【艦これ】提督「クソッタレな世界を」長門「生き残るために抗おう」【安価スレ】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

159 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 21:43:55.83 ID:ue6ewgWs0
18時終業のはずが21時まで残業…うごごご。今から書いていきます。
160 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 22:48:00.61 ID:ue6ewgWs0
「紅茶、美味しかったよ。また飲みに来る」

「OK。今度は高級茶葉をPrepareしておくネー」

「はは…。それなら、補給線をどうにかして作らないとな」

「Yes!ConnectionをMakeしたり、補給艦を襲ったり、やることはたくさんネー!」

「…それだ」

「What?」

提督がそう発すると、金剛は首を傾げる。

なぜそれだ、と言ったのかが分からない。

「俺たちは、現時点では補給手段が皆無だ。金剛の言う通り、補給艦を強襲するくらいしかない」

「そこで、金剛が言ったコネ作りだ。上手くいけば、安定して物資を調達出来る。…上手くいけば、だけど…」

「もしFailedした場合、私たちの居場所が知られますネ…」

「………」

提督は無言になる。思いついたのはいいが、勝率が限りなく低いのだ。

何せ、提督たちの手札は全くない。精々、深海棲艦を利用出来ることと、隠密行動に長けていること。それくらいだ。

何か、糸口が見つからないか。必死に思案する提督の頭に、一筋の光明が差す。

「…前に天龍が意見具申してきたことがあったな…。もしかしたら、今でも…」

「提督?」

「すまん金剛、天龍に会いに行ってくる!」

また、提督は部屋をダッシュで飛び出す。

「…慌ただしい人ですヨー」

――でも、それだけ本気で向き合ってくれてるわけ、ですからネー。

開きっぱなしの扉に視線を向けながら、金剛は微笑んだ。
161 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 23:40:52.68 ID:ue6ewgWs0
場所は変わって、たった十畳の広さの修練所。

剣を構える天龍と、槍を優しく持つ龍田。

部屋の片隅で、木曾が指を鳴らす。その合図を皮切りに、二人は距離を縮める。

「フッ」

天龍を放つ鋭い右薙ぎを、龍田はクルリ、と回転させた槍で受け止める。

「そぉれ」

同時に、槍を上に投げて肉薄。右の掌底を打ち込むが、上体を反らされて直撃はしなかった。

上体を反らす力を利用して、天龍はサマーソルトキックを仕掛ける。

しかし、龍田が素早くバックステップに転じたため、それも失敗に終わった。

「今日は白なのねぇ」

ようやく落ちてきた槍を掴み、クスクスと笑いながら龍田は言う。

「色を言うな。大したことじゃねえだろ」

「あらら。照れると思ったんだけどなぁ」

「ハッ。戦いの最中に照れてどうすんだ。そんなんで隙を見せるか…よっ!」

先ほどと同じく、天龍は突撃をして右薙ぎを。対する龍田は、槍を振り下ろす。

両手で剣を持ち、槍を往なす。そこに、龍田の回し蹴りが迫る。

「ビンゴ」

天龍は前屈みになり、床に両手を付ける。それを軸に、下から上へと、龍田よりもコンパクトな回し蹴りが入る。

「きゃ!」

シバータ。カポエラの技である。

咄嗟に反応した龍田は、腕をクロスさせて受け止めるが、片足だけでは支えきれず壁へと吹き飛ばされる。

「…俺の勝ち、だな」

「やぁん。負けちゃった」

壁に項垂れる龍田の首に、剣を添える。勝敗はここに決した。

「…次は俺だな」

剣を肩に掛ける木曾と、苦笑いをする天龍。

「いや、今日はもう終いだ。客人のようだぜ」

そう言って入口を見やる天龍に釣られ、二人も入口へと目を向ける。

そして、大きな音を立てて戸が開かれた。

「天龍!少し話せるか!?」

「ああ。まずは提督が落ち着いてから、な」

提督の息が落ち着くまで、天龍たちはしばし、休憩へと入った。
162 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 00:40:25.51 ID:riCwGc+W0
「…で、何用で態々ここまで来たんだ?」

壁にもたれ掛かりながら、ゼリー飲料(中身はただの水)を飲み干す天龍。妙にその姿が様になる。

「天龍が前に意見具申したこと。憶えているか?」

「あれか。もちろん憶えてるぜ」

右手で髪を掻き上げる天龍。どこか後悔しているようにも見える表情が、提督には辛い。

「まあ、あの時は作戦前だったから仕方なかったがな。それでも、見捨てるみたいでしんどかったよ」

「…すまないな。俺が戦力をしっかり増やしておけば、そっちにも割けたんだが…」

「おいおい。資源とかも考えたらあれ以上は無理だろうに。そう背負いこむなよ」

ポンポンと背中を叩く天龍。叩く音が大きいのと、背中が痛いのは気にしないことにして。

「まあ言いたいことは分かったよ。そいつらを助けたいんだろ?理由は色々あるんだろうが」

「俺は構わねえぜ。寝覚めが悪かったしな。今、その鎮守府が現存してるかは知らねえけど」

「…いや、やってくれるだけでも嬉しいよ」

「そりゃ重畳」

目を閉じた天龍は、静かに寝息を立てる。余程疲れていたのだろう。

「…訓練お疲れ様」

提督は上着を掛け、外に出る。

「あらぁ…?天龍ちゃんを置いて出ちゃうのぉ…?」

「…男の俺にどうしろっていうんだ…」

「おんぶしてあげればいいじゃない」

「…死ぬ」

「しょうがないわねぇ」

ひょいと天龍を抱える龍田。どこにそんな力があるのだろうか。

「女の子には、秘密が付き物よ?」

心を読む能力を持っている艦娘は、いったい何人いるのか。

少し気になった提督であった。


慢心しては駄目。全力で参りましょう。↓1 自由安価です。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 00:43:09.83 ID:LFtToOcVO
母親の現状発覚
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 00:51:55.77 ID:xjrsMslo0
備蓄庫の視察をしつつ説得可能な提督の心当たりを考えてみる
慎重で疑り深い方が大本営の言動に疑念を持ってるかもだから望ましい
165 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 01:16:55.18 ID:riCwGc+W0
天龍を龍田が背負っている間、剣を持ってみようかと考えたが、艤装の一部なのでどうせ持てないと思い、手を戻す。

「しかし、天龍がここまで眠るのは初めてだ。提督がいて安心したのかもしれないな」

「まさか」

そんな他愛のない会話をしながら、宿舎に向かう。

食堂行きの廊下に差し掛かった辺りで、三人とは別れる。

薄着になったことで、肌寒くなった提督は蹲る。

「…深海だから水は冷たいし、当然だよな」

どうしたものかと思考する提督。深海に小さく瞬く光が、それに徐々に近づいていく。

「…なんだあれ」

一つ、二つ、三つ、四つと、数を増し、大きくなる。

「まさか…な。まさか…。早すぎるだろ…。流石に」

しかし、残念ながら、それは現実だった。

「青葉、ただいま戻りました!」

「うぅ、負けちゃったのね…」

「情報収集のプロフェッショナルに勝つのは無理でしたね」

「…怖いなぁ…。たった2時間くらいで、本土と往復も含めて情報収集を済ませてくるなんて…」

「むむ。引かれている気がします」
166 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 01:35:33.67 ID:riCwGc+W0
もう訳が分からない提督は、諦めたように話を聞く。

「…それで、どんなことが分かった?」

「えっとですね…。母さん様は本当に若く見えましたね。もしや二十歳なのでは?」

そんな年齢だったら、そもそも自分は産まれてないと心の中でツッコミを入れる。

「…冗談です。色々洗ったのですが、母さん様に接触する人はいませんでした。監視も今のところは全然」

「海軍や憲兵が出向いた記録や情報も無かったでち」

「…でも、少し苦しそうにしてたのね。何かの病気に罹ってるの?」

「…いや。普段から辛そうにしてたよ。…監視も無いということは、気にされてないのか?」

一縷の望みが出てくるが、現実的に考えると、それはないと分かってしまう。

「…ただ単に、衰弱死するとあちらが予想しているだけ、か。手を出すまでもないよな。正直…」

どれほど病弱なのかは、自分が一番知っている。それ故に、一々干渉しなくても、勝手に自滅すると分かっている。

そんな考えが出来る自分が恨めしくて、怒りがこみ上げる。

「…おそらく、海軍とかが母さんを狙うことは無いだろうな。なら、俺たちに出来るのは…」

「母さんを迎え入れられる設備を整えること。ですね?」

「…うん。ハチの言う通りだ」

最低でも、様々な医薬品は必須だろう。それと、無菌室というわけではないが清潔な場所。

あとは点滴類や介護食品も必要だろうか。

「地上に安全な場所があれば…。それが一番いいんだけど…」

中々消えず、積み重なっていく問題。だけど、処理していかないことには、何も始まらない。

「やれることはあるはずなんだ。それを積み重ねれば、きっと実を結ぶ日が来る」

「ですね!青葉も全力を尽くしますよー!」

「潜水艦組もやるでちよ!」

「おー!なのね!」


安価の中からこんにちわー!ゴーヤだよ。↓2 いつもの自由安価だゾ。

※本日の更新はこれで終了となります。次回更新予定は月曜日です。お疲れ様です(鳥海並感)。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 01:44:05.93 ID:xjrsMslo0
ksk
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 01:45:20.66 ID:3Op79M9F0
>>164
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 02:04:46.60 ID:xjrsMslo0
提督の健康管理って誰がやってたんだろ
明石?
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 09:02:09.95 ID:Riy1iau10


明石や大淀?
食事関係で鳳翔さんや萩風とかも声かけそう
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 11:34:24.90 ID:9IGdKMiK0
この場合用があるのは健康オタクじゃなく医師相当の資格持ちだよなあ
母親どころか提督まで病気アピの記述だらけ
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 13:51:42.09 ID:dUMUD/rS0
乙乙
面白そうなスレみつけたでち!
173 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 20:36:02.03 ID:LhMX+Ft60
>>169>>170、明石は医療機器の操作担当、大淀は簡単なバイタルチェックと血糖値測定の担当です。

実際に診療出来る艦娘は、残念ながら現時点ではおりません。

とはいえ、点滴といった簡単な処置なら提督を含めた艦娘全員が習得しています。深海棲艦は…(目を逸らす)。

鳳翔さんや萩風等といった料理上手な人は、偶に差し入れを送りに行ってました。

>>171、一応、提督自体は健康体です。小食な上、日頃の業務に時間が取られすぎて満足に食事が出来ない環境に在ったため、よく倒れかけてました。

母親の都合上、匿うなら医師系の方がいた方が安全です。不測の事態が想定されますので。

>>172、嬉しいレスをありがとうございます!これからも面白く出来るよう、精進します。

今から更新していきますです。今回で心当たりのある提督は、最大で三人ほど出す予定です。設定は作っていますが、要望があれば募集するかもです。

全てはコンマ神の導きのままに…。
174 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 21:07:54.25 ID:LhMX+Ft60
「では!私たちは入渠してきますね!」

