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ドラえもん「ダンガンロンパ?」

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44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 19:55:22.50 ID:KPSsbBLB0
ドクターKの人だったんか!
45 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:18:50.14 ID:2f8MquAs0

明日って言ったけど時間出来たんで投下します。
実質今回までがプロローグ
46 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:24:27.52 ID:2f8MquAs0


  第二話 たのしいがくえんせいかつ (ひ)にちじょうへん


コロシアイ学園生活二日目。朝。


「……たくん……」

のび太「うーん、もうちょっとだけ……」

「……びたくん……のび太君!」

のび太「わっ! お兄さんだれっ?!」

石丸「いくら昨日会ったばかりとは言えもう忘れられているとは……僕はショックだぞ」

のび太「あ……そうか。ぼくはいま希望ヶ峰学園にいるんだった」

石丸「その通り。思い出せたかね? では改めて……グッモーニンだ、のび太君!」

のび太「おはよう、お兄さん」

石丸「ウム、気持ちの良い朝だな!」

のび太「きもちがいいもなにも窓がふさがれてて外が見えないのに……」

石丸「たとえ外が見えなくても、心の天気が快晴ならば気持ちが良いのだ!」

のび太「ああ、うん……て、まだ7時ちょっとじゃない! もう少し寝かせてよ!」

石丸「君は何を言っているのかね? 先程起床を知らせる放送が鳴ったではないか」

のび太「え〜、7時に起きるの〜?!」

石丸「ちなみに僕は5時には起きて運動していた。その時間に君を起こすのは
    悪いと思ったから、放送が鳴るまで寝かせてあげたのだよ?」

のび太(なんなのこの人。いちおう気はつかってくれてるみたいだけど……)

47 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:33:04.47 ID:2f8MquAs0

のび太「うーん、ありがとう……なのかな?」

石丸「うむ。それと先程唐突に思いついたのだが、親睦を深めるために毎朝みんなで共に朝食を
    食べるのはどうかと考えたのだ。報告やその日の行動指針を決めたりするためにな」

石丸「………という訳で、だ。さあ、早く起きて支度をするんだ! 急がないと朝食会に間に
    合わなくなってしまうぞ。初日から遅刻なんて……いや、そもそも遅刻自体僕は許せない!!」

のび太(そう言ってお兄さんはとにかくぼくをせかす。これが毎日つづくのか……
     おとなしくドラえもんのいうとおり部屋を用意しておけばよかった。ドラえも〜ん!)


  ― 朝食会 ―


石丸「おはよう諸君! よく来てくれた。それでは第一回朝食会を開催しようではないか!」

十神「よく来たも何も、貴様が無理矢理連れてきただけだろうが」

腐川「まったく……朝っぱらからあの熱苦しい顔を見なきゃいけないなんて……これは嫌がらせ?
    そう……そうよ、根暗のあたしに対する新手の嫌がらせなのよ……!」

葉隠「ま、まあ腐川っち。全身から負のオーラが漂ってるべ」

腐川「葉隠にまで馬鹿にされた。キィィィ、あたしなんてどうせぇー!」

山田「葉隠康比呂殿! どう考えても逆効果ですぞ!」

十神「黙れ、腐川。貴様の醜い声でこの俺の耳を潰す気か?」

腐川「……!」

霧切「人には人のペースがあると思うわ。強制するものではないと思うけど」

石丸「だが集団生活である以上、最低限の協調性も必要だ! 君なんて隠し事をしているではないか!」

48 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:39:55.64 ID:2f8MquAs0

セレス「そうですわね。才能も教えてくださらないなんて、
     暗にわたくし達を信用しないと言っているのと同じですわ」

葉隠「もしかすっと、モノクマのスパイじゃねえのか?!」

山田「ス、スパイ?!」

霧切「…………」

苗木(ま、不味い。なんか空気が不穏になってきたぞ)

苗木「みんな、やめようよ! そういう……」

のび太「霧切お姉さんはいい人だよ!」

霧切「!」

十神「いい人? 何故そう言い切れる? 常識的に考えれば、
    コロシアイに有利な才能だから黙っていると取るのが普通だ」

のび太「そう思うのはあなたの性格が悪いからでしょ!」

十神「何?」ピキッ

不二咲「の、のび太君!」アセアセ

十神「では聞くが、貴様はどうして霧切が才能を言わないんだと思う?」

のび太「言わないんじゃなくて言えないのかもしれないよ。たとえば、その……ど忘れしたとか」

江ノ島「ブフッ! そそそ、そんなのあるワケないじゃーん! ねぇ?!」

大和田「のび太……」

桑田「いくらなんでもムリあるだろ、それ……」

のび太「うう、ドラえもーん!」

49 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:47:30.07 ID:2f8MquAs0

ドラえもん「ど忘れなんてするのはのび太くんくらいだけど、人には色々事情があるんだ。
       きっと霧切さんには何か深い理由があってぼく達に才能を言えないんだよ」

ドラえもん「なのに、なにも知らないぼく達がよってたかって責めるのは良くないと思うな」

腐川「ググ……正論かもしれないけど、謎のロボットに説教されるってどういう状況なのよあたし達……」

苗木「ぼくものび太君達の意見に賛成。確かに霧切さんに限らず、僕達みんなまだ出会ってばかりで
    お互いを完全に信じきるのは難しいと思う。でも、信じようっていう気持ちが大事じゃないかな?」

朝日奈「うんうん! 私も賛成!」

大神「同感だ」

石丸「素晴らしい意見だ! 僕も支持する!」

のび太(良かった〜。なんとかまるくおさまった)

ドラえもん(まったく、アニメにないシーンが来る度にどう対応すればいいのかヒヤヒヤするね……)

朝日奈「倉庫にお菓子やドーナツあったんだー! 親睦を兼ねてドーナツパーティーしようよ!」

不二咲「いいねぇ!」

葉隠「なら特別に俺の占いも大盤振る舞いするべ! 今なら半額だぞ!」

大和田「のび太とドラえもんが男気見せてるってーのに、お前ぶっ飛ばすぞ?」

葉隠「それは勘弁してくれぇ!」

苗木「は、はは……(ホント個性が強いメンバーだな。僕はやっていけるのだろうか)」

舞園「大丈夫です。苗木君ならやっていけます。今も止めようとしてくれましたし」

苗木「読まれた?!」

舞園「だって私、エスパーですから」ニコ

50 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:50:10.19 ID:2f8MquAs0

苗木「でも、僕だけだったら止められなかったかもしれないよ。のび太君達がいたから……」

舞園「あの空気で最初に止めようとしたのは苗木君じゃないですか。大丈夫です。私は見てますから」

苗木「舞園さん……」ドキッ

桑田「ひゅー、さすが舞園ちゃんは今日もかわいいねぇ!」

大和田「うっせーぞ。朝からチャラチャラしやがって。俺は寝不足でイラついてんだ」

桑田「じゃあなんで俺より早く来てんだよ。あれか? 暴走族って時間にうるさいのか?」

大和田「ちげーよ。ドラえもんに起こされたんだ。寝直すワケにもいかねえしよ」

ドラえもん「昨日はいろいろ語り合ったからね。ふふふ」

桑田「ていうか、普通に飯食ってるし?!」

江ノ島「昨日も食べてたじゃん。いまさらなに言ってんの?」

桑田「昨日はいろいろありすぎてパニクってたんだよ!」

不二咲「すごいなぁ。シャワーにも入ったって言ってたし。どうなってるんだろう」

ドラえもん「当然だよ! ぼくは二十二世……いや、いまをときめく最新ロボットだからね!」

桑田「ホントかよ……新種の生物って言われた方がまだ信じられるぜ」

葉隠「ドラえもんっちはアトランティスのロストテクノロジーだべ。俺の占いがそう言ってる」

江ノ島「その占い三割しか当たんないんでしょ? デタラメ言わないでよ!」

のび太「それにしてもこの朝ごはんおいしい〜。誰が作ったの?」

朝日奈「私とさくらちゃんだよ!」

大神「皆の口に合ったようで何よりだ」

51 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:53:31.18 ID:2f8MquAs0

朝日奈「お代わりあるからたんとお食べー。食べないと大きくなれないからね!」

のび太「わーい! ハフハフハフっ!」

石丸「のび太君、食事はよく噛んで食べなければ駄目だぞ!」

大和田「昨日から思ってたが保護者かオメェは!」

セレス「風紀委員の肩書は返上して保父さんになった方がよろしいのではないですか?」クスクス

山田「セレス殿の小悪魔スマイルキター。性格悪いの見え見えなのに
    でも悔しいそんな所に感じちゃう。ビクンビクン」

葉隠「ドラえもんっちはUMAだべ!」

桑田「さっきと言ってることがちげぇ!」

腐川「よく朝からそんなに食べれるわね……栄養が胸に吸い取られてるのかしら……!」

朝日奈「だって朝にたくさん食べないと午前中に運動する元気が出ないじゃん!」

石丸「この朝食会が終わったらまたみんなで探索をしよう!」

大和田「それに異論はねえがオメーが指揮をとるのはなんか気にいらねえ!」


ワーワーガヤガヤ!




苗木「…………」

苗木(やっぱりこのメンバーでやっていける気がしない。埋もれそうだ……)

52 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/08(月) 23:57:31.28 ID:2f8MquAs0

  ― 男子トイレ ―


のび太「ふぅ、朝食会もブジにのりきったし今日こそはラクにすごすぞ!」

ドラえもん「まったく……まあ、最初の三日間は何も起きないし遊んでてもいいか」

のび太「とにかくあのうるさいお兄さんから逃げなきゃ。やかましいのは朝だけで十分だ!」

ドラえもん「きみがだらしないからやかましく感じるんじゃない? ぼくはいい人だと思うけどな」

のび太「そりゃわるい人じゃないけど……とにかくもうげんなりなんだ!」

ドラえもん「で、これからどうする?」

のび太「苗木お兄さんといっしょに行動しよう!」

ドラえもん「苗木くんか。まあ、あの中なら一番無難な性格してるしね」

のび太「それだけじゃないよ。苗木さんといっしょに行動すれば舞園さんともいっしょに
     行動できるし。超高校級のアイドルとおちかづきになれるなんて……うふふ」

ドラえもん(その超高校級のアイドルが苗木くんをだまして殺人を企むんだけどね)

ドラえもん「たしかに事件を防ぐために舞園さんの行動パターンや考え方を知っておくのは
       いいかもしれないね。どうして桑田くんを狙ったのかイマイチわからないし」


その言葉を聞いて、のび太は少し申し訳なさそうな顔をする。


のび太「ぼくはそれわかる気がするなぁ。だってあのお兄さん……」

ドラえもん「女ったらしでいつも舞園さんに鼻の下伸ばしてデレデレしてるから?」

のび太「うん」

ドラえもん「確かになぁ。ぼくもビックリはしたけど……でも、いくらなんでもそれで人を殺すかな?」

53 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:01:29.43 ID:VEtjUOmu0

のび太「どういうこと?」

ドラえもん「だって、舞園さんは仮にも天下のアイドルだよ? 桑田くんみたいな反応は
       それこそ毎日で慣れてるんじゃないかな。男の子なら仕方ないとも思うし」

のび太「まあね。ぼくもどっちかと言えばあのイジワルめがねの方が嫌いだし」

ドラえもん「十神くんだね。失礼かもしれないけど、確かに十神くんの方がよっぽど恨みを
       買いやすいと思うんだよなぁ。なのにどうして桑田くんなんだろう?」

のび太「原作のゲームをやれば動機もわかったのかな?」

ドラえもん「いや、舞園さんは裁判の時には既に死んでいるからね。
       はっきりとした動機は何もわからないはずだよ」

のび太「やっぱり性格じゃないの? ぼくも正直あのお兄さんそんなに好きじゃないんだよね。
     自慢ばっかりだし。せっかく才能があるのに野球がきらいなんてぜいたくだ。
     ぼくに才能をわけてほしいよ! あんな人に才能をあげるなんて神様は不公平だ!」

