P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL3

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 21:17:09.88 ID:f99GTpNXO
アイマス×FF4 最終決戦編です

原作設定拾ったり無視したりご都合主義があったりオリジナルの設定があったりします

今度こそ完結します(おそらく)



1スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」

P「ゲームの世界に飛ばされた」 (HTML化済み)
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405694138/


2スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」2

P「ゲームの世界に飛ばされた」2 (HTML化済み)
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410099092/


3スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL

P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL (HTML化済み)
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422798096/


4スレ目 P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450963080/



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509884229
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 21:28:45.11 ID:f99GTpNXO

前スレ最終時点の各キャラの現在位置


地下1階…真、雪歩

地下5階…亜美、真美

地下7階…響、伊織、やよい

地下9階…千早、美希

地下11階…律子、貴音

地下12階(中心核)…小鳥、P

次元の狭間…春香

不明…あずささん

ミシディア…高木社長とゆかいな仲間たち


3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 21:31:08.56 ID:f99GTpNXO
とりあえず立てました
続きは近いうちに
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 21:57:37.39 ID:6onohx9R0
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 22:07:59.44 ID:9Wy9FnHHO
乙!前スレ埋めた方がええで
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 17:45:45.89 ID:4fTR3iH1O
すみません、前スレ埋めた方がいいのは何か理由があるんですかね?
あんまり詳しいルール知らないもので…
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/26(日) 17:47:52.65 ID:4fTR3iH1O
ー 月の地下中心核 ー



小鳥「………」

P「………」



P(アイドルたちが地下渓谷へやってきて随分経った。小鳥さんの不思議な力で俺も途中までみんなの様子を見ていたけど、みんなの戦いは本当に頼もしいものだった)

P(『そろそろ誰か来る頃だろう』という音無さんの言葉でみんなの様子を見るのは中断し、こうして俺たちはみんなを待つことにしたんだけど……)



小鳥「誰が一番に来ると思います?」

P「原作通りだと律子と貴音ってことになりますよね。ちょうど二人とも直前まで下の方の階層にいましたし」

小鳥「確かに可能性は高いですね」

小鳥「………」


P(最終決戦を目前にして、音無さんが少し緊張しているように見える)

P(当たり前だよな。ラスボスという大役を演じなければならないプレッシャーとか、ひとりで13人と戦わなくちゃならない恐怖とか)


8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 17:49:43.88 ID:4fTR3iH1O

小鳥「……あの、プロデューサーさん。最後の戦いが始まる前に一つだけお願いがあるんですけど……いいですか?」

P「ええ、構いませんよ。俺に出来ることなら何でも言ってください」

小鳥「さっき話してた『裏ルール』なんですけど、みんなにはまだ話してないんですよね?」

P「……はい、たぶん社長も知らないと思います。現時点で知ってるのは、俺と音無さんだけですね」

小鳥「じゃあ……それは最後までみんなに黙っていてもらえませんか?」

P「え……?」

小鳥「別に『裏ルール』を話さなかったから何かが変わるとか、そんなことないのは分かってます」

小鳥「でも私、それをみんなを傷つけることの言い訳にしたくないんです。ここまで全て私の意思でやってきたことですし、けじめ、ちゃんと取りたいって思ってるんです」

小鳥「お願い……できますか?」

P「………」

P「尊重しますよ、音無さんの意思。一番大変な役はあなたなんですから」ニコッ

小鳥「……ありがとうございます」ペコリ



P(『この世界での出来事は現実世界に戻っても影響しない』という裏ルール。それをみんなに話せば、お互いにもっと楽な気持ちで最後の戦いに臨めるかもしれない)

P(俺には分からないけど、きっと音無さんにも背負うものはたくさんあるんだよな)

P(俺は……。今の音無さんに俺が言えることは……)


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 17:51:40.16 ID:4fTR3iH1O

P「……音無さん、俺からも一つお願い、いいですか?」

小鳥「え? は、はい」

P「最後の戦い、いつもの朗らかな音無さんでいてくださいとは言いません」

P「でも、あなたらしさだけは忘れないでください」

小鳥「私……らしさ……?」

P「俺のお願いはそれだけです。あとは音無さんに全部お任せします。……って、ちょっと無責任な言い方かもしれませんけどね、はは……」

小鳥「プロデューサーさん……」

小鳥「わかりました。ありがとうございます」

小鳥「……ちょっとだけ、勇気もらえました」ニコッ

P「いえ、お礼なんて」

P(本当はもっと掛けるべき言葉があるのかもな。でもこれ以上はきっと、音無さんの重荷になる気がする)



小鳥「……っ!」ピクッ

P「……来ましたか?」

小鳥「はい……!」チラッ



…ザッ



10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 17:53:17.81 ID:4fTR3iH1O

小鳥「あら……うふふ♪」

小鳥「プロデューサーさんが言った通り、こんな場面だけ原作をなぞるんですね?」




律子「………」

貴音「………」

 

