バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」

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683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 17:14:06.63 ID:tTtXMBB/0
おれもおれもまってる
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/23(水) 23:29:29.14 ID:y7MX5fKg0
いつまでも待つぞ
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/01(金) 12:31:23.97 ID:Mdn9lDls0
6月になったけど待ってます
686 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:13:59.52 ID:iNQLdeY80

………………

M「……つまり、こういう事か。ベインが潰したと断言できるのは、結局、敵サーヴァント一騎だけだと」

スケアクロウ「ただ座しているだけの者よりよほど誇るべき成果だろうさ、ククク」

M「……」ギシッ

P「落ち着きなさい。次の手を考えねば」

M「……ふん。バベッジ、聞こえるか」ピピッ

バベッジ『聞いている』ブゥン

M「植物園へ向かえ、奴らが賢いなら、そこへ来るはずだ」

バベッジ『……了解した』


687 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:14:46.90 ID:iNQLdeY80

P「……」

M「言いたい事があるなら言うが良い、パラケルスス」

P(パラケルスス)「いえ……ただ、変わったのだと、実感しただけです」

M「……人は変わってしまう。ならば、気高いままで仕事を終えたい」

パラケルスス「……」

スケアクロウ「……」


688 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:16:16.06 ID:iNQLdeY80


M「結果、自分が変わってしまったとしてもだ。……過ぎた贅沢だと、思わないでもないのだがね」

パラケルスス「……贅沢ですか」

スケアクロウ「……見てきたハズだ、マキリ。人間の本質は恐怖だ。絆、博愛、平和。そんな綺麗事を囁いていた連中が、一口でもガスを吸えばどうなった?
結局、世界は嘘で覆われているのだ。見栄えだけは良い、輝かしい嘘でな」

M(マキリ)「……そう、だったな。ああ、無論、我々の目的が揺らぐ事はない」

スケアクロウ「……私は行く。恐怖ガスを更に改良しよう」スタ、スタ……

パラケルスス「……」


689 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:16:45.44 ID:iNQLdeY80


マキリ「……」

パラケルスス「……悪は止まれない。私がそう言ったのを覚えていますか」

マキリ「……覚えている。勿論だ」

パラケルスス「ですが、毒がその分量によって薬にもなるように……必要悪というのは、存在するのです。
今、その魂が悪に染まっていても。きっと世界は良い方向へ変わっているのです。変化に犠牲は、つきものですから」

マキリ「……ふふ、魂か。なあ、パラケルスス」

パラケルスス「はい、マキリ」

マキリ「私の理想は──」


690 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:17:11.58 ID:iNQLdeY80

………………


ゴポッ、ゴポポポポポ……


(ブルース)

(ブルース)

((バットマン))

バシャアッ、ポタ、ポタ……

((坊ちゃま……))

(((ブルース)))

(((お父さん……)))

(((逃げろ)))


バットマン「……」ポタ、ポタ……

???「ぅあ……」バシャバシャ……

バシャ、バシャ……


???2「おーい! こっちだ、こっち! 運んできてくれ!」


691 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:17:37.59 ID:iNQLdeY80



(((ハハハァー!! 命を持つ痛みすら叫ばず!)))

(((果てには死が待つというのに、私の破壊行動に怒りを燃やす! それがアナタ達の弱点だ!)))



???「う……」バシャバシャ

???2「酷いな……ブルースが特に不味い。早く緩和剤を打たなきゃ」カチャカチャ

バットマン「……ぐ……」



(((貴方も本当は気付いているんじゃないですかァ? 限りある命なんて、所詮……)))


(((今度は信念だ、バットマン。お前は肉体をいくら潰しても這い上がってくる。ならば、精神を先に潰す)))

(((お前を殺せば、きっと世界は終わるのだろう)))


(((世界は狂っている……貴様は狂っていない)))

(((こちらへ来い、ブルース)))

(((ブルース)))


(((逃げろマーサ、ブルース)))

692 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:18:06.69 ID:iNQLdeY80



バットマン(……)

(((私達はお前にそうなって欲しくなかった、ブルース)))

バットマン(……)

(((ただ、お前が幸せに生きてくれれば、それだけで良かったのに)))

バットマン(……)

(((……だが、もう良いんだ。こっちへ来い、ブルース。一緒にいこう。もう、これ以上苦しむ必要はない)))スッ

ブルース(……)

(((ブルース、大丈夫よ。お母さんだってついてるわ。こっちへいらっしゃい)))


ブルース(……)


バットマン(……違う)


693 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:18:47.69 ID:iNQLdeY80


(((ブルース)))

バットマン(向き合え。真の恐怖とは何だ。私は何を恐れている)

(((ブルース、こっちへいらっしゃい)))

バットマン(一時の暖かさでそれを誤魔化すな。私は何を恐れている。仮面を剥がれる事か? それとも)

(((ブルース)))

バットマン(また、闇の中で動けなくなる事か?)



バチチィッ、ドクン‼


バットマン「ッ!!」ガバッ

???「ゥー……」バチ、バチチチ

???2「ブルース!」

694 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:19:18.21 ID:iNQLdeY80


バットマン「ここは一体……ジキル博士?」

ジキル「僕だよブルース。通信が途切れたから、電波の発信源を追って駆け付けた。助けてくれたのは、この子だけど」

???「……」

バットマン「……」チラッ


排水口「」バシャシャシャシャ……


マシュ「……」グタッ

モードレッド「……」グッタリ


バットマン「……本当に、お前が?」

???「ウ!」コクコク


695 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:19:49.91 ID:iNQLdeY80


バットマン「……ありがとう、あのままでは死んでいた。助かった」

???「ウゥ……」フリフリ

バットマン「ジキル、恐怖ガスの緩和剤はまだあるか? マシュとモードレッドも恐らくガスの影響下にある」

ジキル「駄目だ、ストックの一本分は既にキミに使った。何処かに隠れて調合しないと」

バットマン「そうか……」


通信機『』ピピー‼ ピピー‼

バットマン「もしもし、ドクターか」ピッ

ドクター『ブルースくん! 良かった、応答しました! 生存を確認!』

所長『ブルース! 生きてたのね……!! どうして連絡しなかったの!? マシュは!?』

レオナルド『ほら言ったじゃないか、絶対生きてるって』

ドクター『何度もバイタルを確認してたクセによく言えるな!?』

レオナルド『恐怖に勝るのはいつだって事実さ……早速だが、状況を確認したい。良いね、ブルース』

バットマン「ああ、報告する」


696 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:20:28.78 ID:iNQLdeY80


………………


ドクター『……成程、ベイン。それにB・P・M・Sのうちの「B」、バベッジの登場か』

レオナルド『サーヴァント三騎を相手に全く退かず、それどころか遊びじみて返り討ちにしただって? そのベインというヤツは何者なんだ、ホントにただのサーヴァントなのかな?』

バットマン「……怪しいものだが、生前から考えると妥当な強さではあった」

レオナルド『うーん……滅茶苦茶だな。ブルース、キミは平気かい?』

バットマン「一撃もらったが、スーツのアイソメトリック機能で持ちこたえている」

ドクター『……そのまま休んでいて欲しいところだが、マシュのバイタルがひと呼吸ごとに悪化している。可及的速やかに屋内へ退避してくれ』


ジキル「ここから近いのは……図書館だな。こちらとしても、広めのスペースを確保したい」

バットマン「分かった、では行くぞ。ジキル、モードレッドを頼む。私はマシュを担ぐ」

ジキル「了解。よいしょ……うっ、重いな……」ガシ、グイッ

モードレッド「……ちち、うえ……」グタッ


697 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:20:55.88 ID:iNQLdeY80


バットマン「……」ガシ、グイッ

マシュ「……先輩……」

バットマン「……」スタ、スタ

マシュ「……ごめんなさい……」

バットマン「……」


698 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:21:21.34 ID:iNQLdeY80


コツ、コツ……


ドクター『ブルース、その……肝心な時にサポートが行き届いていなかった。すまない』

バットマン「……あぁ、大丈夫だ。私も、現場で常に策を考えるハズが、犠牲を出しながらの撤退になってしまった……まるで最悪を受け入れたようだった。情けない話だが」ポタポタ、グイッ

ドクター『……』

バットマン「……それに、フランケンシュタイン博士を助けられもしなかった。すまない」

ジキル「……良いんだ。キミ達が帰って来た、それで十分だよ」

???「……ゥ……」フリフリ

バットマン「……良ければ、キミの名を教えてもらえないか」

???「ふらん……」

バットマン「フランか……」


699 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:22:00.00 ID:iNQLdeY80


バットマン「ダビデを……ダビデを助けようとしてくれた事に、感謝する。ありがとう」

フラン「……ゥ」

ドクター『……ダビデも、消滅したんだね。アイツ、最期に何か言ってたかい?』

バットマン「あぁ。息子を頼むと、そう言われた」

ドクター『えっ……息子って、そ、ソロモンを?』

バットマン「ああ、そうだろう」


700 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:22:25.50 ID:iNQLdeY80


ドクター『……そうか、そんな事を……』

バットマン「ドクター、やはり……ダビデは、お前が思っているほどは、悪い奴ではないと思う」

ドクター『……そう、か。
……そうだね。僕も少し、言い過ぎたかもしれないなぁ』

バットマン「……」

ドクター『……ありがとう、ブルース。ごめんね』

バットマン「謝る事ではない。ダビデにも息子を思う気持ちがあった、それだけの事だ」

ドクター『そうだね……』


701 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:23:04.04 ID:iNQLdeY80


バットマン(しかし、今回の黒幕がソロモンだと直接ダビデに明かした事があっただろうか)

バットマン(……覚えはないが、第三特異点であれほど強く問い詰めたのだ。何かしら察するところはあったのだろう)


ジキル「あれが図書館だ、ブルース。もう少し踏ん張ってくれ」

バットマン「ああ、大丈夫だ……」

フラン「ウ!」スタスタ


702 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:23:32.60 ID:iNQLdeY80


バットマン「……」


霧「」ズォォォォォォ……


街路「」……、…………


バットマン(私達以外の足音などしていない。その筈だ、だが……この胸騒ぎは何だ?)

バットマン(また恐怖ガスの幻覚か? いや、それにしては……)


ジキル「どうした?」

バットマン「……」

フラン「?」

バットマン「……いいや、何でもない。行くぞ、止まらず」スタスタ



703 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:02.31 ID:iNQLdeY80


………………


ナーサリー「……」

アンデルセン「……ほら、紅茶だ。飲め」カチャ

ナーサリー「いらないわ。紅茶なんて……」パシッ

アンデルセン「いつまでヘソを曲げているつもりだ、お前……」

ナーサリー「いつまで、ですって?」

アンデルセン「……」

ナーサリー「……マッドハッターさんが帰ってくるまでにきまってるわ」


704 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:31.54 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「……死人は戻らん」

ナーサリー「じゃあ……じゃあ、どうして助けに行かせてくれなかったの!? 私、わたしは……私は、ようやく『物語』になれたのに……っ」ギュッ

アンデルセン「……」

ナーサリー「これじゃまた、誰も読んでくれない。誰も私を見てくれない。誰も……」ブルブル

アンデルセン「いつまでも同じ事を言うんじゃない。あそこで無駄死にするのがお前の役割だったなら、とっくに放り出してる」

ナーサリー「……だからあなたは嫌いよ、アンデルセン」キッ

アンデルセン「フン……」


705 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:59.76 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「……?」ピクッ

ナーサリー「? アンデルセ……」

アンデルセン「静かに。……チッ、侵入者か。動くなよ、俺が向かう」

ナーサリー「わたしも向かうわ。一人は駄目よ、ぜったい駄目」

アンデルセン「座っていろ。マッドハッターの最期の言葉まで無碍に扱うつもりか」

ナーサリー「……大人ってズルいわ、だから嫌いなの!」

アンデルセン「奇遇だな、俺も理想論ばかりの子供は大嫌いだ!」ガチャッ、バタンッ‼

ナーサリー「っ……」


706 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:25:26.00 ID:iNQLdeY80


………………

ドクター『……すまない、感知が遅れた。図書館内の魔力反応に揺らぎが出た。キミ達は何やら結界じみたものを踏み越えてしまったようだ』

バットマン「ジキル、確か図書館に居るサーヴァントは……」

ジキル「ああ、帽子をかぶった男だったハズだ」

バットマン「……」


バットマン(マッドハッターの仕業か? いや、だが奴はわざわざこんな回りくどい事をする性格ではなかったハズ……)


バットマン「ドクター、図書館内のサーヴァント反応をサーチできるか」

ドクター『待ってくれ、今やってみてる……うぅ、相変わらずノイズまみれだな。恐らく二人居るぞ、それで……この体格、どっちも子供みたいだな』

バットマン「子供?」


バットマン(……マッドハッター……ではない?)


707 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:26:13.48 ID:iNQLdeY80


ドクター『あぁっ、駄目だ! ノイズが激し過ぎて捕捉しきれないぞ……二階に居るらしい事は分かったんだが』

バットマン「十分だ。……二人とも注意しろ、この建物も安全という訳では無さそうだ」

ジキル「困ったな……」

フラン「まも、る」

バットマン「……行くぞ」スッ


裏口「」ガチャ、ギィィィィィィィ……



708 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:26:39.44 ID:iNQLdeY80



コツ、コツ……コツ……

蜘蛛の巣「」ハラリ

ろうそく「」ユラァ……


バットマン「……」


バットマン(やはり、つい先ほどまで人が居た痕跡がある)


ジキル「うわっ……酷い状態だな、ここは……」

バットマン「迂闊に動くな。……それと、扉をきちんと閉めてくれ」

フラン「ウ!」ガチャン


裏口「」ガチャリ


709 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:27:39.91 ID:iNQLdeY80



バットマン「……そこの机の上を片付けるぞ。マシュとモードレッドを寝かせる」

ジキル「ああ、緩和剤製作のスペースも作らなくちゃな」

フラン「きたない……」ガサゴソ

バットマン「……いや、待ってくれ。少しだけ」スタスタ


バットマン(机の上にあるのは……赤ずきん、蟻とキリギリス、赤い靴、ある母親の物語……『あ』から始まる本ばかりか)ペラ

バットマン(読まれた形跡はどれも古いものだ。各ページの湿り気、クセの付き方から判断して……恐らく、他の本を探す際に本棚から放り出されていたのだろう)ペラ、ペラ

バットマン(では目的の本とは? ……考えるまでもない。『アリスズ・アドベンチャー・イン・ワンダーランド』『不思議の国のアリス』。マッドハッターの愛読書)

バットマン(……だが、捜索は途中で打ち切られたようだ。中途半端に残ったあ行の本棚、冷めたままで放置された紅茶とカップ……急な来客でもあったか、それとも)


ビュォォォッ……

本「」パララララララ……

バットマン「……風?」

ジキル「扉か窓でも開いてるんじゃないか?」


710 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:28:13.98 ID:iNQLdeY80



バットマン「……ここに残っていてくれ、見に行く」スクッ

ジキル「了解。緩和剤も調合を開始するよ」

バットマン「頼んだ。フラン、ここの守りは任せた」

フラン「まかせて!」フンス

バットマン「……」スタスタ



ヒュォォォォォォォォォオオオ……


裏口「」……キィ……



711 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:28:48.55 ID:iNQLdeY80


コツ、コツ……


バットマン(何かが起こったのは間違いない。ここにあるのは三人分の足跡だ。本を蹴飛ばし、垂れたインクを踏みながら『その現場』へと急いだらしい)コツ、コツ

バットマン(ここまで急ぐとなると、敵か)


ドクター『気を付けてくれ、ブルース。二階のサーヴァント反応がひとつ減った』

バットマン「……了解。慎重に行動する」コツ、コツ


ビュオォォォォォッ……


バットマン「……これは……」ピタッ


バットマン(凄まじい攻撃力でもって図書館の正面玄関が破壊されている。粉々の木片を踏みながら侵入者は入って来た……脳内で木片を元の位置に再構築。足跡を分析する……)

バットマン(……この足の形は、ベイン)ピクッ

バットマン(成程、ようやく事態が把握でき始めたぞ。図書館に居た三人は団結してベインを攻撃したんだ……しかし、我々が遭遇したベインには傷一つ付いていなかった。虚しい抵抗か)

バットマン(図書館には未だに二つのサーヴァント反応。つまり、ひとりを犠牲に残りが逃げた……さあ、犠牲になったのは誰だ?)


ビュォォォォォォオオッ……


帽子「」コロコロコロ……

バットマン「……」パシッ


バットマン(……マッドハッター)


712 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:29:29.65 ID:iNQLdeY80


???「……手を上げろ、黒猫男」

バットマン「……」


バットマン(しまった、後ろを取られた……)


???「手を上げろと言ったんだ、聞こえなかったか」

バットマン「……」スッ

???「聞き分けの良い奴だ。敵か味方か分からない状況ではこうするのが賢明でな」

バットマン「……我々は味方の可能性が高い」

???「さあ、どうだろうな……少なくとも、その帽子にすぐ目を付けた時点では怪しいものだが」

バットマン「……」


713 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:29:58.49 ID:iNQLdeY80



バットマン「マッドハッター。そうだな」

???「……なんだ、お前もあの狂人の知り合いか?」

バットマン「古い付き合いだ……嫌になるほどのな」

???「含みのある言い方だな。どうしてアイツの知り合いはマスクしか居ないんだ」


バットマン(マスク……という事は、やはり)

バットマン「……やはり、ベインも来たのか」

???「ますます怪しいな、お前は。何故そこまで知っている? 何故ここに来た? 何故黒猫のコスプレなんだ?」

バットマン「それは……」


ドゴォォォォォォォォォォォォ……


バットマン「……!!」バッ


714 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:30:29.87 ID:iNQLdeY80


???「ええい、今度は何の音だ!?」

バットマン「あれは……!」


バットマン(しまった、ジキル達が居る方角……!)ダッ


???「待て、動くな! 今の音は何だ!?」

バットマン「敵だ! 侵入を許した!」

???「敵だと!? お前達はどうなんだ!」

バットマン「敵ではない!」

???「その証拠は!」

バットマン「恐れている! 悪いが行くぞ!」ダダッ

???「待て!! ええい、待てと言っているだろう!!」ダッ


715 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:31:05.84 ID:iNQLdeY80



………………

ジキル「くっ!?」ガギィ‼

???「フッ」クルクルスタッ、ダダッ

フラン「!!!」ガッギャァァァァァァ‼

???「やああっ!」ガギャギャギャギャ、ズバァッ

フラン「ッ……」ドサァッ

???「解体するよ」スッ


バットラング「」ヒュォォォォォォォッ


???「っ!!」ガギャア‼


バットラング「」クルクル……カラン


バットマン「……間に合ったか!」ダッダッ


716 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:32:26.66 ID:iNQLdeY80



バットマン(幼い姿、両手に握ったナイフ……乾いた血が体に点々と散っている)


バットマン「何者だ」

???「……わたしたち?」

バットマン「……」ジリッ


バットマン(……私達、だと? 複数? 二人以上がこの場に襲ってきたのか?)


