勇者「ニートになりたい」

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618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 05:54:16.38 ID:rXas4A+j0
闇落ち(ニート/人間やめました)
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/13(火) 06:53:40.04 ID:h+iPRUkCo
620 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 18:21:57.33 ID:bGKI1MBBO
【魔王城 玉座】

大臣「魔王様、この老いぼれにはなんのことやさっぱり」

魔王「――……アイデンティティ(自己証明)の喪失。聞いたことはあるか?」

大臣「いえ」

魔王「ふふ、“ゲシュタルト崩壊”でもよい。兎角、勇者は己を見失っておるやもしれん」

大臣「な、なんですとっ⁉︎」

魔王「ふっ、くふふ、勇者であることを誇りもせず……逃げている。おそらく、人間と勇者の狭間で見失ってしまった。本来の自分を」ニタァ

大臣「ではっ⁉︎ 今の勇者は⁉︎」

魔王「心に偽りの仮面をかぶっておるはず。……常にな。ニンゲンどもの手前でだけ、“勇者を演じておる”のやも」

大臣「魔王ぁっ! これはまたとない機会でありますぞ!」

魔王「どのような機会と申すか」

大臣「揺れ動いているのなら、いっそ、我ら魔族側に!」

魔王「……だめだ」フリフリ

大臣「なぜっ⁉︎ 天秤がニンゲンどもの方に傾いてしまえば、脅威に!」

魔王「“どちらにも傾きうる”から問題なのだ。計りに重りを乗せるにはどうする……?」

大臣「追加で――」

魔王「“手がなければ乗らぬ”であろう? この、手が」プラプラ

大臣「(傾く重りを我々で用意するということですな)――では、計略を講じますか」

魔王「いや、なにもしない」

大臣「な、なぜっ⁉︎」

魔王「別にほしくないから。あちら(勇者)が来たいと言ったら考えるがなぁ! あっはっはっ!」

大臣「……っ!」

魔王「よいな……? なにもするな」

大臣「御意に」

魔王「あぁ、待て。アデルに密偵を派遣して、勇者の生い立ちについて調べさせよ」

大臣「は?」

魔王「調べるだけでよい」

大臣「ははっ!」ドゲザ
621 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 18:38:00.84 ID:bGKI1MBBO
【数十分後 魔王城 玉座】

大臣「魔王様のぉ〜、ご壇上ぉ〜」

四天王一同「……」ドゲザ

魔王「皆の者、ラクにせよ」スッ

四天王一同「はっ」ムク

大臣「各王よ。おそれながら本日も進行役を務めさせていただきます。ようこそ、魔王城へ」

魔王「今回の議題については特別に余が発表する。それはこの“勇者の腕”についてだ」ゴト

キングヒドラ「ホンモノでお間違いないのですかっ⁉︎」

大臣「何重にも検査をした結果、間違いございません」

オーガ「ベビードラゴンに咬みちぎられたというのも?」

大臣「お間違いござませんですじゃ」

キングヒドラ「……なんだ。たいしたことない。サキュバスよ。お前の報告と随分差があるようではないか、なぁ?」ニタァ

サキュバス「獣臭い顔でいやらしく笑わないでくれる? 醜くて不快だから」

キングヒドラ「な、なんだとぉっ⁉︎ 貴様ぁっ! 誰に向かって悪態をついたっ!!」ズシーン

サキュバス「わからないのかしらぁ? 頭お花畑?」

キングヒドラ「……」ゴゴゴッ

オーガ「事実をいわれ論点をズラしているよう見えるが」

サキュバス「おだまりっ!!」ピシャン

キングヒドラ「……なんだなんだ……そうかぁ、認めたくなかっただけかぁ」ニヤニヤ

サキュバス「貴様らは知能が低いから疑うこともしないだけであろう! 勇者が負けるはずがない!!」

オーガ「だが、証拠はある」

サキュバス「……っ!」

キングヒドラ「随分と高く勇者を評しているようだな? 負けるはずがなぁい? まるで恋人を想うようじゃないか?」

サキュバス「貴様……っ! 淫夢王をバカにしているのかっ⁉︎」クワッ

キングヒドラ「貴様こそ! 獣王をバカにしているのかぁっ!!」クワッ

大臣「み、みなさま、ご静粛に、ご静粛に。魔王様の御前であられますぞ」
622 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 18:51:23.40 ID:bGKI1MBBO
サキュバス「魔王様、私からもご質問。ベビードラゴンはどうやってコレを?」

魔王「やる気がなかったおかげで、噛みちぎれたそうだ」

シンリュウ「……」

オーガ「ぬはっ、ぬっはっはっ、なんとまぁ。やる気がでなかったから腕をさしだした? 言い訳にしても見苦しい」

キングヒドラ「ブフッ、勇者とやらは、阿呆なのですか……? そんな理由で腕をさしだすわけがない。自力でベビードラゴンに敵わなかっただけでしょう」

サキュバス「(貴女達二匹は……! 笑う暇があればもっと知力高めたらいいのに)」

魔王「お前達の意見も是非聞きたい。……が、その前に、シンリュウよ」

シンリュウ「はっ」スッ

魔王「ベビードラゴンから報告を受けておろうが、今回は罷免する」

シンリュウ「……はっ」

魔王「決定に異議のあるものはおるか?」

四天王一同「……」シーン

魔王「おらんのか? 貴様ら、余の犬畜生か?」

オーガ「魔王様の決定ならば、当然のこと」

魔王「では、問おう。巨人王オーガよ。今この場で命をたてと言われれば死ねるか」

オーガ「理由は……」

魔王「ない。ただの気まぐれだ」キッパリ

オーガ「そ、それはあまりにも」

魔王「余の為ならば、死をも厭わない。その覚悟たるやよし。しかし、死に場所がふさわしいものであってほしいと願っておるのだろう?」

オーガ「……」

魔王「なぜ無言でおる。私をナメておるのか?」ゴゴゴッ

オーガ「な、なぜっ⁉︎ そんなっ! めっそうもない!」アタフタ

魔王「よく聞くがいい。命令を撤回するのはこれきりだ。貴様らが余の下命を疑問に思うが、理不尽だと感じようが、次はない」

四天王一同「……」ドゲザ

魔王「我こそが貴様らの王だ。……よいな」

四天王一同「ははっ」
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/14(水) 20:11:54.87 ID:3vlJq4oq0
魔王ぁ!
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 21:01:07.15 ID:UQMvEvEDO
なんか魔王の方がギリギリっぽいな
だから自分に都合の良い方にミスリードしてしまい、最終的に勇者に一杯食わされそう…
625 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 21:13:59.11 ID:dbQ7u9OxO
【数時間前 クィーンズベル城 郊外】

ベビードラゴン「そったらば、失礼しで」

勇者「ちょ、ちょちょっ! たんまっ! まだ麻痺してないから!」

ベビードラゴン「おどこらしく覚悟決めろ? ほんっと情け無いやつだなぁ」

勇者「布で縛ったら痛みが軽減されるって漫画で読んだことあるのに……おかしいな」

ベビードラゴン「なんでもいいけどよぉ、はやく帰りてーんだけど……はぁ」ガックシ

勇者「お前はいーよな! 腕をなくさないんだから!」

ベビードラゴン「合意の上でねか。むしろ、お前から言い出したこどだぞ? 講釈たれて」

勇者「そうだけどさぁ、いざ噛まれるとなると」

ベビードラゴン「だいじょーぶだで。ちょっとチクってするだけだから」

勇者「そ、そそそのっ、セリフはやめろ? と、トラウマが」

ベビードラゴン「ほんにめんどくせぇなぁっ!」

勇者「……わかった。俺も男だ」

ベビードラゴン「……」ジトォ〜

勇者「いいぞ、やれ。でも、絶対失敗すんなよ! 俺の腕を無駄にすんなよっ⁉︎」

ベビードラゴン「わがったわがった……あ〜〜ん」クパァ

勇者「た、た、た、たんまっ!」

ベビードラゴン「……」ピタ

勇者「やっ、やっぱさ? 別の方法、考えない?」

ベビードラゴン「……あむっ」ガブリ

勇者「〜〜っ⁉︎ ぬ、ぬおおおおぉっ! 牙が、牙が腕に!」メリメリ

ベビードラゴン「(硬え肉だな)」ゴリゴリ

勇者「いだだだだっ! 痛いっ! ちょっとこれは耐えられない! 耐えられそうもない! ギブアップ!」

ベビードラゴン「(うるせぇ……)」ブチブチ

勇者「ひぃっ⁉︎ 待てと言うとるにっ! 腕からいやな音がっ! 血が噴水みたいになってるよ⁉︎ 動脈切れてるんじゃない⁉︎」プシュー

ベビードラゴン「(むっ、このっ)」ガブガブ
626 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 21:15:06.40 ID:dbQ7u9OxO
勇者「いだぁぁ〜〜っ! なんだてめぇっ⁉︎ やるなら一気にやれや! ぶち殺すぞっ⁉︎」

ベビードラゴン「かたっ、くふぇ、ぬぅぅ」ブチンッ

勇者「あっ」プシュー

ベビードラゴン「お、食いちぎれた」アムアム

勇者「お、おぉぉぉあ、俺の腕がぁぁぁ〜〜っ!」

ベビードラゴン「うぇっ⁉︎ ま、まずぅっ⁉︎ ペッペッッ」ゴト

勇者「な、なな、なっ、なんてことしやがる⁉︎ 人の腕をっ⁉︎」

ベビードラゴン「止血しねぇと、死ぬど。オラは死体のが都合いいんけんど」

勇者「ハッ⁉︎ そ、そうだった! うおぉぉっ! 俺の右手が真っ赤に燃えるッ! 傷を治せとどろきさけぶ! ベホマぁぁっ!」ポワァァァ

ベビードラゴン「ふつうにできねのかよ」

勇者「それぐらい全力だってことだ! あぁ〜、本当に腕を食いちぎりやがって……」ドクドク

ベビードラゴン「お前がそういったんでねか。ん、でもちょうどいいな、勇者、傷口だせ」

勇者「傷口ならだすどころか晒されとるわい」

ベビードラゴン「それもそだな。そのままじっどしてろ」

勇者「はぁ?」

ベビードラゴン「よいしょっと」ジュク

勇者「いでぇっ! ツメをつっこむな!」

ベビードラゴン「 ممكن. العمل على طلبيتك بأسرع وقت」ポワァ

勇者「な、なんだ?」

ベビードラゴン「(これで魂の契約は完了っと)」
627 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 21:31:21.40 ID:dbQ7u9OxO
勇者「あぁ、もういやだ。そもそもなんでニートになるためにここまで苦労せにゃならんのか」

