続けているマシュもまた同様だった。



 七花は、強い。



 しかし、相手もまたサーヴァントなのだ。



 最悪の考えが、頭を過ぎる―――。




126 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:14:09.88 ID:cGOwQels0




「―――キーキー騒ぐなよ。耳に障る」





 が、



 僕の心配をよそに、七花は割と平然とした様子で立ちあがっていた。



 ダメージがない訳ではないだろう。



 今も一滴、また一滴と血が滴となり、地面を濡らしている。




「…………ああ、面倒だ」




 僕を見て、マシュを見て、流れ落ちる己が鮮血を見て、相手を見て。



 七花は、一言だけ呟いた。



 同時に、疾走。



 まるで姿が掻き消えたかのような加速で、サーヴァントへと突撃する。






「宝具解放――――」






 七花に吸い取られる魔力量が、僅かに増大した。



 理解する。



 七花は宝具を使うつもりなのだ。



 その選択を、止めはしない。



 自分は彼を支えると決めた。



 だから、止めない。




 全力でサポートしてみせる―――!
127 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:15:08.91 ID:cGOwQels0




(行け、七花――――!!)




 治癒魔術を止め、七花への魔力供給に意識を集中させる。



 彼の宝具がどのようなものなのかは、予想できない。



 彼そのものが一本の刀としてある存在。



 『刀(ぶき)』である筈の彼が使用する『宝具(ぶき)』。




 一体、鑢七花の宝具はとは―――、











「――――――――『刀語』―――――――――」










 ―――その名を聞いた瞬間、全てを察した。


 そうだ。


 彼の宝具とは、彼の逸話とは。


 彼等が辿った軌跡そのもの―――。






「――――『斬刀・「鈍」』!!」




 

128 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:17:30.01 ID:cGOwQels0

 


 ―――勝負は、一瞬だった。



 直進する七花へ、神速の突きを見舞った影のサーヴァント。



 七花は己が右腕を掲げただけ。



 たったそれだけで、勝負はついた。



 相手の槍ごとに、相手の身体を。



 七花は、全て両断した。



 まるで七花の身体が『全てを斬り裂く刀』となったかのようだった。


 
 二つに分かれた影が、光となって消滅する。



 あとに残るは、鑢七花ただ一人。



 完成形変体刀とサーヴァントとの一戦は、こうして勝負がついた。


129 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 01:20:19.02 ID:cGOwQels0
一旦終了します。
何だか安価が出せないですね…。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 10:52:54.76 ID:fKloewJNO
131 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 20:21:57.60 ID:cGOwQels0
更新していきます。
132 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 20:27:05.11 ID:cGOwQels0


 七花の戦闘が終わるのと殆ど同時に、アムロもまた敵サーヴァントを倒していた。


 アムロはほぼ無傷。七花の戦闘に集中してしまっていたけど、やっぱりさすがだ。



「二人ともお疲れさま」
「お疲れさまでした。七花さん、アムロさん」
「ああ、何とかなって良かったよ。七花も良くやってくれた」
「……ああ」



 七花の傷は、そう深いものではなかった。


 治癒に専念すれば、直ぐに回復するだろう。


 


「七花はそこに座って! 今すぐ治癒魔術をかけるから!」
「……心配ねぇよ、これくらい」
「これくらいじゃないよ! 冷や冷やする戦い方するんだから、ホントに……」
「ははは、大人しくマスターの指示に従った方が良いな。君を治癒しない限り梃子でも動かないつもりだぞ、マスターは」
「……はぁ、面倒くせえ」





 嫌がる七花に無理矢理治癒魔術を行使する。


 少しばかりの足止めにはなるが、休憩も兼ねてと考えれば、まあ良いだろう。



「私も手伝うわ、藤丸」

「ありがとうございます、所長」




 所長もサーヴァントを撃退した事を買ってくれてか、意義を唱える様子もない。


 それどころか七花の治癒を手伝ってくれた程だ。しかも、自分よりも遥かに手際よく、良質な魔術で、だ。




「すげぇな、あんた」




 見る見るうちに治っていく傷に、さすがの七花も目を丸くしていた。


 自分のサーヴァントが他の魔術師を褒めているところを見ると、マスターとしては悔しいというか、何とも複雑な気持ちになる。




「別に、これくらい普通よ。この新米がへっぽこ過ぎるだけよ」

「そんなもんか」

「そんなもんね。あんたもマスターになったんだから、精進しなさいよ」

「は、はい!」



 ……ここまで言われると、正直立場がない。


 事実だけに言い返せないのが悲しいところだ。
133 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 20:27:50.18 ID:cGOwQels0