717 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:32:52.19 ID:iNQLdeY80


ジキル「来てくれて助かった……急にそこの少女が襲ってきたんだ、恐らくはサーヴァント」

バットマン「……一人でか?」

ジキル「ああ、恐らくは彼女が『ジャック・ザ・リッパー』だろう。まだ新聞が刊行されていた頃に、容姿を見たという者のスケッチが載っていた」

バットマン「……成程、了解した」


バットマン(……この位置は不味い。下手に動けばジャックがモードレッド、マシュを人質にとる)


ジャック「……」ジッ


718 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:33:20.18 ID:iNQLdeY80


ジャック「あなたなの?」

バットマン「……?」

ジャック「あなたが、わたしたちのお母さんになってくれるの?」

バットマン「……私は男だが。『お母さん』とは、何だ」

ジャック「ずっと探してた。どれだけお腹を開いても、どうしても見つからなかった」

バットマン「……探していた?」

ジャック「うん。だって、帰りたいもん」


719 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:33:55.15 ID:iNQLdeY80


ジャック「……あぁ、やっぱり、その目。私達のおかあさん。全部を諦めて、仕方がないって思ってる目」

バットマン「……私にも諦めていないものはある」

ジャック「じゃあ、諦めてねッ」ダンッ、ギュオッ‼

バットマン「ッ」ガギィィィィィィィッ、ゴロゴロッ


バットマン(良し、喰らい付いた)


バットマン「ジキル博士! マシュとモードレッドを安全な場所へ! フラン、ジャックを抑えるぞ!」ゴロゴロ、スクッ

ジキル「了解!」

フラン「ウァァァァァ!!」ババッ

ジャック「邪魔だよ!」ヒュンッ


720 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:34:33.65 ID:iNQLdeY80



ジキル「よい……しょっ!」グイッ

モードレッド「……クソ……俺の、価値……!」ブラァ……

ジキル「……大丈夫、助けるから」スタ、スタ


ハイド(((助けるだって? おいおい、よく言えるな)))


ジキル「……黙れ、違う……」スタ、スタ


ハイド(((何が違うんだよ、後ろじゃ戦いの音が響いてるぜ? 『あの薬』を飲めよ……そんで加勢しろ、それがベストだ。ベストを尽くさない人間が未来を語る資格はない。そうだろ?)))


ジキル「……僕には僕の役割があるんだ。黙って、従え……!」


ハイド(((ケッ……)))


721 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:35:02.32 ID:iNQLdeY80


バットマン「くっ……」ガギィ、ギャリギャリギャリ

ジャック「このまま……!」ギリギリギリ

フラン「させない!」ブォンッ

ジャック「!!」ババッ、スタッ

バットマン「……」


バットマン(やはり熟練したサーヴァント相手にはかすり傷一つ負わせるのも難しいか……ならば)スッ

バットマン(マッドハッターの帽子を使う)


722 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:35:41.84 ID:iNQLdeY80



バットマン「フラン、少しの間の時間稼ぎを頼む。ドクター、私の脳波の観測を」スチャッ

ドクター『え、え、え!? わ、分かった!!』

フラン「わかった!」ブォン、バチバチバチバチィッ

ジャック「っ、電気……」ジリッ

フラン「ここからは、通さない!!」ダン‼


バットマン(……肉体面で捉えられないなら、精神面から捕捉する……!)ギュゥゥゥゥゥォォォォォォ……


ドクター『ブルースくん、β波が危険域だ! ……え、安定した!? どういう事だ!?』

バットマン「まだ大丈夫だ、ドクター……!」ギュォォォォォォォォォォ……

ドクター『ど、どうなってるんだ!? 何だその帽子!?』


723 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:36:10.28 ID:iNQLdeY80



フラン「ハアッ!」ブォン‼

ジャック「っ」ババッ、タタッ

フラン「ウァァァァアアアアアアアア!!!」バチバチバチバチバチィ‼

ジャック「遅いよ」タタッ、ダダッ


フラン(当たらない……!?)


ジャック「そろそろ、終わらせるね」タンッ

フラン「!!」バッ

バットマン(っ、間に合わない……!)ギュォォォォォォォォォォ……


光弾「」ギュドドドドォッ‼

ジャック「!!」バッ


???「……フン、間に合ったようで何よりだ」シュゥゥゥゥゥゥ……


724 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:36:37.64 ID:iNQLdeY80


バットマン「お前は……あの時の、子供か」

???「子供ではない。アンデルセンと呼べ……全く、追いついてみればこれだ。図書館で大乱闘とは不届き千万、せめて本の無い場所でやれ!」

フラン「ウゥ……」

バットマン「……協力如何による」

アンデルセン「小生意気な男だ、お前は!」

バットマン「同意してもらえたようだな」


ジャック「……解体するひとが、増えただけだよ」カチャッ

アンデルセン「フン、少女の殺人鬼か。今度お前を題材に小説でも書いてやろう」

バットマン「構えろ。来るぞ」


725 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:37:15.31 ID:iNQLdeY80


ジャック「……」タタ、スゥッ

フラン「ウゥ……!」ダッ

バットマン「待て、追うな。奴の戦略だ」バッ


バットマン(真正面から掛かって来ず、障害物の陰に隠れ、気付かれない内に敵の命を掠め取る……生粋のアサシンだ。迂闊に誘い出されれば破滅する)


アンデルセン「どうする、見失ったぞ」

バットマン「…………アンデルセン、フラン。固まれ。あちら側の本棚を破壊し尽くせ。策がある」

アンデルセン「全く、本に対する冒涜だ!! ……商売敵の本ばかりだから喜んでやろう」ギュォォォッ、ドシュシュゥッ

フラン「ウ、ウゥ!」ブォンッ、バキャァ‼


本棚「「「」」」」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ドッシャァァァァァァァアン……‼


726 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:37:44.00 ID:iNQLdeY80


………………

ジャック(……あっちにわたしたちは居ないのに、本棚を倒してる……足音も聞こえなくなってこっちには好都合だけど)


ズグググググググググ……ドッシャァァァァァァン……


ジャック(自暴自棄、なのかな。ヤケになっちゃったんだね、かわいそう……すぐに片付けてあげなきゃ)タタ、タタタタ……



バットマン(当然そう考えるだろう。だが派手な動きに気を取られ、私を見失うようでは甘い)プシューッ、プシュー……カチャカチャ、ピンッ


727 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:38:11.17 ID:iNQLdeY80



ジャック(あの位置を取れば……)タタタッ……


ジャック「……?」ピタッ


ジャック(……これ、ワイヤー? 罠だ)ジッ


カタッ

ジャック「!!」バッ


バットマン「……」コソコソ


ジャック「……見つけた」ダンッ



728 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:39:38.73 ID:iNQLdeY80


バットマン「!!」ガギィィィィィィ、バッ


バットマン(誘導成功だ)


ジャック「ひとりだけ、逃げようとしてたの? わるいお母さんだね」クルクルッ、スタッ

バットマン「……さあ、どうだろうな」

ジャック「でも、解体して、かえるから」

バットマン「母は変えられない」

ジャック「かえれるよ。これからはずっと一緒だもん」


バットマン(……机の上に乗った。ジャックの精神捕捉にはまだ時間が掛かる。作戦通り)


729 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:40:10.94 ID:iNQLdeY80


バットマン「フッ!」シュババッ


バットラング「」ギュギュォォォォォォッ‼


ジャック「!!」ガギャッ

バットマン「フッ!」スタッ、ヒュンッ

ジャック「あたらないよ!」シュンッ、ヒュォッ

バットマン「くっ……」ギャリリリィ‼


バットマン(良し。高所レベルは同程度を確保。机の上は足場が制限される分、ジャックも迂闊に大幅な回避、攻撃はできない……ならば近距離戦闘、身体能力の差は技術と予測で誤魔化し互角の戦いに持ち込む!)



730 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:40:56.73 ID:iNQLdeY80


ジャック「っ!」ババッ

バットマン「シッ」シュババッ


バットラング「「「」」」ヒュオォォォォォォォオォォッ


ジャック「あたらないって言ってるよ!」バッ

バットマン「無論そうだろう!」ヒュンッ

ジャック「ふっ」パシッ

バットマン「……!!」グッ、グッ……

ジャック「……駄目だよ、お母さんは人間だもん。わたしたちには勝てないよ」ググググググ……

バットマン「……そうかもしれないな、ジャック・ザ・リッパー」

ジャック「……」

バットマン「だが、後ろに注意しておいた方が良いだろう。リバースバットラングは『帰って来る』」

ジャック「!?」バッ


バットラング「「「」」」グォンッ、ヒュォォォォォォォォオッ‼


731 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:41:32.20 ID:iNQLdeY80



ジャック「っくぅ!?」ガギギギギィ‼

バットマン「そこだ……!」シュポッガシッ、ギュチチィ‼

ジャック「ぐ……なにを!」

バットマン「フラン、今だ! 思い切り叩き込め!」


ダッダッダッダッダッダダンッ‼

フラン「ウゥゥゥゥゥゥァァァアアアアアアアァァァア!!」バチバチバチバチィッ、ドッゴォォォォォォォォ‼


732 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:41:59.85 ID:iNQLdeY80



モクモク……バチ、バチチ……


バットマン「……どうだ……」

フラン「……」バッ


バチ、バチバチチ……ジリッ


ジャック「……きか、ないよ……!」バチチチチチ……ググググググ……‼

フラン「……!」


733 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:42:27.39 ID:iNQLdeY80


バットマン(ならば)


バットマン「アンデルセン! 二階のサーヴァントを借りるぞ!」

アンデルセン「!? 待て、それは……!」

バットマン「最終手段だ! フラン、机の端を叩け! アンデルセン、私を撃て!」

フラン「!?」

アンデルセン「なにぃ!?」

バットマン「やれ! 策があると言っただろう!」

アンデルセン「つくづく狂った熱の男だ! どうなっても知らんぞ!」ギュギュギュオォォォッ‼

フラン「ウ、アアアアァァァァ!!!」ドッシャァァァァァァァァン‼



734 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:43:31.30 ID:iNQLdeY80


(ここだ)


 一瞬を捉える。ブルース・ウェインは投げ技の厳しい修行を思い出していた。血反吐を吐きながらも起き上がり、何度も投げられたあの修行だ。身体が覚えている。


 重心が全てだ。ジャックを腕に捉え、倒れ込む準備をした。フランのメイスが机の端を叩き、シーソーじみて逆の端を跳ね上げる。バットマンのマントが翻り、凄まじい勢いで重心が移動する。二者が空中へ放られる。

 光弾が肩に着弾。ブルースは衝撃を受け、まるで水の流れのようによどみなく回転した。ジャックを腕に捉えたままだ。ブルースは遠心力、重心、そして筋力の最高パフォーマンス点を計算した。

 その瞬間、バットマンは目を見開いた。そしてジャックの身体を僅かに引っ張り上げ、巴投げのように頭上へ、天井へと放った。


 三人の全力が乗算され、一瞬の回転の中から砲弾じみてジャックが弾き飛ばされた。天井を突き破り、少女は二階へと放り込まれた。数秒遅れ、コウモリの騎士も羽を広げ、急制動で二階へと突入した。


735 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:44:08.24 ID:iNQLdeY80



ジャック「ごほっ、ごほっ……」ガラガラ……

バットマン「……」バササササッ、スタッ

ジャック「……くっ」キッ

バットマン「……」


バットマン(……ジャックの精神捕捉にはまだ掛かるか。警戒が激しいと捕捉も遅れるらしい……)ジッ



736 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:44:38.57 ID:iNQLdeY80


???「……どなたかしら?」

バットマン「……お前が、第二のサーヴァントか」

???「第二の……? よく分からないけど、私にはナーサリーという名前があるのよ。それに、その帽子を何故貴方が被っているの?」

バットマン「深い理由がある、ナーサリー。だが今は力を貸して欲しい」

ナーサリー「……」チラッ


ジャック「……」ボロッ


ナーサリー「……いたいけな少女を敵に回して、そんな説得では無理よ」ジッ


バットマン(成程、アンデルセンが共闘を勧めなかった理由か)


737 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:45:35.68 ID:iNQLdeY80


バットマン「……私はマッドハッターの……友人だった」

ナーサリー「……嘘はそんな嫌そうに言ったら駄目よ、黒猫さん」

バットマン「嫌な思い出もある」

ナーサリー「……」

バットマン「……嫌な思い出だけだ。敵同士だったが、守るべきものは必ずしも相違していた訳ではない」

ナーサリー「今回は何を守っているの?」

バットマン「世界だ。手を貸してほしい」

ナーサリー「……わたし、子供だけど、大丈夫かしら?」

バットマン「世界の危機に立ち上がらせないというのは、いくら子供でも酷なものだ……」

ナーサリー「……ええ、勿論よ! 手を貸すわ、黒猫さん!」


738 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:46:05.58 ID:iNQLdeY80


ナーサリー「さあ、そういう理由よっ。名前を聞かせてちょうだい、そこのあなた」

ジャック「……ジャック・ザ・リッパー」

ナーサリー「まあ……大量殺人のあのジャックなのね」

ジャック「邪魔をするなら、解体するよ」カチャッ

ナーサリー「でも私だって負けないわ。ご存知かしら、お姫様だってスカートを上げれば走れるのよ」

ジャック「……? よく分からないけど、邪魔するんだね。なら、容赦しないよ」ジリッ


739 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:46:52.48 ID:iNQLdeY80


ナーサリー「……」ヒュオォォゥゥ……

ジャック「っ」ダンッ

ナーサリー「くるくるくるくる回るドア……」バッ、ギュォォォッ


光弾「」ギュドドドドッ


ジャック「あっ……!?」ギャリィ‼ ギャリィン‼

ナーサリー「行き着く先は、鍋の中!」パパパッ

パキィィィィィィ……

ジャック「つっ……!?」


ジャック(手が、凍った……!?)


740 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:47:30.70 ID:iNQLdeY80


バットマン(いいぞ、このまま……)


ジャック「っ、こんな程度!」バキャァァァァァ、ブンッ

ナーサリー「きゃっ……!?」ドサッ

ジャック「わたしたちは、かえらなきゃ駄目なの! 邪魔しないで!!」ダンッ

ナーサリー「……! 駄目よ、私にだって世界があるもの!」スクッ、ギュォォォッ

ジャック「じゃあわたしたちの世界は何処なの!? 消えるのが世界のためなの!? そんな世界なら、最初から……」ブォンッ


(((捉えた)))


ジャック「っ!?」ビクッ

ナーサリー「……?」


(((捉えた。捉えた)))


ジャック「……え? なに、これ」ジリッ

(((捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた)))

ジャック「……なに。なんで」

(((捉えた捉えたお前の捉えた捉えた精神を捉えた捉えた見せてもらう捉えた捉えた捉えた)))


バットマン(捉えたぞ、ジャック・ザ・リッパー。精神に動揺をきたしたな……見逃すものか)


741 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:48:03.30 ID:iNQLdeY80



ジャック「……やだ。やだよ、何……なんで」ペタン

バットマン「このまま、精神の深層へ潜り込む……ドクター。10分経過しても私が戻って来なかった場合は、スーツの蓄電機構を解放し、電気ショックで呼び戻してくれ」ギュォォォォォォォォォォ……

ジャック「……う……」ドサッ

バットマン「……ナーサリー、見張りは頼んだぞ」ギュォォォォォォォォォォ……

ナーサリー「ど、どうなって……どうするつもりなの?」

バットマン「……」


バットマン(このまま戦意の元を取り除く。もしくは、精神を崩壊させる)ジッ


742 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:48:31.71 ID:iNQLdeY80


──────

『産めるワケがないでしょう、自分ひとりが食べていくのに精いっぱいで……』

『愛してる。愛してる。ごめんね、ごめんね……』

『大丈夫よ、愛してるのは貴方だけ』

『堕ろすわ』

『……許して、お願い……許して……』

『神様……』


バットマン(……)

マッドハッター『やあ、バットマン。お前なら必ず来ると思っていたぞ』

743 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:49:07.74 ID:iNQLdeY80



マッドハッター『そうだな。例えば赤ずきんは、男に襲われる少女としてその物語が解釈される事が多い』

バットマン『……お前は、マッドハッター? 死んだハズだ』

マッドハッター『勿論死んだ。肉体はね。だが見ろ、お前は私の帽子を被った……そこにあった残留思念が、私を形作っている。どうだ、ロマンチックだろう?』

バットマン『……』

マッドハッター『……そして、アレを見ろ』


『愛してなんかなかった』

『父親なんて分からない』

『だけど出来た。だから堕ろす』

『悪い事だけど、胎児に意識なんて無いでしょう? だから、これは罪じゃない。……罪じゃ、ない』


マッドハッター『うーっ、これはロマンチックには程遠いな……なあバットマン、人を最も苦しめる恐怖とは何だと思う?』

バットマン『……』

マッドハッター『……それはな、罪の意識だ』


744 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:49:42.90 ID:iNQLdeY80


マッドハッター『勿論、サイコパスを自称する人間は多い。だが良心の呵責は大なり小なり無意識下に積み重なるものだ。人生の澱みと言い換えても良い……ウフフフ、物語に入り込む際の足かせになるから、私は切り捨てるがね』

バットマン『何が言いたい』

マッドハッター『何が? 言いたいか、だって? バットマン、もう明白だろう! ここはあの殺人鬼の深層心理じゃないのさ。澱みはもっと下の部分にある。もっと降りる必要がある』

バットマン『……もっと降りる?』

マッドハッター『そうとも。集中を深めろ、ウサギに導かれる少女の如く……私はついて行けないが、「そこ」に辿り着けるハズだ』

バットマン『……』ジッ

マッドハッター『……そうだ、深めろ……』


745 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:50:12.41 ID:iNQLdeY80




………………

ちがう。

ちがうよ。迷惑なんてかけない。だからやめて。

産まれたい、それが一番強い望みだったのに。

どうしてこうなの? 何が駄目だったの? わたしたちが、悪い子だったから?

