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久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」

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882 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:13:13.77 ID:Ps8+g9vo0


・どこかの未来、うたえりレイディオ


咏「さーて今日も始まったねぃ」

えり「今日は打ち合わせ通りに頼みますよ」

咏「このやりとり打ち合わせにあった?」

えり「放送前の注意事項みたいなものです」

咏「んじゃ、えりちゃん進行頼むぜぃ」

えり「三尋木プロもしっかりお願いします」

咏「えー?」

えり「ではなく、早速投稿メールからいきますよ」

咏「ふくすこコンビに対抗するためにラジオやらされてるとは言え、えりちゃんも大変だねぃ」

えり「だからあなたもやるんですよっ」


883 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:16:59.40 ID:Ps8+g9vo0



『三尋木プロといえば着物ですが、洋服を着ることはないんでしょうか?』


咏「まーた今更な質問だねぃ」

えり「着てますよね」

咏「オフの時とか、たまーにだけど」

えり「今度撮影の時どうですか?」

咏「イメージ崩れるんじゃね? 知らんけど」


『エイミーとはどれぐらいの付き合いなんでしょうか?』


えり「エイミー……というと、時々身につけているあのぬいぐるみのことですね」

咏「えりちゃん正解。ま、元々はゲン担ぎでつけてたものなんだよねっ」

えり「ゲン担ぎですか。なら、麻雀を始めてからとか?」

咏「そんな感じ。小学生ぐらいじゃね? 知らんけど」

えり「そこは知っててください」

咏「ちなみにセアミーって仲間もいるからよろしくっ」

えり「なんの宣伝ですか」

咏「というかさっ、こっちの質問ばっかだけど、えりちゃん宛ってないの?」

えり「あるにはありますけど……」

咏「じゃあ次はそれってことで」

884 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:20:39.15 ID:Ps8+g9vo0


『好きな人に中々気持ちが伝わらなくて困ってます! 針生さん何かアドバイスください!』


咏「恋愛相談……えりちゃんに?」

えり「なにか言いたいことでも?」

咏「さぁねぃ」ニヤニヤ

えり「ニヤニヤしないでください」

咏「ところで恋愛経験は?」

えり「私のことはいいですから、答えてあげてくださいよ」

咏「や、えりちゃん名指しじゃね?」

えり「恋の話題なら三尋木プロ向きかと。最近どうなんですか?」

咏「いやいや、あいつはまだまだだし? 師匠としては、そういうことは一回ぐらい大会で優勝してからでも――」

えり「ええ、そうですね。私はあなたの弟子の話をしたわけではありませんが」

咏「あ……えりちゃん、ちょっと意地悪すぎね? 知らんけどさっ」

えり「私から言えるのは、相手にストレートに気持ちを伝えましょう、ということですね」

咏「ま、それができたらって話だけどねぃ」

えり「では三尋木プロからもどうぞ」

咏「うーん……外堀を埋めるとか? 相手が逃げられない状況を作ればってことで」

えり「未成年になんてアドバイスを……」

咏「わっかんねー、全てがわっかんねー」ケラケラ

えり「まったく……次行きますよ、次」

885 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:25:38.52 ID:Ps8+g9vo0


『三尋木プロのお弟子さんについて詳しく!』


咏「あー……これ、どこまで言っていいのかね?」

えり「彼も雑誌のインタビューを受けていましたし、そこで掲載された範囲でなら」

咏「じゃあ……須賀京太郎、男、18歳、長野出身、背は高い」

えり「昨年度のインターハイで優勝した清澄高校麻雀部に所属していた、ですね」

咏「またなんとも面白みにかけるねぃ」

えり「と言うと思って、彼の知り合いに取材をしてきました」

咏「さっすがえりちゃん、事前の準備はバッチリだねっ」

えり「ええ、そういったものを素知らぬ顔で台無しにする人もいるんですけどね!」

咏「いや、知らんし」

えり「それではまずこちらから!」

886 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:32:50.46 ID:Ps8+g9vo0


『え? 三尋木プロの弟子になったことについて?』

『どうなんでしょうね。お世辞にも麻雀が強いわけでもなかったし』

『ああ、別に心配してるとかじゃないんですけど。長い付き合いだから、そこは信頼してます』

『あいつなら、そのうちきっとすごいことをやらかし――じゃなくて、やってみせるんじゃないですか?』


えり「元同級生の長野県在住、H.T.さんからでした」

咏「ま、猫船に乗ったつもりで任せとけばいいんじゃね? 知らんけど」

えり「なんですか猫船って。大丈夫なのか大丈夫じゃないのか、全くわかりませんよ」

咏「うふっは! たしかに!」ケラケラ

えり「……」イラッ

887 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:37:54.68 ID:Ps8+g9vo0


『弟子? 当然粛清ですね』

『ええ、夜道に気をつけろとは言ってありますから』

『でも、うたたんがそれを望まないなら……ううっ』

『僕は、僕はっ……!』


えり「……」

咏「いやぁ、人気者は辛いねぃ」

えり「み、三尋木プロのファンみたいですね……」

咏「辛いわー、熱狂的なファンがいて辛いわー」

えり「……同じく元同級生の長野県在住、I.N.さんからでした」

888 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:40:53.81 ID:Ps8+g9vo0


『ええっと、なんと言えばいいかよくわからないんですけど……少し、感慨深いですね』

『はい。私が教えたときはその、ほとんどなにも知らなかったので』

『私が最初の師匠? そんな……』

『でも、あの時間が彼の道を決めるきっかけになったなら……はい、誇らしいです』


えり「こちらも長野県在住、M.H.さんからでした」

咏「最初の師匠?」

えり「いわば、三尋木プロの先輩といったことでしょうか」

咏「ま、どっちが上かはすぐわかるんじゃね? 知らんけど」

えり「あら? もしかして――」

咏「いや、知らんし。知らんから次、次!」


889 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:43:17.01 ID:Ps8+g9vo0



『わぁ、プロのお弟子さんなんてちょーすごいよー! サインもらえるかなぁ?』

『京太郎様がプロに……! か、霞ちゃん! てれび、てれび見れるようにしましょう!』

『プロ……? ポストはやりんなら共演できるでしょうか?』

『ふぅん、キョウタロウがね……微妙だよね。もしダメそうだったら養ってあげてもいいけど』

