【ラブライブ】海未「私の罪を」【仮面ライダーW】

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2 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:00:48.10 ID:1DeH9Ig60
『復讐者A/やがて怪物という名の雨』
3 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:07:12.63 ID:1DeH9Ig60
ーーーーーー




しん、と。
静まり返った部屋。

季節はまだ夏で、外は恐らく太陽がジリジリと照りつけるように射していることでしょう。

けれど、この部屋のなかは熱を忘れたように冷たい。
それはここに貴女がいないからでしょう。

貴女がいないこの部屋は妙に広くて、どこか無機質で冷たい印象を受けてしまいます。




「………………」




誰もいない虚空を見つめながら、私は思い出していました。



2ヶ月前のこと。
あの、雨の日の出来事を。




ーーーーーー
4 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:14:58.05 ID:1DeH9Ig60
ーーーーーー
5 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:24:39.37 ID:1DeH9Ig60
ーーーーーー




海未「…………ん」



まぶたを閉じていても感じる光。
ぼんやりする頭で考えます。

あぁ、もう朝なのですね。

昨晩は遅くまで、課題のレポートをしていたこともあり、どうもいまいち覚醒できていませんね。



海未「…………あと……5分……」



そう呟いて、腕で目元を覆います。
……穂乃果が見ていたら、笑われそうな光景。

と、そこで、




「……クスクス」




笑い声。

人を笑うなんて……穂乃果は本当に失礼ですね。
まだ眠気の覚めない頭で考えーー!



海未「っ!!」バッ



飛び起きました。
それと同時に笑い声の主の方を見ました。



「グッスリ、だったね♪」

海未「うっ……」

「海未ちゃんにしては珍しいかも、ふふっ♪」

海未「……す、すみません。みっともないところを見せてしまいましたね」



ばつが悪く、目をそらします。

……が、まぁ、そうですね。
朝なのですから、ちゃんと言っておかないといけませんね。

反らしていた視線を正し、彼女の顔を見ます。
そして、




海未「おはようございます、ことり」

ことり「うん♪ おはよ、海未ちゃん」



6 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:31:48.42 ID:1DeH9Ig60
朝の挨拶を交わすと、彼女もにこりと微笑んでおはようを返してくれました。

……それだけならいいのですが……。



ことり「海未ちゃん、かわいいっ」

海未「うっ、や、やめてくださいっ!」

ことり「あと……5分……だって♪」



と、私の真似をすることり。

こういう一面を見れるのは、ことりだけなんだよねぇ……。
うふふ♪

さらに、そう続けます。
かなりのご機嫌な様子……。



海未「はぁ……」



穂乃果に見られたら笑われる。

そう考えてましたけど、どうやらことりの方がもっと厄介なようです。
それに最近気づきました。
7 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:36:52.69 ID:1DeH9Ig60
そう。
最近です。
つい2ヶ月前……高校を卒業するまでは、ことりがこんなに厄介だなんて微塵も思いませんでした。

ことりのこんな一面を知ったのはーー




ことり「って、そろそろ朝ごはんにしよっか?」

海未「あっ、もしかして……」

ことり「? どうかした?」

海未「い、いえ。また、作ってもらって……悪いなと思いまして……」

ことり「クスクス♪」



な、なぜ笑うのです?

ことりにそう尋ねます。
返ってきたのは、いつも通りの答え。




ことり「気にしなくていいんだよ? ことりがしたいからしてるだけ♪」




そう言って、またにこりと微笑むことり。

…………本当に、厄介です。
まったく敵う気がしませんよ。



海未「……ありがとうございます」

ことり「どういたしまして」



海未「それでは、今日も一緒に朝食をいただきましょうか」

ことり「うんっ!」




ーーーーーー
8 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:39:01.79 ID:1DeH9Ig60
ーーーーーー



朝食を二人で。



それが2ヶ月前。
つまり、この4月から一緒にルームシェアをし始めた私とことりの日課でした。



ーーーーーー
9 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:43:30.83 ID:1DeH9Ig60
ーーーーーー



ことり「海未ちゃん!」

海未「はい? なんですか、ことり?」



朝食の後。
朝のニュース番組を観ている時に、ことりに声をかけられました。

どうしたのでしょう?
やけにご機嫌な気がするのですが……。

そう思ってたのが、ことりに伝わったようで、



ことり「えへへ」



ことりはさらに破顔します。
本当に上機嫌ですね。



ことり「あのね! 海未ちゃん!」

海未「はい?」

ことり「実は……」




ことり「穂乃果ちゃんと連絡とれたの!」

海未「!!」


10 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:49:24.56 ID:1DeH9Ig60


海未「本当ですか!?」

ことり「うんっ」



ことりに聞き返すと、どうやら私の聞き間違いではないようで、ことりはこくりと頷きます。


高坂穂乃果。
私たちの幼馴染で、親友と呼べるほどには親しい友人……いえ、どちらかというと家族に近いかもしれませんね。

とにかく、そんな彼女に連絡がついたとのことでした。

……なるほど。
それでことりが上機嫌なのですね。
……それで?



ことり「近々帰ってくるから、よければことりたちの顔みたいって!」

海未「そう、ですか」

ことり「もちろんあうよねっ!」

海未「まぁ、そうですね……」



そうですか。
穂乃果が……。
11 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 21:52:56.57 ID:1DeH9Ig60


ことり「……海未ちゃん?」

海未「はい?」

ことり「うれしくないの……?」

海未「え……?」

ことり「そんな顔してたよ」

海未「…………」



嬉しくない、訳ではありません。
穂乃果が無事で、しかも、近々会えるというのならば、私だって嬉しいです。
ですが……。




海未「…………喧嘩、していましたから」




ポツリ。
言葉がもれました。
12 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 22:01:35.48 ID:1DeH9Ig60
高校卒業後。
ことりは海外の服飾系の学校へ進学することが決まりました。

そのことには私も穂乃果も大賛成で。
ことりと離れ離れになることは、確かに寂しかった。
ですが、ことりが決めたことならば、私たち幼馴染が応援しないはずはありませんからね。


とにかく、ことりも私も、そして、穂乃果も進学先が決まっていました。
そして、向こうの学校が始まる9月まで、3人でルームシェアをすることになっていたのですが…………。





ことり「…………あっ、そ、そうだよねっ」

海未「っ、あ、いえ」

ことり「ごめん、なさい……」



ことりの声に、現実に引き戻されました。
目の前には、シュンとした表情のことり。

って!



