勇者「ドラゴンハート」

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140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/20(金) 18:27:25.41 ID:fciclkWJO
乙わくわくするぞ
141 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:33:36.21 ID:l4n25ukA0

ゴブリン「合図だ!扉を開けろ!」

オーガ「鎖、引く」ジャラ

コボルト「わん!」ジャラ

ガッタン!

ガラガラガラガラ……

ゴブリン「しっかりな」

奴隷「・・・・」ジャリ

観客「ユウシャーー!!」

奴隷「・・・・」ジャリジャリ

観客「頼むー!勝ってくれーー!!」

観客「負けるなー!勇者さまーー!!」

奴隷「」ジャリジャリジャリ

観客「ユウシャ!」「ユウシャ」
「ユウシャ!」「ユウシャ!」「ユウシャ!」
「ユウシャ」「ユウシャ!」

奴隷「・・・・」

ドラゴン「はじめて会った時を思い出すな」

奴隷「ああ、俺もだ」
 
142 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:38:23.41 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「それでも、すべて同じというわけでもない」

観客「ユウシャー」「ユウシャ!」「ユウシャサマー!」

ドラゴン「観衆の変わりようを笑うか?」

奴隷「別に? どうでもいい」

ドラゴン「そうか、彼らが変わったように勇者も変わった」

ドラゴン「勿論、良い方にだ。もう皆が心の底で勇者と認めるほど成長した」

奴隷「そんなことより、ここから逃げられるか?」

ドラゴン「そんなことより、か……」

ドラゴン「出口は封鎖され、上から無数の兵が狙っておる。隙を狙うしかあるまい」

奴隷「そっか」チャキ

ドラゴン「勇者よ、魔王に多くの者が苦しめられ、助けを求めておる」

奴隷「へぇ、で? そんなん俺の知ったことか」

ドラゴン「勇者よ、おまえを鍛えるための時間稼ぎとして100試合がどうしても必要だった」

ドラゴン「だが、もしも! もしも、勇者として立ち上がってくれるなら…」

奴隷「そんなつもりはない!!」

ドラゴン「理由がないからか?」
 
143 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:42:16.37 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「姫に言っておったな、自分には魔王を倒す理由がないと」

奴隷「そうだったかな?」

ドラゴン「…儂はあの時。姫に理由がないと語った おまえを見て、少し腹が立った」

奴隷「?」

ドラゴン「分からんだろ?」

ドラゴン「勇者よ、お前は理由がないのではない」

ドラゴン「知らんのだ」

ドラゴン「何も知らず、知ろうともせず、拗ねて部屋の角でうつむいて」

ドラゴン「子どものまま狭い世界に閉じこもり」

ドラゴン「あの一言がどれほど姫を傷つけたかも気づいておらぬ!」

ドラゴン「儂はそれが! はらわたが煮え返るほど我慢ならんのだ!!」

ダンッ!

奴隷「いつもより速い!」

ガキーン!

奴隷「くっ、速くて……重い!」ザザー

ドラゴン「行くぞ勇者!」

ドラゴン「儂の屍を越えてみせろ!!」
 
144 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:47:52.63 ID:l4n25ukA0

奴隷「くっ」タッ

ドラゴン「退くな!」

ブォン

ガキーーン!

ドラゴン「竜を相手に退けば炎で焼かれる、勝機は前に進み掴みとれ!」

奴隷「わかってるよ!」ダッ

ドラゴン「ふん!」

ブオン!

奴隷「大振りの一撃を」

ドラゴン「かわさせん!」

ドゴッ!

奴隷「がはっ!」

ドラゴン「この期に及んで手を抜くようなことをすると思うな!」

奴隷「避けられないなら」

ガッキン!

奴隷「盾で受け流して」

ガッガッガッガッガッガッガッガッ

ドラゴン「盾で受け流して?」

ガッガッガッガッガッガッガッガッ!!

ドラゴン「ほら、どうする?」

ガッガッガッガッガッ

奴隷「くっ」

バキッ!

奴隷「盾が!」

ドラゴン「もとよりそれが狙いだ」

ドゴッシャ!

奴隷「がはっ!!」

観客「ああ〜勇者さま〜!」
観客「負けないでくれー!」
姫「奴隷さん!!」

ドラゴン「勇者よ、濁流が来る」

奴隷「げほっ!ごほっ!濁流?」

ドラゴン「濁流は地上を呑み込み、魔界は沈む」

ドラゴン「理由ならあるのだ!!」
 
145 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:51:23.74 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「ここにいる皆だけではない。 勇者は世界を救わなくてはならぬ」

奴隷「それで? つまるとこ俺が勇者として魔王を倒せって?」

ドラゴン「うむ、そうだ」

奴隷「くっくっくっ…はぁ〜はっはっはぁ〜!」

ドラゴン「勇者……」

奴隷「知ったことか!!」

ダンッ!

ドラゴン「!!」

ガキーーン!

奴隷「勇者なんかくそ食らえだ!!」
 
146 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:54:36.14 ID:l4n25ukA0

奴隷「なんで俺がこいつらの為に戦わないとならない!」

ドラゴン「ぬ?」

ガキン!

奴隷「こいつらが今まで何をしてくれたって言うんだよ!」

カン、カン、カン、カン

奴隷「ウロコが硬すぎて剣じゃ斬れない?」

ドラゴン「いいぞ、儂の動きに慣れてきておる。そのまま胸の中の物をすべて出しきれ!!」

奴隷「だったら、拳で殴る!!」

ドゴッ!

ドラゴン「強くなった…」

奴隷「なんで反撃してこない?」

ドラゴン「約束通り戦いかたなら教えた、残さず教えた」

ドラゴン「竜の心臓にかけて、今の勇者なら魔王だとて倒せよう」

奴隷「心臓なんか要らないよ……」

奴隷「お父さん」
 
147 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 21:58:21.82 ID:l4n25ukA0

奴隷「お父さん…お父さん、お父さん!」

奴隷「ほんとのお父さんの、顔も思い出せないけど…。ずっと、そんな人を待ってたんだ…」

ドラゴン「情をかけすぎたか…」

ザシュ!

奴隷「おと、さ……ん?」

ドラゴン「掴んで」ガシッ

ドラゴン「投げる!」ブォン!

ドゴォォーーーーン!!

奴隷「戦いたくないんだ!」パラパラ

ドラゴン「追撃」

奴隷「くっ」サッ

ドガッ!

ドラゴン「避けたか…」

奴隷「もう止めてくれ!」タンッ

ドラゴン「ならば、これでなれならどうだ!!」コオォォォォ

奴隷「お父さん!!」

ドラゴン「行くぞ!最大5発のいっぱつめ!!」

ドラゴン「ドラゴンブレス!!」カッ!
 
148 :これでなれなら? ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:03:04.64 ID:l4n25ukA0

奴隷「!!」

ドゴォォーーーン!!

道化「おっほ♪これはこれは♪」

側近「直前で相殺でしょうか?」

魔王「まだまだ、これからだ」

ドラゴン「にはつめ!!」コオォォォォ!!

奴隷「この、わからず屋!」コオォォォォ!!

奴隷 ドラゴン「「ドラゴンブレス!!」」カッ

ドゴォォーーーン!!

ドラゴン「まだまだ!」

奴隷「ゼヒュ・・・」

ドラゴン「さんぱつめ!」コオォォォォ!

奴隷「」コオォ…

ドラゴン「ドラゴンブレス!」カッ

グォォォ!

奴隷「!」

ドゴォォーーーン!!
 
149 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:07:04.16 ID:l4n25ukA0

道化「決まりましたな」

側近「今の直撃で勝負ありですかね?」

魔王「ぷはっ、ふははっ」

側近「魔王様?」

魔王「ふふ、奴隷なら無事だ」

側近「土煙で何もみえませんが?」

魔王「それと、上で控えている人数を増やせ」

道化「なにやら、ご機嫌悪からざる様子?」

魔王「なに、いつかどこかで使ってくると思っていたのだが…」

魔王「なかなか、魅せてくれる」



ドラゴン「よんぱつめ!」コオォォォォ!

奴隷「よんぱつめ!」バッ

ドラゴン「ドラゴンブレス!」カッ!

奴隷「極 大 電 撃 魔 法 !」カッ!
 
150 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:14:19.53 ID:l4n25ukA0

バチバチバチ!

グォォォ!

ドゴォォーーーン!!

側近「また相殺?」

魔王「いや、奴隷の電撃が勝った」


ドラゴン「ぐわあぁぁぁ!!!」バチバチバチ

ドラゴン「ぐふっ」ドシャ

魔王「そして最大の攻撃が敗れた以上、勝負はついた!」

魔王「見事だ、最初の宣言通り100の勝利をもって、奴隷を勇者と認めよう!!」

魔王「そして去らばだ、ここから先に勇者は邪魔にしかならないのだ」


魔王「これより、勇者の処刑を執り行う!!」


ドラゴン「まったく、最近の若い者は年寄りを軽く見すぎておる……」

道化「魔王様! なんか企んでますよ!?」

ドラゴン「よわい万歳を越えた、年の功を見せてやろう」

ドラゴン「極 大 真 空 魔 法 !」

ブオオォォォ!!!
 
151 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:18:50.33 ID:l4n25ukA0

ブオオォォォ!!
 ビュオォォォ!!

観客「なんだこりゃ!?」
観客「竜巻だ!」
観客「逃げろ、まきぞえになる!」

ビュオォォォ!

魔王「最後の悪あがきだ! 構わんから竜巻が収まったら射て!」

側近「射撃用意!」

ビュオォォォ!

姫「奴隷さん……、ドラゴンさん……」

衛兵「姫様、行きましょう!」グイッ

姫「行くって何処に?」

衛兵「もっとあの2人がよく見える場所です」グイッ

姫「そうね、行きましょう」

カンカンカン

観客「姫さま?」
観客「危ないですよ」
観客「引き返しなっせ!」

衛兵「私の手を離さないで!」ギュッ

姫「は、はい!」

カンカンカン

衛兵「……修道院よりお戻りになられてからずっと、どうやったら護れるのか考えてました」

姫「あ、あなたは良くやっているわ?」

衛兵「・・・・」

カンカンカン

ビュオォォォ!

姫「ん、すごい風…衛兵さんは何か見えます?」

衛兵「姫様! あれを!!」

姫「どれ?」

衛兵「あれです!!」

姫「だから、どれ〜?」

衛兵「姫様、すみません」

ドン!
 
152 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:21:19.79 ID:l4n25ukA0

姫「え?」グラッ

衛兵「魔界の姫君を突き落とした、私をお許しください」

姫「きゃあぁぁ〜〜〜!!!」

ヒュゥゥ〜〜〜


バサッ!


バッサバッサバッサバッサ!!


ガシッ!!


側近「竜巻が止まった! 全員撃て!!」

騎士「ハッ!」カチャ

衛兵「撃つな! 姫がドラゴンに捕まった!!」

側近「なっ!」


ドラゴン「はぁ〜はっはっはぁ〜! 姫はもらった!!」バッサ!
 
153 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:25:38.54 ID:l4n25ukA0

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「ドラゴン?」

ドラゴン「姫も勇者も落ちるなよ! このまま逃げる!」

道化「な〜にやってんの〜? 拘束まほ

ベシャ

ゴブリン「うっし、命中!」

道化「きっ…きえぇぇ〜〜〜!!」ゴロゴロゴロ

ゴブリン「へっへ〜、特性特大目潰しのお味はどうよ?」

オーガ「兄ちゃん、俺らも逃げる」

ゴブリン「おうよ」

ゴブリン「おまえらもいい旅になれよ、勇者様」
 
154 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:26:18.25 ID:l4n25ukA0

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「ドラゴン?」

ドラゴン「姫も勇者も落ちるなよ! このまま逃げる!」

道化「な〜にやってんの〜? 拘束まほ

ベシャ

ゴブリン「うっし、命中!」

道化「きっ…きえぇぇ〜〜〜!!」ゴロゴロゴロ

ゴブリン「へっへ〜、特性特大目潰しのお味はどうよ?」

オーガ「兄ちゃん、俺らも逃げる」

ゴブリン「おうよ」

ゴブリン「おまえらもいい旅になれよ、勇者様」
 
155 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:29:56.49 ID:l4n25ukA0

側近「逃がすな! 飛べる者は追え!」

騎士「しかし、ドラゴンほど速くとなると…」

側近「言い訳するな! さっさと動け!!」

魔王「全員、動くな!!」

側近「へ?」

ドラゴン「ごはつめ!」コオォォォォ!!

