エリカ「姉さん」

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87 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:05:10.05 ID:/MmnBnEw0


まほ「なっ、誰だ…?」


「待ッテ…姉サン……」ガシッ


まほ「何故お前がここにいる! 手を離せっ!」


「…一人デ…死ニタクナイ…」


まほ「馬鹿を言うな! 早く脱出するぞ!!」


「…姉サンモ一緒……?」


まほ「やめろ離せっ! …うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ブクブク


88 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:07:17.04 ID:/MmnBnEw0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜〜〜〜〜〜


〜〜〜



まほ「ッ!!」


チュンチュン...


まほ「…」


まほ「夢か…」



嫌な夢を見た。

水没するティーガーから脱出しようとしたら何故かエリカがいて、足を掴まれて水底へ引きずり込まれる夢だ。一体私に何の恨みがあるというのだ。

これでは例のぬいぐるみ部屋の方がまだ良い夢を見れたのではないだろうか。おそらくみほと仲良くぬいぐるみワールドを散策する夢を見れたに違いない。

しかし、よりにもよって昨年の決勝戦が夢に出てくるとはな。あの事故さえ無ければ今頃みほは隣の部屋でスヤスヤと寝ているだろう。



………?


妙に体が重いな?

まるで金縛りにでもあっているようだ………?


89 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:09:06.90 ID:/MmnBnEw0



エリカ「…ンマ」zzzz

まほ「…」



まず状況を整理しよう。

私は自室の布団の中で仰向けに寝ている。

そしてエリカも(色々あって)私の横で寝ている。横で寝ているはずだ。

なのに…



まほ「何故、私の腹の上で寝ているんだお前は!」

エリカ「……んぅ…?」ネボケ



エリカは仰向けに寝ていた私に上から抱きつく(しがみつくと言った方が良い)ように寝ていた。

重い。苦しい。潰れる。


90 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:10:19.26 ID:/MmnBnEw0


まほ「ふんっ!」ゴロン

エリカ「もがっ?!」ドテッ!



秘技・西住ターンによって、エリカはそのままコロンと私の左横に転がっていった。ざまあみろ。

寝起きの開口一番で『何すんのよ…』と不機嫌そうにエリカは宣うが、それはこちらの台詞である。私を枕にするなど100年早い。

そしてお前のせいで私は見なくてもいい悪夢にうなされた。謝罪と賠償を要求する。

91 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:12:04.78 ID:/MmnBnEw0


エリカ「………」モゾモゾ

まほ「おい」

エリカ「なぁに…」ネボケー

まほ「もう朝だ」

エリカ「まだ6時…姉さんに叩き起こされた分だけ……寝る…」zzzz....

まほ「そうか好きにしろ。あのぬいぐるみが来ても知らんからな?」

エリカ「………おきる」ビクビク



どうやら例のぬいぐるみに相当なトラウマを抱いたようだ。それは良い。エリカが言うことを聞かない時に使わせてもらおう。

ちなみに、ここでエリカが二度寝をするようならば布団の周りに例のぬいぐるみを大量に並べてやるつもりだった。

こう見えて私は西住流の女だ。やる時は容赦なくやる。



〜〜〜
92 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:13:39.58 ID:/MmnBnEw0



【西住流家元 庭】



ワンワン!


まほ「よしよし。今連れてってやるからな」

エリカ「…」ポケー

まほ「ほら、行くぞ」

エリカ「うーん…」ポケー



布団から出て10分は経過するというのに、未だにエリカはこくりこくりと船を漕いでいる。

低血圧なのだろうか? 黒森峰にいた時にはそんな素振りは少しも見せなかったのだが。


93 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:14:32.80 ID:/MmnBnEw0


キャンキャン!!


エリカ「この子は朝早いのに元気が良いわね…」

まほ「そうだな。エリカもこれくらい元気になれ」

エリカ「むり。朝は苦手だもの」ファァ....

まほ「今までどうやって起きてたんだ」

エリカ「そりゃあ…えーと………あれ?」

まほ「…もういい」

エリカ「む…」



今の話は不味かった。

ついつい忘れがちだが、エリカは記憶に障害を来しているのだ。

過去のことを思い出そうとしても、思い出しようがない。

何故ならエリカには"西住家としての過去"が無いのだから。


94 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:16:07.30 ID:/MmnBnEw0



"存在しない過去"というのはなかなか厄介だ。


エリカ自身は西住家の人間だと思っているが、それはあくまで一時的な記憶障害による勘違いによるもの。

だから、"西住家なのに西住家としての過去の記憶がない"という、極めてややこしい状態で、そこからまた矛盾が発生して面倒事が起きる可能性もある。

例えばアルバムを見て『私の写真が一枚も無いじゃない!!』という事になったり、思い出話をした際に『私そんなの知らないわよ?』と怪訝な雰囲気になったり…。


そういった事情を鑑みると、エリカは可哀想な子である。

世話が面倒というのもあるが、エリカの立場を鑑みて元気になって欲しいという意味でも早く元通りになってほしい。


95 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:19:01.84 ID:/MmnBnEw0


【散歩道中にて】


お婆さん「あら。おはようまほちゃん」

まほ「おはようございます。今日もいい天気ですね」

お婆さん「んだんだ。そちらの子はお友達かい?」

エリカ「いえ、妹のエr <ガバッ!!> もがっ?!」

お婆さん「?」

エリカ「モガゴガガ…!」

まほ「あ、いえ。この子は遠い親戚。都会から遊びに来たのです」

お婆さん「おお。そらよかばい」ホッホッホ

まほ「ええ。それでは失礼します」



お婆さんが去ったのを確認してパッとエリカの口から手を離す。

『いきなり何すんのよ!』と憤慨するエリカだがごもっともだろう。何しろ(エリカからすれば)自己紹介しようとしたら急に口を塞がれたわけだからな。

だが、(西住視点からすれば)あそこで『妹のエリカと申します』などと抜かされるものなら、隠し子説が瞬く間に拡散され実に極めて面倒なことになる。田舎は情報の拡散が早いのだ。

かといってそれをエリカに言うわけにもいかないので、『あのお婆さんは痴呆だからアレコレ喋ると頭が混乱して大爆発する』と説得した。言わずもがな嘘っぱちだ。

『可哀想なお婆さんねえ…』とエリカは言うがまさにその通りである。お前のせいで色んな人を"可哀想な人"に仕立て上げなければならん。

本当に可哀想だから1秒でも早く元に戻ってくれ。頼む。

96 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:20:35.04 ID:/MmnBnEw0


犬「グヌォォォ…」プルプル

エリカ「お」

ポトッ...

犬「フゥ…」

エリカ「姉さんウンチ」

まほ「私はウンチではない」

エリカ「違うわよ。犬」

まほ「リードを持ってくれ」ガサゴソ

エリカ「わかった」



犬の散歩は嫌いではない。新鮮な空気を吸いながら緑に囲まれた風景を堪能することは心にも身体にも良いことなのだ。

問題は犬がウンチをするという点だ。…いや、犬に限らず生き物はみな例外なくウンチをする。私も今朝した。だからそのようなことを抜かすものなら『お前にペットを飼う資格は無い!』と叱られそうだ。

しかしそれでもウンチは臭いから嫌なのだ。好きという者がいるのなら是非ともお会いして話を伺いたい。

…馬鹿なことを考えていないでさっさとウンチを処理するとしよう。


まずウンチの上にティッシュを被せて、その上からビニル袋越しにウンチを掴む。ウンチのブニュッとした感触が気持ち悪い。

あとはウンチを掴んだ袋を裏返せば始末完了だ。幸いこいつ(犬)のウンチはコロコロタイプだから1つ1つウンチを拾い上げるのが楽で助かる。

97 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:22:05.19 ID:/MmnBnEw0


エリカ「姉さん臭い…」ヒキッ

まほ「私が臭いのではない。コイツが臭いのだ」つ[ウンチ袋]