 ともかく。



 窮地は何とか乗り越えたらしい。



 マスターとして、七花に言いたい事も伝えられた。



 彼がそれにどう思っているかは分からないけど、先程までよりは距離が縮まったような気がしないでもない。



 何やかんやでこうして大人しく治癒だって、受けてくれている。



 治癒が終わるまではもう少し時間がある。



 折角の機会だし、もう少し七花と親睦を深めたい。



 そうだな―――



1.宝具のことを聞いてみる。


2.サーヴァントになった理由を聞いてみる。


3.その他(自由記載・内容によっては再安価)



↓1


134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/23(月) 20:36:32.33 ID:pMOE1ca+o
1
135 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 21:30:10.52 ID:cGOwQels0

 宝具のことを聞いてみよう。



「七花、あの宝具のことなんだけど―――」



 と、口を開いたは良いけど……。


 その瞳に真っ直ぐと見透かされ、思わず言葉に詰まった。


 確かにあれは七花と彼女の、大切な物語の末の宝具。


 そう簡単に他人に話したい内容ではないのかもしれない。



「ご、ごめん……あまり話したくないよね」



 謝罪し、口を紡ぐ。


 それきり会話は続かず、気まずい沈黙が流れていく。



「……あの宝具は、俺ととがめの物語が武器となったもんだ」



 だが、不意に。


 七花が口を開いた。


 多分、初めて七花の方から声をかけてくれた。



「あんたは知ってるだろうが、俺達は『完成形変体刀十二本』を集める旅をしていた」





 『完成形変体刀十二本』。



 それは彼の物語に存在する、日本で最も価値のある十二本の刀のことだ。



 四季崎記紀という天才刀鍛冶が創り出したという十二本の刀。



 それらは一本一本に特別な性質を有しており、天下を傾けうる力すらあるとされていた。

136 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 21:44:08.18 ID:cGOwQels0

 鑢七花、そして彼の持ち主たるとがめという名の女性。



 二人は 『完成形変体刀十二本』を集めるために旅を続け、遂には十一本もの刀を収集する事に成功する。



 そして、その末に―――……。




「その中で収集に成功した『十一本の完成形変体刀』―――その『特性』を俺という刀に付与する事ができる」




 例えば、『絶刀「鉋」』であれば『絶対の頑丈さ』を。



 例えば、『斬刀「鈍」』であれば『絶対の切れ味』を。



 『鑢七花』という刀に付与できるということだ。



 


「『特性』の付与は重ね掛けも可能だ。だが、重ね掛けをすればする程、魔力の消費は桁違いに増えていく。まぁ、逆を言えば一つだけなら、そう魔力消費はしないってことだ」





 七花自体が完成された一本の刀。



 その七花へ更に『完成形変体刀』の力を上乗せられるというのなら、それは凄まじい力になるだろう。



 強力な宝具だ。



 何より―――、




 
「これが俺の宝具―――『刀語』だ」





 ―――これ以上なく、七花にぴったりな宝具だと思う。




「……何笑ってんだよ、気色悪い」

「え、笑ってた?」

「ああ、にやにやとな」




 笑っていた自覚は一つもなかった。


 ただ、そうだ。


 すごくうれしい気持ちは心の中にある。
137 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/23(月) 22:04:30.87 ID:cGOwQels0


 彼ととがめとの旅の結晶。



 それについて、彼自ら話してくれたことが、とてもうれしい。




「ありがとう、七花」

「? 礼を言われる事はしちゃいないぞ」

「それでもだよ。それでも今は礼を言いたいんだ」

「……訳の分かんねえ奴だな、お前」




 一本の刀と、マスターの自分。



 まだまだ壁はあるし、七花の行動も考え方も変わらないと思う。



 それでも、少しずつ共に戦う者として関係が深くなっていけば、それはとてもうれしい事に思える。


138 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/10/23(月) 22:05:11.34 ID:cGOwQels0
一旦終了します。
ありがとうございました。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/24(火) 01:21:12.20 ID:wpzs3gkHO

他鯖はまだ出てこないのかな?
140 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:19:42.99 ID:sjNVCfmm0
特異点Fではサーヴァントの追加召喚はしない予定です。戦力が増えすぎてしまうので…。
少し更新していきます。
141 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:20:21.49 ID:sjNVCfmm0




