平塚静「比企谷、ラーメン食べに行こう」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:19:19.74 ID:aE11gqgi0
ブロロロロロロロ……


静「たまにはドライブもいいものだろう?」

八幡「…………」

静「比企谷、今日はおごってやるぞ。何が食べたい?」

八幡「何っていうか、ラーメンって決定してるんじゃないですかね?」

静「当然だろう。私は『君はどうラーメンが食べたいか』と問いかけているのだよ」

八幡「いや、そんな『君たちはどう生きるか』って聞くみたいな仰々しい言い方やめてくださいよ。たかがラーメンで」

静「たかがラーメン……されどラーメンだ。ラーメンは全ての道に通ずると言った先人もいるらしいぞ」

八幡「誰だよ先人って……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1517303959
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:19:58.67 ID:aE11gqgi0
静「む……。比企谷、君はラーメンを食べたくないのかね?」

八幡「いや、別にそういうわけじゃないですけど……」

静「はは、だよな! 私の誘いに乗って車に乗り込んでくるくらいだからな」

八幡「いや、有無を言わせず車に乗せられたんですけど。俺の意思とか全然介在してなかったっすよ」

静「な、なんだと……」

八幡「はあ」

静「じゃあ……君は。やっぱりラーメンを食べたくはないのか……?」

八幡「い、いやその……。べ、別にラーメン食べたくないわけじゃないですから。勘違いしないでくださいよね……つか腹減ったし」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:20:37.47 ID:aE11gqgi0
静「ははっ! 何だそれは、ツンデレか? やっぱりラーメン食べたいんじゃないか!」バンバン

八幡「ちょ! 肩叩かないでください、本気で痛いし。あと、ちゃんと運転してください。交通事故とかマジ勘弁なんで」

静「分かっている。大事な生徒を乗せているんだ。無謀な運転はしないさ。だからしっかり摑まっていろよ、少し飛ばすぞ!」

八幡「言ってることとやってることが矛盾してる……うごあっ!」


ブロロロロロロロロロロ……
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:21:06.05 ID:aE11gqgi0
静「…………」

八幡(部活帰り、雪ノ下と由比ヶ浜と別れていそいそと帰ろうとしていたところで平塚先生に呼び止められ)

八幡(そのまま車に乗せられて現在に至る)

八幡(あれ? これって普通に拉致じゃね?)

八幡(つか、この場合、俺と先生の性別が逆だったら警察沙汰になりそうなんですが)

八幡(はっ! 待て……もしかして先生はラーメンをだしに俺を誘い出して、俺にあんなことやこんなことを!?)

八幡(たいへん、俺の貞操が危機にさらされている!)

八幡(……ラーメンをだしにって誰うまだな。だしはラーメンの命だもんね!)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:21:47.91 ID:aE11gqgi0
八幡「あの、先生。俺、あんまり帰りが遅くなると家族が心配するし……」

静「ああ、さっき君の妹に連絡を入れておいたよ。もう帰って来なくても大丈夫だそうだ」

八幡「え……マジすか」

八幡(何それ死にたい……小町ちゃん、俺の帰る場所はもうないのん? このまま先生にお持ち帰りされちゃうのん?)

静「冗談だよ。明日は土曜日だからな。親に伝えているし、どれくらい遅くなっても構わないそうだ」

八幡「あ、……そうですか」

八幡(え、てかそんなに遅くなるの? ラーメン食べに行くだけなのに? やっぱそのあとに何かあるの?)

静「さて、ここから高速に入るぞ」

八幡「はあ、高速……え、高速? ちょっと先生、どこまで行く気なんすか?」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:22:29.30 ID:aE11gqgi0
静「まあ、途中で何度か休憩を挟むから心配するな」

静「若いとはいえ、何時間もぶっ通しで高速を走るのはきついからな。こまめな休養は大事だぞ」

八幡「その発言自体が若くない感じビンビンですね」

静「…………」ドゴッ

八幡「ひでぶっ」

八幡(え、ていうか本当にどこ行くの……? ラーメン食べに行くだけなんだよね?)
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:23:44.16 ID:aE11gqgi0
ブロロロロロロロ……