ドラえもん「確かにのび太くんは色々足りなすぎて神様に文句をいう権利があるよね」

のび太「……さすがにちょっときずつくよ。ほんとのことだけどさ」

ドラえもん「まあ、いいじゃない! のび太くんにもいいところはたくさんあるよ。
       それよりいつまでもトイレにいたら黒幕に怪しまれる。さあ、行こう」

のび太「じゃあ苗木お兄さんを探しに行こうか」


  ― 学園エリア廊下 ―


のび太「いたいた。苗木お兄さーん」

苗木「あ、のび太君にドラえもん。どうしたの?」

54 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:06:13.67 ID:VEtjUOmu0

舞園「苗木君と一緒に行動したいらしいですよ」

のび太「ぼくまだなにもいってないのに!」

舞園「エスパーですから……というのは冗談で、顔を見ればわかりますよ。
    私達のことを探していたみたいですし」ニコッ

苗木「(ドキッ)あ、はは……さすが舞園さん」

のび太(やっぱりキレイだなぁ)デレデレ

ドラえもん「二人でなにをしていたの?」

苗木「ああ、舞園さんの護身用の武器を探していたんだ」

舞園「私が無理を言って苗木君に付き合ってもらったんです」

苗木「む、無理なんてそんな! 狙われるとしたら多分女の子だし、僕で良ければ
    いくらでも付き合うよ。困ったことがあったらなんでも言って!」

舞園「はい、ありがとうございます」

のび太「仲がいいねぇ」ニヤニヤ

ドラえもん「二人は仲良しなんだねぇ」ニヤニヤ

苗木「ちょっと! からかわないでよ。僕なんかが相手じゃ舞園さんに迷惑が……」

舞園「迷惑じゃないですよ。むしろ、苗木君なら大歓迎です」

苗木「え? それってどういう……」


聞き返すが、舞園ははぐらかして話題を変えた。


舞園「それより、体育館に行きませんか? 入口にいろいろ置いてあったはずです」

のび太「そうだっけ?」

55 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:13:26.62 ID:VEtjUOmu0

ドラえもん「んもう、いろいろ変なものが置いてあったじゃないか」

のび太「じゃあ行こうー!」

ドラえもん「待ってよ、のび太くん!」

舞園「苗木君も行きましょう」

苗木「う、うん」

苗木(さっきのってどういう意味だったんだろう……い、いや気のせいだよ!
    うん、そうだ。そうに違いない……)


そう自分に言い聞かせながら苗木は平静さを取り戻し、三人を追うのであった。


  ― 体育館前ホール ―


のび太「みてみて! 金色の刀がおいてあるよ!」

舞園「本物ではなく、模擬刀のようですね」

苗木「これなら大きさも重さもちょうどいいし、護身用に……って、うわ!」

ドラえもん「あらー、手に金箔がべったり」

苗木「これじゃあ持ち歩くのには向かないな」

舞園「でも部屋に置いておく分にはいいかもしれませんね」

のび太「キラキラしてかっこいいなぁ」ジーッ

舞園「……あの、もしかしてのび太君。これほしいですか?」

のび太「うん! ほしい!」

56 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:22:38.66 ID:VEtjUOmu0

苗木「じゃあのび太君にあげようか? 思えば大和田君も言ってたけど、
    子供ののび太君が狙われる可能性だって十分あるんだし」

のび太「ほんとう?!」

ドラえもん「あー、せっかくだけどムリムリ。のび太くんにあげたって
       使いこなせないよ。バットもろくに振れやしないんだから」

のび太「それもそっかぁ。でも部屋がなんか殺風景だし、飾るくらい……」

ドラえもん「やめなよ。他に使う人がいるかもしれないじゃない」


諦めきれないのび太の姿を見て、なんとか出来ないかと苗木は考える。


苗木「……そうだ! 石丸君に使ってもらえばいいんじゃない?」

舞園「そうですね! 石丸君なら剣道くらいやってそうですし、
    のび太君を狙って暴漢が部屋に押し入らないとも限りません」

のび太「じゃあ持ってかえっていいの? ヤッター!」

苗木「子共が持つには少し重いし、新聞紙で包んで僕が持って行ってあげるよ」

のび太「ありがとう、お兄さん!」

ドラえもん「よかったね、のび太くん」


             ・

             ・

             ・


のび太(そして残り一日半、ぼくたちは楽しくすごした。動機がくばられるまでは事件も
     おきないって知ってたし、ほかのみんなは最初こそ緊張してたみたいだけど
     ぼくたちふたりのそんざいがいろいろといい方向にはたらいたみたいだ)

57 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:25:13.41 ID:VEtjUOmu0

  ― 体育館 ―


生徒達の何人かとドラえもんのび太はドッジボールをして遊んでいた。


ドテッ!

のび太「いったー!」

江ノ島「あんたねー……これで三回目だよ? マジで運動オンチってヤツ?」

桑田「ほんとーに呆れるほどトロくさいヤツだな……」

大和田「おいボールそっちにあんだからさっさと投げろよ」

桑田「へーへー」シュッ!

ドラえもん「のび太くん、がんばれー!」

大和田「気持ちはわかるけどよ、いまは敵だぜ。自分の身を考えろよ」

苗木「最初は渋ってたけど始まったら結構ノリノリなんだね、大和田君」

大和田「ったりめーだ。男なら勝負は常に全力よ!」

舞園「そうです! 手加減なんてしてあげませんよ!」

苗木「舞園さんまで?!」

朝日奈「あ、苗木危ない!」


ドカッ。


苗木「」キュー

58 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:33:39.33 ID:VEtjUOmu0

  ― 食堂 ―


生徒達はドラえもんが持ってきていたトランプでババ抜きをしている。


葉隠「ババはこっち! つまり反対側がセーフだべ」

のび太「わーん、また負けちゃった!」

葉隠「俺の占いを使えばなんのこれしき!」

セレス「何が占いですか。のび太君の顔色を見れば一目瞭然ではありませんか」

不二咲「ね、落ち込まないでもう一回やろ? 次はきっと勝てるよ」

のび太「うん、ありがとう不二咲さん」

山田「子供をさりげなく気遣うちーたんマジ天使」

ドラえもん「それにしてもセレスさんは強いなぁ。もう八連勝だよ」

セレス「当然ですわ。わたくしギャンブラーですから」

大和田「イカサマでもしてんじゃねえか?」

石丸「大和田君! 根拠もなく仲間を疑うなど最低の行為だぞ!」

大和田「ああ? 軽い冗談だろ。いちいち本気にしてんじゃねえよ! うぜーヤツだな」

苗木「け、喧嘩はやめてね……頼むから」

59 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:36:26.00 ID:VEtjUOmu0

朝日奈「ホント。のび太がぶっちぎりのビリだけど、その次は石丸と大和田だよ?
     ケンカする時間があるなら早く逆転しないと。下位三人は罰ゲームだからね!」

石丸「む、ゲームはやりなれていないものでな。次こそは勝ってみせるぞ!」

大和田「ちょ、罰ゲームとか聞いてねえぞ! おい、朝日奈テメェ!」

桑田「いーじゃんいーじゃん。このメンツになにやらせるよ?」

舞園「のび太くんがいるからあんまり酷いのはダメですよ!」

大神「一人ずつ歌でも歌ってもらうか」

江ノ島「ちょっとやめてよね……聞かされるこっちがマジヤバなんですけど」


             ・

             ・

             ・


のび太(一階しか解放されてないからスペースは限られてるけど、ぼくたちのために
     みんなで一緒に缶ケリやドッジボールをしてくれたり、退屈しのぎのために
     こっそりもってきてたトランプで遊んだりした。たのしかったなぁ)

のび太(アニメでは本当にみんなの一面しか知れてなかったんだってイタいほどわかった。
     舞園さんはすっごく優しくて、苗木さんと仲が良くて、二人はお似合いで……)

のび太(ほんとうに舞園さんは苗木さんをうらぎって人殺しなんてするのかな……?
     今回はぼくたちがいるから考えを変えてくれたりとか)

のび太(ぼく、イヤだよ……コロシアイなんて……)

60 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 00:40:42.33 ID:VEtjUOmu0

ここまで。ちょっと序盤テンポ悪かったですね…
ロンパと合わせると人数が多いからドラのびだけに絞ったんですが

次からいよいよコロシアイスタート。
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 01:49:04.89 ID:Mzb7mcFDO
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 07:16:15.25 ID:geFqI/O/0
乙です
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 08:08:23.45 ID:whng+iuYo
のび太が十神嫌いすぎでワロス
64 : ◆takaJZRsBc [sage saga]:2018/01/09(火) 20:01:37.18 ID:f4dScVjg0


  第三話 コロシアイをとめろ!


  ― 男子トイレ ―


コロシアイ学園生活四日目。朝。


ドラえもん「いよいよだね」

のび太「うん、いよいよだ」

ドラえもん「ぼくたちがやること、ちゃんと覚えてる?」

のび太「わすれるわけないよ。モノクマが視聴覚室の話をしたらまっさきに
     走っていってDVDをこわせばいいんでしょ? かんたんじゃない!」

ドラえもん「うまくいくといいけど……」


『校内放送、校内放送。全員体育館に集合!』


のび太「きた!」


  ― 体育館 ―


モノクマ「やあ、みんな元気? 三日ぶりだね」

苗木「僕達に一体何の用だ?」

モノクマ「オマエラがなかなかコロシアイをしないからだよ!」

セレス「あら、コロシアイをせずここで一生過ごす選択肢もあると初めにおっしゃったのは
     あなたではありませんか。わたくし達は適応しているだけですわ」

モノクマ「なんとでも言いなよ。とにかく、先生は考えました。人も環境も
      整っているのにコロシアイが起こらないのは動機がないからだと」

十神「動機だと?」

65 : ◆takaJZRsBc [sage saga]:2018/01/09(火) 20:03:50.70 ID:f4dScVjg0

モノクマ「と言う訳で、視聴覚室にプレゼントを用意しました!」


言うやいなやドラえもんとのび太は駆け出す。


のび太「わああああ!」

ドラえもん「ぬおおおお!」

苗木「ド、ドラえもん? のび太君!」

大神「一体どうしたのだ?」

モノクマ「何だ、あいつら? まあ、いいや。とにかくそういう訳だから。じゃーねー」ピョーイ

苗木「二人を探さないと!」

霧切「その必要はないわ。彼らは私達が向かう場所を聞いている。
    視聴覚室に行けばそのうち合流出来るはずよ」

石丸「で、ではとりあえず視聴覚室に向かうとするか。そこで合流出来なかったら探しに行くとしよう」


  ― 視聴覚室 ―


ドラえもん「あった! これだ!」

のび太「よし! 壊そう! ……けっこうかたいな」

ドラえもん「机を使って折り曲げたり足で踏み付けるのがいいよ」


バキバキ!


モノクマ「ちょ、ちょっとおおお! 何やってんの君達?!」

のび太「なにって……こわしてるんだよ!」

66 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 20:05:58.63 ID:f4dScVjg0

モノクマ「だから何で?! 意味がわからないよ!」

苗木「あ、のび太君達がいたよ!」

大和田「なんだ、先に来てただけかよ。心配させんな!」

十神「そんなことはどうでもいい。それより貴様等、ここで何をしている?」

ドラえもん(マズイ、十神くんに目をつけられた。頭が回るから厄介だな……)

のび太「もう安心してよ! DVDはこわしちゃったから!」

霧切「……ここに置かれているプレゼントがDVDだとわかっていたの?」

ドラえもん「い……いや知らなかったよ! いま見つけたんだ!」

モノクマ「もう! せっかく君達が気になって気になって気になって
      仕方がない外の映像をいれてやったスペシャルDVDなのに!」

苗木「外の映像?」

舞園「外の様子がわかるんですか……?!」

のび太(ざーんねんでした。もうDVDはぜんぶこわしちゃったもんねー)ベー

モノクマ「そう。のび太君達によって壊されちゃったけど……ま、ここに予備があるんだけどね!」

のび太「へ?」

ドラえもん「そ、そんな……!」

モノクマ「もしかしたら勘の良い奴が壊すんじゃないかと思って二枚用意しといて正解だったよ。
      まさかそれがどんくさいキミ達だというのはちょっと予想外だったけどね。うぷぷ」

モノクマ「そもそもさー、DVDだよ? 元のデータがある限り何枚だって用意出来るに
      決まってるじゃん! 馬鹿なの君達? さ、みんな自分のDVDを受け取って」

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/09(火) 20:08:30.41 ID:vq5OKFi10
そうだよな
68 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 20:15:51.62 ID:f4dScVjg0

結局、モノクマの手によって全員にDVDが配られてしまった。


のび太「あ、あ、みんな見ちゃダメ〜!!」

苗木「のび太君?!」

のび太「それは見ちゃいけないんだ〜! 見ないで〜!」

霧切「……どうして見てはいけないのかしら?」

のび太「う、ぐぅ……それは……」

ドラえもん「く、黒幕の用意した映像なんてろくなものなワケないよ!」

のび太「そ、そうだそうだ! 催眠光線が出てコロシアイをしたくなるかもしれないよ!」

山田「催眠光線ですか……」

葉隠「サブプライム効果ってヤツか?」

霧切「サブリミナル効果ね」

のび太「とにかく! ダメなものはダメなんだよ! わかってよ! うわーん!!」

舞園「のび太君……」

石丸「……のび太君、君の気持ちはわかった。その通りだ! 黒幕の用意した映像など
    ろくな物ではないに決まっている! 君達の決死の思いを尊重し、僕は見ないぞ!」

苗木「僕も見ないことにするよ。だって二人とも本当に真剣に見えるし」

不二咲「子供だから、僕達より感受性が強いのかもしれないね。何か危険を感じたのかも」

大和田「俺も見ねーわ。ガキが泣いてここまで訴えてんだぜ? クるものがあるだろうよ」

のび太「みんな、ありがとう……舞園お姉さんは?」

69 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 20:19:55.17 ID:f4dScVjg0

舞園「え。私、ですか……?」


逡巡する舞園の後ろを江ノ島含め数名が通って行く。


江ノ島「子供のワケわかんない言葉信じるとかバッカじゃないのぉ?!
     外の映像なんてメチャクチャ気になるじゃん。アタシは見るから!」

十神「同感だ。くだらん」

腐川「と、十神君の言う通りよ! 私も見るわ」

セレス「見ないことには判断出来ませんものねぇ」

のび太「あ、ああ……」

ドラえもん(彼らは予想通り見てしまうか……でも、舞園さんさえ止められれば!)