側近「へ?へ?」

ドラゴン「ドラゴンブレス!」カッ!

魔王「五段・氷壁結界!」

ガコーン!

ドゴォーーン!

魔王「くっ」

ピシッ…

ミシッ…

側近「結界が砕かれる!?」

魔王「ぬぉぉぉぉ!余をだれと思っている!!」バッ

奴隷「魔王だろうが!」バッ


奴隷「極 大 電 撃 魔 法 !」

魔王「極 大 氷 結 魔 法 !」

ドゴッシュゥーーーン!!!
 
156 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:33:02.70 ID:l4n25ukA0

魔王「ゼェ……ゼェ……」

ドラゴン「くっくっくっ…」

バサッ!

バッサ!バッサバッサバッサバッサ!

魔王「ドラゴン……」ギリッ

側近「魔王様……」

魔王「追え、他はどうなろうと姫は無傷で連れ戻せ」

側近「お体のほうは…」

魔王「追え! 2週間以内に連れ戻せなければ、魔界に貴様らの居場所はないと心得よ!!」

側近「は、はいぃ!!」

バタバタバタバタ……

魔王「フゥ……フゥ……」

道化「まんまとやられちゃいましたね」

魔王「道化か…、今は貴様の戯れ言に付き合う気はない」

道化「そうでしょうね、ドラゴンロード♪」

魔王「貴様も行け」

道化「は〜い、目の腫れが治ったらね♪」

魔王「ハァ…ハァ…」

魔王「ふぅ…、耐え凌げぬものは甘んじて受けよう」

魔王「精々、幕間を楽しめ、まもなく余も向かう」
 
157 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:37:53.62 ID:l4n25ukA0

ドラゴン「くっくっくっ…はぁ〜はっはっはぁ〜! 上手くいったな!」

奴隷「上手くいったじゃねえよ!説明しろ!」

ドラゴン「はじめに隙を狙うしかないと言ったではないか」

奴隷「計画あるなら言っとけって意味だよ!」

ドラゴン「わるいとは思ったが、腹芸も出来ぬ勇者に話してバレでもしたら終わりなんでな」

ドラゴン「それに、おかげでお父さんと呼んでもらえたしな」

奴隷「な、ど、どっか行くあてはあるのか?」

ドラゴン「くっくっ、天井の裂け目を抜けて このまま地上に出る」

奴隷「地上に?」

ドラゴン「なに心配するな、土地勘なら魔界よりある」

奴隷「そうだろうけどさ…」チラッ

ドラゴン「残してきた者達なら手を打ってあるから心配しなくてよいぞ」

奴隷「なっ! あんな奴らの心配なんかしてねえよ、ただ俺はいきなり拐われた姫のことを…」

姫「ぷっはぁ〜〜〜♪」

奴隷「あ、うん、そんな気はした」

姫「あっはっはっはっはっ♪」

姫「うっふっふっふっ、さっきのお父様の顔……」

ドラゴン「はぁはっはっはぁ〜! 傑作でしたな!」

姫「ぷっはぁ〜〜〜♪」

奴隷「……ま、いっか」

ドラゴン「地上に出るぞ!」バサッ

 
158 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/06/17(日) 22:43:18.96 ID:l4n25ukA0

バサッ

姫「うわぁぁ〜〜♪ これが、地上」

ドラゴン「夜か、好都合だ。暗いうちに出来るだけ離れる」

姫「きれいな天井…」

奴隷「姫、星です。俺にとっては数年ぶりの星空だ…」

姫「これが地上なんですね」

奴隷「地上に戻ってきたんだ!」

ドラゴン「さあ気を引き締めろ、冒険のはじまりだ」

ドラゴン「世界は広いぞ」

 
159 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/06/17(日) 22:44:52.54 ID:l4n25ukA0

今日はここまでです

遅くなってごめんなさい。次回から地上編になります
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 01:15:05.30 ID:klJfFi0DO

待ってた
161 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/09(月) 00:07:12.39 ID:A/XBkrGA0

【逃走7日目 山間の宿場町】

宿屋亭主「おっ、そこのお兄さん! こっから山越えかい? 止めときな、次の宿につく前に日が暮れちまう」

旅人A「じゃあ泊まるか?」

旅人B「少しでも進んでおきたいのですが…」

道具屋「おう、騙されんなよ。今から歩きゃ夕暮れには山小屋につくからそこに泊まんな」

宿屋亭主「ばっ!あんな小屋なんぞ人が寝れるか!!」

旅人A「ありがとう、山小屋に行ってみるよ」

道具屋「礼はいいからなんか買ってくんな」

旅人B「ふふ、それでは薬草ください」

道具屋「まいど♪」

宿屋亭主「道具屋ぁ!!!」

道具屋「おぅ、文句なんのか?商売ってな非情なんだよ」

宿屋亭主「白黒つけたるわ!!」グワッ

道具屋「来いや!」チャキッ

「ま〜た、はじまった」
「あいつらも飽きないな」
「商いだけにね」
「すっかり宿場町の名物になっちまったな」


ズッズッズッズッズッ……

宿屋亭主「うぉ?なんか聞こえねえか?」
道具屋「んな子供騙しにひっかかるかよ!」

「キュイイィィィーーー!!!」

ドゴッッ!!

「うぉ、地震だ!」「でかいぞ!!」

ガタガタガタガタ

宿屋亭主 道具屋「きゃあぁぁ〜〜」ダキッ
 
162 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/09(月) 00:09:00.70 ID:A/XBkrGA0

【逃走8日目 山道の入り口】

役人「地震により地面が裂けて町ひとつ丸ごと呑み込まれたと報告があってな、悪いが安全が確認出来るまでここから先は通告止めだ」

 
163 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/07/09(月) 00:17:59.92 ID:A/XBkrGA0

今日はこれだけです

まあ、今まで後手後手だった魔王サイドもようやく攻勢に転じましたよってことで
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:56:26.47 ID:R+QG0EQDO
165 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/12(木) 15:16:21.34 ID:b9OypXhA0

女将さん「やだねぇ、ここら辺もなんだか物騒になってきちまった」

行商人「さて、向こうに行けないと困るんだがな」

役人「そうは言っても山ひとつ崩落してるんだ、道なんか残ってないぞ」

「おと〜さん、疲れたよ〜」
「宿場町に親族が…」
「さかな〜♪ さかなはいらんかぇ〜」

役人「ええい、うるさい!うるさい!我々だって混乱してるんだ!」

役人B「おい、行くぞ」

役人「とりあえず見てくるから待ってろ」

ぞろぞろ…

女将さん「はあ…、なんだか頼りないねぇ」

行商人「はは、まったくだ」

女将さん「ねぇ、あんた各地を回ってたらなんか噂でも聞かないかい?」

行商人「そうだな…、とりあえずよく聞くのはそこらじゅうで地震がおきてるって話だ」
 
166 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/12(木) 15:18:17.85 ID:b9OypXhA0

行商人「それから人探しの黒騎士の一団、これがひょっとしたら魔族じゃないかって噂だ」

女将さん「魔族!!?」

行商人「夜になると村を襲い、家に押し入ると腕に印がないか見てまわるらしい」

行商人「こういう…」ガリガリ

行商人「魔王の刻印だな」

女将さん「は〜やだやだ、すっかり物騒な世の中になっちまったじゃないか」

行商人「そうだな、おかげで国中検問だらけで商売あがったりだ」

女将さん「こんな時に勇者さまは何をしてるんだろうねぇ〜」

行商人「勇者か…」

行商人「最近めっきり聞くことが増えた、もっともギルドの人探し依頼としてだが」

女将さん「そういえば数年前に聖剣といっしょに勇者さまが消えちまったって噂話を耳にしたよ」

行商人「もしかしたら黒騎士達も勇者を探してるんかもな」

女将さん「あっはっはっ、まっさか〜〜」

がさがさ…
 
167 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/07/12(木) 15:20:23.17 ID:b9OypXhA0

がさがさ……

がさっ

旅人A「ふぅ、死ぬかと思った」

旅人B「大丈夫そう?」

旅人A「ん……、大丈夫」

旅人B「よかった〜、後ろから道が崩れて来た時はもうダメかと思いました」

旅人A「ほんとそれな!」

旅人A「まあ、この騒ぎのおかげで検問もなく潜り込めたんで結果オーライだぞ!」

旅人B「」ぐ〜

「さかな〜♪ここらじゃ絶対食べられない、海の幸だよ〜♪」

旅人B「」じ〜

旅人A「駄目です」

旅人B「え〜」

旅人A「だって山奥で海の幸だぞ、絶対高いって」

「やすいよ〜」

旅人B「ですって♪」

旅人A「はーー……、今日だけだからな」

旅人B「やったぁ〜♪ お魚屋さん、2匹くださいな♪」


奴隷「へぃ、まいど」
 
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 02:01:21.76 ID:D+810F0DO
169 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 18:33:22.10 ID:9j4PztHA0

奴隷「それじゃあ魚の燻製2匹で銀貨2枚ね」

旅人A「たっか!!? 無理だな行こう」

旅人B「ちょっと待って、まけてもらえば買えないもないでしょう?」

奴隷「勝手に決められてもね、こっちも商売なんで」

奴隷「魚を燻すのから、ここまでの輸送もタダってわけにはいかんしな」

旅人A「はっはっはっ、売れるといいな」ノシ

旅人B「待ってください!」グイ!

旅人B「貯えなら家を出るときに少し持ってきたはずです」ヒソヒソ

旅人A「大事な逃走資金、贅沢するため持ってきたわけじゃないだろ」ヒソヒソ

旅人B「でも親族のお住まいまでもうすぐなんでしょう?」ヒソヒソ

旅人A「親族といっても遠縁で仕事もろくにないかもしれない、何より最近物騒だし出来る限りは節約しよう」ヒソヒソ

奴隷「ふふ」

旅人A「何だよ?」

奴隷「いや、ならこうしよう」

奴隷「ここに売れ残りの燻製が5匹ある。 こいつら合わせて銀貨2枚でどうよ?」

旅人B「それはお手ごろ価格ではないでしょうか♪」

旅人A「えらく気前がいいな?」

奴隷「なに、お2人さんを見てたら俺も帰りたくなってね」

奴隷「さっさと売って店終いしたいのさ」

旅人B「せっかくの申し出です買いましょうよ?」

旅人A「ん…しゃあないか」チャリ

奴隷「まいど」

旅人B「わ〜い♪ 見たことないお魚ですね、何か美味しい食べ方ってご存知ですか?」

奴隷「ああ、俺には魚の食べ方とかそんなん全然わからんわ」

奴隷「なんったって海のない魔界に長く居すぎて魚の味すら忘れてたからな」ハッハッハッハッ
 
170 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:07:26.44 ID:9j4PztHA0

旅人A「魔界!?」
旅人B「魔界!?」

奴隷「ハッハッハッ……口が滑ったな」

ざわっ… ざわざわ…

女将さん「やだよ、魔界だなんて薄気味悪いこと言って」

奴隷「じょ、冗談だから」

旅人A「冗談でも言っていいのと悪のがあるがな」

旅人B「まあまあ、きっとお家に帰るのが楽しみすぎて口が滑ったんですよ」

旅人A「ああ、そうだ燻製運ぶために馬車か何かで来てるよな? もし方向同じなら乗っけてってくれよ」

奴隷「ああ、ダメダメ、ドラゴンには…

旅人A「ドラゴン?」

ざわざわ…… ざわざわ……

「ドラゴン?」
「おい、誰か役人呼んでこい」

奴隷「人間だから、ドラゴンという名前の人間」

奴隷「別に大量の燻製もドラゴンに運んでもらってないし」

奴隷「そもそも口から火を吐かなければ、鼻から煙りも出ない」

奴隷「その燻製もドラゴンの鼻煙で燻してない」

旅人B「?!」

奴隷「ああ、変なこと言ったな、味は問題ないから」

奴隷「それじゃあ、さようなら」ダッ
 
171 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:20:22.06 ID:9j4PztHA0

奴隷「最後の最後でヘマして目立ってしまったな、買っておいた食料拾ってさっさと消えるか」ゴソッ

奴隷「…しっかし、米俵と味噌桶で買いだめする必要あるのかね?」

役人「不審な言動をしたのはおまえか!」

奴隷「違うよ?」

「嘘つき!魔界がどうとか聞いたんだからな!」

役人「嘘をつくとはいよいよ怪しい! ちょっと番所に来てもらおうか?」

奴隷(面倒だな、いかにも融通がきかなそうなタイプだ)

役人B「落ちつきなよ、そんな騒いで皆が不安になるよ」

奴隷(お?)