P「……律子、貴音……!」



律子「プロデューサー殿……!」

貴音「ご無事でしたか……!」



小鳥「いらっしゃい。律子さん、貴音ちゃん。待ってましたよ♪」



律子「お久しぶりですね、小鳥さん。本当に」

貴音「ご無沙汰しております」ペコリ



小鳥「本当に…………本っ当にお久しぶりですね! もう何年もお会いしてなかったような気分です♪」

P(実際はゲームの時間で一年も経ってないけど、みんなはそれくらい長く感じたってことだよな)

P(ついに、ここまで来たんだな……)



小鳥「貴音ちゃんはあの時ぶりね。バハムートさんと戦ったのよね? どうだった?」



律子「……貴音」

貴音「分かっております。この様な安い挑発には乗りません」



小鳥「あらら……残念」


11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 17:55:16.74 ID:4fTR3iH1O

律子「小鳥さん、たぶんもう私たちに精神攻撃は無駄だと思いますよ?」

律子「月の民の館では散々精神攻撃を受けましたけどね」



小鳥「へぇ……なんだか余裕ですね、律子さん」

小鳥「じゃあ、いいことを教えてあげます」

小鳥「前にもちょっとだけ話したと思いますけど、原作でも最初にゼムスの元へ到達するのがゴルベーザとフースーヤ……つまり、律子さんと貴音ちゃんの役の二人なんですよ」

小鳥「二人は最初ゼムスを圧倒するんですけど、その後どうなっちゃうかというと……」



貴音「真美から聞いています。そのぜむすとやらの真の姿に敗北してしまう、と」

貴音「ですが小鳥嬢もご存知の通り、この物語は既に誰も予想の出来ないものになっているのです」

律子「だから、私たちが小鳥さんに負けるかどうかは分からないってことです」



小鳥「……ふむ」

P(そうなんだ。誰にも先が分からない。だからこそ律子や貴音にも分がある)

P(でも、逆にそれは音無さんにも同じことが言えるんだ)

P(音無さんの強さは予測不能だぞ……)


12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 17:57:54.09 ID:4fTR3iH1O

小鳥「二人とも自信満々かぁ。まあ、初めから絶望されるよりはいいのかな?」

小鳥「んー、じゃあ〜……」スッ

ポワ…



律子・貴音「!」



スゥゥゥ…

コトリマインド「うふふっ、お久しぶりですっ♪」

コトリブレス「私は初めまして、ですね♪」



律子「……まさか、分身……?」



小鳥「はい。実力テスト、というわけじゃないんですけど、律子さんと貴音ちゃんにはまず私の分身と戦ってもらおうかなと」

小鳥「私の分身二人に勝つことが出来たら、その時は私がお相手しますよ♪ どうですか?」



律子「……だそうだけど、貴音、自信は?」

貴音「わたくしに訊くのですか? 本人ならばともかく、分身となれば愚問ですね」

律子「それもそうよね。じゃあ、どっちがやる?」

貴音「そうですね……ならばここは公平にじゃんけんといきましょう」

律子「いいわよ。最初はグー」

貴音「じゃんけん……」



小鳥「ちょ、ちょっと待ったぁ! 何ですかその溢れ出る強キャラ感は! あの時私の分身一人にみんなで苦戦してたの忘れちゃったんですかっ!?」



律子「そう言われても、分身に勝たなきゃ小鳥さんは出て来ないんでしょう? だったら今さら尻込みしてても仕方ないじゃないですか」

貴音「分身如きに遅れを取っていては、本丸の攻略など夢のまた夢ですから」



P(二人の言葉はもっともだけど……。なんだろう、律子と貴音から感じるこの落ち着きは)


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 17:59:23.81 ID:4fTR3iH1O

小鳥「むむむ……なんか納得いかない〜!」

小鳥「『あの時苦戦した分身が二人も!?』ってなる場面のはずだったのにぃ!」

小鳥「……ええい! 二人ともやっちゃいなさーい!」ビシッ

P(音無さん、それヤラれ役の代表的な台詞ですよ)



コトリマインド「行きますよっ!」ダッ

コトリブレス「うふふっ♪ 分身だと甘く見てたら痛い目にあっちゃいますからねっ」ダッ



律子「……作戦変更。効率重視でいきましょう。私は右の分身、貴音は左。OK?」

貴音「承知しました」

…ダッ


14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:00:29.16 ID:4fTR3iH1O

コトリマインド「私の相手は律子さんですか? あの時みたいにまた操っちゃえば終わりかな?」ピリッ


律子「いいですね。油断してくれればそれだけこちらの労力も少なく済みますし」チャキッ


コトリマインド「本当に自信満々ですね〜。後悔しても遅いですからね!」

コトリマインド「精神波っ!」バッ


ビリリッ…!


律子「……残念ですけど」

律子「……精神波!」バッ


…パキーンッ!!



