P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL3

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142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/20(水) 16:33:22.84 ID:N5l1JYUyO
今日でもう一ヶ月くらい待った気がする
現在ピヨスケのところにいるのは1/3くらい?
律子貴音美希千早→ピヨスケとバトル中
やよい真美→伊織の治療?中
響亜美真雪歩→戦ってる人達の元へ移動中
春香→クルーヤ(父その2)と修行中
これであってるよね?
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/01(日) 02:34:25.40 ID:7axRGeJc0
ー ミシディア 祈りの館 ー


長老「………」

長老「………」

長老「…………どうやら、始まったようじゃな」



バルバリシア「始まったって……最後の戦いが?」

長老「うむ。月の中心から強いエネルギーを感じる」

長老「とてつもなく強大なエネルギーに、いくつかの光が向かっておる……」

カイナッツォ「ついに始まったか……」

カイナッツォ「……ええい、あいどるたちが戦っているというのに、私たちにはこうして祈ることしかできんのか!」

長老「気持ちはわかるが落ち着くんじゃ。今は微弱でも、ワシらの想いは必ず届く」

長老「それに、どうやら今のところ彼女たちは善戦しておるようじゃ」

カイナッツォ「なんだと!? 貴様、わかるのか!?」ガタッ

長老「精神波を飛ばすことで月での戦いを感じ取ることができる。まあ、細かいところまで把握するのは不可能じゃが」

カイナッツォ「私にも教えろ! あいどるたちはどうなっている!? チハヤは勇敢に戦っているのか!?」ガシッ

スカルミリョーネ「……お、落ち着け、カイナッツォ……!」グイッ

144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/01(日) 02:42:32.97 ID:7axRGeJc0

バルバリシア「……そういえば、あなたたちってあの可愛らしい召喚士専属の幻獣なんでしょう?」

バルバリシア「こっちに戻ってきてからずいぶん経つけれど、まだ出番はないの?」

高木「そのようだね。さっき我々が高槻君と共に戦ったのは普通の魔物だったから、高槻君はまだ音無君……」

高木「……いや、最後の敵の元へたどり着いていないのかもしれない」

バルバリシア「そうなの……。じゃあ、今はまだ全員揃って戦ってるわけじゃないのね」

長老「今のところ月の中心核で戦っているのは、リツコ、タカネ、チハヤ、ミキの四人のようじゃの」

カイナッツォ「何ィ!?」ガタッ

バルバリシア「ミキ……」

スカルミリョーネ「……あ、アズサはまだ…か……?」

ルビカンテ「………」チラッ


冬馬「………」

145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:43:42.64 ID:7axRGeJc0

ルビカンテ「……どうした、浮かない顔をして。何か気になることでもあるのか?」

冬馬「……え? あ、いや……」

ルビカンテ「………」

ルビカンテ「オレはお前たちの主人の力はあまり知らんが……」

ルビカンテ「月の魔物を退けたのだ、相当の実力者なのだろう」

ルビカンテ「この戦い、そう悲観するほどでもないと思うが」

ルビカンテ「それにイオリがいる。ヤツがついていて負ける姿はオレには想像できんな」

冬馬「………」


翔太「あのルビカンテって人、ずいぶん伊織さんに入れ込んでるみたいだね。ファンなのかな」ヒソヒソ

北斗「まあ、俺たちの知らない交流があったんだろうな」ヒソヒソ


北斗「それにしても、俺たちのことも気にかけてくれるんですね。魔物とはいえ、あなたはなかなかの紳士のようだ」ニコッ

ルビカンテ「そんなつもりはない。ただ、同じ空間にいて同じ想いを持つ者同士、辛気臭い顔をされるのは御免だというだけだ」

翔太「……うーん、似た者同士惹かれ合ったって感じなのかなぁ」

スカルミリョーネ「……る、ルビカンテもツンデレの気があるから…な……」

146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:44:55.54 ID:7axRGeJc0

冬馬「……悪い、気分を害しちまったみたいだな」

冬馬「でも、俺は別にあいつらが負けるなんて思っちゃいねえよ」

ルビカンテ「……? ならばなぜそんなに思いつめた顔をするのだ?」

冬馬「………」

冬馬「この戦いはさ……」

冬馬「あいつらにとってこの最後の戦いは、世界を救う以上の意味があるんだよ」

カイナッツォ「世界を救う以上の意味……?」

バルバリシア「どういうことなの?」

冬馬「それは……」

冬馬「詳しい事情は言えねえけど、あいつらはきっと尋常じゃない覚悟を持って最後の戦いに臨んでるんだ」

冬馬「そんなあいつらのことを思うと、ちょっと考えるところがあるっていうか……」

翔太「………」

北斗「………」

カイナッツォ「回りくどい言い方をするな。ズバリ何なのだ?」

冬馬「だから、何ていうか……」

黒井「私たちも彼女たちも、お前たちとは違う存在だということだ」

カイナッツォ「違う存在だと? そんなことは当たり前だろう? 私たちは魔物でお前たちは幻獣、そして彼女たちは人間なのだからな」

黒井「そういう意味ではない。もっと根本的な部分から違うのだよ」

高木「……黒井」

黒井「わかっている。説明したところで理解などされまい」

カイナッツォ「何なのだ? お前たちは一体何の話をしているのだ?」

冬馬「………」

147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:47:12.59 ID:7axRGeJc0

冬馬「……なあ、あんた。あんたは如月千早が好きなんだろ?」

カイナッツォ「あん……?」

冬馬「そんで、あんたは三浦あずさ」

スカルミリョーネ「………」コクリ

冬馬「そっちの姉さんは星井美希だっけか?」

バルバリシア「ええ。ミキは私の可愛い妹よ」

冬馬「あんたは水瀬伊織に惚れたんだよな?」

ルビカンテ「……人間の感情は、正直いまだによくわからない」

ルビカンテ「イオリはオレにとって最大のライバルだが、オレはヤツに感謝しているし、尊敬もしている」

冬馬「……へへっ」

冬馬「よくわかんねえんだけどさ、嬉しいんだ。あんたたちがあいつらのことを好きになってくれたことが」

翔太「……うん。僕にもわかるよ、その気持ち」

北斗「エンジェルちゃんたちはこの世界でもエンジェルちゃんだった、ってことだな」

高木「実に、喜ばしいことだね」ニコッ

黒井「……フン」

冬馬「たとえあんたたちの存在が俺たちやあいつらと違ったとしても、あんたたちのその気持ち、絶対にあいつらの力になると思うんだ」

冬馬「ファンの応援ってのはアイドルにとってめちゃくちゃ心強いもんだからな!」

翔太「冬馬君……!」

北斗「……ああ、冬馬の言うとおりだ」

冬馬「祈りが力になるってそういうことなんだろ? じいさん」

長老「うむ。誰かを想う気持ちは等しく力になる。必ず、彼女たちに届く」

148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:48:35.84 ID:7axRGeJc0

冬馬「頼む、どうか最後まであいつらのことを好きでいてくれよな」

カイナッツォ「ふん! お前に言われずとも私はチハヤを応援し続けるぞ! この私が認めた人間なのだからな!」

スカルミリョーネ「……お、オレはずっとアズサ一筋……」

バルバリシア「…………最後まで、か」

バルバリシア「そうね、いつか終わりが来るとしても、その時までこの気持ちが変わることはないって、誓って言えるわ」

ルビカンテ「今のオレたちが心変わりするなど、天地がひっくり返ってもあり得んことだ」

ルビカンテ「……どうだ。少しは不安は拭えたか?」

冬馬「……ああ。サンキュ!」


長老「……さ、祈りを再開しよう」



冬馬(がんばれよ、765プロ……。お前らには俺たちがついてるんだからな!)

冬馬(ゲームの配役なんてくだらねえモンに、絶対負けるんじゃねえぞ……!)
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:51:15.24 ID:7axRGeJc0
ー 月の地下中心核 ー


ヒューー…

ザシュッ!!


小鳥「くっ……!」ヨロッ

小鳥「……はっ!」ブンッ

ドゴォッ!!


千早「くっ……!」ヨロッ



律子「鬼神の居りて乱るる心、されば人
かくも小さき者なり……」


律子「乱命……割殺打!!」ブンッ

ズドオオオオオオンッ!!


小鳥「ぬっ……!」ズザザザ


貴音「滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め……」

貴音「始原の炎、甦らん……!」

貴音「……ふれあ!!」


ブゥゥゥン…


ズババババババッ!!!



小鳥「くぅ〜っ……!」

150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:52:21.61 ID:7axRGeJc0

小鳥「赦されざる者の頭上に、星砕け降り注げッ……!」ゴゴゴゴ



千早「…………はっ!」タンッ

フワッ…



小鳥「!」

小鳥(このタイミングでジャンプ!?)



美希(シェルで防御……)

美希(……ううん、きっと千早さんの方が早いの!)

美希「……ヘイスト!」バッ

カタカタ…シャキーン!



千早「…………はっ!」

…ザシュッ!!