海未「す、すみません、ことりっ! 別に、嬉しくないわけではないんです! ただ、どんな顔をして会えばいいか分からなくなってしまってるだけで!!」



慌てて、言い訳を口にしました。

そう!
別に嬉しくないわけではなくて、ただ上手く仲直りできるか心配なだけで!

さらに、そう続けます。
13 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 22:13:03.05 ID:1DeH9Ig60
慌てていた私がおかしかったでしょうか。
ことりはふと、



ことり「ふふっ」



笑いました。



海未「こ、ことり?」

ことり「あっ、ごめんね!」



別に、バカにした訳じゃなくて!
そう補足してから、ことりはこう続けました。



ことり「きっと、だいじょうぶだよ」

ことり「だって」



ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃんだもん♪」




穂乃果と私だから。

あまりに根拠としては弱い理由。
だから、大丈夫だと言うことり。

……………………まぁ。




海未「ふふっ」

海未「そうかもしれませんね」




なんとなく。
そんな気もします。

きっと、私たちは喧嘩をしても、また何事もなかったかのように戻れるでしょう。
今までがそうであったように。

……勿論、お説教は必要でしょうけれどね。
14 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 22:20:12.71 ID:1DeH9Ig60

海未「……ことり」

ことり「なぁに?」

海未「ありがとうございます」

ことり「ううん」



よし!
ことりのおかげで、少し吹っ切れました!

って、そうでした。
私のせいで話が途中になってしまっていましたね。



海未「それで、ことり。穂乃果はいつ頃こちらへ?」

ことり「あっ、うん! 明後日だって!」

海未「あ、明後日!?」



また随分と急な……。

いや、まぁ。
確かにそういうところも穂乃果らしいといえば、穂乃果らしいんですが……。
それにしても、急すぎるでしょう……。



海未「えぇと、それで、こちらへ直接?」

ことり「あ、そうじゃなくて。なんだか用があるみたいで」

海未「どこで集合するということでしょうか?」

ことり「うん、えっとね……」



ことりはスマートフォンに目を落とし、なにやら穂乃果からの連絡を確認しているようです。
少しして、顔をあげたことりは言いました。



ことり「えっと」

ことり「お隣の市のシンボル……」




ことり「『風都タワーの下に集合!』……だって」




ーーーーーー
15 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/07(木) 22:20:49.58 ID:1DeH9Ig60
本日はここまで。
またお付き合いいただけると幸いです。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 01:49:59.87 ID:WOFgOIpX0
にこ→凛→海未
このスレタイ順はむn
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 02:16:19.23 ID:j5S3uI8Wo
つまらない
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/08(金) 07:09:47.27 ID:GXFGm3+OO
おつ!
2年生の過去編か
てかAって
19 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 19:28:15.64 ID:HLr6i8f+0
本日少しだけ更新します。
20 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 20:39:00.73 ID:HLr6i8f+0
ーーーーーー



そのやり取りがあった二日後の本日。
私は大学の講義終わりで、直接風都へ向かいました。
電車のなかで、ガタゴトと揺れに身を任せます。

待ち合わせまでは……。



海未「あと30分、ですか」



時計を見ると、針は11時半を指していました。
ふむ。
十分間に合いますね。

ことりの方も大丈夫でしょう。
朝も変わらず二人で朝食をとりましたから、寝坊なんてこともなく。
なにより、ことりも楽しみにしていましたからね。



海未「ふふっ」



思わず声が出てしまいます。
いけませんね。
他の乗客の方に変に思われてしまいます。

思考を切るように、外へ目を向けました。
すると、電車から見える風景はさっきまでとは少しだけ変わり……。



海未「見えましたね」



ポツリと呟きました。
私の視線の先には、大きな風車。

あれが風都タワー。
実は一度あのタワーが壊されたことがあったそうですが、今はそんなことがあったことが信じられないくらい堂々とそびえ立っています。
21 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 20:45:56.98 ID:HLr6i8f+0


海未「…………」

海未「…………ふぅ」



ひとつ、ため息。

憂鬱、な訳ではありません。
一昨日もことりに言いましたが、久しぶりに穂乃果に会えるのですから。
穂乃果の元気な姿は私だって見たいです。

けれど、



海未「………………はぁ」



もう一度ため息。

うぅぅぅ……。
一昨日から考えていますが、第一声が思い付きません。


「お久しぶりです」

…………では少し冷たいでしょうか?


「2ヶ月なにをしてたんですか!」

…………ありえませんね。


「お元気ですか?」

…………手紙じゃないんですから。



とにもかくにも、穂乃果とこんなに離れていたということ自体が初めてで。
近づくタワーをボーッと見ながら、ことりが私よりも早くに着いていることを願うのでした。



ーーーーーー
22 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 21:01:57.16 ID:HLr6i8f+0
ーーーーーー



海未「……………………ここですね」



ことりからのメッセージにかかれている内容をもう一度確認し、辺りを見渡す。
どうやらここは待ち合わせの定番のようで、周りは私と同じように人待ちの方がいるようでした。

携帯電話を触る人。
しきりに時計を気にする男性。
ベンチに腰かける老人。
犬と戯れる少女。
サンタのコスプレをした人までいます。
……6月だというのに変わった方もいるのですね。



と、そこで気づきました。
そのサンタのコスプレをした人と話しているの……っ!