敬礼をして、そそくさと退散していく青葉たち。提督も、手を振ってそれを見送る。

「金剛は、茶葉が無いと言っていたな…」

鎮守府全体の備蓄はどうなのか、確かめる必要がある。

もし、食料が少なくなっているとしたら、死活問題になり得る。

「備蓄庫はどこにあったかな…」

まだ鎮守府の構造を把握出来ていない提督は、ウロウロと廊下を往復する。

「提督?どうして廊下でウロウロしているの?」

「ん?…矢矧か。ちょっと迷ってるんだ…」

後ろから声を掛けられたので、提督は振り向く。そこには、矢矧が荷物を抱えていた。

「迷ってる…。ああね。まだ目が覚めて一日しか経ってないもの。当然よね」

「う…。早く憶えないと、皆に迷惑が掛かるよなぁ…」

「そうかしら。それで、どこに行きたいの?」

提督は矢矧に目的地を伝える。すると、矢矧は小さく微笑んだ。

「ちょうど、私も装備を置きに行くところだったのよ。ついてきて」

気を遣っているのか、ゆったりとしたスピードで歩く矢矧。

隣を歩きながら、段ボールから顔を出す魚雷を見て、質問をする。

「これは五連装酸素魚雷か?」

矢矧は首を横に振る。

「酸素魚雷じゃないわね。明石にも分からないそうよ」

「なんだそれ…」

「一発だけ、無人島に試射したの。その時の航跡には緑色の粒子が存在、直撃後は通信不良になったのよ」

普通の魚雷ではまずあり得ない現象だ。そもそも、魚雷内部は空気か酸素で満たされているのが普通のはずだ。

「…直撃後の空気中にも、粒子が散布されていたわね。まぁ、危険だし不明な装備だから、今から封印しに行くの」

「…それがいいよ。俺も、そんな装備が安全な物だとは思えない」

深海棲艦になったことで、開発する装備にも差異が生じているのだろうか。

少し気になるところではあるが、今はそれよりも優先するものがある。

思考を戻して、先に進んでいる矢矧の後ろを追う。
175 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 21:37:28.30 ID:LhMX+Ft60
矢矧の後を追い十分ほど歩くと、重々しい鉄の扉が二つ、眼前の壁に取り付けられている。

「んっ…。…ごめんなさい。扉、開けてもらえるかしら。横にスライドすれば開くから」

「分かったよ。…ふんっ!…むぐぐぐぐ…」

「…ごめんなさい。提督の力じゃ開けられない扉だったわ」

「だよなぁ…」

どう見ても、人間の力で開くものとは思えない。

提督の考えを肯定するかのように、上部に駆逐艦及び潜水艦の接触を禁ず、と書いてある。

矢矧は荷物を下ろし、扉を押す。扉はゆっくりと横に動いていき、中身が露わになる。

無造作に吊るされたランプの電気を点けると、壁一面に掛けられた装備が。

一つ一つにお札が貼られており、危険な物だと一目で分かるように配慮されている。

「…これでよし…っと」

魚雷にお札を貼り、壁に立て掛ける矢矧。軽く伸びをして、提督の方を向く。

「それで、どうしてここに用があったのかしら?」

「あー…。食料とかの備蓄を確認したいんだ」

「それなら、隣の備蓄庫ね。そっちは誰でも開けられるはずよ」

矢矧の言葉を聞き、もう一つの扉の前に立ち、提督は扉を押す。

先ほどとは打って変わって、あっさりと扉は動く。

備蓄庫の中には、大量の野菜と調味料、精肉が、種類毎に整頓されて置かれていた。

「…凄い量だな…」

「これでも、二週間分くらいしか無いのだけれど」

何百人も食事をするのだから当然ではあるが、これほどの量で二週間しか保たないとなると、実艦の間宮や伊良湖の凄さがよく分かる。

「米俵は…何個あるんだこれ」

奥のドアを開けた先には、部屋を埋め尽くすほどの米俵が安置されていた。

「…二週間は問題なし、と。その間に、補給線をどうにかしないとな」

紙に備蓄庫内の情報を書き留めながら、同期や先輩、後輩のことを思い出す。


直下コンマで人数を決定します。基準は30(一人)、60(二人)、90(三人)です。

↓1〜3で、提督の特徴とかを安価で募集するかどうかのアンケを取ります。協力いただければ幸いでヤンス。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 21:41:38.63 ID:CTl92OIV0
我々だとお便利なチートキャラ出すからお任せで
進行も滞るし
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 21:58:46.88 ID:tZxEFvDi0
出来合いでいいけど候補から選ばせて欲しい
178 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 22:12:49.90 ID:LhMX+Ft60
では、候補の提督の簡単なキャラを幾つか書いておきます。↓2、3で安価です。番号と場所(サーバー名)をお書きください。

有能度は皆同じくらいです。ご自由にお選びください。自分は風呂と食事を済ませてくるので、23時頃に再開します。

1…控え目オドオド同期提督(女性)
2…武人系同期提督(女性)
3…子犬系後輩提督(女性)
4…明るい同期提督(男性)
5…兄貴系先輩提督(男性)
6…ベテラン系先輩提督(男性)
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 22:15:49.78 ID:xjrsMslo0
6
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 22:18:39.14 ID:xjrsMslo0
ごめんエンター押しすぎた
鯖は舞鶴
安価下
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 22:32:50.00 ID:tZxEFvDi0
3トラック
182 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 23:23:11.99 ID:xy8Dbmf80
お待たせしました。再開前に、舞鶴所属の提督の番号を直下にお願いします。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 23:26:44.33 ID:xjrsMslo0
6
184 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/21(火) 00:19:59.03 ID:0xmzKd3S0
まず頭に浮かんだのは、トラック泊地に配属されている後輩。

勉強中によく顔を出しに来ては、クッキーを差し入れてどこかへと去っていく。

海軍兵学校に在籍していた時は、そんなことが何回もあった。

提督となった後でも度々合同演習を行い、お互いの艦隊の練度を上げてもいた。

『先輩みたいな人ばかりなら、戦争なんか起きないと思うんすよね〜』

無邪気にそう言った彼女の顔が、印象的だった。

今の彼女の階級は少将。

自分と違って優秀な子だ、と提督は心の中で自嘲する。

戦争そのものに疑念を抱いている彼女なら、こちらと共に戦ってくれるかもしれない。

そんな希望を抱くと共に、彼女も巻き込もうとしている自分に、提督は嫌悪する。

次に浮かんだのは、海軍兵学校で何度も指導をしてくれた、舞鶴鎮守府の中将。

彼の教えを受けたからこそ、今まで大規模作戦を突破することが出来たと言っても過言ではない。

提督に様々な兵法を教えた、偉大な人だ。

『普通の勝利を重ねること。それがどれだけ素晴らしいことかを知らない愚か者が多すぎる』

『戦争とは、その普通の勝利の積み重ねによって決まるものだ。決して忘れないようにな』

普通の作戦しか立てることしか出来ない自分に、自信を持たせた言葉。

それは今も、心の中で生きている。

――彼ほどに聡明な方なら、大本営のことを疑って、何かの準備を進めているかもしれない。

だが、本土にある舞鶴に、他の提督に悟られることなく接触すること。

これが一番難しい問題だ。

「少しずつ、堅実に進めていけばいい。そうすればやがて、大きな成果になるんだから」

鎮守府全体の方針も、少しずつ固まっていく。


抜錨!鳥海、安価します!↓2 自由安価でございます。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/21(火) 00:23:00.29 ID:FtLx+a940
ksk
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 01:14:47.29 ID:8gMoj96C0
深海達のたまり場を探してグループに混ざって慣れる努力
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 01:17:00.90 ID:gkym/NP6O
第六駆逐隊との約束
料理の味見
188 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/21(火) 02:08:04.22 ID:0xmzKd3S0
深海棲艦たちと友好的な関係を築くことは、コネ作りのための第一歩。手札を補強するために必要なことだ。

純粋に、これから共に戦う人たちだから仲良くしたいということもある。というより、そっちが本音だったりする。

既に矢矧は、別の場所に移動している。何やら仕事があるようなので、引き止めることはしなかった。

「…どこかにヲ級とか南方棲戦姫とかがいないかなぁ…」

「呼んだかしら?」

「うわぁ!?」

呟くと同時に、壁代わりの水面から顔を出す南方棲戦姫。もうどこにいても驚かない気がする。

「驚かないでよぉ。私だって、ショックは受けるんだから」

「ご、ごめん…」

ペコペコ頭を下げる提督を見て、南方棲戦姫は微笑を浮かべる。

「まぁいいわ。私に何か用があるの?」

「え?…ああ。深海棲艦の人たちとも仲良くしたくてさ。いつも集まっている場所とかがあれば、案内してほしくて」

「お風呂で言ってくれたら、連れてってあげたのに」

「…あの時は色々あったから…。そこまで思いつかなかったよ」

そういうことなら仕方ないわね、と返す南方棲戦姫は、提督を抱きしめる。

「え…?ええ…?」

「ちょっと飛ばすわよ〜」

そして水中へと引き摺り込み、高速で泳いでいく。

「大丈夫?息、ちゃんと出来てる?」

「モガムググガ…!」

胸に顔を押し付けられている提督は、力無く返事をする。

提督の周りは空気で覆われており、水圧が掛かる心配は無い。だが、当の本人は怯え切っている。

――早く顔を離したい。だけど、離したら死ぬ可能性があるから離せない…。助けて長門。

深海棲艦たちのたまり場に到着するまでの数十分間、提督は精神の生と死の狭間を反復横跳びしていた。
189 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/21(火) 02:42:58.13 ID:0xmzKd3S0
「…ほら、到着したから起きなさい。ねぇ〜」