コトリマインド「! 相殺された!?」



律子「もう操るのも操られるのもこりごりなんですよね。人の意思は尊重するものですよ?」ダッ

律子「……はあっ!!」ブンッ

ズガガドゴォォォンッ!!


コトリマインド「……っ!」ダッ



律子「……っと、避けられちゃったか」


15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:03:23.85 ID:4fTR3iH1O

コトリマインド「雷を纏わせた突き……。まさか魔法剣とか?」

コトリマインド「でも今の、前にどこかで見たような気が……」



律子「ああ、小鳥さんは一度見てるはずですよ?」



コトリマインド「やっぱり。うーん、でもどこで見たんだったかしら……」



律子「ほら、ゾットの塔ですよ。私があなたにまだ操られていた時、春香が私に向かって使ったでしょ?」



コトリマインド「……えっ?」



律子「っ……!」ダッ



コトリマインド「! ……速いっ!」



律子「……大気満たす力震え、我が腕をして
閃光とならん……!」バリッ…

律子「……無双、稲妻突きッ!!」ブンッ

ズガガッ……!!



コトリマインド「ちょっ、ウソでしょお!?」


ドゴォォォンッッ!!!



律子「……うん、まあ初心者にしては上出来でしょ!」



コトリマインド「こ、この前まで私が圧倒していたはずだったのに……」ヨロッ

コトリマインド「く、くやしい……」ドサッ



律子「流石の威力だわ。エクスカリバーのおかげね」チャキッ

律子「まずは一人。貴音の方は終わったかしら」チラッ


16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:06:00.96 ID:4fTR3iH1O

コトリブレス「……ホーリー!」バッ

キラキラキラ…!

ドゴオオオォォオオンッ!!



貴音「っ……!」

ズザザザッ…!

貴音「……はて、今のがほーりーですか?」



コトリブレス「なっ、なんで無傷なのよ〜!?」



貴音「無傷、ということはありません。『しぇる』を使用したとはいえ、こちらにも少々のだめぇじはありました。ですが……」

貴音「ばはむーと殿のめがふれあを受け続けた身としては、些か物足りない攻撃でしたね」

貴音「……いえ、比べることすらばはむーと殿に失礼に当たるでしょう」



コトリブレス「ちょ、調子に乗ってるわね……!」



貴音「何故でしょうか。貴女には全く負ける気がしません」ゴゴゴゴ



コトリブレス「そ、そんな! 魔力がどんどん上がっていく……!?」



貴音「本物の魔法とは、こういうものです」

貴音「…………ほーりー」バッ

キラキラキラ…!


ドゴオオオォォォオオオオンッ!!!



コトリブレス「ば、バカなぁッ……!?」

…ドサッ



貴音「…………ふぅ」


17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:09:36.91 ID:4fTR3iH1O

律子「貴音!」タタタタ


貴音「そちらも終わりましたか」

律子「めちゃくちゃ強くなってるじゃない! 分身とはいえ、メガフレアを使わないで倒すなんて!」

貴音「わたくしには、あの方の加護があります。……そう、思えるのです。だからここまで強くなれた」

貴音「律子嬢こそ、まこと華麗な技でした」

律子「んー……私の場合はほら、武器が変わったっていうのもあるし」

律子「……ま、とにかく」チラッ



小鳥「……驚きましたね、これは。まさかどっちも一瞬でやられちゃうとは思いませんでしたよ」

小鳥「まあ、分身じゃ貴音ちゃんには勝てないだろうなって思ってはいたけど……」

小鳥「それに律子さんの技。今までと全然違う雰囲気。もしかして……」



律子「そういえば報告が遅れましたね。私、聖騎士にジョブチェンジしましたんでよろしくお願いします」



小鳥「………」

小鳥「本当ならあり得ないことのはずなんですけれど、よく考えてみれば可能性がないわけではなかったんですよね」

小鳥「……クルーヤさん、ですか?」



律子「そうですね。頼りない父親と、私を信じてくれている可愛い妹のおかげです」



小鳥「……やっぱり、そうなんですね」

P(……ということは、クルーヤははじめから律子に協力するために音無さんに近づいたってことになるのか……?)



