千歌「溶けた蝉」

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1 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:45:22.57 ID:i9fLTwAq0
みーん、みーんみーん。

みーん。みーんみーん。


突然声が聞こえた。蝉の声、夏を感じさせるあの声が。


千歌「ん……」

花丸「あ、起きた?」

千歌「あれ…花丸ちゃん?」

花丸「部室で寝てたら風邪ひくよ?」

千歌「あ、えへへへ…ごめんごめん」


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2 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:46:20.30 ID:i9fLTwAq0
千歌「そういえばみんなは?」

花丸「もう帰っちゃったずら、ほらお外もこんなに暗いし」

窓から見えるのは藍色にちょっとだけオレンジ色が着色した空だった
雨も降ってた。

千歌「雨が…そっか、帰れないんだね」

花丸「うん、今日の天気予報は晴れとしか聞いてなかったから…」

千歌「うーんそっか、私も帰れないからもう少しだけ…ここにいよっか」

花丸「うんっ!」

外の確認をし終わった私は読書をしてる花丸ちゃんの向かい側のイスに座ってじっと花丸ちゃんを見つめてた。

花丸「そ、そんなじろじろ見られると恥ずかしいずら…」

千歌「あ、ごめんね」

顔を赤らめて、可愛げに後ろ髪を触る仕草まで見せて…

私はクスクスと笑って、不意に可愛いなって思っちゃった。
3 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:47:15.95 ID:i9fLTwAq0



みーん、みーんみーん。

みーん。みーんみーん。



千歌「!」

そしてまた聞こえた蝉の声
大きな声で鳴く、蝉の声が私の耳を伝ってた。

花丸「…蝉の声がするね」

千歌「うん、珍しいね、夏は終わったのに」

花丸「案外普通だと思うよ、一匹くらいそういうのがいたって珍しくはないと思う」

花丸「狂い咲きの一種ずら」

千歌「うーん…そうなのかな?」

花丸「そうずらっ」

千歌「そっか」
4 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:48:18.34 ID:i9fLTwAq0


みーん、みーんみーん。

みーん。みーんみーん。


聞こえてくる“一匹”の蝉の声

それ以上はなくて、それ以下もない一匹の蝉の声
たった一匹で鳴く、寂しくて儚い蝉の唄

どこで鳴いてるんだろう、そう思った私はまた立ち上がって窓の外を見渡した

千歌「…雨、いつ止むのかな」

花丸「分からないずら、止むまで待つしかないずら」

千歌「あはは、そうだよね」


ぐうー


千歌「あ、えっとえへへ…」

花丸「お腹空いたの?」
5 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:49:13.14 ID:i9fLTwAq0
千歌「なんか最近全然食べてなくて…」

花丸「ダイエット?」

千歌「ううん、なんでだろうね?なんか食べれないんだよね」

花丸「…?よく分からないけど体調管理はしっかりするずら」

千歌「分かってるってー」

花丸ちゃんの分厚い本に目が行きながら誤魔化しの笑みを見せた。

千歌「それでなんだけどさ、花丸ちゃん」

花丸「ん?どうしたの?」

千歌「あのさ…」


千歌「なんで空に太陽があるの?」



藍色の空に、黄色いお月さまとオレンジ色の丸があった。

南に太陽があって。
北に月があった。
蝉の事は割とそうなんだってなったけど、こればっかりは何かおかしいよね。
6 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:49:42.27 ID:i9fLTwAq0


花丸「………」

千歌「花丸ちゃん?」


ぱたんっ


花丸ちゃんは読んでた分厚いの本を、しおりを刻むことなく閉じてしまった


花丸「千歌ちゃん」


なんだかすごく不安そうな顔をして花丸ちゃんはこう言った。


花丸「ごめんね」


7 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:50:23.31 ID:i9fLTwAq0
みんみんみんみんみんみんみんみん

千歌「!!」

千歌「何?!」


突然蝉の鳴き声が蝉時雨に変わった

複数鳴いてるような、でもやっぱり一匹しかいないような。
そんな蝉時雨。
次第にその声はノイズがかかるように、フェードアウトしていくように遠ざかっていった。


みーん、みーんみーん。

みーん。みーんみーん。


まただ、またあの声が聞こえてくる
花丸ちゃんの声も、雨の音も全てが無くなっていくのに

この蝉の声だけは鮮明に聞こえてくる。

声が遠ざかっていくのに視界は何も変わらず、ふと瞬きをした

8 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:51:18.51 ID:i9fLTwAq0
花丸「あ、起きた?」

千歌「!」

千歌「あれ…花丸ちゃん…」

花丸「うなされてたよ?怖い夢でも見たの?」

花丸ちゃんはクスクスと笑ってた

千歌「ゆ、夢だったんだ」

よく分からないけど夢ならそういうことなんだよね、だから私も笑った


ざー、ざー、ざー


千歌「雨…すごいね」

花丸「ねっマルも帰れないずら」

千歌「この雨じゃ私も帰れそうにないや…」
9 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:51:49.05 ID:i9fLTwAq0
千歌「迎えが来るまで待つしかないね」

花丸「そうだね」

雨の日は読書に限る、そうよく聞くけど私は外で遊びたいなーって毎回思うんだけど
こう何も出来なさそうな時は読書が一番かも、なーんて思った。

千歌「花丸ちゃんは何の本を読んでるの?」

花丸「アルバムずら」

千歌「あれ、それアルバムだったんだ」

よくよく見ると夢の時とは違って結構薄めの本だった
学校にアルバムを持ってきてそれを見るなんて花丸ちゃんって意外にロマンチックな人なのかな。

花丸「そうずら、Aqoursの写真はこのアルバムに飾ってるずら」

千歌「へー…」
10 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:52:28.35 ID:i9fLTwAq0


みーん、みーんみーん。

みーん。みーんみーん。


千歌「!」

花丸「蝉の声…」

千歌「め、珍しいね、もう秋なのに」

花丸「そうだね、マルもこの季節では初めて聞いたずら」

千歌「遅く生まれたのかな?」

花丸「そうかもしれないずら」
11 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:53:30.63 ID:i9fLTwAq0


みーん、みーんみーん。

みーん。みーんみーん。


花丸「蝉ってどうして鳴くんだろうね」

千歌「えっ…なんでだろう…」

花丸「鳴く必要なんかないのにどうして鳴くんだろうね」

千歌「うーん…それはぁ……」

花丸「マルたち人間はきっとこうやって“話す”ということが鳴くということになるんだろうからもしかしたら蝉も誰かとお話してるのかもしれないね」

千歌「あ、うん!それかも!」

花丸「…なんてね、蝉が鳴くのは求愛行動ずら」

千歌「え…」

花丸「うふふ、ごめんずら」

千歌「も、もー花丸ちゃん!」

花丸「ふふふっ」

花丸ちゃんにからかわれた
最近の花丸ちゃんは私にすごく馴染んでくれててからかったりタメ口になってりしてくれてる
12 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2017/10/25(水) 21:53:57.60 ID:i9fLTwAq0


ガタガタガタガタ


千歌「!」

花丸「!」


曜「ちっかちゃーん!迎えに来たヨーソロー!」


千歌「曜ちゃん?!」

外への窓が開いたと思ったら曜ちゃんがびしょびしょになって入ってきた
それでも曜ちゃんは元気そうに啓礼のポーズをしてきた。
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