桑田「お、おい。俺達はどうするよ……?」

山田「気にはなりますが、いざ見るとなると……」

葉隠「よ、よし! ここは俺の占いで決めるべ!」


悩む彼らの動きを制するように、霧切が一歩前に出た。


霧切「私は見るわ」

桑田「マジかよ……」

霧切「……あなた達、怖いのなら私の反応を見てから見るかどうか決めたらどうかしら」

葉隠「おお! そりゃ名案だな!」

70 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 20:32:48.78 ID:f4dScVjg0

苗木「なんだか霧切さんに嫌な役目を押し付けちゃうような気がするけど」

霧切「気にしないわ。もしこのDVDが本当に良くない物の場合、全員が見てしまうよりマシだもの」


そう言って霧切は席に座り、ディスクを入れた。その時、悲鳴が上がる。


腐川「ひ、ひぃぃぃっ!!」

石丸「な、何だ?!」

舞園「悲鳴?!」

十神「フン、こんなものか。予想の範囲内だ」

苗木「十神君! 君のDVDには一体何が……?」

十神「霧切に聞くんだろう? ……まあ、そうだな。貴様等精神の弱い愚民は見ない方が
    いいかもしれんな。この俺にとってはつまらんコケ脅しだが。クッ、クハハハ」

霧切「…………」スッ

舞園「あ、霧切さん! ……どうでしたか?」

霧切「見ない方がいいわ」

舞園「えっ」

霧切「のび太君達の言った通りね。このDVDには決して楽しい映像は入っていない。見ても
    気分が悪くなるだけよ。どうしてもと言うなら止めないけど、あまりお勧めしないわ」


スタスタスタ……

71 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 21:00:12.64 ID:f4dScVjg0

桑田「マジか……じゃあ、俺も見んのやめよー」

葉隠「あの冷静な霧切っちに言われるとなぁ」

山田「ぼ、僕もやめておきます。僕のゴーストが見ない方がいいと囁くので」

舞園「…………」

ドラえもん「舞園さん……」

苗木「舞園さんはどうする?」

舞園「……私も見ないことにします」

のび太「やったー! 良かったー!」

ドラえもん「良かったねぇ!」

苗木「舞園さん、なんか顔色悪いけど大丈夫? 部屋に戻ろうか?」

舞園「……大丈夫です。こんな所にいたら気分も暗くなっちゃいますし、行きましょう」



  ― 男子トイレ ―


のび太「やったね! これでひとつ目の事件はふせげたよ。かんたんかんたん」

ドラえもん「安心するのはまだ早いよ。一応タイムテレビで苗木くんの部屋を見てみよう」


二人はタイムテレビにかじりつく。

72 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 21:28:59.96 ID:f4dScVjg0

のび太「ほら、部屋の交換なんかしてない! ほんとにだいじょうぶなんだよ!」

ドラえもん「……待って。念には念をいれて次の日も見てみよう」

のび太「あ、あれ? 舞園さんが苗木さんの部屋にいる……で、苗木さんが出て行った」

ドラえもん「これは……部屋の交換だ!」

のび太「まさか……じゃあ!」

ドラえもん「場所はそのままで時間を犯行時刻まで進めてみよう!」


パッ。

そこに映っていたのは、ベットのすぐ横に仰向けとなって倒れた人間……
全身血まみれで虚ろな目のまま事切れた【桑田怜恩】の無残な姿だった。


ドラえもん・のび太「きゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

のび太「な、なんで?! どうして?!! 死ぬのは舞園さんのはずじゃ?!」

ドラえもん「わからないよ! 一体なにが?!」

「おい、なんだ今の悲鳴?!」バタバタバタ

ドラえもん「マズイ! 隠さないと!」ガチャガチャ


誰かがこちらに向かってくる音が聞こえた。慌ててドラえもんはタイムテレビをポケットに仕舞う。


桑田「おい! どうしたっ?!」

のび太「え、えっと……」

73 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 21:37:03.23 ID:f4dScVjg0

ドラえもん「何も……ないよ……」

桑田「ハァ? 何もなくてあんな悲鳴あげるかフツー? ……つーかなんだよ。
    幽霊でも見てるみたいな顔して人を見やがってさ」

ドラえもん「あ、いや、その」

のび太「ゴキブリ! こーんなおっきなゴキブリがそこにいたんだ!」

桑田「ハアァ?」

石丸「どうしたあああっ?! 何があったんだ! 大丈夫かね、二人共?!」

桑田「……ああ、大丈夫だ。ゴキブリだってよ。まったく人騒がせなヤツらだぜ」

石丸「む、虫だと? なんだ、良かった……しかし男子たるもの、たかだか虫程度で
    あのように盛大な悲鳴をあげるとは些か情けないぞ!」

ドラえもん「ご、ごめんなさい」

のび太「さっきのことで、ちょっとこわくなっちゃってて……」

石丸「ム……そうであったか。そうだな。あまり思いたくはないが、あの映像を見た誰かが、
    早まった行動を取らないとは断言出来ない。外で待っているから早く手を洗いたまえ」

ドラえもん「はい……」

のび太「どうしよう。これ以上トイレにこもれないよ。へんに思われちゃう」

ドラえもん「そうだ。もう一ヶ所監視カメラのない所があっただろう?」

のび太「そんな場所あったっけ?」

ドラえもん「個室のシャワールームだよ! シャワーを浴びるふりをして続きを話そう」

のび太「うん……」

74 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 21:38:03.50 ID:f4dScVjg0

一旦中断
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 21:51:12.77 ID:x6vN1QLc0
これ舞園ちゃん止められたとしても他の奴が事件起こしそうだな…
76 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 22:49:37.48 ID:f4dScVjg0

  ― シャワールーム ―


のび太「それにしても、犯人はたぶん舞園さんだよね……?
     どうして?? DVDは見なかったはずなのに!」

ドラえもん「待って! 今舞園さんの行動を追っているから!」


タイムテレビを必死に操作するドラえもん。すると何かを見つけ驚愕した。


ドラえもん「これは……!」

のび太「視聴覚室? あ、舞園さんが!」

ドラえもん「DVDを見てる! そうか、やっぱり気になって見てしまったんだ……」

のび太「いますぐ視聴覚室にもどってこわしに行こう!」

ドラえもん「無駄だよ……モノクマが言ってただろう? 元データがある限り何度でも
       複製できるんだ。それに次の動機もある。舞園さん自体をとめないと意味がない」

のび太「そんな……」

ドラえもん「しかしそれは至難だろうなぁ。どうして舞園さんが桑田くんを狙ったのかの
       動機もよくわからないし、最初に殺人を企むくらいだからきっと舞園さんは
       すごく思いつめていて決意も固いだろうし……」

のび太「なんとかできないの?!」

ドラえもん「あきらめてくれるのが一番だけど、最悪直接のりこむしかないだろうね……」

のび太「あ、そうだった。ぼくらにはひみつ道具があるじゃない! ちょくせつ助ければいいんだ!」

ドラえもん「……気はすすまないけどしょうがない」


意気揚々となったのび太に対し、ドラえもんの表情はどこか暗かった。

77 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 23:00:19.03 ID:f4dScVjg0

のび太「ドラえもん……どうしてあんまりノリ気じゃないの? ふたりを助けるんだよ?」

ドラえもん「助けた後が問題なんだ。考えてもみなよ? あの感情的で短気そうな桑田君が、
       自分を殺そうとした舞園さんをただで許すと思う?」

のび太「そういえば、反撃して追い詰めたただけでじゅうぶんなのに
     殺しちゃったんだもんね……やっぱりそうとう怒ってたのかな……」

ドラえもん「そりゃあ怒るだろうよ! 間一髪で自分が死んでるんだし、しかも
       信じていた相手から裏切られたんだよ? 逆上するのもしかたないさ」

のび太「まあ、そうか……ぼくでいえばしずかちゃんにだまされたようなもんだしね。
     ……でも、ぼくだったらきっと殺せないなぁ」

ドラえもん「きみは優しいからね。虫一匹殺せないのがきみの長所だし。
       でもみんながみんなそういうワケじゃないんだよ」

のび太「……やっぱり、舞園さんにおもいとどまってもらうのがいちばんだね」

ドラえもん「事件までに全力をつくすほかないよ」

のび太「うん。……それにしてもさ、なんで桑田さんが死んでたんだろう?
     死ぬのは舞園さんだよね? 殺される場所も違うし」

ドラえもん「事件の直前まで見てみようか」

のび太「怖いな。ぼく見たくない……」

ドラえもん「……わかった。ぼく一人で確認するからきみはあっち向いてて」

のび太「ごめんね、ドラえもん……」

ドラえもん「気にすることないよ。みんなのためならこのくらいへっちゃらさ」


そしてドラえもんは深夜に起こる凶行の一部始終を目撃する。

78 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 23:12:04.83 ID:f4dScVjg0

桑田『お、おい舞園?! なにやってんだ、お前?!』

舞園『死んで! 桑田怜恩!』

桑田『や、やめろ! 話せば分かる! 来るな! 来るんじゃねええええ! ぐっ……!!』


ドラえもん「こ、これは……わかったぞ! 桑田くんが殺された原因!!」

のび太「な、なに?!」

ドラえもん「模擬刀だよ!!」

のび太「モギ刀って、この部屋にあるあの金ぴかの刀?」

ドラえもん「そう! あれは本来は苗木くんの部屋に置かれる物だったんだ!」

のび太「え? どういうこと??」

ドラえもん「思えば変だなって思ってたんだ。きみは寝てたから知らないだろうけど、
       報告会の時アニメになかった出来事があったんだ。つまりこの世界はアニメの
       ダンガンロンパじゃない。ゲームか、アニメとゲームが混ざった世界なんだ」

ドラえもん「アニメだと尺の関係でカットされて最初から苗木くんの部屋に模擬刀があったけど、
       恐らくゲームではあの時苗木くんが自分の部屋へ模擬刀を持ち帰るんだろう」

のび太「えっと……モギ刀が苗木さんの部屋にないとなんでダメなの?」

ドラえもん「裁判を思い出してごらん。漫画みたいなイラストで事件を振り返っていたけど、
       桑田くんは舞園さんの攻撃を咄嗟に模擬刀で防ぐんだ。でも今回その模擬刀は……」

のび太「あっ! ああっ!」

ドラえもん「のび太くんにもわかったようだね」

のび太「じゃあ、ぼくのせいで桑田さんは殺されちゃったってこと?! そんな……!」

79 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 23:25:13.81 ID:f4dScVjg0

ドラえもん「おちついて、のび太くん。まだ事件は起こっていないよ。
       これからぼくらがとめるんだ。いいね?」

のび太「ぼ、ぼくのせいで……ぼくのせいで……うう……」グスッ

ドラえもん「きみのせいじゃないよ。だって知らなかったんだから!
       おちこまないで、これからどうするか二人で考えよう!」

のび太「……うん」


しかし考えども考えども名案は出てこない。


のび太「ダメだ。ぜんぜんうかばないよ」

ドラえもん「こういう時は犯人の気持ちになって考えるんだ」

のび太「舞園さんの気持ちに? ……仲間が死んでるかもしれない。ゆめが叶えられなくなる。
     ……たしかにすごくこわいし、イヤだけど……でも、でもぼくはやっぱり殺せない……」

のび太「わからないよ、舞園さんの気持ち……すごく苦しいってことしか……」

ドラえもん「ぼくたち、誰かを殺したいなんて思ったことないからね……」

のび太「やっつけたいとか、いなくなっちゃえばいいならしょっちゅうだけどなぁ」

ドラえもん「いっそ、誰かに聞いてみる? 大人の方が色々知ってるだろうし」

のび太「そうだね。ぼくたちだけで考えるよりいいかも」


そしてシャワールームを出ると、真っ先に目に入った大人に意見を求めてみる。


石丸「……フム。今までに誰かを殺したくなったことがあるか、かい?」

のび太「お兄さんはある?」

80 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 23:35:19.92 ID:f4dScVjg0

石丸「ウム、ないなっ!」

ドラえもん「一度も?」

石丸「ないっ!」

のび太「実際に殺すとかじゃなくて、そのくらいハラが立ったとか……」

石丸「僕も人間だ。自分本位な人間や努力をしない怠惰な人間に腹を立てることもある。
    だが、他人に腹を立てるくらいならその時間を自身の向上に当てるべきだと思う」

石丸「僕が本当に許せないのはモノクマのような世の理不尽だ!」

ドラえもん「つまり、社会とか政治の理不尽に対しては怒るけど、
       特定の誰かに対して本気で怒ったりはしないということ?」

石丸「その通り。どんな人間でも、その人が悪事を行うまでに必ず何か原因があるだろう?
    それは周囲の環境だったり、挫折や苦労の経験がなかったり……だから、その人だけに
    責任を求めて責め立てるというのはどうにも肌に合わないのだ」

ドラえもん(まだ高校生だというのに、立派だなぁ)