律子「………」


18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:12:25.43 ID:4fTR3iH1O

ー回想、月の地下渓谷 B11F ー


…ザッ

律子「見送りはここまででいいです」

クルーヤ「そうかい? もうちょっとそこまで……」

律子「大丈夫ですって。目的地はどうせすぐそこなんですから。あとは春香についててあげてください」

クルーヤ「でもなぁ……。せめてハルカが技を習得するまでは一緒にいてくれてもいいのに」

クルーヤ「それでさ、仲間のピンチに君たち姉妹が駆けつけるんだ。カッコいいだろ?」

律子「あの、私別にカッコつけたいわけじゃないんですけど」

クルーヤ「……まあ、仕方ないか。本当はもう少し君と話をしたかったんだけどね」

クルーヤ「ごめん、リツコ。君が辛い時に何も出来なかったくせに、いつまでも娘離れ出来ない情けない父親で」

律子「だからそれはもういいですってば。何回も同じことで謝らないでくださいよもう……」

クルーヤ「………」


19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:16:45.16 ID:4fTR3iH1O

クルーヤ「あのさ、リツコ。情けないついでにもう一つ聞いてもらってもいいかな?」

律子「手短にお願いしますね。すぐそこまで仲間が来てるんですから」

クルーヤ「ありがとう」

クルーヤ「ボクがコトリさんの陣営にいたこと、君は不思議に思わなかったかい?」

律子「え? だってそれは、私と春香に会うために小鳥さんのところに潜り込んだんですよね?」

律子「…………ん?」

律子「あ、そうか。それだと小鳥さんを裏切ったことになるのね……」

律子「もしかしてクルーヤさん、そのことを気にしてるんですか?」

クルーヤ「………」

クルーヤ「ボクは、生前は聖騎士だった。これでも世界のために戦ってきたと思っているし、死んでからも世界のために出来ることはしてきた。そのためには手段は選ばないつもりでね」

クルーヤ「今回コトリさんに接触したのだって、コトリさんと戦うことになる君やハルカの手助けをするためだ」

クルーヤ「コトリさんを最初から騙すつもりだったんだ。……それがボクの『正義よりも正しいことよりも大切なもの』だから」

律子「……信念、ですか?」

クルーヤ「まあ、似たようなものさ」


20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:19:34.08 ID:4fTR3iH1O

クルーヤ「……でもさ、今は少しだけ後悔してるんだ」

律子「後悔……ですか?」

クルーヤ「うん。たぶん、コトリさんがものすごく悪い人だったら、きっとこんな風に気にすることはなかっただろうなぁ……」

クルーヤ「…………楽しかったんだ」

クルーヤ「コトリさんがいて、バハムートがいて、ボクがいて。妙な取り合わせだったけど、三人でいるのが存外に楽しかったんだよ」

律子「………」

クルーヤ「……ごめん、やっぱり今の話は忘れてくれ」

律子「………」

律子「…………はぁ」

律子「本当に、こんな頼りない人が私の父だなんてね。まったく……」

クルーヤ「あはは……ごめん」

律子「今のことは春香には言わないでくださいね? あの子、全面的にあなたのことを信頼してるみたいですから」

クルーヤ「……わかった。肝に銘じるよ」


21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:21:33.18 ID:4fTR3iH1O

律子「それじゃ、本当にもう行きますね」

クルーヤ「うん」

律子「色々お世話になりました」ペコリ

スタスタ







クルーヤ「…………頑張れ、リツコ!」







律子「!」



クルーヤ「詳しくはわからないけど、君やハルカが救おうとしているのはこの世界だけじゃないんだろう?」



律子「クルーヤさん……」



クルーヤ「ボクが君のために出来ることは本当にもう何もない。だからせめて、気休めの言葉くらいは贈らせてくれ」

クルーヤ「……頑張れ、負けるな、リツコ!」



律子「………」

律子「……まったく、そんな言葉じゃ気休めにすらなりませんよ……」グスッ



ーーーーーー
ーーー


22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:24:02.14 ID:4fTR3iH1O
ー 月の地下中心核 ー



律子(小鳥さんにしてみればそりゃショックよね。味方だと思っていたクルーヤさんに裏切られた形になるんだもの)



律子「……あの、小鳥さん?」



小鳥「……なーんだ、良かった♪」



律子「…………え?」



小鳥「ふぅ、これで一つ肩の荷が下りたわねー。悪の親玉も楽じゃないわ〜♪」



律子(……嘘ね。ああ見えて小鳥さんって結構繊細だから絶対に傷ついてるはずよ)

律子(でも、それをあえて隠すつもりなら私は何も言いませんからね?)



小鳥「…………さて、と」スタスタ



律子・貴音「!」



小鳥「過ぎたことを言っても仕方ありませんよね。それよりも大切なことを言わせてもらってもいいですか?」ゴゴゴゴ



律子(この威圧感……! 流石に分身なんて比べものにならないわね……!)