役人B「別に大事にしようってこともないんだ、ただ腕に魔王の刻印がないか見せてもらえればそれでいいんだ」

奴隷(こっちは疑ってないが職務に忠実で柔軟性があるタイプか、好印象)

役人A「そんなんだから相手に舐められるんだよ!」

役人B「まあいいじゃないか、街中ピリピリしてるからって私達までピリピリする必要はないだろう?」

奴隷(でもまさかこいつら、俺の腕に魔王の刻印があるとは思ってないんだろうな〜)
 
172 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:29:33.17 ID:9j4PztHA0

奴隷(さすがに見せたら大騒ぎになるよな…)

役人B「さ、ついて来てくれるね?」

奴隷(めんどうだな、逃げるか!)ダッ

役人A「逃げるたぞ!」

役人C「逃がすか!!」バッ!

奴隷「なぁ!?」

役人A「あらかじめ1人隠れてたのだ」

役人C「そう簡単には逃げれると思うな!」

奴隷「いやいや、余裕さ」スルッ

ダッ

役人A「なにしてんだ!」

役人C「す、すまん…」

役人B「さすがに怪しい、追おう」

奴隷「ハッハッ、去らばだ!」シュタッタッタッタッ


強面「ちょっと待ちな!!」


奴隷「今度は何?!」

チンピラ「おうおう、ここで商いするにゃあ俺っち達に挨拶するのが仕来たりなんだ」

強面「とりあえず、その手に持った荷物渡してもらうか」

奴隷「渡すかボッケェ!!!」ドゴッ!

強面「げほっ!」

チンピラ「アニキーー!!」

役人A「いたぞ!あそこだ!」

奴隷「ちっ」ダッ

チンピラ「ア、アニキ」

強面「なにしてる?こうなったら人数増やして役人よりも先に取っ捕まえるぞ!」

チンピラ「へ、へい!」
 
173 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 19:43:16.77 ID:9j4PztHA0

チンピラB「こっちにいやした!」

チンピラC「そっちに逃げたようでさ!」

チンピラD「あっちに行きやした」

チンピラE「あっち?」
チンピラF「どっち?」
チンピラG「こっち」
チンピラH「こっちってどっち?」

チンピラ「「「あそこだーー!!」」」

ドッドッドッドッ

奴隷「なんか増えた〜!?」シュタタタタ

役人A「くっ、なんなんだこれは?」

役人B「いや〜それにしてもあんなに荷物抱えてるとは思えない速さだね」

奴隷「あったり前だ! つい最近まで空腹が当たり前の底辺奴隷」

奴隷「大事な食糧死んでも放すか!!」


旅人B「放してください!!」
 
174 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:13:09.18 ID:9j4PztHA0

旅人B「放してください!」

追っ手A「さあ、捕まえましたよお嬢様」

追っ手B「お屋敷に戻りましょう」

旅人B「いやです!私は旅人さんと…」

旅人A「くっ、お前ら嬢さんに手荒なことをするな!」

追っ手C「おいおい、まずは自分の心配でもしな」

ドゴッ!

旅人A「ぐふっ」

旅人B「旅人さん!!」

追っ手D「旅人さん、だとよ?」

追っ手B「うらやましいね」

追っ手C「もうちょっと痛めつけたら俺らにも優しく話しかけてくれんじゃねえか、な!」

旅人B「やめてーー!!!」

ガッコーーーン!!!

追っ手C「ガッ!痛った……味噌?」

奴隷「1人目」

シュン

シュパーン!!

追っ手C「」ドシャ

追っ手B「えっ?えっ?」

奴隷「2人目」

ベシフッ!

ドッシューン!

追っ手B「」

追っ手A「んなろ!舐めんな!」チャキッ

ドスッ!

追っ手A「へっへっへっ…」

奴隷「3人目」

奴隷「お前は、お前が刺してダメにした米俵の分強めで殴る」

追っ手A「ま、待った!」

奴隷「問答無用」

ドゴッグシャ

旅人B「旅人さん!」

旅人A「嬢さん」

奴隷「ふたりとも下がってろ」

追っ手D「なっ、なんだ!? こいつら助けて何の得があるってんだ」

奴隷「あ? 俺にとっては同類のよしみ以上、商売人と客未満の間柄さ」

奴隷「つまり、こいつはただのアフターサービスだ!!」
 
175 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:28:16.47 ID:9j4PztHA0

旅人A「助けてくれるのか?」

奴隷「アフターサービスだって言ったろ?」

旅人B「あふたーさーびす?」

奴隷「知ってるか? 恋に恋する少年少女の背中を押すのは大人の義務らしいぞ」

旅人A「あんたのが年下じゃねえか」

奴隷「くっくっ、突然こんなん言われても胡散臭いよな?」

奴隷「でもちゃんと助けてもらったし、俺も助けてやる」

追っ手D「ふざけたこと言ってんな!!」

奴隷「諦めて寝てる連中つれて帰りな、お前らが束になっても俺には勝てん」

追っ手D「ぐぬぬ…」

役人B「おやおや、また騒ぎを起こしたのかい?」

追っ手D「いいとこに来た! あそこにいるのはある大富豪の一人娘だが話が上手い旅人にそそのかされて家出しちまった」

旅人B「なっ! そもそもは脂ぎった中年を私の婚約者に決めたお父様がいけないのです!!」

追っ手D「わがまま言っちゃいけやせんですぜ、それにあの人はお父様の大切な商売相手」

追っ手D「今までの贅沢だって脂ぎった中年親父のおかげで成り立ってやしたんで」

旅人B「だから私はこれから好きな人と自分の力で生きて行くと決心したのです」

旅人A「嬢さん…」
 
176 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:35:33.25 ID:9j4PztHA0

役人B「なにやら複雑な事情のようだね〜」

役人A「難しい問題に加担すると後が面倒だぞ」

追っ手D「お嬢さんのご両親はここいらにも顔がきく大富豪、恩を売っといて損はないぜ?」

チンピラA「だそうですよ?」

強面「そんなら買わせてもらうか」

チンピラB「おらおら」

チンピラC「いくらで売ってんだ?」

役人A「不味いことになって来たんじゃないか?」

役人B「まっ、逃がしたら責任問題になりそうだし捕まえようか?」

役人A「またそんな軽く」

追っ手D「形勢逆転だな」

旅人A「くそ!」

旅人B「どうやらここまでのようですね」

旅人A「あきらめるのか? これからは自分で決めるって誓ったはずだろ?」

旅人B「ままなりませんね」

追っ手D「そうでさ、お嬢様さえあきらめたら丸く収まるんでさ」

旅人B「ただし、条件があります! 魚屋さんは見逃してください」

奴隷「俺か?」

旅人B「せっかく助けに来てくれたのにこのような事になり申し訳ありません」

旅人B「それでも、どうか別の方々の背中を押してあけてください」

奴隷「・・・・」
 
177 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 20:53:59.68 ID:9j4PztHA0

奴隷「くっくっくっ…」

奴隷「はっはっはっはぁ〜はっはっはぁ〜!」

旅人B「魚屋さん?」

旅人A「おい、どうした?」

奴隷「まったく、安く見られたものだ…」

奴隷「これを見ろ!」ビリッ

 
178 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 21:00:43.83 ID:9j4PztHA0

行商人「その刻印は!?」

女将さん「ちょっとやめてくれよ、いきなり大きな声だして」

行商人「間違いねえ、あれこそ魔王の刻印」

行商人「黒騎士騒ぎで持ちきりの王都で散々見たから間違いねえ!」

奴隷「くっくっくっ…、どうやら説明する必要はなさそうだな」

奴隷「聞け! 愚かなる地上の人間どもよ!!」

奴隷「我こそは魔王様直属の中から選び抜かれて、なんやかんやして地上侵略のため潜伏していた魔王軍が尖兵」

奴隷「魔王様による地上侵略はすでに開始されており、度重なる地震もやがて押し寄せる濁流の予兆に他ならない」

奴隷「だが、そのことに気づかず のほほんとバカ面下げた貴様達が哀れだから俺様が親切にも次の地震の発生地点を教えてやろう」

旅人B「突然どうしたんでしょう?」

旅人A「シッ」

奴隷「そう! 気づいた者もいるだろうが次の震源はここだ!!」

奴隷「さぁ、残された時間は10秒! 愚鈍な衆目よせいぜい逃げ惑うんだな!」

奴隷「10」
 
179 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 21:18:17.94 ID:9j4PztHA0

奴隷「9」

追っ手D「……まさかとは思うが信じた奴はいねえよな?」

役人A「いや、あまりに突然で混乱してる…」

役人B「はは、どんどん聞くこと増えてくね〜」

奴隷「8…」

チンピラ「アニキ!」

強面「へ、ビビんなよどうせハッタリだ」

奴隷「7…」

旅人A「助けてくれて礼を言うよ、そのカウントが終わったら俺が足止めするからお嬢さん逃がしてくれないか?」

奴隷「6…、追っ手の数をこれ以上増やすのはごめんだな」

奴隷「そうだろ?ドラゴン!!」

ドラゴン『言うようになったではないか』

バサッ!

バサッバサッバサッバサッ

ドスン!

ドラゴン「グガアァァァァッッ!!!」

役人「」

追っ手「」

強面「」

チンピラ「」



奴隷「3!!」
 
180 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/08/09(木) 21:30:08.49 ID:9j4PztHA0

強面「きゃあぁぁぁ!!」ダッ

チンピラ「あ、アニキー待ってくだせえ〜」

役人A「あわわわわ」

役人B「みんな逃げろ〜」

「助けて〜」
「急げ〜」
「地震が来るぞ〜」

追っ手A「んん、何事?」

追っ手D「ぼさっとすんな!」

奴隷「2…」

旅人A「俺達もこの隙に」

旅人B「あの、でも…」

奴隷「1…」シッシッ

旅人B「あのあの、ありがとうございました! 買ったお魚はよく味わって食べますね」

旅人A「行くぞ」


奴隷「0」


シーーン…


ドラゴン「くっくっくっ、はじめての人助けの感想は?」

奴隷「悪くない」
 
181 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/08/09(木) 21:30:54.18 ID:9j4PztHA0
今日はここまでです
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/10(金) 00:36:43.70 ID:gp87dWoDO
乙乙
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/18(土) 18:52:20.31 ID:OB72JOSR0
追いついた、面白い
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/18(土) 21:07:33.71 ID:1C2R9HpoO
おつおつ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 17:25:36.50 ID:iNfHX798o
面白い
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/15(月) 23:43:07.27 ID:5yljyGOWo
待ってるよ
187 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:32:29.17 ID:sPTcozIA0
書き込みテスト

なんか復活してから変なんだがガラケーだから?
188 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:34:53.75 ID:sPTcozIA0

ドラゴン「くはっ、悪くないか!!」

奴隷「うっさい! あんなん勢いだよ! い・き・お・い!!」

ドラゴン「照れんでよいではないか、あの2人に自分たちを重ね合わせたのだろう?」

奴隷「なっ…」

ドラゴン「帰るぞ、姫へも土産話に聞かせてやろう」

バッサ!

奴隷「そこまで分かってんなら止めてくれ!!」

バサバサバサッ!!