スタッ



小鳥「……つっ!」

小鳥「…………」



小鳥「…………ふふ」

小鳥「……ふふふっ、やるじゃない……!」



千早「………」チャキッ




小鳥(千早ちゃんを軸に四人の息が合ってきている……)

小鳥(これはもう認めざるを得ないわね。私の方が押されている、ってことを)

151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:54:42.95 ID:7axRGeJc0

千早「………」

千早「思っていたより楽しんでもらえているみたいで、良かったです」


小鳥「え……?」


千早「正直、ここへ来るまでは不安に思う部分もありました。覚悟を決めたとはいえ、やはりあなたと戦うのは、色々な意味で怖いですから」

律子「千早……」

美希「………」

千早「でも、音無さんが音無さんのままでいてくれたから」

千早「だから……」



千早「この戦い、後悔しないようにしようって、そう思えるんです」



小鳥「……千早ちゃん……」

P(千早……)



千早「あなたの希望に応えられるよう、私、全力でいきますね」チャキッ



小鳥(……私の、希望……?)

小鳥(私、みんなにどうしてほしいと思ってたっけ……?)


『……もちろん、みんなに楽しんでもらうため、ですよ?』


小鳥(……そうだわ。私は、みんなにゲームの世界を楽しんでほしくて……)

小鳥(千早ちゃんも、律子さんも、貴音ちゃんも美希ちゃんも……)

小鳥(みんな、楽しんでくれているのね)

152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:56:24.01 ID:7axRGeJc0

小鳥(…………私は?)

小鳥(私、楽しいって思ってる?)

小鳥(私は……)



律子「……小鳥さん? またトリップしてるんですか?」



小鳥「……えっ? あ、いえ……」



律子「最初の方に言いましたよね? 私も貴音もあなたとの戦いを楽しんでる、だから小鳥さんも楽しんでください、って」

貴音「げぇむとは皆で楽しむもの……。教えてくれたのは貴女です。小鳥嬢、貴女が楽しめなければ、それはわたくしたちにとっては意味がないのです」

美希「難しいことは考えても仕方ないって思うな。最後はみんなで笑って終わるの。そうすれば、きっとこの世界の出来事もきっといい思い出になるの!」




小鳥「みんな……」




P(そうだ。音無さんは最初からずっと、みんなを楽しませるために色々やってきた)

P(だから……)

P「……今度はあなたが楽しむ番ですよ、音無さん」

小鳥「プロデューサーさん……」



小鳥(みんな、優しいのね)

小鳥(そんな言葉をかけられたら、決意が揺らいじゃうじゃない……)

小鳥(楽しむ、か……。そうね、できれば私もそうしたいわ)



小鳥(……でも、無理なの)

小鳥(私にはそんな資格はないから)

153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 02:58:48.34 ID:7axRGeJc0

千早「…………あの、音無さん?」



小鳥「………」



美希「小鳥、どうしたの?」

律子「まさかまた妄想の世界に入ってるんじゃないでしょうね……」



小鳥「………」



貴音(……何故でしょうか。ここへきて何やら胸騒ぎが……)



小鳥「………」

P「音無さん……?」




小鳥「…………はぁ。おめでたいわね、みんな」

小鳥「律子さん、貴音ちゃん。あなたたちがここに来て最初に言ったことを覚えてますか?」



律子「私たちが最初に言ったこと? どのことを指してるんです?」

貴音「………」



小鳥「『この物語は既に誰も予想の出来ないものになっている。だから、律子さんたちが私に負けてしまうかどうかは分からない』」



律子「ああ、確かに言いましたけど……」

律子「もしかして、私たちが小鳥さんに勝てるかどうかも同じようにわからないって言いたいんですか?」



小鳥「………」

小鳥「ゲームっていうのは大抵の場合、最後に悪役が倒されてハッピーエンドで終わるようになってます」

小鳥「このFF4のストーリーもその例に漏れず、最終的には大団円を迎えることになりますけど……」

小鳥「でも、もし先がわからないお話なら、最後にハッピーエンドが待っているかどうかもわかりませんよね?」



4人「!!」

154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:01:02.96 ID:7axRGeJc0

小鳥「私は音無小鳥……。この世界を憎む者……」

小鳥「全てを憎み、己すらも憎み、この世界を宇宙に還す者……!」

ゴオオオオオッ…!!





千早「っ……!」

律子「また威圧感が増した……!?」

美希「小鳥……?」

貴音「………」

貴音(……これは演技なのでしょうか?)

貴音(もし演技だとしても、そこまで頑なに悪役にこだわる必要が……?)

貴音(小鳥嬢、貴女はいったい何を思っているのですか……?)






小鳥「………………ここから先は……」



小鳥「手加減は無しよ…………」ゴゴゴゴ

155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:03:04.02 ID:7axRGeJc0
ー 月の地下渓谷 B6F ー


雪歩「……えいっ!」ブンッ

ガコンッ!!


魔物「ァ……」

ドサッ


雪歩「…………ふぅ」



タタタ…

真「雪歩!」



雪歩「……あ、真ちゃん!」





真「そっちはどう? 誰か見つかった?」

雪歩「ううん……。魔物さんがいるだけで誰もいなかったよ……」

真「こっちもだよ。戦いの跡らしいものは見つかるんだけどね……」

真「ここまでしらみつぶしに調べてきたけど、誰も見つけられなかったってことは、みんなもっと下の階層に進んでるのか……」

雪歩「地下12階が最下層だから、この階でちょうど半分だよね……」

真「………」

雪歩「………」




真「……まさかとは思うけど、ボクたちの存在ってみんなに忘れられてるんじゃないか……?」

雪歩「だ、大丈夫だと思うよ?」

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/01(日) 03:07:38.00 ID:r216iG9u0

真「ふぅ……。文句を言ってもはじまらないか」

真「ボクと雪歩がしんがりっていうのは間違いなさそうだし、それならなるべく急ぎつつ調べていかないといけないね」

真「親衛隊の連中も見かけないし、今のボクたちなら探索のスピードをもう少し上げられそうだ」

雪歩(……親衛隊……)

雪歩(じゃあみんな、親衛隊の魔物さんたちに勝ったんだよね……)

真「……雪歩? どうかしたの?」

雪歩「……あ、うん……」

雪歩「あのね、今さらだけど私たちって小鳥さんと戦うんだよね」

真「……急にどうしたの? 怖くなったってわけじゃないよね?」

雪歩「うん。あの夜に春香ちゃんやみんなと話をしてからは、なんだか怖さは全部吹き飛んじゃったかも」 

雪歩「今はそれよりも、早くみんなに会いたいっていう気持ちの方が強いかな」

真「だよね。ボクも同じだよ!」

雪歩「……でも、それだけでいいのかなって」

真「えっ?」

雪歩「確かに私たちが楽しむこともすごく大切って思うけど、小鳥さんもちゃんと楽しんでくれるかな……?」

雪歩「上手く言えないんだけど、親衛隊が負けたこととか、色々なことを小鳥さんが気にしたりしてないかなって、ちょっと心配になっちゃって……」

真「………」

真「もしかしたら、小鳥さんに楽しんでもらうっていうのは言葉で言うほど簡単なことじゃないのかもしれないね」

雪歩「真ちゃん……」

真「小鳥さんの細かい事情はボクにはわからない。だから、思っていたのとは違う戦いになる可能性もあると思う」

真「でもきっと大丈夫だよ、雪歩」

真「何があってもボクたちなら乗り越えられる。だって、今までもそうだったじゃないか」

真「信じよう。ボクたちの絆は、絶対に負けない」

真「全員笑顔でエンディングを迎えられるってさ!」

雪歩「うん、そうだよね……!」



雪歩(大丈夫……だよね?)

雪歩(最後にはちゃんとみんなで笑えるよね……?)

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 04:38:55.98 ID:kY0QVdICO
そういや小鳥さん以外は寿命以外で死ぬことはないんだよな
でも小鳥さんの場合はラスボスで倒された場合は一緒に戻れるのか?
妖精は確かに寿命以外では死なないとは言ったがそれはあくまで主要キャラの場合だもんな
なら小鳥さん倒されたらハッピーエンド迎えれるのか?
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:12:08.25 ID:l+ivFJemO
ー 月の地下中心核 ー



律子「……美希、いつでもサポートできるように準備して。貴音は下がって詠唱を」

美希「うん!」

貴音「承知しました」

律子「千早、どんな攻撃を仕掛けてくるか分からないから慎重に行くわよ」

千早「ええ!」

タタタ…



小鳥「いい指示です、律子さん。今の四人を効率的に機能させる一番の指示だと思います」

小鳥「……それに『意味があるかどうか』は置いておいて、ね」



小鳥「私の最強の必殺魔法、見せてあげるわ……」

ゴゴゴゴ…



貴音「! これはっ……!」ピクッ

美希「なに、この魔力……!?」ゾクッ



小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



千早「メガフレア……! 例の魔法ね……!」

律子「美希、防御を!」



小鳥「……合わせて、メガフレアッ……!!」バッ




千早「えっ!?」

律子「ちょっ……詠唱なしなの!?」

美希(防御が、間に合わないのーー!)



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:14:11.31 ID:l+ivFJemO

千早「……くっ……!」

律子「な……なんて……破壊力……!」

美希「うぅっ……」

貴音「……凄まじい威力……。態勢を立て直さねば……!」



小鳥「……さて、まだ行くわよ!」バッ



貴音「!」



小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



律子「連続で……!?」

千早「っ……させないわ!」ダッ

千早「はあああっ!」ブンッ


小鳥「……フレア」バッ


ブゥゥゥゥゥン…


バババババババババッ!!