エリカ「ちょっと?! こっちに近づけないでよっ!!」ササッ

まほ「リードとコイツ両方は持てない。だからお前が持て」

エリカ「だったら私がリード持つから姉さんがウンチ持ってよ!」

まほ「そいつは猛犬だ。エリカ如きでは飼い慣らせられない。故に手綱は私が握る」

エリカ「全然暴れ犬なんかじゃないわよ! こんなに大人しいのに!」

犬「くぅん」

まほ「私が威嚇しているから萎縮しているだけだ」

エリカ「意味がわからないわよ…」



必死の説得も虚しく私がウンチを持つ羽目になった。

散歩に行く時はいつもウンチをするので今更な話ではあるが、ウンチを握って歩き回る時間は極力減らしたい。

あとウンチをしてからというもの、明らかにエリカが私との距離を置いて歩いている。私がウンチを持っているからだと思うが、そう露骨に避けるものでもないだろうに。


98 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:23:33.78 ID:/MmnBnEw0


エリカ「ところで姉さん」

まほ「なんだ?」

エリカ「ずっと前から気になってたけど」

まほ「ああ」


エリカ「この子の名前って何だったっけ?」


まほ「え」

エリカ「この犬の名前。思い出そうにも思い出せないのよ…」

まほ「…」

エリカ「…」



エリカが思い出せないのは当然だ。先述の通りエリカには"西住家としての記憶"が無いのだからな。

しかしエリカはともかく私もこの犬の名前が思い出せん。どんな名前だっただろうか。

…そもそも今の今までこの犬を名前で呼んだことがあっただろうか? いや、無い。


仕方がないので適当に『ディッカーマックス』と仮の名前を授けることにした。

エリカは"絶対違うでしょ…"という顔をするが、思い出せんものは仕方ない。ディッカーマックスも満足そうにしているし良いではないか。


…こらディッカーマックス。私の足は電柱ではない。

99 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:26:34.34 ID:/MmnBnEw0


【西住宅 玄関】


まほ「ん?」

「…」コソコソ

エリカ「誰かいるわね?」

「…」ソワソワ

まほ「あれは……」



まほ「みほ…!」

みほ「! お姉ちゃん…?」



そこにいたのは愛すべき我が妹の"みほ"だ。

よく帰ってきてくれた。お姉ちゃんは嬉しいぞ。

ほら。玄関前でオロオロしていないで家に入ろう。ちょうどこれから朝食だった。みほも何か食べ………


ん。


何かを忘れている気がする。


100 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:27:21.43 ID:/MmnBnEw0


エリカ「みほですって?!」

みほ「えっ、エリカさん!?」

まほ「」



しまった、こいつがいた。

エリカの記憶がおかしくなってるタイミングでこの再会は極めてまずい。

どうしてこんな時に帰って来たんだみほ、お前のせいで私はピンチじゃないか。

101 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/10(金) 20:28:45.58 ID:/MmnBnEw0



エリカ「そう…アナタがみほなのね」

みほ「へ?」

まほ「」



まずい。その話は今されると本当にまずい。

とりあえずみほをエリカから遠ざけねば…!



まほ「み、みほ! ひとまず部屋に行って荷物を置こう」ニギッ

みほ「えっ!? …あ、うん…」

エリカ「ちょっと姉さ

まほ「エリカ! こいつを頼むッ!!」シュバッ!

エリカ「えっ!?」キャッチ

まほ「あとは任せたぞエリカ!」ダダダッ

みほ「わ! 待ってよお姉ちゃん!」ダダダッ



みほの手を握り急いで家へ駆け込む。手は洗ってないが今はそれどころではない。

みほの部屋に行き、みほにエリカについての"事情"を伝えることが最優先だ。

久々に握るみほの手はウンチのように柔らかかった。



〜〜〜〜

102 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:46:28.92 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「…」ポツーン


しほ「あら。帰ってきてたのね」

エリカ「あ、ただいまお母さん」

しほ「お帰り。ご飯出来ているわ」

エリカ「うん。…あ、お母さん」

しほ「どうしたの?」

エリカ「これ…」

しほ「これは?」

エリカ「姉さんが任せたって…」

しほ「そう」

エリカ「私姉さんのところに行ってくる」タタタッ

しほ「…」

しほ「…一体何かしら?」ガサゴソ


    プゥーーーン
(うんちの臭いがする音)



しほ「エ゛ンッ!!!」




〜〜〜〜

103 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:47:45.17 ID:WQUJgq7Y0


【みほの部屋】


まほ「………ということがあってだな」

みほ「エリカさんがそんな事になってたなんて…」

まほ「ああ。私も最初は信じられなかった」

みほ「それはその…大変だったね…」

まほ「そうだな」

みほ「でも…」

まほ「ん?」

みほ「私が双子の姉という設定ともかく、死人扱いするのはやめてよ…」

まほ「済まない…」

みほ「あと何で私の部屋なの…」

まほ「それは別にいいだろ」


104 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:49:02.14 ID:WQUJgq7Y0


コンコン


まほ・みほ「!!」ビクッ

エリカ「姉さん? いる?」

まほ「う、うむ。どうした?」

エリカ「入るわよ?」

まほ「ああ」

みほ「あ! ちょっと勝手に入れないでよ…!」

ガチャ

エリカ「…みほ…」

みほ「…その………エリカ…?」アセアセ



エリカは"双子の妹"という設定にしておいたのだが、まさかみほが"エリカ"と呼ぶ日が来るとは夢にも思わなかった。

色々と斬新すぎる。

105 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:50:11.03 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「…久しぶりね。その、元気だった?」

みほ「え? あ…うん。元気」オロオロ

エリカ「そう。良かったわ」

みほ「うん…」

エリカ「急に家に帰ってくるから驚いたわよ。帰って来るなら前もって連絡しなさいよ」

みほ「ご、ごめん…」シュン



ちなみに連絡はちゃんと入っていた。私の携帯電話に。

メールがサーバーで止まっていて受信出来なかった為、存在に気付かなかったのだ。

つい先ほど確認したらみほのメール含め、40件ほど一気に来た。

済まないみほ。私はこの手の機械の扱いは苦手なのだ。

106 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:51:37.16 ID:WQUJgq7Y0

エリカ「そうだみほ! 朝ごはん出来てるから一緒に食べましょう」

みほ「えっ? あ…!」

エリカ「ほらっ、グズグズしない」ギュッ

みほ「わっ! ま、待ってよぉ!」トテテテ

まほ「…」


こうやって眺めていると本当の姉妹のように見えるから不思議である。

私も手を洗って朝食にしよう。

久々にみほと一緒にご飯を食べられる。楽しみだ。

107 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:52:33.18 ID:WQUJgq7Y0


【食卓】


まほ「…」モグモグ

みほ「…」モグモグ

エリカ「…」モグモグ



…しかし食卓にはマウスよりも重い空気が漂っていた。

エリカとは昨日一緒に食卓を囲んでいたし、みほとは何年も一緒に食事を食べていた。

なのに重たい空気が漂っているのは何故か。

原因は一つしかない

108 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:54:34.96 ID:WQUJgq7Y0

しほ「…」モグモグ



お母様がいるからだ。

昨晩は書斎に篭っていたので一緒に食事をすることはなかったが、今朝は仕事が片付いたのだろう。こうやって食卓を囲んで一緒に食事をしている。

それにしても何なんだこの超重戦車級の威圧感は。

食事をするだけでこうも殺気を放つ人がいるのかと問いたくなるほど禍々しいオーラを放っている。これでは苦しくて飯の味などわからない。

親子水入らずで食事をしているのに、被告人席にいるような気分だ。

そしていつになくお母様の機嫌が悪い。エリカ、お前、お母様に何をした…。

109 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 02:55:28.66 ID:WQUJgq7Y0

しほ「みほ」

みほ「はいっ?!」ビクッ

しほ「帰って来るのなら一言連絡を入れるべきです」

みほ「ご、ごめんなさい…」オロオロ

まほ「お母様、みほは確かに連絡を…」

しほ「私はみほに話しているのです」

まほ「うっ…」

しほ「まだあなたを認めたわけではありません」

みほ「…」

しほ「一度は西住流から背を向けたこと。それが何を意味するかしっかり考えることね」

みほ「………はい」


110 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 03:10:48.65 ID:WQUJgq7Y0



昨年の決勝戦を境に、みほとお母様の間に絶望的なまでに深い溝ができてしまった。

あの時、みほは川に転落した味方を助けるべく自らが乗る戦車を飛び出し助けに向かった。そして全員が無事に救出された。

しかし、その代価として大会10連覇を逃してしまったことはみほにとって致命的なものとなり、多くの者がみほに否定的な態度を取った。

批判の眼差しに耐えきれなくなった結果、みほは黒森峰女学園を去り、遠く離れた大洗女子へ転校していった…。

それはお母様にとって"逃走に次ぐ逃走"と見做され、みほが大洗の隊長として我々黒森峰を破るほどに成長したにもかかわらず、今も軋轢は続く…。


かつてお母様は実の娘であるみほを"勘当する"とまで言った。

それほどまで深い溝が出来てしまった親子関係を修復するのは決して容易なことではない。

だから長い時間をかけ、少しずつ、失った信頼を取り戻していくしか他に道はないのだ。

そして、それがたとえ何年かかったとしても。少しでも改善に繋がるのなら私は何だって協力しよう。

私はみほの姉なのだから………。


111 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 03:11:46.91 ID:WQUJgq7Y0



エリカ「お母さん!!!」バン!!!




しほ・まほ・みほ「」ビクッ

エリカ「何で久々に帰ってきた娘にそんな冷たい態度取れんのよッ!!」

まほ「エ、エリカ、落ち着け…

エリカ「姉さんは黙ってなさい!」

まほ「ぐ」

エリカ「事あるごとに西住流西住流って」

エリカ「娘と西住流どっちが大事なのよッ!!」

しほ「それは…」

エリカ「そんなの娘に決まってるじゃないのッ!!!」

112 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 03:12:55.55 ID:WQUJgq7Y0



しほ「ぐ…」

みほ「ぁゎゎゎ…」オロオロ

エリカ「それともお母さん…」


エリカ「みほとは血が繋がってないからそんな事言えるってわけ?!」


しほ・まほ・みほ「え゛っ!?」



それ以上いけない!