八幡「……、ん……」

八幡(ちょっとうとうとしてたな)

静「…………」

八幡「…………」

八幡(ぶっちゃけ、ラーメンは好きだ。たかがラーメン、されどラーメン……ラーメン道は常人には計り知れないほど奥が深い)

八幡(もうあれだ、『ラーメン大好き比企谷くん』ってタイトルでドラマ化されるレベル)

八幡(いやいやいや)

八幡(好きっていってもラーメンの蘊蓄を熱く語ったり、ラーメン以外食べてる姿を見せたりしないとかそんな本格派じゃないしな)

八幡(小池さんの足元にも到底及ばん)

八幡(せいぜい絶望先生の普通キャラがラーメン好きなレベル。いや、あの子も相当ラーメン好きだよな……)

八幡(ていうか、ぼっちがラーメン食べるだけのドラマとか誰得だよ……)
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:24:27.53 ID:aE11gqgi0
八幡(否、むしろラーメンとは本来一人で黙々と食べるべきものではなかろうか)

八幡(だってほら、喋りながら食ってたら麺がのびるし……。二郎とかロット回すために早く食べ終わらないと申し訳なく思うまである)

八幡(だからあれだ。ラーメンは孤食が至高!)

八幡(連れ添いでラーメン屋行くとか女子供や年寄りの所業であって、男は黙って一人でラーメンが最高だぜ!)

八幡「…………」チラ

静「ん、どうした。比企谷?」

八幡「い、いや……何でもないっす」

静「?」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:25:14.39 ID:aE11gqgi0
八幡(と、思ってみたものの……先生とは前にも二人でラーメン食べに行ったんだよなあ)

八幡(修学旅行のときは雪ノ下も一緒に三人で京都の天一行ったっけ)

八幡(あ、そういやこの前……一色とのデート()でもなりたけ行ったな)

八幡(あれ、俺結構連れ立ってラーメン屋行ってるじゃねえか。女子供かよ。まあ、相手は女だし俺は子供だからセーフか……)

八幡「あの、平塚先生……」

静「どうした?」

八幡「今どの辺にいるんすか?」

静「標識見ていれば分かるだろう? もう静岡だ」

八幡「俺、千葉(テリトリー)から外に出ると能力が解除されて死ぬ病気にかかってるんですけど……」

静「どこの漫画やアニメに出てきそうな中二設定だそれは? 第一、修学旅行で京都に行ったじゃないか」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:25:56.54 ID:aE11gqgi0
八幡「え、いや……冗談ですよ?」

静「分かっているよ」

八幡「…………」

静「…………」

八幡「いやその、俺達ラーメン食べに行くんですよね?」

静「ああ、そうだ」

八幡「普通に千葉でどこかで食べたらよかったんじゃないんですかね?」

静「甘いな比企谷……あいにく私は千葉市内のラーメン屋はほぼすべて踏破してしまったのでな」

静「もう千葉にはまだ見ぬ強敵(ラーメン)たちを味わえる店は残っていないのだよ」

八幡「あんたどんだけラーメン好きなんだよ。つか、だったら千葉市以外の県内のラーメン屋に行けばいいでしょ?」

静「千葉市にあらずんば千葉にあらず、だ」

八幡「なにその京都市内(洛中)に住んでなけりゃ京都人って名乗っちゃいけないような言い方。館山や佐倉が黙ってませんよ」

静「はは、すまんすまん。今のは冗談だ。で、館山と佐倉というのは何チョイスなんだね?」

八幡「いやまあ何となく。浦安や成田はむしろ東京名乗りたそうだし」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:26:27.25 ID:aE11gqgi0
八幡「で、なんでラーメン食べにわざわざ静岡まで?」

静「静岡はまだ通過点だぞ?」

八幡「え……」

静「そういや前に浜松でラーメンを食べたことがあってだな。あの店、名前は忘れたがなかなか美味かった」

八幡「いやちょっと待って下さいよ……本当にどこ行くつもりなんすか。俺、どこに連れていかれちゃうんですか?」

静「比企谷」

八幡「は、はい」

静「大人というのはな、たまに日常のシガラミから逃れて、まったく別の世界に行ってしまいたいと思う時もあるのだよ」

八幡「はあ……」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:27:02.42 ID:aE11gqgi0