ドラゴン「はぁ〜はっはっはぁ〜、悪くない悪くない」

奴隷「調子悪いのか? 低く飛びすぎじゃないか?」

ドラゴン「何を言う…」

ドラゴン「助けた2人がちゃんと逃げられたか気になって仕方がないようだからこうして危険をかえりみず…

奴隷「はいはい! 見つけた! 見つけたからさっさと帰るぞ!!」

ドラゴン「了解、少し散歩を楽しんでからな」

バッサ!

奴隷「お、おい」

ドラゴン「飛ばすぞ! しっかり捕まってろ」
 
189 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:36:25.13 ID:sPTcozIA0

奴隷「お、おい!速い!」

ドラゴン「はぁ〜はっはっはぁ〜、やはり良い! 地上の空は格別よ」

バッサ!バッサバッサ!

奴隷「速い、速い!」

ドラゴン「限界を気にせず何処までも高く続く青空」

バサバサ!

奴隷「たっ、高……い、いきが…」

ドラゴン「無粋な天井で圧迫されることのない解放感」

グルン!グルン!グリーーン!

奴隷「落ちる!墜ちる!」

ドラゴン「太古の血がたぎる! 久しぶりに飛ばすか!!」

奴隷「まだ飛ばす気か?!」

ドラゴン「何を言う? これからに比べたら今までのは準備体操にすぎぬ」

バシューーン

奴隷「あが、あがががががが」

ドラゴン「感じるか? この全身を打ち付けておる衝撃!!」

ドラゴン「ただの空気も音速に近づけば最早凶器」

奴隷「限界、手、指、感覚ない…」プルプルプル

ドラゴン「だが、儂らは速度をさらに増し音速の壁を超える」

奴隷「も…やめ……」

ドラゴン「遠慮するな、生身で経験するのは人類史上2人目の貴重な体験だ♪」

バシュッ

 
190 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:49:25.21 ID:sPTcozIA0

ドラゴン「どうだどうだ? 音速の世界は?」

シュバァーーーン!!!

ドラゴン「黙ってないでなんかないのか?」

ビューーーーン……

ドラゴン「勇者?」




奴隷「」←落下中



ドラゴン「ユウシャーーー!!!!」
 
191 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:51:51.28 ID:sPTcozIA0

奴隷「死ぬかと思った」

ドラゴン「すまんすまん、はしゃぎすぎたな」

奴隷「今どこ飛んでんだ?」

ドラゴン「右手にさきほどの街が見えるの」

奴隷「なっ!? 周回して戻ってきてるってどういうことだよ?」

ドラゴン「最近目が霞んで…」

奴隷「ジジイか!」

ドラゴン「魔王の追っ手に見つかる前に早くこの場から離れるぞ」

奴隷「真っ直ぐ飛んでりゃそんな心配しないですんだんだよ!!」

ドラゴン「平衡感覚も狂ってるかもしれんな?」

奴隷「そんな状態で人を乗せるな!」

ドラゴン「まあまあ、近ごろ話題になっておる地震の大穴もよく見えるぞ」

奴隷「もしかして穴見せたかったのか?」

ドラゴン「くっくっ、ただの老化現象よ」

奴隷「・・・・」

奴隷「なぁ、
ドラゴン「却下」
 
192 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:53:47.95 ID:sPTcozIA0

奴隷「まだ何も言ってないだろ?」

ドラゴン「『なぁ、おまえだったら地震の予測が出来るんじゃないか?』『もし出来るんならあらかじめ知らせて避難させられないかな?』」

奴隷「ぐっ、当たってる…」

ドラゴン「返事は却下」

奴隷「なぜ?」

ドラゴン「その1 地震予測は不可能」

ドラゴン「この地震は下にいる妖魔が暴れて発生しておる」

ドラゴン「妖魔のその日の気分なぞ儂には預かり知らぬ」

ドラゴン「その2 罠の可能性」

ドラゴン「知っての通り、儂らは現在多数の追っ手より追跡されておる」

ドラゴン「見つけられぬ追っ手が業を煮やし儂らを誘き寄せ餌として喧伝することもあり得る」

ドラゴン「その場合、餌に食い付けば有効と判断され地震の頻度が増えるかもしれぬ」

奴隷「ぐぬぬ…」

ドラゴン「その3」

奴隷「まだ有るのか!!」

ドラゴン「儂にその気がない」

奴隷「しょうもないけど そういうことか…」
 
193 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/16(火) 23:58:05.42 ID:sPTcozIA0

奴隷「う〜ん、そうか〜〜」ゴロン

ドラゴン「人を助けたいという心意気は買うがな」

奴隷「ひどい穴だな…」

ドラゴン「ああ、あそこで住んでいた住人にとっては一足早い魔王の進攻に感じただろうな」

奴隷「こんな穴がそこらじゅうにあるのか?」

ドラゴン「いやいや、ここまで大きいのは10もいかぬ」

ドラゴン「最初は気づかぬ程度の振動」

ドラゴン「それから徐々に山が崩れるまでになり、魔界まで貫通するような穴は最近になってようやくといった具合か」

奴隷「規模が大きくなってる?」

ドラゴン「成長するからな」

ドラゴン「今ならちゃん&tけは失礼にあたる」

奴隷「なぁドラゴン…」

ドラゴン「ん〜? トイレか?」

奴隷「俺に話してない事って、後どれぐらいある?」

ドラゴン「山のようにあるが全部話したらきっと勇者も怖じ気づくから言わん」
 
194 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:02:53.49 ID:3wrOhc9A0

奴隷「う〜ん、そうか。そうかもな…」

ドラゴン「だが機嫌が良いから質問には答えてやろう」

奴隷「ふむ」

奴隷(妖魔がおこし地震とそれによって空いた大穴…)

奴隷(目的はおそらく魔王の侵攻…。ドラゴンがよく使ってる言い方なら濁流…)

奴隷(ん、濁流? 濁流って何だ?)

ドラゴン「良い傾向だな」

奴隷「どこが? そろそろ始まるんだろ?」

奴隷「隠したってそれぐらい分かるんだからな」

ドラゴン「儂が言っておるのは勇者の事よ」

奴隷「俺の? 俺がなんだよ?」

ドラゴン「だいぶ裾野が広がったのではないか?」

奴隷「そりゃ空飛んでるしな」

ドラゴン「儂が思うに大人と子供の違いは認識している世界の広さの違いだ」

ドラゴン「たった4か月にもなるかならぬかの月日だが、部屋の隅で丸まっていた頃とは ずいぶんと変わったのではないか?」

奴隷「あの頃は…」

奴隷(あの頃は多分何も考えてなかった。 自分の境遇だけが全てで辛い時間が はやくすぎるようにと思考を止めて…)

ドラゴン「まあ、儂のおかげだが」

奴隷(だけど、それはシャクだな)

奴隷「あの頃は世界平和について考えていたよ」

ドラゴン「くはっ
195 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:07:02.09 ID:3wrOhc9A0

奴隷「う〜ん、そうか。そうかもな…」

ドラゴン「だが機嫌が良いから質問には答えてやろう」

奴隷「」フム

奴隷(妖魔がおこし地震とそれによって空いた大穴…)

奴隷(目的はおそらく魔王の侵攻…。ドラゴンがよく使ってる言い方なら濁流…)

奴隷(ん、濁流? 濁流って何だ?)

ドラゴン「良い傾向だな」

奴隷「どこが? そろそろ始まるんだろ?」

奴隷「隠したってそれぐらい分かるんだからな」

ドラゴン「儂が言っておるのは勇者の事よ」

奴隷「俺の?なんの事だよ?」

ドラゴン「だいぶ裾野が広がったのではないか?」

奴隷「そりゃ空飛んでるしな」

ドラゴン「儂が思うに大人と子供の違いは認識している世界の広さの違いだ」

ドラゴン「たった4か月にもなるかならぬかの月日だが、部屋の隅で丸まっていた頃とは ずいぶんと変わったのではないか?」

奴隷「あの頃は…」

奴隷(あの頃は多分何も考えてなかった。 自分の境遇だけが全てで辛い時間が はやくすぎるようにと思考を止めて…)

ドラゴン「まあ、儂のおかげだが」

奴隷(だけど、それはシャクだな)

奴隷「あの頃は世界平和について考えていたよ」

ドラゴン「くはっ!そうか、なら今と変わらんな」
 
196 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:10:58.65 ID:3wrOhc9A0

ドラゴン「だがあまり心配するな、儂らが姫を押さえておる限り魔王も無茶は出来ぬ」

奴隷「そうかな?」

ドラゴン「そうとも。 そして儂らがこのまま逃走を続けてゆけば、育ち過ぎた妖魔を必ず魔王がもて余すようになる」

奴隷「そう都合よくいくかね?」

ドラゴン「行くさ、人間がまだ洞窟で暮らし獣を狩っていた時代から見守り続けた儂の、人間観察眼を信用しろ」

奴隷「お、おう…また話が壮大になったな…」

ドラゴン「かつて、人びとはより多くの餌を求め安住の地を後にし、直線距離にして何万キロもの広大な世界を細かい枝分かれを繰り返し群れを形成し、拡散した無数の群れが村を作り、国を成した」

ドラゴン「そして儂は一部の群れで神を騙り、貢ぎ物で働くこともせず人間観察に明け暮れた」

奴隷「ちっさ! スケールでかいくせにやってること ちっさ!」

ドラゴン「ところで勇者よ」

ドラゴン「魔王が何故こんなにも地上侵略に固執するか解るか?」

奴隷「そりゃあれだよ・・・・支配欲とか?」

ドラゴン「地上侵略は魔界に生きる民の望みなのだ」

ドラゴン「だからこそ魔王を討っても止むことはない」
 
197 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:15:20.09 ID:3wrOhc9A0

ドラゴン「まあ、分かりやすい言葉を使うなら」

「自分たちは飢えと病で苦しいのに地上の人間ばかりが笑ってるのはシャクだ」

ドラゴン「というように魔界の民は常に地上の人間を羨み」

ドラゴン「地上の人間もまた、絶え間ない侵略に悪感情を持つようになる」

ドラゴン「そして女神によって分割されたという過去が容易く善悪の概念を産み、わだかまりを解くという努力を放棄させてしまった」

奴隷「ちょっと待て! いったい何の話しだ?!」

ドラゴン「地上は美しい。 飢えと病で荒れ果てた魔界とは大違いにな」

ドラゴン「そして魔界の苛酷な環境で生きるために虐殺行為を知らず知らず黙認してきたのは間違いではなかったか……」

ドラゴン「と、いうことに地上に来て気付いた」

奴隷「ドラゴン…」

ドラゴン「わだかまりを解く道」

ドラゴン「困難なあまり忘れ、儂では不可能だった選択だが…」

ドラゴン「地上で産まれ、魔界で育った勇者ならば道が開けるかもしれぬな」
 
198 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/10/17(水) 00:18:53.71 ID:3wrOhc9A0

ドラゴン「だがまだ遠い先の話だ。 頭の隅にでも覚えておけ」

奴隷「その話、姫は?」

ドラゴン「知っているかと? まさか、男が腹を割る時は女に見せるものではないぞ」

ドラゴン「不粋だしカッコ悪いからな」

バサバサ…

ドラゴン「着いたぞ、今はとにかく逃げることが先決だからな」

バサ…

ドスン!

タッタッタッ...