みほも私もちゃんとお母様と血縁関係にある。

お前の記憶違いなだけだ!



まほ「し、心配するな…私もみほもエリカもちゃんとお母様の娘だ!」

みほ「えええっ!?」



くそっ、今度はそっちか!


113 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 03:14:25.75 ID:WQUJgq7Y0


しほ「………そうね」


まほ・みほ「えっ…?」

しほ「私は西住流のことばかり考えていて、大事なことを見落としていた」

しほ「ごめんなさい。みほ」

まほ・みほ「!!!」

しほ「そして………」



しほ「お帰りなさい」フッ



みほ「お…お…おおお…」





みほ「お母さぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」ギュッ


114 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 03:17:40.44 ID:WQUJgq7Y0


みほ「お母さんお母さんお母さんお母さぁん………」

しほ「ふふっ…」ナデナデ

エリカ「やっと分かってくれたわね…」

しほ「えぇ。感謝するわエリカ」

まほ「…」


  _,,_
 (;゚д゚)

長い年月どころかたった1分で片付いてしまった。

すごいなエリカ。家元が相手でも一切怯むことなく突撃する命知らずで馬鹿なお前は確かに西住流だ。見直したぞ。

これでみほも家のしがらみに囚われることなく、いつでも我が家に帰って来ることが出来て丸く収まった。

涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながらお母様に抱きつくみほを見るに、相当寂しかったのだと思う。つられて私まで涙が出そうになる。本当に良かったな、みほ。




ただ、身内が何も出来なかったものを赤の他人であるお前がこうも簡単に解決してくれては私の立つ瀬がない…。

115 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 03:19:21.64 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「あ! みほばっかりずるい! 私だって!」ギュッ

みほ「お母さぁん」

しほ「ふふっ。二人とも甘えん坊ね」



あんな幸せそうなお母様の顔を見るのは何年ぶりだろうか。これが親子のあるべき姿なのだが、蚊帳の外にいる私はその風景が羨ましい。

そしてお母様にとってエリカはもう完全に我が娘という扱いなのですね。西住流の後継者でありながら柔軟な対応がとれない愚かな私をお許し下さい。



しほ「ほら。料理が冷めてしまうわ。早く食べなさい」

みほ・エリカ「はーい」

まほ「…」モグモグ



私だけ他所の子みたいな気分だ。

そして他所の子であるエリカの方が西住さん家の子をやっている。

…悲しくなってきた。



〜〜〜


116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 06:51:13.74 ID:+fMygj9po
記憶を取り戻してからが勝負ですね
117 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:29:41.37 ID:WQUJgq7Y0


【II号戦車内】


みほ「お姉ちゃん?」

まほ「ん?」

みほ「これからどこに行くの?」

まほ「デパートに行ってエリカの服とか色々を買ってだな。その後はどうするか…」

みほ「じゃぁついでにボコ見に行こうよ!」

エリカ「え゛っ?!」

みほ「どうしたのエリちゃん?」

エリカ「ボコってあの満身創痍のぬいぐるみ…?」オロオロ

みほ「うん! そうだよ♪」



あのぬいぐるみ、"ペコ"じゃなく"ボコ"だったか。

じゃぁペコは一体なんだろう。何処かで聞いた気がするのだが、思い出せん。

"ペコ"というのだから毎日ペコペコ頭を下げるような奴だろう。サンダースあたりにいそうだな。


118 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:30:41.18 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「絶ッッッ対駄目だからね! あんなの部屋にあったら呪われる!!」

みほ「何でよ?! ボコはすごいのに!!」

エリカ「絶対やだ! あのボコだらけの部屋入って地獄見たんだからね!!」

みほ「あっ、入ったんだボコミュージアム! 良かったでしょー♪」キラキラ

エリカ「全ッッッ然良くないわよあんなの!!!」

みほ「そんなこと無いよ! エリちゃんはボコの良さを知らないだけだよ!」

みほ「家に帰ったらボコの録画ビデオ一緒に見よう? 久々のオールだよ♪」ウキウキ

エリカ「嫌だって言ってるでしょーが!!」


119 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:32:34.14 ID:WQUJgq7Y0


まほ「一緒にビデオ鑑賞するのはいいが、部屋が汚れる覚悟だけはした方がいい」

みほ「へ?どうして???」

まほ「糞尿を <ガン!!> 痛ッ!?」

エリカ「しつっこいわねぇ!!」

みほ「フンニ…? ドイツの戦車だっけ?」



それを言うならフンメルだ。あと戦車ではなく自走砲。

エリカのヤツ。なにも砲弾ぶつけることはないだろう。死んだらどうするんだ。


ちなみに我々一同は先述の通り、戦車に乗ってデパートへ向かっている。

というのも、食後にお母様が『そういえばエリカの服が無かったわね』と言うので、エリカとみほを連れて衣類その他諸々を買いに行くことにしたのだ。

しかし、服屋の衣装一式買い占めてもなお余るような大金を渡されたので、正直どうしたものかと思っている。

服に下着に寝具にあとは…ボコ? みほ、それは自分のお金で買いなさい。

私も服とか靴とか色々買いたい。あまり着る機会は無いけど、昔の服はそろそろキツくなってきた。


120 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:33:24.92 ID:WQUJgq7Y0


【デパート 洋服売り場】


まほ「お前たちの好みはわからないから各々好きなもの買って来るといい」

みほ・エリカ「はーい」



「エリちゃんにはコレ似合うと思うよ!」

「何よこれ…」

「ボコの着ぐるみパジャマ〜♪」

「嫌よそんなの!」

「えー」

「ちゃんとしたのを買いなさいよ」

「ちゃんとしたのって?」

「コレとか」つ[ネグリジェ]

「えっ………」

「何よ…」

「それスケスケだよ…?」


ワイワイ

キャッキャッ


まほ「ふぅ…」



楽しそうで何よりだ。服の選定は二人に任せておこう。

私はベンチに座ってのんびりコーヒーでも飲みながら二人が戻ってくるのを待つことにした。


121 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:35:26.52 ID:WQUJgq7Y0



「あれ、隊長?」

「ホントだ!」



まほ「ん?」

赤星「おはようございます隊長」

直下「珍しいですね。こんな所でお会いするなんて」

まほ「あぁ。赤星に直下か。奇遇だな」

直下「隊長もこういうお店に来るんですねー」

まほ「私だって多少はお洒落をする」

赤星「そうですよ直下さん。隊長に失礼ですよ」

直下「えへへ、失礼しました」ペコリ

まほ「まったくだ」



知らない人はいないと思うが、赤星と直下は我が黒森峰の生徒だ。

先の戦車道大会の決勝戦、そして大学選抜チーム戦で活躍した(活躍したか?)2人だ。

副隊長であるエリカがダウンした今、臨時の副隊長代理をこの2人に任せようと思っていたのだが丁度いい。

122 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:36:46.63 ID:WQUJgq7Y0


まほ「良い機会だ。二人に話しておきたい事がある」

赤星「話しておきたいことですか?」

直下「何でしょう?」

まほ「ああ。実はだな…」


みほ「お姉ちゃん」

エリカ「姉さん」


まほ「あ」


直下「ありゃ。副隊長と副隊長もいる」

赤星「違うよ。みほさんと副隊長」



その通りだ赤星。副隊長は一人だけだ。

これからお前たちに代役を務めてもらうので2人になるけどな。

123 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:38:19.77 ID:WQUJgq7Y0


みほ「あっ、赤星さんと直下さん。お久しぶりです」

エリカ「あなた達こんな所で何油売ってんのよ」

まほ「エリカ」

エリカ「うっ…」


赤星「副隊長、意識戻られたのですね!」

エリカ「えぇ。腕はこんなだけど問題ないわ。心配かけたわね」

直下「良かった。てっきりもう戻らないかと……」

エリカ「縁起でもないこと言わないでくれるかしら」ハァ...


ああ。この部下に対するツンツンした態度はまさにエリカだ。

家でのゴロゴロフニャ〜なエリカが別人のように思える。

124 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:38:59.05 ID:WQUJgq7Y0

赤星「それで隊長、お話というのは?」

直下「あ、そうですよ」

まほ「うむ」


エリカがこの場にいるタイミングで話すべきか否か迷ったが、エリカがこんな状態である以上、有耶無耶ではまずいだろう。

だから思い切って話すことにした。

125 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:41:40.64 ID:WQUJgq7Y0


まほ「エリカは意識は戻ったが、まだ病み上がりだ。そして何より片腕が使えない状態だ」

エリカ「…」

まほ「そのため、お前たち2人に副隊長代理として、エリカが復帰するまでのサポートを任せたい」

赤星・直下「!」

まほ「構わないな? エリカ」

エリカ「まぁ…仕方ないわね。腕がこんなだし」

まほ「…」

エリカ「不本意だけれども、あなた達2人に手伝ってもらうわ」

エリカ「副隊長代理としてその大役、しっかり果たしてもらうわよ?」

赤星・直下「はい!」ビシッ

エリカ「でも、姉さんはああ言うけれど。腕以外は何とも無いから安心して頂戴」

まほ「エリカ、無理はするな」

エリカ「わかってるわよ。ホントに心配性ね」


赤星・直下「姉さん?」


まほ「あ゛っ!」

エリカ「…何かしら?」



"何かしら"じゃない!