ベビードラゴン「おめぇよ。ほんどーに勇者やめるつもりなんかよ」

勇者「やめる」キッパリ

ベビードラゴン「……なんでよ? オラが言うのも筋違いかもしんねぇけどよ、人間にチヤホヤされるんだべ?」

勇者「なにがいいかなんて決めるのは俺の権利だ。ノットハーレム、ノットチヤホーヤ」

ベビードラゴン「魔王様に伝えたら、なんか意味あんのか?」

勇者「何度も言うが、意味はある。打算で動くようなやつに俺が遅れをとると思うかぁ?」

ベビードラゴン「しんねぇ」

勇者「予言してやろう。整理して考えだすと、魔王は俺の過去に興味を持ち出すはずだ」

ベビードラゴン「はぁ」

勇者「過去を知れば、ますます確信を持つことになるだろう」

ベビードラゴン「よぐわがんね」

勇者「ふっふっふっ……とにかくだ。お前が勇者の腕をとってきた。これで竜王の命を救え、お前自身のお咎めもなければ、それで俺の勝ちだ」

ベビードラゴン「そうなんか?」

勇者「利口なやつほど蜘蛛の糸にがんじがらめにされにくる。自分からな」キッパリ

ベビードラゴン「……もし、魔王様や竜王様に害をもたらすなら、オラが殺すど」

勇者「心配せんでいい。俺の望みは何者にも縛られない自由になることだ。それをニートと言ってるにすぎん」

ベビードラゴン「……今はおめぇを信じてやる」

勇者「しっかりやれよ」

ベビードラゴン「うまくいっだら、借りは、いつか返してやるよ」パタパタ
628 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:05:34.85 ID:dbQ7u9OxO
【クィーンズベル城 玉座】

王様「お主たちは、なにをくわだてておった」

お頭「俺たちゃしがねぇ盗賊ですよ。そんな、くわだてるって」

姫「嘘ですわっ! メイド!」

メイド「私の顔に、見覚えがありませんか……?」

お頭「ありませんねェ。なんことやら」

メイド「そうですか。では、衛兵ならば私の顔に見え覚えがあるのでは?」チラ

衛兵「……っ」

メイド「陛下。こちらの衛兵は盗賊団の密偵でございます」

衛兵「虚偽の申告をいたしておりますっ! 陛下を裏切るようなマネなどできましょうか!」

メイド「まだ嘘で塗り固めるおつもりですかっ⁉︎」

衛兵「陛下! わたくしめを信じてくださいっ! この女に惑わされてはいけません!」

姫「わたくしの専属メイドに……っ!」

衛兵「公平な裁きを求めているだけでございますっ! 姫様ごひいきのメイドならばこそ!」

メイド「……っ」ギュゥ

姫「生き恥をしてまで……! そんなにも生きたいのかっ⁉︎」

衛兵「(当たり前だろうが。ここで罪を認めちゃ死罪は免れねぇ。お頭、これでいいですよね)」チラ

お頭「(いいぞ。それでいいんだ。俺たちがなにをやろうとしていたか、その証拠はまだねぇはずだ)」

衛兵「王様ぁっ! なにとぞ! なにとぞ調査を!」

王様「……ふぅむ」

姫「お、お父様っ⁉︎ なぜっ⁉︎ なぜ考えこむのですか……⁉︎」

王様「罪を明らかにせねば、適した罰を与えられん」

姫「それはっ……そうですけど……」

メイド「……王様。私は、告白せねばならぬことがございます」

姫「なに……ハッ! や、やめなさい!」

王様「告白? なんだ?」

メイド「私も、罪を償わなくてはなりません。ご寵愛に守られたままでは、この者が言う通りになってしまう。姫様を侮辱されるのは、許せません」

衛兵「(ま、まさかっ、見取り図の件を……? そ、そんなことすれば……お前もただではすまんぞっ!)」キッ

メイド「…………私は、宝物庫に忍び込み」
629 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:11:50.09 ID:dbQ7u9OxO






ジャン「ちょぉ〜〜〜っと待ったッ!!」バターーンッ







630 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:29:38.87 ID:dbQ7u9OxO
王様「お主は……ハーケマルの」

姫「ゆ、ゆうしゃ?」

メイド「なぜ……」

ジャン「王様、ここは無礼講でお願いします」

王様「かまわぬが。今は尋問の最中である。控えてくれると――」

ジャン「それはできません! なぜなら、私が証拠だからでございます!」

王様「なに? どういう意味じゃ?」

ジャン「この私が見取り図を持ち出しました」パサッ

王様「……そ、それはっ⁉︎」

お頭「(こ、こいつっ⁉︎)」

衛兵「(なに考えてやがるっ⁉︎)」

メイド「な、な、なにを……」

ジャン「それもこれも、お頭に指示されましたからです。ちなみに井戸の水が干上がっているのも盗賊団が原因です」

王様「なんだとっ⁉︎」ガタッ

ジャン「原因はこのビー玉だったんですよ。お調べください」ジャララ

王様「び、ビー玉?」

ジャン「魔族のアイテムです」

王様「ま、魔族ぅっ!?」ギョッ

ジャン「落ち着いて考えれば、全て繋がるはず」

姫「な、な、なんですの、これは、いったい盗賊の狙いは、宝のはずのでは」

ジャン「表向きはね。真の狙いは、魔族と組んで国を転覆させること。……そうですよね? お頭♪」

お頭「お、おめェっ! 気でも狂ってるんじゃねぇのか!」

ジャン「俺は打算とか計算が大好きなんですよ。でも好きなだけの趣味って感じですかね、だからそういう“生き方”をしてるやつらの考えがよくわかる」

衛兵「……っ」

ジャン「そこの衛兵も密偵です。言い逃れしてただけですよ」

王様「警備兵よ! ただちにこやつらを引っ立てて、真実を吐かせよ!」

警備兵「はっ!」ザッ

衛兵「ジャン殿っ! あ、あんた……っ!」

お頭「ロビンフッドになったつもりかっ⁉︎ お前も死刑だぞっ⁉︎」
631 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/14(水) 22:56:59.85 ID:dbQ7u9OxO
ジャン「言ったでしょ? ただの趣味なんです。俺もいつかは死ぬ。そん時は天国で会おうぜ」

お頭「こ、こいつっ、殺して、殺してやるっっ!」ジタバタ

警護兵「おい、暴れるな。行くぞ」グィッ

お頭「は、はなせェっ! くそっ、ちくしょぉっ!」

衛兵「な、な、なんで、こんなことに」

ジャン「あんたらの悪手は、最後までシラを切り通さなかったことだ。俺の登場で明らかに動揺したな。どっちみち逃げられないけどね」

王様「……して、貴様はどう申し開きをするつもりだ?」ギロッ

姫「お、お父様っ! 違いますっ! この者は――」

メイド「王様っ! 私です! 私が見取り図を――」

王様「だまれぇぇぇぇいっ!!」クワッ

姫&メイド「……っ」

王様「一国の王のっ!! 発言にっ!! 口をはさむなっ!!」バンッ

ジャン「(さてさて……)」

王様「……ハーケマルの使者よ」

ジャン「はい、王様」

王様「その見取り図。無断で持ち出したことの釈明を聞こう」

ジャン「いや、今いったままです。言い訳はありません」

姫「ば、ばかなっ⁉︎」ギョッ

メイド「そんなっ⁉︎」ギョッ

ジャン「……ちなみに俺はハーケマルともなんら関係ありません。盗賊団の一味です」

王様「なぁにぃ?」

ジャン「どうぞ、犯罪者として指名手配なさってください」

王様「指名手配? 逃すと思うのかっ! 警護兵っ!」

ジャン「(舞台は整った。ここだな)」ビュッ

王様「な、き、消え……っ⁉︎」

姫「きゃあっ!」

ジャン「動かないほうがいい。姫を殺すぞ」チャキ

姫「……っ⁉︎」ギョッ

王様「お、おのれぇぇっ! 人質をとるつもりか」

ジャン「すぐに返してあげますよ」パサッ

姫「ゆうしゃ、いったいなにを考えて……ど、どうしたんですのぉっ⁉︎ その腕ぇっ⁉︎」ギョッ

メイド「腕がっ……そんなっ、左腕がっ、ない⁉︎ なくなってるっ⁉︎」

ジャン「自身の心配をなされよ。砂漠国のプリンセスよ」
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/14(水) 23:41:45.33 ID:Lr0+UNYPo
wktk
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 02:01:22.28 ID:h9Tesar9o
おつ。続きが気になって寝れねぇ…
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 06:38:29.84 ID:mswNov6t0
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 07:03:02.04 ID:Ffor0rIXo
636 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 11:04:05.95 ID:TxY5L79TO
王様「生きて逃げおおせると思っておるのかぁっっ! 例え……っ! 例え、逃げられたとしても生きた心地のしない逃亡生活が待っておるのだぞっ⁉︎」

ジャン「これは異なことを申される。私の素顔を王はご存知でない」

王様「ぬぐ……っ⁉︎」

ジャン「ハーケマルの使者だと気がつかずとも、一言、“仮面を脱げ”といっていればよかったのに。自身の落ち度に対して卑怯とは、おっしゃられますまいな?」

王様「ぬぐぐっ」ギリッ

ジャン「逃げることには変わりがありませんが、わざわざ姫を拉致したのは別の理由がある」

王様「別の、理由じゃと……?」

ジャン「金銭の要求や、魔族を引き合いに出すのではありません。今回起こったことを、民に公開するのです」

王様「な、なに……?」

ジャン「無論、他三国はもちろんのこと、ハーケマルに詳細を知られることとなるでしょう。姫の政略結婚は、一時見送りになるやもしれませんね」チラ

姫「……っ⁉︎」

王様「こ、これを、醜態を公開せよ、と」

ジャン「王様、世間を縦だけてはありません、横もあるのです」

王様「なにが言いたい」

ジャン「縦とは階級社会、横とは、支配される者とされない者。つまり、民の世界です」

王様「……」ギロッ

ジャン「あんたら王族、貴族、豪族はあくまで縦の存在だ。横になってる民の上で成り立ってる。無知なまま、蓋をして終わらせようとするな」

王様「民は、王政に幻想を抱いておる。“王様にまかせておけばいい”、“まかせておけば安心して暮らせる”。日々の安心感を捨て、民に暴風に晒された生活をしろと」

ジャン「……」

王様「ガラス張りで透明性のある政事などしていては、統治など到底無理だ! なぜならば、ワシら王族も、貴族もっ! 全て、人だからじゃ! 聖人君子などおらん! 失敗もする!」

ジャン「……」

王様「民は口先だけの集まりなのじゃ! 口では、クリーンな政治を求めておきながら、その実、“平和”や“安心感”というボヤっとしたものがあればいい!」

姫「お、お父様……」

王様「此度の件を公開する? ふん、それで? その後はどうなる? 報告してなにを得られる? 民たちは不満を抱え、ワシは王としての権威を保てなくなる」

メイド「……」ゴクリ

王様「問おう。民達の弾弓に耐え、どうやって統治を……この国を治められようか? 方法があれば、聞こうではないか」
637 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 11:39:17.51 ID:TxY5L79TO
ジャン「ただ、希望を与えてやってほしい」