それとも、世界が駄目だったの?


746 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:51:09.92 ID:iNQLdeY80



なら、わたしたちが消えたんじゃない。おかあさんが消えたんだ。だって、まだわたしたちはここに居る。

だから、探さなくちゃ駄目。探して、探し出して、もう一度一緒になる。

そして、今度こそ、一緒に────


747 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:51:40.07 ID:iNQLdeY80



バットマン『……それがお前か、ジャック』

ジャック『……』

バットマン『娼婦達が妊娠し、堕胎する。その水子の霊が集まって出来たのが、お前という存在なのか』

ジャック『……おかあさんに、会うんだ。だって、そうしないと、私達はずっと迷子だから』

バットマン『……』

ジャック『会って、もう一度、産んでもらうの。そうしたらやり直せるから。もう一回、やり直せるから』

バットマン『……』


748 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:52:09.25 ID:iNQLdeY80



バットマン『……いいや』

ジャック『……』

バットマン『死者は帰らない。絶対に』

ジャック『……じゃあ、どうすればよかったの? わたしたちは死んだまま? 産まれたかったのに。忘れ去られたままになっておけばよかったの? それが世界なの?』

バットマン『だが、殺しは正当化されない』


749 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:53:05.26 ID:iNQLdeY80


ジャック『殺しじゃない。帰りたかっただけ』

バットマン『被害者達は死んでいったぞ。訳も分からず、理由も分からず』

ジャック『……わたしたちだって……! わたしたちだって、生きたかった! でも叶わなかった! だって、生まれる前から、世界が終わっていたんだもん!!』

バットマン『……』

ジャック『……お母さんは泣きながらわたしたちを殺したよ。知ってるもん。だから、帰らなきゃ。帰って、安心させてあげるの。そうすれば、もう一度やり直せるから』


750 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:53:45.55 ID:iNQLdeY80


バットマン『……』

ジャック『……だから、あなたも、おかあさんになってね。わたしたちを、受け入れてね』

バットマン『……』

ジャック『一緒に、幸せをやり直そうよ。おかあさんとなら、大丈夫』

バットマン『……』


751 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:55:21.91 ID:iNQLdeY80


バットマン『……私の目』

ジャック『……?』

バットマン『諦めた目だと言ったな。それは間違いだ』

ジャック『何が言いたいの』

バットマン『能動的に人を変える事などできない。だが世界は変えられる』

ジャック『……』

バットマン『変えてみせる。お前達の世界が破滅しているならば、救う』

ジャック『無理だよ』

バットマン『できる。私も無理だと思っていた』

ジャック『……』


752 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:55:57.88 ID:iNQLdeY80


ジャック『……でも、おかあさんのところに……戻らなきゃ』

バットマン『……』

バットマン『……ならば、私が母親になろう。私の手を取れ、ジャック』

ジャック『……え……』

バットマン『今度こそ、お前を置き去りにはしない。お前を腹に宿す事はできないが、共に戦う事はできる』

ジャック『……』

バットマン『……親の愛が信じられないなら、私は諦める訳にはいかない』



753 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:56:35.25 ID:iNQLdeY80



ジャック『……信じて、いいの?』

バットマン『決して後悔はさせない』

ジャック『ほんとう? ほんとうに? 今度こそ、捨てられないの?』

バットマン『……マーサの名にかけて、誓おう』

ジャック『わたしたちは、まだ幸せになれるの?』

バットマン『お前が諦めないのならば、いつまででも』

ジャック『そう、なんだ……まだ……』


754 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:57:05.59 ID:iNQLdeY80


ジャック『……』

バットマン『……行くぞ、ジャック。手を取れ。あちらでもまだやるならば、相手はしよう』

ジャック『うん……』キュッ

バットマン『……』ギュォォォォォォォッ

ジャック『今度は、捨てないでね』

バットマン『……勿論だ』


ギュォォォォォォォォオオオオオオオ……


755 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:57:51.12 ID:iNQLdeY80



………………

フラン「……ウゥ!!」ダダダッ

アンデルセン「ナーサリー! 怪我は無いか!!」タタタ

ナーサリー「大丈夫よ、平気……だけど、二人が」

ジャック「……」

バットマン「……」

アンデルセン「でかしたぞ、チャンスだ。今の内にこの殺人鬼を放り出すとしよう」

ナーサリー「駄目よ! この黒猫さんとジャックは今戦ってるの、起こしちゃ駄目」

アンデルセン「おのれ……これだから! 低い可能性に賭けられるかと言うのだ、全く!」

ナーサリー「駄目なのっ!!」

アンデルセン「駄目なものか!!」

ナーサリー「ゼッタイダメ!!!」

フラン「ウゥ……」


756 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:58:18.47 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「この……」

ナーサリー「分からずやさんの……」


バットマン「ッッ!!!」ババッ、ズササァッ

ジャック「ッ!!」ダンッ、クルクル……スタッ


アンデルセン「!?」

ナーサリー「きゃっ!?」

フラン「!!」スッ


757 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:58:48.08 ID:iNQLdeY80


バットマン「……ハァッ、ハァッ……」ジリッ

ジャック「……」ジッ

アンデルセン「おい。どうなっている」

ナーサリー「……」

バットマン「……ジャック。答えを聞こう。これを続けるならば相手になる」

ジャック「……」

フラン「……」


758 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:59:29.70 ID:iNQLdeY80



ジャック「……勝ち目もうすいし、やめるよ」パッ


ナイフ「「」」カラン、カラン


バットマン「……そうか。なら、やめよう」スッ

ジャック「……」

バットマン「……」

ジャック「……っ、おかあさん……っ!」タッタッ、タンッ

バットマン「……」ガシッ

ジャック「おかあさん、おかあさん……おかあさん……」ギュゥゥゥゥゥッ……

バットマン「……大丈夫だ、ジャック」



アンデルセン「……ナーサリー、一部始終を見ていたんだろう。なんだこれは」

ナーサリー「さっぱり……だけど、素敵」

アンデルセン「ワケが分からない事を素敵で済ませるんじゃない!」

ナーサリー「もう! だから人魚姫はバッドエンドになっちゃったのよ!」

アンデルセン「現実をしっかりと……ああクソ、お前はリメイク版でも観ていろ!」


759 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:00:28.18 ID:iNQLdeY80

ダダッ、ガチャリ‼


ジキル「ブルース! 加勢に……え?」

バットマン「……大丈夫だ、博士。少し時間をくれ」

ジャック「……」ギュゥゥゥゥゥゥゥ……

ジキル「……え? どういう……え?」

アンデルセン「ようやくまともな感性の男が来たか! こっちへ来い、貴重なんだ!」

ジキル「……???」

フラン「ウゥ……」



760 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:01:01.76 ID:iNQLdeY80



………………


ジキル「……うん、結論から言うと……やっぱり解毒剤の精製が不可欠だ。二人の精神状態は安定しつつあるが、いつまた恐怖に飲まれるか」

バットマン「……やはりか。ドクター、聞いているか」

ドクター『あぁ、勿論。そちらでも準備しやすい成分の解毒剤を模索しているが……どうにもね。できるだけ簡易化した成分表を送る』ピッピッ

バットマン「……どうだ、ジキル博士。これを作るのは可能か?」

ジキル「……うーん……少し厳しいな。東南アジアとかアメリカ辺りにしか自生していない植物の成分が含まれてる」

バットマン「そうか……いや待て。キャプテンドレイク……大航海時代の名残だ。世界中の植物が植物園に集められているハズ。そこにも無いか?」

ジキル「ああ! そこならあるハズだ、きっと見つけられる!」

バットマン「良し。ならそこへ向かうとしよう」



761 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:01:43.87 ID:iNQLdeY80


………………

バットマン(……植物園は少し遠い。巡回する自動人形、ロボット達とはあまり遭遇したくない)

地図「」ペラ……

バットマン(……ロボットの武装は遠距離もカバーしてくる。直線の道は避け、曲がり角の多い道を採用しつつ……)

バットマン(……しかし、無理だ。最低でも何度か戦う事になる。消耗した状態で、B・P・M・Sの面子に出くわさないとも限らない)

バットマン(……)


762 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:02:12.60 ID:iNQLdeY80


モードレッド「おい。オレ達を連れて行かねえなんて言うんじゃねえだろうな」

バットマン「……モードレッド。回復したか」

モードレッド「恐怖なんざ、下らねえ。行けるぜ、オレは……ちょっと取り乱してただけだ」

バットマン「……」

モードレッド「連れて行け。戦力になる。今度こそ負けねえ」

バットマン「……当然、そうする。休む暇などないぞ」

モードレッド「上等だ……」


763 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:02:46.12 ID:iNQLdeY80


………………

バットマン「マシュ。行けるか」

マシュ「! マスター……はい。その、ご迷惑をおかけして……」

バットマン「大丈夫だ。行けるなら準備をしろ。まずは植物園へ向かう……長丁場になる」

マシュ「……はい。平気です」

バットマン「今からちょうど15分後、全員で出発だ。正面玄関で会おう」スタスタ

マシュ「……あの、マスター!」


764 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:03:13.09 ID:iNQLdeY80


バットマン「どうした」クル

マシュ「……」

バットマン「……どうした、マシュ」

マシュ「……あの、ベインさんに……手も足も出ずに……負けてしまって」

バットマン「……」

マシュ「……これから先、ずっと……戦って、勝っても、いつかあの人が立ちはだかるんじゃないかって」

バットマン「……」


765 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:03:45.99 ID:iNQLdeY80


バットマン「……きっと奴は、そうなるように全力を尽くすだろう。もう一度ベインと闘うその時は来る。だが、マシュ」

マシュ「……」

バットマン「我々は破滅の為に戦っているのではない。この戦いの先にあるのは破滅ではない。乗り越えるべき壁だ」

マシュ「……」

バットマン「それに、戦いだけが全てではない。作戦で勝てる事もある……悲観するな、奴は完璧ではないさ」

マシュ「……はい」

バットマン「15分後だ。正面玄関で会おう」スタスタ


766 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:04:12.03 ID:iNQLdeY80



バットマン(……きっと奴はもう一度現れる。ベインは)

バットマン(作戦で勝てる事もある。事実だ……だが、言っていない事実もある)

バットマン(戦略的視点ですら、ベインは私と拮抗、または上を行く)

バットマン(……果たしてこの恐怖は、恐怖ガスの影響によるものか。それとも……)


バットマン「……破滅が待つ、か」


767 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:04:40.48 ID:iNQLdeY80



(((お前を殺せば、きっと世界は終わるのだろう。悲しむべき事だ)))

(((だが、それがどうした)))

(((世界の破滅も良いだろう、見てやろう。所詮守るべくもない)))


バットマン「……」


バットマン(破滅に身をさらし、世界を守る。その価値は、あるか?)



768 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/02(土) 18:07:06.72 ID:iNQLdeY80
今日の更新はここまでです。マッドハッターの帽子の能力を拡大解釈してすみません……ジャービスファンの方、どうか怒らないで。

あと遅れてすみません。待って下さった方本当にありがとうございます
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 18:24:13.72 ID:KA56htl1O
舞ってたぞ
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 18:41:02.16 ID:YaWSfu6Go
乙乙
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 19:54:56.94 ID:IXECUp1vo
相変わらずのクオリティ
安心した
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 22:39:59.32 ID:I3T3MhJFo
毎度面白い乙乙
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/03(日) 10:25:00.69 ID:JPWn3ng4O
乙、こうしてみると4章は内面に問題がある面子が多かったんだな、まともなのはバベッジくらいか?
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 17:02:42.34 ID:xMzpBW62o


よくジャックのスケッチ残ってたな
視認してもすぐに忘れるのがジャックのスキルなのに
775 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/09(土) 21:12:41.36 ID:JHnriFtr0
(やっっっっべ完全に忘れてた)
776 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/09(土) 21:13:36.45 ID:JHnriFtr0
(何かしら後付けの理由を付けますので何卒……何卒……)
777 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:01:29.53 ID:aYEhFwXa0

「見てくれ、チャールズ」

 この少女(フラン)は最高傑作になる……そう言う男の笑顔は、屈託のないものであった。私にはその作品の素晴らしさが分からず、首をかしげるばかりであったが。

「ははは。これはイヴだよ、チャールズ。もう少しで、私は完璧だった人類を造り出せる」

「イヴ。最初の人類か……ヴィクター、そんな事が可能なのか?」

「勿論だとも! 私はこれで世界を変えてみせるぞ!」

 ヴィクターは笑っていた。私も笑みを浮かべ、激励の言葉を口にしたのだと思う。

 一人が世界を変えられる。その時の私達は、まだそう信じていた。


778 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:02:16.55 ID:aYEhFwXa0

「見るがいい、チャールズ」

 世界の真実は恐怖だ……そう呟く男の目は何も映していなかった。霧に飲まれて行く街の中、人々は怖気づき、殺気立ち、隣人や家族を手にかけた。

「これが真実だ、チャールズ。嘘のヴェールをはぎ取れば、世界は容易く崩れ去る」

「……では、やはりこれが真実だったのだな。スケアクロウ」

「勿論だとも。世界はとうに終わっていた」


 スケアクロウは無表情に言った。我も無感情に、諦めきって世界を見下ろしていたのだと思う。


 世界を変える事などできない。我々は、結論に達してしまっていた。


779 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:02:50.24 ID:aYEhFwXa0



 私は、星を目指していたのだと思う。

 蒸気機関はいつか天を超える。そして、あの輝きの元へ至れるのだと、そう信じていた。


 いつからか、蒸気が空を覆うようになっていった。我々では無理だ。仲間の研究者の誰かが、そう呟いたのを聞いた。地を走り、海を渡ろうとも、星へ至る事だけはできなかった。


 人々は星に目もくれない。たとえ一人で星に手を伸ばしても、世界は変わるハズもない。


 いつからだろうか。蒸気が空を覆うのを、言い訳じみて見つめていたのは。



780 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:03:27.60 ID:aYEhFwXa0



………………

チュゥン‼ ドッガァァァァァン‼

ロボットA「殲滅、シマス」ババババババババババ

ロボットB「……」ガシャン、ガシャン



バットマン「無事か、博士!」ズシャシャッ

ジキル「っ、ブルース。ああ、こちらは大丈夫だ!」チュウン!バチュン!!