事情を知らない2人の前で「姉さん」は不味いだろうが!

それに何が"腕以外は何とも無い"だ。お前の頭は今まさに異常事態なんだぞ!!

126 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:42:56.60 ID:WQUJgq7Y0


赤星「いえ…、今たしかに"姉さん"って…」

エリカ「そうだけど、それが何か?」

直下「しかも敬語じゃないですし、一体どうしちゃったんです?」

エリカ「当たり前じゃないしま…

みほ「ほ、ほら! アンチョビ高校のアンツィオさんだって後輩たちに"姐さん"って呼ばれているじゃないですか?! あんな感じですよ!!」

赤星「そうなんですか…?」

直下「へぇ…」



見事なフォローだみほ。

だが惜しい。アンチョビ高校のアンツィオではなく、アンツィオ高校のアンチョビだ。

…安斎が聞いたら泣くから注意だぞ。


127 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:44:11.59 ID:WQUJgq7Y0



直下「じゃぁ私達も隊長のこと"姐さん"って呼んでも良いですか?」


赤星「あっ、なんか良さそうかも!」

みほ「ええっ!?」



良いわけないだろ。何てことをしてくれたんだみほ。

黒森峰がノリと勢いだけのポンコツ極貧チームになってしまうじゃないか。

…安斎が聞いたら泣くから内緒だぞ。
128 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:45:35.27 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「本気で言ってるのあなたたち?」ギロッ

赤星・直下「うっ…」



よくぞ言ってくれた。褒美としてオペルブリッツを買う権利をやろう。

そうだそうだ。黒森峰は規律を重んじるから強豪校である。上下関係はしっかりしておかないとチームの質が低下する。

節度や上下関係は何よりも大事なんだぞ。




エリカ「姉さんと呼んで良いのは身内だけよ」



赤星「えっ?」

直下「身内…?」

みほ「」←レ●プ目



お前もう喋るな! どんどん面倒くさい方向に話を進めおって!!

こうなったら逃げ…いや、逃げるのではなく後退的前進だ。

129 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:46:12.51 ID:WQUJgq7Y0


まほ「…さて我々はそろそろ行くとする。赤星、そして直下、先程の件忘れずに頼んだぞ?」

直下「え、あの身内ってどういう?」

まほ「聞 こ え た か ?」ギロッ

赤星・直下「はいぃっ!了解しましたぁ!!」

まほ「では週明けに会おう」



ああ。生きた心地がしない。

こんな調子ではエリカを学校に行かせられないな…。


130 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:49:15.76 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「隊長って大変ね。あんな横着な部下をまとめないといけないのだから…」

まほ「お前が一番横着だ」

エリカ「そんなことないわよ。…そういえばみほも隊長だったわね。忘れてたわ」

まほ「…」

みほ「うん。でもみんな優秀な人たちだからお姉ちゃんほど苦労はしてないかな」

エリカ「そう。…姉さんそのうちストレスでハゲるかもね」

まほ「そんなことあってたまるか」

みほ「隊長がハゲじゃちょっと格好つかないかも…」

まほ「そんなことない。ハゲても格好いい人はいくらでもいる。ステイサムとかヴィン・ディーゼルとか」

エリカ「でもハゲ森峰と言われそうね」

まほ「やかましい」

みほ「はげもりみね……」

131 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:50:26.42 ID:WQUJgq7Y0

エリカ「…で、次はどこへ行くのかしら?」

まほ「そうだな……というかお前たち服は買ったのか?」

エリカ「当たり前じゃない」

みほ「うん。いっぱい買ったよ」

まほ「そうか。それは良かった」

エリカ「ちゃんと姉さんの分も買ったから安心して良いわよ」

まほ「え」


みほ「はい」つ[ボコの着ぐるみ]

エリカ「はい」つ[ネグリジェ]


まほ「」

みほ「えー…そんなスッケスケの着たらお姉ちゃん痴女さんチームになるよぉ…」

エリカ「あんたのその着ぐるみ着せたら姉さん生気吸われるわよ!」


ワイワイ ガヤガヤ


まほ「」つ[ネグリジェ] つ[ボコの着ぐるみ]



お前たちの服選びのセンスには異論を唱えたい。

何故私の服を選び、何故普段着ではなく寝間着なのだ…。

132 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:52:17.75 ID:WQUJgq7Y0


【下着売り場】


みほ「次は下着売り場?」

まほ「あぁ。エリカの下着が無いからな。買わねばならん」

みほ「…ということはエリちゃん今ノーパン?!」

エリカ「そんなわけ無いでしょ! ちゃんと履いてるわよ姉さんのを!」

みほ「お姉ちゃんのを?」

エリカ「えぇ。無地の白いモコモコしたやつ」

みほ「それはちょっとかわいそう…」



当たり前だ。

中学の頃から履き続けてたが故にボロボロで雑巾候補のやつなのだからな。

それよりエリカ、人の下着事情を公にするんじゃない。

133 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:53:14.93 ID:WQUJgq7Y0

みほ「エリちゃんこういうの似合うんじゃない?」

エリカ「どれよ」

みほ「じゃーん」


[ボコプリント]


エリカ「…あんたボコ以外の選択肢ないの?」

みほ「えー」

エリカ「もっと大人なヤツを探しなさい」

みほ「大人なヤツって?」

エリカ「例えばこういうの」


[黒のレースの下着]


みほ「えぇ…」

エリカ「これだったら何処へ行っても恥ずかしくないわ」

みほ「でもお姉ちゃんこういうの履かなさそう…」

エリカ「確かに…」



ちょっと待てお前たち。何故私の下着を選んでいるのだ。

エリカの下着を選べと言ったはずだ。私は十分間に合っている。



それから2人はあれよこれよと言いながら幾つか下着類を買った。…私の分まで。



〜〜〜


134 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:55:02.49 ID:WQUJgq7Y0


【再びII号戦車内】


みほ「それにしてもいっぱい買ったね!」

エリカ「こんなに買い物したの久しぶりよ」

みほ「でもボコは…」

エリカ「だめ」

みほ「ぶぅ!」



みほの言う通りやたら買いまくった。II号の車内が狭いくらいに。

…だが、ここまでたくさん買う必要はあったのだろうか。

エリカの生活用品のほとんどは黒森峰の学生寮にあるので、本当に必要ならばそちらから引っ張って来れば良い。

もっとも、私もエリカもいずれ学園艦には戻らないといけないので、そうなったらエリカは再び寮生活となるわけだ。

そう考えるとこんなに買い込んでも意味が無いような気もするが。


寮生活といえばエリカは一人暮らしは大丈夫なのだろうか?

片腕が使えないので不便なのは勿論、怖いからと私の布団に潜り込むような状態だ。とてもじゃないが一人暮らしなど出来る状態ではない。

実家にせよ寮生活にせよ、エリカが元に戻るまでは私が面倒を見てやるしかないか。…みほ、もう一度黒森峰に戻ってこないか?



〜〜〜〜

135 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:56:58.81 ID:WQUJgq7Y0

【まほの部屋】


まほ「ふむ…」ペラッ

まほ「なるほど」ペラッ

まほ「これは使えそうだな…」ペラッ



みほやエリカが服や雑貨を買い漁っている間、私は本屋で戦車道に関する本を何冊か買っていた。

西住流だとか隊長という立場的なものもあるが、やはり純粋に戦車が好きなので、こういった本は定期的に買って読んでいる。

そして今読んでいるこの本では『ツィメリット・コーティング』という、ドイツ戦車特有の仕様についての解説が書かれている。

ティーガーやパンター、IV号といった主力戦車やそこから派生する駆逐戦車や突撃砲の装甲には、磁石によって吸着する地雷を引っ付かなくするための特殊コーティングが施されており、その表面は波打ったような模様をしている。

戦車道にて吸着地雷を使う者はいないので実装しても重量が増すだけだが、ドイツ戦車のみに見られるユニークな特徴だけに見掛け倒しで終わってしまうのが惜しい。


136 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 17:59:13.04 ID:WQUJgq7Y0


まほ「ふむ…」ペラッ

エリカ「」ジー

まほ「…そういうことか」ペラッ

エリカ「」ジー

まほ「これも使えそうだな」

エリカ「」ジーーー



まほ「…で、どうしてお前は私の横にいる」



どういうわけかエリカは私の横にピッタリ引っ付いてじーっと本を目で追っている。


  私
  ↓

( ゚д゚)(゚д゚ ) ←エリカ
 ヽ_っ⌒/⌒c


こやつも黒森峰の副隊長なので、戦車の知識・理解を深めようとする姿勢は大いに歓迎する。だが、いかんせん横にピッタリ貼り付かれては読書に集中できん。

買った本は他にも何冊かあるのだからそれを読めば良いのに、『コレがいい』と言うから不思議なやつである。

私の体にドイツ戦車のようなコーティングを施せばエリカも引っ付かなくなるだろか?