「そろそろ出発しましょうか、先輩」



 それから少しばかりの時間が経った。


 七花の治癒も終わり、僕達も身体を休めることができた。


 状態は万全。


 三体ものサーヴァントを撃退した事で精神的にも余裕が生まれてきた。



「そうだね。そろそろ探索を続けようか」



 身支度を整え、歩き始める。


 周囲の様子は変わらぬ様子で、やはり新たな発見は見当たらない。


 早くも行き詰まりを感じたその時だった。



「……マスター、誰かが見ている」

「えっ……!?」




 唐突に、アムロが囁いた。


 表情は険しい。既に気配の主を探っているようだった。



『まさかぁ。こっちではサーヴァントの反応なんて観測されてないよ』

「いや、確かに見ている。影のサーヴァントは意思らしきものが殆どなくて分からなかったが、今は確かに気配を感じる」

「マスター、どうしますか? 再び敵性サーヴァントの可能性がありますが」

「そ、そうだな。ここは―――」




1.気付いていない振りをして、相手をおびき出す


2.先手必勝! 攻撃を仕掛ける


3.対話を試みる。
 

 
↓1


142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/25(水) 23:22:02.65 ID:X4OXu67z0
1
143 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:44:09.80 ID:sjNVCfmm0


「ひとまず気付かない振りをして様子を見よう。おびき出すんだ」

「了解しました……!」

「了解した」

「七花も。今は動かないでね」

「……分かった」



 方針は固まった。


 とにかく意識しないよう、自然体を装って歩いていく。



『―――アンサズ』



 その時だった。


 不意に声が響く。


 同時に飛んできたのは炎の塊。



「先輩!」
「藤丸!」



 マシュとアムロが、ほぼ同時に前に出る。 


 アムロはガンダムに変身してシールドを。


 マシュは盾を掲げて炎を防ぐ。


144 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/25(水) 23:54:16.14 ID:sjNVCfmm0


「おうおう、やるもんだ」
「あなたは―――」



 飄々とした様子で現れたのは青髪の男だった。


 木製の杖を掲げて、こちらを見据える。



「そう構えるなよ、軽いご挨拶ってやつだ。お前達の力が見たくてな」
「何をふざけたことを……!」
「ふざけちゃいねえさ。あの影のサーヴァントを倒したのはあんた達だろう? おれはアイツ等と敵対していた者だ。
 敵の敵は味方―――とも思ったが、正直有象無象と手を組んだところで、聖杯の泥に取り込まれるのがオチだからな。実力を見ておきたいんだわ」



 口は微笑んでいるものの、その瞳は全く笑っていない。


 まるで獣のように鋭い眼光だった。


 膨れ上がる魔力を感じる。


 事態は呑み込めないが、戦いを避けることは難しいらしい。



「先輩……!」
「ああ、あっちがやる気なら、やるしかない!」
「来な、本気で来ねえと殺しちまうぞ!」




 相手は一人。


 マシュは防御に回ってもらうにして、戦力はアムロと七花の二人。


 ここは―――




藤丸たちはどう戦う?


↓1 自由記載(内容によっては再安価)


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/26(木) 00:02:55.52 ID:SB2fllfgo
だからある程度提示しろと何度言えば
ここで降伏して命乞いするとか書かれたらどうすんだよ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/26(木) 00:06:00.31 ID:1Ul1as2DO
アムロが牽制して七花が確実にダメージを積み重ねつつ止めを刺すチャンスを覗う
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/26(木) 00:16:00.67 ID:KdFAuJnzO
>>145
内容によっては再安価って書いてあるじゃん
148 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 00:38:23.63 ID:dNo/JV2O0


「アムロは牽制、七花はその隙に攻撃して!」

「了解だ。行くぞ、七花」

「……ああ」



 ガンダムの姿を取ったアムロがビームライフルを連射する。


 それと同時に七花が駆けだし、接近する。


 正確無比な射撃が男に迫る。


 回避か防御、その隙に七花が攻撃を叩き込む算段だろう。



「―――悪いな」

「何っ……!?」



 射撃は、ほんの僅かな動作で回避された。


 それこそ微塵の隙すら発生しない程の、小さな動作で。



「飛び道具は効かねえんだわ」



 ならば、とでも言うように七花が踏み込んだ。


 装備や先程の攻撃を見るに、相手は魔術師のようだ。


 剣も槍も弓も装備していないのだ。少なくとも三騎士という訳ではないだろう。


 それなら、接近戦は七花に分がある。


 近接の間合いで、七花が両腕を振るった。


149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/26(木) 00:51:49.11 ID:RwBxCCbD0
成る程……正体が分かった
150 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 00:53:15.94 ID:dNo/JV2O0