南方棲戦姫は、ペチペチと提督の頬を叩く。十回を超えたところで、提督は目を覚ます。

「…ハッ!?」

「おはよう。もう入口だから、シャキッとするのよ」

顔を上げた提督は辺りを見回す。見たところ、ここはどこかの海底洞窟のようだ。

ゆっくりと起き上がり、背中を伸ばす。

襟や裾を整え、ボタンをしっかり最上部まで留める。シャキッとするのなら、これくらいはしなければ。

意を決して、目の前の空洞へと入る。

そこには小さな円卓状の岩と、岩を中心として遠く離れたところに、円形のベンチが何重にも設置されている。

「ここは…」

「私たちが作った会議室、といったところかしらね」

装飾が施されてないため寂しく感じるが、謎の威圧感を感じる。

ベンチに座っているのは、ほぼ全ての種類の深海棲艦。

円卓には中枢棲姫、深海海月姫、戦艦水鬼、空母棲姫、港湾棲姫、北方棲姫が座っている。

なお、北方棲姫は港湾棲姫の膝上で眠っている。

「貴様もこっちに来い」

手をこまねく戦艦水鬼。状況からして拒否権は無いに等しく、おそるおそる提督は円卓に近づく。

「そう怯えるな。別に取って喰おうとしているわけじゃない」

「フフフフ…。可愛いなぁ…。食べたくなるじゃないか」

「…やめろ。不用意に威圧するな。味方なのだからな」

「そういうこと…だ。まぁ…仲良くしよう…な?」

戦艦水鬼、空母棲姫、中枢棲姫、深海海月姫の順に言葉を発する。

特に、空母棲姫の発言に危機感を覚えた提督は、南方棲戦姫の近くに寄る。

「…ハハハ!だいぶ好かれているようだな。南の」

中枢棲姫が笑いながら言う。それに対し、自信あり気に南方棲戦姫は言葉を返す。

「これも人徳ってものかしらねぇ。そっちはどう思う?」

流れ弾が港湾棲姫へと飛ぶ。

「え…。私に振られても…困る…」

しかし、それを何とか回避した港湾棲姫。

常人が見れば卒倒するであろう光景。

それを目の当たりにしても、意識を保っていられる提督。

案外、メンタル面の強化はされているのかもしれない。


深海棲艦に聞きたいこと、一緒にしたいことがあれば↓1〜3にお願いします。

※今回はこれにて終了でございます。次回更新は火曜日予定ですが、水曜日になる可能性があります。ご了承いただければ幸いです。

今回もお疲れ様でしたァン!(CV.杉〇智和)
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 04:57:06.40 ID:V9mfBBtW0
まず艦娘達たちを受け入れてくれたことのお礼、次に自分の命を救ってくれたことのお礼
それから現状ふわーっと頭の中にあるプランを説明
大本営の嘘を確認するために開戦前後の出来事を教えてもらう
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 08:54:48.04 ID:yf+LencO0
自己紹介と一人一人としっかり握手
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 09:05:35.45 ID:RuEBFbSt0
資源とかどこで確保してるの?
海底から採取してる仮定があったがホント?
それと資源の輸送であの腹の大きい輸送船は目立つ上に他の鎮守府の艦娘に鎮められそう
数回ならうちの艦娘が所属誤魔化して味方のフリして輸送できるが?
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 22:40:50.25 ID:8gMoj96C0
モガモガ言ってるのは移動の数十分の間提督は水じゃ無く乳で溺れかけてたのか
うらやまけしからん
194 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/23(木) 01:08:22.57 ID:B23tW/AU0
>>193、憲兵がいたら連行案件でしたねぇ…。その憲兵たちも腐ってるわけなのですが。

お待たせしました。今から再開しやす。昨日は連絡してた方が良かったんじゃないかと少し後悔。
195 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/23(木) 01:09:33.37 ID:B23tW/AU0
「…色々と言いたいことはあるけど、これだけは絶対に言っておきたいんだ」

提督がそう言うと、深海棲艦全員が視線を向ける。

敵意は感じないが、威圧感にも似た何かを感じ、体が強張る。

それでも、はっきりと言わなければならない。

――彼女たちには、大きすぎる恩があるからな。

「…深海棲艦になった娘たちを受け入れてくれて、本当にありがとう」

ここ数日で何度頭を下げたか分からない。だからといって、支障があるわけではないのだが。

頭を下げる提督を見て、ベンチに座る深海棲艦はざわつく。

ヲ級もまた、心配そうに提督を見つめ、レ級は欠伸をして寝転がっている。

「如何なる理由があろうと、彼女らは沈んだ時から我らが同胞(はらから)だ」

「故に受け入れるのは道理。感謝されることではない」

淡々と返す中枢棲姫。その目に映るは、未だに頭を下げたままの提督。

「同胞…か…」

嘗て敵であったはずの艦娘を受け入れたのも、肉体が深海棲艦化して、近づいたからなのだろうか。

「…それともう一つ。俺なんかを助けてくれてありがとう」

提督がそう言うのと同時に、中枢棲姫は提督に近づいて、首を掴んで持ち上げる。

「ぐ…!?」

「…ちょっと。手荒なマネはしないでちょうだい」

中枢棲姫は、諫めようと歩み寄る南方棲戦姫を睨む。

「………」

その目を見て、南方棲戦姫はその場で静止する。

「…貴様には人としてのプライドは無いのか?一々自分を卑下して…。虫唾が走る」

「生きるため…に…仲間を…棄てた俺だ…。価値とか…あるわけが…がぁ…!」

首を掴む力が強くなる。中枢棲姫の目は怒りを孕んでいた。

「貴様のその物言いを、彼女らが望んでいるわけがないだろう!」

「ッ!?」

そして、中枢棲姫は手を離す。

「貴様は艦娘たちを罵倒されて笑っていられるか?怒るよな?」

「それと同じだ。貴様が卑下する度に、彼女らの行動を否定されているようなものだ」

「貴様の立場は以前とは違う。皆の想いを、覚悟を背負っている。そのことを自覚したのなら、言動には気を遣え」

「貴様が下に見られるということは、我々全員も見下されているのと同義なのだぞ」

「………」

それは、彼女なりの警告であり慰め。

多少厳しい言葉を投げかけないと、変わらないと思った故の厳しさだった。

「…なんでだろうな。正しいと思っていること全てが、裏目に出ている気がするよ…」

下手に出るというより、自分を貶めることで自分を守ってきた提督。

過去の経験が、提督の心に蓋をしている。

しかし、中枢棲姫の発破をきっかけに少しずつ、その蓋を開けようと提督の心はもがいていた。
196 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/23(木) 01:10:16.28 ID:B23tW/AU0
重苦しい雰囲気が辺りに漂う。

その中で、提督は何かを呟いている。

「はぁ。しょうがない人ね」

見かねた南方棲戦姫は、提督に発言を促す。

「ほら。他に言いたいことがあるんでしょう?言いたいことははっきり言わないと」

「…ああ」

小さく頷いた提督は、数秒思考して口を開く。

「…ある程度だけど、今後の行動は考えたんだ」

「まず、暫くの間は姿を隠して、監視の目を逃れる。その間は、深海棲艦と艦娘の連携強化に時間と労力を割きたい」

「…まぁ、昨日の合同訓練で身に染みたわけだからな。…なぁ?」

「…んぁ…!?」

レ級を一瞥しながらそう述べる戦艦水鬼。うたた寝をしていたレ級は、すぐに目覚めて反応する。

「次に、大本営が戦争の理由を隠しているのが理解出来ないんだ。だから…」

「何があったのか教えろ…と」

「…そうだよ」

顎に手を当てながら、提督の言おうとしたことを言った中枢棲姫。その目は若干の愁いを帯びていた。

「…いいだろう。幾らかは話す」

「我々の役目は海を守ることだ。人が汚した海を浄化し、資源に還元して平等に分配することで牽制を行う」

「戦争さえ起きなければ、浄化は追い付くからな。資源を送れば、無駄な戦争は起きないと踏んでいた」

「不可侵の契約を結んでいた我々は、浄化と還元に注力出来た」

「…しかし、強欲な人どもは我々の住処を突如攻撃した。資源と技術への欲が出たのだろうな」

「あくまで、我々は反撃したに過ぎない。あちらが停戦すれば、我々もやめるつもりだ」

しかし、一度付いた火は消えるまで燃え続ける。

戦争という火も同じ。どちらかが滅ぶか降伏という水を掛けるまで、決して消えることのない炎。

「…開戦から数ヵ月。艦船しか動員しなかった人が、突然艦娘を挙って使いだした」

「…理由は分かっている…が。それは言えん。自分で知るべきだ」

平和に過ごしていたのに、突然襲われた。

そんな辛いことがあっても、共に戦ってくれる。

彼女らが求めているのは、嘗て享受していた安寧なのだろうか。

それとも――。
197 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/23(木) 01:10:59.51 ID:B23tW/AU0
――それよりも、今は優先することがある。

「あと、資源のことなんだが…」

「資源は我々が生み出し、海底に保管しているだけだ。食料以外は心配しなくていい」

即答する戦艦水鬼。予測されていたのだろうか。

「即答か…。…次に資源の輸送なんだが、ワ級では目立つ上に簡単に沈められるんじゃないかな?」

ワ級は非情に脆い艦だ。flagshipは中々の耐久と火力を持つが、通常の個体とeriteは非情に弱い。

「ああ。対策として、陽動部隊と輸送部隊に分けたりしているが、何せ腹が目立つからな」

ベンチに転がっているワ級。その腹はスリムになっている。

おそらく、腹の膨らみ具合が積載している物の量なのだろう。

「…艦娘を使って味方のフリをすれば、数回の輸送なら出来ると思うけど…」

だが、これはその場しのぎにしかならない。

やがてバレてしまうため、補給線の構築等は必須だろう。

「必要な時は声を掛ける。艦娘は虎の子とも言っていいものだからな。取っておきたい」

現時点では、警備はそこまで厳重ではない。

つまり、深海棲艦化した艦娘を認識していないということだ。

そのアドバンテージを消失するのは痛すぎる。
198 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/23(木) 01:11:38.29 ID:B23tW/AU0
「…最後に、話は変わるけど自己紹介と握手がしたい」

「…ほう?」

「南方棲戦姫が言っていたんだ。『あなたのことを知らないのに』って」

「共に戦うんだ。俺が怖がっていたら、自分を隠していたら、信頼も何も出来ないだろう」

――それに、謝りたいから。怖がっていてばかりで、知ろうとしなかったことを。

心の中でそう呟いて、一言一言、表現に気を遣いながら話し始める。

「今更だけど、俺が提督と呼ばれてる人だ。呼び方は好きにしていいよ」

「趣味は読書くらいのつまらな…コホン。趣味は読書で、星を見るのも好きかな」

「お粥とかなら得意だから、言ってくれたら振舞うよ。えっと…。これからよろしく」

途中で中枢棲姫に睨まれた提督。表現に気を遣っただけ、まだマシだっただろう。

自己紹介を終え、ベンチに座る深海棲艦と握手をしていく。

ヲ級は握手を通り越してハグを、レ級は尻尾で甘噛みをしてきたが、それ以外は案外普通に進んだ。

最後に中枢棲姫と握手をして、解散となる。

終わったと同時に、南方棲戦姫は提督を連れて鎮守府に戻った。

後を引かないようにという気遣いなのだろう。

もう少し話をしておきたかった提督だが、彼女の厚意を無駄にするわけにはいかなかった。

まだ夕方だったが、提督は夕食を済ませて布団に着く。

昨日は夜遅くまで起きていたから、今回は大目に睡眠を取るためだ。

中枢棲姫に言われたことを思い出す。

「…今まで、俺は皆に嫌な思いをさせてたのかな」

悪い方向に進んでいく思考。

それは、力尽きて眠るまで続いた。


第二日 終

※本日の更新はこれで終了となります。安価も出せてないし、駆け足気味ですみませぬ…。次出す安価の予定は自由安価です。

次回予定は土曜日です。お疲れ様でした。
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 01:27:51.75 ID:LoifMrS10
いくらポジティブに安価を取ってもネガティブに行くスタイル
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 01:43:43.69 ID:kajlBU0M0
乙です
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/23(木) 22:31:15.64 ID:vidl5Cilo
おつおつの
202 : ◆k5OCMHkyEc [sage]:2017/11/25(土) 23:36:09.64 ID:Sv/d3vGF0
>>199、過去のトラウマが原因なので、それをどうにかしないとなかなかネガティブ思考から脱却出来ません。

一応、中枢棲姫さんによって多少は矯正されました。でも、まだ当分は続きかねません。

今更ですが、ちょっと提督がアレ過ぎる気がしないでもない。再開ですん。
203 : ◆k5OCMHkyEc [sage]:2017/11/25(土) 23:37:27.62 ID:Sv/d3vGF0
age忘れでふ…。
204 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/25(土) 23:38:40.83 ID:Sv/d3vGF0
三度目の正直age…。
205 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/25(土) 23:39:31.84 ID:Sv/d3vGF0
マルナナマルマル。午前七時。