ドラえもんは石丸の考え方に感心したが、まだ子供ののび太にはその言葉の意味がよくわからなかった。


のび太「もう! ぜんぜん参考にならない! お兄さんにきいたぼくがバカだったよ」

石丸「う、ぐぅ……役に立てないようですまない。それにしてもどうしてそんな質問を?」

のび太「えーと、それは……」

ドラえもん「コロシアイが起こらないようにするには、逆に人を殺そうとする人の気持ちを
       理解できればなにか手を打てるんじゃないかってぼくらは考えたんだ」

石丸「! そうだったのか! 君達は君達でコロシアイを止めようと動いているのだね?!」

81 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/09(火) 23:52:22.32 ID:f4dScVjg0

健気な子供達の姿に石丸は深い感銘を受けたが、それと同時に自己嫌悪に陥ってしまった。


石丸「……子供達ですらこんなに頑張っているというのに、高校生で風紀委員の
    僕は役に立つ意見の一つすら言えない。どうにも僕は空気が読めないな……」

ドラえもん「あ、あの……そんなにおちこまないで。のび太くんはまだ子供だから、ね?」アタフタ

石丸「……いや、いいんだ。ありがとう。力になれなくてすまない……」

のび太「はやく行こうよ、ドラえもん。ぼくたちには時間がないんだから!」

ドラえもん「う、うん……」チラッ

石丸「…………」ブツブツ


後ろ髪を引かれながらもドラえもんは部屋を後にした。


ドラえもん「なんだか悪いことしちゃったなぁ」

のび太「しかたないよ。いまはあの人にかまってるヨユウはないんだし。
     それより急がないと! 全員に順番に聞いていってみる?」

ドラえもん「気をつけないと舞園さんに見つかるかもしれない。それに、あまり動きすぎると
       黒幕に怪しまれるよ。ぼくたちは今監視されているんだから」

のび太「じゃあ、とりあえず苗木さんに話を聞いたらまたそうだん会しよっか」


               ◇     ◇     ◇


のび太「どこにもいないね」

ドラえもん「部屋にいるんじゃないかな? そうなら好都合だ。行ってみよう」


苗木の部屋の前に来た二人はインターホンを鳴らす。

82 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/10(水) 00:07:08.19 ID:oPpOdolR0

苗木「はーい。あ、どうしたの? 二人揃って」

のび太「その、ちょっと聞きたいことがあって……」

苗木「じゃあ立ち話もなんだし、中に入りなよ」

ドラえもん「いいの?」

苗木「うん? もちろん、いいよ。さ、どうぞ」

ドラえもん(……警戒心がないなぁ。だから舞園さんに利用されちゃったんだろうけど)

苗木「それで、どうかしたの?」

のび太「そのー、ちょっと聞きにくいんですけど」

ドラえもん「苗木くんは、誰かを殺したいほど怒ったことってある?」

苗木「え、ええ?! ないよ! 見ての通り僕って普通ど真ん中だし、普通の人は
    まずないんじゃないかなぁ。……もしかして、僕が誰かを殺しそうに見えた?」

のび太「い、いやいや!」

ドラえもん「そんなそんな!」

ドラえもん・のび太(殺すのは舞園さんだよ!)

のび太「じ、じつはね……」カクカクシカジカ

苗木「なるほど。殺人をする人の心理を調べる、か。すごいね、小学生なのに」

のび太「そんなたいしたものじゃないよ。ただ、人を殺そうとするくらいだから、
     きっとその人はあいてをすごい怒ってるしきらってると思うんだよね」

ドラえもん「嫌いな人を好きにさせるにはどうしたらいいと思う?」

苗木「嫌いな人に好感を持ってもらう方法かぁ。うーん、難しいな。とりあえず、
    やっぱりその人のいい所を根気よく伝えていくしかないんじゃないかな」

ドラえもん「いい所を伝える、か」

のび太「それいいね! 苗木お兄さんは石丸お兄さんと違って頼りになる」

苗木「え、まさかさっきの質問を石丸君にもしたの? なんて言ってた?」

83 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/10(水) 00:17:58.12 ID:oPpOdolR0

のび太「なんだっけ。えーと、だれかにハラを立てるくらいならその時間勉強する。
     人にハラは立たないけど社会やせいじ?のリフジンにはハラが立つ、だってさ」

苗木「……そんなこと言ってたんだ。なんていうか、石丸君らしいな」

のび太「へんなお兄さんだよね」

苗木「いや、凄いと思うよ。僕は普通の人間だからとてもそんな考えは出来ないし」

のび太「ふーん、そうかな? でもぼくは苗木お兄さんの方がはなしやすいよ?」

苗木「ふふっ、ありがとう。でもそれは僕が平凡だからじゃないかな。思えば、石丸君だけ
    じゃなくて他のみんなも、天才だからこそ周りから理解されない所があるかもね」

ドラえもん「理解されない……お互いの不理解がコロシアイに繋がるのかもしれないな」

苗木「うん、それはあると思う。人間なんだから、長所も短所もあるのは仕方ないのに
    こんな所に押し込められてコロシアイを強制されて……余裕がないんだよね。
    十神君達だって、時間さえればきっと理解し合えると思うんだ」

のび太「えー、ほかの人はともかくあの人はムリじゃないかなぁ……」

苗木「わからないよ? 最初に無理だって決めつけちゃったら、どんなことだって
    無理になっちゃう。まずはなんでもやってみないとね」

のび太「お兄さん、前向きだね」

苗木「ハハ、よく言われるよ。前向きなのが平凡な僕の唯一の長所だからね」

のび太「かっこいいよ」

のび太(さすが主人公だなぁ。すなおに感心できる)

ドラえもん「ぼくもそう思うよ」

ドラえもん(苗木くんはやっぱり主人公なんだねぇ。すごい能力はないけど安心感がある)

のび太「ありがとうお兄さん。やる気も出たしヒントももらったし、ぼくたちガンバるよ!」

苗木「何をするのかわからないけど、無理はしないようにね。
    何か困ったり、僕達の手が必要になったらいつでも協力するから」

のび太「うん、わかった!」

ドラえもん「じゃあぼくたちこれで失礼します」

苗木「役に立てて良かった。二人共頑張ってね!」

84 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/10(水) 00:28:51.41 ID:oPpOdolR0

ここまで。

読んでくれてる皆様ありがとうございます。
ドラとのびは結構ボケボケな行動取ることも多いと思うので
合いの手は助かります。乙や感想も嬉しいです。

明日は用事があって来れません。明後日は可能なら来たいと思います。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/11(木) 17:08:00.75 ID:ty+TH0iv0
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 20:08:16.07 ID:JNN6mxW6o
乙面白いー
のび太は考え方とか行動が本当に小学生だなぁって>>81とか
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/12(金) 19:50:38.23 ID:jHXgGkMg0
のび太は無人島で10年過ごしてるからな
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 19:51:47.40 ID:aqnrEToy0
そういや[たぬき]の秘密道具ならモノモノマシーンの道具も直せたり出来るんだろうか?
光線銃ズリオンとか
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/13(土) 20:16:34.93 ID:MYcr4eBM0
監視カメラあるから使っちゃ行けないけどな、トイレか風呂場でしか使えない
90 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 22:01:12.70 ID:Xatsirjn0


  第四話 桑田くんのなやみ(前編)


  ― 男子トイレ ―


ドラえもん「さて、勢いに乗ったところで作戦を立てようか」

のび太「桑田さんのいいところを舞園さんにアピールするんだね!」

ドラえもん「そういうこと。じゃあ、桑田くんのいい所を挙げていって」

のび太「え? うんと……明るいところ、にぎやかなところ、おもしろいところ」

ドラえもん「他には?」

のび太「えーと、あとは野球がうまいところ」

ドラえもん「他には?」

のび太「えーっと……もううかばないよ! だって、たった四日しか会ってないし
     そもそもそんなに親しくないもの! ゲームの時に話したていどだよ?」

ドラえもん「意外と不良の大和田くんの方が面倒見が良くて話しかけてくれるんだよね……」

のび太「でも、いま言ったいいところのなかで一ついいのがあった!」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「野球だよ!」

ドラえもん「野球? 野球がなんでいいんだい?」

のび太「だって、野球がうまいってそれだけでもうかっこいいじゃない!
     舞園さんだってきっと見なおしてくれるよ!」

ドラえもん「あのねぇ、のび太くん……もう忘れちゃったの? 桑田くんはね、超高校級の
       野球選手で天才だけど野球が嫌いってしょっちゅう自分で言ってるじゃない」

91 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 22:08:56.78 ID:Xatsirjn0

のび太「そんなの知ってるよ。でもほら、あの人って大の女の子好きでしょ?」

ドラえもん「ああ、なるほど。女の子にモテるとか適当なこと言って
       その気にさせるってこと? きみにしては考えたじゃない」

のび太「きみにしてははよけい。さっそくいこう!」


  ― 食堂 ―


のび太「おにーいーさん!」

桑田「あ? なんだよ」

のび太「さっきは心配してまっ先にかけつけてくれてありがとう」

桑田「……ん、まあな。そりゃガキの悲鳴聞こえたら駆け付けるだろフツー」

ドラえもん「いやぁ、かっこよかったよ!」

ドラえもん(まずはおだてて機嫌を取ろう)

桑田「んなオーゲサな……」

のび太「ほんとうだって! ピンチの時にあらわれるヒーローみたいだったよ! かっこよかった!」

ドラえもん「タイミングとかね。表情とか」

桑田「……え、マジで? いやいやホントにマジで??」

のび太「マジだよ」

ドラえもん「大マジだね」

桑田「え、ホント? いや、お前ら見る目あるわー! 俺ってやっぱかっこいいよな?!」

のび太「う、うん」

ドラえもん「そうだね!(色々言いたいことはあるけどがまんがまん)」

92 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 22:20:06.11 ID:Xatsirjn0

桑田「おしっ! なんだ、その……なんか遊んでやろうか? ヒマだから俺んとこ来たんだろ?」

のび太「うん! じつはね……」

のび太(よし、きたぞ。ほんとうにたんじゅんだなこの人……)


のび太に言われるようでは人として終わっている。


のび太「お兄さんと野球がやりたいなー」

桑田「……野球?」ピクッ

ドラえもん「なにせ、超高校級の野球選手だもんね!」

のび太「そう! 超高校級の野球選手と野球ができるキカイなんてそうそうないもの。
     帰ったらみんなにじまんできるしさぞかしうらやましがられるんだろうな〜」

ドラえもん「野球が出来るとモテるでしょ?」ボソ

のび太「舞園お姉さんにいいところ見せちゃおうよ」ボソ

桑田「……確かに俺は野球の天才だし、野球やってた時はめっちゃモテた」

のび太「お?」

ドラえもん「お?」

桑田「でもやらねぇ」

のび太「え? え?」

ドラえもん「どうして……」

桑田「もう野球はやめたんだ。あんな泥くさくてダセースポーツはしねー。
    どうしてもやりてぇって言うなら大和田にでも頼め」

のび太「そ、そんなぁ……」

93 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 22:37:23.20 ID:Xatsirjn0

ドラえもん「そんなこと言わないで……ハッ(視線を感じる)」


振り向くと、そこには真顔でこちらを見ている舞園がいた。


ドラえもん(まずい! 舞園さんに今のやりとりを見られてた!)

舞園「(スッ)桑田君、子供のお願いですし……引き受けてあげたらどうですか?」

桑田「……わりぃけど、いくら舞園ちゃんの頼みでもそれはきけねえわ。
    あー、野球なんて言うからなんかテンション落ちちまったよ」

舞園「…………」

のび太「ア、アワアワアワ!」

ドラえもん「ま、舞園さん?」

舞園「すみません。お二人の力になれなくて……」

のび太「い、いや……急にいいだしたぼくらがわるいんだよ!」

ドラえもん「そ、そうそう! 気分が乗らない時って誰でもあるしね。ハハ!」

のび太(まずいことになっちゃったよ!)

ドラえもん(ど、どうしよう?!)