王様「……貴様は、群衆の愚かさをなにもわかっとらん……」

ジャン「今回の一件は、大事になる前に見事、収束させてみせたのです。王権の失墜など起こらないでしょう」

王様「欲を、民たちのもつ欲深さを知らんのだろう。青臭い希望では」

ジャン「民に目を向けられよ」

王様「しかと見ておる」

ジャン「いいや、見てない! あんたはそんなに普段から完璧でいるつもりなのか⁉︎ 民衆をバカにするのもいい加減にしろっ!」

姫「お父様に、なんてことを……」

ジャン「我慢できないわけじゃない! この水のなかった期間だって、最後には王様がなんとかしてくれる、そう思っていたとしても!」

王様「だから、幻想を抱いておるというとるに」

ジャン「希望を抱いていたいんだ! ……今は、いう通りかもしれない。でも、そこをなんとかするのが、王たるあんたの使命だ」

王様「……民自身が、無知でいることを望んでいるとしてもか」

ジャン「常識が形式化してしまえば誰だってそうなる。歩行具をつけたまま何世代も歩かせる気なのかよ」

王様「知識を得るのは苦痛が伴う。民は、ひどく疲れるぞ」

ジャン「だから希望が必要なんだ。希望は、苦痛や疲労に耐える力を与える。歩けるようになるまで、あんたが支えてやれ」

王様「わかったような口を」

ジャン「俺は、人間の汚い、醜い部分を多く見てきたつもりだ。結局、どういう国を夢見てるんだよ? 王様は、なんの幻想にすがってるんだ?」

王様「ワシが……?」

ジャン「そうだよ。あんただって人だろ。民達を導いている優秀な指導者か? そこを拠り所にしているのか?」

王様「……」

ジャン「“民と王で同じ夢を見られない国は滅ぶ”。これだけは、言っておく」スッ

王様「……っ」ギリッ

姫「お父様ぁっ! この者はゆう――」

ジャン「はいストップ」ムギュ

姫「もごっ⁉︎ むーっ!」

ジャン「(パーティのやつらは宿屋に置き手紙残してきたから、その内追いかけてくるだろ。来たかったらだけど)」

メイド「姫様っ!」

ジャン「……メイドとやら。軽はずみに口を開がないほうがいい。姫がキズモノとなるぞ」ピト

メイド「なぜっ、このようなことを……っ」

警護兵達「お、王様ぁっっ!」ゾロゾロ
638 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 12:06:29.87 ID:TxY5L79TO
兵士長「王様っ! ……な、なんとっ⁉︎ 姫さまがっ⁉︎」ギョッ

姫「(この者は勇者ですっ! 勇者なんですっ!) もごもごっ! むーっふっ! ふもーっ!」

ジャン「(しかし、口おさえるとなんもできんな。両手がないとやっぱり不便。パッと手を離した瞬間に気絶させるか)」トス

姫「うっ」

警護兵達&メイド&兵士長「ひ、姫さまぁっ!!」

姫「」グッタリ

ジャン「(あとは顔真っ赤にさせて、と)マヌケな兵士たちよ! 雁首そろえて女一人守れなくてざんねんしたぁwww 悔しいねぇ? 今どんな気持ち?? ねぇ、どんな気持ち??」

警護兵達「ぶち殺してやるっ!!」

ジャン「王様、それじゃ俺はこれで失礼を」シュタッ タタタッ

王様「すぐに追いかけろっ!! 絶対に逃がしてはならんっ!!」
639 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 12:31:41.43 ID:TxY5L79TO
【クィーンズベル城 廊下】

戦士「なんだ? えらくごったがえしてるが」

僧侶「なにやら起こったみたいですねぇ〜」

武闘家「……?」

   ドガシャーンッ

ジャン「なーはっはっ! 遅いわボケナスどもぉ〜!」タタタッ

兵士長「まて、またんかァっ!!」ダダダッ

ジャン「とっつぁ〜ん! 待てと言われて待つルパンがどこにいるんでぇ〜?」タタタッ

戦士「こちらに走ってくるのは、賊か」チャキ

武闘家「やれやれ。この国の治安はどうなってるんさ。白昼堂々と城に」スッ

ジャン「ん……? おっ、お前ら……⁉︎」ギョッ

戦士「大人しくお縄につけ。……はぁぁぁっ!」ダダダッ

ジャン「むっ」パクッ

戦士「電光石火ッ!! はやぶさ斬り」ザシュ ザシュ

ジャン「ふんもっふ!」ササッ

戦士「なに、避けたっ⁉︎」

僧侶「あらあらぁ。器用に口で剣を加えたままで……片腕しかない……?」

武闘家「なかなかやるじゃないかっ!」

ジャン「(邪魔くせぇっ! 手加減してやらねーと)」

警護兵達「まぁ〜〜〜てぇ〜ごるぁあああっ!!」ドドドッ

ジャン「(そんな暇もないか)」パリンッ ガシャーン

武闘家「あっ! チッ!!」

兵士長「窓だっ! 窓から逃げた!」

警護兵「ここ城の三階ですよ⁉︎ 一般家屋とは違い、城の三階は高さが……」

兵士長「堀に捕まっているのかもしれん!」

ジャン「(そう思うじゃん? ふつうに落ちてるんだなこれが)」ヒューー

武闘家「この高さでは、助からないな」

戦士「な、なんだったんだ?」

僧侶「……」ジー

ジャン「(あらよっと)」クルクルッ シュタッ

兵士長&警護兵達「な、なんだとっ⁉︎」ギョッ

ジャン「(決まった。我ながら10点満点の着地である)」

戦士&武闘家「……」ポカーン

僧侶「宿屋に戻りますよぉ〜。今すぐにぃ〜」
640 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/15(木) 13:03:18.32 ID:TxY5L79TO
【クィーンズベル 城下町】

魔法使い「はぁ〜〜。マク様はいったいどこに……」

戦士「おっ、魔法使い」キキッ

魔法使い「朝っぱらからジョギング?」

戦士「いや、なんだか、僧侶が焦ってるみたいで。宿屋に帰ると言われて」

魔法使い「はぁ?」

戦士「ほら、あそこ。前走ってる」

僧侶「(先ほどのすれ違いざまに感じた聖なるオーラは……まさか、まさかっ⁉︎)」シュタタタタタッ

武闘家「くっ、は、はやいっ⁉︎ どうなってるんさッ⁉︎」

戦士「いやぁ〜、人間ってのはわからないもんだ。僧侶があんなに早く走れるなんて。魔法職だよな? あいつ」

魔法使い「な、なんなの。俊敏がウリの武闘家が追いついてないじゃない……」

戦士「いやぁ〜〜〜。ほんっとーーにわからないもんだ。まさかとは思うが、僧侶があたしより強いとか、ないよな?」

魔法使い「えっ?」

戦士「いや、ないよなぁ〜〜さすがにそれはないよな? 魔法職だもんな? サシで負けるなんてこと」

魔法使い「な、ないんじゃない? だって、私たち魔法職は、防御能力ないし」

戦士「……そうだよなっ! あたしのパーティの序列がさらに下がるなんてことないよなっ!」

魔法使い「(僧侶、あいつ、一体……なんなの?)……私も宿屋に戻る!」

戦士「お、おいっ! ほんとにないよな? 僧侶が強いなんてことはないよなぁっ⁉︎ 」タタタッ
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 14:58:47.67 ID:Ox5zjxyY0
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 18:51:13.73 ID:FByTnZG1O
おつ
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 21:57:16.52 ID:T8SysTYLO
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/15(木) 22:31:12.85 ID:Ffor0rIXo
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 16:16:27.78 ID:Z1eKjUE30
戦士と魔法使いだと今のところ魔法使いがワーストか
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 16:29:44.05 ID:yuXWzLkO0
魔法使いも魔法使いでマダンテ覚えたら一気に最強クラスになる
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 07:30:34.85 ID:PCKssJ8j0
メラミとメラを数回ずつ使ってヘバるMP量のマダンテじゃなあ
しかも魔翌力切れ起こすと身体に負荷かかるこの作品じゃメガンテと変わらんw
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 09:08:14.37 ID:rimZUGy90
全員才能はピカイチて書いてあるから全員最強クラスになるのが既定路線なんじゃねたぶんだけど

649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 11:15:55.80 ID:vh8tRU5DO
その魔法使いのピカイチが、魔法の才能ではなく炊き出しとか逃走とかの才能である可能性
650 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 14:37:44.93 ID:h4MucOXBO
【クィーンズベル 宿屋】

戦士「僧侶が強いなんて、そんなはずない、そんなはずないんだ」ブツブツ

魔法使い「ねぇっ、僧侶ってばぁっ!」

僧侶「……」ゴソゴソ

魔法使い「あんたいったいどうなってるのっ⁉︎ なにか私たちに話してないことあるでしょ⁉︎」

僧侶「はやく荷物まとめないとぉ〜」ギュッギュ

武闘家「……“次の村の宿屋で二日まつ”か」パサ

戦士「うぅ〜、いやだ、もう負けたくない。負けたくないんだぁ」ブツブツ

魔法使い「教えなさいってば!」グィッ

僧侶「別にいいじゃありませんかぁ、知らなくてもぉ」

魔法使い「一緒に旅する仲間でしょう⁉︎」

僧侶「ふぅ……私は勇者さまさえ無事ならそれでいい。言えるのはこれだけですねぇ」

魔法使い「どういう意味……あんた、まさか……」

僧侶「歯ブラシ、はここにっと」スポッ

魔法使い「手を抜いてやってるの……? 勇者が本当に危なくなった時の為に、力を常に温存してるんじゃ……」

僧侶「どう受け取ろうとご自由に〜」

魔法使い「今まで一緒に戦った時も、本気でやってたんじゃなかったの⁉︎ ……なんとかいいなさいよっ!」

村娘「こんにちはぁ〜」ガチャ

戦士「……?」

村娘「(あいかわらずマヌケなやつら。私がリリムだって気づきもしないで)……こちらに勇者様がお泊りしていると噂になってて」

武闘家「勇者なら、いないよ」

村娘「今は席を外されてるんですか? 男性用のマントがありますが」チラ

魔法使い「知らないわよっ!! あんなやつっ!!」プィッ

戦士「おい、魔法使い」

村娘「(なにヒスっちゃってんのこいつ)サインもらいたかったのにぃ」

僧侶「……」スクッ テクテク

村娘「貴女様はご存知でしょうか?」

僧侶「なにしにきたんですかぁ?」バァンッ

村娘「……え?」

戦士「おお、乙女の憧れという壁ドンか」

魔法使い「なんか使い方間違ってるような気がしないでもないけど」

僧侶「“また”来たんですかぁ?」ニコニコ

村娘「は、はい?」

武闘家「……?」

僧侶「今はすこぶる機嫌が悪いんですぅ。誰かに八つ当たりしたくてぇ」ゴゴゴゴッ
651 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 14:44:52.43 ID:h4MucOXBO
村娘「……え? へ?」