早いと感じるか、遅いと感じるかは人それぞれのこの時間。

一人の深海棲艦が、執務室を訪ねた。

「提督?約束通り、私が来たわよ〜?」

南方棲戦姫。深海棲艦の中でも、特に友好的な女性である。

手には朝餉を乗せたお盆があり、三粒のタブレッツが添えられている。

「…返事は無し、か。とりあえず入るわね」

かちゃりと音を立て、扉を開く。

目の前の机には、誰もいない。

「…まだ寝てるのかしら」

南方棲戦姫は首を傾げ、辺りを見回す。

後ろには、先ほど入って来た廊下に続く扉があり、左には提督の寝室に続く扉が。

右には、書類を保管している棚と、箪笥が並んでいる。

「提督を起こす…のはやめておきましょう。疲れてるのかもしれないし」

南方棲戦姫は、机にお盆を置いてチラリと棚を見る。

「…とすれば、やることは一つよね〜」

棚に近づき、一冊の本を手に取る。

「提督の鎮守府日誌、ご拝見〜」

ボロボロになっている鎮守府日誌。

何が書かれているか興味を持った南方棲戦姫は、楽しそうに日誌を開いた。
206 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/25(土) 23:40:11.76 ID:Sv/d3vGF0
―――――――――――――――

二〇一三年 四月二三日 快晴

修練カリキュラムを終え、第三〇期生の新米提督が各地に配属された。

俺の配属された鎮守府は、激戦地のラバウル基地。

まだ未熟である自分を、最前線で鍛えるための采配だろう。

初期艦は吹雪型一番艦、吹雪。真面目ないい子だ。

まだ未熟な我々だが、共に成長して日本を、民間人たちを守る軍人になりたい。

そうすれば、母さんが誇れる息子になれるのだろうか。

少なくとも、母さんを失望させるような軍人にはなりたくはない。

…中将の教えを活かせば、立派な軍人になれるはずだ。

卒業するまで、一緒に勉学に励んだ後輩のためにも、昇進出来るように努めねば。

―――――――――――――――

二〇一三年 五月一日 雷雨

沖ノ島海域攻略戦で大敗を喫した。

幸い犠牲者は出なかったが、実力不足を痛感した。

艦娘たちもそうかもしれないが何より、指揮をする自分自身が誰よりも未熟だった。

一航戦や金剛、比叡、摩耶、吹雪には痛い思いをさせてしまった。

二度と同じことが起きないよう、一層努力を重ねなければ。

皆頑張っているのだから、提督たる俺が一番頑張らなければ、示しがつかない。

情けない自分を信じてくれているから、こちらも応えなければならない。

それが、俺に出来る唯一のことだから。

―――――――――――――――

二〇一三年 五月四日 曇り

情けない。書類整理中に倒れてしまった。

見舞いに来てくれたのは嬉しかったが、自分の所為で鎮守府全体の仕事が滞ったことを考えると、自分が恨めしくなる。

この点滴が終わったら、遅れた分を取り戻すために睡眠時間を削って、書類整理に充てるとしよう。

追伸

赤城が深夜、おむすびを振舞ってくれた。

辛子高菜と鮭の二つのおむすびだ。

味は言うまでもなく美味だった。

今度、間宮さんのパフェとかを奢ってみよう。

いつも戦いのことばかり考えていて、彼女が少々心配だ。

これで、楽しいことを知ってくれたら嬉しいのだが。

―――――――――――――――

「…凄いわね。二回に一回くらいは自虐してる」

十ページほど読み進めたところで、日誌を閉じる。

「これ以上はやめておきましょう。闇が深そうだし」

どういう経験をしたら、ここまでネガティブになれるのか。

少し怖くなった南方棲戦姫だった。
207 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/25(土) 23:40:50.14 ID:Sv/d3vGF0
日誌を棚に戻し、机に腰を下ろす。

「あら」

先ほどは気付かなかったが、茶封筒が机に置かれていた。

『深海棲艦の懸念点と仮訓練プログラム 霞より』

「これ…。一昨日の合同訓練の書類?大したものね」

ずっしりとした封筒を片手で持ち上げる。

「…南方棲戦姫か。おはよう」

「おはよう提督。髪、ぼさぼさね」

「…勝手に直るよ」

提督は、机に置かれているお盆を見ている。

「どうぞ。あなたが食べると思って持ってきたものだから」

「…ありがとう」

寝起き故か、はたまた昨日のことを引きずっているからか。

どこか暗い雰囲気の提督。

「…暗いわねぇ。くすぐるわよ?」

「やめて。弱いんだ」

「弱点発見ね」

軽くからかって雰囲気を明るくしようと試みる。

功を奏したのか、提督は微笑む。

「ほら、冷めないうちに早く食べなさい。間宮たちに悪いでしょ」

「…そうだな」

今日の朝餉は、浅漬けと卵焼き、お吸い物だ。

当然のように、白飯は山盛りになっている。

「う…。流石に、二日連続大盛りは辛いな…」

「あらら、私も食べた方がいい?」

「うん…。食べられる分は食べるから、残りをお願い」

「任されました〜」

結局、提督は四割ほどしか食べることが出来なかった。


全軍、この安価に続けッ!↓2 自由安価でげす。
208 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/26(日) 00:00:07.77 ID:GHupVqMj0
メイド・イン・ヘブン!時のksk!
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/26(日) 00:05:07.89 ID:h6xXqkOq0
あれ?
もしかして資源マスの資源って君達がリサイクルしてくれた物が陸にデーンと置いてあるのを艦娘が拾って帰ってるの?
と素朴な疑問をぶつける
行動に余裕があるなら霞の文書を長門を呼び3人で精読
210 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/26(日) 00:39:09.35 ID:GHupVqMj0
「ごちそうさま」

「美味しかったわねぇ」

空になった食器をお盆に纏めて、机の隅に移す。

ふと、昨日の会合から思っていた疑問を思い出し、南方棲戦姫にぶつける。

「…気になってることがあるんだけどさ」

「はい」

「出撃した時、偶に資源を回収してくることがあるんだ」

「もしかしなくても、君たちが作った物だよね?」

「正解〜」

ピースをして返す南方棲戦姫。なぜかどや顔付き。

「不必要な分は、陸に揚げたり輸送艦を使って不足している部隊に送ったりしてるのよ」

「そもそも、この戦争自体不毛な争いだから。敵に取られようが気にしないわ」

何というか、資源の分配等で揉めている上層部が愚かに思えてきた。

実際愚かだったのだろうが。

「それと、霞って子から書類よ」

「わっとと…。凄い数だな…。アイスとかを今度奢るかな」

手渡された書類を机に広げる。

「すまない、南方棲戦姫。長門を呼んできてもらえるか?」

「…あの人、今も寝ているわ。陸奥の言うことだから間違いないはず」

ワインを飲んだだけで、彼女がここまで寝たことは無かった。

――ずっと、働きづめだったのか。長門には迷惑を掛けるな。いつも…。

申し訳なさを胸に抱えながら、書類を精読していく。
211 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/26(日) 01:09:09.97 ID:GHupVqMj0
―――――――――――――――

深海棲艦合同訓練 各艦の懸念点と個別訓練プログラム(仮)

戦艦レ級

砲撃、雷撃、航空、対潜。どれを取っても優秀な艦だが、気分次第な上に遊んでしまう悪癖有り。

戦闘に対する意識を改める必要有り。早急に対応するべし。

個別訓練プログラム(仮)

以下略

―――――――――――――――

潜水ソ級

本人の戦闘への意識は悪くはないが、積極性が皆無。また、通信手段が無いためだと思われるが、協調性が低い。

深海棲艦との通信手段を確立させるように意見具申する。特に、潜水部隊との意思疎通があまりにも困難である。

以下略

―――――――――――――――

軽巡棲鬼

好戦的…積極性があるのは評価出来るが、周りへの配慮が無い点は危険。

最悪の場合、単艦で敵軍に突撃する可能性有り。注意を促すべし。

以下略

―――――――――――――――

南方棲戦姫

状況把握、配慮、いずれも良好。しかし、友軍と複数の敵を相手取る時の連携を友軍に任せがち。

混戦時は、判断に遅れが生じる場合有り。先ほど挙げた欠点が、より顕著に表れると思われる。

以下略

―――――――――――――――

戦艦水鬼

友軍への配慮が行き届いているが、積極性が低い。

友軍を守ることを優先するのも良いが、戦闘が長期化するため過度に行うのは望ましくない。

せっかくの高火力を無駄にしている傾向にあるため、今よりも攻撃に集中させるべし。

以下略

―――――――――――――――

深海双子棲姫

今回の合同訓練で、最も連携が危ぶまれる深海棲艦。二人だけの世界を創るが故に、戦闘も放棄しかねない。

友軍のことを殆ど気にしないのは危険な兆候。早急に、周囲と信頼関係を築かせるように。

そうしなければ、孤立して轟沈する可能性も否めない。味方を喪うのは勘弁願う。

以下略

―――――――――――――――

全体の方針(仮)

当面は、座学やミーティングを重ねて相互理解と知識の習熟、重要性の理解に努める。

ほとぼりが冷めた後に、実際に訓練することで更に重要性を理解させる。

但し、連携を精神的な理由で望まない艦娘、深海棲艦がいる可能性もあるため、予め通達をして本人の確認を得ること。

以上

―――――――――――――――
212 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/26(日) 01:25:58.78 ID:GHupVqMj0
「…凄い辛口だなぁ…」

「む…。私も少しは考えて動こうかしら」

懸念点は比較的短く纏められていた。

しかし、個別の訓練プログラムが非常に多かった。

年単位で行うつもりと思ってしまうくらいに。

「…とりあえず、最初の間は様子見かな」

「どう転ぶかが分からない以上、最初から全て決めるのは早計だ」

「…まぁ、この書類は非常にありがたいものよね」

言葉を肯定するために頷く提督。

欠点が纏められているのは、指導する側としてもやり易い。

優秀な娘だと改めて思う。

「通信手段をどうするかは明石と要相談か」

機械のことに関しては、明石の右に出る者はいない。

謎兵器を作ったのも明石だったか。

「しかし…。こうして見ると、連携させるのが如何に大変なのか分かるなぁ…」

「同じ艦隊で連携を取るのですら、大変だったはずよ。違う存在なら、尚更よね」

「うーん…」

戦闘については、陣形や戦術以外はてんで分からない。

細かい打ち合わせについては、本人たちに一任した方が良さそうだ。


暁よ。一人前の安価として扱ってよね。↓1 自由安価なのねん。
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 01:55:04.35 ID:ClDpX1qr0
提督がぶらぶらと歩いてたら白露型の水着姿あり組が深海組で水着姿ありのキャラに水着着せてた

提督は夏姫のあのケツを見たとかでww
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 02:03:03.77 ID:h6xXqkOq0
大きい紙に
連携の練習をおこなっていく事
これは皆で生き残るために大事であること
連携をしたくない人は今夜執務室に来てくれればお話し伺います
食堂に来ない人に会ったら伝えてください
と大書して食堂に掲示
215 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/26(日) 02:44:25.33 ID:GHupVqMj0
書類を封筒に戻し、机の引き出しに直す。

