白菊ほたる「私にも優しいプロデューサーさん」

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1 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 21:56:35.05 ID:3B1YHSO30
速水奏「誰にでも優しいプロデューサーさん」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1504883071/


このSSは上記のSSの続編となります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514120194
2 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 21:57:38.16 ID:3B1YHSO30

「え?アイドルを目指した理由……ですか……?」

「ああ。何かきっかけがあったのかなって思ってな」

「……そうですね。またちょっと暗い話になっちゃいますけど……私、昔からこんな不幸な体質で……周りの人を不幸に巻き込むのが、辛かったんです」

「……」
3 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 21:59:55.12 ID:3B1YHSO30


「だから周りとも距離を置いて……とっても暗かったと思います。……あ、今も暗いのは暗いですけど」


「けど、そんな時テレビに出ていたアイドルの人を見たんです。彼女は本当に楽しそうで……見ている私まで、幸せな気分にしてくれたんです……」

「不幸を振りまく私と、幸せを振りまくアイドル……私と正反対……だけど、そんな風になりたいって、思ったんです」



「そうか……諦めなければ、きっとなれるさ。周りを幸せにするアイドルに……」


「――――はい……!」

4 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:01:42.48 ID:3B1YHSO30

優しい人。

その評価が俺の全てだった。

敵を作らない事。

周りの人間に、友好的な存在であると認識してもらう事。


ただ、自分は装置なのだ。

自分の職務を全うする上で、最適であると思われる受け答え、反応をするだけの装置。
5 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:03:35.23 ID:3B1YHSO30
そういう風に立ち回る事こそが正解だと社会で生きていくなかで学んだし、事実そうする事で周りの人間を傷つけずにここまで来れた。

そうして立ち回った結果が今の自分の居場所だ。

不満は無い。


担当したアイドル達は皆優秀だった。

事務員のちひろさんも不出来な俺を良くサポートしてくれる才女だった。

不満はない。
6 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:05:47.52 ID:3B1YHSO30

このまま装置として機能していく事が、社会で生きていく事なのだと思っていた。

一見周りには必要とされているようで、本当は誰にでも代わりが出来る。

そんな装置。

感動も、絶望も無い。

しかし、初めてそれを許さない人間が現れた。




速水奏。
7 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:07:30.64 ID:3B1YHSO30
「誰にでも優しいのは、自分以外に関心がないから。けど、その肝心の自分の中には、何も入っていない」



「本当の貴方は、からっぽ」



「自分の事をどうでもいいなんて思わないで。居ても居なくても変わらない存在だなんて思わないで」
8 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:09:46.02 ID:3B1YHSO30
優しい人。


そう呼ばれながら、本当は優しさなんて、どういうものなのかわからなかった。

他人に優しくしようと思ってやってきた事ではない。

自分に最も害が及ばないように、と思ってやってきた事だった。


だから彼女に言われた事は事実だったが、指摘された所でこれからどうして良いかもわからなかった。


あれだけの事を彼女に言われ、やらせておきながら、俺は未だ変われずにいる。



ただ、以前は感じなかった、いや、感じないようになっていた胸の騒めきを抱えながら。
9 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:11:52.49 ID:3B1YHSO30
あれから少し時は過ぎ、担当アイドルは何度か代わり、俺は少しだけ出世していた。


やっていることはプロデューサーで、変わらない。

ただ、少しだけアイドルの編成や雇用についての発言権が強くなっていた。


これも今まで担当したアイドル達が残してくれた成果の賜物だ。
10 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:14:18.55 ID:3B1YHSO30

「倒産、ですか」


「ああ、比較的新しいプロダクションだったが、先日破産手続きが行われたらしい」



上司である部長の口から聞かされた月に一度行われる会議での議題は、最近潰れたという他の事務所についてだった。

会議には部長の他にも社内で重要な役職を務める面々が揃っている。


この会議にも以前は呼ばれる事は無かったが、今では俺の席が用意されている。

11 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:17:21.78 ID:3B1YHSO30

「確かにあそこの事務所はあまり良い噂は聞きませんでしたね」

「ああ、有力アイドルがいるにはいたが、そのアイドル以外の娘には冷や飯を食わせてるとか」

「いや、それどころか事務所の雑用やらせてばかりの奴隷扱いだと聞いたぞ」



会議の参加者たちは、今はもう無い事務所に対して様々な憶測を並び立てている。


その噂がどこまで本当かはわからなかったが、確かにお世辞にも評判が良いプロダクションではなかった。
12 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:19:04.02 ID:3B1YHSO30

一人の看板アイドルを抱えていたが、そのアイドルは実績を盾にしてやりたい放題で、他のアイドル達は非常に立場が弱かった……という話だった。


「ああ、それで、そのアイドルが他所に更なる好待遇で引き抜かれたらしい」

「それで、稼ぎ頭がいなくなって倒産、か。惨めな話だな」

「散々好き勝手やって最後はハイさようなら、か。今の時代、義理や人情はどこに行ってしまったのかねぇ」



「まぁウチのアイドル達は大丈夫でしょう。しっかり信頼関係を築いてくれているからな、な、プロデューサー君?」

13 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:21:54.59 ID:3B1YHSO30
「あ、はい。今の所は……コミュニケーションを取れていると思います」

急に話を振られ、返答する。


「おいおい、随分弱気じゃあないか。『絶対にウチのアイドルは大丈夫です!』と声高に言ってくれよ」


曖昧な回答に、部長は不満げな顔だ。


「はは……まあ、見捨てられないように最大の努力をします」
14 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:23:59.21 ID:3B1YHSO30
「全く、しっかり頼むよプロデューサー君。……それより、潰れたプロダクション、例のあの『疫病神』が所属していたらしいじゃないか」

「えっ、疫病神って……もしかして、今までも所属したプロダクションを全て潰してきたっていう、あの娘か?」

参加者達はまた身も蓋もない噂話に戻っている。

そんな話が続いた後、会議はお開きとなった。




以前の奏との一件以来、俺はアイドルとの信頼関係に今一つ自信を持てないようになっていた
15 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:25:33.73 ID:3B1YHSO30

本当にこの娘は俺を信頼してくれているのか?


本当はこの娘も俺の本質の希薄さに気づいていないか?


本当は俺に失望していないか?




そう考えると、絶対に大丈夫などとはとても言えそうにない。
16 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/24(日) 22:27:44.10 ID:3B1YHSO30
会議が行われてから1,2か月経った。


その日は都内のテレビ局に足を運んでいた。



スタッフと軽く打ち合わせをしていると、横のスタジオが慌ただしくしている。



「何かあったんですか?」

近くにいたスタッフに聞いてみる。
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