バットマン「ジャック、出過ぎるな! マシュはアンデルセン、ナーサリーを庇いつつ防御を! フラン、モードレッド、まだ掛かるか!?」



フラン「ゥウ……!!」ブォンッ、ガッシャァァァァァ

モードレッド「うっせェぞ! 今やってんだろうが!!」ガシャァァァァ、ガッキャァァァァァァ‼

自動人形A「……」ウィー、ウィー

自動人形B「殺害」ウィー……ココココココ……


781 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:03:58.70 ID:aYEhFwXa0


バットマン(……ジリ貧。ジャックの働き次第……いや、賭けはしたくない。何処か、挟み撃ちにされにくい場所は……)


看板『UNDER GROUND』

バットマン「……!! 全員、地下鉄のホームへ飛び込むぞ! 急げ!」

モードレッド「あぁ!? 敵に背中を見せるってのか!?」

バットマン「戦略的撤退だ、大局を見失うな! マシュ、宝具を解放できるか!?」

マシュ「可能です!」

バットマン「今すぐ解放しろ! 全員、タイミングを合わせて撤退に動け!」

モードレッド「クッソが……!!」ギリッ


782 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:04:24.74 ID:aYEhFwXa0


マシュ「真名、偽装登録……行きます! 『ロード・カルデアス』!!」ゴォォォォォォォォォォォォォォッ‼

バットマン「今だ! 全員階段を降りろ! フランは待て!」

フラン「わかった!」


ナーサリー「お先にごめんなさいっ!」タタタッ

アンデルセン「手を引くな! 転げ落ちるわ!」ヨロロッ

ジャック「さきに行ってるね、おかあさん!」タタッ

モードレッド「チクショウが……」ギリィ、ダダッ


バットマン「……よし、マシュ! いつでも防御を解放して良いぞ!」

マシュ「……! ……!! 分かりました、もう少し……ふぅっ」ブゥン……ガギャギャギャギャギャギャ‼


783 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:05:17.04 ID:aYEhFwXa0


バットマン「フラン、今だ! 辺り一帯の霧に電撃を走らせろ!」

フラン「ウゥゥゥゥゥゥァァァアアアアアアアァァァア!!!」バチバチバチバチバチバチバチィィィィィ‼


霧「「「」」」バチチチチチチチチチチチチチィ‼


ロボット達「「「ズズズズズズズズズズググググググググ……」」」バチ、バチバチ……

自動人形達「「「ガガガガガピピピピピ……」」」ビリビリビリビリ、ビリ……


バットマン「今だ、マシュ、フラン! 地下鉄へ!」

マシュ「はい!」ダダッ

フラン「ウゥ……」バチ、バチバチ……フラッ

バットマン「……! 行くぞ」ガシッ、タタタ

フラン「ごめん……」ヨロヨロ


784 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:05:45.93 ID:aYEhFwXa0


ドクター『無事かい、ブルース!?』

バットマン「あぁ、無事だ。霧の魔力伝導率が極端に高いという発見のお陰だ……」コツコツ

ドクター『良かった……そこは何処だい、霧ほどじゃないけど電波状況が悪いな……』

バットマン「……地下鉄のホームへ降りている。これからもっと悪化するだろう。少し通信を切る」ピッピッ

フラン「……もう、大丈夫」

バットマン「そうか。いきなり無理難題を吹っ掛けて悪かった……ゆっくりでいいぞ」

フラン「ウゥ……」フリフリ


785 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:06:12.69 ID:aYEhFwXa0


バットマン「全員無事か」

マシュ「はい!」

ジャック「へいきだよ」

ナーサリー「居るわっ」

アンデルセン「……暗いな、ここは」

フラン「ウゥ」

モードレッド「……居るよ」


バットマン「……地下鉄への降下は予定とは違うが、まあいい。このまま、できるだけ植物園に近い駅に出るぞ」

全員「「「はい!(了解)」」」


786 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:06:39.07 ID:aYEhFwXa0


看板『→Next Sta.BAKER STREET』


ポスター『なんと言っても19世紀! 地下鉄(The tube)はロンドン市民のたしなみ』

ポスター『生活にお困り? なら、スコットランドヤードが解決します!』

ポスター『日々の癒し、新たな発見……王立キュー植物園は二駅先』


バットマン「……少し歩くようだ。どうだマシュ、追手の足音は聞こえるか?」

マシュ「……微かに聞こえます。ですが、まだ電撃から復旧し切っていない……混乱が生じているようです」

バットマン「良し……全員並びを崩すな。このままチューブの中を進む」


787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 23:07:01.01 ID:4SEcEX4BO
期待
788 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:07:10.29 ID:aYEhFwXa0


アンデルセン「本当に真っ暗だな、ここは……ランプを持ってきたのは正解だった」カチャ、ポウッ

ジキル「なんと言っても19世紀だ。ありがたいよ」コツコツ

フラン「ウゥ」コクコク


マシュ「……」コツコツ

モードレッド「……」ズンズン

バットマン「……」


バットマン(……闇は想像の余地を与える。マシュとモードレッドが恐怖に掻き立てられていなければ良いが)コツ、コツ……


789 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:07:48.83 ID:aYEhFwXa0


ナーサリー「まぁ……本当に管のようになっているのね! おもしろいわっ」

ジャック「おもしろーい!」

「おもしろーい!」
「……しろーい……」
「……ーい……」(反響)


ジャック「……!!」キラキラ

ナーサリー「まあ、響いて返って来るのね! まるで何人もジャックがいるみたいだわ!」キラキラ


アンデルセン「……お前達の能天気さは本当に……世界の危機だというのに、頭が痛くなってくるぞ」

モードレッド「……」イライラ


790 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:08:15.70 ID:aYEhFwXa0



アンデルセン「む、これは」

ジキル「……蒸気車両だ。機関車がチューブを塞いでる……どうする、ブルース」

バットマン「待ってくれ、少し……ドクター、聞こえるか」

ドクター『ザザ……聞こえる……シグナルは悪いけど……ザザザッ……』

バットマン「私達の目の前にある車両内部をスキャンできるか。何か罠が無いとも限らない」

ドクター『りょうか……ザザッ……ノイズ……酷いが、断片情報を……ザザザザ……み合わせた結果、そこは……ザザザザザザ……問題無い』

バットマン「……行くぞ。車両内部を通過する」ガチャリ、ギィィィ


791 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:09:22.00 ID:aYEhFwXa0


ジキル「……まだ石炭が生きている。つい最近まで稼働があったんだろうね……無茶をしてたものだ」コツ、コツ

ナーサリー「すごいわ、本当に本の中みたい……」テクテク

ジャック「見て見ておかあさん、ぶら下がれるよ!!」ブラァ

モードレッド「……チッ……」

バットマン「つり革で遊ぶのはやめr……怪我をするぞ、気を付けるように」スタスタ


バットマン(……蒸気機関車か。現代と近代の橋渡し……確かにここは歴史のターニングポイントだ)

バットマン(しかし、木製のチューブに蒸気機関車とは。確かに、開発されたばかりの地下鉄では火事が絶えなかったと聞くが……やはり、余計な危険を招く前に迅速な退出が望ましい)スタスタ


モードレッド「……着いたぜ。逆の端っこ、機関車両だ」

バットマン「出るぞ。あまり音を立てないように」スタ、スタ

マシュ「了解です」

バットマン「ジャック。分かったな」

ジャック「はーい」


792 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:10:01.45 ID:aYEhFwXa0


モードレッド「……」ズンズン

バットマン「待てモードレッド、あまり急ぐな」

モードレッド「ああ?」ピタッ

バットマン「ついて行けない者が出ると言ったんだ。スピードを合わせ、ゆっくりと進むぞ」

モードレッド「チッ……ノロいな、チクショウが」

バットマン「……」


793 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:10:46.02 ID:aYEhFwXa0

………………


コツ、コツ……


バットマン「……待て、一旦止まれ」

モードレッド「あぁ?」ガチャリ

バットマン「定期確認だ。マシュ、何も聞こえないか?」

マシュ「……いいえ、何も聞こえません」

バットマン「……良し、進行を再開する」

モードレッド「……んだよ、クソ……」ブツブツ……

バットマン「……苛立つな。慎重に行かなければ……」

モードレッド「うるせえ、分かってる」

バットマン「分かっていたらそんな言葉は……」

モードレッド「うるっせえってんだよ!!!」


794 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:11:19.77 ID:aYEhFwXa0


壁「」ワァン……ワァン……ワァン……


モードレッド「……」フーッ、フーッ

バットマン「……何を恐れている」

モードレッド「……誰が、何を、怖がってるだと?」チャキッ

バットマン「今のお前は異常だ。何を苛立っている。何を焦っている」

モードレッド「誰が!? 怖がってるだと!!?」

バットマン「傍目にも明らかだ。ベインに負けてから、お前は……」

モードレッド「テメェ!!」ガシッ


795 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:11:54.74 ID:aYEhFwXa0


マシュ「も、モードレッドさん!」ガシッ

モードレッド「離せ! テメェもういっぺん言ってみろ……オレが、なんだってんだ!!」バッ、グイッ

バットマン「お前の行動が士気を乱すものになると言っている。緩和剤は打ったハズだ、恐怖を抑えろ」

モードレッド「クソが……! テメェがオレに指図すんじゃねえ!」

バットマン「私が気に食わないだけか? ならば指揮はアンデルセン辺りに任せよう。それで満足か?」

モードレッド「おちょくってんのか……!!」ギリィ

バットマン「……そうではないのだろう。だから言っている、モードレッド。恐怖を抑えろ。飲まれるな」

モードレッド「テメェがオレの何を知ってんだ!!」バシィ


796 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:12:23.09 ID:aYEhFwXa0



ワァン……ワァン……ワァン……


バットマン「……」ジリッ

モードレッド「……」ギリッ

マシュ「……」

アンデルセン「……」

ナーサリー「……」


暗闇「」…………、……

ジャック「……?」


蒸気「」ズォォォォォォ……


797 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:12:58.36 ID:aYEhFwXa0



暗闇「」……、……、……

マシュ「……? これは」


蒸気「」ズォォォォォ……


アンデルセン「何だ。下らん諍いの次はボヤ騒ぎか?」

ナーサリー「待って。何か聞こえてこない?」

ジャック「……これ、足音だ。後ろから」

バットマン「しまった、チューブ内で声が反響して地上に届いたか……走るぞ」

マシュ「待って下さい、前方のホームへ降りて来る足音も……!」

バットマン「全速力だ! 挟み撃ちにされる前に全員目的地のパディントン駅を目指せ!」ダッ

モードレッド「クソ、チクショウが……!」ダンッ


798 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:13:42.65 ID:aYEhFwXa0



ガシャ、ガシャ、ガシャン……


ロボットC「発見、発見。全個体へ通達。チューブ内をパディントン方面へ向かって走る標的たちを発け……ガガピー!」バガガッ

アンデルセン「ふうっ! 少し遅かったか、恐らく地上のロボット部隊が地下鉄へ降りて来るぞ!」タタタタタタタ

バットマン「走れ、走れ!! 全員止まるな!! 行け!!」ダッダッダッダッダッ

マシュ「ま、マスター!」

バットマン「どうした!?」

マシュ「前方、暗闇の中に何か見えます!!」

バットマン「何……」



799 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:14:13.69 ID:aYEhFwXa0



 恐怖ガスの幻覚だ。そう返そうとしたブルースは、闇に目を凝らし、瞬時にそれを撤回した。

 ジャックも、ナーサリーも、アンデルセンも、モードレッドも止まる。ジキルはつられて『それ』に気づき、見上げるように首をのけぞらせる。


 それは暫時、身動きを止めていた。抵抗勢力が此処に来ると分かっていて、待ち伏せていたかのようでもあった。

 それが身じろぎした時、闇が波打ち、何倍にも大きく見えた。実際それは巨人じみて、その場に居る誰よりも大きく、質量も備えていた。関節部が駆動し、蒸気が噴き出す。

(怪物だ)

 恐怖が囁いた。それは伝播し、抵抗勢力の誰もが共有する感覚となった。

 ガシャリ。機械の鎧が軋み、蒸気のエネルギーが満ち満ちてゆく。闇を切り裂き、真紅のモノアイが点灯する。それはブルース達を睥睨し、敵意でもって輝いた。


「我が名は、チャールズ・バベッジ。蒸気王」

 蒸気が噴出する。立ち上がった怪物は、紳士然とした態度で名乗りをあげた。


800 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:14:50.34 ID:aYEhFwXa0



バベッジ「やはり生き延びたか。……いや、最初からベインは貴様らを殺す気などなかった。ならば当然と言うべきであろう」

モードレッド「……!」ギリィ

バットマン「どういう事だ。何故ベインは私達を生かした」

バベッジ「……問いに価値無し。我は貴様らを止めるためにこそ此処に居る。植物園で解毒剤を作らせる訳には行かない」

フラン「どうして」

バベッジ「……ヴィクターの娘か。何故ならば、この世界に価値が無いからである」

フラン「……」


801 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:15:40.70 ID:aYEhFwXa0



バベッジ「貴様らが歩む世界は夢を切り捨てたそれである。悪が真実となり、希望が偽善となる。そんなものを認めるわけにはいかない」

マシュ「そんな事は……」

バベッジ「数列と同じなのだ、年若き乙女よ。もはや予測はついている。勇者はおらず、恐怖がのさばる。人々は目を伏せ、星を目指さず死んで行く。そんな世界に、どれほどの価値がある?」

フラン「……」

バベッジ「だからこそだ。恐怖が真実になってしまったのならば、それを変える。世界にとっての悪であろうと、我々にとっての正義である」ガシャリ



ロボットD「……」ガシャリ、ガシャリ

ロボットE「……」ガシャリ、ガシャリ

ロボット達「「「……」」」ガシャン、ガシャン、ガシャン


バットマン(……挟撃。圧倒的不利。チューブからすぐに脱出しなかったのは悪手だったか)


マシュ「囲まれました、マスター……指示を」

バットマン「全員構えろ。モードレッド、ジャック、フランはバベッジを。アンデルセン、ジキル、マシュ、ナーサリーはロボット達を片付けるんだ」


全員「「「……」」」ジリッ


モードレッド「……ウォラァァァァァァッ!!!」ブォンッ

バベッジ「フン!!」ズォッ


ガッギャァァァァァァァァァァァ‼‼



802 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:16:33.50 ID:aYEhFwXa0


ロボットD「標的捕捉、捕捉、捕捉」ババババババババババ……

ロボットE「捕捉、捕捉、捕捉」ババババババババババ……

マシュ「くぅっ!?」ガギャギャギャギャギャギャ‼

バットマン「耐えてくれ、マシュ……! アンデルセン、ナーサリー! 牽制しろ! ジキル、怯んだ個体を共に仕留めるぞ!」バッ

アンデルセン「簡単に言ってくれるッ!」ギュギュォッ

ナーサリー「ええ、いくわよ!!」ギュォォォッ‼


光弾「「「」」」ゴォォォォッ、ドガァァァァァァァ‼


ロボットD「!」ヨロッ

ロボットE「!!」グラリ

ジキル「そらっ!」ガシ、ズガガッ

ロボットD「グギギ……」ドッサァァァン

バットマン「……ここだ!」バシ……ゴギャリ

ロボットE「捕捉捕縺ョ縺薙」バチバチバチ……ギュギギギギギ……


803 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:17:11.16 ID:aYEhFwXa0


ジャック「やあっ!」ヒュヒュヒュンッ

バベッジ「……この鉄の鎧には、効かぬ!」ガギャギャギャ、ブォンッ

ジャック「っ」タンッ、クルンッ

モードレッド「……ならオレはどうだ、機械ヤロウ!!!」ギュォッ

バベッジ「軽い! 腰の入らぬ剣戟など!」ブォンッ、ゴォッシャァァァァァァァァ‼

モードレッド「ぐっあ……!?」ゴォッ、ドガァァァァァ……


モードレッド(……クソ、手が震えやがる……!)プルプル……


バベッジ「やはり、不可能なのだ。人は内なる恐怖には勝てん」ブシュー……


バチ、バチチチチチチチチ……


バベッジ「むっ……」

フラン「ゥゥー……!!!」バチチチチチチチチィ……‼

バベッジ「……ヴィクターの娘。立ちはだかるか」


804 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:17:46.76 ID:aYEhFwXa0


バベッジ「見たはずだ。勇猛な騎士でさえ、自らの恐怖に押し負けた。生まれたばかりのお前は尚更であろう」

フラン「……こわく、ない!」

バベッジ「意地を張るのはよせ。フラン、お前は我が友の作品。壊したくない形見なのだ」

フラン「私はモノじゃない!!」

バベッジ「……謝罪する。だが、結果は変わるまい」ブシュー、ガチャリ……

フラン「変える!!」カチャッ

バベッジ「ああ、無知より尚愚かである。事実を知ってしかし足掻くその熱は、若さである。……よかろう、一撃で沈めてくれる!!」ブォンッ


805 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:18:24.35 ID:aYEhFwXa0


フラン「っ!!」ブォンッ、ガギャァァァァァァァァ‼

バベッジ「……やはり非力。我が蒸気機関のパワーの前では、なべて赤子の手を捻るが如し」ブシュー、ギリギリギリギリギリ……

フラン「ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」ギリギリギリギリ、ジリジリジリッ

バベッジ「……フン!!」ブォンッ、ドゴォッ

フラン「うぁっ!?」ゴシャシャシャ、ドガァァァァァ‼

モードレッド「っ、フラン!!」

バベッジ「次は貴様である」ブシュー……


806 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:18:56.40 ID:aYEhFwXa0



ジャック「させないよっ!」タタッ、ギュォッ

バベッジ「貴様の刃。通らぬと言ったハズだ」ガギャァァァァァ、ブォンッ

ジャック「っく……」クルクル、スタッ

バベッジ「千日手も良いが、我は早々に決着を望む」ガシッ、グォッ

ジャック「あっ!?」ブラァン

バベッジ「……ぬぅぅぅぅぅん!!」ブンッ、ゴッシャァァァァァァァァァアアア‼

ジャック「あぐっ……」ガシャァァァァァァ……


807 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:19:28.76 ID:aYEhFwXa0


モードレッド「テメェ……!」プル、プル……


モードレッド(……駄目だ、脚が、すくんで、動かねえ……)


(((無価値)))


モードレッド(やめろ。オレは無価値じゃねえ)


(((所詮はアルトリア王の影)))


モードレッド(クソ!! なんでいつもこうなんだ! オレはただ……)


(((お前を騎士とは認めまい)))


モードレッド(……ただ、あの人を……)



ブシューッ、ガチャン、ガチャン……ブシューッ……

バベッジ「トドメである」ガチャン、ガチャン……


808 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:20:07.54 ID:aYEhFwXa0




バットマン(……不味い、アレではモードレッド達が負ける!)ドクン‼


(((ブルース、皆を頼んだ!)))