137 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:00:15.73 ID:WQUJgq7Y0

エリカ「だって退屈ですもの」

まほ「知らん。自分の部屋でコサックダンスでもしていろ」

エリカ「やだ。あの部屋怖い」

まほ「今ならみほがいる。一人ならまだしも二人いれば怖くない」



ちなみに、みほは帰宅すると同時に自分の部屋…ではなく、例のボコランド西住店へ閉じこもってDVDを観ている。相当気に入っているようだ。

楽しそうな表情で『お姉ちゃんも一緒に観よう♪』と誘うので参加したが、3分で飽きたので今はこうして自室で本を読んでいる。

みほによるボコランド侵攻によって居場所を失った難民エリカは、また私の部屋でくつろいでいる。尿瓶でも用意して仲良く観ていれば良かったものを。


138 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:01:03.64 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「イヤよ。みほのやつ私の隣で念仏唱えだすもん」

まほ「念仏?」

エリカ「ヤーッテヤルヤーッテヤルって取り憑かれたみたいに変な歌うたうのよ」

まほ「良いじゃないか。念仏ならオバケは寄って来なくなるぞ」

エリカ「とにかく嫌なものは嫌なの。姉さんの本読んでる方がまだマシよ」



随分言ってくれるなこいつは。

余談だが昨晩からエリカは私にぴったり引っ付くようになった。

腕が使えないとか部屋が怖いとか色々事情はあるだろうが、姉妹とはここまで行動を共にするものなのだろうか?

今この部屋にいないみほくらいが姉妹としての距離感なのだと私は思っていたのだが。

139 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:04:36.50 ID:WQUJgq7Y0

エリカ「次のページ」

まほ「ん」ペラッ

エリカ「」ジーッ

まほ「…」ペラッ

エリカ「あ! 今のページまだ読み終わってない!」

まほ「知らん」

エリカ「戻るわよ」ペラッ

まほ「おい」


エリカ「ティーガーIIと同じ71口径8.8cm砲を搭載した戦車を3つ答えよ」


まほ「は?」

エリカ「ティーガーIIと同じ71口径8.8cm砲を搭載した戦車を3つ答えよ」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「ヤークトパンター、エレファント、あと一つは…」

エリカ「はい残念。答えはナースホルン。やっぱりちゃんと読んでないじゃない!」



急に何をのたまうのかと思えば、先程のページに記載されていた"主砲"についてだった。

"71口径 8.8cm砲"はエリカが乗るティーガーIIをはじめ、ヤークトパンター、エレファントといった我が校の駆逐戦車にも搭載されている。

そしてその砲は、マウスやヤークトティーガーの12.8cm砲に次ぐ最強クラスの砲であり、他校の戦車をアウトレンジから撃破可能な威力をもつ。

黒森峰で戦車道を受講する者ならば"知ってて当然"の知識といっても過言ではない。

それをコイツはしたり顔で私に問うてきたのだ。だが…


140 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:05:54.38 ID:WQUJgq7Y0


まほ「は?」ギロッ

エリカ「な、なによ…」

まほ「ナースホルンは戦車じゃない。(対戦車)自走砲だ」

エリカ「…似たようなものじゃない」

まほ「いいや全然違う! 自走砲は旋回式砲塔がない。それに装甲も薄い。前線で殴り合う戦車や駆逐戦車とは運用思想が異なる」

エリカ「ふ、ふーん…」

まほ「バズーカと迫撃砲くらい違うと言っても過言ではない」

エリカ「じゃあ」

まほ「なんだ?」


エリカ「自走砲と突撃砲と駆逐戦車ってどう違うの?」


まほ「…」

エリカ「…」
141 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:07:14.88 ID:WQUJgq7Y0


まほ「自走砲のうち、砲兵科に行ったのが突撃砲で、戦車部隊に行けば駆逐戦車となる」

まほ「もっとも、突撃砲や駆逐戦車は管轄部隊間の縄張り争い的な背景もあり、定義は曖昧なものだ」

エリカ「ほう…」

まほ「だから大雑把に、歩兵の支援が突撃砲、戦車の支援が駆逐戦車と覚えておけばいい」


エリカ「でも大洗のIII号突撃砲は普通に対戦車戦闘しているじゃない?」


まほ「…」

エリカ「…」

142 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:10:10.29 ID:WQUJgq7Y0

まほ「それは戦況の変化につれて、歩兵の脅威がトーチカや塹壕から戦車へ変わり、突撃砲にも対戦車戦闘能力を求められた背景にある」

まほ「その他、戦線の拡大や戦況の悪化による戦車の不足を補うために対戦車車両が必要になったのも理由の一つだ」

エリカ「ふーん」


エリカ「じゃぁ対戦車自走砲と駆逐戦車は?」


まほ「…」

エリカ「…」


まほ「駆逐戦車は対戦車自走砲の一種という見方もあるが、駆逐戦車は対戦車自走砲と違い、敵戦車の砲撃にもある程度対抗可能な装甲を持っている点が大きな違いだ」

まほ「例えばお前が例に挙げたナースホルンはオープントップで装甲も薄い」

まほ「対してヤークトパンターやエレファントは密閉型の戦闘室を持ち、装甲も戦車と同等クラスだ」

エリカ「へぇ…」


143 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:11:38.41 ID:WQUJgq7Y0



まほ「おいエリカ」ギロッ


エリカ「な、なによ…」

まほ「今の内容は初年度のうちに座学で学ぶはずだが?」

エリカ「え。そうだったかしら?」

まほ「ああそうだ」

エリカ「…記憶違いじゃないの?」

まほ「それはない」

エリカ「ど、どうかしら…」

まほ「何故なら」


まほ「私が教官として指導したのだからな」


エリカ「」



こいつめ、真面目に受講していたと思いきや完全に頭から抜けているではないか。

今の内容は初期にやった基礎的なものだというのに。

ん? もしや私の教え方がいけなかったのか?

…念のため週が明けたら全員にテストしてみるか。結果を見るのが怖いが。

144 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:13:09.90 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「そ、そりゃ人間だから忘れることだってあるわよ!」

まほ「そうだな。人間だから忘れる」

エリカ「でしょ?」

まほ「だがお前は腐っても副隊長だ」

エリカ「腐ってもって失礼ね!」

まほ「そんな腐ったエリカも私が卒業したら隊長になる」

エリカ「そ、そうよ? 腐ってないけど」

まほ「その時、部下に戦車のことを尋ねられ、『わかりません』と答える隊長をどう思う?」


エリカ「………(想像中)」

      。
       O
        ○
*************************************


145 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:14:29.27 ID:WQUJgq7Y0


部下「西住隊長! 質問があります!!」

まほ「言ってみろ」

部下「ティーガーIよりティーガーIIの方が火力も装甲も上なのに、どうして隊長はティーガーIに乗ってるのですか?!」

まほ「え」

部下「どうしてですか?」

まほ「そ、それはだな…」

部下「わかりました! 根性ですねっ!!」

まほ「おっ、そうだな」

部下「みんな! 気合と根性さえあれば黒森峰は最強だ! 黒森峰ファイトぉぉぉぉぉ!!!」

「えー…かったるいっスよー」

「根性より今はケーキが食べたい。そして眠い」zzz

まほ「…」


まほ「お前らの練習態度はなんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 本当に強くなろうって気があんのかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

146 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:15:42.27 ID:WQUJgq7Y0


*************************************
      ○
     o
    。


エリカ「馬鹿なの?」

まほ「…」



私の目を見て真顔で言い放ちやがった。

数秒の沈黙の間に何を想像したのか知らんが、謂れのない侮辱を受けた気がして頭に来た。

この軽口叩きの鼻っ面をへし折ってやろうかとも思ったが、既のところで理性が勝った。

147 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:16:37.07 ID:WQUJgq7Y0


まほ「そうだな。エリカの言う通り、そんな隊長は馬鹿だ」

エリカ「でしょう?」

まほ「あぁ。次期隊長となるお前がそんな馬鹿では困る」

エリカ「私は馬鹿じゃ


まほ「だからテストしてやる」


エリカ「え」

まほ「今から幾つか問題を出す。お前はそれに 完 璧 に 答えろ」

エリカ「ちょっと待ちなさい! 誰がやるって言ったのよ!?」

まほ「私がやれと言った」

エリカ「私はやらないわよ! 勝手に決めないでちょうだい!」

まほ「そうか」

エリカ「そうよ」


ピポパ

プルルルル

プルルルル

148 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:17:19.20 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「?」