僧侶「魔法使いさん」チラ

魔法使い「なによ」

僧侶「ちょっぴり話するとぉ、私、ダーマで結構有名人なんですぅ」

魔法使い「あっそ。そりゃ法王庁出のエリートならそうでしょ」

僧侶「いいぇ〜。そうじゃなくて“悪名高い”のでぇ」

戦士「悪名? って、僧侶が?」

僧侶「はい〜。幼い頃からのあだ名がありましてぇ、“殴り僧侶”とか色々言われてましたぁ」ブンッ

村娘「なっ⁉︎ ……ちょっ⁉︎」ギョッ

僧侶「しゃーーーっんなろぉーーっっっっ!!!ドゴォォォォッッンッッッ

村娘「〜〜〜〜ッ⁉︎⁉︎ ぎゃぁっ⁉︎」バコン バコン バコーーーンッ

おっさん「わぁっ⁉︎ 隣の部屋から人が突き破ってきたぁ⁉︎」

魔法使い&戦士&武闘家「……」ポカーン

僧侶「……少しスッキリしましたぁ」パンパン

魔法使い「う、うそ、でしょ……」アングリ

戦士「は、は、はは。夢だ。悪い、夢だ」

武闘家「な、なんちゅー怪力だよ」ゴクリ

魔法使い「魔法職なのに、一体、どうやって……」

僧侶「さぁ? どうやってるんでしょうねぇ〜」ニコニコ

武闘家「と、というかっ! 村娘は⁉︎」ダダダッ

おっさん「ひっ、扉からはいってこいよぉ!」

リリム「」チーン

武闘家「こ、こいつはっ……!」ギョッ

僧侶「まだ息はあるはずなのでぇ〜。回復してどうなってるのか吐かせないとぉ」テクテク
652 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 15:11:12.08 ID:h4MucOXBO
【数十分後 同宿屋】

リリム「ん……んん……」

僧侶「目が覚めましたぁ?」

リリム「(くそっ、私の正体に気がついてたやつがいたなんてっ⁉︎ ……し、縛られてるっ⁉︎)ふもーっ! ふむもっ!」ジタバタ

僧侶「殺す気なら寝てる間に何百回も殺せましたよぉ。目的はそうじゃないのでそうしませんでしたけどぉ」ニタァ

リリム「……っ⁉︎」ゾクッ

僧侶「どうしてここに勇者さまがいるとわかったんですかぁ?」

リリム「ふもーっ! ふむむっ!」

僧侶「喋れませんでしたねぇ。いま、噛ませてるタオルをとってあげますぅ」スッ

リリム「ぷはっ! 貴様ぁッ! こんなことしてたタダで済むと思うなよッ⁉︎」

僧侶「戦士さん。ちょっと剣をお借りしますねぇ」スラァ

戦士「えっ? なにする――」

僧侶「えいっ」ザシュ

リリム「ぎゃっ⁉︎」プシュー

魔法使い「きっ、斬ったっ⁉︎」ギョッ

戦士「無抵抗な相手だぞっ⁉︎」

武闘家「……待て。なにも理由がないとは思えない」

僧侶「痛いですかぁ?」ジー

リリム「ぐっ……!」ギロッ

僧侶「治してあげますよぉ」ポワァ

リリム「……殺せ」

僧侶「いいえ〜。殺すなんてしません〜。死なないギリギリのラインで痛めつけ続けてあげますよぉ」

魔法使い「あ、あんた……っ⁉︎ なにいってるのっ⁉︎ 聖職者がそんなっ」

僧侶「手段は選びませんのでぇ。言ったでしょ〜? 機嫌が悪いとぉ〜」

戦士「僧侶、お前……」

僧侶「――……どこのどいつかさっさと言えっつうんだコラ。勇者さまの腕を切り落としたのはどこのクソ魔族だ?」グィッ

リリム「うっ!」

武闘家「……な、なんだって……」

魔法使い「勇者の、腕が……?」

戦士「切り落としたぁっ⁉︎」ギョッ

リリム「……くっ、くっくっ、事実だったのか、余裕しゃくしゃくでいけ好かない男。隻腕になったんだぁ?」

僧侶「言葉に気をつけないと、死ぬよ」

リリム「殺したらいいじゃなぁ〜い? そんなことしても勇者の腕は元に戻らないケド♪」

僧侶「……っ!」ギリッ

リリム「悔しそぉ〜〜。なにも知らなかったんだぁ? あんた達も。パーティの仲間なのにぃ?」

武闘家「おいっ! 勇者は、いまどこだっ!」ガンッ

リリム「知るわけないでしょ? そこに置いてあるマント。私はマーキングを頼りにここに来ただけ」

魔法使い「いつのまに……えっ、だって、昨日は、腕があって」
653 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 15:33:42.19 ID:h4MucOXBO
僧侶「腕は、いまどちらに?」チャキッ

リリム「ま・お・う・さ・ま・のぉ〜……と・こっ♪」

僧侶「……」ポトッ

リリム「キャハハッ! ざぁ〜んねぇんでしたぁ〜っ!」

魔法使い「武闘家っ!! さっきの置き手紙なんて書いてあったって⁉︎」バサッ

リリム「クックックッ、おっかしぃ〜〜っ! あんた達なにやってたのぉ〜?」

戦士「……片腕……そんな、剣士としてはもう、終わりじゃないのか……」

リリム「終わり終わりぃ〜! キャハハハハッ!」

武闘家「知ってることをすべて話せっ!! 今すぐっ!!」バンッ

リリム「やぁだ」プィッ

武闘家「……おい」ゴゴゴゴッ

リリム「好きなだけ拷問でもなんでもすれば? でもぉ、私はぜぇぇったいに喋らないけど? あんた達の青ざめた表情見てるだけで悦にはいれちゃうしぃ〜?」

僧侶「……勇者様の服はここに置きっ放しになってます。今すぐ全て燃やしましょう」

戦士「なぜだ?」

僧侶「いちいちイライラさせないでよっ!! マーキングされてるって聞いたでしょっ⁉︎」キッ

戦士「……っ、す、すまん、そうだな」

魔法使い「メモを残してあるってことは、まだ、生きてる。とにかく、次の村に急がないと……!」

武闘家「荷物をまとめろ、はやくっ!」

リリム「あらあらぁ〜? 拷問してかなくていいのぉ〜?」

僧侶「ご同行願います〜。お話は後でゆっくりと〜」

リリム「ふふぅん?」ニヤニヤ
654 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 16:10:14.44 ID:h4MucOXBO
【クィーンズベル 郊外】

ジャン「そろそろいいか」スポッ

姫「……お父様が今ごろカンカンですわよ」ジトォ〜

勇者「10年ぶりだね、姫ちゃん」

姫「なに考えてるんですのっ⁉︎ こんなことしてっ! そ、それに、その腕はっ⁉︎」

勇者「ああ、これ? ……未来にッ! 賭けてきたッ!」ドンッ

姫「み、未来?」

勇者「ワン○ース知らない? 漫画なんだけど。それでシャンクスっていうのがいてさ」

姫「そうではなくっ! 漫画なんてどうでもいいでしょ⁉︎」

勇者「俺って友達がいなくてねぇ。漫画ばっか読んでたから、あはは」

姫「……どういうつもりなんですの? 腕はなくしてるわ、見取り図は自分が盗んだというわ」

勇者「ああでもしないとメイドちゃんが自白してたんじゃないかと思って。それに、この国のあり方についても思うところあったし」

姫「内政干渉ですわ。お父様が素直に言うことを聞くはずありません」

勇者「それはそうだ。姫ちゃんが唯我独尊なのって父親の血を受け継いでるとこあるね。わがままっぷりも半端ないけど」

姫「わ、わがっ……⁉︎」

勇者「一応、兵士たちもきっちり煽ってきたことだし、大規模な捜索部隊を編成してるだろ。国民にはバレるよ」

姫「……」

勇者「本当は、ルビスに会いに来たんだけど、また次にする」

姫「ルビス、さま?」

勇者「知らなくていい。ダーマ神殿に行かなきゃいけないんだ」

姫「……魔王討伐の旅の途中でしたものね。光の柱は、勇者のものだったのでしょう?」

勇者「そだよ」

姫「……そう」

勇者「ここで待ってればすぐに見つけてくれるはず。なにかあったらいけないから、遠目から見てるよ」

姫「も、もう行くのっ⁉︎ せめて、お父様の誤解を解いてから」

勇者「メイドちゃんはどうなんのよ」

姫「そ、それはっ、でも、きちんと正直に話すればお父様も」

勇者「ほかの手前もあるからそうはいかないかもよ。政治っていうのは内向きと外向きがあるんだ。今回のは内向きだ」

姫「……」

勇者「俺は仮面を被っていたお陰で、正体を知る者は極少数に限られてる。片手で数えれるぐらい……姫ちゃんと、メイドちゃんと、衛兵。犯罪者の衛兵の言葉なんて誰も信じないし」

姫「私と、メイドが、黙っていれば、勇者は罪に問われない……ってことですわね」

勇者「そうなるね。けど、言ってもいいよ。そこはまかせる」

姫「そ、そんなのっ、言えるわけ、ありません……」

勇者「……そっか」
655 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 16:39:17.90 ID:h4MucOXBO
姫「全部、勇者の狙い通りなんですの?」

勇者「ん?」

姫「だって、そうでしょ?」

勇者「んー」ポリポリ

姫「メイドは勇者の身を案じて真実を告白できない、わたくしは大切な友を失わずに済む。罰せられるべき者たちは罰せられ、大円団じゃありません?」

勇者「ははっ、あははっ」

姫「ふふっ、お父様まで巻き込むなんて」

勇者「……大円団なんかじゃないよ」

姫「ど、どうして? だって、結果だけ見れば」

勇者「本来なら罪に問われるべきなんだ。メイドちゃんも。俺もね」

姫「で、でもっ!」

勇者「姫との縁故を利用して、裁かれるべき人が抜け道を通った。苦し紛れの、胸糞悪い結果なんだよ」

姫「……っ」

勇者「これから俺たち三人は、罪を共有してく。それは、王にウソをついた不敬罪、隠匿罪。まぁ、そこさえ気にしなきゃいいんだろうけど」

姫「わたくしは、気にしません」

勇者「……メイドちゃんによろしく伝えておいてよ」

姫「あの子、会いたがってましたわよ。勇者が、くれた、銀細工……ススだらけになるまで持ち歩いて」

勇者「また機会があったら遊びにくる」

姫「腕は? 本当に大丈夫ですの?」

勇者「なんとかなるんでない。わかんないけど」

姫「……あいかわらず、なんですのね」

勇者「あ、ねぇ。ひとつ聞きたいんだけど」

姫「なんですの?」

勇者「ここらへんってさ、花ってある?」

姫「花? サボテンに咲く花ぐらいかしら……」

勇者「なにか、伝承があるとかない? 雨と太陽が交わる場所とか」

姫「雨と、太陽……あぁ、“結晶の薔薇”のことですわね」

勇者「ほ、ほんとにあんのっ⁉︎」

姫「自分で聞いたのではないですか」

勇者「いや、そうなんだけど。まさか、あるとは」

姫「ありますわよ。ただ、今はありませんけど」

勇者「今は? 時期的な話? ここ気候は年中同じだよね」

姫「いいえ、年に一度、雨が降るんですの」
656 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 17:05:28.80 ID:h4MucOXBO
勇者「へぇ」