23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:33:04.38 ID:4fTR3iH1O

小鳥「……律子よ、貴音よ。何故もがき生きるのか……?」



律子「え?」

貴音「………」



小鳥「滅びこそ我が喜び。死にゆくものこそ美しい……!」

小鳥「さあ、我が腕の中で息絶えるがよいッ!!」ビシィッ



律子「………」

貴音「………」


小鳥「………」

P「………」




P「何かと思ったら戦闘前の口上ですか。しかも丸パクリじゃないですかそれ……」

小鳥「だ、だって上手い言葉が思い浮かばなかったんですもん!」



貴音「……なるほど。律子嬢、恐らくこれは様式美というものでしょう。真の黒幕との戦いの前には盛り上がる台詞が付きものだと真美から聞いています」

律子「あ、そう……」

貴音「小鳥嬢、わたくしたちは闇の力に屈したりはしません。月も、地球も、全ての人を闇から救ってみせましょうッ!!」ビシィッ



小鳥「おっ、貴音ちゃんはノッてくれるのね。ありがとう♪」



貴音「さあ、律子嬢も何か一言を」

律子「いや、いいわよ別に……」



小鳥「んもぅ、律子さんノリ悪いなぁ」

小鳥「仕方ない、それじゃそろそろ始めましょうか」スッ



律子「……ええ、そうですね!」

貴音「小鳥嬢、あなたを満足させる戦いをしてみせましょう……!」



小鳥「さあ、かかって来なさい!!」


24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:35:42.89 ID:4fTR3iH1O
ー トロイアの国 店主の家 ー


ものまね士「フンフフーン〜♪」ゴソゴソ

ものまね士「うふふ♪ 店主さんのためにおいしいお料理を作って待ってるこの時間、ちょっと好きだなぁ」


ガチャ

店主「……ただいまー!」


ものまね士「あ、おかえりなさーい!」タタタ

店主「お、なんかいい匂いがするなー」

ものまね士「今夕食の支度してますんで、ちょっと待っててくださいねっ♪」

店主「うん、ありがとな」



…ドガァンッ!!



店主「!?」

ものまね士「な、何事ですか!?」



ものまね士「……って、ぎゃー! 鍋が木っ端微塵にぃぃ!!」

店主「だっ、大丈夫かものまね士、ケガないか!?」

ものまね士「わ、私は平気ですけど……」チラッ

ボロッ

ものまね士「うぅ〜、一日中煮込んだ愛情たっぷりの特製鍋がぁ〜」

店主「ていうか、どうすりゃ鍋が爆発する事態になるんだよ……」


25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:37:02.32 ID:4fTR3iH1O

ものまね士「すみません、店主さん……。私、お料理作って待ってようと思ったんですけど……」

店主「気にすんなって。メシくらいオレがパパッと作るからさ」

ものまね士「はい……」ズーン

店主「そんなに落ち込むなよ。気持ちはすごく嬉しかったぜ?」

ものまね士「うぅ……私って全然奥さんらしくないですよね……。料理も失敗してばっかりだし、掃除や洗濯するとなぜか物を壊しちゃうし……」

ものまね士「やっぱり……やっぱり私には、薪割りくらいしかできることがないんです〜!」

店主「…………ったく、バカだなぁ」

ものまね士「ば、バカって! 妻に向かってなんてこと言うんですか〜! うわぁぁん! 店主さんのバカぁ〜!」ボゴッドスッ

店主「ごはっ!? ちょっ……た、タンマ!」


26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:38:00.99 ID:4fTR3iH1O

店主「……いててて……」

店主「相変わらず手加減なしだなあんたは……」

ものまね士「……ぐすっ……」

店主「…………はぁ」

店主「ほら」スッ

ものまね士「……なんです、これ?」

店主「あんたに似合いそうな髪飾りを見つけたからさ。……プレゼントだ」

ものまね士「私に、ですか……?」

店主「あんたはオレの奥さんだろ? あんた以外に渡す相手なんていないって」

ものまね士「て、店主さん……!」パァァ

ものまね士「ううぅ〜! 嬉しいです〜!」ダキッ

店主「はは、現金なやつだなぁ。機嫌直ったか?」

ものまね士「はいっ♪」ニコッ


27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:39:04.76 ID:4fTR3iH1O

店主「…………ふぅ、ごちそうさまでしたっと」

ものまね士「やっぱり店主さんのお料理はおいしいなぁ。私も見習わなきゃ」

店主「片付けは後でオレがやっとくからさ、あんたは少し休んでなよ」

ものまね士「えっ、でも悪いですよ」

店主「いいからいいから」

ものまね士「えへへ、ありがとうございます♪」



ものまね士「店主さん、私、今すごく幸せです……」

店主「だなぁ……。ついこの間までは世界に危機が迫ってたってのに。もう魔物も悪さすることもなくなったしなぁ」

ものまね士「これも全部、ハルカさんたちのおかげなんですよね……」

店主「………」


28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:41:12.78 ID:4fTR3iH1O

店主「なあ、ものまね士。オレたちってさ、このままでいいのかな?」

ものまね士「え? どういう意味ですか?」

店主「オレやあんた含めて、この世界の奴らはみんなハルカたちの世話になってる。今のこの幸せだって、あいつらがくれたものだ」

店主「けど、ハルカたちは今もまだ戦ってるんだよ」

店主「時々思うんだ。幸せをもらうばっかりで、オレはハルカたちに何かしてやれたのかな……って」

店主「今も世界のために戦っているあいつらにしてやれることはないのかな、ってさ」

ものまね士「………」

ものまね士「………」

ものまね士「…………ダメです」

ものまね士「もらってばかりだなんて、そんなのダメだと思います」

ものまね士「私、ハルカさんたちの力になりたいです!」

ものまね士「戦っているハルカさんやミキさんたちのために、私に出来ることがあるのか分かりませんけど、でも……」

ものまね士「それでも、何かしなきゃ! だって私たち……」

店主「……仲間、だもんな」ニコッ

ものまね士「はいっ!」ニコッ


29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:42:54.70 ID:4fTR3iH1O
ー トロイア城 謁見の間 ー