まほ「もしもし。お楽しみ中のところ済まないな、みほ」

エリカ「何で家にいるのに電話かけるのよ…」

まほ「はは。何の事はない。みほに頼みたいことががあってだな」


まほ「ボコの魅力に目覚めた。部屋中をボコまみれにしたい」


エリカ「え゛っ!?」

まほ「ん? DVD見終わってから? はは、構わない。それではよろしく頼むよ」

ピッ


エリカ「」


149 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:18:49.40 ID:WQUJgq7Y0


まほ「さて、エリカはテストをしないと言うから、私は ボ コ の ぬいぐるみで遊ぶとしよう」

エリカ「」ガタガタ

まほ「エリカがテストを受けないのは実に残念だが、ボ コ の ぬいぐるみで遊べばきっと楽しいに違いない」

エリカ「」ガクガク

まほ「嗚呼、楽しみだな」

エリカ「わかったわよ!! やれば良いんでしょぉ!!!」

まほ「最初からそう言え」



ポンコツにはポンコツなりの法則があるようで、エリカが言う事を聞かなくなったら「ボコ」を出して従わせることにした。我ながら良い案だと思っている。


さて、予告通りエリカにはいくつかテストを実施したが、やはり散々な結果だった。

エリカですらこのザマならば他の隊員たちはどうなるのだろうか。

考えるだけでも恐ろしいが放置するわけにもいかん。やはり週が開けたらテストを実施しよう…。

150 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:19:51.62 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「ふ、フン…。基礎は知らなくても後から覚えれば良いだけのこと」

エリカ「それより他校に関する情報を入手することの方が試合で勝つ上では重要よ!」

まほ「そんなことあるか。基礎を軽んじては一流の戦車乗りにはなれん」

エリカ「じゃあ姉さん、転校先でみほが何て呼ばれてるか知ってる?」

まほ「は?」

エリカ「みほのアダ名」

まほ「そんなものは知らん。第一それのどこが"他校に関する情報"なんだ」

エリカ「私知ってるわよ」

まほ「…なに?」

エリカ「みほのアダ名」

まほ「…」

エリカ「…」


まほ「…言ってみろ」


151 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:20:41.73 ID:WQUJgq7Y0


エリカ「"みぽりん"」

まほ「"みぽりん"…?」

エリカ「こんなの常識よ? アンツィオ高校だって知ってるレベル」

まほ「私は知らんぞ。そんなこと」

エリカ「姉さんが情弱なだけよ」

まほ「失礼な。そういうお前はどこで情報を得ている?」

エリカ「戦車道まとめサイトよ」

まほ「まとめさいと?」

エリカ「…コレよ」スッ



そう言うとエリカは得意気に携帯電話を私に見せつけた。

152 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:22:20.59 ID:WQUJgq7Y0

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                  Y剿レ8% 12:26


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 1.【大洗が悪い】今日のみぽりん【軍神
  ティーガース】(334)
 2.お前ら戦車乗ってる時にウンコしたく
  なったらどうすんの?(890)
 3.エレファントに乗ると四方八方から集
  中砲火食らう件(413)
 4.野獣先輩西住流家元説(514)
 5.面接で「戦車道やってました」って
  言った結果wwwwwwwwww
 6.水虫が治らん…(52)
 7.にるぎりワッショイだけで1000目指す
  スレ(12)
 8.…………(2)
 9.黒森峰の戦車全部チハにしたら強豪校
  じゃなくなるんじゃね?(682)
 10.蝶野だけど質問ある?(1)
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     更新日 2017/09/24

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153 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:23:24.41 ID:WQUJgq7Y0

まほ「…何だこれは」

エリカ「言ったでしょ。戦車道まとめサイト。…本当に知らないの?」

まほ「言ったはずだ。そのような俗物は知らん」

エリカ「だから姉さん情弱なのよ…」

まほ「いらんお世話だ。大体この"黒森峰の戦車全部チハにしたら"というのは何だ。冗談も休み休み言え」

エリカ「"火力も装甲も低いチハを使っても黒森峰は優勝出来るか"って話でしょう?」

まほ「当然だ。厳しい訓練を耐え、心身を限界まで鍛え抜いた強者集団が黒森峰だ。戦車の性能如きで試合を左右される軟弱ではない」


154 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/11(土) 18:24:04.78 ID:WQUJgq7Y0



エリカ「なら次の試合はチハだけで挑む?」


まほ「…なに?」

エリカ「次の試合。全員チハで参戦するのよ」

まほ「…」

エリカ「…」


まほ「それは不可能だ。予算が下りん」

エリカ「どうかしら


グゥゥゥゥ.....


エリカ「」

まほ「…」

エリカ「な、何よ…?////」

まほ「そろそろ昼食の時間だな」

エリカ「今日のお昼は何かしら?」

まほ「もちろんカレーだ」



〜〜〜


155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:37:54.02 ID:iriIUEfw0
いつの間にかみほの方が妹が出来て喜んでるように見えるな
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 10:48:07.98 ID:OdZrxhV5O
いいですねぇ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 13:37:54.89 ID:/uQTKKexO
尊敬する隊長に糞尿の始末をさせるエリカさん
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 07:10:21.60 ID:Vg2h8xamO
続きはよはよ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 12:50:28.98 ID:29Xyto/RO
支援
160 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:39:11.18 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さぁぁぁん!!」

まほ「うるさいな。今度は何だ」



部屋を出たエリカが血相変えて引き返してきた。

昼食に人肉でも出たのかと冗談を言ってみたら『その方がずっとマシよ…』と震えながら言う。

食卓に人肉が並ぶことほど怖い事などそう無いと思うが、どうやらエリカは人肉以上に怖いものを見たようだ。



エリカ「廊下が…廊下がぁぁ………」

まほ「そんなこと気にする歳でもないだろ」

エリカ「老化じゃなくて廊下よ!!」

まほ「…うるさいやつだな全く」

161 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:47:35.94 ID:3c2e7IRd0


【廊下】


まほ「なんと…」

エリカ「」ガタガタガタガタ



そうだ、忘れていた。

先ほどエリカがテストをサボろうとするので、制裁としてみほに『部屋中をボコまみれにしたい』とお願いをしたのだった。

私の部屋がボコまみれになることはなかったが、代わりに廊下がボコまみれになっていた。

いつの間にこんな設営作業をしたのかわからないが、ボコは廊下の両脇に向かい合うように設置されている。なんだか神秘的な光景だ。

そしてそれはみほにとっては花道だがエリカにとってはグリーンマイルのようで、私にしがみついてガタガタと震えている。デジャブ。


162 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:50:57.55 ID:3c2e7IRd0


まほ「こら離れろ」

エリカ「い、嫌よ! 離れたら私殺される!!」ガタガタ

まほ「誰に殺されると言うんだ」

エリカ「コイツらによ!!」

まほ「動かないから心配するな。そしてさっさと歩け。私は腹が減った」

エリカ「う、嘘よ! 絶対動くから!!」

まほ「なら動いた時に考えろ」

エリカ「な、なんで姉さん平気なのよ!? ちゃんと脳ミソ入ってんの!?」

まほ「当然だ。お前のより高性能なやつがギッシリ詰まっている」

エリカ「嘘おっしゃい!!」



兎にも角にもピーピーやかましいやつだ。ぬいぐるみが並んでいるだけだというのに。

これが17ポンド砲ならば話はわかるが、モコモコのぬいぐるみ相手に何を怯えろというのだ。

163 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:52:30.70 ID:3c2e7IRd0


カチッ...


まほ「ん?」



オイラボコダゾォォォォォォォォォォォォ!!!!!

ヤーッテヤルヤーッテヤルヤーーーッテヤルゾ!!

パンパカパンパンパーン!!

カーモン!カーモン!カーモン!ユーキャンデス!!