バットマン(……)ドクン……


バットマン(前方にはバベッジ。巨体。蒸気で稼働する鎧。圧倒的なパワー。
後方にはロボットの群れ。重武装。長距離をカバーする銃。
こちらの残存勢力、マシュ、アンデルセン、ジキル。モードレッドは攻撃を受け、移動不可。
チューブ内。ならば結論はひとつ)


バットマン「……マシュ、バベッジを抑えろ。アンデルセン、ナーサリー、ロボの群れを退けろ。ジキル、行くぞ」

ジキル「え……?」


809 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:21:05.56 ID:aYEhFwXa0


バットマン「行くぞ。これしかない。頼めるな、マシュ」

マシュ「……はい。大丈夫です、マスター。行って下さい」ガチャリ

アンデルセン「なんだ。死ねという命令か」

バットマン「……それはお前達次第だ」

ジキル「ブルース、どういう事だ!? 残しては行けない!」

バットマン「だがこのままでは勝てもしない」



810 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:21:33.90 ID:aYEhFwXa0



バベッジ「逃走。実に人間らしい選択である」ブシュー、ガシャン

マシュ「あなたの相手は私です!」ダダッ、ガシャリ

バベッジ「良かろう。せめて苦しませまい」


アンデルセン「行くと決めたなら早く行け! そう長く活路は開いておいてやれん!」ギュギュギュオッ‼

ナーサリー「心配ご無用よ、私達は強いもの!」ギュォォォッ‼

光弾「「「」」」ゴォォオォッ‼


ロボットE「ガガガッ……」ヨロッ

ロボットF「ギギ……」


バットマン「行くぞ、ジキル博士」

ジキル「無理だ! 皆を置いて行ける訳が……」

バットマン「議論する時間はない。……すまない、アンデルセン、ナーサリー、マシュ」

アンデルセン「フン……早く行け!」

バットマン「行くぞ」ガシッ、ダッダッダッ

ジキル「離してくれブルース!! 待ってくれ……待ってくれ!!」ズル、ズルズル、ヨロヨロ


811 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:22:01.61 ID:aYEhFwXa0



バベッジ「哀れ也。主人が去って尚、勝てぬ戦いに身を投じる貴様は……どこにそんな忠義を持つ?」

マシュ「勝てない戦いとは思っていません! 必ず、勝ちます!!」ガシャリ

バベッジ「ならばその希望を持ったまま、力尽きるが良い。後悔など持たぬうちに、片付ける」ブシュー……


モードレッド(……、……)プル……



812 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:22:30.96 ID:aYEhFwXa0



モードレッド(……ハッ、そりゃあ、そうだ。勝てるワケがねえ。この物量差で、この実力差。オレが万全の時だって、勝てたか怪しいもんだ)


バベッジ「そこだ!」グォンッ、ブン‼

マシュ「きゃっ!?」ガガガッ、ドサァッ


モードレッド(誰だって逃げるさ。ブルースのヤロウだって、オレだって……オレだって、生身の時なら、ケツまくって逃げ出してただろうよ……)プル、プル……

モードレッド(……そうだ。そうして、オレは……また、自分の価値を消してしまう)


バベッジ「フン!」ギャギャァ、ドッサァァァァァァァン‼

マシュ「うっ……く……!!!」ギリギリギリギリギリギリ

バベッジ「無益だ。楽になるがいい」ギリギリギリギリ……ブシュー……

マシュ「……!!」ギリギリギリギリ……‼


モードレッド(ああ、クソ)プル、プル……

モードレッド(怖えな、チクショウめ)ギリィ……


ブゥゥゥゥゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオ‼‼‼



813 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:23:22.77 ID:aYEhFwXa0



ワァン……ワァン……


モードレッド「……は?」

マシュ「!! アンデルセンさん!」ギャリィ、ババッ

アンデルセン「ああ、分かっているさ! ナーサリー、ジャックを避難スペースへ!」

ナーサリー「分かってるわっ!」ガシ、ズルズル

アンデルセン「俺はフランか! ええい、重たいな……!!」グイグイ


バベッジ「……? 何をするつもりだ」

マシュ「まだ逃がしません!!」ブォンッ‼

バベッジ「くっ……」ガギィ‼



トンネル内「」……‼ ……タン‼ ……タンッ‼ ガタンッ‼


814 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:24:45.45 ID:aYEhFwXa0



ブゥゥゥゥゥオオオオオオオオオオーーーー‼ ガタンガタン‼ ガタンガタン‼ ガタンガタン‼


バベッジ「!! まさか、貴様!!」ギャリィ‼

マシュ「そのまさかです! モードレッドさんっ、退避スペースへ……失礼します!!」バシッ、ダダッ

モードレッド「なんだ、何を……アレ、は」


蒸気機関車「」ガタンガタン‼ ガタンガタン‼ ガタンガタン‼


ロボット達「「「」」」バギャッ、ドギャギャギャギャギャ‼


815 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:25:17.83 ID:aYEhFwXa0



バットマン「もっと石炭を入れろ! 出力を最大に保つんだ!!」ガシャ、ガシャ

ジキル「やってる、よ、これしんどいな!!!」ガシャ、ガシャ


バットマン(……直線上。バベッジ、その巨体は避難スペースには潜り込めまい。そして、同じ蒸気機関ならば……負けは、ない!)



蒸気機関車「」ガタンガタン‼ ガタンガタン‼ ブゥゥゥゥゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオ‼


バベッジ「おのれ、貴様!!! 蒸気圧、最大……!!」ブシューッ、ブシューッ‼


バベッジ(間に合わない……!)


バットマン「降りろジキル!!」バッ

ジキル「ふえっ!?」ゴォッ

バベッジ「っ」グォォッ

ゴッシャァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアガガガガガガガガガガガガガガガ……ドガァァァァァァァァァァァァァァ‼



816 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:26:15.91 ID:aYEhFwXa0



………………

……ゴゴゴゴゴゴ、ドサァァァァ……


ズリ、ズリ……ズリ、ズリ……


バットマン「……くっ……ぐっ」ズリ、ズリ


バットマン(間一髪で脱出……とは、いかなかったか。衝撃で全身の傷が開こうとしている)


パチ、パチ……ボボゥッ、バチバチ……ゴゴゴゴゴゴゥッ


バットマン(……やはり、火事は免れんか……早く脱出せねば)ズリ、ズリ


ゴゴゴゴゴッ、ガラガラガラ……

バベッジ「……きさ、ま」ガシャリ、ガシャリ……

バットマン「しぶとい奴め……」


817 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:27:33.91 ID:aYEhFwXa0


バベッジ「そんかい、りつ、9、7%……おの、れ。我が理想は、終わり、を、告げようと、している」ブシュ、ブシュッ、ブシューッ

バットマン「……理想だと。諦めきった世界へ進むのが、お前の理想だったとでもいうのか」

バベッジ「世界に、守るべきものなど、なくなって、しまったのだ。悪と、死が、入り乱れる、あの世界には、何も」ギュ、ギュギュギュギュォォォォォォォォーン……グググググッ

バットマン「……」

バベッジ「もはや、損壊は、止まず。貴、様を、道連れに、する……!」ブォンッ

「ウゥッ!!」バッ

バベッジ「……!!」ピタッ


818 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:28:23.84 ID:aYEhFwXa0



パチ、パチパチ。ゴウッ、ゴゴゴゥ……


フラン「……」ジッ……

バベッジ「……フラン……」

フラン「……」

バベッジ「……ああ、そうか。止まってしまったか」シュウシュウ……

フラン「……ウゥ……」

バベッジ「……口惜しいな。やはり、世界は諦めた者へは冷たいのだ」シュウシュウ……

バベッジ「口惜しいな、ヴィクター。口惜しいな、スケアクロウ」

バベッジ「……さらば、我が理想よ」シュゥゥゥゥゥゥゥ……

フラン「……」


819 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:29:51.45 ID:aYEhFwXa0



バットマン「……二度も助けられたな、フラン……くっ」ググッ、ムクリ

フラン「無理、駄目」スッ

バットマン「いいや、平気だ……他の者は?」

フラン「今、列車の残骸を、退かしてるところ」

バットマン「そうか……いいか、すぐに出なければ。火災で酸素が無くなって動けなくなる……行くぞ」スタスタ……ヨロッ

フラン「!!」ガシッ

バットマン「すまない、大丈夫だ……」


バットマン(……いかん、体も限界が近い……)フラフラ



820 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:30:23.26 ID:aYEhFwXa0



モードレッド「ぐんぬぬぬぬぬ……!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

ジキル「うぅぅぅぅぅ……」グググググググッ

列車「」ギゴゴゴゴゴゴ……ゴロォ


ジキル「よし、やった!」

モードレッド「おら、出ろ!」

マシュ「あ、有難うございます!」

ジャック「ありがとう!」

アンデルセン「おい何だ!? 今度は本当に火事か!?」

ナーサリー「大変……早くここから出なきゃ」


821 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:30:54.09 ID:aYEhFwXa0


バットマン「全員無事か」

マシュ「マスター! はい、無事です!」

ナーサリー「無事よ。……あなたこそ、大変みたいだけど」

バットマン「平気だ。全員今すぐここから出るぞ、チューブ内は危険だ」

ジャック「さんせい!」

バットマン「よし……パディントン駅は、すぐそこに……」グラッ


グラグラグラッ、ゴゴゴゴゴゴゴ……‼


モードレッド「っ、あぶねえ!」ダッ

バットマン「っ!?」ドサッ

ジキル「うわっぷ!?」ドサァッ


822 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:31:21.05 ID:aYEhFwXa0



炎上する瓦礫「」ガラガラガラ……ゴゥッ、ゴゴゥッ

バットマン「なっ……しまった、分断されたか。マシュ! 聞こえるか!」


マシュ「は、はい! 聞こえます!」


バットマン「パディントンに近いのはそちらだ、そこからキュー植物園へ向かって安全を確保してくれ! こちらは一旦別の駅から退出を試みる! 後で合流しよう!」


マシュ「了解しました! どうかご無事で、マスター!」


バットマン「ああ! ……急いで出るぞ、危険だ」

モードレッド「おう」

ジキル「ああ。……行くとしよう」



823 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:32:01.64 ID:aYEhFwXa0


タタタタタタ……


バットマン「……っく……」ダッダッダッ……フラッ

モードレッド「っ、おい。シャキっとしろ」ガシッ

バットマン「すまない、大丈夫だ……平気だ。行ける」

モードレッド「……いいや、無理だな。オレが抱えてやる」

ジキル「そうだね。僕には重すぎる」

モードレッド「ハ、正直な奴……」

バットマン「……すまない」

モードレッド「……」ガシッ、グイッ


824 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:32:51.54 ID:aYEhFwXa0



ゴゴゥッ、ゴゴゴゴ……

ダッダッダッ


モードレッド「……オレ、お前の事、もっと根性無しだと思ってたよ。何かあったらすぐ戦場から逃げ出す奴だと思ってた」ダッダッダッ

バットマン「……」ユッサユッサユッサ

モードレッド「だから、まあ、なんだ。……悪かったな、いろいろ。突っかかって」

バットマン「……」

モードレッド「……何か言えよ」

バットマン「……いや、気にしていない」

モードレッド「嘘つけ」

バットマン「気にしていない」

モードレッド「素直じゃねえ奴!!!」



ジキル(……なんでお姫様抱っこなんだ……???)タッタッタッタッ



825 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:33:27.49 ID:aYEhFwXa0


モードレッド「見えたぜ。出口だ」

ジキル「少し、どこかの家屋で休みを入れたい。ブルースの回復薬も作ってやらないと」

バットマン「そうだな……地上に出たら、一旦降ろしてくれ。慎重に行動しなければ」

モードレッド「なんにせよ、植物園には行かねえと駄目なんだ。準備は整えねえとな……おう、階段のぼるから揺れるぞ」

バットマン「それは、あまりにも今更な警告だと思われる……」

モードレッド「何だと!?」

ジキル「ちょ、ちょっと声を抑えめにだな……」



看板『Sta.BAKER STREET』


ゴゥッ。ゴゴゴゴゴゥッ、パチパチ……


826 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/14(木) 23:34:35.67 ID:aYEhFwXa0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/06/15(金) 05:54:41.70 ID:XHKnHsnO0
828 : ◆GmHi5G5d.E :2018/06/15(金) 08:21:08.29 ID:RHsC5WIP0
すみません、808ですが

バットマン(こちらの残存勢力、マシュ、アンデルセン、ジキル)

バットマン(こちらの残存勢力、マシュ、アンデルセン、ナーサリー、ジキル)

に脳内補完を願います。
829 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/15(金) 08:22:06.14 ID:RHsC5WIP0
あげちまったすみません!!
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 08:27:42.14 ID:QkU85nMPO
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 16:02:50.26 ID:Li9ZkSZA0
乙乙

お姫様抱っこはさすがに草
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 09:34:40.67 ID:+rPrAdFUo

いや素晴らしい
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/16(土) 10:35:00.21 ID:73gPIxdO0
乙、相変わらず面白い
834 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/07/05(木) 11:42:34.39 ID:kOVjGS6K0
すみません、疲労を言い訳にはしたくないんですが結構描写の抜けがあります……

図書館での対ジャック戦で突如バッツが本棚を倒す指示を出していますが、これは「一定の方向の遮蔽物を破壊し、ジャックの隠れる場所をある程度予測可能にする」といった戦略も当初書く予定でした。ちょっと描写のし直しを試みます。
835 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/07/05(木) 11:49:27.63 ID:kOVjGS6K0
726の書き直しです。


………………


ジャック(……あっちにわたしたちは居ないのに、本棚を倒してる……足音も聞こえなくなってこっちには好都合だけど)


ズグググググググググ……ドッシャァァァァァァン……


ジャック(自暴自棄、なのかな。ヤケになっちゃったんだね、かわいそう……すぐに片付けてあげなきゃ)タタ、タタタタ……



バットマン(当然そう考えるだろう。だが派手な動きに気を取られ、私を見失うようでは甘い)プシューッ、プシュー……カチャカチャ、ピンッ

バットマン(隠れる場所も制限される。つまり、この後ヤツが来るのは……)カチャリ……
836 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/07/05(木) 11:50:46.55 ID:kOVjGS6K0
以上とさせていただきます。後からの手直しを何度も見せてしまいお恥ずかしい。続きも今書かせていただいています。
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/06(金) 14:42:23.74 ID:EQ/FY16A0
いいのよ……面白いもの読ませてもらってるのだからネ……
本編続きも期待して待ってる!
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/06(金) 14:59:14.52 ID:ky6iyHeWo
探偵と策略はバットマンらしくて凄い格好いい
すき
839 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:13:37.89 ID:2zVNU7dP0


………………

ホムンクルスA「……」ドシ、ドシ

ホムンクルスB「……」ブォンッ

モードレッド「クソ!! ロボットの親玉を片付けたと思ったら今度はこれかよ!!」ガギィ‼

ジキル「物量が……!!」シュバッ

モードレッド「チクショウ、おいブルース! 一網打尽にする作戦考えろ!!」

バットマン「何処かで屋内へ退避するぞ、無用な戦闘だ」

モードレッド「ああ!? 腰抜けか!!」

バットマン「大声を出すな、もっと呼び寄せるぞ。後退開始」


840 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:14:27.57 ID:2zVNU7dP0


ジキル「ええいっ」ババッ


ジキル(駄目だ、いつものような力が出せない……!)


バットマン(……?)


バットマン「博士。後退するぞ、怪我は無いか」

ジキル「あ、ああ。大丈夫だよ」

バットマン「……行くぞ」


841 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:14:56.28 ID:2zVNU7dP0


ジキル(生物を切ったら……)

ジキル(『殺す』という行為を認識してしまったら……)


ハイド(だよなぁ、気持ちイイもんなあ?)

ジキル(違う……)

ハイド(おっと、俺を否定するのか? 暴力の快感を?)

ジキル(僕はジキルだ。しっかりしろ)

ハイド(そうとも。俺はお前だ)

ジキル(違う!)

ハイド(本当に思ってるのか? 俺とお前は違うなんて)


ジキル「黙れ!! ……あっ」

モードレッド「……?」

バットマン「博士?」


842 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:15:27.54 ID:2zVNU7dP0



ジキル「い、いや……なんでも、ないんだ」

バットマン「……恐怖ガスの影響か。手早く建物を見つけて休もう」

モードレッド「なんだよ、早く言えよ」

ジキル「……そうだな。ごめん」

モードレッド「ったく、これだから……」

バットマン「謝る事ではない」

モードレッド「オレの台詞を遮るんじゃねー!!」


843 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:16:07.11 ID:2zVNU7dP0


バットマン(しかし、手ごろな建物が少ない……)


バットマン「……駄目だ、こちらの建物も返答はない」ドンドン

モードレッド「なー、いつまでやるんだ……」ドンドンドンドン

バットマン「住人がこたえるまでだ」ドンドン


バットマン(……しかし、非常時なのは住人も同じか。こんな時に、誰かを助けようなどという考えの方が貴重……)ドンドン


ガチャリ

ドア「」ギィィィィィ……



バットマン「……何?」

バットマン(ひとりでに開いた?)


844 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:16:38.00 ID:2zVNU7dP0


モードレッド「おっ、開いたな。じゃあ入ろうぜ」

バットマン「待て、罠かもしれない。ドクター、聞こえるか。内部のスキャンを……」

ドクター『もう済ませてあるよ。罠の類は見受けられない』

バットマン「成程……モードレッド、内部の物音は」

モードレッド「んー、あー……何も聞こえねえ。誰も居ねえと思うぜ」

バットマン「入るぞ。ジキル博士、私とモードレッドの間に」

ジキル「了解」

モードレッド「うし、行くぞ」ガチャッ


ドア「」バタンッ


表札『221B』


845 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:17:03.56 ID:2zVNU7dP0


………………


スタ……スタ……

バットマン(……本当に誰一人居ない。とても静かだ)


ギシィッ‼

ジキル「うっ!?」ビクッ

モードレッド「あ、わりぃ。気ィ付けろよ、階段のここ軋むぜ」ギシ

バットマン「……」



バットマン(家の何処かで誰かが身じろぎする気配すらない。本当に無人のようだ……)


846 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:17:30.34 ID:2zVNU7dP0



ジキル「……良かった、二階には十分なスペースがあるね。よし、回復薬と緩和剤の調合を開始する」

バットマン「頼んだ。こちらはマシュ達との連絡を試みる」

モードレッド「なんでも良いけど早くしろよ」

バットマン「お前は引き続き警戒を頼む」

モードレッド「はいはい……」


847 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:18:03.90 ID:2zVNU7dP0



ジキル「……」チョポポポポ……キリン、カチャカチャ


ジキル(恐怖ガス……僕の不調は本当にそれだけだろうか。もっと根本的な何かに根ざしていないだろうか)プル……

ジキル(僕は何を怖がっているんだ。本当に恐ろしいのは一体何なんだ)

ジキル(ハイド? 殺人? それとも……)


ジキル「……」グググ……


ジキル(……人を、殺せない事か?)