姫「雨があがれば、太陽がさしこむ。一輪の薔薇が咲いてます。学者たちの研究でもよくわかっていません」

勇者「そりゃー、神秘的なお話で」

姫「お城にいけば、ありますわよ」

勇者「どこに……どうせ宝物庫だろ」

姫「観賞用ですから厳重に保管してありません。わたくしの部屋にあります。鏡の前に」

勇者「あ、そう。……鏡?」

姫「ええ、そうですけど」

勇者「そう……そうか……偶然……だよな?」

姫「……?」

勇者「……気にしないでくれ。それと、返しとく」ジャラ

姫「これは、王家に伝わるアクセリー?」

勇者「姫ちゃんに足さされた時に貸し出されたんだ。ちゃんと返しておくよ」

姫「わかりました。お父様には、拾ったと伝えておきます。……あの、勇者」

勇者「なに?」

姫「わたくしの、政略結婚まで、考えてくれて、あ、ありがとぅ」ポッ

勇者「……」ぞわぞわっ

姫「は、ハーケマル王子との婚姻は、きっと、延期されるでしょう」

勇者「う、うん。いいよ」

姫「あ、あのっ、次は、いつ来る……?」

勇者「そのうちに」

姫「お父様も、勇者に、会いたがってましたし……その、もしかしたら、け、けけけっ、結婚相手が変わるなんてことも」

勇者「さてっとぉ」テクテク

姫「どこ行くんですの。まだお話の途中ですが」ガシッ

勇者「……」

姫「勇者なら、王族とも、肩を並べてもおかしくないというか、メイドを側室として迎えて、わたくしと」

勇者「姫ちゃんッ!!」クワッ

姫「は、はいっ!」

勇者「……」ジー

姫「あ……」ドッキンコドッキンコ

勇者「ライデイン」ボソ

姫「……えっ⁉︎ えぇぇぇぇっ⁉︎」ビリビリ

勇者「出力は抑えてある」バチバチ

姫「」プスプス

勇者「結婚なんか人生の墓場だっ!!不吉なこと言ってんじゃねーぞ!!」クルッ
657 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 17:33:38.83 ID:h4MucOXBO
【クィーンズベル 廃墟】

老人「ふぉっ、ふぉっふぉっ。ワシに会わずにゆくか、勇者よ」パァァ

ルビス「――……せっかくお膳立てしてあげたのに」

妖精「ルビス様ぁ〜、もう帰りましょ〜」

ルビス「ねぇ」

妖精「はぁい?」

ルビス「魔王なんか小物の前座で私が真のラスボスって言ったら、あの子、どんな顔して喜んでくれるかな? かな?」

妖精「真実知ったら恨まれると思いますよぉ? こーんな顔して」グニ

ルビス「そっかぁ〜、うんうん、そーよね」

妖精「時の狭間に帰りましょ〜」

ルビス「見たかったなぁ。あの子の絶望してる表情」

妖精「もぉ、ルビス様ったら」

ルビス「つまみ食いはよくないもんね? 楽しみはとっておきましょっか♪」
658 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 19:00:49.25 ID:h4MucOXBO
【馬車の荷台】

魔法使い「はぁぁぁあっ! メラミっ!」ポフン

武闘家「……」

魔法使い「ありゃ、もう魔力きれちゃった」

武闘家「魔法使い、静かにしてよ」

戦士「はぁぁ〜〜〜っ」ショボン

魔法使い「戦士ったらまだグジグジしてんの? 僧侶の怪力見たからって。戦ってみたら?」

戦士「……また負けたらどうするんだよぅ」

魔法使い「三度目の正直、と言う言葉があるわよ」

戦士「二度ある事は三度ある、というじゃないかぁ」イジイジ

魔法使い「そうね、二度ある事は三度ある、三度目の正直、どっちも言うけれど、どっちが本当なのかしらね」

武闘家「くだらない。どっちも同じじゃないさ」

魔法使い「?」

武闘家「三度とも正直なら、同じ事」

魔法使い「は? なにあんた、空気で頭でも打った? 意味わかんないんだけど」

リリム「……」ボロ

魔法使い「ねぇねぇ、魔族の貴女はどう思う?」

リリム「……」

魔法使い「シカト? 人間を餌にしか思ってないんでしょ〜? こうして逆に痛めつけられるなんて思わなかった?」

リリム「いちいちうるさいなぁ。陰湿」

魔法使い「あんたに言われたかないんだけどぉ?」

リリム「魔法使いって呼ばれてるんだっけ。魔法の才能ないよ? キャハハハハッ!」

魔法使い「……なんで?」

リリム「バカの一つ覚えみたいにメラミメラミってさぁ。魔力はまったく練りこめちゃいないし、学芸会でもやってるのぉ?」

魔法使い「なんですってこの低級三下魔族が」

僧侶「あのぉ〜、そろそろ手綱かわってほしいんですけどぉ」ヒョイ

魔法使い「……私、やる。ここいてもつまんないし」

リリム「逃げた逃げたぁ」ニヤニヤ
659 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 19:23:25.03 ID:h4MucOXBO
僧侶「傷の具合はいかがですかぁ」

リリム「(こいつ。厄介なのは、こいつだ。このパーティで、無抵抗な弱者を傷つけるのを躊躇わらない)」

僧侶「勇者さまの腕をやってのはどの魔族か言う気になりましたぁ?」

リリム「言うわけない」

僧侶「そうですかぁ」ゴソゴソ

リリム「……」ジー

僧侶「これぇ、モーニングスターっていう武器なんですけどぉ。鎖の先端にイボイボの鉄球がついてるんですぅ。当たれば痛いですよぉ」ヒョイ

リリム「……だから?」

僧侶「わたしねぇ、勇者さまって、かわいそうだと思うんですよぉ。自分らしくありたいって、そう主張してる男の子にしか見えなくてぇ」

リリム「……」

戦士「僧侶、それ、使う気か? いくらなんでも、そこまで。いっそ、ひと思いに殺してやったほうが」

僧侶「お師匠さまにぃ、言われてるんですよぉ。“精一杯、勇者さまのお力になってきなさい”って。そう思ってた、そう思ってたのに。でき、なかった」

武闘家「……」

僧侶「距離を測るべきか、詰めるべきか、悩んでる内に。腕をなくしちゃってましたぁ〜。あはは、臆病ですよね、私のせいですぅ」

リリム「(なんだ、こいつ、やばい……目に、光がないっ)」ゾワッ

戦士「僧侶……」スッ

僧侶「次なんてあるかわからない」パシッ

戦士「な、なにもあたしの手をはたかなくったって」

リリム「……アンタ、本当に、聖職者……?」

僧侶「でも、だから。だから、次こそは。うん、次なんて、あるのかどうか、あっても何をすればいいのか分からないけど。でもね、次こそは私、勇気を出そうと思う……ね?」カチャ

リリム「……」ゴクリ

武闘家「僧侶、やめろ」

僧侶「邪魔するの? 武闘家さんは少しだけ聡いと思ってたのに」

武闘家「次の、村だ。村につけば、勇者がるはずじゃないさ。直接、聞けばいい」
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 20:58:41.02 ID:fc3pTmj+O
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/18(日) 21:27:12.11 ID:feu46Cgy0
662 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 23:06:48.25 ID:MV461hZpO
【1日後 クィーンズベル城 姫の自室】

姫「……」ブッスゥ

メイド「お、お嬢様。そろそろご機嫌をなおしてくださいまし。きっとなにかの手違いで」

姫「いいえっ!! たしかに痺れましたっ! それになにかボソッつぶやいてましたしっ!! 魔法を唱えたんですわっ!」

メイド「……あの、私の罪をかぶっていただき、命を救っていただいたのは事実ですし」

姫「それとこれとはなにも関係ありませんっ!」

大臣「姫さま、失礼いたします」ガチャ

姫「あーら、じじい。淑女の部屋になんのごよう?」

大臣「じじい……せめてじいやとか」

姫「じじい」

大臣「(この小娘がっ!!)」ニコニコ

姫「用件は?」

大臣「いやいや、用件はないんですけども。声が廊下まで聞こえていたので」

姫「用がないのなら、回れ右」

大臣「ぬぐっ! ……なにやら、痺れたとか」

姫「いやらしいじじい。盗み聞きしてたんですの?」

大臣「ほ、ほほ」ヒクヒク

姫「あなたには関係ないわ。出てって」

大臣「姫さま。僭越ながら、その魔法に心当たりが」

姫「……?」ピク

大臣「メイドよ。恋に落ちた時はあるか?」

メイド「は、はい?」

姫「セクハラですわ。お父様に言いつけて――」

大臣「それこそが、魔法の、正体なのです」

姫「ついに耄碌したんですのね」

大臣「古今東西、恋に落ちた時は、身体に稲妻がはしるという感覚と決まっております。のう、メイドよ?」

メイド「は、はぁ」

姫「恋……? そうなんですの?」

メイド「いえ、私は、よくわかりませんが」

大臣「ペットかなにかでも見つけられたんですかの? ……ごほん、良いですか。それはいわゆる、見惚れた時に現れる現象です」

姫「み、見惚れた……?」

大臣「犬ですか? 猫ですか? どちらでもよいですが。胸に手を当てて、愛くるしい姿を想い浮かべてごらんなさい」

姫「(勇者を……?)」

メイド「あ、あの、大臣さま。それ以上は……姫さまは嫁入り前の」

大臣「そうすると、たまらなく愛おしく思えてくるでしょう? ワシも犬を飼っておりましてな。野良だったのですが、最初の出会いはそりゃもうビリビリと電撃かと思ったくらいで」

姫「(勇者……あの時、見つめられて。そういえば、わたくしったら結婚の申し出を自ら、してた?)」ポワァンポワァン

メイド「自覚を、促すなんて……私、知りませんよ」

姫「……っ」ボッ

大臣「人生のパートナーとは、かけがえのない巡り合わせという運命でもあるのです。話は変わるが、メイドよ」

メイド「はい……」ブスゥ

大臣「? なにを不貞腐れておる」

メイド「知りませんっ! 本当にどーなっても知りませんからねっ!!」バンッ
663 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/18(日) 23:39:11.23 ID:MV461hZpO
【数十分後 クィーンズベル城 玉座】