そこへ、更に運悪く大和田がやってきた。


大和田「うーっす、ガキ共。どうしたそんな顔して? 元気ねえな」

のび太「あ、いやそれは……」

ドラえもん「なんでもないよ!」

大和田「なんでもねえわけねえだろ。なんか顔色良くねえぞ?」

94 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 22:43:02.09 ID:Xatsirjn0

舞園「ちょうどいい所に来てくれました、大和田君」

大和田「あん? どうした、舞園?」

舞園「大和田君からも頼んでもらえませんか? のび太君達、野球がしたいって
    桑田君にお願いしてるんですけど、桑田君は嫌だって言うんです」

大和田「ああ? 野球? そんくらいやってやれよ。お前超高校級の野球選手だろうが」

桑田「だから……もう野球はやめたんだって。あんなダサいスポーツ元々好きじゃねーし」

大和田「ハァ? 別に試合するワケじゃあるめえし、少しガキどもに付き合うだけだろ?
     なんでそんな意地はってんだ。ちょっとくらいやってやりゃいいじゃねえか」

桑田「うるせぇな! やりたくねえっつってんだろッ! 俺は野球なんて大嫌いなんだよ!!」


ガタッバタバタバタ……


のび太「あ!」

ドラえもん「追いかけよう!」タッタッタッタッ

大和田「なんでぃ、変なヤツらだな」

舞園「……酷い人ですね。子供のお願いすら応えてあげないなんて……」


しかし、桑田の去った方向を見る舞園の目はとてつもなく暗くて冷たい。


大和田(なんだ……? 今こいつやべぇ目つきしてたぞ)ゾクッ


               ◇     ◇     ◇


のび太「どこいっちゃったんだろ」

ドラえもん「すぐに見つかるはずだよ。一階しか解放されてないんだから」

のび太「いってるそばから見つけた! お兄さ……」

95 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 22:50:27.28 ID:Xatsirjn0

ドラえもん「待って! なにか様子が変だ。トイレで透明マントをかぶって近付いてみよう」

のび太「でも、透明マントをかぶったらぼくたちもおたがいに見えなくなるよ」

ドラえもん「姿は見えなくても声は聞こえるし、はぐれないように手をつなげば大丈夫」

のび太「よし、じゃあ行こうか」


             ・

             ・

             ・


桑田「ああぁ、畜生……人の気も知らないで野球野球言いやがって……
    ガキどもがやりたいなんて言うから久しぶりにやりたくなっちまったじゃねえか」

桑田「いや! 違う! 俺は野球なんて嫌いだ。そうだ、大嫌いなんだ。夏は暑いし
    ユニフォームや部室はくっせえしボウズはダセエし監督はうるさいし」

桑田「野球なんて嫌いだ野球なんて嫌いだ野球なんて大大大嫌いだ」

桑田「……ボール、投げてぇなぁ。バット振りてえ……」

桑田「違う! 違う違う違う! こんなの本心じゃねえ。俺は野球に洗脳されてるだけだ!」

桑田「好きじゃない。好きなんかじゃない! あー! 畜生ー! ムシャクシャするー!」


ブツブツブツブツ……


のび太「……なにやってんの、あの人? さっきからずっとあんなかんじだけど」

ドラえもん「あぁ……そうだったのか。桑田くんは本当は野球が大好きだったんだね……」

のび太「え、まさか? きらいだっていってるじゃない?」

ドラえもん「悪いことをしちゃった。とりあえずトイレに戻ろう」

96 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 22:56:41.19 ID:Xatsirjn0

  ― 男子トイレ ―


のび太「好きだっていったりきらいだっていったり、ワケわかんないよ!」

ドラえもん「いや、本当は好きなんだよ! 理由はわからないけど、自分にウソを
       ついているんだ。嫌いだって言い聞かせているだけなんだよ」

のび太「なんのために?」

ドラえもん「……わからない。けど、きっとなにか深い事情があるんだろうね」

のび太「そっか。好きなことを好きっていえないんだ……なんだかかわいそう」

ドラえもん「うん。なんとかしてあげたいね」

のび太「でもどうすればいいんだろう……?」

ドラえもん「こればっかりはぼくにもわからないよ」

のび太「もう! かんじんなときに役に立たないんだから!」

ドラえもん「しょうがないだろ! どうせぼくは落ちこぼれのダメダメロボットだよ!」

のび太「べつにそこまでは言ってないけど……」


その時、二人の前に突然タイムホールが開く。


ドラえもん「な、なんだ?!」

のび太「なに?!」

「ちわーっす。未来デパートの者でーす。ドラえもんさんいらっしゃいますかー?
 ドラミさんからお中元の品のお届けでーす」

ドラえもん「あ、宅配の人か。ご苦労様です」

「じゃ、サインここにお願いします」

ドラえもん「はいはい」

97 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 23:05:53.77 ID:Xatsirjn0

のび太「なにがとどいたの?」

ドラえもん「わあ、ドラ焼きだ! あとで電話しないと」

のび太「……そうだ!」

ドラえもん「なに? どうしたの?」

のび太「おもいきってドラミちゃんに相談してみようよ!」

ドラえもん「ドラミに?」

のび太「そうだよ! ぼくたちにわかんないことでもあたまのいいドラミちゃんなら
     わかるだろうし、きっといい案をかんがえてくれるはずだ!」

ドラえもん「なるほど! じゃあ、久しぶりに会いに行ってみようか」

のび太「うん!」


  ― 未来 ―


ドラミ「お兄ちゃん! のび太さんも! 突然どうしたの?」

のび太「こんにちは、ドラミちゃん」

ドラえもん「やあドラミ。お中元届いたよ。ありがとう」

ドラミ「そんな、いいのに。わざわざお礼を言うために直接来てくれたの?」

ドラえもん「いや、それだけじゃないんだ」

のび太「実はね……」

ドラえもん「カクカクシカジカ、と言うわけなんだよ」

ドラミ「まあ。お兄ちゃん達ったら、また大冒険をしているのね!」

のび太「大冒険って言っても、今回はずっと学校の中にいるだけだけどね」

98 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 23:13:50.50 ID:Xatsirjn0

ドラミ「私そのゲーム知ってるわ」

のび太「え? 本当?」

ドラミ「ええ。レトロゲームって安いし良質な物が多いから、セワシさんもよくやるのよ」

ドラミ「それで私が、どうせゲームするなら推理物とか頭を使う物にしたら? って言って、
     今ちょうど裁判物にハマっているの。ダンガンロンパとか逆転裁判とか」

のび太「じゃあ、ドラミちゃんはぼくたちの知らないことも知っているんじゃ!」

ドラミ「あ、ごめんなさい。私はゲームを直接やった訳じゃないから深い内容までは
     知らないわ。セワシさんも出掛けているし……詳しく話してもらえないかしら?」

ドラえもん「わかった」


今までの状況をドラミに説明する。


ドラえもん「――ということなんだ」

ドラミ「……そうだったの。自分の好きなこと、それも世間から評価されている物を嫌いって
     言うなんてよっぽどよ。多分、野球関連で何か凄く嫌なことがあったんだわ」

のび太「いやなこと?」

99 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 23:24:16.67 ID:Xatsirjn0

ドラミ「ええ。それが何かはわからないけど、恐らく人間関係じゃないかしら? 高校生の
     悩み事なんて勉強、進路、あとは対人関係くらいしかないと思うし」

のび太「人間関係かぁ。……もしかして、チームのなかまとケンカしたとか?」

ドラえもん「ありうるね。ほら、さっき苗木くんが言ってたじゃない?
       天才は周りに理解されづらいみたいなこと」

のび太「じゃあ、げんいんはそれでいいとして……ぼくたちはどうすればいいの?」

ドラえもん「結局そこなんだよなぁ」

ドラミ「ムリにでもやらせてみたら?」

のび太「野球を?」

ドラミ「そう。仮に人間関係が原因だったとしてもそうでなかったにしても、少なくとも今の
     生活でまでウソをつく必要性はないでしょ? 好きだって気持ちを思い出させてあげれば
     案外素直になれるんじゃないかしら。そのきっかけを作ってあげたらいいと思うわ」

のび太「すごい! さすがドラミちゃんだ」

ドラえもん「いやぁ、優秀な妹を持ってぼくは幸せだよ」

ドラミ「どういたしまして! これで舞園さんも思いとどまってくれるといいわね」

のび太「…………」

ドラえもん「…………」

ドラミ「……どうしたの? 私、何かおかしなこと言った?」

100 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 23:33:10.34 ID:Xatsirjn0

のび太「いや、そうじゃなくてね……」

ドラえもん「桑田くんに気を取られていてすっかり忘れてたよ。そうだった。
       舞園さんをとめるのが元々の目的だった……」

ドラミ「……まあ、呆れた。まずは今晩起こる事件をなんとかしなくちゃダメじゃない」

ドラえもん「めんぼくない」

のび太「もう! ドラえもんはいつもかんじんな時にぬけてるんだから!」

ドラえもん「きみだって忘れてただろう! ぼくだけのせいにしないでよ!」

ドラミ「ケンカはやめて。お兄ちゃんとのび太さんにかかっているんだから頑張って! ね?」

ドラえもん・のび太「はーい」


 ― 現代・男子トイレ ―


ドラえもん「ドラミが気付いてくれて良かった。まずは今晩をなんとかしないとね。
       ちょっと反則だけど、今回だけソノウソホントで事件を防ごう」パパラパッパパー

ドラえもん「『今晩は誰も事件を起こさない』。よし、これで今日は大丈夫!」

のび太「もういっそこれで全部なんとかしたいけどね」

ドラえもん「それはダメだよ。前にも言ったけど生徒達が精神的な成長をなにもしてないじゃない」

のび太「わかってるって。……でもさあ、ムリヤリやらせるって言ってもどうやって?
     舞園さんはおろか、あのこわいお兄さんが言ってもきいてくれなかったんだよ?」

ドラえもん「うーん、ぼくに考えがあるんだけど……」

のび太「え?! なにか案があるの? おしえてよ!」

ドラえもん「今こそあの“うるさい人”に活躍してもらう時じゃないかな?」

101 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/13(土) 23:46:00.80 ID:Xatsirjn0

ここまで。2スレ同日更新はなかなか大変だ
次から別日にしよう…

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/13(土) 23:51:02.50 ID:MYcr4eBM0
ソノウソホントが最強じゃね
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 00:16:08.55 ID:WMfiCFsbO
ドラがチート感あるけど面白いな
待ってるから投下頑張ってくれ
104 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 19:06:36.36 ID:vQefG67b0

〜 NGシーン 〜


ドラえもん「ヤル気スイッチ〜!」パパラパッパパー

のび太「なにそれ?」

ドラえもん「この装置を相手に向けてプラスのボタンを押せばヤル気が出るし、
       マイナスのボタンを押せば相手のヤル気を下げることが出来るんだ!」

のび太「それで舞園さんのヤル気を下げるんだね!」

ドラえもん「そういうこと!」

のび太「ぼくにやらせて」サッ

ドラえもん「あっ、ちょっと!」

のび太「えい」ポチッ

舞園「うおおおおおおおお! 桑田ぶっ殺してやる!!」

のび太「まちがえた〜!」

ドラえもん「なにやってんだ?! 殺る気をだしてどうするんだ!!」

のび太「ごめんなさーい!」



〜 まもなく再開 〜

105 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 19:23:50.77 ID:vQefG67b0


  第五話 桑田くんのなやみ(後編)


翌日。朝食会にて。


石丸「静聴せよ!! 今日は諸君らに重大な知らせがある!」

葉隠「重大?」

山田「なんなんですかね?」

石丸「この朝食会終了後、本日は全員で野球を行うっ!」

桑田「ハアアア?! なんでっ?! 冗談じゃねえ!」

十神「俺は参加しないぞ。お前達で勝手にやっていろ」

石丸「ちなみに女子はどうしても嫌なら見学でも良いが男子は全員参加だ。
    特に桑田君! 超高校級の野球選手である君は絶対に絶対に参加とする!」

桑田「だから! なんでだよっ! ありえねーし!」

石丸「これは決定事項だっ!!」

山田「ムチャクチャですよ!」

大和田「おい石丸、別に俺は構わねーがせめて理由くらい言えや」

石丸「ム、失礼した。実はこれには深い理由がある!」

葉隠「なるべく短めに頼むべ」

石丸「実は他ならぬのび太君の頼みなのだっ!」

朝日奈「え、のび太の?」

106 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 19:34:50.70 ID:vQefG67b0

舞園「……そういえば、昨日も桑田君を野球に誘っていましたね」

石丸「のび太君は現在友達がキャプテンをしている地域の野球チームに所属しているのだが」

石丸「その友達というのはジャイアン君と言ってとんでもないガキ大将なのだ!
    そして事あるごとにのび太君をイジメるらしい!」

葉隠「ジャイアン? ジャイアント馬場か?」

山田「ガキ大将でジャイアン……子供向け漫画のキャラクターみたいな安直さですな」

朝日奈「アハハ、ジャイアンだって変な名前!」

苗木「いや、アダ名だと思うよ?」

石丸「のび太君は元々運動が苦手で、今もこんな所に閉じ込められますます野球が下手に
    なってしまうことを危惧している。このままでは帰ってからイジメられてしまうだろう!」

大神「成程。つまりはここに閉じ込められている間に特訓したいということか」

石丸「そうだ! のび太君がイジメられないように僕達は年長者として協力する義務がある!
    そしてのび太君は超高校級の野球選手である桑田君を指名したのだ。わかったか!」

石丸(昨日はのび太君達が困っていたのに僕は何の役にも立てなかった。みんなを
    まとめる風紀委員として、いや人生の先輩として余りにも不甲斐ない……)

石丸(これはチャンスなのだ! 今日ここで僕は名誉を挽回し汚名を返上するぞ!!)


熱い決意と共に石丸の真っ赤な瞳が狂気的に爛々と輝く。


桑田「冗談じゃねえよ! 俺の意思は無視か?!」

石丸「無視に決まっているだろう! 子供の希望を優先する!!」

桑田「やめてくれよ……俺は本当に野球が嫌いなんだって……!」

107 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 19:46:27.75 ID:vQefG67b0

石丸「いいや、駄目だ! 僕が羽交い締めにしてでも君を参加させるぞ!」

桑田「勘弁してくれってマジで……」

のび太「すごい……あのお兄さんほんとうに強い! 頼んで正解だったね」ボソ

ドラえもん「なんという押しの強さ……さすが超高校級の風紀委員だ」ボソ

ドラえもん(自分が正しいと思ったら周りの目を一切気にしない石丸くんのKYさがプラスに
       働いたね。でも桑田くんも相当頑固だからなぁ。すんなり行くといいけど)

桑田「イヤだっつってんだろ! 力ずくでってんならやってみろよ! ああ?!」バン!