「俺はお盆を戻してくるよ。君は自由にしてくれ」

「分かったわ。適当に海でも泳いでくるわね」

体を伸ばして、海に潜る南方棲戦姫。

深海棲艦でも、ストレッチとかは必要なのだろうか。

扉を開け、食堂を目指す。食堂前までは基本的に一本道である。

「もう少し間取りを変えたら、住みやすくなってたと思うんだけどなぁ」

今更何を言おうと、変えることは出来ないが。

「…何やら騒がしいな。お酒でも飲んでる人がいるのか?」

食堂に連なる分岐路に着いたところで、声が聞こえる。

「…夕立と白露の声…かな。あとは…小さくてよく分からないな」

自由奔放な夕立がいるとはいえ、そこまで問題があることはしてないだろう。

そう考えた提督は、食堂に入るために右折する。

「………」

そこには、水着を着た白露、時雨、村雨、夕立、海風が。

更に、ノリノリで水着を着ている戦艦水鬼と空母棲姫、恥ずかしそうに着る港湾棲姫。

諦めたように着る集積地棲姫と、無表情でジュースを啜る重巡棲姫が。

潜水棲姫も水着を着ており、ビーチパラソルを肩に担いでいる。

「…何してるの」

口から出た率直な感想。

あちらからすると、提督がいることが予想外だったようで、夕立と戦艦水鬼、空母棲姫、重巡棲姫以外は慌てふためく。

「てっ提督!あの、僕はその、違うからね!」

「違うって何よ!村雨は…夕立が着たいって言うから仕方なく…」

「ノリノリだったのに酷いっぽい!?」

「…?なぜ恥ずかしいのだ?尻尾付き、分かるか?」

「さあ、分からないわ」

「うぅ…。恥ずかしい…。なんで鎮守府でこんな格好を…」

そして、全員の恰好を認識した提督は後ろを向く。

「おっと、逃げることはないじゃないか。ウブで可愛いなぁ…」

空母棲姫は、提督の首に腕を掛けて引き寄せる。

提督の背中に当たる双丘が、提督の心を削り取る。

「あ…その…。離れてくれると…助かる…」

「…女性経験が無いのか。提督なのに」

「…資格が無いからな。俺には」

中枢棲姫がいたら、速攻で昇竜拳をしてきそうな言葉を呟く提督。

興が削がれた空母棲姫は、提督から離れてセーラー服を着込む。

「…アホらしくなった。食器は片付けておく」

無理矢理手からお盆を取り、厨房へと空母棲姫は消えていった。
216 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/26(日) 03:13:05.69 ID:GHupVqMj0
「えっと…。どうして、態々こんなところで水着を?」

「ぽい!」

勢いよく手を挙げる夕立。何か言いたいようだ。

「深海棲艦の人たちも、水着を着てたっぽい!」

確かに、一六年の夏に行われた大規模作戦では、水着を着た深海棲艦がいるという報告があった。

「昔は敵だったけど、今は味方だから。だから、一緒に水着を着たかったっぽい!」

――なるほど、分からん。

一緒にお揃いの恰好をしたかった風なことを言っているのは分かるが、どうして、よりにもよってこんなところで着るのか。

そこが分からなかった。

「…夕立がいいことをしようとしたのは分かったよ。だけど、次からは場所を弁えような」

頭を撫でながら、優しく諭す。こんなことで一々怒鳴りつけるのも馬鹿馬鹿しいし、怒鳴るのは苦手だ。

「えへへ…。気をつけるっぽい」

「ぽい、じゃなくて気をつけてほしいなぁ」

口癖なだけだろうから、ちゃんと今度から守ってくれるはずだが。たぶん、きっと、メイビー。

「…港湾棲姫の腕の爪、外せたんだな」

「いや…これはその…」

妙に歯切れが悪い。後ろめたいことだったのだろうか。

「私たちは、ある程度は肉体を変えられる。過去に、マイナーチェンジ版と戦ったことがあるだろう?」

「…棲姫や水鬼とかのことか…?」

頷く戦艦水鬼。どうやら当たりのようだ。

「その場に合った肉体に変えているだけだ。今の私は、そちらで言う戦艦夏姫だな」

「私は重巡夏姫ね」

そう言いながら、尻尾…腹尾?で甘噛みしながら持ち上げる重巡棲姫。

尻尾持ちの習性の可能性が浮上してきた。痛くはないけどヌメヌメする。あと怖い。

「私は港湾夏姫…って、二人は逃げたの…?」

いつの間にか、残りの二人の深海棲艦が消えていた。

「一人はたぶん引き籠ってゲーム。もう一人は…水底で寝るんじゃないの?」

サラッと言う重巡棲姫。引き籠ってゲームって。ニートじゃあるまいし。

「…俺はもう行くよ。なんかその、ごめん」

そそくさと逃げていく提督の手を、戦艦水鬼は掴んで問う。

「おや、水着を着ている女性がこんなにいるんだ。何か言うことがあるんじゃないか?」

提督は、頬を赤く染めながらそっぽを向き、答える。

「…綺麗だよ、皆。直視出来ないくらいにね」

それを聞いた艦娘、深海棲艦たちは笑みを浮かべる。

「そうかそうか。綺麗…か…。フフッ」

「お、俺はもう行くな!」

手が緩んだ隙に、走って逃げる提督。

後を追うでもなく、皆はただ、余韻に浸っていた。


コミュターイム!(不定期)でザンス。

↓1〜3にコミュりたい艦娘((深海棲艦)を両方合わせて三人まで)と、彼女らとナニするかをオナシャス!センセンシャル!

※今回はこれで終了です。次回予定は日曜日だから今日です。同じ時間に始めると思います。お疲れ様でした!
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 04:56:04.81 ID:iiikVhObo
先程のワインで酔っちゃってる皐月を介抱
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 06:12:23.43 ID:VKbMg455O
そろそろゆっくりヲ級と2人でお茶しながらお話しはいかが?
今の時点で決まったこと、決心したこととか報告したいかなぁと
早いかな?
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 08:14:33.07 ID:h6xXqkOq0
一番問題が根深そうな双子姫
説得というよりは先ずは人となりをしって相互理解から
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 11:44:39.38 ID:sZdRSQbq0
ちょっと底が見えたなー
狭小で集まれる場所がほとんどないと分かってる拠点で平時に水着の見せ合いしてただけなのに馬鹿馬鹿しいからって理由で怒鳴りつけるの我慢したとか
効果的だと判断して反抗されないと思ったら怒鳴りつけたんだろうか
この病的に卑屈な童貞何かきっかけあれば反動でとんでもない暴君に生まれ変わる素質ある
221 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/27(月) 06:49:42.39 ID:+pM1Jlg0O
さあ書くゾ^〜と思ったら朝になっていた…。

な、何を言ってるか分からねえだろうが、俺も何をされたのか分からねえ…。

寝落ちだとか気絶だとか、そんなチャチなものじゃあ断じてねえ…。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。

すみません寝落ちしてました(土下座)。火曜日こそは、ちゃんと投稿します。すみませんでした(…。
222 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:38:04.76 ID:qCwL35SI0
>>220、あー…。文章を見たら、そう捉えてもおかしくないですね。怒鳴る云々は、過去が原因で基本行いません。

このDTはネガティブ過ぎて、自分にそんな資格ハーとか言い出すので…。今回は中枢棲姫さんの忠告がありましたが、忘れた頃にネガってくる。

ですが、暴君になるかと言われると…(目逸らし)。母親が死んで仲間が軒並み乙ったらあり得るかも…としか言えません。書き溜め分の投下です。

ちょっと幕間というか、後輩のお話も入れておきます。蛇足とでも思っておいてください。先輩は次回です。
223 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:38:48.51 ID:qCwL35SI0
某日 トラック泊地


「ラバウル基地の提督と仲が良いみたいだが、どういう関係なんだ?」

ライトで照らされた密室で、中年太りの男性が問う。

「どういうって…。先輩後輩ってだけっすよ。大将殿」

言葉とは裏腹に、少将――後輩提督――は鋭い眼つきで大将を見やる。

彼女は一つの疑念を大本営に抱いていた。

一定の戦果を常に挙げている先輩が、いつまで経っても少佐から昇格出来ていないのだ。

一年提督として勤務すれば中佐まで、二年なら大佐まで昇格するのを約束されているのに。

そして、先輩と連絡出来ないようになっている。

電話に至っては、電話番号そのものが消滅している不自然さだ。

――もしや、先輩は大本営によって消されたのではないか?

その疑念を確かめるべく、後輩は大将と駆け引きをしている。

「そうかそうか。…では、何か不審な点は無かったかな?」

「別に…。先月だって、普通に合同演習をしてご飯を一緒に食べただけですし」

水面下で行われる腹の探り合い。

「ところで、先輩と連絡出来ないんすけど、何かあったんですかね?」

一瞬、大将の口角が下がった。

それを見逃さなかった後輩だが、敢えて追及はしない。

木乃伊(ミイラ)取りが木乃伊になっては敵わない。

広がる沈黙の中後輩は、大将が口を開くのを待つ。

「…殉職したよ。まあ当然か。未だに少佐から上がれなかった能無しだ」

――先輩のことを知らないくせにほざくなっす。

胸に燃ゆる怒りは押し込めて、表面を取り繕いながら後輩は返す。

「殉職っすか…。かなり戦力はあったはずなんすけどね…」

「おや、知らないのか。あれは残存艦隊を全て出撃、轟沈させた前代未聞の大馬鹿野郎だったよ」

「その現場に偶然居合わせたんだが、滑稽だったよ」

「出世欲に駆られて、貴重な艦娘を喪うなど…。我々に譲渡してくれた方がまだ有効活用出来ただろうに」

「あははは…」

反吐が出そうになるが、何とか我慢する。

――あの人が出世のために艦娘を潰す?もう少しマシな嘘を吐くんすね。

今の言葉で、疑念は確信へと変わった。

――大本営が、いや、目の前の男こそが、先輩を謀殺した元凶だ。

いつか、然るべき時が来たら。

その時は、この男を。
224 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:39:28.20 ID:qCwL35SI0
「うぅ…。狭いとはいえ、なにも食堂で着替えなくても…」

せっかく二つの大浴場があるのだから、そちらで着替えた方が色々と良かった気がするが。

発育のいい娘が多かった先ほどの光景は、些か提督には刺激が強すぎた。

「司令官ー!良かった…やっと見つかった…」

ぜぇぜぇと息を切らす水無月。なぜ自分を捜していたのか分からない提督は、

「どうした?何かあったのか?」

と問い掛ける。対する水無月の返答は、意外とあっさりとしていた。

「あ、うん…。さっちんが酔ってるから、介抱してほしいんだ」

「…え!?皐月は結構お酒に強かったはずだけど…。あ」

そこで昨日、長門は一杯だけしか飲んでいなかったことを思い出す。

「まさか…。あのワイン一本を丸々飲んだんじゃ…」

「飲んでたね。少し前から」

いつの間にワインを貰っていたのだろうか。調査を頼んでから、長門はずっと寝ていたはずなのに。

だが、酔っている人を放置するわけにはいかない。

早く行った方が良さそうだが、まずは現状を確認しなければ。

「皐月はご飯を食べたのか?」

水無月は首を横に振りながら答える。

「ううん。何も食べてないよ」

とすると、お粥とかを作った方がいいか。お酒だけというのは非常に不味い。

「じゃあ、俺は簡単な食事を作ってから行くよ」

「分かった。こっちもさっちんに言っておくね」

勢いよく走り出す水無月。駆逐艦の娘はよく、あんなに元気に走れるものだ。

――俺は、本を読んでただけだったしな。…それが、あれの原因だったんだろうけど。

「ぐ…!う…!?」

よろめいた提督は、壁にもたれ掛かる。

「嫌だ…。嫌なのに…どうして皆は俺を…」

忌まわしき記憶。それは、ふとしたことで簡単に蘇る。

心の傷を治すには、それを乗り越えるか、違うもので塞ぐしかない。

「…大丈夫だ…。同じ目に遭うことは、今はないから…」

しかし今は、目を背けて誤魔化すことしか出来ない。

乗り越えられる心の強さが今の彼には無い。

既に彼の心は、何度も壊されているから。

たとえ癒えたとしても、傷ついた、壊れた事実は変わらない。

その傷は確かに、提督の心を蝕んでいる。
225 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:39:58.34 ID:qCwL35SI0
厨房に移動し、調理を始める。