王様「粛々と述べよ」

兵士長「はっ! ご報告致します! 捜索隊が出立、数刻後に無事確保、気絶しておられましたが、なんら異常は見受けられませんっ!」ビシッ

王妃「噂はどうか」

兵士長「……恐れながら申し上げます! 此度の一件にらつきましては、城内の使用人から漏れたのか、その、民たちの間でも」

王妃「陛下……」

王様「やはり、人の口に戸はたてられんか」

兵士長「箝口令(喋ったら罰すること)を敷きますか?」

王様「いや、そのような愚策をすればますます不信感を募らせる。漏れ出す前ならまだしも、後ではな」

王妃「ならば、別の噂で上書きしてしまうのは?」

王様「?」

王妃「ポジティブに捉えるのです。不祥事を隠さない王権はクリーンだと民たちに訴え、宣伝に活用してはいかがでしょうか」

王様「どちらにせよ、非はある。騙せたとしても一度が限度であろう」

姫「お父様っ!!」バターンッ

王妃「……はぁ、まったく、はしたない」

王様「姫よ。身体に大事ないか」

姫「わたくしっ! 結婚いたしますっ!!」

王妃「まぁ……」

王様「……そうか、危険な目にあい、王室に逆風が吹こうかというこの節目にようやく、ようやく自覚が芽生えたか……」

姫「勇者とっ!! 婚儀をあげますっ!!」

王妃「……」

王様「……」

兵士長「ひ、姫さま? いま、なんと?」

姫「ですからっ! 勇者とっ! 結婚いたしますっ!!」

メイド「ひ、ひひひっ、姫さまぁ〜、はぁっはぁっ」タタタッ

姫「メイドっ! 今伝えたところよっ!」

メイド「ひ、ひぃぃぃぃ〜〜〜〜っ⁉︎」ガタガタ

王妃「この子は……なにを考えてるのやら……」

王様「ば、ば、ばっ、ばっかもぉぉぉおおおっんっっ!!」
664 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/19(月) 00:04:41.71 ID:2O+eU8P+O
姫「なぜでしょうか⁉︎ 勇者であれば王室と婚姻を結んでも身分は問題ないはず! アデルに問い合わせてください!」

王妃「そういう問題ではないのです。ハーケマルとは兄弟国なのですよ。いわば、王子とは許嫁の身。許嫁とは、家同士の契約なのです」

王様「このっ、このっ、バカ娘がっ!」

姫「そんな婚姻に幸せはありませんっ! お父様! お母様! 娘の幸せをお望みではないのですか⁉︎」

王妃「理解してちょうだい。望むだけが幸せではないと。……結婚生活は、いずれ、慣れます」

姫「お母様は、なにも理解しておられません」

王妃「姫。母親に向かってなんたる口を……!」

姫「あの“勇者”なのです! 世界の希望! もし、私と結婚をするとなれば、ゆくゆくは国王! 勇者が国王になるのです! 民たちはこの国こそが一番だと喜び踊るでしょう!」

王妃「そ、それは……」

王様「ハーケマルが孤立するじゃろうが」

姫「そこはお父様の外交手腕の見せ所じゃありません?」

王様「なにも利ばかりが全てではない。信頼とは持ちつ持たれつで成り立っておる。本音を言えば、勇者を迎えたいのは四つ国同じよ」

姫「それじゃぁ、勇者が魔王を倒したら? どうなさるおつもりです? アデルに帰るのを指を咥えて見てるおつもり?」

王様「アデルは、勇者出生の地である。優先権はあそこにある」

姫「それも、国同士の決まりごと? バランスをとるための?」

王様「左様じゃ。我らが強引に動けば、まずアデルが黙っておらん」

姫「勇者が希望していたとしても?」

王様「なに?」ピクッ

王妃「姫……。まさか、勇者自身が、婚姻を望んでいると?」

メイド「ひ、ひめさまぁ、それ以上はまずいですぅ、後戻りが――」

姫「はいっ!! 勇者から求婚されましたっ!!」キッパリッ

王様「まことかっ⁉︎」ガタッ

メイド「…………し、知りませんよ、わたし、なにも、しりませんよぉ」

姫「ウソじゃありません! ですから! お認めください!」

王様「……う、うぅむ……」

王妃「勇者が……そう。この国にいると聞き及んではいたが、会ったのね?」

姫「はい!」

王様「当人は、どこにおる?」

姫「魔王討伐に急ぎでかけられました。戻ってきた時には、かならず妃にすると」

王妃「まぁまぁ、あらあらぁ」

王様「な、なんと。必ずと、そう申したのか」

姫「お父様、お母様。これは、政治的側面においてもチャンスなのではないでしょうか?」

王様「……兵士長よ……」

兵士長「はっ!」ビシッ

王様「この国を除く三国に早馬を飛ばせ。四つ国会議を申請すると。仲介役は、法王庁に」

兵士長「頂上議会を……!」ゴクリ

王様「伝文は、“魔王討伐後の勇者の所有権”。――よいな?」

兵士長「ははっ!」ドゲザ



665 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/19(月) 00:21:16.80 ID:2O+eU8P+O
【クィーンズベル城 姫の自室】

メイド「ひ、ひひひっ、ひめさまぁ。どうなさるおつもりなんですかぁ〜」

姫「なにが?」ケロッ

メイド「嘘なんでしょおっ? 求婚されたなんて一言も……人間達で争いが勃発しますよぉ〜ばかばかばかぁ〜」

姫「ウソなんて真実にしてしまえばいいのよ」

メイド「もし、もしも、バレたら、この国、滅ぶかもしれませんよ」

姫「転覆を目論んでいた盗賊団がいたじゃありませんの。勇者がいなければ気がつけていたかどうか」

メイド「ひぃ、ひぃぃぃぃんっ」

姫「うまくいけば、貴女を第一の側室に申請してあげる」

メイド「……え?」

姫「あら? 嫌だった? なら、どこの馬の骨ともわからない貴族と縁談を」

メイド「い、いえいえっ! 嫌だなんてそんなっ! わ、わたしですかっ⁉︎ というか、側室だなんて、そんなっ! 姫さまいいんですかっ⁉︎」

姫「英雄色を好むというでしょう。優秀なタネであれば多くの女を孕ませる権利がある。子は恵まれるにこしたことはないし」

メイド「え……わ、わたしが、勇者さまの、お嫁に……」

姫「ちょっと! 正妻はわたくしです! あなたは側室っ!!」

メイド「は、はい、それは、もちろん……」

姫「……そういえば、勇者ったら、なぜこの花を探していたのかしら」ゴト

メイド「鏡の前にある結晶の薔薇を?」

姫「ええ。急に聞かれたのだけれど……」

妖精『クスクス』

姫「――ねぇ、今、誰か? 笑った?」

メイド「いえ? 空耳では? この部屋には二人だけですし」

姫「そう……? 変ね……」
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 01:29:25.40 ID:Z4PpgFwfO
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/19(月) 01:43:20.56 ID:ztXIrcQV0
僧侶のキャラいいわーwww
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 02:19:18.66 ID:BQBGtKdC0
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 02:42:10.06 ID:ZNVru2qQO
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 07:08:27.77 ID:mrYYructo
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 08:57:06.72 ID:8Ghj5ltgo

楽しみ
672 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/19(月) 13:23:29.51 ID:cZuVtgYmO
【ブサイク村 宿屋】

勇者「この村のネーミングセンスやばない? 悪い意味で」

店主「……リア充はしね」

勇者「おおい! 直球だな! いらっしゃいませな!」

店主「一晩100000万ゴールドになります」

勇者「たかいよ。足元見てるってレベルじゃねーだろ」

店主「ちっ、これだから陽キャは」

勇者「脈絡なくディスらないでいただけるかな。とにかくなんでも文句つければいいと思ってないか……部屋あいてる?」

店主「は? は? はぁ?」

勇者「……」

店主「部屋ぁ? リア充は外でキャンプファイヤーとバーベキューしてればぁ?」

勇者「……俺は、仲間だぞ」

店主「ケッ。あんたどう見ても女にかわいいとか言われる部類じゃん。心の中で哀れとかバカにしてんだろ。くっさ」

勇者「……」スッ

店主「なにを見せようって――」

勇者「これは、俺が無人島に持っていくバイブル。ToLOVEるという」

店主「……カジュアルオタか。そんなファンタジー漫画ぐらいで」

勇者「まだある」スッ

店主「……っ! こ、これは……っ⁉︎」

勇者「そう。この世界ではめったに手に入らない機械文明というファンタジーの金字塔――ガ○ダム」

店主「うぉ、おおおっ、あまりの売れ行きの悪さに絶版になっているあの……っ! し、しかもこれは……っ」ペラ

勇者「真っ先に確認するとは、おぬしもなかなかの通よ。そう、これは、幻の初版だ」

店主「……っ」ガタッ

勇者「値はつけられるものではない。欲しい人にとっては、価値がある。しかし、欲しくない人にとっては、ただの紙。お前はどっちだ? 価値を見出せる人間か?」

店主「……あ、あんた……どうやって、これを……」

勇者「答えは簡単だ。俺は、友達がいない」

店主「……あ、あぁ……あぁあああっ……」プルプル

勇者「実話の話だ。だから、心を癒してくれる、漫画の世界に逃げた。ありとあらゆるジャンルを読破した」

店主「そ、そんな見た目をしてるのに」

勇者「ふ、ふひひ。俺の纏う負のオーラにシンパシーを感じないのか?」

店主「……そ、そういえば……目が、ピュァだ」

勇者「(そっちかい!)……幻想を愛してるからな。二次元は俺の嫁。三次元はお断りします」

店主「……わかった。俺が間違ってた。ようこそ、ブサイクだらけの村。文字通りのブサイク村へ」

勇者「(とんでもねぇ村だな)」

店主「お前さんの容姿に嫉妬を禁じ得ない。我々のコンプレックスをあまり刺激しない方がいい」

勇者「はいはい。なんでここにはブサイクしかいないんだ?」

店主「この村はみーんな容姿を理由にいじめられた過去を持つコミュニティなのよ。イケメンや美女の前だと緊張しちゃったり構えたりするようなやつら」

勇者「また、なんとも……隠キャっぽい」

店主「あん?」ピクッ

勇者「なんでもない。とりあえず、宿をお願い」
673 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/19(月) 13:56:20.51 ID:cZuVtgYmO
【数時間後】