姫「お帰りなさい、お食事のしたくが、出来てますよ♪」

奴隷「ぁ…」

ドラゴン「もうちょっと普通に出来ぬか」ベチッ
 
199 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/10/17(水) 00:22:44.18 ID:3wrOhc9A0
今日はここまでです

>>194は投下失敗しました。やっぱり変みたいです

もうちょっと今後のための布石設置に付き合ってください
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 01:30:10.91 ID:NVS2Yo/TO
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/20(土) 22:03:39.65 ID:i9GMUmvE0
おつおつ
202 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:49:00.37 ID:dXnUiaqA0
更新します
203 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:51:00.90 ID:dXnUiaqA0

姫「天気がいいし外で食べませんか?」

ドラゴン「良いですな、儂も小屋の中に首をつっこまなくてすむ」

奴隷「俺が運ぶよ」

姫「今日はお2人が留守の間に小人さんから野菜をもらったので鍋にしました」

奴隷「」カチャカチャ

ドラゴン「小人? ふむ、この近辺ならホビットの集落があったかな?」

姫「分かりませんが皆さん立派なお髭をはやされた…」

ドラゴン「それならばドワーフですな。 彼等には儂から頼み事をしていたので顔を見せに来たんでしょう」

奴隷「例の神と偽って貢ぎ物もらってた奴らか?」

ドラゴン「ぐっ、いや…。それはずっと昔の話だ」

姫「え?え? 神と偽る?」

奴隷「なんか昔そんなことしてたらしいですよ」

ドラゴン「いやいや、まだ人が洞窟で暮らすような大昔のことですぞ」

姫「は〜それでは わたしも貢ぎ物を…と言いたいところですが」

ドラゴン「干し肉の状態を確認したいので食事はけっこう」

姫「ドワーフさん達が麦酒を樽ごと置いていったのですが?」

ドラゴン「素晴らしい、いただきましょう」

奴隷「明日は干し肉を売りに行けばいいのか?」

ドラゴン「いや、そう思っていたが儂らの保存食にしよう」

ドラゴン「勇者が売り歩く度に騒ぎを起こしてはいずれ追手に見つかってしまうのでな」

姫「あ〜、はじめてのお使いは失敗でしたか」

ドラゴン「なんだか最近、姫の物言いが辛辣だとは思わぬか?」ボソッ

奴隷「遠慮がなくなって良いことじゃないか?」ボソッ

姫「何か?」

ドラゴン「いやいや、おまえも一杯どうだと」

奴隷「え〜」

姫「では、一杯だけ♪」

奴隷 ドラゴン「「え〜〜」」
 
204 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:54:34.42 ID:dXnUiaqA0

姫「えへへ、どれ〜さ〜ん♪」スリスリ

奴隷「ま、こうなると思った」

ドラゴン「えへへ、ゆ〜しゃ〜♪」スリスリ

奴隷「こっちは予想外」

姫「ごはん美味しい? 奴隷さんを想っていっぱい作ったの」

奴隷「え、ええ…美味しいですよ?」

姫「ほんと?」

奴隷「ええ、こんなに美味しい食事ははじめてです」

ドラゴン「む〜〜、勇者これ食べて!」ズボッ

奴隷「ぐふっ!」

ドラゴン「干し肉美味しい?勇者のためにいっぱい作ったの」ズボズボ

奴隷「ん〜〜ん〜〜」

ドラゴン「えへへ、勇者かわい〜♪」

ドラゴン「ほんと…」

ドラゴン「いつもはここで離れろと騒ぐくせに、姫の抱き心地が惜しくて玩具にされるがままの勇者かわい〜」

奴隷「離れろーー!!」ゲシッ

 
205 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/28(水) 23:57:50.40 ID:dXnUiaqA0

奴隷「おまえさては酔ってないな!」

ドラゴン「当然、この程度の酒など儂にとっては白湯みたいなものよ」

奴隷「離れろ大型爬虫類!」ゲシッゲシッ

姫「SAー!YUー!」

奴隷 ドラゴン「「!!??」」

奴隷(え?え?いまの何?)

ドラゴン(白湯? )

姫「えへへ」グビグビグビ

ドラゴン(む、いかん。いつの間にやら酒の量がすごいことになっておる)

姫「はじめて飲むけどおいしいですね♪」グビグビグビ

奴隷「あの…そろそろ止めないと…」

ドラゴン「お、おう…勇者が良いこと言いましたぞ」

奴隷「おい! おまえが飲ませたんだろ」

姫「ああーー!!」

奴隷「今度は何?」

姫「忘れてました! 小人さんからお届けものがあるのでした!!」ヨイショ!

奴隷「あ、俺がとりに行こうか?」

姫「えへへ、だいじょてすよ〜」

奴隷「言えてない」

姫「しんぱいししゅぎですよ〜♪」フラフラ

奴隷「あ〜足どりもあやしくなって…」

ドラゴン「でも酔った姿も可愛いと思った勇者であった」

奴隷「おまえもう喋るな」
 
206 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:01:09.84 ID:QRwq3FvA0

奴隷「…そんなこと思ってない」

ドラゴン「いいじゃん、いいじゃん。もっとぶっちゃけようではないか」ガシッ

奴隷「あ、こいつも酔ってる」

ドラゴン「いいか?昔のことわざに無くて7癖≠ニあってだな。 普通を自称する者も7つは性癖をこじらせてるそうだ」

奴隷「意味ちがってないか?」

ドラゴン「これでも心配しておるのだ、将来姫から…」

ドラゴン(裏声)「わたしのどこが好きですか?」

奴隷「姫のつもりならキモいだけだぞ」

ドラゴン「それに対し…」

ドラゴン(高音)「え?え?ぜ、全部?」

奴隷「おい、それ誰のマネだ?」

ドラゴン「それを聞いた姫は…」

ドラゴン(低音)「は〜…、それ、予想してた中で1番つまんない理由だから」

ドラゴン「などと失望されることに…」シクシク

奴隷「タチ悪い!こいつの酔い方タチ悪い!」
 
207 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:07:36.37 ID:QRwq3FvA0

ドラゴン「ふむ、腕を持ち上げた時に筋ができるであろう?」

奴隷「うん?」

ドラゴン「そこにできるウロコと筋肉との境目が昔から好きでな」

奴隷「う〜ん? で?」

ドラゴン「くっくっ、メスってオスに比べてウロコが滑らかであろう?」

奴隷「う〜ん?初耳」

ドラゴン「だがそこだけガサガサになっておるのが逆にそそるのだが…。 解るであろう?」

奴隷「う〜ん、わからない」

ドラゴン「わからぬか? まずオスが全身ガサガサだろ? で、メスはシットリ…でもそこだけガサガサ」

奴隷「うん。わからない」

ドラゴン「そうか、では幼い子竜が飛ぶ時に羽根が」

パタパタ…
パタパタ……
パタパタ………

バ ッ サ ッ !!

ドラゴン「この飛ぶまでのパタパタ感がたまらないのだが」

奴隷「知らねえよ! パタパタ感なんて初めて聞いたよ」

奴隷「おまえあれか? 自分の性癖を暴露してるつもりならもっと人類によってくれないと共感できねえよ」

ドラゴン「羽根のパタパタといってもあれだぞ?」

ドラゴン「つまりは飛行の拙さを照れて笑ったその笑顔が愛らしいと言うわけだ」

奴隷「ああ、それなら…」

ドラゴン「共通部位あげたら瞬殺とは、ちょっとチョロすぎぬか?」

奴隷「甘やかすんじゃなかった〜」
 
208 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:12:43.48 ID:QRwq3FvA0

ドラゴン「ん?ん? その照れ笑いはどこで見たのだ? いつの姫の笑顔だ?」

奴隷「もうなにも喋らない」

ドラゴン「まあ、焦らす気はない」ニヤニヤ

ドラゴン「姫が聞き耳をたてておるしな」

奴隷「なっ!」

姫「ち、ちがいますよ? 戻ったら楽しそうでしたから邪魔しちゃ悪いと…」

ドラゴン「くっくっ、それでは姫さま、ドワーフの土産は?」

姫「はい、これです」

奴隷「筒?」

ドラゴン「地図だ。 以前、機会があれば竜の巣を見せると約束していただろ?」

ガサッ

ドラゴン「情けない話だが地上に出るのも800年ぶりになると自分の棲みかもわからぬ」

ドラゴン「そこで800年前が爺さんの爺さん世代ぐらいの長命な亜人種ならまだ言い伝えとして伝わっておる者がいるのではと思ってな」

奴隷「仲良いのか?」

ドラゴン「仲は悪いが頻繁に遊びに行っておった」

ドラゴン「金色の巣にはドワーフの作る宝物は必須だからな」

奴隷「タチが悪いのは昔からか」

ドラゴン「人聞きが悪い。 今も昔も土産をもらっているだけだ」
 
209 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:16:12.13 ID:QRwq3FvA0

ドラゴン「儂の棲みかとした山脈は大陸を南北に遮ってな。 北方は交易路の中継地として世界中の貿易品が集まり。 南に広がる温暖な穀倉地が豊穣の恵みを与えてくれ。 それぞれ違う楽しさがあった」

ドラゴン「そして東に見栄るはドワーフ鉱山、西にはエルフの森! みっつの種族の境界、よっつの国を遊び相手とした賑やかで愉快な毎日であった…」

姫「面白そうですね♪」

奴隷「早速行こうぜ」

ドラゴン「あわてるな、地図は2枚ある」

ドラゴン「まずこちらの世界地図には印がある」

ドラゴン「そしてこっちが印の箇所の地図…」

ドラゴン「・・・・」

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「どうかしたか?」

ドラゴン「なにやら地図の余白に文字が書いてあるが…。 すまんが代わりに読んでくれぬか?」

奴隷「別にいいけど…」

奴隷「え〜っと、親愛なるドラゴン…」
 
210 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:19:44.19 ID:QRwq3FvA0

ドワーフ「親愛なるドラゴン」

ドワーフ「と言っても顔見知りでもなんでもないが…」

ドワーフ「とにかく、俺のひいひい祖父さんの遺言でドラゴンには親切にしてやれとあるから教えてやる」

ドワーフ「自分の巣の場所がわからないから俺たちの鉱山を目印にしたいらしいが、鉱山はひい祖父さんの代で閉山しちまった」

ドワーフ「原因は石が採れなくなったことと、交易を任せていた北の国が滅んだかららしい」

ドワーフ「そのころには南も駄目になっちまって、おまけにエルフは森が枯れるって移っちまった」

ドワーフ「まあ、そんなこんなで喧嘩相手がいなくなって閉めちまったらしい」

ドワーフ「もう彼処は誰も寄りつかない荒野だ」

ドワーフ「だから巣を探すときは一先ず北に残った遺跡を目指すといい。 暗い話題ばかりもつまらんから景気づけに麦酒を贈る」

ドワーフ「追伸。 ドラゴンがいなくなってから財宝目あてに巣を探す連中の話をよく聞くが、見つけたと聞いたことはないから荒らされる心配はしなくていいぞ」
 
211 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:24:44.01 ID:QRwq3FvA0

奴隷「だってさ…」

ドラゴン「・・・・」

姫「あ、あの…」

姫「なんでもないです…」

ドラゴン「くっくっ、余計な気遣いなどいらぬ。儂のような幾万を越える歳月を生きたら人の一生など一瞬。 よくあることと笑ってすませる」

奴隷「ドラゴン…」

姫「無理しまいでください。 わたしの知るドラゴンさんはそんな方ではありませんよ?」

ドラゴン「買いかぶり過ぎなのです。 それにあの地には悪い思い出も多い…」チラッ

奴隷「?」

ドラゴン「儂の巣となる山裾をわけた4つの国は仲が悪くてな。 争いが絶えなかった…」

ドラゴン「争いはいつも些細な火種から始まり、一度火がつけば消す者もおらず」

ドラゴン「儂もそれを止めることなぞ考えることなく、逆に黄金を略奪する好機としか思っておらぬ有り様…」

ドラゴン「人々を襲い、傷つけ、殺し、喰らい、恐れられ…」

ドラゴン「そんな時だ」

ドラゴン「儂の前に勇者を自称する男が現れたのは」
 
212 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:27:59.23 ID:QRwq3FvA0

【800年前 竜の巣】

自称勇者「くっくっくっ、おまえがこの近辺を荒らしているエルダードラゴンだな?」

ドラゴン「貴様が勇者だと?」
 
213 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/11/29(木) 00:31:38.53 ID:QRwq3FvA0