静「主に仕事とか仕事とか仕事から逃れたくて仕方なくなるんだ……」


八幡(うわあ……先生の顔に死相が。この人一見サボってるけど、見えないところではしっかり仕事してるっぽいしな)

八幡(俺も将来、仕事に疲れてこんな顔するんだろうな。……やっぱり俺は仕事はしないと固く心に誓いました)

静「今日も残業しないと終わらない仕事が山ほどあったんだが……すっぽかして来てしまったよ」

八幡「え、……それまずくないですか。今からでも帰った方がいいんじゃ」

静「ふっ。もう知らん!」

八幡「わっ」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:27:34.38 ID:aE11gqgi0
静「明日のことなど私は知らないね。明日は明日の風が吹く。私は明日を犠牲にしてでも、今日のラーメンを楽しむと決めたのだよ」

八幡「そ、そーすか……。え、じゃあ何で俺まで?」

静「たまたま学校を出る間際に君を見かけたのでな。君のことだ。週末には家でゴロゴロしてばかりで特に予定もないのだろう?」

八幡「あー、まあだいたい合ってますけど」

静「君はまだ高校生だ。働く義務はない。大学に入れば、カリキュラムはもっと自由になる。使える時間はいくらでもある」

静「やろうと思えば何でもできるはずだ」

八幡「…………」

静「何でもできるということは、逆に何もしないことを選択するのも可能だということだ」

八幡「……まあ、そうですね」

静「君はおそらく、『何もしない』方を選択するのではないのかね?」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:28:49.93 ID:aE11gqgi0
八幡「何かしたところで、それがよい結果に結びつく保証はないし、かえって悪い結果に結びつくことの方が多いでしょう」

八幡「やらなければならないことなら別ですけど、やらなくてもいいのなら何もしない選択の方が穏便で無難だと思いますけどね」

静「……はぁー。だから君の将来が心配なんだよ」

八幡「は? どういう」

静「何でもいいんだ。たまには外に出て、自分の知らない世界を見て、毛並みの違う人間と出会い、初めての体験をする」

静「そんなことを繰り返して、人はだんだんと成長し、大人の社会に馴染んでいくものだ」

静「だから、君は――君たちは、もっと外に出た方がいい」


静「一歩踏み出してみて初めて、分かったことだってあるだろう?」


八幡「…………」

静「悪いな。別にお説教を垂れるようなつもりはなかったんだが」

八幡「別にいいっすよ。説教には聞こえなかったし」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:29:23.64 ID:aE11gqgi0
静「そうか」

八幡「じゃ、これも俺を外に出す一環ってことで?」

静「そうだな。さすがに泊まるというわけにはいかないから、日帰り旅行とでも思ってくれ」

八幡「いや、時間的に絶対日にち跨ぎそうですけど……」

静「じゃあ、小旅行とでもしておくか。こういう週末も、たまにはいいものだぞ」

八幡「まあ……たまには」

八幡(先生と二人で週末の小旅行)

八幡(どっちかっていうと、リア充が滅びた後の世界で戸塚とふたりぼっちの終末旅行がしたいところだが)

八幡(まあ、いいんじゃね……たまには)

八幡(つかマジ腹減った。腹減りすぎて超ラーメン食べたいわ。ラーメン! ラーメン!)


ブロロロロロロロ……
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:31:08.14 ID:aE11gqgi0
八幡「ZZZ……」

静「比企谷、起きろ。着いたぞ」ユサユサ

八幡「……うーん、あ……先生?」

静「ふふ、君の目は寝起きでも腐っているんだな」

八幡「ちょっと、そういう心ない発言が思春期男子の繊細な心を傷つけるんですよ」

静「君はこの程度の言葉で傷つくほどヤワではないだろう?」

八幡「まあ、誰かさんのおかげで言葉の暴力には慣れているんで」

静「でもまあ、君の寝顔は……子どもっぽくて少しばかり可愛いなと思ったがね」

八幡「え、何すかそれ俺のこと口説いてるんすかちょっと待って下さい年増とか無理ですごめんなさい」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:31:43.41 ID:aE11gqgi0
静「誰が年増だ」ボゴォッ