『ええっ、京太郎くんが!? お、お祝い送った方がいいのかな!? ちょっとお姉ちゃんと相談してきますっ』

『うーん、そがん上手くなかて思うんですけどね。あ、応援はしますよ? 私ばフッた人ですけど!』

『そかー、須賀くんもいつまでも下手っぴやないっちゅーことやな』

『あわっ、キョータローが? むぅ、私もプロになって完勝しちゃうんだから! そしたら、また……』


えり「などなど全国津々浦々、コメントを頂いてきました」

咏「いやいや、力入れすぎじゃね?」

えり「交友関係が広いので、地元だけじゃ物足りないと――」

咏「お上の意見があったわけだ。辛いねぃ」

えり「ともかく、これで多少はリスナーの皆さんにも、彼の人となりが伝わったのではないでしょうか?」

咏「ポイントは男女比の偏りだぜぃ?」

えり「それだけ多くの人に慕われているということですね!」

咏「物は言い様ってね!」


890 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:45:42.98 ID:Ps8+g9vo0



えり「それでは、次のコーナーですが……え? 時間が押している?」

咏「えりちゃんさぁ、時間の管理はしっかりね」

えり「ええ、主に三尋木プロの脱線で時間を食ったような気がしますけども!」

咏「ところでさ、この番組ってなんて名前だっけ?」

えり「三尋木咏の適当レイディオです」

咏「人を指して適当とか酷くね? ここはもう、はりえりレイディオでいいっしょ」

えり「どうして私がメインみたいな番組名になってるんですか」

咏「そこはかとなく音楽家っぽさも加えつつ」

えり「はぁ……せめて私要素は半分でお願いします」

咏「なら、はりうたレイディオとか? はりうた、はりゅうた……うんうん」

えり「さりげに人の名字を全部使わないでくださいよ。他にもえりうたとかあるじゃないですか」

咏「自分の名前の方が先とか、えりちゃん案外目立ちたがり?」

えり「じゃあうたえりでいいですね!」

咏「や、こっちの方が目立っちゃうし」

えり「あぁもうっ!」




続かないよ
891 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/07/23(月) 22:47:55.48 ID:Ps8+g9vo0
というわけで弟子になった時の周りの反応ということで
弟子になったことというより、プロを目指していることに反応してる感じの人もいますが

んじゃ、風呂入って寝ます
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 09:13:05.26 ID:ARBoHL3nO
おつん
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 01:13:47.63 ID:V656UaBeO
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/13(月) 01:50:50.67 ID:/37VJQP00
これで完全に完結か
乙でございました
895 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:07:50.66 ID:6KBhcUaM0


・どこかの未来、面影に重ねる思いは


「ふむふむ、なるほどですねー」マジマジ

「あ、あの……」

「ああ、これはとんだ失礼を」

「は、離れてくれるとありがたいんですけど……」

「おや? もしかして女性は苦手なのですか?」

「苦手っていうより、慣れてないというか」

「そうですか……じゃあ、まずは私をお姉さんと呼ぶといいのですよ!」

「ええっ」



「……」ジー

「えっと……なんかついてます?」

「目と鼻と口?」タユン

「ふ、普通ついてますよね?(胸でかっ!)」

「……気になる?」

「そんなまさか胸なんて全然見てないですからっ……あれ?」

「ふふ、黒糖食べる?」

「え、あ……い、いただきます」


896 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:11:18.70 ID:6KBhcUaM0



「え……うそっ――あ、明星!」

「なあに? そんなに慌てて……あら?」

「どうも、お邪魔して――」

「――お兄様っ」ギュッ

「むぐっ」

「いつお戻りになったんですか? ずっとずっとお会いしたかったです、お兄様……!」ギュウウ

「わ、私もずっと……」ウルウル

「む、むぐぐ……」

「明星っ、苦しそうにしてる」

「なに言ってるの? お兄様だったらこのまま抱え上げて……あら? なんだか縮みました?」

「それに、よくみたら若返ってるような……」

「……もしかして」

「……別人?」

「た、多分そうだと思います……」



「お茶のおかわり、いかがですか?」

「ありがとうございます……」

「お疲れですね」

「ちょっと長旅でしたから」

「それと、年上の女性に詰め寄られて、とか」

「あはは……僕の顔って珍しいのかな」

「というより、懐かしいんだと思いますよ。みんなも、私も」

「懐かしい……」

「それじゃあ、またなにかあったら呼んでくださいね」

「あ、はい」


897 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:18:22.46 ID:6KBhcUaM0



「……」


(思い返してみれば、みんな見覚えのある人たちだった)

(永水女子、母さんのチームメイトだった人たち)

(僕が見た写真よりは成長していたけれど、20年も経ったことを考えれば若すぎるくらいだ)


『ご飯できましたよ〜』


(……あのぽややんとした母さんみたいに)

(だけど、一人足りない)

(巫女服を着た母さんのチームメイトは、もう一人いたはずだ)

(あえて言うなら、あの人が似てる気が……)


「すみません、お待たせしてしまって」

「あ、いや、そんな」

「私がお招きしたのに、お姉様方に任せっきりにしてしまいました」

「お姉様方?」

「はい。普段はいらっしゃらないんですけど、今日は特別なんです」

「あー……僕、ちょっと間が悪かったですね」

「いいえ、私のお客さんですから。こう見えて私、姫なんです」

「姫……」

898 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:28:03.21 ID:6KBhcUaM0


(普通の女の子がそう言うのと違って、違和感はなかった)

(きっと本気で言っている)

(現実離れして綺麗なこの人が、この浮世離れした場所の姫)

(異論を挟む気も起きなかった)

(それは決して得意気に張られた胸に視線が行ってるからじゃなくて……いや、本当に)


「……あれ?」


(ふと、その背後にゆらめく何かを見たような気がして)

(目をこすって、こらしてみてもそこには何もない)

(……見間違いだったんだろうか)


「どうかなさいましたか?」

「えっと……ここ、広いですけど、普段は一人で住んでるのかなって」

「そんなことはないですよ。今日はちょっと不在ですけど、六女仙がいますから」

「あの、ご両親は?」

「今日はお母様もいらしてるんです。ご紹介しますね」

「え、ええっ、紹介!?」


(いやいやいや、ちょっと展開早すぎない!?)