店主「…………え? じいさん、ミシディアに帰ったのか?」

アン「はい。もう一週間ほど前のことになります」

店主「なんだそうだったのかぁ。どうりで最近お城で見かけないと思ったぜ」

店主「それなら一言挨拶くらいしてくれりゃいいのに」

アン「お年を召されているということもあってお一人にするのは心配だったのですが、ミシディアでやるべきことがあると仰っていましたね」

アン「あ、もちろん飛空艇技師のお二人に定期的に物資を届けに行っていただいたりはしているんですが……」

店主「でもじいさん、今さらミシディアで何するつもりなんだろ」

アン「………」

アン「店主さんは……やはり気になりますか? 長老様のこと」

店主「そりゃなぁ。じいさんは巨人が攻めて来た時は一緒に戦ったりもしたし、なにより結婚式まで世話になってる身だしな。アミとマミも月へ行っちまって身寄りはもういないんだろ?」

アン「そうですね。そう……伺っております」

店主「じいさん、まさか世を儚んで……?」

店主「……いや、あの元気なじいさんに限ってそんなわけないか。魔物も落ち着いたし、やっと平和になったところだもんな」

アン「………」


30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:45:06.46 ID:4fTR3iH1O

アン「あの、実は……」

アン「長老様は、ミシディアで祈りを捧げておられるようなのです」

店主「祈り……?」

アン「はい。世界の平和のため、月で戦っているあいどるの方たちのために、少しでも力になりたいと」

店主「ハルカたちの戦いと祈ることと、何か関係があるってのか?」

アン「………」

アン「店主さんは、クリスタルについてどこまでご存知ですか?」

店主「いや……キラキラ光る不思議な石ってくらいしか」

アン「クリスタルは神秘の石。想いを映し、心を伝え、願いを届ける魔法の石」

アン「人の想いは力。誰かを支える力になることができる。そしてその想いを?ぐのが、クリスタル」

アン「長老様はミシディアの祈りの館で、ユキホさんたちの力になろうとしているのです」

店主「……えーっと、よく分からんがそれってつまり、じいさんもハルカたちと一緒に戦ってるようなもんってことだよな?」

アン「はい、そういう考え方も出来ると思います」

店主「なんだよ……水臭いじゃないか。それだったらオレたちに一声かけてくれたって……!」

アン「……本当は、このことは長老様から口止めされていたことなのです」

アン「『未来ある者たちは未来を生きるべき。今を未来へ?ぐのは老い先短い自分の仕事だ』。……長老様はそう仰っていました」

店主「!」


31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 18:47:21.98 ID:4fTR3iH1O
?になってるところは「つなぐ」です
漢字だとなぜかバグる
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:48:52.96 ID:4fTR3iH1O

店主「…………ふざけんなよ」

アン「……店主さん……?」

店主「ふざけんな……! なんだよそれは!」

アン「ど、どうか落ち着いて」

店主「落ち着いてなんかいられねえよ! なんでっ……!」

店主「なんで自分には未来がないみたいな言い方するんだよっ……!」

アン「………」

店主「……神官さん、すまん。しばらく休みをもらえないか? 帰ったら倍……いや、三倍働くからさ!」

アン「ええっ……?」

店主「それと、みんなを集めておいてくれ」

アン「みんな? ええと、それは……?」

店主「みんなって言ったらみんなだ」

店主「あの時ハルカたちと一緒に巨人に立ち向かったみんなだよ!」

店主「じゃあ、頼んだぜ!」

タタタ…


アン「あ、あの!」


…ガチャ バタン



…ガチャ


ドゥ「……姉上、何かあったのか? 今、ものすごい形相の店主殿とすれ違ったんだが」


アン「………」

アン「ドゥ、ちょっと頼まれてもらえる?」

ドゥ「? ……ああ、それは別に構わないが」


33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:50:52.10 ID:4fTR3iH1O
ー トロイアの国 店主の家 ー


…ガチャ


店主「ものまね士、いるか!」


ものまね士「……あれ? おかえりなさい。今日はずいぶん早いんですね?」

店主「あのさ、オレ、仕事はしばらく休むことにした」

ものまね士「な、何かあったんですか? 怪我とかしちゃったんですか!?」

店主「そうじゃない。他にやらなきゃならないことが見つかったんだ」

ものまね士「やらなきゃならないこと……?」

店主「とにかく行くぞ」スッ

ものまね士「えっ? あの、行くってどこへ?」

店主「……ミシディアだ」



34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:52:07.23 ID:4fTR3iH1O
ーーーーーー
ーーー