店主「ようこそブサイク村へ御一行様ですかお風呂にしますかそれともお食事にしますかなんなりとなんかりとお申し付けくださいむしろ豚とののしってください――」

魔法使い「……っ」ビクゥ

店主「(びびびびっ、美女集団が、この村にっ、やっ、やってきたぁああっ!)」ガクガク

魔法使い「早口すぎて聞きとれなかったからもう一度言ってくれない?」

店主「あひっ、あのっ、やど、やどになりましゅ」プルプル

僧侶「……あのぉ〜」ピトッ

店主「ひゃ、ひゃわっ、て、ててて手ぇをにぎって、なにをっ」

僧侶「ゆっくりで大丈夫ですからぁ〜」ニコ

店主「(……て、天使……?)」クラァ

戦士「勇者が来てるか聞けばいいだけだろう?」

勇者「おーう、やっぱり追いかけてきたのか」トントン

魔法使い「あっ!! あんた今までどこでなにやって――」

僧侶「……っ」タタタッ

勇者「ん?」

僧侶「勇者さまぁっ」ボフッ

勇者「お、おい」

僧侶「すみません、なにもお力になれず、申し訳、ありません」ギュウ

勇者「……な、なんだぁ?」

魔法使い「僧侶、そんなに心配してたの……」

戦士「あたしたちだって心配しなかったわけじゃない!」

武闘家「腕、聞いたよ。どうなのさ?」

勇者「聞いたって、誰から――」

僧侶「……」ソッ パサッ

戦士「……ほ、ほんとに、腕が、ない……」

勇者「まぁ見たまんまなんだけど」

魔法使い「どうするつもりなのよぉっ! 誰にやられたのっ⁉︎」

武闘家「勇者が腕を持ってかれる相手なんて想像もしたくないが、負けたの?」

勇者「んー」ポリポリ

戦士「両手で剣を使えないなんて死活問題だぞっ⁉︎」

勇者「質問はひとつずつにするのと俺の質問が先! なんでリリムがここにいるの?」

リリム「……」プィ

魔法使い「勇者を襲いにきてたのよ」

勇者「あらー、そっか。とりあえず部屋いくべ」

店主「(このくそやろぉおおおおっ!! やっぱりリア充なんじゃねぇかおまええぇぇっ!!)」ゴゴゴッ

勇者「この村には、あまり長居できねーな……はぁ」
674 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/19(月) 14:24:40.35 ID:cZuVtgYmO
【宿屋 部屋】

勇者「とりあえず、僧侶は俺の腰から離れろ」

僧侶「……いやです」ギュウ

勇者「離れろ」グイッ

僧侶「今回は次がある。でも次は、その次がないのかもしれないから」ガッシリ

勇者「(なんじゃこいつ)……離れんかい」ググィッ

僧侶「いや、です」ググッ

勇者「いだい。まって、いだっ! いだだだっ⁉︎ なにこの馬鹿力っ⁉︎」

僧侶「離れまっ、せんっ」ギリギリ

勇者「お、おぉぉぉっし、締まる、さば折りになってきてるっ! タップ!」パン

僧侶「四六時中、ずっとそばについてます。喉が乾いたりしたら言ってください。ちゃんと水差しは用意してあります。ご飯なら食べさせてあげます。トイレも片腕では自由もあるでしょうから私が手伝って」

勇者「ヤンデレか! お前らも見てないで止めんかい!」

魔法使い「いい気味よ」

戦士「お灸が必要だ」

武闘家「……異議なし」

勇者「お前らなぁ、こういうやつが一番ぶっとんでるとセオリーがあるんたぞ! その内パーティ内で血みどろの殺人事件が!」

魔法使い「私、別に勇者個人を男として見てないから。僧侶と争うのもない」

戦士「同じく」

武闘家「……誰にやられたのか言いなよ」

僧侶「私、これまで実のところ我慢していたんです。普段から色々してやりたかったから、都合が良いぐらいで。勿論、勇者さまの腕がこのようになって喜ばしいと言う訳じゃなく、でも、これからは心置きなくやれる理由ができたというのもあって」

勇者「ほらぁ! もうやばいってこいつ! なんかあったら俺刺されるやつだってこれぇっ!!」

魔法使い「刺されたら? バカは死ななきゃ治らないって言うし」

勇者「切り捨てないで⁉︎」
675 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/19(月) 14:58:28.07 ID:cZuVtgYmO
僧侶「……そんなに、そんなにっ、信用、できないですか……」

勇者「……はぁ?」

武闘家「通訳してやる。なんで個人行動をしたがるのさ? こう言ってる」

勇者「いや、俺は俺のしたいようにしてるだけで」

僧侶「腕をなくされるのもですかっ⁉︎ 私は、そんなに頼りになりませんかっ⁉︎」

魔法使い「私じゃなくて、私たちでしょ」

戦士「前にも話したが、このパーティのこと、もう一度、話し合いする機会が必要なんじゃないか?」

リリム「……ばっかみたい」

魔法使い「三下魔族がしゃしゃりでてくんな」

リリム「ニンゲンってホントバカよね。頼りない? そんなこと聞かずとも、それしかないでしょ」

戦士「……黙ってろ」

リリム「魔族はその点わかりやすい。なんていったって力がすべてだから。それでぜぇーんぶ決まっちゃう。勇者に、相手にされてないのは、アンタ達だよ。キャハハッ!」

僧侶「……」ユラァ

勇者「まて」ガシッ

僧侶「なぜ、止められるのですかぁ? 用済みなので殺してしまいましょう」

リリム「やれば?」

勇者「……はぁ、解放してやれ」

魔法使い「……っ! いい加減にしてよっ!!」バンッ

勇者「……」

魔法使い「こいつは、敵っ!! てきてきてきてきっ!! 敵なのよ! 野放しにしてどうするつもり⁉︎ 人間に害をもたらす! 罪のない人が殺されちゃってもいいのっ⁉︎」

戦士「残念だが、あたしもそう思う。綺麗事だけでは被害をとめられない」

武闘家「……わかった。勇者ができないっていうのなら、アタイが」

勇者「やめろって」

魔法使い「我慢できるとかできないとかじゃない! それ以前の問題なのっ!」バンバンッ

戦士「あたし達の旅の目的は魔族の首領、魔王なんだ。遅かれはやかれ、殺すことになるんだぞ」

勇者「今は無力だろ。そこまで必死にならんでも」

魔法使い「今はね! 回復したらまた人を襲う! ねえっ、あんた……ほんとに勇者っ? そんなんで魔王討伐なんかできるつもりでいるの? こいつは、害虫!」ズビシ

リリム「が、害虫だと……っ?」

勇者「やめろっつうのに。縄といてやっから」シュルシュル

リリム「甘い……とろけるような甘さのおぼっちゃま。クックックッ」ニヤァ

魔法使い「勇者っ! やめなさいってばぁっ!」グィッ

勇者「頼むっ」ドゲザ

魔法使い「うっ……え……?」

勇者「こいつの命、助けてやってくれ。この通りだ」

魔法使い「ま、魔族の為に、土下座……こ、こんなやつ、勇者じゃ、ない」

戦士&武闘家&僧侶「……」

魔法使い「無理。あんたみたいな腰抜けが魔王と渡り合えるわけない。伝説は所詮伝説なのよ……」クルッ

戦士「魔法使い、どこいくんだ」

魔法使い「抜ける! 私もうこのパーティにいたくないっ!!」

武闘家「……」

魔法使い「魔族は、お母様の仇なのに……っ! 勇者についてけば……っ、無念をはらせるって……なのにっ」ギロ

勇者「すまん」

魔法使い「あんたには心底失望したわ。二度と顔見たくない」スタスタ
676 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/19(月) 15:15:52.89 ID:cZuVtgYmO
勇者「じっとしてろ」

リリム「ありがとぉ〜♪」

戦士「勇者……いいのか、これで……パーティメンバーよりも、魔族をとるのが、答えなのか……?」

勇者「そうだ」

戦士「……っ、そ、そんなっ、馬鹿げた話があるかぁっ! 長いとは言えない期間だが、苦楽をともにしてきた仲間だろう! 魔族はお前になにを……なにもしてくれるつもりなんかないだろっ⁉︎」

リリム「あはっ♪ ほんとに縄といてくれたぁ」

戦士「こ、こんなバラバラのパーティで、この先もやってくつもりなのか? なぁ、答えてくれよっ!!」

勇者「……ついてきたいと言ったのはお前たちだ。合わないのなら、戦士、お前も抜けろ」

戦士「……っ」

勇者「リリム、さっさと来た元へ帰れ。ニンゲンは襲うなよ」

リリム「はぁ〜い♪ お優しい勇者さまぁ〜、感謝しますぅ〜……い・ま・だ・けっ♪ キャハハハハッ!」バサッバサッ

戦士「……勇者……あんた、間違ってる。間違ってるよ」スタスタ

勇者「ふぅ……武闘家と僧侶はいかなくていいのか」

武闘家「正直、なにがしたいのか理解できない。でもアタイは師匠との約束があるから」

僧侶「聞かれるまでもありません〜。雲を貫く天でも地獄の底でも、お供いたしますぅ〜」
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 18:28:15.55 ID:TJ/NBe2S0
C
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 19:19:21.10 ID:9qdj/pIWO
おつ
あれ、僧侶さんかわいい?
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 19:22:03.23 ID:/XJY5P4EO
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 21:18:46.45 ID:AYd/rRzGo
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 21:40:52.38 ID:L6dC0IWWO
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/19(月) 23:32:51.21 ID:mrYYructo
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 01:33:24.91 ID:hH+GfZMO0
この世界では俺らの世界が漫画として描かれてるのか
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/23(金) 02:57:59.69 ID:7OmcXd4+0
更新が待ち遠しい
685 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/23(金) 21:01:46.54 ID:O8NYHVvjO
【宿屋 外】