本当に簡単な料理、お粥を作っているだけである。

だが、この系統の料理が最も、提督が得意であり、思い出がある料理だ。

母親を看病する時は毎食、多少は味付けを変えていたが同じ物を作っていた。

体に染みついているそれは、まさにルーティーンのようで、手際よく調理を進めていく。

「…これくらい、かな」

土鍋いっぱいに入ったお粥。

今の皐月がどれほど食べるのか分からないので、なるべく多目に作っておいた。

冷めないうちに(すぐ冷めるような物ではないが)皐月へと届けるために、提督は小走りで向かう。

開かれたドアから中を見ると、二段ベッドの下の方で布団から顔を出す皐月と、隣で水を注いでいる水無月が。

「おまたせ皐月、水無月」

「あっ、司令官。水無月は行くね。ごゆっくり〜」

そそくさと退散する水無月。心なしか、悪戯をしている子供のような笑みを浮かべていた。

「…?それより皐月。お粥を作ってきたんだ。食べるかい?」

隣の椅子に腰を下ろす。すると、皐月は口を大きく開く。

「ん。ほ〜らしれいかん〜。早く食べさせてよぉ〜」

いつもとは違い、まるで甘えるような声を出す皐月。

戸惑いつつも、提督はお粥を匙に取り、息を吹き掛けて食べやすいように冷ます。

「あ〜…んむ…♪」

それを満足そうに頬張る皐月が何だか新鮮で、提督も、口を開けては入れ開けては入れを繰り返す。

あっという間に、土鍋いっぱいのお粥を平らげた。
226 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:40:37.97 ID:qCwL35SI0
「えへへ〜…。しれいかんが、分身してる〜」

ゆらゆらと揺れる皐月は、メトロノームのように見える。

皐月は、揺れながら提督に抱き着く。

「本物は捕まえたよぉ。ぎゅー…♪」

頬を紅潮させながら、皐月は顔をお腹にうずめる。そして、先ほどとは打って変わって、弱々しく口を開く。

「しれいかん…。ボクたちを置いて行かないで…。一人に…しないで…」

それは、純粋な願い。普段は奥に押し込んでいる、皐月の本心。

それがポロッと、お酒によって緩くなった心の隙間から出てしまった。

――いや、安心したから、の方が正しいのだろうか。

少しずつ、抱きしめる力が強くなる。返答を待っているのだろう。

提督もそれに応えるように、皐月を抱きしめる。

「…置いて行かないよ。そんなこと、してたまるか」

一度、孤独を味わわせてしまった。だから、次も味わわせるわけにはいかない。

「何があっても、俺はもう君たちの前から消えない。だから…」

「だから…?」

――君たちも、いなくならないでくれ。

その言葉を聞いた皐月は微笑み、静かに寝息を立てる。

解放された提督はもう一度、皐月を優しく抱きしめ、一言呟く。

――おやすみ、皐月。

そして、音を立てることなく、部屋を後にした。
227 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:41:07.58 ID:qCwL35SI0
土鍋を片付けた提督は、食堂の机を見渡す。

そこでは、深海双子棲姫が仲睦まじく談笑していた。

一見、ほのぼのとした雰囲気が流れている。

しかし、二人の目には、お互いの姿しか映っていない。

大井と北上たちと同じように見え、全く違う。

彼女らは、本当に『自分たち以外はどうでもいい』と思っている。

霞が提出した書類を思い出す。

―――――――――――――――

早急に、周囲と信頼関係を築かせるように。

―――――――――――――――

過去の行いを鑑みれば、拒絶されるのは目に見えている。

昨日の握手だって、彼女らからしたら、他の人がしていたから仕方なくやった、程度の認識だろう。

――それでも、関わらないといけない。

これからは仲間なのだ。提督だって、仲間を喪う目には二度と遭いたくない。

だから、まずは理解する。

彼女らがどういう人なのかを。それからでも遅くないはずだ。

まずは相手を知り、そして分かり合う。

――きっと出来る。

そう信じた提督は、腹を括って声を掛ける。
228 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:41:37.98 ID:qCwL35SI0
「…誰?邪魔しないでくれる?」

冷たい視線が、提督の全身を突き刺す。

やはり、その目には提督は映っていない。目の前にいるというのに。

「…邪魔したいわけじゃないんだ。ただ、君たちのことを知ろうと…」

刹那、黒い方が襟を掴む。

「…忘れたわけじゃないから…!あなたが…あなたが私たちを傷つけた…!」

実際に攻撃をしたのは艦娘だ。

だが、その命令を出したのは提督だ。

提督がそんな命令を出さなければ、彼女らが傷つくことは無かった。かもしれない。

「罰は受けるさ…!それだけのことを君たちにした…」

「だけど…その上で君たちのことを知りたいんだ…!」

「はぁ!?私たちのことを知って何になるのよ!」

「仲間…だから…。昔は敵だったとしても…今は違う…から…」

襟を掴む手が固まる。同じように、二人は硬直していた。

「何言ってるの…。今は味方でも、過去は消えないでしょ…?」

白い方が口を開く。

「そうよ…。あの悲しみが…苦しみが消えるわけじゃない…!」

忌々しげに、黒い方も同調する。

「そうだよ…。過去が消えることはない…。でも…!」

「それでも…!君たちだって大切な仲間なんだ…!喪いたく…ない…んだよ…」

立場は違えど、共に歩む者たち。

それを喪うのは、辛いものだ。

喪う怖さを、痛みを知っているから、提督は動いた。

自分を拒絶する二人を、理解しようとした。

「…バカみたい。私たちに話しかけようって」

「…でも、あなたみたいなバカは一人しかいないでしょうね」

二人は顔を見合わせ、一緒に口を開く。

「「あなたのこと、憶えたわ。おバカさん」」

そして、微かに笑い、二人は水底へと消えた。
229 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:42:22.29 ID:qCwL35SI0
深海双子棲姫が消えた方向を見る。

何の変哲もない、廊下へと続く通路。

その先にある、ただの水の壁。

「知ることは出来なかった…。…けど憶えてもらったのなら…前進した、かな」

一般人Aではなく、提督として。二人の脳に、はっきりと記憶された。

それは、確かな進歩だった。

「ふふ。凄いね提督は。あの二人に憶えられるなんて」

「わひゃっ!?」

ピトッと首筋に当てられる冷たい手。

堪らず、提督はビクンと飛び跳ねた。

「ふふふ…。びっくりした?」

子供のように笑うヲ級。右手にはペットボトルが握られている。また、触手にはコップが。

「久しぶりに、お話がしたいんだ。大丈夫かな?」

「え?ああ。大丈夫だけど」

その言葉を聞いたヲ級は満面の笑みを浮かべ、席に座る。

それにつられて、提督も前の席に座る。
230 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/29(水) 03:43:00.17 ID:qCwL35SI0
「どうぞ」

「ありがとう」

コップに注がれた緑茶。市販のラベルが貼られているところ、どこかから買ってきたものなのだろう。

「それで、どう?ここの生活には慣れた?」

「あ、うん。ちょっと寒いくらいだから大丈夫」

「ふぅん…。私がギュッてしたら温かくなるかな?」

「それはちょっと…」

「ふふ」

何気ない会話が暫く続く。

その後で、提督は決心したこと、これからのことを話す。

「…これからさ、どうするか決めたんだ」

「へぇ。どんなこと?」

「…まず、深海棲艦の人たちを理解する。これは昨日言ったけどね」

それでも、それだけ本気なのだと伝えるためには必要だ。

だから、何度でも言う。

「次に、他の提督…俺が信頼している人と交渉して、補給線の確保をする」

無自覚の兵糧攻めを喰らっているのと同義なこの状況。

どうにかしなければ、このままではジリ貧だ。

「その後どうするか…はまだ決めてないんだ…。先に何でも決めるのはどうかと思って…」

先に全ての行動を決めてしまうと、不測の事態に対応出来ない。

そのため、当面の目標を立てて遂行し、目標に到達出来たら、その時の状況を判断してまた新しい目標を決める。

このスタンスで進めていくことを決めている。

「…うん。いいと思うよ」

「私たちがいくら口出ししても、最後に決めるのは提督だから」

「…私は、何があっても提督について行くけどね」

この純粋な心に、提督は救われた。

だから、それに報いなければならない。

信じてくれる彼女たちのために。


↓2 自由安価です。

※短いですがこれで終了です。水曜日に更新できなかったら、土曜日になると思います。お疲れナス!
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/29(水) 07:23:03.10 ID:tHJrt5+nO
kskst
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/11/29(水) 11:21:52.80 ID:U6Y36J8E0

最初はあんたはクソ提督どころかへタレ提督と罵るが
でもあんたは私みたいなひねくれ者を見捨てずにいてくれた
だから逃げたいのなら逃げてもいいのよ、協力もしてあげる

逃げたら恨まれるけど恩があるから一緒についててあげてもいいのよ
ここに残って女に囲まれて堕落してもいいのよ。善ではないがしれでもあんたを受け入れてくれる子もいるだろう
ただ、どの道を選ぶにしてもちゃんと決断してよねと言う
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/11/29(水) 11:26:27.81 ID:U6Y36J8E0
全員ではないがそれでもあんたを受け入れてくれる子もいるだろう
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/29(水) 11:54:44.56 ID:ZGp/e3EA0
一番修理が必要なのは提督だな
メンヘラとDT拗らせてるのが面倒くさすぎるw
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/29(水) 20:13:13.90 ID:oBNumAFZ0
修理ってかもう解体必要なレベルだがな
こんな自分でも慕ってくれるヲ級や長門達に少しでも感謝し報いたい気持ちあるならとっと覚悟決めろと
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/29(水) 22:28:42.37 ID:HecSY4QF0
鎮守府運営かと思ったらまさかのメンヘラ男の介護スレだしな
ちゃんと行動させようと安価取っても溜息ものの行動になってここまで共感も応援もする気が湧かない主人公も珍しいw
このまま先細る補給とともにここでゆっくり朽ち果てさせたほうが良かったかも知れんね
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2017/11/30(木) 01:31:37.00 ID:ZD1wNljt0
その辺は安価で遠隔操作する楽しみはあるかな
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 00:53:50.46 ID:aeH388b50
確かに優しさや謙遜は美徳だが提督はそれをはき違えてるただのダメ男じゃねえか
ヲ級達はそんなダメ男に釣られて貢ぐ(養う)哀れな女と変わらないし、盲信に近いものすら感じる
これ程未来が暗い組織も珍しいよ
239 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/03(日) 02:20:04.76 ID:HKpSPRui0
>>234、DTとメンヘラが備わり最強に見える。なお。

>>235、流石に、何度もしっかりするように言われてるのでちゃんと動きます。これでネガってたら…ね…?