848 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:18:42.20 ID:2zVNU7dP0


バットマン「もしもし、マシュ。聞こえるか」ピッピッ


マシュ『あっ、マスター! ご無事でしたか!』

アンデルセン『いちいち声がデカいぞ盾女!!』

ナーサリー『あなたの方が大きな声よ、アンデルセン!!!』

フラン『ウゥ、ウ……』

ジャック『みんな五月蠅い、おかあさんの声が聞こえないよ』


バットマン「……全員無事なのは分かった。今どの辺りだ」


849 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:19:09.59 ID:2zVNU7dP0


マシュ『あと数ブロック進めば植物園に到着します。先程から敵の様相が変わって……ホムンクルスが多く襲ってきています』

バットマン「そうか。こちらも同じような状況だった、今は家屋に間借りして回復薬と緩和剤の作成中だ。良いか、少しでも無理だと感じたなら即座に逃走するんだ」

マシュ『はい、了解しました! ……え? アンデルセンさん? 代わりたいんですか?』

バットマン「……?」

マシュ『え、えーっと……マスター。アンデルセンさんが少し話したいそうです』

バットマン「分かった。代わってくれ」


850 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:19:58.55 ID:2zVNU7dP0



アンデルセン『もしもし、ブルースか。聞こえるか』

バットマン「もしもし、アンデルセン。何かあったか」

アンデルセン『気付いているとは思うが、戦力不足だ。分断された今、こちらの面子では火力不足に陥りやすい』

バットマン「……」

アンデルセン『加えて、バベッジの待ち伏せだ。奴らは植物園を守る気で居たらしい。あの機械紳士が敗れた今、更なる戦力を追加してくるだろう。このホムンクルス達はその前兆だ』

バットマン「……ああ、気付いている。だが進んでくれ。お前がブレインの役割を果たせば、不足の無い集団にはなれる」

アンデルセン『……お前、機械のようだと言われた事は?』

バットマン「回復すればすぐに追いつく、植物園で会おう。通信を切るぞ」

アンデルセン『ああ待て。ジャックが声を聴きたいと……』

バットマン「会ってから話すと伝えてくれ」ピッピッ


851 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:20:24.49 ID:2zVNU7dP0



バットマン「ジキル博士、回復薬と緩和剤は……」

ジキル「……」

バットマン「……ジキル博士?」

ジキル「……え? あ、ブルース。大丈夫、回復薬は出来上がったよ。服用してくれ。緩和剤はもう少しかかる」スッ

バットマン「ああ……博士、疲れているのなら」

ジキル「いいや、大丈夫。……大丈夫だ」


852 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:20:51.55 ID:2zVNU7dP0


モードレッド「らしくねーな、調合中に上の空なんてよ。なんかあったのか?」

ジキル「い、いや。何も」

モードレッド「ホントかぁ?」

ジキル「な、なんでもないって……」

バットマン「調合が終わってからにしてやれ、モードレッ……」



ギシィ‼

ジキル「!!」

バットマン「……」チラッ

モードレッド「……」コクッ


853 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:21:21.32 ID:2zVNU7dP0



バットマン(階段が軋んだ。誰かが上がってきている)


バットマン「……」スッ

モードレッド「……」カチャリ

バットマン「……」


バットマン(回復薬を服用し、もしもの時に備える……)ゴク、ゴクリ……



ガサガサ、ゴソゴソ……

「フォウ、フォーウ!」

???「こら、暴れるな。全く、街中に面倒の種がたくさん転がってる……」

「フォウ、キュ、フォーウ!!」

???「……おや、参ったな。扉が開きっぱなしじゃないか、誰がこんな……な、だ、誰だ!?」

バットマン「……?」


バットマン(……一般人? ……それに、)

バットマン「フォウ?」

フォウ「フォウ、フォーウ!」タタッ



854 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:21:52.73 ID:2zVNU7dP0


バットマン「失礼した、ミスター。我々は決して怪しいものではない……こちらへ来い、フォウ」

フォウ「……」テシテシ

???「怪しいものではない? よく言えたな、キミ、その恰好で!」

バットマン「……」

モードレッド「ははは、言われてやがる。ザマァねえでやんの」

ジキル「申し訳ありません、お邪魔でしたらすぐに失礼させていただきます」

???「いや……いや、まず君達は何者だ? どうやら、その獣とも知り合いのようだし」

フォウ「フォウ?」パタパタ

ジキル「……」

モードレッド「……」

バットマン「……」


855 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:22:21.77 ID:2zVNU7dP0


???「いいか、こっちはこのふざけた霧の原因を調べるためにずっと駆けずり回ってたんだ。そこへこんな怪しい集団が現れたら、逃がさないのが普通だ」

バットマン「……ミスター、虚勢を張るものではない」

???「そうかな? 僕は元軍人だ。銃の扱いだって、慣れてるさ」カチャリ

バットマン「……」


バットマン(……少しでも情報が必要か)


バットマン「……分かった、話そう」

ジキル「ブルース」

バットマン「勝手に間借りしていたのはこちらだ。それに、彼は当事者だ……知る権利がある」

???「賢明だ。どうぞ話して」



856 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:23:00.98 ID:2zVNU7dP0



………………

???「れ、レイシフトに……えー、特異点、それに……なんだ、カルデア?」

バットマン「そうだ。信じたか?」

???「……参ったな。僕の同僚が似たような事を言ってた……『今日は未来の分岐点だ』と。口からの出任せなら良かったが、そうは見えないし」

バットマン「では、こちらから出せる情報は以上だ。私はブルース。こっちがモードレッド、ジキル」

モードレッド「おう、このモードレッドに武器を向けるたぁいい度胸……」

ジキル「ヘンリー・ジキルです。よろしく」

モードレッド「まだオレが!! 喋ってるっつーの!!」

???「ああ、こっちこそ失礼。僕はジョン・ワトソン、軍医をやってて……なんというか、今は事件をまとめてるところかな。ああ、本業は医者だ」

バットマン「ジョン……ジョン・ワトソン? シャーロック・ホームズの、あのワトソン医師か?」


857 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:23:37.12 ID:2zVNU7dP0


ワトソン「ああ、そうだ。キミも僕の小説のファンかい?」

バットマン「……」


バットマン(ジョン・ワトソン。コナン・ドイルの推理小説、『シャーロック・ホームズ』の語り手となる人物だ……確かに、物語の中では彼が全ての記録をつけていた設定になっていたが)


ワトソン「なら、前回の事件簿も読んでくれただろうね? 霧の中で、殺人鬼との追いかけっこ! なんと犯人は小さな子供だった……スリル満点、こんな事件の只中じゃなければ大うけだったハズさ」


バットマン(ジャックの事か……彼女が味方だとは言わない方が良さそうだ)


ワトソン「私はこれでも見たものを記録する能力に長けていてね、スコットランドヤードにもスケッチを送って大変貢献した……ええと、ここにも残っているハズだからキミ達の警戒のためにも一枚……」

バットマン「いや、良い。それよりもドクター、彼は……『シャーロック・ホームズ』は今、何処に居る?」


858 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:24:20.23 ID:2zVNU7dP0


ワトソン「なんだ、やっぱり君達も依頼人だったのか! 残念だが、今彼はここには居ない。ロンドン中の資料を集めたり、面倒の種を摘んだりで大忙しだ」

バットマン「資料を?」

ワトソン「ああ、いや、この霧の原因を調査するためにね。彼が言う事には、『この霧がひとつの事件で完結するハズがない。背後にもっと大きな陰謀があるハズだ』と。ははは、毎度常人には及ばぬ思考を働かせる男なんだ」

バットマン「……そうか」

モードレッド「ハッ、変人ってヤツか」

ワトソン「うむ、我が友ながら否定できないな。……ああいや、待て。そういえば、妙な連中に会ったらこれを渡せと言われていたな」ゴソゴソ……スッ

バットマン「……? これは?」パシッ

ワトソン「さあ。何やらびっしりと書かれているが、私には何のことやらサッパリだ。だけど、必ず渡せと」


859 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:24:47.92 ID:2zVNU7dP0



紙切れ『潜入して盗み聞いたところ、やはり彼は既に死んでいる。では奴はどのようにして十の指輪を操るのか?
アトラス院にて待つ S・H』

バットマン「……」

ジキル「潜入して、……なに?」

モードレッド「縦読みだ。知ってるぞ、そうなんだろ?」


バットマン(奴。彼。十の指輪)


バットマン「……成程、理解した。燃やして構わないな」

ワトソン「え? あ、ああ……構わないが、理解できたのか?」

バットマン「キミ達の持っていないピースを丁度私が持っていた。それだけだ」ボゥッ


860 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:25:39.28 ID:2zVNU7dP0



モードレッド「おい、どういう意味だ? これが分かったのか?」

バットマン「ああ、分かった。尤も、彼も分かっていて敢えて私に問うたのだろう」

ワトソン「あー、シャーロックが? つまり、どういう事なんだ?」

バットマン「……つまり、」


通信機『マスター! マスター、救援を……っぐ!?』ザザザッ

バットマン「……!!」

ジキル「今のは……!」


861 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:26:08.18 ID:2zVNU7dP0


バットマン「すまないミスターワトソン。邪魔をした。ジキル、恐怖ガス緩和剤の摂取は完了したか?」

ジキル「ああ。いつでもいける」

ワトソン「まっ、待て。どういう事だ、何が起きている?」

バットマン「……説明は、いずれ彼がするだろう。さらばだ」ダッ

モードレッド「邪魔したな!!」ダダッ

ジキル「失礼します」タッ

フォウ「フォウ、フォーウ!」ピョンピョーン



862 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:26:59.90 ID:2zVNU7dP0


シーン……

ワトソン「……」

ワトソン「……ええいっ、じっとしていられるか! どうしてどいつもこいつも蚊帳の外に置いておこうとするんだ!」

ワトソン「えぇーと、銃、ステッキ……トップハット、良し!」

ワトソン「待っていろよ、私だってシャーロックに及ばないまでも、真実に対する探求心はあるとも! ハドソンさん、出かけます!」ドタドタ


シーン……


ワトソン「……ああ、居ないんだった。ええいもう!」ガチャリッ


ドア「」バタン‼



863 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:27:38.02 ID:2zVNU7dP0


…………十数分前……


マシュ「ふう、ホムンクルス達は予想外でしたが……思ったより楽に突破できましたね。そして、アレが」

アンデルセン「ああ、アレが植物園だ。おい、へっぽこドクター」

ドクター『……あれ、もしかしてそれって僕の事? だとしたらショックなんだけど!?』

アンデルセン「お前以外に居るか。植物園の内部をスキャンできるんだろう、やってくれ」

ドクター『ぐぅ……分かったよ、やるよ……はいはい、内部に魔力反応はなし。探してる植物は奥の方にあるみたいだ』

アンデルセン「成程な。良いだろう、マシュ、フラン、俺の前に立て。ジャックとナーサリーは俺の後ろだ。行くぞ」

864 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:28:06.01 ID:2zVNU7dP0



………………


マシュ「……」コツ、コツ


マシュ(この建物、曲がり角が多い。障害物が多すぎて、敵に隠れる場所を与えてしまう)

マシュ(……それに、嫌な予感がする。何か、凄く嫌な予感が……)


アンデルセン「おい、マシュ! こっちだ、目当ての植物を見つけたぞ!」

マシュ「あ、はい! 今行きます!」


マシュ(考えすぎ……なのかな)


865 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:28:41.99 ID:2zVNU7dP0


ジャック「……うーん、これ? あんまりきれいなお花じゃないね」

ナーサリー「そんな事はないわ、どんなお花も綺麗になれるの」

アンデルセン「全く……! 無駄口を叩かず少しでも採集に精を出せ!」ブチブチ

フラン「うるさい……」ブチブチ

マシュ「……」ブチブチ


マシュ(……何かがおかしい。何か……恐怖ガスを受けてから、思考が鋭敏になってる。たとえば)

マシュ(さっきから、どうしてスイレンの水面にさざなみが立っているんだろう)



866 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:29:38.38 ID:2zVNU7dP0



マシュ(水面の近くには……通気口だ。金網にはボルトが外された痕がある)

マシュ(ダクトは上に続いてる。何処に出るんだろう? さっきから感じるこの違和感は何?)


(((運などない。だが策略は存在する)))


マシュ(……マスターなら、どう考える? この違和感……偶然? それとも、)



ドクン


マシュ(外された金網。波立つ水面。罠ひとつない植物園。私達でも突破できたホムンクルス)


マシュ「皆下がって!!! 攻撃下です!!!」ババッ

アンデルセン「っ!!?」ババッ

フラン「!!」ザザァッ‼

ジャック「!」タンッ、トトッ

ナーサリー「きゃ!?」ヨロ、タタッ


ガッシャァァァァァァァァァァン‼



867 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:30:15.78 ID:2zVNU7dP0



霧「」ズォォォォォォォオ……


???「フフフハハハァ……少しは賢い者が居たようだ」

???2「慢心はなりませんよ、ジョナサン。彼らはバベッジを打倒した」

スケアクロウ「ンフフフフフフ……期待しておこうじゃないか、なあ、パラケルスス。彼らは恐怖に抗えるかな?」


アンデルセン(……B・P・M・Sの内の二人! スケアクロウ、パラケルスス!!)


アンデルセン「手に余る」

マシュ「マスター! マスター、救援を……っぐ!?」ガギィン‼

スケアクロウ「ヒャハハハハ……練られた動きだ、女ぁ!」ヒュンヒュンッ

マシュ「くぅっ……!?」ガガッ、ガギィィ‼


868 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:31:07.83 ID:2zVNU7dP0


マシュ(鎌。中距離の武器……近寄れない。私が苦手とする武器)ガィン‼ ガギィン‼


ジャック「たぁっ!!」タンッ


水「」ギュギュ、ズォッ‼


ジャック「!!」

ナーサリー「ジャック危ないっ!!!」バッ

ジャック「くっ……」ドドッ、ゴロゴロッ

パラケルスス「おや、躱しましたか。この一撃で一人は持って行くつもりでしたが、なかなか思うようにいきませんね」

ナーサリー「あなた……!」

パラケルスス「私はパラケルスス。元素を操る魔術師。どうぞお見知りおきを」


アンデルセン(……ブルース達はベイカーストリートへ出た。ここへ来るまでにかかる時間は……15分、20分。間に合わん、確実に俺達が殺されている)


869 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:31:49.07 ID:2zVNU7dP0


アンデルセン「戦いをやめ、交渉する気は?」

マシュ「あ、アンデルセンさん?」

フラン「ウゥ……?」

パラケルスス「……?」

スケアクロウ「耳を貸すな、パラケルスス!!」

パラケルスス「逸ってはなりません、ジョナサン。……交渉ですか?」

アンデルセン「俺達は、仲間の内で最も強い連中の情報を売る。そいつらはここには居ない」

マシュ「な……! 駄目です!!」

アンデルセン「黙っていろ! 今ならおまけで、俺の命もくれてやる。さあどうだ、のるか、そるか」

ナーサリー「駄目よ! 絶対にダメ!! 切り抜ける方法があるハズよ!」

アンデルセン「……」

870 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:32:21.60 ID:2zVNU7dP0



アンデルセン(いつもながら、子供の理想論だ。切り抜ける方法などない。マシュ、フランも薄々それに勘づいている。俺達は、勝てん)

アンデルセン(モードレッドやブルースが居れば違っただろうが、奴らは今、ここには居ない。ああクソ、ないものねだりはガキの思考だ!)

アンデルセン(あとはどうなるか。フラン、マシュ、ジャック、ナーサリーをどうにかしてこの場から逃がせないか。こいつらがどれほどの脅威として認識されているかにもよるが……)


パラケルスス「……」

スケアクロウ「……」



871 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:32:55.07 ID:2zVNU7dP0



パラケルスス「……気高い行いですね。ですが、……面白い話を、して差し上げましょう」

アンデルセン「……?」

パラケルスス「恐怖ガスが変えてしまった人の中には、アナタのような勇気ある人も居た」

スケアクロウ「パラケルスス!!」

パラケルスス「言わせてください、ジョナサン。……恐怖を経験し、彼は変わってしまった。勇気は打ち砕かれ、絶望と攻撃性のみが残った」

スケアクロウ「……」

アンデルセン「……」

パラケルスス「彼が最期に何と言ったか、知りたいですか? 『あぁ、神様』、それだけです。自分のしたことを認識した彼は自殺した」

アンデルセン「……」

パラケルスス「人間は弱すぎる。いともたやすく変化し、自分がそれに耐えられない。悪に染まった魂を、善良な心は直視できない」

スケアクロウ「……」

パラケルスス「……失礼しました。ではやりましょうか、スケアクロウ。終わらせる」



872 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:33:38.40 ID:2zVNU7dP0


アンデルセン(やはり話など通用せんか!)