「っ……!」



 轟音。


 七花の腕は、しかしながら相手を切り裂いていない。




「接近戦はないと見たか? 甘ぇえよ、ガキ」




 相手は、杖で受けていた。


 『槍兵のような構えでもって』、七花の突きを正面から受ける。


 まさか受け止められるとは思っていなかったのだろう。


 七花の眼が見開かれる。



「言ったよな。本気で来ねえと殺す―――ってよ」



 ゾッ、と肌が粟立った。


 殺意。


 先の影のサーヴァントような、狂気のそれじゃない。


 正真正銘の、理性から来る殺意。


 冷や水を浴びせられたように、身体が強張った。



151 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:07:44.85 ID:dNo/JV2O0


「ほうら、避けてみな―――!!」



 杖の切っ先から、魔術が迸る。


 炎、雷、氷……五大属性を無視するかのような、多彩な魔術が杖から噴出する。


 大きく後退しながら回避行動に入る七花。


 だが、とても避けきれない。


 遂には炎魔術が七花を燃やし尽くさんと迫る。



「―――『刀語 薄刀・「針」』」



 が、炎が七花に届く事はなかった。


 まるで風に巻かれる一枚の紙ように、七花の身体が熱風に押される。


 薄刀・「針」―――その特性は「薄さ」と「軽さ」。


 羽毛の如く軽さで、炎の勢いに逆らわず、熱風に流されることで回避したのだ。


152 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:25:34.79 ID:dNo/JV2O0


「はっ、面白れぇな! なら―――」

「―――させるか!」

「―――っ!」



 追撃の構えを取った瞬間、男にアムロが斬りかかる。


 鋭い踏み込みと共にビームサーベルを一閃。


 男は虚を突かれたものの、槍の構えで迎え撃つ。


 サーベルを避け、返しの突きを放つ。


 が、アムロはそれすらも易々と回避し、再びサーベルを振るった。



「ちぃっ―――!」



 たまらず距離を取る青髪の男。


 アムロは隙なく構えながら、男を見る。


153 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:36:48.51 ID:dNo/JV2O0


「近接戦の心得はあるようだが、飽くまで『戦える』といった程度らしいな」

「抜かせ。本来のクラスで召喚されてりゃ、今頃お前は立っちゃいねえよ」

「そうなのかもしれないな。だが―――」



 挑発するような口調の途中、突然アムロの身体が宙に浮いた。


 背中と足裏のバーニアを吹かして、まるで宙返りをするように浮き上がる。


 人間にはできない、モビルスーツだからできる、ノーモーションからの動作。


 その背後から現れたのは―――鑢七花だった。


 七花の突撃を、アムロは自らの姿でギリギリまで隠していた。


 その上でノーモーションで動き、男の不意をついたのだ。



「ちぃっ―――!!」



 男の反応は目に見えて鈍い。


 それでも杖を横薙ぎに振るったのは流石と言えるだろう。


 苦し紛れだが、正確な一振りが七花を迎撃する。

154 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:53:28.65 ID:dNo/JV2O0


 だが―――、




(残像―――!)



 七花の姿が掻き消える。


 虚刀流七の構えから繰り出される、前後方向自在の足捌き。


 特殊な歩法により緩急をつけ、男の一撃を避けたのだ。



「虚刀流奥義―――落下狼藉!!」

「ぐっ―――!!」



 空振りを見据えての、踵落し。


 男は何とか身を捩って直撃を避ける。


 だが、完全に躱し切るには至らず。


 衝撃をそのままに受け、後方へ吹き飛ぶ。


155 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 01:59:43.62 ID:dNo/JV2O0


「―――やるじゃねえか。どうやらあんた等の事、見くびってたみたいだな」



 左腕より血を滴らせながら、それでも男は軽口を零した。


 最初は押されたものの、数の差もあってか戦況は有利と言えた。


 冷静に立ち回れば、七花もアムロも決して相手に劣ってはいない。



「……力を見る、というのが目的ならば、もう十分だと思うが」

「そうさな。あんた達二人の力はそれなりに分かった。確かに充分だろう」



 男は降参の意を示すように、両手をあげた。


 安堵の息が漏れる。


 どうやら戦いは終わったようだ。



156 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 02:01:13.49 ID:dNo/JV2O0