海未「っ」



息を飲みます。
私には背を向けた形で、顔は見えません。
髪も少し長くなっており、あの時とは雰囲気も変わったような気もします。

ただ、姿を見た瞬間に分かりました。
あれは、




海未「…………あ、あの……」

「……え?」



サンタの人が離れたのを見計らって、声をかけます。
同時に、彼女は振り向いてーー





「あぁぁぁぁぁっ!!!」




海未「!?」




大声をあげました。
23 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 21:09:51.69 ID:HLr6i8f+0
いきなりの声に、耳がキーンとなってしまう。

くっ!
こ、この!



海未「あ、あなた……っ」

「う、う、ううう!」



キッと睨み付けるように、彼女に視線を送ります。
本人はどうやら気づいていないようですが……。

その様子に、また私はカチンと来て、




海未「まったく! 貴女という人は!」

「海未ちゃん!」

海未「公衆の面前で大声をあげないでください! 迷惑です! そして、驚くでしょう!?」

「だ、だって……」

海未「だってではありません! まったく貴女はーー」




結局。
電車のなかで考えた気の利いた第一声は言わずじまいになってしまうのです。



「……えへへ」

海未「なにを笑っているですか!」

「だって、久しぶりだから」

海未「……うっ」

「こうやってお説教されるの」



そう言って、彼女は変わらない笑顔を浮かべました。
太陽のような笑顔を。

だから、私もなんだか馬鹿馬鹿しくなってしまってーー



海未「まったく、もう……」



嘆息してから、彼女の名前を呼びました。
24 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 21:10:38.92 ID:HLr6i8f+0




海未「おかえりなさい、穂乃果」



穂乃果「うん! ただいま、海未ちゃん!」





ーーーーーー
25 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 21:17:52.17 ID:HLr6i8f+0
ーーーーーー




私と穂乃果は、ベンチで話をしました。

私の大学のこと。
μ'sのメンバーの今の話。
ことりとのルームシェアでの話。
そして、穂乃果の旅した先での出来事など。

どの話題をとっても、内容は中々に濃いものでした。
穂乃果が旅立ってから、まだ2ヶ月しか経ってないんですけどね。
それでも、やはり離れていればそれだけ話したいことも多くて……。

ことりが待ち合わせの時間から少し遅れたことも、ことりが到着した時に気づいたくらいですからね。



……………………。



えぇ。
ことりの言う通りだったわけです。



私と穂乃果だから。



心配することは何もありませんでしたね。




ーーーーーー
26 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 21:23:33.45 ID:HLr6i8f+0






…………いえ。
だから、心配するべきは私と穂乃果ではなかったのです。



今はただ後悔するばかり。



あの時、私が気づけていたら。
時間に遅れるなんていう貴女らしくないミスの原因に気付けていたのなら。




私は貴女を守れたのでしょうか?




可能性の話をするのは好きではありません。
けれど、そう思わずにはいられない。

つまり、私は貴女に甘えていたのです。
貴女ならば何があっても、と。




そんなはずはないのに……。




ーーーーーー
27 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/08(金) 21:24:09.31 ID:HLr6i8f+0
本日はここまで。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/10(日) 23:08:29.30 ID:1gbrnCE80
追いついた
にこのは知ってたが凛のもあって今回のやつなんだな
前のも面白かったからがんばって
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 21:52:01.06 ID:WMYidhKiO
待ってた!
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/13(水) 01:44:44.77 ID:jmj4twOwO
ゴミスレ
31 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 19:42:30.95 ID:Zx1JoXq80
本日更新します。
32 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 20:59:25.51 ID:Zx1JoXq80
ーーーーーー



ことり「おまたせ……」



穂乃果「ことりちゃん!! ひさしぶりぃぃ!!」

ことり「わぷっ、ほ、ほのかちゃん」



久しぶりの再会だからでしょう。
妙にハイテンションな穂乃果がことりに抱きつきました。



海未「穂乃果、ことりが苦しそうですよ」

穂乃果「あっ、ごめんっ」

ことり「う、ううん、だいじょうぶだよっ」



嬉しくてつい。
なんて言って、頬をかく穂乃果。

まったく……。



ことり「あ、その、ごめんね、遅れちゃって」

海未「大丈夫ですよ。その間に……」

穂乃果「? なに? 穂乃果の顔見て」

海未「ふふっ、なんでもありません」

穂乃果「えー!!」



本当にことりの言った通りになりましたね。
33 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:03:09.30 ID:Zx1JoXq80


海未「無事、仲直りできました」

ことり「そっか、よかった」

海未「はい!」



小声でのやりとり。
穂乃果に聞かれたら……恥ずかしいですから。



穂乃果「むー」



と、拗ねてしまってますね。

まったく子供なんですから。
仕方ありません。



海未「ほら、穂乃果」

穂乃果「?」

海未「行きましょう」

穂乃果「! うん!!」




ことり「………………」

ことり「…………っ」ズキッ



ーーーーーーーーー
34 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:05:17.88 ID:Zx1JoXq80
ーーーーーー
35 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:21:40.81 ID:Zx1JoXq80
ーーーーーー



エコの街とはよく言ったもので。
風都には、シンボルである風都タワー以外にも街の至るところに風車がありました。
そして、立地の都合なのか風が止むことがないようです。

というのは、



穂乃果「ーーなんだって!」

海未「興味深いですね」

穂乃果「でしょ!」



たった今、得意気に話す穂乃果の受け売りです。


どうやらこの2ヶ月間。
穂乃果は様々な場所へ赴き、歌を歌っていたようでした。
流石に日本国内ではありましたが、話を聞いただけでも、3県くらいは行っているようで……。

……まったく。
毎度のことながら、そのバイタリティには驚かされますね。



穂乃果「それじゃあ、今度はこっち!」

海未「って、穂乃果!」



どんどん私たちの先を歩く穂乃果。

仕方ないですね。
そう、呟きながらもたぶん顔は笑っているのでしょう。

ふと後ろを見ます。
ことりもきっと困っているだろうな、そう思って。



ことり「…………」



…………ことり?