ジャラジャラジャラ



まほ「お」


エリカ「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」



歩いた振動でセンサーが反応したのだろうか。

ボコロードを半分ほど渡ったところで、急にぬいぐるみに内蔵されていた機械が作動して音が鳴り出した。

音声だけでなくブルブルと振動したり、ライトがピカピカ光ったりするようだ。近頃のぬいぐるみはなかなか多機能である。子供にプレゼントしたらきっと喜ぶだろう。

ただ、ぬいぐるみが賑やかであるかどうかより、エリカが相当まずいことになっている。

腹の底から悲鳴をあげたと思ったら泣き出して、私にしがみついて万力のようにギチギチと締め上げてくる。痛い。腕が痛い。


164 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:55:41.49 ID:3c2e7IRd0


まほ「…というわけです」

まほ「ええ、みほが…いえ、私も悪いんです。いえ全て私の責任です」

まほ「はい…。今以上に厳しく取り締まろうと思っています」

まほ「…では、失礼します」


まほ「………」



エリカのただならぬ悲鳴にお母様がかけつけた。

そして結論を言うと、諸悪の根源であるみほはお母様に叱られた。私まで一緒に怒られた。


"長女としての自覚を持て"

"いい年して妹を泣かすな"

"早くご飯食べなさい"

"ぬいぐるみは後でちゃんと片付けろ"


私が気を抜くことなど無いと思っていたが、このような大失態を犯すのだから、何処かに気の緩みがあったのだろう…。

私としたことが………


エリカはというと、接着剤で貼り付けたかのように私にベッタリと引っ付いたまま離れようとしない。

「怖い」、「食われる」、「おヘソ取られる」といったうわ言をボヤきながらガタガタ震えている。

そんなにくっつくな。ご飯が食べれないだろう。


ちなみに昼食はキャベツとモヤシが山のように入ったラーメンだった。

菊代さん曰く、お母様が作したとのことで。修行をしていた学生時代によく食べたラーメンとのこと。

大蒜の匂いがすごい。

165 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 19:56:59.82 ID:3c2e7IRd0


みほ「…」ズルズル

まほ「みほも手伝ってくれ。このままではラーメンが食べれない」

みほ「しぃらない」シャキシャキモグモグ

まほ「おい…」

みほ「…」ズズ...

まほ「お前もだエリカ。いつまでもしがみついてないで離れろ。ラーメンが伸びてしまう」

エリカ「…む、無理に決まってるでしょ…!」

みほ「…」ズゾゾー



自分が撒いた種とはいえ、こういう形で返ってくるとは思わなかった。

エリカの記憶がおかしくなってからというもの、私の作戦はことごとく裏目に出てしまう。

166 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:23:26.76 ID:3c2e7IRd0


みほ「早く食べないとラーメンのびちゃうよ?」

まほ「私だって早く食べたい。しかし動けんのだ」

エリカ「」ガタガタブルブル

まほ「こいつのせいでな」

みほ「そう」ツーン



みほは機嫌が悪い。

何故なら『部屋中をボコまみれにしたい』と頼まれ、いざ注文通りにしたらお母様に叱られたわけだ。

それは"カレーだと思って要塞を構築させたらノルマンディーに上陸した"というくらい予想外で頭に来ることだ。みほの気持ちも理解できる。

しかし、空腹時にラーメンが目の前に置かれ、それを食べることが出来ないこの状況は、それらよりも理不尽だと私は思う。

167 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:25:41.54 ID:3c2e7IRd0


まほ「エリカ、いい加減離れろ」

エリカ「い、嫌よ…だってクマが…!」ガタガタ

まほ「…」


まほ「クマのぬいぐるみに襲われない方法、知りたいか?」


エリカ「なんですって!?」

まほ「クマのぬいぐるみに襲われない方法だ。それを会得すればお前も安全だろう?」

エリカ「そんなモンあったら苦労しないわよ! バカじゃないの!?」

まほ「私は長年この家に住み着いてるが、今の今まで一度も襲われたことなんて無い」

エリカ「!!!」

まほ「それは何故だかわかるか?」

エリカ「………姉さんに魅力が無いから?」

まほ「もう知らん。お前なんかボコに襲われて爪先から頭蓋骨まで残さず食われてしまえばいい」



なにが"魅力が無い"だ。失礼にも程がある。

自惚れではないが戦車道に関しては他の追随を許さぬ実力を持っている。

そしてそれはお母様も高く評価して下さっている。

私に魅力がないわけ無いだろう。

168 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:26:58.89 ID:3c2e7IRd0


エリカ「嫌よ!! そんなの絶対イヤ!!」ギチギチ

まほ「んごがっがあがごげっんががっ…ぐ、ぐるじ……はな…れろ…」パンパン

エリカ「で!! どーして姉さんは襲われないのよっ!!?」

まほ「…それは…だな………」ゼェゼェ...



まほ「ごはんを食べることだ」



エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

みほ「ごちそうさまでした」

まほ「…」

エリカ「…馬鹿なの?」

まほ「…」


169 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:30:45.59 ID:3c2e7IRd0


まほ「…エリカ、お前はニンニクくさい奴は好きか?」

エリカ「は?」

まほ「ニンニクくさい奴は好きか?」

エリカ「…そんなの嫌に決まってるでしょ」


まほ「それはボコも同じだ」


エリカ「え」

みほ「大丈夫だよ。ボコはニンニクのニオイなんk

まほ「幸いにして今日の昼食はニンニクがたっぷり入ったラーメンだ!」

エリカ「そうね…?」

まほ「これ食べればお前は瞬く間にニンニク臭くなれる」

エリカ「はぁ」


まほ「つまり、ボコがお前を避けるようになる」


エリカ「!」

まほ「さぁ、食べよう」

エリカ「」パッ



ようやくエリカは私から離れた。

そして自分の席に戻り、ニンニクがふんだんに入ったラーメンを黙々と食べ始める。

モグモグ作戦いや、モクモク(黙々)作戦の成功だ。

170 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:34:30.04 ID:3c2e7IRd0


みほ「む…」

まほ「どうしたみほ?」

みほ「モクモク作戦はこんなのじゃないよ」

まほ「黙々と食べるから黙々作戦なのだ」

みほ「違うもん!」



モクモク作戦。

それはかつてみほが我々黒森峰と戦った時に敢行した作戦の一つ。

我々の攻撃を回避し距離を取るため、一斉にスモークを焚いて視界を遮るというものだ。

シンプルな内容ではあるが、チームの連帯が取れてなければ失敗する極めて高度な作戦であり、その効果は凄まじい。

結果としてみほたち大洗の戦車は、我々の戦車部隊が繰り広げる猛攻撃をいとも容易く回避し、次の作戦である山頂の要塞構築に成功した。

あの作戦は敵ながら見事と言わざるをえない。さすが私の妹だ。素晴らしいの一言に尽きる。

171 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:37:13.75 ID:3c2e7IRd0


みほ「いい? モクモク作戦というのはね」

みほ「ただ単に姿を隠すだけじゃなくて」

みほ「時間稼ぎからの反撃につなげるための作戦なんだ」

プゥーン

まほ「う…うむ……」



話をするみほから強烈なニンニク臭が漂ってくる。

前回の戦訓により、モクモク作戦を打ち破るために徹夜で対抗策を考えたにもかかわらず、私はまたしてもみほのモクモク作戦を前に悪戦苦闘する。

さすがだよ…みほ…。


だが清楚で純粋無垢な我が愛すべき妹が中年オヤジよろしく悪臭をモクモク放出するのは如何なものかと思う。

切実に対処法を考えねば…。



〜〜〜〜
172 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:39:17.61 ID:3c2e7IRd0


エリカ「ふぅ。満腹満腹」

まほ「それ以上近寄るな」

エリカ「…わかった」サッ

まほ「? やけに素直だな?」

エリカ「だって姉さん臭いんだもん」

まほ「…」



腹が膨れてボコの事などすっかり忘れたエリカが満足そうに腹をさする。まったく現金なやつだ。

お前のせいで私はのびたラーメンを食わねばならんかったというのに。

そしてみほに続いてエリカまでニンニク臭い。これではボコどころか鬼も悪魔も近寄らん。

…と思っていたが、居場所がないエリカは私の部屋に居座り、先ほどと同じようにくつろいで本を読んでいる。

部屋と本がニンニク臭くなるから勘弁してほしいのだが。

173 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:41:24.74 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さん…」

まほ「なんだ。トイレならさっさと行ってこい」

エリカ「違うわよ!」

まほ「じゃぁ何だ」

エリカ「…ちゃんとお風呂、入ってるよね?」

まほ「お前、昨日一緒に入ったの忘れたのか?」

エリカ「そう言えばそうだったわね」

まほ「まったく」


エリカ「お風呂入ってるのにクサいって相当だと思うけど…?」ヒキッ


まほ「…お前も同等あるいはそれ以上に臭いのだが?」

エリカ「そんなことないわよ。姉さん鼻までおかしくなったの?」

まほ「その言葉、そっくりそのまま返そう」



それにしてもこいつは減らず口を叩く。かつて私の右腕として従順だった頃の面影など無かったかのように。

隊長・副隊長の関係から姉妹に変わった(と思いこんでる)今のエリカが"素"の姿なのかもしれないが、こうも距離感を詰められると対応(扱い)に困る。

174 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/15(水) 21:42:34.13 ID:3c2e7IRd0


エリカ「姉さんくさい…」ゲッソリ

まほ「何度も言わせるな。私がくさいのではない。ニンニクがくさいのだ」

エリカ「でもニオイは姉さんの方から来てるわよ…」

まほ「私も先程からお前の悪臭を嗅がされ続けているのだが?」

エリカ「…」クンクン

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「…」

エリカ「お風呂、入りましょう?」

まほ「………仕方あるまい」





175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 12:49:23.89 ID:OLtvaGL6O
一緒に入るんですよね分からります
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/16(木) 13:17:07.75 ID:bGfZWH8eo
菊代→他人なのでイヤ
しほ→精神的、物理的(直視)に怖い
みほ→ボコグッズで洗われるのが怖い
まほ→消去法
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/18(土) 14:25:27.22 ID:JXPaKLMy0
はよ
178 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:16:59.27 ID:LGEFd4u10


