【天華百剣】御華見衆の参羽鴉【ブーン系】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/29(月) 12:54:31.84 ID:2YBQmX1G0
天華百剣にハマる

二次創作を探す

少ない

好みのが無い

切ない

自給自足するしかない


そんな経緯で完成しました。よろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1517198071
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/29(月) 12:56:21.22 ID:2YBQmX1G0
赤い閃光が、『親父』と呼んでいた男の背を貫いた
ドス黒い血が顔と地を汚したが、熱した鉄板に水滴を落としたかのように黒い瘴気となって蒸発する

『親父』は元より、人の姿を成していなかった
肌には毒々しい紫の血管が走り、片方の瞳は武家の家紋のように三つ巴になっていた
放つ言葉、息遣い一つでさえ背筋が凍るようなおぞましさを孕んでおり
六十を過ぎた老体にしては、不気味なほど若々しく、そして雄雄しい肉体であった
例えるなら、古くより人を食う忌まわしき化け物、『鬼』であろうか

そして何より―――彼自身が忌み嫌っていた『毒』を、金の為にばら撒いていた
親父は、人では無くなった。禍々しい『何か』であった


「ちょーちょー、人の割りに随分善戦したじゃん」


崩れ落ちた『親父』の背後から、やけに気の抜けた女の声が聞こえた
出血により霞む視界と夕闇の中でも、その姿は瓦斯灯の無遠慮な明かりのように目に焼きつく
長く流した金色の髪に、紅色の瞳をした美女。その瞳に負けないほどの鮮やかさを放つ肩鎧
相対して身のものは黒を基調としており、和装と洋装を組み合わせたような妖艶な衣であった
そんな紅と黒の中で、彼女の肌は際立っていた。開放的な脚や胸元が、淫靡な雰囲気を醸し出している

だが、『女』を意識させる部位よりも目を引くものが手に握られていた
侍の時代が終わって、久しく見ることの無かった武具、『日本刀』である
その日本刀から発せられたであろう閃光が、のたうつ蛇のように巻き戻り、刀身で昇華していった
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/29(月) 12:58:24.82 ID:2YBQmX1G0
(メ´ ω `)「……」


『親父』の手に握られていた長ドスが離れ、頼りない金属音と共に砂埃を立てる
苦悶の表情を浮かべていたその鬼は、瘴気が薄くなるにつれ、安らかな『人』の表情へと戻っていく


「ぼ……凡、吉……ショボン、よぉ……」


幼き頃の渾名を、久方ぶりに耳にした。弱弱しく持ち上がった手を、自らの血で染まった両手で握り締める
冷たい手であった。命、風前の灯とは言え、まだ息がある人間の温度とは思えない、冷たい手であった


「迷惑、掛けた……なぁ……」


その言葉を最後に、『親父』は息を引き取る
同じく、彼の体から立ち込めていた瘴気も、煙のように消えていった


「……その人、お父さん?」


納刀した女が近づき、話しかけてくる
得体の知れない彼女に対して、傍らの折れた得物を拾う気力は最早残っていなかった


(メ´ ω `)「……親父だ。盃を交わした、血の繋がりより濃い……親父、だ……」


『だった』と言いそうになったのを、咄嗟に飲み込んだ
殺意を剥き出しに刀をぶつけ合った『鬼』では無い。親父は、最後の最後で人間に返った


「ああ、任侠……ヤクザなんだねー」


近くで見ると、その美貌が更に際立つ。明治維新を迎えて暫く経ち、異国の女も日の本を訪れる時代ではあるが
自国の者だろうと異国の者だろうと関係なく、その女は『美しかった』。人間とは、思えないほどに
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/29(月) 12:59:34.83 ID:2YBQmX1G0
(メ´ ω `)「な……ぜ、邪魔をした?」


『何者』か『何故』、その二つの質問が僅かな時間せめぎ合い
打ち勝ったのは、『何故』の方であった。恨みか因縁か
どちらにせよ、自分には知る由も無い理由を、『親父』は作っていたのだろうと推測して


「んー?ウザかったから、かな?」


だからこそ、その回答には面食らった。羽虫を叩き潰すが如く簡単で、単純な理由であった
自身が今、刀傷を負わず十二分の体力を持ち合わせていたなら、激昂して頬を張り飛ばしていたかも知れないが


(メ´ ω `)「ハ、ハハ……そうかい」


気力も尽きかけた今となっては、笑い返す事しか出来なかった


(メ´ ω `)「全く……良い冥土の土産が出来たぜ……」

「なーに言ってんの。ここで会ったのも何かの縁だし、医者の所くらい……っ!!」


女の刀が、再び抜き放たれる。美しい銀色の太刀筋は、今まさに首元を掻っ切ろうとした『長ドス』を弾き飛ばした


「ちょーちょーちょー……目覚めが悪くなるようなことしないでくんない?」

(メ´ ω `)「……知るか」


立ち上がろうとしたが、足に力は入らない。僅かな気力を使い、長ドスが落ちた場所まで這いずる
距離にして数米(メートル)も無かったが、計り知れないほど遠い位置だった


「だーめだっての」


しかし無常にも、長ドスは先ほどの『赤い閃光』によって無残にも粉みじんと化した
これがトドメとなり、自身を奮い立たせていた気力はプツンと途切れる。両腕が崩れ、顔面が地を打った
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/29(月) 13:01:10.64 ID:2YBQmX1G0
「何も死ぬことないでしょー?アレは『禍憑』つって……」

(メ#´ ω `)「関係あるかァッ!!!!!」


慟哭に、ひょうひょうとした女の口も閉ざされる。放った本人も、多少驚いていた
しかし直ぐに納得に到る。『これが鼬の最後っ屁』というものか、と


(メ#´ ω `)「ハァー、ハァー……『親殺し』は、任侠の世界じゃご法度だ……どんな掟よりも重い、重罪だ……」

(メ#´ ω `)「例えそれが、人間だろうと化け物だろうと関係ねえ……刃を向けた時点で、『ケジメ』は取んなきゃなんねえんだ……」


指十本、足をいれて二十本を納めても足りない『ご法度』。命を捧げなければ償えない罪
任侠を貫いた男が取らねばならぬ『ケジメ』。責任であった


「……」

(メ#´ ω `)「ハァー、クソ……わかったら消えろねーちゃん。直にサツも来る。面倒には巻き込まれたくねーだろ……」


そのケジメすら、着けることが出来なくなった。舌を噛み切ろうとしたが、顎を食いしばるのも叶わない
負った刀傷は浅くない。体も徐々に冷えてきた。このまま生き恥を晒して死ぬのが、自身への罰なのだろうと受け入れるほか無い
せめて最後に、地面ではなく空を仰ごうと、体を仰向けにした


(メ´ ω `)「……何の真似だ?」


しかし目に飛び込んできたのは茜空ではなく、女の顔であった
死に顔を拝もうと言うのか。女はしゃがんで覗き込むように見つめてくる
垂れた金髪が、上等な絹糸のように鼻先を擽った
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