どこかことりの様子のおかしい。
そういえば、さっき、穂乃果と再会したときもそうでした。
朝はあんなに、穂乃果に会えるのを嬉しそうにしてたのに……。



海未「ことり?」

ことり「…………」

海未「ことり!」

ことり「っ、あ、えっ……どうかした? 海未ちゃん?」

海未「…………どうかした……は」



こちらの台詞です。

ことりの言葉にそう返します。
やはり、変です。
36 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:31:03.52 ID:Zx1JoXq80


ことり「えっと…………」

海未「…………」



うつむくことり。
目を合わせようとしません。

少しだけ嫌な予感。
だからーー



海未「ことーー」




ことり「なんでもないよっ」




なにかありました?

そう尋ねようとした私の言葉を遮るように、ことりはそう言いました。
にこりと笑って。



海未「…………ですがーー」

ことり「ちょっと疲れちゃってるだけだよ。ほら、穂乃果ちゃんパワフルだから」

海未「…………」

ことり「って、海未ちゃん!」

海未「え?」




ことり「いつのまにか穂乃果ちゃんいないよっ!?」

海未「は!?」



37 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:35:05.68 ID:Zx1JoXq80
振り返ると、確かに穂乃果の姿形はどこにも見えず。



海未「あー! もう! これだから穂乃果は!」

ことり「携帯……穂乃果ちゃん、ホテルに置いてきたって……」

海未「仕方ありませんね。探しましょう」

ことり「え、えっと……二手に別れよっか……」

海未「?」

ことり「ほ、ほらっ! もしかしたら、穂乃果ちゃんが戻ってくるかもしれないから。ことりと海未ちゃんは携帯あるから、連絡とれるしっ」

海未「…………そうですね。ではーー」



見つけたら連絡を取り合いましょう!

それだけを告げて、私は穂乃果が向かったと思われる方向へ歩を進めました。
ことりを残して。

ことりの様子は気にはなりましたが、幸いルームシェアをしているのですから。
夜だって話を聞くことはできますしね。

今はまず、




海未「大きな迷子を探さなくてはーー」



38 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:38:15.36 ID:Zx1JoXq80

見れば少し雲が出てきていました。
嫌な色の雲です。

ことりには、どこか喫茶店など見つけておいてもらいましょうか。
立ち止まってその旨の連絡を送ります。
すぐにOKとの返信。



……よし。



さて。
急ぎましょうか。



もしかしたら、一雨来るかもしれません。




ーーーーーー
39 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:48:42.40 ID:Zx1JoXq80
〜〜〜〜〜〜




ことり「…………海未ちゃん」




海未ちゃんがいなくなった方を見ながら、ポツッとつぶやく。
それで、もどってきてくれるわけじゃないんだけど。



ことり「………………」



ことりは、



ーー ズキッ ーー




ことり「っ……」



痛みを感じた。
さっきのところだ。

軽く袖をめくって確認……っ。



ことり「なんなんだろう……これ……」



そこにあったのは、痣。
『あの人』は大事な『おまじない』だって言ってたけど……。



ことり「っ、やだな……」



少し痛む。
それだけ。
だけど、言葉にはできないいやな感じがする。
40 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:56:51.28 ID:Zx1JoXq80


ことり「やっぱり、海未ちゃんに……」



と、携帯を取り出して、メッセージが届いていたことに気づいた。

海未ちゃんから。
雨が降りそうだから、近くの喫茶店を探しておいてもらえませんかって。
……たぶん、ことりのこと心配してくれたのかな。



ことり「…………うんっ」



ひとつうなずきます。

今は海未ちゃんの言うとおり、喫茶店をさがそう!

せっかく久しぶりに3人でいれるんだもん。
心配かけたくない。
海未ちゃんにも、穂乃果ちゃんにも。

…………海未ちゃんに相談するのは夜でもいい、よね?



ことり「って、あれ……?」



海未ちゃんからのメッセージをもう一回確認しようとして、気づきました。

もう一件、メッセージ……?
宛先はーー





ーー ザザザザッ ーー




ことり「穂乃果ちゃんから……?」






『………………………………』





〜〜〜〜〜〜
41 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/16(土) 21:58:44.72 ID:Zx1JoXq80
短いですが本日はここまで。
話進まなくて申し訳ないです。
明日も更新できればします……。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 09:54:52.34 ID:iMsdtN4cO
ことりちゃんヤバない…
43 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 12:27:07.80 ID:zyxiwmN+0
更新します。
44 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 12:32:57.74 ID:zyxiwmN+0
ーーーーーー



海未「…………はぁぁぁ」



どうにか穂乃果を見つけた私でしたが、思わずため息を吐きます。
それも、大きなものを。



穂乃果「……しょ、しょうがないじゃん!」



テンション上がっちゃったんだもん!

そう言って、穂乃果は膨れました。
まぁ、気持ちはわかりますが……。



海未「…………はぁ」

穂乃果「うー! また!」



とにかく、穂乃果も見つかったことですし。
……えぇと。
45 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 12:36:31.32 ID:zyxiwmN+0

海未「…………はて」

穂乃果「どーかしたー?」



膨れながらもそう尋ねてくる穂乃果。
いちいち気にしていては際限がありませんから、それには普通に応答することにします。



海未「ことりからの連絡がないんです」

穂乃果「ことりちゃんから?」

海未「はい」



穂乃果を見つけてくるので、ことりは落ち合える場所を探してもらえませんか。
そんな旨のことを送ったのですが……。



穂乃果「まだ見てないとか?」

海未「いいえ。既読はついていますから、見てはいるはずなんですが」



おかしいですね。
そう言って、携帯の画面をもう一度ーー




ーー ポツリッ ーー



海未「あっ」



携帯の画面に、水滴が一粒。
空を見上げると、嫌な雲が空を覆っていました。
46 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 12:45:12.07 ID:zyxiwmN+0


海未「……やはり降ってきてしまいましたか」

穂乃果「えー! 天気予報は雨じゃなかったのに!」

海未「まぁ、そういうときもあるでしょう」

穂乃果「……雨やめ……って叫んだら……」

海未「止めなさい」



なんて、冗談を言ってる場合ではありませんね。
このままではずぶ濡れです。

ことりからの返信はないですが、仕方ありません。



海未「穂乃果!」

穂乃果「なに?」



いつの間にか膨れっ面も止めていた穂乃果は、首をかしげました。



海未「近くにあることりが好きそうなお店を探してもらえますか?」

穂乃果「うん! 了解だよ!」



ことりが好きそうな、と言ったのは、少し思うところがあったから。

ことりを待たせてしまったことへのお詫びと、ことりの気晴らし。
なぜかことりの様子が変でしたからね。
こういうときは、好きなものを眺めたりして元気を出してもらうのが一番です!