(出会ってその日に両親に挨拶とか!)

899 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:32:46.16 ID:6KBhcUaM0


「折角の新しいお友達ですもの」

「あ……お友達」


(急に現実に引き戻された気分だった)

(こうして家まで招いてくれたんだから、少なくとも嫌われてはいないとは思ったけど)

(それにしても……友達かぁ)


「あの、少し馴れ馴れしかったでしょうか? 私たち、初対面なのに」

「いやいやそんな!」

「良かった……実は、何故だかあなたのことは他人と思えなくて」

「え、それって……」

「なんだか、弟みたいだなって」

「……そうですか」


(そりゃまあ、どっちも自毛で色が同じだし、僕の方が年下だし?)

(客観的にそう見えなくはないのかもしれないけど)

(だからって弟って……)


「……」ズーン

「あら? もしかして体調が優れませんか?」

「いえ……いたって健康体です」

900 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:37:41.08 ID:6KBhcUaM0


『入っても構わないかしら?』


「あ、お母様。どうぞ」

「えっ」


(まさかの心の準備ができないままボス戦突入)

(いやボスってなんだ落ち着け僕)


「初めまして、私は――」


(なぜか言葉が途切れた)

(いや、このパターンには覚えがある)

(ここで出会った大人たちは、みんな少なからず同じ反応を見せたのだから)

(この人も、きっと僕にだれかの面影を重ねているのだろう)

(ふと、見上げれば)


「ああ、ああっ……」ポロポロ

「お、お母様?」


(どこか母さんに似た、ものすごい美人の涙)

(明らかに、僕を見て泣いていた)

(こうなると経験の少ない僕はもう、うろたえるしかない)

(だから、二回目だというのに反応が遅れた)

901 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:41:17.60 ID:6KBhcUaM0


「――おかえりなさい」ギュッ

「むぐっ」


(さっきの人よりいくらか凶悪な質量が、同じように僕の呼吸を塞ぎにかかった)

(ヤバい、これは……)


「むぐぐ……」

「あの、もう離してあげたほうが……」

「おかえりなさい……京太郎」


(そしてブラックアウト)

(その直前に父さんの名前が聞こえた気がした)

(……気のせいかもしれないけど)




続きません
902 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/08/13(月) 22:48:55.71 ID:6KBhcUaM0
というわけで小蒔霞エンド後の一幕でした

禁断の恋に発展するかどうかはわかりません

んじゃ、夜更かしして寝ます
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/14(火) 00:26:16.06 ID:01iyaLeA0
リク消化乙です
レス番900超えたか……本当に長いことお疲れ様です
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/21(火) 15:30:24.29 ID:dHNIesPt0
激しく乙です
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 02:26:23.67 ID:SqLlbD6z0
1スレから追いかけたけどまさかつい最近まで続いてたとは…
それにしても久に始まった物語だけど久がどうにも不憫な感じだったね
もっと報われてほしかった感は有る
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 18:10:45.82 ID:KKW8ELml0
読めて良かった
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/09/02(日) 23:17:45.93 ID:qUYD3go90
乙の極み!
908 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 00:45:06.48 ID:D9MYMwSD0


・三年、夏、二人きりのシークレットライブ


はやり「みんなー? 準備はOKかな?」


『はーやーりん! はーやーりん!』


京太郎「はーやーりん! はーやーりん!」


京太郎(うおおおお! ついに始まっちまったぜ……!)

京太郎(一生に一度でいいから行ってみたいと思ってたはやりんのライブ……)

京太郎(もう今日が命日でも後悔しない自信がある!)


はやり「それじゃ早速一曲目、行っくよー☆」


909 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 00:49:47.82 ID:D9MYMwSD0



はやり「もっと愛される Sweet girl 女の子♪」


京太郎「――――――っ!!」


はやり(ふふ、京太郎くん見てる見てる)

はやり(あんなに嬉しそうな顔してくれるんだもん)

はやり(チケットプレゼントした甲斐があるよねっ)


はやり「Happy! fancy baby doll! Love me! fancy baby doll!」


『世界一かわいいよっ!』


はやり「ありがとー!」


『うぉおおおおおおおおお!!』


はやり(ついでに京太郎くんにウィンクしてみたり)


910 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 00:54:36.19 ID:D9MYMwSD0



「お、おい、今こっちに向かってウィンクしたぞ」

「ま、まさか俺に?」

「そんなわけあるか! 俺だよ俺!」

「馬鹿言うな! はやりんは王国民みんなに向けてウィンクしたんだよ!」


京太郎「……ヤバい」


京太郎(キュン死しそう……)



はやり「それじゃあ、みんなー? 着替えてくるから、ちょーっとだけ待っててねっ☆」


京太郎「良かった……それ以外の言葉が浮かばない」ブルブル

京太郎「おっと、今のうちにトイレ済ませておくか」


911 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 00:58:38.94 ID:D9MYMwSD0



京太郎「ふぃー、まさかあんなに混んでるとは……」

京太郎「もうすぐ再開か? 始まる前に戻らないと――」


「そうは言ってもねぇ」

「お、お願いします!」


京太郎(トラブルか? 係員さんが迷子を確保したとか?)