八幡「うぐるあッ」

静「ふん。私たち教師の側から見れば、高校生なんてまだまだヒヨッコの子供だという意味だよ」

八幡(っべー……思わず混乱して一色みたいな口調で告白拒否しちゃったよ。てか告白ですらないんだが)

静「目的の場所に着いた。降りるぞ」

八幡「は、はい」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:32:25.01 ID:aE11gqgi0
――――
――

八幡「うわ、寒みぃ」

静「そりゃまあ、この時間になれば外の気温はぐっと下がるだろう。こういう日はラーメンに限るな」

八幡「まあ、否定はしませんが。ふあーあ。……つか、先生元気っすね」

静「SAで休憩中に仮眠してたからな。ふふ、私はまだ若いからカラオケでオールして翌朝そのまま出勤も余裕だぞ」

八幡「それ、教師としてアウトな気がするんですが。そういや今何時……ってもうこんな時間かよ!?」

静「一部区間で渋滞に巻き込まれたからな。もう少し早く着くつもりだったのだが」

八幡「がっつり深夜っつーか未明なんですが……こんな時間に開いてるラーメン屋なんてあるんですか?」

静「ああ、意外とあったりするものだぞ。ここだ」

八幡「ここ……すか」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:33:04.88 ID:aE11gqgi0
――――
――

八幡(飲み屋街の一角にたたずむラーメン屋)

八幡(外観はちょっと古びた感じ、店内は何というか……昭和な雰囲気?)

八幡(昭和に生まれてねーけど。ノスタルジックな映画に出てきそうな空気感だ)

八幡(L字のカウンターと、テーブル席が一つ)

八幡(手狭な感じではあるが、この空気感と相まって寒空の下屋台でラーメンを食べるときのような温かさを感じる)

八幡「先生は前にもこの店に来たことあるんですか?」

静「ああ、あるよ。ふと思い出したようにジュルリと食べたくなる味だ」

八幡「ほう……」

静「私はコッテリラーメンと餃子にしよう。君はどうする?」

八幡「じゃ、俺も同じコッテリラーメンで。あとライスを」

八幡(『コッテリ』がここの一番人気らしい。味噌ラーメンも捨てがたいが、初めて来る店だ。ここは冒険せず無難なチョイスでいこう)
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:33:52.11 ID:aE11gqgi0
「はい、コッテリ2つと餃子、ライスね。お待ちどう」


八幡「おぉ……」

静「ふむ」

八幡(トッピングは小ぶりのロール叉焼2枚に煮卵、ネギ、モヤシとメンマ)

八幡(脇を固める揚げニンニクチップ、そして中央に鎮座するのは一本丸ごと明太子!)

静「なかなか見た目のインパクトがあるだろう?」

八幡「ありますね」

八幡(まるごとバナナは包まれてるけど、この明太子はそのまま上にのっけてあって凄い主張してる感じ)

八幡(叉焼がもはやモブ扱い。なに、ここ修羅の国なの? 殺し屋激戦区なの?)

静「では、いただくとしようか」

八幡「そうっすね」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:34:23.35 ID:aE11gqgi0
八幡(まずはスープを一口)ズズズ

八幡「ん」

静「どうかね、比企谷」

八幡「あ、いや……何ていうか『コッテリラーメン』っていう割にはコッテリじゃないような」

静「だろう。最近でこそ、コッテリといえばコテコテなスープを連想するが、一昔前のコッテリっていうのはこんな味わいだったんだ」

八幡「……へー」

静「今でいうならちょいコッテリというくらいかな。トロっとした豚骨醤油の旨味と、くどくなくすっきりと喉元を過ぎていく後味の良さ」

静「一口でコッテリとアッサリを二度味わえる。たまに猛烈に食べたくなる懐かしい一杯だ」

八幡(懐かしい一杯)ジュルルル
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:34:51.56 ID:aE11gqgi0
八幡(俺は昭和という時代を知らない。けれども、なんとなくイメージはできる)