そこで雨宿りがてら、ことりを待ちましょう。



穂乃果はすぐにことり好みの……つまり、私にとっては可愛すぎる喫茶店を見つけてくれました。
その場所の名前と住所を、メッセージで送信し、私たちもそこへ急ぎました。



ーーーーーー
47 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 12:50:59.85 ID:zyxiwmN+0
〜〜〜〜〜〜



ことり「穂乃果ちゃん……」



ポツリと呟いたはずの声が、その場所一杯に広がった。
コツコツと、頼りなさげな屋根に落ちる雨の音も予想以上に響き渡っていた。

キョロキョロと辺りを見渡して……あっ。



ことり「穂乃果ちゃんっ」

「……………………」



姿を見つけて、駆け寄る。
そこにいたのは……え?



穂乃果「」

ことり「う、うそ…………え、え?」



この場に座り込む。
だ、だって……え、え……?
なんで、穂乃果ちゃん……っ?



穂乃果「」ゴロッ

ことり「ひっ……」



力なく横たわる。
まるで、




『死んでしまったみたい』




ことり「っ」

48 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 12:56:53.20 ID:zyxiwmN+0
声に振り返る。
そこにはーー



ことり「か、かい、ぶ……っ」

『えぇ』



怪物がいた。

ボロボロのローブで体は見えない。
だけど、フードの下にあった……ううん、そこには顔がなかった。

フードの中には、真っ青に光るふたつの目。

それだけで、目の前の存在が人間じゃないってことはわかってしまった。



ことり「ほ、ほのかちゃんはっ」



けれど、ことりはその怪物に怯えるよりも先に、それを聞いていた。
今は、穂乃果ちゃんが!



『……フフフ』

ことり「な、なんで笑ってるの……っ」

『目の前のそれを見て、まだ聞くのかしら?』




『穂乃果ちゃんはどうしちゃったの……って』




クスリ、と。
怪物は笑う。
それが意味するのは、




『高坂穂乃果はもう死んでるわ』



49 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 13:05:00.19 ID:zyxiwmN+0

ことり「っ、う、うそ……っ」

『じゃないわよ』



見なさい。

そう言って、怪物はことりの前の穂乃果ちゃんを指差した。



『死斑が現れて、顎関節の硬直が始まっている』

『つまり、死後二時間が経過してるわ』

『心臓は勿論、脳も内臓も』

『全ての生命維持機能が停止している』



まるで、物の状態を並べるように。
怪物は言葉を続ける。

って、



ことり「やめ、て……」

『…………なんで?』

ことり「ほのかちゃんを……そんな風に言うの……やめてよぉ……」

『穂乃果ちゃんを……フフッ、何を言っているのかしら?』




『それはもうただの『高坂穂乃果だったもの』よ』




ことり「いや、いやっ……」




ーー ドクッ ーー



50 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:07:44.31 ID:zyxiwmN+0
吐き気がする。
嫌だ、いやだよっ。
そんなのうそだよ……っ!



『嘘じゃないわ』

『目の前にいるでしょう?』



違う、ほのかちゃんじゃない!
うそだっ!



『確かにそうね』

『目の前のそれはもう『高坂穂乃果』じゃない』



いや、やめて。
ちがう、うそ。



ーー ドクッ ーー




『…………フフ』

『そろそろいいかしら』




ーー カチャッ ーー



51 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:14:07.22 ID:zyxiwmN+0
怪物が近づいてくる。
そして、



ーー グイッ ーー



袖をまくられる。
そこにはあの痣があった。

ただ、前に見たときよりも大きくなっていた。




『……綺麗ね』




ポツリと呟いたのが聞こえた。
怪物の声。
ノイズがかかったみたいな声が、震えてるのがわかった。

きれい……?
なにが……。



『絶望に反応して……『コネクター』が成長しているわ』

『やはりあの方の言った通り』



ことり「ほのか、ちゃ……」



もう、わけがわからないよ。

なんで、ほのかちゃんはどこにいったの?
なんで、ことりはこんなところにいるの?
なんで、この怪物は私をみているの?
なんで




ことり「うみちゃん……」



52 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:18:15.29 ID:zyxiwmN+0


『……………………フフ』



怪物が笑った。

なんで?
なんでわらうの?



『うみちゃん……』

『それは『園田海未』のこと?』



ことり「え……」



なんで怪物が海未ちゃんの名前を知ってるの?

混乱した頭で考える。
でも、その答えはわかんない。

けど、その思考は怪物に中断される。





『…………ねぇ』

『…………ことり』






ことり「…………………………え……?」




怪物に名前を呼ばれた。
53 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 13:24:33.99 ID:zyxiwmN+0
かいぶつ?
あれ?
なんで、その声……?