「ともかく、半券もないのに再入場はちょっとね」

「どこかに落としちゃったみたいで……でもっ、持ってたのは本当で!」

「すまないけどね、こういうのを認めるわけにはいけないんだよ。ごめんね」

「そう、ですか……」フラッ


京太郎「……やなもん見ちゃったな」

京太郎「まぁ、俺には関係ないけど」

京太郎「そうだよ、関係ないんだよ。関係ないんだけど……あー、くそっ」


912 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:02:33.78 ID:D9MYMwSD0



「……はぁ」

京太郎「ため息なんてついてどうしたよ」

「え……だれ、ですか」

京太郎「通りすがりのお兄さんだ。お前、さっき門前払い食らってたよな」

「……チケット、なくて」

京太郎「落としたのか?」

「……」コク


「ずっとずっとはやりんのライブに行きたくて……お父さんとお母さんが頑張って手に入れてくれたのに……」グスッ

京太郎「あーあー、泣くな泣くな。一緒に探してやるよ」

「でも、もう始まっちゃうし……」

京太郎「最後までに間に合えば十分だっての。ほら、行くぞ」


913 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:05:05.33 ID:D9MYMwSD0



京太郎「で、落とした場所に心当たりは?」

「飲み物買いに出た時だから……多分自販機の近く、です」

京太郎「よし、じゃあさっさと見つけるぞ」

「……あの、どうしてそんなに」

京太郎「お前の両親もさ、きっと楽しんで帰った方が喜ぶだろ」


京太郎「それに、小学生なのにはやりん好きとか見所あるからな」

「……」

京太郎「あれ、小学生だよな?」

「え、あ、はい」

京太郎「いやぁ、いいよなはやりん。俺の永遠のアイドルだよ」

「か、かわいいし」

京太郎「声もいいよな」

「笑顔も最高ですっ」

京太郎「それになにより……」


「「おっぱいが大きい!」」


京太郎「このエロガキめっ」グリグリ

「つ、つられただけですよ!」カァァ

京太郎「ははっ、照れんな照れんな!」


京太郎「さ、とっとと見つけて戻るぞ」

「はい!」


914 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:08:48.31 ID:D9MYMwSD0



はやり「いつも いつも あなたのそばで♪」


はやり(……京太郎くん、どうしたんだろう)

はやり(最前列の特等席、空いちゃってるよ……)

はやり(ううん、今は歌わなきゃ。来てくれたみんなのためにも)


はやり「終わりのないStory♪」


915 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:13:06.77 ID:D9MYMwSD0



京太郎「見つかんないな……他に思い当たる場所はないのか?」

「ない、です」


『アンコール! アンコール!』


京太郎「ヤバイな、そろそろ締めに入ってる」

「やっぱり、もう……」

京太郎「まぁ、諦めるのはもうちょっと待てよ」

「だって、もう間に合わないですよ……」

京太郎「要は半券があればいいわけだろ?」


京太郎「なら、これやるよ」ピラッ

「え……でも、これって」


京太郎「俺はファン歴が長いからいい。絶対にやめない自信がある」

京太郎「でも、お前は今回のことがショックでファンをやめちまうかもしれない」

京太郎「いいか? アイドルにはファンが必要不可欠なんだ」

京太郎「だからこれはお前のためだけじゃない。いつか、はやりんのためになるんだよ」


京太郎「だから俺の分まで楽しんで来いよ」

「だ、だけど、ぼくには返せるものなんて」

京太郎「あーあー、そういうのはいいから」


京太郎「とにかく行ってこい!」バシンッ


「うわっ」ヨロッ

京太郎「まぁ、お前がなにかしたいなら、そうだな――」


916 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:16:26.20 ID:D9MYMwSD0



『アンコール! アンコール!』


はやり「……」


はやり(もう最後なのに――あれ?)

はやり(京太郎くんの席に、誰かが……子供?)

はやり(……きっと、なにか事情があるんだよね……うん)


917 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:20:04.56 ID:D9MYMwSD0



「拙者、いたく感動いたしました!」ウルウル

はやり「ありがとね! 次のライブも楽しみにしててっ☆」


はやり(京太郎くんは……来ないよね)


「あ、あのっ」

はやり「君は……」


はやり(京太郎くんの席に座っていた子、だよね)


「ぼ、ぼくっ、ずっとはやりんのファンでいまず!」

はやり「うん、すっごく嬉しいよ」

「それで、このチケットをくれた人みたいに……」


『まぁ、お前がなにかしたいなら、そうだな――』

『自分みたいに泣きそうになってる奴がいたら、助けてやれるような奴になれよ』


「困ってる人を助けられるような、かっこいい人になります!」

はやり「……そっか」


はやり(ずるいなぁ……京太郎くんは)


918 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:23:15.04 ID:D9MYMwSD0



京太郎「はぁ……せっかくの特等席が……」

京太郎「いや、あれはあれでいいんだよ。後悔なんて、後悔なんて……」

京太郎「あーくそっ! はやりんの生歌もっと聞きたかったなぁっ!」


京太郎「……よし、スッキリした!」

京太郎「切り替えていくか。明日は久ちゃんたちもこっちに来るし――」


はやり「あ、裏切り者はっけーん」


京太郎「おわっ!」ビクッ

はやり「ひどいなぁ。せっかくチケット送ったのに、途中でいなくなっちゃうなんて」ジトッ

京太郎「い、いや、それはその」

はやり「傷ついたー、はやり傷ついちゃったなー」

京太郎「その節は……こちらとしてもまことに遺憾であったと申し上げますというか……」

はやり「……ぷっ、変な喋り方」クスクス

919 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:26:48.93 ID:D9MYMwSD0


はやり「いいよ、大体わかってるから。あの男の子にあげたんだよね?」

京太郎「いや、本当にごめんなさい。せっかく招待してくれたのに」

はやり「京太郎くんは、困った人を助けられるような、かっこいい男の子なんだね」

京太郎「そんな大層なやつじゃないですって。やったことへの後悔で一杯だったし」

はやり「でも、あの子の目にはヒーローに映ったみたいだね」

京太郎「……ま、人がどう思うのかは自由ですけどね」

はやり「うん、じゃあ私も勝手に思い込んじゃおうかな」


はやり「じゃ、行こっか」

京太郎「えっと、どこに?」

はやり「カラオケかな? 瑞原はやりのシークレットライブ、興味ない?」

京太郎「えっ、マジですか?」

はやり「男の子を助けたヒーローさんへのご褒美ってことで、ね?」

京太郎「……い」

はやり「い?」


京太郎「いよっしゃぁぁぁああああっ!!」



920 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/10/30(火) 01:29:17.50 ID:D9MYMwSD0
めっちゃ久々に更新した気がしますね
それもこれも地震が何やらでつい最近まで復旧してたことに気づかなかったせいなのですが