八幡(ちょいコッテリのスープが絡み付いた縮れ細麺はほどよい歯ごたえで箸がとまらない)

八幡(小ぶりながら味が濃くて旨い叉焼、シャキシャキと小気味のいいネギとモヤシに、くにくにと噛めば噛むほど味が出るメンマ)

八幡(煮卵は半熟でトロっとした黄身の甘みとだしのしみ込んだ白身とのコラボが心地いい)

八幡(ニンニクチップの香ばしさに、熱を帯びた明太子を食めばごはんもどんどん進んでいく)

八幡(寒い冬に温かい屋台で食べる昔ながらのラーメン……そんな味わい)


八幡「うまい」

静「そうか、それはよかった」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:35:39.53 ID:aE11gqgi0
八幡「先生のいう懐かしい感じ、何となく分かりました」

静「だろう。古き良き時代のニッポンのラーメンって感じで」

八幡「……先生って実はアラフォ」

静「んん〜? 何だって? 聞こえないなあ」ギロ

八幡「な、何でもにゃいです……」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:36:17.51 ID:aE11gqgi0

真夜中に知らない街の片隅で食べるラーメンは本当に美味かった。

つい数時間前、学校から帰ろうとしていたときの俺が想像だにしなかった展開、非日常な体験。
正直いつもこんなことがあるのは御免こうむりたいが、ごくたまになら、こんな出来事があってもいい。

そんなふうに思えた十七の夜だった。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:37:19.49 ID:aE11gqgi0
【比企谷家】


八幡「ただいま」

八幡(もう昼近くになっちまったな。先生は学校に戻ってそのまま仕事……ご苦労なこった)

小町「お帰りお兄ちゃん」ニコニコ

八幡「お、おう。え、何? なんでそんな満面の笑みなの?」

小町「いやー、遅くなるとは聞いてたけどまさか朝帰りどころか昼帰りとはねぇ」

小町「ふふふ……昨夜は平塚先生とお楽しみでしたね♪ 既成事実! 既成事実!」

八幡「はぁー」

小町「え、何〜そのため息は?」

八幡「言っとくが小町、俺は先生と二人でラーメン食べにいっただけだからな」

小町「……え。ラーメン? 何それ、一晩中? どこで?」

八幡「えーっと、どこだっけ? ああ、あれだ。東海か近畿か分からない県。まあ、どっちでもいいけど。そこまで車で往復してきた」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:38:07.60 ID:aE11gqgi0
小町「はぁー」

八幡「えぇ……何だよそのため息」

小町「ま、お兄ちゃんのことだから、結局そんなことなんじゃないかと思ってたんだけどね」

八幡「ふ、さすがは我が妹……心得ているな。褒めてつかわそう」

小町「そういうのいいから」

小町「あー小町、お腹空いたなあ。そろそろお昼だけど、たまには誰かがごはん作ってくれないかなー」

八幡(小町が誰かに料理を作ってほしいだと?)

八幡(両親は休日も出勤だし、他所の男が小町のごはんを作るなどお兄ちゃん許さんぞ)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/01/30(火) 18:38:53.00 ID:aE11gqgi0
八幡「ふ、じゃあ、たまには俺の腕を見せてやるとするかな」

小町「おお、珍しくお兄ちゃんがやる気モードに?」

八幡「小町、何が食べたい? 俺の料理スキルを考慮して忖度した注文ってことで頼むぞ」

小町「お兄ちゃん、予防線張り過ぎ」

八幡「いや仕方ねぇだろ……で、何食べたい?」

小町「じゃ、ラーメンで!」

八幡「よし、お兄ちゃんにまかせなさい!」




――やはり俺の青春ラーメンはまちがっている。




(終)
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 19:02:44.77 ID:/2JCOsCVO
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 19:40:35.80 ID:AUbmsQlgo
おつー
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2018/01/31(水) 05:41:36.55 ID:wQjCSNrao
小町は姉が平塚先生でもいいのか
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 07:56:23.33 ID:GOooBM8o0
乙です
いい八幡静なやりとりでした
32 :◇ナイトAXIA=ID:29254705&221135 [saga]:2018/04/22(日) 16:31:37.11 ID:kIQd+OY5O
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