千早「ああっ……!」

…ドサッ


律子「ち、千早っ!」

貴音「片方のふれあだけを発動……!? その様に器用な芸当もできるとは……!」

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:15:55.01 ID:l+ivFJemO

千早「く……っ……」グッタリ



小鳥「みんながここへ向かっている間、亜美ちゃん真美ちゃんの戦いを見たんだけど……。思わず笑っちゃったわ」

小鳥「だって魔法を複数同時に発動するなんて、私と全く同じことを考えているんだもの」



小鳥「とはいっても……。たぶん、魔法の威力は私の方がちょっぴり上だと思うけどね」ボゥ



千早「はぁ……はぁっ……」

千早「来るっ……!」ヨロッ

貴音(おそらく、次の攻撃を受ければ千早が危ない……!)


小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



貴音「……ふれあ!」バッ


ブゥゥゥン…


小鳥「! ……フレア」バッ


ブゥゥゥン…


ババババババッ!!

161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:18:07.96 ID:l+ivFJemO

小鳥「そういえば、貴音ちゃんも詠唱略で魔法を撃てるんだったわね」

小鳥「……けど、私の攻撃速度について来れるかしら?」ボゥ



貴音「! もう次の魔法を……!」

律子「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん……!」ゴゴゴゴ


小鳥「間に合ってませんよ、律子さん。……フレア」バッ

ブゥゥゥン…

ババババババッ!!



律子「ぐっ……!」

ドサッ


貴音「律子嬢!」

美希「っ……!」ザッ

貴音「……美希!」

美希「うんっ!」

美希「ケアルガ!」バッ

シャララーン! キラキラキラ…!



小鳥「ジリ貧って感じね……」ボゥ

小鳥「……合わせて、メガフレア!」バッ



律子「っ……!」ダッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!



P(なんだこれ……こんなに圧倒的なのか……?)

P(でも、このままやられてしまうほどみんなも弱くないはず……)

P(みんな……!)

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:19:38.57 ID:l+ivFJemO

千早「………」グッタリ



千早「……ぅ……」

千早「………」

千早「はぁ、はぁ……」ヨロッ

千早(……まだ、生きてるみたいね……)

千早(成す術がなかった……。まさかあんなに攻撃のサイクルが早くなるなんて……)




貴音「……けあるが」バッ

シャラララーン! キラキラキラ…!


貴音「無事ですか、千早」

千早「四条さん……。助かりました」

千早「美希と律子は……?」

貴音「……あちらに」スッ



律子「うっ……」グッタリ

美希「律子! しっかりしてなの!」ダキッ



千早「律子……!?」

貴音「二度目のめがふれあの時に美希を庇ったようです。回復はしましたが……」

163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:21:49.48 ID:l+ivFJemO

貴音(僅か数度の攻防で壊滅寸前……。今までとはまるで桁が違う……。速さも、威力も……)

貴音「………」グッ



貴音「……ここは、わたくしが前へ出ます」

律子「そ、それはダメよ……。あなたは魔道士で特別打たれ強いわけじゃないんだから……!」

律子「今までどおり私が……………うっ!」

貴音「魔法攻撃への耐性ならば、律子嬢よりはあると思っています」

貴音「……美希、皆の回復をお願いしてもよろしいですか?」


美希(小鳥……)

美希(違うよね? ミキたちを殺そうなんて、そんなこと考えてないよね……?)


貴音「……美希?」

美希「……あ、う、うん。なに?」

貴音「回復を。それと、少し離れていてください」

美希「貴音、ひとりでやるの……?」

千早「待ってください四条さん」

千早「私も、行きます」

貴音「わたくしにも小鳥嬢のめがふれあに対抗する手立てが思いついたわけではないのです。ですから……」

千早「それでも構いません。あなたひとりでは危険すぎます」

貴音「……分かりました。ならばお願いします」

貴音「では……」

千早「はい!」

タタタ…

164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:24:56.40 ID:l+ivFJemO

美希「律子…さん、ごめんなさいなの。ミキを庇ったせいで……」

律子「バカね、そんなこと気にしなくていいのよ」

律子「……この世界へ来て最初の頃に、色々な人を傷つけてしまった反動かしらね」

美希「えっ……?」

律子「今は、誰かを守りたいっていう思いが湧き上がってくるの」

美希「でも、律子…さんが死んじゃったら、ミキどうしたら……!」

律子「死ぬって、美希……」



律子「…………あー、もしかしてそういうこと?」

美希「え……?」

律子「おかしいと思ったのよね」

律子「プロデューサーも見てるっていうのに全然目立とうとしないし、美希、あなたこの戦いの最中ほぼずっと裏方に回ってたじゃない?」

律子「何か気になってることでもあるのかなって思ってたけど……」

律子「もしかして、この戦いで誰かが死んでしまうことを気にかけてたの?」

美希「それは……」

美希「………」

律子「大丈夫よ。そんな事態は起こらないように細心の注意を払うつもりだから」ギュッ

美希「律子……」

律子「それに、もし最悪死んでしまったとしても、ここがゲームの世界ならたぶんあるはずなのよ」

美希「あるはずって、何が?」

律子「…………蘇生魔法」

美希「!」

165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:28:27.57 ID:l+ivFJemO

小鳥「四人でもどうにもならなかったのに、二人だけで私に敵うと思ってるのかしら?」



貴音「……やってみなければわかりません」

貴音「……!」ゴゴゴゴ

千早「………」チャキッ

 

小鳥(ここまでの戦いを見る限り、魔法防御は四人の中で貴音ちゃんが一番高そうね)

小鳥(被害を小さくするために体力の高い千早ちゃんと一緒に前に出てくるのは妥当……かな?)

小鳥(……ううん、貴音ちゃんのことだから何か考えがあるのかも)

 

貴音「すみません、貴女にこの様なことをお願いするのは心苦しいのですが……」

千早「いいえ、それしか方法がないのなら、試すべきです」

貴音「……はい」

貴音「準備は良いですか、千早」

千早「……いつでも」チャキッ




小鳥「……百聞は一見にしかず、か」

小鳥「私のメガフレアにどう対応するつもりなのか、見せてもらいましょうか……」

166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:30:10.14 ID:l+ivFJemO

小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



貴音「いざっ……!」ダッ

千早「行きます!」ダッ

タタタ…



小鳥(二人一緒に真っ直ぐ来た……? それで私のメガフレアをやり過ごせるの……?)



貴音「……!」ゴゴゴゴ



小鳥「……フレア!」バッ



千早「……ホーリーランス!」チャキッ


キラキラキラ…!

ズドドドドドドドドドッ!!



ドゴオオオオオオオオンッ!!!



千早「ぐっ……!」ズザザザ



小鳥「それじゃあ私のフレアは防げないわ」




貴音「……夜闇の翼の竜よ……怒れしば我と共に……!」ゴゴゴゴ




小鳥「……なるほど、千早ちゃんは時間稼ぎか……」

小鳥「でも残念、私の方が早いわね」ボゥ

小鳥「………………メガフレア!!」バッ


ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:33:19.48 ID:l+ivFJemO

小鳥「千早ちゃんが時間稼ぎして貴音ちゃんの詠唱を間に合わせようとしたみたいだけど、考えが甘かったわね」

小鳥「私のメガフレアは、十分な威力と溜めの短さ、さらに分割で発動させるコンパクトさも兼ね備えた、全てにおいて最強の魔法」

小鳥「色々考えてたどり着いたこの『万能メガフレア』……」

小鳥「絶対に負けることはないわよ……!」





……ザッ

貴音「…………はぁ、はぁっ……」

貴音「……怒れしば、我と共に……!」ゴゴゴゴ



小鳥「嘘!? 耐えた……!?」



貴音「……めがふれあ!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!



小鳥「く……!」

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:36:03.30 ID:l+ivFJemO

小鳥「……流石の威力ね、貴音ちゃん……」

小鳥「バハムートさんを倒しただけあるわ……」


小鳥(……でも、貴音ちゃんらしからぬ強引な作戦だった。こちらにダメージがあったとはいえ、向こうの被害も小さくない)

小鳥(裏を返せば、他にロクな作戦を思いつかなかったってことにもなるか)



貴音「…………うっ……!」ガクッ




小鳥(魔法の詠唱中っていうのは隙ができるものだし、結構効いたでしょうね……)



貴音「……まだですっ……!」ヨロッ



小鳥(……ううん、相手を心配してる場合じゃないわ。この戦いはどっちかが倒れるまで終わらないんだから)

小鳥(私が倒れるか、みんなが倒れるか……)

小鳥(この物語に決着をつける方法は、それしかない……!)


小鳥「……さあ、行くわよ……!」ゴゴゴゴ



千早(……これ以上は、おそらく無謀ね)

千早「四条さん。一矢は報いました、一旦引きましょう」

貴音「しかし……」



小鳥「……逃さないわ……!」ボゥ



貴音「!」

千早「……失礼しますっ!」ダキッ

貴音「ち、千早……?」



小鳥「!? ちはたか……だとっ……!?」



千早「……はっ!」タンッ

フワッ…



小鳥「あっ、逃げられちゃった!」

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:39:00.31 ID:l+ivFJemO

…スタッ

貴音「……すみません、千早」

千早「いえ、一撃を与えられただけでも十分だと思います」 

美希「二人とも大丈夫!? ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!