>>237、やっと始まる鎮守府運営。提督の性格を拗らせすぎたと後悔なう…。

>>238、提督自身は文句なしのダメ人間ですね。ヲ級と艦娘たちが提督について行くのにも、一応理由がありまして…。

凄い提督がディスられてて若干ゃ草。気持ちは分かりますよ、ええ。今回はちょっと無理そうです…。

完成した中将編だけでも投下します。火曜日なら再開出来るはず…。
240 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/03(日) 02:20:47.54 ID:HKpSPRui0
二〇一X年 ある日の舞鶴鎮守府

「王手、です」

「ふむ…。では、私はこれを使うか」

パチリと、駒を打つ音が部屋に響く。中将と提督は、将棋に興じていた。

「う…。どうすればいいんだ…」

提督が王手をかけて十手後、逆に提督が王手をかけられていた。

「…参りました」

「悪くはないが、視野が狭いというか、先入観に囚われているというか」

中将は将棋盤の上の、王手をかけた桂馬を手に取る。

「…物事の解決方法は一つじゃない。先ほどだって、あの王手から抜け出すことも容易だったし、王手をお前がかけた時も勝っていた」

「正しいと思ったことでも、それ以外に手段が在るのか考えろ。それが、起死回生の一手となり得る」

「…承知しました」

深々と頭を下げる提督。

それを見て、中将は桂馬を戻す。

「…して、他にも将棋を指す人はいないか?」

「…いえ、存じ上げませんが…」

右手で頭を押さえながら、中将は口を開く。

「最近、指す相手がいなくてな…。提督の存在はありがたく思っている」

「無論、提督のことも評価はしている。度々、提督の戦果を耳にするぞ」

「嬉しい限りです」

頭を下げる提督だが、それを見て中将は睨む。

「…謙遜は美徳だ。だが、謙遜と卑下は違う。そこを理解しろ」

「…理解しています。ですが、今更変わりはしませんし、変えられないものだと思います」

――何が、提督をここまで悲観的にさせたのだ?

そんな疑問が浮かぶが、悟られないように隠す。

「…もういい。ラバウルまで距離はあるんだ。養生して帰ることだ」

「はい。失礼します」

一人になった和室で、中将は頭を抱える。

――どうして、お前はこうも自分を卑下するのだ。

中将は、部下一人矯正出来ない未熟さを恨めしく思った。
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 09:58:27.31 ID:819rPEmb0
途中で切れてるがどうした?
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 11:02:30.15 ID:mlH+xHg50
よく読め次は早くても明日だ
243 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 00:03:47.48 ID:0UmsHVeT0
お ま た せ 。残業ばっかりで辞めたくなりますよ〜仕事〜。saikaisystem,stand by.
244 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 00:07:06.15 ID:0UmsHVeT0
「クソ提督、今話せる?」

椅子に座っていると、曙が声を掛けてきた。

「うん。大丈夫だけど」

「じゃあついてきて」

そう言って、曙は提督の手を引いて歩く。

座ったままだった提督はこけかけるが、何とか態勢を整えて歩き出す。

曙が連れてきたのは、食堂の片隅。垂れ幕によって隠されている場所。

「…ここなら、見られないわよね」

チラリと提督は後ろを見る。壁には、何かで削られたような跡が。

しかし、それが曙に関係しているものではないだろう。

「ねえクソ提督。あたしが鎮守府に配属された時のこと、憶えてる?」

「…ああ」

それは、鎮守府正面海域の脅威を排除した時のこと。

それを称し、大本営から一人の少女が配属された。

『綾波型駆逐艦の曙よ。本日付でここの所属になるわ』

海軍式の敬礼をする曙。

『俺がこの鎮守府の提督だ。まだ未熟で頼りないが、それでも良ければよろしく』

それに応え、提督も敬礼をする。

『…あんたの方が上官なんだから、下手に出るのはおかしいでしょ』

提督の物言いに嫌悪感を抱き、曙は物申す。

『まだ未熟だからな。艦としての記憶を持つ…経験がある君たちの方が上のはずだよ』

『呆れた…。クソはクソでも、色々とアレな方のクソ提督じゃない』

『あはは…。否定は出来ないかな』

罵倒されたというのに、反論もせず受け止めた提督に、曙は苛立ちを募らせる。

『あー…もうっ!少しも言い返さないなんて、クソ提督じゃなくてヘタレ提督じゃない!』

『もういいわ!あんたと話していたら、こっちまでナヨナヨしてくる!』

強くドアを閉めて、曙は出ていった。

『凄い罵倒されたなぁ…。俺が未熟だから、なのかな』

それに対し、提督はどこ吹く風、とでもいうような感じだった。
245 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 00:07:57.43 ID:0UmsHVeT0
「懐かしいなぁ…。あれから四年…か」

「…普通に考えたら、初対面で罵倒するあたしなひねくれ者、見捨てるはずなのよね」

感傷に浸るように零していく曙。その表情からは、どういう感情なのか読み取れない。

「罵倒には慣れてるよ。殴られるよりはよっぽど楽だし」

提督の発言に目を見開くが、意識を戻して、曙は話を続ける。

「…提督の過去は知らないわ。…だけど、あんたはあたしを見捨てなかった。あんなことを言ったあたしを、一人の人間だと言ってくれた」

「それは確かな、変えようのない一つの事実よ」

「まぁ…。感謝はしてるわ。一応。たぶん他の人も同じよ」

そして、曙は提督の顔を掴む。

「いきなりこんな状況に直面して、どうしても逃げたい時もあると思うわ。その時はそうして構わない」

「あたしも、その時は手伝ってあげる」

提督は、その提案を拒む。

「…それは駄目だ。皆に申し訳が立たない」

「…どうしても、だから。あくまで、最後の手段よ」

「逃げたら、皆から恨まれるでしょうね。だけど、恩があるし…。その時は、一緒にいてあげても…いいわよ…」

語尾が弱くなりながらも言う曙。一回目を背けながらも、視線を戻して再度口を開く。

「それに、何もしないでここで堕落してもいいわ。全員ではないでしょうけれど、受け入れる子もいるはずよ」

――そういう風に出来ているのがあたしたち、だし。

咳払いをして、どうにか押し込める曙。

「コホン!…まぁとにかく、どんな道を選ぶかはクソ提督の自由」

「だけど、選ぶなら後悔しないように、自分の意志で決断すること。いい?」

きっとこれは、彼女なりの励ましだろう。

いつまでもうじうじしてる自分への。

――何度腹を括ってるんだって話だしな。俺も。

腹を括ってばかりで、行動に起こしていない。

そんな自分とはさよならをしなければならない。

それを、そんな簡単なことを自分は出来なかった。

だけど。

――これほど皆に言われて、それが出来ないとしたら、それこそ末代までの笑い者だ。

「…大丈夫だよ、曙。迷惑を掛けたな」

「ふん…。手の掛かる提督の下に就いて大変ったらありゃしないわ」

そう言う曙の顔は少し楽しそうで。

「あはは…。俺も精進しないとな。人間として」

「まぁ、期待しないで待ってるわ。マトモな人間になるところを、ね」

手を振って垂れ幕の外に出る曙。

――別に、逃げてもあたしとしては良かったんだけど。

思わず口から零れた言葉の意味を思い出し、曙は顔を少し赤く染めながら、風呂へと向かった。


アンカニング…ラァァァァァブ!↓1 自由安価にゃしぃ。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 00:21:25.93 ID:LcAcwjYd0
曙の件以降も似た様な事はあった
早霜BRR再開で顔を出して少し飲んでいたら
早霜と従業員の不知火も似た様な事を言ってきた
逃げてもいい、堕落してもいいと
247 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 01:09:00.54 ID:0UmsHVeT0
曙が去った後、食堂に再度顔を出すと、せっせと荷物を運ぶ不知火の姿があった。

「おや、司令。そのようなところで何をしているのでしょうか?」

「ん?ちょっと駆逐艦の娘と話をして、な」

うんうんと頷く不知火。納得したのだろう。

「それより、その大荷物はどうしたんだ?」

「諸々の許可を頂いたので、早霜のバー再開のための物資搬入です」

「…というと、間宮さんや長門たちの許可かな?」

こくりと頷き、不知火は口を開いた。

「はい。提督の許可を頂かなかったのは詫びます。申し訳ありませんでした」

「いや、別に駄目とか言うわけじゃないけど…。娯楽とかは必要だろうし…」

「早霜としても、再開の要望があったからそれに応えたのだそうです」

鳳翔のところで、談笑しながら酒を飲むのも悪くなかったが、個人的には、静かに飲むのが好きだった。

提督にとって、早霜のバー再開は結構嬉しいことだ。

「そうだ、司令も一杯どうですか?久しぶりに飲むのですし、早霜もきっと喜ぶでしょう」

「そっちが良ければ、是非そうさせてもらうよ」

「では、不知火についてきてください」

不知火の後を追い、宿舎を進む。

階段を何度も上がり、宿舎の最上階へ。

通路の最奥に、それはあった。

ドアには『OPEN』と書かれた看板が掛けられている。

「チッ、手が塞がってるから開けられないわね。すみません司令、開けてくれますか?」

「分かった」

ゆっくりドアノブに手を掛け、引く。

カランカランとベルが鳴り、扉が開く。
248 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 01:41:59.08 ID:0UmsHVeT0
「不知火さん、お疲れ様…あら、司令官もですか?」

「ええ。搬入中に会ったから連れて来ました。不知火に何か落ち度でもありますか?」

「いえ…問題ないですよ…。うふふ…」

カウンターにタンブラーが置かれ早霜は、不知火の木箱からカシスリキュールを取り出す。

タンブラーに氷を入れ、リキュールを注ぐ。

次に、炭酸水をリキュールの約二倍ほど注いで、マドラーで丁寧に、上下に混ぜてからサッとかき混ぜる。

「ごめんなさい。ロックアイスがあれば、もう少し上等な物が作れるのですが…」

提督は一口、カシスソーダを口にしてから答える。

「…いや、充分美味しいよ」

「良かったです…」

安堵したように、早霜は息を漏らす。

そして、どこか暗い雰囲気を漂わせて早霜は顔を近づける。

「司令官…。二日前と比べると、明るくなりましたね…」

「…色々と発破を掛けられてね。流石に、これ以上悩んでもいられなかったんだ」

「そうですか…」

早霜はカウンターから出て、提督の隣の椅子に座る。

「そうやって、前を向いて進むのもいいと思います…」

「ですが、どうにもならない時が来るかもしれません…」

ポツリポツリと言葉を発する早霜。その目は、髪に隠れて窺えない。

「その時はどうぞ、私たちを頼ってください。共に、ここから逃げ出しても構いません…」

「司令官が、私たちに縛られることもないのですから…。私は、喜んで司令官を受け入れますよ。ふふ…」

そう言った早霜は顔を上げる。その潤んだ瞳に吸い込まれそうで、思わず目を背ける。

「不知火も同意見です。不知火たち艦娘は、司令のために尽くすように作られた存在です」

「何があってもこの命、司令に捧げましょう」

そう述べる不知火の瞳は、どこまでも真っ直ぐに。

感情が本当にあるのか考えさせるほどに、それは真っ直ぐだった。

「…生憎、君たちの中で誰かを棄てられるほど、俺は精神がタフじゃなくてね」

「こうなってしまったなら仕方がないよ。最期まで共に進むさ。無論、全員でな」

少しの間続く沈黙。

当然、それは簡単に崩れた。

「そうですか…。何があっても…私は司令官を見ていますよ…。たとえ、この身が朽ちても…ふふふふ…」

「下す命があれば、いつでもお呼びください。不知火が完遂致します」

「…君たちこそ、俺に縛られることはないんだよ」

「そういう存在ですので、仕方がありません」

不知火の瞳に、提督が映る。

それは揺れることなく、ただ真っ直ぐと。


安価戦隊、出撃します!↓1 自由安価でげす。
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 02:03:10.18 ID:hPMY6le10
明石を訪問
水中通信機開発指示
深海化したことで艦娘に起きた精神的肉体的変化の所見を報告させる
250 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 03:01:39.96 ID:0UmsHVeT0
酒を飲み終え、外に出た頃には、時間は夜になっていた。