「だが―――そこの嬢ちゃんの力はまだ見てねえな」



 直後、その考えが誤りだったと理解する。


 凄まじい魔力が肌を突き刺す。


 これまでのより更に強大で、凶暴な、魔力の奔流。


 これは、まさか―――




「そぅら、防がねえとマスターが死んじまうぞ!!」





 ―――宝具。
 




「焼き尽くせ木々の巨人―――――『 灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!! 」




157 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 02:04:50.60 ID:dNo/JV2O0



 アムロと七花が、動く。


 僕とマシュの前に立ち塞がり、共に防御の構えを取る。


 だが、無理だ。


 例えガンダムの盾だろうと、例え完成形変体刀の肉体であろうと、あれを受け止めるには至らない。


 どうする。どうする。どうする。


 焦燥の中で、だが答えはでず。


 燃え盛る藁の巨人が近付いてくる。


 アムロも、七花も、僕も。


 ただ身を固くして、次に来るであろう衝撃に備えるだけだった。


 そんな中で。


 唯一動いた者がいる。





「―――マシュ―――」




 円と十字架を模った巨大な盾を手に、少女は一歩前に出る。


 そして、





「宝具、展開します――――!!」





 全てを守る盾が、顕現した―――。


158 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/10/26(木) 02:05:17.99 ID:dNo/JV2O0
一旦終了します。
ありがとうございました。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/31(火) 20:04:43.64 ID:pmipv7Tw0


ものすごく期待してる
160 : ◆9DJJwpqX1YBd [saga]:2017/11/02(木) 00:29:14.91 ID:AYlM/iMm0
少し更新していきます。
161 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:30:11.28 ID:AYlM/iMm0





 私は、ずっと考えていた。


 何のためにここにいるのだろうと。


 何のために、サーヴァントとなったのだろうと。


 既にマスターは二人のサーヴァントを召喚している。


 御伽話の世界からの、凄腕の英霊達。


 二人は私なんかよりもずっと強くて、ずっと逞しくて。


 マスターを危険に晒す事なんて、そもそもなくて。


 私がいる意味なんてないんじゃないかと、ずっと思っていた。


 守ることしか―――いや、宝具も使えず、守ることすら出来ないサーヴァント。


 真名も知らず、己が力を発揮することもできないサーヴァント。


 役立たずの、サーヴァント。


 ずっとずっと、そう思っていた。


 それは今回の戦いでもそう。


 突然現れた青髪の魔術師。


 先程の影のサーヴァントよりも遥かに強い彼を相手にしても、二人は互角以上に戦っていて。


 私はマスターの側で、それを見ているだけだった。


 加勢することも、サポートすることも、できずにただ見ているだけ。


 とても情けなく、不甲斐ない気持ちで一杯だった。

162 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:40:31.41 ID:AYlM/iMm0


 この人の―――あの朝に出会い、ただそれだけの関係なのに、死の間際まで共にいてくれた人の―――力となりたかったのに、


 なのに、なのに。








「焼き尽くせ木々の巨人―――――『 灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!! 」






 我に返ると、視界は真紅に染まっていた。


 凄まじい魔力。凄まじい熱量。


 炎を纏う藁の巨人が、ゆっくりと近付いてきている。


 アムロさんと七花さんが私達を庇うように立つが―――無理だ。


 例え二人でも、あれとぶつかってただで済む訳がない。


 いや、後ろにいるマスターだって―――死んでしまう。




(守らないと、使わないと、みんな消える―――。仮初めでもいい、未熟でもいい、今だけでもいい。私が、私がやらないと、みんな無くなってしまう―――)





 前にでる。


 アムロさんよりも、七花さんよりも、前に。


 そう、今は私が、私がやらなくちゃ―――








「宝具、展開します――――!!」




 
 