律子「……どう? 小鳥さんのメガフレア、攻略できそう?」

貴音「やはり、あの発動の早さが厄介ですね。わたくしのめがふれあはどうしても詠唱に時間がかかってしまいますし……」

律子「そう……。現状では攻撃力の高い貴音のメガフレアが勝敗の鍵を握ってると思うんだけど……」

律子「やっぱり誰かが小鳥さんの注意を引きつけて、その隙に他の人が攻撃するしかないか……」

美希「……ううん、それもきっとムリだよ。だってさっきの小鳥、フレアを二つ同時に、ほとんど一瞬で出したの」

美希「もしそれを別々に自由自在に撃つことができるとしたら、たぶん……ミキたちに逃げ道がないのと同じって思うな」

千早「あの速度と威力で攻撃され続けたら、こちらはかなり苦しいわね」

律子「そうなるとあとは、小鳥さんの魔力が切れるまで待つか……。いえ、そんな消極的な策じゃダメ……」

律子「せめてあと何人かいてくれれば、突破口は開けると思うんだけど……」




小鳥「そんな都合の良い展開はありませんよ」




四人「!!」

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:40:59.27 ID:l+ivFJemO

小鳥「のんびりなんてさせません。私は、みんなを倒さなければならないんですから……!」ボゥ



美希「!」

律子「……建前よ。本心じゃない」チャキッ

美希「……うん」

律子「悪役の演技もすっかり板に付いてきましたね、小鳥さん? 今から女優も目指せるんじゃないですか?」



小鳥「………」

小鳥「建前なんかじゃないってこと、証明してあげます……!」ボゥ



貴音「来ます……! 美希!」

美希「わかってるの!」

美希・貴音「シェル!!」バッ

ポワーン…



小鳥「ここまできたら防御なんてもう意味ないわ……! 貫いてあげるっ……!」

小鳥「……合わせて、メガフレア!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:44:20.41 ID:l+ivFJemO

美希「ぅ……」

律子「く……!」

千早「はぁ、はぁ……!」ヨロッ

貴音「……み、美希……魔法は使えますか……?」

美希「う、うん……今……回復するのっ……!」ヨロッ



…ザッ

小鳥「……その前に、全滅コースね」ボゥ



美希「こ、小鳥……!」

貴音「魔法が、間に合わない……!」

律子「みんなは……私が……守るっ……!」チャキッ

千早「はぁ、はぁっ……!」チャキッ



小鳥「私のメガフレアに三度耐えるのは、スタミナのある千早ちゃんや魔法防御の高い貴音ちゃんでも不可能だと私は踏んでる」ボゥ

小鳥「……残念だったわね。あなたたちはここでゲームオーバーよ」

小鳥「…………合わせて、メガフレアッ……!!」








「ふぃ〜……やっととーちゃくだよー」

「待たせたなみんな! 自分たちが来たからにはもう安心だぞ!」



小鳥「えっ……!?」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/17(金) 16:45:36.95 ID:l+ivFJemO

ブゥゥゥゥゥン…



亜美「……って、うあうあ〜! なんかくるよ〜!」

響「うぎゃ〜!!」



バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!



173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 09:42:48.55 ID:4owirf1Oo
半年以上経っちゃったな

ひっそり待ってるからいずれ戻ってきてほしい
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:46:58.70 ID:91IMrmsjO

亜美「うぇ……」グッタリ

響「うぅ……」グッタリ



律子「あ……亜美!?」

貴音「響……!」

千早「二人とも、大丈夫……!?」

美希「っ……!」ヨロッ

美希「……ケアルガ!」バッ

シャララーン! キラキラキラ…!



亜美「うぅ……せっかくカッコよく登場しようと思ったのに〜」

響「だからちゃんと様子見てから行こうって言ったんだ。亜美が『勢いが大事』とか言うからだぞ!」

亜美「ひびきんだってノリノリだったじゃんかー!」

美希「なんかモメてるの」

千早「緊迫していたはずなのに、二人を見てると気が緩んでしまいそうになるわね」

貴音「ともかく、二人が考えなしに突撃してくれたおかげで全滅の危機は免れたようです。助かりました」

律子「まったく、タイミングがいいんだか悪いんだか……」

亜美「いやあ、それほどでもあるよ〜!」

響「褒められてるのか微妙なところだぞ……」

175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:48:45.87 ID:91IMrmsjO

P(今のは……かなり危なかったと思う。響と亜美が割り込んでこなければどうなっていたか……)


小鳥(完璧にとどめになると思ったけど……)

小鳥(律子さんたち、亜美ちゃんと響ちゃんに救われたわね)

小鳥(………)

小鳥(救われたのは、律子さんたち?)

小鳥(それとも……)




亜美「ていうかみんなボロボロじゃん! もしかしてホントにピンチだったの?」

千早「ええ、状況的にはかなり劣勢と言ってもいいと思う」

亜美「ほほーう……」

亜美「ひびきん、こりゃカツヤクするチャンスかもしんないよ?」

響「へへ、どうやらそうみたいだなっ!」

響「みんな、少し休んでてよ。ここは自分と亜美でなんとかしてみせるっ!」グッ

律子「な、何言ってるのよ!?」

美希「二人だけじゃキケンなの!」



小鳥「………」



亜美「ねえねえ、ピヨちゃんも亜美たちがどんだけ強くなったか知りたいっしょ?」



小鳥(無謀……というか、きっと二人とも今のシリアスな空気を読めていないのね)

小鳥(早いところ格付けを済ませてしまいましょうか)

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:51:10.97 ID:91IMrmsjO

小鳥「……いいわ。それじゃあお姉さんの怖さを思い知らせてあげる……!」ゴゴゴゴ



亜美「おおぅ……ビリビリくるよ……!」

亜美「まさに最終決戦ってカンジだね!」

響「……なんだかピヨ子、ちょっとおっかないぞ」



P(亜美と響……黒魔道士に飛空艇技師)

P(亜美は音無さんと同じで魔法を複数同時に出すっていう技があるが、さっき音無さんも言っていたとおり、魔法の威力そのものに差があるだろう)

P(亜美が簡単に音無さんより優位に立てるとは思えないが……)

P(でも亜美のことだ、何か秘策があるのかもしれない)

P(響は足技メインの格闘術だけど、速さはともかく攻撃力はそこまで高くなかったはず)

P(ただ、親衛隊との戦いで響が使っていたあのよくわからない技のポテンシャルが未知数だ)

P(もしかしたら、もしかするのか……?)



亜美「そんじゃひびきん、プランBでいくよっ!」

響「いや、だからそんな打ち合わせしてないってば!」

タタタ…

律子「あっ、こら! 待ちなさい!」

貴音「……あの二人ならば、もしかしたら……」

律子「えっ……?」

177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:53:33.03 ID:91IMrmsjO

亜美「へへん! ピヨちゃんの魔法なんてこわくないもんねっ!」



小鳥「そう言っていられるのも今のうちだけよ……?」



亜美「えっ、そうなの? じゃあ今のうちにイッパイ言っとかなきゃ!」

亜美「ピヨちゃんなんてこわくないピヨちゃんなんてこわくないピヨちゃんなんてこわくない……」

亜美「ホラ、ひびきんも!」

響「えっ? じ、自分はいいよ」



小鳥「すぐに生意気な口を聞けないようにしてあげるわ……」



亜美「……ひびきん、まずは亜美から行くよ!」

響「わかった。フォローは任せて!」

178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:54:49.72 ID:91IMrmsjO

小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



亜美「……右手にファイガ、左手にファイガ……」ボッ



律子「フレアとファイガじゃ、どっちが強いかなんて明白じゃない……!」



亜美「追加でもういっちょファイガ……!」ボッ



美希「三つ目……。でも、それでもまだ小鳥にはゼンゼン敵わないの……」



小鳥「合わせて、メガフレア!」バッ



亜美「くらえ〜〜!! 鳳翼天翔〜〜っ!」バッ



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!


ゴオオオオオッ!!



ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:56:32.03 ID:91IMrmsjO

小鳥「そんなレベルの魔法で私と張り合うつもり?」

小鳥「正直、負ける気がしないわね」ボゥ



亜美「くっ……そぅ……!」ヨロッ

響「ううっ……!」ヨロッ

響(め、めちゃくちゃな強さだぞ……)

響(これ、本当にどうにかできるのか……?)



美希「亜美、響、回復するの!」ダッ



小鳥「……フレア」バッ


ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!


美希「あぅ……!」

ドサッ

千早「美希!」



小鳥「これは私と二人の勝負よ。水を差すような真似はやめてね?」

小鳥「さあ、続けましょう」



律子「こっちは行動すらままならない……。こんなのどうしろっていうの……」

貴音「……大丈夫です。二人を信じましょう」

貴音「それに、わたくしには一筋の光明が確かに見えました」

律子「貴音……?」

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:58:23.45 ID:91IMrmsjO

亜美「へ……へへっ、ピヨちゃんもなかなかやるね……」

亜美「でも、亜美の方がもっともっとスゴイってこと、教えたげるかんねっ……!」バッ

響(亜美、強がりなのか……?)