自称勇者「いかにも、俺こそ勇者だ!」

自称勇者「しかし俺が勇者と名乗る前に見抜くとは…。 やはりエルダードラゴンともなれば人を見る目も違うもんだ」

ドラゴン「いや、その…首から下げた木札に書いてあるではないか?」

自称勇者「ああ、気にするな。 これはこの地に来て最初に訪れた村の奴らがやったことだ」

ドラゴン「そ、そうか。 ところで何故縛られておる?」

自称勇者「それは二番目に訪れた村の連中に縛られたからに決まっているだろ?」

ドラゴン「う、うむ…まあそれは正直どうでもよい? よくはないが…その……」

ドラゴン「どうして全裸なのだ?」

自称勇者「はぁ〜はっはっはぁ〜! どうやらエルダードラゴンとやらも大したことはないな!」

自称勇者「知らなければ教えてやろう! 平和のためなら屋外露出魔になることも躊躇わない者」

自称勇者「それを勇者≠ニ呼ぶのだ!!」
 
214 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/11/29(木) 00:33:38.23 ID:QRwq3FvA0
今日はここまでです
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/29(木) 13:55:55.32 ID:nanBucOdO
ただの生け贄だろこれ
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/11/29(木) 15:39:05.20 ID:EdO2qjIQ0
勇者(意味深)
217 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:41:29.17 ID:OMFu6NOA0
更新します
218 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:44:09.42 ID:OMFu6NOA0

ドラゴン「儂が知ってる勇者と違う」

自称勇者「あんたは想像したとおりの邪悪なドラゴンって感じだ」ブチッ

ドラゴン「ほう、縄ぐらいいつでも切れたか。 それで? 勇者よ、弱き村人共の為に儂と戦うか?」

自称勇者「逆に聞くが、縄にしばって竜の生息地に放り投げるような村人の為に戦えると思うか?」

ドラゴン「ふふ、そうであろうな」

自称勇者「ところで、名誉の為に言っておくが俺だって最初から裸で旅をしていたわけじゃない」

自称勇者「白銀に輝く鎧、あらゆる物を斬り裂く魔法の剣、そして剣と対になる魔法の盾」

自称勇者「道行けば誰もが俺を勇者として歓迎してくれた」

ドラゴン「それからどうしたら身ぐるみ剥がされる?」

自称勇者「別に? ただ歓迎の宴でさんざん飲み食いした後で村人全員酔いつぶして村を出ただけさ」
 
219 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:53:05.49 ID:OMFu6NOA0

ドラゴン「それは…」

自称勇者「そう、連中だって最初は迷う」

自称勇者「『わ〜、きっと、勇者様は見送られるのが恥ずかしかったのね〜』『奥ゆかしい勇者様もカッコいいわ〜』とかなんとか」

自称勇者「自分たちに都合のいいことでっち上げて真実には見てみぬふりしちまう」

ドラゴン「そこまで思わんだろ」

自称勇者「だが、すぐにそんな甘い考えも消え去る」

ドラゴン「当ててやろう。 貴様は違う村でも無銭飲食を繰り返したからだ」

自称勇者「無銭飲食とは人聞きが悪い」

自称勇者「俺はここらに悪いドラゴンがいるか聞いただけだ、倒すとは一言も言ってない」

ドラゴン「ふはっ、そんな言い訳が通用せぬからここに捨てられたのだろ?」

自称勇者「まあな、6つ目の村で薬盛られて眠らされ、騙した村人達からタコ殴りにされて今に至る」

ドラゴン「はっはっ! 馬鹿だ、馬鹿がおるわ」

自称勇者「そんなこと言うなや、こうでもしないと あんたは笑って話もしてくれなかったんじゃないか?」

ドラゴン「!?」

自称勇者「無茶はしないことにしてるんだ。 勇者がやられちゃ格好がつかんからな」

ドラゴン「では何を考えているか教えてくれてもよかろう」

自称勇者「実は勇者になるのは簡単だ」

自称勇者「困ってる奴らを助けてやればいい」

自称勇者「だったら、俺達で勇者を仕立て上げたって構わないよな?」
 
220 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/25(火) 23:57:32.42 ID:OMFu6NOA0

自称勇者「だからさ、ちょっくら俺乗せて村襲ってくれないか?」

ドラゴン「!!?」

自称勇者「飲み食いした村は6つだがなるべく大事にしたいから倍は襲って欲しい」

ドラゴン「…村人が気の毒になってきた」

自称勇者「くっくっ、連中もいい加減知るべきだ。 他人に苦労を押し付けて手にはいるほど平和は安くないってな」

ドラゴン「村を襲ったらどうする?」

自称勇者「そのまま暴れて4国を巻き込みさらに混乱させる」

自称勇者「そして、俺達に いちばん最初に立ち向かってきた奴を勇者に仕立てる」

ドラゴン「そう上手くゆくか?」

自称勇者「昨日までなら泣き寝入りしてたかもしれん。 だが、偶然にも素晴らしい武具を奴らは手に入れちまった…」

自称勇者「白銀に輝く鎧、あらゆる物を斬り裂く魔法の剣、そして剣と対になる魔法の盾」

自称勇者「俺から剥いだ身ぐるみ着こんだお人好し、それが勇者さ」

ドラゴン「ふっふっ、今まで数多くの助力を乞われたことがあるが」

ドラゴン「しかし、ここまで心踊る救援要請ははじめてだ」

自称勇者「人助けだからな、善行は楽しい」

自称勇者「さあ、2人で仲良く世界征服といこう」
 
221 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:00:30.19 ID:dx503BWA0

自称勇者「協力してくれたなら、この巣にある全ての黄金つぎ込んでも買えないような宝を見せてやる」

ドラゴン「それは何だ?」

自称勇者「論より証拠。 実物見たら分かる」

ドラゴン「…まあよい。 ところで名はなんと言う?」

自称勇者「俺のか?」

ドラゴン「ああ、勇者をかつぎ上げるなら勇者≠ェ2人いては不味いのだろう?」

自称勇者「そうだな、そもそも勇者とは他称されて はじめて勇者たりえるのだ」

自称勇者「自称勇者の偽物は勇者にしか倒せず、勇者に敗れることで平和が訪れる存在≠ノ相応しい名で呼んでくれ」

ドラゴン「それは?」

自称勇者「それは……」


ーーーーーー
ーーーー
ーー

【現在】

ドラゴン「実に懐かしい…」

奴隷「魔王かな?」
 
222 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:05:14.96 ID:dx503BWA0

ドラゴン「それから、あやつの提案を飲んだ儂は指示通り村を襲い、家畜を拐い、家を焼き…」

奴隷「おい、もうそれ魔王だろ?」

ドラゴン「西のエルフの森から魔具を盗み、南からは婚礼間近の姫君を連れ去り、東の鉱山に立てこもると逃げ遅れたドワーフ達を不眠不休で働かせ黄金の城を建てさせると、そこを根城とした」

奴隷「すげえ! ドラゴンよりタチ悪い奴がいる!!」

ドラゴン「だが攻撃はここまで。 事態を重くみた4ヵ国は争いをやめ、手を取り合って反撃を開始した」

奴隷「それが魔王の狙いだものな」

ドラゴン「まず、話し合いでまとめ役をかって出た北国の王子のために国中でもっとも優れた武具≠用意させると」

ドラゴン「囚われた姫の身を案じ、少数精鋭による奇襲が計画された」

ドラゴン「パーティーには王子のほか、エルフの魔法使いにドワーフの戦士。 そして南からは僧侶の4人組」

奴隷「画面が魔王対勇者になってる!」

ドラゴン「で、あろうな」

ドラゴン「この露出魔の変態こそ、世界で最初の魔王だからな」
 
223 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:09:26.59 ID:dx503BWA0

姫「あの! もしかするとその方は…」

ドラゴン「いやいや、姫様の血縁ではないです」

ドラゴン「あやつのなろうとしたのは、もっと陳腐なものだ」

奴隷「陳腐?」

ドラゴン「ああ、子どもが悪さをすると母親が悪いことすると魔王が来るわよ≠ニ、叱るだろ?」

ドラゴン「他にも喧嘩したら∞勉強しないと∞飯を残す∞夜更かしすると≠ネどなど…」

ドラゴン「あやつはそういう存在になりたがっておった」

奴隷「だから自分から騒ぎを起こした」

ドラゴン「そして誰よりも自分の身を犠牲にした」

姫「善い人ですね…」

ドラゴン「くっくっ、老人の昔ばなしだ。そうとう美化しておる」

ドラゴン「ほんとはただ理由をつけて裸になりたかっただけかもしれぬ」

姫「あの、質問なのですが…」

姫「そんな方が何故ドラゴンさんに協力を求めたのでしょう? ご自身のお力で出来そうなのに」

ドラゴン「そりゃあ、あれです…。 儂が邪魔だからです」
 
224 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:11:38.94 ID:dx503BWA0

姫「じゃま?」

ドラゴン「考えてもみてくだされ。 せっかく4つの国が仲良くなっても、その真ん中に儂が居座ったら邪魔だと思いませぬか?」

姫「ええ…、まぁ、そうですね……」

奴隷「なんだ? けっきょくは騙されて利用されたのか?」

ドラゴン「利用か…」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

【再び、800年前】

北の騎士「王子に敗れ、手負いのドラゴンを見つけた! 魔王をこのまま逃がすな!」

パカラッ!パカラッ!

南の騎士「苦労して森に誘い込んだんだ! 弓で射殺せ!」

ガタッン!

東のドワーフ「おい、儂らの作って馬車をもっと丁寧に扱え」

西のエルフ「ちょっと耳もとで怒鳴らないでよ!」キリキリキリ

西のエルフ「狙いが…、ハズレる!」

シュパン!

ドス!!

ドラゴン「ひっ、ひいぃぃ〜〜〜!!」

自称勇者「くっくっくっ…はぁ〜はっはっはぁ〜!」

 
225 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:14:08.20 ID:dx503BWA0

ドラゴン「なにが楽しい! なにが可笑しい!?」

自称勇者「だって笑えるだろ? あいつらつい数日までにらみ合って争ってたんだぜ?」

ドラゴン「数日前…」チラッ

ドワーフ「下手くそが! なに外してる!!」

エルフ「五月蝿いわね! あんたの仕掛け弓が欠陥品なんじゃないの?」

ドワーフ「儂の作品が気に入らんなら馬車からさっさと飛び降りろ!」

エルフ「嫌よ!怪我しちゃうじゃない馬鹿!!」

南の騎士「どっちも黙れ!後ろで喧しいと馬車ごと切り離すぞ!」

ドワーフ「やってみろ三下ぁ」

エルフ「末代まで祟ってやるわよ」

北の騎士「いい加減にしろお前ら!まもなく本陣とはさみ撃ちにする事を忘れるな」

エルフドワーフ南の騎士「「「北が仕切ってんじゃねえ(わよ)!!」」」

南の騎士「あんまデカイ顔すると」
エルフ「森の養分か」
ドワーフ「機械の部品にしてやろうか?」

北の騎士「上等だぁ! おまえら後で決闘だからな!」

ドラゴン「仲良く?」

自称勇者「死人が出ないうちは笑って見てろ」
 
226 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:17:08.53 ID:dx503BWA0

ドラゴン「な〜んか、ものすごい詐欺に引っ掛かった気がする」

自称勇者「なにを言うかと思えば、約束通り最高の宝を見せてやっただろ?」

ドラゴン「宝なぁ…」

自称勇者「最高だったろ? 北の王子が助けにきた時の南の姫の笑顔」

自称勇者「寒さに凍える花の蕾が朝日を浴びて開いたようだった」

ドラゴン「だから詐欺だと言ったんだ!!」

自称勇者「そう言うな、望まぬ相手と政略結婚する前に逢いたい人は昔みた君ってな」

ドラゴン「南の姫のことか?」

自称勇者「うんにゃ、北の王子」

ドラゴン「はあぁぁぁ〜〜〜!!??」

自称勇者「そのうちわかるさ。 恋に恋する少年少女を からかうことほど笑えるもんはないってな!」

ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー


ドラゴン「そうかもしれんな……」

 
227 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:22:56.20 ID:dx503BWA0

姫「ドラゴンさん?」

奴隷「急に黙ってどうした?」

ドラゴン「…その後、もともとあった婚約が破談になった南の姫を北の王子がプロポーズして結婚」

ドラゴン「それをきっかけとして、いがみ合っていた4つの国が融和への道を話し合いはじめたと聞いたのは儂らが去った数年先のことだ…」

姫「めでたしめでたし♪」

ドラゴン「だが滅んだ」

姫「あ…」

奴隷「おい、そんな言い方は…」

ドラゴン「事実であるなら仕方あるまい」

ドラゴン「もう一度言うが、儂にとってはよくあること…」

ドラゴン「それは殺しても死なぬと思うていた、あやつとて例外ではない」

ドラゴン「皆が儂の横を通りすぎて行く」

奴隷「あのさ…」

ドラゴン「……少し飲みすぎたようだ」

バサッ!

