由比ヶ浜結衣「電池って……何なんだろう?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:47:04.33 ID:jSnZpyIz0
――部室――

八幡「…………」

雪乃「…………」

八幡(ダメだこいつ……早く何とかしないと。いや、待て)

八幡(これは由比ヶ浜渾身のボケなのかも知れない。ボケなら当然つっこみをいれてやるのが人情というものだが)

八幡(いかんせん、由比ヶ浜のことだ。本当に文明の利器である電池の存在を失念してしまったとも考えられる)

雪乃(由比ヶ浜さん……いきなり何を言っているのかしら)

雪乃(電池とは何か、彼女はそんな簡単なことまで分からなくなってしまったというの?)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510519623
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:47:52.96 ID:jSnZpyIz0
雪乃(いいえ、この考え方はあまりに由比ヶ浜さんの知性を蔑ろにしてはいないかしら)

雪乃(もしかすると由比ヶ浜さんは、電池を通して何か哲学的な問いかけをして、私たちを試しているのかもしれないわ)

八幡(待てよ。そういやこの前、化学の授業で電気分解出てきたよな。こいつ、よもや授業がきっかけで電池の仕組みについて興味を持ったのではなかろうか)

雪乃(『電池とは何か』。確かに突き詰めれば奥の深いテーマかも知れないわね。理数系科目も絶望的な由比ヶ浜さんが電池に興味も持った。これはとても好ましい現象なのではないかしら)

八幡(由比ヶ浜同様に理数系科目が絶望的な俺には電池について詳しい解説などできるはずもない。となると)

雪乃(電池についての問いかけは私に向けられたものね。比企谷くんなんて何の役にも立たないのだし)

八幡(まあ、勉強嫌いな由比ヶ浜が珍しく勉強する気になったんだ。ここは後押ししておいてやろうじゃないか。へるもんじゃないしな)

雪乃(ここは茶化したりせずに、由比ヶ浜さんの探求心に応えてあげるのが優しさというものだと思うわ)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:49:08.72 ID:jSnZpyIz0
結衣「あれ、ヒッキーもゆきのんもどうしたの? 急に何か考えこんじゃって」

雪乃「いえ、何でもないわ。由比ヶ浜さん、電池のことが知りたいのよね」

結衣「あ、うん……そうなんだけど……」

八幡「まあ、こういうのは理数系が得意な人間に聞いた方がいいだろう。雪ノ下、答えてやれよ」

雪乃「電池というのは一言でいうと、何らかのエネルギーによって直流の電力を生み出す電力機器のことよ」

雪乃「化学反応によって電気を作る『化学電池』と、熱や光といった物理エネルギーから電気を作る『物理電池』の二種類に大別されるわ」

八幡(さすがユキペディアさん。まるで本家からそのままコピペしてきたかのような簡潔さだ。これなら私立文系の俺でも一応の理解はできる。だが)

結衣「え? え? え?」

八幡(相手は由比ヶ浜だ。いきなりこんな教科書に載っているような説明をされても容易く理解できるはずがない)
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:49:58.85 ID:jSnZpyIz0
雪乃「ちょっと言葉足らずだったかしら?」

雪乃「由比ヶ浜さん、今の説明で分からないところがあったら何なりと質問してもらってかまわないわ。一つ一つ、丁寧に答えてあげるから」

結衣「いや、その……違くて」

八幡(雪ノ下は基本的に超高スペックだから、まったく未知の分野の事物に関して説明を受けても、一回聞けば、大まかな内容は理解できるだろう)

八幡(だからその上で、なお分からないこと、補足説明してもらいたいことを抜き出して、質問することができる)

八幡(だが、それは雪ノ下だからできることであって、由比ヶ浜の場合にはその原理が通用しないのだ)

八幡(何故なら由比ヶ浜はアホの子だから。未知の分野の専門用語満載な説明を聞いたって、何ら理解できない。未知の外国語を垂れ流しで聞かされているのと同じなんだ)

八幡(外国語そのものが意味不明なのに、その内容に関して質問をしろというのが土台無理な話)

八幡(で、結局のところ何も質問を出すことができずに終わる)

八幡(何一つ理解できず、何ら得られるところもなく、貴重な学習の時間が失われてしまうのだ。ソースは数学の授業中の俺)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:51:03.67 ID:jSnZpyIz0
雪乃「違う、とはどういうこと?」