響(でも、そうだな。雰囲気で負けたらダメな気がする)

響(強気でいかなきゃ!)

響「亜美、まだ行ける?」

亜美「トーゼン! 亜美の実力はこんなもんじゃないんだよ!」

響「次またダメだったら、今度は自分が行くからね!」

亜美「うん、わかったよ」

亜美「あとさっきはサンキュ、ひびきん」

響「当たり前のことをしただけだぞ。だって自分たちはチームなんだから!」

亜美「……へへ、そーだったね!」




小鳥「右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



亜美「ブリザガ…………×3!」コオォ



小鳥「……メガフレア!」バッ




亜美「オーロラ・エクスキューションッ!!」バッ

キラキラキラ…!

コオオォォ…!!



ブゥゥゥゥゥン…

バババババババババッ!!

ズドドドドドドドドドオオオオオンッ…!!!

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:00:40.42 ID:91IMrmsjO

亜美「……く……ぬぬぅ…………」ヨロッ

響「だ……大丈夫か、亜美……」ヨロッ

亜美「ぜ、ゼンゼンヘーキだよー! 亜美はまだまだ元気モリモリだかんね!」



P(どういうことだ……?)

P(魔法防御が高い貴音ですら一撃を耐えるのに苦労していたのに、亜美と響はもう音無さんのメガフレア二発分を耐えている……)

P(二人もそれだけ強くなったってことなのか……?)



千早「……美希、今の見えた?」

美希「うん、ギリギリ。びっくりなの」

律子「……なるほど、貴音が見えた光明って『これ』のことだったのね」

貴音「ええ……」



貴音(……流石は響、765プロ最速です)

貴音(まさか、小鳥嬢のめがふれあの速度に反応するとは……)

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:02:44.53 ID:91IMrmsjO

小鳥(……確かに見えたわ)

小鳥(私がメガフレアを撃つタイミングに合わせて響ちゃんが亜美ちゃんを抱えて跳んだのを)

小鳥(完全に回避できたわけじゃないみたいだけど、直撃は外されたってところかしら)

小鳥(それを狙ってやったんだとしたら、恐るべき反射神経、瞬発力……)

小鳥(………)




響「……約束だ、亜美。次は自分が行く」スクッ

亜美「任せたぜぃひびきん……。とっておきの技、期待してるよ!」

響「……うん」

響(はっきり言ってピヨ子のメガフレアに対抗できるか自信はない)

響(でも、やらなくちゃ……!)



小鳥(響ちゃんの技って……)

小鳥(確かプリンちゃんたち相手に使ってたナントカ砲っていうやつだったわよね)

小鳥(なんであんなことができるようになったかは謎だけど、そこまで強そうな感じはなかった)

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:05:09.36 ID:91IMrmsjO

響(もしピヨ子のメガフレアに負けちゃったら、その時は……)

響(ナンクル砲を撃ったあとじゃ素早く動けないし、そうなると直撃を避けるのは不可能になる……)

響(せめて亜美だけでも安全なところに逃したいけど……)

響(……ダメだ。考えがまとまらない)

響(……あ〜もうっ! ごちゃごちゃ考えるのはやっぱり自分には合わないぞ)

響(負けちゃったらその時また考えればいいんだ!)



響「来い、ピヨ子!!」




小鳥「………」



小鳥「……右手にフレア、左手にフレア……」ボゥ



響「………」スッ



律子「響が構えた……けど、何をするつもり? 魔法は使えないはずだし……」

美希「………」

貴音(響……)

千早(我那覇さんは、きっとあの時身につけた技を使うつもりなのね)

千早(あの技がどれだけの威力なのか。この戦いの行く末はそれに懸かっている気がする……)




小鳥「…………合わせて、メガフレア!!」バッ



ブゥゥゥン…



響「…………ナンクル砲ッ!!」


ピカッーー!


キュイイイイイイイン…




小鳥(…………え!?)



響「はあッ!!」バッ




ズドオオオオオオオオオオオンッッ!!!

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:07:02.27 ID:91IMrmsjO

小鳥「………」



響「………」



律子「……!?」



律子「響の技が……」

美希「小鳥のメガフレアとカンペキに相打ちなの……!」

千早「すごい、我那覇さん……!」

貴音「…………流石です、響」ニコッ




響「あ、あれ…………?」



亜美「ひびきんかっけえええええ! なに今の技ー!?」

響「ウソ……? ナンクル砲ってこんなに強かったのか……?」ボソッ

亜美「……ひびきん?」

響「あ……う、ううん! なんでもないぞ!」

響「ふ、ふふーん! 見たかピヨ子! これが自分の実力さー!」ビシッ



P(やったな、響……!)


小鳥「………」

185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:09:29.49 ID:91IMrmsjO

小鳥(……そっか。考えてみれば、物理攻撃には無敵のあのプリンちゃんたちを何度もノックアウトし続けてきた技だものね)

小鳥(あの驚きようだと、自分でもここまでの威力だと思っていなかったみたい)

小鳥(それと、相殺したという事実もそうだけど、注目すべきは技の発動までの時間)

小鳥(ほとんどタメなしのノータイムだった。それであの威力……)

小鳥(まるで私の万能メガフレアに対抗するためにあるような技ね)

小鳥(思わぬところに伏兵がいたわ)



小鳥(……でも、それでも私には勝てない)

小鳥(どんなに上手く立ち回ったとしても、私には絶対に勝てないのよ)

小鳥(私とみんなには、『根本的な違い』があるんだから……)

186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:40:45.07 ID:91IMrmsjO
ー 次元のはざま ー


春香「……大気満たす力震え、我が腕をして
閃光とならん……!」チャキッ



春香「無双……稲妻突きッ!!」ブンッ



クルーヤ「……聖光爆烈破ッ!!」ブンッ



キラキラキラ…!!

ズドオオオオオオンッ!!!



春香「うぁっ……!」

ズザザザ…!




クルーヤ「……その程度かい?」



春香「……まだまだですっ!」チャキッ

春香「死兆の星の七つの影の……経絡を断つ!」

春香「……北斗、骨砕打ッ!」ブンッ



クルーヤ「……聖光、爆裂破!」ブンッ


キラキラキラ…!

ズドオオオオオオンッ!!!




春香「……うっ……」

ドサッ

187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:42:10.71 ID:91IMrmsjO

クルーヤ「啖呵を切った割にはお粗末だね」

クルーヤ「さっきは確かに君のことを褒めた。ボクは褒めて伸ばす主義だからね」

クルーヤ「けど、この程度だったとは。……ボクは君のことを少し過大評価していたのかもしれないな」



春香「……はぁ、はぁっ……」

春香(……ダメだ、私の剣は全部お父さんの聖光爆裂破に負けちゃう……)

春香(これでも全力なのに……)



クルーヤ「さて、ボクもそんなに時間に余裕があるわけじゃない」

クルーヤ「世界の敵である君には……そろそろ消えてもらおう」チャキッ



春香(ダメ、ここで負けるわけにはいかない……)

春香(ここで倒れちゃったら、なんのためにここまで来たのかわからないよ……!)

春香「……!」チャキッ

188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:43:33.96 ID:91IMrmsjO

クルーヤ「……誰だって死にたくはない」

クルーヤ「志半ばにして果ててしまうことほど無念なことはないのだから」

クルーヤ「でも君の思い通りにはさせない」

クルーヤ「この世界の平穏のために、コトリさんには眠ってもらう」
  


春香「私は……」

春香「絶対に小鳥さんを救ってみせるッ!」チャキッ

春香「命脈は無常にて惜しむるべからず……葬るッ!」

春香「……不動、無明剣ッ!」ブンッ



ゴオオオオオッ…!!



クルーヤ「まだわからないのか……」

クルーヤ「……聖光、爆裂破ッ!」ブンッ


キラキラキラ…!

ズドオオオオオオンッ!!!



春香「…………う……」

…ドサッ



クルーヤ「………」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:45:32.57 ID:91IMrmsjO

春香「…………ぅ……」



クルーヤ「………」

クルーヤ「……ハルカ、君はわがままだ」



春香「…………え……?」



クルーヤ「君がコトリさんを救ったとして、その先には何が待っている?」

クルーヤ「人々はコトリさんを受け入れるだろうか? いや、簡単に受け入れられはしない」

クルーヤ「悪を許したところで、この世界の人々が失ってしまった大切なものは戻ってこないのだから」



春香「!」




クルーヤ「人々の疑念はやがて確執へ変わり、コトリさんは孤独を知り、いずれ再びこの世界に危機が訪れる。悲劇は繰り返される。悪とはそういうものだ」

クルーヤ「たとえコトリさんがどんなに優しくていい人だからって、例外はないんだよ」



春香「…………ち、違う……」



クルーヤ「君は君の想いを叶えるため、世界中の人々を危機に陥れようとしている」

クルーヤ「それをわがままと言わずに何と言う?」



春香「…………そ、それは……」



クルーヤ「ボクは見過ごせない。悲劇を繰り返させやしない」

クルーヤ「自分の娘だからといって……容赦はしない……」チャキッ



春香「く……!」ヨロッ



クルーヤ「聖光爆裂破を三度受けてもまだ立つその精神力は流石だ」

クルーヤ「それだけ君の想いもまた、譲れないってことなんだろう」

クルーヤ「でもそれなら……」

クルーヤ「ボクはそのさらに上をいく想いを剣に乗せるだけだ……!」ゴオオッ…!