石丸「君も往生際が悪いな! 良かろう、そこまで言うならみんなの意見を聞いてみようではないか!」

桑田「え」

石丸「民主主義の法理に則り、多数決で決めれば文句はないな! 僕の意見が正しい、
    のび太君のために桑田君は協力すべきと思う人は挙手してくれたまえ!」

セレス「あら、単独では厳しいと判断してこっちを巻き込む策に出ましたわね」

苗木「流石、石丸君。政治家を目指してるだけあるなぁ……」

不二咲「でも、確かにのび太君達の手助けはしてあげたいよね。……僕は役に立たないかもしれないけど」

江ノ島「どーでもいいし。つか桑田をさっさと協力させて終わらせない?」

大和田「だな。なーにくだらねぇ意地はってんだか」


桑田以外全員挙手。


桑田「な……な……」

石丸「どうだね? これが民意だ! さあ、潔く協力したまえ!!」

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 19:58:21.79 ID:HXt3ivPuO
待ってた
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 20:02:01.54 ID:DNE4i4AW0
見方によっては一種のいじめになるけど、桑田の場合はここまでしないと意地張ったままだからなぁ
110 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 20:10:50.60 ID:vQefG67b0

桑田「くっそぉ……つかなんで十神までちゃっかり参加してんだよ?!
    普段はこういうこと一切参加しねえくせによー!」

十神「決まっている。奴の馬鹿でかい声は俺にとって最も堪えがたい騒音なのだ。
    それを黙らせることが出来るなら手の一つや二つくらい、いくらでも挙げてやる」ノ

腐川「アンタのせいで白夜様が精神に大ダメージ受けてんのよ! いい加減諦めなさいよ」ノ

桑田「う、ぐ……」

朝日奈「ねー、なんでそんなに嫌なの? ちょっと付き合うだけでいいからさ!」ノ

舞園「……私からもお願いします。のび太君のためだと思って」ノ

大和田「おい、昨日は見逃してやったが二度もガキの頼みをムゲにしやがったら
     俺がテメェをブッ転がしてやるからな。どうする、桑田? アア?!」ノ

桑田「クソ……クソ……」

霧切「ねえ、桑田君。さっきからずっと聞いていたけど、あなた何か野球をしたくない
    特別な理由があるんじゃないかしら。そこまで嫌がるなんて尋常じゃないわ」ノ

桑田「……別に。野球なんて泥くさくてダセースポーツはイケてる俺には合わねーってだけだし」

石丸「成程! そんなつまらない理由しかないなら君が拒否する権利はないな!!」

桑田「…………わかったよ。ほんとうに少しだけだからな」

のび太「お兄さん、ほんとう? ヤッター! ひさしぶりに野球ができるよ!」

ドラえもん「よかったね、のび太くーん!」

苗木「おめでとう! じゃあこれから頑張ろうね」

石丸「ウム! 努力はおしなべて美しい。僕は努力する者全員を応援するぞ!」

桑田「…………」

111 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 20:17:47.39 ID:vQefG67b0

  ― 体育館 ―


ワーワー!


のび太「うわーん!><」スカッ

大和田「おいおい……今のはスローボールってレベルじゃねえんだが」

江ノ島「さっきからカスリもしないじゃん。男ならちょっとは根性見せなよ」


人数が足りないので、試合形式ではなくバッティング練習を行っている。ピッチャーは大和田だ。


朝日奈「腰が入ってないよ! それにもっと早く振らなきゃ!」

大神「何事も基礎からしっかり修めるのが肝要だ」

石丸「フーム、まず筋トレからと行きたい所だが筋肉は一日二日では出来ないからな。
    ここは少しでも正しいフォームを体に覚えさせるべきだ。桑田君、出番だぞ!」

桑田「……あ? なにすりゃいいんだよ」

苗木「その、のび太君にお手本を見せてほしいな」

朝日奈「うん! フォームの勉強は基本だしね。あんたのを見せれば参考になるはず」

不二咲「ぼ、僕も参考にしよう」ボソボソ

桑田「……しょーがねー。やるか」スクッ

桑田(ボールにバット……久しぶりだな……)

ドラえもん「じゃあぼくたちはしばらく見学してるね!」

石丸「ウム、しっかり見ていたまえ。見て学ぶと書いて見学だからな!」

112 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 20:25:49.38 ID:vQefG67b0

大和田「よし! 桑田ほどじゃねえが俺だってそこそこ肩には自信があるんだ。行くぜ!」


シュッ、カキーン! ドカッ!


山田「あらら。瞬殺されちゃいましたね」

苗木「開幕いきなりで天井直撃ホームラン……」

大和田「…………」

大神「次は我が投げてみるか」


ドシュッ、カキーン!


朝日奈「すごい! さくらちゃんの剛速球を打ち返しちゃった!」

葉隠「オーガの球を打ち返すなんて、あの体のどこにそんなパワーがあるんだ」

セレス「そこまで大柄でもありませんし、さほど筋肉質には見えませんのにね」

霧切「テクニックよ。彼の動きには全く無駄がないもの」

桑田「……どーしたよ。なんなら次は俺が投げるか?」

石丸「よし、僕が打ってみせる!」

大神「あやつの球を捕れるのは我くらいだろう。全力で投げても良いぞ」

桑田「なら、遠慮しないぜ。うらっ!」


バシンッ!


石丸「……う。全く見えなかった」

113 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 20:31:31.10 ID:vQefG67b0

朝日奈「あたしもやるやる! 打ち返すのはムリでもバントくらいならなんとか……」


ドギュンッ!


大神「ぬおっ?! 今のは変化球と言う奴か。危うく捕り損ねる所だった……」

朝日奈「あっれー? カスリもしなかった。一応野球部も兼部してるんだけどなー。あちゃー」

大和田「リベンジだ! 今度こそ……」


バシンッ!


大和田「くっそ。マジで見えねぇ……」

葉隠「じゃあ、次は俺が……」


シュンッ! スカッ。


葉隠「無理だったべー」

江ノ島「そりゃそうでしょ」

桑田「オラオラー! どんどん行くぞぉっ! ハハハハハッ!」

苗木「凄いね、流石超高校級の野球選手って感じ。ねえ、舞園さん」

舞園「……そうですね」

山田「練習ゼロでこの実力とかもはや周囲を馬鹿にしてるレベルですな」

腐川「そのうえあの態度だものね……まあ、あたしは人のこと言えた義理じゃないでしょうけど」

霧切「…………」

114 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 20:44:29.43 ID:vQefG67b0

舞園(これほど恵まれた才能を持ちながら何故……何故、野球を軽んじるんですか?
    どんなに努力したってあなたのようになれない人はたくさんいるんですよ?)

舞園(そのうえ軽々しく芸能界を目指すとか、私の努力を馬鹿にしているんですか?
    野球で、才能で得た知名度を使って私が今まで死ぬほど苦労して手に入れた物と
    同じ物をあっさり手に入れるつもりなんですか?)

舞園(……そんなの、絶対に許せませんよ)

石丸「ハァハァ、彼は本当に何の努力もせずあの実力なのか? 全く天才と言う存在は
    本当に憎たらしいものだな……。さてのび太君、どうだね? 参考になったかな?」

のび太「……ごい」

苗木「のび太君?」

のび太「すごい! ほんとうにかっこいい!」

桑田「……え?」


のび太は桑田に駆け寄る。


のび太「すごいよ、桑田お兄さん!」

ドラえもん「うん、とってもかっこいいよ!」

桑田「……お、おう」

のび太「そんなにすごいのに、どうして野球がきらいなの?」

桑田「!」

のび太「野球をやってる時のお兄さんのかお、すごく楽しそうだったよ?」

ドラえもん「そうだよ! 本当は野球のこと好きなんでしょ? どうして嫌いなんて言うのさ」

桑田「ち、違う……俺は……」

115 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 20:54:40.80 ID:vQefG67b0

苗木「桑田君?」

桑田「お、俺は野球なんて好きじゃねええええええッ!!」

大和田「ハァ?」

江ノ島「なに言ってんの。さっきまでノリノリだったくせに」

桑田「うるせー! あー、もうヤメだヤメ! ったく、せっかく付き合ってやったってのによ!」

朝日奈「ちょっと」

葉隠「おい、桑田っち」

不二咲「ど、どうしたのぉ……?」


桑田の突然の豹変に周りはついていけないが、去り行く背中に向かってのび太は叫ぶ。


のび太「桑田お兄さんのうそつきっ!!」

一同「?!」

のび太「お兄さんは大うそつきだ! ぼくたちほんとうは知ってるんだよ! 前にろうかで
     ひとりごと言ってるのきいたんだから! ほんとうは野球がしたいんでしょ!」

桑田「な……!」

舞園「?!」

葉隠「え、ちょ、どんな流れなんだべ今?」

十神「全く愚民はよくわからんな」

セレス「あら、いたんですか? 運動に自信がなくて逃げ出したのかと」

十神「馬鹿を言うな。フン、それであいつらは何をするつもりだ?」

116 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 21:04:25.48 ID:vQefG67b0

山田「一体なにが始まるんです?」

大神「静かにするのだ! のび太は今大事な話をしようとしている」

ドラえもん「ごめんね、桑田くん。盗み聞きをするつもりはなかったんだけど、
       どうしても気になってしまって。何故きみは自分にウソをつくんだい?」

桑田「ち、違う! 俺は嘘なんか……」

のび太「じゃあなんで野球がしたいなんて言ってたの! だれもいないところで
     言ってたってことは、それがお兄さんのホンネなんでしょ!」

桑田「お、俺は……俺は……」

石丸「えーい! 男ならハッキリしたまえっ!! 嘘なのか本当なのか、どっちだ?!」

桑田「…………」


ゴクリと、誰かのノドが鳴った。


桑田「……だよ」

石丸「ん? 何だ? もっと大きな声で話したまえ」

桑田「……きだよ。好きだよ。……そーだよ! 俺は本当は野球が大好きだよ! 文句あるかあああっ!!」

苗木「いや、野球選手が野球好きで文句言う人なんていないと思うけど……」

大和田「アイツさっきからなんであんなにわーわー騒いでんだ?」

葉隠「まったくワケわからんべ」

セレス「それをこれから話すのではなくて? わたくしは興味ありませんけど」

桑田「うるせー! お前らに俺の気持ちなんてわかるかっ!!」

117 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 21:15:48.55 ID:vQefG67b0

大神「落ち着け、桑田。好きなら何故その気持ちを隠していたのだ? お主は
    誰もが認める超高校級の実力を持つ選手……嘘をつく理由などあるまい」

桑田「それがあるんだなー、これが」

石丸「何なのかね、その理由とは?」

桑田「俺が『天才』だからだよ!」


シィーーーーーン。


一同「…………」

ドラえもん「えーとね、桑田君……」

のび太「お兄さん、いくらなんでもそれは……」

桑田「ほら! そういう反応するだろ! だから俺は言いたくなかったんだって!!」

江ノ島「あんたさっきから言ってることメチャクチャじゃない?」

霧切「……順を追って話してくれないかしら」

苗木「あれ、霧切さんいつからそこに?!」

霧切「ずっといたわよ? 野球に夢中になってて気付いていなかったみたいだけど」

苗木(霧切さんの視線が痛い。印象が悪くなったようだ)

桑田「……俺はよ、ガキの時はとにかく野球一筋でさ、毎日朝から晩まで馬鹿みたいに
    グラウンド走り回ってたワケよ。いくら俺が天才っつったって、ガキの時からなんでも
    出来るワケじゃないだろ? だから上手くなりたくてひたすら練習してたんだよ」

石丸「そんなまっとうな少年が、何故今はこんな変わり果てた姿になってしまったのだ?」

桑田「かわり果てたって言うな! ……そうさ、俺もガキの時は他のヤツらとなんら
    変わらねぇ普通の球児だった。ただ違ったのは……俺は天才だったんだよ」

118 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 21:23:51.26 ID:vQefG67b0

舞園「…………」

江ノ島「自分で自分のこと天才天才言うのって恥ずかしくない?」

腐川「ほんと、恥ずかしい男ね!」

ドラえもん「ま、まあまあ!」

のび太「それで! なにがあったの?」

桑田「他のヤツらがさ、何年もやらなきゃ出来ないこと……下手したら一生かけても
    出来ないことを俺はスラスラ出来ちまったんだよ。そうしたらもうダメさ」

桑田「あんだけ楽しかった練習が苦痛にしか感じなくなっちまったんだ。だってそうだろ?
    俺は全部出来ちまうんだから! 他のヤツらが出来ない横で俺だけ出来るんだよ!」