ともあれ、はやりんのライブの話でした

んじゃ、おやすみなさい
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 01:39:43.81 ID:M0Wwb8p4O
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/30(火) 03:30:31.84 ID:Z5c+SN8Ko
大変だったんですね
お体に気をつけて
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/06(火) 16:34:03.11 ID:jn3IZskWO
おっつおっつ
924 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 21:52:54.58 ID:jNsTiMc50


・もしもの未来、希望と未来


竜華「はーい、じっとしててなー」

「やっ! おちゅうしゃやっ!」

「こ、こんなのなんともねーし……」

「……むーくんプルプルしてる」

「し、してないっ。みーちゃんこそないてるじゃん!」

「ないてないもん!」

竜華「あ、もうこないな時間。そろそろくるんとちゃう?」

「あっ、パパのおむかえ!」

「ないてたらわらわれちゃうぞ」

「だからないてないもん!」

竜華「はいはい。じゃあ二人とも、袖まくって?」


925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 21:55:15.25 ID:YeXuLkcTO
おお、久々の更新
すばらです
926 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 21:55:45.89 ID:jNsTiMc50



「へへっ、ちゅうしゃとかラクショーだな」

「ぜんぜんいたくなかった……りゅーちゃんすごい!」

竜華「ううん。みーちゃんとむーくんが頑張ったからやん」

「えへへ、パパほめてくれるかな?」

「ないてたのはだまっててやるよ」

「もうっ、むーくんのばかぁ!」

「いたっ、た、たたくなよっ」

竜華「こーら、ケンカしたらめっ、やで?」ムギュッ

「うにゅっ」

「うわっ」

竜華「反省するまで離さへんから。わかった?」


「……りゅーちゃんって、ママなの?」

竜華「……違うよ?」

「そうなんだ……」

竜華「二人のママは、パパと一番仲良しさんで、先生とも仲良しさんで――」


竜華(そして、もう帰ってくることはなくて……)

竜華(あれからもう五年……怜)


927 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 21:58:16.63 ID:jNsTiMc50



怜『やっぱええわぁ』

竜華『昼休みの間だけやで?』

怜『そんなっ! 竜華の膝枕やないと毎日八時間しか眠れへんのに!』

竜華『普通に快眠やなぁ』

怜『サービス延長は?』

竜華『ダメ』

怜『しゃあないなぁ。今のうちに堪能しとこ』グリグリ

竜華『や、ちょっ、くすぐった……んんっ』ビクン


怜『ふぅ……これで充填完了』

竜華『お、思わず変な声出た……』

怜『口はともかく体は正直――んっ』

竜華『動いた?』

怜『元気な双子ちゃんやなぁ』

竜華『もう名前決めたん?』

怜『とりあえず、希望的な名前にしようかと』

竜華『希望かぁ……希でのぞみとか、望でのぞむとか?』

怜『うーん……それ採用』

竜華『え、そない簡単に』

怜『や、竜華が考えてくれた名前やし?』

竜華『ちょ、ちょっと待っとって。今もっと良さそうなの考えるからっ』

怜『ええからええから。みーちゃんとむーくんで決定や』

竜華『……須賀くんには相談せぇへんの?』

怜『そもそも京太郎の案とぴったりかぶっとるし。もしかして共謀してた?』

竜華『共謀て』


怜『……竜華』

竜華「なに?」

怜『名前のついでに、もう一個お願いしてもええかな?』


928 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:00:56.48 ID:jNsTiMc50



『うちがいなくなったら、京太郎とこの子達のこと――』


竜華「……」


竜華(産んですぐとか……ずるいやん)


京太郎「よう、お疲れか?」

竜華「須賀くん……」

京太郎「あいつらは?」

竜華「おねんね。パパが迎えに来るーって、はしゃいでエネルギー切れや」

京太郎「悪いな、面倒見てもらっちゃって」

竜華「ううん、予防接種のついでやから」


竜華(それに、怜との約束と……ほんの少し――とは言えない程度の未練)


京太郎「お礼に夕食ご馳走するよ。うち、来ないか? 希と望も喜ぶし」

竜華「それは……ごめん、まだ仕事残ってて」

京太郎「そうか。じゃあまた今度な」

竜華「うん……」


京太郎「……やれやれ、またふられちゃったな」


929 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:03:07.45 ID:jNsTiMc50



竜華「うち、どないしたいんやろな……」


竜華(考えなかったわけやない)

竜華(あの子達は懐いてくれとるし、須賀くんのことは今でも……)

竜華(せやけど、そこは本来怜のおるべき場所であって)

竜華(うちがそれを奪うだなんて……)


竜華「……奪うもなにも、もうおらへんのにね」


『あかん、充電切れたー。膝枕ー』


竜華(もう五年も経ったのに、まるで昨日のことのようで)

竜華(まだ頭の重さや髪の感触が、ここに残っとるような気がするのに……)サスサス


竜華「やめやめ、もう寝よ……」


竜華(今のうちを怜が見たら、どないな顔するやろか)

竜華(怒る、悲しむ、笑う、呆れる……それとも――)


930 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:06:05.75 ID:jNsTiMc50



『――うか、竜華』ペチペチ


竜華「ん……」モゾモゾ


『全然起きへんなぁ』ツンツン


竜華「もう……今日はお休み――」


竜華(あれ、この声……!)


竜華「怜っ!?」ガバッ

『うわっ、寝たふりからのサプライズは勘弁やで』

竜華「ごめん……て、なんかちっちゃい?」

『まぁ、トキちゃんやし?』

竜華「なんでもええよ……うん、夢でも会えて嬉しい」ギュッ

『枕神だけに、夢枕に立ってみましたー的な?』

竜華「……怜、ごめん」

『いきなりなんやねん。驚かせたことならもうええて』

竜華「約束、全然守れてないから」

『十分やない?』

竜華「ううん……うちには怜の代わりなんか――」

『や、そないなことは頼んでへんし』

竜華「え?」

『うちの代わりっちゅーのは、竜華が勝手に付け足したとこやねん』

竜華「せやけど!」

『どないな関わり方かは竜華に丸投げやで?』

竜華「そんな……じゃあ、うちはどないすればええの?」

『好きなようにしたらええやん。それこそ再婚でもなんでも』

竜華「でも、それは……」

931 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:08:10.01 ID:jNsTiMc50


竜華(それは、怜の居場所を奪うことで)