190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:47:28.92 ID:91IMrmsjO

春香(今までの技じゃきっとお父さんには勝てない……)

春香(だったら、やってみるしかないよね……!)



春香「はあああああっ……!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「!」

クルーヤ「使うつもりなのか……」

クルーヤ「いいよ。君の想いの強さ、見せてごらん」

クルーヤ「…………ハルカ!」チャキッ



春香「……天の願いを胸に刻んで心頭滅却……!」

春香「……聖光、爆裂破ッ!」ブンッ


クルーヤ「聖光、爆裂破!!」ブンッ



キラキラキラキラ…!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!



クルーヤ「………」



春香「…………う……」ガクッ

…ドサッ



クルーヤ「一流の聖騎士は技を一度見ただけで覚えてしまう。確かにそれはそうだ」

クルーヤ「しかし、覚えた技の真価を発揮できなければ、それは何の意味もない」

クルーヤ「君の聖光爆裂破は……」

クルーヤ「君の想いはボクの想いすら超えられない、その程度のものだったってことだ」



春香「………」グッタリ

191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:48:59.53 ID:91IMrmsjO

春香(私の想いは……お父さんの想いすら超えられない……)

春香(わがまま……なのかな……)

春香(そうだよね……。やっぱりそういうことになっちゃうよね……)

春香(ゲームをクリアして私たちがこの世界からいなくなったら、その後はどうなるんだろう)

春香(……ううん、違う。お父さんが言ってるのはきっとそういうことじゃないんだ)

春香(だって、お父さんやこの世界の人たちにとっては、このゲームの世界が全てだから)

春香(だから守りたいものを守って、それを脅かすものと必死で戦うんだよね)

春香(それに対して、私たちは違う。帰るべき場所がこの世界とは別にある)

春香(だからこそ、考え方にすれ違いが生まれちゃうんだ……)

春香(お姉ちゃんが言ってたっけ。『お父さんはお姉ちゃんの目的を邪魔する敵でしかない』って)

春香(あの言葉も、もしかしたら間違っていなかったんじゃ、って思えちゃうよ……)

192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 17:50:33.16 ID:91IMrmsjO

クルーヤ「……さて」チャキッ

ブンッ!



ズドドドドドオオォォン!!



春香「うあっ……!」

ドサッ



クルーヤ「そろそろ休憩は終わりだ、ハルカ」




春香「……はぁっ、はぁ……!」



クルーヤ「……天の願いを刻んで心頭滅却……」ゴゴゴ



春香「来る……!」チャキッ

春香(もう一度、やってみるしかない……!)ゴゴゴ



クルーヤ・春香「聖光、爆裂破ッ!!」ブンッ



キラキラキラ…!!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!

193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/24(土) 22:27:57.64 ID:9T7P1WuA0
いよいよ終わりが近いな・・・
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:08:15.81 ID:AAdq5sgSO
ー 回想 月の地下渓谷 B9F ー



真美「ぜぇ……ぜぇ……」

真美「ど……どうだ、全力の10倍エスナ……。これが今の真美にできるせいいっぱいだよ……!」

やよい「おねがいしますっ……!」ギュッ




パァァァーー!!



真美「うおっまぶしっ!!」




「……誰のでこがまぶしいですって……!?」




真美「その甘いボイスは!」

やよい「伊織ちゃんっ!!」



伊織「……待たせたわね、スーパー忍者アイドル伊織ちゃんの復活よっ♪」

195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:09:26.09 ID:AAdq5sgSO

真美「……ふぃ〜、なんとかなった〜」

やよい「うー、よかったです〜!」

伊織「………」

やよい「……伊織ちゃん、どうかしたの? まだどこか痛い?」

伊織「ううん、そうじゃないの」

伊織「あんたたちが、私を助けてくれたのよね?」

真美「あーいやいや。真美は当たり前のことしただけなのだよ。そんなのぜーんぜん気にしなくていいから」

真美「ゴージャスセレブプリンとか気にしなくていいからね?」

伊織「私のせいで、迷惑かけてごめんなさい」ペコリ

真美「……あり?」

伊織「それとありがとう。助かったわ」

真美「むぅ……そう素直にお礼言われちゃうと調子狂うな〜」

伊織「ま、ゴージャスセレブプリンくらい帰ったら飽きるほど食べさせてあげるわよ」

真美「よっしゃ!」グッ

やよい「真美、おつかれさま!」

196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:11:46.98 ID:AAdq5sgSO

伊織「……で、状況はどうなってるの? 確か私は響と一緒にいたはずだけど」

真美「うむ。話せば長くなるのじゃが……」

やよい「えっと、かくかくしかじかかなーって」

真美「その言葉ホント便利だよね」



伊織「……そうなのね。響と亜美が……」

真美「で、やよいっちに手伝ってもらっていおりんを治療して今に至るってカンジだね」

真美「あ、そーいえば魔物くんは……」チラッ



魔物「………」グッタリ



真美「魔物くん!?」

タタタ…

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:13:40.93 ID:AAdq5sgSO

真美「魔物くんしっかり!」ガシッ

魔物「が、ガル……」グッタリ

伊織「なんで魔物が……? やよい、これどういうこと?」

やよい「あのね、まものさんはまものさんなのにまものさんからわたしたちをまもるためにまものさんとたたかってくれて……」

伊織「え、えーと……つまり味方してくれたってことでいいのよね?」

真美「魔物くん、死んじゃダメだ! ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!

魔物「ガ……グ……ガルル……」

真美「なに……? なんて言ってるの……!?」

やよい「………」

やよい「『ボクはもう、長く生きられない』って……」

真美「そ、そんなのダメっしょ!」

魔物「が、ガル……ガルル……」

やよい「『こんなボクでも、最期に真美ちゃんの役に立ててよかった』って……」

真美「そんな……!」

真美「ダメだ! 目を開けてよ!」

魔物「ガ……ル……」

魔物「」ガクッ




真美「魔物くうううぅぅぅぅぅんッ!!!」

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:15:30.94 ID:AAdq5sgSO

真美「なんで……! なんでいっちまったんだよ〜!」

真美「メッチャ気のいいヤツだったのに……!」グスッ

伊織「真美……」

やよい「………」

やよい「泣かないで、真美。だいじょーぶだから」

真美「えっ……?」グスッ

伊織「やよい……?」

やよい「……翔太くん、おねがいしますっ!!」バッ


スゥゥゥーー…



翔太「へへ、ようやく僕が活躍できる時が来たんだね!」

翔太「生命をもたらしたる精霊よ……今一度我等がもとに!」

翔太「……レイズ!」


キラキラキラ…! パァァ…!

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:16:58.01 ID:AAdq5sgSO

魔物「………」

魔物「っ……!」ドクン

伊織「!!」

真美「ま……魔物く〜ん!!」ダキッ

魔物「ガ……ガルル……?」

真美「よかった〜!」

伊織「生きかえっ……た……?」

伊織(……前に貴音が生き返ったって話は聞いていたけど、本当にあったのね、こんな夢みたいな魔法が……)

伊織(そういえば、御手洗翔太ってここまでの冒険で活躍したの見たことがなかったけど、まさかこんな力を持っていたなんて……)