魔法使い「あああっ! もうっ!!イラつくイラつくイラつくイラつくっ! むきーーーっ!!」ダンダンッ

商人「お嬢ぉ〜さんっ♪」

魔法使い「……なに」

商人「こんなブサイクだらけの村にお嬢さんみたいなキレーな人がいるなんてぇ〜。ひょっとして、旅のお方?」

魔法使い「そうだけど? そちらは行商人?」

商人「行商人なんてそんなそんなぁ。ボクはしがない旅商人ですよぉ。なにお悩みみたいですね?」

魔法使い「関係ないでしょ」プイ

商人「先ほど、宿屋でチラッとみかけてしまったんですが、男女のモツレですか?」ニマ

魔法使い「……はぁ。そんなわけない」

商人「へ? そうなんですか? なにやら男性の方に詰め寄っているような会話が聞こえてきましたが」

魔法使い「聞こえてたのね。別に。あんまりにもだらしないから嫌になっちゃったってだけ」

商人「わかりますわかります。男ってのはなんで身勝手なんでしょうねぇ〜」

魔法使い「ボク……って言ってたけど、あなたは男じゃないの?」

商人「これは失敬! 帽子かぶったままではわかりませんよねっ。ちゃぁ〜んとした女ですよっ♪」パサ

魔法使い「あっそ」

商人「実はぁ〜……」ゴソゴソ

魔法使い「ねぇ、今は雑談とかする気分じゃな――」

商人「こちらっ! このおススメの商品がありましてぇ〜」スポンッ

魔法使い「うっ、くさっ⁉︎ な、なによっ⁉︎ なにだしたの⁉︎」

商人「お聞きになりたいですかぁ? コレ、惚れ藥になってますぅ」

魔法使い「ほ、惚れ薬ぃ?」

商人「女でも。男でも。みぃ〜〜んがほしいと一度は願うあの惚れ藥ですっ! だらしない男だと思っても見限るのはまだはやい!」

魔法使い「……?」

商人「そんな時はコレ! なぜなら! “惚れた異性”には死にものぐるいで頑張るものなんです!」

魔法使い「はぁ」

商人「“惚れた弱み”とよく言うじゃありませんかぁ? だらしないのならば、心底惚れさせればいいのです! 心の底の底からっ! 貴女以外なんて見えないように!」

魔法使い「……それはそれで重すぎるというか、めんどくさそう」

商人「うまぁく操ってやればいいんですよぅ。今なら一本買えば二本目は無料です」キリッ

魔法使い「原材料はなんなの?」

商人「マンドラゴラとドラゴンの涙です」キリリッ

魔法使い「……嘘ね。胡散臭すぎるからハナから信じちゃいないけど、両方とも入手困難な素材じゃない」

商人「ウソだなんで人聞きの悪いですね」ムッ

魔法使い「今は一人になりたいのよ。物売りなら他を当たってくれない?」

商人「あぁ〜そうですか。いいですよーだ。トルネコ印の商品なのに」

魔法使い「――トルネコ? トルネコって言った? いま」

商人「そうですよ。ウソだとか言われるのは心外なので、先に見せておきます。これです。これがトルネコの会員バッチ」キラン

魔法使い「へぇ……ホンモノ?」

商人「なっ、なななっ、なんですかあなたは⁉︎ 疑い深いにも程がありますね! ボクはちゃぁ〜んとした会員です!」

魔法使い「ふぅ〜ん」ジトォー

商人「これからクィーンズベルに向かう途中なんです! ホントのホント!」

魔法使い「……あっそ。興味ないからいっていいわよ」
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/24(土) 00:02:42.32 ID:/O8QslgN0
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/24(土) 07:11:12.02 ID:cYbqQsQ1o
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/24(土) 14:21:01.06 ID:uejYJ6hIo
クィーンズベル…惚れ薬…これは…
689 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/24(土) 18:07:11.91 ID:Z7Acm95GO
【数十分後 ブサイク村付近 丘】

戦士「おぉ〜い、魔法使い」タタタッ

魔法使い「はぁ……なによ、もう連れ戻しにきたの?」

戦士「いや、残念ながらそうじゃない」ポリポリ

魔法使い「……引き止めるなんてするわけないか」

戦士「ああ……残念なことだ。勇者は、あたし達より魔族を選んだ。広義で言えば、人間よりもだ」

魔法使い「要するは“勝手についてきてるだけ”。それ以上でも以下でもないってだけでしょ、あいつにとって」

戦士「そう、かも……しれないな」

魔法使い「あんなのが勇者だなんて、人類全体が不幸だわ。魔王を討伐する。そのことを期待されてるのに」

戦士「……これから、どうする?」

魔法使い「さぁ? ただ、今は……“時間を無駄にしちゃった”。そう感じるってだけ」

戦士「酒でも、飲むか?」

魔法使い「ぷっ、気を使ってるつもり?」

戦士「いいや。やるせないのは、あたしも同じなんだ」

魔法使い「……」

戦士「まさか……まさか、勇者が魔族に肩入れするなんて夢にも思わなかった。アルデンテの村にいた偽勇者の方がまだマシかもしれない」

魔法使い「あの傲慢チキの女好きかぁ」

戦士「勇者としての役割を全うするのなら……だけどな」

魔法使い「私はどっちもイヤだな」

戦士「それは、そうだが。どっちかといえばの話だよ」

魔法使い「現実って、残酷よね。おとぎ話や、伝説みたいな花々しくて、冒険譚のような展開が待ち受けてるものだと思ってたのに」

戦士「儚い夢と消えてしまったな」

魔法使い「どうなるのかな、これから。魔王に、魔族に……人間は一生頭が上がらないまま、過ごさなきゃいけないのかな」ポロ

戦士「……」

魔法使い「うっ……ぐすっ、勇者ならっ、きっと、魔王を倒して、お母様の仇をっ、とってくれると思ってたのにっ」

戦士「……魔法使い……」

魔法使い「あは、あははっ、あ〜ぁ、ホントに、ぐすっ、なんでっ、なんで、現実って思うようにいかないんだろ、勇者も、なにもかも」
690 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/24(土) 18:35:34.62 ID:Z7Acm95GO
【宿屋 食堂】

僧侶「はい、あ〜ん」カチャ

勇者「あーん」

僧侶「おいちぃですかぁ?」

勇者「うんっ! おいちぃっ!」モグモグ

僧侶「よかったですぅ〜。はい、もう一口〜」

武闘家「――ええいっ! うっとおしいっ!」バンッ

勇者「こわぁい」

僧侶「よしよし、大丈夫でちゅからねぇ〜」ナデナデ

武闘家「勇者っ! アンタなに餌付けされてるんだよ! 最初はやめろとか言ってたじゃないさ!」

勇者「……餌付けじゃあない」

武闘家「はぁ?」

勇者「これは……そう、“バブみ”。バブみを感じたから、俺は漢(おとこ)として応えているまで」

僧侶「よしよしぃ〜」ナデナデ

勇者「見ろ。この女子力ではない、バブみ力の高さ。男ならおギャりたくなるってもんだろうが! シャア・アズナブルもララァは私の母になってくれるとか言うとった!」

武闘家「ま、また、わけのわからないことを」

勇者「おんぎゃああああああっ!!」

武闘家「な、なにっ」ビクゥ

僧侶「いいんですよぉ、い〜っぱい甘えてぇ、私が勇者さまの腕のかわりになりますからねぇ」

勇者「くるしゅうない」

武闘家「こ、このっ! だ、ダメダメ勇者がぁッ」ゴゴゴッ

勇者「まぁ、落ち着きたまえ。そうカッカすると人生――」

武闘家「正拳突きぃぃぃっ!!!」ズバァァァンッ

勇者「ぴっ⁉︎」ドゴーーーンッ

武闘家「ふーっ、ふーっ」

勇者「」パラパラ

店主「ひ、ひぃっ⁉︎ 壁がっ! リア充は場所と時を選ばないから嫌いなんだぁっ!!」

武闘家「立てッ! どうせたいしてきいちゃいないのはわかってるよッ!!」

僧侶「も〜。武闘家さんも遊んでもらいたかったら素直に言えばいいのに〜」モグモグ
691 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/24(土) 21:00:15.67 ID:s4iz5+H4O
【数日後 クィーンズベル城 姫の自室】

姫「……」ボー

妖精『うふっ、うふふっ。結晶の薔薇……。この薔薇見ていると、アナタはなにも考えられなくなる……』

姫「――……なにも……――考え……」

妖精『そぉ。なぁ〜んにも考えなくていいの」

姫「――……はい」

妖精『太陽と雨。対極に位置するその意味は……崩壊。この薔薇は、見た目は美しいけど、破滅を指している』

姫「破滅……美しい」

妖精『終わりって美しいよね? あなたがこの国を終わらせるのよ。呪われし姫君となるの』

姫「はい……」

妖精『さぁ、目を開けて。意識を取り戻すの。この会話をすっかり忘れて』

メイド「姫さま。失礼致します」ガチャ

姫「……」ボー

メイド「まだ寝ぼけていらっしゃるのですか? 器用に鏡の前で」

姫「え……?」

メイド「……? 姫さま? 顔色がすぐれぬようですが、どこかお体の具合でも」

姫「えっ? ……あ、あぁ。な、なんでもない。なにしてたのかしら、わたくしったら」

メイド「シーツを交換してします」

姫「ええ……」
692 : ◆7Ub330dMyM [saga]:2018/02/24(土) 21:04:48.89 ID:s4iz5+H4O
〜〜第3章『砂漠の花と太陽と雨と』〜〜(後編)

693 : ◆7Ub330dMyM [sage]:2018/02/24(土) 22:32:46.10 ID:s4iz5+H4O
最近忙しくなってしまって書いてる時間ろくにとれないのでここで一旦切ります。
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 00:21:00.19 ID:YhPJFYtOo
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 01:02:45.45 ID:sZ1A/AwmO
仕事が忙しいなら仕方ない
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 01:24:25.26 ID:fQdI67Z1O
待ってるぞ
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 03:52:32.97 ID:yvCWV0u20
頻度が落ちてると思ったが多忙か
仕方ないな
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 12:15:51.60 ID:3iETMx5J0
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/25(日) 20:47:22.89 ID:3GZHJ2MGO
タイトルで「はぁ?」ってなって、第1章を読んで止まらなくなって、今や更新を待つのが生きがいになっています
頑張れ〜!
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/26(月) 00:28:16.05 ID:Wco8Q2jzO
待ってるよ
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/01(木) 22:58:08.42 ID:tsloeMaS0
待っています。
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/02(金) 00:27:30.22 ID:G5D+z6Tc0
忘れてたけど、PV的なの作ってる人いるんだよね
どんな風な仕上がりになるのか
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/06(火) 01:25:19.69 ID:CHVH+Wy2o
ほしゅ
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/09(金) 12:54:07.68 ID:kv6bkwA4O
まだか
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/09(金) 18:48:00.56 ID:rSnnJETXO
はいエタった
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/09(金) 19:45:12.88 ID:tYvJlEqfO
最近の子供はすぐにエタるって言葉使いたがるんだな
まだ書いてるんだろ
辛抱強く待てよ犬みたいに
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/10(土) 21:16:31.51 ID:353lnxt/0
完結すればだがこんな傑作をリアタイで見られることに感激だ

忙しいようだが健康に気を遣いつつ無理のない範囲で続けていってほしい
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/10(土) 22:13:56.17 ID:4mZckZA9O
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:49:59.33 ID:ETwFyM1wO
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/19(月) 08:27:00.44 ID:17wOrfUmO
エタったな
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 10:22:17.29 ID:Ts0df4L7O
まだ1ヶ月しか経ってないやろ
エタったうちには入らん
1年は待てるぞ
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 10:50:11.82 ID:rhz/kLiwO
動画作成で忙しいから仕方ないね
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/19(月) 12:33:34.45 ID:BZVtWJ7Y0
>>712みたいなアンチとも受け取れるやつはレスつくたびに見に来ててなにがしたいんだ
保守してるファンなんか
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 20:12:58.73 ID:bxtCWYSA0
ageカスのゴミじゃなければなんでもいいわ
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 00:25:01.76 ID:Fl1fyxVTo
期待
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/23(金) 00:42:31.72 ID:jDjQkAFSo
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/29(木) 22:40:16.07 ID:V9r8kiCFO
しゅ
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