アンデルセン「クソ!!」ババッ、ギュォォォォォッ

スケアクロウ「フン、効かないぞ!」ガギギィィィ、ヒュォンッ‼

マシュ「たあっ!」ガギィン‼

スケアクロウ「小娘、邪魔だァ!!!」ヒュンヒュンヒュンッ



パラケルスス「心苦しいですが、新たな世界の礎となって頂きます」パパパパッ、ギュゥゥゥゥゥ……

ナーサリー「迂闊に近付いちゃ駄目、嫌な感じがするわ!」

ジャック「く……」ジリッ

フラン「ウゥゥ……」ジリジリ


パラケルスス「土、水、火。これで十分でしょう」ボボボボボォォォォッ‼

ナーサリー「!!!」ギュギュギュオッ、


ドドドドォォォォォォォォ……


873 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:34:10.69 ID:2zVNU7dP0


フラン「う、ウゥ……!」ゴロゴロッ

パラケルスス「……おや、アナタは……?」

フラン「……」ムクリ

パラケルスス「……ホムンクルスではない? ですが、真っ当な人間でも、サーヴァントでも……」

フラン「ウゥァ!!」バチバチバチバチィ‼

パラケルスス「……」ギギィィィ、パァン

フラン「……!!」ブォンッ

パラケルスス「……成程、アナタも作られた存在でしたか」ガギィィィィィ‼

フラン「アァァァァァ!!」ギリギリギリィ

ジャック「やあっ!!」ダダンッ、ギュォォォッ

パラケルスス「遅い」パシ、ブォンッ

フラン「ぐ……!?」ドシャァッ

ジャック「うわ!?」ドシャシャッ


874 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:34:41.84 ID:2zVNU7dP0


スケアクロウ「ヒャハハハハハハハ! 脆いものだな!!」ヒュンヒュンヒュンッ

マシュ「くっ……」ギギィン‼ ギュリィン‼

アンデルセン「マシュ!」ギュギュオォォォオッ‼

スケアクロウ「効かないと言ったハズだぞ!」ギャァン‼

マシュ「たあっ!」ブォンッ

スケアクロウ「のろいわ!!」タタッ

マシュ「……ふー……」ジリッ



マシュ(苦手な中距離戦。素早い相手。油断すれば恐怖ガスの濃縮液を注射され、戦闘不能)

マシュ(……認めるしかない。苦手な局面だ。でも、だからこそ……)

マシュ(何度もイメージトレーニングしてきた)



マシュ「……」スー……

スケアクロウ「……?」


スケアクロウ(なんだ、この雰囲気の変わりようは……まるで、これは……バットマン?)


875 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:35:41.05 ID:2zVNU7dP0


スケアクロウ「こざかしい! 私の動揺を誘うつもりだったか、残念だったな!!」ヒュンヒュンヒュンッ

マシュ「……」ガギガギガギィ‼ ギィン‼

スケアクロウ「私には恐れるものなど何もない! もはやバットマンでさえ、私の恐怖ではないのだ!!」ヒュンヒュンッ

マシュ「……」ギギギィン‼

スケアクロウ「死ね! 死ね、小娘!!」ババッ、ヒュゥンッ

マシュ「……!!」ダンッ、ジリリッ


スケアクロウ「!!!」ドクン


ドクン……


スケアクロウ(この間合い。この構え。繰り出した鎌は戻せない)ドクン

スケアクロウ(この、小娘。いや、コイツは……私が想像していたより、はるかに)ドクン、ドクン


マシュ「はああっ!!!」ダダンッ、ゴォッ

スケアクロウ「ぐうわああああ!?」ドゴォ、ゴシャシャシャシャシャシャァ……


876 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:36:39.33 ID:2zVNU7dP0


アンデルセン「……なんだと、驚いた」

マシュ「はーっ、はーっ……」ジリッ


マシュ(相手の全ての行動を予測し、瞬時に対応策を立てる。防御から反撃に転ずる隙を意図的に作り出す)

マシュ(言うのは簡単ですが、脳への疲労蓄積が……マスターはこれを毎回やっているんですか……)ヨロ



パラパラ……


スケアクロウ「貴様、貴様ァ……!!」ヨロ、ヨロ

マシュ「次で終わりです、スケアクロウ!」

スケアクロウ「黙れ! まだコレがある!」バッ、プシュッ

マシュ「……!?」


マシュ(注射針を……自分の心臓付近へ、刺した!?)


877 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:37:13.38 ID:2zVNU7dP0


パラケルスス「!! スケアクロウ、それはまだ時期尚早です!」

スケアクロウ「ク、ククク、式の組み立ては既に済んでいる。あとは実験だけだ……私は研究に献身的なのだ」ググ、ググググ……

マシュ「どういう事ですか!? 何故自分に恐怖ガスを……!?」

スケアクロウ「ククク……恐怖にかられただけで全てのヒトが狂暴になると思ったか? 否、否、全くの間違いだ! 私は人の凶暴性を引き出す成分も含めていた! そして、これが!!」

空の注射器「」カラン……

スケアクロウ「はははハはハハハハ!! 終ワりだ、嘆くがいい! 怯えルがイイ!! 我こそはスケアビースト! 恐怖ノ化身! 恐怖と暴力の象徴だ!!」ググ、ググググググ……

マシュ「……な……」

スケアビースト「……ぐ、グググ……」シュゥゥゥゥゥゥゥ……

878 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:38:24.67 ID:2zVNU7dP0

スケアビースト「……フシュルルルル……」ズオォォォォォォ……



ナーサリー「……なんてこと、あれじゃあまるで童話に出て来るモンスターそのものじゃない……」

ジャック「……おおきい」

フラン「ウゥ……」


アンデルセン「……これは」


マシュ(勝てる? いや、厳しい。使える環境も少ない)


スケアビースト「アァァァァァァァァァァァグォォォォォオォ!!」ブンッ

マシュ「っ!!」ガギィィィィィ‼


マシュ(速く、重い! 危険すぎる!)


879 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:39:19.44 ID:2zVNU7dP0


アンデルセン「こっちだデカブツ!」ギュギュギュオォォオッ

スケアビースト「……」ドドドッ……シュゥゥゥゥゥ……

アンデルセン「……クソ、弾かれてばかりだな! やはり俺に戦闘は無理か……!」

スケアビースト「グググ……」ブォンッ

アンデルセン「うお!?」ババッ

マシュ「そこ!!」ブォンッ

スケアビースト「……」ガシッ、ドゴォ

マシュ「あぐっ……!?」ドシャシャシャ……

スケアビースト「グルロォォォォォォォオォアアア!!」ダダンッ

ナーサリー「え? きゃっ!?」

ジャック「あぶないっ!!」ダンッ、バッ

ナーサリー「うッ」ゴロゴロッ


880 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:39:56.98 ID:2zVNU7dP0


フラン「ウゥゥゥゥゥアアアアア!!」バチバチバチ、ブォンッ

スケアビースト「……」ガシッ、ドッシャァァァァァ‼

フラン「うぁ……!?」ゴシャッ、ゴロゴロ……

スケアビースト「……ぐ、グググ。死ネ、小娘共……」ドシ、ドシ

パラケルスス「……」


パラケルスス(……味方とはいえ、迂闊に近寄らない方が良さそうですね。今のアレはジョナサンではない)


マシュ「っ!」ダダッ、ザザァ‼

スケアビースト「…………!!」グググ、ググググ……


881 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:40:45.02 ID:2zVNU7dP0



スケアビースト「ハァァァァァァァ……」フシュルルルルルルル……

マシュ「……!?」ジリ


マシュ(なに、これ……吐息? 黄色い、吐息が……)


マシュ「!!!」


マシュ(不味い……これは、恐怖ガスの、濃厚な……!)


マシュ「……、」ヨロ、



882 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:41:15.06 ID:2zVNU7dP0


アンデルセン(しまった!!)タタタッ


マシュ「……」グラリ、ドサッ

スケアビースト「……死ネ……」グググッ


アンデルセン「マシュッ!!!」ダンッ、バッ

スケアビースト「グルォア!」ブォンッ、ゴシャァ‼

アンデルセン「うぐあ……!?」ゴシャァァァァ……



883 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:41:44.30 ID:2zVNU7dP0


パラケルスス(致命打)


アンデルセン「……か、はっ……」プル、……


アンデルセン(クソ、全滅か……!? いや、まだ可能性はある!!)


アンデルセン「……なー、さりー、ナーサリー」ヒューッ、コヒューッ

ナーサリー「う、うぅ……あ、アンデルセン!?」ムク、タタッ

アンデルセン「ナーサリー、聞け、いいか……」


884 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:42:55.22 ID:2zVNU7dP0


ナーサリー「どうして、なんで、なんで貴方まで」

アンデルセン「いいか、ナーサリー、聞くんだ。お前の、結界でここを覆い、ブルース達の到着まで、持ちこたえさせるんだ」シュウシュウ……

ナーサリー「いや……いや! できる訳ない、できない! なんで私をおいていくの!? また、これじゃあまた、偽物のお話になっちゃう……!」ポロ……

アンデルセン「ナー、サリー、いいか。できるわけがない、とか、無理とか、いうのは、汚い大人の言い訳だ。お前は子供の夢だ。ひとつひとつが、本物なんだ」シュウシュウシュウ……

ナーサリー「……!!」

アンデルセン「……頼めるな、ナーサリー」

ナーサリー「……」……コク、コクコク

アンデルセン「なら、良いんだ。ああ全く、ガラではなかった……」シュゥゥゥゥゥゥ……


885 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:43:45.77 ID:2zVNU7dP0


スケアビースト「……」ドシ、ドシ

ナーサリー「……」ボソボソ……

パラケルスス「……?」


ナーサリー「……白黒マス目の王様ゲーム……走って走って鏡の迷宮」


パラケルスス(……)ピクッ

パラケルスス「スケアビースト!」

スケアビースト「!!」ブォンッ

ナーサリー「みじめなウサギはさよならね?」グシャアッ


カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ


パッ

886 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:44:16.32 ID:2zVNU7dP0



パラケルスス「……? ここは……」


スケアビースト「……」ドシ、ドシ

ナーサリー「……」ボソボソ……

パラケルスス「……?」


ナーサリー「……白黒マス目の王様ゲーム……走って走って鏡の迷宮」


パラケルスス(……なんだ、今のは……? 確かに殺したハズ)

パラケルスス「スケアビースト!」

スケアビースト「!!」ブォンッ

ナーサリー「みじめなウサギはさよならね?」グシャアッ


カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ


パッ

887 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:44:57.45 ID:2zVNU7dP0


スケアビースト「……」ドシ、ドシ

ナーサリー「……」ボソボソ……

パラケルスス「……!?」

ナーサリー「……白黒マス目の王様ゲーム……走って走って鏡の迷宮」


パラケルスス(どういう事だ。何が起きている。これは。これは、何だ)

パラケルスス「スケアビースト! 急ぐのです!」

スケアビースト「!!」ブォンッ

ナーサリー「みじめなウサギはさよならね?」グシャアッ


カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ


パッ


888 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:45:33.11 ID:2zVNU7dP0


スケアビースト「……」ドシ、ドシ

ナーサリー「……」ボソボソ……

パラケルスス「時間を繰り返すとでも……何度もさせるものか!!」ギュギュオォォォッ


ナーサリー「……白黒マス目の王様ゲーム……走って走って鏡の迷宮」パパァン

パラケルスス「何……!」


パラケルスス(弾いた……? 今の攻撃を弾かれたら、ここからでは、何の攻撃も……)


スケアビースト「……」ブォンッ

ナーサリー「みじめなウサギはさよならね?」グシャアッ


カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ


パッ


889 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:46:10.49 ID:2zVNU7dP0


パラケルスス(馬鹿な)

カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ

パッ


パラケルスス(馬鹿な。こんな事が)

カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ

パッ

パラケルスス(これでは倒せない。逃げられもしない)

カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ

パッ

パラケルスス(刻一刻と、理想が遠のいて行くというのに……!!)



カチッ、カチッ……ギュォォォォォッ

パッ


890 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/08/02(木) 01:46:54.58 ID:2zVNU7dP0


………………


ドクター『……ブルースくん、急いでくれ。アンデルセンの魔力反応がロストした』

モードレッド「……」ダダダ……

ジキル「……」タッタッ

バットマン「……了解した」ダッダッ


バットマン(待っていろ、今向かう……!)ダッダッ



看板『王立キュー植物園 この先2ブロック』


891 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/08/02(木) 01:47:33.47 ID:2zVNU7dP0
今回の更新はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/02(木) 02:00:40.99 ID:p5uVgDzJo

ここでアンデルセン脱落とは思わなかった
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/02(木) 08:12:52.68 ID:SCzo/n7A0
乙した!
まさかのワトソン登場に歓喜
これからどう絡んでくるのか楽しみだぁ〜
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/22(月) 10:43:34.41 ID:czil7Dr+O
まだかしら
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/29(月) 15:38:08.62 ID:3QYeCCbA0
おっSS板復活しとるやんけェ!
更新楽しみに待ってるからな……
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/04(日) 21:32:09.99 ID:4eHZoD5h0
いつまでも待つで
897 : ◆GmHi5G5d.E :2018/11/16(金) 16:57:04.65 ID:rKFAVeBwO
復活してた……!?
しょしょしょ少々お待ちを、別に油断してたとかそういうのではないので……!!
898 : ◆GmHi5G5d.E [sage saga]:2018/11/16(金) 17:00:55.52 ID:rKFAVeBwO
sage忘れてたすんません!!!
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2018/11/16(金) 19:25:09.41 ID:AOZipXyB0
>>898
おおお落ち着け!ここはお前さんのスレだぞ!
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/16(金) 22:51:59.81 ID:ICPG6CGRO
901 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:02:48.56 ID:fIC7lgGL0

………………

バットマン「……これ、は……植物園のハズだが」

フォウ「フォーウ……」ピコピコ

ジキル「結界で覆われてるね。ちょっとやそっとでは壊れないモノだ。この性質、時間も分断してるのか……?」

モードレッド「ブラックボックスってか。この感じ、多分ナーサリーのヤツだな……どうする?」

バットマン「ドクター、この結界に入る方法は?」ピッピッ

ドクター『通常なら入れない……けど、マシュが持ってる通信機が中継の役割を果たしてて……えーと、端的に言うとブルースくん、キミだけが入れる』

バットマン「成程」

902 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:04:29.35 ID:fIC7lgGL0


バットマン「では、私が先に行く。二人は結界が解けた後に来てくれ」

モードレッド「おう、分かったぜ」

ジキル「分かった。……気を付けてくれ、ブルース」

フォウ「フォウ、フォーウ!!」パタパタ

ドクター『本当に気を付けてくれ。その結界の中は、繰り返された時間のせいで座標も時流も滅茶苦茶だ。正直、キミを送り込むのだって……』

バットマン「必ず戻る、ドクター。マシュの観測を続けてくれ。私はそこへ辿り着く」

ドクター『……頼んだよ。……僕、卑怯な立場だな、ホントに』

バットマン「最も苦しい立場だ。……行ってくる」ズォォォォォォォォォォォ……

903 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:05:18.57 ID:fIC7lgGL0



………………


所長「……」ジッ

ドクター「……」チラッ


ドクター(所長は……あのお茶会以来、取り乱す事が少なくなった。今、ブルースくんが結界の中へ入っていったのだって……いつもなら、必死で止めてた)

ドクター(でも、今は落ち着いてる。いや……落ち着こうと、してる)


所長「何よ」

ドクター「い、いいえ!」


ドクター(……やっぱり、マシュへの態度が普通になったのと関係してるのか)


904 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:05:50.65 ID:fIC7lgGL0


職員A「……ブルースさんの肉体、観測順調……結界のはざま、虚数空間へ移入開始。肉体を存在防護式で覆います」カタカタ、カタカタ

職員B「電子機器の稼働式にIF欄を追加。非存在の存在特定を開始」ピッピッ

職員C「シバのレンズを一枚、虚数空間の観測にあてます。角度調整」カタカタ、タンッ


ドクター「……レオナルド、そっちは?」

レオナルド「んー? 順調だ、機器に異常なし。……そっちはどう?」

ドクター「ああ、こっちにも異常はない。……うん、順調だ」

レオナルド「そうか。……キミ自身はどうだい、ロマニ?」

ドクター「僕? なんで僕が……」


ドクター(……)


905 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:06:33.09 ID:fIC7lgGL0



ドクター「……あぁ、ダビデの事かい?」

レオナルド「……」

ドクター「そうだな、僕たちのサポート不足もあっただろうね。ベインとかいう化け物も出て来たらしいし、消えたのも、仕方ない。割り切ってるよ」

レオナルド「…………」

ドクター「……確かに、ちょっと言い過ぎたけど、それだけだ。サポートに戻るよ」

レオナルド「……」


レオナルド(素直じゃないよなぁ、カルデアの面子って)


906 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:06:58.81 ID:fIC7lgGL0


職員C「……ま、待ってください。おかしい、計器の故障……いや、これは……」

レオナルド「どうした?」

所長「まず報告をしなさい」

職員C「きょ、虚数空間内に魔力反応を観測しました!」

ドクター「何? 虚数空間の、中にだって?」

職員C「機器の誤作動……いえ、反応がどんどんブルースさんに近付いています! これは……!?」

ドクター「くっ、ブルースくん! 聞こえるか、ブルースくん!?」


907 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:07:28.75 ID:fIC7lgGL0



………………

バットマン「……」


バットマン(また、この空間か……土の橋じみたものが、闇の奥までずっと続いている)

バットマン(闇の中には、ばら撒かれたような光の粒たち。星々。……時流に流された時の事を思い出す……)


(((おとう、さん……おかあさん……)))


バットマン(……進み、先に待つものを確かめる)


バットマン「……」スタスタ


通信機『』ザザザ……ザザザザ……


908 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:08:21.25 ID:fIC7lgGL0


バットマン「……」スタスタ

バットマン「……」スタスタ……ピタッ


ダビデ「……」


バットマン「……ダビデ?」


909 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:08:59.16 ID:fIC7lgGL0



ダビデ「ん? おや、キミもここに? 流された……ワケじゃ、無さそうだな」

バットマン「何をしている? 何故……いや、確か、以前も……」


バットマン(そうだ。以前も、消滅したサーヴァントがここに……)