真美「魔物くん、これからも真美のせくちーさを魔物たちに広めてね!」

魔物「ガルッ!」シュタッ

伊織「えっ、まさか真美が泣いてたのってそういう理由なの?」

200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:18:44.20 ID:AAdq5sgSO

翔太「せっかく初の活躍なのに生き返らせたのが魔物って……」

北斗「ドンマイ、としか言えないな……」

冬馬「気にすんなよ翔太、な?」

翔太「僕の存在意義って一体……」ズーン



伊織「………」

伊織「……いいえ、ちゃんとあるわよ、あんたの存在意義」

翔太「えっ?」

伊織「っていうかもう、あんたのその力は私たちの最後の切り札と言っても過言ではないわね」

翔太「だ、だよね! うん、僕もそう思ってたんだよー!」

冬馬「……ちょっと待てよ水瀬、お前まさか最後の戦いで死人が出るとか考えてるのか?」

伊織「…………さあ、どうかしらね」

冬馬「お、おい、マジかよ……」

冬馬「そんなことあり得るのか? 現実の世界じゃないからって、リアルに痛みとかはあるんだぜ? そんな世界で仲間に殺されるかもしれないとか……」

冬馬「実行する方もその可能性を考慮する方も理解できねぇよ……」

真美「いや〜、甘いねぇあまとうは。縄タイムアラベスクってやつだねぇ」

伊織「名は体を表す、ね」

冬馬「確かに甘いものは嫌いじゃねえけどそういうことじゃねえよ!」

冬馬「あとあまとうって呼ぶな!」

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:20:34.43 ID:AAdq5sgSO

冬馬「ていうか、お前らそこまで複雑なことになってたんだな……」

真美「フクザツ? ゼンゼン単純っしょ?」

真美「だってここ、ゲームの世界だし。真美たちはその登場人物なんだからさ」

真美「ラスボス戦で死んじゃうことだってそりゃーあるわけさ」

やよい「わたしは誰かが死んじゃうの、ほんとならぜったいにいやですけど……」

やよい「でも、翔太くんがいるのでへーきです!」

伊織「……もちろん、誰かを死なせるなんて最優先で忌避すべき事態ではあるけどね」

伊織「天ヶ瀬冬馬。あんたの不安は分かってるわ」

伊織「簡単に人を殺したり、生き返らせたり。そういう事に私たちが慣れを感じちゃうんじゃないかって事よね?」

冬馬「………」

伊織「なんて顔してんのよ。大丈夫に決まってるじゃない」

伊織「私はみんなを信じてるし、小鳥のことも信じてる」

伊織「その信頼さえあれば、何があっても大丈夫なのよ」

伊織「仲間って、そういうものでしょ?」

冬馬「………」

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:23:30.23 ID:AAdq5sgSO

冬馬「……だったらさ、俺も信じさせてくれねえか」

冬馬「お前たちの絆、俺にも信じさせてくれ」

翔太「僕も信じたい。だって、やよいちゃんたちを見てると本当に何があっても大丈夫なんじゃないかって思うし」

北斗「俺たちも、君たちの仲間に入れてほしいんだ」

真美「おお……」

やよい「みなさん……!」

伊織「………」



伊織「……まったく、何寝ぼけたこと言ってるのかしらね」

伊織「あんたたちは、もうとっくに私たちの仲間よ?」

伊織「あんたたちがいてくれて心強いって思うし、その信頼は私たちの更なる力になるのは間違いないわ」

伊織「私の方こそお願い。私たちのこと、最後までちゃんと信じなさいよね」

冬馬「水瀬……」

翔太「へへっ……!」

北斗「……ありがとう」



真美「思ったんだけどさ、いおりんちょっと急激にデレすぎじゃない?」

伊織「う、うるさいわね! いいでしょ別に!」

やよい「えへへっ、みんな仲良しが一番です!」

伊織「そんな事より、グズグズしてないで出発よ!」

伊織「伊織ちゃんの華麗な活躍はこれからなんだから!」

203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:26:56.60 ID:AAdq5sgSO
ー 次元のはざま ー


春香「…………っく……」

春香「はぁ、はぁっ……」




クルーヤ(……もう何度剣を合わせただろう)

クルーヤ(ハルカの聖光爆裂破はまだまだ未熟で、ボクのそれには到底敵うものではない)

クルーヤ(これだけ何度も打ちのめされれば、肉体に蓄積するダメージも相当な量になる)

クルーヤ(今彼女を奮い立たせているのは、精神力だ)

クルーヤ(コトリさんを救いたいという想いがハルカを支えている)

クルーヤ(もし心が折れてしまえば、いくらここまでしぶとく粘ったハルカと言えど、もう……)



クルーヤ「………」チャキッ



春香「はぁ、はぁっ……!」チャキッ



クルーヤ「君たちが役に立ってくれないのなら、ボクは他に英雄を立てなければならない」



春香「………」



クルーヤ「ボクも暇ではないんだ。この辺で終わりにしようか」



春香「……っ」

春香「はあああああッ……!」

ゴオオオオッ…! 



クルーヤ(……足りない)

クルーヤ(おそらく……)



春香「天の願いを刻んで心頭滅却……!」ゴゴゴ



クルーヤ(……心に迷いがあるんだね)

204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:29:02.59 ID:AAdq5sgSO

春香「聖光……爆裂破ッッ!!」


キラキラキラ…!!



クルーヤ(それでは、ボクには勝てない)



クルーヤ「聖光、爆裂破ッ!!」


キラキラキラ…!!


ズドドドオオオオオオオオンッ!!!




春香「……う……」

ドサッ

春香「………」グッタリ




クルーヤ「………」

クルーヤ(……終わるのか、ハルカ……?)

205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:30:57.59 ID:AAdq5sgSO

春香(私は……)

春香(間違ってたのかな……)

春香(この世界からみんなで帰るためにやってきた事……)

春香(全部、間違ってたのかな……)

春香(今まで出会った人たちは、私たちのやろうとしてた事を知ったらどう思うかな……)

春香(私、この世界のことをどこかで他人事って考えてる……)

春香(私は……)



春香(…………プロデューサーさん……)










…キラーン!



春香「!」

206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:32:33.72 ID:AAdq5sgSO


『……春香。お前はここまでよくやってくれたよ』



春香「クリスタルの首飾りから声が……! プロデューサーさん……!?」



『辛い役目を背負わせてしまってすまない。本当はこんなつもりじゃなかったんだけど……』



春香「いえ、いいんです。プロデューサーさんが私たちのことを考えてくれたのは、とっても嬉しかったですから!」



『春香。お前のやること、進む道に文句を言う人もいるかもしれない。でも、そんなのは本当に些細な問題なんだ』



春香「え……?」



『なぜなら、お前は……』

『天海春香は、どんな時でも笑顔を忘れず前を向いていて、どんな時でも決して諦めることをしない、とっても素晴らしい人間だから』



『俺の、自慢のアイドルだから』



春香「っ……!」

207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:34:34.72 ID:AAdq5sgSO


『誰の意見を気にする必要なんてない。お前はお前の信じた道を行け』

『春香が選んだ道の先は、絶対に光が満ち溢れている。……少なくとも俺はそう信じてるんだ』



春香「プロデューサーさん……」



『さあ、みんなが待ってるぞ』


『「正義よりも正しいことよりも大切なもの」は、今お前と共にある!』




春香「………」



春香「…………はいっ!」

208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:35:49.12 ID:AAdq5sgSO

キラーン!


クルーヤ「!」

クルーヤ(……ハルカのクリスタルが光って……)

クルーヤ(……そうか、これは恐らく彼の仕業だな)

クルーヤ(彼は……)




春香「ううっ……!」ヨロッ

春香「…………はぁ、はぁ……!」ザッ



クルーヤ(……まるで、ハルカたちの守護神のようだ……)

クルーヤ(彼がいる限り、ハルカたちは何度でも立ち上がる……)

クルーヤ(やれやれ……まったく、さすがは未来のハルカの旦那様だね)




クルーヤ「……流石にしぶといね。まだ諦めないのか」



春香「………」

春香「私、ようやくわかったんです」



クルーヤ「ボクの言っていることをようやく理解してくれたのかい?」

クルーヤ「ならば、コトリさんを倒してくれるね?」



春香「はい、倒します。そのためにみんなで頑張ってここまで来ましたから」



春香「……けど、私たちは小鳥さんを救います。……絶対にっ!」

…ザッ



クルーヤ「コトリさんを倒し、救う……」

クルーヤ「そんなことは不可能だ」



春香「不可能なんかじゃありません。きっとできます! 私たちなら!」



クルーヤ「………」



春香「………」



クルーヤ「……君が折れるのは、どうやらもう期待できないみたいだね」



春香「…………はい」

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:38:48.66 ID:AAdq5sgSO

春香「ひとつ、お父さんに伝えたいことがあるんです」



クルーヤ「……なんだい?」 
 


春香「今まで、ありがとうございました。私、お父さんと出会えて本当に良かったです!」ニコッ



クルーヤ「!」



クルーヤ「……そんな手には乗らない。ボクは心を揺さぶられたくらいで戦意を失ったりはしないさ」チャキッ



春香「そ、そんなつもりはありませんよぅ!」



春香「……ただ、最後にどうしてもそれだけは伝えたかっただけですから」チャキッ

春香「……!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「来るか……!」



春香(私の聖光爆裂破はさっきお父さんに負けちゃった)

春香(でも、それならそれ以上に威力を引き上げればいい)

春香(お父さん。お父さんはずっと私の味方でいてくれたんですね)

210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:40:52.18 ID:AAdq5sgSO

春香(聖光爆裂破の威力を引き上げるには……)

春香(奥義として完璧なものにするには……)

春香(そのために必要なものは……)




『それは、明確な意思。決して折れることのない心』





春香「…………誰にも負けないくらい……」




春香「……強い、想いッ……!」

ゴオオオオオオオオオッ…!!





クルーヤ「……!」

クルーヤ(かつてない剣気っ……! これがハルカの……)

クルーヤ「……!」ゴゴゴゴ




春香「私の想いを……全部この剣に注ぎ込みますっ……!」



クルーヤ「来い、ハルカ……!」




春香「……天の願いを胸に刻んで……」



クルーヤ「……心頭滅却……」



春香「聖光……!」



クルーヤ「……爆裂破ッ!!」



キラキラキラキラ…!


ズドドドオオオオオオオオンッ…!!!


