白菊ほたる「私にも優しいプロデューサーさん」

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102 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:25:10.23 ID:dJeYp2NG0
「それじゃあ。また明日な」

「……あ、あの……プロデューサーさん」


帰ろうとしたところを呼び止められ、ほたるの方を向く。


「ん?どうした?」

「……あの……えっと……」


少し顔を赤らめてもじもじしているほたる。



「―――――や、やっぱりなんでもないですっ……!あの、プロデューサーさん、少し屈んでくれませんか……?」
103 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:28:10.11 ID:dJeYp2NG0
「ん?こうか?」


言われて、体を少し屈める。



すると、ほたるは俺の首に今まで自分が巻いていたマフラーを優しく巻いた。




「……今夜も冷えますから……家まで送っていただいて、ありがとうございました」


「……ああ。ありがとう、ほたる」


彼女が何を言おうとしたのかはわからない。


しかし、今は彼女の巻いたマフラーと言葉がくれた温かさを感じるのみだった。

104 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:32:32.13 ID:dJeYp2NG0

ほたるの家を後にして、俺は自宅に帰るために公園を歩いていた。


聖夜の公園は、かなり時間も遅いせいか人の姿は無かった。


ふと、自分の携帯の画面を覗く。


すると、メッセージが届いている事に気が付く。



誰だろうと確認してみる。




105 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:34:26.84 ID:dJeYp2NG0



お疲れさま、プロデューサーさん

今日のLIVE、とても良かったよ


106 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:38:10.90 ID:dJeYp2NG0

もうしばらく言葉を交わしていない、『彼女』の名だった。



今日は彼女はLIVEの出演者には入っていなかった。


ということは、わざわざ観に来てくれていたのか。




思えば、彼女を失望させてしまってから俺は、心のどこかで何か形の見えないものを探し続ける日だったのかもしれない。

変わりたい、と思いながら変われるわけがないとも思っていた。
107 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:40:57.84 ID:dJeYp2NG0
だが、今担当しているアイドルが、目の前で証明してみせた。

変われるのだと。

可能性を一番近くで見せてくれたのだ。


ならば、自分も変われるのだろうか。







そんな事を考えた瞬間、視界に閃光が走った。
108 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:43:16.36 ID:dJeYp2NG0

うつぶせに倒れる。



背後には金属バットを持った男。


目の前に流れ出る赤と頭の痛みで、ようやく自分が殴られたのだと理解する。


「ほたるちゃんは俺のものだ……お、俺のなんだ……」



息を切らしながらそんな事を呻いている。


―――――なんだ、ほたるは随分と熱心過ぎるファンを作ってしまったみたいだ。
109 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:46:03.45 ID:dJeYp2NG0
バットが振り下ろされ、背中を打たれる。


「はぁ、はぁ……俺は見てたんだぞ……ずっと見てた……お前、ほたるちゃんのなんなんだよ……!」



再びバットが振り下ろされ、頭を打たれた。


ぼんやりとしていく意識の中、ほたるの事を考えていた。



『私は疫病神なんです。関わったら、あなたも、あなたのプロダクションも不幸になるかもしれないんですよ』
110 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:49:17.05 ID:dJeYp2NG0
――――やっぱりな。運が悪いなんて事は、あり得ない。




疫病神なんてものはいない。

いるのは、厄介な人間だけだ。




世の中の大凡の悪果は、突き詰めていけば人の悪意に因る。

要は、関わった人間の本質が、善か、悪か。


ならば、この結果は俺自身が引き寄せたものだ。



だから、ほたるはこれからはもう不運などというものに怯える必要は無いのだ。

結果を出した彼女には、これから必ず良い未来が待っている。

例え俺が隣にいなくとも。
111 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:51:48.08 ID:dJeYp2NG0
「……ッ」


上手く動かない身体を這い擦らせる。



だからこそ、死ぬわけにはいかない。



だって、あの娘はきっと自分を責めるだろう。

ほたるは、何も悪くないのに。


だから、生きて、笑い飛ばしてやらなければならない。

だから、死ねない。


お前は、疫病神なんかじゃない。
112 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:55:07.80 ID:dJeYp2NG0

―――――思えば自分の生にこんなに執着を持ったのは、初めてかもしれないな



そんな呑気な事を考える俺に三度バットが振り下ろされる。

そこで、通行人だろう女性の悲鳴が聞こえた。

ぼんやりと、逃げ出していく男の背中が見える。

消え去っていく意識の中で、真っ赤に染まったマフラーが目に入った。



マフラー、汚しちゃったな。


ほたるに申し訳なく思った。




終わり
113 : ◆z4l4K/HkZ2 [saga]:2017/12/25(月) 02:57:08.30 ID:dJeYp2NG0
以上で終わりです。

読んで下さった方有難うございました。

良いクリスマスを!
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 03:01:42.47 ID:rTTmvZdCO
おつ。
ほたるは可愛いなあ(語彙)
個人的には後日談でお見舞いに来て泣くほたるも見たかったけど、このPは無事だって信じてる。
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 03:04:02.26 ID:oF5/LGdQo
おつおつ
惹き込まれる話だった
クリスマスだし優しい後日談になってると信じてる
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 04:37:36.48 ID:SxHmAmjvo
奏とほたるの修羅場が見たい
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 08:12:16.98 ID:wSwVAa1tO
この量つくるのは時間かかるだろうから簡単な内容でない限りまた2、3カ月後か……
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