スタスタ

ものまね士「……長老さんが、ハルカさんたちのために……?」

店主「……ああ。じいさん一人に重荷を背負わせられないよな。それにオレだってあいつらの役に立ちたいって思ってたんだ」

店主「あんたもそうだろ? ものまね士」

ものまね士「はい。もちろんです!」

店主「今、神官さんがみんなを集めてくれてるはずだ。だからオレたちも早いとこ合流しなきゃ」



「……お二人とも、こちらにおられたのですね」



店主「あれっ、あんた……」



トロア「姉上から事情は聞きました。ユキホ王女たちのためにミシディアへ行かれるつもりなのですね?」

店主「うん。そうだトロア、あんたも一緒に来てくれ! あんただってあいつらに力を貸したいって思ってるだろ?」

トロア「はい。それは常々思っていたことです」


35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:53:30.56 ID:4fTR3iH1O

トロア「あいどるの方々には大きな恩があります。それをお返しする機会があるのなら、私も是非参加させていただきたい」

トロア「……ですが、貴女は自重してください、ものまね士殿」

ものまね士「なっ、なんでです!? 私だってみんなの役に立ちたいですよぅ!」

トロア「お忘れですか? 貴女の身体にはすでに新しい命が宿っていること」

ものまね士「っ……!」

トロア「魔物も襲ってこなくなったとはいえ、そのような身重の身体で飛空艇など無茶もいいところです」

店主「待ってくれ! ものまね士のことならオレが責任持って守るよ! だからこいつも一緒に行くことを許してくれ!」

トロア「なりません! 出産は母体の安全が第一。もし万が一ものまね士殿に何かあったらどうするおつもりですか!」

店主「だ、だからそうならないようにオレが守るって!」

トロア「店主殿、あなたは分かっていない。新しい命が生まれるのがどんなに大変なことなのかを」

トロア「どうしてもものまね士殿を連れて行くというのなら……」


トロア「私は、力ずくであなたたちを止めます……!」


店主「トロア……!」

ものまね士「トロアさん……」


36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:55:29.90 ID:4fTR3iH1O

店主「オレはどうしてもこいつも一緒に連れて行きたい。ハルカたちの力になるなら、あの時のメンバーが全員揃ってなきゃ絶対にいやなんだ」

店主「頼むっ……!」

トロア「あなたのそのわがままが自分の子と妻を危険に晒すとなぜわからないんです!」

トロア「出産とはとてもデリケートなものなのだ! 命は、失ったら終わりなのですよ!?」

店主「だから守るよ! 守ってみせる! ものまね士も、お腹の中の子も!」

トロア「分からずやめ……!」

店主「………」

ものまね士「………」



店主「……どうしても許してもらえないのか? ものまね士の同行を」

トロア「許せるわけがない。あなたは明らかに命を軽んじている!」

店主「ならしょうがないな」スッ


トロア「!」


店主「ものまね士、ちょっと下がっていてくれ」

ものまね士「て、店主さん……!?」


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:57:23.68 ID:4fTR3iH1O

トロア「……言っておきますが、これでも私はトロイア随一の使い手と呼ばれている」

トロア「相手が男性とはいえ簡単に遅れを取ったりはしないッ!」スッ


店主「………」ジリッ

ものまね士「こ……こんなのおかしいですよ! なんで店主さんとトロアさんが争わなきゃいけないんですか!」


トロア「ものまね士殿。私は自分が間違っているとは思いません。ユキホ王女たちが与えてくれた未来、命、幸せ……それを無駄にしたくないだけです!」


店主「……そうだな。たぶん間違ってるのはオレの方だ」

店主「けどな、これはウチの問題だ。何が正しいか……モラルも道徳も全部、大黒柱であるオレが決めることだ!」 


トロア「なんて傲慢な人だ……!」

トロア「分かりました。どちらが正しいかは拳で決めるとしましょう」

トロア「…………いざッ!!」ダッ


ものまね士「っ!!」











店主「…………すまん、許してくれ!!」ドゲザァ



トロア「」

ものまね士「」


38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 18:59:27.71 ID:4fTR3iH1O

ものまね士「あ、あのー、店主さん……?」

トロア「あなたは……男のくせにプライドってものが無いんですか!? 女相手に土下座とは……失望しましたっ!!」

店主「プライドなんてどうでもいい。失望してくれても構わないさ」

店主「でも絶対に譲れない。あいつらがこの世界の恩人だってのもあるけど、それ以前に……」

店主「ハルカたちは、オレたちのかけがえのない仲間だから!!」

トロア「そんなことは私だって分かっているっ!!」

店主「……オレがカイポで宿屋やってた頃、最初に出会ったのが、ハルカとヤヨイだった」