石丸「し、しかし……基礎をしっかり修めるのは何事も重要ではないかね?」

桑田「じゃあ努力努力うるさいお前に聞くけどよ、石丸! お前、高校生なのにいつまで
    経っても小学生の問題やらされて納得出来んの? 文句言わずにやれるか?!」

石丸「それは……」

桑田「朝日奈! お前一週間バタ足だけやれって言われたらどうする?!」

朝日奈「え、それはさすがにイヤかも……」

桑田「俺にとっちゃそういうことなんだよ! だから俺は練習が嫌いなの!」

大神「ならば自分のレベルに合った練習方法を探せば良いのではないか?」

桑田「……そこがチームスポーツの難しい所なんだよ。個人スポーツなら練習内容とか
    ある程度融通きくけどさ、チームで一人だけ毎回別行動するワケいかねえだろ」

桑田「実際にさ、監督が俺だけ特別メニュー組んだこともあったけど、チームの目が厳しいんだよ。
    ああ、またアイツだけ特別扱いか。そうか、アイツは天才だもんなって陰で言われてさ……
    逆にムリして周りに合わせようとすると今度は手を抜いてるって叩かれたりするし」

葉隠「まあ、よくある話だな」ウンウン

苗木「桑田君……」

119 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 21:35:00.98 ID:vQefG67b0

桑田「だから! 俺は考えたの。野球嫌いなことにして先生や監督に頼まれて嫌々試合に
    出てるって形にすれば、練習は最低限で済む。陰口も聞かなくて済む!」

桑田「俺が練習は嫌いだからしないって言うとみんなお前らみたいな、ああこれだから
    天才はって顔するけど、野球が嫌いならそれも仕方ないって思ってもらえるだろ!」

舞園「…………」

霧切「もしかして、ミュージシャンを目指しているというのもそれに関係があるのかしら?」

桑田「ああ。音楽は昔から好きだし、野球ほど才能ないだろ? だから、すぐに上手くなったりは
    しないけどそのぶんいくら練習しても飽きねえし、上手すぎて陰口叩かれることもないしな」

苗木「……え?! ちょっと待ってよ! ミュージシャンを目指してるのは、
    美容院のお姉さんと付き合いたいからって前に言ってなかったっけ?!」

桑田「ああ、その話は半分本当で半分ウソだ。お姉さんとお付き合いしたいってのは本当。
    でもそのためにミュージシャン目指したってのはウソ。だってさ、いくらお付き合い
    したいからって、俳優だのミュージシャンだのそうコロコロなれるワケねーだろ」

苗木「えー、うっそーん……(信じてたのに)」ガーン

桑田「それに、ほら! 俺に努力とかなんか似合わないじゃん! 練習してなくてもいつのまにか
    出来てるって方が俺のキャラに合ってるし。だからマジで目指してたのは秘密だったんだよ!」

江ノ島「あんたねぇ……」

セレス「まあ桑田君ですから」

石丸「では君は……自分が才能があり尚且つ大好きなものを
    諦めようとしていたというのか。そんな……」

石丸(天才というものは皆等しく才能に胡座をかいている……その代表例かと思っていた桑田君が、
    こんな悲しい選択をして陰で努力をしていたなんて。一体僕は彼の何を見ていたのだ!)

ドラえもん「……そっか、そんないやなことがあったんだね」

桑田「そうさ。だから俺は野球が嫌いになったんだ。嫌いだって何度も自分に言い聞かせてたら
    本当に嫌いになった気がして……今は野球なんて嫌いで嫌いで仕方ねえんだよッ!!」

120 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 21:45:23.98 ID:vQefG67b0

ドラえもん「でも、本当は好きなんだろう? 好きなものをむりやり嫌いになるなんて
       そんな悲しいことはないよ。もうやめにしよう」

桑田「仕方ねえだろ! 他にどうすりゃいいって言うんだよ!!」

のび太「……ごめんなさい」

苗木「のび太君?」

桑田「なんだよ、突然……」

のび太「ぼくね、すごくうんどうオンチでしょ? だから、天才のお兄さんがうらやましくて
     しかたなかったんだ。練習しなくてもうまいなんてずるいってずっと思ってた」

桑田「…………」

のび太「でも、才能がありすぎるっていうのもとてもツライことなんだね」

のび太「ぼくのクラスにも、すごく出来の良い天才みたいな子がいるんだ。あたまが良くて
     野球やサッカーもとくいで、おまけに顔も性格もいいし。でも、ぼくたちはいつも
     その子をあそびにさそわないんだ。……たぶん、シットしてるからだとおもう」

桑田「…………」

のび太「ぼくたち、お兄さんのチームメイトの人たちとおんなじことをしてたんだね……
     いやな思いをさせてごめんなさい。こんどからはその子もさそってみるよ」

桑田「……そうしてやれよ。きっと、そいつも喜ぶぜ」


シーーーン……


葉隠(おーおー、どいつもこいつも若いったらねえな!)グスッ

山田(まさかリアルで青春アニメみたいな展開を見るとは……子供恐るべし!)グスン

十神「フン……」

121 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 21:56:13.99 ID:vQefG67b0

大神(のび太……)ジーン

大和田(チッ、あークソッ。ちょっと、涙腺にきちまったじゃねえか。あーヤベェ。上見よ、上)

ドラえもん(桑田くんだけじゃない……今回のことで、きみも成長したねのび太くん!)グスグス

腐川「何よ……ちょっといい空気じゃない……」グスッ

不二咲「いい話だねぇ」グスグス

舞園(…………)

石丸「う、ひぐっ、グスッ。ううう……」ボロボロ

苗木(なんか凄いしんみりしちゃったな。桑田君はただのうぬぼれてる嫌な人じゃなくて、
    ちゃんと理由があってああいう発言をしてたんだね……まあ元の性格もありそうだけど)

霧切(まだ終わりじゃないわ。桑田君の野球嫌いを完全に直してはいない。
    ここからが正念場よ。のび太君、あなたの手腕見させてもらうわ)

のび太「ねぇ、桑田お兄さん」

桑田「なんだよ……」

のび太「野球をおしえてくれないかな」

桑田「それは構わねえが……」

のび太「ぼくだけじゃない。みんなにもおしえてあげるのはどう?」

桑田「!」

122 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 22:12:52.28 ID:vQefG67b0

のび太「自分ができることをえんえんとやらされるから練習がきらいなんでしょ?」

のび太「なら、練習するんじゃなくてみんなにおしえてあげるのはどうだろう? 超高校級の
     野球選手がおしえてくれたら、きっとみんな今よりうまくなれると思うんだけどなぁ」

桑田「……教える、か。そうだな。それなら、練習ほど嫌じゃないかもな……思えば、
    みんな真剣にやってるのに俺だけ身が入ってないから嫌われたのもあるし」

桑田「とりあえず、のび太。お前には、その……ここにいる間は俺がお前の専属コーチに
    なってやるよ。なんつったっけ? ジャイアンツ? そいつにイジメられないように
    これからこの俺が徹底的にしごいてやるから、覚悟しやがれ!」

のび太「……ほんと? ヤッター! 超高校級の野球選手がぼくのせんぞくコーチだって!」

ドラえもん「よかったね、のび太くん!」

苗木「おめでとう、のび太君。折角だし、僕も一緒に教わろうかな?」

朝日奈「私も私もー!」

不二咲「ぼ……私も教わっていいのかな?」

葉隠「俺にも教えてくれ! そんでそれを本にまとめて今度売らせてくれ!」

石丸「素晴らしい! 友情とはなんと美しいのか! 今ここに世代を超えた友情が
    生まれた! その立ち会いが出来て僕は本当に光栄だ!」


わーわー!


舞園「…………」

舞園(もし私がこの中から誰かを殺すのなら、桑田君……ずっとそう思っていましたが……
    桑田君はやめにしましょう。別に、桑田君のためじゃないですよ?)

舞園(のび太君から野球のコーチを奪ってしまえば、またのび太君が
    イジメられてしまう……のび太君のためです。本当にそれだけです)

123 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 22:27:46.79 ID:vQefG67b0

江ノ島「あー、なんかよくわかんないけど一見落着、みたいな?」

山田「そう思うとなんだからお腹が減りましたな!」

セレス「紅茶のお代わりが欲しいですわ」

朝日奈「あ、じゃあみんなでドーナツ食べようよ!」

山田「いいですねぇ、行きますか」

桑田「おら、のび太! 構え方が違う! こうだ!」

のび太「こう?」

桑田「違う! もっと背筋を伸ばしてだな」

のび太「こうかな?」

桑田「そうだ! それで、下半身に力を入れて…」

大和田「おお、さっそくそれっぽいことやってんじゃねえか」

ドラえもん「頑張るんだよ、のび太くん!」

石丸「僕も付き合うぞ!」

苗木「僕も。ここを出る頃にはみんな野球が上手くなってたりして。フフ」

大和田「違えねえな! ワッハッハッ!」

桑田「よし、行けっのび太!」

のび太「そんなきゅうにはムリだよ〜」


ワハハハハハ!!

124 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/14(日) 22:36:09.84 ID:vQefG67b0

ここまで。


次回予告(あの曲でhttp://www.youtube.com/watch?v=nXRaS_vGUpg


ドラえもん「いやあ、無事に解決して何より!」

のび太「舞園さんも桑田さんのことを見直したみたいだしもう大丈夫だね!」

ドラえもん「よーし、念のためにタイムテレビで確認を……」

のび太「えっ?! 事件?! 被害者は……」

ドラえもん・のび太「腐川さん?!」


次回もお楽しみに!
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 22:51:51.47 ID:BCuiQkAE0
乙です
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 23:00:01.18 ID:Cld8wG7U0
127 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:07:39.65 ID:tukZbStW0


  第六話 舞園さんのゆめ


のび太「はぁー、疲れた」

ドラえもん「でも思いきり運動すると気持ちがいいだろう」

のび太「そうだね。早くぜんぶかいけつして、こんどは外でやりたいな」

ドラえもん「うん。とりあえず、桑田くんはやっと素直になれたし、みんなの桑田くんに
       対する見方も変わった。これで舞園さんも思い直してくれればいいけど」

のび太「ひるねしたいところだけど、まずはタイムテレビでかくにんしようか」


  ― 男子トイレ ―


のび太「もうすっかりここでタイムテレビを見るのがおなじみになっちゃったね」

ドラえもん「しかたないさ。それが一番効率がいいんだから。さて……」

のび太「あ、部屋の交換してない! やったよ! やっとふせげた!」

ドラえもん「待って! 次の日の様子も一応見ておかないと」

のび太「なにもおこってないといいけど」

ドラえもん「……静かだね」

のび太「あれ、どこにもだれもいないよ?」

ドラえもん「こ、これはまさか?! 地下を映してみよう!」


バーン!


のび太「が、学級裁判だー!」

128 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:14:55.33 ID:tukZbStW0

ドラえもん「そんな……」

のび太「し、しんだのはだれ? まさか桑田さん?」

ドラえもん「いや、桑田くんはいる。いないのは……」

のび太「腐川さんだ!」


腐川の席には赤い×印がついた腐川の遺影が置かれている。


ドラえもん「そんな、腐川さんが死んでいるなんて……原作と違うぞ!」

のび太「犯人はだれ?!」

ドラえもん「飛ばすね。もしかしたらと思うけど……」


苗木『犯人は舞園さん……君しかいないんだ』


ドラえもん・のび太「やっぱり舞園さんだー!!」

のび太「なに? なに? どういうこと? あきらめたんじゃなかったの?」

ドラえもん「……つまりこういうことだ! 舞園さんは桑田君をターゲットにするのはやめたけど、
       外に出ること自体はあきらめていないんだ! だから別の人を殺したんだよ!」


苗木『舞園さん……どうして腐川さんを殺したの……?』

舞園『……誰でも良かったんです。ただ、外に出たかった。いえ、出なければいけないんです!』

舞園『私にはこんな所にいる余裕なんてない! 私達アイドルは、いつも誰かに飽きられてしまう
    恐怖を抱いて働いている。……私がここにいる間も、私達は忘れられてしまうんです!』

129 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:24:58.65 ID:tukZbStW0

ドラえもん「なるほど。桑田くんだけが問題じゃない。舞園さんの外に出たいという気持ち……
       これをなんとかしない限り舞園さんによる殺人が必ず起こってしまうんだ!」