『……ことり、ひとつ教えて差し上げます』

『穂乃果を殺したのはーー』




『貴女の目の前にいる怪物です』




それは、なんとなくわかってた。
でも、それを認めたらほのかちゃんが死んじゃったって認めちゃうから……。



『その顔は分かっていたという表情ですね』

ことり「っ、ほのかちゃんはっ」

『死にました』

ことり「っ」

『殺されたのですよ。貴女の目の前にいるーー』




怪物がフードを取る。
今まで光っていた青色の光は消え、そのかわりに怪物の素顔が見えた。
そこにあったのは、




ことり「う、み……ちゃ…………」

海未『そうです』



目の前の海未ちゃんはにこりと笑う。
そして、こう言いました。






海未『私が穂乃果を殺しました』






悲鳴が聞こえた。
自分の悲鳴が。

そして、ことりの意識は、消えた。




〜〜〜〜〜〜
54 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:31:08.21 ID:zyxiwmN+0
ーーーーーー




海未「っ」

穂乃果「海未ちゃん?」



どうかした?

喫茶店でメニューを見ていた私の体が跳ねました。
そんな私を見て、聞かれます。

えぇと……。
そんなの私が知りたいですよ。
なぜか嫌な感じがしただけで……。




ーー prprpr ーー




海未「っ」

穂乃果「海未ちゃんの携帯?」

海未「そ、そのようです……」



携帯の音が鳴りました。
って、マナーモードにするのを忘れていましたね。

周りには幸い誰もいないようですが……。
喫茶店の店員さんに、一礼だけしてから席を外します。



穂乃果「穂乃果も行く?」



そう聞かれましたが断り、ひとり、店の外へと出ました。
55 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:36:47.50 ID:zyxiwmN+0
店外へ出て、携帯の画面を確認しました。
って



海未「花陽?」



画面に出ていたのは、小泉花陽の文字。

なんのようでしょう?
急に予想外の人物から電話がかかってきたことに驚きつつも、通話ボタンを押しました。




海未「もしもし、お久しぶりです」

『あ、うん! 久しぶり、海未ちゃん』



電話の向こうの声は確かに花陽でした。

2ヶ月ぶりでしょうか。
声の調子からも変わっていないことが分かり、少し落ち着きました。


どうですか?
最近のアイドル研究部は?


そんなことも聞いてみようと思ったのですが、




『今、海未ちゃん、ことりちゃんと一緒!?』




電話口から響いた声に驚き、聞くタイミングを逃してしまいました。
56 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:41:14.80 ID:zyxiwmN+0



海未「え、えぇと……そうですね。出かけているという意味では一緒ですよ」



突然の大声でしたが、なんとかそう答えます。
花陽がそんな声を出すなんて珍しいですね。
なにか……



『今は!?』

海未「え?」

『今は一緒にいるの!?』

海未「……えぇと」



花陽の質問に混乱しつつも答えます。
それを聞いた花陽は、




『っ、今、ネットで!』

海未「はい? ネット?」




『ことりちゃんが風都の廃工場に向かったのを見たって情報があって!!』

『そこ、不良の溜まり場だってことも言ってる人いて!!』



57 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:46:08.47 ID:zyxiwmN+0
理解は、できませんでした。
いきなりのことすぎて。

けれど、



海未「花陽!」

海未「それはどこですか!!」



反射的にそう言っていた。



『風見埠頭2番地だって……』

海未「分かりました! すぐ向かいます!」

『で、でも、危ないって……!』

海未「大丈夫です! 不良程度相手にもなりませんっ!!」



それだけを言って、電話を切りました。
そして、すぐに体が動く。




ーー バタンッ ーー




海未「穂乃果!」

穂乃果「ふほ!? ふ、ふみひゃーー」

海未「ここのお勘定お願いします!!」

穂乃果「ーーゴクンっ! え、ちょ、ちょっと!?」




海未「ことりが危ないかもしれないんです!」




穂乃果「!」
58 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:50:45.46 ID:zyxiwmN+0
海未「穂乃果はここでーー」

穂乃果「マスター! ここに置いとくね! お釣りはいらないよ!!」バンッ



待っていてください。

私がそれを言う前に、穂乃果はテーブルに五千円札を叩きつけて。




穂乃果「行こう! 海未ちゃん!」

海未「っ、はい!」



二人で店を出ました。

雨はまだ止む気配を見せず。
私の体に冷たく刺さっていて。
体が冷えていく感覚と、嫌な予感を抱えながら、私は走った。



間に合ってくださいっ!



ーーーーーー
59 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 13:51:15.08 ID:zyxiwmN+0
一旦ここまで。
60 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 19:36:27.69 ID:2Akf5wqO0
もう少ししたら更新します。
61 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:07:45.87 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー
62 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:08:54.38 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー
63 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:15:20.13 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー



海未ちゃんが花陽ちゃんから教えてもらったと言う場所。
風見埠頭2番地。
そこは確かに廃工場で、いかにもってところだった。



穂乃果「海未ちゃん……」

海未「えぇ」



小さな声で声を掛け合う。
すっと手を伸ばしたのは海未ちゃんの意思表示だ。

穂乃果は後ろに。
私が前に行きます。

声にしなくてもそう言ったのが分かった。
穂乃果もコクリと頷く。



穂乃果「…………」

海未「…………」



落ちていた鉄の棒を海未ちゃんも持ってる。
確かに、海未ちゃんは強い。
たぶん不良3、4人くらいなら大丈夫だと思う。

……でも、もしそれ以上だったら?
その時はーー



穂乃果「後ろは、任せて」

海未「……はい」



それだけ告げて、穂乃果たちは中へ入った。





海未「ことり!!」

穂乃果「ことりちゃんっ!」



64 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:17:52.77 ID:2Akf5wqO0



穂乃果「あ、あれ?」



穂乃果の不安に反して、そこには不良はいなかった。
それどころかだれも……。



海未「……いえ」

穂乃果「え?」




海未「そこにいるのは誰ですっ!!」




海未ちゃんの声。
それが工場に反響して。

少しの静寂。

それからーー




『フフフッ』

『本当に来たのね』




ーーそれが現れた。
65 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:23:51.11 ID:2Akf5wqO0
真っ黒な布を服がわりに着て。
フードを被った人物。
…………ううん。



穂乃果「っ、ちがう……」



フードの中……!
顔がない!?