奴隷「お、おい、どこ行くつもりだ?」

ドラゴン「酔いざましに追手の様子を探ってみるか」

ドラゴン「明日からは儂の巣目指して強行軍となる、やることあるなら今夜中に済ましておけ」

バサッバサッ!

奴隷「行っちまった…」

姫「素敵なお話でした」

奴隷「どこが!??」
 
228 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:25:37.42 ID:dx503BWA0

姫「きっと、今のお話はドラゴンさんの大切な思い出だったんです」

奴隷「そうか? 年寄りの昔は悪かったって自慢されただけじゃないか」

姫「ああ、そうですね、そういう見方もあるかもしれません」クスクス

奴隷「じゃあ姫の見方は?」

姫「自称勇者の自称魔王…。でもドラゴンさんにしてみたら やっぱりこの方が勇者さまなんです」

姫「だから、このお話は奴隷さんにこそ聞かせたかった。 奴隷さんがお話の勇者さまみたいに立派になって欲しいから」

奴隷「勇者さまなんてガラじゃない…」

姫「では、あいだを取って奴隷さまにしましょう」

奴隷「奴隷をさま付けって…」

姫「もう、すねないでください奴隷さま」ダキッ

姫「ドラゴンさんの一番大切な人はわたし達じゃないからって」ギュー

奴隷「くそ…」

姫「ふふ♪」
 
229 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:29:44.76 ID:dx503BWA0

姫「ねえ、奴隷さま…」

奴隷「なんです?」

姫「もうすぐ、わたしの誕生日なんです」

奴隷「え? あ〜、それはおめでとうございます…。 もうちょっと早ければプレゼント用意出来たんだが」

姫「そんなのいりません。 そういえば奴隷さまのお年は?」

奴隷「とし? 拐われてから数えてないが拐われたのが9才だったかな?」

姫「では同い年ですね」

姫「そうだ! 奴隷さまのこれまでの分を含めて、今年の誕生日は3人でお祝いしましょう!!」

奴隷「ん〜、そうだな、それも楽しいかもしれないな」

姫「はい♪ きっと、楽しいですよ」

奴隷「じゃあ、ドラゴンの巣に着いたらやってみるか」

姫「ふふ、決まりですよ」ギュー

姫「奴隷さま?」

奴隷「なんです?」
 
230 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2018/12/26(水) 00:32:11.66 ID:dx503BWA0


姫「わたし、いままでの人生で今がいちばん幸せです」


奴隷「ああ、俺もです…」

 
231 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2018/12/26(水) 00:42:55.03 ID:dx503BWA0
今日はここまでです

次回は逃走14日目で行う勇者の誕生日なんですが

今読み返すと>>133でもっと2週間を強調すればよかったと後悔してます
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/31(月) 03:03:57.41 ID:75XEEgODO
233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/26(土) 18:07:31.23 ID:+o4mJ/gA0
生存報告

プロットはあるんよ、プロットは…
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/27(日) 03:18:39.67 ID:ZeZyagcDO
能書きなど要らん
欲しいのは続きだ!
235 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/03/20(水) 00:27:08.23 ID:M0a22y/A0

【逃走14日目 竜の巣のある山中】

姫「雪だ〜」ザックザック

奴隷「あまり遠くに行くとはぐれるぞ!」

姫「わかってます♪」ザックザックザック

奴隷「わかってんのかね?」

ドラゴン「元気があっていいではないか」ガタガタガタ

奴隷「平気か?」

ドラゴン「寒さに弱くてな」

奴隷「なんでそんな場所に巣つくるかね?」

ドラゴン「仕方あるまい、まさか800年後に火山活動が停止して雪山にかわるなどと誰がわかると思う!」

奴隷「おまえ、本当そればっかだな!」

奴隷「この調子で竜の巣にあるお宝売って逃走資金にあてる計画は大丈夫だよな?」

ドラゴン「たどり着けたらな…」

奴隷「……おまえまさか」

ドラゴン「まあ、ここは定番のセリフといこうではないか?」

ドラゴン「まず勇者が遭難したのか≠ニ……いや、スマン蹴るのは止めてくれ」

奴隷「遭難したのか!!?」

ドラゴン「遭難です!」

奴隷「死ね!」ドゴッ!
 
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/21(木) 03:27:49.96 ID:yXO0C2PDO
やっと来たか乙
237 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/14(水) 01:59:39.58 ID:zIpWw6PA0

奴隷「このポンコツ!!」

奴隷「地上に来て緩んだのか!? さっさとポンコツ化した頭を治せ!」

ドラゴン「むう、儂とて無策でつれてきたのではないぞ? 昔出かける時には長期の留守にそなえ魔法の符丁、目印、暗号などなど… 思いつくだけ残しておいた」

奴隷「おお、じゃあさっそくそれを探しだせば…」

ドラゴン「うむ、問題は全部雪の下に埋まっとる点だが」

奴隷「この、 ド ポ ン コ ツ !!」

奴隷「どうすんだよ!シャレになんなくなるまえに山を下りるか?」

ドラゴン「だが収穫もある」

奴隷「おお!?」

ドラゴン「そうだな、実際この地に来てみて。わかった事が悪い事と良い事の2つあるのだが どちらから聞きたい?」

奴隷「え?遭難しておいてさらに悪い事あるの?」

ドラゴン「先に良い事から話そう!」

ドラゴン「良い事はエルフがこの地より離れた理由がこの寒さだという点だ」

奴隷「ん〜、その良い事≠チて少なくとも状況の改善になるような事とは違うような…」

ドラゴン「くっくっ、どんな素晴らしい発見だろうと必ずしも状況の改善につながるとは限らぬ」

奴隷「ああ、なるほど! それが悪い事≠ネんだな」

ドラゴン「まさにそれよ! 勇者もわかって来たではないか」

奴隷「はっはぁはぁ〜」
ドラゴン「はっはぁはぁ〜」

奴隷「死ね!」ドゴッ!
 
238 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/14(水) 02:03:45.41 ID:zIpWw6PA0

ドラゴン「ぐう、あまり本気で蹴るな…。寒さで縮んだウロコが響く」

奴隷「山を下りよう」

奴隷「暗くなって動けなくなる前に山を下りよう」

ドラゴン「うむ、それなんだがな…」

奴隷「まだ何かあるのか?」

ドラゴン「追っ手が周囲に囲まれておってな、下手に下りたら見つかるかもしれん」

奴隷「詰んでんじゃねえか!」ガシッ

奴隷「ひどい」ギリギリ

ドラゴン「あ、イタッ」

奴隷「雪山に連れてきて道に迷っただけでも相当なのに下りたら捕まるって空前絶後の壮絶ひどい」ギリギリギリ

ドラゴン「痛い痛い痛い!! 頭をしめるな!!」

奴隷「ゆるんだ頭に刺激あたえてんだからさっさと思い出せ!!」

ドラゴン「そんな都合よく思い出せるか!」

ドラゴン「よいか! 儂の巣とはそれすなわち儂が生涯をかけて集めた財宝を隠した宝物殿」

ドラゴン「見た目はただの洞窟なれどあらゆる者の侵入を防ぐために施された術は、高位の魔術師でさえ不可能!!」

姫「あっちに洞窟があったので休みませんか♪」

ドラゴン「おお! それこそ儂の巣に違いあるまい!」

ドラゴン「なにをしておる、置いていくぞ」ザックザックザック

奴隷「この旅の行先が心配になってきた…」
 
239 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/14(水) 02:05:35.11 ID:zIpWw6PA0

ドラゴン「ふむ、やはりここで正解か…」ペタペタ

奴隷「そんな入口で何やってんだ? 先に奥 行くぜ?」

ドラゴン「わかっておらぬな〜、そんなあからさまな場所罠があるに決まっておるだろ」

奴隷「あ〜、そうかい。 んで?秘密の入口に「開けゴマ」と呪文を唱えるのか?」

ドラゴン「くはっ、おとぎ話じゃあるまいし、勇者は自分の家に帰る時にはそう言うのか?」

奴隷「こいつ、巣を見つけたとたんに偉そうに」

ドラゴン「自分の家に帰る時はこう言うのだ」

ドラゴン「ただいま」


コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛


 
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 10:39:09.61 ID:KJSuxD1rO
生きてたんか!
ただ期間空きすぎて内容忘れたから少し読み直さんといけんな
241 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:31:11.16 ID:1iyQQEhA0

姫「ふわぁ」

奴隷「すげえ…」

キラキラキラキラ

ドラゴン「くっくっくっ、素晴らしいであろう?」

ドラゴン「数多の権力者を見てきたが金山まるごとくり貫いた天然の宝物殿を所有するのは、儂ぐらいよ」

姫「わたしの城とはスケールが違います…」

ドラゴン「で、あ〜ろ〜う〜な〜♪ ま、卑屈になることはない」

ドラゴン「魔界が出来て精々800年」

ドラゴン「それに比べて儂の黄金収集歴はざっと5000万」

姫 奴隷「ごせんまん!!?」

ドラゴン「くっくっくっ、言っておくが正解な時間はわからぬぞ。 何しろその時代には人間の祖先すら見当たらぬでな、暦の概念がまだなかったのだ」

奴隷「おまえ、歳いくつだよ?」

ドラゴン「ふむ、儂も実はよく知らぬのだ。 一度学者にいちばん古い記憶を聞かれ隕石の墜落≠ニそれによる氷河期≠ニ答えたらえらく驚いておったから驚くほど古いのであろう」
 
242 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:32:04.11 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「ま、こんな物は序ノ口よ」ガシッ

奴隷「急になんだよ?」

ドラゴン「よいか? ここでモテる雄のアドバイスよ」

奴隷「ああ、あのいつも役にたたないやつな」

ドラゴン「よいか? 雌は雄のナニを見て魅了されるかわかるか?」

奴隷「はいはい、財宝財宝。 すごいすごい」

ドラゴン「ブッブー! やっぱり勇者にはわからぬか〜〜」

奴隷「巣を見つける前もイラッとしたけど今も別の感覚でイラっとさせるな」

ドラゴン「それは強さ、すなわちパワー≠誇示させるのだ」ムキッ

姫「わーー」パチパチパチ

奴隷(疑いの眼差し)
 
243 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:34:39.43 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「これを見よ!」バッ

奴隷「木片?」

姫「わーー」パチパチ

ドラゴン「否っ! これこそ深海の主が住まい、竜宮城の大黒柱であるぞ!」

奴隷「つまり…木片?」

姫「わーわー」パチパチ

ドラゴン「これは大昔に儂と深海の主が知恵比べをした時の戦利品」

ドラゴン「当時のあやつは儂の所有するとある宝具にえらくご執心でな、儂に取り入ろうと猫なで声でまと割りついてきたのだ」

ドラゴン「それこそイカのように」

奴隷「それはどうでもよくね?」

ドラゴン「そこで下心の見抜いておった儂が双方の住みかで最も価値のあるものを交換しようと提案してな。乗ってきた瞬間、竜宮城の大黒柱をへし折って崩壊させてやったのよ」

奴隷「ひでぇ…」

姫「わぁ…」
 
244 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:35:43.04 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「いやいや、儂とて無傷とはいかぬかったのだぞ?」