【脱衣所】


みほ「あ、お姉ちゃんとエリちゃん」

エリカ「みほもお風呂に入るの?」

みほ「うん。さすがにニンニクのニオイを落としたいからね」

まほ「全くだ。臭くてかなわん」

エリカ「そうね。さっさと入りましょう」


みほ「えっ?」

エリカ「ほら、入るわよ」

みほ「え、あ、ちょっと…! エリちゃん平気なの…?」

まほ「エリカは腕が使えない。だから昨晩も私がエリカの髪やら何やらを洗ってやった」

みほ「そうなんだ」

エリカ「お風呂広いから3人くらい平気よ」



どうやらみほも我々と同じことを考えていたようで、体中に染み渡るニンニクのニオイを落とすために風呂に入るところだったようだ。

そんなわけで姉妹(とエリカ)水入らずの裸の付き合いをする。

みほのやつ。また大きくなったな。



179 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:26:08.39 ID:LGEFd4u10


【風呂】


エリカ「悪いわね、みほ」

みほ「ううん、仕方ないよ。エリちゃん片腕使えないんだから」シャカシャカ

エリカ「」ホヘー

まほ「みほのシャンプーは気持ちが良い。私も昔はよくやってもらった」

みほ「あはは懐かしいね。気持ち良いってお姉ちゃん気絶しちゃったもんね」モショモショ

まほ「はは。マッサージの途中に寝るようなものだろう」

みほ「風呂場で全裸のまま朝を迎えたもんねー」モチャモチャ

まほ「…そこは起こしてくれよ」


エリカ「腕の方はまだまだ時間かかるから、暫くはお世話になりそうね…」

みほ「カルシウム摂ると早く治るかもしれないよ?」ワシャワシャ

エリカ「カルシウムねぇ…」

みほ「私が頼んでるボコ印ミルク飲む?」ワシャワシャ

エリカ「絶対イヤ。そんなもん飲んだら死ぬわよ」

みほ「むっ! 私毎日飲んでるけどピンピンしてるよっ!」ゴショゴショ

エリカ「姉さんは"鯛の天ぷらを食べすぎて死んだ"って言ってたけれど?」

みほ「お姉ちゃん…徳川家康じゃないんだから、もっとまともな死因にしてよ…」モシャモシャ

まほ「すまん…」

エリカ「肥溜めにハマって死ぬとか?」

みほ「もっと嫌だよ!!」クシャクシャ

まほ「そうだぞエリカ。みほを何だと思っている」



〜〜


180 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:38:51.03 ID:LGEFd4u10


みほ「痒いところはありませんか〜?」ワシャワシャ

エリカ「はぁ?」

みほ「えへへ。一度言ってみたかったんだ」

エリカ「…そう。今は無いわ」

みほ「えー」



それは勿体無い。みほが痒いところを掻いてくれるんだぞ?

戦車で例えるならティーガーIIがもう1輌貰えるくらい喜ばしいことなのに。

心なしか体中が痒くなってきた。みほ、掻いてくれないか?



エリカ「強いて言えばギプスの中が痒いわね」

みほ「あー、ずっと付けてないとダメだもんね…」

エリカ「ええ。外したら即・掻き毟ってやるわ」

みほ「あはは。ほどほどにね」



私は骨折などしたことがないので詳しいことは分からないが、ギプスを装着すると不具合でもない限り、基本的に装着したままとのこと。

そうなるとエリカのようにギプスをはめている部分が"痒い"といったことも起きうる。

『そんなことか』と思うかもしれないが、痒いところを掻けないというのは意外に辛いものだ。

あとは濡らすのも良くないので、エリカはギプスの上にタオルを巻いて、更にビニル袋をかぶせている。

動かせない以外にもギプス生活はいろいろ不便なので、そうならないようケガには十分気をつけたい。

181 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:46:36.48 ID:LGEFd4u10


ザパーン


エリカ「…ふぅ」

みほ「こっちのお風呂は大きいから良いね」ノビー

まほ「そうだろう。風呂が恋しくなったらいつでも帰って来ると良い」

みほ「でも帰宅するってメールしたらお姉ちゃん気付かなかったじゃない」ジトー

まほ「あれはだな…」


エリカ「姉さんもお母さんもどういうわけか機械オンチなのよね…」

まほ「うるさいな」

みほ「あはは。パソコンは難しいから」

まほ「それが普通だ。心配しなくていい」

エリカ「姉さんもそろそろパソコン使えるようにした方が良いと思うわよ?」

まほ「パソコンなら使える。この間電源の入れ方および切り方を覚えた」

エリカ「…そう。ところでみほ」

みほ「なーに?」


エリカ「もしインターネット使えるのなら良いサイト教えてあげる」

みほ「なになに?」

エリカ「"フューリーを探さないで"って検索してみると出て来るページ。なかなか面白いわよ」

みほ「…なにそれ?」

エリカ「見てのお楽しみ」

182 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 21:49:34.19 ID:LGEFd4u10

〜〜〜


みほ「この入浴剤いい匂いがするね。どこのだろう?」

まほ「ああ。いい香りだ。ニンニクのニオイも消してくれる」

みほ「そうだね。あとで菊代さんに聞いてみるよ」

まほ「それがいい」

エリカ「」プニプニ

みほ「あっ、それ私のII号!」

エリカ「この子触り心地良くて気に入ってるのよ」

みほ「む。あげないからねー」

エリカ「…ねぇみほ」

みほ「ん?」

まほ「!!! エリカやm


エリカ「チ●ポ」ボロン


みほ「!!?」

まほ「よさんか!!!」バコッ!!

エリカ「いだぁっ!?」



コイツまたやりやがった!

II号をプニプニ弄ってる時から嫌な予感がしたが、妹にまで卑劣な真似を!

私に向けてやるなたまだいい。だが、みほはまだウブで清純な乙女なんだぞっ!!!


183 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:00:10.65 ID:LGEFd4u10


みほ「…前にね、そういうのネットで見たことがあるよ」

まほ「え」

エリカ「そうなの?」ヒリヒリ

みほ「うん。5%の確率でボロンするっていうので、普段はごく普通の投稿なんだけど、たまにね」

まほ「」

エリカ「なんだ。みほも知てるんじゃない」

みほ「他にもサオリスクタイムとかネットには色々面白いのが色々あるよね!」

エリカ「そうね。しょーもないと思いつつもクスッってなるわ」

まほ「」



お、おい…みほ…お前なんてものを見てるんだ…


184 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:01:07.59 ID:LGEFd4u10


みほ「それでね? ボロンするとゲームでレアキャラゲット出来たり色々ご利益があるんだって」

まほ「」

エリカ「ある種のパワースポット的なものかしら?」

みほ「そうかもしれないね。…でも」

エリカ「ん?」

みほ「お股にII号あてるのはどうかと思うんだ…」

エリカ「そうかしら?」

まほ「み、みほの言う通りだ…下品にも程があるぞエリカ…!」


みほ「そんなにおっきくないから」


まほ「なぁっ!?」

エリカ「へぇー」



お、おい…みほ…おまえは一体何を言っているんだ………?!

どうして全てを知っているかのように語るんだ……?!

おまえ…まさか………!!!

185 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:02:16.13 ID:LGEFd4u10


みほ「だって昔、お父さんと一緒に入ったときに見ちゃったもん」

みほ「大人のお父さんでもあんなだから、きっと皆それくらいなのかなぁ…って」

エリカ「あ、姉さん沈んだ」

まほ「」

みほ「え?! ど、どうしたのお姉ちゃん?!」

まほ「」ブクブクブクブク



良かった…みほはまだ純潔だった…。お父様のは残念だと思うが、今はそれで良いんだ…。

世の中には知らなくて良いことだってたくさんある。別に知らなくたって死にはしないんだ。だから知らなくて良い。

…私も知らないが、みほは特に知らないでいて欲しい。


186 : ◆MY38Kbh4q6 [saga]:2017/11/19(日) 22:06:19.69 ID:LGEFd4u10


【再び脱衣所】


みほ「お、お姉ちゃん、大丈夫…?」オロオロ

まほ「……大丈夫…だ…クルスクに…比べたら………」

エリカ「行ったことないクセに…」

まほ「…だま…れ……」

みほ「とりあえずお水飲んで?」

まほ「…すまん…みほ………」ゴクゴク



私はいつの間にかみほの作戦に完膚なきまでに打ちのめされるようになっていた。

それは私が弱くなったからではない。みほが私を上回るほどの実力者になったという動かぬ証拠だ。

西住流だの黒森峰隊長だと驕り高ぶっているせいで、いつのまにか妹に追い抜かれてしまっている。

やはり週明けからは気を引き締めて今まで以上に厳しく鍛えなければなるまい…。

意識が遠のく中で私は誓った。


〜〜〜〜

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