不知火たちはバーで客を待っているつもりらしく、既に食事は終えているとのことだ。

「目下の課題は…と」

メモ帳を取り出し、問題を箇条書きしているページを開く。

「…水中での通信手段が欲しいって霞は書いていたな。明石に打診してみるか」

今の時間は、食堂が賑わってる頃だろう。

――もし明石がいなくても、他の娘から情報を得られるはずだ。

そう思い、提督は食堂へと向かった。

「あれ?提督もご飯ですか?」

「夕張か。明石がどこにいるか知らないかな?」

「うーん…。最近はずっと工廠に籠りっきりですねぇ」

どうしてかと提督は問うと、夕張は待ってましたと言わんばかりに熱弁する。

「それはですね!こんな体になってからというもの、原理不明の謎兵器が偶に開発されるようになったんですよ!」

「それで、今は少し前に開発された粒子内蔵魚雷のメカニズム、特殊効果の解明に勤しんでいるんです!」

「そもそも、粒子が散布されることで通信が妨害されるということは、粒子が持っているであろう何かしらの電波による干渉も考えられて…」

「も、もういいよ…。正直何を言っているか途中から分からないんだ…」

「あー…。提督文系ですからね」

こんなことなら、兵器関連の文献も読み漁っておくべきだった。

そんなことを思う提督に、夕張は再度口を開く。

「とりあえず、明石とお話したいなら工廠に行ってください。ご飯も持って行ってあげてくださいね」

「あ、場所とか分かります?執務室辺りの廊下なんですけど」

「場所は何とか、ね。ありがとう」

軽く手を振って、夕張の前を歩いていく。
251 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 03:36:47.26 ID:0UmsHVeT0
「…なるほど。何かの微粒子が崩壊することで出来てるのか…」

「フォトン…は理論上崩壊しないしなぁ…。でも、そこを深海棲艦の不思議パワーでどうにかしてると考えれば辻褄が…。ううむ…」

魚雷の内部にある小さな発生器を分解して、頭を悩ませる明石。

未知の物質、テクノロジーを前にして、技術者の好奇心が刺激されていた。

「…まあいっか。性質の方は…通信妨害と、重力等の影響の減衰、物質に付着すると表面を滑面化させる…かな。何だこれ…」

「ともかく、一旦保留かなぁ…。設備が足りない…」

椅子にもたれ掛かる明石は、水を一杯飲み干す。

コンコンコンと工廠中にノック音が響く。

「はぁーい。入っていいですよ〜」

「お疲れ様、明石。晩御飯にしようか」

「おおぅ。提督、気が利いてますね〜」

このこの、と肘で提督を小突く明石だが、疲れているのが目に見える。

「とりあえずご飯だ。あと、しばらく休憩しような?クマが酷いぞ」

「あはは…。提督に言われるとは、世も末ですね…」

「普段は逆だったからなぁ…」

感傷に浸る二人。思えば、随分と昔のことに思える。

「それで提督、ご飯を届けに態々来たわけではないでしょ?」

「え?ああ。水中用の通信機を開発出来るかな?ってね…」

「…なるほど。深海棲艦と共に戦う以上、有って損は無いですからねぇ」

「二日ください。その間に終わらせます」

「自分のペースで大丈夫だよ…」

工作艦としての意地です、と意気込む明石。

悪い方向に向かないといいのだが。

「あ、それと、私たちの精神、肉体の変化を纏めた書類がそこの机に」

「…随分頑張ったようで」

「えへへー。今度パフェ奢ってくださいねー」

「それくらいなら喜んで」

何気ない会話をしながら、書類を取る。

そこにはこう記されていた。

―――――――――――――――

艦娘の深海棲艦化による変化


身体的変化

細胞レベルで深海棲艦に近づいており(同じではない)、耐性が上昇している。有志の検証によると、マグナム、日本刀までなら耐久可能。

代償として、艤装への適合性が著しく低下。深海棲艦の細胞を艤装に組み込んで、無理矢理装備させている現状である。

また、艦娘からの性質反転が起きていることが確認されている。具体的には、艦娘の加護の無力化である。

精神的変化

大きな変化は見られないが、肉体が変わったことに認識が追い付かなくて、不安定になっている娘がいる可能性がある。

なお、全体的な傾向としては、生命への執着心が損なわれている。(提督のことは皆信じてますよ!大丈夫!by明石&大淀)

―――――――――――――――


私も、新しい安価欲しいなぁ〜。きらきら…にひっ!↓1 そ の た め の 自 由 安 価

※これで今回は終了でごわす。次回は水曜日だから今日!てなわけで皆さん、オツカレサマドスエ!
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 08:26:12.61 ID:NIIZ8vFJ0
資源の運搬をしていた潜水艦らが戻ってきた
鎮守府時代ではオリョクルーは苦しい時以外はしない様にしてたが
必要な時には酷使してたのが心苦しい
だが今の彼女らは疲労があっても明るい
大本営から解放されて本当の意味で提督と自分達の為に頑張れるのが嬉しいからだ
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 20:56:58.57 ID:GSMekr4P0
なんか気持ち悪い安価とる奴が常駐しだしたな
npcの反応まで事細かに指示しまくってら
254 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 23:57:04.47 ID:Dint8LZe0
>>252>>152で書いてるけど、オリョクルは一度も実行してないんやで。それと、反応まで指定されるのはこちらとしてもつらたん…。

今回は、資材の搬入の部分だけ採用させていただきます…。
255 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 23:58:00.18 ID:Dint8LZe0
書類を見て、一つ気になることがあったため、それを問う。

「執着心が損なわれている…ってどういうことなんだ?」

「んー…」

人差し指を唇に当てて、黙考する明石。数秒して、口を開いた。

「何というか、『死ぬのが怖くない!』って感じですかねぇ。一度経験したから、なのかもしれません」

飛び込みとかと同じ感覚なのだろうか、と提督は思う。

したことは一度も無いのだが。

しかし、良くない傾向だとも思う。

このままでは、自分の命を軽視した行動を取りがちになってしまいかねない。

「…だけど、死んだらそこで全てが終わるんだ。…しないでくれ。絶対に」

「分かってますよぉ。恐怖心が無くなったりしただけで、死にたいわけじゃないですし」

「…でも、恐怖心が無いのか危険なことだよ」

恐怖心が無いということは、どんなに危険なことでも、躊躇わずに実行出来るということだ。

死ぬ気がある無いとかは関係ない。そんな行動を起こせることが問題なのだ。

「…まぁ、恐怖心があるのは、自己防衛のためらしいですしね。無いと困ることもあるかもしれませんね」

「恐怖心があったが故に、人間は進歩してきた。それを失うのは、不味いことなんじゃないかな…」

死ぬのが怖いから医療が発展した。夜が、暗闇が怖いから、光源に関する技術が確立した。

――殺されるのが怖いから、敵を殺す武器が造られた。

「…提督の言うこと、私は良く理解出来ないですけど。だけど、心配してくれてるのなら、嬉しいですね」

「心配だよ…。もう二度と、喪いたくないから…」

前に進む意志は持っているが、それとこれとは別である。

大切な人を喪うことの辛さ。それを忘れてしまっては、人として終わってしまうだろう。

「…だから、そんなことが起きないように、俺が頑張らないといけない」

「それが、俺なりに考えたケジメでもあるんだ」

「…提督が望んだことなら、私は何も言いません。決断することは提督に、人間にしか出来ないことですからね」

それは、自分という存在が兵器でしかない、と暗に示しているようだった。

「…暗い話はやめです!やめや」

「ゴーヤ!戻りましたー!」

「なの!」

暗い雰囲気をぶち壊す潜水艦組、爆誕。
256 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/06(水) 23:58:39.91 ID:Dint8LZe0
「い、イクちゃんたちおかえり!どれくらい手に入った?」

一人一個ずつ抱えているドラム缶。心なしか、軽く見える。

「えーっと…。燃料は600、弾薬は100あるかないかくらいなのね」

「鋼材とボーキは?」

「ラバウルの廃倉庫内はもうダメでちね。廃棄された油田も、そろそろ枯れそうかなぁて…」

「むむむ…。やはり、他人が使った後の物だから期待は出来ないですね…」

カリカリと家計簿に記載していく明石。

資源の収支を家計簿に書く人なんて、彼女しかいないんじゃあるまいか。

「あー…。深海棲艦の人たちは、資源を自力で作ってるらしいけど…。貰ってこようか?」

「駄目です。その資源は彼女たちに使わせてください。自分たちの分は、自分たちで賄わなきゃ」

「深海棲艦の人たちにも申し訳ない…と、はっちゃんは思います」

「なんだかんだで頼ってばかりでしたから。これくらいは自力でどうにかしないと、彼女たちに悪いです」

そこまで言うのなら、こちらも黙るしかない。

最悪の場合は、こっそり頭を下げて融通してもらおう。

「そういえば、資源はどれくらいあるんだ?」

「んーと。大型建造をフルで五回分ですかねぇ。私たちの出撃分は、それぞれでどうにかしているので減らないですよ」

ざっと35000。それが我々の全資源。

相当上手くことが運んだ中規模作戦を突破出来るくらいだろうか。

どこかの提督が『資源は二万で充分なのよ』とか言っていたが、その程度で済むわけがない。

「…出撃するにしても、まだ警戒網はあるだろうから無理だしなぁ…」

「今は潜伏期間ですから。はっちゃんたち的には、そっちの時間の方が長いかもですね」

「まぁ、焦ってもいいことは無いしね。出来ることを進めていくしかないか」

鎮守府内でも出来ることは案外あるものだ。

無為に過ごすくらいなら、それをしていく方がいいだろう。


安価隊、発艦はじめッ!↓1 じゆーあんかちほー
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/07(木) 01:51:47.07 ID:xHPB0kGm0
ぽっぽちゃんと遊ぶ
258 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/12/07(木) 08:29:18.03 ID:IrPx8tpSO
ああああ!寝落ちしてたァァァァァ!すみません金曜日再開です(自害)
229.64 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)