211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:46:19.02 ID:AAdq5sgSO


春香「………」グッタリ





クルーヤ「く……」ガクッ

クルーヤ「はぁ、はぁ……」



クルーヤ「…………よく頑張ったね、ハルカ」



クルーヤ「それでいいんだよ」



春香「………」




クルーヤ「周りの何にも影響されずに自分を貫くことは、時にわがままと言われる。けれど、大切なものはいつでも自分の中にあるものなんだ」

クルーヤ「そしてそれは、一般的に正義と言われるものよりも、正しいとされている考え方よりも、はっきりとした道標になる」

クルーヤ「だからハルカ。君は自分の道を行き、自分を貫き通しなさい」

クルーヤ(ボクが出来なかったことを、君が……)


グニャ…


クルーヤ「空間が歪みはじめた……。もう魔法すら維持できなくなってるのか……」

クルーヤ「……時間みたいだね。ボクはもうここを去らなければならない」

クルーヤ「今度こそ正真正銘、さよならだ」


春香「ぅ…………」



クルーヤ「………」

212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:48:07.49 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「……最後に、一つだけ忠告しておこう」

クルーヤ「君はコトリさんを救いたいと言ったけれど、おそらくそれは君たちだけの力では成し遂げられないだろう」

クルーヤ「彼女の優しい心を救いたいのならば……」




春香「……うぅ……」ピクッ



クルーヤ「………」

クルーヤ「……いや、やっぱりそれは君が自分で考えて答えを見つけるんだ」

クルーヤ「お父さんからの、最後の宿題だよ」ニコッ



クルーヤ「……悠久の時を経て、ここに時空を超えよ。我にその扉を開け……!」



クルーヤ「…… デジョン!」バッ



ーーシュンッ



クルーヤ「…………さよなら、ハルカ。愛しい娘」




「……親子の別れは済んだようだな」




クルーヤ「!」



バハムート「……ククッ!」



クルーヤ「………………バハムートか」

213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:50:23.89 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「やれやれ、すっかり油断していたよ」

クルーヤ「ボクたちの戦いをずっと見ていたのかい?」

バハムート「冥府への道中退屈すると思ったのでな。お前の用事が終わるまで待っていたのだ」

クルーヤ「そうか……そういえば君も死んだんだったね」

クルーヤ「ボクも長いこと現世に留まり過ぎた。きっと長い輪廻が待っているんだろうなぁ……」

バハムート「如何に我でも六道輪廻に干渉することは出来ぬ。次に人間界へ生を受けるのは、百年先か、或いは千年先か……」

クルーヤ「はぁ…………。まあ、仕方ないか」



バハムート「しかし、とんだ三文芝居だったな」



クルーヤ「……何がだい?」

バハムート「世界を守るのが自分の信念、か。……クククッ!」

バハムート「惚けているつもりだろうが敢えて言わせてもらう。それはお前の信念などではない」



バハムート「聖騎士となった者が等しく背負う宿命だ」



クルーヤ「………」

214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:52:31.47 ID:AAdq5sgSO

バハムート「クルーヤよ。お前がこれまで世界を守り続けてきたのは、それが自分の意思を差し置いてでも聖騎士として成すべきことであったからだ」

バハムート「だからお前は、生前も死後も、他の全てを棄てて世界を守るため行動してきた」

バハムート「……そう、家族との時間すらも棄ててな」

クルーヤ「………」

バハムート「お前の心は揺れ動いていた。先程の戦いの最中の話ではない。それ以前……お前が生きていた頃、聖騎士として活躍し始めた時から既にだ」

バハムート「もっと正確に言えば、お前の心に迷いが生じたのはお前が家族を持ってからなのであろう。今ならば我にもそれは理解できる」

バハムート「お前は迷っていたのだ。家族への愛と、聖騎士としての宿命との狭間で」

クルーヤ「………」

バハムート「やがてお前は、自分の心を騙すことを思いついた。『世界を救うのは自分の信念だ。自分が望んだことだから、家族やその他のことを犠牲にするのは仕方がないことなのだ』とな」

バハムート「だが、その様に気持ちを誤魔化し続けてきたお前の剣が、純粋で真っ直ぐな想いの剣に勝てるはずもない」

バハムート「お前とハルカの実力の差以前に、戦いの勝敗は火を見るよりも明らかだったというわけだ」

クルーヤ「………」

215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:55:08.57 ID:AAdq5sgSO

バハムート「あの娘も……ハルカもお前と同様に聖騎士だ。世界を背負う義務はあっても悪であるコトリを救って良い道理は無い」

バハムート「世界に破滅を持たらさんとする悪を助けるつもりならば、即ちそれは世界を脅かすということだ。確かにハルカたちは世界の敵というお前の表現は間違っていない」

バハムート「だが、お前は最初から理解していた。ハルカには勝てぬということを」

バハムート「お前は最初から敗けるつもりで、ハルカの聖光爆裂破を完成させるために……ハルカの助けとなるためだけに戦いを挑んだのだ」

バハムート「ハルカたちが世界の敵ならば、それを助けたお前もまた世界の敵、ということになろう」



クルーヤ「………」

クルーヤ「…………ふぅ」

クルーヤ「悔しいけど、概ね君の言うとおりだ。でも一つだけ違うところがある」

クルーヤ「ボクは別に負けるつもりでハルカに戦いを挑んだわけじゃない。もちろんハルカを倒すつもりだった」

バハムート「……ほう?」

クルーヤ「でも……」

クルーヤ「最後に彼女がボクに剣を向けた時、お礼を言って笑ったんだ」

クルーヤ「ボクにはその笑顔がとても哀しく見えてしまって……。『ハルカはどんな風に笑っていたんだっけ』って一瞬考えた」

クルーヤ「あの子の心からの笑顔を思い出した時には、もうボクにはハルカを倒そうとする意思も、世界のためにコトリさんを眠りにつかせようという想いも残っていなかった」

クルーヤ「やっぱりハルカには心から笑っていてほしい、ハルカの願いを叶えてあげたいって、そう思ってしまった」

クルーヤ「その瞬間にボクは聖騎士としての宿命を……今までずっと貫いてきたものを、完全に手放したんだ……」

バハムート「………」

クルーヤ「前言を撤回しなきゃいけないね。ハルカたちは世界の敵なんかじゃない」

クルーヤ「だって彼女たちは、世界の人々だけじゃなく、世界そのものにすら愛されているんだからさ」

バハムート「…………フン、随分と難儀な親子愛よな」

216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 17:58:15.82 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「ま、でも、悔しいからボクも言わせてもらうよ」

クルーヤ「バハムート、君は一人の女性への愛を貫いたために神である資格を失った。その身勝手な行動は幻獣という一種族を統べる者としてどうなのかな?」

クルーヤ「ボクと同様、君の行動もまた守られるべき摂理というものを無視した行為だ」

バハムート「……何故それを知っている」

クルーヤ「ふふん、ボクの精神波を見くびらないでもらいたいね。君とタカネちゃんのラブラブな戦いは全てお見通しさっ」

バハムート「フン……出歯亀はお互い様、ということか」

バハムート「だが、『我が儘と言われようと大切なものは己の中に在るもの』なのであろう?」

バハムート「先刻お前が独りごちた言葉だぞ」

クルーヤ「うっ……それは……」

バハムート「我は躰の底から湧き上がる衝動に身を委ねただけだ」

バハムート「後悔も罪悪感も無い。在るのは、愛という至上の喜びを知ることができた感謝のみだ」

クルーヤ「……ちぇっ、いい顔ですっかり開き直っちゃって」

217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 18:03:08.83 ID:AAdq5sgSO

クルーヤ「……ねえ、バハムート。変なこと聞くけどいいかな?」

バハムート「……なんだ」

クルーヤ「彼女たちは一体何者なんだろう?」

バハムート「………」

クルーヤ「この世界のほとんど全ての人が彼女たちを支持してるって言ってもいいくらい、今や世界は彼女たちの味方だ。おそらく、魔物でさえも」

クルーヤ「こんなにも他者を魅了する人間には、ボクは今まで出会ったことがない」

クルーヤ「自分の娘なのに変な話なんだけどさ」

バハムート「………」

クルーヤ「本当に、不思議な娘たちだった……」

218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/25(日) 18:05:06.53 ID:AAdq5sgSO

バハムート「説明は出来ぬ。が、その問いの答えならば我らは既に持ち合わせているのかもしれぬぞ?」

クルーヤ「えっ、そうなのかい?」

バハムート「彼女たちが他者を惹き付ける理由。それは……」

バハムート「彼女たちが、あいどるだからだ」

クルーヤ「!」

バハムート「以前、タカネから聞いたことがある。あいどるとはどういった生態を持つ生物なのかを」

クルーヤ「それで、あいどるってどんな生き物なんだい?」

バハムート「分からぬ」

クルーヤ「…………は?」

バハムート「タカネが話してくれた内容は、我には何一つ理解が及ばなかったのだ」

バハムート「だが、短き時間をタカネと共に過ごし、我は思い至った。あいどるとはつまり、愛すべき存在なのだ、と」

クルーヤ「それって答えになってるのかな……」

バハムート「……さてな」

バハムート「只一つはっきりとしているのは、我もお前もあいどるを愛した、という事実だけだ……」

クルーヤ「うーん、結局何一つわかっていないような……」



バハムート「さて、そろそろ逝くぞ。最早我らは舞台を降りたのだ。これ以上現世に未練を残すのは無粋というものだ」

バハムート「世界の行く末も、コトリのことも……全てはあいどるたち次第であろう」

クルーヤ「……ああ、そうだね」



クルーヤ(ハルカ、リツコ……。キミたちがコトリさんを救えること、地獄の底から願っているよ……)

219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 00:53:05.73 ID:riGmT2Lx0
続きはまだかなー
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