トロア「は……? 何をいきなり……」

店主「あいつら、めちゃくちゃボロボロでさ、とりあえず宿屋で休ませることにしたんだ」

店主「どうやらあいつら、バロンの兵隊さんたちに追われてたみたいでさ。二人を匿っていたオレの宿屋は兵隊さんに無茶苦茶に荒らされたよ」

店主「ちょっとびっくりしたけど、まあ兵隊さんにゃ逆らえないし仕方ないと思った」


39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 19:03:57.89 ID:4fTR3iH1O

店主「でも……そこでハルカとヤヨイは怒ってくれたんだ。赤の他人のオレのために、自分のことのように」

店主「兵隊さんに文句言って来るって、飛び出して行っちまった」

トロア「………」

店主「その時のことが今でも忘れられなくてなぁ……。あー、こいつらは人の痛みが分かるんだなぁ、なんか気持ちのいいやつらだなぁって」

店主「……本当にそんな小さなことだったんだ。始まりは」

店主「何の因果か、それからはあいつらと関わることが増えていった」

店主「あいつら見てるとホント面白いんだよな。性格も年も違う集団なのに、なんでかみんな仲が良くてさ」

店主「最初は不思議に思ったけど、あいつらのことを観察していくうちに分かったんだ」

店主「ハルカも、ヤヨイも、ユキホも、ミキも、チハヤも、マコトも、ヒビキも、アミも、マミも、イオリも、アズサも、タカネも、リツコ様も、みんなお互いのことを仲間と認めて信頼し合えるから……だから上手くいってるんだなって」

店主「オレもさ、仲間だと思ってるんだ。じいさんや神官さん、ファブールの王様、ドワーフの王様、お姫さん、アガルトのばあさんにヒビキの娘さんにユキコ、ミニ助たち。……ものまね士のことだって妻であると同時に仲間だって思ってる」

ものまね士「店主さん……」

店主「もちろんトロア、あんたのこともな」

店主「これは言ってみりゃ最後の戦いだ。あいつらと一緒に戦うなら、仲間の誰ひとり欠けてほしくない」

店主「だから、ものまね士もお腹の子も連れて行きたいんだ」

店主「……それにさ、オレたちの子供も世界を救った英雄たちと一緒に戦えることになるんだぜ? こんなすげえ英才教育、他にないだろ?」

トロア「………」


40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 19:07:47.22 ID:4fTR3iH1O

トロア「……まったく、あなたという人は……」

トロア「あえて言わせてもらいますが、それは完全にエゴだ」

店主「ああ、自分でも分かってるよ。でもどうしても譲れないんだ。たとえ正しさから外れていたとしても」

トロア「正しさ、か……」



トロア「私の……私たち姉妹の母は、八女のユイットを産むと同時に他界しました」

店主「え……?」

トロア「その頃のトロイアはまだ開拓期で、魔物の襲撃も酷いものでした」

トロア「魔物の存在に怯えながらも母は、生まれてくる命は絶対に消してはならないと、薬師や白魔道士たちが止める中、身を犠牲にしてあの子を産んだのです」

店主「そうだったのか……」

トロア「魔物が大人しくなった今なら、母子共に健やかな出産はそう難しくはないでしょう」

トロア「このご時世、親の愛を知らない子は溢れるほどいます。しかし、だからこそ、あなた方の子にはそうなってほしくはないんです」

店主「………」


41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/26(日) 19:10:51.46 ID:4fTR3iH1O

店主「…………すまん、トロア。あんたがそこまで考えていてくれたなんて」ペコリ

トロア「いえ、冷静に考えれば、私の考え方もまたエゴなのかもしれません」

ものまね士「…………あの」

ものまね士「正しさって、やっぱり人によって違うんだと思います。だから、たまに意見が合わなくなるのは仕方ないことですよね?」

ものまね士「でも、今の私たちに共通の想いがあるのも確かなことです。ハルカさんたちの力になりたいっていう想いが」

ものまね士「私、やっぱりお留守番していることにします」

店主「ものまね士!」

ものまね士「だって、やっぱり悲しいですもん。私たちのわがままで子供を失うことになっちゃったら」

ものまね士「それに、遠く離れていたって気持ちは通じるって、ハルカさんたちに教えてもらいましたし」

店主「け、けどさ……」

トロア「……いえ。やはりものまね士殿も店主殿と共に行ってください」

ものまね士「えっ……」

店主「トロア……いいのか?」

トロア「妻と子を守るのは大黒柱としての当たり前の責務です。その一方で、仲間のために戦いたいという想いも、人間として持つ当たり前の感情なのかもしれません」

トロア「私もフォローはしますが、店主殿、あなたは特にものまね士殿の健康状態に細心の注意を払うこと。……いいですね?」

ものまね士「トロアさんっ!」パァァ

店主「ああ、もちろん! ありがとう、トロア!」


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