竜華(もうおらへん、戻ってこぉへん、怜の居場所を)

竜華(だって、そないしたらもう……)


竜華「……ごめん、やっと気づいた。うち、全然立ち直れてなかったんやわ」

竜華「その穴を埋めてしまったら、もうおらへんって完全に認めてしまうみたいで」

竜華「あはは……まだここにおるような気ぃしてたし」サスサス


『あ、それはうちやねん』

竜華「……まだ残っとったんやな」

『もうほんの搾りカスやけど。未来を教えることなんかできへんし』

竜華「そか……じゃあ、もうこれで本当にお別れなんやな」

『せやせや。もうおらん人より、もっと大事にするものがあるんとちゃう?』

竜華「うん、そうやね」

『ほな、今度は大往生してから会いに来てやー』

竜華「……怜、ありがとう」

『まぁ、うちらズッ友やし?』

竜華「ふふ、それもう死語やん」


932 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:12:13.33 ID:jNsTiMc50



京太郎「ただいま」

竜華「あ、おかえりなさい」

京太郎「悪い、遅くなった。あいつらはもう寝ちゃったか?」

竜華「パパを待つって頑張っとったんやけど」

京太郎「そうか……だけど良かったのか? 休みの日だったんだろ?」

竜華「こっちこそいきなりやったし。迷惑やなかったかな?」

京太郎「いや、面倒見てくれて助かった。今日は出なきゃいけない日だったし」

竜華「お父さんは大変やな」

京太郎「医者だって大変だろ」

竜華「うちはまぁ、好きで選んだ道やし」

京太郎「だったら俺も好きでやってるからいいんだよ」

竜華「ふふ、その言い方、高校の時から変わらへんね」

京太郎「ガキっぽいか? いや、童心を忘れていないってことだな、きっと」

竜華「そこは、うん……うちも忘れられへんものがあるし」


竜華「ね、これからもちょいちょいお邪魔してもええかな?」

京太郎「もちろん。あいつらも喜ぶよ」

竜華「須賀くんは?」

京太郎「嬉しいよ。最近は誘っても来てくれなかったし」

竜華「あはは、それで怜に注意されてもうたわ」

京太郎「あいつに?」

竜華「夢枕に立って、もうおらん人間より大事なものがあるやろって」

933 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:15:22.05 ID:jNsTiMc50


竜華「……うち、どこかでまだ受け入れられてなかったんやな」

京太郎「当然だろ。簡単に受け入れられてたまるか」

竜華「須賀くんだって、辛かったんは同じなのにね」

京太郎「俺は……考える暇もなかったってのが正しいな。あと、意地とか見栄とかその他諸々」


京太郎「だからさ、清水谷には感謝してるんだ」

京太郎「一番辛い時に傍にいてくれた。お前がいなかったら、意地も見栄も張り通せなかった」

京太郎「……ありがとう、支えてくれて」


京太郎「それと、これ」

竜華「もしかして、この部屋の鍵?」

京太郎「前から用意してたけど、なんとなく渡せなくてさ」

竜華「……これ、返さなくてもええかな?」

京太郎「いや、さすがに引き払うときには回収したい」

竜華「もう、そうやなくて」ギュッ


竜華「これからも、ずっと傍におってもええかなって」

京太郎「……悪い、こっちから言おうと思ってたんだけど」

竜華「じゃあ、もっかい」

京太郎「清水谷――」

竜華「やなくて、名前」

京太郎「……竜華」

竜華「はい、なんでしょうか」

京太郎「結婚、してくれないか?」

竜華「喜んで!」


934 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:17:32.66 ID:jNsTiMc50



竜華「みーちゃん、むーくん、こっちこっちー」


「ママー、まってー」

「おまえなぁ、はよしぃや」


竜華(京くんのプロポーズを受けて、苗字が変わってから一年近く経ちました)

竜華(大変なことがそれなりにあって、でもそれ以上に嬉しいこともあって)

竜華(みーちゃんはママって呼んでくれるようになりました)

竜華(りゅーちゃんって呼んでくれなくなったのは残念やけど、お母さんって認めてもらえて素直に嬉しいです)

竜華(むーくんはうちの喋り方がが移ったのか、関西っぽくなまってきました)

竜華(京くんに似て世話焼きさんで、よくみーちゃんを連れ回してます)

竜華(……あの子達には、今ここでこうしとることの意味はまだわからないと思います)

竜華(それでも、本当の母親のことを少しでも覚えていて欲しくて)

竜華(それと、成長していく我が子の姿を見せられたらと)

竜華(そう思って、今あなたの墓前にいます)


『ま、そないなことせんでも草葉の陰から見守っとるんやけど』


竜華「ふふ、せやな」


竜華(それは空耳かうちの妄想か、もしくはまだ残っとったものがあるのか)

竜華(思わず返事をしてしまうほどに、うちにはしっかり聞こえました)

935 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:20:07.29 ID:jNsTiMc50


「だれとおはなししてるの?」

竜華「さぁ、誰やと思う?」

「わかった! おれのおとうとや」

「えー? いもうとだよ」

「いもうとはみーちゃんがおるし」

「わたしのほうがおねえちゃんだもん!」

竜華「はいはい、ケンカはめっ、やで?」

「「はーい」」

竜華「二人とも物分りがよくてえらいわぁ。お兄ちゃんとお姉ちゃんになるんやもんな」

「あ、なまえは? おれつけてもいい?」

「ずるーい、わたしも!」

竜華「せやなぁ、まだ決めとらんけど……」


竜華(あと、報告がもう一つ)

竜華(うちにも京くんとの間に子どもが出来ました)

竜華(まだ男の子か女の子かはわからへんけど、名前を付けるとしたら――)


竜華「――未来、みたいな名前がええんやないかな?」



936 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2018/12/29(土) 22:23:01.22 ID:jNsTiMc50
というわけで竜華さんと再婚するもしもでした