ドラゴン「見よ見よ、柱のここに触手の跡がはっきりと残ってあるだろ?」

奴隷「その上のでっかい凹みは?」

ドラゴン「儂の反撃の一撃を頭に叩きつけた跡だな」

奴隷「ひでぇ」

ドラゴン「そうは言っても深海の主と豪語する海生軟体動物の高周波をともなう猫なで声は寛容な儂でも我慢の限界というのがあって」

奴隷「だからって家壊す必要ないだろ!」

ドラゴン「ならば次だ!」

ドラゴン「こちらは北端の呪術士集団ドルイドが造りし最古の魔獣!!」

ドラゴン「知識の象徴であるオウムの頭と当時の最強生物、人喰いクマをあわせもったその名もアウルベア!!」

ドラゴン「くっくっくっ、その噂を聞きつけた儂はさっそく挑みかかり、一捻りで倒したのち剥製にして持ち帰ったのだ…」

姫「この頭部、作り物ですね」

ドラゴン「ギクッ!」

姫「それにこれ剥製じゃなくて服のように着ることが出来るようになってます」

ドラゴン「ギクッギクッ!」

奴隷「ドラゴンさん?」
 
245 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:36:53.56 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「はい?」

奴隷「この魔獣はつまり偽物だったんだな?」

ドラゴン「だがよく出来た作りでな、動いたところなど本物と見間違えても仕方ないと…」

奴隷「よく出来た偽物だったんだろ!」

奴隷「何か? 噂聞きつけて行ったはいいが中に人が入っただけの偽物で?」

ドラゴン「うむ…、見た目は中に人間が入っているとは知らなかったのでな…」

奴隷「んで? 中の人ごと戦利品として持ち帰ったのか?」

ドラゴン「勇者よ、中の人などおらぬと言ってだな…。そこはなかなか繊細な案件なのだ」

奴隷「要するにただの着ぐるみじゃん!」

姫「着てみました♪」
 
246 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:39:56.95 ID:1iyQQEhA0

奴隷「ジー」

ドラゴン「なんだその目は?」

奴隷「おまえの言ってることをどこまで信じたらいいかと疑ってる目」

ドラゴン「何を言っておる、金銀だけが財宝ではない。 こういった物にも文化的価値というものが存在し」

奴隷「んで? これ見せたメスの反応は?」

ドラゴン「・・・・」

奴隷「ほらな〜」

ドラゴン「いや、これ、あれだから、まだ古い時代のだから」

ドラゴン「これから先は人間の他に亜人も生まれ文化も多様性に富み、儂の収集物も多彩な彩りをもってゆくぞ」

奴隷「多彩なゴミじゃないのか?」

ドラゴン「くっくっ、舐めてもらっては困る」

ドラゴン「儂の巣は次元の断層を利用しており想像よりずっと広い」

ドラゴン「見てまわるだくでも幾日もかかるダンジョンのような構造は全…」

ドラゴン「全…、何部屋だったかな?」



道化「全57部屋にそれを結ぶ305の通路と清潔な水場が30」
 
247 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:43:42.34 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「なっ…」

姫「どうして…」

奴隷「ここに?」


道化「ずっと待ってたのに遅いよ」
 
248 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:45:27.45 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「逃げるぞ!」ガシッ

バサッ!

姫「ドラゴンさん!」

道化「逃がすか! 槍隊整列!」

兵士「はっ!」

ガシャガシャガシャ

ドラゴン「くっ!」

バサッ!

姫「ドラゴンさん!」

ドラゴン「くはっ、逃げ道などいくらでもあるから心配するな!」

姫「うしろーー!!」

ドラゴン「なに?」

道化「無駄無駄ァ!」

ズバッ!

ドラゴン「ぐうっ」

ドザァーーー!!!

姫「ドラゴンさん!」

道化「さあ、年貢の納め時だせドラゴンさん」

ドラゴン「ナメるなぁぁーーー!!!」コォォォォ!!

ドラゴン「ドラゴンブレス!」

道化「灼熱閃光魔法!」


ドゴオォォーーン!!!!

ドラゴン「ぜぇぜぇ…」

姫「嘘? 相殺した?」

道化「今のはメラではない……」

道化「ギラだ」
 
249 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:48:03.69 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「それがどうしたー!」

ブォン!

道化「これはイオ」

ボゴン

ドラゴン「ゴホッ!」

道化「これはバキ」

ザシュザシュザシュ

ドラゴン「ぬう…」

道化「んで、こいつがメラ」

ボム!

ドラゴン「ぐっ!」

姫「大丈夫ですか?ドラゴンさん!」

ドラゴン「頭を出すな! こやつは姫を狙っておる」

道化「そうだよ♪ だからちゃんと守ってあげないと、姫様に当たったら僕が魔王様に叱られちゃう」

ボッボッボッボッボッボッボッボッボン

ドラゴン「ぐふっ!」

ドスーン!

姫「ドラゴンさ〜ん!」

ドラゴン「」

道化「ほい、拘束魔法」

じゃらじゃらじゃらじゃら

道化「ガッキン!」

道化「はい、一丁完了。 姫様のお帰りは魔王様もずっと待っておられます」

姫「嫌…」

道化「嫌って言われても三人仲良く捕まっちゃったらどうしようも…」

道化「あれ? 勇者様は?」

奴隷「後ろだ!!」
道化「後ろだ!!」

ガキーン!!

奴隷「ちっ」

道化「よう、久しぶり。 また剣の腕あげた?」
 
250 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:49:02.85 ID:1iyQQEhA0

道化「でもな」

パキッ!

奴隷「剣にひびが!」

道化「いけねぇな、勇者様。 地上より魔界のほうが武器の性能がいいのはロールプレイングゲームの基本だぜ!」
 
251 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:51:29.53 ID:1iyQQEhA0

道化「つまり、馬鹿にハサミ持たせたら危ねえってことだ!」

ザンッ!

奴隷「ちっ」

道化「さあ、いつまで持つかねぇ」

ザンッザンッザンッ

奴隷「くっ」

キン!

パキッ

道化「そらそら、気をつけないと折れちゃうぞぉ〜っと♪」

奴隷「くぅ…」

キン、キン、キン!

バキッ!

道化「さあ、こいつで仕舞いだ!!」

ブォン!

奴隷「くっはっ、うまくいった」


パーーーン!!!


道化「なっ、白羽取りだとぉ〜!?」

奴隷「馬鹿は馬鹿だな」

ドゴッ!
 
252 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:53:08.47 ID:1iyQQEhA0

道化「ごはっ、糞…」

奴隷「悪いな、折れた剣のかわりにこっちをもらうぜ」

道化「そりゃないんじゃない? 人の物を盗るなって言われなかった?」

奴隷「どの口が? まあ、惜しむ気持ちもわかるほどの良い剣だけど…」

奴隷「…なんだろう? 手に馴染む」

ドラゴン「勇者よ、ボサッとするより止めを!」

奴隷「お、おう」チャキッ

道化「きゃ〜助けて〜!」


道化「衛兵さ〜ん!」


衛兵「…気色の悪い声を出すな」スタッ

奴隷「なに!?」

ガッキーーン!!

衛兵「・・・・」

姫「衛兵さん…」

奴隷「おまえは…くそ! 敵か味方かはっきりしろ!!」

衛兵「悪いな、私も微妙な立場なのだ」
 
253 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:55:04.56 ID:1iyQQEhA0

奴隷「だから微妙じゃなくてはっきりしろと言ってるんだ!」

衛兵「…本心では戦いたくないと思ってるよ」

ドスッ!

奴隷「がはっ!」

衛兵「だがそれ以上に魔王様が怖いのだ!」

ドム!

奴隷「なんだそれ! 魔王のどこが怖いってんだ!」

衛兵「おまえは知らないだけだ」

ガスッ!

奴隷「またそれか、ドラゴンも何かあるならちゃんと言え」

衛兵「知ろうともしなかった子供が偉そうなことを言うな!!」

ボゴッ!ドガッ!

奴隷「なら俺はどうしたらいいか教えろ!」

衛兵「姫をつれて遠くまで逃げて欲しかった…」

奴隷「!!?」

ドゴッ!

メキッ!

奴隷「ぐうっ」

衛兵「それをピクニック気分であっさり見つかって、期待外れもいいとこだ」

奴隷「…ごめん」ドサッ
 
254 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 01:57:24.07 ID:1iyQQEhA0

ドラゴン「いかんな…」

姫「衛兵さんは魔界でも選り抜いた実力者ですから」

ドラゴン「それもあるが勇者に攻撃の意志がなさすぎる」

姫「なさすぎる?」

ドラゴン「うむ、どうも勇者は敵味方の判定が極端でな。一度仲間と思えば訓練中の手合わせでも剣筋に乱れがでるのだ」

姫「…長く友人がいない年月が続いたせいでしょうか?」

ドラゴン「…それ、本人には言うでないぞ」

姫「でも、それならどうしたら?」

ドラゴン「拘束を砕いて援護する。姫は隠れていてくだされ」グッグッグッ

姫「戦えますか?」

ドラゴン「お陰さまで友には恵まれておる」

バキッ!

ドラゴン「さあ、逃げろ!」

バサッ!

衛兵「!!?」

ドラゴン「ぬおぉぉぉ!!!」

バサッバサッバサッ!!

ドゴォ!!

衛兵「ぐぉっ! ドラゴン! そもそもはキサマがぁ!!」

ドラゴン「怒るでない、友人だろ?」
 
255 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 02:01:52.72 ID:1iyQQEhA0

道化「ほい拘束魔法」

じゃらじゃらじゃらじゃら

ガッシャン!

ドラゴン「ぬあ、また!?」

衛兵「道化、私ごと拘束してなんのつもりだ!!」

道化「はぁはぁ、剣はかえしてもらいますよ。 これがなくっちゃ魔王様からの密命が実行出来ないからね」

衛兵「密命だと!?」

道化「ええ、魔王様はこうおっしゃいました」

道化「籠の鳥は籠の中だからこそ価値がある。 価値もないのに手間どるようなら無理に連れて帰ることもない」チャキッ

姫「嘘? お父様が…」

道化「はい、手間なんでちゃっちゃっと死んでください姫様!!」

シュバッ!

奴隷「くそっ!!」

ドスッ!

姫「奴隷さまーー!!」
 
256 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 02:04:37.41 ID:1iyQQEhA0

道化「ほらよ!」

ズバッ!

奴隷「っあ!」

道化「あらよ♪」

ズブッ!

姫「やめてぇーー!!」

奴隷「はぁはぁ…」

道化「奴隷、さま、ね…」

奴隷「がはっ!」

姫「待っててください! 今、治癒魔法をかけます」

道化「無駄ですよ〜、3度目が致命傷になってます」

姫「なんてことを!」

奴隷「はぁはぁ、安心しろ姫。不本意ながら俺には女神の加護があるかぎり死んでも復活する」

道化「不本意か、そりゃけっこう!!」

ビリッ!

姫「何を!?」

道化「さあ姫様! 勇者様の背中を見てください、ほらここ魔王様の印と勇者の紋章があってごちゃごちゃしてたのがずいぶんとスッキリしたと思いません?」

姫「勇者の紋章が消えたから?」

道化「はい、こいつはまもなく復活することなく死んで本意をとげることとなります」

姫「何をしたの?」

道化「嘘をつきました」
 
257 : ◆VTkGRpPzmUQh [saga]:2019/08/15(木) 02:08:55.08 ID:1iyQQEhA0

道化「その1、姫を殺せと魔王様からの密命を受けたと言ったこと」

姫「そんなことでは!」

道化「そう、そんなこと≠ヘあり得ない」

道化「とっても特別な可愛い可愛い一人娘だから」

姫「そんなんじゃないです」

道化「ええ、ええ、そんなんじゃなくても勇者様は身をていしてかばってくれると思ったんです」

道化「だって、勇者様にはこの剣で刺されてもらう必要があったのだから」

奴隷「その剣は…なにがおかしい…」

道化「でしょうね、この剣は魔界の武器と言ったのも嘘なんですよ、勇者様」


道化「さあ、とくとご覧じあれ」

道化「この剣こそまだ幼き勇者が女神より加護と共に授かり」

道化「魔王殺しにして勇者の加護を消し去り勇者を殺せるたったひとつの武器」


道化「そう聖剣≠ネり!!」


 
258 : ◆VTkGRpPzmUQh [sage]:2019/08/15(木) 02:13:07.79 ID:1iyQQEhA0
今日はここまでです
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 20:25:22.52 ID:m2te1SYDO
乙乙
待ってたで
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 00:57:55.31 ID:IHuDNWy0O
エタったな
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