 藁の巨人が放つ真紅すら染め変えて、白が全てを包み込んだ―――。



163 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:47:07.55 ID:AYlM/iMm0




 世界に色が戻っていく。


 直前まであった灼熱は、もうどこにもない。


 自分の身体を見る。


 宝具をくらったというのに、傷の一つもない。


 前に立つアムロも七花も同じだ。


 傷一つなく―――そして、僕と同じ様に驚いた様子で―――立っている。



「―――マシュ」



 そう、全てはマシュが起こした。


 自らの宝具を展開して、男の宝具を正面から受け切ったのだ。



「やった……私、宝具を展開、できた……」



 マシュ自身も信じられないような様子だった。



「驚いたな。まさかこんな力が……」


 アムロが小さく呟いた。


 七花もまた目を丸くしていた。


 彼等ですら死を覚悟したんだと思う。


 そんな必死の状況を打破したのだ。



「すごい……すごいよ、マシュ!」



 駆け寄り、その手を握る。


 あの時と同じ、小さく、でも暖かな手。


 こんな小さな手が、それでも僕達を守ってくれた―――、



「……なんとか一命だけはとりとめると思ったが、まさかマスターともども無傷とはね」



 青髪の魔術師も、驚きを表情に滲ませていた。


 その表情に既に殺意はない。


 攻撃する様子がないという事は、『実力を見る』のは終わったのだろう。

164 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 00:59:35.35 ID:AYlM/iMm0


「……こちらの実力は分かってくれたようだな」
「ああ、十分に分かったよ」
「それは何よりだ。こちらも死ぬ思いをした甲斐があったよ」
「悪かったな。こっちも命がかかってるもんでよ。少しは手ぇ抜いたんだぜ、あれでも」



 アムロの皮肉めいた言い回しもどこ吹く風。


 青髪の男は口笛を吹いて、僕とマシュを見詰める。



「あんたにも謝っておかねえとな。悪かったな、何処ぞのマスターさん」



 ニヤリと笑いながら、男は続けた。
 


「―――喜べよ。あんたのサーヴァント達はどれも一級品だ」



 どこの時代の、どの英霊かは分からない。


 それでも、サーヴァント自身からそういわれると、何故だか自分のことのようにうれしくなる。


 そう、アムロも、七花も、マシュも、皆すごいサーヴァントなんだ。


 例え虚構の世界からの英霊だとしても、例え真名も宝具も分からない英霊だとしても、みんな―――。



165 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:01:00.05 ID:AYlM/iMm0



「さて、本題に入らせて貰おうか―――」



 魔術師は語る。


 この冬木という街であった聖杯戦争。


 彼はそれにキャスターとして召喚され、戦っていたという。


 だが、街は一夜の内に姿を変えた。


 人という人が消え、残ったのは7体のサーヴァントと、無尽蔵に湧き出てくる怪物達のみ。


 初めに、聖杯戦争を再開したのはセイバーだったという。


 キャスター以外のサーヴァントはセイバーに敗北し、あのような影のサーヴァントに姿を変えた。

 
 そして、最後に残ったキャスターを倒すべく、活動を始めたとのことだ。




「つまり一人では太刀打ちできないから、力を貸してほしいと」

「まぁ、そういうこったな。この世界で唯一マトモ、そんでもって腕もあるってんなら、手を組まない選択肢はないだろう」

「そうだがな……。もう少しやり方っていうものは無かったのか?」

「細かい事を気にすんな。こんなふざけた状況で出会っちまったんだ。一蓮托生と行こうぜ」




 セイバーは強力なサーヴァントだという。


 キャスターですら勝利は難しいという程に。


 異変の原因がセイバーにあるとするのなら、激突は避けられない。
166 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:05:00.55 ID:AYlM/iMm0
 歴史の保障を否定した事象。


 その原因。


 セイバーが何をしたのかは、分からない。


 何をどうすれば、こんな風に世界を創りかえられるのか。


 何をどうすれば、人の歴史を消滅させることができるのか。


 僕の小さな思考じゃ、とても理解しきれない。


 それ程までに強大な力を、セイバーは有しているのかもしれない。


 とても太刀打ちできる相手ではないのかもしれない。


 でも。


 それでも。




「―――戦おう」




 気付けば言葉が出ていた。


 みんなの視線が一斉に向けられる。


 そう、戦わなくてはいけないんだ。


 カルデアの一員として、みんなのマスターとして―――戦う。


167 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:15:59.83 ID:AYlM/iMm0



「そうでなくてはな」



 アムロは珍しく笑みを浮かべていた。



「分かった」



 七花は小さく―――だが、力強く頷いた。



「やりましょう、マスター」



 少女は真っ直ぐに僕を見る。


 どこまでも付いていくと、その瞳が語っているような気がした。




「いい心意気じゃねえか。面白いぜ、カルデアのマスターさんよ」



 話は決まった。


 目指すは異変の根源。


 そこに待ち受けるセイバーの元へ。


 僕達は進む事となった。




168 : ◆9DJJwpqX1YBd [sage saga]:2017/11/02(木) 01:17:35.48 ID:AYlM/iMm0
今日は以上となります。
また書きダメができたら更新します。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/20(月) 12:12:59.92 ID:doFBB4M40
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