のび太「そんなぁ。どうすればいいのさ! 外に出たってなにもないよって
     つたえるいがいにあきらめてもらう方法なんてあるの?」

ドラえもん「これは……難関だな。外のことを教えるのが一番簡単だけど、もし今
       教えてしまえば舞園さんはおかしくなってしまうかもしれない……」

のび太「そんな……いったいどうすればいいんだろう……」


タイムテレビで舞園の自供を聞きながらドラえもんはふとあることに気がついた。


ドラえもん「うーん……ん?」

のび太「どうかしたの?」

ドラえもん「ちょっと気になることがあって……巻き戻すね」


舞園『私達アイドルは……アイドルというものは……アイドル……』


ドラえもん「舞園さん、やたらとアイドルって言葉を使ってるね」

のび太「そりゃそーだよ。なにせ超高校級のアイドルだもん」

ドラえもん「それにしても、なんだかこだわりかたが普通じゃないというか……
       なんていえばいいんだろう。うーん」

のび太「気になるならたしかめに行けば?」

ドラえもん「確かめるってどうやって……ハッ、そうか」



のび太「そう、タイムマシンさ!」

130 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:31:43.22 ID:tukZbStW0

  ― 八年前・根黒六中 ―


二人は苗木に出身中学を聞き、過去の根黒六中にやってきていた。


ドラえもん「舞園さんは高校二年生の時にスカウトされて二年間希望ヶ峰に
       通っていた。つまり本当の年齢は19歳。ここは八年前だから…」

のび太「ぼくとおなじ小学五年生のはずだね。苗木さんもいるのかな?」

ドラえもん「同じ中学に通ってたということは家が近いはずだから、探せば
       苗木くんもいるだろうね。でも今は舞園さんを探すのが先だよ」

のび太「どうやって探すの?」

ドラえもん「そりゃもちろん、たずねびとステッキ〜!」パパラパッパパー

のび太「それ、あんまり当たらないんじゃなかったっけ?」

ドラえもん「的中率は70%だね」

のび太「うーん。葉隠さんの占いよりはマシか。でもなー」

ドラえもん「しょうがないだろ! おおまかな方向だけでもわかればめっけものだよ」


スッ、パタン。


ドラえもん「こっちだ!」

のび太「大丈夫かなぁ…?」


1時間後。がむしゃらに探しまわった二人は、とうとう買い物帰りの舞園を見つける。


ドラえもん「い、いた! あの子じゃない?!」

131 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:38:00.29 ID:tukZbStW0

のび太「ホントだ! 間違いないよ。うわぁ、かわいいな〜」デレデレ

ドラえもん「スゴイ美少女だねぇ。うふふふ……ってこうしている場合じゃないや。
       舞園さんを追いかけるために、スパイ衛星〜。ゴー!」

のび太「よし、あとはのんびり見ていればいいね。ぼくちょっとねてるからあとはまかせるよ」

ドラえもん「もう! しかたないなぁ。……まあ、今日はよく頑張ったからゆるしてあげるか」


二時間後。


のび太「ふぁ〜あ、よく寝た。なにかうごきあった?」

ドラえもん「いや、なにもないよ。宿題をしたり、あとは歌や踊りの練習をしてたくらいかな」

のび太「はたからみたらぼくたちストーカーみたいだね……」

ドラえもん「……それは言わないでよ。ぼくも悪いなって思いながら見てるんだから」

のび太「それにしても、あれ……まだお母さんは帰ってきてないの?」

ドラえもん「最初はお買い物かと思ってたけど、よくよく考えたらお買い物は
       舞園さんが自分で行っていたし、共働きなんじゃないかな?」

のび太「あれ、なんかごはんのシタクしてない?」

ドラえもん「おうちのお手伝いをよくやっているんだ。えらいね」


その後、日が暮れても舞園の両親は帰って来なかった。


のび太「い、いくらなんでも遅すぎじゃない?! もうこんな時間だよ!」

ドラえもん「もしかして……舞園さん、お母さんがいないんじゃないかな?」

のび太「えっ?」

132 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:44:21.39 ID:tukZbStW0

ドラえもん「変だと思ったんだ。さっき舞園さんが取り込んでた洗濯物、舞園さんのを除いたら
       男の人の物しかなかったし。家事は全部舞園さんがやってるみたいなんだ」

のび太「そんな……じゃあ、お父さんがかえってくるまで毎日おそくまでひとりぼっちなの?」

ドラえもん「だろうね……あ、テレビを見てる。これは……」

のび太「歌番組だ。あ、アイドルが出てる!」

ドラえもん「食い入るように見てるね」

のび太「いっしょにうたいだした。このころからうたは上手だったんだね」


さやか『みんなかわいいな〜。さやかもこんなキレイなお洋服を着て、にぎやかな舞台に立てば
     もう寂しくないのかな。さやかも寂しい子を勇気づけてあげられるのかな……』


ドラえもん・のび太「…………」


さやか『今日も頑張る! いつか絶対さやかもあそこに立って見せるんだから!』

さやか『……お父さん、まだかな。遅いな……』


のび太「うわぁ……」

ドラえもん「そうか、舞園さんは寂しい気持ちをアイドルへの憧れに変えて今まで
       ずっと一人で頑張ってきたんだ。だから、それが奪われそうになって
       パニックを起こしてしまった。それが殺人の本当の動機なんだ!」

のび太「じゃあ、もうさびしくなんかないよっておしえてあげればいいのかな?」

ドラえもん「うーん、それは違うと思うな。だって、舞園さんはもうアイドルになって
       しまったんだから、アイドルという存在自体に執着してると思う」

のび太「じゃあ、アイドルかんれんじゃなきゃとめられないってこと?」

133 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:50:48.08 ID:tukZbStW0

ドラえもん「そうだねぇ。でも、アイドルっていうのは支えてくれるファンあっての
       ものだから、あの密閉された空間で説得するのはかなり難しいぞ」

のび太「それでも、やるしかないよ。だって、ぼく舞園さんにひとごろしなんてして
     ほしくないもん。あんなさびしそうなかおしてる女の子、ほっとけないや」

ドラえもん「時間はあまりないけど、頑張ろう!」


  ― 現代・男子トイレ ―


のび太「とりあえず、時間はどのくらいあるの?」

ドラえもん「犯行をタイムテレビで見てみよう」

のび太「場所は倉庫か。時間は夜中の1時くらい……」

ドラえもん「犯行場所と相手が変わっただけで、手口は桑田くんの時と
       ほとんど変わってないね。メモで呼び出して包丁でグサリ」

のび太「こんなたんじゅんな手口じゃすぐ霧切さんたちにみやぶられちゃうのに……」

ドラえもん「マズイな……あと半日しかないぞ。まったく策が浮かばない」

のび太「よしっ、もう一回苗木お兄さんに相談に行こう!」

ドラえもん「ちょっと待って。ま、まさか苗木くんに舞園さんが
       殺人を企んでるなんて言うつもりじゃないだろうね?!」

のび太「うん、それがいちばんじゃない? 苗木さんならきっととめてくれるよ!」

ドラえもん「ダメだよ! ムチャだ!」

のび太「どうして!」

ドラえもん「多分だけど、苗木くんは舞園さんのことが好きなんだよ?! それなのに
       そんなこと伝えたら、頭が真っ白になってすぐに止めに行くよ!」

のび太「それでいいじゃない。それのなにがいけないのさ?」

134 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 22:56:44.59 ID:tukZbStW0

ドラえもん「いいかい? 誰にも知られていないはずの殺人計画を、よりによって一番
       知られたくない人に知られて、舞園さんはきっとパニックを起こすだろう?」

ドラえもん「舞園さんが素直にあきらめてくれればいいよ? でもパニックを起こして、
       万が一口封じに苗木くんに襲い掛かりでもしたら……」

のび太「あ、そうか……舞園さんはさいしょの時点で苗木さんをだましてるんだし
     ゼッタイないとはいいきれないか……」

ドラえもん「今の段階だと学級裁判の存在は知らされてないけど、どの道苗木くんを見捨てて
       一人で脱出するつもりだったんだからね。そのくらいアイドルが大事なのさ」

のび太「でもぼくたちだけで話してたってなにもいいかんがえがうかばないのはたしかだよ」

ドラえもん「そうだねぇ……じゃあ、舞園さんの件は秘密にして相談してみるか」

のび太「うん、なにもしないよりはマシだろうし……」


  ― 苗木の部屋 ―


苗木「やあ、いらっしゃい」

ドラえもん・のび太「おじゃまします……」

苗木「どうしたの? 憧れの桑田君から野球を教われて、さっきはあんなに
    楽しそうにしてたのに。……何かあったの? 僕で良ければ相談に乗るよ」

のび太「苗木お兄さんはやさしいなぁ」ジーン

ドラえもん「ちょっとその、また質問したいことがあって……」

135 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 23:02:25.01 ID:tukZbStW0

苗木「コロシアイを防ぐための案かな? いいよ、何でも聞いて。役に立てるかわからないけど」

のび太「えーっと……」チラッ

のび太(ぼくがはなすとよけいなことをいいそうだし、ドラえもんがはなしてよ)

ドラえもん(わかった、任せて)

ドラえもん「あくまで例えば、の話だよ? もし、もしも何か凄い大切なものがあって、
       そのために人を殺してもいいくらい思い詰めている人がいるとしたら、
       どうすればその人を止められると思う?」

苗木「うわ、また難問だなぁ。というか、君達随分難しいこと考えてるんだね……
    僕でもそんなこと考えたことないよ。ちょっと待ってね。今考えるから」


そう言うと、うんうん唸りながら苗木は考え始める。


苗木「……うーん、ありきたりかもしれないけど『どんな理由があったって、人を殺して
    叶えようとするなんて間違ってる』って言うかな。それが大事なものであればあるほど、
    そんな手段で守ろうとするなんて僕は間違ってると思うんだ」

のび太「なるほど」

ドラえもん「その好きなものに対しての冒涜だって説得するんだね」

苗木「うん。本当にそれが好きであればあるほど、人殺しの無意味さとか
    残酷さで説得しようとしても意味がないんじゃないかって思ったんだ」

ドラえもん(確かに。もう人を殺そうと決意してしまっている人に、単に
       人殺しはダメだなんて言っても通じないだろうしね……)

136 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 23:10:32.07 ID:tukZbStW0

のび太「サンコウになったんじゃないかな?」

ドラえもん「ありがとう、苗木くん」

苗木「いやいや、あんまり悩まないでね。僕達も事件が起こらないように頑張るから」


苗木の部屋を出る。


のび太「よし! あとはいつ話に行くかだね!」

霧切「誰に何を話すのかしら?」

ドラえもん・のび太「うわああああっ!」

ドラえもん「き、霧切さん……」

霧切「凄い驚きようね。何か人に聞かれてはまずいことでも話していたの?」

のび太「そ、そんなことないよ!」

のび太(あちゃー、まずい人につかまっちゃったよ……)

霧切「ここ……苗木君の部屋ね。何を話していたのかしら?」

ドラえもん「ちょっと、ね」

のび太「そ、そうだんを少し」

霧切「相談?」

137 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 23:19:51.73 ID:tukZbStW0

ドラえもん「の、のび太くん!」

のび太「あ……(しまった!)」

ドラえもん(くっ、ここで変にごまかしたら恐らく霧切さんにマークされてしまう。
       しかたない。正直に話してしまおう。今なら話してもまだ問題ないはず)

ドラえもん「今後のことを考えて、もし目の前で事件が起こりそうになったら、どうやって
       犯人を説得すればいいかって話してたんだよ。霧切さんならどう説得する?」

霧切「私? 私なら、そうね……間違った手段で何かを手に入れても結局そんな物は幻だということ。
    それどころか、自分が今まで手に入れた物全てを失う、ということを実話を交えて話すわ」

のび太「じつわをまじえて……」

ドラえもん(さすが霧切さんだ……)

ドラえもん「あ、ありがとう! でもそんな日が来ないのが一番だけどね!」

霧切「そうね。私も出来る限りそう動くわ。何か困ったことがあったら言ってちょうだい」

ドラえもん(あれ? なんか協力的? アニメだと終盤までずっとクールなのに)

のび太「じゃ、じゃあさよなら〜」スタコラサッサ

霧切「…………」

霧切(庇ってもらった時のお礼を言うつもりだったのに、また言いそびれてしまったわね……)

霧切(あなた達は一体何者なの?)

138 : ◆takaJZRsBc [saga]:2018/01/17(水) 23:31:09.36 ID:tukZbStW0

ここまで。投下不定期でごめんなさい

ツイッターで投下予告してるんで良かったらご利用ください。
http://twitter.com/doctor_ronpa_K
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/18(木) 11:55:58.92 ID:EOVEMttO0
思うネタなんですけど・・・
別にゲームの世界やから、過去変えても問題ないのでは?
後、結局は出木杉くんは映画ではハブられるから意味ないような気が・・・
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 14:12:03.75 ID:6TnfUDLBO
>>139
>>1からもっかい見返したほうがいい
もしもボックス使ってるし後半はそれ言うと二次創作が全て死ぬ
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/18(木) 16:51:13.53 ID:AZH3iFKj0
出木杉は頭いいから連れてくとピンチにならなくなる、もしくはすぐに解決しちゃうからダメ、例えばこんな感じで

一同「タケコプターが壊れたぁ」
出来杉「バードキャップじゃダメなのかい?」

一同「どこでもドアが壊れたぁ」
出来杉「どこでも窓で代用しよう」

一同「タイムマシンがなくなったぁ」
出来杉「タイムベルトってあったよね?」

一同「ドラえもんが壊れたぁ」
出来杉「ポケットがあればいらないよ」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/18(木) 16:59:00.88 ID:4Iqv/4JP0
>>141
最後ひでぇww
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/18(木) 17:57:55.41 ID:u/hYtgXn0
出来杉とスネ吉兄さんはF先生のアバターと言ってもいいので
この2人が活躍するときはF先生の趣味ないし価値観に基づく話が多い
映画の撮影やラジコン、プラモ、自然環境問題関係はその最たるもの
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