ダビデ「はは、『絆』がロープみたいになってるのかな。また会えて嬉しいよ」

バットマン「……ああ。……すまない。ベインに対抗もできず、お前を失った」

ダビデ「会って早々に雰囲気を暗くしようとするな!? いや、キミらしいけど……良いのさ、後悔はない。進もうブルース、そのために来たんだろう?」

バットマン「……ああ」


910 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:09:32.76 ID:fIC7lgGL0


バットマン「……」コツ、コツ

ダビデ「……正直、キミが時流に流されないのはおかしいと思ってる。精神が強靭だと言っても、限度があるからね」テクテク

バットマン「……?」

ダビデ「あー、つまりだ。キミの精神や肉体は、とある目標に引力じみて引き付けられているんだ。とても大きな目標だ」

バットマン「目標……」

ダビデ「うん、そうだ。信念と言い換えても良いかもしれない。……言わずもがな、かな? 多分、マシュだね」

バットマン「……」


911 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:10:18.56 ID:fIC7lgGL0



バットマン「私が、マシュに……」

ダビデ「ははは、あくまで予測の話だよ。でも、キミ、彼女が大事だろう?」

バットマン「ああ。私は彼女が大切だ」

ダビデ「それは、ある意味では、世界の理を超えた思いの強さだ。……ブルース、確認をしておきたい。野暮な事でも、残酷な事でも。これは僕の役目だと思うから」

バットマン「何だ」

ダビデ「キミは、世界が滅んでも……彼女を助けたいと思うかい?」


912 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:10:52.83 ID:fIC7lgGL0



バットマン「世界が、滅んでも……?」

ダビデ「うん。世界と彼女を秤にかけた時、彼女を助けるかい?」

バットマン「……」


バットマン(考えた事は、あった。何度もその瞬間はシミュレーションしてきた。その選択の瞬間、私自身が冷酷であれるように。最善の選択を行えるように)

バットマン(マシュだけではない。所長も、ドクターも、レオナルドも、職員達も……全員だ。全員を、秤にかけ続けて来た)


ダビデ「ああ、うん。分かった」

バットマン「……まだ何も答えていないと思うが」

ダビデ「その沈黙が答えみたいなものさ……」


913 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:11:31.34 ID:fIC7lgGL0


ダビデ「そうか。良かった」

バットマン「何がだ」

ダビデ「キミをマスターに持てて良かったって事さ。全く、キミって性急だって言われた事無いか?」

バットマン「……」

ダビデ「あるんだ……その誰かさんも苦労してるね。こりゃこの先大変だ」

バットマン「……悪かった」

ダビデ「別に謝れとは……あぁほら、着きそうだ。僕はここでお別れだね」

バットマン「……必ず世界を、」

ダビデ「救え、とは言わないさ。ただ、自分で考えて欲しい。自分のために戦えないヤツが、世界を救えるハズもないしね……そうだろ、ブルース?」

バットマン「……恩は返す」

ダビデ「カッタいなぁ!!」


914 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:12:02.19 ID:fIC7lgGL0


………………

バットマン「……」スタッ

バットマン(あの妙な空間を抜けた。ここは……植物園内部か)キョロキョロ


空間「」グニャァァァ……

空間「」バチッ、バチチッ‼


バットマン(……急がなければ。良くない事が起きているようだ)スタ


915 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:12:29.56 ID:fIC7lgGL0


ドシ、ドシ……


バットマン「……」スッ


スケアビースト「……」ドシ、ドシ

ナーサリー「……」ボソボソ……

パラケルスス「くっ……」ジリッ



バットマン(マシュ、ジャック、フランは倒れている。ナーサリーは何かを詠唱中……アンデルセンは、居ない。間に合わなかったか)チラ

バットマン(敵対しているのは、スケアビーストと……白衣の男。十中八九『B・P・M・S』の一人。成程、ナーサリーの能力に賭けたかアンデルセン)

バットマン「……さてどう救出するか」


916 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:13:03.47 ID:fIC7lgGL0


スケアビースト「……」ドシ、ドシ


バットマン(このままではナーサリーが殺される。だが私一人飛び出したところで、叩き潰されて死ぬのがオチだろう)

バットマン(経路を算出。モードレッドがこちらに辿り着くまでの最短時間、最長時間それぞれの計算。そして時間稼ぎ……久々に搦め手と行くか)プシューッ……

バットマン(……)シュポッガシッ、ギュィィィィィィィィッ


917 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:13:45.40 ID:fIC7lgGL0



………………

パラケルスス(あれから何分が経過した? いや、何時間? 分からない。ただひとつ言えるのは、敵の増援は確実に到着しているであろうという事……)

パラケルスス(ナーサリー。油断していた。まさかここまで、てこずるとは……まだ計画は最終フェイズに入っていない)

パラケルスス(スケアビーストには言葉も通じない。……申し訳ありません、マキリ。私の、迂闊……)


ドドォン……‼

スケアビースト「……!?」

ナーサリー「っ」

パラケルスス「何の音だ!?」


918 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:15:17.51 ID:fIC7lgGL0



 植物園二階から突如響いた爆音に、その場に居た全員の視線が飛んだ。その隙に、倒れていたジャックがまず闇に引きずり込まれた。

「一体……」

 ナーサリーが呟き、しまったと口を抑える。詠唱が途切れた。ブラックボックスじみた結界が解除されている。つまり、もう、時間のループは行えない……

 その事実に、次いでパラケルススが気付く。今の爆音が何であろうが、チャンスだった。即座に行使された魔法、炎が飛び出しナーサリーを狙う。スケアビーストがそれに追従するかのように飛び掛かる。

 が、更なる破壊音が響いた。パラケルススは構わず攻撃を続けようとし……おのれの迂闊を、またしても呪った。破壊されたのは、二階の足場の、片方の留め金。振り子運動に乗り、破城槌じみて、パラケルススへ足場が追突した。

「っぐぅ……!?」


 吹き飛び、転がるパラケルスス。スケアビーストが思わず振り返る。その瞬間、さらに闇から腕が伸び、今度はマシュとフランを二人引きずり込んだ。


 ナーサリーはハッと後ろを振り返る。闇から歩み出る者があった。それは夜に混じるコウモリのように、瞳だけを光らせ、じわりと染み出すようであった。

「よくやった、ナーサリー」

 いかつい見た目に反し、優しい声がかけられる。ナーサリーは安堵と、重圧と、悲しみが一気に胸の中で爆発するのを感じ、大粒の涙を流しながら声を上げる。

「ご、めんなさい、アンデルセンが、アンデルセンが……」
「分かっている。大丈夫だ」

 大丈夫ではない。だが、ナーサリーは安心してしまう自分の不甲斐なさに更に涙をこぼす。スケアビーストが振りむき、口から黄色いガスを漏らしながら唸る。

「バァァァァァァァァット、マン……!!」
「待ちかねたか、スケアクロウ。来たのは私だけではない」

 バットマンが言い放つのと同時、怒れる闘牛じみた豪快な足音が廊下から響き始める。パラケルススは起き上がりながら、それを見る……全身から殺気を放ち、大股で駆けて来るモードレッドを。


「吹っ飛ばしてやらァ!!」


 彼女は叫び、剣を抜き放った。その刀身を赤いスパークが走った。


919 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:16:42.59 ID:fIC7lgGL0



モードレッド「死ねェ!!」グオォォッ

スケアビースト「!!」ガッ、ギリギリギリギリィ‼

モードレッド「……随分好き勝手やってくれたみてえだな、オレの仲間に……」ギリギリギリギリ……

スケアビースト「グルォァ……」ギリギリギリギリ……フシュゥゥゥゥッゥ……

モードレッド「うっ、なんだこいつ、ガス吐きやがった……!?」

バットマン「吸うな! 恐らく高濃度の恐怖ガスだ!」

モードレッド「おせえよ! 吸っちまったぞ……ぐぅっ、ふらつく……」

バットマン「チィッ」シュパパパッ


バットラング「「「」」」ヒュオォォォォォォッ


スケアビースト「!!」パシシィ‼


920 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:17:11.73 ID:fIC7lgGL0


モードレッド「っ、クソッタレがァっ!」ブォンッ

スケアビースト「ガアッ!?」ドサァッ、ゴロゴロ……

モードレッド「くっ……ちくしょう、俺に近付くんじゃねえ……」フラフラ

スケアビースト「ぐっ、くっ……」スルスルスル……

スケアクロウ「……ぐぅぅぅ……」グッタリ


パラケルスス「しまった……!」


パラケルスス(スケアビーストの維持時間が限界か……! 形勢も最早逆転、逃げるしかない!!)


921 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:17:57.02 ID:fIC7lgGL0


パラケルスス「スケアクロウ! 撤退です、このまま理想を潰えさせるわけにはいかない!」

スケアクロウ「……行け……置いて……行け」

パラケルスス「何を馬鹿な……!」ガシッ、グイッ

スケアクロウ「……」グッタリ


バットマン(逃げられる)

バットマン「ナーサリー、追撃を行えるか!?」

ナーサリー「魔力が、足りなくて……!」

モードレッド「……クソ……! クソ、俺から……! 俺から、離れろォォォォォオオォォォ!!」ギュィィィィィィィィィ‼


バットマン「何を……!」

バットマン(まさか、宝具を発動しようとしているのか!?)


922 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:18:27.33 ID:fIC7lgGL0


モードレッド(大丈夫!! 大丈夫だ!! オレは平気だ……! 平気だ! 吹き飛ばす! 父上……違う、敵を! 今の敵に集中しろ!)

モードレッド(今、戦場から逃げる腰抜けが敵だ! 逃がしてたまるか! 吹き飛ばす! ツケを払わせる! フラン達にやった事を償わせてやる!)


モードレッド「離れろブルース!! 撃つぞ!!」ギュイィ、グォォォォオォォォォオォォ

バットマン「……!! 伏せろナーサリー!!!」ガバッ

ナーサリー「きゃっ!?」


モードレッド「『我が麗しき父への叛逆』(クラレント・ブラッドアーサー)!!!」ギュガガガガガァァァァァァァァァァァァァッ‼



923 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:19:02.14 ID:fIC7lgGL0



パラケルスス(計算、通り)ニヤリ


バットマン「……!?」



パラケルスス「その宝具、頂きます。『元素使いの魔剣(ソード・オブ・パラケルスス)』」ギュォォォォォォォォォォォッ‼

短剣「」パキ……パキィ……

パラケルスス「霊子解析……侵食、完了」キィィィィィィ……ン


モードレッド「馬鹿な、止められた!?」

バットマン「モードレッド、かわs……」


パラケルスス「『我が麗しき父への叛逆』(クラレント・ブラッドアーサー)」ドガガガガガガガガガガガガガァァァァァァッ‼



924 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:19:56.54 ID:fIC7lgGL0


パラパラ……

パラケルスス「……ふぅっ、これで逃げる時間は稼げたハズ」

スケアクロウ「……下ろせ、パラケルスス。一人で歩ける……」

パラケルスス「スケアクロウ、回復しましたか。共に施設へ戻りましょう、我らの理想にはいささかの揺らぎも……」

スケアクロウ「いや、無理だ。バットマンが来た……バットマンが、来た。最善策を取らなければ、終わりだ」

パラケルスス「……」

スケアクロウ「ここで分かれて、混乱させる。お前は戻れ、パラケルスス。私は、別の方向へ行く」

パラケルスス「……そこまで恐ろしい相手なのですか、あの男は」

スケアクロウ「どんな窮地でも乗り越え、我々を止めに来る。行かなければ……少しでも、理想の世界の可能性を上げねば」

パラケルスス「……」


925 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:20:47.34 ID:fIC7lgGL0


パラケルスス「……私は」

スケアクロウ「……」

パラケルスス「私は貴方を、心から尊敬します。同志スケアクロウ」

スケアクロウ「尊敬は要らない。お前達の理想を作るがいい」

パラケルスス「……さらばです、スケアクロウ」ダッ

スケアクロウ「フン……」


926 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:21:44.16 ID:fIC7lgGL0



スケアクロウ「……」


スケアクロウ(……そうだ。世界の本質は今見ている、霧がかった恐怖のるつぼであるハズなのだ)

スケアクロウ(奴らがその目に宿す強い希望など、所詮はまやかしに過ぎない)

スケアクロウ(世界は終わる。私は、奴らの『理想の世界』とやらには行かない。ここで死ぬ)

スケアクロウ(ありったけの恐怖と共に、死ぬのだ。真理を見た私に、後悔など無い……)


スケアクロウ「……そうだ、最初からそうだったのだ……」ヨロヨロ



927 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:22:23.77 ID:fIC7lgGL0



………………

バットマン「モードレッド、無事か!!」ダダッ

モードレッド「……ぐっ、大丈夫だから、近寄るんじゃねえ……」グッタリ

バットマン「傷の様子を見せろ」ガシッ


バットマン(……宝具の跳ね返しを受けたが、鎧が殆ど受け止めている。うまく受け流したようだ)


モードレッド「俺はいい、クソ、追わねえと……!」グ、プルプル……

バットマン「ああ、すぐに追う。……マシュ達の様子も見なければ……」

ジキル「みんな! ようやく見つけた……!」タッタッ

フォウ「フォウ、フォーウ!!」テテテ

バットマン「ジキル博士、フォウ、無事だったか」

ジキル「置いて行かれて、ずっと彷徨ってたんだ……! この中迷路みたいだし!」ゴホッゴホッ

フォウ「フォウ、キュ、フォーウ」パタパタ


928 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:23:00.13 ID:fIC7lgGL0


ジャック「おかあさん! おかあさん!」タタッ

フラン「う、ウゥ……!」ムクリ

マシュ「……マスター?」フラフラ


バットマン「起きたか。ダメージはどれほど受けた?」


ジャック「ぜんぜんへいきだよ!」

フラン「問題、ない……」

マシュ「……ガスを吸ってしまいましたが、戦えます、私は大丈夫です」


バットマン「よし。ならもう一度役割ごとに再編成を……」

ドクター『もしもし、ブルースくん! 大変だ、霧の中の魔力反応を追跡していたんだけど……二手に分かれた!』

バットマン「何だと?」


929 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:23:38.86 ID:fIC7lgGL0



バットマン(……流石に真っ直ぐ帰るほど油断しきってはいないか。ならば……)


バットマン「予測進路をレーダーに表示してくれ。二手に分かれて追う」

ジキル「な……それは、無茶じゃないか!?」

バットマン「やらなければ、ジキル博士。このまま振り回され続ければ、奴らの方が準備を整えてしまうだろう。奴らが何をするつもりにしても、我々は敵に時間を与え過ぎた」


バットマン(そう、時間を与え過ぎた。嫌な予感がする。妙に素直に引いて行ったベインも、油断できない要素の一つ……)


バットマン「とにかく、奴らの目論見は達成寸前だろう。奴らが世界を壊す前に、こちらが出向いて阻止しなければ」


バットマン(見る限り、マシュ、モードレッドは恐怖ガスの影響下。能力的には半減したとみていい……)


バットマン「ナーサリー、恐怖ガスの解毒剤の原料は手に入れたか?」

ナーサリー「え、えぇ、勿論よ。はい、これ……」スッ

ジャック「あっ、わたしもがんばったよ! これ!!」

バットマン「よし……」



930 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:24:32.99 ID:fIC7lgGL0



ジキル「……分量、30グラム……」

ドクター『ステロイドを』

ジキル「成程……ブルース、ちょっといいかい?」

バットマン「どうした、ジキル博士」

ジキル「植物の量が足りない。解毒剤は作れるが、これではせいぜい一人分のみだ。……どうする」

バットマン「……」

モードレッド「俺達には要らねえ。戦えるのに、そんなモン要るか」

マシュ「……はい、平気です。それより、マスターこそ……」

バットマン「……」


931 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:25:05.91 ID:fIC7lgGL0


バットマン「ジキル博士、緩和剤は何本ある」

ジキル「一応、三本持って来てるけど……」

バットマン「マシュ、モードレッド、私でそれを飲む。私達三人がスケアクロウの追跡にあたる。ジキル、ナーサリー達と共にパラケルススの追跡を頼む」

ジキル「ぼ、僕が!?」

バットマン「キミなら大丈夫だ。通信機を持ってくれ」スッ

ジキル「や、やるだけやるけど……」パシッ

バットマン「では解毒剤の精製を、博士。完成し次第、追跡を始めるぞ」



932 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/11/17(土) 01:25:47.72 ID:fIC7lgGL0



………………


ワトソン「全く、何だ今の爆発は……ロンドンはどうなってしまうんだ」


ワトソン(ホームズ、これは大変な事件だぞ。こんな時に君は一体どこへ行ってしまったんだ……)


チュドォォォォォォォォォン……


ワトソン「……また! あれは植物園の方か、うぅむ……」

ワトソン「……今回行くのは僕だけか。ホームズのファンにはウケないだろうな!」スタスタ


933 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/11/17(土) 01:28:22.26 ID:fIC7lgGL0
今回の更新はここまでです。お付き合い有難うございました。
なんだかスレがバグってますかね……? 更新にも一苦労だったので次の更新の時は次スレを立てますね。
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/17(土) 10:08:13.63 ID:D6Gkt03uo

変なバグか散見してるからスレ立ても様子見した方がいいかもしれない
935 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/11/17(土) 12:50:00.57 ID:fIC7lgGL0
うぅん、どうしましょうか……歴が浅いので、情けないですがこういったトラブルへの対処方法が浮かばず……
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/17(土) 15:35:27.93 ID:4Vuos+JwO
おつ
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/17(土) 17:23:07.32 ID:D6Gkt03uo
暫く書き溜めに専念しとくのがいいけど
荒巻だから治る保証もないのが困る
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/19(月) 15:32:42.00 ID:XZ7uoqQA0
わぁいイッチ生きてた、よかったー嬉しい!
のんびり待ってるから慌てんでいいのよー
939 : ◆GmHi5G5d.E [sage saga]:2018/11/20(火) 01:28:39.83 ID:GYV8vN900
スレ立てすらできないという現状……申し訳ない、言われた通り大人しく書き溜めに専念します
940 : ◆GmHi5G5d.E [sage saga]:2018/11/20(火) 15:13:12.99 ID:Jv0JlffCO
バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1542694051/

立っ……うぅむ……調子が微妙なところですが、一応貼っておきます
941 : ◆GmHi5G5d.E [sage saga]:2018/11/20(火) 15:19:33.46 ID:Jv0JlffCO
HTML化依頼も出してきます。
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/20(火) 15:58:22.59 ID:4Ms+6ZtA0
乙乙
新しいスレにのりこめー
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