穂乃果「…………化け物……」

『心外ね。化け物だなんて』



言葉は通じる。
エコーとノイズのかかった不気味な声だけど。

それに、心外だって言った言葉とは裏腹に、笑っていた。
ほんとに、不気味。



穂乃果「……っ」



一歩、下がる。
……怖い……。




海未「……………………穂乃果」

穂乃果「う、うみちゃん……?」

海未「下がっていてください」

穂乃果「っ……………………うん」



さらに二歩下がる。
その前には、穂乃果を守るように、海未ちゃんが立っていた。
66 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 20:29:45.85 ID:2Akf5wqO0

海未「…………連れが失礼しました」

『……いいえ。それより貴女は怖がらないのね』

海未「……人を見た目で判断するなと母から厳しく言われてきたものですから」

『……それは……フフフ、いいお母さんね』

海未「……………………」



きっと海未ちゃんも怖いはず。
なのに……負けないようにって耐えてるんだ。



海未「つかぬことをお聞きしますが…………」



海未ちゃんが指をさす。
その先には、



海未「そちらの方は……どうされたのですか」



男の人が横たわっていた。
なんの力も、生気すら感じられないほど脱力して、横たわっていた。



『…………フフ』

海未「……亡くなっている、のですか」

『………………えぇ。二時間ほど前に』

穂乃果「っ」

海未「…………貴女が殺したのですか」

『………………』




『えぇ、そうよ』




海未ちゃんの問いに、それは答えた。
私が殺した、のだと。
67 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:35:29.30 ID:2Akf5wqO0


穂乃果「こ、ころ……っ」

海未「っ」



化け物の答えを聞いて、海未ちゃんは鉄の棒を構える。
その体制のまま、言葉を交わした。



海未「…………それともうひとつ……よろしいでしょうか」

『…………なにかしら?』




海未「貴女が持っている『それ』はなんですか」




化け物は『それ』を持っていた。

丸いもの。
右腕で大事そうに持っている『それ』は、化け物が着ている真っ黒な布とは正反対の白色。

まるでーー




『卵よ』




穂乃果の予想通りの答え。
化け物は、白色のそれを卵だと言った。
68 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 20:39:02.65 ID:2Akf5wqO0


海未「……卵……」

穂乃果「っ」



気持ち悪い。
人一人殺しておいて笑うような化け物が大切そうに卵を抱えている。
不気味だ。
変だ。



『………………不思議……いいえ、不気味だと思う?』

穂乃果「っ」



心を読まれたような質問に、体がビクリと震える。
そんな穂乃果の様子を見て、化け物はまた笑った。



『…………卵というのは少し違うかしら』

『彼女はーー』





『『エッグドーパント』』



69 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:46:29.93 ID:2Akf5wqO0


『昔、それをただの『チキンメモリ』のパワーアップのために使った愚か者がいるらしいけれど』

『このメモリの真の力は別にあるの』



メモリ?
ドーパント?
理解かま追いつかなかった。
その間にも、化け物は卵ーー『エッグドーパント』と呼ばれたそれを撫でながら続ける。



『このメモリを使用するとほとんどの人間が卵形のドーパントに変身する』

『能力は卵形のエネルギー弾や卵の殻のような防御形体』

『私も最初はただのドーパントだと思っていたわ』

『けれど、違った』

『『あの方』はこのメモリを可能性だと称した』

『適合率が異常に高い者……過剰適合者が使うことによって進化するメモリだと。そう言ったわ』

『そして、この通り!!』




『実験は成功したわっ!!』



70 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:52:16.49 ID:2Akf5wqO0
化け物はそれを掲げた。
そして、告げた。




『このドーパントは生まれ落ちる』

『…………人間を捨て、新たなるドーパントへと生まれ変わるっ!!』

『フフフ……アハハハハッッ!!』




海未「っ」

穂乃果「…………っ、うみ、ちゃん」



逃げよう!
逃げて、早く警察に!

そう言うために、海未ちゃんの袖を握った。



海未「……………………っ」

穂乃果「うみ、ちゃん…………ねぇ」

海未「穂乃果…………あの化け物の言葉…………聞きましたか……」

穂乃果「……え」




海未「…………あの卵は……人間だと……」




穂乃果「っ」
71 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 20:54:50.89 ID:2Akf5wqO0
え、え……?
いや、ううん。
海未ちゃん、なに言ってるの?



海未「…………最後にひとつ確認をさせてもらってもよろしいですか」

『………………なぁに? うみちゃん?』



やめてよ。
待って、ちがうよ!
ちがうからっ!
だからーー






海未「それは…………『南ことり』ですか」




『ええ、そうよぉぉぉ』




72 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:00:27.43 ID:2Akf5wqO0




海未「はぁァァァァっ!!!」




ーー ガァァァンッ ーー




気づけば、海未ちゃんは化け物に殴りかかっていた。



海未「っ、はぁっ! アァぁっ!!」



ーー ガンッ ーー



ーー ガァァンッ ーー



何度も、何度も。
鉄の棒で殴りかかる海未ちゃん。

でも、化け物は



『は、フフフ……』



笑いながらそれを受け止めていた。
まったく、効いて、ない……。



海未「ことりをっ!!」ガンッ

海未「返せッ!!!」ガァンッ



殴り続ける。

殴って、殴って。
殴って、殴って……。





ーー カランッ ーー




それでも、




海未「はっ、はぁ……はぁ……」

『フフ……』




なにもなかった。
化け物は平然と立っていた。
73 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:03:11.25 ID:2Akf5wqO0



穂乃果「うみ、ちゃん……」



穂乃果は、ただ海未ちゃんの名前を呼ぶしかできない。
一歩も、動けない。




海未「はぁ……ことりを……返せ……っ」

『……気丈なのね』

海未「っ!」




ーー ガンッ ーー




鉄の棒が化け物の顔に。
それでも、




『フフフ……痛いわよ、うみちゃん?』




笑っていた。
74 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 21:06:50.67 ID:2Akf5wqO0




ーー ドクンッ ーー




『…………あら?』

海未「……は、ことりを……はぁ……」ガンッ

『…………そう。この子もなの…………フフフ……』

海未「返せ……」ガンッ




ーー ガシッ ーー




穂乃果「っ、うみちゃん!」

海未「っ」



海未ちゃんが握っている鉄の棒。
それを化け物が握り返してきた。



海未ちゃんも殺されちゃうっ!!