結衣「あのね、ゆきのん……そういう電池の話じゃなくて」

八幡「もう少し、とっつきやすいところから入った方がいいんじゃねぇの?」

結衣「ヒッキー?」

雪乃「とっつきやすいところ、というと?」

八幡「別に電池の原理原則やら、難しいところから入らなくてもいいんじゃねぇかってことだ」

八幡「お前の説明はまんま教科書に載っていそうな内容だ。今、俺たちがやっているのは授業じゃないだろ」

八幡「別に小難しいこと考えるんでなく、もっと気楽に電池について調べてみるってのはどうだ」

雪乃「気楽に?」

八幡「由比ヶ浜も、ただ単に化学の試験勉強のために電池のことを知りたいわけじゃねぇと思うんだよ」

八幡「こう、何つーの……日常生活の中で沸いたきた素朴な疑問として、みたいなことなんじゃないか?」

雪乃「……なるほどね」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:51:54.96 ID:jSnZpyIz0
雪乃「確かに、ちょっと私の説明は堅苦しすぎた感があるかもしれない。悪かったわ、由比ヶ浜さん」

結衣「う、ううんっ! ゆきのんが謝ることなんて……ないし」

雪乃「では、どういった形で電池を調べたらいいのかしらね。図書室で電池関連の書籍を借りることにしましょうか」

八幡「いや、図書室で本を借りるという行為自体が、読書に縁のない由比ヶ浜にとっては肩肘張った勉強の範疇になるだろう」

雪乃「確かに……そうね。図書室利用ではポイントとなる調査の『気楽さ』と『とっつきやすさ』を満たすことができない」

雪乃「では、どうすればいいのかしら……難しいわね」

八幡「ああ、俺たちが由比ヶ浜のレベルに合わせるのは難しい。だが、せっかく由比ヶ浜が科学分野に対して知的好奇心を抱いているんだ」

八幡「俺は由比ヶ浜の気持ちを優先してやりたいと思う」

雪乃「そうね、私も同感よ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:52:21.08 ID:jSnZpyIz0
結衣(何か馬鹿にされてるような気もするけど……。でも、二人ともあたしのこと凄い考えてくれてるんだ。これってちょっぴり……嬉しいかも)

結衣「……って、ちょっと待って! だからそうじゃな」

八幡「俺に考えがある。『由比ヶ浜がとっつきやすく、気楽に電池のさまざまな情報を調べられる方法』」

八幡「それはこの部屋の中でも、容易に実現できる」

雪乃「ずいぶんはっきりと断言するのね。いいわ。そのアイディア、聞かせてもらえるかしら」

結衣「て……二人とも聞いてない……」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:53:30.73 ID:jSnZpyIz0
カタカタカタカタ

結衣「電池という言葉は、『電』気をためる『池』ということばからきている。へぇ〜、あれ、池なんだ」

八幡「池というよりは桶とか樽のような見た目だけどな、電池」

雪乃「現在の電池のイメージから池は連想しづらいわね。このサイトの説明が参考になるわ。図も添えられているし」

結衣「何これ? 並んでるグラスの中に何か入ってて、コードみたいなので繋がってる」

八幡「ああ、これは俺にも分かるぞ。ほら、あれだ、ポンタ電池」

雪乃「ボルタ電池よ……ポンタって何者なの?」

八幡「え、知らねーの? ほら、試合に負けた時にすぐ脱ぐやつ」

雪乃「すぐ脱ぐ……汗にまみれたユニフォーム?」

結衣「え? ポンタってカードじゃないの?」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:54:38.29 ID:jSnZpyIz0
雪乃「この図の通り、原始的な電池はガラス製などの容器の中に硫酸と金属片を入れて電気を生じさせていたの」

八幡「なるほど。元は液体をためておく容器で、それが文字通り『池』だったんだな」

結衣「し、知らなかった!」

雪乃「これでもう、電池という字を書き間違えることはなくなるでしょうね。よかったわね、由比ヶ浜さん」

八幡「ああ。地面の『地』じゃなくて『池』だぞ。しっかり覚えとけよ由比ヶ浜、ここテストに出るぞ」

結衣「出ないしっ! 電池くらい書けるもんっ! ヒッキー笑顔がムカつく〜!」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 05:55:12.69 ID:lhfWD+QBO
電池「俺が全部教えてあげるよ結衣ちゃんフヒヒ」ポロン
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/13(月) 05:55:35.13 ID:jSnZpyIz0
カタカタカタカタ

雪乃「電池切れ。乾電池、蓄電池等が放電しきってしまった状態」

八幡「ああ、まあそうだな。その通りだ。電池が切れてるんだからな」

結衣「ヒッキー、放電って何?」

八幡「ほうでん? あー、あれだ。3割の確率で相手をまひ状態にするやつ。ダブルバトルで全体攻撃できるから使い勝手がいいぞ」

結衣「え……3割で麻痺って? 何それ、電池こわっ、触れないし!」

雪乃「いったい何の放電の話なのかしら……」
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