くっそ久しぶりの更新ですね
冬は今までより時間が取れるので多少ましな頻度になるとは思いたいです
とは言っても、もう残り少ないとは思いますが

んじゃ去ります
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/30(日) 01:38:17.10 ID:m2w2Ee5y0
乙でした!良いお年を!
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 09:34:30.38 ID:Qeu798QtO
乙です
グッとくるわねえ
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 00:16:09.02 ID:8LLXTQDwO
スレに余裕がありそうならば宮守はとこエンドかシロ単体エンド
あるいはそれに準ずるネタが見たい
はやりんのが作られてたしね
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 09:51:59.78 ID:7J3mXDAv0
乙でした
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 06:20:21.11 ID:EnG9Jy5H0
良かった良かった
942 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 19:51:46.51 ID:VS2TbUUf0


・もしもの未来、妖怪スイーパーKYO――序章


良子「温泉に行きましょう」

京太郎「はぁ」

良子「む、リアクションが薄いですね」

京太郎「こういうの何回目でしたっけ?」

良子「温泉は初めてですね」

京太郎「違う、そうじゃない」

良子「違う? ……もしや、布団に一緒に入れと?」ポッ

京太郎「ちっげーよ! このままついて行ったらまた酷い目に合うって話だよ!」

良子「はて、何の話やら」

京太郎「いやいや、とぼけようたってこっちは全部覚えてるから!」

943 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 19:54:35.41 ID:VS2TbUUf0


京太郎「いつまでいつまで言ってるでっかい鳥!」

良子「以津真天ですね」

京太郎「なんであんな怪物とかち合わされるんですかね!?」

良子「下手に手を出さなければノープロブレムですよ。いつまでいつまで言ってるだけですから」

京太郎「それだけじゃない……七人の侍とか荒野の七人みたいなやつ!」

良子「七人ミサキですね」

京太郎「あれ本当にやばかったんですけど!」

良子「まさか偶然行き遭うとは……かなりアンラッキーでしたね」

京太郎「夏には海に誘われたかと思ったらバイトさせられて、しかも得体の知れない化物に取りつかれるし!」

良子「おや、リゾートバイトはいやでしたか?」

京太郎「たしかに給料は中々……ってそういう問題じゃない!」

良子「ふむ、そんなに私の水着姿が見たかったと?」

京太郎「もちろん! ……いやいやいや違う違う!」

良子「まぁ、チャンスがあればやぶさかではありませんが」

京太郎「ぐっ……お、俺はもう騙されないからな!」

良子「そういえば、これからむかう温泉には混浴があるそうですね」

京太郎「こ、こんよ……いや、俺は――」

良子「良ければ一緒にどうですか?」

京太郎「……」


944 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 19:58:21.30 ID:VS2TbUUf0



良子「ふぅ……たまの温泉というのも悪くありませんね」

京太郎「はは……」


京太郎(わかってたさ、わかってたよ。そうそううまい話はないってことは)

京太郎(でも俺も健全な男だし? 裸の付き合いからのあわよくば、とか考えるよ?)

京太郎(だけどさぁ)


京太郎「なんで水着着用かなぁっ!」ダンッ

良子「さすがにネイキッドは恥ずかしいですから」

京太郎「くそっ、くそぉ……」

良子「なるほど。裸の付き合いに慣れすぎて今更水着程度では満足できないと」

京太郎「人聞き悪いなぁっ」

良子「春や姫様たちでエクスペリエンスを積んだのでは?」

京太郎「こんなことが慣れるほど頻繁にあってたまるか」

良子「あったこと自体は否定しないと」

京太郎「それは、まぁ」

良子「ふむ……ところで、似合いませんか?」ピラッ

京太郎「正直、グッときます」

良子「そ、そうですか……」

945 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 20:01:43.27 ID:VS2TbUUf0


良子「……プライベートな場所でなら、この下を見せてもおっけーです」

京太郎「え、それって……」ゴクッ

良子「イエス、部屋をとってありますから、続きは――」


『河童だーっ! 河童が出たぞー!!』


京太郎「……」

良子「……」

京太郎「またこのパターンかよチクショー!」


946 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 20:04:55.27 ID:VS2TbUUf0



京太郎「はぁ、はぁ……な、なんとかなった」

良子「バッテリー式のドライヤーがあって助かりましたね……」

京太郎「頭の皿を乾かすのが本当に有効だとは……というかなんだって温泉旅館に」

良子「あまり人の手が入っていないリバーが近くにあります。迷い込んできたんでしょう」


良子「ともあれ、グッジョブです」

京太郎「はいはい、お疲れ様です……んじゃ」

良子「ウェイト、どこに行くつもりですか?」

京太郎「どこって、もう用事が済んだなら俺は帰らせてもらいますよ」

良子「むっ、部屋をとってあると言いませんでしたか」

京太郎「え、あれは俺を巻き込むための方便でしょ?」

良子「ノーウェイノーウェイ。完璧なイレギュラーです」

京太郎「いやいや、そんなこと言ったって前例があるから」

良子「たしかに以津真天の時は、協力してもらうつもりで声をかけましたね」

京太郎「ほらやっぱり」

良子「ですが、七人ミサキの一件はアクシデントです」

京太郎「え、じゃあ海の一件は?」

良子「あれもはじめはお礼のつもりで誘いましたよ」

京太郎「ならなんでバイトをやらせたんですかね」

良子「あそこの旅館からすっげー良くないオーラが漂っていましたからね」

京太郎「急遽情報収集のためにバイトさせたと?」

良子「イエス」

京太郎「つまり、最初の一件以来は偶然と」

良子「むしろ、君に会うたびに今回のようなケースが起きているような」

京太郎「……じゃあ、部屋のくだりは本当に?」

良子「だとしたら、どうします?」

京太郎「……」

947 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 20:08:30.71 ID:VS2TbUUf0


京太郎(薄らだけど、糸が見える)

京太郎(俺と戒能さんをつなぐ、触れられない糸)

京太郎(じゃあ、これ以上なんでとか言うのは野暮か)


良子「見えましたか?」

京太郎「落ち着いてみれば、まあ」

良子「動じませんね」

京太郎「そこはやっぱり慣れが……いや、やっぱり慣れないな。どうしたらいいのかよくわからない」

良子「ことはシンプル。ヤるかヤらないかです」

京太郎「もうちょっと言葉選ぼうぜ!」


948 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 20:12:12.60 ID:VS2TbUUf0