そう思っても、動けない。

っ、動いて!
うごいてよっ!!
75 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:07:26.36 ID:2Akf5wqO0






ーーーーーー カランッ ーーーーーー





76 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:11:25.10 ID:2Akf5wqO0

穂乃果「………………え……?」



予想外のこと。
化け物は、なにかを投げた。

小さな、USBメモリのようなもの。

それを海未ちゃんの足元に投げた。



海未「は……はぁ……」

『拾うといいわ』

海未「なに、を……」

『私を倒したいのでしょう?』

海未「はぁ……はぁ……」

『…………いえ』





『殺したいのでしょう?』





海未「…………」

穂乃果「……うみ、ちゃん?」



化け物の問いに、海未ちゃんは答えない。

きっと疲れてて……答えられないだけ、だよね。
きっとそうだ。
77 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 21:16:23.23 ID:2Akf5wqO0

『私にも分かるわ』

『私も『あの方』を失って……殺した相手をこの手で殺したいと思って、今まで生きてきたのだもの』

海未「………………」

『フフフ……』




『拾いなさい』

『それは、貴女を強くしてくれるもの』

『私と同じ化け物にしてくれるもの』



海未「………………」

穂乃果「海未ちゃん……だ、ダメだよっ」




『貴女が私を殺したいと思うのならばーー』

『ーーそれを使いなさい』





海未「……………………」



ーー スッ ーー





穂乃果「海未ちゃんっ! ダメぇぇーー
78 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 21:17:18.83 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー








『アームズ』









ーーーーーー
79 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:17:57.50 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー
80 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:18:29.13 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー
81 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 21:23:57.85 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー





穂乃果「海未ちゃんとことりちゃんは『ドーパント』になった」

穂乃果「ことりちゃんはその化け物に連れ去られて、海未ちゃんはその化け物を追ってる」




穂乃果「…………殺すために」




にこ「…………」

花陽「そんな…………」

真姫「っ」

凛「…………ことりちゃん……海未ちゃん……っ」




今まで連絡しなかったこととか。
隠し事をしてたこととか。
穂乃果を責める声はもうなかった。

穂乃果は悪くない。



理事長「…………本当、なのね……」

穂乃果「…………はい」

理事長「っ、ことりが……っ」

穂乃果「っ、ご、ごめんなーー」




理事長「謝らないでっ」




穂乃果「っ」
82 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:27:57.74 ID:2Akf5wqO0
そう、よね。
一番辛いのは、理事長に決まってる。



にこ「っ、ことり……」



拳を握る。
爪が、食い込んでるのが分かっても、そうしなくてはいられない。

その場にいなかったことが……悔しい……。




穂乃果「…………理事長。ううん、ことりちゃんのお母さん」

理事長「っ」

穂乃果「穂乃果はなにもできませんでした。ただ、見てるだけで……幼馴染失格です」

理事長「そんなことーー」



ーーない。
そう言おうとした、理事長の言葉を遮って、穂乃果は続ける。





穂乃果「でも、必ず助けます」



83 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:31:37.25 ID:2Akf5wqO0




穂乃果「そのために、穂乃果は……」



にこ「!」

凛「っ!」




穂乃果と目が合う。

そうよ。
確かにその時はいなかった。
いても、きっと、穂乃果と同じで、なにもできなかった。

けど、今は違うわ!
にこはーー






穂乃果「『仮面ライダー』を見つけたんです」

穂乃果「穂乃果たちが絶対に助けます!」




ーーーーーー
84 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:32:36.13 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー
85 : ◆6cZRMaO/G6 :2017/12/17(日) 21:35:50.95 ID:2Akf5wqO0
ーーーーーー




ポツ、ポツ、と。
雨の音が聞こえてきます。

不快な音。




海未「…………ことり」





必ず助けます。
だから、





海未「待っていてください」








ーーーーーー To be continued ーーーーーー
86 : ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2017/12/17(日) 21:43:55.32 ID:2Akf5wqO0
以上で
『海未「私の罪を」』完結になります。

レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章・表現にお付き合いいただき、ありがとうございました。

以下過去作等です。
よろしければどうぞ。

前々作
【ラブライブ】にこ「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500978922/
前作
【ラブライブ】凛「さぁ、お前の罪を数えろ!」【仮面ライダーW】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510213255/

過去作
真姫「マキマキ超会議?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430039332/
【ラブライブ】千歌「テニスをしよう!!」【サンシャイン】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490169182/

前回、次は百合ものと言っていたのにも関わらず書きました。
すみませんでした。
次作は何になるか未定ですが、またお付き合いいただけると幸いです。
では、また。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 21:45:15.60 ID:sSTDMGYMO


海未ちゃんの「それは…………『南ことり』ですか」の後『君のような勘のいいガキは嫌いだよ』って来るかと思った
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 22:46:12.21 ID:c3TJtckvO

今回重いな
あとエックってWに出てきてないよね
>>1のオリジナル?
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 08:42:22.84 ID:wZiTaDiuO
>>88
ハイパーバトルDVDに出てきた親子丼ドーパントが持ってたメモリが『エッグ・チキンメモリ』
二つの記憶(エッグの記憶とチキンの記憶)が入ってるらしい
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 11:23:36.87 ID:JpcJ3UAOO
>>89ありがとう
そんなのがあるのか
はじめて知ったわ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/29(金) 21:29:51.60 ID:mDRHVOv1o
乙乙
続き期待
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