良子「ん、んん――」モゾッ

京太郎「zzz……」クカー

良子「……奇妙なものですね。パワーを奪われる感触というのは」

京太郎「んあ……もう朝?」

良子「グッモーニン、よく眠れましたか?」

京太郎「そりゃもう、最高の抱き枕があったし」

良子「ふふ、色々と奪われてしまいましたね」

京太郎「むしろそっちが積極的だったような……まさかあのジンクス気にしてます?」

良子「女性プロの行き遅れですか。私はそれほどでも」

京太郎「そういや、その……大丈夫ですか?」

良子「ノープロブレム、とはいきませんね」

京太郎「やっぱり……厄介だな、この力」

良子「まあ、その件に関しては食事を済ませてから――」

949 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 20:16:21.60 ID:VS2TbUUf0


『ば、化け物だー!!』


京太郎「……」

良子「……」

京太郎「ええい、なんでこんな世の中になってもポコポコと!」

良子「仕方ありませんね、行きましょう」

京太郎「しゃあないな……ま、サポートは任せてください」

良子「今朝はやる気ですね」

京太郎「近くにいないと、いざって時に守れないでしょ」

良子「そうですか。じゃあ、バトル方面は任せます」

京太郎「任されました――って待て待て、そここっちに丸投げ?」

良子「オフコース。今の私は無力ならぬ無能力ですから」

京太郎「そういえばそうだった……」

良子「守ってくれますか?」

京太郎「もちろん。あ、でもアドバイスだけお願いします」

良子「オッケーです。それと――んっ」チュッ

京太郎「……今のは?」

良子「ちょっとしたおまじないです。その、なんの呪力もこもってはいませんけど」

京太郎「――ははっ、可愛いな戒能さん」

良子「なっ」カァァ

京太郎「いいね、俄然やる気出てきた」

良子「い、行きますよっ」




続きません
950 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/02/28(木) 20:20:57.70 ID:VS2TbUUf0
というわけで戒能さんでした

くっそ久しぶりの(ry

んじゃ、去ります
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 18:26:45.73 ID:8HDQ6iuK0
乙です。
戒能さんすばら
952 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/03/08(金) 12:10:26.84 ID:5TDA34Y20
乙ですのだ!!
953 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/17(日) 19:02:02.72 ID:9/+hC8lg0
ええぞええぞ
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/21(木) 21:26:05.55 ID:CtuGq0700
乙〜
やっと追いついた、最初から凄い面白いからサクサクいけた
このままイッチがんばえー
955 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/06(土) 16:14:06.58 ID:pdbmbnXD0
春は桜の咲く季節です
956 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/04/27(土) 22:41:01.43 ID:EFS+04/J0


・宮永姉妹エンド概要


 麻雀プロを引退した照と結婚して数年。

 京太郎はぬるま湯のような穏やかな日々に浸かっていた。

 しかしある日、偶然見つけたアルバムの中に見出した欠落。

 インターハイ女子団体戦で優勝を果たした清澄高校麻雀部の集合写真。

 最終的に清澄を優勝に導いた彼女――宮永咲の姿だけくり抜かれて消えていた。

 それだけでなく、アルバムのどこをめくってもその姿はない。

 まるで存在ごと消えてしまったかのように。

 奇妙に感じながらも、照にアルバムのことを尋ねるがしかし――


「――私に、妹なんていないよ」


 その言葉を裏付けるかのように、咲と親しかったはずの人たちは、一様にその存在を否定した。

 世界がおかしくなったのか、自分が狂ってしまったのか。

 言い知れぬ焦燥感と激しい頭痛に見舞われながら、京太郎は真実を探し始める。

 そして全てが明らかになった時、京太郎が下す決断とは……。



957 : ◆zSdeXZwVBY [saga]:2019/04/27(土) 22:51:35.43 ID:EFS+04/J0
とかいう宮永咲の消失的な展開の咲照エンド
ミステリーっぽい内容になりそうです
書いてもいないのでなんとも言えないんですが、オカルトの類は活躍しません
真面目に書き始めたらくっそ長くなりそうな予感……
そして間違いなく賛否両論の結末になると思います

エンディングに関しては具体的な展開を決めてるわけじゃないので
あらすじを書けるのはこれぐらいですかね
大抵は安価を取った後にどんな話にするのかを考え始める始末でした

放置しまくりですが、ゴールデンウィーク中にもう一回ぐらい更新する予定です

んじゃ、風呂入って寝ます
958 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/27(土) 23:56:20.06 ID:5rhM6cWMO
更新乙です
本作では咲ちゃん結局個別エンド達成できなかったし
先にあった和の諦めきれずにNTRエンドみたいな
変化球じみたエンディングの方がむしろしっくりきそう
959 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/28(日) 00:36:59.97 ID:qJQvbuFI0
妹なんていないと言われちゃう咲ちゃんだから永遠はあるよしても仕方ないよね
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/28(日) 07:55:50.90 ID:9+4c7CZp0
乙ッ!
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/17(金) 21:45:41.07 ID:P2WnMak60
良いですね
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/02(日) 16:55:05.59 ID:8isgZOVH0
http://imgur.com/wHA1wrM.jpg
む、麦らァ・・・・・・
963 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/03(月) 01:30:45.84 ID:3+EC2IqC0
更新待ってます!
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/03(月) 16:17:36.43 ID:85D6h4y00
どのルートも最高に良い
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/18(木) 18:28:38.50 ID:LS7xjqyl0
久々に読んだがやっぱり面白い
966 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/21(日) 03:51:30.85 ID:tvb9V4kW0
良かった
967 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/03/12(木) 03:17:16.77 ID:xoCDIhm70
もう完全に終わったのか?とりあえずageておくわ
他意はない
968 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/14(土) 19:00:55.96 ID:f0DRy/VA0
乙でした
969 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/26(火) 15:56:26.53 ID:2bLIFUrB0
まとめwikiを更新して欲しいな
970 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/31(日) 18:24:59.35 ID:AKQkAaca0
このスレの分はまだまとめられてないみたいだな
971 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/01(月) 19:12:10.60 ID:JLxde3wM0
はじまっていく
たかまっていく
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